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研究ノート:『おばあさんのお話袋-ベンガルの昔話-』
(翻訳)
大橋, 弘美; 森, 日出樹
松山東雲女子大学人文科学部紀要. vol.19, no., p.87-114
2011-03-30
http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/handle/iyokan/1108
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松山東雲女子大学人文科学部紀要,1
9:8
7
‐
1
1
4,2
0
1
1
『おばあさんのお話袋−ベンガルの昔話−』
(翻訳)
Thakurmar Jhuli: Folktales of Bengal (Japanese translation)
大 橋 弘 美* ・ 森
日出樹
Hiromi OHASHI・Hideki MORI
要 約
2
0世紀初頭インド・ベンガル地方では、スワデシ運動が展開されるなか、自国の文化に対して民俗学的
な関心が高まっていた。ドッキナロンジョン・ミットロモジュムダール(Dakshinārañjan
Mitramajumdār 1
8
7
7
!
‐
1
9
5
7)は、幼少時から聞かされてきた昔話に魅了され、自ら採話した昔話編纂集である「おばあさんのお
話袋−ベンガルの昔話−」
(Thākurmār
Jhuli Bānglār Rūpkathā)を、1
9
0
7年にコルカタで出版した。本書の出
!
´
版には、高名なベンガル文学研究家ディネシュチョンドロ・シェン(Dı̄nescandra
Sen)が深く関わり、序文
はラビンドラナート・タゴール(ロビンドロナト・タクゥル Rabı̄ndranāth Thākur)から贈られた。
!
本稿では、
『おばあさんのお話袋』の第一部から三話を翻訳する。
キーワード:ベンガル、昔話、ドッキナロンジョン・ミットロモジュムダール、タクルマール・ジュリ
[Abstract]
With the spread of the Swadesh movement, a nationalist movement under colonialism, in Bengal in the
early 20 th century, Bengali people came to be more and more interested in their folk culture. Dakshinaranjan
Mitramajumdar (1877-1957), who had been fascinated by Bengali folktales since his childhood, published “Thakurmar
Jhuli: Banglar Rupkotha (Grandmother’s Bag of Tales)”, a collection of Bengali folktales, in Kolkata in 1907.
Dineshchandra Sen, an eminent scholar in Bengali literature, helped him publish the book, and Rabindranath
Tagore wrote its preface.
This is a Japanese translation of three stories from part one of the book.
Key words: Bengal, Folktale, Dakshinaranjan Mitramajumdar, Thakurmar Jhuli
〈解説〉
『おばあさんのお話袋−ベンガルの昔話−』
(Thākurmār
Jhuli Bānglār Rūpkathā)は、ドッキナロン
!
ジョン・ミットロモジュムダール(Dakshinārañjan
Mitramajumdār 1
8
7
7
‐
1
9
5
7)によって採話された昔
!
* ベンガル文学研究家
―8
7―
大 橋 弘 美 ・ 森
日出樹
話に基づいて編纂された昔話集である。ドッキナロンジョンは英領インド東ベンガル(現バングラ
デシュ)のダカ(Dhākā)
県に生まれ、幼少期に実母と死別し、モイモンシン(Moimansigh)県の父
!
方のおばの手で育てられた。そして、そのおばから語り聞かせられた昔話に魅了され、やがて自ら
昔話の採話を行うようになった。『おばあさんのお話袋』が出版されたとき、まさにベンガルはスワ
デシ運動の渦中にあった。ベンガル文学の分野においても、人々は自国の固有の文化に価値を見出
し、民間伝承や口承文芸の分野に関心を向けていた。ドッキナロンジョンの採話した昔話は、ベン
´
ガル文学研究の大家であるディネシュチョンドロ・シェン(Dı̄nescandra
Sen)にその価値を認められ、
ラビンドラナート・タゴール(ロビンドロナト・タクゥル Rabı̄ndranāth Thākur)からは序文が贈られ、
!
1
9
0
7年に出版された1。本書が現在でも、ベンガルの昔話集として人気を保っている理由は、正にタ
ゴールが序文の中で次のように述べている通りである。
「ドッキナロンジョン氏の『おばあさんのお
話袋』を手にしたとき、その本のページをめくるのが私は恐ろしかった。実は内心疑っていたのだ。
文語調の固い鋼鉄のような表現では、昔話本来の語り口が損なわれてしまっているのではないかと。
最近の学者風の堅苦しい言葉では、昔話の持つ語り口をそのまま表現することは、とても難しいこ
とである。私ならば、敢えてこうした試みに着手することもなかっただろう。なぜなら以前に何度
か、昔話の上手な語り手で、なおかつ教育も受けている娘から昔話を聞いて、それを書き起こそう
と試みたことがあったからである。しかしその娘が上手に語ってくれたにもかかわらず、イングラ
ンド製のペンの持つ魔力のせいなのだろうか、昔話を書き留めても、その本来の持ち味が少しも出
せなかった。永遠の輝きを持つはずのものが、現代的な平凡なものに変わってしまっていた。
だがドッキナロンジョン氏には頭が下がる。彼はおばあさんの口から出た言葉を、本の頁の上に
そのまま植えてしまった。そして植え替えられた昔話の言の葉は、かつての姿そのままに緑色で、
みずみずしいままである。昔話特有の言葉、特有のきまり、その古くからある素朴さをよく維持し
ている。そこに彼の繊細な機知のセンスと生まれ持っての美意識が表されている2」
ドッキナロンジョンは本書を初めてとして、1
9
0
9年『おじいさんのお話袋』(Thākurdādār
Jhuli)
、
!
同年『お母さんのお母さんから聞いたお話集』
(Thāndidir
Thole)
、1
9
1
3年『お母さんのお父さんから
!
!
´
聞いたお話集』(Dādāmosāyer
Thole)を刊行した。その後も彼はおばの地所を管理する傍ら、数多く
の児童文学を世に送り出した。
『おばあさんのお話袋』は四部に分かれており、それぞれにタイトルが付いている。第一部「乳
の海」
、第二部「美と恐怖」は、主に王子の冒険を中心として、不思議な出来事がからむ本格昔話の
なかでも魔法昔話に分類される話が収められている。第三部「チャン・ビャン」は主人公が動物で
ある動物昔話と笑い話から構成され、最後の第四部「マンゴーとションデシュ菓子3」は本書を締め
くくるチョラ(詩)である4。本稿では、著者から読者に贈られた巻頭の言と第一章「乳の海」から
三話を訳出することにする。
―8
8―
『おばあさんのお話袋−ベンガルの昔話−』
(翻訳)
『おばあさんのお話袋−ベンガルの昔話−』
著者より読者の皆様へ
ある日の情景を思い出します。神様を祀る部屋で、お灯明があげられています。それからほら貝
などの音がして、やがてそれも止まる。いつしか母のサリーのすそにくるまれて、昔話を聞いてい
た自分の姿が心に浮かんできます。
「月の光の花が咲いた」5。母の口から現れたひとつひとつの物語は、まさに澄み切った空いっぱ
いに輝く月の光の王国でした。そしてその月光でできた曇りない清らかなキャンバスの上に、次か
ら次へとたくさんの王国が、広大な宮殿が、何人もの美しい王子たちや王女たちのとても語り尽く
せない姿が、子供だった私の目の前に本当に起こった出来事のように花開いていたのです。
それは本当に良い子供時代でした。読みかけの本を手に持ったまま、私は眠くなってしまったも
のです。でも眠くなりながらもその昔話に、それから後の晩も、その後の晩も、またその後の晩も、
何晩も夢中になっていました。また昔話を聞いて、また聞いて、その次も聞いて、飽きるほど聞い
てから、ようやく目を閉じておとなしく眠りにつくような子供でした。すると小さな本の中の見知
らぬ王国の王子や七つの海と十三の川の波が、まるで私のようないたずら好きの子供みたいに、私
の夢の中に遊びに来たものでした。
ベンガルの緑の農村では、ある日にはこちらでうれしいことがあったり、ある日にはあちらでちょっ
とした騒ぎも起きたりといった日々が繰り返されていました。母は私に数えきれない程たくさんの
昔話を語り聞かせてくれたものでした。私が聞かされた話をとても全部は覚えきれないとわかって
いたことでしょうに。その頃、家庭内で働く女性たちと、昔話はとても結びつきが深かったのです。
昔話を知らない女性なんていませんでした。もしも知らないなんて人がいたら、それはとても恥ず
かしいことだったのです。でもその昔話が持っていた魔法の金と銀の棒を誰が持って行ってしまっ
たというのでしょう?
今日では、もはや子供たちに金と銀の棒の魔法がきかなくなってしまって
いるように私には思われます。
ベンガル文学協会6は私たちベンガル人に対して、偉大な呪文を授けてくれました。「失われてし
まった声の宝石を、母語の宝物庫に贈り物として捧げよう。宝石は我々にとって、比類なき霊感の
源であり、その泉からあふれ出ているものは、母性の愛である」つまりその声の宝石こそが、ベン
ガル人にとって、ベンガルの昔話であるというのです。
後に、いくつかの村で老人たちが語る昔話を聞く機会がありました。物語を聞くうちに、私は子
供時代の自分に戻ったような気がしました。ですが、もはやすべてが崩れかけてぼろぼろになった
骨の上に、仮初の花で作られた寺院のようなものでした。私の心のなかにある物語の言葉は、みず
みずしい花弁に宿る声とその香りのようなものだったというのに。かつて母が私に語ってくれた甘
―8
9―
大 橋 弘 美 ・ 森
日出樹
露のような昔話は、消えかけた今際の吐息のような姿となって私の元に届きました。昔話がどうなっ
てしまっていたのか、これ以上は述べることができません。
さてこの本のために私は、最後に挿し絵を描きました。これらの絵を見て皆さんが微笑んで下さ
るならば、挿し絵はまずまずの出来だと思えるでしょう。
秋の早朝、お話の詰まった袋を私は金色の象の背中の上に置いておきました。私の母が私に昔話
を話してくれたように、ベンガル中の家々で私の昔話の本を読むことができます。母が語ってくれ
た昔話を、私は自分の手で本の形にしたのです。
自分で思い描いたように本を作るのはなかなか難しいことです。ですがここで申し上げておきた
いのは、この本が出版される以前より、『ベンガル語と文学』の著者である私の兄のような素晴らし
い友人ディネシュチョンドロ・シェン氏こそが、この分野の先駆者であるということです。そして
シェン氏がこの本のためにして下さったことに対して、私にはとても報いることなどできないと思
われます。
私の妹は多くの雑事を引き受けてくれました。そして親愛なる友ビモラカント・シェン氏は、本
書の印刷のために我が身を投げ出して多くの仕事をして下さいました。彼には本当に感謝の言葉も
ありません。
月の光に洗われた心地よい夕べに、お灯明と音楽を捧げます。この相応しき時に、本書『おばあ
さんのお話袋
ベンガルの昔話』を手に取って下さっている方々よ、それではこれで失礼いたしま
す。
コルカタ、初版
ベンガル歴1
3
1
4年バッドロ月(西暦1
9
0
7年8∼9月)
第1
3版
ベンガル歴1
3
5
1年バッドロ月(西暦1
9
4
4年8∼9月)
「乳の海の章」
無数の時代の王子たち、王女たちよ
鏡の海を渡って再び現れるのはいつ?
オウム船に乗って、ある娘がやって来たら
帆を上げた孔雀船がどこかに沈んでしまったとさ
五人のお后と五人の王子は、最後にどうなってしまったでしょう?
お猿とフクロウの兄弟ブッドゥとブートゥムの身に何があったでしょう?
沈黙の眠りの都よ、いったいどこにあった?
いつのことかな?
金の蓮の花は、王女の顔に咲きます
王子が旅立ったのはいつのことだったでしょう?
―9
0―
『おばあさんのお話袋−ベンガルの昔話−』
(翻訳)
どうやって王子が眠りの魔法を解いたのでしょう?
どこに咲いていたのかわかるかな?
ごみ捨て場のチャンパの花とパルルの花
走ってきたよ、王様の庭師がお花を摘みに
お花のつぼみが飛んで行ったのは、誰のひざの上でしょう?
とげの上にさらにとげ、いったい誰が罰を受けたでしょう?
牛飼いの友達の吹く甘い笛の音を、今日になって思い出すとは
牛飼いの友達と約束したのに、約束を破ってしまった王様
体中が針だらけ、足にも針だらけ、王様は痛くて痛くてたまりません
ざぶんと水をもぐったら、お后カンチョンマーラーは召使に大変身
オウムにされてしまった嘆きのお后ドゥオ・ラニを思い出してみて
母を失くしたかわいそうな二人の兄弟シートとボショントはどれほど悲しかったことか
王座を乗せたまま王様の象は、どこへ走って行くのでしょう?
宝石の放つ光に照らされて、王女様と結婚できるでしょう
さびしい国のどこかに流されたしまった兄妹たちよ
建てられたのはびっくりするくらい大きな都、なんて素晴らしい都
金の鳥が夢を壊したのはいつでしょう?
何の歌を歌ったのでしょう?
全部の不思議が隠されているのは、乳の海の波の下
第一話 王女コラボティ
(1)
あるところに王様がいました。王様にはお后が七人いました。一番目のお后ボロラニ、二番目の
お后メジョラニ、三番目のお后セジョラニに四番目のお后ノラニ、その次に五番目のお后コネラニ、
六番目のお后ドゥオラニそして七番目の小さなお后チョトラニでした7。
王様の国は広く、王宮も立派でした。象舎には象がいて、馬小屋には馬がいました。宝物庫には
宝石があって、小部屋一杯の金貨もありました。王様は何でも持っていました。それから宰相や大
臣、兵士たちもいて、王様の都はたいへん栄えていました。
でも王様は幸福ではありませんでした。七人もお后がいるのに、どのお后にも子どもがいなかっ
たのです。王国の人々もそのことをとても心配していました。
―9
1―
大 橋 弘 美 ・ 森
日出樹
ある日のこと、お后たちは川岸へ沐浴するために出かけました。するとそこで一人のサニヤーシー
(遊行僧)に会いました。サニヤーシーは一番目のお后の手に木の根を渡して言いました。
「この根
をすり潰して、七人のお后たちで食べなさい。金色の月のような男の子を授かるだろう」
お后たちは喜んで、急いで沐浴を済ませて戻りました。それから着替えをして、髪や身体を乾か
して台所に行きました。その日は一番目のお后がご飯を炊き、二番目のお后が野菜を洗い、三番目
のお后がそれを料理する当番でした。また四番目のお后は水汲みで、五番目のお后がその手伝いの
係、そして六番目のお后が料理用の香辛料をすり潰し、七番目のお后が魚料理をすることになって
いました。ですから五人のお后たちは台所にいて、一方、四番目のお后は井戸へ水汲みに行き、七
番目のお后は灰置き場の傍で魚を切っていました。
サニヤーシーからもらった木の根は一番目のお后のところにありました。一番目のお后は六番目
のお后を呼んで言いました。「ねえ、今日はおまえが香辛料をすり潰す日でしょう。この木の根を先
にすり潰しておくれ。みんなで少しずつ食べましょうよ」
六番目のお后は、木の根をすり潰しながらほんの少し食べてしまいました。それから銀のお皿に
すり潰した木の根をよそって金の小鉢をふたにしてかぶせてから一番目のお后に渡しました。一番
目のお后は小鉢のふたを取って少し食べてから二番目のお后に手渡しました。二番目のお后も少し
食べてから三番目のお后に渡しました。三番目のお后も少し食べてから五番目のお后に渡しました。
五番目のお后はわずかに残っていた木の根を全部食べてしまいました。四番目のお后が水汲みから
戻ってくると、ふた代わりの小鉢にかすかに何かがくっついているだけでした。四番目のお后は仕
方がないのでそれを食べました。七番目のお后のためには何も残っていませんでした。
魚を切り終わると、七番目のお后は立ち上がりました。そして台所に戻ってくる途中で四番目の
お后に会いました。四番目のお后は言いました。
「ああ、なんて運の悪い人なのかしら。すり潰した
木の根をまだ食べていないでしょ。さあ、早く行きなさい」七番目の小さなお后は慌てふためいて
走っていきました。戻ってみると、木の根は何も残っていません。小さなお后は床に倒れこんでし
まいました。五人のお后たちは、この人のせいだ、いやあの人のせいだと口々に言い合うばかりで
す。七番目のお后の手にあった魚は、中庭に散らばりました。七番目のお后はその涙で魚がどこか
に流れて行ってしまうほど激しく泣いていました。
しばらくして四番目のお后が戻って来ました。四番目のお后は言いました。
「この子のために、あ
なたたちときたら、少しも残して置かなかったの?
なんてことをしてしまったのかしら。さあお
いで、小さなお后。根をすり潰したすり鉢に何かは付いているでしょうよ。それをすすいだ水を飲
ませてあげましょう。神様もこの子に金色の月のような男の子を授けて下さるでしょう」他のお后
たちは言いました。「そうだわ、それがいいわ。すり鉢をすすいだ水という手があったわ。それをす
すいだ水を飲ませてあげなさいよ」だが、心の中ではこう言いました。
「すり鉢をすすいだ水なんか
で、金色の月のような男の子なんて無理よ。そうね、猿のような子でも授かるでしょうよ」
七番目のお后は泣きながら、すり鉢をすすいだ水を飲みました。それから四番目のお后と七番目
―9
2―
『おばあさんのお話袋−ベンガルの昔話−』
(翻訳)
の小さなお后は互いに慰めあいながら、また水を汲みに行きました。他のお后たちは、様々なこと
を口々に言い合うだけでした。
(2)
十ヶ月と十日が過ぎて、五人のお后に五人の男の子が生まれました。ひとりひとりがまるで金色
の月のような赤ちゃんです。四番目のお后と七番目の小さなお后はどうなったでしょう?
一番目
のお后が言った言葉が本当になってしまいました。四番目のお后からはフクロウが、そして小さな
お后からは猿が生まれたのです。
一番目のお后たちの部屋の前では、にぎやかに太鼓が打ち鳴らされました。四番目のお后と小さ
なお后の部屋の前では泣き声が聞こえました。
王様と国中の人たちがやってきて、一番目のお后たちの部屋の前でお祝いの歓声を挙げました。
でも四番目のお后と七番目の小さなお后には、誰も声もかけませんでした。
何日かして、四番目のお后は動物園の下働き女に、七番目の小さなお后は牛糞集め女にされてし
まいました。そして辛い日々を送り始めました。
(3)
やがて王様の息子たちは大きくなりました。フクロウの子と猿の子も大きくなりました。五人の
王子の名前は、ダイヤモンドのようなヒラ王子、ルビーのようなマニク王子、真珠のようなモティ
王子、美しい貝のようなションコ王子、黄金のようなカンチョン王子でした。
フクロウの子の名前は、ただのブートゥム。猿の子の名前は、ただのブッドゥ。
五人の王子は、五頭の羽が生えているように速く走る馬ポッキラージに乗って、外に出かけるよ
うになりました。王子たちと一緒にたくさんの兵士たちが従います。一方ブートゥムとブッドゥは
自分たちの母の小屋の横にある小さなボクル樹の枝に座って遊ぶようになりました。
五人の王子たちは遊びに出かけると、毎日どこかで誰かを殺したり首をはねたりするようになり
ました。国中の人たちは、これからどうなるものかと心配するようになりました。
ブートゥムとブッドゥは二匹だけで遊びます。時々お母さんたちと一緒に出かけます。ブッドゥ
はお母さんのために牛糞集めを手伝います。ブートゥムはお母さんが働く動物園の雛鳥にえさを与
えるのを手伝います。そして二匹は何日かに一度は、都の南にある森に遊びに出かけるようになり
ました。
ブートゥムのお母さんは動物園の下働き女で、ブッドゥのお母さんは牛糞集め女です。今日はご
飯が食べられても、次の日にはご飯が食べられないこともあるのです。ブッドゥは二人のお母さん
のために森から様々な種類の果物を集めてきます。ブートゥムはくちばしで二人のお母さんのため
に、パーン用のシュパリの実8を集めてきます。このようにブートゥムとブートゥムのお母さん、ブッ
ドゥとブッドゥのお母さんは暮らしていました。
―9
3―
大 橋 弘 美 ・ 森
日出樹
ある日、五人の王子はポッキラージの馬に乗って、動物園にやって来ました。来る途中で、一匹
の猿と一羽のフクロウがボクル樹に座っているのを見ました。王子たちは猿とフクロウを見つける
なり、兵士たちに命令しました。「おい、あのふくろうと猿を捕まえろ。僕たちはあれを飼いたいの
だ」兵士たちはボクル樹に網を掛けました。ブートゥムとブッドゥは網を破ることができません。
二匹は捕まってしまい、檻に閉じ込められて王子たちと一緒に都に行きました。
動物園の掃除を終えたブートゥムのお母さんが帰ってきました。するとブートゥムがいません。
牛糞集めを終えたブッドゥのお母さんが帰ってきました。するとブッドゥがいません。ブートゥム
のお母さんは手に持っていた箒を落として、地面に座りこんでしまいました。ブッドゥのお母さん
も牛糞集めの箒を投げ捨て、地面に倒れてしまいました。
(4)
都にやってきたブートゥムとブッドゥは驚きました。なんて大きな建物でしょう。象も馬も兵士
たちもなんてたくさんいることでしょう。
都を見た二匹は言いました。「うわぁ、都ってすごいなあ。僕たちはどうしてボクルの樹に住んで
いるのかな?
お母さんたちもどうして小屋に住んでいるのかな?」ちょっと考えてから二匹は言
いました。「ねえ、兄弟たち。王子たちよ。僕たちを都に連れて来たなら、僕たちのお母さんも都に
連れて来てよ」
これを聞いて王子たちはびっくりしました。動物が人間みたいに話をしています。そして王子た
ちは言いました。「よし、よし。おまえたちの母親はどこに住んでいるのか、さあ言ってみろ。連れ
てきて動物園に置いてやろう」
ブートゥムが言いました。「動物園の下働き女が僕のお母さん!」
ブッドゥが言いました。「牛糞集め女が僕のお母さん!」
これを聞いた王子たちは笑い出しました。
「人間から、猿が生まれたって!」
「人間から、ふくろうが生まれたって!」
七番目の小さなお后と四番目のお后のことを、王子たちは何も知りませんでした。一人の兵士が
次のように言いました。
「そんなこともあったのではないかな。私たちにはもう二人お后がおられた。
その二人から猿とふくろうの子が生まれたことがあった。王様はそのために二人を追い払ってしま
われた。あれはその猿の子とふくろうの子じゃないかな?」
これを聞いた王子たちは、なんてことを言うのかと顔をしかめながら立ち上がりました。そして
檻の上を棒でたたいて、王子たちは兵士たちに言いました。
「この二匹をたたき出してしまえ」こう
言い残すと、王子たちはポッキラージの馬に乗って、出かけてしまいました。
ブートゥムとブッドゥは知りました。二人も王様の子どもだったのです。ブートゥムのお母さん
は下働きの女ではありませんし、ブッドゥのお母さんも牛糞集め女ではありません。その時ブッドゥ
―9
4―
『おばあさんのお話袋−ベンガルの昔話−』
(翻訳)
が言いました。「兄さん、行こう。僕たちのお父さんのところに行こう!」
ブートゥムが言いました。「よし、行こう!」
(5)
金のベッドに体を、銀のベッドに足を乗せて、都の五人のお后たちはちょうど髪の毛を梳いてい
るところでした。一人の召使女が、河岸に銀の櫂とダイヤモンドが輝く帆を張ったオウムの飾りの
ついた船が来たと知らせに来ました。船の上では雲のように美しい髪をしていて、小さな赤い実の
ように美しい娘が、オウムと話をしているというのです。
河岸には高台がありました。お后たちは高台の上で、押し合いへし合いして、少しでも前で見よ
うと大騒ぎです。それをオウムの飾りのついた船から、娘が見ています。
そしてオウムの飾りのついた船は帆を上げ、すべるように進み始めました。
お后たちは言いました。
「小さな赤い実のように美しい娘、雲のような髪のあなた
持ってお行きなさいな、娘よ。真珠の花飾りを」
船から赤い実のような娘が言いました。
「真珠の花飾りよ、真珠の花飾りよ。それは遠いところにあるもの
あなたたちの息子を寄こして、コラボティの都へ
市場の商人たちが太鼓を打ち鳴らし、木の葉から果物が生っている
三人の老婆たちの国を抜けて、赤い川の水」
オウムの飾りがついた船はとても遠くに行ってしまいました。
お后たちは口々に言いました。
「どこの国の王女でしょう?
いったいどこから来たの?
私の金色の月のような息子こそ、あなたの花婿にふさわしい」
このときオウムの飾りがついた船はさらに遠くに進んでいました。そしてお后たちに娘が言いま
した。
「私は王女コラボティ、雲のような髪の娘
あなたの息子を寄こして、コラボティの国へ
真珠の花飾りを手に入れて、太鼓を打ち鳴らしたら
その息子の花嫁となって、あなたの家に参りましょう」
オウムの飾りのついた船は、もう見えなくなりました。お后たちはすぐに王子たちに使いの者を
送りました。王子たちはポッキラージの馬を走らせて王宮に帰ってきました。
王様はこうしたいきさつを聞いて、孔雀の飾りのついた船を作るように命令を出しました。そし
て宮廷で謁見式を開きました。
―9
5―
大 橋 弘 美 ・ 森
日出樹
(6)
盛大な謁見式を開いた王様は居並ぶ人々の前に座りました。ブートゥムとブッドゥがそこに現れ
ました。扉の前で二人は呼び止められました。
「おまえたちは誰だ?」
ブッドゥが言いました。「僕は猿の王子!」
ブートゥムが言いました。「僕はふくろうの王子!」
扉の係は、扉を開けました。
するとブッドゥは一つ跳びで王様のひざに座りました。ブートゥムは飛んでいって王様の肩に留
まりました。王様はびっくりしてしまいました。集まっていた人々は「しっ、しっ、あっちに行け」
と言いました。
ブッドゥが呼びました。「お父さん!」
ブートゥムが呼びました。「お父さん!」
その場にいた人々は黙り込みました。王様の目からはぽたぽたと涙があふれてきました。王様は
ブートゥムの頬にキスしました。ブッドゥを二本の腕でしっかりと抱きしめました。
そして謁見式はお開きになり、ブッドゥとブートゥムを連れて王様は立ち上がりました。
(7)
なんて美しく飾りつけられた船でしょう。五本の旗がそれぞれはためく五隻の孔雀の飾りのつい
た船が河岸に横付けになりました。王子たちは船に乗り込みます。お后たちは五人の王子を王女コ
ラボティの国に送り出しました。
そのときブッドゥとブートゥムを連れて、王様が河岸にやって来ました。
ブッドゥが言いました。「お父さん、あれは何?」
王様が言いました。「孔雀船だよ」
ブッドゥが言いました。「お父さん、ぼくたちも孔雀船で行かせて。ぼくたちにも孔雀船をくださ
い」
ブートゥムが言いました。「お父さん、孔雀船をください」
お后たちはいっせいに立ち上がって言いました。
「誰が船をやるものか。下働き女の子供などに」
「誰が船をやるものか。牛糞集め女の子供などに
おお、なんて嫌な生き物かしら。さあどこかに行っておしまい」
お后たちはブートゥムの頬をこぶしで殴りました。ブッドゥの頬を平手で打ちました。王様はも
はや何も言うことができませんでした。黙って立ち尽くすだけでした。
お后たちは怒ってぷりぷりしながら王様を連れて都に帰ってしまいました。
ブッドゥは言いました。「兄さん!」
―9
6―
『おばあさんのお話袋−ベンガルの昔話−』
(翻訳)
ブートゥムが言いました。「何だい?
弟よ」
ブッドゥは、
「さあ、ぼくらも小屋に帰ろう。そして孔雀船を作って王子たちが出かけたところへ、
ぼくたちも行こう!」と言いました。
ブートゥムが言いました。「よし、行こう」
(8)
昼も夜もなく泣きながら、ブートゥムのお母さんとブッドゥのお母さんは暮らしていました。お
母さんたちも王子たちが孔雀の飾りのついた船で王女コラボティの国へと旅に出たことを知りまし
た。二人はお互いの肩を抱いてさらに泣きました。
さんざん泣いた二人は川岸にやってきました。それから二人はシュパリの実の殻で作った舟に二
枚の小銭と米とドゥルバ草9を乗せ、船の前と後ろに赤い印をつけて流しました。
ブッドゥのお母さんが言いました。
「ブッドゥよ、私の息子
私がいったい何をしたというの?
何の罪で打ち捨てられ、苦しまなければならないの?
オウムの船を追って、孔雀の船が行く
私の息子よ、母のこの船に乗って行きなさい
神様、どうかお守り下さい
私の息子のためにこの米とドゥルバ草を捧げます」
ブートゥムのお母さんが言いました。
「ブートゥムよ、私の息子
私がいったい何をしたというの?
何の罪で打ち捨てられ、苦しまなければならないの?
オウムの船を追って、孔雀の船が行く
私の息子よ、母のこの船に乗って行きなさい
神様、どうかお守り下さい
私の息子のためにこの米とドゥルバ草を捧げます」
シュパリの実でできた小舟は川を流れていきます。泣きながらブートゥムのお母さんとブッドゥ
のお母さんは小屋へと帰って行きました。
(9)
小屋を目指して帰っていく途中、ブートゥムとブッドゥは見つけました。二隻のシュパリの実の
小舟が流れてくるではありませんか。
ブッドゥが言いました。「兄さん!
あれは僕たちの舟じゃない?
―9
7―
あの舟に乗ろう!」
大 橋 弘 美 ・ 森
日出樹
ブートゥムが言いました。「乗ろう!」
そしてブートゥムとブッドゥの二匹は二隻の小舟に乗り込みました。二人の兄弟の小舟はやがて、
あの孔雀の飾りがついた船団のところに流れつきました。
船に乗っていた人たちが小舟に気がついて言いました。「なんと、これはまたどうしたことだ?」
ブッドゥとブートゥムが口々に言いました。「僕たちはブッドゥとブートゥムだ」
ブッドゥとブートゥムの小舟も進んでいきます。
(1
0)
さて王子たちはどうしているでしょう?
王子たちの孔雀船は、旅を続けるうちに三人の老婆た
ちの国に到着しました。すると三人の老婆たちの三人の年老いた兵士がやってきて、船を泊めさせ
ました。そして五隻の孔雀船に乗っていた船頭や船乗り、お付の兵士たち、五人の王子たちみんな
を袋のなかに押し込んで三人の老婆たちのもとに連れて行ってしまいました。
三人の老婆たちは、捕まえてきた全員に不思議な水を飲ませました。すると全員いびきをかきな
がら眠ってしまいました。
真夜中になって目覚めた王子たちは三人の老婆たちのお腹の中にいたのです。そして話し始めま
した。
「おい兄弟たちよ。生まれてきた時みたいに、僕たちは老婆のお腹のなかだ。お母さんには二度
と会えないよ。お父さんにも会えないよ」
そのとき誰かがやって来て、ゆっくりと呼びかけました。「兄さん、ねえ兄さんたち」
王子たちはこそこそと答えました。「兄って誰のことだ?
僕たちは老婆のお腹のなかだよ」
お腹の外から返事が聞こえます。「僕の尻尾をつかんで」「僕の尾羽をつかんで」
王子たちは尻尾をつかんで、または尾羽をつかんで老婆の鼻の穴から外に出てきました。出て来
て見ると、助けてくれたのはブッドゥとブートゥムです。
ブッドゥは言いました、「さあ静かに。急いで老婆の首を切り落としてしまって!」
王子たちは言われたとおりにしました。それから王子たちは船頭や船員たち全員を連れて老婆の
家の外に出ました。そして全員を孔雀船に乗せると帆を上げさせました。
ブッドゥとブートゥムには、何一つたずねようとする者はありませんでした。
(1
1)
孔雀の飾りのついた船団は一晩中航海を続けました。そして朝には赤い川の国に到着しました。
赤い川には岸辺が見当たりません。ただ赤い水が流れるばかりです。船の船頭たちは方角がわから
なくなってしまいました。五隻の孔雀船は、さまよっているうちに海に出てしまいました。王子た
ちや船頭、船員たち全員がどうしていいのかわからなくなって泣き言を言い出しました。
七日七晩の間、孔雀船は海の上を行ったり来たりしました。最後にはどうしようもなくなりまし
―9
8―
『おばあさんのお話袋−ベンガルの昔話−』
(翻訳)
た。みんなもう死にそうです。王子たちは言いました。
「ああ兄弟たちよ。弟のブッドゥがいてくれ
たら、きっと今日助けてくれるのに」「ああ兄弟たちよ。弟のブートゥムがいてくれたら、今すぐ助
けてくれるのに」
「なんだって、兄弟たちよ!
いったいどうしてほしいって?」
こう言いながら、ブッドゥとブートゥムが自分たちのシュパリの小舟を孔雀船の後ろに結ぶと、
船上の王子たちのそばにやって来ました。そして船頭たちに言いました。
「北の方角に向けて、帆を
上げて下さい」
見る見るうちに、孔雀船は海の上を進み岸辺へとたどりつきました。川の水はきらきらと輝いて
いました。川の両岸にはマンゴーやジャックフルーツの木がたくさんあります。王子たち一行はマ
ンゴーやジャックフルーツの実をお腹いっぱい食べて、元気を取り戻しました。
すると王子たちは言いました。「孔雀船の上に、どうして猿やふくろうがいるんだろう? 二匹を
川に投げ入れろ!」そして孔雀船につながれていたシュパリの小舟を切り離して、流してしまいま
した。川の上を孔雀船は再び動き出しました。
さらに進んでいくと、船はある場所に差し掛かりました。すると五隻の孔雀船と5人の王子たち、
船頭たちや船員たち、兵士たち全員が水のなかに吸い込まれて沈んでしまいました。彼らがそこに
いたという印は何も残りませんでした。
しばらくしてブッドゥとブートゥムの小舟がその場所にやって来ました。
ブッドゥが言いました。「ねえ、兄さん」
ブートゥムが言いました。「なんだい?」
ブッドゥが言いました。「なんだか変な気持ちがするんだ。ここで何かがあったみたいだ。よし、
ちょっと水の中に潜ってみよう」
ブートゥムが言いました。「本当だ。あの王子たちに何かあったみたいだ。でも僕は水のなかに潜
れないよ」
ブッドゥが言いました。「そんなことは言わなくてもわかっているよ。兄さんはここにいてね。僕
の腰にひもを結んでおくよ。僕がひもを引いて合図をしたら、ひもを上から引っ張ってね」
ブートゥムが言いました。「よし、それならできるよ」
そしてブッドゥが川の水の中に潜りました。ブートゥムはひもをくちばしにくわえて座って待つ
ことにしました。
(1
2)
水の中を進んで行くと、ブッドゥは地底の国に着きました。大きなトンネルがあります。ブッドゥ
はそのトンネルの中を降りて行きました。
トンネルを抜けてブッドゥが見たのは、壮大な都です。まるでインドラ神の住む都のように立派
―9
9―
大 橋 弘 美 ・ 森
日出樹
です。
でもその都には人影がありません。誰も住んでいないのでしょうか。たった一人、年が百歳くら
いのおばあさんが座って一枚の小さな布に刺繍をしていました。おばあさんはブッドゥを見ると、
ブッドゥの体にその刺繍の布を投げかけました。すると何千人もの兵士が現れて、ブッドゥを縛り
上げて、都の中に連れて行きました。
兵士たちは、小さな暗闇の部屋の中にブッドゥを閉じ込めました。その小部屋の中では、
「弟のブッ
ドゥじゃないか。さあこっちにおいで。さあこっちにおいで」と言いながらたくさんの人たちがブッ
ドゥを囲みました。それは王子たちと船に乗っていた人たちでした。
ブッドゥは言いました。「本当だ。ああ、会えて良かった」
翌日、ブッドゥは歯をむき出した顔で死んでいました。王子たちに毎日食事を運んでくる召使が
いました。その召使がいつものようにやって来て、暗闇の小部屋の中で一匹の猿が死んでいるのを
見つけました。召使は小部屋から死んでいる猿を外に捨てました。
それから何が起こったのでしょう。ブッドゥがゆっくりと目を少しだけ開けました。ブッドゥが
死んだなんて嘘でした。あちらこちらを見回してから、ブッドゥは立ち上がりました。立ち上がっ
たブッドゥは、大きな宮殿の三階で雲のような髪をした赤い実のように美しい娘が金色のオウムと
話をしているのに気がつきました。
ブッドゥは木の枝を伝って宮殿の屋根に登り、美しい娘の背後に立ちました。そのとき、美しい
娘は言いました。
「金色の鳥よ、ねえオウムさん。あれは嘘だったのね
銀の櫂、ダイヤモンドの帆の船に乗って、誰も来ないわ」
王女の額には、真珠の花飾りがありました。ブッドゥはゆっくりと、真珠の花飾りを持ち上げま
した。
するとオウムが言いました。
「赤い実のように美しい娘、雲のような髪の娘よ
自分の身に何が起こったか、おまえの真珠の花飾りはどこにある?」
王女は自分の額に手を当ててみました。真珠の花飾りがありません。
オウムが言いました。
「王女コラボティ、心配することはない
顔を上げて見てごらん、おまえの花婿を」
コラボティは驚いて後ろを振り返りました。猿がいます。コラボティは身につけていた腕輪をは
ずして猿に投げつけました。編んでいた雲のような髪はほどけて、王女コラボティは床に倒れてし
まいました。
でも王女に何ができるでしょう。三人の老婆たちの国を抜けて、赤い水の川を越えて、刺繍をし
ている老婆の暗闇の小部屋を抜け出して、王女の王国にたどり着き、そして真珠の花飾りを手に入
―1
0
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『おばあさんのお話袋−ベンガルの昔話−』
(翻訳)
れた者を自分の夫にすると自分が約束したのです。真珠の髪飾りを取られてしまったら、もうどう
することもできません。コラボティは立ち上がって、猿の首に結婚の約束の花輪を掛けました。
ブッドゥは笑いながら言いました。「王女よ、今君は誰のもの?」
王女は言いました。「前は私の両親のものでした。それからは自分自身のもの。そして今はあなた
のものです」
ブッドゥは言いました。「それでは、僕の兄たちを自由にして下さい。それから僕の家に一緒に来
て下さい。僕のお母さんはとても苦労しています。あなたが来てくれたら、きっと楽になるでしょ
う」
王女は言いました。「今からあなたの言うと通りにしましょう。でもあなたは私をすぐに連れて行
ける訳でありません。私はこの小箱の中に入ります。あなたは小箱に入ったままの私を連れて行か
なければなりません」
ブッドゥは言いました。「よし、わかった。そうしましょう」
王女は小箱の中に入ってしまいました。
そのときオウムがいそいで太鼓のところに飛んで行き、太鼓を打ち鳴らしました。すると見る見
るうちに都の中に、大きな市場が出現しました。王女が入っている小箱は、市場の小箱屋の小箱に
まぎれて消えてしまいました。
ブッドゥはこれを見て面白いと思いました。ブッドゥは太鼓を手に取ると、打ってみました。太
鼓の右側を叩くと、にぎやかな市場が現れます。反対に左側を叩くと市場が消えてしまいます。ブッ
ドゥは目を閉じて座ると、太鼓を打ち鳴らし始めました。市場の店主たちは、ブッドゥが右側を叩
くとお店を開き、左側を叩くと店じまいをします。ブッドゥがめちゃくちゃに太鼓を叩くので、店
を出したり、たたんだりと大忙しです。商人たちはすっかり疲れ果ててしまい、もう何もできませ
ん。「どうか太鼓を叩くのを止めて下さい。もう王女の入った箱を隠したりしません」
ブッドゥが太鼓の左側を叩くと、市場は消えてしまいました。ぽつんと王女の入っている小箱だ
けが取り残されていました。
ブッドゥはまだ太鼓を放しません。太鼓を叩いて小箱のところに行って、王女を呼びました。
「王
女よ、王女、眠っているのかい?
あなたの花婿が太鼓を持って来たよ」
王女が小箱の中から現れて言いました。「私はとてもお腹がすきました。木の葉になっている果物
を取って来て下さい。それを食べましょう」
ブッドゥは言いました。「よし、取って来よう」
王女は小箱の中に入りました。ブッドゥは太鼓を肩にかけ、手には小箱を持って果物を取りに向
かいました。
果物の木のところに着きました。その木の葉の先端にはさまざまな種類の果物がなっています。
果物を見ると、ブッドゥも食べたくなりました。ところがなんてことでしょう。一匹の大蛇が木の
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0
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大 橋 弘 美 ・ 森
日出樹
幹に巻きついて、シュウシュウと牙を見せています。
ブッドゥはゆっくりと木の周りを回ってから、少し走りました。ブッドゥの腰にはひもが巻かれ
ていました。ブッドゥはそのひもを大蛇の上から巻きつけて引っ張り、大蛇を二つに切ってしまっ
たのです。それからブッドゥは木に登って、葉の先になっていた果物を地面に振り落としました。
そして王女を呼びました。
果物を手に入れたブッドゥを見た王女は言いました。
「もうこれで終わりです。すべて成し遂げら
れました。さあ、あなたの家に連れて行ってください」
ブッドゥは言いました。「いいえ、すべてが終わっていませんよ。捕らわれの王子たちと刺繍おば
あさんの刺繍布も持って行かなければなりません」
王女は言いました。「持って行きなさい」
そして五人の王子たちと船頭と船員、兵士たち、孔雀船すべてを連れて、太鼓を肩に、手には小
箱を持ち、真珠の花飾りを耳に、刺繍布を体にかけてブッドゥは果物を食べながら腰に巻いたひも
を引っ張りました。
ブートゥムにはブッドゥが戻って来ようとしているのがわかりました。ブートゥムがひもを引っ
張り上げました。五人の王子たち、船頭と船員、兵士たち、全員を連れてブッドゥが現れました。
船頭と船員たちは掛け声をかけて船の帆を上げます。ブッドゥは船の屋根に座りました。ふくろ
うは孔雀船のマストに止まります。
今度は全員が孔雀船に乗って、自分の国を目指します。
船の屋根の上では、ブッドゥが目を細めてしばしば小箱のふたを開けて誰かと話をしています。
これに気がついた船頭が王子たちにブッドゥのことを教えました。
船頭の話を聞いた王子たちは何も言いませんでした。でも夜になって皆が眠りについて、ブッドゥ
とブートゥムも眠っている時をねらっていたのです。王子たちはこっそりと近づき小箱をブッドゥ
から取りました。そして体に太鼓と刺繍布をつけたままのブッドゥを海に突き落としました。マス
トに留まっていたブートゥムには矢を射かけました。ブッドゥとブートゥムは海に落ちて流されて
しまいました。
それから小箱を開けてみると、中から雲のような髪をした赤い実のように美しい王女が現れまし
た。
王子たちが言いました。「王女よ、今あなたは誰のもの?」
王女が言いました。「太鼓を持っている人のもの」
これを聞いた王子たちが言いました。「そんなことは関係ない。王女を閉じ込めておけ」
いったい何ができるでしょう。王女は孔雀船の中の部屋に閉じ込められてしまいました。
(1
3)
孔雀船が故郷の岸に着きました。たくさんの人々がそれぞれに美しく装い集まりました。王様も
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0
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『おばあさんのお話袋−ベンガルの昔話−』
(翻訳)
来ました。お后たちも来ました。王国中の人々が河岸に集まりました。雲のような髪をした赤い実
のように美しい娘を連れて王子たちが戻って来ました。
お后たちは米とドゥルバ草をまいて、五つのともし火を手にして、ほら貝を吹いて王女コラボティ
を大切に宮殿に迎えました。
お后たちは言いました。「王女よ、あなたは誰のもの?」
王女は答えました。「太鼓を持っている人のもの」
「太鼓を持っているのは、ヒラ王子かしら?」
「いいえ、違います」
「太鼓を持っているのは、マニク王子かしら?」
「いいえ、違います」
「太鼓を持っているのは、モティ王子かしら?」
「いいえ、違います」
「太鼓を持っているのは、ションコ王子かしら?」
「いいえ、違います」
「太鼓を持っているのは、カンチョン王子かしら?」
「いいえ、違います」
お后たちは言いました。「それならおまえを切りきざんでしまうよ」
王女は言いました。「私は一ヶ月間、願掛けの祈り10をしなくてはなりません。その後、あなたた
ちの好きなようにして下さい」
王女の一ヶ月の願掛けが始まりました。
(1
4)
ブッドゥのお母さんとブートゥムのお母さんは長い間泣き暮らして、もう死んだような有様で
した。ついに二人は川に行って、身投げしてしまおうと考えました。
その時です。一方からブッドゥの呼ぶ声がします。「お母さん!」
もう一方からブートゥムの呼ぶ声がします。「お母さん!」
貧しく不幸な二人の母親が振り返りました。
私の宝物の宝石のようなブッドゥが帰って来た!
私の宝物の宝石のようなブートゥムが帰ってきた!
ブッドゥとブートゥムのお母さんは気が触れたように走って行って、二人をそれぞれの胸に抱き
しめました。ブッドゥとブートゥムの涙と二人のお母さんの涙を合わせたら、大洪水になるくらい
でした。ブッドゥとブートゥムは懐かしい小屋に戻って来たのです。
あの不思議な太鼓のことを覚えていますか?
翌日、動物園の下働き女と牛糞集め女の小屋の前
に突然、にぎやかな市場ができていました。これを見た人々は驚きました。
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大 橋 弘 美 ・ 森
日出樹
またその次の日、動物園の下働き女と牛糞集め女の小屋の周りの木々の葉の先に果物が生ってい
ました。これを見た人々は不思議がりました。
さらにまたその次の日、動物園の下働き女と牛糞集め女の小屋の前に警護の兵士が立っています。
これを見た人々はびっくり仰天しました。
この知らせは王様の耳にも入りました。
ちょうどその時王女コラボティもやって来て、王様に言いました。
「大王様、私の願掛けのお祈り
が終わりました。私を殺すのでしょうか?
切り捨てるなら、どうぞ切って下さい」
これを聞いた王様の目が大きく開きました。王様にはすべてがわかっていたのです。
王様は言いました。「娘よ。私はすべてわかっている。四番目のお后と七番目の小さなお后を、太
鼓を打ち鳴らして盛大に祝って連れて来なさい」
すぐさま国中の太鼓が打ち鳴らされました。王女コラボティは新しい水で沐浴をして、新しい服
に着替え、願掛けに使った米とドゥルバ草を頭に乗せて、二人のお后を迎えるために自ら出かけま
した。
兵士たちを従え、太鼓を打ち鳴らして、王女コラボティが四番目のお后と七番目の小さなお后を
連れて都に戻って来ました。ブッドゥとブートゥムも一緒です。二匹は王様にご挨拶をしました。
その次の日、とても華やかに雲のような髪をした赤い実のように美しい王女コラボティとブッドゥ
の結婚式が挙げられました。また別の国の王女ヒラボティとブートゥムの結婚式も挙げられました。
五人のお后たちはもう部屋から出て来ることはありません。五人の王子たちも自分たちの部屋の
扉を開けることはありません。王様は五人のお后と五人の王子の部屋にかんぬきをかけて閉じ込め
てしまいました。
何日かが過ぎ去りました。ある夜のことです。ブッドゥの部屋ではブッドゥが、ブートゥムの部
屋ではブートゥムが眠っています。コラボティもヒラボティも眠っています。ところが真夜中にヒ
ラボティとコラボティがそれぞれ目を覚ますと、ヒラボティの部屋からブートゥムが、そしてコラ
ボティの部屋からブッドゥが消えていました。いったい何が起きたというのでしょう。コラボティ
は部屋のベッドの上に猿の皮を見つけました。そしてヒラボティはベッドの上にふくろうの羽を見
つけました。
なんてことでしょう。二匹は、本当は猿でもなければ、ふくろうでもなかったのです。二人の娘
は考えました。いろいろと考えた末、そっと覗いてみることにしました。すると二人の王子が馬に
乗って国中を見回っていたことがわかりました。二人の王子の姿は神様の息子のように美しい姿で
した。
二人の娘は相談した結果、急いで猿の皮とふくろうの羽を火で燃やしてしまいました。燃やした
煙のにおいが外に漏れました。
このにおいをかぎつけて、王子たちが馬から下りて走ってやって来ました。走ってきた王子たち
は言いました。「なんてことをしてくれたんだ。もう終わりだ。サニヤーシーの秘密の呪文で変装し
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『おばあさんのお話袋−ベンガルの昔話−』
(翻訳)
ていたのに。神様の都にだって行くことができたのに。国中の見回りだってできたのに。もうそん
なことが全部できなくなってしまった。もう猿やふくろうの姿になることもできない。なんてこと
だ。全部ばれてしまったなんて」
二人の王女は恥ずかしそうにほほえんで言いました。
「それがどうしたって言うの? これで丁度
良くなったじゃないの。元々猿じゃないでしょ。元々ふくろうじゃないでしょ。私たちどうしたら
良かったと言うの?」
二人の王女の部屋でそれから何があったのでしょう?
とにかくめでたくその日は終わったので
す。
その次の朝、人々は驚きました。神様のような姿をした金色の月のような二人の王子が王様の両
側に座っていたのです。これを見た人々はびっくりするやら嬉しいやらで大騒ぎです。
王女コラボティが言いました。「この方は猿の皮をかぶって暮らしていたのです。昨日の夜、私が
それを燃やしてしまいました」
また王女ヒラボティが言いました。「この方はふくろうの羽を身につけて暮らしていたのです。昨
日の夜、私がそれを燃やしてしまいました」
これを聞いた人々は感謝しました。
それからどうなったでしょう。
ブッドゥの名前が変わりました。知恵のあるブド王子。
ブートゥムの名前が変わりました。麗しのルプ王子。
それから四番目のお后と七番目の小さなお后、ブド王子とルプ王子、王女コラボティと王女ヒラ
ボティと一緒に王様は幸せに暮らしました。
第二話 カンコンマーラー、カンチョンマーラー
(1)
あるところに王子と牛飼いがいました。二人は友達でした。ある日王子は重大な決心をしました。
自分が王様になったら、その時は友達の牛飼いを自分の大臣にしようと。
牛飼いは言いました。「ああ、いいよ」
二人は本当に仲良しでした。牛飼いが野原で牛に草を食べさせる時には、牛の近くの木の下に仲
良く並んで座りました。そして牛飼いは笛を吹きます。王子はそれを聞きます。こうして日々は過
ぎていきました。
(2)
王子が王様になる日がきました。王様になった王子は結婚しました。お后はカンチョンマーラー
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大 橋 弘 美 ・ 森
日出樹
という名前です。宝物庫にはたくさんの宝石が光っています。どこの誰かもよくわからない牛飼い
が友達だったなんて、いったい誰のことでしょう。王様になった王子はもはや牛飼いのことを思い
出しもしませんでした。
ある日のこと、牛飼いがやって来て宮殿の門の前で座り込んで言いました。
「友達のお后がどんな
人か、会わせてもらってないよ」門番は、
「さあ、あっちへ行かないか」と牛飼いを追い払いました。
深く心が傷ついた牛飼いはどこかへ消えてしまいました。どこに行ってしまったのか、誰も知りま
せんでした。
(3)
次の日、眠りから覚めた王様が目を開けようとすると、目を開けることができません。何が起き
たのでしょう?
お后が気がつきました。みんなも気がつきました。なんと王様の顔中が針だらけ、
体中も針だらけ、髪の毛までもが針に変わっていました。これはどうしたことでしょう。国中が悲
しみに包まれました。
王様は食べることもできなければ、横になることもできませんし、話をすることもできません。
実は王様にはわかっていました。友達の牛飼いを大臣にすると約束したのに、その約束を破ったた
めにこんなことになったのです。でも今の王様には思っていることを誰かに言うこともできません。
針だらけの王様には国を治めることもできません。針だらけの王様は悲しくて下を向いて座って
いました。お后のカンチョンマーラーも悲しくてつらくて仕方ありませんでしたが、王様に代わっ
て国を治めることになりました。
(4)
ある日、お后は河岸に沐浴するために出かけました。そこへどこからともなく大変美しい娘がやっ
て来ました。娘は言いました。「お后さま、もし召使を買いたいと思っているなら、私がその召使に
なりましょう」お后は言いました。「針だらけの王様の針を抜くことができるなら、召使としておま
えを買いましょう」
娘は了解しました。
お后は腕にはめていた腕輪で、その娘を召使として買いました。
召使は言いました。「お后さま、あなたはずいぶんやせてしまいましたね。どれくらいの間かわか
らないけれど、十分な食事も取らず、体のお手入れもしていませんね。身につけている飾りが曲がっ
ているし、頭の髪の毛ももつれていますよ。その飾りをはずしてしまって下さいな。せっけんをた
くさん使って、きれいにしてあげましょう」
お后は言いました。「いいのよ、このままで。沐浴なら済ませたわ」
召使はお后の言うことを聞きません。お后の身につけていた飾りをはずして、せっけんを塗りつ
けました。それから言いました。「お后さま、さあせっけんを流します。頭まで水に浸かってくださ
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『おばあさんのお話袋−ベンガルの昔話−』
(翻訳)
いな」お后は川の中の首まで水が来るあたりまで入りました。そして水の中に頭からもぐりました。
召使はたちまちの内に、お后の服を着て、お后の飾りを身につけ、河岸に立つと大きな声で言いま
した。
「召使、水の中には水鳥みたいな召使
岸辺にいるのは、美しい花嫁
王様のお后はこのカンコンマーラー
召使、いったいいつまでもぐっているつもりなの?」
水から浮かび上がったお后は見ました。あの召使がお后になっていました。そして、お后だった
自分が召使になっていたのです。召使になってしまったお后は思わず自分の額をこぶしで叩きまし
た。それから髪の毛が濡れたまま、震えながらカンコンマーラーと一緒に宮殿に戻りました。
(5)
宮殿に戻ると、カンコンマーラーは大声でわめき散らしました。宰相にはこう言いました。
「私が沐浴から戻って来るというのに、象や馬をきれいに飾り立てて迎えに来なかったのはどうし
てなの?」大臣にはこう言いました。「私は沐浴に行こうとしているのよ。それなのに駕籠を私の元
に寄こさないのはどういう訳なの?」そして宰相と大臣の首を切らせてしまいました。
人々は驚きました。これはいったい何が起きたのでしょう?
怖くて誰も何も言うことができま
せん。召使のカンコンマーラーがお后になってしまいました。お后カンチョンマーラーは召使にさ
れたままです。王様はこのことを少しも知りませんでした。
(6)
カンチョンマーラーはごみ置き場の片隅に座って魚を切りながら、泣いていました。
「腕にはめていた腕輪で、召使を買っただけなのに
その召使がお后になり、私は召使になってしまった
いったい何をしたというの、金の王国が灰になってしまった
いったい何をしたというの、ああ私カンチョンマーラーは運から見放されてしまった」
お后は涙を流して泣きました。
王様の苦しみには終わりがありません。体の回りをハエがぶんぶん飛んでいます。針の痛みで体
も頭もずきずきします。そんな王様から誰がハエを追い払ってくれるのでしょうか?
誰がお薬を
くれるのでしょうか?
(7)
ある日、せっけんで服を洗濯するために、カンチョンマーラーは河岸に行きました。ふと気がつ
くと、一人の男が一塊の糸を手にして木の下に座りながら、こう言っています。
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大 橋 弘 美 ・ 森
日出樹
「もしも千本の針が手に入ったら、スイカを食べよう
もしも五千本の針が手に入ったら、市場に行こう
もしも十万本の針が手に入ったら、王座を誰かにあげよう」
これを聞いたお后はゆっくりと近づいて言いました。
「ねえ、誰かは知らないけど、もしも針が欲
しいなら、私があげられるわ。ところで針を抜くことができるかしら?」
男は黙ったまま糸の包みを手に取って、お后と一緒に行きました。
(8)
宮殿への道を歩きながら、カンチョンマーラーはその男に自分の悲しい身の上についてすべて話
しました。これを聞いた男は言いました。「よし、わかりましたよ」
宮殿に着くと、男は偽のお后に言いました。「お后様、お后様。今日はピタのお菓子11を配る決ま
りになっている日です。国中にお菓子を配らなくてはいけませんよ。私が糸を赤と青に染めてあげ
ましょう。あなたに差し上げます。中庭にはアルポナ12の絵を描いて美しく飾って下さい。召使たち
を呼び集めましょうか?」
偽のお后は嬉しくなって我を忘れてしまいました。
「それは是非ともお菓子を配らなくては。召使
たちに今日はピタのお菓子を作らせましょう」そして偽のお后は召使にされている本物のお后と一
緒にお菓子を作り始めました。
ところが偽のお后ときたら、どんなお菓子を作ったことでしょう。材料を選ばず、手荒に作った
いかにもまずそうなお菓子です。本物のお后は形が美しく整った、良い香りのするなんともおいし
そうなお菓子を作りました。
男はこれでどちらが本当のお后と本当の召使であるかがわかりました。
ピタのお菓子をたくさん作ってから、二人は中庭にアルポナの絵を描き始めました。偽のお后は
一山の米を荒く砕いて、それを七つの壷の水で溶いて絵の具を作りました。それから、ばさばさし
た草の束を筆代わりにして、中庭中に絵の具を塗りつけました。こちらで草の束を一振りしたかと
思うと、あちらで草の束を一振りするといった具合です。
一方、召使にされている本当のお后は中庭の片隅をほうきできれいに掃いてから、わずかな米の
粉にちょっぴりの水を混ぜて絵の具を作りました。小さな布きれに絵の具を含ませると、ゆっくり
と蓮の花とつる草の模様を描きました。蓮の花の横には、金色の七つの壷を描きます。壷の上には
王冠を、両側に稲の束を、その他孔雀や人形、ロッキ(ラクシュミー)女神の足跡など、すべてき
ちんと描きました。
すると男は偽のお后カンコンマーラーを呼んで言いました。
「この召使め。どうやってお后になりすましたのだ
腕輪で買われた召使よ
買われたはずの召使がお后で、本物のお后が召使
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『おばあさんのお話袋−ベンガルの昔話−』
(翻訳)
大きな望みを持ったものだ。もう正体はわかったぞ」
カンコンマーラーはかっとなって怒りました。カンコンマーラーは大声でわめきました。
「いった
いおまえは何者よ。さっさとどこかに行っておしまい」
それから首切り役人を呼んで言いました。
「あの召使とどこの誰かもわからないあの男の首をはね
てしまいなさい!
あの者たちの血で沐浴すれば、私カンコンマーラーが本物のお后になれるわ」
首切り役人が召使にされている本当のお后と男を捕まえました。すると男は手に持っていた包み
を開いて言いました。
「糸よ、糸、もつれた糸よ
王様の王国は、今やひとつかみの土
糸よ、糸、持ち主の言うことを聞け
首切り役人を縛ってしまえ」
ひと塊の糸が首切り役人をぐるぐる巻きにして縛ってしまいました。
男はまた言いました。「糸よ。おまえは誰のものだ?」
糸が言いました。「糸の包みの持ち主のものです」
男は言いました。
「糸よ、私の願いを聞け
カンコンマーラーの鼻のところに行け」
ふた塊の糸が飛んでいって、カンコンマーラーの鼻にくっついてしまいました。カンコンマーラー
は慌てて立ち上がると言いました。「扉を閉めなさい。扉を閉めなさい。この男は頭がおかしいので
す。あの召使がこの男を連れて来たのよ」
頭がおかしいと言われた男は呪文を唱えていました。
「糸よ、糸。おまえたちの家はどこにある?
十万本の針の王様の所に行って、針に自分を通しなさい」
みるみるうちに、するすると十万本もの糸が王様の体に刺さっている針に自分を通しました。
すると針が言いました。
「糸の命は針次第、何を刺してあげましょう?」
男は言いました。「雇われ召使、カンコンマーラーの口と目を」
王様の体にあった十万本の針が抜けました。十万本の針はカンコンマーラーの口や目を縫ってし
まいました。カンコンマーラーは身もだえしました。
王様は目を開いて見ました。そこに立っていたのは友達の牛飼いではありませんか。
王様は友達の牛飼いを抱きしめました。王様の目から涙があふれ出ました。牛飼いの目からも涙
があふれ出ました。
王様は言いました。「友よ。私のあやまちを許してくれ。たとえ百回生まれ変わったとしても、君
のような友達は得られないだろう。今日から君が私の大臣だ。君を見捨ててしまってから、どんな
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に苦労したことか。これからは一緒だ」
牛飼いは言いました。「ああ、わかったよ。ところであの笛をなくしてしまったんだ。笛をぼくに
くれるかい?」
王様は牛飼いのために金の笛を作らせました。
それから針の痛みで、日夜苦しんだカンコンマーラーは死んでしまいました。本当のお后カンチョ
ンマーラーの不幸は消えたのです。
大臣になった牛飼いは、一日中大臣の仕事をするようになりました。でも夜になって、月の光で
空が満たされると、王様と一緒にあの河岸の木の下に座って金の笛を吹きます。王様は牛飼いと一
緒に座って、今は大臣になった友達の笛の音を聞きます。
王様と大臣になった牛飼い、お后カンチョンマーラーは幸せに暮らしました。
第三話 チョンパの花とパルルの花
(1)
あるところに王様と七人のお后がいました。年かさのお后たちはたいへんうぬぼれが強い人たち
でした。一番年下の小さなお后はとても物静かな人でした。ですから王様は小さなお后を誰よりも
大切にしていました。
しかし長い間、王様には子供ができませんでした。いったい誰がこの大きな国を継いでくれるの
でしょう?
王様はとても心配していました。
さて、このように月日は過ぎ去りました。どれくらい経ってからか、小さなお后に子供が生まれ
ることになりました。王様は嬉しくて仕方がありません。伝令の兵士を呼んで、国中にお触れを出
しました。子供が生まれたら、王様の宝物庫を開いて、お菓子でも宝物でも何でも持てるだけ持っ
て行ってよいというのです。
一番目のお后たちは、ねたましくて体が燃えてしまいそうなほどでした。
王様は自分の腰と小さなお后の腰を、金の鎖で結んで言いました。
「子供が生まれたら、この鎖を
引っ張りなさい。そうしたらすぐに子供の顔を見に来よう」そう言うと、王様は謁見の間へ行って
しまいました。
小さなお后は子供が生まれるので、そのための産屋で過ごします。誰が小さなお后のお世話をす
るのでしょう?
一番目のお后たちは言いました。
「小さなお后に子供が生まれるのでしょう。それ
なら、他の者ではなく、私たちがお世話をしてあげましょう」
一番目のお后は産屋に行くとすぐに金の鎖を引っ張りました。すぐさま宮廷の会議は中断され、
太鼓が打ち鳴らされて、贈り物を手にしたバラモン司祭と一緒に王様がやって来ました。ところが
子供は生まれていません。
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『おばあさんのお話袋−ベンガルの昔話−』
(翻訳)
王様は、会議に戻りました。
王様が会議の席に座ったかと思うとすぐに再び金の鎖が引っ張られました。
王様はまた走って行きました。ところが今度も子供は生まれていません。これには王様も怒って
言いました。「子供が生まれていないのに今度また鎖を引っ張ったら、お后たちを皆切ってしまうか
らな」こう言って王様は立ち去りました。
ひとりまたひとりと小さなお后は七人の男の子とひとりの女の子を生みました。子供たちはなん
てかわいらしいのでしょう。月の光でできたお人形さんのようです。まるで花のつぼみのようです。
手足を少しばたばた動かしただけで、産屋の中にたくさんの光が射しこんだかのようです。
小さなお后がゆっくりと言いました。
「お姉さま方、どんな子供が生まれたのか、見せて下さいな」
一番目のお后たちは小さなお后の顔のそばで、おおげさに手を振り、鼻飾りを揺らして言いまし
た。「人間の子供じゃなかったのよ。象の子が生まれたわ。あなたから人間の子供が生まれるのかし
ら?
他には何匹かのねずみと蟹の子供が生まれたわ」
これを聞いた小さなお后は気を失ってしまいました。
残酷な一番目のお后たちはもはや鎖を引っ張りませんでした。密かにお皿を持ってくると、子供
たちをそれに乗せて、ごみ捨て場に埋めてしまいました。それから金の鎖を引っ張りました。
王様は今度も太鼓を打ち鳴らし、贈り物を手にしたバラモン司祭たちと一緒にやって来ました。
一番目のお后たちは急いで何匹かの小さなカエルやねずみの子供を用意して、王様に見せました。
これを見た王様は火のように怒って、小さなお后を宮殿の外に追い出してしまいました。
一番目のお后たちは笑いが止まりません。嬉しさで踊りだし、足に付けた飾りの鈴が鳴り止みま
せん。もう自分たちの幸せの邪魔になるものはないのです。自分たちのねたみで小さなお后を宮殿
から追い出したというのに、残りの六人のお后たちは平気で楽しく暮らし始めました。
幸福から見放された小さなお后の悲しみは留まるところを知りません。まるで突然に木が裂けて
しまったり、大岩がぱっくり割れてしまったり、たくさんあったはずの川の水が干からびてしまう
ほどでした。小さなお后は、牛糞集め女になってさ迷い始めました。
(2)
このように月日は流れていきました。王様は幸せではありません。王国の人々も幸せではありま
せん。宮殿はひっそりと静まりかえり、庭には花も咲きません。お祭りも行われなくなりました。
ある日、庭師がやって来て言いました。「大王様。毎日神様にお供えするための花がひとつも咲か
なくなっていました。ところが今日、ごみ捨て場から七つのチョンパ13の花とパルル14の花が咲いて
います。とても美しいチョンパの花とパルルの花が咲いているのです」
王様が言いました。「それではその花を持ってまいれ。神様にお供えしよう」
庭師は花を取りに行きました。
庭師を見るとパルルの木の花がチョンパの花たちに言いました。
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大 橋 弘 美 ・ 森
日出樹
「七つのチョンパの花のお兄さんたち。さあ起きて」
そのとたん、チョンパの花たちが身じろぎして、答えました。
「妹よ、妹のパルルの花よ、なぜ呼ぶの?」
パルルが言いました。
「王様の庭師がやって来ました
さあお供えのお花をあげましょうか、それともあげるのはやめにしましょうか?」
七つのチョンパの花たちはするすると上に上がって、花びらを揺らして言いました。
「お花はあげません、あげません。さあ、高いところに上がってしまおう。
王様を連れて来たら、
そうしたら、お花をあげましょう」
これを見ていた庭師は驚いてしまいました。走って行って、王様にこのことを知らせました。
知らせを聞いた王様は宮殿のみんなを連れて、ごみ捨て場にやって来ました。
(3)
王様が花を摘みにやって来たとたん、パルルの花がチョンパの花たちに言いました。
「七つのチョンパの花のお兄さんたち、さあ起きて」
チョンパの花たちが答えます。「妹のパルルの花よ、なぜ呼ぶの?」
パルルの花が言いました。
「王様がやって来たわ。
お花をあげましょうか、それともあげるのはやめにしましょうか?」
チョンパの花たちが言いました。
「お花はあげません。あげません。さあ、高いところに上がってしまおう。
王様の一番目のお后を連れてきたら、
そうしたら、お花をあげましょう」
王様は一番目のお后を呼びにやりました。一番目のお后は、足首に付けた飾りを鳴らしながら
花を摘みにやって来ました。するとチョンパの花たちは言いました。
「お花はあげません。あげません。さあ、高いところに上がってしまおう。
王様の二番目のお后を連れてきたら、
そうしたら、お花をあげましょう」
それから二番目のお后がやって来ました。その次に三番目のお后がやって来ました。そして四番
目のお后がやって来ました。五番目のお后もやって来ました。でも誰も花を摘むことができません。
花たちは空に届くくらい高いところに上がってしまい、星のように美しく輝いていました。
王様はどうしたいいだろうかと地面に座りこんでしまいました。
最後に六番目のお后がやって来ました。すると花たちが言いました。
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『おばあさんのお話袋−ベンガルの昔話−』
(翻訳)
「お花はあげません。あげません。さあ、高いところまで上がってしまおう。
王様の牛糞集め女を連れてきたら、
そうしたら、お花をあげましょう」
それから牛糞集め女になった七番目の小さなお后が探し出されました。王様は兵士や駕籠担ぎた
ちを野原に送って、牛糞集め女を連れてきました。
小さなお后の手足は牛糞で汚れ、身につけているのは粗末な服でした。ですがそのままの姿で小
さなお后は花を摘みに行きました。すると、するするとチョンパの花たちは空から下に下りて来て、
パルルの花と一緒になりました。そして花の中から大変美しいお月さまのような七人の王子とひと
りの王女が「お母さん、お母さん」と言いながら、小さなお后の腕の中に飛び込んできました。
その場にいた人々は驚きました。王様の目からは涙がぽたぽたと落ちました。一方、六人のお后
たちは恐ろしくなって震え始めました。
王様は地面に掘った穴の中にとげを入れ、その中に六人のお后たちを入れてさらにとげでふたを
して埋めてしまうように命令を出しました。
王様は七人の王子とパルルの花のようにかわいらしい王女と小さなお后を連れて宮殿に帰りまし
た。宮殿では喜びの太鼓が響き渡りました。
1
´
Āstosh
Bhattācārya,
Bāmlār
Lok-Sāhitya Caturtha Khonda:
Kathā, n.d. Kolkātā, pp.47-49
!!
!
!!
2
Dakishinārañjan
Mitramajumdār, !Thākurmār Jhuli, n.d. Kolkātā,pp.11-12
!
3
ションデシュ菓子は、牛乳と砂糖を主原料とする伝統的な菓子。牛乳を酸で凝固させ水気を絞ったものに砂糖や香辛
料を加え固める。様々な形や味のヴァリエーションがある。
4
チョラ(chorā)とは、韻を踏んだ短い詩や呪文のような語句。子供のための言葉遊びのなぞかけや、意味のない音遊
びのようなものもある。
5
「月の光の花が咲いた」著者注によれば、本書を形容したラビンドラナート・タゴールの賛辞。ドッキナロンジョン
はタゴールの言葉を最高の賛辞と受け取った。他にも別の何人かから、
「月光の輝きが花開く」「お月さんの水晶のきら
めき」等表現されたと述べているが、タゴール以外の賛辞の送り主の個人名は書かれていない(前掲書 p.
1
5)
。
6
!
!
ベンガル文学協会(Bangı̄ya
Sāhitya Parishad)は1
8
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4年にコルカタに設立された。ベンガル語で書かれた写本の収集や
保存に着手した他、民俗学研究の発展に寄与した。Maraya Basu, Bānglā Sāhitye Rūpkathā-Carcā, 1980, Kalkātā, p.99
7
七人のお后たちの名前は、后の意味のラニを除いて、
「第一番目」を意味するボロ(bara)
、
「二番目」を意味するメジョ
!
(meja)
、「三番目」を意味するセジョ(seja)
、「四番目」を意味するノ(na)
、「新しく嫁いできた花嫁」の意味するコネ
!
(kane)
、「不幸な女性」を意味するドゥオ(duyo)
、「小さな」や「若い」を意味するチョト(Chota)という名前になっ
!
!
ている。ドゥオ・ラニはしばしば昔話に、薄幸な登場人物として描かれ、
「幸せな女性」を意味するシュオ・ラニ(suyo
rānı̄)と対で登場することが多い。
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日出樹
ビンロウジ。英名 betel nut。熱帯アジア産ヤシ科の植物の実を指す。南アジア一帯に見られる嗜好品パーンの材料のひ
とつ。パーンとは消石灰を塗ったキンマの葉に細かく砕いたビンロウジ等を包み込んだもの。
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ギョウギシバ。イネ科の多年生草。地面を這うように延びる茎が、地面に触れた節から根を出してさらに延びること
から、ヒンドゥー教の儀礼では繁栄の象徴として使用される。
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0「願掛けの祈り」はブロト儀礼の訳。ブロトは女性によって行われる願掛け儀礼。
1
1 ピタ(pitha)あるいはピテ(pithe)とも言う。米粉を練った生地に甘いココナツフレークを包んで揚げた菓子。
1
2 女性が儀礼に際して描く模様。地面や壁などに描かれる。アルポナには結婚式等で描かれる装飾的な意味合いの強い
比較的自由度の高いものと、儀礼にかかわる特定の文様に分けられる。装飾的なアルポナでは、蓮の花や魚、つる草と
いったモチーフが円形に描かれることが多い。
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3 キンコウボク。モクレン科常緑高木で、花は香りのある薄いクリーム色。
1
4 パルルの学名は Stereospermum suaveolens。ノウゼンカズラ科の中高木で香りのある赤い花を咲かせる。
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