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最終報告書 - 数学教室のWWW(NT)

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最終報告書 - 数学教室のWWW(NT)
教育支援コンテンツ
教科書プラス No.4
中学校全学年・数学
新興出版社啓林館(新訂数学1∼3年)
作図ツールコンソーシアム
−文部科学省委嘱
学習資源デジタル化・ネットワーク化推進事業−
1
1
コンソーシアムの概要
1.1 構成員
1.1.1 構成員の概要
全体 (コンテンツ開発・事務処理) の企画・統括担当
学識経験者
1名
13名
(技術的観点からの支援7名,
数学教育的な観点からの支援6名)
学習資源(準拠する教科書)提供者
2名
教育センター・教育委員会等
5名
教員(中学校)
51名
合計
72名
1.1.2 構成員名簿
飯島康之
愛知教育大学教育学部助教授(情報処理センター兼任教官)
田平
誠
愛知教育大学教育学部教授
(情報処理センター長,2001年度のみ参加)
多鹿秀継
愛知教育大学教育学部教授
(前情報処理センター長,2000年度のみ参加)
恒次欽也
愛知教育大学教育学部教授
(情報処理センター兼任教官)
竹田尚彦
愛知教育大学教育学部助教授(情報処理センター兼任教官)
高橋真聡
愛知教育大学教育学部助教授(情報処理センター兼任教官)
鎌田敏之
愛知教育大学教育学部助教授(情報処理センター専任教官,2000年度のみ参加,
2001年度在外研修のため不参加)
高橋岳之
愛知教育大学教育学部助教授(情報処理センター専任教官,2001年度のみ参加,
2001年度より現職赴任)
志水
廣
佐々木徹郎
愛知教育大学教育学部教授
愛知教育大学教育学部助教授 (2000年度のみ参加,2001年度在外研修のため不
参加)
山田篤史
愛知教育大学教育学部助手
江島徹郎
愛知教育大学教育学部助手(2001年度のみ参加, 2001年度より現職赴任)
清水克彦
国立教育政策研究所教育指導研究部教材研究室長
礒田正美
筑波大学教育学系助教授
増田宇和
新興出版社啓林館取締役
高橋
誠
新興出版社啓林館
四方
元
愛知県総合教育センター教科研究室長
石川
学
愛知県小牧市教育委員会指導主事
下田照雄
神奈川県川崎市立総合教育センター
根布屋由規
新潟県立教育センター
足立賢治
島根県教育庁出雲教育事務所指導主事
河合
勉
愛知教育大学附属名古屋中学校教諭
土方宗広
愛知教育大学附属名古屋中学校教諭
大津正仁
愛知教育大学附属名古屋中学校教諭
2
北原和典
愛知教育大学附属名古屋中学校教諭
平井克明
愛知教育大学附属岡崎中学校教諭
久野哲司
愛知教育大学附属岡崎中学校教諭
鈴木勝久
愛知教育大学附属岡崎中学校教諭
永井
聡
愛知県名古屋市立矢田中学校教諭
中谷秀将
愛知県名古屋市立当知中学校教諭
乙部昌克
愛知県名古屋市御田中学校教諭
鈴木登美雄
愛知県名古屋市立穂波小学校教諭
中谷真人
愛知県碧南市立碧南中央中学校教諭
玉置
崇
愛知県小牧市立小牧中学校教頭
牧野憲光
愛知県一宮市立葉栗中学校教諭
長谷川濃里
愛知県一宮市立中部中学校教諭
酒井直樹
愛知県一宮市立丹陽南小学校教諭
神谷和宏
愛知県西尾市立平坂中学校教諭
堀部正嗣
愛知県豊田市立九久平小学校教諭
三浦祥志
愛知県知立市立竜北中学校教諭
伊藤孝行
愛知県知立市立知立中学校教諭
浦田靖博
愛知県知立市立知立中学校教諭
小田直幸
愛知県蒲郡市立大塚小学校教諭
稲垣悦男
愛知県岡崎市立北中学校教諭
坂井慎一
愛知県西加茂郡三好町立三好中学校教諭
八槇直幸
愛知県瀬戸市立水野中学校教諭
松下恵治
愛知県知多郡武豊町立武豊中学校教諭
後藤
愛知県海部郡七宝町立七宝中学校教諭
篤
肥田浩嗣
愛知県半田市立半田中学校教諭
小浦正寛
愛知県知多郡武豊町立武豊中学校教諭
馬場英顕
神奈川県川崎市立南菅中学校校長
地曳善敬
神奈川県川崎市立橘中学校教諭
山下忠徳
神奈川県川崎市立御幸中学校教諭
中町喜友
神奈川県川崎市立川崎中学校教諭
山本正昭
神奈川県川崎市立南生田中学校教諭
福地
神奈川県川崎市立南生田中学校教諭
誠
北谷正一
神奈川県川崎市立白山中学校教諭
上平史子
神奈川県川崎市立東高津中学校教諭
荒井久雄
神奈川県川崎市立西高津中学校教諭
山下国広
神奈川県川崎市立桜本中学校教諭
梅津由一
北海道札幌市立厚別南中学校教諭
河島雅生
北海道札幌市立真栄中学校教諭
上原永護
群馬県小野上村小野上小学校教諭
松島繁夫
栃木県佐野市立城東中学校教諭
3
武藤寿彰
静岡市立南中学校教諭
山下英樹
三重県四日市市立大池中学校
吉田信也
奈良女子大学文学部附属中等学校教諭
本上亮典
兵庫県美方郡村岡町立村岡中学校教諭
川上公一
岡山県倉敷市立南中学校教諭
谷浦康志
鳥取県八頭郡郡家町立中央中学校
岡本勇人
鳥取県東伯郡赤碕町立赤碕中学校
今口秀明
島根県邇摩郡仁摩町立仁摩中学校教諭
(勤務先は2002年2月現在のもの)
2
コンテンツの内容
2.1 扱った教科書の内容
・校種
中学校
・学年
1∼3学年
・教科
数学
・単元
図形が関わるすべての単元(以下に列挙)
1年
正負の数
1年
図形の基礎
1年
点の集合と作図
1年
1年生の復習
2年
式の計算
2年
一次関数
2年
図形の調べ方
2年
三角形
2年
平行四辺形
2年
図形と相似
3年
平方根
3年
二次方程式
3年
関数
3年
円
3年
円周角
3年
三平方の定理
2.2 学習資源提供方法
教科書のそれぞれの図に対応するコンテンツを独自に開発
2.3 提供方式
CD-ROM による配布およびインターネットによる配信
(http://www.auemath.aichi-edu.ac.jp/dgs/)
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2.4 総枚数
・動画
計
第一クールにおける動画(mpeg)
20枚
第三クールにおける動画(ScreenCAM)
52枚
・静止画
72枚
計1069枚
教科書の図(引用)
277枚
変形可能な図形データに対応する静止画(第一クール) 624枚
第一クールにおける動画に対応する静止画
168枚
・変形可能な図形アプレット
計1103個
第二クール,第三クールへと継承・発展したもの
1103個
・変形可能な図形データ
計1902個
第一クールから第三クールまで継承・発展したもの
1103個
第一クールで利用した他の作図ツール用図形データ
799個
・html文書(メインコンテンツおよびサブコンテンツ等)
計1570個
2.5 使用環境
本コンソーシアムに参加した教員数は多く,それぞれの学校によって使用環境はかなり違った。
標準的な利用環境を想定し, コンテンツ開発を行いつつも, それぞれの学校での使用環境に則した
改良等を行った。
2.5.1 最も標準的な利用環境
・教員が操作するノートパソコン1台
・プロジェクタ(800∼1500ルーメン程度)
・黒板 (スクリーンとしても使う)
本コンソーシアムで最も重視したのは, 黒板の便利さを損なわないことである。数学では図を観
察し「分かった」でおしまいにはならない。それについて気づいたことを深めて問題を作ったり,
証明を考えたりする。図の中に記号や文章を書き込みたい。それが便利だからこそ, 数学の教員は
黒板を使い続ける。「数学ではチョークと黒板しか使わない」とローテクぶりを皮肉る声もよく聞
こえるが, 数学の授業としての黒板の利点は多い。いくらスクリーンに美しく投影しても, それが
黒板の便利さを失うものであれば, やはり多くの教員には使われないのだ。
当初は, ホワイトボードに投影し, 書き込むことを標準としていたが, あるメンバー(一宮市立
葉栗中学校牧野憲光教諭)が試しに黒板で行ったところ, 「これでも大丈夫」ということから, 黒
板をスクリーンとして使うことが標準として定着した。プロジェクタにある程度の光度が必要とな
るが, そこそこの明るさのものであっても, 下の写真の研究授業では, 教室の前の部分の暗幕をし
め, かなりはっきりと見える状態になっている。
5
生徒側からの様子
教員と機器の配置
暗幕の様子
(暗幕は使わないことも
ある)
黒板に投影したコンテンツに, 文字や記号を
書き込み,右側に証明を書いた様子
こういう使い方が本コンソーシアムでの
標準的な使い方である。
2.5.2 コンピュータ室で個別の操作活動をする場合の環境
・教員が操作するパソコン1台
・プロジェクタ(800∼1500ルーメン程度)
・ホワイトボードあるいはスクリーン
・生徒用コンピュータ(20台あるいは40台)
本コンソーシアムのメンバーの学校では, プロジェクタを使おうと思うとコンピュータ室に制限
されるケースもかなりあった。既存のコンピュータ室を使うと, 生徒一人一台あるいは二人に一台
のコンピュータが使える。せっかくコンピュータ室を使うなら, 生徒がコンテンツを使って調べる
作業を行うことを組み込んだ授業を実施された方も多かった。しかし, この場合もプロジェクタで
の投影や, そこへの書き込み等はやはり不可欠である。プレゼンテーション的な使い方ならば標準
的な使用環境で行えるが, 一歩進めて生徒一人ひとりによる操作活動による探究を実現したいとき
にはコンピュータ室ということが多かった。
各自のコンピュータで
調べる作業をする
発表や議論はプロジェクタ
6
標準的な使用整備の場合と同様に,
「書き込み」は不可欠。
2.5.3 生徒用に古いコンピュータならば使える場合の環境
・教員が操作するパソコン1台
・プロジェクタ(800∼1500ルーメン程度)
・黒板 (スクリーンとしても使う)
・生徒用コンピュータ(数台)
調べ学習はしたいが, コンピュータ室がかち合ってしまうので使えないという指摘は多くの先生
方からあった。特に大規模学校では顕著である。いくつかの学校では古いコンピュータならば数台
使えるケースがあり, それを使った探究的な授業も実施された。本コンテンツの主役のGC/Javaは,
最新のコンピュータではきびきびとした動作をするが, クロック数が 200MHz以下程度では動作が
緩慢になる。Windowsは動くが動作は遅いという場合には, GC/Javaではなく, GC/Winとの連携で利
用した。また, Windowsは動かないいわゆるDOSマシンしか使えないケースもある。GCはDOS版もあ
り, データは Java, Win, DOSにおいて共通である。DOSで使う場合には, 事前にコンテンツ内部の
データをフロッピィ等にコピーしておき, 調べる作業をするときだけ生徒用コンピュータを使い,
その他は教員用のコンピュータを投影した画面を観察するという方法を取った。
普通教室で白いカーテン
を引く程度。
GC/DOSを使って調べる
様子
生徒のパソコンの画面をビデオカメラで撮影し
それをプロジェクタで黒板に投影している。
その画面の上にチョークで「書き込み」をしている
プロジェクタを使うときには, 調べ作業を停止
するよう, パソコンの画面を画用紙でふさぎ,
討議に集中するような工夫をしている。
7
2.5.4 コンピュータの性能と使用ソフトの対応表
GC/Java
特徴
備考
GC/Win
GC/DOS
CDあるいはインターネット
インストールやアプ
フロッピィにそれぞれ
経由で, 何の準備もなく使
リケーションの関連
実行 ファイルをおき,
える。
づけなどを事前に行
そこから起動する必要
macintosh でも使える。
う必要がある。
がある。
Internet Explorer5以上
Windows95以降のOSが
NEC,FM,DOS/V系なら
Netscape Navigator 6.2
入っているPC。
なんでもよい。
以上
Pentium 以上のCPUで
のいずれかが組み込まれ
ないと動作は緩慢に
ていること。
なる。
Pentium II 以上のCPUでな
いと動作は緩慢になる。
macintoshの場合には, mac
OS 10 以上
3
開発の実施経過
3.1 第1クール意見聴取結果
3.1.1 教員からの意見聴取に基づくコンテンツ開発の方針
(1) 初めての先生でも「使ってみる気になる」ようにすると同時に, 慣れている先生が独自の使い
方を工夫することもできるようにする
本コンソーシアム独自の特徴であろうが, 本コンテンツの特色である「図形を動かして調べる」
(作図ツールの利用)ことに関して,これまでも多くの教育経験を有しているベテランユーザーと,
あまり使ったことのない初心者ユーザーがメンバーの中に混在している。また, まったく使ったこ
とのない先生方でも使えるようなものを開発することを想定している。矛盾するようだが, この二
つのユーザーの「両方が満足できるもの」を開発しなければならない。初心者では使えないような
ものでは, もちろん意味がない。しかし,ベテランユーザーにとっても, 知的刺激を感じ,またさ
らに様々な教育実践の可能性を探究可能であるようなものでなければ, 彼らはコンテンツの浅薄さ
と限界を感じ,使わなくなるし, 議論にも本気で参加してくれなくなる懸念がある。
(2) 教科書の中にある図形に関するすべての問題について一通りコンテンツを開発する
「使いたいと思ったら使える」環境を整備すると共に,「どのような可能性があるのか」を幅広
く議論できるようにするために, 教科書の中にある図形に関するすべての問題について一通りコン
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テンツを開発することにした。
(3) 数分の提示で「なるほど」と分かりやすくなるような事例(教科書の中で扱っていないやり方
でもいい)を蓄積する。
たとえば, 多角形の外角の和が360°であることについて, 教科書では角の移動による証明など
を扱っているが, 作図ツールでは「縮小」あるいは,「遠くから見て極限を考える」ことを提示す
ることによって,「なるほど,そういうことか」と思えるような提示の仕方をすることができる。こ
れは教科書での意図とは異なるものだが, そのようなものを用意できる部分に関しては,豊富に用
意する。
(4) 教員としてのユーザーが, 教員としての成長をしていけるようなコンテンツを作る
多くの教員は, 教科書の意図の枠の中でしか考えないことが多い。教科書は紙と鉛筆で完結でき
るような構成になっているため, 図形を動かすことを必要としないことが多い。逆に言えば,コン
テンツ利用の可能性を実感してもらうためには, 教員自身が「こういう見方をすると, こんなこと
もできるのか」と学習し,授業の可能性を考えるような機会を提供するものでなければならない。
(5) 「使いたい」と思ったら誰でも使えるような技術的な工夫をする
コンテンツを使うために「事前にコンピュータに対して設定等をしなけれぱならない」要因を極
力排除しなければならない。たとえば,
・あるホームページに接続するだけで使える
・CDをコンピュータに挿入するだけで使える
ようにすることが不可欠である。これを実現するために, 図形をJavaアプレットで表示できるよう
にすることを目標としたい。しかし, 第一クールでは時間的にそれは不可能なため, 既存の技術,
つまり既存のWindowsソフトである GC/Win を使いやすく改良し, それを使って表示する形でコン
テンツを開発する。
(6) 初心者が戸惑うと思われる内容に関して動画を使う
第一クールで GC/Win を使うためには, ソフトのインストール, データとアプリケーションの関
連づけ等の作業が不可欠である。これらの内容や, 基本的な使い方に関しては既存のマニュアルを
使うだけでなく, 動画による解説を行うようにする。
(7) 作図ツール GC/Win の改良
第一クールで図形を操作するために使う作図ツール GC/Win に関して,教員から指摘された次の
諸点を改良する。
a.マウスでドラッグできるようにする。
b.幾何的対象の属性の変更を, 対象に対する右クリック等から行えるようにする。
c.長さの測定機能において, マイナスの距離というものも扱えるようにする。
d.点の名前や角度等の値の表示方法について検討する。
e. オンラインでのデータ保存の方法を検討する
3.1.2 教員からの要望
(1) 「すべての教員が使う」のは現実的には非常に難しい
意見聴取として, 「すべての教員が使える」ようにするにはどうしたらいいかを行おうとしたの
だが, 「すべての教員が使う」というのは, 現実には非常に難しいということを多くの教員がいろ
いろな観点から指摘した。現場での主導的な教員として, 多くの同僚を支援しつつも, なかなか思
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うようにいかない現実があることを痛感させられた点である。
たとえば, コンピュータに対して否定的な見方をする教員が多いことが挙げられた。「なくても
授業ができるなら,必要ないじゃないか」で議論はおしまいだと言う。使う必要性があるなら, 教
科書に「ここはコンピュータを使おう」等のマークを随所に入れるというような工夫が不可欠など
の指摘もあった。
(2) 一通りコンテンツを作る
「すべての教員が使わなければならない」というスタンスであれば, 上記のように, 教科書その
ものを見直すなどの工夫が不可欠だが, 「使いたかったら使ってもいいよ」というスタンスならば
かなり違うのではないか。同時に, 「使おうという気になったら,使うための準備ができている」
ようなものでなければならない。
たとえば, 「一通りコンテンツを作る」ことはその一つ。特別な問題にだけあるのでは, 特別な
問題のときだけ使えばよくて, その他の普通の問題にはコンピュータは不要ということになりかね
ない。
(3) 「使ってみたい」と思うようなコンテンツを作る
すべてのコンテンツをそうするのは難しいかもしれないが, やはり, パッと見て驚くようなコン
テンツを作っておいて, 導入等で生徒の気を引けるようにするということは大切ではないか。
(4) 簡単に起動できるための工夫
「コンピュータを起動させてから, こういう準備をして...」等の「準備」が多くなるだけで,
使わなくなってしまう。コンピュータに電源を入れるだけ程度で使えるようなものでなければいけ
ない。
(5) 普通教室でも気軽に使えるようにするためのノウハウの確立
また, コンピュータ室に移動とか, 教室にいろいろな機器を持ち込んで設定するというようなこ
とも, 作業量が増えるのに応じて, それをする人は少なくなる。できるだけ簡単に使うためのノウ
ハウを確立することも不可欠だ。
(6) マニュアルなしでも使えること
マニュアルを読まなければ使えないということでは, 使う人は増えない。
(7) それぞれの教員が,自分の授業のやり方に合わせられることが必要
ボタンを押せばビデオ的なものが表示されるという簡単な使い方ならば, 確かに使う人の数は増
えるだろう。しかし, 問題がないわけではない。特にベテランの先生になればなるほど, 自分なり
の授業のやり方というのを持っている。ビデオ的なものであれば, いつでも同じ動きしかしないわ
けだから, 自分の授業のやり方にあっていればいいが,そうでないと自分の授業にはあわないから
ということで使われないことになる。
(8)オープンな発問で使いたい
「四角形の各辺の中点を結ぶとどんなことがいえますか」というような問題では, 生徒は多様な
試行錯誤を繰り返しながら, 問題解決を行い, 理解を審査させていく。このようなオープンな問題
に対応できるコンテンツでありたい。
(9)「いつも成り立つ」ことや証明の必要性を感じることに使いたい
例えば,三角形の内角の和は180°というような命題は, 特定の三角形だけでなりたつのではな
く,すべての三角形についていえることなんだということを理解できるようにするとか, 証明の必
要性を感じるとかいうことに扱いたい。
10
(10) 証明なしでも「なるほど」と思える事例の蓄積
多角形の外角の和が360°になるという命題は, 証明を書いて示しても, 生徒はすぐには納得し
ない。画面上で縮小しながら観察すると, 直観的に「なるほど」と理解できる。このような事例を
蓄積していことが大切である。
(11)使う時間は5分程度という事例の蓄積
この図ではどんなときに等しくなるか。そういう小さいネタの使い方が重要である。それを使っ
て1時間授業するのではなく, 例えばそれを5分間ちょっと、全員が操作できなかったら代表が操
作するような教材を蓄積すべきである。
(12)作図ツール GC/Win に関する改良すべき点
a.マウスでドラッグできるようにする。
b.幾何的対象の属性の変更を, 対象に対する右クリック等から行えるようにする。
c.長さの測定機能において, マイナスの距離というものも扱えるようにする。
d.点の名前や角度等の値の表示方法について検討する。
e. オンラインでのデータ保存の方法を検討する
3.1.3 コンテンツの位置づけ(教科書との教材との関係など)
(1) コンテンツの趣旨
教科書の図は静的である。動かない。その図を動かすとどのような利点があるかが分かるような
コンテンツを作る。教科書の意図として, 本当は図形を動かして調べたいのだが, それができない
から意図が伝えにくいという教材に対しては,その意図を簡単に実現するようなコンテンツという
ことになる。また, 教科書の意図として, 静的に分析することを意図しているものもある。そうい
う場合には, 動的な観点からの問題の提示を行ったり,解説を行うためのコンテンツというものも
あるし, 教科書とは全く違った観点からのコンテンツというものもある。
(2) 教員からの要望
次のようなものが要望として挙げられた。
・教科書の問題をよりオープンな発問で問うためのコンテンツ
・分かりにくいものを視覚的にパッと分かりやすく解説するためのコンテンツ
・教科書にある特別な図だけで成り立つのではなく, どんなときも成り立つことを実感するための
コンテンツ
など。その他,どういう可能性があるのかを示してほしいという意見も挙げられた。
(3) コンテンツの位置づけ
・教員がプロジェクタで提示し, 問題場面を提示したり, 解説するためのコンテンツ
・導入で提示したり, 解説で提示するためのコンテンツが中心
・ボタンを押せば自動的にコンテンツがストーリーを持って展開するのではなく, 教員が操作しな
がらストーリーを構成するような使い方, つまり教員が授業のための小道具として使うようなコン
テンツ
・その中に必要に応じて記号を書き込んだり,補助線等を追加したり, 生徒の気づきや証明を書き
込んだりしながら使うようなコンテンツ
・役割としては, 「便利な小黒板」のようなもの
・また,学校によってはコンピュータ室で一人あるいは二人に一台で, 探究的に使うことも考えら
11
れるので, そういうときに生徒が使うためのコンテンツも一部含むようにする。
3.2 第1クールコンテンツ評価結果
3.2.1 教員による評価に基づくコンテンツ開発手法の改善方針
(1) GC/Winを使うのではなく, Javaアプレットで使えるようにしたい
インストールやアプリケーションの関連づけ等が必要というのは, 「すべての教員が使う」こと
を想定する上では大きな障害になる。また, メンバーの学校でも, 機器更新が行われる学校がいく
つもあったが, 最近のコンピュータでは, セキュリティの問題などから, 教員が勝手にソフトをイ
ンストールできないケースも増えてきた。インストールが必要ということになると, それらの機器
を導入する時に,納入ソフト一覧の中に入っていないと使えないことがあることも指摘された。
(2) コンテンツを簡潔にする必要がある
一つの問題に対して一つのコンテンツ(html)を基本にして第一クールのコンテンツは作られてい
る。しかし, 中にはそれがかなり長くなってしまっているものもある。右側のスライドバーを上下
しながら使うというのは使いにくい。また, コンテンツの中にいくつもの図があると, 一体どの図
を使うのかが分かりにくいこともある。一つのコンテンツは一つの画面の中に納まる程度にする必
要がある。また,言葉による説明が多過ぎることがある。言葉が多過ぎると読まなければならない
し, 使いにくさにつながる。割愛できる言葉は割愛し, 必要に応じて教員が補足する方がいい。
3.2.2 コンテンツ手法に対する評価(授業での感想・要望・生徒の反応等)
(1) 図形が動くことへの驚き
作図ツールというソフトそのものは開発されてから10年以上になるが, 生徒たちにとって, 数学
の授業の中で扱う図形が動くということに対しては新鮮な驚きを持っている。本コンテンツは教科
書の図形が関わる問題すべてについて開発されているが, すべての図形を動かす必要はないだろう
。しかし, 適切な問題に関しては図形を動かして解説したり, 問題提示をしたり, また必要に応じ
て生徒が実際に調べることなどはとても有効と思える。
(2) インストールのための手続き等が動画で与えられたのは分かりやすかった。
今まで, インストールの時点で挫折することもあったが, 具体的にどういう操作をしたらいいの
かが, 動画で与えられているのはよかった。ただし, インストール等をしなくてすむのが最適であ
る。
(3) 画面に示される情報はシンプルなほどいい。
授業で使うべきコンテンツは読み物でなく見せるものである。したがって, 文章が多過ぎるのは
よくない。シンプルな構成であるべきだ。問題文と図だけくらいに絞った方がいい。ただ, それを
どう使うかを分かりやすくするためには解説文も必要で, そのあたりを工夫してほしい。
(4) 目次に図形のサムネイル表示をした方がよい。
目次を見た段階で, その先にどのようなものがあるのかが視覚的に分かる方がよい。図形のサム
ネイル表示をすべきだ。
3.2.3 第一クールでの評価に基づいて第二クールの向けて修正・改良した点
(1) GC/WinからGC/Javaへの移行
12
第二クールからは, GCデータをGC/Javaによって図形アプレットとして表示するように切り換え
る。これによって, ソフトのインストールやアプリケーションの関連づけという作業は不要になる
。
(2) DHTMLによる動的なページも作る
第二クールは, いわゆる図形単元がない。本コンソーシアムでは図形が中心だから,図形単元に
限定するならば, 作るべきコンテンツがないことになってしまう。そこで, 文字や関数に関しても
,図形が関わるようなものはすべて扱うようにした。作図ツールをそのような観点で使うコンテン
ツを開発した。同時に, 作図ツールを使わないコンテンツも開発した。これもそのページを開いた
らすぐに使えることが前提だ。それを実現するために, DHTML(Dynamic HTML)によるコンテンツ作
りを行う。
(3) ホームページを開くか, CDをコンピュータに挿入するだけで使えるコンテンツ
上記の(1),(2)の工夫によって, 当該ホームページを開くか, CDをコンピュータに挿入するだけ
で, 特別な設定をすることなく誰でも使えるコンテンツを実現する。
(4) コンテンツをメインコンテンツとサブコンテンツに分割し, それぞれを簡潔にする
一つの問題に対して一つのコンテンツ(html)という原則をやめる。まず一つの問題に対して一つ
のメインコンテンツと, いくつかのサブコンテンツという構成にする。メインコンテンツでは, そ
の問題に対して, 教科書からの引用, 最も標準的な図形コンテンツ, それに対する問いと, サブコ
ンテンツへのリンクを有する。サブコンテンツでは, その問題についてある観点から作ったコンテ
ンツを, 問いと一つの図形コンテンツとして構成する。どれも原則としてコンピュータの画面にお
さまる程度の簡潔なものとする。
そして, それらを図形のサムネイル表示を使って一覧できるよう, 単元別の目次を工夫する。
3.3 第2クールコンテンツ評価結果
3.3.1 第2クールにおけるコンテンツ開発手法への評価
(1) そのまま使えるのはよい
インストールの作業等が不要となり, CDを挿入したらそのまま使えるようになった。あるいは,
Webサーバにアクセスするだけで使えるようになった。事前の設定が必要なくブラウザのみですべ
てを行えるようになったので, 「これでやっと使う気になった」という指摘もあったほどであった
。
(2) GC/Javaの動作もそれほど問題なかった
Javaにすると動作が遅くなるのではないかと懸念する教員もいたが, 多くの学校ではそれほど問
題ないとの評価を得た。
(3) GC/Javaで動かすだけでなく, 作図機能も盛り込んだ方がいい。
現段階のGC/Javaは図形を動かすことができるだけである。現在世界各地で使われている作図ツ
ール関連の図形アプレットでは動かすことだけに制限しているものがほとんどなので, これで満足
してもいいが, すでにGC/Winを使った授業を経験し, GC/Winの代替としてGC/Javaを考えるとする
と, GC/WinでできることはできるだけGC/Javaでできる方がいい。せめて補助線をその場で追加す
る程度のことはできないと困るという指摘があった。
(4) 画面構成がシンプルなのはよい。
13
第一クールのように, スライドバーをかなり上下しなければならないのは, どこに何があったら
分からなくなるので, できるだけ一つの画面内に納まるようになったのは, よかった。
(5) 図形のサムネイル表示で分かりやすくなった。
単元ごとの目次でそれぞれのコンテンツで使っている図形アプレットを示すサムネイル表示がさ
れるようになり,分かりやすくなった。
(6) DHTMLによるものもなかなかおもしろい
本コンソーシアムでは作図ツール関連に限定されるかと思っていたが, 追加されたもの(DHTML)
も面白かった。制動距離のコンテンツなどは, 昔BASICで自作したものと共通する部分があったが,
プログラムそのものはかなりシンプルにしておき, 発問等を工夫するという路線で, 結構楽しめる
。過去のBASICでの資産をこういう形で再利用できる可能性があることが分かった。
(7) コンテンツ数が多過ぎるので使いにくい面がある
すべての問題について開発することによって, 可能性と限界が明らかになったので, 資料として
の価値はでてきたが, すべての教員に使ってもらうべきものと考えた場合,コンテンツ数が多過ぎ
るように感じられるようになった。また, それぞれにおいて,意図が異なることがあるので, どう
いう意図を持ったコンテンツなのかを分かりやすくしてほしい。
3.3.2 評価に基づく改良方針
(1) GC/JavaをGC/Winとほぼ同じ程度の機能までをもたせるようにする。
技術的な問題で不可能なものは別として, 可能な限り,GC/Winにある機能をGC/Javaでも搭載で
きるようにする。
(2) 意図を伝えやすくするための工夫を考える。特にそのために動画を使う。
教科書のすべての図形の問題に関してコンテンツを作ると, 玉石混淆になってしまうのは確かに
問題である。しかし, それが本コンソーシアムでのコンテンツ開発の一つの方針であるし, 「一通
り揃っている」ことによって, コンピュータを使うべき事例・使うべきでない事例を教員が実際に
体験し, 理解することができる資料として使えるという側面はかなりある。
その代わり,コンテンツの意図を伝えやすくするための工夫として, 必要に応じて「参考」を追
加したり, それを使ってどういう動きや発問をしたいかを示す動画を用意する。
3.4 第3クールコンテンツ評価結果
3.4.1 コンテンツ手法に対する評価
(1) GC/Javaの機能
GC/Javaの機能はほとんどGC/Winと同じ程度にまで完成度が高まった。もうGC/Winを使う必要はな
い程度だ。教員がデータを作成する必要があるときにはGC/Winを使い,生徒が授業で使うときには
GC/Javaが標準という路線で十分いけるのではないか。
(2) 「参考」や「動画」はよかった
使い方を分かりやすくするための「参考」や「動画(ScreenCAM)の利用」は意図がわかりやすすく
なった。特に,第一クールでのmpegファイルではデータ量が大きいため, CD等にあまり数多く収録
できなかったが, ScreenCAMのデータ量は少ないのでよくなった。
14
3.4.2 授業で使用した時の感想,要望,生徒の反応など
(1) GC/Javaでの保存機能がほしい
現状のGC/Javaでは生徒が図形を作成したときの保存ができない。そこまで完成すると, ソフト
のASP(Application Service Provider)化になり, 開発としては次の段階になると思われるが, せ
っかくだから, そこまで到達してほしい。
(2) 「特選事例集」がほしい
使い方(授業での目標等)はすでに第一クールでほぼ確立されてきたので, あまり変わりはない。
作図ツールで何ができるのか, 何はできないのかという資料という意味では「一通りすべてのもの
がある」ことは意味があるが, より多くの人に使ってもらうことを考えると, 特選事例集のような
ものがほしい。
(3) 生徒に提示することを目的とした動画コンテンツを作るのもよい
今回の動画コンテンツは, 使い方を教員が理解することを前提としたものだったが, 生徒に提示
することを目的とした動画コンテンツを作ってみるのもよいのではないか。特に,初めて使う教員
にとっては, そのようなものが入り口としては適切かもしれない。
4
最終評価結果
4.1 2年間のコンテンツの手法開発の成果
4.1.1 「汎用Javaアプレット + データ = 個々のアプレット」方式
本コンソーシアムで開発した手法の最も革新的な部分は, 図形一つ一つに対して別々のアプレッ
トを開発するのではなく, 汎用アプレットを開発し, 個々のデータを読み込むことによって個々の
コンテンツで必要な個々のアプレットを実現できる方法を利用して, 組織的なコンテンツ開発が可
能であることを示したことである。作図ツールに関しては,すでにこの方法は大日本図書の O-Mat
h によって実現されてきた方法である。しかし, 組織的にコンテンツ開発を行うことはまだなされ
てこなかった。今回, 結局1000個以上もの図形アプレットを開発したことになるが, これは既存の
GC/Winのデータ作成/編集機能を生かせたからこそである。そしてまた, GC/Winのユーザーが作っ
た図形ファイルをそのままコンテンツ開発に生かせるアプレットとして使えることによって, Web
上のコンテンツを飛躍的に増やせる可能性を生み出した。
既存のソフトに準拠したコンテンツ開発を行う場合には, 同様の手法が使えるケースもかなり多
いと思われる。
4.1.2 黒板をスクリーンとしてプロジェクタを利用する授業展開を前提にしたコンテンツ開発
数学の授業のための道具として, 伝統的な「チョークと黒板」にまさるものはない。それは単に
他の機器を使うのは面倒だからではなく, 生徒の発言等に応じて記号やことばを書き込んだり,証
明を書いたりすることが, 数学の授業にとって不可欠だからだ。そのような黒板が持っている魅力
を打ち消してしまうような利用方法は長続きしない。それが本コンソーシアムでの結論の一つとも
なった。メンバーの偶然の発見により, 黒板をスクリーンとして使う方法が確立された。教室に持
ち込むものはノートPCとプロジェクタだけですむ。手軽でないと長続きしない。二つの機器を鞄な
どに入れ,肩にかけて教室に向かうだけでいい。教室に固定式のプロジェクタをすべて導入するの
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が理想かもしれないが, 1学年(3∼4クラス)に1台程度の携帯用プロジェクタが整備されれば
,必要なときに1セット教室に持ち込むという程度の便利さで,かなり使いやすくなるのではない
か。そのようなことを本コンソーシアムでは発見し,それに基づいたコンテンツ開発をした。
4.1.3 それぞれの学校における使用環境の違いに対応可能なコンテンツ開発
本コンソーシアムのメンバー数は多く, それぞれの学校において使用環境は異なる。プロジェク
タとノートパソコンを教室に持ち込んで使う標準的な環境もあれば, 普通教室で使うプロジェクタ
がないため, コンピュータ室で使うこともある。また, GC/Javaが使えず, GC/Win やGC/DOSを前提
とした使い方をする学校もある。それらのどのケースにも対応可能なコンテンツ開発を行った。
4.1.4 授業の目的の違いに対応可能なコンテンツ開発
本コンソーシアムのメンバー数は多く, 同じ問題に関しても, それぞれの教員が授業の目標が異
なることがある。提示型の解説に使いたい場合もあれば, 生徒一人ひとりに操作活動をさせる場合
もある。サブコンテンツを豊富にすることによって, それらのどのケースにも対応可能なコンテン
ツ開発を行った。
4.1.5 生徒の反応の違いに対応可能なコンテンツ開発
同じコンテンツを使って同じ発問をしても, 授業によって生徒の反応は変わる。そのときの反応
に応じて,次にどういう展開をすべきかが変わる。サブコンテンツを豊富にすることによって, そ
れらのどのケースにも対応可能なコンテンツ開発を行った。
4.1.6 教科書のすべての図形に関して一通りコンテンツを開発する
適切なものも, 必ずしもそうでないと思えるものも, とにかく一通りすべてコンテンツを開発し
, 可能性と限界を見極めることにした。
4.1.7 教員に使い方を示すための動画
本コンテンツでも動画は使った。しかし, それは生徒にみせるべきコンテンツを動画とするので
はなく, あくまで生徒の前での使い方は教員によるインターラクティブな操作やプレゼンテーショ
ンとした。しかし, その操作の仕方やプレゼンテーションの仕方が分からないとか, コンテンツの
意図が分からないという指摘が多く,それに応えるために, 使い方を示すための動画を開発した。
4.1.8 メーリングリストを基本とした開発・評価・修正のサイクルの迅速化
本コンソーシアムのメンバー数は多く, しかも各地に点在している。もちろん, 全体会議等の開
催によって, 直接意見を聴取する機会も何回も設けたが, メーリングリストを日常的に利用した。
実際,学校の教員は多くの仕事を学校で抱えている。その場にいないとできない仕事も多い。時間
を確保していただき, 出張していただくことはなかなか難しい。また, 様々な先生方に使っていた
だき意見をいただくという意味では, すべてのメンバーの方々にまんべんなく意見をいただくこと
が重要だが, どのようなコンテンツをどう作るべきか, どう修正すべきか, できたものはどう感じ
るか等のコアの部分に全員が参加するのが適切とは言えない。少なくともその教材で実現したい思
いを強く持っている教員や, テクノロジーに理解のある教員など, その議論に適した人材が適切な
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場所で, そして本務に支障をきたさない範囲で参加していただくことが重要である。そういう意味
で, メーリングリストによって, メンバー全員に情報共有をしつつ, 参加できるチャンスも作りつ
つ, 開発を進めていくことは有効だった。(実際,メーリングリストでのやりとりは期間内で1100
を越える。)
また, 教員からの指摘や希望があったとき, それに対処し, 評価を得るまでのサイクルのほとん
どをせいぜい2,3日とした。希望が提出され, その気持ちが失せないうちに, 具体的な形として返
ってくる。そういう小さなサイクルの繰り返しの積み重ねで本コンテンツは形成された。
4.1.9 「作図ツールを利用した活動」の分析と事例の分類
教科書の意図と異なる使い方もあるので, 作図ツールを利用した活動を抽出・分類し, それぞれ
の事例での使い方を分かりやすくしようと試みた。教科書準拠コンテンツは教科書の個々の問題の
位置づけから参照し, その内容をどう授業化するかということに主眼があり, この活動の分析内容
に関してはあまり議論の対象にならなかった。そのため, 第二クール以降,あまり変化しなかった
。教科書のそれぞれの問題に対する参照の仕方が縦糸とすれば, このような分析は横糸に相当する
。教科書の問題との関わりで見たときのコンテンツに違和感があり, それが教科書の意図とのズレ
から生じている場合,それを補完するのは教科書の構成とは違った観点から行うべきもの, つまり
この活動の分析等によるものではないかと思う。特に,教科書の枠から少し離れた形でコンテンツ
開発を行う場合には, このような分析をきちんと確立し, それに沿ったコンテンツ作りも不可欠で
あると感じている。
4.2 教員の評価が高い手法と効果,さらに改良が必要な手法と改良方法等
4.2.1 教科書に準拠して一通りすべてコンテンツを作る
作図ツールを使うとどんなコンテンツ作りができるのか, その可能性と限界は, 事業の当初段階
では, 分からなかった。一通りすべて作ることによって, 今まで接したことのない作図ツールの使
い方なども発見できたり, 限界も分かった。新しい道具を持ち込むときには, このように, 現行の
カリキュラム・教科書に準拠したものを「一通りすべて作ってみる」ことは, 基礎資料作りという
意味でも, とても意味のあることだった。
しかし, 初めての人々が使うことを想定した場合には, そこから精選したり, 再構成したりする
という「編集」が必要なのもまた事実である。本コンソーシアムでは, 「教科書準拠」, 「すべて
の問題に対応したコンテンツを作る」ことを基本としてきたため, 「編集のあり方」が次の課題と
して残った。
また, 現行の教科書は, 基本的にこのような新しい道具の利用を想定しないで構成されている。
カリキュラムもそうである。その枠を前提としたときに, 様々な限界が見えたのも事実である。新
カリキュラムでは, 必修に相当する部分の他に, 選択など, 教員の裁量に委ねられている部分があ
る。教科書よりも幅広い教材を提供するコンテンツのあり方を検討することは2003年以降のカリキ
ュラムを考えると焦眉の課題と言える。そしてまた, 次の時代のカリキュラム構成のあり方を考え
る上でも, コンピュータ利用を前提にすると, どのような可能性があるのかを, カリキュラム開発
・教材開発という視点で行う必要がある。
そのための一つの手掛かりとして, 本コンソーシアムでは, 「作図ツールを使った活動」を試作
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してみた。満足いく段階に到達しないまま, 事業の終了を迎えたが, 教科書から少し距離を置いた
コンテンツ開発等を進める上では, これを発展させ, 現行の教科書以外の素材も使って拡充するこ
とが一つの方策として考えられる。
4.2.2 汎用Javaアプレットの利点と今後のASPとして整備する可能性
GC/Javaの利用は様々な点で利点があった。まずユーザーの観点から見ると,第一クールから第
二クールに至る段階で, 図形がブラウザ内で動くようになったことは, ソフトのインストール等が
不要になり, CDを入れるだけでどのパソコンでも使えるようになった(あるいはホームページにア
クセスするだけで使えるようになった)という意味で画期的だった。
それぞれの図形アプレットが別々に作られていると, 個々に便利な動かし方ができるかもしれな
いが, 操作性などが共通するという点で, 汎用Javaアプレットの方がよかった。さらに, 動かすだ
けでなく, 補助線の追加などを生徒の希望に応じて自由に行いたいという希望が出てきたが, それ
が実現され, ブラウザ内で作図ツールに関するやりたいことがほぼそのまま実現できたことは, 当
初の予定を越えるところまで到達できたと感じている。
一方, GC/Javaは「汎用Javaアプレット + データ = 図形アプレット」というコンテンツ作りの
ためのツールとしての役割を越えて,様々な可能性を生み出した。
まず第一に, 教育用ソフトそのもののオンライン化である。学校のコンピュータのそれぞれにイ
ンストールや設計を必要とすることなく, あるホームページにアクセスするだけでGC/Javaという
ソフトが使えるようになった。今まではGC/Winをインストールして行っていたことのかなりの部分
が実現されるところとなった。現在の状態では, コンテンツとして掲載されているものを使ったり
,それに補助線を追加したりして調べるところまでで終わっているが, 選択の授業等では生徒にい
ろいろな図を作図させている。それをオンラインで保存し, レポートにまとめる等の部分までサポ
ートしてもらえる段階までいきたい。学校単位, あるいは学級単位でのコンテンツ作りやその編集
などをそれぞれの教員がすべてオンラインで行え,ソフトの追加・更新・管理はプロバイダの側で
行えるような体制に進展していくことが望ましい。
第二に, 来年度以降の学習指導要領では, 教科書よりも幅広いコンテンツが必要になる。現場の
教員のニーズに応じて様々なコンテンツが随時作られるような体制が必要になる。今回のように,
固定的なコンテンツ作りだけでなく, 教員自身あるいは大学や教育センターなどが中核となり, 必
要に応じて随時コンテンツの拡充やそれらに関する情報交換ができるような体制作りが望ましい。
コンテンツを作ったり・表示したりするためのGC/Javaの他に, それらの情報交換やコンテンツの
編集等を支援するためのソフト群を整備することが必要である。
これらの側面は, いわゆるASP(Application Service Provider)といわれるものに属する。AS
Pとはどのようなものであるべきかというコンセプトはまだ確定していないと思えるが, 教育に適
したASPのあり方を模索できる可能性を追究すべきである。
4.2.3 黒板をスクリーンとしてプロジェクタを利用する授業展開を前提にしたコンテンツ開発
特別な授業でのみ使うのでなく, 普段の授業で日常的に使うことを考えると, 黒板を中心とした
授業に融合した授業展開を基本に考えたのはよかった。ただ, 問題はそれに適した機器が整備され
るのかどうかという問題だ。まずプロジェクタそのものがどの程度整備されるのかが疑問である。
固定式の場合はスクリーンの利用が前提となることが多いだろう。使いやすさを考えると軽量・小
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型が重要だが, そのような機器が選択されるかどうか分からない。高性能であっても, 大きくて重
い機種だったら, 教室に運ぼうという気にならなくなる。このような, 利用機器に関する希望や不
安は多くの教員が述べていた。本コンソーシアムで検討すべき手法の改良とは違ったカテゴリーに
属する問題ではあるが, 機器整備の中でプロジェクタの数と質への配慮を行政サイドで行うことが
不可欠であることを述べておきたい。
4.2.4 使用環境の違いに対応可能なコンテンツ開発
現時点での使用環境は, それぞれのメンバーの学校によってかなり異なっていたので, GC/Java
によるコンテンツ開発の他に, GC/WinやGC/DOSでも使えるように配慮していたのはよかった。今後
整備されるコンピュータならば, Javaが使えないということはないかもしれないが, 技術革新のサ
イクルが早いコンピュータなので, 一定の幅を想定し, どれでもそれなりに使えるようなコンテン
ツ開発をすることは重要である。
本コンソーシアムで想定した最善策は, Javaアプレットの利用であった。これは2001年時点の最
新機器では, どの機器でも利用可能なことが前提となっていた。しかし, WindowsXPになり, Java
を利用するには 該当するPlugin をインストールすることが必要になってしまった。一つの要因は
, Microsoft がJavaに対抗するために開発した「.net」の推進のために, Javaに不利な状況を作っ
ていることにもあるのかもしれない。結果として, 市によってはJavaのpluginをそれぞれインスト
ールし, 使えるように設定しているところと, 逆に, そのようなことは学校や教員の判断では行え
ず, Javaは使えないままの学校もある。これらの状況は世界的な規模での技術革新に対応して変化
すると同時に, 学校の機器更新のタイミングよりも早い周期で変化し続けていくものであり, 固定
的に考えられるわけではない。
しかし, 少なくとも次の点に関しては今後も配慮を進めていくことが不可欠と考えられる。
(1) 学校には使用環境の違う機器が混在しているため, どの学校でも使えることを想定するなら
ば, 複数の使用環境に配慮したコンテンツ開発を行うことが必要であること。
(2) Javaのように, 非常に標準で, それがないと様々な支障を生じることが想定されるものに関
しては,できるだけ多くの学校の機器でインストールされるように, 仕様策定担当者への情報提供
を行うこと。
4.2.5 授業の目的や生徒の反応の違いに対応可能なコンテンツ開発
一つの使い方を押しつけるコンテンツの場合,自分の授業スタイルに合う教員は使うだろうが,
合わない教員は使わない。様々な教員や生徒を想定し, 対応可能な柔軟性を高めることが必要であ
る。普通教室でプロジェクタを使うためのコンテンツ開発が中心であったが, コンピュータ室での
個別の操作活動も想定されるため, 一斉提示型のコンテンツ, 生徒が操作するためのコンテンツと
いう2種類を考える方がよいのではないか。
また,今回のコンテンツで言えば,動画は教員に使い方を示すことを主目的として作られた。今
回のメンバーに関しては, 作図ツールを自分が操作することに抵抗感を持つ教員はいなかったので
それでよかったけれども,操作に関して不安感を持つ教員もいる。解説や問題提示をする動画を直
接生徒に提示するために開発することも必要になるだろう。
一方, 様々なものが羅列されるだけでは分かりにくくなる。相反する要求ではあるが, 柔軟性と
ともに, 分かりやすさを伴った構成の仕方も重要である。
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4.2.6 個々の生徒の活動を適切に評価したり生徒の発表を円滑にするためのノウハウの開発
コンテンツ開発の手法のみで対応できるとは限らないが, 個々の生徒の活動をどう評価するのか
, また生徒の発表をどう円滑にするのかということを今後の課題として挙げた教員がいた。教員が
操作するコンピュータ・プロジェクタの位置と生徒の位置関係が違うだけでも, それは大きく変わ
る。また, 何をどう評価すべきかという指針を作ることも, いずれ必要になってくることが指摘さ
れた。
4.2.7 メーリングリストを中心とする意見・改良・評価のサイクルの短期間化
メーリングリストを中核として, 意見・改良・評価のプロセスが以前と比べて飛躍的に短期間に
なったこと, そして開発側と(ユーザーである)教員側がより直接的な形で意見交換を行えるように
なったこと, そして意見を出して数日でそれが反映されるので自分の意見が反映されていく様子が
手にとるように分かることに対しては高い評価を得た。しかし, 全員がメーリングリストに参加で
きたわけではなく, 2割ほどの方は定期的な資料(主としてCD)の郵送に限定された。教育の情
報化の進展に伴って,学校現場でのメール等の利用の可能性は高まり,このような手法はより実現
しやすくなっていくことを期待する。
4.3 事業実施方法の改善点や注意点など事業そのものの評価
4.3.1 複数年・複数クールがよかった
今回の事業は2年間(実質的には1年半)の間に3つのクールを設定し,順次改良していくとい
うスタイルを取った。これはよかったと思う。単年度では実質的な期間は半年程度であり,当初に
想定しているものを作り上げるというだけで終わってしまう。それを評価し,どう改良するかとい
う要因があって初めて多くの教員が参加している価値が現れる。現時点でもまだ改良すべき点は残
っているので,さらに継続したいほどだが,複数年・複数クールで改良のサイクルを前提とした事
業という点はよかった。
4.3.2 コンソーシアムを形成する点がよかった
当初,コンソーシアムを構成し申請するというスタイルは, これまで経験がなかったので戸惑っ
た。たとえば, 大学中心の場合は研究者だけで集団を作って申請することがほとんどだったからで
ある。しかし, 多くの現場の教員や企業の方々という異なる集団が参加することによって, それぞ
れが持つ特色の違いがうまくかみ合って, 均質集団ではできない経験をすることができた。
4.3.3 研究授業の視察をしていただき, 直接意見交換をできたのはよかった
説明会等で趣旨をうかがっているとはいえ, 実際に我々が行う研究授業に, 尾崎課長はじめ担当
者の方に視察をしていただき, 直接意見交換をできたのはとてもよかった。文部科学省は何を考え
ているのか, 我々の試みはどう受け止められているのか, そして今後どういう努力をすべきなのか
を理解する機会を設けていただけたのはとてもよかった。
4.3.4 情報共有や広報活動が不足していた
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事業そのものに関する対外的な広報活動は不足していたように感じる。本コンソーシアムでは対
外的な広報活動はかなり積極的に行った。2年間で県の教育センターだけでも9カ所での講座に関
わった。その他の機会も含めると1000名近い教員に直接接する機会を得た。本事業全体のコンセプ
トを紹介しつつ, 本コンソーシアムのコンテンツにも触れていただき, 意見もいただく機会を作
った。しかし, 首相官邸や文部科学省のサイトを見ても,教育の情報化に関する進捗状況を示す情
報は少ない。中間報告書等をWeb上で公開するなど,いくつかの方策はありうると思う。
4.3.5 プロジェクタの可能性と必要性に関するアナウンスをもっとしてほしい
別の項目でも述べたが, メンバーの教員の方々の多くが懸念されていることの一つは, 本当にプ
ロジェクタが整備されるのだろうかという懸念である。本事業で開発したコンテンツの多くは普通
教室にプロジェクタを持ち込んで使うものである。我々を対象とした説明会では, プロジェクタの
可能性と意義がよく分かった。我々はそれを前提としたコンテンツ開発を行った。しかし, 果たし
てその意図はそれぞれの地域において, どの程度理解されているのかが疑問である。プロジェクタ
の整備に関しては,今まで以上に, その可能性と意義についての広報をしていただければ幸いであ
る。
5教員の声
5.1
2年間コンテンツを授業で使用して
普通教室にコンピュータとプロジェクタを持ち込んで,教師側が操作するのを生徒に観察をさせ
ることが多かった。
生徒たちは,プリントにのっている図が黒板に大きく映し出され,変形されていくことに驚きと
感動を感じているようだった。
5.2
授業方法にどのような影響があったか
(1) 発問が変わった
「○○○ならば,□□□となることを証明しよう」という発問がなくなり「調べたり,観察した
りして気づくことを明らかにしよう」という発問が多くなった。このことで,問題を生徒自らが設
定できるようになり,自ら進んで意欲的に参加するような授業になった。
(2) 軽い感覚で使える
今回のコンテンツの最大の魅力は,「教科書の図がすべて網羅されている」というものがある。
授業の中で,「このときはどうかな」という場合すぐに調べることができ,生徒たちの要求にすぐ
に応えることができた。「コンピュータって便利」「すぐに調べられて便利」という声がよく聞か
れた。
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