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スクープと情報源秘匿

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スクープと情報源秘匿
ジャーナリズムの現在 06 3
■スクープと情報源秘匿■
2006年5月2日
毎日新聞社会部副部長
山本
修司
1. 取材源秘匿はジャーナリストの当然の義務
ジャーナリストは強制権限を持たない
(捜査当局は、逮捕・捜索差し押さえなどで事実に到達できる)
ジャーナリストは、取材源の秘匿を貫くことによって築かれる協力者との信頼
関係がただ一つの「武器」となる→取材現場では当然の義務として扱っている
2.公務員の守秘義務との対立点
国家公務員法、地方公務員法に守秘義務を規定
(国税職員では所得税法や法人税法でも規定=二重の守秘義務)
「国民の利益」VS「守秘義務違反」の局面も
3.検察取材、調査報道の実態
情報源秘匿とともに、特定されないための工夫
→記事掲載後に当局などが情報源特定に動くこともある
記事の書き方にも注意が必要
情報源には失職や、生命・身体の危険が伴うことも
4.日本の司法判断
米食品会社の税務申告漏れ報道をめぐる嘱託尋問での決定
*3月14日の東京地裁決定=取材源秘匿は違法
*3月17日の東京高裁決定=取材源秘匿を認める
*4月24日の東京地裁決定=取材源秘匿を認める
1978年5月の最高裁決定が根底に
「正当な取材目的」
「取材の手段、方法が社会通念上是認される」が前提
5.その他
<了>
1校のチャート図がひ
そかに押収されていた。
康京地検特授部がライ
フドア本社への家宅捜索
に踏み切った1月16日。
口英昭さん︵調︶の自宅か
関連会社の元社長でエイ
チ・エス証券副社長、野
ら見つけ出した。
そこには、六つの投資
事業阻人口にライフドアグ
ループが出資し支配して
いた実態や、企業買収な
どを通じた自社株売却益
の還流システムが記さ
自宅からチャート図
を募って企簗に投資し、 仕方なく協力していたの ぎ込む外資やオイルマ泉
入が自由化され、国内外
実際は野口さん例の出自
のか⋮⋮。憶測を呼ぶ中
は全軍フィフドアが負担
の資金が流入した。98年
で確かなことは、鮮金揃
していたが、投資会社側
には国が出賀する初の投
のはば全休像を知ってい
たということだけだ。 には伏せられていた。 資把白もできた。
﹁仮面をかぶってバク
2弓は堀江前社長らが
□■■■︹
チを打つようなもの﹂。
情報誌出版﹁マネーライ
証券マンだった野口さ
ライフドア事件と時代
んは00年、ライブドアに フ社﹂を買収して見せか
ある投資枢台に出資した
れ、事件の構図が読み取 かっていたことなどを理 引き抜かれる。宮内前職
ベンチャ1企業の社長は
けの利益を上げる隠れみ
れる。解明された寧実と 由に、包丁で手首や冒を 締投の右腕になったが堀
のになる。野口さんは﹁
言堀
う。投資組磨から別の
もほぼ合致している。 切った自殺と断定した。 江前社長とそりが合わ 江さんとは拒もしたくな
投資船台に出貿されれ
翌日、野口さんは那朗 関係者は﹁野口さんを ず、2年で退社した。
ば、元の出資者はいっそ
い﹂とライブドアを離れ
市のカプセルホテルに偽 含め、投資娼合や株式分 04年3月、友人の投資 たのに、再びかかわった
う。
分からなくなる。この
同国には﹁宮内さんには
名で宿泊し、ひん死の状 割に詳しい複数のプロが 会社社長と投資事業組合
社長は﹁後になって暴力
態で見つかる。沖縄県警 チャート作りにかかわっ ﹁VLMAl弓﹂を設立世話になった﹂と漏らし
団のカネが入っていたと
た。関係者は﹁頼まれて ることもある﹂と語る。
は部屋の群が内側からか
た
﹂
と
明
か
す
。
チ
ャ
ー
ト
し
た
。
授
買
棍
A
ロ
は
出
資
者
知
事件後、金融庁は投資
組合の浬営者と所在地の
届け出制度の導入を検討
しているが、出資者まで
は明らかにさせない見通
しだ。幹部が明かす。﹁表
に出したくないカネをつ
の隅には﹁m厨.N00ふ↑
となく解散した。
れる。だが、投負するこ
しまったら、日本経済が
投資船台は日本では82 立ち行かなくなる﹂
コ■■■﹁
ロ巴とある。04年4月 成功すれば配当が受けら ではないか﹂と推測する。
−が日本から引き担げて
被告︵33︶や前取締役、宮
9日、前社長、堀江昌文
︵次回から社会面に掲載︶
98年に外為法が改正され ではないか。=つつく
めに使われた仕組みだ。 んはその犠牲者だったの
内売治被告︵卸︶らとの間
﹁もう一度一括に何か年に登場した。米国でベ エスカレートする一方
で、との枠組みの﹁ミし しよう﹂。間もなく2人 ンチャー企業を育てるた のマネーゲーム。野口さ
ティング﹂が持たれたと は﹁2弓﹂を作った。社
長側が約1削、約9割は
野口さんはなぜ死んだ 野口さん仰が出自した。 たのを皮切りに外資の参
みられる。
2006年(平成1昨)■3月15日水曜日
壬珊月8日相聞析
折詰摘記者、証言拒めず
官は決定理由で﹁︵守秘崇拝違反という︶法令違反が疑われる取材源につ
く疑われる場合は旺百拒絶を認めない﹂とする決定を出した。靡下健裁判
のの、﹁国税職員が記事会見した読売例の革田
の情報源か﹂など14の質 村洋一弁覆土は﹁とんで
問には証言するよう求め
もない決定。報道機関の
た。仮にこの決定が樺定
果たす役割をまったく理
し、それでも証言を拒め
解していない。この論理
ば民事訴訟法で10万円以 が辞められると、官庁が
下の罰金や身柄拘束など
広報したこと以外は取材
の制裁がある。
や報道ができないことに
同じ報道を巡り、NH なる﹂と批判した。
K記者の拒絶については
︻武本光政︼
新潟地裁が昨年10月、正 読売新聞東京本社広報
郎の話 特異な判断で、
当と認める決定をしてお
らといって、直ちに︵守
で公掃貝に秘密を病示す
るようそそのかしたか
秘義務違反などの︶遵法
性が推定されるもので
はない﹂と判不。その上
毎日新聞記者が外務省
で女
﹁その手段・方法が社
取材源が公 能性があることを重視。
会て
観念上是揺されるも
務員の場合に ﹁法令により開示が禁性事務官をそそのかし
読売側は即時抗告する
方針を明らかにしてお
国当
民の知る権利を否定 ている疑いが極めて強
決定は、取材源が国税
り罪
、東京高裁の審理が
しかねない結納を導い い。最高裁は記者の有
局職員などの場合、国
判決を支持したものの
注、
目される
。
家公搾兵法などに基づく
︻武本光政︼
守秘義務に違反する可 しかし、この決定は、﹁報道機関が取材の目的
とは百えない﹂と述べ、
罪に問われた事件の78年 べている。
法れ
な権利
しの
て見
いる
来の司法判断とかけ適離
たを
独有白
解
を示した。
5月の最高裁決定に反し
のと
である限りは正当な業
止と
された情報について 極秘電信文を入手した
はその秘匿を認めない
して国家公掃貝法違反
務の
行為というべき﹂と述
衆が︵知る権利などの︶
した東京地裁決定は、公従
画
東京地裁最材源秘匿は違法﹂決定
﹁知る権利﹂を軽視
いて肛首拒絶を適法と認めることは、間接的に犯罪の隠ペいに加担する行
声
諾剖﹁報道の役割に無理解﹂
この健康食議会社とそ
ナ地区連邦地裁に提訴。
いての尋問には証言を拒
の日本法人は、日米の税
報道した日本のマスコミ
絶できると飼定している
務当局の開査を受けて97 各社の記者らは国内の裁 め、決定はます﹁記者の
た
年に鰊税処分されたと日
判
所
で
嘱
託
尋
問
さ
れ
、
拒
取材源を尋ねる尋問は原
本で報じられた。会社側
絶に対してはその当否を
則として職業の秘密に当
は借用失墜などの掴昏を
判断するよう会社側が裁
たる﹂と暗めた。しかし、
受けたとして日本の税務
判所に求めていた。 公務員など守秘義務のあ
当局に協力した米政府に民事訴訟法は﹁職業の
る人が取材源だった場合
損害腰償を求めてアリゾ
秘密に関する事項﹂につ
は、民訴法の規定を適用
できない﹁特別な事情﹂
み取り、積み重ねられ
にて
当たると判断。﹁開示さ
内部告発の芽摘む
きた﹁報道の自由﹂の歴 ば、以後取材源から
れ
れ
奥平康弘・東大名誉教
史を根底から覆してしま
の
協力を得ることが困難
授︵憲法学︶の話 形式 いかねない。米国でも昨
になると予想されるが、・
輪に過ぎない、訳の分年
か 、取材源の秘匿を辛い
それは法令違反行為が行
らない決定だ。公務貞た
の 記者が収監されてお
わる
れなくなることを意味
秩序を、非常に大ざっば
り、報道活動寿抑圧す
なレベルで聖域化してし
し探
、法秩序の罰点からは
方向が貝える。問転の
まった。行政を是正する
さを認識しなければな
歓ら
迎すべきだ﹂とした。
ための内部告発の芽をな
摘 い。
その上で、会社側が炉
。
は14日﹁取材源が公掃貞などで、守秘義務違反で刑罰に問われることが強
報道を制約し、国民の知
米国の健康食吊会社への課税処分に関する報道を巡
、で読
新拒聞
託り
尋問
求売
め、
絶の
さ記
れ﹁者
取材源は誰か﹂などり
の、会社側が東京高裁に
が民事裁判の証人尋問で取材源の証言を拒絶したこと
に
つ質い
て
地
た2
1の
問事
項、
のう東
ち 京質
問裁
には拒絶を認めたも
即時抗告している。 る権利を損なう。
東京地裁決定
とはなく、取材源秘匿
機の
関の取材活動は、民と
主規定している。そのう
必野性が認められる﹂
主と
義の存立に不可欠なえ
国で﹁証言拒絶による裁
述べた。︵社会面に解説︶
民の﹃知る権利﹄に串判
仕への影野は、取材源秘
同じ報道で、読売新
す聞
る報道の自由を実質的により保障される取材
匿
記者の拒絶について東
に京
保障するための前提活
と動の持つ民主主義社会
地裁は14日、﹁取材源が なる活動﹂と定義。取に
材おける価値に、勝ると
公務員などで、守秘義
源務
が秘匿されなければ、劣らない社会的公共的
も
違反で刑罰に問われる
そこ
の後の取材活動が不な
可利益の侵害が生じると
とが強く疑われる場合
能は
になる性責があり、認
民めることは困難﹂と指
ひなかに‘つ■つ
米国の健康食品会社と
へについて、東京高裁は
出
し
た
。
雛
形
要
松
裁
判
長
為
。
取
材
源
に
︵
守
秘
義
務
遵
証吾拒簡を認めない﹂
事と
折訟法上の﹁職業の摘
秘した。 ︻武本光政︼
の課税処分に関する報道
17日、拒絶を正当と認め は﹁報道機関が公狩貝に反など︶国家公務貞法違
する決定を出していた
密
﹂
に
あ
た
る
と
し
た
。
民
NHK広報局の話 報
を巡り、NHKの記者が た新開地裁決定︵05年10 取材を行うことは、その反の行為を求める桔栗に
が
、
こ
の
日
の
高
裁
決
定
は
訴
法
は
﹁
職
業
の
秘
密
に
関
道
機関の取材・報道の自
民事裁判の証人尋問で取
月︶を支持し、会社側の即
手段、方法が相当なもの
な
る
と
し
て
も
、
た
だ
ち
に
こ
れ
を
事
実
上
否
定
し
た
。
す
る
事
項
﹂
に
つ
い
て
の
尋を真正面から認めたも
由
材源の証首を拒絶した時
こ抗告を勇知する決定で
をある限り正当な業務行取材活動が違法となるこ
高裁決定はます﹁報
問道
には証言を拒絶できの
るで、高く評価したい。
2006年(平成18年)4月25日(火曜日)
民事訴訟尋問
NHK記者の
東京地裁﹁間接的に特定﹂でも
東京高裁﹁証言拒絶は正当﹂
材源秘
どの拒絶を認める決定を
襲
。
報
道
機
関
に
と
っ
て
の
員
法
の
守
秘
寿
務
に
違
反
こうした結果、▽直接
出した。決定理由で長取
谷材源が、証言拒絶がし
認、にわかに看過しがの
た情報源は誰か▽裏付け
部幸弥裁判官は﹁直接め
的られている民事訴訟法
い﹂と述べつつ、78年の 先は誰か▽日本政府職員
な質問に限らず、間接上
的の﹁職業の秘密﹂に最
原高裁決定を引用。﹁の
取いずれかが情報源か▽
に取材源の特定に結び則
つ的に当たると判断し材
、手法が社会通念上是情報源は守秘義務を課せ
く質問に答えることは拒
、絶できないのは﹁開認
示されるものであればら
実れているかー など大
信膵を失い取材活動にを
多求めることを相当とす
質
的
に
違
法
性
を
欠
き
、
正
半
の
質
問
に
証言拒絶を認
大な支障を生じる﹂とべ
述き特別の事情がある当
場な業笥テ点とみるべめ
きた。
︻高畠友彰︼
米国の健康金品会社へ
ベた。ただ、取材した合
人﹂に限るとした。 とされている﹂とした上
の課税処分に関する報数
道などの征貫拒絶は認めさらに、間接的に取で
材﹁守秘覇務に違反す
を巡り、共同通信記者す
が、共同通信側は東京源
高の特定に結びつく貝る
問情報捏供としても、こ
民事裁判の証人尋問で裁
取に即時抗告する方針も
。拒絶できるとの判断の
基一事をもって証言拒絶
材源の堅盲を拒絶したこ決定はます、NHK記 準を新たに示した。 できない特別の事僧が
とについて、東京地裁者
はの証言拒絶を巡る先月一方﹁仮に国税庁職あ
員るとは亭スない﹂と判
24日、情報源などほとん 17日の東京高裁決定を踏 が情報源だと国家公務断した。
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