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連結納税制度採用企業による 連結納税実務のポイント

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連結納税制度採用企業による 連結納税実務のポイント
連結納税制度採用企業による
連結納税実務のポイント
サッポロホールディングス株式会社 経理部
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目次
Ⅰ.企業概要
Ⅱ.連結納税制度の採用
Ⅲ.初年度の連結納税決算申告業務を経験して
Ⅳ.連結納税システムの導入
Ⅴ.連結納税システムの導入を終えて
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Ⅰ.企業概要
1.売上高(連結)
494,929百万円(平成16年12月期)
479,520百万円(平成15年12月期)
2.資本金(連結)
43,831百万円(平成16年12月期)
3.社員数(連結)
3,979人(平成16年12月末現在)
4.上場等の区分
東証市場第一部、札証市場第一部
5.連結子法人数(連結納税)
17社(平成16年12月末現在)
6.連結子会社数(連結会計)
連結子会社15社(平成16年12月末現在)
持分法適用会社4社(平成16年12月末現在)
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Ⅰ.企業概要
7.主な事業内容
事業部門(主な会社)
主要商品等
酒類事業
サッポロビール(株)
サッポロワイン(株)他
(ビール)サッポロ生ビール黒ラベル、ヱビスビール、ギネス
(発泡酒)北海道生搾り
(その他)ドラフトワン、スリムス、スミノフアイス、スーパークリア
(国産ワイン)グランポレール、ポレールうれしいワイン、
ポレールクリアドライ
(輸入ワイン)イエローテイル(豪州)、ベリンジャー(米国)、
ラ・キュベ・ミティーク(フランス)
飲料事業
サッポロ飲料(株)
玉露入りお茶、JACK、烏龍茶、リボンオレンジ、美味しぼり、
がぶ飲みシリーズ、北海道シリーズ、オーシャンスプレー、
ヴァットヴィレール、ゲロルシュナイター
外食事業
(株)サッポロライオン他
銀座ライオン、安具楽、安曇野庵、かこいや、
プライベートダイニング”点”(ともる)、ダブリナーズアイリッシュパブ
不動産事業
恵比寿ガーデンプレイス
(株)
恵比寿ガーデンプレイス、サッポロファクトリー
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Ⅱ.連結納税制度の採用
1.連結納税制度の採用
平成14年8月
連結納税制度の施行
平成14年8月
連結納税制度の検討開始(経理部内での検討)
平成14年9月
連結納税制度の勉強会開催(経理部内、関係会社担当者)
平成14年10月 経理部内にて連結納税制度導入の意思決定
連結子法人への説明会実施
(具体的な連結納税計算について)
経営会議(旧サッポロビール社)への報告
平成14年12月
連結納税申請書の提出(経過措置を適用)
平成14年11月
2.採用の決定要因
(1)黒字会社、赤字会社の所得通算によるグループ全体としての節税効果
(2)親法人の繰越欠損金の早期解消
(3)連結子法人からの受取配当金が全額益金不算入
(4)組織再編に伴う追加の税負担を抑制
(分割前・後での会社別所得の不均衡を調整できる)
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Ⅲ.初年度の連結納税決算申告
業務を経験して
1.初年度の連結納税制度への対応方法
(1)親子間の別表作成の役割分担
≪親法人が作成≫
別表1の2(1)
≪子法人が作成≫
確定申告書
個別帰属額の届出書
個別帰属額の一覧
別表4の2
所得計算
別表4の2
所得計算
別表5の2(1)
利益積立金
別表5の2(1)
利益積立金
別表5の2(2)
租税公課
別表5の2(2)
租税公課
別表5の2(2)付表2
法人税受払
別表11
引当金
別表16
減価償却費
別表7の2
欠損金
別表7の2付表1
欠損金
別表7の2付表1
欠損金
別表7の2付表2
欠損金
別表7の2付表2
欠損金
別表6の2(4)
試験研究費
別表6の2(4)付表
別表6の2(1)
所得税額控除
別表6の2(1)
所得税額控除
別表8の2
受取配当金
別表8の2
受取配当金
別表14の2
寄附金
別表14の2
寄附金
別表15の2
交際費等
別表15の2
交際費等
別表9(2)
譲渡損益
別表9(2)
譲渡損益
試験研究費
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Ⅲ.初年度の連結納税決算申告
業務を経験して
1.初年度の連結納税制度への対応方法
(2)親子間の報告・連絡のスケジュール①(決算用税額計算)
≪親法人≫
≪子法人≫
右記データ
集計
1月14日
提出
・所得金額及び欠損金額
・法人税額
・所得帰属額(事業税用)
・税額帰属額(地方税用)
・繰越欠損金の額
・加減算修正表
1月16日
計算結果
1月20日
単体決算確定
・連結BS/PL確定
税額
税効果
2月20日
連結決算確定
・税引前利益
・別表4(簡易版)
・別表5(簡易版)
・欠損金明細
・所得税額控除明細
・受取配当金明細
・貸倒引当金明細
・交際費明細
・寄附金明細
・譲渡損益調整資産明細
・BS/PL確定
税額
法人税等調整額
当期利益
繰延税金資産負債
・税効果会計注記資料
繰延税金資産負債内訳
税率差異分析表
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Ⅲ.初年度の連結納税決算申告
業務を経験して
1.初年度の連結納税制度への対応方法
(2)親子間の報告・連絡のスケジュール②(納付用税額計算)
≪親法人≫
・所得税額控除(別6の2(1))
・外国税額控除(別6の2(2))
・試験研究費控除(別6の2(4))
・受取配当等(別8の2)
・寄附金(別14の2)
・交際費等(別15の2)
≪子法人≫
1月31日
連結ベース
申告書別表報告
1月25日
申告用追加
データ提出
・所得税額控除資料
・外国税額控除資料
・試験研究費の額
・受取配当等計算資料
・寄附金計算資料
・交際費計算資料
・中間時納付額
別表4の2付
BS/PL
2月10日
提出
・子法人付替額連絡
・親法人へ支払いもしくは
親法人より受取
・地方税は個別に納付
2月20日
連結納税計算
・税額納付
2月28日
税額納付
2月28日
決済、税額納付
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Ⅲ.初年度の連結納税決算申告
業務を経験して
1.初年度の連結納税制度への対応方法
(2)親子間の報告・連絡のスケジュール③(申告)
≪親法人≫
・別表1の2
別表4の2
別表5の2(1)
別表5の2(2)
別表6の2(1)
別表7の2
他
BS/PL/利益処分案
・申告
法人税申告
所轄税務署へ
≪子法人≫
4月上旬
4月中
申告
株主総会後
提出
(最終確定版)
・個別帰属額の届出書
別表4の2付
別表5の2(1)付
別表5の2(2)付
別表6の2(1)
別表7の2
他
BS/PL/利益処分案
4月中
・届出と申告
届出と申告
法人税個別帰属額届出
所轄税務署へ
地方税申告
各地方自治体へ
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Ⅲ.初年度の連結納税決算申告
業務を経験して
2.初年度連結納税制度導入スケジュール
(1)平成14年11月 第1回子法人向け説明会
連結納税制度の概要説明会実施(関係会社向け)
(2)平成15年5月
第2回子法人向け説明会
連結納税制度の概要、連結納税制度導入後の税効果会計の概要、
平成15年中間決算の計算手順の説明
(3)平成15年11月 第3回子法人向け説明会
平成15年期末連結納税計算について、連結法人税申告書の記載要領について
連結決算税効果用パッケージ作成要領について、
組織再編税制の概略について、その他手続き関係について
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Ⅲ.初年度の連結納税決算申告
業務を経験して
3.初年度決算申告業務での苦労点、反省点
(1)履歴管理
子法人からの修正が度重なると、連結申告書上でどこまで修正していたか履歴管
理が困難だった。
(2)転記作業が膨大
連結申告書の転記が膨大で大変だった。
(3)子法人担当者の実務レベルのばらつき
子法人は全て経理担当者が申告書を作成していたが、子法人の規模により法人税
に対する理解の度合いや申告書作成の習熟度が異なり、教育に苦労した。
(4)地方税に関する申請書の届出
膨大な件数の地方税に関する連結納税開始に当たっての申請書等を提出する必
要があり、対応に苦慮した。
(5)税務調査への対応
申告時の書類管理が大変で、税務調査の対応に当たり不安が残った。
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Ⅳ.連結納税システムの導入
1.システムの必要性を感じたポイント
(1)連結納税・申告業務フローの整備(標準化・定型化)
(2)申告データのデータベース化
(3)税務調査及び決算時の監査への対応
(4)税効果会計への対応
(5)タックスプランニングへの対応
(6)子法人への申告書作成業務に対するサポート体制の強化
(7)地方税申告書業務の作業負荷軽減
(8)正確性・確実性の確保
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Ⅳ.連結納税システムの導入
2.TKC連結納税システム採用を決定した理由(要因)
(1)サポート体制の充実
一般のシステム会社よりも税務の専門家が多く、サポート体制への安心・
信頼感があった。
(システム開発時もさることながら、運用場面になってからのサポート体制
を重視した。)
(2)税法改正への対応
税法改正に対応したシステムのバージョンアップ(特に外形標準課税対応)
に魅力を感じた。
(3)地方税申告書作成機能
連結法人税個別帰属額と地方税額計算との連動、地方税率の自動メンテ
ナンス等地方税申告書作成機能が充実していた。
(4)対応別表の多さ
非常に多くの連結納税(79表)・地方税(57表)の別表に対応していた。
(平成16年6月現在)
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Ⅳ.連結納税システムの導入
3.TKC連結納税システム導入のスケジュール
平成16年6月
連結納税システム導入プロジェクトキックオフ
平成16年7月
システム利用環境調査・整備
平成16年8∼9月 子法人説明会実施
(前年度申告書を利用したテスト、別表5の残高移行)
平成16年10月
テスト入力検証(帳票確認含む)、業務プロセスの見直し
平成16年11月
平成16年決算での連結税額計算の業務運用説明会開催
平成16年12月
本稼動(マスタの再確認、期中入力等の決算事前準備)
平成17年1∼4月 決算・決済・申告の各場面での税額計算・申告書作成
4.今回の連結納税業務に携わった人数(親法人・子法人)
親法人2名、子法人各1名(1名で複数社担当しているケースもある。)
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Ⅳ.連結納税システムの導入
5.システム導入プロセスとポイント
親法人の連結納税制度
に対する理解度アップ
連結納税制度に関するセミナー、書籍等の活用
(親会社側のプロジェクトメンバーのレベルアップが重要)
TKC連結納税システム
の習熟度アップ
マスタ登録等のセットアップ作業でのシステムへの理解
(マスタの意味等を十分に理解することにより、システムの実際の運用イメー
ジをふくらます。)
親会社でのテスト実施による操作方法、システム運用フローの理解
(コンサルタントによる定期的な説明、疑問点の解消)
子法人担当者の連結納
税制度・TKC連結納税シ
ステムへの理解度アップ
親法人主催の子法人向け連結納税制度・連結納税システムの説明会開催
(コンサルタントによる時間配分の検討、資料の検証等のサポートを活用)
前年度申告書を利用した運用テストの実施
(対象子法人全社で自社の申告書を利用して入力テストを実施)
本番環境の準備
子法人での運用テストのマスタ及びデータを本番環境で活用
(本番運用へスムーズな移行)
プロジェクト運営体制
本稼動時の運用イメージにあわせた子法人運用テスト計画(どのデータを使
用するか等)、導入スケジュールにあったタイムリーな子法人説明会の開催
による、スムーズなシステムの導入
(TKC社の過去の豊富な導入事例を参考)
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Ⅴ.連結納税システムの導入を
終えて
1.システム導入時に注意した点、苦労した点
(1)連結納税制度の理解と子法人申告書の理解
連結納税制度に対する理解がなくては、スムーズなシステム導入はありえない。特
に親法人側での連結納税制度への理解は、各子法人での加減算項目の理解とその
連結納税制度適用時の影響を理解することから始まる。
全社分の申告書のテスト入力は、システムと制度双方の理解が必要なため、大変
だったが、各子法人の申告書の理解とその後の本番運用時の問い合わせで役に
立った。
(2)システム部門の支援
当初、パッケージソフトの購入なので当社システム部門の支援なしに対応ができる
かもしれないと思っていたが、念のため導入時のシステム環境調査等でシステム部
門に関わってもらった。結果的には、このシステム部門の支援があったおかげで、イ
ンストール時のトラブル、ネットワークのスピード問題、適用パソコンへの交換等シス
テム関連の諸問題がスピーディーに解決できた。
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Ⅴ.連結納税システムの導入を
終えて
1.システム導入時に注意した点、苦労した点
(3)導入支援体制の確保
プロジェクトがキックオフされる際に、スケジュールを事前に調整し作成した。しかし
ながら、通常の業務をこなしながらのシステム導入であったため、スケジュール変更
が余儀なくされる場面が多々あった。特にスケジュールがタイトになったのは、説明会
の資料作成とその説明会でシステムが使用できるようにセットアップを行う作業が重
複したことだった。この場面では、導入コンサルタントからのアドバイスにより説明会
に必要な最低限のセットアップをこなすことで、なんとかスケジュール通りの開催がで
きた。このとき、連結納税制度面・システム面の両方を理解しているコンサルタントの
強みを痛感した。
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Ⅴ.連結納税システムの導入を
終えて
2.システムを利用して良かった点(導入の効果)
(1)子法人の税務知識レベルの平準化
システム導入の説明会等を通して、各社でバラツキのあった税務知識がある一定
の水準まで底上げされた。
(2)決算時の税額計算業務の短縮化
決算用の税額計算は正確性とともにスピードが要求されるが、システムを導入した
ことによって各社の課税所得の修正等が連結税額へ瞬時に反映・計算できるように
なった。
(3)申告データの修正履歴の確認が容易に可能
各子法人とのやりとりを何度行っても、DBの保存機能を活用することにより修正等
の履歴管理が容易になった。
(4)繰越データの確実な管理
長期にわたり、所得を繰り延べる処理(譲渡損益調整資産の管理、子法人株式の
税務上の帳簿価格の管理)をシステムに登録することで、確実な引継ぎが行える。
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Ⅴ.連結納税システムの導入を
終えて
3.今回の決算・申告業務を通じての反省点や改善点
(1)業務運用面(連結納税制度へのさらなる理解)
連結納税システムに対する理解もさることながら、連結納税制度の理解を深める必
要性を強く感じた。
今後も、四半期毎の決算用税額計算の説明会やバージョンアップ時の税法改正の
説明会等と通じて、実務担当者の税務知識の習得を促したい。
また、ある程度申告までのスケジュールに余裕を持たせてきたものの、申告期限が
近づくにつれて各社での申告書チェックの精度が上がってきたため、親会社提出後に
申告書の修正・差替えが度々発生した。今後は、早めのチェックをするよう各社に働
きかける必要があると感じた。
(2)システム運用面(利便性向上)
重複入力を極力排除した入力画面構成となっているため、連結納税システムに初
めて触れる担当者にとっては当システムへの入力画面と申告書のイメージがなかな
か一致せず、入力に戸惑いが見られた。しかし、データの入力処理がグループで統
一されるため、各社がデータを入力した後にチェックする申告書は一定のルールに
従って作成されており、非常にチェックしやすかった。
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Ⅴ.連結納税システムの導入を
終えて
3.今回の決算・申告業務を通じての反省点や改善点
(3)税効果システムについて
今回はほとんど税効果システムについて説明していないが、実際には具体的に検
討を進めていた。しかしながら、税効果システムについては、連結子会社経理担当者
の連結税効果に対する理解度がシステム導入できるレベルまで至っていないこと、当
社の業務運用の実態とシステムの機能があまり適合していなかったことなどの理由
から、今回の決算ではシステムによる運用を見送ることとなった。
税効果システムについては、レベルアップにより当社の業務運用でも問題なく稼働
できることが確認できたので、今後、税効果会計及びシステムの説明会を開催しなが
ら、本番運用の開始に繋げたい。
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