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パンの製造・加工工程で大量に発生しその処置に困っているパン屑を

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パンの製造・加工工程で大量に発生しその処置に困っているパン屑を
JP 2006-174814 A 2006.7.6
(57)【 要 約 】
【課題】 パンの製造・加工工程で大量に発生しその処置に困っているパン屑を有効利用
して新規な調味食品を製造する方法を提供する。
【解決手段】 本発明によれば、パン屑と魚肉とを食塩および酵素製剤または米麹の存在
下で熟成させることにより味噌風の調味食品が製造される。
【選択図】 なし
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JP 2006-174814 A 2006.7.6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン屑と魚肉とを食塩および酵素製剤の存在下で熟成させることを特徴とする味噌風調
味食品の製造法。
【請求項2】
酵素剤として少なくともプロテアーゼを含む酵素剤を使用することを特徴とする請求項
1に記載の味噌風調味食品の製造法。
【請求項3】
パン屑と魚肉とを食塩および米麹の存在下で熟成させることを特徴とする味噌風調味食
品の製造法。
10
【請求項4】
熟成開始時のパン屑と魚肉との割合を、パン屑/魚肉の重量比にして1/10∼10/
1とすることを特徴とする請求項1∼請求項3のいずれかに記載の味噌風調味食品の製造
法。
【請求項5】
全熟成期間中に使用するパン屑の総量と魚肉の割合を、パン屑総量/魚肉の重量比にし
て1/1∼6/1とすることを特徴とする請求項1∼請求項4のいずれかに記載の味噌風
調味食品の製造法。
【請求項6】
食塩を、熟成組成物中の食塩濃度が常に5∼35(重量)%の範囲内となるように添加
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することを特徴とする請求項1∼請求項5のいずれかに記載の味噌風調味食品の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は未利用資源を利用した新規調味食品の開発に関するものであり、具体的には、
パン屑を主原料とし、魚肉を副原料として味噌風調味食品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
味噌は、日常最もよく使用される調味食品の一種であり、米麹を原料とする米味噌、麦
麹を原料とする麦味噌、大豆麹を原料とする豆味噌等が広く知られており、醸造法によっ
30
て「なめ味噌」と称される味噌風調味食品も製造されている(たとえば、下記非特許文献
1参照)。
一方、パンの製造工程や加工工程において、製造時の型崩れ品、裁断屑、残品あるいは
サンドイッチなどに加工する時に出るパンの耳などの形で、かなりの量のパン屑が副産物
として発生する。平成7年度の調査によると、年間のパン屑発生量は約3万トンと多く、
その約53%は飼料として使われているが、残りはほとんどが廃棄処分されているため、
これを有効活用する方法が模索されている。
【非特許文献1】 筒井知巳編「食べものと健康III 食品加工及び実習」104−1
07頁(平成14年6月25日、樹林房発行)
【発明の開示】
40
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の主な目的は、上記のようなパン屑を有効利用して新規な調味食品を製造する方
法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究の結果、パン屑を主原料とし魚肉を副
原料としてなめ味噌風の調味食品を開発することに成功し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、パン屑と魚肉とを食塩および酵素製剤または米麹の存在下で熟成
させることを特徴とする味噌風調味食品の製造法に係るものである。
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したがって、本発明には、以下の各方法が包含される。
(1)パン屑と魚肉とを食塩および酵素製剤の存在下で熟成させることを特徴とする噌風
調味食品の製造法。
(2)酵素剤として少なくともプロテアーゼを含む酵素剤を使用することを特徴とする上
記(1)の味噌風調味食品の製造法。
(3)パン屑と魚肉とを食塩および米麹の存在下で熟成させることを特徴とする味噌風調
味食品の製造法。
(4)熟成開始時のパン屑と魚肉との割合を、パン屑/魚肉の重量比にして1/10∼1
0/1とすることを特徴とする上記(1)∼(3)の味噌風調味食品の製造法。
(5)全熟成期間中に使用するパン屑の総量と魚肉の割合を、パン屑総量/魚肉の重量比
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にして1/1∼6/1とすることを特徴とする上記(1)∼(4)の味噌風調味食品の製
造法。
(6)食塩を、熟成組成物中の食塩濃度が常に5∼35(重量)%の範囲内となるように
添加することを特徴とする上記(1)∼(5)の味噌風調味食品の製造法。
【0005】
本発明の方法においては、主原料としてパン屑を使用する。パン屑としては、たとえば
、パンの製造工程や加工工程において発生する、製造時の型崩れ品、裁断屑、残品などや
、サンドイッチなどの製造時に出るパンの耳などが使用される。かかるパン屑としては食
パンを起源とする屑が適当である。
本発明の方法では、原料となるパン屑のサイズが大きいときは、仕込み用の容器の大き
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さに応じ、仕込みに適した大きさ以下に裁断あるいは粉砕して使用する。
【0006】
−方、副原料としては、魚類の肉を使用する。魚の種類は問わないが、一般に、魚肉は
、魚からうろこ、骨、内臓などを取り除いて洗浄した魚肉部分を、仕込みに適当した大き
さに裁断して使用する。冷凍した魚肉の場合は解凍して使用する。
【0007】
本発明方法により味噌風調味食品を製造するには、まず、上記の魚肉を適用な容器に入
れ、これに食塩を加えて塩なれさせる。その後、これに上記のパン屑を加えるが、この際
パン屑と魚肉とが互いに十分に接するよう十分攪拌するのが好ましい。食塩の添加により
魚肉から抽出される水分によって、容器に仕込んだ組成物は次第にどろどろとなり、液状
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ないしペースト状となる。
【0008】
仕込み当初のパン屑と魚肉との割合は、パン/魚肉の重量比にして1/10∼10/1
の範囲内が適当であり、特に1/2∼2/1が好ましい。また、食塩の量は、熟成中の組
成物における食塩の濃度が5∼35(重量)%となる量にする。
【0009】
次いで、これに、酵素製剤または米麹を配合し、十分攪拌して、熟成を行わせる。
まず、酵素製剤を配合する場合について説明すると、使用する酵素製剤としては、プロテ
アーゼ製剤(たとえば「プロテアーゼA」:天野エンザイム社製、最適条件:pH7.0
、50℃、起源:Aspergillus oryzae)を主剤とし、必要に応じ、こ
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れにアミラーゼ製剤(たとえば「ビオザイムM」:天野エンザイム社製、最適条件:pH
5.0、55℃、起源:Aspergillus oryzae)や、コラゲナーゼ製剤
(たとえば「コラーゲナーゼ」:シグマ社製、最適条件:pH7.5、40℃、起源:C
lostridium histolyticum)などを添加して使用する。
酵素製剤のうち、少なくともプロテアーゼを含む酵素剤を使用するのが好適であるが、
プロテアーゼを含む酵素剤は魚肉の量に依存し、魚肉重量の約1∼20重量%(魚肉10
0g当り1,000∼100,000units)の使用が好ましい。
【0010】
酵素製剤を使用する場合は、仕込み後、仕込んだ組成物が液状化して来るので、これに
あわせ、仕込みから数日∼2週間後に、パン屑を追加添加し、かつ全体の食塩濃度が常に
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5∼30(重量)%となるように食塩を添加し、さらに適当な間隔を置いてパン屑と食塩
を熟成中に数回に分けて添加する。
パン屑の量は、各回とも当初の仕込み時のパン屑の量とほぼ同量とするのが好ましく、
当初の仕込み時と途中で加えるパン屑の総量は、魚肉の重量に対して、約2∼6倍とする
のが好ましい。
【0011】
酵素製剤の代わりに米麹を使用する場合は、仕込み時には米麹を添加せずに主副原料中に
含まれる酵母などによって熟成を行わせ、仕込みから数日∼2週間後にパン屑の代わりに
米麹を添加する。ここで添加する米麹の量は、仕込み当初のパン屑量の2分の1∼2倍と
するのが好ましい。その後、熟成中の組成物の液状化の程度を見ながら、適当な間隔を置
10
いてパン屑を追加添加して熟成させる。
【0012】
いずれの場合も、熟成の温度は、30℃∼40℃にて熟成を行うのが好ましい。このよ
うにして約3∼5週間熟成させると、ほぼ固形に近い味噌風調味食品が出来上がる。
【発明の効果】
【0013】
以上のごとき本発明方法によれば、従来処理に困っていたパン屑を有効利用して、良好
な食味を有する味噌風調味食品を製造することが可能となる。得られた食品は特に味の調
整(味付け)を行わなくても、市販の鯛味噌のような味と風味を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
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【0014】
以下に、本発明方法の実施例および比較例を詳述する。ただし、本発明はこれらの実施
例によってその範囲が限定されるものではない。なお、実施例に記載の%は特に断らない
限り重量%を意味する。
【実施例1】
【0015】
それぞれ、容器に、サケ(商品価値の低いブナサケ)の魚肉760g(重量の80%が
水分)を入れ、これに食塩228g(サケ魚肉の30重量%)を加えて、塩なれさせた後
、これに細かく砕いた食パンのパン屑760g(サケ魚肉と同重量)を入れ、さらに個々
に下記(1)∼(3)の酵素製剤を添加して混合し、当初10℃で熟成を開始し、数日後
30
30℃に昇温して熟成させた。
(1)試料1:プロテアーゼ製剤(「プロテアーゼA」)魚肉の10%、56×10
4
u
4
u
nits)
(2)試料2:プロテアーゼ製剤(「プロテアーゼA」)魚肉の10%、56×10
nits)+アミラーゼ製剤(「ビオザイムM)」魚肉の10%、1294×10
4
un
its)
(3)試料3:プロテアーゼ製剤(「プロテアーゼA」)魚肉の10%、56×10
nits)+アミラーゼ製剤(「ビオザイムM」魚肉の10%、1294×10
4
4
u
uni
ts)+コラーゲナーゼ製剤(「コラーゲナーゼ」)150units)
(4)試料4:酵素製剤添加なし
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【0016】
なお、ここで使用した酵素製剤の詳細は、以下のとおりである。
「プロテアーゼA」:天野エンザイム社製、最適条件:pH7.0、50℃、起源:As
pergillus oryzae
「ビオザイムM」:天野エンザイム社製、最適条件: pH5.0、55℃、起源:As
pergillus oryzae
「コラーゲナーゼ」:シグマ社製、最適条件:pH7.5、40℃、起源:Clostr
idiumhistolyticum
【0017】
そして、試料1∼3については、仕込みから1週間後、3週間後、2か明後に、それぞ
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れ、各試料に細かく砕いたパン屑760gと食塩120gとを追加添加し(食塩は全体の
食塩濃度が15%になるように添加)、熟成中の組成物がペースト状になるように調整し
た。
【0018】
一方、試料4については、仕込み(熟成開始)から1週間後のみ、パン屑のかわりに米
麹760gを加え、それ以降は、試料1∼3と同様にして、熟成を行なった。
35℃で4か月間熟成させて得た試料1∼4の味噌風調味食品の一般分析の結果は、次
の表1に示すとおりであった。
【0019】
【表1】
10
20
【0020】
表1において、試料1∼3を比較すると、各酵素製剤を添加することにより、全窒素量
が増加し、タンパク質が分解されていることが確認された。また、アミラーゼ製剤を添加
することにより、糖量が増加し、糖分が水溶化されていることが推察された。
【0021】
以上のほかに、比較例(試料5)として、魚肉のかわりに、蒸煮した大豆760gを用
い、食塩228gを入れ、パン760gを加え、プロテアーゼ製剤、アミラーゼ製剤を添
加して35℃で4か月熟成させた。
【0022】
30
以上の方法で得られた調味食品について、男女計30名による官能試験(食味テスト)
を実施した。テストは固形の味噌風食品をそのまま食することで評価した。その結果は以
下の表2に示すとおりであった。
【0023】
【表2】
40
【0024】
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(6)
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表2に示す結果から、総合的には、試料1と試料4の評価が高かった。試料1は、魚の
うま味が引き立ち、パンの甘味がした。試料2と試料3はプロテアーゼ製剤の他、アミラ
ーゼ製剤、コラーゲナーゼ製剤が添加されていることから、分解が進んだが、ペプチドな
どの分解物による苦味が生じ、評価はあまり高くなかった。特に、試料3は分解が最も高
かったが、味の点で評価の低いものとなった。
試料1∼3は、お湯に溶かし、味噌汁風にすると、カニ味噌風味で魚介類の味がした。
試料4は試料1∼3と異なり、米麹の甘みがあった。また、麹のマスキング効果があった
ためか、麹の匂いが強く、香りの評価が高く、総合評価の高いものとなった。
試料1および試料4では、アミラーゼを添加しなくても、パンの甘味があり、十分甘い
ものとなった。試料2および試料3では、アミラーゼが入ることにより、味に雑味が入り
10
、評価の高い方向には行かなかった。
一方、試料5は、大豆特有の味がして、調味食品としては評価が低いものであった。
【0025】
また、別の評価グループ男女計30名により、市販の鯛味噌{(株)酒悦製}と本発明
による味噌風調味食品(上記の試料1および試料4)との食味を評価した。なお、市販の
鯛味噌は甘味料などが調合されており、味が調製されている。
その結果は、以下の表3に示すとおりであった。
【0026】
【表3】
20
【0027】
市販の鯛味噌は、味が調製されている。それに比べ、本発明方法による試料1と試料4
は熟成後、そのまま(無調整)であるにもかかわらず高い評価が得られた。これに市販品
のように味の調合を加えれば、もっと評価が高くなると考えられる。
【産業上の利用分野】
【0028】
本発明の方法によれば、従来処置に困っていたパン屑を有効利用して新規な味噌風調味
食品が製造できるので、本発明は食品工業にとって非常に有用である。
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