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競技用ヤリの動特性
Kobe University Repository : Kernel Title 競技用ヤリの動特性(Dynamic Characteristics of Javelin) Author(s) 前田, 正登 / 野村, 治夫 / 森脇, 俊道 / 社本, 英二 Citation Japanese Journal of Sports Science,12(2):130-136 Issue date 1993-02-15 Resource Type Journal Article / 学術雑誌論文 Resource Version publisher DOI URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/90001665 Create Date: 2017-03-31 J . J .Slて別ち幻. -~J[~l!..l,j 通. 競技用ヤリの動特性 前田正登※野村治夫※森脇俊道※※社本英二料 DynamicC h a r a c t e r i s t i c sofJ a v e l i n M a s a t oMAEDA※HaruoNomura※ T o s h i m i c hMORIWAKI※※ E i j iSHAMOTO※※ ※ Facu1 tyo fHumanDevelopment, 型軽※ KobeU n i v e r s i t y F a c u l t yo fE n g i n e e r i n g, KobeU i n v e r s i t y A b s t r a c t n dt h e r e f o r ei t sdynamic J a v e l i ni sp r i m a r i l ye l a s t i c,a c h a r a c t e r i s t i c s must b et a k e ni n t oc o n s i d e r a t i o nt o i m p r o v et h ea t h l e t i cp e r f o r m a n c e .Thep u r p o s eo ft h i s p a p e rwast oa n a l y s et h edynamicc h a r a c t e r i s t i c so f] a v e . l i n,t op u r s u et h em e t h o d o l o g yo ft h e i re v a l u a t i o na n dt o d i s s c u st h e i re f f e c tont h ea t h l e t i cp e r f o r m a n c e . E i g h tk i n d so fj a v e l i n sf o rp r a c t i c a lu s e( t h r e es t e e land f i v ed u r a l u m i nj a v e l i n s )werea n a l y z e d .Twomethodso f modala n a l y s i swereemployedt oa n a l y s et h edynamic c h a r a c t e r i s t i c s . Ther e s u l t swerea sf o l l o w e s; 1 ) Thed o m i n a n tv i b r a t i o no f] a v e l i ni sat r a n s v e r s e v i b r a t i o no fabeamw i t hf r e ee n d s . 2 )S i xr e s o n a n tp e a k swerei d e n t i f i e di naf r e q u e n c y r a n g eupt o500Hzf o ra l lj a v e l i n se x a m i n e d .Thec o m p l i a n c ewasr e l a t i v e l yl o w e ra tr e a s o n a n c e su fmodeso f o r d e ro fe v e nn u m b e r s . 3) The r e s o n a n tf r e q u e n c i e so fe i g h tj a v e l i n st e s t e d werec 1a s s i f i e di n t ot h r e ek i n d s . 4) Thec o m p l i a n c eo f] a v e l i na tt h ep o i n to fg r i pf o rt h e f i r s t mode was f o u n dt ob el o w e r when t h er e s o n a n t . f r e q u e n c ywash i g h er 1 .緒 戸司 やり投競技に関する研究では、従来、ヤリは変形 しない剛体と見なして論じられてきた。しかし、 Hubbardら7) T e r a u d s l 6 )などによって、弾性体とし ての動特性、特に振動特性が競技パフォーマンスに 影響を及ぽすことが指摘され始めた。さらに、 1 9 8 6 年の規格改訂によって飛行性能が著しく低下し 15)、 飛距離が減少したれ 14)ために、飛距離減少の一因と 思われる ι12.16)ヤリの振動が注目きれるようになっ てきた。 ヤリの振動は、形状,材質,肉厚分布等に影響を 受けると考えられ、ヤリによってこれらの特性が異 なっていることが既に報告されている 11.15,16)。しか し、それらの性能評価は静的な解析にとどまってい るために、ヤリの性能として示されている硬さ 16)や 慣性モーメント 11,15) 距離表示11)などの違いが、競技 者の使用感に反映きれないことが多いようである。 このような現状は、投動作がヤリの動的状態におい て行われているにもかかわらず、ヤリの性能を動的 状態のもとで評価していないために生じるものであ ろうと思われる。 本研究では、やり投競技に用いられているヤリの 動特性を解析し、動特性の評価法の確立を目指す。 1 1 . ヤリの規格と静特性 ヤリの規格はI.A.A . F .(国際陸上競技連盟)で定め られている(図 I)が、その規格には許容幅があり、材 質も金属としか明記されていない 8)。したがって、規 格の範囲内で様々なヤリを製作することが可能であ ※神戸大学発達科学部 ※※神戸大学工学部 130 受 付 平 成 3年 8月 1日 受 諾 平 成 4年 1 1月27日 12-2;1993 L日 L l L1 I2 ー ーー , ' ' ' ' ' ー戸 ド←ーーー『ーーー . ' D 2 D 3D 4 LO D 0D 6D l O e t a i l O v e r a l l T a i lt oC o fG Ha! fL 2 Head G r i p -l 「1 5 B J D S L1 T i pt oC o fG L1/ 2 H a l f L1 L2 L2/2 L 3 L4 L 2 / 2 』ーーー-.! L e n g t h s( al d i m e n s i o n s mm) S e r i a l . L 2 D 7 D 8 D 9 O i a m e t e r s( a l ld i m e n s i o n s mm) Max Min S e r i a l 2 7 0 0 2 6 0 0 1 0 6 0 9 0 0 530 4 5 0 1 8 0 0 1 5 4 0 7 0 9 0 0 7 5 0 3 3 0 2 1 6 0 1 5 0 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 O e t a i l I nf r o n to fg r i p At r e a ro fg r i p 150mm from t i p At r e a ro fhead lmmediate l yb e h i n d head H a l fway t i pt oC o fG Over g r i p Ha¥ fway t a i lt oC o fG 150mm form t a i l At t a i l Max Min 3 0 2 5 00-0. 2 5 0. 8XOO 03ー 2 . 5 0.9XOO 00+8 0. 9XOO 4XOO O. 3. 5 ヤリの規格 図│ 表│ 試料の静的諸特性 呼称 ORBIT CHAMPION ELITE OLYMPIC 全長 質量 重{.、位置 縦断面積 体積 慣性モーメ ン ト ( Cm) ( g ) ( c m ) ( cm2) ( c m 3 ) (xl O' kg・ cm') 2 6 0. 8 8 0 7. 4 1 0 6 . 0 6 4 8 1 3 5 4 4 . 6 1 S te el 1 00m, Sweden 2 6 0. 9 8 0 7 . 8 1 0 5 . 8 6 4 7 1 3 4 9 4 . 6 2 S te el Sweden 1 00m, 材 質 仕J 僚概略 ( 表示 、 制作国) 90m, Sweden 2 61 .3 8 0 8 .1 1 0 5 . 8 6 4 7 1 3 4 7 4 . 6 6 2 6 0 . 8 8 0 2 .3 1 0 6 . 0 6 5 3 1 3 6 8 4 . 5 5 CLASSIC CUSTOM 2 61 .0 8 1 8. 0 1 0 5 . 6 6 6 0 1 4 0 0 2 6 0. 9 8 0 6 . 0 1 0 5 . 2 6 4 9 1 3 6 2 SUPER LONG 2 61 .0 8 0 5 .7 1 0 5 . 6 6 5 5 1 3 8 0 3 .9 4 Ouralumin ]apan 80-90m, 2 61 .5 8 11 .4 1 0 5 . 1 6 5 4 1 3 7 7 4 . 0 6 Ouralumin ]apan 70-80m, り、実際に製作メーカーによ って多種 多様なヤ リが 製造されている 。製作メ ー カーでは、競技者のため にヤリ選択の目安として距離表示を設けている ( 例 えば、 100m と表示 されていれば¥かなりの上級者向 きであることを示す)が、実際に使用し ている競技者 の競技レベルとは必ずしも合致していないのが実状 である ) J。 本研究で用いた試料は、すべ て規格に適合した男 S t e el Ouralumin 100m, England 4 . 3 2 Ouralumin , Hungary 80m- 3 . 7 6 Ouralumin 70m, U.S.A 子の競技用ヤリであり、その静的諸特性及ぴ仕様概 略を表 lに示す。これらの静特性は、既に報告した 方法 11)で測定した。 川.実験方法 ヤリの動的な状態は、リリース時を境に投動作中 と飛行中の 2つの局面で生じる 16)。この 2局面は、本 1 3 1 l 問。司ち幻. 来、弾性体であるヤリに対し、競技者がその長軸方 1 6 )ことで生じ、その 向と異なる方向に力を加える 2, 結果、飛行中の自由状態では振動が起こる 7, 1 6 )という 関連した現象である。本研究では、飛行中における ヤリの振動モードをインパルス応答法制によって求 め、投動作中におけるヤリの動的な状態を周波数応 答法弘刷を用いて解析した。 J J CAIIplifier X 20 , ll-Jto イル~:l kHz 図 2 ヤリの加振実験(インパルス応答法) I)ヤリの振動 インパルス応答法による動特性測定法を図 2に示 す。ヤリの穂先を上にしてつるし、自由状態にした。 ヤリには先端から 130cmの箇所に加速度計 (TEAC 社製,使用最大加速度:1 5 0G)を固定し、ロードセ / レ (PCB 社製,使用最大加重:5 0 0 1 b )を備えたハン 0箇所におい マによって、先端から 25cmごと、計 1 て、加速度計の感度方向(水平方向)に打撃加振を 行った。同時に、ヤリのほぼ中央部に固定した加速 度計によって、応答振動加速度を測定した。 1 0箇所の加振力と応答振動の信号を A/D変換し、 ワークステーションへ転送した。なお、データのサ 0 0 ンプリング周波数は 2kHz、周波数分解能は 5 mHzであった。 各測定点ごとに 5回測定した振動波形を加算平均 し、高速フーリエ変換した後、加振力に対する応答 加速度の伝達関数(周波数応答関数) を算出し、コ ンブライアンスに換算した。 2)投動作中のヤリ 周波数応答法を図 3 に示す。ヤリのグリップ後端 部を治具(アルミ製:2 5 0g,自作)で固定し、加振器 κ,AapJifjer X IO , O-I\;\列島~ : l kHz 成';A a pJifier X1 0 0 0, 日一1 7 . 7 イ1 砂: 1 k Hz ←医霊畳一I C o u n t t ヨ 図 3 ヤリの加振実験(周波数応答法) 132 12-2;1993 / 一h げ﹁、 J モ国 qd 4 5 午 3 4 ( 1 1 2 H z ) i 斗よ 2 3 次ハu -A い入 h e m 仇 luh1 (Z¥ EU) ば円入ト γ h ・ │ 詩lJ 1・ 烏1 4 奇laver--2 ﹃44hilavhl 16 守, i'hlrJ'奇ト品 E T L 's 2 3次モード 5 6 6 7 7 8 19 。 〆〆〆 乙 」ι/ 1次モード 1次モード ( 2 側z ) J 5 0 目 ( 2 3 H z ) 周波数 (Hz ) 図 4 各部の伝達関数 CSUPERの例) に装着した。加振器と治具の聞にはロードセル ( IM V 社製,使用最大加重:1 0 0kgf)を取り 付け(治 2次モード ( 6 3 H z ) 2次モード ( 6 7 H z ) 具はヤリと一体であると見なす) 、 正弦波加振した時 の力を測定した。加振力が常に一定となるように発 振器 ( P a n a s o n i c 社製,最大出力電圧: 1 0dB) の電圧 を調節し、ヤりを加振した。加振周波数の範囲は、 インパルス応答法による実験結果から 15-30Hzと した。加振力の波形と治具に取り付けた加速度計 (TEAC 社製,使用最大加速度: 1 5 0G)で測定した 応答振動波形をオシロスコープに表示した。加振力 L-.J.ーーー」 ¥ 1 0剛 / N SUPE R と加速度の 2つ の 信 号 か ら 周 波 数 応 答 関 数 を 求 め9.10)、それぞれの試料について、グリ ップ後端部に ELITE 図 5 ヤリの振動モード おける共振周波数, コンブライアンス,モード減衰 比などを算出した。 また、 35mmカメラおよびストロボスコーフ。を用 S t e e l製 ( E L I T E )、Duralumin製 ( S U P E R )各 1種 1Vの電圧で加振したとき の先端部(先端から 150mmの箇所),グリップ部(グ リップ後端部),末端部(末端から 150mm の箇所)の 1 0箇所の測定点において得られた伝達関数の例 様に 5 0 0Hz以内で 6つの共振ピークが認められた。 振動様相を撮影し、試料の各部における振動振幅を また、奇数次のモードでコンブライアンスが大きく、 測定した。 末端部(先端から 2 5 0cmの箇所)の 1次モードにお いて最大値を示した。各モード聞の周波数間隔は広 いた多重撮影法により、 I V 実験結果 1 )ヤリのインパルス加振結果 インパルス応答法による実験は、代表例として 類のヤリについて行った。 ( S U P E R )を図 4に示す。いずれの箇所においても同 〈、モード聞の連成は弱い傾向であった。このよう ELITEにおいても同様であった。 ELITEとSUPERの 3次までの振動形を図 5に示 な傾向は、 す。それぞれのヤリは、 1次および、3次モードにお 1 3 3 L 同て別ち幻. 一一一-ORBIT -一一 CHAMPION 1 .3 1 - -ELITE . . . . . . OLYMPIC -_. CLASSIC CUSTOM - -SUPER --- LONG 1 3 . 8 Z d n入 ト ヤ 小 。 ト 入 門 E 8.6 1 3 . 4 : I J b J y 3 ~ Ff J 1 3 . 1 3 1 5 . 0 1 7 . 0 1 9 . 1 3 21 .3 1 2 3 . 0 2 5 . 0 2 7 . 0 2 9 . 0 周波数(Hz ) 図 6 ヤリのグリップ後端部における伝達関数(I次モード部介) いて大きく振動していたが、 2次モードではいずれ もほとんど変イ立していなかった。 両者の l次の振動形を比較すると、 ELITEの方が 変位が著しかった。また、 ELITEの変位が両端部で ほぼ同程度であるにのに対し、 SUPERでは先端部 よりも末端部の方が変位が大きかった。そして、振 動の節は、 SUPERがややグリップの方に寄ってい た 。 2 )ヤリの正弦波加振結果 加振器による実験結果を図 6に示す。これらは、 グリップ後端部における 15-30Hzの周波数範囲に おける伝達関数であり、 l次モード付近について示 している。この結果は インパルス応答法による 1 次モード付近の部分とほぼ同様な傾向をした。 8種類の試料において、共振周波数は 2 0 . 0,21 .5 , 1 3 4 2 3 . 0Hzの 3種類であり、伝達関数も概ね 3種類に 大別された。 S t e e l製のヤリの共振周波数はいずれも 2 0 . 0Hzで、これらのヤリでは距離表示のレベルが 高い方が最大コンブライアンスが小さかった。一方、 Duralumin製のヤリでは、共振周波数が高いほど最 大コンブライアンスが小さい傾;向にあった。 各試料の共振状態における先端部,グリップ部, 後端部の振動振幅を表 2に示す。 3箇所の中で最も ばらつきの大きいのは末端部分であり、ヤリによる t e e l製 の ヤ リ と 差が明瞭であった。また、 S OLYMPICの振動振幅は、他のヤリに比べてグリッ プ部では大きく、末端部では小きかった。一方、 Duralumin製の CLASSICでは、グリップ部で振幅 が最小であったのに対し、末端部では最大の値を示 した。 12-2;1993 Duralumin製のヤリでは、奇数次のモードにおけ 表 2 各部の振動振幅(片振幅) 呼 称 、 ORBIT CHAMPION ELITE OLYMPIC C L A S S I C CUSTOM SUPER LONG 平均 先端から 150mm (cm) ク守リッフc 後端 (cm) 末端から 150mm ( Cm) L1 7 0 . 7 4 2 . 3 8 0 . 9 0 0 . 7 4 2 . 4 1 1 .1 4 0 . 7 4 2 . 2 0 0 . 8 9 O .7 0 2 . 0 9 1 .08 0 . 6 2 2 .7 5 0 . 1 3 0 . 6 3 2 . 6 4 L2 3 0 . 6 8 2 . 7 2 0 . 9 9 0 . 6 6 2 . 6 7 1 .07 0 . 6 9 2 . 4 8 V . 考察 る末端部の変位が著しく、複雑な振動様相をしてい ることが伺われる。さらに、表 2でも明らかなよう uralumin製のヤリでも末端部の振動振幅 に、同じ D はヤリによって異なる。 D uralumin製のヤリの特徴 のーっとして、肉厚分布が一様で、はない 6,12)ことが報 告きれている。この影響が、各部の振動振幅の差に 現れているものと推察きれる。 飛行中のヤリの振動は、飛距離増大には不利な要 因であると指摘されている 6,7)が、振動が不利である としても、ヤリのどの部分の振幅が競技パフォーマ ンスに、より影響するかまでは明確にされていない。 いずれにしても、 D uralumin 製のヤリのように材質 の密度が小さければ、肉厚分布を変えたりつめもの をするなどして、断面 2次モーメントを変えること ができる。これによって、ヤリ自体の振動もある程 度意図的に変えることが可能になる。 1 )弾'性体;としてのヤリ 従来、ヤリは変形しない剛体として扱われ、 T e r a u d s16),菅原 15)がヤリの固有振動数を測定し、飛 行中における振動の存在は認めている 3,6)ものの、振 2 )動特性が競技に及ぼす影響 )を考 投動作中に競技者がヤリに加える力の方向 2 えると、ヤリを振動きせないで投げること不可能で、 ある 3,5,14)。したがって、弾性体としてのヤリが競技 動モードやそれらが競技に及ぼす影響にまでは触れ られていなかった。本研究では、ヤリの弾性体とし パフォーマンスに大きく影響しているといわざるを 得ない。 競技者や製作メーカーでは、ヤリの「硬き」がし ての側面を解析しようとした。 ヤリの振動数はこれまでの報告とほぼ同程度の値 0 0Hz以内の共振点の数や伝達関数 であり 7,15,16)、5 ( 図 4) は 、 2本の試料において同様な傾向であった。 これらのことから、競技用のヤリの動特性は、両端 自白状態における棒の横振動としてほぽ代表するこ とができる 9,13)ものと考えられる。ただ、振動の節の 位置は本研究で取り上げた 2本のヤリでも多少異な っており、質量均ーの単純な棒として取り扱うこと は妥当ではないと思われる。 また、図 5で、いずれのヤリも 2次モードにおけ る振動振幅が小きいのは、振動の節 ( n o d e )の近くに 加速度計を取り付けたためであろうと思われる。実 際、競技者が力を加える部分(本実験では加速度計の 位置に相当する)はグリップ後端であり、偶数次の振 動モードの節付近にあたることから、本実験により 得た結果は現実の振動に近いものと考えられる。そ して、周波数応答法により得た結果とほぼ同様な傾 向であったことから、本研究で、行ったインパルス応 答法によるヤリの振動特性評価法は妥当であったと 考えられる。 ばしば問題にされ、競技者やコーチの中には、静的 に硬いヤリは振動振幅も小さく、上級者向きである というような解釈をしている者も多い 6,16)。しかし、 ヤリの硬さは競技の場面を考慮して評価するならば、 静的ではなくむしろ動的に評価するのが妥当であろ う。特に各部の振動振幅は、投てき者の加振力の大 きさや投射スピード(厳密には、競技者によって出力 きれる力 時間曲線)とも関連してヤリの飛距離に 影響を及ぼすであろうと思われる。 共振周波数は、その付近の周波数帯域において最 も大きな応答振幅が得られる周波数であり、共振周 波数が同程度(共振状態)であれば、加振される箇所 (グリップ後端部)におけるコンブライアンスで競技 者の感じるヤリの硬きを評価することができると考 えられる。例えば、図 6の共振周波数が同じである ORBITとELITEでは、同じように投げてもコンブ ライアンスが小さい O RBITが硬く感じるであろう し、また、それぞれのヤリで共振周波数は異なるの で、周波数すなわち、競技者の出力する力一時間曲 線が異なれば、感じる硬きの順番も変わることにな 1 3 5 l 同て別ち幻. るであろう。しかし、本研究における 8種類のヤリ では、加振一応答の伝達関数は 3種類に大別される ので、競技者が投動作中に感じると思われるヤリの 硬さも概ね 3種類に分かれるものと推察きれる。 I . A .A . F .発行のルールブック 8)によれば、ヤリの仕 様については形状,重量,重心位置等の規制はある ものの、内部構造に関する規定はほとんどない。そ のために肉厚などの内部構造はヤリによって異なっ ており 12)、形状,重量などよりもむしろ、質量分布に 依存する慣性モーメントに差が認められている 11.12)。 一方、試料の 1次の共振周波数は、高いものほどグ リップ部の最大コンブライアンスが小きく、共振周 波数が同じであるものでは、振動モードの形もさほ ど違いは認められない。これらのことは、モードの 特性がヤリの材質や形状などにあまり影響を受けず、 両端部の質量、すなわち質量分布に影響を受けてい るものと考えられる。さらに、慣性モーメントを計 測することによって質量分布が推定できることから、 慣性モーメントによって、ある程度、競技用ヤリの モード特性が推測できると考えられる。 V I . まとめ S t e e l製 3種類、 Duralumin製 5種類、計 8種類の 競技用ヤリについて、インパルス応答法、周波数応 答法によりモード解析を行い、競技用ヤリの動特性 を評価、検討した。その結果、以下のことが明らか となった。 (1)ヤリの振動は、両端自由の横振動が支配的で ある。 (2)実験したヤリでは、 5 0 0Hz以内の周波数にお いて 6つの共振があり、それぞれのヤリでは偶数 次の振動モードでのコンブライアンスが小さい。 (3)試料の伝達関数(1次モード域)は 3つに大別 1 3 6 きれ、伝達関数の異なるヤリでは競技者の使用感 も異なるものと考えられる。 (4)競技用のヤリでは、 1次の共振周波数が高い ものほどグリッフ。音E のコンブ。ライアンスはイ、きく、 材質、形状などには、あまり影響きれない。 文献 1 )A r b e i t ,E .:Threey e a r so ft h enewj a v e l i n . Track Technique,1 1 0:3 5 2 2,1 9 9 0 . 2)有賀誠司,古谷嘉邦:槍投げ競技における投げの局面の 動作に関する研究一槍に加わる力にっていー, 日本体育学 会第 3 7回大会号 B ・7 6 4, 1 9 8 6 3) B a r t l e t t ,R . M.a ndR.f .Best:Thebiomechanicso f 3 8,1 9 8 8 . j a v e l i nt h r o w i n g : ar e v i e w .] .S p o r t sS e i .6・1 4) B o r g s t r o m ,A .:Twoy e a r sw i t ht h enewj a v e l i n . N e w 5 8 8,1 9 8 8 . s t u d i e si nATHLETICS,1:8 5) E .N.?トベーエフ ヤリ投げ,陸上競技トレーナー用 教科書,大修館書庖,東京, 1 9 7 8,4 4 3 4 5 2 6)林幸信:やり投げ,陸上競技のコーチング(II),大修館 書庖,東京, 1 9 7 9,3 3 8 3 4 3 7) Hubbard ,M.a ndC .D.Bergman:E f f e c to fv i b r a t i o n s onj a v e l i nl i f tandd r a g .I n t .] .o fS p o r tB i o m e c h a n i c s . 9 8 9 5:4 0 5 9,1 . A .A . 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