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1-b.標準予防策 手指衛生
病院感染対策マニュアル 市立札幌病院 2016.10 標準予防策 b.手指衛生 1.手 指 衛 生 の目 的 目 的 は、医 療 従 事 者 の手 指 を介 して患 者 への病 原 体 の伝 播 ・拡 散 を防 止 すること、 職 員 自 身 が病 原 体 によって感 染 しないことである 。手 指 衛 生 は標 準 予 防 策 の中 で 最 も重 要 な感 染 防 止 対 策 であり、職 員 全 員 が手 指 衛 生 の必 要 性 についてよく理 解 し、適 切 な場 面 において正 しい方 法 で手 指 衛 生 を行 う必 要 がある。 2.手 指 衛 生 の種 類 1) アルコール手 指 消 毒 剤 による手 指 消 毒 目 に見 える汚 れがない場 合 の第 一 選 択 。アルコール手 指 消 毒 は頻 回 に行 う必 要 があるため、業 務 に支 障 がない限 り、携 帯 用 手 指 消 毒 剤 を常 に持 ち歩 くことが望 ま しい。有 機 物 の付 着 によって消 毒 効 果 が減 弱 する(もし くは無 効 となる)可 能 性 が ある。 2) 消 毒 剤 入 り石 鹸 による流 水 下 の手 洗 い 目 に見 える汚 れがある場 合 、または感 染 性 腸 炎 患 者 の診 療 ・ケア後 には細 菌 や ウイルスを有 機 物 とともに洗 い流 すよう、十 分 に石 鹸 と流 水 を使 用 し 手 洗 いを実 施 する。アルコールに抵 抗 性 を示 すノンエンベロープウイルス(ノロウイルス、ロタウイル ス、アデノウイルス等 )に対 しても、同 様 に石 鹸 と流 水 を使 用 し手 洗 いを実 施 する。 ※事 務 作 業 の後 や食 事 前 、トイレの後 等 に行 う、普 通 石 鹸 による「日 常 的 手 洗 い」 とは区 別 する。 3.手 指 衛 生 が必 要 な 5 つの場 面 1) 2) 3) 4) 5) 患 者 に触 れる前 清 潔 ・無 菌 操 作 の前 体 液 に曝 露 された可 能 性 のある場 合 患 者 に触 れた後 患 者 の周 辺 物 品 に触 れた後 ※ 上 記 5 つの場 面 (図 1)では手 袋 を装 着 して いても、装 着 の前 後 で必 ず手 指 衛 生 を実 施 する必 要 がある。 【図1:手指衛生が必要な 5 つの場面】 1-b-1 病院感染対策マニュアル 市立札幌病院 2016.10 4.手 指 衛 生 に用 いる製 剤 の選 択 手 指 衛 生 に用 いる製 剤 は、手 指 の汚 染 状 況 や患 者 状 態 に合 わせて選 択 する ( 表 1・ 2) 。必 要 な場 面 で手 指 衛 生 が 実 施 できる よ う 、製 剤 の配 置 場 所 を 定 期 的 に 見 直 す。アルコール手 指 消 毒 剤 の開 封 後 の使 用 期 限 は 6 か月 であるため、必 ず開 封 日 を記 載 する(病 院 感 染 対 策 マニュアル 1-f-17 参 照 )。 【表 1:製 剤 の選 択 】 種類 手 指 の汚 染 状 況 ・患 者 状 態 目 に見 える汚 染 がない 手指衛生 (手 指 衛 生 が必 要 な 5 つ の場 面 ) 製 剤 の選 択 【アルコール手 指 消 毒 (第 一 選 択 )】 ラビショット A ® ヘキザックハンドゲル 0.2% ® 【流 水 下 の手 洗 い】 ステリクロンスクラブフォーム 4% ® 目 に見 える汚 染 がある 【流 水 下 の手 洗 い】 ステリクロンスクラブフォーム ® 感 染 性 胃 腸 炎 症 状 (または疑 い) あり 【流 水 下 の手 洗 い】 ステリクロンスクラブフォーム ® 日常的手洗い (事 務 作 業 ・トイレの後 、 食 前 など) 【流 水 下 の手 洗 い】 シャボネット ユ・ムP-5 ® 【表 2:当 院 採 用 中 の手 指 衛 生 製 剤 】 製 剤 名 ステリクロンスクラブ フォーム 4% ® 500ml ラビショット A ® 500ml・60ml ヘキザックハンドゲル 0.2% ® 50ml シャボネット ユ・ム P-5 ® 一 般 名 クロルヘキシジングル コン酸 塩 ・スクラブ エタノール・ラビング クロルヘキシジングルコ ン酸 塩 手 洗 い石 けん液 ・クリーミーな泡 が 手 指 を優 しく洗 浄 ・湿潤剤 を含 有し、 手 荒 れ防 止 に配 慮 ・広 い抗 微 生 物 スペク トルを有 し、殺 菌 効 果 が持 続 ・ノンエンベロープウイ ルスなどのアルコール 抵 抗 性 ウイルスにも 効 果 が期 待 できる ・ミリスチン酸 イソプロピ ルやグリセリンを含 有 し、手 荒 れ防 止 に 配慮 ・殺菌 作 用 は迅 速で かつ持 続 性 がある ・幅 広 い抗 微 生 物 スペ クトルを示 す ・保 湿 剤 としてスクワラ ン、キシリトールなどを 配合 ・泡 で手 指 のすみ ずみまで包 み込 み洗 浄 ・香料 無添 加 の た め 移 り 香 の 心 配 がない 主 な 特 徴 写 真 1-b-2 病院感染対策マニュアル 市立札幌病院 2016.10 5.手 指 衛 生 の手 順 1) アルコール手 指 消 毒 剤 による手 指 消 毒 ① ラビショット A ® をこぼさないよう、しっかり 1 プッシュ(3ml)する ② 消 毒 剤 を取 っていない側 の手 の指 先 や爪 先 を消 毒 剤 に浸 し、よくすり込 む ③ 消 毒 剤 を反 対 の手 にこぼさないように移 動 させ、反 対 の手 の指 先 や爪 先 にも 同 様 によくすり込 む ④ 手 のひらによくすり込 む ⑤ 手 の甲 によくすり込 む ⑥ 指 の間 によくすり込 む ⑦ 親 指 全 体 をひねる様 にして、よくすり込 む ⑧ 手 首 によくすり込 む ※④→⑧をアルコール手 指 消 毒 剤 が完 全 に乾 燥 するまで繰 り返 してすり込 む 手 指 を適 切 に消 毒 するため、腕 時 計 ははずす。結 婚 指 輪 をしている場 合 は、指 輪 をずらして消 毒 する。 【 図 2: ア ル コ ー ル 手 指 消 毒 剤 に よ る 手 指 消 毒 手 順 】 1-b-3 病院感染対策マニュアル 市立札幌病院 2016.10 2) 消 毒 剤 入 り石 鹸 による流 水 下 の手 洗 い ① 両 手 を水 で十 分 に濡 らした後 、ステリクロンスクラブフォーム 4% ® を 2~3 プッシュ (2~3ml)し、手 のひら全 体 をこするようにして洗 う ② 手 の甲 をこするようにして洗 う ③ 指 先 、爪 先 を反 対 側 の手 のひらで、こするようにして洗 う ④ 指 の間 を洗 う ⑤ 親 指 をひねるようにして洗 う ⑥ 手 首 を洗 う ※①~⑥の 6 つのポイントを、全 体 で少 なくとも 15 秒 間 は洗 う ⑦ 流 水 で 十 分 に 石 鹸 を 流 し た 後 、 ペ ー パ ータ オ ル で パ ッ テ ィ ン グし な が ら 十 分 に 水 気 を拭 き取 る ⑧ オートセンサーがない水 道 の蛇 口 は、肘 またはペーパータオルを用 いて閉 める ⑨ 周 辺 の水 滴 をペーパータオルでふき取 り、廃 棄 する ⑩ 必 要 時 、手 指 にハンドクリームを塗 布 する 適切な手指衛生につなげるよう普段から爪は短く切っておく。 【 図 3: 石 鹸 に よ る 流 水 下 の 手 洗 い 手 順 】 1-b-4 病院感染対策マニュアル 市立札幌病院 2016.10 6.手 荒 れの予 防 と対 処 手 荒 れは皮 膚 常 在 菌 の増 殖 や、一 過 性 細 菌 が定 着 しやすくなり、患 者 への病 原 体 伝 播 リ スク が高 まる。また 、手 荒 れの痛 みから手 指 衛 生 回 数 が減 少 し 、 手 指 が さらに 汚 染 され、手 荒 れも悪 化 するなど悪 循 環 となる。手 荒 れを予 防 するために、日 頃 からス キンケアを心 掛 ける必 要 がある。 1) 手 荒 れ予 防 対 策 ① 目 に見 える汚 染 がない場 合 、手 指 衛 生 は 石 鹸 と流 水 による手 洗 いではなく、 保 湿 成 分 が添 加 されたアルコール手 指 消 毒 剤 による手 指 消 毒 を行 う ② 石 鹸 と流 水 による手 指 衛 生 では、皮 膚 の正 常 な皮 脂 まで除 去 し、保 湿 に必 要 な 水 分 量 も低 下 させてしまうため、温 水 の使 用 は できるだけ避 ける(25~26℃以 下 が望 ましい) ③ 石 鹸 成 分 を残 さないように十 分 洗 い流 す。また、ペーパータオルで水 気 を拭 き 取 る際 には、ごしごしと擦 らないようにする(パッティングして拭 き取 る) ④ 手 指 衛 生 の後 は、定 期 的 にハンドローションやハンドクリームを使 用 して、皮 膚 の 保 護 に努 める(表 3) ⑤ アルコール手 指 消 毒 の直 前 または直 後 に 、石 鹸 と流 水 による手 指 衛 生 を行 うこと は、皮 膚 への過 剰 な刺 激 となるため、必 要 に応 じてどちらか一 方 を選 択 する ⑥ 皮 膚 に合 わないグローブは、アレルギーを起 こす原 因 となるため使 用 しない ⑦ 不 必 要 な長 時 間 のグローブ着 用 は行 わない 【 表 3: 当 院 採 用 中 の ハ ン ド ロ ー シ ョ ン 】 2) 手 荒 れの対 処 方 法 ① できる限 り早 期 に皮 膚 科 を受 診 し、治 療 する ② 手 荒 れが完 治 するまで、アルコール手 指 消 毒 剤 の使 用 は避 ける ③ 絹 や綿 手 袋 を装 着 し、その上 から医 療 用 グロー ブを装 着 するなど、炎 症 部 位 の刺 激 を避 ける ④ 石 鹸 と流 水 による手 指 衛 生 を適 切 に実 施 し、 一 過 性 細 菌 の定 着 を防 止 する ⑤ 再 発 しないように上 記 の予 防 対 策 を習 慣 化 する 1-b-5