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治水安全度

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治水安全度
H5-7
超過洪水を考慮した河川堤防管理に関する基礎的研究
A Study on River Levee System Taking Account of Exess Flood
○伊藤 学 1,吉川勝秀 2
Manabu ITO, Katsuhide YOSHIKAWA
River levee systems are assumed to protect human lives and assets from flooding. River levee system breaches and flooding occurs
due to excess floods. The mechanism of breaching of levees, over topping, erosion, sea page and so on, is mainly due to the rising
water level by increased discharge. In this study, water level and over topping characteristics of river levee system are investigated
based on One-Dimensional Analysis Model.
1.はじめに
河川堤防は本来,氾濫原の人命・資産を守る重要な役割を担っている.その堤防は,計画あるいは堤防能力を超える
規模の超過洪水によって堤防が決壊し,洪水氾濫が起きる可能性がある.洪水氾濫が生じた場合,被害ポテンシャルに
対応して被害が生じる.このため,計画洪水に対してだけではなく超過洪水も考慮した堤防管理が望まれる.
そこで本研究では,堤防決壊要因の実態を整理し,堤防決壊の要因を明らかにした.また水理解析モデルを構築し,
ある流量規模に対応した水位と計画高水位,さらには堤防越水について縦断的に分析することにより,河川の氾濫リス
クの評価を行った.
2.堤防決壊の概要
堤防の決壊要因は,越水,洗掘,漏水・浸透,構造物周りの浸透の4つに分類することができる[1]。
Fig1 に利根川水系における堤防決壊事例を要因別に類型化した結果を示す。Fig1 より,越水による堤防決壊が 80%
と多数を占めていることがわかった.
3.水理解析モデルの構築
堤防決壊要因の割合の多数を占めている越水は,流量の増加に伴う水位上昇により起きる.そこで,流量規模に対応
した水位を定量的に評価するため,準 1 次元不定流解析モデルを構築するとともに,利根川を対象として河川の氾濫特
性について検討した.
3-1 河川条件
対象河川は利根川本川とし,
公開されている縦横断面データより河道を設定した.
河川粗度は計画粗度と昭和 57 年,
58 年の実績洪水から逆算された粗度係数を比較し,現況はより近い粗度係数を用いた.
3-2 境界条件
上流端境界条件である利根川本川(八斗島)の流量と,江戸川の分派流量を Table1 に示す.上流端境界条件は,計
画高水流量と超過洪水として計画高水流量を 1 割~4 割まで増加させた値を用いた.下流端境界条件は,朔望平均満潮
位である 2.3m とした.
4.1 次元不定流解析モデルを用いた河川の縦断的評価
4-1 流量の増加に伴う越流水深と越流幅の関係
計画高水流量時の水位は,堤防システムの設計水位である計画高水位を,ほぼ全区間において超えると推定される.
堤防決壊の最も直接的な原因である堤防越水について解析した結果を,左右岸の天端高を基準とした際の水位と天端
高との差分値として Fig.2 に示す.Fig.2 より,下流の無堤防区域を除いて計画高水流量時の水位はわずかではあるが
中流部において天端高越えることがわかった.さらに流量規模を増加させると,越流は中流部で上下流に広がり,越流
水深も大きくなる.
4-2 その他要因による水位への影響
1:日大理工・院・交通 2.日大理工・教員・交通
566
① 計画粗度係数と現況粗度係数の違いによる水位への影響
利根川における粗度係数は,計画では上流の粗度係数が小さく,中流・下流の粗度係数は大きく設定されている.し
かし現況に近い逆算粗度は,上流の粗度係数が大きく,中流・下流の粗度係数は小さくなっている.そこで,計画粗度
と逆算粗度の違いによる水位への影響を水理解析モデルを用いて推定した.粗度係数以外同様の条件で水位を縦断的に
比較すると,計画高水流量時,上流側では現況粗度での水位は計画粗度の水位に比べ約 50cm 高く,下流側では計画粗
度の水位に比べ約 1m 低くなった.
②江戸川への分派率の違いによる水位への影響
江戸川の計画分派率は 0.3592 とされているが,現況の分派率は 0.25 程度である.そこで,江戸川への分派率の違い
が利根川本川の水位に及ぼす影響を評価した.
計画高水流量時の水位への影響として,現況の分派率では計画分派率に比べ最大約 1.5m の水位上昇となる.
③堤防決壊による氾濫で生じる水位低下
氾濫によって下流部への流下流量が減少し,水位が低下する.そこで,堤防決壊に伴う氾濫によって下流部にどの程
度の水位低下がみられるかを評価した。
仮定した決壊箇所は実際に昭和 22 年のカスリーン台風によって決壊した栗橋上流部とした.最大の水位低下量を評
価するため,堤防決壊に伴う氾濫流量を 10003/s 単位で増加させた.
水位低下量として,決壊地点より上流部では 1000m3/s 毎に約 25cm の水位低下がみられた.また下流部では,1000
m3/s 毎に約 50cm の水位低下見られた.水位が低下する影響範囲は,決壊箇所から上流部では約 20km,下流側では
河口付近まで水位低下の効果が及ぶ.
(m3 /s)
Upstre am
Overtopping
Leak around the structure
Leak and Permeation
9% 3%
Separate s
Disch arge
Edo river
Ton e River
De sign Flood
Up 10% from Design Flood
( recurrence i nterv a l :450y ea rs )
16500
4125
18150
4537.5
Up 20% from Design Flood
19800
4950
21450
5362.5
23100
5775
( recurrence i nterv a l :800y ea rs )
88%
Up 30% from Design Flood
( recurrence i nterv a l :1400y ea rs )
Figure1 Percentage of breach factor
Up 40% from Design Flood
( recurrence i nterv a l :2500y ea rs )
■:Design Flood ■:Excess Flood
Table1 Discharge condition of analysis
difference value based on
levee crown height (m) 19800m3/s
Yattajima
4
3
2
21450m3/s
23100m3/s(Excess Flood)
Toride
Kinu
Kokai
River
River
Kurihashi
Edo
Wataras
River
e
River
Right bank
difference value based on
levee crown height (m) 18510m3/s
16500m3/s(Design Flood)
5
Sawara
1
0
‐1
‐2
‐3
‐4
200
190
180
170
160
150
140
130
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
Distance from the river mouth (km)
18510m3/s
16500m3/s(Design Flood)
19800m3/s
21450m3/s
23100m3/s(Excess Flood)
Left bank
5
4
3
2
1
0
‐1
‐2
‐3
‐4
‐5
Yattajima
200
190
180
Kinu Toride
River
Kurihashi
Edo
Wataras
River
e
River
170
160
150
140
130
120
110
100
90
Sawara
Kokai
River
80
70
60
50
40
30
20
10
0
Distance from the river mouth (km)
Figure2 Difference value of water level based on levee crown height
5.結語
本研究では,準 1 次元不定流解析モデルを構築し利根川に適応することで河川の氾濫に関する特性を明らかにした.
すなわち,現況河川で洪水規模と計画高水位との関係,堤防決壊の直接的な原因となる堤防越流について解析し,河川
堤防システムの実管理に資する解析結果を示した.
これらの結果は,堤防をシステムと捉え,超過洪水を考慮した河川の実管理を行う上で有用であると考える.
6.参考文献
[1] 吉川勝秀:
「河川堤防学」
,技報堂出版、2008
567
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