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熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System

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熊本大学学術リポジトリ
Kumamoto University Repository System
Title
単為結果性ミニトマトの冬季無加温栽培 : 地温の影響と
5-アミノレブリン酸配合肥料の施用効果
Author(s)
西川, 浩次; 岸田, 史生; 榊原, 俊雄
Citation
Issue date
2011-03-18
Type
Presentation
URL
http://hdl.handle.net/2298/23619
Right
単為結果性ミニトマト
単為結果性ミニトマトの
ミニトマトの冬季無加温栽培
~地温の
地温の影響と
影響と 5-アミノレブリン
アミノレブリン酸配
施用効果~
アミノレブリン酸配合肥料
酸配合肥料の
合肥料の施用効果
効果~
西川
浩次,岸田
史生,榊原
俊雄
京都大学大学院農学研究科附属農場
1. 緒言
通常冬季でのミニトマトの栽培はハウス内で暖房機を使用する.その理由として花蕾が低温に遭遇すると受精障害が発
生するからである.しかし,単為結果性を有する品種は受精の有無に関わらず着果することができるのでハウス内の保温
だけで栽培することが可能であると考えられた.そこで,京都大学大学院農学研究科・矢澤
進教授が育成された単為結
果性ミニトマト数品種について冬季での無加温栽培を行った結果,‘MPK-1’が栽培に適していることがわかった(西川
ら 2008,2009,2010).‘MPK-1’は現在‘京てまり’という品種名で京都市の農家で栽培され市場に流通している.京
都市の農家が行なっている作型は雨よけ栽培が中心であるが,この作型は冬季よりも市場値が安価であるため収益性に乏
しい.冬季での無加温栽培ができれば暖房費などのコストが掛からず市場値が高値の時期に出荷することが可能となる.
しかし,低温による品質や収量の低下も認められているためその対策を講じなければならない.その方策として地温の保
温や機能性を有する液肥の施用などが考えられる.そこで,マルチ資材の違いによる地温の差異と環境ストレスの軽減が
確認されている 5-アミノレブリン酸配合肥料(ペンタキープ VⓇ,コスモ誠和アグリカルチャ株式会社,東京都)の施用
が収量および品質に及ぼす影響を調査した.
2. 材料および
材料および方法
および方法
単為結果性ミニトマト‘MPK-1’を供試した.無加温硬質フィルムハウス(面積:5a)内に幅 160cm の畝を作りその中央
に幅 40cm,深さ 20cm の根域制限床を作成した.元肥はエコロング 424-140(N:P:K=14:12:14)を 15kg/10a,エコロング
424-70(N:P:K=14:12:14)を 5ka/10a, 粒状過燐酸石灰 (P=17)を 3kg/10a 施用した.追肥は 2009 年 11 月 13 日より
OK-F-3(N:P:K=14:8:25)を液肥として 0.8g/株を 1 週間に 1 回施用した.また,2009 年 11 月 13 日より内張りによる保温を
行った.2009 年 10 月 13 日に 128 穴のプラグトレーに挿し芽した苗を,株間 40cm・2 条で 180 株/畝を定植し 1 本仕立て
で管理を行なった.マルチ資材としてシルバーポリマルチ,黒ポリマルチ,光反射シート(タイベックⓇ,旭・デュポン
フラッシュパンプロダクツ株式会社,東京都)を使用し 20 株ずつ選んで調査を行った.さらに,3 つのマルチ区に対し
5-アミノレブリン酸配合肥料(以後 ALA と略す)を 1 週間に 1 回 5000 倍希釈液(原液 25ml/畝相当)を施用する区,20000
倍希釈液(原液 5ml/畝相当)を施用する区,対照区として灌水のみの区をそれぞれ設定した.収穫期間は 2009 年 12 月 21
日から 2010 年 3 月 29 日とし,2009 年 10 月 13 日から 2010 年 3 月 1 日の期間,室温および各マルチ区の地温(5~10cm 深)
を温度ロガーで 30 分毎に測定した.また,各処理区より 5 株選び,2009 年 10 月 26 日,11 月 26 日および 12 月 25 日に
草丈を測定し,収穫時に各処理区の総重量および収穫個数を計量した.糖度は秀品の中から無作為に 5 果選び,屈折糖度
計で測定した.
3. 結果および
結果および考察
および考察
栽培期間中の平均室温および各マルチの平均地温を図 1 に示す.各温度とも 1 月中旬ごろまで徐々に低下し,その後上
昇した.各マルチの地温はハウス内温度よりも高かったがシルバーポリマルチおよび黒ポリマルチよりも光反射シートは
約 2℃~3℃低く推移した.総収量,収穫総個数,平均糖度で大きな差はなかったが平均果重は光反射シートで重くなっ
た(表 1)
.また,月間の測定値では草丈が光反射シートで 10 月に低くなったほかは,1 株あたりの収量,平均糖度とも
有意差はなかった(表 2)
.一方,ALA の効果をみると総収量,総収穫個数,平均果重および平均糖度で濃度による影響
は認められなかったが(表 3)
,月間の測定値を比較すると 5000 倍施用区で草丈では 10 月,1 株当たりの収量では 12 月
と 1 月,平均糖度では 1 月と 2 月で有意差があり 5000 倍施用区が最も良かった(表 4)
.
以上の結果より,マルチ資材の種類によって地温が異なっており,初期生育では低温の影響があったものの,収量およ
び品質には影響がなかった.このことは光反射シートでは地温の低下による悪影響を光反射が増加したことによって打ち
消された可能性が考えられる.しかし,同じ高温性野菜であるナスの半促成栽培において地温の確保による収量の増加が
報告されていることから(鈴木敏政 2010),今後さらに各種マルチ資材の利用方法と作用について検討する必要がある.
一方,ALA については高濃度で処理をすると効果があることが示唆された.ALA は植物の光合成能力を向上させ低温,
低日照でも成長の維持に効果があることが報告されている.今回の調査での初期における草丈伸長の促進,収量の増加お
よび糖度の上昇が認められ,ALA による生長促進効果が実証された.しかし,3 月になると収量が減少する傾向がある
ことから ALA の施用を含めた栽培体系の構築が今後の課題である.
シルバー
黒
光反射
室温
30
温度(℃)
25
20
15
10
5
0
2
3
10月
4
1
2
3
4
11月
1
2
3
4
1
2
12月
3
4
5
1
2
1月
3
2月
4
1
3月
図 1.各マルチ区の地温と室温の週毎の平均温度
表 1.マル チの違 いが総 収量,収 穫総個 数,平 均果重 ,平均糖 度に及 ぼす影 響
総収量 (株/kg ) 収 穫総個 数(/株 ) 平均果 重(1果 /g) 平均糖 度(Brix°)
シ ルバー
2.39
86.8
2 7.5
6.8
黒
2.28
84.5
2 6.9
6.9
光 反射
2.51
87.2
2 8.8
7.0
ns
*
ns
ns1)
1)
分 散分析によ りnsは有 意差なし, *は 10%水 準で有意差 あり
表2.マルチ の違いが草丈,一株あ たりの月別収量 ,月別平均糖 度に及ぼ す影響
シルバー
黒
光反射
10月
1 8.3
1 9.5
1 4.7
** 1)
1)
草丈(cm)
11月
84.5
90.3
83.3
ns
12月
123. 6
129. 4
121. 9
ns
12月
0.01
0.01
0.01
ns
収量(kg/株)
1月
2月
0.12
1.32
0.10
1.27
0.13
1.50
ns
ns
分 散分析によ りnsは有 意差なし, ** は5%水準で有意 差あり
3月
0 .94
0 .89
0 .87
ns
平均 糖度(Brix°)
1月
2月
3月
6.48
6.80
7.13
6.38
6.78
7.29
6.53
6.70
7.57
ns
ns
ns
表3.ALAの濃度が総収 量,収穫総個数,平均 1果重,平均糖度に及 ぼす影響
濃度
×0
×20000
×5000
総収量(kg)
収穫総個数(/株)
平均果重(1果/g)
平均糖度(B rix°)
2.30
2.31
2.57
83.6
85.1
89.8
2 7.4
2 7.2
2 8.6
6.8
6.8
7.0
ns1)
ns
ns
ns
1)
分 散分析によ りnsは有 意差なし
×0
×20000
表4.A LAの濃度が草丈 ,一株あたりの月別収量,月別平均 糖度に及ぼす影 響
収量(kg/株)
平均 糖度(Brix°)
草丈(cm)
10月
11月
12月
12月
1月
2月
3月
1月
2月
3月
1 6.8
84.1
122. 3
0.00
0.06
1.31
0 .92
6.34
6.52
7.32
1 6.1
82.7
121. 5
0.01
0.09
1.29
0 .92
6.49
6.69
7.12
×5000
1 9.5
濃度
*
1)
1)
91.2
ns
131. 0
ns
0.02
*
0.20
**
分 散分析によ りnsは有 意差なし, * は10%水準で 有意差あり ,
1.49
ns
0 .85
ns
6.55
*
7.07
**
7.55
ns
** は5%水 準で有意 差あり
4. 謝辞
本実験の遂行にあたり,資材を提供いただいたデュポンファームソリューション株式会社およびコスモ石油株式会社に
深く感謝いたします.また,調査および発表に対し有益な助言・指導をしていただいた京都大学大学院農学研究科・片岡
圭子助教に心から感謝いたします.
5. 引用文献
西川浩次・楠見浩二・榊原俊雄・札埜高志・片岡圭子(2008)単為結果性ミニトマト‘京てまり’の冬季での無加温ハ
ウス栽培の試み.京大農場報告 17:45-46
西川浩次・榊原俊雄・黒澤
俊・札埜高志・片岡圭子(2009)単為結果性ミニトマト‘京てまり’の冬季での無加温ハ
ウス栽培の試み(第 2 報)定植時期の違いが収量および品質に及ぼす影響.京大農場報告 18:57-60
西川浩次・榊原俊雄・黒澤
俊(2010)単為結果性ミニトマトの冬季での無加温栽培における品種比較.生物学研究会
報告 21:29-31
鈴木敏征(2010)黒色液状マルチが半促成栽培ナスの生育,収量および地温に及ぼす影響.園芸学研究 9 別冊 2:169
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