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2016年7月7日 - AHK Japan
報道関係者各位 2016 年 7 月 7 日 ドイツ 科学・イノベーション フォーラム 東京 在日ドイツ商工会議所 第 8 回ドイツ・イノベーション・アワード 「ゴットフリード・ワグネル賞 2016」 受賞者発表 ~日独科学技術交流の促進に向けて~ ドイツ 科学・イノベーション フォーラム 東京(東京都千代田区)と在日ドイツ商工会議所(代表:マークゥス・シ ュールマン、東京都千代田区)は、7 月 7 日(木)に都内のホテルで第 8 回ドイツ・イノベーション・アワード「ゴッ トフリード・ワグネル賞 2016」授賞式を開催し、受賞研究を下記の通り発表しました。 本賞は、日本を研究開発の拠点として活動しているドイツのグローバル企業 9 社によるプロジェクトで、日本の 若手研究者支援と科学技術振興、そして日独の産学連携ネットワーク構築を目的としています。応募対象は、マ テリアル、ライフサイエンスとヘルスケア、エネルギーとインダストリー、輸送システムと自動車の 4 部門におけ る応用志向型の研究で、応募資格は日本の大学・研究機関に所属する 45 歳以下の若手研究者です。今回の 公募には、全国 31 の大学・研究機関から 62 件の応募がありました。 共催企業の技術専門家による予備審査の後、各分野の科学研究に精通した専門家からなる専門委員による 選考を経て、選考委員長の国立研究開発法人科学技術振興機構顧問の相澤益男氏と 4 名の常任委員から構 成される選考委員会において受賞者を決定しました。 受賞者にはそれぞれ賞金 250 万円のほか、副賞としてドイツで研究滞在するための助成金が授与されました。 「ゴットフリード・ワグネル賞 2016」 受賞者 <マテリアル部門> 張 晗 (ざん はん) 36 歳 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点 先進低次元ナノ材料グループ 主任研究員 「第 5 世代電子顕微鏡電子源」 <ライフサイエンスとヘルスケア部門> 遠藤 求 (えんどう もとむ) 37 歳 京都大学 大学院生命科学研究科 分子代謝制御学 准教授 「植物における組織特異的な環境応答」 <エネルギーとインダストリー部門> 所 裕子 (ところ ひろこ) 39 歳 筑波大学 数理物質系 先端機能性物質研究室 准教授 「双安定性を利用した圧力応答型蓄熱材料の開発」 <輸送システムと自動車部門> 該当者なし (敬称略) お問い合わせ先 ドイツ 科学・イノベーション フォーラム 東京 ドイツ・イノベーション・アワード事務局 〒102-0075東京都千代田区三番町2-4三番町KSビル5F Tel: 03-5276-8820 Fax: 03-5276-8733 E-mail: [email protected] URL: www.german-innovation-award.jp 1 「ゴットフリード・ワグネル賞 2016」受賞研究概要 <マテリアル部門> 張 晗 (ざん はん) 36 歳 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点 先進低次元ナノ材料グループ 主任研究員 「第 5 世代電子顕微鏡電子源」 電子顕微鏡は学術研究や産業界で広く使われる強力で不可欠な観測手段であるが、現状の分解能の限界を超 えるために、より輝度が高く単色性の優れた電子源が求められている。最も高輝度で優れた単色性を示す電界 放出は、室温条件下で達成されることが知られていたが、適切な材料はみつからず、また実現可能な最高の真 空環境下であっても、残留ガス吸着のために安定した電子放出は達成できなかった。 そうした中、物質・材料研究機構主任研究員の張 晗(ザン・ハン)氏は、六ホウ化ランタン(LaB6)の単結晶でで きたナノワイヤーが、安定に動作する電界放出電子源の材料であることを見出した。同氏によると、ランタン原 子で覆われたチップ先端は、化学的に不活性でありながら電子の放出を促進した。また、このナノワイヤー電子 源は、市販の世界最高性能のタングステン(W)(310)単結晶電子源と比較して輝度が 100 倍高く、エネルギー の広がりが 40%小さい電子線を発生した。そこで市販の走査型電子顕微鏡の電子源をこのナノワイヤー電子 源に換えたところ、より低真空条件下で、もとの W 電界放出電子源の 3000 倍のプローブ電流を、100 倍の時 間にわたり安定して供給できることが確かめられた。 張氏は今後、全元素範囲単原子評価 TEM の開発を進めるといい、「今回開発された新しい電子源を装着した 次世代の電子顕微鏡は、分子生物学や触媒化学、持続可能エネルギー・環境材料科学を大きく進展させるだろ う」と述べている。 <ライフサイエンスとヘルスケア部門> 遠藤 求 (えんどう もとむ) 37 歳 京都大学 大学院生命科学研究科 分子代謝制御学 准教授 「植物における組織特異的な環境応答」 生物は、様々な受容体を用いて環境情報を感知し、そのシグナルを統合している。こうした研究を行うためには 組織レベルでの解析が必須であるが、植物ではそうした解析技術が乏しく、これまで光や温度などの環境刺激 がどの組織で受容され、どのようにシグナルを統合することで植物が個体として適切にふるまっているのかは不 明であった。 この問題に取り組むため、京都大学准教授の遠藤 求氏らは、光受容体や概日時計の機能を組織レベルで解 析するための技術開発に取り組み、高い時間・空間分解能で特定の組織を単離する方法、特定の組織におけ る遺伝子発現と遺伝子機能の抑制、特定の組織におけるプロモーター活性の非侵襲的なイメージングなど、高 い汎用性をもった技術を数多く開発し、こうした技術を用いて、光受容体および概日時計には組織特異的な機能 分担が存在することを明らかにした。 これらの結果は、これまでの植物体全体を用いた解析を基に作られてきた光受容体や概日時計のモデルを再 考する必要があることを明確に示すものであった。今後、維管束の概日時計を介した花成制御や表皮の概日時 計を介した温度応答制御など、各組織における概日時計は農業における新たな制御標的となることが期待され ている。 2 <エネルギーとインダストリー部門> 所 裕子 (ところ ひろこ) 39 歳 筑波大学 数理物質系 先端機能性物質研究室 准教授 「双安定性を利用した圧力応答型蓄熱材料の開発」 固体物質における相転移現象は、物理·化学などの学術分野にとどまらず、材料工学などの応用分野において も極めて重要な研究課題である。近年は、温度変化のみならず、圧力印加、光照射、電流印加など多種多様な 外部刺激によって相転移を制御する研究が盛んに行われている。 一方、エネルギーの有効利用という観点から、蓄熱材料が注目を浴びている。しかし、通常の蓄熱材料は蓄熱 したエネルギーを長時間保存できず、時間が経つと蓄熱したエネルギーを自然に外部に放出してしまう。そこ で、蓄熱したエネルギーを長時間保存でき、希望のタイミングで取り出すような材料が作られれば、大幅に用途 が広がり、省エネルギー技術に大きな貢献ができると期待されている。 このような観点から、筑波大学准教授の所 裕子氏らは、特殊な双方向の安定性を有するチタン酸化物・蓄熱材 料を新たに開発した。材料となった物質は、チタン原子と酸素原子のみからできた「ストライプ型-ラムダ-五酸化 三チタン」という物質で、光や熱、電流のエネルギーを相転移によって系中に溜め込み(蓄熱)、圧力などの外部 刺激でエネルギーを放出できるという、新しいコンセプトの蓄熱特性を備えている。 所氏によると、この蓄熱酸化物は、溶鉱炉の廃熱エネルギーなどの再利用に有効な材料になると期待できる。 また、「電流誘起相転移も見出されたことから、先端電子デバイス材料としても有望であると考えられる」と今後 の見通しを語っている。 <輸送システムと自動車部門> 該当者なし 第 8 回ドイツ・イノベーション・アワード「ゴットフリード・ワグネル賞 2016」概要 本賞は、ドイツ 科学・イノベーション フォーラム 東京と在日ドイツ商工会議所、ならびに日本を研究開発の拠点として活動してい るドイツ企業 9 社の共同プロジェクトとして、日本の若手研究者支援と日独の科学技術交流および国際的産学連携ネットワークの 構築を目指して運営されています。受賞者には賞金のほか、副賞としてドイツでの研究滞在のための助成金が授与されます。日 本に縁の深いドイツ人科学者ゴットフリード・ワグネル(1831-1892)にちなんで名付けられました。 応募資格: 日本の大学・研究機関に所属する 45 歳以下の若手研究者(応募締切日時点) 応募対象: 下記の 4 分野のいずれかの分野における応用志向型の研究で、現在進行中の研究、または過去 2 年以内に完了し た研究成果。 1. マテリアル 2. ライフサイエンスとヘルスケア 3. エネルギーとインダストリー 4. 輸送システムと自動車 賞 金: 250 万円 (原則として授賞は各分野 1 件、計 4 件) 副 賞: 希望するドイツの大学・研究機関に最長 2 カ月間研究滞在するための助成金 審査方法: 本賞の共催企業の技術専門家による予備審査の後、常任委員と専門委員から構成される選考委員会において、受 賞者を決定します。 選考委員会 委員長 相澤 益男 国立研究開発法人 科学技術振興機構 顧問、東京工業大学 名誉教授・元学長 常任委員 岸 輝雄 外務省 参与 外務大臣科学技術顧問、東京大学 名誉教授 五神 真 東京大学 総長 藤嶋 昭 東京理科大学 学長 山極 壽一 京都大学 総長 (50音順) 主 催: ドイツ 科学・イノベーション フォーラム 東京、在日ドイツ商工会議所 共 催: BASFジャパン株式会社、バイエル ホールディング株式会社、ボッシュ株式会社、コンチネンタル・ジャパン、ダイムラ ー、エボニック ジャパン株式会社、メルク株式会社、シェフラージャパン株式会社、シーメンスグループ (アルファベ ット順) 特別協力: ドイツ学術交流会、ドイツ研究振興協会 協 力: フラウンホーファー研究機構 後 援: ドイツ外務省、ドイツ連邦教育研究省、国立研究開発法人 科学技術振興機構、独立行政法人 日本学術振興会 3