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理科学習指導案
理科学習指導案 指導日時 指導学級 指導者 場所 1 単元名 2 単元について 5月 23 日(水)1校時 第2学年2組 教諭 髙橋 由美 第1理科室 動物の世界「動物のからだのはたらき」 (1) 単元観 私たちは日常生活の中で,ごく当たり前のように食事を摂ったり,排泄をしたり,呼吸をしたりしな がら生きている。当然このような活動なしには私たちは生きられない。しかし,私たちは摂取した食物 がどのような経路で体内に取り込まれ,どのような経路で不要なものが排出されるのか,また,口から 吸い込んだ酸素が,肺のどのようなしくみで体内に取り込まれているのかなど,意識することは少ない。 自分自身や身近な人の病気などによってはじめてからだの巧妙なシステムを意識する程度である。動物 のからだのはたらきについて改めて考えさせられる機会となる単元である。 私たちは「動物」というと,人間とそれ以外の動物を切り離して考えてしまう傾向がある。人間のか らだのつくりがその他のどの動物よりも優れているという考え方をもっている生徒も少なくはない。 本単元は人間だけではなく,さまざまな動物が生活をする場所や生活の方法などによって多様性をつ くりあげていくことも理解させ,人間を含め,自然界に生きる生物について興味・関心を高め,総合的 な見方や考え方を養うのに適した題材である。 (2) 生徒観 本学級は,男子18名,女子17名,計35名で構成されている。全体的に実験・観察に意欲的に 取り組んでいる。 動物に関する事前調査(平成19年4月実施)の結果は以下のようになった。 ①興味・関心に対する調査結果 あなたは動物について興味を持ってい はい どちらかといえばはい どちらかといえばいいえ いいえ ますか。 12.1% 48.5% 30.3% 9.1% どのような部分に興味を持っているか 動物の走る速さ,動物の行動,人と動物のちが うところ,生態系,内蔵,感情について,動物 の能力,特徴,空を飛ぶ力,たてがみ,生命力, 嗅覚,種類,特徴,人間になつくところ 動物のからだのしくみを知りたいと思 はい どちらかといえばはい どちらかといえばいいえ いいえ いますか。 0.0% 48.5% 39.4% 12.1% 動物のからだのしくみについて知りた ・筋肉 ・耳,鼻 ・歯の並び方 いと思うことは何ですか。 ・いろいろな動物の脳の形 ・心臓の形 ・腸の内部,胃の内部 ・脳の大きさ ・尾は何のためにあるか ・鳥の飛べるしくみ あなたは自由研究で,動物に関する実 ある ない 験・観察をしたことがありますか。 6.1% 93.9% 上の質問であると答えた生徒は,何を ・トンボの種類 作ったことがありますか。 ・アゲハチョウの観察 2年理科 - 1 - ②実験の技能・表現,科学的な思考に関する調査結果 質 問 はい 今まで(1∼2年)の実験で目的をしっかり と把握して取り組んでいましたか。 18.2% 今まで(1∼2年)の実験できちんと予想を 立てて取り組んでいましたか。 27.2% 今まで(1∼2年)の実験で他人にばかり頼 らず,主体的に取り組んでいましたか。33.4% 今まで(1∼2年)の実験で正しく器具を使 うことができましたか。 27.3% 今まで(1∼2年)の実験で,結果から,じっ くりと考察することができましたか。 18.2% 今まで(1∼2年)の実験で,結果をその後の 学習に役立てることができましたか。 18.2% どちらかといえばはい どちらかといえばいいえ いいえ 63.6% 15.2% 0.0% 63.6% 15.2% 0.0% 51.5% 12.1% 0.0% 57.6% 12.1% 0.0% 66.7% 12.1% 0.0% 54.5% 24.3% 0.0% ③知識・理解に関する調査結果 小学校で学んだ動物のことや動物の実 はい どちらかといえばはい どちらかといえばいいえ いいえ 験について覚えていますか。 0.0% 18.2% 42.4% 36.4% 小学校で学んだ動物のことや,動物の ・いもむしがさなぎになるところ 実験・観察の中で,印象に残っている ・メダカの観察 ものは何ですか。 次の臓器のはたらきについて知っていますか 知っている 少し知っている 全く知らない 心臓 12.1% 48.5% 39.4% 胃 27.3% 51.5% 21.2% 肺 39.4% 48.5% 12.1% 肝臓 9.1% 30.3% 60.6% じん臓 3.0% 24.3% 72.7% すい臓 3.0% 18.2% 78.8% ①の,興味・関心に対する調査結果では,動物とそのからだのしくみについて知りたいと思ってい る生徒は約半数とあまり多くないことが分かる。,『動物に関する実験や観察をしたことがあるか』と いう質問に関しては6.1%とごくわずかであり,自ら動物にかかわっていこうとする意欲が非常に 低いことがわかった。 ②の実験の技能・表現,科学的な思考に対する調査結果では,実験そのものに対する取り組みは全 体的に良いといえるが,実験の目的を把握したり,実験の結果からじっくりと考察したり,実験の結 果をその後の学習に役立てる事ができない生徒もいることが分かった。 ③の,知識・理解に対する調査結果では,小学校で学習した動物に関する学習内容を覚えている生 徒が18.2%と低かった。肝臓,じん臓,すい臓についてのはたらきを全く知らない生徒が多いこ とも分かった。 (3) 指導観 アンケート結果からわかるように,私たち人間が動物の一員であるにもかかわらず,動物に関する 興味は高いとはいえず,からだのしくみについての関心はさらに低いことがわかった。食事を摂った り,排泄をしたり,呼吸をしたりするうえでどのような臓器がどのようなはたらきをし,生命をつな いでいるのかを理解させるため,できるだけ身近な動物や内臓に触れながら関心・意欲を高めさせた い。そのためには『人間のからだのしくみ』と『人間以外のからだのしくみ』を切り離して考えるこ とのないように留意し,人間を含め,いろいろな種類の動物の中で共通する部分,ちがう部分をとら えさせながら授業を進めていきたい。 2年理科 - 2 - 具体的には,次の方法を指導の手だてとして授業に取り組んでいきたい。 ① できるだけ身近な材料を用いた観察・実験を行い,興味・関心を高めさせる。 ② 五感を使って調べられる体験的な観察・実験を,できるだけ多く行うようにする。 ② 実験・観察に入る前に,実験の目的の確認,予想をしっかりと行う。 ③ 実験・観察に入る前に,実験器具などの取り扱い方の確認を確実に行う。 ④ 実験の結果から,考察する時間を十分に設ける。 ⑤ 学習プリントを用い,記入事項の焦点化を図り,能率良く授業を進め,基礎的・基本的な力がな かなか身に付かない生徒に対する個別指導も徹底する。 ⑥ 小テストなどを用い,重要事項を復習させ,自信を持たせる。 3 単元の目標 (1) 単元の指導目標 身近な動物についての観察・実験を通して,動物の調べ方の基礎を身につけるとともに,動物のから だのつくりとはたらきを理解し,動物の種類やその生活についての認識を深め,自然環境を保全し,生 命を尊重しようとする意欲と態度を育てる。 (2) 本単元の評価規準 自然事象への 科学的な思考 観察・実験の 自然事象についての知 関心・意欲・態度 技能・表現 識・理解 動物のからだのつく 動物のからだのつくり 動物のからだのつくりとは 動物のからだのつくり りとはたらき,動物 とはたらき,動物のな たらき,動物のなかまに関 とはたらき,動物の仲 のなかまに関する事 かまに関する事物・現 する事物・現象についての 間に関する事物・現象 物・現象に関心をも 象のなかに問題を見い 観察・実験を行い,基本操 について理解し,知識 ち,意欲的にそれら だし,解決方法を考え 作を習得するとともに,規 を身につける。 を 探 求 す る と と も て観察・実験を行い, 則性を見いだしたり自らの に,自然環境を保全 事象の生じる要因やし 考えを導き出したりして, し,生命を尊重しよ くみを分析的,総合的 創意ある観察・実験の報告 うとする。 に考察して,問題を解 書を作成し,発表すること 決することができる。 ができる。 4 指導・評価計画〔2章 節 第1節 食 物はどの ようにし て体内に とり入れ られるか 第 動物のからだのはたらき〕 学習活動 評価規準 ・動物が生きて活動するために必要なものは何 ・動物が生きるためには,食物を外界からとり入れなけ かを考える。さらに動物はどのようなものを食 ればならないことを確認し,それらが体内にとり込まれ べているかについて話し合う。 るしくみについて,調べようとする。 ・口の中で起こる消化活動について考える。ま 【関心・意欲・態度】 た,歯の形やあごの動かし方についても,他の ・口で行われる咀しゃく(物理的消化)について, 動物と比較しながら自分の体を例にして調べて 食べ物の種類との関連から推察し説明できる。 みる。 【科学的な思考】 1 ・食べ物に含まれる栄養分に関する説明を聞く。 ・主な栄養分として,有機物(炭水化物,タンパク質, 校 ・ヒトの消化系のつくりとはたらきの説明を聞 脂質)と無機物があげられることを理解する。 時 く。 【知識・理解】 ・だ液を例として消化管から消化液が分泌され ・ヒトの消化系のつくりと消化のしくみについて説明で ること及び,消化液と消化酵素のはたらきにつ きる。 いての説明を聞く。 ・消化液と消化酵素のはたらきについて説明でき る。 【知識・理解】 【知識・理解】 ・米をずっと噛んでいると甘く感じるのはなぜ ・米をずっと噛んでいると甘く感じるのはなぜか興味を かを考える。 もつことができたか。 2年理科 - 3 - 【関心・意欲・態度】 第 ・実験3を行い,米に含まれるデンプンにだ液 ・だ液によって,デンプンが糖に分解されること 2 をまぜるとどのような変化が起きるか調べる。 を,実験により検証することができる。 校 ・実験結果をもとに,だ液のはたらきと性質に 時 ついて考察する。 【観察・実験の技能・表現】 ・デンプンが糖に変化することを,酵素の働きと関連づ ・だ液にはアミラーゼという消化酵素が含んで けて推定できる。 科学的な思考】 おり,その他の消化液にもいろいろな消化酵素 ・だ液にはアミラーゼという消化酵素が含んでおり,そ が含まれているという説明を聞く。 の他の消化液にもいろいろな消化酵素が含まれていると いうことを理解する。 【知識・理解】 ・いろいろな食物の消化・吸収についての説明 ・いろいろな消化酵素のはたらきにより,食物に含まれ を聞く。 ているそれぞれの成分が分解され,小腸の柔毛から吸収 ・小腸のつくりについての説明を聞き,小腸の されることを説明できる。 【知識・理解】 第 表面積が大きいことの利点について考察する。 ・柔毛が無数にある理由を,効率的な養分の吸収と関連 3 づけて,説明できる。 【科学的な思考】 校 ・ほかの動物の消化管のつくりのちがいについ ・肉食動物と草食動物の消化管のちがいを,その食生活 時 ての説明を聞く。 第2節 第 エネルギ 1 ーをどの 校 ようにし 時 て得るか。 と関連づけて考察できる。 【科学的な思考】 ・小腸で吸収された養分は,どこに運ばれ ・小腸で吸収された養分のゆくえと,その経路について, て何に使われ,使われたあとはどうなるの 調べようとする。 【関心・意欲・態度】 か,身近な生活と結びつけて考える。 ・エネルギーをとり出す時に必要なものについ ・養分が使われる場が全身の細胞であることおよび,そ て,自動車などと比較しながら考える。 の時に,酸素が必要なことを理解する。 【科学的な思考】 ・呼吸系のしくみとはたらきについての説明を ・肺胞でのガス交換について説明できる。 【知識・理解】 聞く。 ・酸素を運搬する血液(赤血球)のはたらきに ・血液によって,酸素,二酸化炭素が全身の細胞に運ば 関する説明を聞く。 れることを理解する。 【知識・理解】 本 ・トリの心臓から出ている管にスポイトで水を ・ヒトと同じつくりをしているニワトリの心臓のつくり 時 注入し,そのときの様子を観察する。 について,興味・関心をもち,意欲的に調べようとす る。 【関心・意欲・態度】 ・トリの心臓から出ている管にスポイトで水を注入した ときの水の動きから,弁の存在や,部屋が分かれている ことに気付く。 【観察・実験の技能・表現】 ・トリの心臓を解剖し,心臓の内部の心室や心 ・トリの心臓を解剖し,心臓の内部の心室や心房につい 房について観察する。 て観察できる。 【観察・実験の技能・表現】 ・心臓は,逆流を防ぐための弁があり,血液を ・心臓には,逆流を防ぐための弁があり,血液を循環さ 循環させるためのポンプとしてはたらいている せるためのポンプとしてはたらいていることを理解でき ことの説明を聞く。 る。 【知識・理解】 第 ・血液の循環経路を示した模式図に,心臓の弁 ・血液の循環経路を示した模式図に,心臓の弁の向きか 3 の向きから判断し,血液の流れる方向を矢印で ら判断し,血液の流れる方向を矢印で描き込むことがで 校 描き込む。 きる。 【知識・理解】 時 ・動脈と静脈,動脈血と静脈血の説明を聞き, ・動脈と静脈,動脈血と静脈血の説明を聞き,血液の循 血液の循環経路を示した模式図に動脈血は赤, 環経路を示した模式図に動脈血は赤,静脈血は青で色を 静脈血は青で色を塗り,血液循環についての理 塗り,血液循環について理解できる。 【知識・理解】 解を深める。 ・血液循環について,肺や小腸などの各器官の ・体循環と肺循環を理解し,血液循環について,肺や小 はたらきと関連づけ,なぜ血液が逆流するとい 腸などの各器官のはたらきと関連づけ,なぜ血液が逆流 けないのかということを考察する。 するといけないのかということを考察できる。 【科学的な思考】 ・血液の流れを調べる観察を行う。 【科学的な思考】 ・メダカの尾びれなどを材料に,毛細血管やその中を流 2年理科 - 4 - ・動物実験について,実験動物に負担をかけな れる血球のようすを観察できる。 い方法について考える。 【観察・実験の技能・表現】 ・血液のはたらきに関する説明を聞く。 ・動物実験について,実験の必要性と動物愛護の観点か ら考察できる。 第 ・組織液についての説明を聞く。 4 【科学的な思考】 ・血液に含まれる細胞の役割および血しょうについて説 明できる。 【知識・理解】 校 ・細胞の物質交代と,細胞内の呼吸についての ・血管からしみ出た血しょうが,組織液となり,細胞と 時 説明を聞く。 の間で,物質交換の仲介をしていることが説明できる。 【知識・理解】 ・血液によって細胞に運ばれた養分と酸素から,エネル ギーがとり出され,二酸化炭素と水ができることを説明 できる。 第3節 不要な物 質はどの ようにし て取り除 かれるの か。 5 【知識・理解】 ・細胞が活動してできた不要な物質が,どこで, ・体内で発生した不要物のゆくえについて,興味・関心 どのようにして体外に排出されるか考える。 をもつ。 【関心・意欲・態度】 第 ・体内で生じた不要物が,肝臓と腎臓で処理, ・細胞の活動にともなってできた有害なアンモニアが排 1 排出されるしくみについての説明を聞く。 出される一連のしくみを説明できる。 【知識・理解】 校 ・消化吸収,呼吸,血液循環,排泄の結びつき ・消化器官,肺,心臓,腎臓,肝臓などの器官のはたら 時 について考える。 研究主題との関連 校内研究主題 理科研究主題 きを,関連づけて総合的に説明することができる。 【科学的な思考】 自ら学び,基礎・基本を身につける力の育成 ∼各教科での工夫,学年・学校全体での連携を通して∼ 基礎・基本の定着を図り,意欲・関心を高めるための指導法の工夫 ◎基礎・基本についての解釈 ・基礎とは・・・ 授業を進める上で,知っておく必要がある最低限の知識であり,その単元を行う までに学習している内容がそれにあたる。 ・基本とは・・・ 授業を行った結果として,定着させるべき最低限の知識であり,教科書に載って いる内容がそれであると考える。 ※ 安全に実験を行うための知識,技能は,基礎・基本の両者に含めて考える。 ○本単元における基礎 ・身近な動物を観察したことがある。 ・小学校で学習した昆虫のからだのつくりと育ち方を理解している。 ・小学校で学習したヒトやほかの動物の外呼吸,消化・吸収,血液の物質運搬などの初歩的な内容 を理解している。 ○本単元における基本 ・運動器官や感覚器官,神経系,骨格と筋肉のつくりとはたらきについて理解する。 ・消化,呼吸,血液循環,不要物の排出などのしくみなどについて理解する。 ・魚類,両生類,ハチュウ類,鳥類,ホニュウ類それぞれの特徴や,無セキツイ動物の例などにつ いて理解する。 2年理科 - 5 - ○基礎・基本を定着するための工夫 ①「実験・観察の有効な活用」 ・実験・観察の前に,実験器具の使い方などをしっかりと身につけさせる。 ・実験・観察の前に,結果の予想,予想した理由を実験・観察プリントに記入させ,評価の材 料とする。評価の規準と基準は常に生徒に知らせ次回の授業への意欲を高めさせる。 ・実験から何がわかったかを実験・観察プリントに記入させ,評価の材料とし,次時の指導に おいて活用する。 ②「宿題と小テストの連携」 宿題を出した場合,生徒は宿題をやったということだけで満足してしまい,学習内容が定着した とは言い切れない。そこで,出した宿題の中から必ず小テストを行うことにした。生徒には次の手 順で宿題を行うように指導した。(宿題には補助教材のワークブックを用いた。) 1 問題を自分の力で解く 2 答を見ながら採点をし,間違ったところは赤ペンで正解を書き入れる。 3 答を隠しながら何度も繰り返し解く。 4 完全に理解した状態で小テストに臨む。 ③「学習プリントの活用」 字や絵をかくという作業は,基礎・基本の定着を図る上で重要な要素のひとつであるが,その内 容が多すぎると,丁寧にノートに写しただけで満足し,板書を写している間は,説明を聞くことが できないばかりか,時間も多くかかってしまう。そこで,学習内容を理解するために必要な部分の みを記入するための学習プリントを作成し,ノートに毎回貼り付けることとした。 6 本時の指導計画 (1) 題材名 「心臓のはたらきを調べよう」 (2) 本時のねらい ・ヒトと同じつくりをしているニワトリの心臓のつくりについて,興味・関心をもち,意欲的に調 べようとする態度を養う。 ・トリの心臓から出ている管にスポイトで水を注入したときの水の動きを観察し,弁の存在や,部 屋が分かれていることに気付かせる。 ・トリの心臓を解剖し,心臓の内部の心室や心房について観察させる。 ・心臓には,逆流を防ぐための弁があり,血液を循環させるためのポンプとしてはたらいていること を理解させる。 ○本時における基礎 ・心臓がからだのどの部分にあるか理解している。 ・心臓が全身の血管とつながっていることを理解している。 ○本時における基本 ・ヒトと同じつくりをしているニワトリの心臓のつくりについて,興味・関心をもち,意欲的に調 べることができる。 ・トリの心臓から出ている管にスポイトで水を注入したときの水の動きを観察し,弁の存在や,部屋 が分かれていることに気付く。 ・トリの心臓を解剖し,心臓の内部の心室や心房について観察する。 ・心臓には,逆流を防ぐための弁があり,血液を循環させるためのポンプとしてはたらいているこ とを理解する。 2年理科 - 6 - どの生徒にも,上記の基本を定着させるために,実験プリントをできるだけ簡素化し,一目瞭 然で結果が分かるように工夫した。上位の生徒には,左心室の壁が右心室よりも厚い理由につい て考えさせたい。 なお,本時扱う「心臓の構造」については,学習指導要領の解説P73では取り扱わないこと になっており,発展的な内容ではあるが,生徒の普段の授業における興味,関心の高さ,基礎的 ・基本的な内容の習得状況から,生徒達の負担にはならないと考えた。また,今後の血液循環の 指導に大いに役立つと考え,あえて取り上げ,年間指導計画にも書き加えることとした。 (3) 準備物 ピンセット,平たいバット,カミソリ,枝つき針,エタノール(消毒用),ビニール手袋(薄手) 鶏肉(ハツ)マスク,スポイト(大),氷 (4) 指導過程 (5) 評価の観点と方法 評価方法 関心・ 実験態度 意欲・ 態度 (別紙1) 十分満足できる(A) おおむね満足できる (B)到達が難しい生徒(C)への支援 ・心臓のつくりについて 与えられた課題以外にも 積極的に調べ,追究しよ うとする意欲がある。 ・ヒトと同じつくりをして いるニワトリの心臓のつく りについて,興味・関心を もち,意欲的に調べること ができる。 できるだけ心臓に触れさせ, その感触などを体感させ,ヒ トのからだにも同じものが入 っていることに気付かせる。 実験の 実験態度 ・心臓のつくりについて,・トリの心臓から出ている ・失敗を気にせず,自分の手 技能・ 実験プリン 独自の方法で調べ,デー 管にスポイトで水を注入し で実験を行うように支援する。 表現 ト タをまとめることができ たと き の 水の 動 きを 観 察 いろんな穴に何度も水を注入 る。 し,弁の存在や,部屋が分 して気付かせる。 ・心臓を切り開いた際, かれていることに気付く。 ・カミソリを無理に押し込む けんや,弁などをじっく ・トリの心臓を解剖し,心 のではなく,すーっと前に引 りと探し,まとめること 臓の内部の心室や心房につ くことで簡単に切れるこつを ができる。 いて観察できる。 つかませる。 知識・ 実験プリン ・心臓に逆流を防ぐため ・心臓には,逆流を防ぐた 理解 ト の弁がないと常に新鮮な めの弁があり,血液を循環 発表 血液が全身に運ばれない させるためのポンプとして ということを理解できる。はたらいていることを理解 できる。 (6)座席表 (略) (7)予想される板書事項 2年理科 - 7 - ・演示実験や資料を提示し, 心臓が動いている様子を見せ ることにより,ポンプの役目 を理解させる。 板書① トリの心臓を観察してみよう トリの心臓から出ているいろいろな血管から水を注入すると… 一部の血管から水が出る→いくつかの部屋に分かれている。 水が出てこないときもある→逆流を防ぐつくり = 弁 2年理科 - 8 - 別紙1 (4)指導過程 導 入 5 分 指導事項 1.肺で取り込んだ酸素は 血液によって全身の細胞に 運ばれる必要があることを 確認させる。 2.全身の細胞の活動によ ってできた二酸化炭素は血 液によって肺まで運ばれ, 体外に出す必要があること を確認させる。 生徒の学習活動 ・肺で取り込んだ酸素は血 液によって全身の細胞に運 ばれる必要があることを確 認する。 ・全身の細胞の活動によっ てできた二酸化炭素は血液 によって肺まで運ばれ,体 外に出す必要があることを 確認する。 指導上の留意点 ・生命を保つためには, 体内の血液が常に循環し ていなければならないと いうことをしっかりと確 認させる。 評価の観点・方法 ・前時の学習内容の 確認ができたか。 (観察・プリント) ・積極的に発表でき たか。 (観察) トリの心臓を観察してみよう 展 開 3.実験・観察の方法・注 ・実験・観察の方法を聞く ・刃物を用いるので,慎 ・実験の注意点をし 35 意点について説明する。 重に解剖に取り組むよう っかりと聞くことが 分 に指導する。 できたか。 (観察) 4.実験を開始する。 ・トリの心臓から出ている 血管全てににスポイトをさ し,水を注入し,その様子 を確認させる。 ・トリの心臓から出ている 血管全てににスポイトをさ し,水を注入し,その様子 を確認する。 ・生臭さを抑えるために 氷水に浸しておいた心臓 を用いる。 ・スポイトの先をしっか りと血管にねじ込む。無 理に水を押し込まない。 ・トリの心臓を切り,内部 ・トリの心臓を切り,内部 ・ただ切っただけでは, を観察させ,いくつかの部 を観察する。 心房,心室は観察しづら 屋に分かれていることに気 いので,ピンセットでよ 付かせる。 く開くようにする。 ・刃物でけがをしないよ うに注意する。 積極的に観察を進め ることができたか。 (観察・プリント) ・積極的に心臓の内 部を開いて観察する ことができたか。 (観察) ・実験の注意点を守 っているか (観察) 5.実験の後片付けをし, ・実験の後片付けをし, ・生ものを扱うので念入 ・観察で気付いたこ 念入りにエタノールで机や 念入りにエタノールで机や りに消毒し,手をしっか とをしっかりとまと その周辺を消毒させ,実験 その周辺を消毒し,実験結 りと洗わせる。 めることができた 結果をまとめさせる。 果をまとめる。 か。 (観察・プリント) ・進んで片づけをし ていたか。 (行動観察) 終 6.実験・観察で気付いた ・実験・観察で気付いたこ 結 ことを発表させる。 とを発表する。 20 分 7.演示実験,弁のモデル ・演示実験,弁のモデルを をみせ,心臓のはたらきに みて,心臓のはたらきにつ ついて理解を深めさせる。 いて理解を深めさせる。 ・他の生徒の発表をしっ ・他の生徒の発表も かりと聞くようにする。 記入することができ たか。 (発表・プリント) ・観察ではよくわからな ・心臓のしくみにつ かった部分も補えるよう いて分かったことを に 分 か り や す く 説 明 す まとめることができ る。 たか。(プリント) 8.なぜ血液は一定方向に ・なぜ血液は一定方向に流 ・次の血液循環の説明に 流れる必要があるのかを問 れ る必 要 が あ るの か 考 え つなげるためにも次回ま 題提起する。 る。 でに考えさせておく。 2年理科 - 8 - 〈概要〉 ○実験に至るまで 心臓は,血液循環のポンプの役割をしている。このことをどのような方法ならうまく理 解させることができるのか…。やはり,ポンプには欠かせない弁の存在にはどうしても気 付かせたい。学習指導要領において,心臓の構造についてまでは扱わないとされているが, 生徒の普段の授業における興味,関心の高さ,基礎的・基本的な内容の習得状況から,生 徒達の負担にはならないと考え,心臓の解剖実験を計画した。 ニワトリの心臓(ハツ)の解剖実験は知っていたが,実はあまり得意ではなく,ためら っていた。生臭さに耐えながら何個もニワトリの心臓を解剖してみたが,なかなか弁らし きものが見あたらない。もしかしてこれか?というものはみつかったが,自信はない。 そのとき,ふとひらめいた。心臓から出ている管にスポイトで水を注入してみたらどう だろう。目で見えなくても現象で分かるのではないだろうかと考えた。 水を入れても押し戻され,心臓が水でふくらむ→弁の存在 水が他の穴から出るときは,決まった穴からだけ→いくつかの部屋に分かれている ○創意工夫した点 ・実験の直前は氷水で冷やしておくと生臭さが解消されるばかりではなく,心臓がやわ らかくなり,水を注入しやすくなる。 ・全ての穴にスポイトで水を注入する。大きめのスポイトで多めに水を注入する。 小さいスポイトだとわきから水が漏れてしまう。 水は出ず,心臓がふくらんだ。 ↓↓↓ 決まった穴から勢いよく水が飛び出した。 無理に入れようとすると脇から ブシューッ!と押し戻される。 -1- ・各班に2つずつ心臓を渡し,1つは縦。もう一つは横に 切る。 ・縦に切るときは断面が広くなるように切る。 (右の図のように切ると,心房,心室の断面が見られる) ・カミソリを用いると組織を傷つけずにうまく切れる。 上下に2つ部屋がある 左右にも2つ部屋がある。部屋の壁の厚みは全く違う ・弁の存在を,視覚にもうったえかけるよう,ペットボトルで模型を作製した。 → → → → → → いくら振っても逆流しない。 -2- ○生徒の反応 心臓の解剖を実施すると生徒に予告したとき,女子の中には,複雑な表情をする生徒も いたが,実際の実験では,女子の方が活発に取り組んでいた。各班で「キャー」という声 が聞こえたが,どちらかというと歓声であった。何度もスポイトで水を注入したり,解剖 した心臓を指で押し広げて,よく観察したりする様子が見られた。心臓を切ってからも, 水を注入してその流れる方向を調べている生徒もいた。「先生,もう少し細かく切っても いいですか。」と質問し,さらに細かく切って内部を観察する生徒もいた。 1クラスこの実験を終えると,あっという間に他のクラスに情報が伝わり,とても楽し みにしている生徒が多く,意外な場面での効果も感じられた。 逆流しないということに気付いた。 心臓の中には,2つの管があるという考え方をした 例。解剖する前であれば,そのように考えるのも無 理はない。経路が分かれているという考え方を十分 に評価したい。 -1- 心臓の中のひだや腱に気付いた例。腱については 水が出てきた管に,逆に水を入れると出てこない 学習済みである。 ことに気付いた例。 ○授業の成果 今回の授業においては,発展的な内容である心臓の構造について,あえて扱うことにし た。しかし,このことで,予想以上の効果があったのではないかと考える。本時の実験そ のものに対する効果だけではなく,弁の存在に気付いたことによって,その後の学習内容 にも大きな効果をもたらした。例えば,血液の循環経路において,血液の流れる方向を心 臓の弁から判断できるようになった。また,細胞の物質交代と,細胞内の呼吸や,じん臓 や小腸,肺など各器官のはたらきと結びつけ,血液が一定方向に流れることの必要性を理 解させることが容易になった。定期テストにおいても,血液の循環経路に関わる問題の正 解率が高かった。 ○今後の課題と方向性 今回は焦点を弁に絞り,部屋が4つに分かれていること,部屋を囲む筋肉の厚みに違い があることの意義についてはあっさりとふれることにした。あまり欲張りすぎると生徒に 苦手意識を持たせる結果にもなってしまう。 また,比較的簡単にスーパーで入手できるハツであっても,もとは大切な生命であった ことを理解させ,感謝させる指導も必要であると感じた。そして,だからこそ,「ああ, 楽しかった。」だけで終わるような実験ではならないと考える。 -2-