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【4月号(vol.64)】進行する国の信用問題

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【4月号(vol.64)】進行する国の信用問題
RM INFORMATION
インフォメーション VOL.64
4
2008.
●発行 株式会社日本アルマック 〒102-0083 東京都千代田区麹町4-5桜井ビル4F TEL:03-3288-2755 FAX:03-3288-2757
4 月 号 C O N T E N T S
● 進行する国の信用問題
● リスクファイナンシングを活用した企業防衛
● 企業を取巻くリスクとその対策
● 時流を読む
第61回
会社の保険その24
人材流出リスク
「ISO 不正企業を排除」「食品企業内規に『ひな型』」
進行する国の信用問題
華僑から学ぶリスクマネジメント
国内経済は“デフレ期からインフレ期”に入ったとみる
多くの専門家による指摘が、いま注目されています。
別に国外に逃げることがよいといっている訳ではあり
ません。自衛の手段を講じておくことで、最悪のシナリ
総務省は、1月の全国消費者物価指数(CPI、2005年
オになっても、リスクに伴う影響を最小化できます。「何
=100)は、変動の激しい生鮮食料を除くベースで100.5
を慌てて国外移住までするのか」 と笑えるものではな
となり、前年同月と比べ0.8%上昇したと発表しました。生
いことは確かなのです。結果的に、何事もなかったか
活者からみれば、むしろ低い?という印象を持った方も
らよかったわけで、万一の場合、これまで築き上げた
多いことでしょう。
資産は、新しい政府に没収されたかもしれないのです
これは、高額品やパソコン等、販売競争の激しい耐久
消費財の価格下落で相殺されたことによるものです。イ
ンフレ経済の進行は家計収支に影響し、これまで国内
経済の信用を支えてきた、『個人金融資産残高』に警鐘
を鳴らしています。
というのは、『個人金融資産残高』の伸びにかげりが見え
ているのです。
日銀の「資金循環統計(2007年9月末)」によると、個人
金融資産1,536兆円、一方個人負債は385兆円、政府負
債は1,113兆円です。個人金融資産を、これら負債の総
額が上回る日も近いと考えられており、会社経営で言え
ば、債務超過状態(会社破綻原因の1つ)を指すことに
なるため、国の破綻を連想する噂も出ています。
さて、ここで少しお話の角度を変えてみます。
から。
現状、日本が世界最大の債権国であることを考えれ
ば、そう悲観的になるものではないでしょうが、何かを
きっかけとして日本国債の暴落を招き、これが円通貨
の信用低下に及び、インフレが進行するといった図式
は想定されます。政府が金融施策を誤れば、長期金
利10%超えといった、これまでには考えられなかった
事態を指摘する専門家もいるくらいです。
本号執筆段階で、日銀総裁人事は固まっていませ
んが、国の信用問題にも及ぶ経済的懸念材料が散見
される中で云えば、空白期間を招くおそれがあること
だけでも、大きな信用問題でしょう。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/siryou/sy_new.htm
(財務省:国の長期債務残高)
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/sj/index.htm
時は1999年、香港が中国に併合される際、香港在住の
(日本銀行:参考図表『2007年第3四半期速報』)
お金持ちは、カナダやオーストラリアに大量に移住しまし
国の信用問題に絡み、最悪を想定した対策を取れ
た。カナダの大都市バンクーバーでは、不動産高騰を招
る日本人がどれだけいることでしょう。
いたほどです。実際には、中国併合後、これまでの仕組
華僑は世界に散らばり、多くのコミュニティを形成し
みは維持され、治安も良くなったことで、多くの移住者は
ています。驚くほどの情報ネットワークを富裕層は持っ
再び香港に戻りました。 これをリスク管理の視点で見る
ているようです。今号は、万一の時の、このような行動
と、1つの教訓を私たちに提供してくれています。
力を学ぶ必要性を考えてみました。
リスクファイナンシングとは、リスクにおける経済的損失に対
する各種対策を総称する用語です。
日本アルマックでは、この領域を、独自に「財務リスクマネジメン
ト」と体系化させてコンサルテーションしています。
財務リスクマネジメントの視点に立った資金対策事例をご紹介
しております。
∼リスクファイナンシング第61回∼
会社の保険
その24 取引信用保険(8)
味はないよ!」 と言ってしまうのは早計で、寧ろ営業
上のとても有効な武器に使えるのです。
「1.保険を経営チャンスにいかす」、もうひとつの工夫
「自社が取引している会社の営業判断基準に威力
が 「取引信用保険」にはあります。それは、経営の意思
を発揮し、売上増に導きやすい」という点に注目する
決定との連動性が非常に良い点です。
のです。事例を挙げて説明していきましょう。
意思決定とは、単純に、「YES」と「NO」を判断する基準
現場の営業マンの立場からすると、会社側から「ど
です。単純なことなのですが、案外、簡単ではないことは
んどん売りまくれ!」 という指示が出される一方で、
周知のことでしょう。組織規模が大きくなればなるほど難し
「代金の回収が出来なかったら、タダじゃ済まないぞ
くなってきます。例えば、経営者であればその場で「NO」
!」 と言われたとすると、営業力が鈍るものです。
と速やかに判断できることも、組織が大きくなるにつれ歪
「取引信用保険」を導入した会社の場合はこうなります
曲していきます。経営者がたった数分で「NO」 と判断で
。 「G社」 は原則取引しない。「D社」 も2,000万円
きることも、現場から複数の人間を介す結果、意思判断に
の範囲でしか取引はしない。このような“販売限度額”
たどりつくまでに1ヶ月以上かかるという話もよく聞きます。
を現場に対して明確に下せることになります。保険会
時には、「NO」 と判断を下すべきところが、「YES」 に変
社が客観的に設定する“信用限度枠”を超えないよう
わる可能性もあることは、非常に恐ろしいことです。
に、日常管理することの周知徹底が図りやすくなりま
会社は日々この 「YES」 と 「NO」 を迅速、かつ正確
に判断していかなければならないのです。
す。
一方、「A社」「B社」「C社」は、それぞれ1億円以上
さて、「取引信用保険」が、この意思決定との連動性が如
の販売枠(信用設定)があります。「E社」「F社」につい
何に良いかという点に触れてまいりたいと思います。
ても、保険会社から満額回答されているのですから、
下の表を参照してください。以前、本号でお話しました
例えば、1億円の限度枠に対して、現状3千万円程度
ように、例えばお客様が、「G社」 との取引において、
の受注であれば、更に思いっきり営業攻勢をかけると
5,000万円まで保険金額の枠を設定してほしいと希望して
いう指示になるでしょう。このメリハリにより、他社との競
も、保険会社は「ごめんなさい、G社はお引き受けできま
争を優位に進めていくことも可能です。「集中」と「選
せん」と回答するケースがあるとお伝えしました。また、「D
択」、マーケティングの世界で馴染みのある言葉です
社」については、「7,000万円は無理ですが、2,000万円ま
が、意思決定判断基準が明確であればあるほど、効
でならお引き受けしますよ」と限度額を決めて回答して来
率的・効果的営業ができます。
るケースなどもあります。そのことで、「なんだ、それじゃ意
「たかが保険、されど保険」 です。
社名
㈱○○商事 信用限度 希望額
保険会社 回答 信用限度額
A社
1億5,000万円
1億5,000万円
B社
1億3,000万円
1億円
C社
1億2,000万円
1億2,000万円
D社
7,000万円
2,000万円
E社
6,000万円
6,000万円
F社
G社
H社
5,000万円
5,000万円
5,000万円
5,000万円
0円
5,000万円
I社
3,000万円
J社
3,000万円
1,000万円
2,000万円
7億6,000万円
2,000万円
5億8,000万円
K社
計
0円
(つづく)
企
業
を
取
巻
く
リ
ス
ク
と
そ
の
対
策
トップ営業マンのヘッドハンティングにより
売上の大幅減少と大量離職へ発展
人材流出リスク
平成○○年兵庫県の卸売業者であるA社におい
※発生の頻度と損害の大きさ(強度)について
発生頻度については、評価制度の整備や職場
てトップ営業マンS氏が競業他社B社に引き抜かれ
環境の整備に努めていない企業は間違いなく高く
た。このことにより、A社の既存顧客先がB社に奪
なると考えられる。強度については業種にもよるが、
われ、売上が20%近く減少。そうしているうちに他
営業マン個人の営業力が頼りの業種や取引先数
の営業マンもS氏を追いかけるようにB社に転職、
の少ない企業ほど影響力は大きくなる。
A社は営業人員が激減していくという危機的状況に
見舞われた。
結果として最初のS氏の引き抜きをきっかけとし
て、売上が激減し、営業マンも信頼の厚かったS氏
からの誘いと雇用条件の優位性からB社に流出、
A社は地域におけるシェアを著しく低めることとなっ
【リスク対策】
※リスクコントロール対策(技術的対策)
基本的なコントロール対策は従業員の声を聞くこ
とから始まる。従業員が会社や他の従業員、仕事
た。
内容に対して持っている不満要素の解消を図るこ
雇用環境の変化により、雇用の流動化が激しくな
っている昨今において、優秀な人材を獲得すること
とが大切である。また、競業他社のとの比較におけ
る雇用条件の優位性を持つことも必要。
もさることながら、そういった人材を如何に社内に確
保するかも企業にとって重要な課題となってきてい
1.仕事のやりがい、社会性の確立(社会的貢献度
る。上記の例のように一人のキーマンが退職するこ
の高揚・コンプライアンスの遵守)
とによって売上減少をもたらすだけでなく、従業員
2.職場環境・職場での人間関係(セクハラ撲滅・
のモラールの低下や、大量離職に繋がる可能性も
安全管理体制整備・仲間意識の醸成等)
否定できない。
企業としては優秀な人材に不満を抱かせないよう
な労働条件・労働環境の整備に努めるとともに、適
3.評価・処遇制度の確立(仕事の成果や能力を適
正に評価し処遇する制度の確立)
正な能力評価のシステム作りや、層の厚い人材育
4.会社としてのブランドの確立(営業力に頼ること
成をしていく必要があると思われる。
のないブランドと品質の確立)
終身雇用制度・年功序列賃金・企業内労働組合
5.層の厚い人材の育成(従業員教育の徹底等)
といった雇用の3種の神器が失われ、帰属意識の
低い従業員が増加する昨今においては、一人のキ
ーマンが会社に与える影響を考え、事前に対策を
検討していくことが必要である。
株式会社日本アルマック 常務取締役
シニアリスクコンサルタント
社会保険労務士
松本 一成
4月16日(水)18:30∼全国リスクマネジメント研究会:再生紙はなぜ偽装されるのか?印刷、紙加工業界のリスクマネジメント
詳細は、http://www.almac.co.jp/page_html/rm_study/index.html
か、末尾記載の連絡先にお問合せ下さい。
時流を読む
時流を読む
リスクに対する感性が高まれば、自ずと時代の
「先」を読む力が備わってきます。最新ニュース
をリスクマネジメントの視点で分析し、今後の展
開や社会への影響を予想してみましょう。
ISO 不正企業を排除
食品企業内規に「ひな型」
記事は、経済産業省が品質管理の国際規格
「ISO」の審査厳格化を検討していることを伝え
ています。
ISOを取得した企業による相次ぐ不祥事で批
判が高まったことが見直し検討の背景にありま
す。見直し案は、企業が不祥事を起こした際の
原因究明や情報開示にも及んでいるようです。
ISOが定義する品質管理とは、「品質管理を
実施するために必要となる組織構造、手順、プ
ロセスおよび経営資源」を定め、責任と権限の
明確化がなされ、業務手順についてもマニュア
ル化され、その通りに実行される仕組みが整っ
ていれば、誰でも同じ品質の製品、サービスを
提供できるというものです。
しかし、品質に関わる内部管理の仕組みが整
備されても、管理システムからの故意の逸脱(
不正行為等)には触れていません。コンプライ
アンス(法令及び基準)遵守に意識的に取り組
ませる指針を設けざるを得ない実情が出てきた
事を伝えています。
記事は、農林水産省が、食品偽装や薬物混
入事故が相次いだことを受けて、業者の自主
的な内規作りを“代行”する異例の措置に踏み
切ったと報じています。
注目されるのは、製造から外食まで食品関連
の全業者が対象で、約20万社、100万超の事
業所にのぼります。内容としては、「衛生管理」
「食品表示」「法令遵守」「危機管理」「行動規
範」の5項目から構成されています。例として、
外食向けには、細菌の汚染や増殖で予想され
る危害リストの作成を明記する、また内規は消
費者が常に確認できるようインターネットや店
頭で開示するよう求め、内規に不備がある場合
は農水省が改善指導するなどとなっています。
内部監査記録の保管や一元化した消費者対
応窓口設置など、一般の中小企業には整備さ
れていない項目も多いため、対象となる関係者
にとっては、これを機会に内部管理の仕組み
を整える前向きな発想が期待されます。
本コーナーは、㈱日本アルマック主催セミナー「全国リスクマネジメント研究会」の内容を編集したものです。
セミナーの概要、参加申込方法等については、お気軽にお問い合わせください。
【朝:ご飯1膳、蒸したジャガイモ2個、お新香一皿。昼:焼芋2本、蒸したジャガイモ1個、リンゴ4分の1。夕:ご飯1
膳、焼芋1本、焼魚一切れ】「国内生産のみの食事メニュー例」農林水産省web site『食料自給率の部屋』
で検索して下さい。これで2,020Kcalは摂れるそうですが、昭和20年代後半並みの水準だとか。カロ
リーだけでなく、彩りも栄養バランスの偏りも大いに気になります。更に「料理自給率計算ソフト」で
チェックしてみると、日本の文化とも言える醤油を含め、食用油等の調味料は殆ど自給出来ていない現実
を目の当たりにし、愕然としました。昨今の中毒事件を受け、国産食材のみでの給食作りに取り組んだ小
学校の事例を小学生新聞で目にしました。管理栄養士さんのご苦労が見えるようです。平成18年39%の
自給率(カロリーベース)は、10年かけても45%が目標値。4年前の中越地震で被災した長岡の親戚が「野菜は畑
に充分あるから大丈夫!」と、見舞いに行った筈の家人に話したことを聞き、自給出来ることの強さと大
切さを痛感したことを思い出しました。さてと…今日のおかずは何にしますか…?(櫻井)
RM INFORMATION
インフォメーション
VOL.64
4
2008.
2008年4月発行
定価420円(税込)
ご意見・ご要望は上記までお寄せください。
本誌の無断複製・複写はお断りいたします。 Copyright Nipponalmac Co.,Ltd
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