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Untitled - 大学教育機能開発総合研究センター
目 次 巻頭言 教養教育とは何か ……………………………………………………… 岡部 勉 ……… 5 教育研究論文 CALL におけるオートノミー(2)−その変容と習熟度,語彙サイズおよび学習時間との関係− ……………… 村里 泰昭・井原 健・齋藤 靖・折田 充 ……… 9 教育研究報告 ライティング教育に向けた指導法および教材開発 − 2010 年度基礎セミナー共通講義「レポート作成の基本」報告 「教養教育に関する FD 研究会 2010」実施報告 …………… 渡邊 淳子 ……… 25 ……………………… 折田 充 ……… 33 総括報告「 『授業改善のためのアンケート』結果分析、および テーマ『少人数ゼミ形式の授業について』の趣旨」 …… 矢嶋 哲 ……… 39 報 告Ⅰ「基礎セミナー『模擬国連により文明の衝突と対話について考える』について」 ………………………………… 中内 哲 ……… 53 報 告Ⅱ「基礎セミナー『風景の発見』ついて」………………………… 中田 晴彦 ……… 69 教養教育実施機構・教養教育実施委員会報告 教養教育実施委員会教務委員会報告 …………………………………… 高野 博嘉 ……… 77 教養教育実施委員会企画・運営委員会報告 ……………………………… 矢嶋 哲 ……… 79 基礎セミナー・学際科目委員会報告 …………………………………… 渡邊 あや ……… 83 ……………………………………………… 成田 宏秋 ……… 89 数学・統計学教科集団報告 ………………………………………………… 井上 尚夫 ……… 93 物理学教科集団報告 ……………………………………………………… 矢嶋 哲 ……… 95 ………………………………………………………… 中田 晴彦 ……… 97 ……………………………………………………… 高野 博嘉 ……… 98 ………………………………………………………… 長谷川四郎 ……… 99 専門基礎科目Ⅰ委員会報告 教科集団報告 化学教科集団報告 生物学教科集団報告 地学教科集団報告 環境造形・科学教科集団報告 ……………………………………………… 星野 裕司 ……… 100 科学技術・情報教科集団報告 ……………………………………………… 山口 晃生 ……… 102 健康・スポーツ科学教科集団報告 ………………………………………… 後藤 貴浩 ……… 103 医科学教科集団報告 ……………………………………………………… 玉巻 伸章 ……… 104 薬科学教科集団報告 ……………………………………………………… 入江 徹美 ……… 105 −1− 哲学教科集団報告 …………………………………………………… 大杉 佳弘 ……… 107 教育学教科集団報告 …………………………………………………… 山城 千秋 ……… 110 心理学教科集団報告 …………………………………………………… 渡辺 功 ……… 111 法学教科集団報告 …………………………………………………… 原島 良成 ……… 113 政治学教科集団報告 …………………………………………………… 伊藤 洋典 ……… 114 経済学教科集団報告 …………………………………………………… 山中 守 ……… 115 社会学教科集団報告 …………………………………………………… 鈴木 寛之 ……… 116 芸術教科集団報告 …………………………………………………… 木村 博子 ……… 117 文学・言語学教科集団報告 ………………………………………………… 跡上 史郎 ……… 118 地理学教科集団報告 …………………………………………………… 寶月 拓三 ……… 119 歴史学教科集団報告 …………………………………………………… 伊藤 正彦 ……… 120 既修外国語教科集団報告 …………………………………………………… 角田 俊治 ……… 121 初修外国語全体報告 …………………………………………………… 吉川 榮一 ……… 124 ドイツ語教科集団報告 ………………………………………………… 深堀建二郎 ……… 126 フランス語教科集団報告 中国語教科集団報告 ……………………………………………… 市川 雅己 ……… 126 …………………………………………………… 吉川 榮一 ……… 127 コリア語教科集団報告 ………………………………………………… 朴 美子 ……… 128 日本語・日本事情報告 ………………………………………………… 梅田 泉 ……… 128 情報教育教科集団報告 …………………………………………………… 永井 孝幸 ……… 130 大学教育機能開発総合研究センター報告 大学教育機能開発総合研究センター報告 ……………………………………………………………… 135 教養教育実施体制 熊本大学教養教育実施体制機構図 …………………………………………………………… 143 2010 年度教養教育実施委員会委員名簿 …………………………………………………………… 146 2010 年度大学教育機能開発総合研究センター教員及び担当業務一覧…………………………… 146 2010 年度教科集団構成一覧 編集後記 …………………………………………………………… 147 ………………………………………………… 合田 美子・渡邊 あや ……… 148 −2− 巻 頭 言 −3− −4− 教養教育とは何か 大学教育機能開発総合研究センター長 教養教育実施機構長 岡 部 勉 すぐれた教育プログラムを構築することは、もちろんたいへん重要ですが、問題は中身です。具体的には、 開講される一つひとつの授業科目が、質の高さという点でどうか、問題はないかということです。それと もう一つ、恐らくはそれ以上に重要なこととして、学生諸君が自分で勉強するかどうかということがある と思います。教員は学生をサポートする役割を担うことができるだけです。それはたいへん重要な役割だ とは思いますが、主役は学生です。大学で勉強するのもしないのも、そして何を勉強するかも、結局は学 生自身が、自分でどうするか、自分がどうするかで全部決まる、ということだと思います。これが私の話 の前提です。 さて、私は教養教育の話をしたいと思います。教養教育は専門教育に対して、一般教養とか基礎教養を 学ぶものだと、今日もどこかで言われているかもしれません。それは間違いではありませんが、それで話 は終わりではありません。教養教育の考え方のもとをたどると、古代ギリシアの「パイデイア」という語 に行き着きます。この語は(古代ギリシアの)教養とか教育を意味します。それを古代ローマのキケロと いう人が「人間性 humanitas, humanity」という語に置き換えました。 「人間性」というものを具体的に どういうものであるとするかは別にして、それは生まれつき私たち一人ひとりに何らか備わっているもの であると、私たちは言うかもしれません。他方では、例えば大学に行って、学習することによって身につ けるべきものであるというふうにも考えていると思います。二つの考え方は、別に矛盾するというわけで はありません。人間性というものは、私たち一人ひとりに何らか未完成の状態で生まれつき備わっている ものではあるが、私たちはそれをそれぞれの仕方で完成させなければならない、そういうものであると私 たちは考えているということだと思います。 ところで、 「パイデイア」というのは、ギリシアの伝統的な考え方からすると、都市国家(ポリス)を支 える一員である自由な(とされる)市民一人ひとりが身につけなければならない、 一般教養とか基礎教養(エ ンキュクリオス・パイデイア)のことでした。しかし、次のヘレニズム期になると「パイデイア」は、い わば意識的に、ギリシアとポリスの枠を超えて、普遍的なものになろうとします。それは、ポリスのよき 市民とかよきギリシア人を作る教育ではなくて、端的によき人間、よき世界市民を作る教育に成り上がろ うとしたということだと思います。キケロが「人間性」と訳したのは、そのような「パイデイア」のこと であったと思われます。ただし、キケロはそれを学問であるとは考えませんでした。 それが学問とされたのは、中世の大学が採用した「自由学芸 liberal arts」の考え方からでした。そして それが、今日の大学における教養教育のはじまりとされます。この考え方は、キケロの考え方の延長上に あるとは言えません。それは、古代末期(6世紀前後)に成立したとされる、学問についての新しい考え 方に基づいています。もっとも、その淵源を辿ると、紀元前5世紀のソフィストと呼ばれる人たちが教え ていたものに至るとする人もいます。その自由学芸というのは、医学とか法学のような、社会が必要とす る専門家を育てる、専門的な学問とは区別される基礎的な学問のことで、一般的には、文法学・修辞学・ 論理学・算術学・幾何学・天文学・音楽学のこととされますが、古代ギリシアのパイデイアについての理 解からも、キケロにはじまる人間性についての理解からも、このような考え方はでてきません。なぜこの −5− ような考え方がされるようになったかは、今日でも一つの立派な研究テーマとなるでしょう。いずれにし ても、この考え方からすると、修辞学のような文系の学問と幾何学のような理系の学問の両方を、私たち は学習しなければならないのですが、実際には、古代・中世を通じてこの理想は簡単には実現しませんで した。現在でも事情は同じだと思います。それはともかくとして、両方を学ぶことを理想とする考え方は、 その後、近代を経て現代までずっと残っています。 日本の大学もそれを理想とする考え方を、制度としては同じように受け継いでいます。そして、基礎教 育あるいは教養教育についてそういうふうに考えるのは、そんなに間違ってはいないかもしれません。し かし、真実「フマニタス」の名に値する高等教育とはどういうものか、という話は別だと思います。もち ろん、高等教育ということで何を言うかが問題でしょう。かつてそれは「哲学」と呼ばれたこともあった のですが、だいぶ昔の話です。私たちはこのことについて自分で考える必要があります。答えは一つでは ないかもしれません。そういう意味では、 選択肢はできるだけ多くあった方がよいのではないかと思います。 大学は、高級専門店や創業何百年の老舗がいくつも並んでいるというようなところだと思いますが、新規 参入の店とか市場のように面白そうな品物を並べている店もいろいろある、というふうであってもよいの ではないでしょうか。若い学生諸君には、 いろんな可能性があります。若い人たちが自分の可能性を信じて、 自分が本当にやりたいことは何であるのかを、自由にそして真剣に考えることができる、大学はそういう 場所になればよいと思います。 −6− 教育研究論文 −7− −8− CALL におけるオートノミー(2) −その変容と習熟度,語彙サイズおよび学習時間との関係− 村里泰昭 1・井原 健 2・齋藤 靖 2・折田 充 3 本研究は、CALL (Computer-Assisted Language Learning) におけるラーナーオートミー(学習者の自 律)をテーマとした村里他 (2010) の継続研究である。村里他では、CALL によって英語学習を行う科目を 履修した大学 1 年生 (210 名 ) に対して実施した「英語学習における自律度アンケート」の結果解析から 3 つの因子が抽出され、うち「自律性」因子は、英語学習の諸側面の深まりにおいて重要な役割を果たすの みならず、英語習熟度そのものにも強く関係していることを明らかにした。また、 「自律性」は学習者の持 つ安定した因子である一方、 「達成志向」と「指示志向」という他の 2 つの因子は学習者の学習経験の量や 質によって変容する可能性が高いことを指摘した。村里他では、1 年次後学期(10 月開始)11 月時点での 学習者群から得られたデータが中心に解析された。本稿では、前研究で明らかになった特徴に関して、一 定期間の CALL による英語学習を終えるとき、同じ学習者群の持つ自律度はどのように変容するのか明ら かにすることを目的とする。さらに、学習が軌道に乗る 11 月時点および学習のまとめ上げの時期である学 期終盤 1 月時点における自律性およびその関連因子の構造上の特徴、そして、自律度と①習熟度、②語彙 サイズ、また③ CALL 学習時間との関連度を明らかにすることを目指す。 試行錯誤を重ねながらも、学習者にとって外国語学習が継続的に成功体験であり続けるためには、各学 習段階における自らの目標言語の習熟度を理解した上で、学習の目標や目的を意識化(必要ならば修正) できること、学習方略を含む学習方法を適切に選択し実行できること、そして学習が進行するにつれて習 熟度や学習方略等を適宜振り返り、学び方を強化あるいは変更できることが肝要となる。これは、学習者 が自身の外国語学習全般に責任を持つ学習者の自律(learner autonomy; ラーナーオートノミー)に関わ る(井原他 , 2008; 折田 , 2010; 村里他 , 2010) 。加えて、 折田 (2007) が指摘するように、 高次のラーナーオー トノミーを学習者が身につけること、またそのために適切な指導とサポートを教師が行っていくことは、 カリキュラム上では限られた直接指導の機会と時間しか確保できない多くの大学の教養英語教育において 今後いっそう重要となる。そこでは、学習者が学習に関わる様々な決定を独り立ちして下していける能力 および積極性 (willingness) が重要となり (Littlewood, 1996)、自らの学習全般について自己管理できるこ と、またその能力を培っていけることが欠かせない (Benson, 2001; Cotterall, 2006; Holec, 1981; Murray, 1999; Schwienhorst, 2008a)。外国語学習におけるラーナーオートノミーの発達においては、学習者を支 援する教師の役割も大きく (Jones, 1995; Littlemore, 2001; Shimo, 2003)、時宜にかなった教師の指導・ 助言は不可欠であり、学習者が孤立するような学習環境は望ましくない (Benson, 1996; Lee, 1998; Little, 2000)。 英語学習におけるラーナーオートノミーの変容について、村里・折田 (2010) は、英語に苦手意識を持つ 大学 1 年生を対象とした、 自律的な英語学習の「育ち」のための指導を組み込んだ半期の「やり直しの英文法」 を通して、被験者の自律度は高まったと報告している。折田 (2010) は、教養英語科目(リスニング応用) を受講した大学 2 年生が、半期の自律性の涵養・育成のための指導を通してその自律度に関する意識が高 まる一方、 「授業中心志向」と「方略使用志向」の因子は、その構造に解体・統合が生じ、新しい因子( 「自 1 2 3 教育学部 文学部 大学教育機能開発総合研究センター −9− 覚的学習志向」と「授業重視志向」 )に変容したと述べている。しかし、 「自律性」因子は、指導の「事前」 と「事後」間で安定した因子として被験者の中に存在するのみならず、さらに明確で堅固な因子となった と報告している。村里他 (2010) では、同一大学において入学して最初の学期(前学期)に CALL で学ん だ学習者群と後学期に CALL で学んだ別々の学習者群から抽出された自律度に関係する因子(3 つ)を比 較して、一つ目の「自律性」因子はほぼ同様のものが検出された。一方、残りの「依存性」因子と「堅実性」 因子は解体・再構成され、 「達成志向」因子と「指示志向」因子となった。これらの研究から、 「自律性」因 子については、調査時期や履修する英語科目に関わらず、大学教養教育レベルの英語学習者を特徴づける 安定した因子であると言える。また、自律度が伸長するためには学習者は学習開始時点において相応のオー トノミーを既に身につけている必要があること (Blin, 1999; Figura & Jarvis, 2007; Schwienhorst, 2008b) を考えると、これらの研究における大学生は研究の開始時点において既に相応の自律性を身につけていた ことも推察できる。一方、 「自律性」以外の因子に関しては、学年、英語習熟度、また受講科目を含む様々 な要因から学習者の中で変容する可能性が高いと予想される。では、同一の被験者群について、一定期間 の CALL による英語学習に取り組んだ前後でも同様の特徴や変容があるのか。本研究では、この問題に答 えたいと考える。 村里他 (2010) では、リスニングおよびリーディングの両技能に関して、英語習熟度テスト結果と語彙サ イズテスト結果の間には有意な相関が得られ、井原他 (2008)、片山 (1995)、そして酒井 (2010) などの先 行研究と同じく、語彙サイズが英語習熟度の指標となりうることを確認した。一方、井原他 (2008) や折田 (2005) と同様に、習熟度と CALL 学習時間の間には有意な相関は観察されなかった。しかし、各自律度 因子と語彙サイズや習熟度の間には有意な正の相関が検出された。これらのことから、村里他は、自律度、 とりわけ「自律性」因子の値に反映される学習者の特性を伸長させることに、英語習熟度を伸長させる効 果が期待できるとまとめている。前述したように、村里他は CALL による英語学習が軌道に乗った 11 月 時点における被験者の特徴を解析し、先行研究と比較している。では、この被験者群に関して、学習の仕 上げの時期である学期末では各自律度に関する因子と語彙サイズや英語習熟度の関連はどうなるのか。こ の問題についても明らかにしたい。 村里他 (2010) は、上位群と下位群の間で、 「自律性」因子と語彙力の間で有意な差異があり、英語学習 における「自律性」が高く、しかも語彙サイズのある学生は、より高い英語習熟度を持つと言えると指摘 している。一方、 「達成志向」と「指示志向」因子については、このような上位群と下位群間の差異は検出 されなかった。これらのことから、CALL 学習指導においては、学習目標設定やそれに向けた取り組み、 また学習時間や方法に関する指導を行うに当たり、学習者自身の自律性を発揮させ、自ら伸長させること を尊重する視点を教師が持つことも、学習者の習熟度を高めるために必要であること結論付けている。本 研究では、学期末における自律度に関する各因子と語彙サイズや英語習熟度の関係について、上位群と下 位群間の差異の有無についても解明することを目指す。 以上の先行研究の概観と問題意識を踏まえて、本研究では次の 3 つの研究課題について明らかにするこ とを目指す。 (a) CALL による英語学習が軌道に乗る学期中盤と学習のまとめ上げの時期である学期終盤の学習者の自律 度は、それぞれどのような特徴的な傾向を持つか。また、学習者の英語学習における自律度はこの間変 容するか。 (b) 抽出された自律度因子と、英語習熟度、語彙サイズおよび学習時間の間にはどの程度の関連性がみられ るか。 − 10 − (c) 抽出された自律度因子、英語習熟度、語彙サイズおよび学習時間について、上位群と下位群の間には差 異がみられるか。 方法 被験者 本研究の被験者は、2009 年度後学期に熊本大学の教養英語教育において我々が担当した一年次の CALL による英語学習科目である必修外国語科目英語 B-2(合計 5 クラス)を受講した学生のうち、本研究に関 係するデータが収集できた学生 210 名(教育学部 40 名、理学部 43 名、工学部 85 名、医学部保健学科 42 名)である。このうち習熟度テスト(TOEIC-IP)と語彙サイズ判定テストを受験し、かつ、学期中盤およ び終盤の 2 度の機会に実施した「英語学習における自律度アンケート」に共に回答し、その結果が抽出さ れた 149 名の学生(教育学部 31 名、理学部 22 名、工学部 65 名、医学部保健学科 31 名)を対象に、 「英 語学習における自律度アンケート」結果について因子分析を行い、抽出された自律度因子と本研究におけ る他の変数(語彙サイズ,英語習熟度テストおよび CALL 学習時間)間の関連性の解析を行った( 「英語学 習における自律度アンケート」については後述する) 。なお、学生は教養教育において同学期に英語 B-2 の ほかに必修英語科目を一科目履修した。 学習指導 英語 B-2 は、英語学習ソフトウェアと本学で開発された学習支援システムが統合化された CALL システ ムを活用し、授業内および授業外の学習を通して、自主的かつ計画的に学習に取り組む姿勢を培い、4 技能 の中でも特にリスニング力とリーディング力を伸ばすこと、また、TOEIC 試験に対応する英語力を身につ けることを授業目標とする科目である(安浪他 , 2005a, 2005b) 。英語 B-2 では共通化された学習指導が行 われており、全 15 回の授業について、大学教育機能開発総合研究センター・カリキュラム開発部門 CALL 担当教員による授業計画が示され、それを踏まえて各授業担当者は授業を展開する(ただし、各回 30 分は 副教材などによる担当者独自の授業を行う) 。初回の授業では、PC 操作ガイダンス、教材ガイダンス、そ して「レベル診断テスト」 (オンラインで実施)が行われる。第 2 回授業では、学生は「英語語彙サイズ判 定テスト」を受験(第 1 回。第 2 回は学期の後半に受験)するとともに「英語コミュニケーション能力に 関するアンケート」に回答する。 「英語語彙サイズ判定テスト」および「英語コミュニケーション能力に関 するアンケート」の詳細については、髙橋 (2007) および村里他 (2010) を参照のこと。 学習者を支援する、本学の CALL 英語学習支援システムの特色は、その学習履歴情報の視覚提示システ ムにある。このシステムによって、学生は CALL による学習状況について、学習時間(累計および各学習 機会の、授業時間内と授業時間外の色分けグラフ提示)および学習終了ユニットデータ(毎日更新)をログ イン時に個々に確認できる。学生は、学習時間と学習終了ユニットについてのクラスや各学期全受講者の 中での自らの相対的な位置、授業内外の総学習時間についてのクラスの中での相対的な位置、また各学習 機会の総学習時間(時系列で提示)という 3 種類の情報を確認できる(安浪他 , 2005b) 。授業担当者は、こ れらの情報や授業内外の学生の取り組み状況を踏まえて、全体的あるいは個別的な指導を行うことになる。 英語 B-2 を履修する学生は、 英語学習ソフトウェア NetAcademy 2(アルク社)の「スタンダードコース」 中のリスニングコースおよびリーディングコース(各 80 ユニット)のうち、32 ユニット(40%)以上を 学期末までに終了することが義務付けられている。その終了のために、学生は授業内だけでなく授業外で も CALL 学習に取り組むことが欠かせない。併せて、 「初・中級コース」の「TOEIC(R)テスト演習コース」 (ただし、2010 年度からは「TOEIC(R) テスト演習 2000 コース」に変更)の No. 1 と No. 2 の受験が必須 − 11 − とされている。No. 1 は学期当初あるいは前半に、後者は後半に受験する。受験直後に TOEIC に対する換 算点を確認できる。また、初回の授業において「レベル診断テスト」を受験し、受験直後に提示される診 断結果をもとに、5 段階にレベル分けが標示されている各ユニットについて、学生自ら判断する適切なレベ ルから学習を開始するように指導される。これらは、英語 B-2 履修において単位取得のためには受験が必 須となっている TOEIC-IP 受験に向けての自らの英語力の把握および英語学習への動機付けの形成・維持 に寄与することを目的としている。 上に概略したように、本学の CALL 学習指導では、自律的な英語学習者の育成とその英語力の伸長を念 頭に、システム化されたきめ細やかな指導が行われていると言える。我々も、この理念と共通化された指 導体系に基づいて本研究における学習指導を行った。 英語学習における自律度アンケート 2009 年 11 月初旬および 2010 年 1 月下旬に、オンライン上で「英語学習における自律度アンケート」 を実施した。同アンケートは、McGrath (2007) の自律度アンケートで用いられた 24 項目に独自の 6 項目 を加え(合計 30 項目) 、1 を「全く賛成できない」 、5 を「大いに賛成できる」とする 5 件法尺度によるも のとした( 「英語学習における自律度アンケート」のアンケート項目については井原他 (2008) を参照のこ と) 。 CALL学習時間 被験者の CALL 学習時間は、英語 B-2 において共通に取り組んだソフトウェア NetAcademy 2「スタン ダードコース」のリスニング力強化コース、リーディング力強化コースおよび両者の合計について、学習 開始から学期が後半に入る時点(2009 年 12 月 24 日 24:00)における被験者の累計 CALL 学習時間を分 析対象のデータとした。 英語習熟度テストと語彙サイズテスト 英語習熟度をみるものとして、被験者が 2009 年 12 月 12 日(あるいは 19 日)に受験した TOEIC-IP 得点を採用した。また、前述した「英語語彙サイズ判定テスト」結果を本研究における被験者の語彙サイ ズの推定値として用いた。 データ分析 ①英語学習における自律度アンケート結果、②習熟度テスト結果、③語彙サイズテスト結果および④ CALL 学習時間について以下の分析を行った。まず、研究課題 (a) に関連して、①について因子分析を行い、 被験者群の自律度因子を抽出した。次に、研究課題 (b) に関連して、②∼④について、平均、SD (標準偏差) 等の基本統計量を計算した上で、①で抽出された自律度因子も併せて、相関係数を計算し、各変数間の関 連性の程度を解析した。そして、研究課題 (c) に関連して、習熟度テストの結果に基づき上位群および下位 群(各 50 名)を決定し、各群の自律度アンケート結果、語彙サイズテスト結果および CALL 学習時間に 関して、両群間の差異の有無を検定した(t 検定) 。 結果と考察 英語学習における自律度の変容 研究課題 (a) に関して、学期の中盤および終盤における学習者の特徴づけに寄与している要因を明らかに − 12 − するため、各時期に実施した自律度アンケート 30 項目の回答結果に対してそれぞれ主因子法による因子分 析を行った。村里他 (2010) では、今回と同じ母集団に属する被験者のうち、アンケートに回答し、かつ習 熟度テストを受験した被験者を抽出し、これを前学期に CALL 英語を受講し、同一条件を満たす被験者群 と比較分析を行ったが、今回の研究のねらいが、同一被験者の自律度の変容を把握することにおかれてい たことから、新たに被験者群を限定し、全ての水準を厳密に対応させて分析を行う方針を採用した。前回 の分析結果から、3 因子が抽出される見通しを得ていたが、因子分析に当たっては、被験者群の違いに伴っ て因子数が変動する可能性も含みに入れて、予め因子数を特定せず、固有値の衰退状況を参考にして探索 的に因子数を決定した。さらに、共通性と因子負荷量を参考に学期中盤については 19 項目、終盤について は 23 項目まで絞り込みながら、主因子法とプロマックス回転を用いた因子分析を繰り返し実施し、学期中 盤においては前回の分析により得られた因子数と同じ 3 因子、終盤については 4 因子が抽出される結果と なった。表 1 にプロマックス回転後の因子パターンを示す。なお、第 1 因子から第 3 因子の累積寄与率は 39.75%であった。 表1.学期中盤における自律度アンケート項目の因子分析結果(プロマックス回転後) I II III Q27 私は英語の学習について、自分がどれくらい学んでいるのか適切にチェックできる。 .75 -.07 -.13 Q25 私は英語の学習を独力で進めていける自信がある。 .69 -.21 .10 Q26 私は英語の学習について、自分が学んだことを適切に評価できる。 .67 -.05 -.04 Q28 私は英語の学習について、内容や進度を自分で決めることができる。 .66 .18 -.07 Q01 私は自分なりの英語の勉強方法を知っている。 .61 .04 .17 Q30 私は英文の仕組みがわからないとき、文法 ( の参考 ) 書やインターネット上のサイトなどを適切に利用してそれを解決できる。 .57 .07 -.01 Q07 私には、どれくらい英語力がついたのか自分をテストする、自分なりの方法がある。 .53 -.10 .11 Q23 英語を学ぶ上で困ったことについて、私は自分で解決策を見つけるのが好きだ。 .52 .06 .08 Q24 私は授業よりも、授業以外の自分独自の勉強を通して多くのことを学ぶことができる。 .52 .06 .13 Q12 これまでの学習を振り返ると、私は英語の学習を上手に行っている。 .48 .03 .26 Q03 英語力をつけるために役に立つ題材や情報などをどのようにして見つけるか、私は知っている。 .46 .01 .21 Q17 私は英語の先生に自分の英語の間違いを訂正してもらうことが好きだ。 -.05 .72 .12 Q13 私は英語の先生に私の問題点を指摘してもらうことが好きだ。 -.11 .68 .22 Q15 授業中に取り組むことを先生に指示してもらうことが、私は好きだ。 -.03 .57 -.35 Q05 英語の先生からどれくらい私の英語力がついているのか教えてもらうことは、私には必要である。 .15 .54 -.04 Q16 授業中に一つの学習活動にどれくらいの時間をかけたらよいか先生から指示してもらうことが、私は好きだ。 -.40 Q10 どれくらい自分の英語力がついているかについて、英語の先生に話すことは役に立つ。 Q08 Q09 .13 .50 -.02 .45 .21 私は学んだ英語を使ってみることが好きだ。 .18 .18 .47 私は自分が何のために英語を学ぶのか、はっきりした考えを持っている。 .26 .07 .47 第 1 因子は、Q30 を除く全ての下位項目が前回の分析で得られた「自律性」因子と同一であり、学習者 自身の英語学習に対する自信や自律性を表す項目が高い負荷量を示していたことから、同じく「自律性」 因子と命名した。第 2 因子は、教師の指示や授業活動に対する依存を意味する項目が高い負荷量を示して いたことから「依存性」因子と命名した。この因子と、前学期終了時期のアンケート結果を対象とした井 原他 (2008) の同名の因子の間には多くの下位項目の一致が観察される。第 3 因子は、実用を前提に英語を 学ぼうとする姿勢が反映される 2 項目からなる「実用志向」因子と命名した。 この分析結果に基づき、英語学習における自律度の 3 つの下位尺度に当たる項目の平均値を算出し、下 位尺度得点とした。内的整合性を検討するために各下位尺度のα係数を算出したところ、 「実用志向」につ いては、項目数の不足によりα =.63 という低い信頼性に留まったが、 「自律性」と「依存性」については、 − 13 − α =.86、α =.73 と共に十分な値を示したため、下位尺度間の相関を求めた。表 2 にそれぞれ結果を示す。 3 つの下位尺度のうち、互いに正の相関を示しているのは、 「自律性」と「実用志向」のみであり、 「依存 性」と他の因子の間には相関が観察されなかった。下位尺度毎の平均値を参考にし、この結果から推測さ れる被験者の特徴として、平均値においては依存性や実用志向に若干劣るものの、CALL 英語の学習に本 格的に取り組み始める時点において、既にある程度高い自律性を有している学習者が多く含まれること、 「依 存性の」高低は「自律性」と共に変動する訳ではないことを指摘できる。また、 「自律性」の高い学生には 実践を重んじ学習者としての確かな自覚を持った被験者が比較的多く含まれることが予想される。 表2.学期中盤の自律度下位尺度間相関、平均値および標準偏差 自律性 自律性 依存性 − 依存性 実用志向 ** 平均 SD 0.01 0.43 2.79 0.65 − 0.11 3.29 0.65 − 3.42 0.97 実用志向 ** p < .01. 次に、2 ヶ月にわたる学習結果、学習者の特徴付けに寄与する要因がどのように変化するかを検討するた め、学期終盤における自律度アンケート結果を対象に実施した因子分析によって得られたプロマックス回 転後の因子パターンを表 3 に示す。累積寄与率は第 3 因子までで 38.90%、4 因子全ての累計では 44.24% であった。 表3.学期終盤における自律度アンケート項目の因子分析結果(プロマックス回転後) I II III IV Q27 私は英語の学習について、自分がどれくらい学んでいるのか適切にチェックできる。 .78 .13 -.11 Q26 私は英語の学習について、自分が学んだことを適切に評価できる。 .70 .19 -.03 .02 Q25 私は英語の学習を独力で進めていける自信がある。 .66 -.11 .07 -.30 Q12 これまでの学習を振り返ると、私は英語の学習を上手に行っている。 .55 .08 .02 -.22 Q07 私には、どれくらい英語力がついたのか自分をテストする、自分なりの方法がある。 .50 -.08 -.05 .13 Q03 英語力をつけるために役に立つ題材や情報などをどのようにして見つけるか、私は知っている。 .50 .13 .20 .02 私は英語の学習について、内容や進度を自分で決めることができる。 .49 -.22 -.04 .31 Q01 私は自分なりの英語の勉強方法を知っている。 .41 -.14 .35 .27 Q24 私は授業よりも、授業以外の自分独自の勉強を通して多くのことを学ぶことができる。 .35 -.23 .28 -.16 Q16 授業中に一つの学習活動にどれくらいの時間をかけたらよいか先生から指示してもらうことが、私は好きだ。 .10 .72 -.20 .02 Q17 私は英語の先生に自分の英語の間違いを訂正してもらうことが好きだ。 -.04 .65 .29 -.02 Q13 私は英語の先生に私の問題点を指摘してもらうことが好きだ。 -.03 .63 .17 -.07 Q15 授業中に取り組むことを先生に指示してもらうことが、私は好きだ。 -.05 .63 .03 .03 Q10 どれくらい自分の英語力がついているかについて、英語の先生に話すことは役に立つ。 .36 .52 -.12 .25 私は授業中の活動に積極的に参加することが好きだ。 -.07 .17 .55 .03 Q09 私は自分が何のために英語を学ぶのか、はっきりした考えを持っている。 .18 .06 .53 -.07 Q08 私は学んだ英語を使ってみることが好きだ。 .05 .06 .52 .07 Q20 英語を書いているときに間違ったら、私は自分で直そうとする。 -.06 -.01 .50 .22 私は英語を読んだり聞いたりしてわからない単語や表現があったとき、辞書を適切に使ってそれを解決できる。 -.02 -.08 .41 .29 Q18 私はクラスメートも私の英語の学習の助けになると思う。 -.10 .05 .18 .61 Q05 英語の先生からどれくらい私の英語力がついているのか教えてもらうことは、私には必要である。 -.04 .39 .08 .47 Q14 私は主に授業を通して英語の力をつけたいと思う。 -.17 .37 .14 .41 私は自分の英語について得意な面と苦手な面をわかっている。 .27 -.06 .33 .38 Q28 Q22 Q29 Q02 − 14 − -.05 第 1 因子の下位項目は、学期中盤の第 1 因子とほぼ同一であることから、同様に「自律性」因子と命名 した。項目数こそ減少したものの、第 2 因子も学期中盤の第 2 因子の下位項目との共通性が高いため、 「依 存性」因子の名称を採用した。第 3 因子は、学期中盤の第 3 因子の下位項目を核として他の関連する項目 を併合する因子となっており、 「実用志向」の名称を継承することにした。最後に、第 4 因子は、自ら学習 する必要性は感じながらも、その実践には何らかの励ましが必要だと感じていような被験者像を想起させ る項目からなる「援助志向」と命名した。 この分析結果に基づき、学期終盤の学習における 4 つの自律度の下位尺度の平均値をそれぞれ算出し、 下位尺度得点とした。内的整合性を検討するために各下位尺度のα係数を算出したところ、 「実用志向」と 「援助志向」については、それぞれα =.68、α =.67 と、思わしくない信頼性のレベルに留まったが、 「自律 性」と「依存性」については、α =.81、α =.76 と共に十分な値を示したため、下位尺度間の相関を求めた。 表 4 にそれぞれ結果を示す。 表4.学期終盤の自律度下位尺度間相関、平均値および標準偏差 自律性 自律性 依存性 − 0.03 依存性 − 実用志向 援助志向 平均 SD 0.32 0.08 2.77 0.62 0.30** 0.51** 3.06 0.72 − 0.48** 3.56 0.65 - 3.59 0.76 実用志向 ** 援助志向 ** p < .01. 表 4 より、相関の度合いが若干弱まったものの、 「自律性」と「実用志向」の間には学期中盤とほぼ同様 の関係が存在していることが確認できる。また、4 つの下位尺度のうち「自律性」を除く 3 つの因子間に 相互の結びつきが観察されているが、 「援助志向」は、そもそも学習継続の援助を授業に求める姿勢を反映 する因子であり、 「実用志向」も授業を学習者にとっての貴重な実践の場ととらえるならば、 「依存性」と の間に相関が観察されるのも不思議ではない。 以上 2 つの因子分析の結果から、各因子の内容には若干の変容があり、因子構成自体にも分節化が生じ ているものの、 「自律性」 、 「依存性」および「実用志向」が学期中盤と終盤のいずれの時期においても学習 者を特徴付ける代表的な因子であることは間違いない。そこで、学期中盤における 3 因子の下位項目の平 均値の変化を観察するため、t 検定を実施した。検定の結果を表 5 に示す。 表5.学期中盤と学期終盤における自律度アンケート全項目および学期中盤因子下位尺度の比較 学期中盤 学期終盤 t値 (両側検定) 平均 SD 平均 SD 差 自律性 2.79 0.65 2.89 0.55 0.10 2.61* 依存性 3.29 0.65 3.16 0.71 -0.13 -2.55* 実用志向 3.42 0.97 3.40 0.96 -0.02 -0.26 * p < .05. 学期中盤と学期終盤の間の平均値の差異は極めて大きいとは言えないが、CALL 英語の学習経験が「自 律性」の増加と「依存性」の減少をもたらす効果を持つことは否定できない。さらに、いずれの下位項目 が各因子の平均の変動や、因子構成の変化に影響を及ぼしているかを検討するため、学期中盤と終盤にお ける自律度アンケート結果の項目毎の平均値を t 検定を実施して比較した。検定の結果を表 6 に示す。なお、 各項目は、学期中盤の因子構成に従って配列されている。 − 15 − 表6.学期中盤と学期終盤の自立度アンケート結果の項目別比較 因子 自律性 依存性 実用志向 項目 学期中盤 平均 SD 学期終盤 平均 SD Q01 3.07 1.10 3.19 1.07 0.12 1.40 Q03 2.54 0.93 2.87 0.95 0.34 3.70** Q07 2.35 1.02 2.50 1.05 0.15 1.51 Q12 2.40 0.98 2.42 0.93 0.03 0.34 Q23 3.28 0.97 3.26 0.83 -0.02 -0.25 Q24 2.89 1.04 2.92 0.95 0.03 0.32 Q25 2.43 1.05 2.58 1.05 0.15 1.70 Q26 2.69 0.91 2.83 0.91 0.13 1.44 Q27 2.57 0.97 2.70 0.97 0.13 1.61 Q28 2.97 1.01 2.95 1.00 -0.01 -0.14 Q30 3.45 1.04 3.53 0.96 0.08 0.80 Q05 3.80 0.96 3.68 1.02 -0.12 -1.44 Q10 3.07 0.97 2.91 0.99 -0.17 -1.80 Q13 3.12 1.04 3.13 1.04 0.01 0.08 Q15 3.20 0.94 3.03 1.04 -0.17 -1.82 Q16 2.95 1.06 2.79 1.00 -0.15 -1.68 Q17 3.62 0.98 3.43 0.95 -0.19 -2.10* Q08 3.44 1.07 3.41 1.14 -0.03 -0.36 Q09 3.40 1.20 3.39 1.14 -0.01 -0.07 Q02 3.57 0.96 3.58 1.03 0.01 0.08 Q04 4.34 0.73 4.06 0.98 -0.28 -3.46** Q06 3.03 1.05 3.28 1.00 0.26 2.64** Q11 3.25 1.24 3.30 1.16 0.05 0.45 Q14 3.97 0.93 3.59 1.10 -0.38 -4.06** Q18 3.83 1.03 3.52 1.10 -0.31 -3.06** Q19 3.23 0.97 3.32 0.99 0.09 1.07 Q20 4.00 0.76 3.87 0.81 -0.13 -1.66 Q21 3.23 1.02 3.24 0.89 0.01 0.08 Q22 3.30 0.89 3.29 0.92 -0.01 -0.19 Q29 3.95 0.90 3.85 0.85 -0.11 -1.37 96.93 11.58 96.43 12.06 0.50 0.62 合 計 差 t値 (両側検定) * p < .05, **p < .01. 「自律性」因子の下位項目では、Q03「英語力をつけるために役に立つ題材や情報などをどのようにして 見つけるか、 私は知っている」が唯一有意に増加しており、 この因子全体の微増に貢献していることが分かっ た。 「依存性」 因子では、 Q17 「私は英語の先生に自分の英語の間違いを訂正してもらうことが好きだ」 のみが、 若干の減少を示しているが、有意性は確認されないものの、他の項目の平均値のほとんどが僅かに減少し ている。一方、 「実用志向」の 2 項目には増減が観察されなかった。なお、3 因子以外の項目のうち、Q4「自 分の英語力の伸び具合を知ることは、私には重要である」と Q14「私は主に授業を通して英語の力をつけ たいと思う」は減少の傾向、Q6「英語の学習において、英語の先生が定期的にテストをしてくれると助か る」と Q18「私はクラスメートも私の英語の学習の助けになると思う」には増加の傾向がそれぞれ観察され、 これらの増減が、学期終盤における「援助志向」という新たな特徴付けの出現に関与していると思われる。 総じて、有意な増減が観察されたこれらの項目は、CALL 英語授業の学習形態や学習の道具立てと密接に 関わる点において共通していると言える。なお、各因子の下位尺度を用いた比較結果からも容易に予測で きることではあるが、学期中盤と終盤の自律度合計の間には有意な平均の差が見られなかった。 − 16 − 以上の結果から、研究課題 (a) について、約 2 ヶ月程度の CALL 英語の学習経験では学習者の自律度に 関わる特徴に大きな変化を期待することはできないが、学習者が自ら学ぶ手だてを選択し、活用すること を可能にするよう、学習環境を充実させることによって、 「自律性」を向上させる効果を得ることは可能で あると思われる。 英語習熟度、英語学習における自律度、語彙サイズおよび CALL 学習時間の関係 研究課題 (b) に関して、今回得られたデータ間にどのような関係性が存在するかを分析する。まず英語習 熟度の指標として採用した TOEIC-IP テストの得点(リスニング、リーディング、総合) 、英語学習におけ る自律度アンケートの結果( 「自律性」11 項目、 「依存性」6 項目、 「実用志向」2 項目の下位尺度合計、全 項目合計) 、語彙サイズ判定テスト結果、および、CALL 学習時間(リスニング学習時間、リーディング学 習時間、総学習時間)の基本統計量を表 7 に示す。自律度アンケートは、全 30 質問項目に対し「まったく 自信がない」との回答を 1 点、「とても自信がある」 との回答を 5 点として得点化した。なお、課題 (a) の 検討の結果、学期中盤と終盤の自律度の傾向には顕著な相違が見られなかったため、自律度の尺度には学 期中盤の結果のみを採用している。 表7.TOEIC-IP 得点、自律度アンケート結果、語彙サイズおよび CALL 学習時間の基本統計量(N =149) L 得点 R 得点 総点 237.99 192.45 52.50 最小値 実用志向 自律度合計 (10) (150) 自律性 依存性 430.44 30.63 19.75 6.83 96.93 43.53 85.83 7.18 3.88 1.93 100.00 105.00 205.00 11.00 7.00 最大値 440.00 365.00 795.00 50.00 中央値 230.00 190.00 425.00 31.00 平均値 SD 語彙 合計 L 時間 R 時間 4285.57 4.40 5.98 10.38 11.58 658.48 2.68 3.08 4.71 2.00 64.00 2950.00 0.10 0.90 1.70 29.00 10.00 128.00 7150.00 16.32 16.82 33.14 20.00 7.00 96.00 4250.00 3.91 5.34 9.28 サイズ 時間 (注)L 得点= TOEIC-IP テストのリスニング得点、R 得点= TOEIC-IP テストのリーディング得点、総点= TOEIC-IP テストの総点、自律性 =自律性下位項目合計、依存性=依存性下位項目合計、実用志向=実用志向下位項目合計、自律度合計=英語学習における自律度アンケー ト全項目合計、L 時間=リスニング学習時間、R 時間=リーディング学習時間、合計時間=リスニング学習時間+リーディング学習時間。 学習時間の単位は時間(h)。 さらに、英語習熟度、自律度アンケート結果、語彙サイズ判定テスト結果、CALL 学習時間といった各々 のデータ間の相関度を計算した。その結果を表 8 に示す。 表 8 より、自律度因子のうち「自律性」と「実用志向」には英語習熟度や語彙サイズとの間に弱い相関 があり、前者の相関の強さは後者を上回ることが明らかになった。これに対し、 「依存性」因子は、他の尺 度との間に一切相関を示さなかった。また、語彙サイズは英語習熟度のリスニングとリーディングのいず れの尺度との間にも中程度の相関を有していた。なお、先行研究においては、他の尺度との相関を一切見 せなかった学習時間が、本研究の調査結果においては、リスニングの学習時間が語彙サイズとの間に弱い ながらも相関を示という一見すると不可解な結果となったが、この点も含め、各尺度間の有意な関係につ いては、研究課題 (c) に関わる検証の結果と併せて考察を加えることとする。 − 17 − 表8.自律度、TOEIC-IP 得点、語彙サイズ、および CALL 学習時間の相関 自律性 依存性 − 0.01 自律性 依存性 自律度 実用志向 − 実用志向 合 計 L 得点 R 得点 総点 語 彙 サイズ L 時間 R 時間 合 計 時 間 0.43** 0.80** 0.32** 0.34** 0.37** 0.36** 0.08 0.11 0.12 0.11 0.50** 0.06 0.00 0.04 0.04 0.04 -0.11 -0.05 − 0.56** 0.25** 0.28** 0.29** 0.21* ** ** ** 自律度合計 − L 得点 0.33 − R 得点 0.12 -0.12 -0.01 ** 0.05 0.34 0.37 0.33 0.10 -0.02 0.59** 0.91** 0.45** 0.04 0.00 0.02 − 0.87** 0.47** 0.12 0.01 0.07 0.51** 0.09 0.00 0.05 総点 − 語彙サイズ − ** 0.22 ** − L 時間 0.18* 0.08 R 時間 0.33 0.79** − 0.84** 合計時間 − (注)自律性=自律性下位項目合計、依存性=依存性下位項目合計、実用志向=実用志向下位項目合計、自律度合計=英語学習における自律度 アンケート全項目合計、L 得点= TOEIC-IP テストのリスニング得点、R 得点= TOEIC-IP テストのリーディング得点、総点= TOEICIP テストの総点、L 時間=リスニング学習時間、R 時間=リーディング学習時間、合計時間=リスニング学習時間+リーディング学習時間。 学習時間の単位は時間(h) 。*p < .05, **p < .01. 英語学習における英語習熟度と自律度、語彙サイズ、学習時間の関係:上位群と下位群の相違 研究課題 (c) に関して、英語習熟度と、他の変数、とりわけ英語学習における自律度の関係をより明らか にするため、 分析対象者 149 名のうち、 TOEIC-IP テスト総得点の上位 50 名と下位 50 名のグループを作り、 上位群と下位群間で、英語学習における自律度アンケート結果、語彙サイズ判定テスト結果、CALL 学習 時間において t 検定を行い、有意差がある要素は何かを検討した。 TOEIC-IP テスト得点、自律度アンケート結果、語彙サイズ判定テスト結果、CALL 学習時間において、 英語習熟度の上位群と下位群を比較した結果を表 9 に示す。なお、等分散性の仮説が棄却された場合は Welch の検定によった。 表9.TOEIC-IP 得点上位群と下位群における TOEIC-IP 得点、自律度、語彙サイズ、および CALL 学習時間 下位群 L 得点 R 得点 総点 上位群 t値 F値 ( 両側検定 ) ( 両側検定 ) 平均 SD 平均 SD 差 192.10 30.49 289.20 44.12 97.10 12.80** 2.09* 79.60 12.62 ** 1.94* 16.13 ** 2.96** 152.90 26.01 232.50 36.21 345.00 38.93 521.70 66.98 176.70 自律性(55) 28.32 7.42 33.88 6.93 5.56 3.87** 1.15 依存性(30) 11.71 19.62 20.14 21.06 8.43 0.64 1.80* 実用志向(10) 自律度合計 (150) 語彙サイズ ** 1.06 1.09 6.42 1.73 7.84 1.78 1.42 4.05 93.14 11.37 102.76 11.86 9.62 4.14** 772.00 6.32 ** 2.07* * 1.83* 3938.00 493.17 L 時間 3.78 2.05 R 時間 5.78 合計時間 9.57 4710.00 709.70 4.93 2.77 1.15 2.36 2.64 5.70 3.04 -0.09 0.16 1.32 3.62 10.63 5.07 1.06 1.20 1.96* (注)L 得点= TOEIC-IP テストのリスニング得点、R 得点= TOEIC-IP テストのリーディング得点、総点= TOEIC-IP テストの総点、自律性 =自律性下位項目合計、指示志向=指示志向下位項目合計、実用志向=実用志向下位項目合計、自律度合計=英語学習における自律度ア ンケート全項目合計、L 時間=リスニング学習時間、R 時間=リーディング学習時間、合計時間=リスニング学習時間+リーディング学 習時間。学習時間の単位は時間(h)。*p < .05, **p < .01. − 18 − 表 9 より、英語習熟度の高い被験者の「自律性」と「実用志向」は、英語習熟度の低い被験者よりも高 いことが明らかになった。一方、 「依存性」については、この比較結果においても習熟度との間に関係が見 いだせなかった。また、習熟度の高い被験者は語彙サイズも比較的大きいと言える。なお、相関の検討に おいて語彙サイズとの間に関係が見いだされたリスニングの学習時間の差が、この分析においては習熟度 の高低に対応していることが明らかになった。 これらの結果に研究課題 (b) に関わる相関関係の検討結果をふまえて分析を加えるならば、研究課題 (c) について、概ね次のような考察が得られる。 学習者の自律度、とりわけ「自律性」の高さは英語の習熟度の高さを裏付ける特性であるのに対し、 「依 存性」に関わる特性は習熟度の高低を左右するものではないという結果は、村里他 (2010) に一致するもの であり、学習者の「依存性」を不用意に高めるような学習指導を細部にわたって個別に行うよりも、むしろ、 自己評価に基づく学習者独自の学習方略の選択を尊重し、その実践を容易にする環境を提供することで「自 律性」 の伸長を引き出す指導を行うことが望ましいと言えるだろう。また、 今回新たに検出された 「実用志向」 と習熟度との相関は、自学自習によって獲得した知識や技能が、各学習者の明確な学習目的と結びつく状 況において実践されるよう意識付けを行うと共に、その機会を提供する方策を検討する必要性を示唆する ものである。その意味において、CALL 英語と他の英語科目の関わり方を検討する意義は少なくないと言 えるだろう。 学習者の語彙サイズと習熟度の間に強い結びつきが観察されたことは、本研究同様に CALL 英語の受講 者を対象とした井原他 (2008)、村里他 (2010) の 知見をさらに補強するものであり、英語習熟度の全般的 な向上に寄与する語彙学習のあり方についてさらに検討を深め、指導や補助的なツールの改善を行うなど、 今後の取り組みが期待される。さらに、今回の調査で初めて確認された CALL 教材のリスニング学習時間 と語彙サイズの間の相関や、習熟度上位群と下位群のリスニング学習時間の有意差の存在といった予想外 の結果を踏まえて再考すれば、語彙数の増加すなわち英語力の向上という短絡的な発想を改め、語彙学習 と習熟度との間にある関係の構造をより詳細に検討する必要があると言えるだろう。語彙力の増強を、主 として英文読解など文字言語を媒体としたリーディングの学習を通じて達成しようとする傾向が一般的な 学習者の間に存在しているとすれば、語彙サイズとの間に相関の存在が期待されるのは、当然リーディン グの学習時間であろう。この予測に反してリスニング時間の貢献が観察された背景には、大学入学以前の 学習経験が乏しいと推察されるリスニング教材の自学自習においては、学習経験が豊富なリーディング教 材の学習以上に、実践される学習方略により大きな違いが存在し、その違いが学習時間の差を生み出すと いう構造が成り立っていると推察される。語彙サイズの大きな学習者が、リスニング教材の学習において も、音声言語を聞き取る活動のみに終始するのではなく、語彙の獲得をも意識した学習を実践しているため、 学習時間が伸長していると考えるのがもっとも無難な推論と言えるだろうが、この学習時間の違いが、語 彙サイズのみならず TOEIC-IP の得点に反映される学習者の英語習熟度の高低を左右する遠因になってい ることを踏まえれば、語彙学習を含めた学習方略の豊富さを学習者の質に関わる素養として捉え直すこと ができるだろう。仮にこの推察が正しいとすれば、CALL 英語においては、単純に学習時間や頻度などの 学習の実績を量的に評価し、指導するのではなく、効果の望まれる学習方略を選択し、実践することを指 導の基礎とすることが望ましいと言えるだろう。 − 19 − まとめと今後の課題 本研究は、一定期間(半期)CALL による英語学習に取り組む大学1年生が保持する自律度因子構造の 特徴、そしてその変容について明らかにすることを目指した。解析結果から、学習が軌道に乗る学期中盤 においても、また学習のまとめ上げの時期である学期終盤においても、構成要素の内容や数に変容はある ものの「自律性」因子が抽出され、本研究の被験者群は CALL による英語学習に入っていく時点で自律性 を既に相応に身に付けていた者が少なくなかったと言える。これは、同様に CALL におけるオートノミー を研究した村里他 (2010) を支持する結果であるとともに、英文法を主眼とする科目を履修した学習者群を 対象とした村里・折田 (2010)、またリスニングに関する科目を履修した学習者群を対象とした折田 (2010) の結果とも一致する。本研究を含むこれら4つの研究の被験者となった大学生たちは、研究調査の入口に おいて、ある程度の「自律性」を既に具えていた可能性が高く、外国語の学習開始時において相応のオー トノミーを身につけている必要があるとする Blin (1999), Figura & Jarvis (2007), Schwienhorst (2008b) らの主張の妥当性を裏付けることとなった。さらに、学期中盤および終盤における「自律性」因子の平均 値が有意に増加する一方、 「依存性」因子の平均値は有意に減少し、自律度因子の変容の中身が明らかになっ た。とりわけ、 「英語力をつけるために役に立つ題材や情報などをどのようにして見つけるか、私は知って いる」という自律性が伸長し、 逆に「私は、 英語の先生に自分の英語の間違いを訂正してもらうことが好きだ」 という依存性が減少した。これは、 学習の各段階で、 リスニングおよびリーディングのいずれの学習メニュー についても自ら題材を選び、それぞれのペースで学習を進めていく CALL 特有の学習形態が強く関係し、 自律性の育ちが学習の進展とともに確固としたものに変わっていく学習者が多かったと推定される。また、 抽出された「自律性」および「実用志向」の二つの因子はいずれも、TOEIC-IP 得点および語彙サイズとの 間で有意な相関がみられた。一方、CALL 学習時間とこれらの変数の間には相関は検出されなかった(た だし、語彙サイズとリスニング学習時間には相関あり) 。学習目的の明確な意識化、また実用を前提に英語 を学ぼうとする姿勢が反映する「実用志向」因子もまた「自律性」因子と同様に学習者の英語習熟度と関 係が深く、さらに「自律性」と「実用志向」の間には学期中盤でも終盤でも有意な相関があったことは、 自律して学習を進めていくことに加えて、その取り組みが確実に英語を使えるようになることに結び付く ことを学習者に理解させることが重要であることを示唆する。オートノミーが基本となる CALL における 英語学習においても、学習者個々の英語学習における意義を明確に意識化させていく授業内外の教師の役 割はけっして小さくないことが改めて認識される。上位群と下位群を比較するとき、前者は後者よりも、 「自 律性」因子および「実用志向」因子の平均値が有意に高く、また語彙サイズは有意に大きく、そしてリス ニング学習時間は有意に多かった。特に CALL による英語学習においては、学習への「実用志向」を明確 に保持し、自律して取り組み、語彙サイズが大きく、またリスニングの学習時間が多い学習者は、英語力 も高い傾向があると言える。これらのことから、 「実用志向」因子を中心とする学習への目的意識をはっき りと持たせる指導を工夫し、自律的な学習が着実に展開されていくような教師の側からの適切な働きかけ を行うことにより、目的意識のはっきりした、そして自律して CALL による英語学習に取り組み、英語力 を伸ばしていく学習者が増えていく可能性が高いとまとめられる。 今後の課題を 3 点挙げたい。まず、授業形態にかかわらず、授業開始時に「自律性」因子や「実用志向」 因子という英語習熟度に関係が深い自律度因子が十分に身についていない学習者に、それらをどのように して培っていくのかという問題である。たとえば、自律した学習を尊重しつつも、個々の学生に対して段 階的な到達目標を提示する、あるいは学習モデルを提示するなどの指導を行い、その有効性を検証する意 義は小さくないだろう。2 点目に、英語習熟度と CALL 学習時間の関係である。本研究でも、また井原他 − 20 − (2008) や折田 (2005) においても、被験者の英語力と CALL 学習時間の間の相関度は低かった。3 ヶ月間 ないし半期という短いスパンでの CALL 学習時間をいずれの研究でも取り上げていたが、では 1 年、ある いは 2 年といった長いスパンを考えるとき、学習時間の違いは英語力の相違に反映すると予測できる。長 期間にわたる大学生の学習行動の追跡調査は容易なことではないが、何らかの方法で取り組む価値のある 研究課題であろう。そして、3 点目として、CALL における自律的な英語学習に役立つ教材の開発という 課題がある。市販の英語学習用ソフトウェアが主な学習コンテンツである本研究のような教養英語教育と の関連では、日常的に取り組む学習メニューに直接的に結びつき、学習ソフトウェアの題材の内容を発展 的に掘り下げ、学習が深まるような教材を開発する意義は少なくない。本研究で明らかにできた自律度因 子が保持され、また確実に強化・伸長している学生に対してのみならず、これらが伸びる余地の大きい学 生に対しても、CALL での学習を補助・深化する関連教材の開発は有益なものとなり得ると考える。 参考文献 井原健・折田充・齋藤靖・髙橋幸・村里泰昭 (2008).「英語学習における自律度、自信度、学習時間および英語習熟度 の関係」.『大学教育年報』第 11 号 , 10-26. 熊本大学大学教育機能開発総合研究センター . 折田充 (2005).「CALL 学習時間と TOEIC-IP 得点の関係」.『大学教育年報』第 8 号 , 9-26. 熊本大学大学教育機能開発 総合研究センター . 折田充 (2007).「ラーナーオートノミーの考え方と指導 ・ サポート―英国レディング大学の「プレセッショナル・コース」 に学ぶ」. 折田充・髙橋幸・松葉龍一(編) 『文部科学省平成 18 年度大学改革推進等補助金(大学改革推進事業) によるプロジェクト大学教育の国際化推進プログラム(海外先進教育実践支援) 「ラーナーオートノミーを育てる 英語教育改革」 』(pp. 129-146). 熊本大学 . 折田充 (2010).「英語学習における大学生の自律度の変容」 . 『九州英語教育学会紀要』第 38 号 , 49-59. 片山七三雄 (1995).「英語語彙習得の諸側面」. 投野由紀夫(編著) 『英語語彙習得論』(pp. 14-29). 河源社 . 酒井志延 (2010).「大学生の英語学習意識構造について(上)―学力の中間層が危ない」.『英語教育』58(11) , 66-68. 大学英語教育学会 (JACET) 基本語改訂委員会(編)(2003).『大学英語教育学会基本語リスト JACET List of 8000 Basic Words』. 大学英語教育学会 . 髙橋幸 (2007).「ポートフォリオを活用した教育改善と評価への取り組み―高等教育における実践例の紹介」第 4 回熊 本大学大学教育機能開発総合研究センターゼミナール(2007 年 10 月 15 日,熊本大学)口頭発表配布資料 . 村里泰昭・井原健・齋藤靖・折田充 (2010).「CALL におけるオートノミー―習熟度,語彙サイズおよび学習時間との 関連度」.『大学教育年報』第 13 号 , 9-23. 熊本大学大学教育機能開発総合研究センター . 村里泰昭・折田充 (2010).「英語学習における自律度、英文法への自信度およびその関係性」.『熊本大学英語英文学』 第 53 号 , 41-67. 安浪誠祐・髙橋幸・河津秀利 (2005a).「CALL 教材学習支援のための WebCT の活用について」 . 『大学教育年報』第 8 号 , 5-9. 熊本大学大学教育機能開発総合研究センター. 安浪誠祐・髙橋幸・河津秀利 (2005b).「LMS を活用した CALL 教材学習支援」 . 『第 3 回 WebCT 研究会予稿集』, 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Learning Learning, 10 , 2-5. − 22 − 教育研究報告 ライティング教育に向けた指導法および教材開発 ―2010 年度基礎セミナー共通講義「レポート作成の基本」報告― 大学教育機能開発総合研究センター 渡邊 淳子 はじめに 本稿は、 2010 年度基礎セミナー共通講義「レポート作成の基本」において実施したアカデミック・ライティ ング指導の内容と今後の課題についての報告である。 本講義は、本学が 2009 年度より3カ年計画で取り組んでいる文部科学省補助事業 (GP)「学習成果に基 づく学士課程教育の体系構築」の一環として企画された。講義名が示すように、アカデミック・ライティ ングの中でも学生に最も身近なレポートの作成法に特化し、基本的な構成のあらましとわかりやすい文章 の書き方についての指導を行った。 ここで言うレポートとは、単なる学習のまとめや文献要約といった学習レポートではなく、学生自身が 問題意識を持ち、 自主的に調べた事柄を報告する研究レポートを指す。研究レポートは卒業論文や卒業研究、 いわゆるアカデミック・ライティングの原型をなすものと考えられる。また、基本的なレポート作成の素 養は社会人にとっても必須の能力でもある。 今回の講義は、各クラス 90 分という短い時間の中で、構成編、文章編の2部構成で試行した。講義中、 学生には今回開発したアウトラインシートを作成させ、同シートをもとに 800 ∼ 1000 字程度の文章をつ くらせた。講義終了時には講義内容等に関するアンケートを実施した。アウトラインシート、作成文章お よびアンケートの各提出物からは、学生のライティングに対する苦手意識と不安感の高さがくみとれる一 方で、早期の基礎的教育を渇望する声も高かった。 1.背景 アカデミック・ライティング指導は一種の言語技術指導である。レポートや論文では、自らの研究結果 や主張を十分な根拠を示して正確に伝えなくてはならない。文章が論理的であるかどうかは、根拠となる 事実を順序良く丹念に組み立てているかどうかということにかかっている。わが国でも中学、高校では学 習指導要領において「根拠を明らかにし,論理の展開を工夫して書くこと」や「 論理的な構成を工夫」す ることが求められている。ただ、現実には日本の国語教育が心情の伝達を専らとする「文学教育」が主流 であるとする指摘がある。すなわち、事実と意見を峻別する基本的な訓練がなされておらず、その結果、 情報を正確に伝え、意見を理路整然と述べる力が育っていないといった批判である ( 木下 , 1994, 33-35) 。 実際のところ学生たちのライティング能力の低下を憂える声は、多くの大学で聞かれるところである。近 年は早稲田大や津田塾大など国内のいくつかの大学でライティング・センターの設置が見られるようになっ ている。これは、学部横断的に正課程外の指導を行い、学生のライティング能力の向上を図ろうという試 みである。 ラ イ テ ィ ン グ・ セ ン タ ー は、 ラ イ テ ィ ン グ・ ア ク ロ ス・ ザ・ カ リ キ ュ ラ ム (Writing Across the Curriculum) という理念に基づき、まずアメリカの大学で広がった。ライティング能力はあらゆる学生に − 25 − 必要なものであり、指導はカリキュラムの分野を超えて行われるべきであるという考え方である。1970 年代から広がり、いまや同国におけるアカデミック・ライティングの指導理念ともなっている。 (佐渡島 , 2006) ライティング・センターにおける指導の重点は、 「書いた後」でなく、 「書く前」や「書いている途中」 においての評価に置かれる (North, S. M., 1984) 。この指導方針は、ライティング・アクロス・ザ・カリ キュラムの理念に先駆けて生まれたライティング・プロセス (Writing Process) 運動に依るところが大きい (Meyer, E. & Louise, Z. S., 1987) 。指導する側は会話を通じて書き手に気づきを与え、最終的には書き手の 自立を促すことをめざすということである。すなわち、 ライティング支援の目的は、 添削によって 「よい文章」 にするのではなく、書き手が「よい文章」に自分の力で到達できるように、その方法を指導することにあ るというわけである(佐渡島 , 2008) 。 本学でも本年度、ライティング・センター準備室 ( 仮称 ) を設置し、センターの運営方法の検討や教材開 発に取り組んでいるところである。学生に対する個別指導も行い、本年度は卒論関係の8人を含め計 11 人 に対し延べ 26 回 (1 月 13 日現在 ) の指導セッションを持った。今回行った学部横断的なアカデミック・ラ イティング講義も、ライティング・センターにおけるフォローアップがあって初めて有効性を発揮しうる ものである。また、大学初年次においてアカデミック・ライティングの基礎を習得することは、学生の論 理的思考の習慣づけにつながるだけでなく、今後の学習に対する動機付けの大きな契機にもなると考えら れる。 2.講義の概要 講義は前期、後期とも、ライティング・センター準備室作成のテキスト『レポート作成の基本』をベー スに行った。前期は 199 名を最大とした大人数を対象に行った。後期は、前期から一転し、30 人前後の少 人数制の講義となった。 (1)実施期間 前期:2010 年 6 月 10 日 ( 木 ) ∼ 6 月 18 日 ( 金 ) 6 月 10 日 5 限目 受講 199 名 6 月 11 日 3 限目 受講 99 名 4 限目 受講 129 名 5 限目 受講 120 名 6 月 17 日 5 限目 受講 112 名 6 月 18 日 4 限目 受講 113 名 計 40 クラス (772 名 ) 後期:2010 年 10 月 22 日 ( 金 ) ∼ 10 月 28 日 ( 木 ) 10 月 22 日 10 月 28 日 4 限目 受講 14 名 5 限目 受講 33 名 5 限目 受講 38 名 計 7 クラス ( 85 名 ) 前・後期合計 47 クラス (857 名 ) − 26 − (2)講義内容 講義は各グループ 1 回 (90 分 ) ずつで、 「文章の構成」と「わかりやすい文章」の2部構成とした。構成 編終了後にアウトラインシートを作成させた。前期は文章編終了後に練習問題を解かせ、解答例を参考に しながら自分の手で修正させた。後期は講義前半で作成したアウトラインシートをもとに 800 ∼ 1000 字 程度の文章作成を課した。前期と後期の講義の流れは下表の通りである。 ( ( 25 7 ( 7 ( 25 ) ) ) ) ( 15 ( 15 ) ) 4 4 ( 15 ) ( 15 ) 800 (3 ) 1000 ( 20 ) 800 ( 25 ) 前期と後期の大きな違いは、アウトラインシートの改良である。前期アウトラインシートにおいては、 提起した問題についてどのような考察をして結論を導くかという概観的な作業を求めた。これに対し、後 期はレポートを構成する序論・本論・結論の3要素に沿って柱が立てられるよう、項目を細分化して提供 した。また、後期はアウトラインをつくらせるだけでなく、実際に講義時間中、アウトラインシートをも とに 800 − 1200 字程度の短い文章を書くことを求めた。文章作成の時間を捻出するため、前期に行った 文章に関する演習問題は取りやめた。 (3)教材開発 初の試みとなった本年度は、講義に合わせオリジナルテキスト『レポートづくりの基本』を作成し、学 生に配布した。作成にあたっては、①講義内容を概観するだけでなく発展させられる②実際のレポートや 論文作成に役立てられる、という二つの点を念頭に進めた。学生が気軽に手に取れるように、A 5判のコ ンパクトな形とした。また、掲載項目を厳選し必要最小限に抑えたために、総ページ数も前期が 19 ページ、 体裁を整え巻末にアウトラインシートを入れるなどの改訂を加えた後期も 27 ページに抑えた。 − 27 − 内容は講義同様、 「レポートの構成」と「わかりやすい文章の作成」の2部立てとした。 「レポートの構成」 では、序論・本論・結論の基本的な構成のほか、構想から執筆に至る作成の手順に1項目をさいた。また、 文献引用に際しての注意事項を掲げ、インターネットからのコピーペーストといった安易な文献盗用・剽 窃に対する注意を喚起した。一方、 「わかりやすい文章作成」では、 文章作成の要点を「一文一義」 「短文」 「主 述の統一性」 「曖昧表現の排除」の4点に絞り、例文を示しながら説明を試みた。 3.アンケート結果と考察 調査アイテム:所属学部、アンケート回答 (item1 ∼ 5)、感想などの自由筆記 本アンケート調査の分析は回答者の属性を、所属学部、受講前の文章作成能力に関する自己評価 ( 項目 1) の2点とし、 「レポートの構成」 「文章の書き方」各個別項目の難易度 ( 項目 4、5) と講義全体の難易度 ( 項 目 3)、 「参考になったか」( 項目 2) といった質問に対する総合評価で構成されている。 (1)結果 689 名の有効回答があった。所属学部の内訳は下表の通りであった 1 。 学部 1 前期、後期のアンケート内容は同じであるが、講義内容の違いを考慮して、アンケート結果は、前期のみを表示している。 − 28 − 各項目の結果は次の通りである。 ( 項目1) 「あなたは日ごろ文章を書くということに苦手感がありますか」 1. 「とても苦手である」 2. 「どちらかというと苦手である」 3. 「ふつう」 4. 「どちらかというと得意である」 5. 「得意である」 ( 項目 2) 「今後、あなたがレポートを作成する上で参考になりましたか」 1. 「まったく参考にならなかった」 2. 「あまり参考にならなかった」 3. 「ふつう」 4. 「参考になった」 5. 「大変参考になった」 ( 項目 3) 「講義全体の難易度はいかがでしたか」 1. 「難しすぎるのでもっとレベルを下げてほしい」 2. 「ややむずかしい」 3. 「ちょうどよい」 4. 「少しやさしい」 5. 「やさしすぎるので、もっとレベルを上げてほしい」 − 29 − ( 項目 4) 「講義内容『レポートの構成について』 」 1. 「まったく理解できなかった」 2. 「あまり理解できなかった」 3. 「ふつう」 4. 「理解できた」 5. 「よく理解できた」 ( 項目 5) 「講義内容『わかりやすい文章の書き方について』 」 1. 「まったく理解できなかった」 2. 「あまり理解できなかった」 3. 「ふつう」 4. 「理解できた」 5. 「よく理解できた」 % % % % % % 62 28.2 77 35.0 69 31.4 11 5.0 1 .5 220 100.0 29 23.4 41 33.1 43 34.7 10 8.1 1 .8 124 100.0 27 34.6 26 33.3 18 23.1 7 9.0 0 .0 78 100.0 5 8.3 16 26.7 25 41.7 12 20.0 2 3.3 60 100.0 25 25.3 34 34.3 29 29.3 9 9.1 2 2.0 99 100.0 10 13.9 25 34.7 26 36.1 11 15.3 0 .0 72 100.0 11 34.4 8 25.0 13 40.6 0 .0 0 .0 32 100.0 169 24.7 227 33.1 223 32.6 60 8.8 6 .9 685 100.0 学部全体において「とても苦手」 、 「やや苦手」と回答した割合は 57.8%を占め 6 割近くの学生は何らか の苦手意識を有している。文学、法学部では「普通」以上の占める割合は 65% , 51.4%であり、他学部より も苦手の占める割合は小さいと言える。 − 30 − % % % % % % 1 .3 11 2.8 71 17.8 237 59.5 78 19.6 398 100.0 4 1.4 3 1.0 63 21.9 169 58.7 49 17.0 288 100.0 5 .7 14 2.0 134 19.5 406 59.2 127 18.5 686 100.0 文書作成に対する主観評価を苦手・非苦手に区分し講義全体への評価を集計したところでは、 「参考に なった」 以上の回答は 77.7%を占めた。主観的回答ではあるが一定の効果は得られていると解釈されている。 苦手と評価していた群において「参考になった」と評価する割合は若干高いが、ほぼ同様の効果が得られ ていると考えられる。 % % % 1 38 337 20 3 399 .3% 9.5% 84.5% 5.0% .8% 100.0% 0 13 233 37 6 289 .0% 4.5% 80.6% 12.8% 2.1% 100.0% 1 51 570 57 9 688 .1% 7.4% 82.8% 8.3% 1.3% 100.0% 苦手と感じる群において「やや難」の回答が 9.5%と、苦手でない群の 4.5%を上回った。また、苦手でな い群における「やや易」が 12.8%と苦手である群を上回った。 (2)考察と今後の課題 アンケートから分かるように、6割近くの学生が文章を書くことに対して苦手意識を持っている。これ は大学における初年次ライティング指導の要諦が、いかに苦手意識を払拭するかという点にあることをう かがわせる結果である。そのためには、アカデミック・ライティングとはきわめてシステマチックなもの であり、仕組みさえ覚えれば誰にでも書けるものであるということを徹底して教えることが必要である。 今回の講義およびテキストでもレポートや論文作成におけるシステマチックな部分を強調したつもりだ が、一方で学生の側の論理的思考の欠如という問題も見えてきた。学生が提出した文章からは、確かに講 義において示した序論・本論・結論というおおまかな構成を取り込もうとする努力は見られる。しかし、 根拠のない意見をベースに論を進めたり、事実誤認に基づいて意見表明を試みたりするなど、大半の文章 は「論理的」という点では合格点には程遠いものであった。 論理性の欠如は、初年次生のみならず学部生全体の問題でもあるようだ。本年度、ライティング・センター 準備室では卒業論文支援を行い、8人の学部4年生に助言を与えた。最初に持ち込まれた文章は、いずれ も初年次生と同様の傾向が見られた。 こうした学生の傾向にはいくつかの原因が考えられる。ひとつは、小学、中学、高校を通して、一貫し − 31 − た論理的文章の指導が行われていないということである。これは、大学においても同様の傾向があると思 われる。学生は書き方もわからないままにレポートや論文の提出を求められているというのが現状ではな いだろうか。 身の回りのさまざまな事象に対する関心の薄さも原因のひとつといえよう。短時間での演習ということ を考え、後期は入学したての学生にとり最も身近な問題である大学入試を取り上げた。具体的には、 「大学 入試は必要か」という問いかけへの答えを文章として要求した。結果は前述のとおりであるが、一方で、 ライティング指導が単に「書く」という技術のみならず、社会に対する関心、情報分析力、コミュニケーショ ンといった総合的な能力を高めていく可能性を秘めているということを感じた。 文章作成においてほとんどの学生が頭を悩ませたのは、書き出しをどうするか、という点であったようだ。 アカデミック・ライティングを含む実用文における書き出しは、読み手の注意を真っ先に喚起するものと して非常に重要視されている。英文ライティングの教科書の中には、最初の書き出しに1項目を設け、主 題文に応じていくつかのパターンを例示したものもある (McElroy, J. 1997, 40-45)。今後の指導およびテキ スト改訂に際しては、検討すべき項目であろう。 おわりに 今回講義は全学の初年時生を対象に行ったという点で意義がある。講義自体は1回 (90 分 ) 限りの単発で あったが、学生の「書く」行為、 「考える」行為への動機づけになりうる。入門的なライティング指導を受 けた学生に対し、ライティングへの継続的な関心を持たせるためには、いつでも誰でも指導が受けられる ライティング・センターの充実が必要になってくるだろう。もちろん、来年度以降、初年次講義とテキス ト内容をさらに充実させていかなくてはならないことは言を待たない。 参考文献 木下是雄 (1994), レポートの組み立て方 . 筑摩書房 . 佐渡島紗織 (2005), 大学における「書くこと」の支援―早稲田大学国際教養学部における「ライティング・センター」 の発足 . 全国大学国語教育学会発表要旨集 , 109, 193-196. 佐渡島紗織 (2006), 早稲田大学国際教養学部に発足したライティング・センターの運営と指導―国語教育の他分野への 貢献『早稲田大学国語教育研究』, 26, 82-94. 佐渡島紗織 (2008), これから研究を書く人のためのガイドブック ライティングの挑戦 15 週間 . ひつじ書房 . 鈴木宏昭編 (2009), 学びあいが生みだす書く力 大学におけるレポートライティング教育の試み . 丸善プラネット . McElroy, J. (1997), Write Ahead − A process approach to academic writing . Tokyo: Macmillan Language house. Meyer, E. & Louise. Z. S. , (1987), The Practical Tutor . New York, NY: Oxford University Press, 43-67. North, S. M., (1984), The Idea of a writing center. College English , 46 (5), 433-446. − 32 − 「教養教育に関する FD 研究会 2010」実施報告 ―少人数ゼミ形式の授業について ― 大学教育機能開発総合研究センター 折 田 充 はじめに 一昨年度および昨年度の教養教育 FD 研究会全体会では、授業参観がテーマであった。そこでは、「授業 改善のためのアンケート」 において学生の評価の高かった授業を、 教科集団幹事や教養教育実施委員会企画・ 運営委員会 FD 研究会部会委員などが参観し、その優れた点を FD 研究会全体会で報告し、優れた授業の特 徴を共有し、いっそうの授業改善に資することを目指した。全体会出席者のコメントや関係者の総括など から、2 年間の取り組みを通して、組織的な授業方法の改善を目指した授業参観のあり方として一定の方向 性が示せ、 “優れた授業実践に学ぶ”を趣旨とする教養 FD は確実な成果が得られたと考える。それを受けて、 今年度は少人数ゼミ形式授業をテーマとした。本稿では、テーマ設定の背景、 「FD 研究会 2010」開催に向 けての取り組み、また同研究会全体会の概略を報告する。 テーマ設定の背景 過去 2 年間、テーマ「教養教育における優れた授業実践に学ぶ:学生からの評価の高い授業の特徴」の もとに、主題科目 I および II、専門基礎科目 I、また外国語科目(英語)に関する授業参観に基づいて学生 からの評価の高い授業の特徴を教員の目から検証してきた。参観対象とした 6 つの授業はいずれも有意義 度が高く教員の熱意のある授業であることが参観した教員の目から見ても確かめられ、また双方向性の確 保についてそれぞれの授業目標や授業形態を念頭に十分工夫されていることが確認された。FD 研究会全体 会において、各授業の“優れた点”が個々の独自の実践とともに報告され、大規模クラスや語学の授業に おける優れた授業の持つ特徴が出席者の間で理解・共有されたと言える。 今年度は、少人数クラスにおけるゼミ形式の授業、特に教養教育における「基礎セミナー」を取り上げた。 これは、 「学生がなかなか発表してくれない」 「議論ができない」 「 (専門の)ゼミで授業が成り立たない」と いう声が全学的に教員の間に少なくないことを背景としている。教養教育における少人数ゼミ形式授業で ある基礎セミナーは毎年約 100 クラスが開講されるが、学期末のアンケートで学生からの授業評価の高い ものが多い。授業担当者が 4 月の授業開始時からどのような創意工夫や試行錯誤を重ねて半期 15 コマの基 礎セミナーに取り組み学生を育てているのか、開講科目群の中でも特に優れた取り組みに学び、その特徴 を共有することから少人数ゼミ形式授業全般における一層の授業改善を図ることを目指し、今年度の教養 FD のテーマは「少人数ゼミ形式授業について」と決定された。 「FD研究会 2010」開催に向けての取り組み 9 月の「教養教育に関する FD 研究会 2010」開催に向けて、昨年度と同様に、矢嶋哲氏(教養教育実施 委員会企画・運営委員会委員長 / 大学院自然科学研究科) 、 伊藤洋典氏(同副委員長 / 法学部) 、 伊藤正彦氏(同 − 33 − 委員 / 文学部) 、鈴木寛之氏(同委員 / 文学部) 、角田俊治氏(同委員 / 大学院生命科学研究部) 、中田晴彦 氏(同委員 / 大学院自然科学研究科) 、そして大学教育機能開発総合研究センターの菅岡強司氏と折田を加 えた 8 人で FD 研究会部会を組織した。同部会ではまず、本年度 FD 研究会の方向性と趣旨を確認した後に、 2009 年度基礎セミナー・学際科目委員会委員長本間里見氏(大学教育機能開発総合研究センター)に、基 礎セミナーにおいて優れた授業実践を行っている授業者の推薦を依頼した。同氏と FD 研究会部会委員との 2 回の話し合いを持ち、それを踏まえて、林一郎氏(法学部)と小林一郎氏(大学院自然科学研究科)が担 当する基礎セミナーが本テーマの対象授業としてふさわしいものであると決定し、両氏に依頼し快諾を得 た。表 1 に、対象授業のテーマ、授業担当者、全体会における発表者などを示す。 表 1.対象授業のテーマ名、授業担当者、および全体会発表者など 5 5 基礎セミナーは基本的に 20 名を上限とする少人数クラスで実施されるため、対象授業を全体会発表者お よび FD 研究会部会委員が授業を研究する方法は、授業を録画・研究する、あるいは当該授業を参観する などが考えられた。いずれの方法を採るかは、事前に授業担当者と打ち合わせを持ち、その意向により決 定することとした。 「模擬国連により文明の衝突と対話について考える」 (以下、 「模擬国連」 )については、 4 回の授業をビデオ録画し、 「模擬国連」の全体会発表者の中内哲氏(法学部)の分析を中心に同授業班の 4 人の FD 研究会部会委員を交えてカンファレンスを重ねる中で全体会発表の準備が進められた。一方、 「風 景の発見」については、全体会発表者の中田氏ほか 2 人の FD 研究会部会委員が「風景の発見」に 4 回出 席(参観)し、そこで確認できた同授業の特徴について中田氏が発表内容をまとめ、 「風景の発見」班の他 の委員と共に同氏の発表予定内容を検討していくという方法を採った。また、FD 研究会全体会の前に、総 括報告者の矢嶋氏も参加した発表内容についての打ち合わせ会、また別途当日の司会者(伊藤洋典氏)を 交えての打ち合わせ会を持ち、全体会当日に備えた。 「教養教育に関するFD研究会 2010」 「教養教育に関する FD 研究会 2010」は、上に述べたテーマ「少人数ゼミ形式授業について」のもと、 下記の主催、日時、会場、そしてプログラムにより実施された。なお、 「学士課程教育改革」に関連して、 その方向性と今後のスケジュールについて説明を求めたいという企画・運営委員会および教養教育実施委 員会からの要望により、安部眞一氏(教育・学生担当副学長)に「学士課程教育改革の方向性と今後のス ケジュール」というテーマで FD 研究会全体会終了直後の説明を依頼し快諾を得た。したがって、教科集 団別分科会の開始時間は例年より 10 分繰り下げられた。 1. 主催:熊本大学教養教育実施委員会・大学教育機能開発総合研究センター 2. 日時:2010 年 9 月 28 日(火)13:00 ∼ 16:50 − 34 − 3. 会場:全学教育棟 C301 教室(全体会) 4. プログラム (司会)伊藤洋典(企画・運営委員会副委員長 / 法学部) 13:00 全体会開会 挨拶 安部眞一(教育・学生担当副学長) 13:10 総括報告「 「授業改善のためのアンケート」結果分析、およびテーマ「少人数ゼミ 形式授業について」の趣旨」 矢嶋 哲(企画・運営委員会委員長 / 大学院自然科学研究科) 13:40 報告 「基礎セミナー I 「模擬国連により文明の衝突と対話について考える」について」 中内 哲(法学部) 14:10 報告 II「基礎セミナー「風景の発見」について」 中田晴彦(大学院自然科学研究科) 14:40 全体会閉会 挨拶 岡部 勉(教養教育実施機構長 / 大学教育機能開発総合研究センター長) 14:45 「学士課程教育改革の方向性と今後のスケジュール」 安部眞一(教育・学生担当副学長) ∼ 15:20 教科集団別分科会(会場は別途案内) 16:50 三氏の報告の詳細については、本書中の各氏の論考をご覧頂きたいと思う。ここでは、各氏の報告の概 要を紹介する。 矢嶋氏は、 「教養教育に関する FD 研究会 2010」全体会報告の内容・趣旨を説明した後に、 「授業改善の ためのアンケート」結果分析を行った。2009 年度後学期のアンケート結果について、系列や教科集団間で 平均値に違いはあるものの、おおよそ“2”付近の値をとる傾向があること、2004 年度以降のデータを概 観するとアンケート結果に大きな変動が見られなくなっており、教科集団において適切な FD 活動が実施さ れ、数値データは比較的良好な一定水準で推移しているように見えるとまとめた。また、アンケートの自 由記述における記載のうち各自の参考になるものは授業改善に役立てられる可能性があると指摘した。そ して、本年度の少人数ゼミ形式授業に焦点を当てた授業研究の目的、実施の経緯、授業研究の実際を報告し、 最後に、 分科会での3つの討議事項(文末の「資料」を参照のこと)を説明し、 うち②教養教育における「授 業改善のためのアンケート実施(案) 」への意見と要望については、10 月 7 日までの同氏への報告を教科 集団幹事に求めた。 中内氏は、林一郎氏(法学部)の基礎セミナー「模擬国連」 (参加者一人一人が世界各国の大使となり、 実際の国連会議で扱われている問題を話し合うことによって、国連会議を再現し、国際問題の難しさを理 解すると共に、問題の解決策を探るディベート。中内氏の配布資料より)について報告した。氏は、林氏 の「模擬国連」の授業目標、内容、授業予定、受講者内訳などを説明した後に、同授業の特徴を述べた。まず、 シラバスの記述から「模擬国連」は、学生の積極性・主体性・能動性の喚起が誘導される授業であること、 学生は学期末の模擬国連本番を想定して自律的に担当する国家や国際機関、また模擬国連の議題について 学んでいく必要があること、さらに多様な形態の学習(文献購読、レジュメ作成、調査、英文和訳、ディ − 35 − スカッションおよびディベート)を学生は行うことになるといった、林氏の様々な工夫を指摘した。さらに、 シラバスからはうかがえない工夫として、 「自己紹介アンケート」の活用、受講生のメーリング・リストの 作成・運用、真剣な中にも明るい笑いのある同授業の雰囲気、また相当の量からなる林氏手作りの授業資 料を挙げた。そして、授業録画の研究から、林氏が具体的にかつ(当該の課題の)事前に取り組むべき課 題を学生に指示していること、絶妙なタイミングで学生の議論に介入していること、また教えるだけでな く学生に考えさせる授業を実践していることなどに特色があると述べた。加えて、 「模擬国連」では「決議 案を採択する」ことが学生には達成感となり、学生評価の高い要因の一つとなっているのではないかとま とめた。出席者から、グループワークが大きな要素となる「模擬国連」において、林氏は個々の学生の評 価をどのように行っているのかという質問があった。中内氏は、録画・研究した一連の「模擬国連」の授 業からは個々の学生の評価に関する情報の抽出は難しかったとした上で、具体的なことに関しては林氏に 確認してほしいと答えた。 中田氏は、小林一郎氏(大学院自然科学研究科)による学生が“白川を撮る”基礎セミナー「風景の発 見」について報告を行った。まず、 「風景の発見」の概要(授業目標、受講者内訳、授業予定)を説明し、 「写 真を撮ること」を通して観察力、調査力、考察力、また対話力を身につけることが授業目標であると述べた。 また、少人数ゼミ形式授業の特長である、①コミュニケーションを図りやすい、②具体的な示唆や評価を 与えることができる、そして③参加型の授業である、といった要素を小林氏の「風景の発見」は確実に具 現化していると指摘した。さらに、 小林氏が自己紹介カードを活用していること、 また各講義の後にアンケー トを実施し講義の理解度を確認していると報告した。そして、学生は景観工学や風景を撮ることについて 学び、加えて撮影テーマを念頭に自ら白川の風景を撮ることにより授業目標について多面的かつ段階的に 学習していくように授業が設計されていると分析した。1 回目の「 ‘ほっ’とする風景」をテーマとする発 表会では客観的な説明力が掘り下げられ、2 回目の「 ‘白川の特異点’について」では「そのとき、その場 でしか撮れない写真」がテーマとなり、そして学んできたことが 3 回目の最終発表会に集大成されること になると指摘した。 「この授業を通して、物事を深く考えることと、それを表現することの大切さを学んだ」 などの学生の感想を紹介し、 「風景の発見」を受講し終えた後に、観察力、調査力、考察力、そして対話力 という授業が目指す力がついたと学生が実感できていることも、小林氏の「風景の発見」の学生評価が高 い理由の一つであるとまとめた。最後に、自己主張をあまりしない、口頭の説明に慣れていないといった 最近の受講学生に対して感じている問題は一朝一夕に解決できるものではなく,粘り強く働きかけていく ことが重要であると考える小林氏、そして中田氏の共有する認識を付言した。 少人数ゼミ形式授業の優れた取り組みに学ぶ:出席者のコメントとまとめ 以上報告してきたように、学生評価の高い基礎セミナーについて、授業開始時からどのような創意工夫 や試行錯誤を重ねて授業に取り組み学生を育てているのか、その取り組みに学び、その特徴を共有するこ とを通して少人数ゼミ形式授業全般における一層の授業改善を図ることを目指した今年度の教養 FD はそ の所期の目的を達成できたと思う。全体会出席者の出席票に記された主なコメントを紹介する。 ・少人数ゼミ形式授業の重要性がよく認識できた。担当教員の熱意と周到な準備がよく伝わってきて、有意 義な報告でした。 ・基礎セミナーはテーマの設定と教員の工夫・努力が重要であると実感しました(複数) 。 − 36 − ・いずれも充実した報告でした(複数) 。 ・中内先生の報告から、林先生の基礎セミナーのすばらしさがよくわかりました。学生をいきいきと参加さ せる秘訣があるのでしょうね。 ・中田先生の報告から、小林先生の講義内容が大変興味深いものだとわかりました。また、基礎セミナーの テーマ設定に向いている研究分野とそうでない分野があるように思いました。 ・報告者は、対象の授業について、何を学んだか、何が参考になったか共感を持ちながら報告しておられた。 このようなポジティブな参画方式による FD の取り組みは、これからの学士課程教育にとって大変重要な ものであると思います。 ・自らの基礎セミナーに対する準備ないし「情念」の不足を意識させられる良い機会となりました。ものす ごく勉強になりました。 ・基礎セミナーは、受講者の多様性、限られた時間で求められる内容の多さ等から運営の難しさを痛感して いますが、今日うかがった話をもとに、段階を設定し、教員や他の受講者とのやりとりの中で学生が成長 していけるような計画・準備をしなければと改めて思いました。 ・良い講義をするにあたって、教員の果たす役割の大きさを改めて感じさせられた。 ・よい授業は先生方それぞれの授業のやり方の蓄積に基づいていることがわかりました。 ・大変勉強になりました。是非、来年度の授業に活かしたいと思います。 ・自分の授業に対する問題点(課題)とヒントが明確になりました。 ・今回の FD 研究会を通して、基礎セミナーに限定されない示唆を得ることができた。 ・英語の授業へも応用できるように思いました。 このように、全体会出席者のコメントからも、今回の教養教育 FD 研究会全体会開催の目的は十分達成 されたことが確認できる。特にそのことは、基礎セミナーを担当する場合のテーマ設定の重要性、また教 員の創意工夫と熱意が優れた授業のカギを握ることが出席者に理解されたことにうかがえる。そして、基 礎セミナーは教養教育における授業形態の一つであるとはいえ、専門教育における少人数ゼミ形式の授業 (教養教育におけるほかの授業形態を含む)を担当する出席者にも学ぶことが多く、専門や担当科目を超え て優れた授業の優れた側面を共有することを通して授業改善に活かすという教養 FD の趣旨が理解されて いたことがわかった。また、今回の教養 FD 全体会における、授業を参観あるいはその録画を解析した者 がその授業の特徴を FD 研究会全体会で報告するという方法を高く評価するコメントがあった。この方式 は過去 2 年間の主題科目などを対象とした授業参観報告においても採用され、全体会報告に客観性と説得 力があったと総括されている。本方式は、授業改善のための有力な方法の一つとして本学の FD 活動に今 後とも継承されることが強く望まれる。 おわりに 本学教養教育における半期 15 コマ 2 単位の基礎セミナーは今年度をもって幕を閉じる。来年度からは 新「基礎セミナー」 (1 単位)と、レポート作成法や図書館活用法などを扱う新科目「ベーシック」 (1 単位) に分かれる。 「1 単位化がどのような影響を与えるのか気になります」 「引き続き今まで通り 2 単位の基礎 セミナーの継続を望みます」という声が出席者の中にあった。また、寄せられた「教科集団別分科会実施 報告」の原稿の中には、1 単位科目への変更決定において教育効果という観点が欠落しているのではないか、 − 37 − 7.5 回の授業で基礎セミナーのねらいとする授業が成立するのか、さらに 1 単位化は今回の教養 FD 全体会 で紹介された「優れた教育実践をも困難に追い込んでしまうものであり、 早急に見直すべきであろう」といっ た意見があった(詳細は、 『 「教養教育に関する FD 研究会 2010」教科集団別分科会実施報告』 (熊本大学 教養教育実施機構・大学教育機能開発総合研究センター、2011 年 1 月発行)を参照のこと) 。新しい基礎 セミナーは、自主的・自律的学習能力、論理的思考方法や科学的思考方法および適切な自己表現能力、ま た他者とのコミュニケーション能力といった大学教育を受けるために必要な資質の育成に焦点を当てた科 目となる。これらは学生が徐々に身につけていくもので、基礎セミナーはそのための土台を作るための科 目と説明されている。教養 FD 全体会の出席者や多くの教科集団幹事から寄せられた疑問や危惧を考える とき、新「基礎セミナー」はそのねらいとする教育目標を担い得るものなのか、次年度以降の検証は欠か せないだろう。 今年度の FD 研究会全体会には 112 名(昨年度は 103 名)の教職員の参加があった。今回も全体会開 催にあたっては本学学生支援部のスタッフの方々に大変お世話になった。深甚の謝意を表したい。そして、 教養 FD における授業研究の対象となることを快くお引き受けいただいた林一郎氏と小林一郎氏に、また 全体会での発表のみならず事前打ち合わせ会や事後カンファレンスを含め、企画全体を通してご協力・ご 尽力いただいた矢嶋哲氏、中内哲氏、そして中田晴彦氏に心より御礼申し上げたい。 資料 . 教科集団別分科会における討議事項 ①全体会報告「少人数ゼミ形式授業について」の教科集団の感想および見出した意義 ②教養教育における「授業改善のためのアンケート実施(案) 」への意見と要望 ③その他 幹事の判断により、過年度の教科集団のこれまでの取り組みや現状を踏まえて、次の(ア) (イ) 、また(ウ)につ いては適宜取り上げる。 (ア)教科集団が開講する教養科目に関する「評価基準の明示」の方法(評価、問題点の抽出および改善のための方 策の検討) (イ)教科集団が開講した 2009 年度(前学期および後学期)の授業について、 「厳格で一貫した成績評価」に関する こと(2009 年度前学期および後学期の成績評価データは 8 月上旬に教務課教養教育担当より幹事に送付。幹事 は分科会までに分析を終了)の検証(評価、問題点の抽出および改善のための方策の検討) (ウ)その他、教科集団独自に取り上げるべき事項 − 38 − 総括報告 「授業改善のためのアンケート」結果分析, およびテーマ「少人数ゼミ形式授業について」の趣旨 教養教育実施委員会企画・運営委員会委員長 矢 嶋 哲 1.「教養教育に関する FD 研究会 2010」について 「教養教育に関する FD 研究会 2010」の全体会は、「少人数ゼミ形式授業について」というテーマで 行われた。まず、この全体会のテーマに至るまでの経緯について述べる。 2007 年度の教養教育実施委員会企画・運営委員会および教養教育実施委員会において、教養教育に おける FD 活動の一環として検討された授業参観に関する検討を受けて、2008 年度および 2009 年度 に実施された教養教育における授業参観に基づいて「教養教育に関する FD 研究会」が開催された。そ の後、2009 年度および 2010 年度の企画・運営委員会では、委員会内の FD 研究会部会を中心に検討 を進めた結果、教養教育における FD 活動充実のために、教養教育における「基礎セミナー」の授業研 究を行うことになり、教養教育だけでなく、全学のゼミ形式の授業の改善に役立つ情報の共有を図るこ とを目的とし、2008 年度、2009 年度に引き続き、優れた授業実践に学ぶ企画として、「少人数ゼミ形 式授業について」を、本年度の FD 研究会の全体会のテーマとすることとなった。 2010 年度 FD 研究会全体会のテーマの設定に至る基本的な経緯は以上のとおりであり、本年度の授 業研究の概要については後節で述べる。次に、2009 年度後学期における「授業改善のためのアンケート」 の結果と、それ以前の後学期のアンケート結果との比較について報告する。 2.「授業改善のためのアンケート」の結果について (1)2009 年度後学期の結果 2010 年度前学期の教養教育における「授業改善のためのアンケート」は、全学の「授業改善のため のアンケート」の実施要領の変更について、教養教育におけるアンケートのあり方を検討するために、 性急な実施を見送った。そのため、昨年度までは、前年度後学期と当年度前学期の「授業改善のための アンケート」の結果の分析を行ってきたが、今回は 2009 年度後学期分のアンケート結果に関する分析 の報告となった。 2009 年度後学期分の「授業改善のためのアンケート」結果(Q1-Q15 に対する回答の合計のグラフ) については、資料1の通りである。資料2は 2004 年度∼ 2009 年度の後学期における教科集団別アンケー ト結果(Q1-Q15 に対する回答の平均のグラフ) 、資料3は 2006 年度∼ 2009 年度の後学期における系 列別アンケート結果(Q1-Q15 に対する回答の平均のグラフ)を示している。 2009 年度後学期分まで、「授業改善のためのアンケート」は本学教養教育においては原則として、前 学期・後学期のほぼすべての開講科目に関して、難易度から有意義度に至るまで全 15 項目の質問項目 と自由記述について実施された。(2010 年度前学期からは全学でアンケートの質問項目が全 8 項目に改 訂された。) − 39 − 2009 年度後学期分の全授業についての「授業改善のためのアンケート」結果の Q1 ∼ Q15 の回答の合 計の分布をみると、Q11「予習・復習の時間」と Q14「出席の程度」を除いて、ある特徴がみられた。 質問項目に選択肢が5つある場合、選択番号“3”の回答が一番多く、次に多いのは“2”で、 “4”や“5” は少なくなっている。そのため、平均値は 2.0 から 3.0 の間になっている。また、選択肢が4つある場合、 選択番号“2”の回答が一番多く、次に多いのは“1”または“3”で、 “4”はかなり少ない。したがって、 その平均値は“2”程度になる。 (ただし、Q4「板書」 、Q5「教材・機具」 、Q6「視聴覚機器」の選択番 号“5”は「該当しない」なので、 それを無視すると、選択肢が4つある場合と同様の分布と考えられる。) このデータに注目したのは、いくつかの例外を除けば、各授業の回答の分布のパターンが、全授業の回 答の合計についてのこれらの分布のパターンに似ているからである。すなわち、2009 年度後学期分の「授 業改善のためのアンケート」の各授業の回答の分布のパターンには共通性があり、Q11,Q14 以外は分 布のパターンが似ていると言える。また、2009 年度後学期分の「授業改善のためのアンケート」の結果は、 系列や教科集団において、平均値に違いがあるものの、全体的にほぼ“2”付近の値を取る傾向がみられる。 (ただし、15 項目の選択欄のうち、Q1「難易度」と Q2「進行の速さ」の平均値はそれぞれ小さいほど、 難しく、速いこと、その他は平均値が小さいほど評価が高いことを意味する。) (2)経年変化について 2004 年度から 2009 年度までの後学期分の「授業改善のためのアンケート」の系列別の結果と、 2006 年度から 2009 年度までの後学期分の「授業改善のためのアンケート」の教科集団別の結果の経 年的な変化について述べる。 Q1「難易度」について、系列別にみると、平均値の経年変化はあまり見らなかったが、いずれの回答も、 2「少し難しい」と 3「適切」の間の値となっている。教科集団別にみると、今まで難しいとされていた 教科のいくつか(例えば、数学・統計学、物理、化学、哲学、法学)に、前年度より評価の向上がみられた。 それらの回答の平均値も、やはり“2”と“3”の間であった。 Q7「分かりやすくする工夫」について、系列別にみると、 “基礎セミナー”の授業の評価に顕著な向 上がみられる。(その他、徐々にではあるが、初修外国語、自然系列も向上している。)これらの平均値 は“1.7 ∼ 2.2”つまり“2”程度になっている。これらの傾向は Q4「板書」 、Q5「教材・教具」 、Q8「双 方向性」 、Q10「目標の達成度」 、Q11「授業目標の把握」にもみられる。教科集団別にみると、ここ数 年は平均値が 2「図られていた」付近を推移している。(前年度と比べると、初修外国語の他、化学、医 科学、哲学、法学、芸術、文学・言語学、地理学に向上がみられる。) Q15“有意義度”について、系列別にみると、経年変化はあまり見られないが、昨年度は平均値がい ずれも“2.1”以下であった。教科集団別にみると、ここ 2、3 年経年変化はあまり見られないが、平均 値が“2”以下のもの(つまり、2「有意義だった」と 1「非常に有意義だった」の間)が多く、良好な 水準で高止まりしている傾向がみえる。(昨年度と比べると、初修外国語、数学・統計学、化学、地学、 医科学、哲学、芸術、文学・言語学、地理学に僅かずつ向上がみられる。 ) アンケート結果の全体的傾向について、2004 年以降のデータを概観しても、アンケート結果は大き な変動が見られなくなってきており、それぞれの教科集団において適切な FD 活動が実施され、データ 的には数値データの比較的良い水準での一定値の付近を推移しつつあるようにみえる。 − 40 − (3)授業改善アンケート結果に対する考え方 では、なぜ経年変化は一定値になるのか。昨年度の全体会報告で説明されたように、授業アンケート の結果に関与する大きな要素として“授業者に起因するもの”と“受講者に起因するもの”がある(坂 元昌樹氏による「総括報告」 『大学教育年報』第 13 号)。また以前の全体会の報告では「学生側に“アンケー ト慣れ”の傾向、もしくは授業改善のレベルが上げれば上げるほど、学生評価の目が厳しくなる傾向が あるかもしれない」と指摘された(伊藤正彦氏による「総括報告」 『大学教育年報』第 11 号) 。授業者 は授業内容や方法の改善を以前の授業に対して行うが、毎年変わる受講者は以前の授業を知らないので、 自分の受けた授業のみに対して評価を行う。そのため、授業者が授業改善しても、受講者が回答するア ンケートの結果には顕著な数値的な変化がみられないのかもしれない。しかし、先程アンケート結果の 全体的傾向で述べたように、教養教育に出講する教科集団の全体的な傾向としては、高い水準で学生は 有意義度を抱いており、教科集団ごとに、また系列別に個別的な問題はあるものの、全体的には良好な 取り組みがなされていると思われる。 各アンケート項目の数値データには反映されないものとして、自由記述も適切な活用ができるのでは ないかと思われる。項目の数値データを強調する自由記述がある一方、その項目に当てはまらない記述 もある。新しい“授業改善のためのアンケート”はこの趣旨から、共通項目数が 8 項目と絞り込まれて いる。これについては、自由記述に費やす時間を増やしてほしいという学生からの要望もあったそうで ある。今後は、これまで以上に自由記述を授業改善に役立てる、改善の手掛かりを真剣に自由記述から 考えるという視点が教員に求められるのではないかと思われる。 3.2010 年度前学期実施の授業研究に関して 今回の全体会は「少人数ゼミ形式授業について」をテーマとしたが、これは「学生がなかなか発表し てくれない」 「議論ができない」 「(専門の)ゼミで授業が成り立たない」という声が全学的に教員の間に 少なくないということを動機としている。今年度の FD 研究会は、授業者が授業開始時からどのような 創意工夫や試行錯誤を重ねて、基礎セミナーという授業に取り組み学生を育てているのか、その優れた 取り組みに学び、その特徴を共有することから、少人数ゼミ形式授業全般における教員の一層の授業改 善を図ることを目指した。 そのため、FD 研究会部会で今回の FD 研究会の方向性と趣旨を確認した後、2009 年度基礎セミナー・ 学際科目委員長の本間里見先生との話し合いにより、①活発な議論が行われている(行われるようにな る)文系教員による授業、②文系・理系の受講学生のいずれにとっても有意義度の高い理系教員による 授業を対象にすることになった。それに基づき、本間里見先生から、2010 年度前学期に開講されるい くつかの基礎セミナーの授業を推薦して頂き、それを踏まえて部会では、林一郎先生(法学部)と小林 一郎先生(大学院自然科学研究科)ご担当の基礎セミナーを対象授業とし、両先生に依頼して御快諾頂 いた。その後、2010 年度の教養教育実施委員会における承認を受けて、企画・運営委員会の FD 研究 会部会を中心に、2010 年度前学期に授業研究を実施した。 今回、授業研究を行ったのは以下の2つの授業である。 ①基礎セミナー「模擬国連により文明の衝突と対話について考える」 (授業者:林 一郎 先生、受講者:16 名) − 41 − 授業研究の担当者は FD 研究会部会メンバー 4 名と FD 研究会での発表者の中内哲先生であった。今 回はゼミ形式の授業なので、その雰囲気を壊さないよう配慮して、担当者による授業参観はせず、創意 工夫や試行錯誤がどのように図られているか見るために、数回の授業をビデオで撮影し、それに基づき、 後にコンファレンスを行う形式で授業研究を行うことにした。林先生にはその旨了解を頂き、その方法 で(4回の授業を撮影して)授業研究を行った。 ②基礎セミナー「風景の発見」 (授業者:小林 一郎 先生、受講者:20 名) 担当者は FD 研究会部会メンバー 3 名で、うち発表者は中田晴彦先生であった。ただし、授業者の小 林先生からは、先ほどの方法より、むしろ授業に積極的に参加してほしいという要望があり、担当者が 4 回の授業に参加して、後でコンファレンスを行う形で授業研究を行った。 各授業研究の結果の詳細については発表者による報告をお読み頂きたい。 4.まとめにかえて 今回は 2009 年後学期の全授業のデータ分布を取り上げたが、それは各授業におけるデータ分布と相 対的な比較が可能であると思われる。それぞれの授業におけるデータ分布は平均値と標準偏差によって 他のいくつかの授業と比較できるが、今回のデータは同時期の授業すべての合計であるので、それは ( 回 答者の人数で割れば ) データ分布の平均を意味し、その結果との比較は自分の授業を他の授業全体と間 接的、視覚的に比較することになるのではないかと思われる。 Q14「出席の程度」から、今回のアンケートも授業に比較的多く出席した学生が回答している。各自 の授業についての選択項目の結果と共に、自由記述のうち、参考になるものは授業の改善に役立てられ るのではないかと考える。また、アンケートの項目数が整理されたことから、今後は自由記述の重要性 が増すのではないかと思われる。 今回の全体会は企画・運営委員会で出た意見から「少人数ゼミ形式授業について」をテーマとし、2 つの基礎セミナーの授業の研究発表を行った。では、各自の「ゼミ形式の授業」が抱えている問題はど のようなものであるか。それは、共通する問題もあると思うが、各自の担当する授業について固有のも のもあるかもしれない。今回の研究報告から、対象授業の“優れた点”に注目し、各自の授業でどのよ うに生かせるかを検討して、各授業の改善に役立てて頂ければ幸いである。 − 42 − − 43 − ⇕ព 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が活用されている。 以下では、まず本セミナーの内容・進行を説明し[2] 、次いで、上記①シラバスの記載内容から看取で きる大学教員の FD 向上にとっての学習点[3] 、さらには、シラバスからでは窺えず上記②③④(インタ ビュー・資料等・ビデオ映像)を通じての当該学習点を摘示して[4] 、最後に、それらを俯瞰して得た筆 者にとっての示唆等を述べる[5] 。 2.本セミナーの実際 (1)本セミナーの学生構成と進行 本セミナーは、法学部生・文学部生各 5 名、教育学部生・工学部生・医学部生各 2 名、総勢 16 名(文 学部生 1 名を除き 1 年次生)を受講生に迎え4、①林教授が作成した「アンケート」5 に基づく自己紹介[第 1 回 4 月 9 日・第 3 回同月 23 日]→②テキスト A(資料 2【テキスト】参照)の輪読[第 4 回 5 月 7 日・ 1 2 3 4 5 2010 年度現在、当該セミナーは、同年度に本学へ入学した全学生にとって卒業に必要な必修科目(2 単位)であり、そ の受講者は、入学生の希望を踏まえて決定される。いいかえれば、1 年次生は必ずしも自らが第 1 順位に挙げた基礎セミ ナーを受講できるとは限らず、担当教員は自らの所属部局以外の 1 年次生と相対することが当然の前提とされる。 具体的な進行日程および各回における授業内容の概略は、後掲<資料 1 >を参照されたい。 本稿は、その文末【附記】でも述べるように、2010 年 9 月 28 日(火)に本学の教養教育実施委員会および大学教育機 能開発総合研究センターが主催した「教養教育に関する FD 研究会 2010(テーマ:少人数ゼミ形式授業について) 」に おける筆者の口頭報告(約 20 分間)を再構成したものである。同報告に至るまでに、①同年 7 月 30 日(金)、② 8 月 24 日(火)、③ 9 月 15 日(水)、合計 3 回の事前打ち合わせが行われ、筆者は、①②の打ち合わせにご同席下さった林 教授に本セミナーについてお尋ねする機会を得た。 なお、本セミナーに対する受講生の希望順位を見ると、第 1 順位 3 名、第 2 順位 3 名、第 3 順位 3 名、第 4 順位 4 名、 第 5 順位 1 名、その他 2 名となっている。 当該アンケートは、 「基礎セミナー(林一郎)初回自己紹介アンケート(04/09/2010) 」と題された A4 判片面刷 1 枚の プリントで、記載事項として、「所属学部・学籍番号」「氏名(フリガナ) 」「連絡先(メールアドレスを中心に名簿と ML 作成) (電話) (メール) 」 「出身地・現住所(郵便番号)」 「趣味」 「サークル活動など」 「熊本大学志望動機」 「本基礎セミナー 志望理由」「模擬国連で扱いたいテーマ(複数可)」「進路希望」「その他」、以上が挙げられている。 林教授は、上記アンケートに記載されたメールアドレスを基に、メーリング・リストを作成・運用するとともに、受講 生の所属・学生番号・氏名・メールアドレス、本学所在地・代表電話番号、科目・単位・定期試験等に関する問合せ先(具 体的には、本学の学務部教務課の所在地・電話番号・メールアドレス)等を掲載した「平成 22(2010)年度基礎セミナー 名簿」(A4 判片面刷 1 枚)を同年 5 月 21 日付けで作成し、受講生に配布している。 − 53 − 第 6 回同月 21 日・前掲第 7 回]→③テキスト B(資料 2【テキスト】参照)の輪読[第 9 回 6 月 11 日・ 第 10 回同月 18 日]→④模擬国連[準備段階:第 8 回 6 月 4 日・前掲第 10 回・前掲第 11 回・第 12 回 7 月 2 日、総会段階:前掲第 13 回・最終第 14 回] 、以上の順に進行した(後掲<資料 1 >参照)6。なお「輪 読」とは、テキストの内容を分割し、各区分に複数の報告者を立て、担当部分の文献内容および私見を当 該報告者らがレジュメ等を用いて報告した後、受講者全体で報告内容に関し質疑応答・討論を行うことと いう意味で用いている。 (2)模擬国連の意義・内容 ここで確認すべきは、もちろん本セミナーの核である④模擬国連の意義・内容である。模擬国連とは、 林教授も説明されているように(資料 2【授業の概要】参照) 、 「参加者一人一人が世界各国の大使となり、 実際の国連会議で扱われている問題を話し合うことによって、国連会議を再現し、国際問題の難しさを理 解すると共に、問題の解決策を探ろうとするディベート」をいう7。これを本セミナーに引きつけて敷衍す れば、 「受講生が各国大使や各国際機関の代表になりきって、特定のテーマに関する決議案を討論する場(= 第 13 回・第 14 回における模擬国連総会)に臨み、最終的に各出席国・機関の意向を踏まえた決議を採択 する」作業を指すのである。 (3)模擬国連への道程 これを実現するため、林教授は、前掲第 8 回を模擬国連における議題(メイン・テーマ) 、同第 10 回を そのサブ・テーマを決する機会とし(資料 1 参照) 、 そのことを予め受講生に告知して、 議題にふさわしいテー マを考えておくよう指示している。その結果、メイン・テーマとしては「貧困」を8、サブ・テーマでは「教 育」 「食料」 「労働保障及び経済保障」の3つを取り上げることが決まった 9。同時に、こうしたテーマを議 論するにふさわしい模擬国連総会出席候補国・国際機関の選定と各受講生の担当国・機関の割り当ても、テー マの決定過程と同様、学生からの提案に基づいて進められ、資料1に掲げた通り、先進国側7カ国、発展 途上国側6カ国、国際機関3機関が出そろった10。 6 資料 1 記載の通り、本セミナーの進行過程では、熊本大学附属図書館主催の「図書館活用法」(第 2 回同年 4 月 16 日)、熊本大学学務部キャリア支援課(当時。現・学生支援部キャリア支援ユニット)主催の「キャリア・ガイダンス」 (第 5 回翌 5 月 14 日)が実施されている。なお、同ガイダンスの 2009 年度取り組み実績については、http://www. kumamoto-u.ac.jp/careersupport/shiennaiyou/guidance.html を参照されたい。 7 日本模擬国連(Japan Model United Nations Society: JMUNS)関東事務局 HP 内の「活動案内」欄(http://jmun. org/activity/)に全く同一の文章が掲載されている。また、日本模擬国連・関西事務局 HP 内の「模擬国連とは」にお ける説明(http://www.kansai-mun.org/mun.php)も同旨。 8 受講生の間では、2010 年 3 月 26 日に勃発した韓国哨戒艦「天安」号沈没事件と「貧困」とが同数の支持を得たため、 林教授の裁定で「貧困」を取り上げることに決した旨、事前打ち合わせの際に林教授から説明を受けた。 9 なお林教授は、サブ・テーマの検討に先立って本セミナー第 9 回の際に、①国際連合広報センター HP 内に設けられた「国 連サイバースクールバス『貧困問題についての授業』」(http://www.unic.or.jp/poverty/01teach/01tea.htm) 、②国 連開発計画(United Nations Development Programme:UNDP)東京事務所 HP 内に設けられた「ミレニアム開発目 標(Millennium Development Goals:MDG)」(http://www.undp.or.jp/aboutundp/mdg/mdgs.shtml)、「MDGs in Africa」(http://www.undp.or.jp/mdgsafrica/) 、「貧困撲滅キャンペーン」(http://www.undp.or.jp/arborescence/ index2.html) 、以上に掲載された情報をダウンロードしたプリント(A4 判片面刷 24 枚分という、かなり大部な資料) を自ら用意して配布している。 サブ・テーマに決定した項目は、受講生が取り上げることを希望した上位 3 位であるが、上記①で取り上げられてい る 5 項目の内の 3 つであった(残りの 2 項目は「健康」「住宅」である)。 10 その選定では、2010 年 6 月∼ 7 月にかけて開催された 2010FIFA ワールドカップ南アフリカ大会が影響したのではな いか、と林教授は見ている。ちなみに、受講生が担当する 13 カ国の内、国連安全保障理事会常任理事国 5 カ国を除い た 8 カ国を見ると、日本・ドイツ・ブラジル・パラグアイ・北朝鮮、以上 5 カ国が上記大会出場国と重なった。 − 54 − 他方、林教授は、これらの動きを受けて、模擬国連総会で取り上げる具体的決議案の探索に入り、総会 決議案 A/64/424「Legal empowerment of the poor and eradication of poverty(林教授訳:貧困者 の法的権限強化と貧困の撲滅) 」 (PDF ファイルで全8頁。後掲<資料3>参照)11 を発見し、本セミナー第 11 回・第 12 回の場で、同決議案の具体的な内容を構成する上記 PDF ファイル7頁以下の(アラビア数字 がふられた) 第 1 パラグラフから第 12 パラグラフまでを受講生に分担して邦訳化させた12。なお、 林教授は、 この第 11 回・第 12 回の 2 コマを「模擬国連総会準備会合」 、続く第 13 回・最終第 14 回の 2 コマを「貧 困撲滅問題国連特別総会:特に、教育、食料、労働保障及び経済保障の状況改善のために」と名づけ、模 擬国連を実施する雰囲気作りも試みている。 (4)模擬国連の型と具体的な展開 模擬国連総会の議事は、実際の国連総会におけるそれに準じて行われる。すなわち、①議長選出→②一 般討議→③決議案提出→④討議→⑤修正案提出→⑥決議案・修正案に関する討議→⑦修正案への投票→⑧ 投票理由説明→⑨決議案への投票(単純多数決・コンセンサス13・全会一致)→⑩議長による投票結果発表 →⑪投票理由説明の順で進行する。本セミナーでは、すでに総会決議案 A/64/424 を討論することは所与 の条件であるため、上記①④⑤⑥⑦⑨⑩が実施された。議長には、出席する 3 国際機関のうち、国連(United Nations:UN)と国連世界食糧計画(World Food Programme:WFP)が選出されている14。 ④⑤⑥⑦では、第 1 パラグラフから順次、決議案に対して修正提案を行うか否かを議長が出席国・機関 に尋ね、 「ア)提案がなければ次のパラグラフへ移り、イ)提案がなされれば、その具体的内容・理由を提 案国・機関に説明させ、それに対する討議を行い、議論が出尽くしたところで修正案への投票を実施し次 のパラグラフへ移る」という作業が第 12 パラグラフまで繰り返された。その結果、第 1・2・3・4・8・9・ 12 パラグラフでは修正案の提案自体がなく、第 5 パラグラフでは提案された修正案が否決される一方、第 6・7・10・11 パラグラフでは修正案(=決議案への語句挿入15)が受け入れられる。最終局面⑨⑩において、 修正された決議案が投票に付され全会一致で採択されたのである(この採択された最終決議は後掲<資料 4>参照) 。 (5)テキスト輪読の意義等 以上のように、林教授は、本セミナー全 14 回のうち、準備段階を含め約半分の機会を模擬国連に投入す る一方、これに先だって 2 冊のテキストを受講生に輪読させている。シラバスの記載には、 「文献検索、レ ジュメの作成、口頭発表、討論など、大学における基礎的な学習方法を理解し、自分の考えを的確に表現 することができる」とあるだけに(資料2【授業目標】参照) 、テキストの輪読はまず上記方法の習熟手段 と捉えることができるが、それのみに留まるわけではないであろう。なぜなら、模擬国連を円滑に進める 11 http://daccess-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/N09/637/93/PDF/N0963793.pdf?OpenElement 参照。 受講生による邦訳文に林教授が手を加えて作成した総会決議案 A/64/424 (日本語版)は、後掲<資料 3 >を参照されたい。 コンセンサスとは「反対意見がない」ことを意味し、出席する全ての国家・国際機関が積極的に賛成を表明する全会一 致とは区別される。 14 本セミナー第 13 回の冒頭、立候補が募られたが、これに応じた出席国・機関はなかった。そこで、林教授の提案により、 1 国家・国際機関に 2 票を割り振り、13 カ国・3 国際機関の名を順に挙げて、議長にふさわしい場合に挙手を求めたところ、 UN と WFP がより多数の支持を得た。 15 決議案(資料 3)に挿入された語句は、後掲<資料 4 >で、“”(ダブル・クォーテーションマーク)で括られた部分か、 パラグラフの末尾に付された bis に続く文言である。 12 13 − 55 − ためには、国際社会の多様性や国際連合という組織(いずれも初等中等教育で十分な情報提供が生徒にな されていないであろう事柄)に対する最低限の理解が受講生に求められるはずだからである。その意味で、 シラバスには明確に記されていないものの、指定された当該2冊のテキスト輪読は、模擬国連の実施へ向 けた不可欠な階梯と把握してよい16。 3.シラバスに見る学習点 筆者は以下の(1)∼(3)の3点に注目した。 (1)講義題目:模擬国連という既存のディベート・ツールの活用 これにより、受講生は積極的・主体的・能動的に本セミナーに関わらざるを得ないと考えられる。その 理由は、 ①模擬国連総会の段階(第 13 回・第 14 回)と②それに至る準備過程(第 8 回・第 10 回∼第 12 回) とに分けて指摘できよう。 前者①では、受講生が各国大使や国際機関の代表になりきって、担当国・機関の利害を積極的に発言す ることが求められる。そうしなければ、当該受講生は、担当する国家・機関の利益を守れないか、他の出 席国・機関の提案や主張を受忍せざるをえなくなるからである。それだけに、現代の若者を形容する表現 としてしばしば耳にする「指示待ち」の姿勢や「マニュアル通り」に振る舞うことは、そもそも想定でき ない。かりに、ある受講生が担当国・機関の立場での発言(一言目)を事前に用意できたとしても、その 発言へは、おそらく利害を異にする出席国・機関からの反論があるに違いなく、当該受講生は、再反論す るなり、反論を踏まえて妥協するなり、その場での判断を迫られることが容易に想像できる。林教授のい う「本番」では、受講生が頼るべき・頼りたいシナリオは一切存在しないのである。 また、本セミナーでは、模擬国連総会のメイン・テーマ「貧困」を議論するにふさわしい出席国として、 利害が対立しやすい先進国と発展途上国とがほぼ同数で相対する(前掲2(3)参照) 。それゆえ、先進国・ 発展途上国いずれであれ、自国の利害だけを一方的に述べても決議採択に必要な賛同を得られず、他方の 陣営も納得できる提案とそれを裏打ちする理由を提示する必要がある。反面、本セミナーの進行上、模擬 国連総会に出席する国家・国際機関に関する情報は、 担当教員から基本的に提供されない (資料 1・同 2 参照) 。 したがって、受講生は、上記②模擬国連総会までの準備過程で(=「本番」を迎えるまでに) 、自らが担当 する国家・国際機関についてはもちろん詳細に、そればかりか、他の出席国・機関についても一定程度、調査・ 理解しておく立場に置かれるのである。 (2)テキスト テキストは2冊とも、手に取りやすく・かさばらない新書版であり、 「千円札を出せばお釣りがくる」 (税 込)価格設定 17 である(資料2【テキスト】参照) 。つまり、装丁や経済的負担の面で、受講生に受け入れ やすい書籍が選定されたといえる。 とくに、輪読の第一対象であるテキスト A は、著者独特の考えを提示している上に日本が取り上げられ 16 17 林教授は、前掲事前打ち合わせの段階で筆者が明らかにした、このような私見を否定されなかった。 各 出 版 社 Home Page(HP) で 税 込 価 格 を 調 べ た と こ ろ、 テ キ ス ト A は 693 円(http://shinsho.shueisha.co.jp/ kikan/0015-a/index.html) 、テキスト B は 735 円であった(http://www.iwanami.co.jp/search/index.html) 。 − 56 − るため、受講生の大半を占める入学したばかりの1年次生であっても、それに対する何かしらの意見や評 価を思い浮かべられるようである。これは、林教授の感触であると同時に、授業改善アンケートの自由回 答欄に受講生自身が記した意見にも現れた18。 (3)受講生が取り組む作業内容等の多様性 すでに触れた通り(前掲2(5)参照) 、受講生は、テキストを輪読する過程で、大学で学習するにあた り基本となる技術・マナーである①文献の精読、②調査、③レジュメの作成、④口述による報告(=プレ ゼンテーション) 、⑤ディスカッション・ディベートに触れ、続く模擬国連を通じ、②⑤をさらに深めていく。 林教授は、これらに加え、⑥英文、しかも大学教養教育における英語の授業では、おそらく接する機会の ない国際的法律文書(総会決議案 A/64/424)の和訳作業も彼らに課した(前掲2(3)参照) 。 こうした多彩な内容・場面展開は、受講生に飽きをこさせない、あるいは、充実感を与える方向に作用 すると考えられる。 4.シラバスからは窺えない学習点 前章3で見た3点だけでなく、シラバスからは窺えない林教授のさらなる工夫があってこそ、より高い 授業評価をもたらしているように思われてならない(前掲1②③④参照) 。筆者は、そうした工夫として、 少なくとも以下の(1)∼(4)の4点に注目する。 (1)受講生間/教員と受講者との円滑な意思疎通への希求 林教授は、①「自己紹介アンケート」の作成・実施、②メーリングリストの設定・運用、③本セミナー 受講生名簿の作成・配布にとどまらず(以上、前掲 2(1) ・脚註 5・資料 1 参照) 、国際会議(模擬国連総会) で受講生が各国大使・国際機関代表になりきるための舞台設定として、 ④本セミナー第 11 回・第 12 回を「模 擬国連総会(第 1 回・第 2 回)準備会合」 、続く第 13 回・最終第 14 回を「貧困撲滅問題国連特別総会:特に、 教育、 食料、 労働保障及び経済保障の状況改善のために」と名付けたり(前掲2(3)参照) 、 ⑤総会時には「国 名札(英文表記)19」の用意や、⑥「ベル」20 の貸し出しも行っている。 本セミナーのビデオ映像を観ると、テキストの輪読を始めてわずか 3 回目である第 7 回、あるいは、真 剣勝負の場である模擬国連総会 1 日目・第 13 回において、非常に明るく快活な「笑い」が、たびたびセミ ナー会場を覆った。こうした現象は、林教授による上記①∼⑤の細やかな工夫・演出が相俟ってもたらさ れた効果ではないかと筆者は推測する。 (2)相当量にわたる資料の配付 これは、前章3(3)②⑤の作業を進行させる基盤をなすものと位置づけられる。その一端は、すでに シラバスの記載にも現れているが(資料 2【参考文献】参照) 、圧巻なのは、先にみた通り、模擬国連総会 18 前掲事前打ち合わせの際に林教授から頂いた資料の記載に依拠している。その時点では、林教授が 2009 年度前期に本 学で開講された基礎セミナーに対する授業アンケートの結果が示されたが、同セミナーの講義題目・テキストとも、本 セミナーと全く同一である。 19 英文表記の実際は、資料 4(最終決議)の末尾を参照されたい。 20 国連関連グッズの収集家でもある林教授は、国連本部で買い求めたという国連のエンブレムが付いたベルをお持ちであ り、模擬国連総会当日にこれを司会に当たる議長団(国連および WFP)に貸し与えた。 − 57 − のサブ・テーマを決定する際に配布された、国際連合広報センター等、国連の諸機関 HP 上の貧困問題に 関する情報を林教授自身が探知・収集・複写して、A4 判 24 頁にわたる大部の資料を受講生に配布してい ることである(前掲2(3) ・脚註 9 参照) 。なお、林教授によると、本セミナー第 8 回でメイン・テーマ が定まってから同第 9 回で当該資料を配付するまでの約 1 週間、資料の探索や用意等のために忙殺された とのことである。 (3)担当教員による指示・指導の明確さ 上記(1) (2)の工夫をいかに凝らしても、それらが模擬国連を成功させるために生かされなければ無 意味と化してしまう。そこで、林教授は受講生に対し「何を・どのようにすべきか」を具体的かつ事前に 明らかにする。 一例に過ぎないが、本セミナーの核である「模擬国連」という概念・しくみを取り上げよう。シラバス の記載(資料2【授業の概要】参照)から大まかなイメージは描けるにしても、当該記載のみに依拠して、 それが具体的にいかなる行為・作業なのかまでを説明することは一般的には困難であろう。ましてや、受 講生は入学したての1年次生である。 本セミナーのビデオ映像によると、第 11 回模擬国連総会第 1 回準備会合で、林教授は、 「総会決議案を 議論し採択する」ことを「用意された決議案の文言に訂正を施したり文章を付加したりすることである」 と解説し、さらに、 「抽象的な文章である決議案を、各出席国・機関に対して具体的にいかに実現させるか という視点で考えるように」との指導を与えている21。 (4)伝達した情報を受講生に理解させる具体的説明・やりとり 4点目として、林教授は、自らが発信した情報(口述内容・資料等いずれも含む)について、具体的で 丁寧な説明をさらに添える、あるいは、受講生同士でやりとりさせてしっかり考えさせる時間を確保して いる。 これも本セミナーのビデオ映像で確認できた一例であるが、総会決議案 A/64/424 第 6 パラグラフ(起 業家を含めた商取引の育成を促進)を取り上げる(資料3参照) 。林教授は、なぜこのことが貧困問題の対 処として大切かについて、イラクにおける復興支援を引き合いに出し、世界各国からイラク「政府」への 金銭的援助だけでは同国「全体」の再生がうまくいかない旨、説明していた(上記第 11 回) 。すると模擬 国連総会第 1 日(第 13 回)に、上記説明に触発されたと思われるイラク共和国代表から、同パラグラフに 対する修正案「bis として『先進国による途上国支援のさらなる強化が必要であり、特に、直接の支援が途 上国の企業家に対して優先的に向けられることの重要性を認識し』との文言を挿入する」が示され、これ に対する投票の結果、他の出席国・機関の賛同を得て採択されたのである(資料4参照) 。 もちろん、林教授からの説明だけでは、受講生は「聞き手」として受動的な存在に陥る。テキストの輪読、 あるいは、模擬国連総会の機会をビデオ映像で観ると(第 7 回・第 13 回・最終第 14 回) 、林教授は、極 力口出しせず、受講生自身に考えさせていることがわかる。議論が膠着する、あるいは脱線しかねない場 面になって初めて、林教授は、まさに「絶妙」としか形容のしようがないタイミングで介入している。 21 これに関連して、「あまりに多くの修正を求めると、当該国・国際機関は決議を実現させる気がないと評価される。提案・ 実施できることは数多く存在するかもしれないが、優先順位を考えるように」との指導もなされた。 − 58 − 林教授のかかる姿勢・技術は、以上の(1)∼(3)を下支えするものと捉えられ、筆者としては感服 するほかない。 5.おわりに 本稿を締め括るにあたり、以下の3点に言及しておこう。 (1)授業改善アンケート結果 林教授は、昨年(2009 年)度前期にも本セミナーと同一の講義題目・内容で基礎セミナーを担当され、 その授業改善アンケート結果では、否定的・消極的意見はほぼ皆無であった。おそらく本セミナーでも同 様の結果が生まれていると予想される。 「模擬国連の場で決議案を議論し、最終的に決議を採択する」こと を体験した受講生らは、大きな達成感を獲得するのであろう。ここで確認すべきは、本セミナー受講生全 16 名のうち、これを第1順位で希望した学生は3名に過ぎず、むしろ第3順位以下の学生が過半数(10 名) を占めていたという事実である22。こうした受講生が最終的に「楽しかった」 「面白かった」との感想を抱 くに至ったとすれば、それは、林教授の本セミナーが受講生との関係において「成功した」 「非常に高い評 価を受けた」といって過言ではない23 。 (2)担当教員の心持ち 林教授は、インタビューの過程で、 「模擬国連が好きで楽しく」 、かつ、 「せっかく集まった受講生ととも に何とか 1 つの決議を採択したい」という非常に前向きな気持ちを強くはっきり口になさった。しかも、 昨年(2009 年)度・今年(2010 年)度に引き続き、来年(2011 年)度も基礎セミナーにおける模擬国連 の実施を予定されている。林教授のこの力強く高い志、これこそ、大学教員にとって実は最も重要な点で はないか。 翻って筆者は、 「第 1 順位ではない、あるいは、所属部局ではない学生も基礎セミナーに加わることに 対する不安感等、消極的な気持ちや姿勢がつい先行してしまい、それが受講生に伝わり、当該学生からの 生き生きとした反応を引き出せず、それがまた上記消極性に拍車をかける」 、そういう負(マイナス)のス パイラルに陥る危険を心の内に孕んでいることに気づかされる。当該インタビューやビデオ映像を通じて、 教員の心持ち・姿勢次第で、授業や受講生が変化すること・それを変化させられることを筆者はあらため て認識した。 (3)自らを省みて 最後に、筆者自身の授業における具体的な今後の改善点を挙げたい。 林教授の実践におけるいずれの要素・工夫も足りないに違いないが、前掲4(2) (4)で言及した「資 料の提示とそれに関する説明」が最も不足していたと感じられる。従来、これらは、教員からではなく受 講生にすべて委せた方がよい、受講生自らがしっかり考えることこそ演習・セミナーであると筆者は考え 22 23 前掲脚註 4 参照。 なお、2009 年度前期に開講された林教授の基礎セミナーに対する授業改善アンケート自由回答欄には、 「みんなの意見 を聞いて自分の考えを昇華できた」という感想が寄せられた。これは、社会科学系の演習を担当した教員としてぜひと も獲得したい内容のコメントであろう。大変残念なことに、2010 年度前期に開講された本セミナーを含む教養科目では、 当該アンケートが実施されなかったとのことである。 − 59 − てきた。しかし、調査やディスカッション・ディベートのせめて入口に当たる情報やその位置づけ等は、 教員から指示や説明を与えた方が、学生が本来有している学習意欲や思考する能力をより高める契機にな るのではないか、との示唆を得た。 【附記】 本稿は、 2010 年 9 月 28 日(火)に本学の教養教育実施委員会および大学教育機能開発総合研究センター が主催した「教養教育に関する FD 研究会 2010」 (会場:本学全学教育棟 C301 教室)において筆者が口 頭で報告した内容を再構成したものである。 同日の報告を迎えるまでに、同年 7 月 30 日(金) 、8 月 24 日(火) 、9 月 15 日(水) 、合計 3 回にわたっ て事前の打ち合わせが行われ、 その場では、 本学の伊藤洋典教授(法学部) 、 伊藤正彦教授・鈴木寛之准教授(文 学部) 、 折田充教授・菅岡強司教授(大学教育機能開発総合研究センター) 、 以上の先生方から大変貴重な意見・ 助言を多数賜りました。この場をお借りして、厚く御礼申し上げる次第です。どうもありがとうございま した。 − 60 − <資料1> 本セミナーにおける実際の進行状況 (日付横に付された V はビデオ撮影日を意味する) ① 4/9 ② 4/16 ③ 4/23 ④ 5/7 ⑤ 5/14 ⑥ 5/21 ⑦ 5/28V ⑧ 6/4 ⑨ 6/11 ⑩ 6/18 ⑪ 6/25V ⑫ 7/2 ⑬ 7/9V ⑭ 7/16V オリエンテーション+自己紹介 ※林教授作成「自己紹介アンケート」 (本文脚註5参照)の配布 熊本大学附属図書館主催「図書館活用法」 自己紹介(続き)+テキスト A・テキスト B の報告者および報告部分の決定 ※上記「自己紹介アンケート」回収 テキスト A 輪読 熊本大学学務部キャリア支援課(当時。現・学生支援部キャリア支援ユニット)主催「初年次生のためのキャリア・ガイダンス」 テキスト A 輪読(続き 2) テキスト A 輪読(続き 3・完) 「模擬国連」の議題設定+(議題にふさわしい)会議出席候補国提案 ○議題(メイン・テーマ) : 韓国哨戒艦「天安」号沈没問題と貧困とで学生の希望は半々に割れる→教員裁定で後者「貧困」に テキスト B 輪読+議題の具体化のための(かなり大部の)資料配付 テキスト B 輪読(続き 2・完)+議題(サブ・テーマ)の具体化+受講生が担当する国家・国際機関決定 ○サブ・テーマ:学生投票の上位 3 つ→教育/食料/労働保障及び経済保障 (これらは本文脚註 9 で説明した配付資料に依拠) ○会議参加国・国際機関の選定→学生に提案させ挙手で絞り込み ○受講生が担当する国家・国際機関の決定→複数の受講生が競合したら相談して割り振り A 国連安全保障理事会常任理事国+先進国: United States of America(アメリカ合衆国) United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland(イギリス) People's Republic of China(中華人民共和国) Japan(日本国) Federal Republic of Germany(ドイツ連邦共和国) French Republic(フランス共和国) Russia(ロシア) B 発展途上国: Islamic Republic of Afghanistan(アフガニスタン・イスラム共和国) Republic of Iraq(イラク共和国) North Korea(北朝鮮・朝鮮民主主義人民共和国) Republic of Chad(チャド共和国) Republic of Paraguay(パラグアイ共和国) Federative Republic of Brazil(ブラジル連邦共和国) C 国際機関: United Nations(UN・国連) European Union(EU・欧州連合) World Food Programme(WFP・国連世界食糧計画) 以上 13 カ国+ 3 国際機関 「模擬国連」準備 1(資料読み合わせ 1) ○「模擬国連」本番への雰囲気作りのため、 「模擬国連総会第 1 回準備会合」と命名 ○具体的内容: A 本番での議論材料である決議案(A/64/424 英語原文。本文脚註 11 参照)の担当箇所 (12 パラグラフ)英文和訳 B 各パラグラフの内容確認(担当者・参加学生←→林教授とのやりとり) C 決議案前文の説明 「模擬国連」準備 2(続き・完)=「模擬国連総会第 2 回準備会合」 「模擬国連総会」本番 1 ○具体的内容: A 議長選出→ UN および WFP が参加国・国際機関で多数の支持を得る B 第 1 パラグラフ∼第 7 パラグラフまで、修正案の提出→それについての討論 →採択の繰り返し(第 1 ∼第 4 パラグラフまでは修正案提出なし) 「模擬国連総会」本番 2(続き・完) ○具体的内容: B 第 8 パラグラフ∼第 12 パラグラフまで、修正案の提出→それについての討論 →採択の繰り返し(第 8・9・12 パラグラフには修正案提出なし) C 修正された決議案全文の採択→全会一致 ※ 本資料は、2010 年 9 月 28 日(火)に開催された「教養教育に関する FD 研究会 2010」において筆者が配布し た資料の一部を改変したものである。 − 61 − <資料2> シラバス 70 頁の記載内容 【授業目標】 大学での勉強の仕方を理解し、授業に臨む態度を身につける。文献検索、レジュメの作成、口頭発表、討論など、大 学における基礎的な学習方法を理解し、自分の考えを的確に表現することができる。講義題目について理解し、積極的 にセミナーに参加・貢献する。国際理解を深める。 【授業の概要】 テキストを講読し受講生に報告・討論してもらうことと、模擬国連会議の実施により、国連と現代国際社会について 考える。模擬国連とは、 「参加者一人一人が世界各国の大使となり、実際の国連会議で扱われている問題を話し合うこ とによって、国連会議を再現し、国際問題の難しさを理解すると共に、問題の解決策を探ろうとするディベート」なので、 模擬国連実施にあたって、各人は担当する自国を選び調べてもらいます。 【授業の構成】 第 1 回∼第 2 回 オリエンテーション・自己紹介 第 3 回 「図書館活用法」 (附属図書館主催)への参加 第 4 回 「キャリア・ガイダンス」 (キャリア支援課主催)への参加 第 5 回∼第 7 回 テキスト A『文明の衝突と 21 世紀の日本』輪読 第 8 回 「模擬国連」議題設定と担当国選定分担 第 9 回∼第 11 回 テキスト B『国際連合』輪読 第 12 回 「模擬国連」準備 1 第 13 回 「模擬国連」準備 2 第 14 回 「模擬国連」1 協議 第 15 回 「模擬国連」2 決議採択 【テキスト】 A サミュエル・ハンチントン(鈴木主税訳) 『文明の衝突と 21 世紀の日本』 (集英社新書、2000 年) B 明石康『国際連合』 (岩波新書、2006 年) 【参考文献】 国際連合広報センター Home Page(HP) 日本模擬国連・関東事務局 HP 同・関西事務局 HP 外務省 HP 各国駐日大使館 HP 国際連合各国政府代表部 HP 聞蔵 II ビジュアル(熊本大学附属図書館 HP から利用可能なデータベース) 熊本日日新聞記事データベース(同上) 共同通信社編著『世界年鑑 2009』 (シラバス作成時の最新版) 読売新聞社編『読売年鑑 2009』 (シラバス作成時の最新版) 前田信太朗編著『模擬国連会議ガイドブック』 (模擬国連委員会、2000 年) ※ 本資料は、 シラバス 70 頁の記載内容を本稿が必要とする限りで取り出し、 かつ、 それを基に、 林教授の許諾を得て、 筆者が視覚的に見やすく加工し、あるいは、内容をわかりやすくするため説明や語句等を付したものである。 − 62 − <資料3> 貧困撲滅問題国連特別総会 −特に、教育、食料、労働保障及び経済保障の状況改善のために− 決議案(A/64/424) 貧困者の法的権限強化と貧困の撲滅 国連総会は、 ミレニアム宣言で述べたように、全ての人のための発展の権利を現実のものにするという目標に専心し続け、 貧困と不平等の世界的な性質に関心を持ち、貧困撲滅は今日、世界、特にアフリカと発展途上国が直面しているもっ とも大きな挑戦であると再び主張するとともに、完全で生産的な雇用創出ときちんとした仕事を含む持続可能な経済成 長の促進の重要性を強調し、 貧困がすべてのレベルにおける経済的、政治的、社会的、環境的、そして、制度上の諸局面への多様で統合された対 応を必要とする広範囲の問題であると強調し、 貧しい人々への権限付与が貧困と飢餓の効果的な撲滅に必要不可欠であることを理解し、 司法へのアクセスと、とりわけ、資産、労働とビジネスに関係がある権利の実現が、貧困の効果的根絶において相互 に補強しあった、重要な決定要素であると認め、 貧困の根絶における役立つ参照として、 貧困の法的解決のための委員会の報告『世界全体のための法の働き』に留意し、 国家又国際レベルでの法の支配が、経済成長の維持、持続的発展、また貧困と飢餓の撲滅に必要不可欠のものである ことを再認し、 性の平等と女性への権限付与が、平等で効果的発展の達成と明るい経済の育成に必要不可欠であることを強調し、労 働・金融市場を含む全ての形式、とりわけ資源と財産権の所有に関する性差別を排除する責任があること、経済的権限 付与と効果的に男女平等を取り入れた法の改正・業務支援サービス・経済計画を含む女性の権利の促進する責任、女性 に豊富かつ平等な経済資源へのアクセスを与える責任があることを再認し、 それぞれの国が自分自身の国の発展において、基礎的な責任を負うことや国家政策、発展戦略は持続可能な発展の達 成において強調されすぎてはいけないことを再び主張し、国家の状況を考え、国家の所有や戦略や統治者への考慮をしっ かりしながら、国家の努力は補助的な世界のプログラムや発展途上国の発展の機会の拡大を目指した行動や政策によっ て補完されるべきであることを再確認し、 財政と経済の危機という重大な問題が、貧困の撲滅をまごつかせることが深く懸念される。そしてこの点では、反復 する国家の努力は、貧困と不平等を克服する助けになるであろう、さらに包括的で、公平な、釣り合いのとれた、開発 志向の、持続可能な経済の開発の達成を確実にする権能をもった国際間の環境によって補完されるべきであろうことを 繰り返し主張し、 − 63 − 1.Secretary-General のレポートに留意し、 2.同じく、貧しい人々への法的権限付与の分野における国家の体験の広い多様性に注目し、約束された発言権や、い くつかの国によってつくられた、それらの国の計略や目的の不可欠な部分としての貧しい人々への法的権限付与の促進 に関する発展を認識し、国家の最善の体験の共有を促進することの重要性を強調し、 3.専門機関のそれと同様に国連の資金とプログラムによる進行中の仕事を歓迎し、 4.国家や政府間や諸機関間のレベルで、調整され首尾一貫した戦略を用いて、貧困の原因と挑戦に対処することの重 要性を強調し、国連開発課題の範囲内で貧困根絶に最も高いプライオリティーを一致させる必要を強調し、 5.また、全ての人々が司法へアクセスすることの重要性を強調し、そしてこの点については、アイデンティティおよ び出生登録システムの管理を強化かつ改善すること、そして現在ある法的権利に関する啓発もまた同様に奨励し、 6.法の支配と財産権の尊重、および適切な政策と規制の枠組みの追求が、とりわけ、企業家を含めた商取引の育成を 促進でき、貧困の撲滅に寄与するということを認め、 7.労働者の権利(国際労働機関によって宣言された労働上の基本的な原則と権利を尊重することを含む)を守り、全 ての人の雇用を促進するために、国家レベルでの適切な政策と規制する枠組みを追求することの重要性の主張を繰り返 し、 8.精力的、総括的でよく機能し、社会的に信頼できる民間機関(経済成長を生み出し、貧困を減らすための重要な機 関である)を促進するために、国家レベルでの適切な政策と規制する枠組みを議論する重要性を認知する。また、女性 や困窮者、弱い立場の人を含めた全ての人が、起業家としての活動や商売を容易に行える新たな法的権限を与えた環境 を促進することを奨励し、 9.国家の状況、所有権、統率力の重要性を心に抱きながら、彼らの国家的政策や戦略の中にこれらの局面を取り入れ ることによって、公式または非公式な背景の両方に呼びかけることで、各国に貧困者への裁判を利用する機会や財産、 労働、商売に関係する権利の実現を含む法律上の権限を与えるという範囲において、彼らの努力を継続することを奨励 し、 10.貧困撲滅への挑戦の複雑性を認識しながら、教育と訓練は貧困の中で暮らす人々に権限を与えることにおいて決定 的に重要な要因であり、またこの点で、すべてのレベルでの行動で読み書き能力を発達し拡大することを最優先とする ことを強調し、 11. 国際社会で貧困の根絶を優先的に取り扱い続けることや、適切で、予測できる財源または技術支援の支給を通して、 貧困者に正当な権利を与えることを促進することにおける発展途上国の国家の取り組みを支持することを要求し、 12.現在の決議の実行において 「ミレニアムサミット・フォローアップ」 という項目の下で 2011 年第 66 回総会にレポー トを提出し、各国の経験と加盟国の見解を考慮に入れて、貧困者の法的な権限付与の考慮を続けるよう、事務総長に要 求する。 − 64 − <資料4> 貧困撲滅問題国連特別総会 −特に、教育、食料、労働保障及び経済保障の状況改善のために− 最終決議 United Nations A/RES/65/1 General Assembly Distri.: General 16 July 2010 Original: Japanese Special session Agenda item 1 貧困者の法的権限強化と貧困の撲滅 国連総会は、 ミレニアム宣言で述べたように、全ての人のための発展の権利を現実のものにするという目標に専心し続け、 貧困と不平等の世界的な性質に関心を持ち、貧困撲滅は今日、世界、特にアフリカと発展途上国が直面しているもっ とも大きな挑戦であると再び主張するとともに、完全で生産的な雇用創出ときちんとした仕事を含む持続可能な経済成 長の促進の重要性を強調し、 貧困がすべてのレベルにおける経済的、政治的、社会的、環境的、そして、制度上の諸局面への多様で統合された対 応を必要とする広範囲の問題であると強調し、 貧しい人々への権限付与が貧困と飢餓の効果的な撲滅に必要不可欠であることを理解し、 司法へのアクセスと、とりわけ、資産、労働とビジネスに関係がある権利の実現が、貧困の効果的根絶において相互 に補強しあった、重要な決定要素であると認め、 貧困の根絶における役立つ参照として、 貧困の法的解決のための委員会の報告『世界全体のための法の働き』に留意し、 国家又国際レベルでの法の支配が、経済成長の維持、持続的発展、また貧困と飢餓の撲滅に必要不可欠のものである ことを再認し、 性の平等と女性への権限付与が、平等で効果的発展の達成と明るい経済の育成に必要不可欠であることを強調し、労 働・金融市場を含む全ての形式、とりわけ資源と財産権の所有に関する性差別を排除する責任があること、経済的権限 付与と効果的に男女平等を取り入れた法の改正・業務支援サービス・経済計画を含む女性の権利の促進する責任、女性 に豊富かつ平等な経済資源へのアクセスを与える責任があることを再認し、 − 65 − それぞれの国が自分自身の国の発展において、基礎的な責任を負うことや国家政策、発展戦略は持続可能な発展の達 成において強調されすぎてはいけないことを再び主張し、国家の状況を考え、国家の所有や戦略や統治者への考慮をしっ かりしながら、国家の努力は補助的な世界のプログラムや発展途上国の発展の機会の拡大を目指した行動や政策によっ て補完されるべきであることを再確認し、 財政と経済の危機という重大な問題が、貧困の撲滅をまごつかせることが深く懸念される。そしてこの点では、反復 する国家の努力は、貧困と不平等を克服する助けになるであろう、さらに包括的で、公平な、釣り合いのとれた、開発 志向の、持続可能な経済の開発の達成を確実にする権能をもった国際間の環境によって補完されるべきであろうことを 繰り返し主張し、 1.Secretary-General のレポートに留意し、 2.同じく、貧しい人々への法的権限付与の分野における国家の体験の広い多様性に注目し、約束された発言権や、い くつかの国によってつくられた、それらの国の計略や目的の不可欠な部分としての貧しい人々への法的権限付与の促進 に関する発展を認識し、国家の最善の体験の共有を促進することの重要性を強調し、 3.専門機関のそれと同様に国連の資金とプログラムによる進行中の仕事を歓迎し、 4.国家や政府間や諸機関間のレベルで、調整され首尾一貫した戦略を用いて、貧困の原因と挑戦に対処することの重 要性を強調し、国連開発課題の範囲内で貧困根絶に最も高いプライオリティーを一致させる必要を強調し、 5.また、全ての人々が司法へアクセスすることの重要性を強調し、そしてこの点については、アイデンティティおよ び出生登録システムの管理を強化かつ改善すること、そして現在ある法的権利に関する啓発もまた同様に奨励し、 6.法の支配と財産権の尊重、および適切な政策と規制の枠組みの追求が、とりわけ、企業家を含めた商取引の育成を 促進でき、貧困の撲滅に寄与するということを認め、 bis 先進国による途上国支援のさらなる強化が必要であり、特に、直接の支援が途上国の企業家に対して優先的 に向けられることの重要性を認識し、 7.労働者の権利(国際労働機関によって宣言された労働上の基本的な原則と権利を尊重することを含む)を守り、全 ての人の雇用を促進するために、国家レベル“および地域レベル”での適切な政策と規制する枠組みを追求することの 重要性の主張を繰り返し、 8.精力的、総括的でよく機能し、社会的に信頼できる民間機関(経済成長を生み出し、貧困を減らすための重要な機 関である)を促進するために、国家レベルでの適切な政策と規制する枠組みを議論する重要性を認知する。また、女性 や困窮者、弱い立場の人を含めた全ての人が、起業家としての活動や商売を容易に行える新たな法的権限を与えた環境 を促進することを奨励し、 9.国家の状況、所有権、統率力の重要性を心に抱きながら、彼らの国家的政策や戦略の中にこれらの局面を取り入れ ることによって、公式または非公式な背景の両方に呼びかけることで、各国に貧困者への裁判を利用する機会や財産、 労働、商売に関係する権利の実現を含む法律上の権限を与えるという範囲において、彼らの努力を継続することを奨励 し、 − 66 − 10.貧困撲滅への挑戦の複雑性を認識しながら、教育と訓練は貧困の中で暮らす人々に権限を与えることにおいて決定 的に重要な要因であり、 “そのために学校給食プログラムのさらなる推進が効果的であることに留意し” 、またこの点で、 すべてのレベルでの行動で読み書き能力“および基礎的な計算能力”を発達し拡大することを最優先とすることを強調 し、 bis これらの達成の前提である教員等人材養成に対する支援の緊急の必要性に留意し、 11. 国際社会で貧困の根絶を優先的に取り扱い続けることや、適切で、予測できる財源または技術支援の支給を通して、 貧困者に正当な権利を与えることを促進することにおける発展途上国の国家の取り組み“と責任”を支持することを要 求し、 12.現在の決議の実行において 「ミレニアムサミット・フォローアップ」 という項目の下で 2011 年第 66 回総会にレポー トを提出し、各国の経験と加盟国の見解を考慮に入れて、貧困者の法的な権限付与の考慮を続けるよう、事務総長に要 求する。 出席国・機関: United States of America United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland French Republic Russia People's Republic of China Japan Federal Republic of Germany North Korea Republic of Iraq Islamic Republic of Afghanistan Republic of Chad Federative Republic of Brazil Republic of Paraguay European Union World Food Programme United Nations − 67 − 報告Ⅱ 基礎セミナー「風景の発見」について 熊本大学大学院自然科学研究科 中 田 晴 彦 2010 年度の FD 研究会のテーマは、 「少人数ゼミ形式授業について」である。本稿では、基礎セミナー の科目「風景の発見(大学院自然科学研究科(工学系) ・小林一郎先生) 」について報告する。少人数ゼミ の最大の特徴は、学生との距離が近いことであろう。個々の学生とコミュニケーションを密に保ち、信頼 関係を築くことができれば、互いに充実した有意義な講義になる。小林先生は、個々の学生を知るための 十分な準備と温厚な語り口によって彼らの心をつかみ、やる気を起こさせ、潜在的な能力や可能性を引き 出すことに成功している。講義終了後、多くの学生が自分の中で何かが変わった、つまり「成長の跡」を 実感できていることが、その証左といえよう。企画・運営委員会 FD 研究会部会の折田充先生(大学教育 機能開発総合研究センター) 、鈴木寛之先生(文学部)と共に聴講させていただいた4回の講義内容を紹介 しつつ、そこから得られる参考点や教訓等を整理したい。 講義の概要 ・講義名 :基礎セミナー 「風景の発見」 ・対象 :1 年生(文・教育・工・薬・医の各学部) ・受講生数 :20 名(男性 12 名(うち、韓国人留学生 1 名)女性 8 名) ・講義の目標 :一般社会で必要とされる「観察力」 「調査力」 「考察力」 「対話力」を、 写真を撮る行為を通して身につける。 ・講義内容 :小林先生は建築の専門家である。学生は人工建築物と自然の調和に関する内容を学ぶ 一方で、あるテーマについて自ら写真を撮り、それを講義で解説する。具体的には、大 型スクリーンに映しだされた写真を受講者全員で見ながら、それを撮影した学生と先 生を中心に質疑応答を繰り返し、一人あたり 4 分前後の議論を展開する。受講させて いただいた 4 回の授業の講義回、講義日、内容を以下の表にまとめた。 基礎セミナー「風景の発見」の聴講日と内容 内 容 講義回 講義日 第 5 回 5/13 「 ‘ほっ’とする風景」の写真紹介 第 9 回 6/10 「白川の特異点」の写真紹介 1 回目 第 13 回 7/ 8 「白川の特異点」の写真紹介 2 回目 第 15 回 7/22 「白川の特異点」に関するレポートと自らが最も評価する写真紹介 学生を知る工夫 少人数講義を成功に導く第一のポイントは、教員が積極的なコミュニケーションを通して学生の人となり − 69 − を知り、互いの間の垣根を低くすることであろう。小林先生は「自己紹介カード」と「各講義後のアンケー ト」を実施することで、それを実践されている。自己紹介カードには 11 の質問項目があり、 「大学でした いこと」 、 「将来の夢」 、 「愛読書」等のオーソドックスな質問に加え、 「原風景」といった専門的な視点から 学生を知ろうとする問いもある。原風景の記入例には、 「小倉・若松の歓楽街と若戸大橋」 、 「長く続く田ん ぼのあぜ道」 、 「湯布院から見た由布岳」 、 「高校から見た大村湾」などがあり、故郷に対する各学生の思い入 れを窺い知ることができる。また、愛読書欄には「一瞬の風になれ」 (佐藤多佳子) 、 「ノルウェイの森」 (村 上春樹) 、 「堕落論」 (坂口安吾) 、 「変身」 (カフカ)など幅広いジャンルのものが含まれ、外見からは想像で きない学生の好みがわかる。 各講義後のアンケートには、その日に学んだ重要 3 項目を記入する欄がある。学生の記入例には、 「仮想 行動と象徴要素」 「Refuge-Symbol 法」等の建築用語のほか、やや的外れな記述も含まれる。ただし、小 林先生が考える重要項目でなくとも特段問題はなく、要は学生がそう考えるに至ったプロセスに筋が通っ ていれば構わない、 とご本人はお考えになっているようだ。学生に対し「正解を示さず考えさせる」姿勢は、 後の写真紹介の場でも随所に見られることになる。次に、聴講した各講義回の内容を紹介する。 講義の聴講 1(5 月 13 日) この日は、 「 ‘ほっ’とする風景」の写真を学生全員が紹介した。前週のゴールデンウイークに帰省した 学生が多かったため、実家やその周辺の家並み、バス停、道路、商店街などの写真が多く見られた。一人 暮らしを始めたばかりの学生にとって、久しぶりに見た実家周辺が普段以上に「ほっとする風景」に思え たことは想像に難くない。小林先生は、写真のエピソードを含む学生の話をにこやかに聞いておられた。 そのうち何人目かの学生が、 旅行先の大分県内で撮った写真の紹介を始めた。幅 5 m程度の細いコンクリー ト道路が手前から奥へと伸び、両側には平屋か 2 階建ての家屋、倉庫、店などが立ち並んでいる。青空の もと、 赤い服を着た子どもが一人、 グローブ片手に奥から手前へ歩いている。GW なのにどこにも連れて行っ てもらえない、という印象を受ける子供の影。どこかで見たことのあるような、懐かしい風景。他の学生 の写真には希薄だった、 ‘ほっ’とする要素が確実にあるように思えた。 小林先生は、写真の中の「道路手前に半分程度見えている車の侵入を防ぐための 50 cm 程度の石柱」や、 「手前にある広場(空間)と建物のバランス」等を指摘しながら、人に安心感を与える要素を解説した。写 真を見て‘ほっ’とするのは感情であるが、それを生むには、ある種の理屈や法則性があることを学生た ちは初めて知るのである。実家やその周辺の風景は、第三者をほっとさせる客観的な力に乏しいことを認 識した学生は、誰が見ても「ほっ」とする写真を撮るにはどうすれば良いか、迷い考えることになる。そ の成果が少しずつ見え始めるのが、次回以降の講義ということになる。 講義の聴講 2(6 月 10 日・7 月 8 日) 「白川の特異点」と題して、学生は白川の写真を 2 回にわたって紹介した。繰り返し行う理由は、1 回目 に先生から指摘された点をどの程度理解・修正し、レベルアップできたかを確認する意味がある。6 月 10 日の講義では、子飼橋の上から白川の上流あるいは下流方向を撮ったもの、右岸または左岸から子飼橋を 中央に撮ったもの、川面に夕日が映える時間帯を狙って撮ったものなど、ある程度撮影の意図が伝わる写 真もあった。一方で、 「特異点」というには程遠い、漠然とした写真も少なくない。例えば、竜神橋の上か ら下流を撮った写真には、左下部に水道管の柵が大きく映っていた。小林先生は学生に柵を写真に入れた 理由を尋ねたが、 全く想定外の質問だった様子で答えに窮していた。柵の意味や位置づけを明確にするには、 − 70 − 同じ場所から柵ありと柵なしの写真をそれぞれ撮って比較するのが良い、とアドバイスされていた。要は、 被写体の細部に至るまで問題意識を持ち、頭を使って写真を撮れ、ということだ。 別の学生の写真には、白川を背景に大学の向かい側の河岸にある数基の石堤が映っていた。小林先生と 学生との間で以下のような会話が交わされる。 先生: (石堤を指して)これはなんのためのもの? 学生:私も何かなと思ったのですが・・・。 ・・よくわかりません。 先生:川に堤があるということは、それで何が変わる? 学生: ・・・・。水の流れ、が変わると思います。 先生:そうですね。でもそれは何のために? 学生: ・・・・・。水の流れが・・・ (沈黙) 。 先生:堤があると、水の流れが緩やかになって「淀み」ができるよね。淀みにはいろんな生き物が集 まってくる。すると川の生態系が豊かになって・・・。 学生:なるほど。そういう視点で、もう一度写真を撮ってきます。 (この学生は 2 回目の講義では、河川表層が淀んでいる様子がわかるような写真を撮影し、全体的に 写真の迫力が増した。 ) 6 月 10 日の写真紹介で小林先生から指摘を受けた学生は、 「リベンジ」を誓い 1 カ月後(7 月 8 日)の 講義までに様々な準備をする。これまでよりも長い距離を歩き、多くの写真を撮り、さらに友人同士で撮っ た写真を評価し合うなど、従来になかった有機的な学生交流も生まれるようになる。中には、阿蘇の白川 水源地にまで足を運ぶ行動力を見せる者もいる。小林先生に体内スイッチを ON にされた学生は、爽快な までに実に生き生きとしている。そうして迎えた 2 回目の写真紹介は、1 回目の時の内容に比べて格段にレ ベルアップしたものになった。写真の中のモノ(橋・人・動物・ビル・車など)にそれぞれ撮影者の意図 が示され、講義で習ったモノと空間、明と暗のバランスを考えた視点も取り入れられている。さらに、人 前で話すことに慣れてきて、説明能力が着実に向上している様子もうかがえる。こうした雰囲気の中、最 終回の講義を迎える。 講義の聴講 3(7 月 22 日) 学生は、この日までに「白川の写真集」 (タイト ルは学生が自由に決める)という冊子体を作成し、 講義に持参した。色画用紙や写真等で装飾された表 紙をめくると、学生自身が撮影した白川の風景がコ メントと共に数ページにわたって紹介されている (右写真) 。上流から下流へ、あるいは同じ地点でも 様々な角度から撮られた写真構成にはストーリー 性が感じられ、最後のページには「私が選んだ白川 の特異点」という題の大きな写真と、その選択理由 が詳細に記されている。 冊子は教室の後方に設置した机の上に並べられ、 − 71 − 講義開始後 20 分程度で学生全員がそれを閲覧したのち、各学生による最後の写真紹介が行われた。中身が よく練られた、素晴らしい発表に多く接することができた。5 月の「ほっとした風景」で写真紹介をした頃 からは、想像できないほどの成長ぶりである。写真集の完成は、講義を通して学生にモノを考える力、す なわち観察力・調査力・考察力がついた証ともいえよう。 ただし、全ての学生の説明がパーフェクトであった訳ではない。言葉の足りない学生には小林先生が丁 寧にフォローされ、 「話をする内容はあらかじめ準備すること」 、 「先を読むための段取りを怠らないこと」 、 「自分が一生懸命やったことを最大限アピールしよう」等のアドバイスがあった。講義が終了したとき、教 室全体がやや名残惜しい雰囲気で支配されていたように思えた。 白川の「写真集」の評価 学生が作成した「白川の写真集」は二つの評価を受ける。一つは学生投票で、受講生は最も印象に残っ たレポートを 3 つ挙げ、それを点数化する。もう一つは小林先生がご自身で選ばれるもので、いずれの結 果も先生のコメント付きで研究室のホームページに公開された。 写真集に対する学生と先生の評価は、概ね一致していた。 「写真も作品の仕上がりもきれい。夏の川の爽 やかさが伝わってくる」 、 「表紙も地図も楽しそう」など、高評価を得た学生に対するコメント内容は、多 くの受講者にも共通したものであろう。一方で、学生と先生の評価が異なる場合もあった。その学生は、5 月 13 日の「ほっとする風景」の講義で紹介した写真が大変良かったにも関わらず、最終段階での先生の評 価は必ずしも高くなかった。後日、その理由を伺ったところ、 「のびしろ」という答えが返ってきた。当該 学生は他の学生よりも写真を撮るセンスはあったものの、講義の中でその力を十分に伸ばそうとしていな かったことが、評価を下げた理由とのこと。他人より多く歩いて白川を見た学生、400 枚以上の写真を撮 り納得するまでこだわりを見せた学生は、無骨ながら講義を通して調査力や観察力や格段に向上しており、 評価は「のびしろを実質的なものとして伸ばすことのできた学生に与えられる」 、という小林先生の姿勢に 深く共感した。 講義に対する学生の評価 講義終了後のアンケートから、学生の感想を幾つか紹介したい。 1)この授業を通して、物事を深く考えることと、それを表現することの大切さを学んだ。また、写真を 撮ることも大好きになった。 2)白川の特異点を探して 400 枚以上写真を撮って回って、白川が様々な景観をしていることが分かり驚 いた。風景を一つ一つ分析したり、デザインの細部の意味まで読むことはおもしろい。 3)この授業では、感想文を書いたり、白川の写真を何度も取りに行かなければならなかったりで、最初 は先生の意図がつかめずに苦労した。しかし、授業を終えて今思うことは、今まで考えたこともない ようなことをいろいろな角度から考えることが良い経験になったのでは、ということだ。この授業は 答えのない授業だったが、考えれば考えていくほどに達成感が得られる、そんな授業だったと思う。 (下 線部は筆者による) − 72 − いずれも評価の高い感想であるが、3人目の下線部分は、事前打ち合わせの際小林先生が講義目標の一 つに挙げていた点であった。先生にとってはまさに「わが意を得たり」であり、こうしたコメントが先生 を大いに励まし勇気づけることは間違いない。おそらく、多くの受講生は、 「撮った写真を先生に褒めても らいたい」との意識を共有していたのではないだろうか。 「基礎セミナー・風景の発見」は、高校を出たば かりの彼らにとって、大学卒業後も印象に残る講義の一つになっていくと思う。 講義の課題 各学生の人となりを知り、コミュニケーションを密にすることで、小林先生と学生の間にはざっくばら んに話ができる、陽だまりのような雰囲気が醸成されていた。ただし、講義中に写真への質問やコメント が出されるのはほぼ小林先生に限られており、受講生はおしなべて静かであった。人前で自分の意見を主 張することに慣れていない面もあると思うが、学生同士でディスカッションをする時間をもう少し確保で きれば、学生間の「横のつながり」が適度に形成され、さらに厚みのある考察や議論に発展したように思う。 なぜなら、各講義後のアンケート用紙に書かれた学生の感想は、教員が考えている以上に講義の内容を正 しく理解し、自分の意見をしっかり述べたものが多いからである。 上記の点について、小林先生は十分認識されている。改善に向けた対策も検討されているが、講義中に 学生が積極的に発言しないのは本授業に限ったことではない。これまでに育った環境や受けてきた教育に も起因する話であり、私たち教員はこの問題に大きな視点で取り組み、粘り強い対応が求められよう。 おわりに このたび、 「少人数ゼミ形式授業について」というテーマで、自然科学研究科(工学系)の小林一郎先生 がご担当された「基礎セミナー・風景の発見」を聴講する機会に恵まれた。4 回の講義の聴講に加え、複数 「少人数ゼミ授業は、対話によって究められる」 回にわたる事前・事後打ち合わせを通して見えてきたことは、 というシンプルな結論である。優しさと厳しさを交互に織り交ぜ、学生の様子や変化を注意深く観察する 先生の姿には、彼らへの教育的責任と愛情が感じられ、ご自身の仕事に対するプロ意識の高さを窺い知る ことができた。最後に、小林先生が自らに、そして全教員に対するメッセージを紹介して本稿を閉じたい。 謝辞 本報告に際し、ともに授業参観および事前・事後打ち合わせを行い、発表内容の検討やビデオ撮影等にご尽力いただ いた折田充先生、鈴木寛之先生に深くお礼申しあげます。また、こうした機会を与えていただいた教養教育実施委員会 企画・運営委員会 FD 研究会部会の先生方に感謝申し上げます。最後に、ご多忙のところ貴重な時間を割いてご対応い ただいた小林一郎先生に厚くお礼申しあげます。 Merci beaucoup ! − 73 − 教養 教育実施機構・教養教育実施委員会報告 教養教育実施委員会教務委員会報告 教養教育実施委員会教務委員会委員長 高 野 博 嘉 はじめに 学士課程教育推進委員会での検討を元に、来年度からの教養教育実施体制の見直しが進められている。現 在 ( 平成 23 年 1 月初旬 ) において来年度実施体制の詳細は決定されていないものの、教養教育実施委員会教 務委員会は今年度で廃止されるものと考えられる。そのため今年度の教務委員会は、 毎回議題として挙がる 「外 部試験による単位認定」等を粛々と進めながら、来年度から実行されることが決まったカリキュラム変更と 実施体制の見直しに関する学士課程教育推進委員会での審議の進捗を眺めつつ運営を行う必要があり、その 意味で特異な一年であったと言うことができるだろう。 1.委員会の構成 委員は、各教科集団 ( カッコ内に表記 ) 幹事と、大学教育機能開発総合研究センターおよび専門基礎科目 I 委員会から選出された委員よりなり、次に記す各氏であった ( 敬称略 )。 高野博嘉 ( 委員長・生物学 )、長谷川四郎 ( 副委員長・地学 )、星野裕司 ( 環境造形・科学 )、山口晃生 ( 科 学技術・情報 )、玉巻伸章 ( 医科学 )、大杉佳弘 ( 哲学 )、山城千秋 ( 教育学 )、渡辺功 ( 心理学 )、原島良 成 ( 法学 )、山中守 ( 経済学 )、寳月拓三 ( 地理学 )、永尾悟 ( 英語 )、市川雅己 ( 仏語 )、吉川榮一 ( 中国語 )、 永井孝幸 ( 情報教育 )、本間里見 ( 大学教育機能開発総合研究センター・カリキュラム開発部門 )、渡邊 あや ( 大学教育機能開発総合研究センター・カリキュラム開発部門 )、内藤幸一郎 ( 専門基礎 I 委員会 数学・統計学 ) 委員会にはこの他に、各審議事項の説明のために関連教員が参加することがあり、また学生支援部学務ユ ニット教育支援チーム ( 教養教育担当 ) から事務職員の陪席があった。 2.教務委員会からの選出委員 教務委員会から選出・指名されて、全学委員会等の構成員となったのは、以下の委員であった。 ・教務委員会 高野博嘉 ・同和・人権問題委員会 山城千秋 ・環境安全センター運営委員会 玉巻伸章 3.教務委員会の専門部会の構成 教務委員会には、以下に示す 3 つの専門部会が置かれているが、その委員配置は以下の通りであった。 ・成績処理専門部会 大杉佳弘 ( 部会長 )、高野博嘉、星野裕司、山城千秋 ・履修指導専門部会 山中守 ( 部会長 )、長谷川四郎、渡辺功、原島良成、永尾悟、市川雅己、 吉川榮一、永井孝幸 ・授業計画専門部会 本間里見 ( 部会長 )、山口晃生、玉巻伸章、寳月拓三、渡邊あや、内藤幸一郎 − 77 − 4.教務委員開催状況について 今年度の開催状況は以下の通りである。定足数の充足に対し、委員の方々のご協力に感謝したい。 第 1 回 3 月 24 日 ( 水 ) 出席者 13 名 第 2 回 4 月 24 日 ( 月 ) 出席者 12 名 第 3 回 5 月 20 日 ( 月 ) 出席者 12 名 第 4 回 6 月 17 日 ( 木 ) 出席者 11 名 第 5 回 7 月 29 日 ( 水 ) 出席者 14 名 第 6 回 9 月 22 日 ( 水 ) 出席者 14 名 第 7 回 10 月 18 日 ( 水 ) 出席者 12 名 第 8 回 11 月 15 日 ( 月 ) 出席者 11 名 第 9 回 12 月 20 日 ( 月 ) 出席者 13 名 第 10 回 1月 17 日 ( 月 ) 出席者 12 名 第 11 回 2月 21 日 ( 月 ) 出席者 11 名 5.教務委員会における審議事項と活動について 審議事項については、外部試験による単位認定、非常勤講師等担当教員の変更、授業開放科目の認定、不 開講科目の承認、定期試験時間割配当の決定、成績評価に関わる異議申立期間の設定、学長と学生代表との 懇談会で出された意見・要望に対する対応案の検討等の通常の審議事項に加えて、以下の審議を行った。 ・新入生が入学前に修得した既修得単位の認定 ・成績評価の異議申し立てと再試験の非常勤講師による授業科目に関わる措置の設定 ・ 「教養教育授業計画書」の印刷部数の検討 ・外部試験によるフランス語および日本語科目の単位認定基準の変更 また、前年度委員が中心となって、新入生オリエンテーションにおける教養教育履修相談会を行った。 教務委員会の活動としては、年度末に新入生ガイダンス担当教員に対して行う説明会と、来年度の各種案 内の作成も行っていたが、これらについては来年度実施体制が変更になることから、本委員会では、再履修 案内の作成のみ行った。先に述べた新入生オリエンテーションにおける教養教育履修相談会については学士 課程教育推進委員会で行う予定であるが、来年度新入生に対する既修得単位の認定手順は未だ固まっていな い。これらについては、来年度の教養教育実施組織が考えるべき事柄ではあるが、学生の不利益にはならな いように、教務委員会としても支援をしていきたいと考えている。 − 78 − 教養教育実施委員会企画・運営委員会報告 教養教育実施委員会企画・運営委員会委員長 矢 嶋 哲 1.委員会の構成 2010 年度の企画・運営委員会は、当初下記の 16 名の委員によって構成され、矢嶋哲を委員長、伊藤洋 典を副委員長に選出して活動した。 跡上史郎(文学・言語学) 伊藤洋典(政治学) 伊藤正彦(歴史学) 井上尚夫(数学・統計学) 入江徹美(薬科学) 梅田泉(日本語・日本事情) 大森不二雄(教育システム開発部門) 折田充(FD・教育評価部門) 木村博子(芸術) 後藤貴浩(健康・スポーツ科学) 菅岡強司(FD・教育評価部門) 鈴木寛之(社会学) 角田俊治(英語) 中田晴彦(化学) 深堀建二郎(独語) 矢嶋哲(物理学) (大森委員が平成 22 年 10 月 1 日付けで他大学に転出され、その後は 15 名の委員で活動を継続した。 ) 2.委員会の開催情況と審議事項 2010 年度は以下の通り委員会を開催した。 第 1 回 3 月 17 日 10 名 第 2 回 4 月 26 日 14 名 第 3 回 5 月 24 日 12 名 第 4 回 6 月 28 日 14 名 第 5 回 7 月 26 日 13 名 第 6 回 10 月 27 日 13 名 第 7 回 11 月 18 日 10 名 第 8 回 12 月 16 日 10 名 本委員会は教養教育の予算配分と決算の審議の他に、FD 活動の企画・運営、教養教育の HP の管理を主 要な業務としており、委員は次の2つの専門部会あるいは全学委員会のいずれかに属して活動した。 FD 研究会部会 ○矢嶋委員、伊藤(洋)委員、中田委員、鈴木委員、伊藤(正)委員、 角田委員、菅岡委員、折田委員 8名 大学案内・HP 部会 ○井上委員、跡上委員、大森委員、木村委員、後藤委員、深堀委員 6名 ( ○は部会長を示す ) なお、本委員会からはセクシャル・ハラスメント防止委員会委員に入江委員を、付属図書館運営委員会 委員に梅田委員を選出した。 − 79 − 次に、本年度の主要業務の概要を順に確認する。 (1)教養教育の予算配分と決算について 2009 年度の決算、および教養教育経費の配分原則に基づく、2010 年度の予算配分について、それぞれ 5 月、6 月に審議し、それぞれ翌月の教養教育実施委員会に提出した。予算配分については前年度決算等よ り予測される使用額から、教養教育経費については、情報処理教育経費、教育用印刷・製本費等を削減し たが、本年度予算請求分の TA 経費の配当が削減されたため、前年度計画を立てた TA 経費の支出に補填 するために予備費を増額した。また、運営費については、新入生への配布物をまとめる封筒を準備するため、 事務用印刷費を増額した。本年度は例年通り、2011 年 2 月中までに教養教育経費の計画的な執行を進めた。 (2)FD 活動の企画・運営および検討について FD 研究会を中心として、一昨年度以来の教養教育における授業研究の企画を継承しながら、 「教養教育 に関する FD 研究会」の全体会と教科集団別分科会を企画した。その企画・運営の詳細については、本誌 掲載の「 『教養教育に関する FD 研究会 2010』実施報告」と『2010 年度教養教育教科集団別分科会実施報告』 (2011 年 1 月)を参照されたい。また、2004 年度以降の教養教育における FD 活動の取り組みについての 総括を FD 研究会部会で作成し、 『2010 年度教養教育教科集団別分科会実施報告』に掲載した。 全学の「授業改善のためのアンケート」の実施要領の変更に伴って、教養教育における「授業改善のた めのアンケート」のあり方について検討した。今年度は教養教育における「授業改善のためのアンケート」 を原則実施しないことになったが、基礎セミナー・学際科目委員会から、学際科目については、2010 年度 後学期に、履修登録者が 10 名以上の全授業科目について、教養教育固有の質問事項を2項目追加して、ア ンケートを実施したい旨の要望があり、10 月に審議して、11 月の教養教育実施委員会に提出した。 (3)教養教育実施機構ホームページ (HP) の管理について 昨年度の企画・運営委員会で教養教育実施機構の HP の管理について、本委員会が中心になって担当す ることになった。この件について,HP コンテンツの検討を含めた HP 管理をする部会の設置について検討 した結果、大学案内編集部会にその役務を加え、名称を“大学案内・HP 部会”と変更して担当してもらい、 教養教育についての HP の充実について検討した。 3.検討課題と引継事項 本年度の審議事項についての検討課題について、引継事項と併せて以下に確認する。ただし、学士課程 教育改革に伴う教養教育の組織についての検討状況を鑑みると、検討課題や引継事項は今年度限りの企画・ 運営委員会へのものではなく、新たにそれぞれの検討事項を引き継ぐ会議体への申し送りとなると考えら れる。 (1)教養教育実施機構経費について 本年度まで、教養教育に関する予算配分については、前年度決算より予想される使用額から、予算の削 減について検討することができた。しかし、来年度から、主題科目等に対応する教養教育の授業の担当責 任母体が各学部に移ったため、それに関連する一部の経費をどのように管理し、執行するかを検討しなけ ればならないであろう。その後、予算削減が必要になった場合は、数年間の予算の推移を確認し、その間 − 80 − の教養教育についての予算の執行状況を精査して、適正な配分を検討し、削減可能な部分を洗い出すこと が必要になると思われる。また、2010 年度の教養教育予算の再配分に限り、新規購入された物品について は教養教育の物品として管理することになったが、来年度から同様の物品についてはどのように管理する のか、検討すべきであると思われる。 (2)教養教育における「授業改善のためのアンケート」について 全学の「授業改善のためのアンケート」の実施要領の変更に伴って、教養教育における「授業改善のた めのアンケート」のあり方について検討し、 「原則として、2年に1回 ( 同年度の前学期と後学期の授業科 目に対して隔年で )、履修者 10 名以上の教養教育の全科目についてアンケートを実施する。ただし、教科 集団の方針や開講科目群の特性によっては、その原則によらずアンケートを実施できる。 」という案を基に して、各教科集団の意見や要望を「教養教育に関する FD 研究会 2010」の教科集団別分科会で検討の上、 教科集団ごとにまとめて頂いて集めた。その結果、①「 “基礎セミナー”は 2011 年度から毎年(前学期・ 後学期) 、履修登録者数が 10 名以上の全授業科目で実施する」 、②「 “情報基礎 A・B”については 2011 年 度から毎年(前学期・後学期) 、LMS(WebCT) のアセスメント機能を用いて、アンケートをオンライン化 して実施する」旨の要望が出された。その FD 研究会に前後する学士課程教育改革に関する検討の過程で、 2011 年度以降の教養教育の FD 活動についての検討は別の会議体で行われることが判明したため、企画・ 運営委員会では検討のまとめを該当する会議体に申し送りすることになった。したがって、来年度以降の 教養教育における「授業改善のためのアンケート」実施については、その会議体で検討して頂かなければ ならない。 (3)今後の FD 活動について ここ数年の FD 活動については、企画・運営委員会の FD 研究会部会が中心になって検討し、FD 研究会 を企画・運営してきた。また、数年間に渡り行ってきた毎年前学期および後学期に実施していた教養教育 における「授業改善のためのアンケート」は、整理された質問項目により、頻度を下げて実施されること になると思われる。このような状況から、 これからの FD 活動を改めて考え直さなければならないであろう。 今後、教養教育あるいは全学の FD 活動をどのような方針および内容で進めて行くのか、また実際に FD に 取り組む(例えば、FD 研究会のような催しを企画・運営する)のはどのような組織なのか、検討が必要で あろう。 (4) 『熊本大学案内』の編集業務および教養教育実施機構ホームページの管理について 『熊本大学案内』の発行および教養教育実施機構 HP の作成は全学および教養教育の広報活動と考えられ るので、 “大学案内・HP 部会”で検討を行った。例年、 『熊本大学案内』の教養教育部分の編集は企画・運 営委員会の業務であったが、学士課程教育改革による教養教育の大幅な変更があり、来年度の教養教育に 関することであるため、今回は教養教育カリキュラム実施準備 WG の教養教育・社会連携科目及び調整部 会が『熊本大学案内』に関する業務を行うことになった。来年度以降はどのような組織がその業務を引き 継ぐのか、検討すべきであろう。また、教養教育実施機構 HP の管理については、まず今回の改革後の状 況が学生に分かるように変更し、更にその後、情報の更新や削除の業務をする組織が必要であろうと思わ れる。ただし、その HP の管理については情報基盤センターに委託する方法もある。しかしながら、その − 81 − ためには新たな予算措置が必要であることも考慮しなければならないであろう。 最後に、学士課程教育改革に伴う教養教育の大きな変革の中、本委員会の業務を無事遂行することがで きたのは、本学の教養教育についてご協力、ご尽力頂いた委員各位、並びに学生支援部学務ユニットの事 務職員の方々のお蔭であると感謝しております。この場を借りて心からお礼を申し上げたい。 − 82 − 基礎セミナー・学際科目委員会報告 基礎セミナー・学際科目委員会委員長 渡 邊 あ や 1.委員会の概要 (1)委員会の構成 大学教育機能開発総合研究センターの専任教員及び併任教員、計 14 名の委員から構成される基礎セミ ナー・学際科目委員会は、2010 年度、渡邊あやを委員長、鈴木寛之を副委員長として、下記の構成で活動 を行った。 ◎渡邊あや、大森不二雄、折田充、合田美子、菅岡強司、本間里見、安浪誠祐 (以上、センター専任教員) ○鈴木寛之、八ッ塚一郎、濱﨑録、谷時雄、宇佐美しおり、池永信二、小塚敏之 (以上センター併任教員) ( ◎は委員長、○は副委員長) (2)委員会の開催 本委員会は、例年、前年度3月の委員会を第1回として開催している。今年度は、3 月、4 月、5 月、6 月、 7 月、9 月、10 月、11 月、1 月の計 9 回開催し、基礎セミナーや学際科目に関する議事等について審議を行っ た。なお、12 月の委員会に代えて、基礎セミナーの説明会を実施した。 2.基礎セミナーに関する活動について (1)クラス分け 基礎セミナーのクラス分けは、2007 年度からマークシートによる電算処理を導入している。2010 年度 の結果は、次の通りである。 希望届提出者数(初回) 1,840 名 (新入生 1,814 名、3年次編入生 8 名、再履修者 18 名) 振分洩者 72 名(うち、再履修者は1名) 希望届未提出者(新入生) 2 名(1名は2回目のクラス選択で確定、1名は休学予定) 再履修追加申込 3名 希望届提出者総数 1,844 名 全体の 53.8%が第 1 希望のクラスに割り振られた。しかしながら、第 5 希望までに振り分けられなかっ た振分洩者が 72 名(昨年度 59 名)出たため、2 回目のクラス振分作業が必要となった。 振分洩者の数は、今年度、マークシートによる電算処理導入後最多となった。このことについては、い くつかの理由が考えられるが、そのひとつとして、クラス分け作業における再履修者の扱いを改めたこと − 83 − の影響があるのではないか、との見方が委員会において報告されている。この指摘は、これまで、再履修 者については、新入生のクラス分け後、空きのあるクラスの中から選択するしくみとしていたものを、今 年度より、新入生と同等の扱いとしたことに対するものである。一方で、これまで当該科目が新入生向け のものであることを踏まえ、十分には配慮されてこなかった再履修者の希望が、以前に比べ、反映されや すくなっている。したがって、学生の希望の反映の度合の変化については、振分洩者の数以外の要素の点 も加味して検討する必要がある。 また、 振分洩者の希望の多くが、 「体験する化学」 「化学の目で見た世界」 「ときめき化学実験」など、 実験型・ 体験型の化学をテーマとするクラスを希望するという類似した傾向がみられたことも明らかになっている。 こうした現状を踏まえつつ、委員会では、振分洩者の増加原因の検証、及び振分洩れを予防する方策につ いての検討を行っていくことが決定された。 新たな課題として、クラス発表時の混雑の問題が指摘された。これは、近年、授業時間数確保などの観 点からアカデミック・カレンダーがタイトになり、クラス分け発表と授業開始がほぼ同じタイミングで行 われていることの影響などが考えられる。結果として、クラス分け発表開始時刻に学生が集中し、掲示板 周辺の混雑が問題化する事態となっている。このことについては、学生の利便性と安全性確保の観点から、 早急な対応が求められるため、掲示の方法及び名簿の表示方法等含め、改善策を検討していくことが確認 された。 以上二点の課題については、本委員会において、その後十分な検討が行われたとは言い難く、言わば「積 み残した課題」となっている。新たな教養教育実施体制のもと、本委員会の業務を引き継ぐ組織において、 検証・検討作業が進められることを要望する。 (2)不開講クラスの決定 基礎セミナーでは、クラス振り分けの際に受講希望者が 3 名未満のクラスについては、当委員会の承認 を経て、不開講を決定することとなっている。今年度は、不開講クラスはなかった。 (3)基礎セミナー実施報告 2006 年度から、基礎セミナーの全担当教員に今年度の授業実施報告の提出を依頼し、本委員会において 実施報告書としてとりまとめている。今年度は、前期開講 90 テーマ中 65 テーマ(提出率:72.2%)の担 当教員からご提出いただいた。委員会では、報告書から授業改善の参考となる事例を抽出し、 「基礎セミナー 実施のためのティップス」としてまとめ、2011 年度版「基礎セミナー共通指導ガイドライン」に付録とし て掲載するとともに、実施報告本文を、熊本大学ティーチング・オンライン(KU:TO)に掲載している。 これは、実施報告の提出を、担当教員自身の省察の材料としていただくのみならず、経験の共有化を図る ことで、次年度以降の担当教員の授業計画及び授業運営に活かしてもらうことをねらいとするものであり、 その普及・促進が図られている。 また、実施報告には、担当教員から、科目全体のマネジメントに関わる要望も記されている。今年度の 要望には、①パソコンを使用したグループワーク向きの教室の整備、②機材の準備体制及び機材操作の支 援体制の充実、③3年次編入生など特殊な学生への対応、④成績評価方法の検討、⑤クラス編成方法の検討、 という5つの項目が挙げられていたため、上部委員会等に本委員会の要望として報告するなどして対応を 行った。 − 84 − (4)基礎セミナー・共通講義 基礎セミナーでは、新入生に対し、大学生活において求められる学習リテラシーを身につけさせること を目的として、希望クラスを対象に「図書館活用法」と「初年次生のためのキャリア・ガイダンス」の講 義を実施してきた。これら2つの講義では、附属図書館及びキャリア支援課の協力を得て、基礎セミナー の時間の中で専門職員による講義と演習が行われている。2010 年度は、これらに加え、 「レポート作成の 基本」を試行的に実施した。 「図書館活用法」講義 担当者: 附属図書館職員が担当 開講時期: 4/15、4/16、4/22、4/23、5/6、5/7、10/8、10/14 使用教室: 参加クラス数: 【前期】B401、A302、A408【後期】A408 73 クラス(1,356 名) ※収容人員の関係で 2 クラスの参加希望をお断りした。 「初年次生のためのキャリア・ガイダンス」講義 担当者: キャリア支援ユニット:日和田伸一ユニット長 開講時期: 5/13、5/14、5/20、5/21、5/27、10/15、10/21 使用教室: 参加クラス数: 【前期】E305、C301【後期】E304 64 クラス(1,203 名) 「レポート作成の基本」講義(試行) 担当者: 渡邊淳子研究員 開講時期: 6/10、6/11、6/17、6/18、10/22、10/28 使用教室: 参加クラス数: 【前期】E305、C301【後期】E304 46 クラス(837 名) いずれも、受講者アンケートなどにおいて、肯定的な回答が得られていることが委員会で報告された。 (5)基礎セミナー共通指導ガイドラインの改訂 本委員会では、毎年、基礎セミナーの授業計画の指針となる「基礎セミナー共通指導ライン」の作成・ 改訂作業を行ってきた。本作業は、次年度の開講準備に向けた活動であるため、本年度は、この改訂作業を、 現在進行中である学士課程教育改革において、基礎セミナーについての検討を行っている教養教育カリキュ ラム実施準備ワーキング・グループ基礎セミナー・ベーシック部会が、担当した。 2.基礎セミナー・学際科目両科目に関する活動 (1)授業改善のためのアンケート調査 本年度は、前期については、 「実施しない」という教養教育実施委員会の決定を踏まえ、基礎セミナー・ 学際科目両科目について実施していない。 後期及び今後の実施については、教養教育実施委員会・企画運営委員会より、新しい規定下での「授業 改善のためのアンケート」実施に関し、基礎セミナー及び学際科目についての検討依頼がなされた。この − 85 − ことを受け、審議を行った結果、現段階における本委員会の回答を次のようにまとめ、企画・運営委員会 に回答した。 - 基礎セミナーは、今年度後学期は実施しない。来年度以降は、毎年、履修登録者数 10 名以上の全授 業科目を対象として実施する。 - 学際科目は、今年度後学期は、履修登録者数 10 名以上の全授業科目を対象に実施する。来年度以降 については、改革の方針が定まり次第、改めて検討する。 - 両科目ともに、科目の特性に即したアンケート項目(例:学際科目に対するオムニバス形式の講義の 成果と課題を問う項目等)を追加することの可能性についての検討を要望する。 この回答については、あくまで本委員会の要望として示したものであり、上部委員会における決定を尊 重することを申し添える。また、本年度後期、学際科目の実施に際しては、オムニバス形式であるという 科目特性に対応する項目2項目を追加することを本委員会として、企画・運営委員会に要望し、認められ ている。 3.予算執行について 今年度の基礎セミナーと学際科目に対する予算配分については、慣例に従って配分方法を決め、各部局 委員と各科目の担当事務室を通じて、各授業担当者及びオーガナイザーに連絡を行った。 今年度は、基礎セミナー 1 テーマ当たり 8,000 円、学際科目1科目当たり 11,000 円を配分することとし た。なお、基礎セミナーでは、図書館活用法に TA を採用したため、TA 謝金を計上した(次頁参照) 。 末筆ながら、本委員会運営ならびに基礎セミナー・学際科目両科目の実施において、委員各位、共通講 義をご担当くださった関係各所(附属図書館、キャリア支援ユニット、ライティング・センター準備室) 、 学務ユニット及び各科目担当事務室の職員各位に、多大なるご支援・ご協力を頂いた。ここに記して御礼 申し上げたい。 − 86 − 【参考】2010年度基礎セミナー・学際科目予算配分(単位 円) 888,350 666,350 72,350 80,000 72,350 736,000 (54テーマ) 594,000 文学部(26 クラス) 208,000 文学部 (8テーマ) 88,000 教育学部(15 クラス) 120,000 教育学部 (9テーマ) 99,000 法学部(11 クラス) 88,000 法学部 (3テーマ) 33,000 理学部(17 クラス) 136,000 理学部 (5テーマ) 55,000 医学部 (9 クラス) 72,000 医学部 (7テーマ) 77,000 薬学部(1 クラス) 8,000 薬学部 (2テーマ) 22,000 工学部 (9 クラス) 72,000 工学部 (8テーマ) 88,000 大学教育機能開発センター (4 クラス) 32,000 大学教育機能開発センター (6テーマ) 66,000 (2テーマ) 22,000 国際化推進センター (1テーマ) 11,000 保健センター (1テーマ) 11,000 五高記念館※2 (1テーマ) 11,000 生命資源研究・支援センター (1テーマ) 11,000 (54テーマ) 594,000 (90クラス) 総情センター (92 クラス) 736,000 − 87 − 専門基礎科目Ⅰ委員会報告 専門基礎科目Ⅰ委員会委員長 成 田 宏 秋 専門基礎科目Iは従来の「教養教育における自然科学の履修指定科目」に由来するもののようであるが、 92 年の大学設置基準の改正や 97 年の教養部解体を経て、専門教育の専門基礎科目に位置づけられ、教養 教育で実施する分を「専門基礎科目I」そして学部で実施する分を「専門基礎科目 II」とした経緯があるよ うである。つまり専門基礎科目Iは専門教育に位置づけられている一方、運営面では教養教育の影響を強 く受けておりその実施体制は全学的性格の強いものと言える。実際、担当する授業の範囲は理学部、工学部、 薬学部、医学部、教育学部など広範囲に及ぶ。そして授業担当者は「教科集団」という所属学部の枠を超 えた組織の下、専門基礎科目Iの教育活動に携わっている。 専門基礎科目I委員会は実施の際に生じる諸 問題を、当事者からは中立の立場で調整・解決するのが主な役割である。専門基礎科目I委員は数学・統 計学教科集団より2名、物理教科集団、化学教科集団より各1名、地学、生物学教科集団より1名、情報 教育教科集団から1名の都合6名からなる。専門基礎科目Iの多くが数学の科目であることから、委員長 及び副委員長は数学・統計学教科集団から選出されている。今年度の委員会の構成員は以下の通りである。 成田宏秋 ( 数学・統計学、委員長 )、内藤幸一郎 ( 同、副委員長 )、矢嶋哲 ( 物理学 )、中田晴彦 ( 化学 )、 長谷川四郎 ( 地学 )、武蔵泰雄 ( 情報教育 ) 本年度の活動報告 専門基礎科目I委員会は上述の通りの役割があるが、専門基礎科目Iの開講主体である学部と運営主体 の教科集団の連携がスムーズに行かないことは往々にして有り得て、その唯一の調整組織である専門基礎 科目I委員会の役割は重要である。しかし最近は実質的な活動が殆どなく、その審議事項は教養教育教務 委員会、企画・運営委員会及び教養教育実施委員会でカバーされているのが現実である。そのためこの委 員会の存続を疑問視する声がここ数年高まって来たようである。そのような中、今年度は学士課程教育推 進委員会の分科会の一つとして専門基礎科目I分科会が立ち上げられ、前期の4月から7月まで4回に渡っ て開催された。この分科会では専門基礎科目I委員会の存続に関することのみならず、その位置付け・運 営方法等についても改めて議論する機会を持った。その結果、学士課程教育推進委員会に対する以下の2 つの提言をするに至った。 (1) 専門基礎科目Iの位置付け・運営方法は当面現状通りとする。 (2) 専門基礎科目I委員会を廃止し、代わりに専門基礎科目I協議会を置く。 (1)については、専門と教養にまたがる専門基礎科目Iの複雑な位置付けについて見直すべきとの声が あったが、多くの学部及び教科集団の代表からは現状で大きな問題はなく、改変による弊害の方が大きい のではという意見が相次ぎこのような提案をするに至った。 (2)については調整機能の更なる向上という 観点から、現在の委員会という体制では機動的に対応できないという見解で落ち着いた。新たに設置を提 − 89 − 案する協議会は、関係学部・教科集団からのメンバーで構成し、幹事を置き、必要に応じてメンバー間で 協議を行うものとして構想をまとめた。 最後に、上の提案は教科集団の存続を前提としているものであることを注意しておく。現在、学士課程 教育推進委員会カリキュラム実施準備 WG において教養教育の新しい実施体制が検討されているようであ る。しかし、現時点では、依然、専門基礎科目Iの実施体制がどのような方向に向かうのか、その運営主 体である教科集団の存続を含めて未知数の部分があると認識している。 新しい実施体制が、教育の質を保証ないしは向上でき且つ、現場の人間も大過なく実施に携わることが できるものになることを懇願しつつこの報告の結びとしたい。 − 90 − 教 科 集 団 報 告 − 92 − 数学・統計学教科集団報告 数学・統計学教科集団幹事 井 上 尚 夫 1.教科集団の構成(2010 年度) 構成員数:28 名(メイン登録者のみでサブ登録者はいない.) 内訳:理学部 15 名、工学部 9 名、教育学部 3 名、医学部 1 名 後期より理学部の 2 名の教員が転出し、構成員数は 26 名になった。 幹事:井上尚夫(理学部)副幹事:城本啓介(工学部) 2.開講科目と授業担当(2010 年度) 教養科目:5コマ 専門基礎科目 I:67コマ 授業担当内訳 理学部 28コマ(専門基礎科目 I 28コマ) 工学部 10コマ(専門基礎科目 I 10コマ) 教育学部 2コマ(専門基礎科目 I 2コマ) 医学部 2コマ(専門基礎科目 I 2コマ 主題科目 2コマ) 非常勤講師 30コマ(専門基礎科目 I 27コマ 主題科目 3コマ) 後期より理学部の2名の教員が転出することになった。2名の担当予定だった授業科目について、理 学部数学教室では基本的に代理を立てて対応したが、主題科目1コマについては非常勤講師に依頼せざ るを得なかった。当初計画は理学部29コマ、非常勤講師29コマだったが、結果として上記のような 実態になった。 3.予算 総額 291,564円 主題科目 21,200円 専門基礎 283,900円 昨年度の赤字額 13,536円 予算は一部を非常勤講師に使ってもらう他、授業担当コマ数に応じて学部ごとに配分している。使用 方針は各学部に委ねられている。 4.課題 (1)基礎教育の確立と授業担当者の確保 2011 年度からの教養教育見直しによって、教養科目の授業数が年次進行で削減されることになった。 − 93 − しかし、専門基礎科目はその多くが必修科目であり、開講数の削減は殆ど見込めない。また、教養科目 5科目中3科目は、文系学生のための数学基礎教育を目的とした科目であり、教科集団としては基本的 に維持されるべき科目と考えている。文系の学問にも数学を利用する分野は存在するので、数学基礎教 育を受ける機会は全学生に保障されるべきとの認識からである。真に教養教育的視点から、数学の考え 方や文化的側面などを扱う科目は、学際科目として行われてきた「数学の楽しみ」を含めてわずか3科 目しかない。このような現状で、数学・統計学に関わる授業の開講数を削減することは不可能といえる。 一方で、当教科集団のメンバーは減少している。2009 年度末で2名の教員が定年退職し、2010 年度 後期からは2名の教員が転出した。さらに 2010 年度末には医学部保健学科に所属する1名の教員が転 出することになっている。1年間に5名の教員を失うが、2011 年度4月に補充できるのは3名に過ぎず, 2名分については最終的に削減される可能性が高い。さらに保健学科の1名の転出により当該教員の担 当していた微分積分や線形代数の講義(様々な経緯で専門基礎科目 II として行われていた)についても、 教科集団としての対応を迫られる状況になっている。教員数が減る中で負担のみが増えている現状であ り、大学として早急な対策をとることをお願いしたい。 しかし、教科集団としては単に負担軽減のみを求めているのではない。全学生を対象とした数学基礎 教育の展開は、総合大学でなければできないものであり、このような科目の単なる削減策は取るべきで はないだろう。また数学以外の教員が数学基礎教育を担うことについても反対である。それは単に専門 に使われる数学を教えるのではなく、基本的な技法と数学の考え方を一体のものとして教授することに よってはじめて数学の応用力を高めることができるからだ。その意味で現在の学部ごとの専門教育とい う位置づけは再考すべき時期に来ている。専門基礎科目 I という現行の枠組みと切り離して議論するべ きであろう。 (2)数学基礎教育に関する今後の FD 活動 2011 年度より教養教育実施の中心が教科集団から各学部に移される。その中で有効な FD 活動をど のように組み立てるかについては殆ど議論されていない。特に数学基礎教育においては同種の授業科目 が多数開講されており、それらの授業方法についての統一的な検討と改善方法の提案、各授業担当者へ の還元といったプロセスが必要不可欠である。当教科集団では教養教育 FD 分科会で、授業アンケート 結果をもとにどのような授業の評価が高いか意見交換するとともに、2009 年度には独自の授業参観に も取り組んだ。しかし、FD が学部の活動になった場合はそのような取り組みは不可能になる。大学教 育機能開発研究センターで行うこともあり得るが、数学の専門家を欠いた組織で数学基礎教育の評価を 行うことには問題がある。 数学基礎教育においては何を教えるかはほぼ確立している。しかしどう教えるかは個人にまかされて いるのが現状である。そのため全体の教育力を高めるためのFD活動の充実は不可欠であり、現時点に なっても明確な方向性が示されないことは重大な問題と考える。 − 94 − 物理学教科集団報告 物理学教科集団幹事 矢 嶋 哲 1.物理学教科集団の構成について(2010 年度) メンバー 28名(主登録者20名、サブ登録者8名) 内訳 大学院自然科学研究科・理学(9名)、大学院自然科学研究科・工学(12名)、 教育学部(2名)、医学部(2名)、衝撃・極限環境研究センター(3名) 幹事 矢嶋哲(自然科学研究科・理学) 副幹事 下條冬樹(自然科学研究科・理学) 2.物理学教科集団の開講科目について(2010 年度)29コマ (1)主題科目(12コマ)の内訳 主題科目Ⅰ 6コマ 生活の中の物理学(1年次対象) 3コマ ゼロから学ぶ物理学(1年次対象) 1コマ ゼロから学ぶ物理学(2年次対象) 1コマ 物理学の歴史 C(1年次対象) 1コマ 主題科目Ⅱ 6コマ 体験する物理学(1年次対象) 4コマ 物理学最前線(2年次対象) 2コマ (2)専門基礎Ⅰ(17コマ)の内訳 物理学Ⅰ , Ⅱ(理学部1年次対象) 6コマ 物理学基盤実験(1年次対象) 6コマ 物理学Ⅰ , Ⅱ(医学系1年次対象) 2コマ 物理学(薬学系1年次対象) 1コマ 物理学基礎実験(再) 2コマ (3)授業担当者のコマ数 大学院自然科学研究科・理学 16コマ (衝撃・極限環境研究センターの理学系教員の担当を含む) 大学院自然科学研究科・工学 4コマ 医学部 2コマ 学外非常勤講師 7コマ (実験など連続して2時限又は3時限で行っている序行科目は2コマ又は3コマと数えている) 3.予算(2010 年度) 総額 720,956 円 主題科目 33,900 円 専門基礎科目 38,100 円 − 95 − 実験費 648,956 円 4.FD活動(物理学教科集団の会議) 2010 年 9 月 28 日 ( 火 ) 15 時 30 分から 全学教育棟 C305 号室にて 出席者 7名 授業改善のためのアンケート、成績評価、授業実施に関する問題点などについて検討、および研究会 全体会報告等についての意見交換を行った。アンケートについては各授業科目について質問項目ごとに 各番号を選択した人数を集計した一覧表を配布し、自由記述欄についてはポジティブおよびネガティブ なコメントを分類して数えた結果のみを示して検討した。 アンケートの分析結果について検討した際、大人数クラスでは教員の声が聞こえにくいという問題点 に対して、マイクを使用する解決策が出たが、板書で行う授業では、マイクを手で持たなければなら ないために、テキスト ( あるいは講義ノートやプリント等 ) を確認しながら板書をするのが難しいとい う意見があった。ヘッドマイクの使用により、その問題も解決するかもしれない。また、昨年度から WebCT を利用して何度でも同じ問題を解答できるようにした授業が紹介され、今回のアンケート結果 の評価に少し反映したものもあった。 5.現状と今後の課題 物理学を難しく感じる受講生が多いようであるが、物理の内容を説明する数式を用いた積み上げ式の 授業であるため、あるいは内容が多くて進度が速いため、十分な理解ができない等の理由が考えられる。 主題科目でも同様のことが言えるが、専門基礎科目についてはその傾向が大きい。専門基礎科目の場合 は、各学部で学ぶのに必要とされる物理学の知識を得ることを目的にして開講されているが、授業の内 容については担当教員に任されているのが現状である。当該学部で学生に学習してほしい内容を選択し、 担当教員と相談して授業内容を整理することで、担当教員は授業の進行に時間的な余裕ができ、授業内 容を理解し易くする工夫ができるのではないかと考える。 今年度は定年退職や他大学への転出のため、教科集団メンバーが3名減少した。そのため、一部の学 部では責任コマ数の関係で、学部の非常勤枠で教養の物理学の授業担当者を補充している。現在進行中 の学士課程教育改革に伴う教養教育についての変革では、主題科目に対応する教養科目の責任コマ数を 段階的に削減するので、上の問題の軽減になると思われるが、授業コマ数の減少は各授業の受講生の増 加につながり、授業担当者の負担が増えることになるかもしれない。ただし、専門基礎科目Ⅰについて の負担は現状維持である。今後、これらの状況を踏まえて、物理学の教養科目を整理し、改めて授業科 目を検討しなければならないであろう。また、文系の学生向けの物理学の授業に対しても、今後検討が 必要であろうと思われる。これについても、文系学部で学生に学習してほしい内容を選択し、配慮して ほしい点を知らせて頂ければ、すべてに応えられないまでも、授業担当者がそれを考慮した授業内容や 方法を工夫できるのではないかと思われる。 − 96 − 化学教科集団報告 化学教科集団幹事 中 田 晴 彦 1.教科集団の構成(2010 年度) メンバー 33名(うち、メイン登録者30名、サブ登録者3名) メイン登録者 30名内訳 教育学部(1名) 大学院自然科学研究科(理学) (17名) 大学院自然科学研究科(工学) (11名) サブ登録者 3名内訳 教育学部(1名) 大学院自然科学研究科(工学) (1名) 医学薬学研究部(医学) (1名) 幹事 中田晴彦(理学) 副幹事 入江 亮(理学) 2.開講科目と授業担当(2010年度) 開講科目 主題科目(12コマ) 主題科目Ⅰ 1年次 5コマ 2年次 0コマ 主題科目Ⅱ 1年次 4コマ(実験の化学A 2コマを含む) 2年次 3コマ 専門基礎Ⅰ(9コマ) 1年次 9コマ 基盤実験 (6コマ) 1年次 6コマ 授業担当者 大学院自然科学研究科(理学)教員 22コマ 教育学部教員 1コマ 非常勤 5コマ 大学院自然科学研究科(工学)教員 0コマ 3.予算(2010年度) 2010 年度の配当額は827, 551円であり、前年度に比べ約7%減少した。主に化学基盤実験で使用 する試薬やガラス器具等の消耗品の購入にあて、主題科目 I、II および専門基礎 I にもそれぞれ適切に配分 された。また、教育用図書として、 「化学と教育」 (日本化学会 化学教育協議会)の定期購読費用に用いた。 当初の配当とは別に、今年度は教育用備品更新に関する申請が認められ、耐薬品用廃液保管庫(学生実験 準備室に設置予定)が新たに2台導入された。 4.現状と課題 化学教科集団が担当した受講生の授業アンケートでは、15 の質問項目のうち 13 項目で前年度より良好 な結果が得られ、概ね順調であったといえよう。とくに、過去 5 年連続で負の評価が続いていた Q7「わか りやすくする工夫」に改善の兆しが窺え、類似の傾向は Q9「熱意」にも見られた。 − 97 − 自由記述欄には、 「分かりやすくて、何でそのようになるかなども説明してもらえて良かったです(化学 II) 」 、 「前回の授業のおさらいを毎回やっていただいたのは、とても助かりました。 (化学 II) 」 、 「この実験で 知識を理解にかえることができてよかった(化学基盤実験) 」 、 「化学が好きになる工夫がいっぱいでとても 良かったです(化学入門 H) 」など、良好なアンケート結果を裏付ける意見が多く寄せられた。一方で、 「授 業時間を延長してあたりまえ、というのはやめてほしい(実験系) 」 、 「英語のテキストは難しかった。日本 語にしてほしい(講義系) 」など、教員と学生間で授業に対する温度差が感じられるコメントもあり、教員 は学生気質の変化に応じた説明責任を果たす必要があるといえよう。 また、基礎セミナーの評価方法に関して、従来の「合・否」判定ではなく、通常の授業で用いられる5 段階評価(秀・優・良・可・不可)を導入してはどうかとの意見が出された。優秀な人が高評価を得るシ ステムは、熊本大学が目指す「厳格で一貫した成績評価」の理念にも符合することから、前向きに検討す る価値はあると思われる。 生物学教科集団報告 生物学教科集団幹事 高 野 博 嘉 1.教科集団の構成と開講科目 2010 年度の生物学教科集団の登録メンバーは、メイン 35 名、サブ 12 名の合計 47 名である。メイ ン登録者の所属は、自然科学研究科 16 名、バイオエレクトリスク研究センター 2 名、教育学部 3 名、 生命科学研究部(保健)1 名、沿岸域環境科学教育研究センター 3 名、発生医学研究所 7 名、生命資源 研究・支援センター 3 名である。サブ登録者は生命科学研究部(医学)6 名、発生医学研究所 3 名、エ イズ学研究センター 1 名、生命資源研究・支援センター 1 名、自然科学研究科 1 名からなる。 今年度の生物学教科集団は主題科目 I8 コマ、主題科目 II 6 コマ(そのうち 2 コマは実習科目) 、専門 基礎科目 I 12 コマを開講した。主題科目 I、II の 14 コマ中、10 コマを自然科学研究科(理学)メイン 登録メンバーが担当した。また、生命資源研究・支援センターとバイオエレクトリクス研究センター及 び沿岸域環境科学教育研究センターのメイン登録メンバーがそれぞれ 1 コマを担当し、更に 1 コマを学 外非常勤講師に依頼した。専門基礎科目は理学部学生を対象とした科目のため、全て自然科学研究科(理 学)メイン登録メンバーと関係するバイオエレクトリクス研究センターのメンバーで開講した。 開講した具体的な科目は以下に示す通りである。 主題科目Ⅰ:生物多様性の世界(生命の進化と歴史、生物の環境適応、生物と環境) 主題科目Ⅰ:生命の基礎原理(生命と分子、生体の情報システム、生体の調節機構) 主題科目Ⅱ:最前線の生命科学(増殖・分化、夢の技術 PCR、バイオテクノロジーと環境問題、 実験で探る生命、植物バイオテクノロジー) 専門基礎科目Ⅰ:生物学 IA、IB、生物学 IIA、IIB、生物学基盤実験 − 98 − 2.運営 授業担当の依頼は教科集団幹事が中心となって行った。 今年度も FD 研究会全体会の後に生物学教科集団分科会を催した。分科会では主に「授業改善のため のアンケート」について議論した。また FD 研究会全体会や授業成績評価についても話し合われ、活発 な意見交換がなされた。 3.予算 2010 年度の予算は、 教育用図書および教材費として主題科目へ 46,600 円、 専門基礎科目へ 16,900 円、 および学生実験費として 687,562 円の配当であった。教育用図書および教材費に関しては昨年度と比較 して若干の減額であったのに対し、学生実験費は昨年度より若干増額した。専門基礎科目への予算は同 額であった。これらの予算の使途については、授業担当教員および実験担当教員に必要な図書や物品等 を挙げてもらい、その要望に沿って使用した。教育用図書および教材費としては、定期購読している「生 物科学」等の書籍類に使用した。学生実験費は主として実験材料購入と器具購入に使用した。実験材料 費のほとんどは試薬や実験用手袋等の消耗品と実験材料の購入費であった。 地学教科集団報告 地学教科集団幹事 長谷川 四 郎 1.教科集団の構成と開講科目 2010 年度における地学教科集団は、メイン登録メンバー 19 名、サブ登録メンバー 2 名の計 21 名で 構成されている。その内訳は自然科学研究科(理学)15 名、教育学部 3 名、沿岸域環境科学教育研究 センター 1 名である。サブ登録メンバーは自然科学研究科(理学)1 名、同(工学)1 名である。ほか に 4 名の学外の方に非常勤講師をお願いしている。 地学教科集団として開講した科目は、主題科目Ⅰ(2 コマ)、主題科目Ⅱ(5 コマ)、専門基礎科目Ⅰ(講 義 6 コマ、基盤実験 6 コマ)である。主題科目Ⅰ・Ⅱの 7 コマのうち、3 コマを自然科学研究科(理学) と沿岸域環境科学教育研究センターのメイン登録メンバーが担当し、4 コマを非常勤講師に担当してい ただいた。専門基礎科目Ⅰは理学部学生を対象とする科目で、自然科学研究科(理学)と沿岸域環境科 学教育研究センターのメイン登録全メンバーで開講した。以上に加えて、メイン登録メンバーは学際科 目(2 コマ)と基礎セミナー(3 コマ) 、開放科目(3 コマ)を開講した。 2.予算 2010 年度の予算は、学生実験経費 748,229 円、教育図書・教材費等として 46,600 円の配分を受けた。 これらの予算は、授業担当及び学生実験担当の教員に必要な物品を要求してもらい、その要望に応える 形で使用した。おもな使途は、実験に必要な材料および器具の購入、顕微鏡の補修、ならびに野外観察 − 99 − の際のバス借り上げ料などである。 3.現状と今後の課題 地学教科集団の現状における問題は、当該分野に対する学生の関心が低いことである。主題科目や専 門基礎科目の受講状況からは、とりわけ理系学生の間でその傾向が強く、むしろ文系学生においてある 程度の関心が得られていることがうかがえる。その原因は、これまでにも指摘されているが、大学の試 験制度とそれに呼応する高校の対策の結果であり、それに対するさまざまな働きかけが行われているも のの、当面、その問題が解消される見込は薄い。しかし、こうした現状であればなおのこと、大学の教 養教育における地学教育の果たすべき役割は大きいといえる。そもそも、地学が対象とする分野には地 震・火山噴火・異常気象など災害を伴う自然現象が含まれる。日々の生活に重大な影響を及ぼすそれら の現象の正しい理解は、その対策を講じる専門家のみならず、高等教育を受けた次代を担うリーダーの 基礎知識としても意義があると考えられる。 そこで、地学教科集団では新入生の大多数が高校で地学を習得していないことを前提にして,これま で「いかに地学への興味を彼らに持たせるか」という課題に取り組んで来た。その効果は、たとえば 2009 年度の「授業改善のためのアンケート」において、教材・教具や視聴覚機器の使用についての工 夫や教員の熱意などの項目で高い評価を得たことにも表れている。さらに、2010 年度から開放科目の 新科目として海洋地学を開講した。その対象となる海洋は地球規模の変動に関わるものの、高校以前に はほとんど扱われることのなかった分野である。“海”は一般にもなじみ深いものであるが、地球表面積 の 2/3 を占めて地球環境の変動に大きく関わっていること、深海や海洋底には未知な部分が多いことな ど、科学的好奇心を刺激するうえでも興味深い題材と考えられる。また、この講義は実習船を用いた海 洋航海実習と連携する希有な科目でもあり、今後の展開が期待される。 こうしたさまざまな工夫にもかかわらず、先のアンケートでは,授業内容に対する関心の高まり、難 易度、あるいは授業目標に対する達成感などの面で、なおも若干の不満が確認された。したがって、講 義の進め方や教材の工夫などについて、FD 活動などを通じて、今後もさらに高め合ってゆく必要がある. 環境造形・科学教科集団報告 環境造形・科学教科集団幹事 星 野 裕 司 1.教科集団の構成と開講科目 環境造形・科学教科集団は、メイン登録が 28 名、サブ登録 5 名の教官で構成され、主に工学部社会 環境工学科と建築学科の教員を主体としている。平成 22 年度には責任開講コマとして 13 コマ開講した。 そのうち1コマを1人の非常勤に依頼している。 − 100 − 主題科目Ⅰ:都市・建築入門 A 西洋の都市と建築 1 年後期(講義) B 都市と景観計画 1 年前期(講義) C 町・建物と人と技術 1 年後期(講義) D 市民参加とまちづくり 1 年後期(講義) E 都市と環境 1 年後期(講義) F 世界の建築の潮流 1 年後期(講義) 主題科目Ⅰ:住環境論 E 生活空間論 1年前期(講義) 主題科目Ⅰ:くらしと環境入門 A くらしと建物 2年後期(講義) C くらしと環境 1年前期(講義) D くらしとエネルギー 2年後期(講義) E 環境問題の見方、考え方 1 年後期(講義) 主題科目Ⅱ:図形科学演習 A 立体図学 1 年前期(講義+実習) 透視図論 A 立体的な図 1 年後期(講義+実習) 2.FD活動(教科集団会議) 日時,場所:2010 年9月 28 日 15:20 ∼ 16:50(2 名)+ メール審議,全学教育棟 C 308 教室 環境造形・科学教科系の科目を現在担当している教員を中心に集まり、担当科目の現状報告および,授 業評価アンケートや成績評価に関する意見交換を行った。またその結果に基づいてメール審議も行った。 3.現況と今後の課題 教科集団の中心をなすのが工学系教員であるため、JABEE の経験を生かした授業法や授業時間以外 の学習時間の確保にも工夫がなされ、授業改善が行われている。授業評価の結果などから見ても授業そ のものには大きな問題はない。 一方、環境造形・科学教科集団は、開講科目 13 科目に対してメイン登録教員が少なく、あいかわら ず教科集団メンバーの負担感は大きい。環境造形・科学教科集団へのメイン登録を教員に呼び掛け、メ ンバーの拡充をはかる必要もあるが、特定の教員ばかりが固定的に授業を担当するのではなく、頻繁に 交代する体制とし、多くの教員が学生の全学的な意識レベルと能力傾向の把握ができるシステムとする 必要がある。 − 101 − 科学技術・情報教科集団報告 科学技術・情報教科集団幹事 山 口 晃 生 1.教科集団の構成 科学技術・情報教科集団はメイン登録が 79 名、サブ登録が 23 名の教員で構成され、メイン登録者の所 属は自然科学研究科(工学系)67 名、文学部、教育学部が各 3 名、衝撃・極限環境研究センター、バイオ エレクトリクス研究センターが各 2 名、社会文化科学研究科・沿岸域環境科学教育研究センターが各 1 名 となっている。 2.開講科目と授業担当 科学技術・情報教科集団で 2010 年度に開講した主題科目は下記の通りである。 主題科目I 暮らしと科学技術A マテリアルの世界 1 年前期 河原正泰 暮らしと科学技術B 電気工学の世界 1 年後期 暮らしと科学技術C メカニクスの世界 1 年後期 真下 茂 , 森 和也 , 川原顕磨呂 暮らしと科学技術D 資源とエネルギー 2 年前期 栗原清二、城 昭典 暮らしと科学技術E 暮らしを支える社会環境工学 1 年後期 松田泰治 , 北園芳人、大本照憲 情報ネットワーク社会B 最先端のマルチメディア通信 2 年後期 工学部マテリアル工学科教員 中村有水 , 三田長久 , 藤吉孝則, 伊賀崎伴彦 尾原祐三、大谷 順 三田長久 今年度の開講状況は昨年度とほぼ同様であった。 3.予算 本年度の科学技術・情報教科集団への配当額は 25,400 円となった。この全額を教員授業経費として授業 科目ごとに配分した。 4.FD活動 2010 年 9 月 28 日に全学教育棟 C212 教室において FD 研究会の教科集団分科会を実施した。当日は授 業アンケート結果の集計および自由意見, 昨年度の成績評価割合などの資料を配布して検討を行った。また、 全体会報告「少人数ゼミ形式授業について」に関する感想と意見交換も実施した。なお、今回の参加者は 少数であったため、授業担当者の意見聴取を後日電子メールを利用して行った。意見の詳細は別冊子の実 施報告書の通りである。 5.現状と課題 自然科学研究科工学系の多くの学科では ISO や JABEE 等の教育プログラム認証や教職免許に必須とされ る教育改善のための組織的な取り組みを継続的に行っている。この取り組みには教員のFD活動や授業分 − 102 − 担調整など教養教育に関係する事項まで含まれている。これらの学部および学科単位で行われている教育 検討は当教科集団で開講中の主題科目の改善にも寄与してきたと考えられる。次年度以降、当教科集団の 教養教育の実施主体は学部に移行していくと思われるが、これに伴って FD 活動についても学部での活動 に一本化して実施した方が現状に比べて教員が参加しやすい活動になると思われる。 健康・スポーツ科学教科集団報告 健康・スポーツ科学教科集団幹事 後 藤 貴 浩 1.教科集団の構成 2010 年度の本教科集団登録者は、メイン登録者 22 名 ( 教育学部 20 名、医学部 1 名、政策創造研究 教育センター 1 名 ) である。 2.開講科目 2010 年度の開講科目は、主題科目Ⅰ (24 コマ )、主題科目Ⅱ (2 コマ ) の計 26 コマであり、内訳は以 下のとおりである。 主題科目Ⅰ 「体育・スポーツ科学」 A 体育・スポーツ科学の理論と実践 1 年次 前・後学期 (24 コマ ) 主題科目Ⅱ 「健康の科学」 A 生活と健康の科学 1 年次 前学期 (1 コマ ) 「健康の科学」 F 子どものためのストレスマネジメント教育 2 年次 後学期 (1 コマ ) 3.授業担当 (26 コマ ) 2010 年度の授業担当は、教育学部 17 コマ ( 内、教育学部任用学外非常勤 3 コマ )、医学部 2 コマ、 学外非常勤 7 コマであった。 4.予算 2010 年度の予算は 815,200 円であり、ほとんどを「体育・スポーツ科学 A」で取り扱っているスポー ツ種目の用具の購入・修理および施設備品の修理にあてた。 5.現状と今後の課題 「体育スポーツ科学 A」は、教育学部教員 10 名 ( 保健体育科 5 名、生涯スポーツ福祉課程 4 名 ) で担 当しており ( その他、医学部保健学科 1 名 )、実質的に教育学部で運営している状況にある。また、本科 − 103 − 目が教員免許の必修科目であることから、教育学部非常勤コマも割り当てさせて頂いている。 H23 年度より新たな枠組みで教養教育が実施されることになるが、本科目についても早急に改革に着 手すべきであるとの意見が出されている。具体的な改革 ( 案 ) は以下のとおりである。 ● 「体育・スポーツ科学 A」を教職に必要な科目として「教職体育」( 仮称 ) と教養科目としての「体 育・スポーツ科学」に分離する。いずれの科目も演習形式として2単位とする。 ● 「教職体育」( 仮称 ) は、新たに設置する教職教養科目の中に位置づけ、教育学部は1年次、開 放学部は3年次以降の開講とする。 ● 「体育・スポーツ科学」はあらたな「教養科目」の中に位置づけ、1年次は教育学部以外、2年 次は全学部生が受講できるようにする。 ● 「体育・スポーツ科学」は全学的に開講することで、学士課程における 「補習教育」 および 「初 年次教育」 の役割を果たし、近年の大学問題でもある「心身の健康問題」 、「社会的スキル」( 対 人コミュニケーションスキル ) 獲得などに対応する科目とする。 医科学教科集団報告 医科学教科集団幹事 玉 巻 伸 章 今年度は、医科学教科集団 FD の会を 2010 年 11 月 15 日に 8 名の主要構成員の参加の元、生命科学部 長室にて開催した。この時期の開催は、折しも来年度の教養教育の改変に関する議論が定まらない 9 月の 全体会合の日取りを避け、遅らせて実施した。 医科学教科集団が開講した 2009 年度後学期の主題科目等の授業についての「授業改善のためのアンケー ト」を分析したが、おおむね良好と判断されたので、来年度から開講される基礎セミナー、教養科目 / 社 会連携科目においても、現行どおりの「少人数ゼミ形式、オムニバス形式」で継続していくことを確認した。 全体会報告にあった「少人数ゼミ形式授業について」の教科集団内での話し合いでは、好ましいことで あるとの意見が大勢ではあるが、基礎セミナーにおいても 15 コマの授業回数が守られていない状況があっ たにもかかわらず、更に少人数制となった場合、 「授業の質の確保」 「授業回数の遵守の確認」 「厳格で一貫 した成績評価」が更に難しくなる可能性が指摘された。また、これまで医科学集団が担当してきた主題科 目では、登録者が 250 名に及び、この人数が「評価,問題点の抽出および改善のための方策」 「厳格で一貫 した成績評価」を難しくしていたことが指摘された。それゆえ、教養科目 / 社会連携科目となっても、上 限をもっと小さな数とし、少ない人数の教養科目 / 社会連携科目に学生が流れるような工夫が無い限り、 「評 価,問題点の抽出および改善のための方策」 「厳格で一貫した成績評価」のための行動計画を立てることは 難しいという意見が大勢であった。 上記のような問題点を踏まえて、今後の教科集団による教養教育のあり方を考え、WebCT 等の教材を利 用して改善できるように努力するとの合意が得られた。 − 104 − 医科学教科集団では、次年度に教養教育で割り当てられた枠で、下記のような授業を準備した。 ● 基礎セミナー: 「生命倫理学」 ● 教養科目: 「分子と細胞」 、 「形態と機能」 、 「臨床医学の最前線 A」 、 「臨床医学の最前線 B」 ● 社会連携科目: 「生命倫理学」 、 「海外留学と国際医療協力」 ● 語学: 「英語 D」 教養科目の「臨床医学の最前線 A」 、 「臨床医学の最前線 B」はそれぞれ隔年の開講とし、教養科目は3 枠となる。 次年度の教養教育改革に伴う変更に対処する準備を整えているが、医学部医学科新入学生の既習単位の 振替、外部試験による語学単位の振替作業への対応は、待った無しの状況であり、旧体制の担当者からの スムーズな情報、応援が必要と考える。 薬科学教科集団報告 薬科学教科集団幹事 入 江 徹 美 1.教科集団の構成と開講科目 2010 年度、薬科学教科集団はメイン登録者 36 名(薬学系 35 名、機器分析施設 1 名) 、サブ登録者 1 名 (医学系)の教員で構成されており、教養教育を担当している教員は 29 名で、下記の科目を開講した。 ● 主題科目 I 「現代薬学入門 A 薬の体内運命と効き目」 ● 学際科目 6-2 「薬の科学」 ● 学際科目 6-3 「生体機能物質の化学」 ● 基礎セミナー 「科学の方法∼クスリが世に出るまで∼」 ● 英語 D-1、英語 D-2 2.現状と問題点、今後の課題 主題科目 I では、10 名の教員によるオニムバス形式での授業が行われている。学際科目 6-2 および 6-3 では、いずれも共通のテーマに従って、6 ∼ 7 名の教員によって、それぞれ 2 回の授業を行っている。基 礎セミナーは、4 名の教員が 3 ∼ 4 回の授業を担当している。英語 D-1 および D-2 は、11 名の特に若手 教員による薬学領域に関連した内容の授業が進められている。 平成 22 年度の薬科学教科集団分科会(日時 :2010 年 9 月 28 日・17:00 ∼ 18:30、場所 : 薬学部宮本記 念館多目的ホール)では、2009 年度および 2010 年度の教養教育を担当した教員を含む 45 名が参加して、 − 105 − 以下の(1)∼(3)の項目に沿って、討議並びに意見交換を行った。 (1)薬科学教科集団が開講した 2009 年度後期授業および 2010 年度前期授業科目についての「授業改善 のためのアンケート」分析結果 薬科学教科集団が開講した 2009 年度後期授業科目は、 「英語 D」である。本科目は、外国人教員 1 名を 含む若手教員(のべ 12 名) (英語 D1:6 名、 英語 D2:6 名)が担当し、 各教員の専門領域から英語題材を選択し、 高学年で必要とされる薬学領域の英語力を修得することを目標としている。2009 年度の受講者は、薬学部 4 年次生 88 名であり、合格者 86 名、不合格者 2 名であった。学生の成績分布(秀 11.4%、優 44.3%、良 34.1%、可 7.9%、不可 2.3%、 )は適正であり、厳格な評価が行われたと判断している。すでに研究室に所 属して研究を始めている 4 年次生にとって、自分の専門領域以外の薬学英語に触れることができ、低学年 で学んだ授業内容を英語で改めて学び、理解を深める格好の機会であると捉えているようである。さらに、 自分自身の研究課題を解決するための文献情報の収集法を学ぶ機会にもなっている。アンケート結果から 改善すべき特段の問題点は抽出されなかったので、2010 年度も継続して、授業内容のさらなる充実に努め る。 薬科学教科集団が開講した 2010 年度前期授業科目については、以下のような意見が寄せられた。 【基礎セミナー】 ・ グループワークは効果的であったが、授業日程の後半で学生の出席率が若干低下した。 【主題科目・学際科目】 ・ 「学生の私語が多い。 」 ・ 「文書作成能力が低い。 」 ・ 薬科学教科集団の授業科目は、薬学部以外の学生を対象に、広く文系・理系を問わず開講してい るが、学内での連絡が徹底してなく、薬学部学生が多く受講していた。 ・ 学生の受講態度は良かった。 ・ 主題科目のように 150 名を超える学生の出欠の管理は大変であるので、マークシート方式などの 導入を検討してもらいたい。 ・ 教員によっては、独自の出席カードを用意し、授業毎に学生に感想などを記載してもらうと、授 業改善に役立った。 (2)全体会報告「少人数ゼミ形式授業について」の教科集団の感想および見出した意義 黒髪キャンパスの全学教育棟で開催された全体会への薬科学教科集団の参加は少なかったが、大江キャ ンパスで開催した分科会への参加は 45 名と例年よりも多かった。全体会に参加した教員から全体会「少 人数ゼミ形式授業について」の報告があり、分科会参加者間で意見交換した。全体会報告に対して、多く の教員が関心を示し、特に基礎セミナー担当教員からは具体的な手法についての詳細な質問が寄せられた。 薬科学教科集団が開催している基礎セミナー「科学の方法̶クスリが世に出るまで̶」においては、これ まで、少人数教育の特徴を活かし、コンセンサスゲームや KJ 法、PCM 法など小グループ討論を円滑に進 めるための手法を導入し、学生と教員間の双方向のやり取りを重視する参加型学習に努めてきたが、今回 − 106 − 全体会で紹介された種々のアイデアは大変参考になったとの感想が多く寄せられた。特に、中田晴彦先生 が紹介された「風景の発見」の授業形態については、学生の学習の場を大学キャンパス内から広く地域社 会に広げ、学生の知的好奇心をかき立てる手法は興味深いとの感想が寄せられた。 (3)その他 ① 薬科学教科集団が開講する教養科目に関する「評価基準の明示」の方法(評価、問題点の抽出およ び改善のための方策の検討) 薬科学教科集団が開講している教養科目(主題科目 I、学際科目 6-2、学際科目 6-3、基礎セミナー、 英語 D-1、英語 D-2)に関しては、すべて成績評価基準を明示しており、例年、定期試験の結果に 基づき、厳格で一貫した評価を行っている。現時点では特に問題は生じていないとの判断で意見が 一致した。ただし、複数の教員によるオムニバス形式の授業ため、教員間で評価基準が統一されて いないのではないかという意見もあり、今後、この点に関して改善を目指すことが確認された。 ② 薬科学教科集団が開講した 2009 年度(前期および後学期)の授業について、 「厳格で一貫した成 績評価」に関する検証(評価、問題点の抽出および改善のための方策の検討) 教務課教養教育担当より送付された成績評価データを分析した結果をもとに、意見交換を行っ た。データは、2009 年度前期「主題科目 I 現代薬学入門 A 薬の体内運命と効き目」 (時間割コード 27201、木曜日 4 時間目)であり、履修者 162 名であった。履修者の成績分布は、秀 33.3%、優 37.7%、良 19.8%、可 4.9%、不可 1.2%、未受験 3.1%であり、成績分布は適正であると判断した。 哲学教科集団報告 哲学教科集団幹事 大 杉 佳 弘 1.教科集団の構成 2010 年度の哲学教科集団の登録構成員は、前年度から変わらず、いずれもメイン登録の8名 ( 文学部 7 名、教育学部 1 名 ) であった。(サブ登録者はいない。) 2.開講科目、開講授業数 2010 年度の開講科目は次のとおりである。 − 107 − 主題科目Ⅰ 現代社会と倫理 A(生命の倫理) [3 コマ ] B(環境の倫理) D(多様な人間観の共存可能性) 現代人間学の課題 A(深層心理学的日本人論) B(人間−その偉大さと惨めさ) E(死へのまなざし) [2 コマ ] 主題科目Ⅱ 生命と価値 C(生命と情報) D(生命と存在) 心と認識 A(心を哲学する) [2 コマ ] 教科集団の構成員である熊本大学の専任教員の担当する責任開講授業コマ数は8で、教科集団を基礎 とした教養教育の運営が始まった当初の哲学教科集団の構成員である教員の所属学部の割合を踏まえ た、その責任開講授業コマ8の学部への標準的な割り当ては、文学部6、教育学部1、法学部1であるが、 法学部に割り当てられている1コマは、2004 年度まで法学部に所属して主題科目を毎年度 2 コマない し 3 コマ担当されていた、2005 年 3 月に定年退職された教員の就つかれていた法学部の教員ポストが 補充されていず、哲学教科集団に登録して哲学の主題科目の授業をできる専任教員が現在法学部にいな いため、その経緯を踏まえ法学部が補完する措置として法学部の予算による任用での非常勤講師によっ て開講されている。教養教育のために哲学教科集団に非常勤講師による開講授業コマ数として配分され ているコマ数は5である。(したがって、前述の事情により、開講授業の担当者が非常勤である開講授業 コマ数は6となる。なお、2006 年度まで教養教育非常勤開講コマ枠のコマ数は6であったが、2007 年 度から、他の少数の教科集団とともに「比較的余裕がある教科集団」と看做されて、5に減らされた。) なお、「現代社会と倫理A」と「心と認識A」で同じ授業テーマ名の授業が 2 名の教員によって異な る授業内容で開講されることになった。両方を履修登録することができないので、翌年度以降はそうし た場合が生じたとき当該教員の間で授業テーマ名の調整をしてもらうこととし教科集団内で引き継ぐこ ととした。一人の学生の主題科目の授業科目の履修が偏らないようにするという観点から両方の授業科 目を履修できなくても構わないと考えることもできるが、学生の自発的な問題関心に基づく積極的な履 修を可能にするために、異なる授業テーマ名を付けて両方を履修できるように調整することも考えられ る。今後もこうした事例が多く生じて調整の仕方について問題が生じた場合には教科集団でどちらの方 針で臨むのか検討することが必要になるかもしれない。授業内容が異なるので、外国語科目や専門基礎 科目の同一の授業テーマの授業を異なる教員が担当した場合のような、授業担当者間の成績評価の仕方 が等しいことへの配慮が強く求められるわけではないと思われる。 2.予算 主題科目の授業を行うための予算 55,100 円が哲学教科集団に配分され、授業とその準備のための図 書資料、文具などの購入に使用された。 − 108 − 3.今後の課題と問題 2010 年 9 月 28 日の教養教育に関する FD 研究会の全体会の終了後に開かれた教養教育に関する FD 研究会の哲学教科集団の分科会で検討された、2009 年度後期に開講されて実施された授業改善のため のアンケートの結果には、以前から顕著に見られた、設問11.に対する回答が示している当該授業の 授業時間以外の当該授業の学習事項についての学習時間の少なさという哲学教科集団で開講している全 般的な傾向がやはり顕著に見られた。今年度の分科会での話し合いでも特段の妙案を見出すことはでき なかったが、その傾向に対して何らかの適切な措置の工夫の検討が今後も必要と思われる。 次年度以降の、教養教育の授業科目も実施の責任主体が基本的に各学部となる、教養教育の基本的な 実施体制の改変によって、現在の「主題科目」に相当する「教養科目」の開講の予定の決定は、教養教 育実施機構から開講の割り当てが来て教科集団が担当してきた教科(哲学)の授業の開講の依頼は、各 学部に全体として割り当てられた「教養科目」の当該年度の開講コマ数を各学部の判断で各「教科」に 配分して、当該学部に所属する教員に開講を割り当て行うこととなったため、教科集団が果たす役割は、 基本的には、その割り当てが為された後の教科集団メンバー間での授業テーマ、授業内容などについて の調整に限られることとなるが、 (イ)3 年後の年度では「教養科目」の開講コマ数とともに「教養科目」の 非常勤講師による開講コマ数をほぼ 3 分の2とする計画が決定されている状況で、当教科集団への 「教 養科目」 の非常勤講師による開講枠のコマ数を現在の数(5コマ)からなるべく減らさないという教科 集団の要望を反映させるという問題と、 (ロ)先に「2.開講科目、開講授業数」で述べた哲学教科集団 の特殊な事情によって、翌年度以降も法学部に割り当てられた開講コマ数の「教養科目」の内で哲学の 「教養科目」1 コマを担当する非常勤講師を法学部の予算で給与を支払って任用して開講してもらうとい う教科集団の要望をどのように実現するかという問題が、教科集団としては生じていることになる。 来年度に関しては、(a) 全学で「教養科目」の非常勤枠の数が今年度と変わりなかったこと、および (b) 当教科集団に関係する文学部、教育学部、法学部とも、各学部の割り当てられた「教養科目」の開講コ マ数が 1 割程度減った一方で、開講コマ数の割合などは今年度の主題科目と開講と基本的には変更しな いという方針で(――ただし、文学部としては基本的に今年度の「主題科目」と同様な「教養科目」の 開講の各「教科」への配分の仕方を方針としたが、哲学教科集団の文学部のメンバー 7 名の内の 6 名が 所属する総合人間学科では、今年度までは 3 コマ、4 コマを担当し過重な負担となっていた他の教科集 団の教員の担当コマ数を適正なところまで減らすために、外国語担当を除いた学科所属の各教員は原則 として「教養科目」または「社会連携科目」を平等に1コマずつ分担することとした――)来年度の開 講予定の決定に臨んだことによって、哲学の「教養科目」については、来年度の開講コマ数は、 (正式の 報告が教科集団に為されたわけではなく、他学部の教科集団メンバーや教務担当の事務との接触によっ て知ることができたところを纏めると、)今年度と変わらず、文学部6、教育学部1、法学部1、教養教 育非常勤枠5の開講となった。(それでも、法学部には法学部教務委員長に所謂「継承コマ」の全学の取 決め(平成 16 年 2 月 10 日の大学教育委員会で「教養教育の実施体制(所謂負担体系)についての基本 的な考え」というタイトルの文書で修正、確認された)が今後見直されることはあるものの現時点で効 力を失っていないと教養教育実施委員会をはじめとする全学の関連諸会議で確認されていることおよび 「2.開講科目、開講授業数」で前述した経緯と事情を説明して、来年度も法学部に割り当てられた開講 コマ数の「教養科目」の内で哲学の「教養科目」1 コマを担当する非常勤講師を法学部の予算で給与を 支払って任用して開講してもらうよう要望を伝えてはたらきかけた。再来年度以降の哲学の「教養科目」 − 109 − の授業の開講の決定に当たっても(イ)と(ロ)の問題に直面し続けることになる。 教養教育の新たな実施体制が定常的な状況へ落ち着くこととなる予定の 3 年後以降の当教科集団のメ ンバー数、開講コマ数、割り当てられる非常勤枠のコマ数などの「教養科目」の実施に関わる諸条件が 充分見通せないので、来年度以降の教養教育の授業の「授業改善のためのアンケート」の実施の間隔に ついては、当教科集団としては、教養教育の実施体制が新たなものに至るまでの移行期間の来年度、再 来年度の 2 年間は、企画・運営委員会の案のとおりに 2 年に 1 度、すなわち来年度行い、再来年度は行 なわないこととし、3年後の年度以降については、その時の教科集団のメンバー数、割り当てられる開 講数、割り当てられる非常講師による開講数などを考慮して改めて審議して決定することとした。 次年度以降の基本的に実施体制が変わった教養教育において、教科集団が実施の責任主体に参画する のでなく、協力の依頼に対して協力をする立場に基本的になるとしても、教科集団がどのような役割で 協力を求められることになるのかは未だあまりはっきりとしていない状況ではあるが、次年度以降の基 本的に実施体制が変わった教養教育への協力において教科集団の運営の仕方を変更、整備することが今 年度末から次年度にかけて必要となる。次年度以降の熊本大学の教養教育における、教科集団の役割、 したがって教科集団の幹事の仕事が不明確なままに教科集団の次年度の幹事と副幹事を選出する困惑と 苦慮を強いられたことを記録に留めておくべきことと思われる。 教育学教科集団報告 教育学教科集団幹事 山 城 千 秋 1.教科集団の構成と開講科目 教育学教科集団は、今年度から一人増えて 20 名で構成されている。具体的には、国語科教育2名、社会 科教育2名、数学科教育2名、家政科教育3名、特別支援教育1名、教育学科7名、教育実践センター1名、 大学教育機能開発総合研究センター1名、国際化推進センター1名となっている。幹事は、教育学科から 選出することとなっており、副幹事ともに2年任期である。 今年度の開講科目は8科目で、うち3科目は非常勤が担当している。科目名は以下の通りである。なお、 主題科目Ⅰの一科目は、教育学部教員がローテーションで担当している。 (1)主題科目Ⅰ「現代社会と教育」 新しい子ども観の探求、日本語教授法、現代家族と子育て、日本語教材論、表現する楽しさ (2)主題科目Ⅱ「発達と教育」 西洋近代の家庭教育、学び直しの算数・数学、ヒトの進化とひとの発達 2.FD活動 2010 年9月の FD 研究会、11 月の教科集団会議等で議論した内容は、以下の通りである。 − 110 − (1) 「授業改善のためのアンケート」について 2009 年度後学期の主題科目のうち4科目でアンケートを実施したが、全体として良好であることが結果 として示された。板書や教材・教具の選定、視聴覚機器の使用など、教員の教授技術については、 「適切で ある」との回答が大多数を占めた。また講義形式では一方的になりがちな難点についても、教員による「双 方向的なやりとりが図られていた」との回答も高い比率となっている。このことから、幅広い教養教育を 教授するために、教員の創意工夫が図られていたことが、高評価につながっていると捉えられる。 学生自身の授業態度に関する評価については、 「授業は有意義であった」が大多数となっている。しかし、 学生自身の授業時間外の学習は、 「まったくしなかった」割合が高いことは、改善すべき課題であると思わ れる。教養教育では、どの程度の事前・事後学習を課すべきか、全学共通して検討する必要がある。 授業改善のための意見としては、肯定的な意見が多く見られる。たとえば「いろんな人の意見を聞く機 会もあってとても有意義だった」や「ビデオが非常によかった」 、 「とても理解しやすい授業だった」 、 「板書 がしっかりとあって分かりやすかった」など、前述の教授技術に対する評価が多く見られた。教員の身体 化された教授技術については、アンケート結果を踏まえて、各自で改善のための努力を図ってもらいたい。 (2)今後の教科集団のあり方について 今日の教養教育カリキュラムの改革について意見交換を行い、教員・学生がともにやる気になる、元気 になる教養教育をめざしてほしいと意見が出された。また、教養教育の責任体制に教科集団が果たした役 割は大きく、今後の教科集団のあり方、教養教育への関わり方についても、教科集団存続の必要性を求め る発言が相次いだ。 3.予算 今年度の予算は、33,900 円となっており、教養教育を担当する教員の教材費として充足している。 心理学教科集団報告 心理学教科集団幹事 渡 辺 功 1.心理学教科集団の構成と開講科目 心理学教科集団の構成は、文学部総合人間学科2名、教育学部教育心理学6名、同障害児教育4名、 同教育実践研究指導センター2名のメイン登録者と文学部総合人間学科1名のサブ登録者である。今年 度は以下の 8 コマを開講した 心理学の探究 A 前期:木3 渡辺 功 ( 文学部 ) 心理学の探究 A 後期:木3 渡辺 功 ( 文学部 ) 心理学の探究 B 前期:木4 積山 薫 ( 文学部 ) − 111 − 心理学の探究 B 後期:木4 積山 薫 ( 文学部 ) 現代心理行動学 A 後期:木5 干川隆、進一鷹、肥後祥治、高原朋子、吉田道雄(教育学部) 現代心理行動学 B 前期:木3 柴山謙二 ( 教育学部 ) 心理学の探究 A 前期:木4 平石徳己 ( 非常勤 ) 心理学の探究 A 後期:水4 平石徳己 ( 非常勤 ) 2.予算 配当された 32,915 円の予算を、講義準備に使用する消耗品類の購入に充てた。 3.現状及び今後の課題 (1)現状分析 学生による授業改善のアンケートの受講者からのコメントによると、心理学自体が実生活に関わる内 容であるためか、概して受講者に評判が良い。内容だけでなく担当者自身も親しみを持って受講者に受 け入れられていると考える。 (2)受講者数と指導可能学生数のミスマッチの問題 毎学期受講者数と教室のミスマッチの問題が起こっている。教室の収容人数だけ受講を許可するとい う教養授業のルールに従うと、収容数が数十名の教室が割り当てられた場合、教室の収容人数の数倍の 受講希望者を閉め出さなければならなくなる。このような現状についての苦情が学生のコメントにあっ た。実際、学期の初回の授業では学生達の教室間の大移動が過去必ず起こってきた。この問題に対する 1 つの解決法として、各学期の開始以前に受講者数を調査し、その数に見合った教室を準備することが 考えられる。現状は、多人数を収容可能な数少ない中サイズ以上の教室は時間割で既に割り当てが確定 しており、教室が確保できないため、数百人の学生にそのクラスの受講を諦めさせたこともある。 150 名の教室を使用できる場合であっても受講希望者数が多いため、受講制限をしなければならない クラスも少なくない。これについては、開講コマ数を増やすことが考えられる。これまでは、教養教育 時代からのコマ数の継承ルールに従って、文学部の2名の教員で教科集団の半数のコマ数を担当してき た。しかし、文学部、大学院の専攻希望学生数も多くなった現在、その学生の要望に応える教育を行い つつ、教養教育のコマ数を増やすことは2名の教員では体力的に限界を超えている。これまでは教養改 革時に決まったルールに従って、非常勤講師担当による授業を増やすことができなかったが、教養改革 の進行中の現在、このことも検討できるようなったはずだ。 受講者数と指導可能学生数のミスマッチに関わる問題は、これまで毎年必ず起こってきた問題である にもかかわらず、十分な対策が講じられていない。学生の要望に応えるという視点から始まった授業改 善のアンケートによって分かった問題点は、アンケートの実施主体である熊本大学のスタッフが一団と なって解決すべきであろう。 − 112 − 法学教科集団報告 法学教科集団幹事 原 島 良 成 1.教科集団の構成 当教科集団は、法学部、教育学部、大学院法曹養成研究科、大学院社会文化科学研究科に所属する 法学関係教員で構成されている。主題科目の責任開講コマ数は7コマである。 2.2010 年度開設主題科目 主題科目Ⅱ ・最前線の法学 C(最前線の刑事法学) 1年後期金曜4限 澁谷 洋平(法学部) ・最前線の法学 G(最前線の基礎法学) 1年前期木曜3限 山中 至(大学院法曹養成研究科) ・法学の諸相 D(国際協調の歴史) 1年後期木曜3限 深町 公信(法学部) ・法学の諸相 E(雇用社会と法) 1年後期木曜3限 石橋 洋(大学院法曹養成研究科) ・法学の諸相 F(経済法学の諸相) 1年前期木曜3限 諏佐 マリ(法学部) ・法学の諸相 G(基礎法学の諸相) 1年前期月曜4限 中村 直美(非常勤) ・法学の諸相 H(現代法学の諸相) 1年前期木曜4限 若曽根健治(非常勤) 2010 年度は、上記 7 科目が開講された。ご出講いただいた教員各位に、心から御礼申し上げたい。また、 具体的な担当者の選定、非常勤費用の拠出にあたっては、法学部、大学院法曹養成研究科、医学部保健 学科の各教務委員会の協力を得た。ここに記して感謝申し上げる。 本年度は主題科目 I がゼロであった。I・II で科目の内容、難易度、性質にそれほど違いがないことから、 ここでノミナルな問題を強調すべきではないようにも思われる(前年度の法学教科集団報告参照)。むし ろ、主題科目 I・II という教育体系が機能しておらず、これまでは教科集団において開設科目の学問分野 (基礎法・私法・社会法・公法・刑事法)バランスを保つことでかろうじて体系性が維持されてきた、と いうことに注意を喚起しておきたい。各開設科目に、専門法学科目への入門としての位置づけを与える ことはたやすいが、教養教育固有の意義がなお認められるとすれば、それは担当教員各位の職人芸に負 うところが大きい。 また、法学教科集団に限らない全体の傾向として、2年次配当科目が少ないことが指摘されていた(前 掲報告)。この点は、開設科目の大まかな学問分野はともかく配当年次(内容の程度)にまでは注文をつ けづらいという、教科集団による対応の限界を示しているとも言えよう。そもそも、教養教育に関する 思想の欠如が科目配置における体系性の欠如につながっているのであり、今後、科目開設の責任が法学 部に移ったとしても、継続して議論が必要であるように思われる。 3.FDについて 「教養教育に関するFD研究会 2010」の法学教科集団分科会は、2010 年 9 月 28 日 17 時 30 分∼ 18 時 30 分、法学部リフレッシュ・ルームで行われた。参加者数は 7 名で、必ずしも多くはなかったも のの、熱のこもった討議が行われた。詳細は実施報告書の通りであるが、特に本年度の全体会テーマと なった少人数ゼミ形式授業については、次のような議論があった。(以下、実施報告書から引用) − 113 − 全体会報告で指摘された「一般的基準に照らして学生を評価するのではなくその学生の成長度合いを 評価する」という観点の重要性と、そのような評価の困難性が話題になった。実際上、そこまで踏み込 んで学生を評価するには講義時間が短く、少人数といっても 20 人近くいれば教員と学生とのコミュニ ケーションが十分に取れない(順番にレポートさせると 1 回しか当たらない)という意見が強かった。 全体会報告では、学生間のコミュニケーションを生むことも少人数ゼミ形式講義の運営において留意 されるべきという指摘があり、これにも賛同意見が出ると同時に、そこまでに至るには講義時間が短い ということが述べられた。図書館ツアー・文章の書き方講座は少人数クラスの効用を上手く引き出すも のとは言えず、そもそも新入生段階での図書館ツアーは学生にとってほとんど役立っていないのではな いか、という意見もあり、討議参加者の強い賛同を得た(引用終わり)。 政治学教科集団報告 政治学教科集団幹事 伊 藤 洋 典 政治学教科集団では、今年度、下記のような授業を行った。(開講9コマ、うち非常勤講師4コマ担当)。 1.現代の政治 A(現代日本の政治) 2.現代の政治 A(現代日本の政治と行政:日本の外交を考える) 3.現代の政治 C(現代世界と民族問題)×2 4.現代の政治 D(現代社会の政策課題) 5.現代の政治 E(現代政治を考える)×2 6.政治学の基礎知識 B(政治思想の基礎知識) 7.地方自治の課題と展望 A(地方自治とまちづくり) 政治学教科集団は7名であったが、大森先生の転出によって6名となった。そこで、新たに社会文化 科学研究科の新任教員1名に政治学教科集団に加入してもらった。が、政治学教科集団は、構成員の学 内行政繁忙度が高いこと(部局長あるいはそれに準ずる構成員が多い)、在熊の政治学者の数が少ないこ となどの事情は例年通りである。このような状況であるので、教科集団の負担コマ数が過多になってい る面は否めない。 ただ、それでも、授業アンケートからみると、授業の満足度は比較的高いといえる。授業担当者の日 常の努力が伺えるアンケートの結果であると捉えている。 FD に関しては、政治学教科集団は、今年度は会議を開いた。授業アンケートの結果を参考にして意 見交換を行ったが、板書の仕方や声の聞き取りやすさなどの点で、少々反省すべき点がみられるようで ある。また双方向性の向上という点も、講義形式の授業では困難であるかもしれないが、今後の課題で あるといえる。 − 114 − 経済学教科集団報告 経済学教科集団幹事 山 中 守 本年度の経済学教科集団のメンバーは7名(法学部5・社文研1・教育学部1)であり、非常勤は5 名であった。本年度開講した科目は以下のとおりである。 主題科目Ⅰ 現代社会と経済 A(現代経済学入門) 現代社会と経済 B(日本経済の現状と将来) 現代社会と経済 F(日本経済の現状と課題) 現代社会と経済 G(国際経済の現状と課題) 現代社会と経営 B(現代会計学入門) 現代社会と経営 C(日本企業の経営と戦略) 現代社会と経営 F(現代企業の意思決定と情報) 主題科目Ⅱ 現代経済問題の諸相 A(地域の産業と経済) 現代経済問題の諸相 C FD活動について 1.開催日時・場所 2010 年 9 月 28 日 15:20 ∼ 17:00、C306 教室、参加者5人、欠席者2人 2.分析結果の検証 経済学教科集団のアンケート結果を総合的に検討したが、特に問題はなく、各自効果的な授業をして いるといえる。なお、各担当者からの意見をまとめると以下の通りである。 ・ 授業の最後にアンケート調査を実施して、その結果については分析したが特に問題は無かっ た。質問のある学生に対しては答えを書くようにして、個々の学生に対応するように心掛け ている。 ・ アンケートのことを日頃から気にかけており、それがいい授業への改善に役立っており、そ れがアンケート結果に現れている。 ・ 一律にアンケートすることは無駄であり、結果についても信憑性が乏しいこともある。 3.全体会報告について 専門分野が異なる方々と情報交換するのが難しい現状にあるが、全学を対象にした報告は、他学部の 取り組みが分かって為になった。さらに、グローバル化が進んでいる現在では、日本固有の文化など、 世界との違いなどが理解できるような観点からの報告があればいいと思う。特に、外国からきている教 員からの要望があった。 − 115 − 社会学教科集団報告 社会学教科集団幹事 鈴 木 寛 之 1.構成と開講科目 2010 年度の社会学教科集団はメイン登録教員 12 名(文学部6名、社会文化科学研究科2名、教育学 部 2 名、大学教育機能開発総合研究センター1名、政策創造研究教育センター1名)から構成され、そ のうちの 5 名と非常勤講師 4 名によって主題科目Ⅰ ・ Ⅱを以下の9コマ開講した。 主題科目Ⅰ グローカルな社会の動態 B(移動と文化) メイン登録教員担当(2年・前期 月2) グローカルな社会の動態 D(地域社会と文化) メイン登録教員担当(1年・後期 金4) グローカルな社会の動態 F(環境保全と地域づくり) 非常勤講師担当 (1年・前期 水4) パーソナルな世界の創成 A(現代の家族) メイン登録教員担当(1年・前期 金4) パーソナルな世界の創成 B(コミュニケーションの社会学)非常勤講師担当 (1年・後期 金4) パーソナルな世界の創成 E(人権の社会学) 非常勤講師担当 (1年・前期 木3) 主題科目Ⅱ 最前線の社会文化研究 B(計量的研究の方法と実際) メイン登録教員担当(2年・後期 月5) 最前線の社会文化研究 C(人類学の最前線) メイン登録教員担当(1年・後期 木4) 最前線の社会文化研究 E(文化研究の最前線) 非常勤講師担当 (1年・前期 木4) 授業にあたって特に顕著な問題等はみられない。例年、当教科集団の授業内容についてのアンケート 結果では,視聴覚機器の効果的使用,双方向的なやりとり、教員の熱意などの面での評価が高く,全体 として授業内容を有意義と感じている学生が多い。特に大きな問題はみられないが、授業の難易度が高 いと感じる学生が年々増加傾向にある点は注意しておきたい。 2.予算 今年度当教科集団に配分された予算額は 38,100 円であり、講義準備等に使用する書籍・事典代にあ てられ、有効に活用された。 3.今後の課題 昨年度の FD 研究会分科会において、受講生の何割ぐらいの学生を「秀」や「優」と評価すべきか一 定の基準がないため、授業担当者によって成績評価にばらつきがみられることが問題となった。特に「秀」 についての認識に教員間で相違があり、教養教育全体で何らかの指針がほしいとの意見があがっていた。 そうした議論の場を設けた結果、科目ごとの極端な成績評価の偏りは減少しつつあるが、これ以上調整 して足並みを揃える事は現実的に難しい。「厳格な評価」に求められる内容を教養教育全体でもう少し明 確にする必要があるのではないかとの意見がみられた。また来年度以降、これまで教科集団内で調整し − 116 − て円滑に授業内容を決定出来ていた仕組みをどのような形で各学部等に引き継げるのか不明瞭であると の意見も出た。 芸術教科集団報告 芸術教科集団幹事 木 村 博 子 1.構成と開講科目 平成 22 年度における当教科集団登録メンバーはメイン 15 名(教育学部 14 名、文学部 1 名) 、サブ 1 名 (自然科学研究科)である。今年度における開講コマ数は6コマ(専任4、非常勤2)で、専任分は文学部: 木村が 4 コマ担当した。非常勤分は中川みゆき先生と、田中均先生が担当した。 主題科目 I ・芸術と現代 B(1年・後期・木4) 「現代芸術入門(20 世紀の音楽) 」木村担当 ・芸術と現代 C(1年・前期・金3) 「西洋音楽史概説」木村担当 ・芸術と現代 D(2年・後期・月4) 「音楽理論入門」木村担当 主題科目 II ・芸術の諸相 A(1年・後期・木5) 「美術の技法と表現」田中担当 ・芸術の諸相 B(1年・前期・木5) 「音楽の技法と表現」木村担当 ・芸術の諸相E(2年・前期・月2) 「日本音楽史」中川担当 受講者数については、4科目において 100 名を超えており、芸術系としてはやや多すぎるといえよう。 特に中川先生の「日本音楽史」は 198 名に上り、23 年度からは人数制限を実施することが望ましい。田中 先生の「美術の技法と表現」も2年前から人数制限を取り入れており、それによって学生の受講態度も改 善したことから、視聴や鑑賞を含む芸術系の科目には人数制限が有効であると思われる。ただ、初回の授 業で人数制限をした後に、他の授業の人数制限にはずれた学生たちが勝手に履修登録を行い、結果的に2 割程度人数がオーバーする事態も出てきており、人数制限の実施方法について教養教育全体で考える必要 性があると思われる。 2.予算 22 年度の当教科集団の予算額は 25,400 円である。予算使途については主に視聴覚教材及び、教材消耗 品にあてる。今年度は木村の 「芸術と現代 B」 において、 演奏家を招聘し現代音楽の演奏とレクチャーを行なっ てもらったため、その謝金も含まれる。芸術科目は鑑賞や、実技があり、画集や美術材料等の特殊な教材 や視聴覚教材が無いと授業に支障をきたす。全学的に厳しい予算状況であることは十分に理解しているが、 できれば予算額の引き上げをお願いしたい。 − 117 − 3.現状と今後の課題 当教科集団は、教養部改組の際に、旧教養部教員が文学部に移籍したため、長年にわたって、ほとんど の専任コマを当該教員が担当する事態が続いてきた。従って授業に関することは、いわば当該教員にほぼ 任されている状況にあり、FD 研究会の折の教科集団分科会において議論される以外は、特に問題とされる ことはなかった。23 年度より、責任主体が学部に移行するため上記の問題は解消するが、今後とも教科集 団としては、芸術系の授業の発展のために協力して対応していく所存である。 文学・言語学教科集団報告 文学・言語学教科集団幹事 跡 上 史 郎 1.文学・言語学教科集団の構成と開講科目 平成 21 年度の文学・言語学教科集団では、以下に示す 15 コマの講義を担当した。本教科集団における 平成 21 年度の講義担当者は、メイン・サブ登録者合わせて 12 名(文学部 4 名、教育学部 3 名、法学部 1 名、 社会文化科学研究科 1 名、留学生センター 3 名) 、また非常勤講師 2 名の計 14 名であった。 主題科目 I(1年次開講・6コマ) ・言語の構造と歴史 B「日本の敬語」 (メイン登録教員担当) ・文学の読解と鑑賞 K「文学の森 熊本の文学」 (非常勤講師担当) ・言語の構造と歴史 G「マンガの言葉」 (メイン登録教員担当) ・文学の読解と鑑賞 F「ヨーロッパの文学」 (サブ登録教員担当) ・文学の読解と鑑賞 L「日本近・現代文学史」 (メイン登録教員担当) ・文学の読解と鑑賞 M「徒然草を読む」 (メイン登録教員担当) 主題科目 I(2年次開講・1コマ) ・言語の構造と歴史 D「地域の言葉」 (メイン登録教員担当) 主題科目 II(1年次開講・7コマ) ・言語の諸相と表現 A「現代日本語の文法」 (メイン登録教員担当) ・文学の諸相と表現 K「源氏物語階梯」 (非常勤講師担当) ・言語の諸相と表現 H「ことばと文学」 (メイン登録教員担当) ・文学の諸相と表現 B「近現代日本の女性・文学」 (非常勤講師担当) ・文学の諸相と表現 M「鬼と天狗の説話学」 (メイン登録教員担当) ・文学の諸相と表現 I「漱石を読む」 (メイン登録教員担当) − 118 − ・文学の諸相と表現 N「異文化間コミュニケーションと日本語」 (サブ登録教員担当) 主題科目 II(1年次開講・1コマ) ・言語の諸相と表現 B「日本語の音声」 (サブ登録教員担当) 2.予算 主題科目分の予算として 59,000 円が配当され、講義準備に使用する書籍、文具類、実験に必要な消耗品 類の購入にあてられ、有効に活用された。 3.現状および今後の課題 文学・言語学教科集団は、主題科目系の教科集団として開講コマ数が多い教科集団の一つであるが、登 録教員の間のコミュニケーションは適切にとられている。2010 年度の本教科集団のいずれの開講授業も、 授業担当教員のご尽力によって適切に開講されたと教科集団幹事としては判断している。 ただし、授業担当が実質的に可能なメイン・サブ登録教員の合計数に対して、責任開講コマ数が超過し た状況が過去数年間にわたって継続している。非常勤講師の担当分を差し引いてもその超過は解消されな いために、既に教養教育の授業を他に担当している教員の協力を仰ぎ、開講コマの責任を何とか遂行して いる現状については、教養教育における主題科目系科目の責任開講コマの見直しを含めた、抜本的な改善 を要望するものである。 なお、2009 年度後学期および 2010 年度前学期の授業についての「授業改善のためのアンケート」の結 果から判断する限り、文学・言語学集団の各開講授業の授業評価は比較的良好であり、過去数年間の授業 評価を経年的に分析しても同様である。アンケート結果の傾向を踏まえた上で、主要各項目の中で改善の 余地のある点については、教科集団として向上の努力が求められるであろう。 地理学教科集団活動報告 地理学教科集団幹事 寶 月 拓 三 1.教科集団の構成 当集団の構成員はメイン3名(文学部2名 教育学部1名) 、サブ1名(自然科学研究科)であり、その 他に非常勤講師1名も授業を担当した。なお、当初の非常勤講師が急病のため、新たに講師を選任し直し 滞りなく授業開講できた。 2.開講科目 2010 年度の授業はメイン3名と非常勤1名のそれぞれが授業を担当し、5コマ(実習2コマを含む)と なった。 − 119 − 3.FD活動 当集団メイン3名による FD 活動とそれに関連する課題については、既に「地理学教科集団 FD 活動実施 報告」で提出しているところであり、ここでの再掲は避けるが、その中の課題をまとめると、 ・履修生には他律的な学習しか行わない受け身の勉学態度が目立つが、どのように改善するか ・ 「厳格な成績評価」と「一貫した成績評価」をどのように両立させるか ということになろう。これらの課題を解消する手立てを見いだせぬまま時が経過するもどかしさを感じて いる。 4.今後の課題 本教科集団の担当する授業には、講義に実習を組み入れた授業形態をとるものがある。そのような授業 では、実習教材を整えるための経費等の問題や、受講人数を制限せざるを得ないとか教室机の必要条件など、 授業担当者の個別努力だけでは解決できない問題が惹起される。 歴史学教科集団報告 歴史学教科集団幹事 伊 藤 正 彦 2010 年度の歴史学教科集団は、従来通り文学部歴史学科、埋蔵文化財調査室、教育学部社会教育の 16 名(文学部歴史学科 13 名、埋蔵文化財調査室 1 名、教育学部社会教育 2 名)とサブ登録の 1 名から構成 され、そのうちの 10 名と非常勤講師 5 名(前年度と同様、1 名については副学長[学生・教育担当]裁量 経費に基づく特例措置によるもの)によって主題科目Ⅰ・Ⅱを前期・後期あわせて 16 コマ開講した。本来 は 17 コマ開講の予定であったが、前年度と同様に、復職した教員が大講義を担当できるまでには回復して いないため、1 コマの不開講措置を承認していただき、計 16 コマの開講となった。なお、後期開講の 1 コ マについては、授業担当者が急病のため、学期途中から教科集団の専任教員が授業を代行した。 今年度の開講題目は次の通りである。 主題科目Ⅰ 現代世界の形成と課題 A「アメリカ近現代史入門」 (1 年後期 金・3 限) C「核兵器と人類」 (1 年前期 金・3 限) D「ヨーロッパ近現代史入門」 (1 年前期 水・4 限) 主題科目Ⅱ モノが語る歴史 A「人類社会の発展過程」 (1 年後期 金・4 限) D「漁業からみた日本の歴史」 (1 年後期 木・3 限) 主題科目Ⅱ 地域の世界史 − 120 − B「中世ヨーロッパの社会と人々」 (2 年前期 月・2 限) D「イギリス生活文化の歴史的背景」 (1 年前期 水・3 限) E「前近代中国の法制と社会」 (1 年前期 金・4) F「上海史」 (2 年前期 月・2) H「フランス革命の歴史」 (1 年後期 水・4 限) 主題科目Ⅱ 日本社会の歴史 A「織田信長にみる『中世』と『近世』 」 (1 年前期 木・5 限) B「近代中国の日本認識」 (1 年後期 金・5 限) C「戦国時代論」 (1 年後期 木・3 限) D「古代・中世の日本と東アジア」 (2 年前期 月・4 限) F「地域史からみえてくるもの―矢島家の『四賢婦人』 」 (2 年前期 月・2 限) G「近代日本と西洋文明」 (1 年前期 金・3 限) 従来、教科集団の活動の中心は FD 活動であったが、2011 年 4 月から教養教育改革を強行しようとする 動きに対する抗議の意を込めて FD 研究会の分科会の開催をとり止めた。ただし、教養教育実施委員会か ら求められた FD の課題については、前年度までの検討結果をもとに幹事・副幹事の責任で応えた。教養 教育改革強行の動きに対する歴史学教科集団の見解については、別稿( 『2010 年度教養教育 FD 教科集団 別分科会報告』2011 年 1 月)を参照されたい。 今年度末で旧教養部所属であった教員が定年退職を迎えるため、その担当授業をどのようにして担って いくかを検討し、来年度以降の歴史学教科集団内での授業担当のあり方を確認した。 今年度の予算は、歴史学教科集団全体で 67,680 円の配分を受けた。従来からの合意通り、僅少な予算を 有効に活用するために、個々の授業担当教員に配分するのではなく、授業担当教員の専門分野ごとに配分 し(日本史分野[7 コマ分]29,610 円、西洋史分野[5 コマ分]21,150 円、アジア史分野[4 コマ分 考古 学の 1 コマを含む]=16,920 円) 、それぞれの専門分野で非常勤講師の方々の要望もふまえて執行した。 既修外国語教科集団報告 既修外国語教科集団幹事 角 田 俊 治 1.教科集団の構成と開講科目 2010 年度の既修外国語教科集団の構成は、メイン登録者 26 名、サブ登録者 34 名であり、また開講コ マ数は、英語 A・B・C・D と自由選択外国語の合計 429 コマであった。そのうち、英語 A・B・C 及び自由 選択外国語については専任教員担当によるものが 167 コマ(学部の委嘱による非常勤担当コマ数を含む) 、 非常勤講師によるものが 224 コマであり、また英語 D については、英語以外を専門とする専任教員による コマ数を含めて、専任教員によるものが 22 コマ、非常勤教員によるものが 16 コマであった。 − 121 − 2.予算 教養教育実施委員会で了承された2010年度の既修外国語教科集団への予算配当額は1,779,700円であり、 この額から前年度の精算をした結果、執行可能な額は 1,683,894 円であった。さらにこの執行可能額から、 機材・機器更新経費や消耗品等に要する経費(共通経費)として 400,000 円を確保し、残額を教員授業経 費として教養教育英語授業担当コマ数に応じて、各授業担当者に配分した。 3. 22 年度の活動状況と取り組み及び今後の課題等について 具体的な活動(既修外国語教科集団の審議事項等)については「4. 2010 年度の主要な審議事項」の項 で、月別に示している。4の中の「自費出版教科書問題」とは、2010 年度授業開始時に、ある非常勤教員 が自らの授業で使用予定の自費出版教科書の価格を不当に高くしているのではないかと、教科集団側が考 えたことである。当該の教員に関しては 2007 年度にも同様の問題が起きており、しかもこれが教科書の内 容ではなく金銭的利害という微妙な問題にからむものであることから、既修外国語教科集団の全体会やワー キング・グループによる会議を繰り返し開き、きわめて慎重に対処した。この教員にはこの教科書を後学 期は使わないように要請し了承を得ている。教科集団は年度初めから夏季休暇中までこの問題のための会 議を幾度となく開くことを余儀なくされ、甚大なエネルギーを要した。 既修外国語教科集団にとって 2010 年度の最大の問題、そして 2011 年度以降も継続して論議を尽くして いくこととなる問題は、いわゆる学士課程教育推進と関わる英語教育改革問題である。2010 年度において 学士課程教育推進委員会既修外国語分科会から案として提出されたもののうち、とりわけ論議の対象となっ たものは、 「2 年次以降の英語教育を専門教育に位置づけ、理系各学部における専門教育としての英語教育 を実施 ・ 支援するための組織として英語教育センター(仮称)を新たに設置する」という趣意のものであっ た。教科集団側としては「学生の英語学習を支援する体制の構築」 、あるいは「専門教育としての英語」と いう改革の方向性については一定の理解を示しつつも、拙速な改革の危険性、改革に対する各学部の見解 ・ 理解の不揃い、各学部及び各教員の改革意識の濃淡、英語教育センター設置の実現性の希薄さ等々から、 2011 年度からの改革実施に強く反対し、せめて 1 年間は実施を見送るべきであると主張した。また、これ については初修外国語教科集団も同意見であった。結果、教育会議 ・ 学士課程教育推進委員会の合同委員 会において必修外国語カリキュラム改革の 2011 年度実施は見送られることが決定した(医学部保健学科の み例外的に 2011 年度から実施) 。なお医学部保健学科においては今回の教養教育改革を契機として、外国 語関係の授業の総時間数が実質的に減少した。国家試験等、他の学部 ・ 学科と事情を異にする面があると はいえ、少なくとも外国語教育のみの範疇から見れば、本来のカリキュラム改革の趣意とは逆の方向に向 かうものとなったことを付記する。 本学の外国語教育改革が今後どのような形をとるのか、またその実施体制をどのように構築するのかと いう問題について、案は提出されているが定まったものはない。なにより、 「教科集団」の役割のみならず、 その定義すら曖昧になりつつある中で、2011 年度以降の既修外国語教科集団はこれらの本質的な問題と向 き合うことになる。 4.2010 年度の主要な審議事項 既修外国語教科集団として 2010 年度に行った会議と審議事項のうち、主要なものを挙げる。 − 122 − 2010 年 4月 ・ 新入生クラス編成会議(2 日) ・ 既修外国語ワーキング ・ グループ(WG)会議(16 日) 非常勤講師による自費出版教科書問題について ・ 既修外国語 WG による当該非常勤講師への第 1 回聴取 (23 日 ) ・ 再履修クラス確定システムによる英語 B-2(CALL)登録受け付け(前学期分) 5月 ・ 既修外国語 WG による上記非常勤講師への第 2 回聴取(18 日) ・ 新任非常勤講師希望者の書類審査等 6月 ・ 既修外国語 WG 会議(8 日) 自費出版教科書問題について 英語教育改革について ・ 既修外国語教科集団会議:全体会(24 日) 教養教育実施機構長による英語教育改革案の説明と質疑応答 非常勤講師による自費出版教科書問題 ・ 既修外国語 WG 会議(29 日) 自費出版教科書問題について 英語教育改革について ・ 後学期使用教科書選定依頼の送付 7月 ・ 既修外国語 WG 会議(6 日) 自費出版教科書問題について 英語教育改革について 8月 ・ 既修外国語教科集団会議:全体会(5 日) 教養教育実施機構長による英語教育改革案の説明と質疑応答 ( 第 2 回 ) 非常勤講師による自費出版教科書問題 ・ 既修外国語教科集団会議:全体会(20 日) 英語教育改革について 非常勤講師による自費出版教科書問題 ・ 既修外国語教科集団代表者により教養教育実施機構長に英語教育改革に対する教科集団の意見を文 書にして提出(24 日) 9月 ・ 「教養教育に関する FD 研究会 2010 全体会」 に伴う既修外国語分科会及び既修外国語教科集団会議: 全体会(28 日) 教科集団が開講した 2009 年度後学期の授業についての「授業改善のためのアンケート」分析 「厳格で一貫した成績評価」方針との関連における 2009 年度の教養英語科目の成績評価について 英語教育改革について ・ 既修外国語教科集団代表者により教養教育実施機構長に英語教育改革に対する意見及び質問事項を 文書にして提出(29 日) ・ 再履修クラス確定システムによる英語 B-2(CALL)登録受け付け(後学期分) − 123 − 10月 ・ 既修外国語 WG 会議(初修外国語幹事同席) (20 日) 初修 ・ 既修外国語教育改革問題について ・ 工業英語検定による英語 D 単位認定の問題を審議 11月 ・ 既修外国語拡大 WG 会議(8 日) CALL 授業の実施体制 ( トラブル時の連絡先等 ) について 英語教育改革について 非常勤講師の 65 歳定年規定撤廃について ・ 既修外国語教科集団会議:全体会 (17 日) 初修外国語教科集団からの申し入れについて 学士課程教育改革及び教科集団の対応について ・ 新規採用予定非常勤講師の面接等 ・2011 年度時間割作成 ・ 非常勤講師による担当クラスの受講者の顔写真依頼について審議 12月 ・ 既修外国語 WG 会議(13 日) 英語C希望調査の配布準備作業 ・ 外国語(英 ・ 独 ・ 中 ・ 仏 ・ コリア語)教員代表者による調整会議(24 日) 履修案内等の編集作業スケジュールについて 教室の割り振りについて 外国語履修パターンについて 2011 年 1 月 ・ 外国語(英 ・ 独 ・ 中 ・ 仏 ・ コリア語)教員代表者による調整会議(28 日) 履修案内等の編集作業 初修外国語教科集団報告 初修外国語教科集団幹事 吉 川 榮 一 個別の事項は各外国語の報告に譲り、まず 2010 年度入学者の科目別履修者数・開講状況を以下に掲げ、 次いで実施体制と問題点を述べる。 1.必修の初修外国語科目履修者数・開講クラス数 2010 年度の科目別履修者数(留学生を除く)および開講クラス数は以下の通りである。なお数値は 4 月 の外国語クラス分け作業時のものであり、再履修者は含んでいない。 特筆すべきことが二点ある。まず第一に、今年度から新たにコリア語が文学部を対象として開講され、 20 名が履修したことである。第二に、必修外国語としての中国語 a が今年度から医学部保健学科にも開講 − 124 − され、医学部医学科、薬学部を含め 70 人もの理系学生が中国語を履修したことである。将来のメディカル・ ツーリズム発展の趨勢を、医学薬学系の学生諸君は教員以上に敏感に感じ取っているのかも知れない。 法 文 教育 文系学部計 理 医・医 医・保 薬 工 理系学部計 2 x 153/5クラス 2 x 153/5クラス 201/5クラス 1年次・通年・独語A 51 45 65 161/5クラス 123 28 x 1年次・通年・独語B 51 45 65 161/5クラス 123 28 x 54 x 0 x 86/2クラス 1年次・通年・独語a x x x x x 53 94 1年次・通年・仏語A 50 49 59 158/6クラス 79 7 x 1年次・通年・仏語B 50 49 59 158/6クラス 79 7 x 0 x 86/2クラス 1年次・通年・仏語a x x x x x 11 19 14 x 44/2クラス 107 70 185 362/11クラス x 5 x 1 x 6/1クラス 6/1クラス 1年次・通年・中国語A 1年次・通年・中国語B 107 70 185 362/11クラス x 5 x 1 x 1年次・通年・中国語a x x x x x 12 36 22 x 70/2クラス 1年次・通年・コリア語A x 20 x 20/1クラス x x x x x x 1年次・通年・コリア語B x 20 x 20/1クラス x x x x x x 208 184 309 701 202 116 149 93 (543) 560+(543) 入学者数(留学生を除く) ※ 週2回履修者はAとBとを履修。週1回履修者はaを履修。 2.翻弄された1年――初修外国語をめぐる理念なき「単位いじり」 2010 年度は、教養教育改革をめぐって大揺れに揺れた一年であった。当初、今回の教養改革では、初修 外国語については取り上げないことになっていたにもかかわらず、一部の学部・学科に引きずられるよう にして、ほとんど議論がないままに単位数だけをいじるような提案がなされ、大学全体として外国語教育 をどのように位置づけているのか全く考えていないことを内外に露呈する結果となった。こうした環境の 中では、外国語教育を担当する教員集団のモチベーションは低下するばかりであるが、それでも外国語教 育を通じて学生諸君の国際社会に対する理解を深めるべく日々努力を続けている。 3. 2012 年度以降の実施状況と検討課題 2011 年度からは、コリア語の開講対象が教育学部と医学部保健学科に拡大される予定であるが、医学部 保健学科の一部の専攻では初修外国語の履修を取りやめたため、せっかくのコリア語開講の恩恵に浴せな い学生諸君が出るのは残念なことである。なお、このコリア語教育拡大のため、中国語の非常勤コマ数を 4 つ削減したが、それでも不足する非常勤コマ数については、教養教育実施機構のご理解ご支援をいただき、 大変感謝している。 2011 年度は、熊本大学における外国語教育はどうあるべきか、熊本大学の学生が身に付けるべき外国語 能力はどうあるべきなのか等々の検討を開始し、2012 年度以降の初修外国語教育のあり方を大いに議論し ていかなければならないであろう。 − 125 − 初修外国語教科 ドイツ語報告 初修外国語教科集団・ドイツ語 深 堀 建二郎 1.今年度の開講状況 今年度の開講コマ数は昨年度と同じ 68 コマ(通年科目を 2 コマとする)であった。今年度も一昨年 度をもって定年退職された専任教員 2 名の後補充がなされないので、相変わらず学生数の多いクラスが 見受けられる。内訳は、1 年次必修 50 コマ、2 年次必修 8 コマ、1 年次自由選択 4 コマ、2 年次自由選 択 4 コマ、再履修者用クラス 2 コマである。 1 年次文系の 1 クラス当たりの学生数は 3 2名(再履修者を含まない) 、1 年次理系の 1 クラス当た りの学生数は平均して、A、B が 30 名、a は最高で 48 名(いずれも再履修者を含まない)となった。 a については、スタッフが足りないので、金曜2限のみの開講となっている。 2.授業実施体制 総 68 コマ中、専任(メイン登録7名)が 53 コマ、非常勤講師が(4名)が 15 コマを担当した。 3.問題点 1年次のときに週1回でドイツ語が終わる a のクラスの学生数は、平均が最高で 48 名で、再履修者 を含めると 50 名を超えるという状況が相変わらず続いている。スタッフの増加が急がれるが所以である。 ドイツ語教科は、教養部解体よりこの方、スタッフ数が半減している。関係学部に善処方要望している 現状だが、全学的見地からも再検討をお願いしたい。 初修外国語教科 フランス語報告 初修外国語教科集団・フランス語 市 川 雅 己 1.今年度の開講状況 学士課程教育への移行に揺れた年度であった。当初、 外国語には手を付けないという申し合わせがあっ たにもかかわらず、何の議論もなく各学部の必修外国語の単位数になし崩し的な変更が施されるところ であった。明 2011 年度は幸いほぼ現状維持となったものの、 2012 年度からの必修単位数減が決定され、 来年度は授業内容について各学部との協議が予定されている。なお、医学部保健学科看護学専攻は来年 度より英語のみの履修とされた。執行部の改革の進め方の不備には憤りを禁じ得ない。 2010 年度の開講コマは昨年度より2コマ減の 52 コマ(半年科目を1コマ)であった。医・薬学部に 新たに中国語が開講されることになったことに伴い、フランス語の受講者減が見込まれ、従来2クラス 開講していた同学部向けの「フランス語 a」を1クラスにしたためである。開講年次ごとの内訳は1年 次 38 コマ(必修 34 コマ、自由選択4コマ)、2年次 14 コマ(必修 10 コマ、自由選択4コマ)となっ − 126 − た。時間割は、上記2コマ減を除き、昨年度からの変更はない。 なお日本人教員が担当する自由選択外国語科目 ( 火1) は、今年度も学外へ開放した。ただし、開放の 実施は担当教員の意向によるものであり、フランス語として申し合わせたものではない。 2.授業実施体制 開講した 52 コマの担当は専任教員 34 コマ、非常勤講師 18 コマとなるところ、文学部長を務める大 熊教授の4コマ分を文学部雇用の非常勤講師に委嘱したのは前年度と同様である。その結果、専任教員 30 コマ、非常勤講師 22 コマとなった。 教科集団へのメイン登録教員は5名、34 コマを1人平均7コマ弱担当することになり、教養教育の負 担は他の教科集団に比して大きい。しかし、全員が文学部所属であることから負担の分担も容易であり、 負担の不均衡等の問題はない。 初修外国語教科 中国語報告 初修外国語教科集団・中国語 吉 川 榮 一 1.今年度の開講状況 2010 年度の開講コマ数は、80 コマ(半年科目を 1 コマ)であった。2009 年度の 94 コマと比べる と 14 コマの減であるが、これは、ドイツ語非常勤コマ数を確保するため、同じ初修外国語教科集団の なかで一定数の非常勤コマ数をドイツ語非常勤に回す必要があったためと、コリア語開講に伴って競合 する中国語の開講コマ数を減らしたことによる。開講年次ごとの内訳は、1 年次 58 コマ(必修 52 コマ、 自由選択 6 コマ)、2 年次 22 コマ(必修 18 コマ、自由選択 4 コマ)となっている。 2.授業実施体制 開講した 80 コマのうち、専任教員が 36 コマ、非常勤講師が 44 コマとなっている。非常勤教師の担 当コマ数は、上述の理由で前年度より 6 コマ減らしている。専任教員の担当コマ数が減じている背景には、 教育学部所属であった中国語教科集団の教員が 2009 年度をもって定年退職した後の補充がなされてい ないことがある。中国語受講希望者の総数が少なくないにもかかわらず、専任教員の配置が十分になさ れていないことは残念である。 3.問題点 2010 年度から、コリア語が新たに必修外国語として開講されたのにともなって、従来中国語教育に 従事していた教員がコリア語担当へと転じ、上述のように 2009 年度末に退職した教員の後補充がなさ れていないため、中国語教科集団は 2 名減の 9 名体制が続いている。しかも、コリア語新規開講コマを 保証するため、2011 年度は非常勤コマ数をさらに 4 コマ減らして開講することになっている。中国語 担当教育の後補充を切に望む次第である。 − 127 − 初修外国語教科 コリア語報告 初修外国語教科集団・コリア語 朴 美 子 1.今年度の開講状況 2010 年度の開講コマは8コマであった。その内訳は、1年次6コマ(必修4コマ、自由選択2コマ) 、 2年次2コマ(自由選択2コマ)である。コリア語が必修科目になり、昨年度より4コマ増加した。なお、 自由選択外国語(1年次、2年次)については、学外への開放科目としても開講した。 2.授業実施体制 2009 度まで自由選択科目として開講したが、今年度から新たに必修外国語として加わることになった。 そのために、新たに非常勤講師1人を補充した。初年度は文学部だけを対象に開講した。 3.問題点 2010 年度より教育学部と医学部保健学科がコリア語を必修外国語として開講することを希望していた が、専任教員は1人のために見送られた。2011 年度から教育学部と医学部保健学科にも開講することが決 定されており、コリア語の専任教員の採用もまた確定している。しかし、少なくとも 18 コマ(1年次が 2年次になるために必修的に開講すべきコマ数などを含めて)は開講しなくてはならないことから新たに 非常勤講師2人(6コマ)を補充した。初年度ということもあり、受講生が何人になるか見当がつかない。 今の体制は、とりあえず1クラスを開講する形にしている。しかし、これから受講希望者の実情に応じて 開講コマ数の見直しが必要になるかもしれない。 初修外国語教科 日本語・日本事情報告 初修外国語教科集団・日本語日本事情 梅 田 泉 1.開講状況及び授業実施体制 (1)日本語科目 前期は必修6コマ、選択 23 コマ、後期は必修6コマ、選択 24 コマを開講した。前期後期合わせると 59 コマとなる。専任(国際化推進センター・国際語学部門)は5名おり、59 コマのうち 45 コマを担当し、 残り 14 コマを非常勤講師が担当した。前期より後期にコマ数が若干増える傾向がある。これは後期に渡日 して日本語の学習を始める留学生が多いためである。 受講者の中には、正規学部留学生のほか、単位互換を前提とする海外協定校からの交換留学生(学部特 別聴講学生)がいる。これは熊本大学短期留学制度によるもので年間 30 単位以上を履修しなければならな い。彼らは学部開講専門科目、教養教育科目、さらに後述する日本事情科目など、1コマ2単位の授業を 取ることができるが、実際は日本語科目を受講する者が非常に多い。交換留学生の日本語学習へのニーズ − 128 − は非常に高く、たいていの学生は年間 10 単位以上日本語科目を履修している。語学系の授業は1コマ1単 位のため、10 単位以上とはつまり 10 コマ以上の授業に出ていることを意味する。 交換留学生に加えて、単位取得の必要はないが日本語を学びたいという大学院生、研究生等も増加して いる。こうしたことから本学の教養教育における日本語科目は、多くの留学生が日本語を学ぶ機会として、 その重要性を増しており、今後もこの傾向は強まっていくと思われる。 さらに、全くのゼロ初級からの学習者には、教養教育とは別に国際化推進センターが開講している日本 語クラスがある。本年度は 42 コマ用意し、一部の交換留学生の他、大使館推薦や大学推薦の国費研究留学 生、一般の大学院生、研究生、研究員が受講している。 (2)日本事情科目 日本事情科目は、日本の文化や科学技術等を学ぶことができる数少ない留学生向けの講義である。正規 学部留学生だけでなく交換留学生からの需要も高い。従って受講者数も多く、今後も充実させなければな らない。そのためには、全学部の協力が不可欠である。 今年度は、前年度と同様、日本の科学技術について学ぶ「日本事情 A」 (前期) 「日本事情 B」 (後期) 、 日本の文化と社会について学ぶ「日本事情 C」 (前期) 「日本事情 D」 (後期) 、さらに日本の文化と言葉につ いて学ぶ「日本事情 E」 (後期のみ)を開講した。 「日本事情 A・B」は理系学部教員 6 名、 「日本事情 C・D」 は文系学部教員6名が担当した。 「日本事情 E」は主に交換留学生を対象に、後期のみ英語で開講されてい るもので、国際化推進センター国際語学部門の専任教員1名が担当した。 2.留学生数 熊本大学には、平成 22 年 11 月 1 日現在で 377 名の留学生が在籍している。彼らが日本語クラスの受講 を希望する場合必ず受けるのが、日本語プレイスメントテストである。その受験者数は、前期で約 150 名、 後期で約 200 名だった。この数字が全ての日本語クラスの受講者数と重なる。今年度、教養教育で開講し ている日本語クラス(必修及び選択科目及び日本事情科目で、国際化推進センター開講の日本語科目を除 く)の延べ受講者数は、前期 29 コマで 518 名、後期 30 コマで 651 名だった。なお、授業科目、授業内容、 受講者数等、詳細については、国際化推進センターが発行する紀要に活動報告としてまとめるので、参照 していただきたい。 3.問題点 留学生向けの日本語クラスの多くを教養教育が担っているが、国際化が進み留学生が急増するに従い新 たな問題が発生している。前年度に問題点として取り上げた、必修科目のコマ数と自由選択科目のクラス のレベルと科目名のローマ数字については一応の改善をみた。しかし、前年度に指摘した交換留学生のレ ベルやニーズに合った科目が不足しがちな点は本年度も同様で、修了要件に満たす単位をとるため、レベ ルの合わない日本語科目を受講するケースが発生している。 さらに今年度は、正規学部外国人留学生の教養教育における外国語科目履修パターンの申請方法の問題 を指摘したい。通常の日本人学部入学生は入学手続きの際に外国語科目の履修パターンを申請するが、外 国人留学生だけはそうではなく、入学式後に決めている。このため留学生の履修パターンの申請手続きが 遅れ、他の外国語科目の教務担当教員の方にも二重の手間となる。今後の課題である。 − 129 − 最後に、日本事情科目の登録上の問題がある。日本事情科目は留学生だけが受講できる科目だが、受講 登録システムでは、留学生と日本人学生の区別がないため日本人学生も登録できてしまう。これが原因で 誤って日本事情科目を日本人学生が登録してしまうケースが後を絶たない。彼らはシラバスを見ないで登 録していると思われる。対応を考えたい。 情報教育教科集団報告 情報教育教科集団幹事 永 井 孝 幸 1.2010 年度における教科集団の構成員 総合情報基盤センター 7 名(メイン登録) eラーニング推進機構 2 名(メイン登録) 社会文化科学研究科 1 名(メイン登録) 教育学部 1 名(メイン登録) バイオエレクトリクス研究センター 1 名(メイン登録) 自然科学研究科 3 名(サブ登録) 幹 事 : 永井 孝幸 副幹事 : 武藏 泰雄 2. 開講科目(2010 年度)における基礎情報データ 情報基礎 A 1年次前学期 1,855 名/ 26 クラス 情報基礎 B 1年次後学期 1,871 名/ 26 クラス 担当教官名:入口 紀男、久保田 真一郎、杉谷 賢一、永井 孝幸、中野 裕司、右田 雅裕、 武藏 泰雄(以上7名 総合情報基盤センター) 喜多 敏博、松葉 龍一(以上2名 eラーニング推進機構) 北村 士朗(以上1名 社会文化科学研究科) 平 英雄、野尻 紘聖、福田 真、山ノ口 崇(以上4名 非常勤講師) 情報処理概論 2年次後学期 1,097 名/教育学部、法学部、理学部、工学部2学科 担当教官名:入口 紀男、久保田 真一郎、杉谷 賢一、永井 孝幸、中野 裕司、右田 雅裕、 武藏 泰雄(以上7名 総合情報基盤センター) 3.2010 年度における全学規模の情報科目の実施について 上述の通り情報教育教科集団では、情報基礎 A、情報基礎 B および情報処理概論の各講義を担当している。 2010 年においてもこれらの各講義はすべて、例年通り滞りなく実施された。技術的な内容を取り扱う回で はクラスによって演習の進み具合が異なるが、TA の補助により全クラスとも問題なく演習を終えることが − 130 − できている。 昨年度の学生の声を科目の運営に取り入れ、今年度は WebCT 上の演習資料を PDF ファイルにまとめ資 料の閲覧性を向上させた。情報基礎 A については表計算の演習がやや難易度が高いという声があったこと を受け、今年度の演習では説明文や演習題材の見直しを行っている。その他、ホームページの作成や情報 セキュリティの演習に関して最近のトピックを盛り込むなど、適宜演習資料の改訂を行った。 4.情報教育の今後の課題 新入生のほぼ全員が携帯電話を所持しており、電子メール・Web 等を日常生活で使うスキルは向上して いることが伺える。しかしその一方で、メールの本文に要件をきちんと書けていない、Web ページの内容 を丸写しするだけで内容を咀嚼できていない、表計算の集計結果が間違っていることに気がつかない、な ど、基礎学力の不足もまた同時に感じるのも事実である。ネットワーク社会で生きて行くための情報の収 集・作成・加工・発信の基礎を修得するという、熊本大学の情報基礎教育としての到達点を達成するために、 引き続き教材や授業の実施方法に工夫を行っていく必要がある。 来年度は演習室のパソコン環境が Windows 7 に更新され、また、iPhone を初めとするスマートフォン を所有する学生の割合が増えるなど、情報教育をとりまく環境が大きく変わることが予想される。社会の 新しい流れに対応し、また、学生の声を取り入れながら、教科内容を常に見直す取り組みを今後も続けて いきたい。 − 131 − 大学教育機能開発総合研究センター報告 − 133 − − 134 − 大学教育機能開発総合研究センター報告 1.本年度の主な活動 (1)調査・研究活動 ・ 学士教育科目と連携した導入教育モデルの方策に関する調査研究(本間里見、渡邊あや) ・ 授業方法の改善に関する調査研究(本間里見、渡邊あや) ・ CALL や英語教育に関する調査研究(安浪誠祐、折田充、合田美子) ・ 成績評価や FD に関する調査研究(菅岡強司、折田充) ・ 知識社会に対応した大学教育プログラムの開発に関する調査研究(大森不二雄) ・ 学士課程教育システムの構築のための研究開発(大森不二雄) ・ 大学間の国際連携に関する調査研究(大森不二雄、渡邊あや) ・ 高大連携推進に関する調査研究(菅岡強司、安浪誠祐) (2)各種会議・委員会 ・ 教養教育実施委員会(岡部勉センター長、本間里見、渡邊あや、安浪誠祐、合田美子、菅岡強司、 折田充、大森不二雄) ・ 教養教育実施委員会教務委員会(本間里見、渡邊あや) ・ 教養教育実施委員会企画・運営委員会(菅岡強司、折田充、大森不二雄) ・ 基礎セミナー・学際科目委員会(本間里見、渡邊あや、安浪誠祐、合田美子、菅岡強司、折田充、 大森不二雄) ・ 教務委員会(岡部勉センター長、菅岡強司、折田充、大森不二雄) ・ センター運営委員会(岡部勉センター長、菅岡強司、折田充、大森不二雄) ・ 教育会議(岡部勉センター長、菅岡強司、大森不二雄) ・ 学士課程教育推進委員会(岡部勉センター長、大森不二雄、本間里見、渡邊あや) ・ 60 年史編纂委員会(岡部勉センター長、安浪誠祐) ・ セクシュアル・ハラスメント相談員(安浪誠祐) (3)研究会・セミナーの開催 ① 「教養教育に関するFD研究会 2010」の開催 平成 22 年 9 月 28 日(火) 全体会 13:00 ∼ 14:45 「学士課程教育改革の方向性と今後のスケジュール」 14:45 ∼ 15:20 分科会 15:20 ∼ 16:50 ② 21 世紀型大学教育セミナー・シリーズの開催 第 11 回 平成 22 年 9 月 14 日(火) 16:00 ∼ 17:30 「教育改革と教職員能力開発を推進するためのしくみ作り−愛媛大学の現状と今後−」 愛媛大学 柳澤 康信 学長 第 12 回 平成 22 年 10 月 25 日(月) 16:00 ∼ 17:30 「就業力育成の観点からみた熊本大学の課題」 株式会社 リアセック 松村 直樹 取締役 COO − 135 − ③ 「新任・転任教員等教育研修会」の開催 平成 22 年 5 月 31 日(月) 13:00 ∼ 15:30 ④ 「TA(ティーチング・アシスタント)研修会」の開催 平成 22 年 10 月 19 日(火) 13:00 ∼ 15:30 ⑤ 「eラーニング連続セミナー」の開催 ※総合情報基盤センター、eラーニング推進機構との共催 第 18 回 平成 22 年 7 月 12 日(月) 17:00 ∼ 19:00 『e ラーニングと学習意欲のデザイン』 「e ラーニングと動機づけ:ARCS モデルからのアプローチ」 米・フロリダ州立大学 John M. Keller 名誉教授 第 19 回 平成 22 年 1 月 19 日(水) 17:00 ∼ 19:00 『e ラーニングとオープンテクノロジー』 「オープンラーニングの光と影」 千葉工業大学 仲林 清 教授 「異種ツールのeラーニングシステムへの統合:提言と標準化」 スペイン・ヴィゴ大学 Manuel Caeiro Rodriguez 准教授 ⑥ GP関連イベントの開催 < 2009 年度> 平成 22 年 3 月 24 日(水)13:00 ∼ 17:30 『学習成果に基づく学士課程教育の体系的構築に向けて −学生が身に付ける能力を重視する世界的潮流の中で』 「変わりゆく学士課程教育の文脈:高等教育参加のユニバーサル化を目指す オーストラリアの高等教育セクターの動向と課題」 豪・メルボルン大学 Richard James 教授 「学習成果に基づく学士課程教育:日本にとっての意義と展望」 国立教育政策研究所 深堀 聰子 総括研究官 「英国の高等教育−多様化する需要に適合するカリキュラムへの転換−」 英・オープン・ユニバーシティ ブレンダ・リトル主任アナリスト < 2010 年度> 平成 22 年 12 月 21 日(火)13:00 ∼ 16:00 『学習成果を可視化する「e ポートフォリオ」−使いやすくて実用的なシステムを目指して』 「学士課程の学習成果と e ポートフォリオに期待されるもの」 首都大学東京 大森不二雄 教授 「山形大学における e ポートフォリオの活用」 山形大学 松田 岳士 講師 「熊本大学 e ポートフォリオの概要」 大学院自然科学研究科 宇佐川 毅 教授 − 136 − (4)学外活動 ・ 九州地区一般教育協議会 ・ 全国大学教育研究センター等協議会 ・ 国立大学教養教育実施会議 ・ 六大学教養教育代表者会議 ・ 京都大学大学教育研究フォーラム (5)広報活動 ・ 『大学教育年報』の刊行(3月) ・ 『センターニューズレター』刊行(10 月) 2.センターミーティング センターミーティングを定期的に開催することにより、各部門の取組状況の確認と、諸問題の検討及 びそれらへの対応などを行った。以下は、2010 年度第1回から第9回までの検討項目である。 第1回 日 時: 平成 22 年 4 月 12 日(月) 14:30 ∼ 15:30 場 所: 大学教育機能開発総合研究センター長室 協 議 題: 1)サバティカル制度の取扱いについて 2)平成 22 年度予算について 3)平成 22 年度の FD の活動について 4)『大学教育年報』電子ファイルの公開について 報告事項: 1)センターホームページの英語版について 2)センターニューズレターの刊行について 第2回 日 時: 平成 22 年 5 月 10 日(月) 14:30 ∼ 15:00 場 所: 大学教育機能開発総合研究センター長室 協 議 題: 1)サバティカル研修の実施に関する申し合わせについて 2)全国大学教育研究センター等協議会会員名簿の確認について 報告事項: 1)教養教育実施組織会議及び事務協議会、大学教育学会について 2)センターホームページの英語版について 3)中期目標達成経費要求に対する示達について 4)センター運営委員会の開催について 第3回 日 時: 平成 22 年 6 月 14 日(月) 14:30 ∼ 15:05 場 所: 大学教育機能開発総合研究センター長室 − 137 − 協 議 題: 1)大学教育機能開発総合研究センター予算(案)について 2)平成 22 年度中期目標達成経費執行計画(案)について 3)平成 22 年度全国大学教育研究センター等協議会総会について 4)平成 22 年度大学評価フォーラム「学習成果を軸とした質保証システムの確立: 学習成果の効果的なアセスメント・可視化・発信とは」の開催について 5)熊本大学 60 年史:部局史章立てについて 報告事項: 1)首都大学東京からの割愛依頼について 第4回 日 時: 平成 22 年 7 月 12 日(月) 14:30 ∼ 15:00 場 所: 大学教育機能開発総合研究センター長室 協 議 題: 1)第 11 回 21 世紀型大学教育セミナーについて 2)熊本大学 60 年史・部局史編章立てについて 3)その他 ・ 一般教育研究協議会への参加について ・ 韓国からの訪問について 第5回 日 時: 平成 22 年 9 月 13 日(月) 14:30 ∼ 15:20 場 所: 大学教育機能開発総合研究センター長室 協 議 題: 1)Toko サーバ廃止ついて 2)第 11 回 21 世紀型大学教育セミナーについて 3)第 12 回 21 世紀型大学教育セミナーについて 4)教務課内設置の教員等連絡ボックスの移設について 報告事項: 1)平成 22 年度全国大学教育研究センター等協議会総会について 2)60 年史について 3)熊大概要の英文原稿について 4)事務組織の変更について 5)個人活動評価について 第6回 日 時: 平成 22 年 10 月 18 日(月) 14:30 ∼ 15:20 場 所: 大学教育機能開発総合研究センター長室 協 議 題: 1)平成 22 年度ティーチング・アシスタント研修会について 2)第 12 回 21 世紀型大学教育セミナーについて 3)学長ヒアリングに係る資料の提出について 報告事項: 1)六大学教養教育代表者会議の開催について 2)60 年史について − 138 − 第7回 日 時: 平成 22 年 11 月 15 日(月) 14:30 ∼ 16:00 場 所: 大学教育機能開発総合研究センター長室 協 議 題: 1)FD 開催状況について 2)教養教育の実施組織について 3)教養教育実施準備 WG・基礎セミナー・ベーシック分科会について 報告事項: 1)教養科目等企画委員会の委員推薦について 第8回 日 時: 平成 22 年 12 月 13 日(月) 14:30 ∼ 15:40 場 所: 大学教育機能開発総合研究センター長室 協 議 題: 1)教養教育実施体制(案)について 2)センターゼミナールの開催について 報告事項: 1)平成 23 年度大学入学センター試験における監督者について 2)平成 22 年度第4回教育会議について 第9回 日 時: 平成 23 年 1 月 17 日(月) 14:30 ∼ 15:50 場 所: 大学教育機能開発総合研究センター長室 協 議 題: 1)教養教育実施体制(案)について 2)包括連携協定について 3)センター英文ホームページの修正について 報告事項: 1)平成 22 年度大学教育機能開発総合研究センター予算額及び執行状況 2)表彰・奨励制度(教育活動表彰)の推薦について 3)平成 23 年度熊本大学全学共用スペース利用者の新規・延長募集について 4)平成 23 年度研究支援推進員経費について 5)平成 22 年度第2回教務委員会について 第 10 回 日 時: 平成 23 年 2 月 14 日(月) 14:30 ∼ 16:00 場 所: 大学教育機能開発総合研究センター長室 協 議 題: 1)平成 22 年度大学教育機能開発総合研究センター決算について 2)教養教育機構委員会の任務のすみ分け(案) − 139 − 第 11 回 日 時: 平成 23 年3月7日(月) 14:30 ∼ 15:20 場 所: 大学教育機能開発総合研究センター長室 協 議 題: 1)平成 23 年度計画について 2)平成 23 年度 FD 委員会委員の推薦について 3)平成 23 年度 e ラーニング推進機構運営委員会委員推薦について 報告事項: 1)平成 22 年度第 6 回教育会議について 以上 − 140 − 教養教育実施体制 熊本大学教養教育実施体制機構図 2010 年度教養教育実施会議委員名簿 2010 年度大学教育機能開発総合研究センター教員及び担当業務一覧 2010 年度教科集団構成一覧 熊本大学教養教育実施体制機構図 2011年4月1日現在 − 143 − − 144 − − 145 − 2010年度教養教育実施委員会委員名簿 委員長 岡部勉センター長 区 分 委 員 氏 名 (所 属) (数学・統計学)◇矢嶋 哲(物理学) 中田 晴彦(化 学) 自 井上 尚夫 然 ◆ 高野 博嘉(生物学) 長谷川四郎(地 学) 星野 裕司(環境造形・科学) 系 山口 晃生 (科学技術・情報) 後藤 貴浩(健康・スポーツ科学) 玉巻 伸章(医科学) 列 入江 徹美(薬科学) 教 科 集 団 代 表 人 文 社 会 系 列 大杉 佳弘(哲 学) 山城 千秋(教育学) 渡辺 功(心理学) 原島 良成(法 学) 伊藤 洋典(政治学) 山中 守(経済学) 鈴木 寛之(社会学) 木村 博子(芸 術) 跡上 史郎(文学・言語学) 寶月 拓三(地理学) 伊藤 正彦(歴史学) 共 角田 俊治 (既修外国語) 吉川 榮一(初修外国語) 永井 孝幸(情報教育) 通 深堀建二郎 (独 語) 市川 雅己(仏 語) 吉川 榮一(中国語) 系 梅田 泉 (日本語・日本事情) 列 各学部教務委員長 杉谷 恭一(文学部) 古賀 倫嗣(教育学部) 木村 俊夫(法学部) 石塚 忠男 (医学薬学研究部(薬)) 伊藤 隆明(医学薬学研究部(医) ) 藤本 斉(自然科学研究科(理)) 宇佐美しおり(医学部) 尾原 祐三(自然科学研究科(工)) 基 礎 セ ミ ナ ー ・ 学 際 科 目 委 員 会 ○渡邊 あや 本間 里見 安浪 誠祐 合田 美子 菅岡 強司 折田 充 大森不二雄※ 鈴木 寛之 八ツ塚一郎 濱﨑 録 谷 時雄 宇佐美しおり 池永 信二 小塚 敏之 専門基礎科目Ⅰ委員会 ○成田 宏秋 内藤幸一郎 矢嶋 哲 中田 晴彦 長谷川四郎 武藏 泰雄 ◆は教務委員会委員長 ◇は企画・運営委員会委員長 ⃝は各委員会委員長 2010年度大学教育機能開発総合研究センター教員及び業務一覧 専任/併任 担 当 分 野 カリキュラム開発部門 カリキュラム開発部門(CALL担当) 専任教員 FD・教育評価部門 教育システム開発部門 併任教員 担 当 教 員 准教授 准教授 本間 里見 渡邊 あや 准教授 准教授 教 授 教 授 教 授 文学部 教育学部 法学部 自然科学研究科(理学) 生命科学研究部(保健学) 生命科学研究部(薬学) 自然科学研究科(工学) 安浪 誠祐 合田 美子 菅岡 強司 折田 充 大森不二雄 鈴木 寛之 八ツ塚一郎 濱﨑 録 谷 時雄 宇佐美しおり 池永 信二 小塚 敏之 ※ − 146 − 2010年9月30日まで ※ 2010年度教科集団構成一覧 部局・ センター等 文 学 部 教科集団名 教 法 自 生 生 育 学 然 命 命 学 部 科 科 科 部 学 学 学 研 研 研 究 究 究 科 部 ︵ 部 ︵ 理 ︵ 医 学 学 保 ︶ ︶ 健 学 ︶ 生 薬 自 社 法 総 地 国 命 学 然 会 曹 合 域 際 科 部 科 文 養 情 共 化 学 学 化 成 報 同 推 研 研 科 研 基 研 進 究 究 学 究 盤 究 セ 部 科 科 セ セ ン ︵ 研 究 ン ン タ ︵ 工 科 薬 タ タ ー 学 学 ー ー ︶ ︶ 数学・統計学 3 15 1 9 物理学 2 9 11 57 化学 1 2 生物学 地学 6 3 16 0 3 1 環境造形・科学 2 科学技術・情報 4 3 17 3 健康・スポーツ科学 18 医科学 6 15 0 2 経済学 2 24 12 0 3 67 1 1 4 1 0 1 0 1 e ラ ー ニ ン グ 推 進 機 構 幹 事 ・ 副 幹 事 1 0 5 8 2 1 1 2 1 0 3 4 2 1 5 1 芸術 2 2 1 1 1 01 1 1 1 3 1 14 1 1 1 0 13 2 1 1 矢嶋 哲(自・理) 下條冬樹(自・理) 中田晴彦(自・理) 入江 亮(自・理) 長谷川四郎(自・理) 冨田智彦(自・理) 星野裕司(自・工) 山田文彦(自・工) 山口晃生(自・工) 森園靖浩(自・工) 後藤貴浩(教) 唐杉 敬(教) 入江徹美(生・薬) 甲斐広文 (生・薬) 1 1 城本啓介(自・工) 玉巻伸章(生・医) 1 1 井上尚夫(自・理) 高野博嘉(バイオ) 藤井紀行(自・理) 0 4 4 1 14 2 五 校 記 念 館 1 02 91 374 1 6 5 発 生 医 学 研 究 所 1 1 21 1 9 エ イ ズ 学 研 究 セ ン タ ー 1 4 2 生 命 資 源 研 究 ・ 支 援 セ ン タ ー 11 社会学 歴史学 0 0 1 衝 撃 ・ 極 限 環 境 研 究 セ ン タ ー 1 1 政治学 地理学 1 1 沿 岸 域 環 境 科 学 教 育 研 究 セ ン タ ー 3 18 1 法学 文学・言語学 11 政 策 創 造 研 究 教 育 セ ン タ ー 01 33 4 教育学 心理学 0 大 学 教 育 機 能 開 発 総 合 研 究 セ ン タ ー 1 薬科学 哲学 1 バ イ オ エ レ ク ト リ ク ス 研 究 セ ン タ ー 平成23年1月1日現在 0 1 大杉正弘(文) 杉本裕司(文) 山城千秋(教) 山本信也(教) 渡辺 功(文) 藤田 豊(教) 原島良成(法) 諏佐マリ(法) 伊藤洋典(法) 秋吉貴雄 (社文) 山中 守(教) 吉岡英美(法) 鈴木寛之(文) 八幡彩子(教) 木村博子(文) 平和孝嗣(教) 跡上史郎(教) 森 正人 (社文) 寶月拓三(文) 山本耕三(教) 伊藤正彦(文) 三瓶弘喜(文) 角田俊治(医) 永尾 悟(文) 深堀建二郎(文) 市川雅己(文) 武藏泰雄(総情) 外国語 既修外国語 112 9 11 07 515 1 初修外国語 163 13 22 08 31 情報教育 03 計 1 1 01 01 3 41 7 85 103 32 75 89 41 32 3 124 13 17 7 吉川榮一(社文) 1 0 5 4 2 6 3 5 5 8 3 14 1 専門基礎科目Ⅰ 数学・統計学 物理学 化学 永井孝幸(総情) 2 成田宏秋(自・理) 内藤幸一郎(自・理) 3 2 1 2 15 9 1 9 1 7 1 17 生物学 3 16 0 地学 3 151 情報教育 1 6 成田宏秋(自・理) 内藤幸一郎(自・理) 5 1 0 11 1 1 3 矢嶋 哲(自・理) 1 中田晴彦(自・理) 0 2 01 03 3 4 1 0 5 8 1 1 7 1 右肩の小さな数字は教科集団サブ登録者数(外数) − 147 − 長谷川四郎(自・理) 2 武藏泰雄(総情) 編 集 後 記 大学教育機能開発総合研究センター 合 田 美 子 渡 邊 あ や 2010 年度刊行の『大学教育年報』第 14 号は、これまでの編集方針を基本的に踏襲しつつ、 (1)教 養教育をはじめとする大学教育に関する研究論文・調査報告などを含む【教育研究論文】、(2)教養教 育をはじめとする大学教育に関する実践報告及び教養教育に関する FD 研究会の実施報告等を含む【教 育研究報告】 、(3)教養教育実施機構・教養教育実施委員会報告、 (4)教科集団報告、 (5)大学教育 機能開発総合研究センター活動報告、などを核として、構成されている。 本年度の投稿状況は、以下の通りであった。 (1)教育研究論文については、既修外国語集団の村里・井原・齋藤・折田各氏より、本学の英語教 育において導入している CALL (Computer-Assisted Language Learning) の実践を踏まえた論考を ご寄稿いただいた。本論考は、これまで、継続して取り組まれてきている「ラーナーオートノミー」を テーマとする研究の成果である。継続的に取り組まれてきた本研究から得られる本学の教育へのインプ リケーションは大きい。 (2)教育研究報告としては、今年度、基礎セミナー共通講義「レポート作成の基本」と、「教養教育 に関する FD 研究会 2010」の実施報告が寄せられている。前者は、今年度、試行的に実施された初年 次教育としての文章作成講義の実施概要及びその効果について分析を行ったものである。本報告から得 られた知見が、来年度新設される科目「ベーシック」のみならず、本学の授業等で進められる文章作成 指導において、活かされることを期待したい。一方、後者は、 「少人数ゼミ形式の授業」がテーマとなっ た「教養教育に関する FD 研究会 2010」の模様を再録したものである。教養教育における少人数ゼミ 形式の授業である「基礎セミナー」の二つの授業事例の分析などが行われている。優れた授業実践の発 信と、そのノウハウの共有化は、本学の教育改善にとって、意義深い。今後も、様々な教育実践が報告 されることを期待したい。 また、(3)教養教育実施機構・教養教育実施委員会各委員会から寄せられた4本の報告、(4)各教 科集団から寄せられた29本の報告、さらに、(5)大学教育機能開発総合研究センター活動報告には、 各組織の今年度の活動、さらに、次年度に向けた課題や展望が記されている。来年度より一新されるカ リキュラムの下、優れた実践が積み重ねられることにより、豊かな教育プログラムを創りあげていくこ とを祈念したい。 今号発行までには、数多くの関係者からご支援・ご協力を頂いている。末筆ではあるが、ここに記し て感謝の意を表したい。 平成 23 年 3 月吉日 − 148 −