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公開特許公報 特開2015
(19)日本国特許庁(JP) 〔実 5 頁〕 公開特許公報(A) (12) (11)特許出願公開番号 特開2015-177773 (P2015−177773A) (43)公開日 平成27年10月8日(2015.10.8) (51)Int.Cl. A21D FI テーマコード(参考) 8/02 (2006.01) A21D 8/02 4B014 A21D 13/08 (2006.01) A21D 13/08 4B032 A23G (2006.01) A23G 3/00 102 3/50 審査請求 (21)出願番号 特願2014-57441(P2014-57441) (22)出願日 平成26年3月20日(2014.3.20) 未請求 請求項の数6 OL (全7頁) (71)出願人 000236768 不二製油株式会社 大阪府泉佐野市住吉町1番地 (72)発明者 五味 悦子 東京都港区三田3丁目5番地27号 不動産三田ツインビル西館 住友 不二製油株式 会社東京支社内 (72)発明者 小山 望 東京都港区三田3丁目5番地27号 不動産三田ツインビル西館 住友 不二製油株式 会社東京支社内 (54)【発明の名称】層状焼成菓子およびその製造方法 (57)【要約】 【課題】 強力粉を多く配合した弾力の強い小麦粉生地の作業性を 改善し、薄く伸ばした層状生地が折り重なった外観と、 特徴的な食感をもつ層状焼成菓子の効率的な製造方法を 提供すること。 【解決手段】 卵黄、砂糖、水中油型乳化物を含む乳化組成物を小麦粉 生地に配合することで、弾力の強い配合の生地の展延が 容易になり、極薄い層状生地が容易に得られる。これを 巻いて切断、成形し、焼成することで、独特の外観とバ リバリした食感を有する層状焼成菓子が製造できる。ま たシュー生地と組み合わせて焼成することで更に特徴的 な製品が得られる。 【選択図】図2 Fターム(参考) 4B014 GG02 GG10 GL07 GL10 4B032 DB17 DG02 DK12 DK18 DP25 DP40 DK48 ( 2 ) JP 1 2015-177773 A 2015.10.8 2 【特許請求の範囲】 る」68∼69頁、柴田書店、2013年1月15日発 【請求項1】 行 卵黄、糖類、水中油型乳化物を含む乳化組成物と、小麦 【非特許文献2】「イタリアの地方菓子」35∼37頁 粉と、さらに少なくとも食塩と水とを混合して小麦粉生 、世界文化社、2012年2月10日発行 地を製造し、これを展延し、可塑性油脂を折り込むこと 【非特許文献3】「イタリアの手づくりお菓子」145 を特徴とする層状生地の製造方法。 頁、梧桐書院、2006年12月1日発行 【請求項2】 【非特許文献4】http://www.peperoniepatate.com/201 請求項1に記載の層状生地を端から巻き、輪切りにし、 0/11/le-aragostine-quelle-dolci.html 成形、焼成する工程を含むことを特徴とする、層状焼成 菓子の製造方法。 【発明の概要】 10 【発明が解決しようとする課題】 【請求項3】 【0004】 小麦粉のうち強力粉が50重量%以上であることを特徴 本発明の目的は、特徴的な形状と食感を有する層状焼成 とする、請求項1ないし2いずれか1項に記載の製造方 菓子の効率的な製造方法を提供することである。 法。 【課題を解決するための手段】 【請求項4】 【0005】 シュー生地と組み合わせて焼成することを特徴とする、 本発明者は上記の課題に対して鋭意検討の結果、卵黄、 請求項1ないし3いずれか1項に記載の製造方法。 砂糖、水中油型乳化物を含む乳化組成物を小麦粉生地に 【請求項5】 配合することによって弾力の強い配合の生地の展延が容 請求項1ないし4いずれか1項に記載の製造方法により 易になり、これらの菓子を作業性良く製造可能であるこ 得られた、層状焼成菓子。 20 とを見出し、本発明を完成させた。 【請求項6】 【0006】 請求項1ないし4いずれか1項に記載の製造方法により すなわち、本発明は 得られた層状焼成菓子とフィリング類との組み合わせか (1)卵黄、糖類、水中油型乳化物を含む乳化組成物と らなる、菓子。 、小麦粉とさらに少なくとも食塩と水とを混合して小麦 【発明の詳細な説明】 粉生地を製造し、これを展延し可塑性油脂を折り込むこ 【技術分野】 とを特徴とする層状生地の製造方法、 【0001】 (2)(1)記載の層状生地を端から巻き、輪切りにし 本発明は、層状菓子の製造方法に関する。 、成形、焼成する工程を含むことを特徴とする層状焼成 【背景技術】 菓子の製造方法、 【0002】 30 (3)小麦粉のうち強力粉が50重量%以上であること イタリア・ナポリ地方の郷土菓子、スフォリアッテレ( を特徴とする(1)∼(2)いずれかに記載の製造方法 sfogliatelle;または、スフォリアテッラ/sfogliatel 、 la)は、貝殻のように折り重なった美しい層状模様を有 (4)シュー生地と組み合わせて焼成することを特徴と する形状と、通常のパイとは異なるバリバリした食感が する(1)∼(3)いずれかに記載の製造方法、 特徴的な菓子である(非特許文献1、2)。 (5)(1)∼(4)いずれかに記載の製造方法により また、このバリエーションとして、シュー生地を内側に 得られた層状焼成菓子、 詰めて焼成することで大きく膨化させ、さらに空洞部分 (6)(1)∼(4)いずれかに記載の製造方法により にフィリング類を詰め、伊勢海老のような外観をもたせ 得られた層状焼成菓子とフィリング類との組み合わせか た「アラゴスタ」(Aragosta、Aragostine)と呼ばれる らなる菓子、である。 菓子もある(非特許文献2、3、4)。これらは、強力 40 【発明の効果】 粉主体のドウを紙のように極薄く(約1mm以下まで)延 【0007】 ばし、ラードを塗って生地を巻き、成形して製造される 本発明によれば、美しい層状模様とバリバリした食感を 。弾力の強いドウは伸びにくく作業には熟練を要し、ま 有する焼菓子を容易に製造することができる。 た煩雑である。より手軽で作業性の良い製造方法を提供 【図面の簡単な説明】 することで、菓子・ベーカリー市場の多様化、活性化へ 【0008】 の貢献が期待できる。 【図1】実施例2の層状焼成菓子の成形工程の模式図で 【先行技術文献】 ある。 【非特許文献】 【図2】実施例3の層状焼成菓子の図面代用写真である 【0003】 。 【非特許文献1】「イタリア菓子 ベーシックをきわめ 50 【発明を実施するための形態】 ( 3 ) JP 3 2015-177773 A 2015.10.8 4 【0009】 続いて、小麦粉生地に可塑性油脂類を折り込み、小麦粉 以下、本発明を具体的に説明する。 生地層と油脂層が交互に存在する層状生地を得る。使用 【0010】 する可塑性油脂としては通常公知の折りパイ同様にバタ (小麦粉生地) ー、マーガリン、コンパウンドマーガリン、ファットス 本発明の小麦粉生地(ドウ)は小麦粉、食塩、水と、後 プレッド、ショートニング、ラードなどをいずれも用い 述の乳化組成物を混合、混捏して製造する。また、配合 ることができるが、特にラードやショートニングなど無 小麦粉のうち強力粉を50重量%以上、より好ましくは 水の可塑性油脂を用いることで、焼成後のバリバリした 60重量%以上とすることで、バリバリとした特徴的で 食感が得られやすい。折り込みの手段としては通常公知 好ましい食感を得ることができる。ここでの強力粉とは のパイ類と同様で良く、小麦粉生地で可塑性油脂を包み グルテンの強い小麦粉のことであり、具体的には蛋白含 10 、ないしは挟んで展延し折り重ねる、あるいは小麦粉生 量が11.5%以上の強力粉ないしは10.5%以上の 地をカットして可塑性油脂を全面に塗布し、さらに小麦 準強力粉を指すが、これらの分類規格によらず同様の性 粉生地を重ねて展延する、などの方法が例示できる。折 質をもつ小麦粉であれば同様に使用でき、例えば主にイ り数も適宜設定することができ、4∼40層程度が例示 タリアで使用されるマニトバ粉などが例示できる。強力 される。折り込み作業を行った層状生地は最終的に、小 粉以外には薄力粉、中力粉などの小麦粉類、その他穀粉 麦粉生地部分が約1.0mm以下の薄さとなるまで展延す 類や各種澱粉類を適宜配合することができる。この他に ることが望ましい。 も糖類や食用油脂類などを適宜、本発明の効果を阻害し 【0013】 ない程度に配合することができる。 (切断、成形) 【0011】 得られた層状生地は続いて展延し、必要に応じて長方形 (乳化組成物) 20 ないしは正方形にカットし、端からロール状に巻き上げ 本発明においては、卵黄、糖類、水中油型乳化物を含む 、輪切り(層の断面が渦巻き状に露出する方向の小口切 乳化組成物を配合して小麦粉生地を作製する。これによ り)にする。ここでの厚さは1cm前後が適切である。 り、小麦粉生地の伸展性が良好になるため、薄く延ばし さらにこれを1枚ずつ、渦の中心を押し上げるように、 た生地を容易に作製することができる。また同時に焼成 層をずらしながら成形して略円錐型とする。ここで円錐 後の適度な焼き色と風味を効率的かつ効果的に付与する の内側部分に各種フィリング類や、後述するシュー生地 ことができる。卵黄としては液卵黄、加糖卵黄、乾燥粉 を充填することもできる。続いて常法によりオーブン焼 末卵黄を用いることができる。糖類としてはスクロース 成することにより、層状焼成菓子を得る。 (ショ糖)、グルコース(ブドウ糖)、フラクトース( 【0014】 果糖)、マルトース(麦芽糖)、ラクトース(乳糖)、 (シュー生地) トレハロース、マルトース、ハチミツなどが例示でき、 30 本発明の層状生地はシュー生地と組み合わせて焼成する これらの中から選ばれる1種類あるいは2種類以上を適 ことで、さらに特徴的な層状模様と形状を有する層状焼 宜組み合わせて用いることができる。水中油型乳化物と 成菓子を得ることができる。シュー生地は常法により調 してはクリーム類、特に脂肪分20%以上のものが望ま 製することができ、具体的には水及び油脂原料類を合わ しく、生クリームやコンパウンドクリーム、植物性クリ せて混合し沸騰させた後、加熱を止め、小麦粉などの穀 ーム等をいずれも用いることができる。これらを、乳化 粉類を加えて練り上げ、続いて卵類を加えて混合する方 組成物中の組成として卵黄(生卵黄換算)5∼40重量 法が例示できる。組み合わせの手段としては円錐状に成 %、糖類20∼50重量%、水中油型乳化物20∼60 形した層状生地の内側(窪み)にシュー生地を絞り入れ 重量%となるように配合することが望ましい。乳化組成 る、天板に絞り出したシュー生地の上に層状生地を載置 物の調製方法としては卵黄、グラニュー糖、生クリーム する、小麦粉生地でシュー生地を挟みこむ、などの方法 を混合し、この混合液をニーダーで加熱しながら攪拌加 40 が例示できる。 熱し、冷却する方法が例示できる。小麦粉生地における 【0015】 乳化組成物の配合量は、他に混合する水分とのバランス (フィリング類) を調整しながら適宜設定することができるが、好ましく 本発明の層状焼成菓子には各種フィリング類を併用する は小麦粉100重量部に対して1∼25重量部、より好 ことで、バラエティに富んだ菓子ないしはスナック類が ましくは3∼15重量部が適切である。これに満たない 製造できる。フィリング類としては具体的には、カスタ 量では本発明の効果が得られにくく、これより多い量で ードクリーム、ホイップクリーム、チーズクリームなど は焼成後の食感が脆く独特の歯ごたえが無くなったり、 が例示でき、また塩味系のフィリングを使用することも 焼成時に焦げ付き易くなったりする場合がある。 できる。併用の形態としては、内側に詰める(充填)す 【0012】 る他、挟む、絞り出すなどの方法が例示できる。 (層状生地) 50 これらは焼成後に充填しても、成形した小麦粉生地に充 ( 4 ) JP 5 2015-177773 A 2015.10.8 6 填してから焼成することもできる。 生地が得られず、続いての層状生地作製作業は不可と判 【実施例】 断した。 【0016】 【0024】 以下に実施例および比較例を記載し、本発明をより詳細 <層状生地の作製> に説明する。なお、文中の部および%は特に断りのない 実施例1の小麦粉生地を500部準備し、これを厚さ2 限り重量基準を意味する。 mmに伸ばし、半分にカットした。うち1枚に、室温で 【0017】 柔らかくしておいた市販ショートニング(商品名:パン <乳化組成物の調製> パスコットンPS30、不二製油株式会社製)75部を刷 加糖卵黄(卵黄:砂糖=8:2)39部、グラニュー糖 毛で全面に塗布し、もう1枚の小麦粉生地を貼り合わせ 24部、水中油型乳化物(乳脂肪含量45%の生クリー 10 た。これをさらに半分にカットし、ショートニング38 ム)37部を混合し、これをジャケットに熱水を通して 部を塗布して貼り合わせ、リタード1時間の後、長辺約 加熱しながらニーダーで攪拌、90℃達温後、16℃ま 75cmの長方形、厚さ約3mmまで延ばした。小麦粉生 で混合しながら冷却し、乳化組成物を得た。 地4層(各々約0.7∼0.75mm厚に相当)の間に 【0018】 ショートニングを3層折り込んだ状態の層状生地を得た <小麦粉生地の調製> 。 (実施例1) 【0025】 前項により調製した乳化組成物を用い、表1の配合に従 (実施例2) ってすべての原材料をミキサーで混合し、リタードを1 前述の層状生地にショートニング38部を塗布し、短辺 時間取った。この小麦粉生地を2mm厚さにリバースシ から長辺方向にロール状に巻き上げ、直径約5∼6cm ーターで伸ばし、作業時の生地の伸展性について評価し 20 の円柱状とした(図1-(1))。続いてこれを端から1c た。 m厚さの輪切り状に切断し(同(2))、1枚ずつ、渦の 【0019】 中心を押し上げるように層をずらしながら成形し(同(3 (比較例1) ))、略円錐形の袋状とした(同(4))。これを横にして 乳化組成物の代わりに市販ラードを用い、同様に小麦粉 天板に並べ、上から軽く押し、オーブンにて上火/下火 生地を調製、評価した。 =180℃/180℃、30∼40分焼成した。薄い層がくっ 【0020】 きりと形成され、貝殻のような形状と適度な焼き色を備 (比較例2) え、バリバリした食感と、良好な風味を有する層状焼成 市販ショートニング(商品名:パンパスコットンPS3 菓子が得られた。 0、不二製油株式会社製)を用い、同様に小麦粉生地を 【0026】 調製、評価した。 30 (シュー生地の調製) 【0021】 水120部、食塩1部、市販マーガリン(製品名:メサ (比較例3) ージュ500、不二製油株式会社製)120部を合わせ 乳化組成物の調製に用いた水中油型乳化物(乳脂45% て沸騰させ、薄力粉70部と強力粉30部を加えて混捏 の生クリーム)を単独で用い、同様に小麦粉生地を調製 の後、全卵200部を少しずつ添加混合してシュー生地 、評価した。 を得た。 【0022】 【0027】 (表1)小麦粉生地配合(単位:重量部)および伸展性 (実施例3) 評価 層状生地を実施例2と同様に成形し、略円錐形の袋状の 成形品を得た。この内側に前述のシュー生地を絞り入れ 40 (13g/個)、開口部を合わせて閉じた。天板に並べ 、180℃/180℃、20分→200℃/160℃、10∼15分の 条件で成した。細長い形状と内部の空洞を有し、かつ実 施例2と同様に美しい層模様と適度な焼き色、食感、風 味を備えた層状焼成菓子が得られた(図2)。 【0028】 【0023】 (実施例4) 乳化組成物を配合した実施例1の小麦粉生地は容易に伸 牛乳1000部、バニラビーンズ1本、卵黄240部グ ばすことが可能であり、厚さ2mmの小麦粉生地が得ら ラニュー糖200部、薄力粉100部、バター50部の れた。比較例は一旦伸びても押し戻されたり、あるいは 配合にて、常法によりカスタードクリームを調製した。 生地が固く締まっていたりしたため所望の薄さの小麦粉 50 別途市販生クリーム(製品名:CLASS-F4545、不二製油 ( 5 ) JP 2015-177773 7 8 株式会社製)を8分立てにホイップし、カスタードクリ 【符号の説明】 ーム:ホイップクリーム=7:3(重量比)で合わせ軽 【0029】 く混合した。これを、実施例3の層状焼成菓子の空洞部 (a)層状生地 に絞り入れた(約25g/個)。焼成菓子部分とフィリン (b)カット線 グ(ディプロマット)の風味食感の調和が良好な菓子が (c)成形(押し上げ)の方向 得られた。 【図1】 【図2】 A 2015.10.8