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講演録(ファイル名:kouenroku7 サイズ:327.05 キロバイト)
平成23年度「企業向け人権啓発講座」第7回 日 時:平成23年12月9日(金)午前10時~正午 会 場:京都市国際交流会館「kokoka」特別会議室 (2 階) テーマ:外国人留学生と企業のためのガイダンス ~多様なグローバル人材と生む Win-Win な就労!~ 講演1 外国人留学生の就職状況について -留学生の就職相談に携わる立場から- 野澤 和世(ランスタッド株式会社 グローバル人財雇用コンサルタント) 講演2 グローバル人材に期待すること -企業採用担当者から- 高宮 秀樹(株式会社村田製作所 人事部人事 1 課主任) 講演3 私の就職活動と就職,そして今,就労について考えること -先輩留学生から- そ え い き 蘇 巍琦(ローム株式会社 調達部) 【講演録】 ~講演1~ おはようございます。 ― おはようございます。 (会場)― 私は毎年,留学生ジョブフェアで講演をさせていただいており,今年も留学生の皆さんとお 目にかかることができ,とてもうれしく思っています。今日は,留学生の皆様の日本就職とい う夢がかなうように,また,企業の皆様においては優秀な外国人留学生人材を確保していただ けますように,短い時間ですけれどもお話させていただきたいと思いますので,よろしくお願 いします。 ― よろしくお願いします。(会場)― 私は東京から参りましたが,こんなにも素敵な京都で勉強されている留学生の皆様をとても うらやましく思います。12 月に入りましたので,いよいよ就職活動の本番を迎えます。たまに は京都の美しい景色を見て,リラックスすることは大切ですが,これからは,集中して就職活 動を頑張っていただきたいと思います。 当社はランスタッドという総合人材サービスの会社です。世界に 43 箇国,4,100 拠点,日本 国内 114 拠点を持つ,グローバル外資系の人材会社です。その中で私の所属するグローバル人 財推進室は,外国人留学生の方々の就職を支援するための事業部です。 では,本題に入ります。今,日本に来られている留学生の総数は 14 万人ほどです。これは過 去最高です。その中で卒業される方が約4万人と言われており,その約 80 パーセント,約3万 人から3万 5,000 人の留学生が,日本での就職を希望していると言われています。その中で, 日本で就職ができた数は,2010 年で 7,831 名です。2009 年は1万人を超えていましたが,リー マンショックの影響もあり,2010 年は少し下がりました。 就職先の所在地ですが,東京の企業に約半数の方が就職され,京都で就職された方は 161 名 です。東京の多くの企業は全国から留学生を採用しますが,京都や地元の企業は,主に地元の 大学生を採用しますので,留学生の皆さんには,京都や地元企業の就職も念頭に入れて就職活 動をすることをお勧めします。ただ,大切なことは,皆さんが何をしたいのかです。自分のし たいことはどの企業でできるのかを調べることが大切です。 外国人留学生の学部生と修士は,ほぼ半数の割合で就職しています。日本人学生は,学部生 の方が就職しやすいと言われておりますが,留学生はそうではありません。企業がより優秀な 留学生を採用したいと思っているので,修士・博士卒でも採用します。 次に企業の規模です。資本金 5,000 万円以下の中小企業に就職している方が約 50 パーセント います。大手企業・中小企業,どちらにもメリット・デメリットがあります。ですので,自分 が一体何をしたいのか,どういう仕事をしたいのか,将来何をしたいのかということをしっか り見つめて,それには大手企業か,中小企業か,どちらが合っているのかを考えてください。 例えば,中小企業なら,早々に責任のある仕事をさせてくれることがあるかもしれません。 でも,大手企業は違います。大手企業では,色々な業務を学ぶために下積み期間が数年あり, なかなか責任のある仕事をさせてもらえないのが現状です。どちらにもデメリット・メリット がありますので,自分に合った企業を探すようにしていただきたいと思います。 アンケート結果によると,現在,大手企業の約3分の1が留学生を積極的に使用したいと考 えています。その理由は,日本企業のグローバル化に伴う海外進出や,後は海外マーケットの 拡大です。統計予測では,日本は人口が減少するため海外にマーケットを広げていきたいとい う企業の思いがあり,そこで活躍していただける留学生を採用したいと思っている企業が増え ています。留学生を採用したい,積極的に採用するという企業が増えており,毎日のように新 聞記事になっておりますが,留学生獲得競争とも言われています。 しかし,先ほど申しあげました3万人~3万 5,000 人が就職を希望しているのに,その 25~ 30 パーセントの方しか日本で就職できていない。それはなぜか。積極的に皆さんを採用したい と思っている企業が多い中で,日本での就職は,決して甘くないという現状があるからです。 皆さんの就職活動における問題点の第1番は,日本の就職活動に関する知識不足です。しか しながら,今日お越しの皆さんは,服装,また第一印象,それから本日,ここに参加している ということだけでも,日本の就職活動に関して,深く興味をお持ちになっている方だと思いま す。ですが,一般的には,留学生の方々は日本の就職活動の知識が不足していると言われてい ます。それだけ日本の就職活動というのは,とても特有なものです。皆さんの国にはない,特 有なものです。 日本の就職活動というのは,ある一定の時期に,一定の期間行われます。このタイミングを 逃せば,特に大手企業への就職が難しいと言われています。それが,正に今の時期です。です ので,この時期を決して逃すことなく, 「まだ,周りの人は動いていない」などと思わず,日本 人学生と一緒に就職活動をしてほしいということです。 それから,皆さんは企業情報が不足しています。留学生を採用する企業はどこか,どんな留 学生を企業は求めているかという企業情報が不足しています。ですので,皆さんは,どんな企 業が自分たちを採用してくれるのかというところをしっかり調査する必要があります。それに はキャリアセンターに行く。OB・OGを訪問する。就職情報サイトに登録して,外国人積極 採用企業はどこかということをしっかり見極めなければなりません。 また,名前だけで,こんな企業に入りたいなあと思うだけでエントリーシートを出してしま うと,もしかするとそこの企業は留学生を採用していないかもしれません。 留学生の皆さん,入りたい企業には,事前に「留学生を採用していますか」ということを質 問するようにしてください。せっかく皆さんが苦労しながらエントリーシートを書いても,留 学生を採用していなければ時間の無駄になります。ですので,皆さんが効率よく就職活動をし たいならば,事前に企業研究をしなければいけないということです。 ただ,皆さん,注意をしていただきたいことがあります。企業の方に, 「留学生を採用してい ますか。応募していいですか」ってメールや電話で聞いた場合, 「はい,当社は平等に採用して おりますので,どうぞ応募してください」と,どの企業もおっしゃいます。日本は平等だから です。差別をしてはいけないと言われています。ですので,来る者を拒むことはしません。た だ,実際,採用していない場合が多いです。そこをきちんと見極めることが必要です。 「それで は昨年,何人ぐらいの留学生を採用されていましたか」と聞いてみる。後はOG・OBの方, 日本人の方でも結構です,その方々に連絡をして, 「御社は留学生を採用されていますか」とい うことをしっかり聞く。この一手間が,皆さんが効率良く就職活動することにつながります。 それから,皆さんのビジネス日本語能力や日本の商習慣の知識不足が挙げられます。就職活 動に必要なビジネスマナー,又は面接やエントリーシートで自分をアピールする日本語が足り ません。ですので,自分をアピールできる日本語をしっかりと身に着けていただきたいですし, 心配な方は是非キャリアセンターへ行ってください。当社も留学生専門のキャリアカウンセリ ングを,京都伊勢丹の京都府国際センターで行っておりますので,是非そういう所に足を運ん で, 「この日本語で大丈夫ですか」, 「このエントリーシートで大丈夫ですか」と,しっかりと日 本人の方にチェックしてもらってください。 そして,何よりも私が皆さんにお伝えしたいことは,日本に就職したいという本気度が低い ということです。これからの就職活動は大変厳しいです。雨の中,雪の中,寒い中で就職活動 しなければいけません。そして大手企業ならば,何万人というエントリーの中から数百人まで 絞って,選抜していきます。ということは,落ちることは当たり前です。皆さんはきっと何度 も落ちることになるかもしれません。もちろん,優秀な方は,一発で内定を取ることができる 可能性も高いです。でも,多くの方は何度も落とされてしまいます。それから筆記試験もあり ます。その筆記試験で落とされることも何度もあるでしょう。 そうすると, 「もういいや。もう就職するのは止めよう」 , 「まあ母国に戻ればいいや」, 「国に 戻って就職活動しよう」 , 「お父さん,お母さんにどこか紹介してもらおうかな」,それとも, 「大 学院に進めばいい」,「博士課程に進もう」という言い訳を持ってしまうんですね。でも,その 言い訳を企業は見抜いてしまいます。選択肢はあってもいいと思います。でも,これから約6 箇月間は,本気になって就職活動をしてください。その気持ちがなければ,企業の人事に皆さ んの本気度は伝わりません。 今日は企業の方にもお越しいただいております。 私も企業の方から, 「なかなか優秀な留学生を採用できないんだ…」という御相談をよくいた だきます。企業はなぜ優秀な留学生を採用できないのか。その理由として,私が今,考えてい るところをお話させていただきます。 先ほどと逆です。決まった時期にしか就職試験を行わないこと。4年生になって, 「やっぱり 就職したいなあ」と思う外国人留学生は多いです。でも,それからでは遅くて,なかなか4年 生の就職活動を受け入れる企業は少ないですので,企業の皆様におかれましては,是非とも通 年で,4年生になっても,優秀な方なら採用していただくというような門を広げていただけた らと思います。 2点目です。日本には,この京都にも優良で歴史のある企業が多いのですが,一部の世界的 に大変有名なメーカー以外には,なかなか留学生に企業の名前が届いていないのが実情です。 ですので,留学生を積極的に採用している,又は,するんだということを,どんどん見えるよ うにアピールしていただきたいと思います。 それから3点目です。日本語をあまりにも重視し過ぎるのでは,というところです。SPI 試験で留学生を落としてしまう,日本人らしい留学生を求めている,日本語のパーフェクトな 留学生を求めているという企業が多いように感じます。日本語力は必ず時間と共に伸びます。 就職をすれば,日本語は必ず上手になります。それよりも,留学生の応募をされるなら,是非 とも留学生と会っていただいて,その人柄や専門性・人間性・バイタリティー・個性などを見 ていただきたいと思います。どうか,日本人と同じような試験採用の過程というのを,少し軽 減してくださいますようお願いいたします。 それから,留学生の皆さんにもお話ししましたが,留学生の採用をお考えであれば,本気で 採用していただきたいと思います。よく, 「日本人の方が良いけれど,なかなか日本人の優秀な 学生が採用できないなら留学生を」という企業の方がおられますが,留学生は日本人の代わり ではありません。留学生は,これからグローバルに活躍する,これからの人材です。ですので, 是非とも留学生を積極的に本気で活用していただきたい,採用していただきたいと思っており ます。 私は,就職活動というのは,結婚活動と似ているのではないかと思っています。皆さんが幸 せな結婚をするためには,自分に合った人と出会う必要がありますよね。そのためには,自分 はどんな人が好きかということを分かっていなければいけません。そして,巡り合ったら,相 手のことをよく知らなければいけませんよね。よく知らないで結婚したら,離婚することにな ってしまいかねません。本当の自分のことも知ってもらわなければいけません。そして,プロ ポーズです。 「あなたが本当に好きです」と伝える,そして結婚をする。結婚は,簡単ではない ですよね。努力と好きだという本気の愛情が必要です。だからこそ,一生添い遂げる,一生過 ごしていけるパートナーを見付けることができるのです。 就職活動も同じです。幸せな就職をするためには,自分に合った会社を探して,その会社を よく知って,その会社で働けるのか,自分は成長できるのかということを確証できるまで,企 業を研究することが大切です。そして,入社したい企業が見つかったら,自分のことを会社に 知ってもらって,本当に入社したい,他社とは比べられないほど御社に入りたい,ということ を伝えて,内定をもらう。それには,しっかりした目的意識と本当に入社したいと思う気持ち を持ち,それを企業に伝える努力をすることが大切です。これを怠ると,3箇月や1年で会社 を辞めなければならなくなってしまうのです。 ガイドブックの 11 ページに載っていますが,企業が外国人留学生を採用する理由の多くは, 国際業務や海外拠点との懸け橋業務を行ってもらうためです。また,海外支店の幹部候補で採 用される企業が多いです。もう一つは,国際業務ではなく,優秀な人材だからという理由で採 用される企業も多いです。皆さんもその企業がなぜ,外国人を採用するのかしっかりと調べ, 外国人としての強みを面接やエントリーシートでアピールしてください。 それから,日本企業が外国人を採用するときに重視する点は,日本語能力やコミュニケーシ ョン能力の高さです。留学生の皆さんは,是非とも日本語能力を磨いて,コミュニケーション 能力の高さをアピールするようにしてください。 これも 11 ページに掲載しておりますが,日本企業が外国人を採用する上で不安と考えておら れる点です。一番目は離職率です。せっかく,採用されても,自分の想像していた仕事や希望 していた仕事ではなく,辞めてしまうケースが多いです。このような離職率,組織への順応性, 日本語能力などの企業が抱える不安点は,必ずエントリーシートや面接で確認されます。皆さ んの日本語能力をエントリーシートでチェックし,面接で日本語能力を見極め,そして不安点 を面接で確認します。例えば, 「何年ぐらい当社で働いていただけますか」というような質問を 必ずします。皆さんは,何と答えますか。 「はい,3年ぐらい御社で働かせていただいて,しっ かりと勉強し,母国に戻って自分の会社を創りたいと思います」,留学生の皆さんは笑っていま すが,そう思ってらっしゃる方はいませんか。 「将来は起業したい」, 「自分の会社を持ちたい」, それは素晴らしいことです。私もそういう方を応援したいと思いますし,もちろん,そのぐら いバイタリティーのある方を採用したいと思われる企業も多いと思います。ただ, 「3年ぐらい 働いて,じゃあね」っていうような答えをしてしまったら,企業はどう思われるかです。面接 というのは,自分が話したことが相手にどう受け取られるか,評価をされるかということをし っかり考えてお話をすることが大切ですよね。 ただし,起業したいということをお伝えになりたいなら伝えてください。それでも,皆さん を採用したいと思う企業はもちろんあるでしょう。そのぐらいの器のある企業に応募するとい うのも一つの手です。難しいことをお話ししていますが,相手を見極めるというのも皆さん方 の能力です。 企業が求めている留学生とは,日本人としての強みも持ち外国人としての強みを持つ,日本 発のグローバル人材を求めています。日本も知っていて,そして海外とのビジネスにおいては, 外国人としての強みを持つ方を求めているのですね。このような方こそ,外国人留学生である 皆さんなのです。どうぞ皆さんは,エントリーシートや面接で,日本人や日本のことも理解し ており,外国人としては,こんな強みを持っているということをアピールしてください。ここ が,日本人学生との最大の差です。皆さんだからこそできるんです。これが皆さんの強みです ので,どんどんアピールしていただきたいと思います。 離職率が高い原因ですが,留学生が日本企業を辞めるときの理由は「日本企業の習慣に慣れ ない」,「どうしても孤立してしまう」,「やりたい仕事ではない」,「責任のある仕事をさせてく れない」,「上司が評価をしてくれない」,「初任給は,初めは日本がいいけれども,30 歳ぐらい になると母国の方が条件がいい。もう国に戻ろうかな。起業しようかな」等です。ですので, このような理由で辞めないように,しっかりと今,自分のやりたいことができる企業を探すこ とが重要なことと,どんなキャリアを歩ませてもらえるのか,日本企業はどんな習慣の特徴を 持つのかということを,今しっかり勉強しておくことが必要です。 留学生の離職率を減らすため,企業の方々によくお話させていただくことがあります。外国 人留学生を採用した場合,企業における習慣をしっかりと説明してください。 「ほうれんそう(報 告・連絡・相談)」というものを徹底させてください。それから,目的や目標をしっかり説明し て,達成した場合は評価をしていただきたいと思います。多くの留学生は,褒めて育つタイプ です。どちらかというと,叱って育つのは日本人かもしれませんね。留学生は褒めて育つよう なタイプだと,私は多くの外国人と一緒に仕事をして実感しています。 また,日本人は,どうしても「あうんの呼吸」というものを期待してしまうんですが,それ はやはり留学生や外国人の方にはなかなか伝わり難い。どうか,「あうんの呼吸」を期待せず, しっかりと指示を出していただきたいと思います。又は,積極的にコミュニケーションを取っ て孤立させないようにしていただきたいと思います。 外国人留学生には,いずれは母国に戻りたいと思う学生も多いのは事実です。いつか,母国 に戻って活躍できるキャリアパスも,お考えいただければと思います。 また,最近感じるのですが,留学生の方々は,就職されると,母国から恋人や御家族を日本 に呼ばれ,御結婚される場合が多いようです。特に,ベトナム,タイなどアジア系の方々は, 日本の方より早くに結婚される方が多いようです。日本で日本語学校に就学されてから大学に 入るので,就職活動の時期が 25 歳~28 歳と,日本の学生より少し年齢が高いというギャップが あることも一因だと思います。 そのような現状で,22,23 歳の日本人学生と同じような給料の条件では,やはり生活も大変 ですし,日本での生活を安定させるというところにおいて,少し難しいものがあるように思い ます。留学生を採用されるという企業におかれましては,年齢や家族構成などの考慮をお願い したいと思います。御家族の方は日本語も話せないでいらっしゃる方も多いので,そういう方々 へのフォローなども併せてお考えいただければ,と思います。そうすることによって, 「企業に 家族を守られているんだ」という思いが生じ,留学生の方々は, 「長く日本の企業で働こう」, 「や はり日本の企業はいいなあ」と感じ,長く勤めようと思う方が多くなると思います。 留学生の方々にお伝えしたいのは,日本企業の特徴です。日本企業について,15,16 ペ-ジ にも書いておりますので,しっかり読んで就職活動に臨んでください。 まず,協調性を重視します。個人の成果も大切ですが,それより,日本企業はチームとして の成果を重視します。この協調性はグループディスカッションの面接等でチェックされます。 「チームワークできちんと話合いができているか」,「自分ばっかりの意見を言っていないか」 というところが評価のポイントとなります。 また,結果も大切ですが,仕事の過程を日本企業は大切にします。他に,いわゆる「ほうれ んそう(報告,連絡,相談)」です。「ほうれんそう」をしっかり行い,仕事を進めることが大 切です。 それは就職活動でいつ見られているかというと,例えば,これから企業合同説明会や,面接 の際,企業に電話やメールで連絡をする機会が多くあります。遅刻しそうになったときすぐに 連絡をしたり,病気でどうしても面接に行けない場合に相談をしたりしているかなど,企業は ちゃんとチェックしています。 「5分ぐらいの遅刻なら連絡しなくていい」とか「どうせ,落ち るから連絡するのをやめよう」などと考えてはいけません。しっかり報告,連絡,相談をする ことにより,遅刻しても逆に高評価が得られるかもしれません。 それから,日本企業のキャリアの特徴ですが,終身雇用的な考え方が残っています。もちろ ん多くの企業は変わってきており,能力主義のところもあります。ただし,やはり欧米や中国 の企業に比べれば,長く働いてほしいという慣習が残っています。人は育成するものだと思っ ているので,せっかく育てた社員に辞められては困るのです。人を育成するという商習慣が, 皆さんに対して,長く働いていただきたい,すぐ辞められたら困るということにつながるので すね。 さあ,これから就職活動が始まります。今年は例年より遅く,12 月から採用活動が解禁にな りましたので,短期集中型です。12 月に企業説明会があります。今日も午後からありますよね。 企業合同説明会や企業説明会があります。1月から5月に掛けてエントリーシート,筆記試験, 面接があります。多分,今年は1月~3月がピークになってくると思います。皆さん,期末試 験や期末のレポートがあって大変かと思いますが,そこもきちんとやりながら,そして就職活 動にも集中していただきたいと思います。 そして5月から7月に内定。この時期を逃してしまうと,就職は厳しくなるということをき ちんと理解して,就職活動に臨んでいただきたいと思います。 就職活動のスケジュールも4~7ページに載っておりますので,後できちんと見ておいてく ださい。 それから,日本の就職活動には三つの大きな壁があります。エントリーシート,筆記試験, 面接です。まずエントリーシートという皆さんの自己紹介のレポート,小論文のようなものを 出します。そして筆記試験,ここで足切り選考されます。こんなに皆さん素敵な方ですのに, 多くの日本企業は,ここで足切りをします。ですので,魅力的なエントリーシートを書くとい うことがとても大切です。適当に書いてはいけません。皆さん,日本語で書くことはとても大 変だと思いますが,本当に入りたい企業に対しては,集中して,大学の成績で「優」を取るぐ らいの思いで書いてください。そのためには,でき上がったエントリーシートを日本人の方に チェックしていただき,アドバイスをもらうようにしてください。 次に筆記試験です。これから,ウェブの試験,SPI試験が始まります。ここで落とされる ことがとても多いです。皆さんに会うことなく,筆記試験で選考されてしまいます。筆記試験 に通った一部の方が面接に進めます。そして,一次,二次,最終の面接があり,最後の一握り の人が残る。これが就職活動です。 ですので,このような過程があるということを理解するとともに,どうか落とされてもめげ ないでください。1社や 2 社不合格になってもめげない。こんなことでめげていたら,先へは 進めません。どうして落とされたんだろうと反省し改善することは大切ですが,落ち込まなく て結構です。前へ,前へと進むのみです。頑張れば,必ずこの一握りに残れます。皆さんが本 気で頑張れば,必ず,内定がもらえますので,頑張っていただきたい。 筆記試験は,とにかく問題集を何回も解くことです。そしてエントリーシートと面接は,一 緒に働きたいと思わせるようにすることです。そのためには,自分自身を日本語で表現する力 を,何度も練習して身に着けることが必要です。それから自分自身を表現するためには,自分 の長所や短所などをしっかりと知っておくことが大切です。それから志望動機です。必ず志望 動機も聞かれます。同じ業界でも,なぜソニーなのか,パナソニックなのか,日立なのか,村 田製作所なのかというところを伝えられるような志望動機を書かなければいけません。そのた めには,企業のこともしっかりと知ることが大切です。 エントリーシートは,ガイドブックの 44 ページに載せていますが,自己紹介のための小レポ ートだと思ってください。200~600 文字ぐらいの限られた文字数で,自分を表現します。これ は,企業に出すラブレターのようなものです。 「こんなに好きです」, 「こんなに入りたいです」, 「私と会ってください」というような内容にしなければいけません。 面接の代表的な質問は,自己PR,学生時代に頑張ったこと,志望理由,専門について,特 に理系の方は,専門について聞かれます。学生時代に一番頑張ったこと,力を注いだことを書 く場合,まず頑張ったことを一文で書きます。例えば,このように,結論から書きます。 「私が学生時代に頑張ったことは,日本企業でのインターンシップです」と,最初に結論を 言う。それから,具体的に何をどう頑張ったかというエピソードを書きます。 「私の専門は○○ですが,インターンシップでは○○をしたかったので,あえて難しいテー マにチャレンジしました。担当者の方から与えていただいた課題はとても難しいものでしたが, 帰宅後,夜遅くまで調べて,分からないことには更に積極的に取り組んでまいりました」と, いうように書きます。イメージが浮かぶように具体的なエピソードを書きます。抽象的なこと では駄目です。企業は,皆さんがどれだけ頑張ってきたかという過程を知りたいからです。 「日本に来て,日本語をたくさん勉強して,優秀な成績を取りました」と,これだけでは, 留学生全員が書けることですね。どう頑張ったか,どれだけ能力が上がったのか,そういうと ころを具体的に書かなければいけないということです。そして最後に,この経験からどのよう に成長できたかということをまとめます。 「この経験から,より努力をすれば必ず結果は出るということを学びました。私はこのこと は,仕事においても大切なことだと思います」という風にまとめます。これを 200~600 字ぐら いでまとめるということです。たくさんエピソードを書かなくていいんです。エピソードは一 つ。長所も一つか二つでいい。たくさん書いたから良いというわけではないのです。 面接の種類も色々あります。グループディスカッション,集団面接,個人面接,役員面接と ありますが,これもガイドブックの 50 ページに注意事項などが載っておりますので,しっかり と読んでおいてください。面接はとにかく第一印象が大切です。笑顔,マナー,身だしなみに ついては,36 ページに書いてあります。特に第一印象を大切にしてください。 どうぞ皆さん,私の顔を見て,笑顔で。 はい,ありがとうございます。そう,いいですか。企業面接というのは,特に集団面接では, 皆さんの持ち時間は 10 分ぐらいしかありません。そこで,どれだけ自分のことを表現できるか がポイントです。言葉だけでは表現しきれません。時間が足りません。ですので,その笑顔や マナー,身だしなみなど,第一印象がとても重要です。しっかりと今,皆さんが私に見せてく れた笑顔で就職活動に臨んでいただきたい。そして,話す内容は簡潔に,具体的に個性を出し て,はっきりと大きな声で,心を込めて話すようにしてください。 資料請求の仕方なども書いてあります。入りたい企業の会社説明会には必ず参加してくださ い。入りたい企業の説明会に出なければ,次のステップに進めないことも多くあります。 とにかく就職活動は大変です。でも目的意識があれば,そして行動すれば,必ず内定はもら えますので,皆さんには是非とも頑張っていただきたいと思います。 御意見や御質問,何か御相談がありましたら,是非御連絡ください。連絡先はこのガイドブ ックにも載っておりますし,私の名前をホームページで検索していただければ,フェースブッ ク,ブログ等もしております。御相談や御質問をしてくださればうれしく思います。 本日は短い時間でしたけれど,御清聴ありがとうございました。 ~質疑応答等~ 会場1 貴重なお話をありがとうございます。 私たち留学生のために色々な仕事をしていただき,本当にありがとうございます。 野澤様の仕事における原動力は,何ですか。 講師 私の原動力ですか。 皆さんから「内定をもらいました」という報告を聞くのが原動力ですね。皆さんから の喜びの連絡をいただくと,いつも, 「ばんざーい」ってしています。それが私の原動力 です。それから,就職活動が万が一失敗したとしても,皆さんがきちんと就職活動をし ていると,必ず皆さんは成長されます。今日,会った皆さんと,半年後の皆さんは絶対, 変わっておられます。その成長を見るのが私の原動力です。 会場1 ありがとうございます。 講師 ありがとうございます。 もしよろしければ,私は午後からもこの会場におりますので,質問は午後からにして いただくことにして,もう少しだけお時間をいただけますか。 皆さんの先輩方が作ってくれた面接の短いビデオがありますので,御覧いただければ と思います。 <ビデオ上映> 講師 御覧になって,どうですか。留学生の皆さんは笑っていますけれど,このような態度 を取られる方も多いのですよ。 今日,この会場に入ってくる際,コートを着たまま入って来ませんでしたか。私はず っと見ていたんですけれども,皆さん,結構コートを着て入って来ていましたね。まず, 企業合同説明会,企業説明会に行くときは,受付の前でコートを脱ぎます。それで受付 をします。これは,小さなことですが,こういうマナーもしっかりしておかなければい けないということです。 もう一つ,見ていただきたいと思います。すぐ終わりますのでね。 <ビデオ上映> 講師 どうでしょう。いいですか,この方たちは一発合格です。一社,一発合格でした。 とてもハキハキとして,明るくて素敵ですね。ちょっと恥ずかしいと思う方もおられ るかもしれませんが,こういうことができる心構えが大切なんですね。ですので,恥ず かしいと思わず,礼儀正しくしていただければ,熱意が企業に伝わると思います。 (講演1 終了) ~講演2~ 改めまして,こんにちは。 ― こんにちは。(会場)― 私は,村田製作所で採用担当をしております高宮と申します。どうぞよろしくお願いいたし ます。 少し御紹介いただきましたけれども, 「村田製作所」という,社名だけでも御存知だという方 はどれぐらいいらっしゃいますか。 ほとんどの皆様ですね。ありがとうございます。 では,「村田製作所の商品名」を一つでも言えるという方,どれぐらいいらっしゃいますか。 お一人,お二人,ありがとうございます。 実はそういう会社なのですね。社名はよく知っていただいているけれど,なかなか何をして いるか分からないというところがありますので,午後からのジョブフェアと少しかぶってしま う部分はあろうかと思いますが,まず村田製作所がどういう会社なのかというところを御紹介 したうえで,グローバル人材に期待することというお話をさせていただきたいと思います。 では,会社概要の御説明を 20 分ほど,それから,弊社が今,実際に考えているグローバル人 材に期待することについて 30 分程度お話させていただいて,その後に,皆さんと質疑応答をし て,40 分ぐらいで終了したいという風に考えております。 まず,村田製作所の社名は知っていただいているということでしたが,これだけは覚えて帰 ってほしいなというのがあります。村田製作所は,一言で言いますと電子部品メーカーです。 電子部品メーカーも世界中にたくさんございまして,その中でも,村田製作所というのは,セ ラミックスと呼ばれる材質を電子部品に応用展開している会社でございます。 セラミックスって何か御存知の方,どれぐらいいらっしゃいますか。 ちらほら,とですね。ありがとうございます。 そういう研究をされている方以外はなかなか難しいと思いますけれども,簡単に言いますと 焼き物,陶磁器です。ただ,村田製作所がお茶碗やコーヒーカップを作っているというわけで はございません。ファインセラミックスと呼ばれる分野で,純度の高い化学原料を色々な配合 で混ぜ合わせます。そして,それを焼くのですけれども,焼き方も,例えば 1,500 度で 10 分焼 くのと 1,200 度で 10 分焼くのでは,微妙に電気的な特性が違ってきます。材料の混ぜ合せ方, 焼き方,そういったところをノウハウとして持っており,それを電子部品に応用しているとい うのが村田製作所なんですね。セラミックスの電子部品メーカーだという風に覚えて帰ってい ただければ有り難いと思います。 社名は知っているけれども商品名は知らない。実はこれ,当たり前のことなんです。御説明 してまいります。 「B to B」という言い方をいたしますが,村田製作所は,皆さんがお持ちに なっている例えばパソコンやスマートフォン,携帯電話などに,電子部品をたくさん提供させ ていただいております。自社のブランドで最終消費者に商品を提供しているところは「B to C」,コンシューマーに直接売り込むので「ビジネス・ツー・コンシューマー」という言い方を しますが,村田製作所の場合はビジネス・ツー・ビジネスです。 「B to C」メーカーに対して 電子部品を提案している「B to B」メーカーです。そういうことですので,例えばスマート フォンや携帯,車などに,弊社の電子部品が入っております。それは表記してありませんので, 分からないと思います。実は,皆さんは知らない間に弊社の部品をたくさん使っていただいて いるということなのですね。 実際どんなところに使われているかというところをお話しします。一番多いのは携帯電話で, 最近ではスマートフォンです。こういう電子機器に村田製作所の電子部品を何かしら使ってい ただいていると思っていただいても,全く言い過ぎではございません。実はそれぐらい,村田 製作所の電子部品は色々な所に使っていただいているということです。 海外で村田製作所といえば,コンデンサ,キャパシタの会社としてすごく有名です。古いタ イプの携帯電話で 230 個,他の部品も合わせますと 300 個ぐらい。世界シェアトップの製品が 多いですね。最近,ビジネス雑誌など様々なところでスマートフォンの特集などがあると思う んですが,必ず,スマートフォンが伸びると潤う会社として村田製作所を御紹介いただいてい ます。資料の「携帯電話の中を観てみると」という表を御覧ください。一番上にセラミックコ ンデンサ,その右に 230 個と書いていますが,スマートフォンになると 500~600 個と倍になり ます。スマートフォンをお持ちの方は,お一人で約 600 個を超える弊社商品をお持ちだという ことです。その表の一番下に,Bluetooth(ブルートゥース)モジュールと書いていますが, Bluetooth を知っておられる方,どれぐらいいらっしゃいますか。 はい,ありがとうございます。ほとんどの方が御存知なのですね。 2~3年前に同じ質問をしたときは,ほとんどの方が知らなかったんですよ。 では,パソコンにWi-Fi(ワイファイ)を持っている方はいらっしゃいますか。 ありがとうございます。 これも,2~3年前だと全然手が挙がらなかったんですけれども。 この Bluetooth モジュールやWi-Fiモジュールという,そういったモジュールと呼ばれ る大きな機能を果たすチップの部品ですが,これも村田製作所は世界シェアトップです。この ように,コンデンサや通信機器の中の部品といったところで村田製作所は強みを発揮していま すので,スマートフォンがどんどん普及しますと,村田製作所の部品もどんどん買っていただ け,その機能でお客さんにかなり喜んでいただいているというところでございます。 次は,会社のプロフィールというところ,村田製作所はどういう考え方で事業を行っている かという御紹介をしてまいります。 先ほど,村田製作所はセラミックスの電子部品メーカーと申し上げました。セラミックスは 焼き物ですと。実は創業者の家系をたどれば,焼き物で有名な,京都の清水焼って御存知でし ょうか。実は清水焼の窯元が元々の発祥です。創業者が村田製作所を興すときは,父親の町工 場を手伝っていました。その町工場では既に清水焼を焼いているのではなくて,ガイシと呼ば れる,今とは比べものにならないぐらいすごく簡単な構造の電子部品を作っていました。創業 者が父親に, 「事業を広げたい。自分の町工場のビジネスをもっと大きくしたい」と相談したと ころ,叱られたということです。なぜかと言いますと,その地域一帯は同じような内容の小さ な町工場が集合している地域だったので,自分の商売を広げるとはどういうことかというと, 隣近所の同じ町工場の同業者からお客さんを奪ってくるだけだと。技術的な差異はないですか ら,区別を付けるとしたら価格・コストで差を付けるしかない。結局,隣近所の町工場とディ スカウント競争が始まって,その地域一帯が共倒れになってしまうと。そんなことが目に見え ているので,「そんなことをしてはいけません」と,事業を広げたいと前向きな話をしたのに, 父親に叱られたという話です。 それを受けて創業者は, 「近所でしていないことをしたら迷惑が掛からんやろ」 , 「自分の所で しかできないものを作ったら良いんやろ」という発想になりまして,京都大学で当時,セラミ ックスの分野ですごく有名な先生がいらっしゃったので,その先生に相談し,セラミックスに ついての共同研究,今でいう産学共同を始めました。そして,今もセラミックコンデンサの主 要原料になっているチタン酸バリウムという材料があるのですが,それの事業化に初めて成功 しました。ちょうど日本が高度成長期に入り,テレビやラジオがどんどん売れている頃に,村 田製作所のコンデンサもたくさん買っていただいて,今の礎を築いたということです。 創業者はもう亡くなりましたが,資料に載せていますのが若い頃の写真です。これを見ると, メガネを掛けてネクタイもしているので京都大学のすごく優秀なエンジニアだったという風に 勘違いされるのですけれど,実は創業者は小学校しか出ていません。小学校しか出ていない町 工場の若旦那だったんですね。その創業者が敷居が高かったであろう京大の権威ある先生に, 自分の会社を大きくしたいという熱い思いから相談に行き,先生もよく受け入れてくださった と思いますけれども,そういった形で事業を広げていったというわけです。 資料を御覧ください。 「主要製品の世界シェア」というところです。これは村田製作所が世界 シェアトップを誇っている製品群です。これ以外にもたくさんあります。村田製作所の売上げ の8割ぐらいが,実は世界シェアトップの製品群で占めています。多分世界中を見渡しても, それだけ世界シェアトップの製品群を揃えている電子部品会社はほとんどないと思いますので, そういったところからも村田製作所の独自性といいますか,村田でしかできないものっていう ところにこだわっているのが,よく分かっていただけるかなと思います。 先ほども申し上げました主力製品であるコンデンサについてです。一番小さいタイプ,0402 だと 0.4 ミリ×0.2 ミリとすごく小さいんですね。資料に載せておりますシャーペンの芯と比べ ていただいても分かるかと思いますが,砂粒と全然,見分けがつきません。チップ積層セラミ ックコンデンサと書いております。どういう構造になっているかを申しますと,薄いセラミッ クスのシートと電極のシートが何層にも重なっています。この 0402 タイプで 100 何十層積み重 なっていますが,最近では 0.5 ミクロン。人間の髪の毛が大体 60~80 ミクロンと言われますの で,人間の髪の毛の大体 100 分の1ぐらいの薄さのセラミックスのシートと電極のシートが, 均質に積み上がっています。こういった,シートを薄くする技術,均質に積み上げる技術とい ったところが,村田製作所を含めて世界中でも数社ぐらいしかできない技術と言われており, こういったところで村田製作所の強みを発揮させていただいております。 2012 サイズって書いているのは 20 年ほど前にコンデンサの一番小さかったもので,2ミリ× 1.2 ミリ。ワイングラスに 10 万個入れると山盛りになりますが,現在の 0402 サイズは,ワイン グラスの底にちょっと盛り上がるぐらいで 10 万個です。重さでいうと 200 分の1ですね。それ ぐらいの小ささになっています。 例えば携帯電話。移動体通信ですね。電話が初めて電話線から解放されたのが,資料「例: 携帯電話の変遷」というところの一番左にあります自動車電話でした。その下に載っています 黒い台は,台じゃなくて電池です。電池だけで車のトランクいっぱいぐらいの大きさだったん ですね。でも当時としては,線がない電話というので画期的でした。そこから,ショルダーフ ォンという肩掛けかばんみたいになって,古いコードレスタイプの電話みたいな電話になって, 今はスマートフォンという形になったのですね。携帯の端末機メーカー,それから電池のメー カー,様々なメーカーの努力によるところが大きいのですが,私たちみたいなコンデンサをは じめとした電子部品メーカーが,これだけ薄型化・小型化を実現できたことが,現在,色々な エレクトロニクス機器が便利に使えるようになったことに陰ながら貢献しているのではないか という風に私たちは思っております。 売上げは,この前の3月期で 6,200 億円弱。グループ企業は 66 社で,うち海外 41 社と書い ていますが,最近少し増えて 43 社ぐらいになりました。午後からのジョブフェアに御参加され る他の企業さんと比べると,もしかしたら海外のグループ会社は少ないかもしれません。ただ 私たちが自負しているのは,この海外 40 何社は村田製作所の理念をきちっと共有して,すごく 密にやり取りができます。単純にM&Aで資本参加して緩くつながっているような会社じゃな くて,この 40 何社が全て,方針をきちっと理解して有機的に動いているので,そのように動け る会社が 40 何社もあるっていうことを,私たちは誇りに思っています。従業員数としては,今 のところ国内の生産が多いので国内が2万 2,000 名強,海外が1万 4,000 名弱で,グローバル に展開している会社です。 業績予想も出しましたが,為替の影響やタイの地震の影響もあって,見込みとしては少し下 げており,6,000 億の営業利益が 5,560 億ということで,営業利益率 9.3 パーセントです。 皆さん,就職の活動をする中で,経営数値や財務分析をされると思いますが,これぐらいの 企業で利益率が 10 パーセント前後あるというのは,結構,付加価値の高い製品を出していると いうのを分かっていただけると思います。村田製作所は,この 9.3 でも少ない方です。去年は 13.何パーセントありましたし,ピーク時には 30 パーセントぐらいありました。9.3 パーセント というのは,村田製作所では若干,不本意な数字です。 こういったところからも,村田製作所にしかできない部品を世界中に提供させていただいて るというのが,数字からも分かっていただけるかなと思います。 あと,グローバルに展開しているというところです。村田製作所は漢字5文字の会社なので, なかなかドメスティックに思われがちなんですけども,取引先は世界中に渡っています。この 主要取引先の名前を書いています資料は,左の列に総合家電メーカーがあって,真ん中の上の 列に自動車部品メーカーがあって,右側に世界に名だたる欧米とか韓国系のメーカーがあって, 私がいつも例えに出すのは真ん中よりやや下ですね。 今日は中国の方が多いですから,フォックスコンって御存知ですよね。どれぐらいいらっし ゃいますか。 あら,案外,御存知ないのですね。 では,アイフォンを持っておられる方。 あまりいらっしゃらない。 じゃあ,ニンテンドーのDSなどはあまりお持ちじゃないですか。 ちらほら。 アイフォンを持っている方,実はフォックスコンも使っておられるのです。台湾のホンハイ (鴻海)という会社が中国でEMSと呼ばれる製造に特化した会社がありますよね。それがフ ォックスコンで,従業員が 30 万人ぐらいだと思います。世界最大のEMSメーカーです。アッ プルやニンテンドーは自分たちでものを全く作りません。商品の開発や設計,アプリケーショ ン,マーケティング,そういったところに特化して,実際にものを作っているのは,フォック スコンという風になります。 HTCは御存知ですよね。 ちらほら。これは中国の携帯の端末機メーカーです。 RIM,リサーチ・イン・モーションを御存知の方。ちらほら。 じゃあ,BlackBerry(ブラックベリー)というスマートフォンを聞いたことがある方は。 いらっしゃいますね。北米で流行っている,BlackBerry と呼ばれるスマートフォンを作って いる会社です。 ファーウエイは御存知ですか。 ファーウエイの方が,よく知っておられますね。漢字で書くと「華」に「為」ですね。中国 の為にという意味合いの会社です。 こういったところが,全て村田製作所の重要なお客さんです。どこか一社に頼っているわけ ではなくて,広く薄く,色々な所にお客さんが広がっています。こういうところからも,すご くグローバルに展開させていただいているのが分かっていただけるかなと思います。 次の資料を御覧ください。「携帯電話 世界シェア」です。携帯電話のスマートフォン以外の 世界シェアです。1位がフィンランドの Nokia(ノキア)で,韓国勢のサムスンとLG,アップ ルが来て,その次にZTEです。 こういった所が世界シェアトップで,日本の端末機メーカー全部合わせても,多分ZTEさ ん一社にかないません。それぐらいの規模です。 スマートフォンの世界シェアを見ると,1 番がアップルで,最近はサムスンさんがかなり来て, その次に Nokia です。こういった所が全て,村田製作所の重要なお客様です。 拠点ですが,ヨーロッパ,アメリカは営業拠点が中心で,中国とASEAN地域は営業拠点 と生産拠点が中心という形でグローバルに展開しています。海外の売上高比率というのが 85 パ ーセントということで,村田製作所の売上げの 85 パーセントが日本国外で売上げております。 そんな中で,弊社,村田製作所,ムラタの強みとしては,技術的なところでいきますと,R &D体制としては垂直統合という言い方をします。一貫生産とも言いますけれどもセラミック スの材料の開発・設計,ものづくり,その製造ラインに至るまで,ほとんど自社内でものづく りを完結しております。一見当たり前に聞こえたかもしれないですけれども,冷静に考えます と,例えば自動車メーカーって,どうしています? シートを自分で作っていますか。カーナビは? タイヤを自社で作っていますかね。革の 自動車メーカーというのは,自動車部品メー カーをはじめ様々なメーカーから部品を頂いて,それをアッセンブル,組み立てて,後は販売 マーケティングですね。そういったところに力を入れているのですね。1台当たりの利益はそ んなに高くないのですが,売上げを上げて全体的な利益を稼いでいる,これは水平分業という 言い方をします。弊社の場合は,セラミックスの材料からお客さんに提供するまでを,ほぼ自 分たちでいたしております。 じゃあ,自動車メーカーもそうしたらいいじゃないかと思いがちですが,それは無理です。 私たちはセラミックスという材料で,電子部品という業界に特化しているからこそできること なんですね。これが,例えば,自動車メーカーのトヨタさんが同じことをしようと思ったら, 今の従業員数は3倍から4倍,設備投資もかなりたくさん要ります。このようなことは効率的 では全然ございません。それはビジネススタイルの違いです。村田製作所の売上げは,先ほど 言いました 6,000 数百億で,自動車メーカーは何兆円という規模ですから,規模が違います。 ただ利益額で見ると,結構とんとんになる場合もありますけれども,売上規模が違うのは,ビ ジネススタイルの違いによるというそれだけのことです。そういう強みがあるんだなというの を覚えていただければいいかなと思います。 事業領域としては,コンデンサをはじめとした単機能部品から先ほど Bluetooth とかWi- Fiという話をしましたけれども,ああいう通信機器によく使われるモジュールと呼ばれるも の,そういった村田製作所の強みをいかすような分野に,にじみ出しという言い方をするんで すが,じわじわと強みをいかせる商品を広げていっております。 これ,ムラタセイサク君とかセイコちゃんとかを見たり聞いたりしたことがある方,どれぐ らいおられますか。 ちらほら。ありがとうございます。 これは,村田製作所の技術を結集したら,これぐらいのことはできますよと,デモンストレ ーション的に作った自転車型ロボット,一輪車ロボットでして,機械系の学生さんなどが御覧 になるとすごく喜んでいただけます。60 センチ四方ぐらいの小さな自転車型ロボットですけれ ども,自分でバランスを取って自力走行できますし,タイヤの幅と同じぐらいの平均台の上も 走れます。バックもできます。そういったバランスを取るセンサーの技術と,それを制御する プログラミングですね。ソフトウェアの技術というのがすごく強みとしてありまして,それが 生産技術と呼ばれる製造ラインで機械を,コンデンサでしたら,月に何億個と作っています。 年間数十億個を作りますので,それを人間の手で一つ一つ作業してはいられませんので,制御 技術やプログラミングで動かします。そういった技術を応用したようなムラタの技術をアピー ルするために作ったという自転車型ロボットです。以前,CMに出ましたし,小・中学校へも 出前講座などいたしております。最近,ロボットの関係の映画が公開されましたけれど,たま たま少しだけ使われています。また見かけたら,御注目ください。 長々と村田製作所の概要を説明してまいりました。 村田製作所が,どういう考え方で事業展開をし,実はグローバルに展開しているんだよとい うのを知っていただいたうえでないと次の話につながらないので,お話させていただきました。 村田製作所における留学生の方の採用実績ですが,他社さんと比べるとそんなには多くあり ません。先ほどの講演のお話であったかもしれませんが,村田製作所は,留学生だからとか日 本人だからとかというくくりでの採用は,あんまりしてきませんでした。これからも,するつ もりはございません。優秀な方がたまたま留学生でしたというスタンスがほとんどです。2009 年度に3名,中国の方とアメリカの方。2010 年度はリーマンショック等もあり採用数を減らし たこともあって,採用に至りませんでした。2011 年度に3名,2012 年度,来春に入ってくる方 は,いずれも中華圏の方です。ここには挙がっていませんが,中国からいらっしゃって日本に 帰化した方も,このほかに2名いるので,来春は合計で4名ぐらい入ってきていただきます。 村田製作所が考えるグローバル人材というのはどういう方かなというところです。単純に, 例えば留学生の方で中国語ができます,英語ができます,現地の言葉ができますというだけで は,私たちはあんまり意味がないと思っています。先ほど 43 社が,他の会社さんと比べても社 数は少ないですが,ムラタの理念に共有して,こちらの思いを共有して動いてくれることが重 要であると思っています。ムラタの独自性であるとか強み,そういったものを理解して,現地 で同じように動けるような方がグローバル人材なのかなと考えているところです。 もう一つは,グローバルマインドというところです。今のところ村田製作所は国内でほとん ど生産はしていますが,円高や為替の影響がありますから,いつまでも日本で作っている場合 じゃないと思います。村田製作所のコンデンサは品質がすごく良い分,中国の現地の簡単にコ ンデンサを作るメーカーより割高です。コンデンサとしては,すごく割高です。例えば車みた いな,もし故障したら命に関わるような機器である場合は高くても品質の高いものが良いです よね。でも,命に関わるものでない場合には,多少つぶれても安さでカバーしてほしいという お客さんが最近増えてきています。そういったところは,村田製作所ではグッド・イナッフ (good enough)という言い方をするんですが,そこそこの品質で,そこそこの価格で,現地で 作るとかね。そういったことも色々組み合わせて考えています。当然,品質が重要視されるよ うなところでは,国内で作る品質の高い商品を提供します。お客さんのニーズに合わせて,そ ういう対応を行うのですが,それぞれの国内事情や海外の事情など,そういったものを抵抗な くグローバルに考えていただけるような方がグローバル人材なんだと捉えています。これは留 学生に限らず,日本人でもそういうマインドを持っている方を,私たちはグローバル人材だと 思っています。 三つ目として,適材適所の人材配置。基本的に村田製作所の海外拠点での考え方は,できる だけローカル化する。現地に任せるというものです。ただ最初に立ち上げた頃は,なかなかム ラタの理念であるとか,そういったものを御理解いただけなかったり,技術もすぐには伝承で きませんから,日本人の方が何人かは必ず出向いて行って,ローカルの方を育て上げます。育 て上げたら,理想は全員引き揚げです。引き揚げて,後は後方支援すると。全員引き揚げるこ とはなかなかできないのですけれども,ほとんどは引き揚げてきています。そういう形で,適 材適所の人材配置を行う中で,グローバルに活躍いただける方というのは当然必要ですし,例 えば中国,マレーシア,タイなどの現地の工場で,現地の思いを持ち,現地できちっと誇りを 持って働くローカル人材が絶対に必要です。それは,もちろん日本においてもそうですけれど も。そういったグローバル人材とローカル人材という役割をちゃんと意識するということがで きる人が,ムラタで考えるグローバル人材なのかなと。自分の役割・立場をちゃんと意識して, 理解しているという形で活躍できる方ですね。 日本発,日本から輸出するというのが村田製作所といいますか,日本企業の一般的なスタイ ルだったと思います。最近は,現地発・現地消費ですね。さっき言いましたグッド・イナッフ という形で,そこそこの品質で,大量に安い価格で欲しいニーズがある所には,現地にたくさ ん大きな拠点を構え,そこで,そういう現地発・現地消費をする。例えばニッサンなどが,タ イで作ったマーチを日本に出したりしてきていますよね。あのような形で現地,日本以外の所 で作って日本へ出すとか,例えばタイで作ってヨーロッパに出すなどというのも有り得ると思 いますので,これからは色々な組合せが出てくると思います。様々なビジネススタイルが考え られる中で,基本的には国籍というのは関係なくなってくると考えます。 私自身はグローバルという言い方をあまり好きじゃないのです。グローバルと言うより,ど ちらかといったらボーダレス。境界なしに,どこへ行っても活躍できる。ですから日本でも同 じような活躍ができますし,中国に赴任したとしても,日本で行っていた同じような品質,成 果を上げられるような方がグローバル人材なのかなという風に私たちは考えています。 ということで,赤で書いておりますけれど,国籍は特に問うておりません。当然,日本に留 学で来られている方というのは,そういう素養・適性を絶対に他の方よりお持ちのはずです。 どこかの会社に就職するということは,その会社の理念・考え方を必ず共有しないと意味がな いと思います。その考え方に共有できる会社に入って,ボーダレスに,どこへ行ってもその理 念を展開できるような方というのが,私はグローバル人材だと考えます。 と,こういう偉そうなことを言いながら,村田製作所はそんなにグローバルなことをできて いる会社ではございません。今,必死に社内外で,グローバルに向けて取り組んでおりますの で,例えばということで,村田製作所の取組をいくつか御紹介したいと思います。 留学生の方も含めて,日本で村田製作所に入社していただいた方は,入社して1箇月後ぐら いに半年間ほど村田製作所の製造子会社に行って実習してもらいます。一緒に夜勤などもして もらいます。ものづくりのメーカーですので,製造業のおもしろみやつらさ,楽しさというの も感じていただきたいので,半年間実習に入っていただくシステムになっています。今年から 始めましたのは,今後,中国の拠点とのやり取りなど,先ほど申しました現地で拠点展開する 上での,様々な業務,例えば現地で材料を調達したりなどがありますので,さらに1箇月,中 国で実習してもらうシステムを作りました。これは,日本人社員を対象としたもので,そうい う形で,日本国内でのグローバル化というのも進めております。 それから,元々あるのはグローバルキャリアプログラムというものです。海外の大学や語学 学校,ビジネススクールなどに通いつつ,実務研修みたいな感じで海外の拠点で働いていただ いているという若手社員もおります。 右の写真にあるのは,知的財産のパテントを扱っている部隊の女性社員が,1年ほど海外の, よくやり取りする特許事務所に赴任して,色々実務研修を受けたときの写真です。こういった 形で,年に 15 名から 20 名ぐらい赴任しておりますので,皆さんももし御縁があって入社いた だいたら,こういうチャンスも巡ってくるかなという風に思います。 それから海外派遣要員ということで,いきなり半年後や1年後に中国へ行ってください,ア メリカへ行ってくださいと言われても,日本人の方については,そもそも皆さんと違って語学 についてのスキルがなかなか整っていない部分がありますので,語学研修や英語でのプレゼン のスキルを学ぶような研修もを半年~1年掛けて行ったりもいたします。 お恥ずかしい話なんですけれども,私も含めてですが,日本人社員の英語力の底上げをしな いと,これからのグローバル化には太刀打ちできないと考えておりまして,TOEICの目標 点数を設定するなど,社員向けに何らかの研修の機会を与えるべく,現在,企画している最中 です。ただ,会社から与えられるというよりは,私たち人事部としての思いは,そういう危機 感を持って自己啓発という形で,自分たちでしてほしい,セルフトレーニングで頑張ってほし いというのが基本でございます。 あと,弊社で少しおもしろいなと思っているのが,国際出向者という制度を4~5年前から 行っております。先ほど言いましたローカル化を基本的に推進しており,海外の拠点でも優秀 な社員がたくさんいますので,日本から出向・転勤するという逆のパターンです。例えば中国 の拠点から日本の事業所に,転勤で来ていただいています。中国やアメリカ,ヨーロッパ,タ イ,マレーシア,色々なところから常時 50 名以上の海外拠点の従業員が,現在日本で働いてい ます。今日の午後からのジョブフェアでは,人事部に現在来ている中国の無錫(ムシャク)の拠 点で人事担当をしている社員からの説明もさせていただく予定です。彼は国際出向者の受入れ などの管理や,彼らのサポートなどを担当しています。 このように,内なる国際化みたいな形でお互いに人事交流をしながらグローバル化を図って いるということでございます。 ということで,会社概要や背景なども御説明しながら,村田製作所がグローバル人材をどう いう風に考えているかというところをお話させていただきました。 では,これから,皆さんから色々御質問をお受けする時間にしたいと思います。 ~質疑応答~ 会場1 今日は御説明をありがとうございます。立命館大学から参りました。 一つ質問があります。村田製作所は電子部品メーカーとして世界に展開して圧倒的な シェアを持っておられますが,競争相手があってもなかなか差別化はできないと思うん です。もし競争相手があれば,村田製作所が差別化できる点を教えてください。 講師1 差別化ということですね。おっしゃるとおりで,村田製作所の強みとしては先ほど申 し上げました一貫生産という形で材料から,村田製作所でしかできない部品を色々作っ ているという話をしましたけれども,一方で,中国・韓国・台湾系のメーカーからの追 上げも非常に厳しいものがあります。他の業界と同じく,そういったところからの技術 的なキャッチアップもすごく来ております。村田製作所はそういう技術で先行するとい うところと,トータルソリューションという言い方をするのですけれども,村田製作所 はセラミックスをはじめとした受動部品と呼ばれる電子部品は数限りなくというか,た くさん揃えておりますので,例えば, 「ここをもう少し小さくしたいな」, 「この機能,も う少し何とかならんかな」,「アンテナの感度を上げたいな」などという漠然とした御質 問や御要望に対して,村田製作所の技術を色々組み合わせれば,何かできます。そうい った形で,お客さんの小さな要望に対しても,村田製作所の部品と技術でサポートする。 単純に部品が安い,小さい,たくさん持っているというだけじゃなくて,サービスも含 めたソリューションで,お客さんに御提案して,村田製作所に頼めば必ず何か対応して くれるというような信頼や認識をお客さんから頂くというのが,今,一つの競争力の源 泉かなという風に思っています。そういう形で,今,差別化を図っています。 会場2 貴重なお話をありがとうございました。同志社大学商学研究科から参りました。 一つ御質問をさせていただきたいと思います。村田製作所は私にとって,理系の男性 が多く働いている職場だと思いましたが,実際は,女性でも活躍できる職場ですか。 講師2 先ほど,グローバル人材で,国籍に関係なくという話をしましたけれど,性別も関係 ございません。特に男性だから,女性だからっていうのはございません。ただ理系の方 ってどれぐらいいらっしゃいますか。 あまり多くないですね。 理系の方は御自分のクラスを見渡したときに,女性の方って多いですか。何人ぐらい いらっしゃいます? 例えば,電気系の教室や機械系の教室を見ると,100 人のクラスに 女子学生は多分 10 人もいらっしゃらないでしょうね。弊社は,技術の強い会社なので, 例えば去年 100 人採用し,文系と理系の割でいくと理系の方が 85 名,文系が 15 名です。 このように,理系の方が圧倒的に多いので,当然ながら働いている方,エンジニアなど になると女性の方はそんなに多くないです。ただ,文系の方は半々みたいな割合になり, 女性がいます。また,いわゆる日本でいう一般職と呼ばれる事務をアシスタントするよ うな担当の方々は女性が多いです。このようなことから,弊社でも女性の方は活躍して おられます。さっき御覧いただきました映像に,パテントの研修で女性が海外へ派遣さ れていましたように,女性社員で実際に中国やシンガポールに出向している文系の方も いらっしゃいますし,男女という区別はいたしておりません。村田製作所は理系の会社 だし文系は厳しいなとか,男性の方が多そうだから女性は難しいかなという先入観は, 全く持たなくて結構です。大丈夫です。 会場3 今年の求人について,募集の計画を教えていただけますか。 講師3 今年の募集計画ですが,今のところ細かな数字はまだ決めていないのですけれども, ほぼ昨年どおりです。全体で 100 名程度の採用で,文系と理系の割合は文系が 15~20 人, 理系が 80 人前後ぐらいです。特に弊社の場合,前段で申し上げましたけれど,国籍を気 にしての採用は行いません。留学生枠みたいなものは特に設けておりませんで,たまた ま結果的に3~4名ぐらいになっているという現状です。採用内定はそれ以上出してい ます。3名採用しました際には6名ぐらいの留学生の方がおられましたが,残念ながら, 弊社じゃなくて,他の会社を選ばれた方がおられ,結果的に3名ぐらいになっていると いうイメージを持っていただければと思います。ですから,そんなに狭き門ではないと 私は思っております。 皆さん,勉強や研究など色々なことについて頑張っておられる方がたくさんいらっし ゃいますので,村田製作所に是非とも御応募いただけたらと思います。 会場4 求人の中で英語をよく使うんだと感じていました。それで,もしTOEICの成績で どれぐらいあるかとか,どのぐらいでしょうか。 講師4 そうですね,TOEICについて,この点数以上欲しいというのは今のところ具体的 に特に設けていません。先ほど日本人社員の英語力底上げという話をしましたけれど, 目標としては 600 点以上は欲しいなと思います。マネージャークラスだと 720 点ぐら欲 しいなという言い方をしています。ただ,これはあくまでも目標なので,実際に社員全 員ができているわけではありません。 会場5 本日は貴重なお話をありがとうございました。同志社大学経済学部3回生です。 まず一点目です。私だけではなく,御来場の留学生の皆さん方も関心を持っていると 思いますけれど,村田製作所のようなメーカーは,事務職とエンジニアリング職では, どっちの方がグローバル的人材を求めているんですか。それが一つ目の質問です。 二つ目の質問は,例えば外国語がしゃべれる日本人の方と,日本語をしゃべれる留学 生の方で,留学生の強みはどこにありますか。 三点目なんですが,日本の企業はどうしても色々な資格は認められますけれど,私は 日本語の級なんか一切持ってません。それはどう思いますか。以上です。 講師5 まず一点目の御質問は,事務系と技術系でグローバルの人材というのはどちらの方が 強く求めていますかということだと思います。これは,企業によって色々違うと思いま す。弊社の場合は,どちらかにという風に重点を置いているわけではございません。ど ちらにも必要だと思っています。文系の方でしたら,いわゆる営業職や海外の拠点とや り取りする資材購買といったところで,留学生の方は現地のバックボーンというか,背 景とかビジネス慣習などをよく御存知の方もいらっしゃいますから,そういった方面で 必要ですし,理系の方については海外拠点,今は生産移管なども進めていたりしますの で,現地の方のやり取りであるとか,そういったところで必要になりますから,時それ ぞれですけれども,どちらの方に重点を置くというのは,企業によって違うと思います。 弊社の場合は,どちらにもそういったグローバル人材が欲しいという風に思っています。 二つ目が,日本語をしゃべれる留学生の方が,どういったところに強みが出るかとい うことですね。それも今,言いましたように,例えば中国の家電メーカーであるなどと いったところとネゴシエーションをするときに,どうしてもよく言われるんですけれど, 中国独特の慣習というか,日本人なら日本人同士で,中国の方と中国の方だったら分か るというものがあると思います。そういったところに中国の方がいると,向こうのネゴ シエーションで言っていただいている提案や発言や申入れの意図がより明確に理解でき る。そういったところで,すごく強みが出ると思います。そういった意味でブリッジと いうか,日本と中国とか日本とマレーシアとかといったところでのブリッジ的存在にな れるような強みは,多分大きく出るという風に私は思います。 三つ目の資格。弊社の場合は全く問いません。私も,よく留学生の方とお話しします が,日本語能力の検定1級を持っている方,持っていない方,両方の方とお話をします と,資格と比例しない方が多いですよね。「1級を持っていて日常会話はできますけど, 技術的な話になるとちょっと無理なんで,イングリッシュにさせてください」と言われ, 「いや,ちょっと待ってください」って話になったりします。逆に1級の資格を持って おられない方でも,本当にスムーズに話ができる方はいらっしゃいます。資格にはこだ わりません。コミュニケーションを取りながら,その方がどういう方なのかを見せてい ただきます。技術的な背景もそうですし,そのポリシー,考え方,そういったところを 見ています。他の会社はもしかしたらそういう資格が必須とされているかもしれません が,弊社に限って言えば,あんまり気にしていませんので大丈夫です。 (講演2 終了) ~講演3~ 皆さん,こんにちは。 私,ローム株式会社調達部装置グループの蘇 巍埼(そ えいき)と申します。 本日,この場に立たせていただきまして本当に光栄です。 今日はこの場をもちまして私自身の経験を皆さんと共有し,これからの皆さんの就職活動に お役に立てたらうれしく思います。 私は 2005 年の9月に立命館アジア太平洋大学のアジアパシフィックマネジメント学部に入学 し,2010 年3月に大学を卒業後,同年4月にローム株式会社に入社しました。現在までローム 株式会社調達部の装置グループに所属しています。 ローム株式会社は半導体のメーカーですので,半導体素子を生産する前工程から後工程まで, この一連の装置を全世界から購入してくるのが仕事です。 私が日本での就職を意識し始めたのは,2008 年の秋でした。当時,景気の良い時期で内定は 当たり前のように,大手企業の内定をもらった先輩も少なくありませんでした。しかし,2008 年末に,リーマンショックが勃発し,世界的な不況に陥りました。そして,初めて内定取消し という言葉も耳にしました。当時は,内定が取り消され 100 万円の賠償金をもらった留学生も いました。 2009 年の年明けに私も本格的に就職活動を開始しました。約 70 社にエントリーシートを提出 し,面接まで進めたのは 50 社くらいでした。内定の取消しはありませんでしたが,最終面接の 取消しは1社ありました。当時は志望度が高く,また,ほとんどの企業の採用活動も終えてい たため,かなり落ち込んでいました。しかし,チャンスというのは待てば来るのではなく,自 らの頑張り次第で訪れて来ると信じ,私は諦めずに頑張り続けていました。その結果,2009 年 の夏に今の会社,ローム株式会社と出会うことができ,無事に内定を頂きました。 次は,留学生として日本における就職活動を行うときの心得についてのお話です。まず,日 本での就職活動の仕組みを知っておくことが大事です。エントリーシート,履歴書の提出,S PIと適性検査など書類と筆記審査を通過した後に面接というのが一般的です。企業によって は面接の回数が異なりますが,私の経験中で面接を9回も行う企業もありました。 その中で,日本企業が様々な選考で,留学生の何を見ているのかを私なりに考えました。 一つ目は,コミュニケーション能力です。母国語だけではなく,日本人と同レベルの日本語 でコミュニケーションができるかどうかが問われます。また,プラスアルファで母国語と日本 語以外で他言語ができると,就職活動においてはかなりのセールスポイントになります。後輩 の中で日本語・中国語・英語と大学の4年間で,スペイン語と韓国語も話せるようになった人 もいまして,当然,彼は最終的に日本のトップレベルの企業に入りました。 二つ目は基礎知識です。まずは社会人の常識です,例えば遅れる場合は必ず連絡したり,リ クルートスタイルにふさわしい格好で面接に行ったりすること。就活生としての常識も常に守 っておくことです。 そして,礼儀などのマナーです。「郷に入りては,郷に従え」,日本の礼儀を尊重し,それを 守ることはとても大切だと思います。最後は,SPIなどの筆記試験です。この筆記試験は, 小学校から大学まで勉強した様々な知識をまとめたようなもので,企業によっては,生物,地 理,物理などの問題も出され,それぞれ異なりますが,さほど深い知識を問われることもなく, 対策本などを勉強し,きちんと準備できれば特に問題ないと思われます。 最後は,皆さんの人物像です。あえて言うと,これは生まれつきのもので,たとえ意識しな がら準備しようとしても変えられないことです。ですから,自分を無理やり変えるより,企業 研究を行い,自分に合う企業を探すことをお勧めします。 そして,合うと思う企業を自分の人物像とどうつなげるかを紹介いたします。まずは,企業 研究を行う時に,あなたが興味を持つ業界の全体像を知るということです。例えば,私の場合 は半導体業界のほか,重機業界にも興味を持っており,色々調査しました。そういう時は,い つも自分に「あなたにとってこの業界は本当に魅力的ですか」と問い掛けてみます。その答え が, 「イエス」という場合は,次はさらに絞ります。同じ業界の中でも特に入りたい企業を掘り 下げて研究します。次には,その企業でやりたいことが見えてくるのかが大切です。例えば, 私がローム株式会社を応募したときに, 「ロームに入れば,調達をやりたい」と強く考えました。 しかし,やりたいことがあるだけでは足りません。外部環境としてこの企業の社風が自分に合 うかどうかも選考を通じてチェックしなければいけません。せっかく入社に至ったものの周り の環境と合わず,定着せず辞める人も多いのです。 もちろん上記は最も理想的な話です。逆に,その業界への関心を持たず, 「ノー」という答え が出た場合は,他の業界に目を向けます。この業界全体に興味を持てないと,いくら魅力的な 企業が存在しても入社後に自分が設定したキャリアと違う方向に行ってしまいますので,長く 仕事を続けることは難しいと思います。それは,お互いにとっても不幸なことです。 ところで,企業に関心を持つものの,やりたいことが見えてこない場合は,その企業のライ バル企業を研究してみてはどうでしょうか。競合他社は基本的にお互いの強みと弱みを持って いるので,この企業が駄目だったら競合他社を研究してみるのも一つの方法です。競合他社で もやりたいことを見付け出せなければ,他の業界に目を向けることも考えられます。 社風に関しても同じく「ノー」という回答が出たら,競合他社を研究するか,若しくは他の 業界への応募を考えるかになります。もちろん,ほかにも様々な企業研究のやり方があると思 いますが,最終的には自分自身でしっかりと考えてから行動することをお勧めします。 そして,次のことは絶対に忘れてはいけません。それは,何をするのも全力で投球し,諦め ずに最後までやり遂げることです。 「継続は力なり」という言葉は多分皆さんも御存知だと思い ますが,何に関しても継続的に,かつ最後までやるということは絶対忘れないでください。 最後,私なりのアドバイスを紹介します。 私は常に二つの思考法を持っています。日本で就職したいということで例を挙げます。絶対 に日本で就職したいとはっきり目標を明確にしている方と,何となく周りが活動しているので 私もやってみようかという方もいると思います。 まず,目標が明確な方には,先にゴールを設定してもらいます。そのゴールに達成するため に,必要な要素(A)をリストアップ,そして,それぞれの要素(A)に達するため要素(B)を もう一度リストアップすることです。類推し,最後自分に最も近く,すぐできることが見えて くると思います。そのすぐできることを一つ一つやっていくのが骨です。全ての要素をクリア できれば,ゴールは目の前にあります。 次に,周りに流されて何となく就職活動してみようかなという方,ゴールは始めからはっき り見えていませんが,身近で些細なことは見えるでしょう。そこから着手し,ピラミッドの土 台を建てます。そして,一つ,若しくは複数のやったことに導かれた結果をリストアップし, 最終的に出た結果はもしかしたらあなたのゴールかもしれません。例えば履歴書を書いてみた り,説明会に参加してみたりします。そうすると,1箇月後自分がこの1箇月の間にやったこ とを分析するとゴールが見えてきます。 また,健康を保つということもとても重要です。ここでいう健康とは,体と心の健康です。 明日は面接なのに風邪をひいたときほど残念なことはありません。それと,心の健康も大事で す。日本企業は新人に対してはしっかりと教育するのが基本ですので,ストレス耐性を鍛えな いといけません。その他,ネットワークを作って,大学生時代からの友人とは就職後でも連絡 することをお勧めします。そして,勉強をし続けることです。社会人になったら,もう勉強は ここで終わりだとほっとしている方もいると思いますが,実は違います。仕事をしていく間に, 自分の欠点と不足が見えてくるため,常に自己啓発を意識し,自分を磨いてください。 最後に,皆さんが母国から離れて日本に留学,通学しながら就職活動を行うには大変なこと もたくさんあると思いますが,残りの半年間を何とか乗り越え,良い結果を出せるように頑張 ってください。皆さん,自分を信じて,これからも素晴らしい人生を送ってください。 (講演3 終了)