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自然をめぐるエッセー
由井
鳥 の
26
浩
撮
影
昨年11月中旬に研究会の見学会で目黒にある自然教育園を訪れ、広大な敷地の中に残
る都心とは思えない豊かな自然と、室町時代の豪族の館跡や江戸時代の大名が植えたと伝
えられる老松などを、参加した皆さんと一緒にゆっくり見て回った。この時は紅葉には少
し早かったので、12月初旬に今度は一人で再訪した。路傍植物園、武蔵野植物園、水生
植物園などの名前が付けられている園内の各
地域で植物の種類がいろいろ異なっているの
で、赤、朱、橙、黄など各種の色彩の紅葉を
堪能することができた。
園内一周から戻って入口近くにある教育管
理棟で一休みしている時に、園内で観察でき
る野鳥についての展示に目が留まった。シジ
ュウカラ、メジロなどの一年中見られる鳥や
ウグイスなどの冬に見られる鳥の姿が描かれ
ていて、鳴き声を聞くこともできた。この園
は、現在は国立科学博物館付属施設なので、
自然教育園の紅葉
上野公園にある国立科学博物館の行事につい
てもPRされていた。同博物館において日本鳥学会100周年記念企画展“鳥類の多様性
―日本の鳥類研究の歴史と成果―”が開催中であることをパンフレットで知った。
今までは、動きが速すぎて私の写真撮影技術では手に負えない感じがあって、鳥には余
り興味がなかったが、100周年企画展の名に惹かれて最終日の12月9日に上野の国立
科学博物館に足を運んだ。7人の鳥類学者のサロンとして1912年5月に発足した日本
鳥学会は、100年経った現在は会員数1300人、年次大会参加者数500人の規模に
達していて、鳥の分類と種多様性、生態や保全などの研究に地道に取り組んでいることが
紹介されていた。日本でこれまで記録された鳥は633種、その中で日本で繁殖するのは
240種、日本固有種は15種という数字はこの企画展を見学して初めて知った。植物の
数の多さに比べた鳥の数の圧倒的な少なさは
意外だった。日本固有種15種の中で5種は
既に絶滅し、残りは10種しかいないという
情報には考えさせられるものがあった。
数少ない鳥類にエールを送るために、これ
から鳥の写真撮影に少しずつ取り組んで行く
ことに決めた。企画展を見終わり、博物館の
外に出て、早速鳥の姿を探してカメラを向け
てみたが、飛んでいる鳥を写すのはやはり難
しいので、銀杏の落葉のじゅうたんの上でえ
さをついばんでいるスズメの写真を撮って、
とりあえずの第一歩とした。
上野公園のスズメ
1
今年の初散歩は地下鉄有楽
町線で辰巳駅まで行き、その
近くの運河を飛ぶ鳥の姿を撮
影することにした。昨年末の
テレビで2012年の干支の
辰と2013年の干支の巳の
両方が含まれる辰巳駅に、記
念の掲示板が1月6日まで展
示されていることを知り、展
示期間内に行こうと、4日に
ここを訪れた。駅改札口の近
くに設けられた記念掲示板は、
辰巳駅に設けられた干支記念掲示板
これを目当てにわざわざやっ
て来る家族連れも多く、写真を撮るのに苦労したが、人の姿が少なくなった頃を見計らっ
て12年に1回の光景をカメラに収めた。
駅の階段を昇り、すぐ近くにある辰巳
桜橋を渡って、東雲水辺公園に行った。
映画のロケにもよく使われるという辰巳
桜橋の美しい白い構造物の近くを飛ぶ鳥
をカメラで捉えようと、厳しい寒さの中
で強風にあおられながら1時間以上粘っ
たが、たまに橋梁をかすめて飛ぶ鳥の姿
を狙い通りに撮ることはできなかった。
寒風に吹かれながら、大変動の時代に
突入した現在、事業にしても研究開発に
しても、これまでの時代とは全く異なる
発想、取り組みを加えていくことがとて
も重要になっているのだろうと、事業や
研究開発を推進中の人達の胸中を思った。
動きの少ないものを対象としてきた私の
辰巳桜橋
写真撮影も、動くものを相手にするため
にこれまでとはまた違う発想、技術を積
み重ねる必要がある。そんなことを考えながら、湾岸高層マンション群の一角にコーヒー
ショップを見つけて中に入り、暖をとった。
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