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審決書(PDF:229KB)

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審決書(PDF:229KB)
平成16年(判)第2号
審
決
東京都新宿区西新宿三丁目19番2号
被審人
東日本電信電話株式会社
同代表者
代表取締役
髙
部
豊
彦
同代理人
弁
川
合
弘
造
護
士
同
木目田
同
紺
野
博
靖
同
一
場
和
之
同
東
貴
裕
浩
同復代理人
弁
護
士
裕
弘
中
聡
同
宇
野
伸太郎
同
山
田
将
之
公正取引委員会は,上記被審人に対する私的独占の禁止及び公正取引の確保に関
する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第35号)附則第2条の規定によ
りなお従前の例によることとされる同法による改正前の私的独占の禁止及び公正取
引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)に基づく平成16年(判)第
2号独占禁止法違反審判事件について,公 正 取 引 委 員 会の 審 判 に 関 す る 規 則( 平
成17年公正取引委員会規則第8 号)による改正前 の公正取引委員会の 審査
及 び 審 判 に 関 す る 規 則 ( 以 下 「 規 則 」 と い う 。) 第 8 2 条 の 規 定 に よ り 審判長
審判官鵜瀞 恵 子 及び 審 判 官高橋省三 から 提出 さ れ た事 件 記 録並びに規則第84条
の規定により被審人から提出された異議の申立書及び規則第86条の規定により被
審人から聴取した陳述に基づ い て, 同審判官 ら か ら提 出された 別紙 3審決案 を調
査し, 次のとおり 審決す る。
主
1
文
被審人が,光ファイバ設備を用いた通信サービス(以下「FTTHサービス」
という。)の提供において,平成14年6月1日以降行った別紙1記載の行為は,
被審人の光ファイバ設備に接続して戸建て住宅向けFTTHサービスを提供しよ
うとする事業者の事業活動を排除することにより,東日本地区(別紙2記載の地
1
域をいう。)における戸建て住宅向けFTTHサービスの取引分野における競争を
実質的に制限していたものであって,これは,独占禁止法第2条第5項に規定す
る私的独占に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり ,かつ,当 該 行 為
は,既になくなっていると 認める。
2
被審人の前項の違反行為については,被審人に対し,格別の措置は命じない。
理
1
由
当委員会の認定した事実,証拠,判断及び法令の適用は,いずれも別紙3審決
案の理由第1ないし第5と同一であるから ,これを引用する。
2
よって,被審人に対し,独占禁止法第54条第3項及び規則第87条第1項の
規定により,主文のとおり審決する。
平成19年3月26日
公
正
取
引
委
員
会
委員長
竹
島
委
員
三
谷
委
員
山
田
昭
雄
委
員
濱
崎
恭
生
委
員
後
藤
2
一
彦
紘
晃
別紙1
被審人 は,平 成14 年6 月1日以降, 戸建て 住宅向 けのFTTH サービスと
し て新た に「ニューファミリータイプ 」と 称する サービスを提 供するに当 たり,
被審人の 電話局 から加 入 者 宅ま で の加入者光ファイバ について,1 芯の 光ファ
イ バを複数人で 使用す る分岐方式 (以下 「分岐方式」 という 。)を 用いるとし
て ,ニューファミリータイプのFTTH サービスの提 供に用 いる設 備と の接続
に 係る接続料金 の認可 を受 けるとともに ,当該 サービスのユーザー 料金 の届出
を 行っ た が,実 際には 分岐方式を 用いず ,電 話 局から 加入者宅ま で の加入者光
ファイバ について1芯 を1人 で使用 する方 式(以 下「芯線直結方式」という 。)
を 用いて 当該サービス を提供 した 。被審人は ,当 該サービスの ユーザー料 金を,
当初月額 5,800円 ,平 成15 年4月 1日 以 降は月 額4, 500 円と 設定し
た が,いずれも ,他の 電気通信事業者が 被審人 の光ファイバ 設備に 芯線直結方
式 で接続 してFTTH サービスを 提供す る際に 必要となる接続料金 を下 回るも
の で あった。
別紙2
北海道 ,青 森 県,岩手県 ,宮 城 県,秋田県, 山形県 ,福 島 県,茨城県 ,栃木
県 ,群 馬 県,埼玉県, 千 葉 県,東京都, 神奈川県,新潟県, 山梨県及び 長野県
並 びに日本電信電話株式会社等に 関する 法律第 2条第 3項第 1号の 区域 を定め
る 省令( 平成1 1年郵政省令第2 4号) に定められた 静岡県 ,富山県及 び岐阜
県 の一部 の区域
別 紙3
平 成 1 6 年 ( 判 )第 2 号
審
決
案
東 京 都 新 宿 区 西 新 宿 三 丁 目 1 9番 2 号
被審人
東日本電信電話株式会社
同代表者
代表取締役
髙
部
豊
彦
同代理人
弁
川
合
弘
造
護
士
同
木目田
同
紺
野
博
靖
同
一
場
和
之
同
東
貴
裕
浩
同復代理人
弁
護
士
裕
弘
中
聡
同
宇
野
伸太郎
同
山
田
将
之
上 記 被 審 人 に 対 す る 私 的 独 占 の 禁止及 び 公 正 取 引 の確 保 に 関 す る 法律 の 一 部
を 改 正 す る 法 律 ( 平成 1 7 年法律第 3 5 号 ) 附 則 第 2 条 の 規定 に よ り な お従 前
の 例 に よ る こ と と さ れ る 同 法 による 改 正 前 の 私 的 独 占 の 禁止及 び 公 正 取 引の 確
保 に 関 す る 法 律( 以 下「 独占禁止法 」と い う 。)に 基 づ く 平成 1 6 年( 判 )第 2
号 独 占 禁 止 法 違 反 審 判 事 件 について , 公 正 取 引 委 員 会 か ら 独 占 禁 止 法 第 51 条
の 2 及 び 公 正 取 引 委 員 会 の 審 判 に関 す る 規 則 (平 成 1 7 年 公 正 取 引 委 員 会 規 則
第 8 号 )に よ る 改正前 の 公 正 取 引 委 員 会 の 審 査及 び 審 判 に関 す る 規 則( 以下「 規
則 」 と い う 。) 第 31 条 第 1 項 の規 定 に よ り 担 当 審 判 官 に 指定 さ れ た 本 職ら は ,
審 判 の 結 果 , 次 の と お り 審 決 す る こ と が 適 当 で あ る と 考 え ,規 則 第 8 2 条及 び
第 8 3 条 の 規 定 に基 づ い て 本 審 決 案 を 作 成 する 。
主
1
文
被 審 人が,光 ファイバ設備 を用 いた通 信サービス(以 下「FTTHサービ
ス」 という。) の提供 において,平成 14年 6月1 日以降 行っ た別紙 1記載
の 行為は,被審人 の光ファイバ 設備に 接続し て戸建 て住 宅 向け FTTHサー
ビ スを提 供しようとする事 業 者の事業活動 を排 除することにより,東日本地
1
区( 別紙2 記載の 地域をいう。以下同じ。) における戸建 て住宅向け FTT
H サ ー ビ スの 取 引 分 野に お け る競 争 を実質的 に制 限し て いた も の で あ っ て,
これは ,独占禁止法第2条 第5項 に規定 する私 的 独 占に該 当し ,同法 第3条
の 規定に 違反するものである 。
2
被 審 人の前 記1の 違反行為は,既 になくなっていると 認められるので,被
審 人に対 し,格 別の措 置を命 じない 。
理
第1
由
事実及び証拠
被 審 人 が 争 わ な い 事 実 及び 括 弧 内 に 掲 示 する 証 拠 に よ っ て ,以 下 の 事 実
を 認 定 す る こ と が で き る ( な お , 特 に証 拠 を 掲 げ て い な い も の は , 争い が
な い 。)。
1
被審人の概要
被審人は ,肩 書 地に本 店を置 き,日本電信電話株式会社等に関 する法 律(昭
和 59年法律第 85号 )に 基づき ,平 成15 年法律第1 2 5号 及び平 成15
年 法 律 第 1 3 8 号 に よ る 改 正 前 の電 気 通 信 事 業 法 ( 昭 和 5 9 年法 律 第 86
号 )の 規定に 基づく 第一種電気通信事業 の許可 を受 けて,東日本地区 を業務
区 域と し て地域電気通信事業 を営んでいる 者である(なお ,上記平成 15年
法律第125号 の施行 により ,平 成16 年4月以降 ,電気通信事業法 の第一
種電気通信事業 に係る 許可の 制度は 廃止されている 。以下 ,特 に断らない限
り, 電気通信事業法については上記 改正前 のものを指す。)。 (査第 1号証
ないし第 5号証 )
被審人は ,超高速 デジタルデータ伝送 を可能 にする ものとして ,FTTH
サービス を,「Bフレッツ」 という 名称により,平 成13 年8 月から 提供し
ている。 (査第 6号証 )
2
光ファイバ設備について
(1) 被審人の 敷設す る加 入 者光ファイバ
ア
被審人の 加入者 回線は ,電 話 局(収容局ともいう 。)から 地下 のとう
道 及 び 管 路 を 用 い て メ タ ル 回 線 又 は光 フ ァ イ バ に よ る 大 束の ケ ー ブ ル
が 引かれ, 300 前後の 加入世帯をカバーす る固定配線区画ごとにき 線
点 から大 束のケーブル の一部 を分け て地上 に引 き上げ られ,電 柱に沿 っ
て 配線( 架空配線)さ れ,各加入者 宅に引 き込 まれている。
2
イ
被審人は ,平成 6年以降,加入者回線の 光ファイバ化 を推進 し,光ファ
イ バ を敷 設 してきた 。 その 際 ,収容局 からき 線点 までの 区間 は 最大 1 ,
000芯 (「芯 」とは 光ファイバの 単位で ,「本 」と同 じ意味 。)の 光
ファイバケーブルを設 置し,き 線点か ら架空配線の 配線点 ま で の区間 で
は, 場所 によって,1ケーブル 当たり 40芯 から100芯程度 の光フ ァ
イ バ ケ ー ブ ルや 24 芯 の光 ファイバケーブル を敷 設 している 。 こ れ は ,
被審人の 通信需要のみならず, 他の事業者の 利用分 を見込 んで 敷設し て
いるためであり ,実際 の開通希望に 応じ,配線点の クロージャ から1 芯
な い し 4 芯 の 光 フ ァ イ バ を ド ロ ッ プケ ー ブ ル で ユ ー ザ ー 宅ま で に 引 き
込 むこととしている。
な お,収容局か らユーザー宅 内に設 置さ れ る回線終端装置(Opti
cal
Network
Unit。以下「ONU」ともいう。ユーザー
側 では, ONU からさらにパソコン やル ー タ(データ中継装置 )に接 続
される。) までを 結ぶ光 ファイバを, き線点 や配 線 点まで 敷設 されてい
るものを 含めて 「加入者光ファイバ 」とい う。
( 以上, 査第2 9号証, 査第 31号 証な い し第3 3号証, 査第 37号
証 ,査第 40号 証,検証調書添付の 「設備検証御説明資料」 )
ウ
平成14年3月末において,被審人の加入者回線において加入者光
ファイバ が収 容 局か ら き線点 まで敷 設されている割合 は,東日本地区 全
体 で76 パーセント,政令指定都市及 び県庁所在地級都市 で9 2パ ー セ
ン ト,人 口10 万人以上の都市等で は78 パーセントとなっている。 平
成 1 5年 3 月末 に お け る同 割 合は ,東 日 本 地 区 全 体 で8 1パ ー セ ン ト ,
政令指定都市及 び県庁所在地級都市 では9 5パーセント,人口 10万 人
以 上の都市等で は85 パーセントとなっており,加入者光 ファイバの 敷
設 が進んでいる 。(査 第35 号証, 査第3 6号 証,審 第97 号証)
エ
被審人が 保有す る加入者光ファイバ は,平 成15 年3月末現在 ,約3
8 0 万 芯 で あ る と こ ろ , 自 社 の B フ レ ッ ツ に 使 用 し て い る芯 線 数 ( 光
ファイバ の本数 。回 線 数ともいう。 )は約 9万芯, 自社の Bフレッツ 以
外 の通信 サービスに使 用している芯線数は 約8 4万芯,他 の電気通 信 事
業 者が接 続している芯線数は 約2万 芯であ り,使用 している芯 線の数 は
以 上の合 計約9 5万芯 である 。こ れ は,被 審 人が保 有する 加入者光フ ァ
イ バ全体 の約2 5パーセント に当た り,被 審 人が保 有する 加入者光フ ァ
3
イ バ の 大 部 分 は , 未 使 用 で あ る ( 未 使 用 の 光 フ ァ イ バ のこと を , 以 下
「 ダークファイバ」ということがある。) 。(査 第38 号証, 査第3 9
号 証,査 第1 4 9号証 ,査第 152 号証, 査第 178 号証)
オ
ま た,平 成15 年3月末現在, 被審人 の保有 する加入者光 ファイバが
F T T H サ ー ビ ス 事 業 者 の 保 有 す る加 入 者 光 フ ァ イ バ 全 体に 占 め る 割
合 は,回線数で みて,東日本地区の 各都道県(被 審 人の業 務区 域が そ の
一 部にとどまる 静岡県 ,富 山 県及び 岐阜県 を除く 。)において 70パ ー
セ ン ト 以 上 を 占 め て お り , こ の う ち埼 玉 県 及 び 千 葉 県 に お い て は 9 0
パーセントを超 えている。( 査第220号 証)
(2) 加入者光 ファイバ設備 に係る 規制
ア
電気通信事業法 では, 電気通信設備 を用い て他人 の通信 を媒介 し,そ
の 他電気通信設備を他 人の通 信の用 に供す る こ とを,電気通信役務と い
い, 電気通信事業(電気通信役務を他 人の需 要に応 ずるために 提供す る
事 業)を 営もうとする 者は,電気通信回線設備を設 置して 行う 第一種電
気通信事業と そ れ以外 の第二種電気通信事業の 区別等 に応じ て,総務 大
臣 の許 可 又は総務大臣 への届出若しくは総 務 大 臣の登 録を要 する。( 電
気通信事業法第 2条, 第6条 ,第9 条等)
イ
電気通信事業法第38 条に よ り,第一種電気通信事業者 には, 同条各
号 に定め る場合 を除き ,他 の電気通信事業者か ら電気通信設 備に接 続す
べ き旨の 請求を 受けた ときに は,その請 求に応 じる義 務が課 せられてい
る。
ウ
総 務 大 臣 が 他 の 電 気 通 信 事 業 者 の 電 気 通 信 設備 と の 接 続 が 利 用 者 の
利 便 の 向 上 及 び 電気通信 の 総 合 的 か つ合 理 的 な 発 達 に欠 く こ と の で き
な い電気通信設備と し て指定 した電気通信設備(以下「第一種指定電気
通信設備」 という。)を 設置す る第一種電気通信事業者 は,当該第一種
指 定 電 気 通 信 設 備 と 他の 電 気 通 信 事 業 者 の 電 気 通 信 設 備 と の 接 続 に 関
し, 当該第一種電気通信事業者 が取得 すべき 金額(以 下「接続料金」と
い う。「接 続 料」と同 義に用 いる。)及 び接続条件について 接続約款を
定 め,総務大臣 の認 可を受 けなければならない 。接続約款を 変更しよう
とするときも同 様であ る。(電気通信事業法第 38条 の2第 1項及 び同
第 2項)
総務大臣が他の電気通信事業者の電気通信設備 との適正かつ円滑な
4
接 続を確 保す べ き電気通信設備と し て指定 した 電気通信設備( 以下「 第
二種指定電気通信設備 」という。)を設 置する 第一種電気通信事業者は ,
当 該 第 二 種 指 定 電 気 通 信 設 備 と 他 の電 気 通 信 事 業 者 の 電 気 通 信 設 備 と
の 接続に 関し, 接続料金及び 接続条件について接続約款 を定め ,総 務 大
臣 に届け 出なければならない。 接続約款を変 更しようとするときも同 様
で ある。 (電気通信事業法第 38条 の3第 1項 及び同 第2項 )
第一種指定電気通信設備及び第二種指定電気通信設備以外の電気通
信設備と 他の電気通信事業者 との接 続については,第一種電気通信事業
者 等は, 接続に 関する 協定を 締結し ,又は 変更しようとするときは, 総
務大臣に 届け出 なければならない。 ただし, 接続約款によ り協 定を締 結
す る場合 は協定 の届出 は要しない( 当該接続約款 を定め, 又は 変更し よ
うとするときは,当該約款について総務大臣 への届 出を要 する。)。( 電
気通信事業法第 38条 の4第 1項及 び同第 2項 )
エ
被審人が 保有す る加 入 者光ファイバ 設備(加入者回線と し て用 いられ
る 光ファイバ及 びこれらと一 体と し て使用 さ れ る伝送装置,加入者主配
線 盤の総 称)は ,電気通信事業法第 38条 の2第 1項 ,電気通信事業法
施行規則 第23 条の2 ,平 成13 年総務省告示第2 4 3号に 基づき ,総
務大臣が 指定し た第一種指定電気通信設備 であるから ,被 審 人は,加入
者 光ファイバ設 備について ,他の 電気通信事業者の電気通信設備と の接
続 の請求 を受けたときはこれに応ず る義務 を負 うとともに,その接 続に
関 し ,接 続 料 金 及び 接続条件 に つ い て接 続 約 款を 定 めなければならず ,
当 該 約 款 及 び そ の 変 更に つ い て 総務大臣 の 認 可 を 受 け な け れ ば な ら な
い。
( 以上, 査第2 号証)
3
戸 建 て 住 宅 向 け F T T H サービス に つ い て
(1) ブロードバンド サービス
ア
既 存のサービス
インターネット に接続 して大 量のデータ通 信を 可能とする,ブロード
バンドサービス と呼ばれるデータ通 信のサ ー ビ スとしては,光 ファイバ
を 使用し たFTTHサービス が提供 される 以前 から,ADSL (A s y
m m e t r ic
Digital
Subscriber
Line。
非対称デ ジタル 加入者線。) を利用 するサービス (以下 「ADSL」 と
5
い う。) と,ケーブルテレビ 網を利 用する サービス(以 下「CATV イ
ンターネット」 という 。)が 存在していた 。
ADSL については, 電話局 に接続 のための設備 を設置 し,ユーザー
宅 までは 既設の 電話回線(メタル回 線)を用 いて通 信する サービスで あ
るところ ,通信速度が 数Mbpsか ら数十 Mbpsで あ り,か つ,イ ン
タ ー ネ ッ ト から エ ン ド ユ ー ザ ー方 向( 下 り) では 最 大で 40 M b p s ,
エンドユーザー からインターネット 方向( 上り) では最 大1. 5M b p
s と差がある,1 本の銅 線を音 声と共 用して 行わ れ るサービス であるこ
と や 隣 接 し て 設 置 さ れ て い る ISDN 回 線 か ら 干 渉 を 受 ける こ と の た
め に接続 や通信速度が 安定しない,収容局か ら離れると通 信 速 度が低 下
したり利 用することができない,な ど の点が 問題点 として 指摘 されてい
た 。また, ADSL利用 のためには, 局舎か らユーザー宅 ま で の間が す
べ てメ タ ル回線 でなければならないところ, 加入者 回線の 光フ ァイバ 化
が 進むにつれて ,ADSLを 利用できない 地域 も出てきていた。
ADSL のユーザー料 金の価格帯は ,平成 14年 3月末 において,月
額 2,200円 から5, 0 0 0円 程 度であ った(当 時の契約回線数上位
4 社 の料 金 。イ ン タ ー ネ ッ ト接 続 サービス の 料金 (後 記 4 (1)ア 参照 )
を 含む。 )。
CATV インターネットについては, 最大通信速度 は30 Mbps程
度 であり ,提供 エリア は,ケーブルテレビ の提供 エリア 内に限 られ, ま
た, その 提供事業者の 多くが 小規模 であったことから,エリア 拡大の た
め の高額 な投資 が困難 な場合 が多い 。
( 以上, 査第8 号証, 査第9 号証, 査第1 1号証 ,査第 36号 証,査
第 220 号証)
イ
FTTH サービスの特 徴
FTTH サービスは,ADSL よりも 高速大容量の 通信が 可能 である
こ と(最 大で100 Mbps),上り下 りの通信速度 が同じであること ,
接 続が安 定していること,通信速度が 収容局 からの 距離に 依存 しない こ
と, 収容局 からの 距離に かかわ らずサービス 提供が 可能であるため提 供
エリアが 広いこ と,ISDN等 からの 干渉がないため通信品質 が良い こ
と ,1本 の回線 でオールインワンサービス (音声 ・動画 ・映像 ・高 速 通
信 の 統合 ) が可 能で あ るこ と ,などの 特 徴を 有し て おり ,ユーザー も ,
6
これらの 特徴を 認識し てFTTHサービス を利 用することが 多い。( 査
第 9号証 ,査第 87号 証,査 第2 0 4号証 ,査第 205 号証, 査第2 0
7 号証)
ま た ,FTTH サ ー ビ スは , 上記 の よ う な優 位 性があることに 加 え,
そ の利用 に当たっては, ユーザ ー宅に 光ファイバを 引き込 む工 事が必 要
であり,ユーザー がFTTHサービス 事業者 を変更 するには再 び工事 を
要 するから,電話回線 を利用 するADSL に比べ て,FTTH サービス
事業者としては ,一度 ユーザーと契 約す る と,その ユーザーと の契約 を
長 期間にわたって維持 できる 傾向が 強い。 (審第 52号 証,査 第99 号
証 ,査第 104 号証)
ウ
各 サービスの加入者の 比率
ブロードバンド サービスにおける, FTTHサービス,ADS L及び
CATV インターネットの構成比( 契約回線数) をみると,平 成14 年
3 月末の 時点で は,FTTH サービスは1. 8パーセント にとどまっ て
お り,ADSL が6 0.9 パーセント,CATVインターネット が37 .
3 パーセントを 占めていたが ,その 後,FTTHサービス は一 貫して 増
加 し,平 成16 年3 月末時点では ,FTTHサービス 9.5 パーセント ,
ADSL 73. 5パーセント ,CATVインターネット 16. 9パ ー セ
ン トとなっている。( 査第232号 証)
(2) FTTH サービスに係 る規制
ア
被審人の 提供す るFTTHサービス は,電気通信事業法第 31 条第1
項 の「第一種電気通信事業者 の提供 する電気通信役務」 に該当 し,そ の
利用者に 対する 料金( 以下「 ユーザー料金 」と い う。)については総 務
大 臣への 届出が 義務付 けられている 。
そして, 他の事業者と の間の 公正な 競争の 確保等 の観点 から, 電気通
信事業法第31 条第2 項に よ り,総務大臣 は,届け 出ら れ た料 金が次 の
いずれかに該当 する場 合には 変更すべきことを 命じることができる 。
①
料金 の額の 算出方法が適 正かつ 明確に 定められていないとき
②
特定 の者に 対し不 当な差別的取扱いをするものであるとき
③
他 の 電 気 通 信 事 業 者 と の 間 に 不 当 な 競 争を 引 き 起 こ す も の で あ
り , その 他 社 会 的 経 済 的 事 情 に照 らし て 著し く不 適 当で あ る た め,
利用者の 利益を 阻害するものであるとき
7
イ
電気通信事業法上,同一 の電気通信事業者が 提供す るFTTH サービ
ス の ユ ー ザ ー 料 金 と 当 該 サ ー ビ ス に用 い ら れ る 設 備 の 接 続 料 金 と の 関
係 について具 体 的に規 制する 規定は 存し な い。
しかし,第一種指定電気通信設備を 利用し て電気通信事業を行 おうと
す る他の 電気通信事業者は,接続料金を最低限必要なコストとして折 り
込 んだ上 でユーザー料 金を設 定することになることから,平成 12年 1
2 月21 日付け 電気通信審議会作成 の「接 続ルールの 見直しにつ い て」
(「電気通信事業法 の一部 を改正 する法 律( 平成9 年法律第97 号)附
則 第15 条を踏 まえた 接続ルールの 見直しについて」第 1次 答 申)( 査
第 201 号証別紙)において,「接続料の 水準と 利用者料金の 水準と の
関 係については ,接続料 がいわば『 卸売的料金 』であり ,利用者料金 が
『 小売的料金』であることに かんが みると ,利用者料金 が接 続 料の水 準
を 下回ることは ,一 般 的には 公正競争上適切でないと考 えられる」と さ
れており ,これを踏 まえて ,総務省は ,第一種指定電気通信設備を設 置
す る電気通信事業者が ユーザー料金 を設定 する 場合に は,当該 ユーザー
料 金 は 接 続 料 金 を 下回 ら な い よ う に設 定 するように 行 政 指 導 し て い る
( この行政指導 の内容 を以下「インピュテーションルール」という 。)。
( 第11 回審判速記録 29ページ, 査第113 号証)
な お,被審人は ,第一種指定電気通信設備接続会計規則 (平成 9年郵
政省令第 91号 )第5 条第1 項及び 第2項 により ,電気通信事業に関 連
す る資 産 並びに 費用及 び収益 を,第一種指定設備管理部門と第一種 指 定
設備利用部門と に適正 に区分 して整 理しなければならないこと,両 部 門
間 の 取 引 は 接 続 約 款に 記 載 さ れ た 接 続 料 金 の 振 替に よ っ て 整 理し な け
ればならないことが定 められている 。(査 第41 号証 ,査第 157 号証 )
(3) FTTH サービスの種 類
ア
FTTH サービスには, ビジネス向け サービスと家 庭向け サービスが
あ り,さらに 後者は ,提供形態の違 いにより,主に一戸建て 住宅に 居住
す るユーザーを 対象とするもの( 戸建て 住宅向 けFTTHサービス )と
集合住宅 に居住 するユーザー を対象 とするもの(集合住宅向 けFTTH
サービス )に 分けられる 。戸 建て住宅向け FTTHサービスは ,ONU
を 各 ユーザー の 宅内 に設 置す るも の で あ り, 集合住宅向 けサ ー ビ スは ,
集合住宅 の共用部分に ONU を設置 し,個々の ユーザー宅までは,LA
8
N,VDSL 又はHomePNA で配線 してサービス 提供を するもので
あ る。( 査第1 4号証 ,査第 15号 証,査 第210号 証)
イ
すなわち ,集合住宅向 けFTTHサービス は,一つ の建物 に引 き込ま
れ た 光 フ ァ イ バ 1 芯 を複 数 の ユ ー ザ ーが 共 用 す る も の で あ る こ と が 前
提 と な っ て い る の に 対し , 戸 建 て 住宅向 け F T T H サ ー ビ ス は , ユ ー
ザ ー 宅 に 引 き 込 ま れ た光 フ ァ イ バ を 一人 の ユ ー ザ ー が使 用 す る も の で
あ る( 当該光 ファイバが1 芯で あ る場合 と1芯 の光ファイバ を分岐 した
ものである場合 とがあ り,そ の違いについては 後記ウ に述べ る。) 。
ウ
戸 建て住宅向け FTTHサービスの 設備方式としては,芯線直結方式
と 分岐方式があ り,芯線直結方式は, 収容局 とユーザー宅 とを 1芯の 光
ファイバ で結び ,収容局及 びユーザー宅 にメディアコンバータ(以 下「 M
C 」ともいう。) という 回線終端装置を設 置する 方式であり, 分岐方式
は , 収容局内外 に分岐装置 ( 以下 「ス プ リ ッ タ」 という 。) を 設置 し ,
これと複 数のONUを 結ぶ方 式に よ り,複数 のユーザーが 加入者光フ ァ
イ バの1 芯を共 用する 方式であり, 転送方式の違 いにより,イーサ ネ ッ
トベース の「E−PON(Ethernet−PON) 方式」 とA T M
( 非同期転送モード:Asynchronous
Transfer
Mode)ベース の「B−PON(Broadband−PON)方式 」
などがあ る。分岐方式 においては,1 芯の光 ファイバを同 時に 複数の 利
用 者が使 用することにより, 通信速度が低 下す る場合 がある 。
( 以上, 査第1 5号証 ,査第 28号 証,査 第1 7 2号証, 査第 173
号 証)
(4) 戸 建て住宅向け FTTHサービス市 場の状 況
ア
全 国における「 集合住宅向け メニュー以外 」のFTTH サービス(戸
建 て住 宅 向け及 びビジネス向 けFTTHサ ー ビ スの合 計)の開通件数 は,
平 成 1 5 年 9 月 末 に は 5 0 万 回 線 であ っ た ( こ れ 以 前 の 統 計 数 値 は な
い 。)が, 平成1 6年3 月末に は8 3万 回 線に増 加し,同 年1 2月末 に
は 138 万回線 に至っ た。( 査第232号 証)
イ
東 日 本 地 区 に お い て 戸 建 て 住 宅 向 け F T T Hサ ー ビ ス を 行 っ て い る
事業者としてみ るべき 者は ,平成 14年 11月末時点 で,被審人のほか
に は,東京電力株式会社 (以下「 東京電力」と い う。)及び 株式会社有
線 ブロードネットワーク(以下「 有線ブロード」 という。 なお,同 社は
9
平 成17 年3月 に商号 を「株式会社USEN」 に変更 している。)に限
られていたが,こ れ ら2社 は,自 ら又は 子会社 が保有 する加入者光 ファ
イ バ設備 を用い て戸建 て住 宅 向けFTTH サービスを 行う も の で あ る。
東京電力 は,電力事業用に保 有する 電柱及 び管路 を利用 し,変電所を
収容局として加入者光 ファイバを敷 設しており,そ のサービス 提供エ リ
ア は,平 成16 年1月末現在 ,東京 23区 ,武蔵野市,三 鷹 市 及び調 布
市 の各 一 部で あ る。東 京23 区の う ち千代田区, 港区,中 央 区 等で電 線
が 地中化 されている地 区では, 新たに 光ファイバを 敷設することが困 難
なため, サービスを行 っていない。 (査第 55 号証, 査第5 7号証 )
ま た , 有 線 ブ ロ ー ド は , 有 線 放 送 事 業 用 に 電柱 に 設 置 し て い た 同 軸
ケーブル を光ファイバ に張り 替え た り,有線放送事業と は別に ,電柱 の
利用申請 を行い, 自ら又 は子 会 社が加入者光 ファイバを敷 設したり し て,
戸 建て住宅向け FTTHサービスを 行って い る が,そのサ ー ビ ス提供 エ
リ アは, 東京都世田谷区周辺 ,横 浜 市の一部等に 限定されていた。( 査
第 56号 証,査 第58 号証)
( 平成1 5年 以 降の参 入については ,後記 9参 照。)
ウ
平 成 1 5 年 9 月 末 の 集 合 住 宅 向 け メ ニ ュ ー 以外 の F T T H サ ー ビ ス
の 開通件数に占 める被審人の シェア は,東日本地区の 都道県(被 審 人の
業務区域 がその 一部にとどまる静 岡 県 ,富山県及び 岐阜県 を除く 。)の
すべてにおいて 82パーセントから 100 パーセント である 。また ,平
成 16年 9月末 には ,集合住宅向 け以外 のFTTHサ ービス の開通件数
は, 東日本地区(ただし, 長野県 を除き, 静岡県 東部を 含む。)で 約5
2 万 8000 件 であ るところ ,同 地 区に お け る被 審 人の シ ェ アは 86 .
9 パーセントで ある。 (査第 220 号証, 査第 232 号証)
(5) 戸 建て住宅向け FTTHサービスへ の参入方法
ア
戸 建て住宅向け FTTHサービス市 場に参 入す る方法 のうち, 既存の
光 ファイバ設備 に接続 して参 入する 方法についてみると,被 審 人は, 大
都市圏の 管路の 多くを 保有しており, 保有している 加入者 光ファイバ 芯
線 の数も 電力系通信事業者や 電力会社に比 べて 多く,その 敷設範囲も 広
範 囲にわたっている。 また,東日本地区におけるADSL のほとんどす
べては被審人の 加入者回線を 利用し て提供 されており,A D S L事 業 者
を 営 む 電 気 通 信 事 業 者 は 被 審 人 の 局舎 で コ ロ ケ ー シ ョ ン す る こ と に よ
10
り 被審人 の地域 IP網( 収容局 間を光 ファイバで接 続した IP 通信専 用
ネットワークであり, インターネットサービスプロバイダ(以 下「I S
P 」という 。)と収容局と の接続 に利 用さ れ る。)と 接続していたため ,
そ れ ら の 電 気 通 信 事 業 者 が F T T Hサ ー ビ ス 事 業 を 新 規 に展 開 す る 場
合 に,被 審人の 局舎で コロケーションすることは 容易であったが,被 審
人 以 外 の 事 業 者 の 保 有 す る 光 ファイバ 設 備 と の 接 続 に つ い て は こ の よ
う な事情 にない 。(査 第55 号証, 査第5 6号証, 査第7 0号 証な い し
第 72号 証,査 第2 2 0号証 )
特 に,東日本地区 において多数 の光ファイバ 設備を 保有しているとみ
られる東京電力 との接続可能性についてみると,収容局が 変 電 所で あ る
た め,電気通信事業に 適した コロケーションスペース,電 源設 備や空 調
設 備の整 った施 設は一 部しかないなど,他の 電気通信事業者が 接続し に
く い状況 があり ,東京電力としても ,接続 に要す る設備 や管理 ・運用 体
制 が整っ てい な いので, 平成1 6年こ ろま で の段階 では同 社の 加入者光
ファイバ を 他事業者 と の接 続 に提 供す る こ と はで き な い と考 え てい た 。
( 査第5 5号証 ,査第 56号 証,査 第2 1 9号 証)
イ
次 に,既 存の光 ファイバ設備 に接続 するのではなく,新規参入 しよう
とする電気通信 事業者 が自前 で加入者光フ ァ イ バを敷 設する には,管 路
又 は電柱 を自ら 設置するか, 被審人又は電力会社 が保有 する管 路,電 柱
又 はとう 道を賃 借する 必要がある。
しかし,電気通信事業者 が自ら 管路又 は電柱 を設置 する方 法について
みると,FTT Hサービスの 需要が 多く見 込ま れ る都 心 部では ,電柱 の
地中化が 進展していることが 多く,このような地域 において新 たに道 路
下 に管路 を埋設 して光 ファイバを敷 設しようとする場 合は,地下埋 設 工
事 に 係 る 道 路 の 掘 削 抑 制 措 置 の た め工 事 の 可 能 な 時 期 が 限定 さ れ る と
い う制約 があり ,また, 都心部 における敷設費用は 1キロメートル当 た
り 3億円程度を 要する 。
ま た,被審人又は 電力会社が保 有する 既設の 管路等 を賃借 する 方法に
ついてみると, 管路については,空きがないこと等 を理由 に賃 借を断 ら
れ る場合 が多く ,仮に, 賃借 が可能 となっても,被審人又 は電 力会社 と
の 設計, 工程打合せ等 の調整 により, 賃借の 開始までに申 込みから4 か
月 から6 か月を 要し, 電柱については,賃借 を希望 する1 本1 本の電 柱
11
ごとに,賃 借の可否判定及び賃借契約 の申込書類も 提出す る必 要が あ る
た め ,可否判定 の申 込 み か ら 賃借 の開 始 まで 1か 月 から 3か 月 を要 し ,
そ の手続 が終了 するまでに相当長期間を要 する 。
( 以上, 査第5 6号証 ,査第 65号 証な い し第 70号 証)
4
被審人の Bフレッツについて
(1) B フレッツの種 類
ア
被審人が 販売す るBフレッツ は,加入者光 ファイ バを利 用し, 被審人
の 地域I P網を 介して ,ユーザー が契約 するISPに 接続す るベストエ
フ ォ ー ト 型 の サ ー ビ ス( ユ ー ザ ー に 通信 サ ー ビ ス の 品質 を 保 証 し な い
サービス) であり, 集合住宅向け( マンションタイプ),戸 建て住宅向
け 及び事業者向 けが あ る。Bフレッツを 利用す るユーザーは ,被 審 人と
通 信サービスの 契約を 結ぶと ともに ,別 途,被審人の 地域I P網に 接続
している I S P とインターネット 接 続サ ー ビ スの 利 用 契 約を 締結 する 。
したがって,ユーザーは ,被審人に 対して Bフレッツの 利用料金( ユー
ザ ー料金 )を支 払い ,ISPに対 してインターネット 接続サービス 利用
料 金(以下 「ISP料金」 という。 )を支 払うことになる。(査第 16
号 証,査 第17 号証, 査第2 5号証 ,査第 27 号証)
な お,東京電力 のFTTHサービス は,東京電力と ユーザーと の間で
は 直接サービス 契約は 締結されず, ユーザーはISPに 申込み ,東 京 電
力 の サ ー ビ ス の 対 価 を 含 め て I S Pが 設 定 す る 利 用 料 金 を支 払 う 方 法
が 採られている ので,東京電力 のFTTHサービス のユ ー ザー 料金は 明
示 されない。有 線ブロードは, 自らが インターネット接続 サ ー ビスを 提
供 しており,その 利用料金には FTTHサービスの 利用料 金と ISP 料
金 が含まれている。( 査第5 5号証 ,査第 56 号証, 査第108号 証)
イ
被審人は ,平成 13年 8月の Bフレッツの 販売開始時において ,戸建
て 住宅向 けFTTHサービスメニューと し て,通信速度が最 大1 0 0M
bpsの「ベーシックタイプ 」及び 最大1 0Mbpsの「ファミリータ
イ プ」を 設定し た。「ベーシックタイプ」は芯線直結方式であり,「 ファ
ミ リータイプ」 は分岐方式であった 。
さ ら に, 被審人 は ,平 成1 4 年6 月, 上 記サ ー ビ ス メ ニ ュ ーに 加 え,
最 大1 0 0Mbpsの 分岐方式のサービス で あ る「ニューファミリータ
イ プ」を 設定し ,「ファミリータイプ」の 新規の 販売を, 平成 15年 3
12
月 31日 をもって終了 した。
( 以上, 査第1 6号証 ,査第 20号 証な い し第 23号 証)
そして, 被審人 は,平成 16年 11月 に最大 1Gbpsの 分岐方式の
サービス である 「ハイパーファミリータイプ」を 設定し ,「ニュー フ ァ
ミ リ ー タ イ プ」 の新規販売 を 平成 17 年 4月 30 日 をもって 終 了し た 。
( 査第229号 証)
ウ
B フレッツ全体 の開通件数は ,平成 15年 5月末 において,約 14万
件 で あ っ た と こ ろ , こ の う ち 戸 建 て 住 宅 向 け F T T Hサ ー ビ ス ( ベ ー
シックタイプ,ファミリータイプ 及びニューファミリータイプ)は 約1
1 万件で ,全体 の開通件数 の75 パーセントを 占め,集合住宅向け FT
T Hサービス(マンションタイプ)が2 3.5パーセント,事業者向け
の ビジネスタイプが1.5パーセント を占めていた。(査 第1 9 0号証 )
ま た,平 成16 年9月 末においては, 被審人 のBフレッツ の件 数合計
約 63万 2000件のうち, 「集合住宅向 けメニュー以 外」の FTTH
サービス は約4 5万9000 件で, 全体の 開通件数の7 2.6 パーセン
ト を占めていた 。(査 第2 3 2号証 )
(2) B フレッ ツに用 いる加入者光 ファイバ設備 の接続料金
ア
被審人は ,Bフレッツ の提供開始に 当たり, 平成1 2年1 2月 26日
に 暫定的 に設定 していた加入者光ファイバ 設備 の接続料金について, コ
ス トに基 づき再設定し, 平成1 3年8 月31 日に接続約款 の変 更に つ い
て 総務大臣の認 可を受 けた。 その約 款によれば,接 続料金 は次 のとおり
である。
(ア) 加入者光 ファイバ1芯単位の 接続料金は, 5,0 7 4円と 設定 され
た 。認可申請における 算定の 内訳は ,基 本 料4, 527 円,加算料4
7 1円, 光主配線盤7 6円であり,ほかに1 光信号 回線当 たり 回線管
理運営費 157 円が加 算さ れ る。( 査第4 3号証 ,査第 44号 証,審
第 79号 証)
(イ) フ ァ ミ リ ー タ イ プ の提 供 に用 い ら れ る設 備 の接 続 料 金 に つ い ては ,
ユーザー 1人のみにサービス を提供 する場 合に 要する 接続料金(以下
「 基 本 料 金 」と い う。 )が , 以下 の① ないし ④ を合 計し た 月額 7 4,
3 5 4円 となり , 設備 の使用状況 に よ り ①な い し③ が順次加算 さ れ,
例 えば1 芯32 分岐全部に 接続す る場合 は,① ×3 2(分岐数 )+②
13
×8( 局外スプリッタ数 )+③ +④= 128 ,6 6 5円となる 。(な
お, このほか1光信号分 岐端末 回線当 たり回線管理運営費 1 5 7円が
加 算さ れ る。)
①
光信号分岐端末回線(引込線)
②
加入者光ファイバ ・局外 スプリッタ
末回線
613 円/光信号分岐端末回線
5,044円 /光信号主端
( 1局外 スプリッタ当 たり最 大4光信号分岐端末回線(4
ユーザー )が収容可能 )
③
局内 スプリッタ・ 光信号主端末回線収容装置 (O S U)( Opt
ical
Subscriber
信 号を伝 送する 装置)
Unit。ONU と対向 して光
9,990円 /8光信号主端末回線
(1
局 内 ス プ リ ッ タ 当た り 最大 8芯 の 加入者光 フ ァ イ バ( 3 2ユー
ザ ー)が 収容可能)
④
光信号伝送装置( OLT )
cal
Line
5 8,707円 /O L T(Opti
Terminal。加入者光ファイバの 収容局
側 の端局装置。) (OLT1 装置当 たり最 大8O SUが 収容可能)
(ウ) ま た,ルーティング伝送機能 の接続料金(局 舎における地 域I P網
と の接続 に係る 料金) は,1 0 0Mb psによるものは1 ポ ー ト当た
り 649 ,0 4 7円と 設定された(こ の料金 はユーザー数 にかかわら
ず 必要なものである。)。
(エ) これらの 算定は ,光ファイバ は7年 間,スプリッタ 等の機器類 は5
年 間での 設置, 維持等 の総コストを 計算し, その間 の加入者光 ファイ
バ 設備の コスト を予測需要数( 被審人 のBフレッツ の需要 と他 の電気
通信事業者か ら の接続 の需要) で割っ た将来原価に 基づくもの である 。
例 え ば, 前記 (ア)の 基 本 料に つい ては ,平 成1 3年 から 平成 1 9年
までの7 年間の 光ファイバの 原価を 1兆400 億円と 見込み, これを
毎 月の基本料と 施設設置負担金相当 の加 算 料(月 額9 4 2円) により
回 収することとして算 出したものである。
( 以上, 査第4 3号証, 査第 45号 証,第1 1回審判速記録7 8ペー
ジ)
イ
被審人は ,さ ら に,平成 14 年2月, ベーシックタイプの 提供 に用い
ら れ る メ デ ィ ア コ ン バ ー タ 及 び フ ァ ミ リ ー タ イ プ の 提 供 に用 い ら れ る
ス プ リ ッ タ ご と の 接 続 料 金 を 設 定 す る こ と 等 を 内 容 と す る接 続 約 款 の
14
変更申請 を行い ,同年 3月2 7日, 総務大臣の 認可を 受けた 。
そ の際,MCに は集線型と 非集線型があるところ,被審人は ,ベーシッ
クタイプ に利用 される 集線型 MC(1 6個の MCに 対して 出力端子を 1
つにまとめたもの)について ,その 他の設 備を含 めて月 額20 ,05 7
円 と設定 した。
ま た,ファミリータイプの提 供に係 る設備 について,被審人は ,局内
スプリッタにおける接続点を 新設するとともに,局 内スプリッタの接 続
料 金を,平 成13 年8月 31日 に認可 された 局内スプリッタと OSU の
接続料金 (前 記ア (イ)の ③) を細分化 し て, 月額 5, 4 2 7 円と 設定 し
た。
( 以上, 審第9 0号証 )
ウ
被審人は ,その 後,ニューファミリータイプ の導 入 及び値 下げ に当た
りそれぞれ接続約款を 変更しているが,それらの 経緯については,後 記
5 及び6 において述べ る。
(3) B フレッツのユーザー 料金の 設定について
B フレッツのユーザー 料金は ,被 審 人のサービス 開発部( 平成 13年 1
2 月以前 の名称 は「営業部」) のフレッツサービス推 進 室(平 成14 年7
月以前の 名称は 「ブロードバンド推進室」 )が, 営業部( 平成 13年 12
月 に「お 客様サービス 部」が 「営業推進部 」に名称変更 となり ,平成 15
年 4月に 現名称 に変更 。)及 び設 備 部の意 見を聞 きながら案を 作成し ,経
営企画部 (平成 15年 4月 以 前の名 称は「 企画部 」)の営業企画部門 に協
議 し,同部門において, 当該料金が料金制度上問題 ないかどうかをチェッ
ク した上 で,常務会に 諮って 決定される。 (査第 24号 証,査 第76 号証
ないし第 78号 証,査 第1 5 4号証 )
被審人は ,ユーザー料 金の設 定に当 たって は,競争対抗上 の観 点か ら い
くらに設 定する 必要があるのか,その ユーザー料金 でコ ス トを 回収できる
か, 他事業者と の公正競争上 の問 題 点はないか,などを総 合 検 討して 決定
す ること としている。 他事業者との 公正競争上の 問題点 については, 被審
人 は,他事業者 が,被 審 人と 同様の 設備構成を採 用し,接 続 料 金を支 払っ
て 被審人 と同等 のコ ス ト負担 さえすれば,被審人と 同等の サービスを 提供
することができるかどうかということを検 証,検 討していた。 (審第 17
4 号証)
15
被審人は ,上記検討の 結果, Bフレッツ導入時において, 戸建 て住 宅 向
け FTTHサービスの 料金を ,ベーシックタイプ について月額 9,000
円 ,ファミリータイプ について同5 ,0 0 0円と 設定し, 平成 13年 6月
2 8 日に 総 務大 臣に 届 出を 行っ た 。な お, ファミリータイプ については ,
後 記 6 (2)エ の と お り, ニ ュ ー フ ァ ミ リ ー タ イ プの 値下 げ の際 に月 額 4,
500円 に値下 げした 。(査 第21 号証, 査第 231 号証)
5
ニューファミリータイプの導 入について
(1) B フレッツの販売拡大 のための検討
ア
被 審 人 は , 平 成 1 3 年 8 月 に B フ レ ッ ツ の 戸建 て 住 宅 向 け F T T H
サ ー ビ ス と し て ベ ー シ ッ ク タ イ プ 及 びフ ァ ミ リ ー タ イ プ の 提 供 を 開 始
し たと こ ろ,平 成1 3年1 0月こ ろから ,東京電力が 平成1 4年3 月か
ら のFTTHサービス への参 入を表 明し ,有線 ブロードが同 年4月 から
F T T H サ ー ビ ス 提 供エ リ ア を 県 庁 所 在 地 級 都 市 に 拡大 す る と い う 動
向 を把握 した。 (査第 99号 証,査 第1 0 1号 証,査 第10 8号証 )
イ
被審人は, 定額インターネット 接続市場が拡 大を続 けていることやコ
ンテンツ が充実 していくと予 想されること を勘 案す る と,ブロードバン
ド サ ー ビ ス 市 場 はやがて F T T H サ ー ビ ス 市 場 に そ の競 争 の 場 が 移 っ
てくると 考え,FTTHサービス 市場において は,ADSL 市場のよう
に 競争事 業者に 急激に シェア を奪われることのないよう,早 期に被審人
の 永続的 な優 位 性を確 立しておくことが急 務であるとし,首都圏( 東京
都 ,神奈川県 ,千葉 県及び 埼玉県 )を 中心に ,平 成14 年度を「Bフレッ
ツ 積極展開元年 」として,競合他社に先 んじた ユーザーの獲 得及び 普及
促 進を図 ることとした 。(査 第14 号証, 査第 99号 証)
ウ
そ こで, 被審人 は,平成 13 年11 月ころ から,戸 建て住宅向 けBフ
レ ッ ツ の 販 売 に つ い て は , 5 , 000 円 の 水 準 で 1 0 0 M b p s の 光
サービス を提供 することを検 討し始 めた。 その方 法と し て,ベーシ ッ ク
タイプを 値下げする( 芯線直結方式 の形態 を5,000円程度 で提供 す
る )か,あるいは ,1 0 0Mbpsの 通信速度を可 能と す る分岐方式 を
導 入する( ファミリータイプと は別の 光信号伝送装置を用 いて 100 M
bpsを 32分 岐する )かを 選択肢 とし, 後者による場 合,料 金モ デ ル
どおりに 分岐方式を採 ることを原則 としつつ,分岐 に見合 う需 要が な い
エリアにおいては,暫 定 的に芯線直結方式によりサービス を提 供す る こ
16
ともあり 得ると 考えていた。 (査第 102 号証 ないし 第1 0 4号証 )
ま た,被審人は,FTTHサービス は,ユーザー宅 への加入者回線を
一度構築 すれば 当該ユーザー の他社 への乗 換え は生じにくく, 他方, 既
に 他 社 の サ ー ビ ス を 利 用 し て い る ユ ー ザ ー を 取 り 込 む こ とは 難 し い た
め, サービス展 開のスピード が,シェ アの獲得及び 維持の た め に重要 で
あると考 えていた。( 査第9 2号証 ,査第 99 号証, 査第104号 )
エ
平 成14 年1月, 東京電力が平 成14 年3月 から開 始する 予定 の10
0 MbpsのFTTH サービスのユーザー 料金(ISPが 設定 する利 用
料 金 。前 記 4 (1)ア 参照 。) が 月額 1万 円 以下 で あ る こ と が判 明 し た こ
と から, 被審人 は,同年 2月 ないし 3月ころから, Bフレッツ の1 0 0
Mbps のサービスの 廉価版 について具 体 的に 検討し 始めた 。
被審人は, 東京電力のFTTH サービスのISPに 対する 卸売価格が
6 ,0 0 0円 程 度であると推 測し( なお,前 記4 (1)アのとおり ,東 京 電
力 のFTTHサービス は,各ISPが インターネット接続 サービス込 み
で 販売し ており ,接続料金などの内 訳は不 明であった。 ),6 ,0 0 0
円 を切る ユーザー料金 を設定 することを考 え た が,芯線の 接続料金だ け
で も 5 , 0 0 0 円 を 大 き く 超 え て い る こ と か ら , 接 続 料 金を 下 げ ず に
ベーシックタイプのユーザー 料金を 6,0 0 0円 以 下に値 下げする こ と
は できないと判 断し,ユーザー 料金の 値下げ を行うには分 岐 方 式を採 る
しかないと判断 した。 そこで ,被 審 人は,E−PON方式 の伝送装置 を
収容局に 設置し て,1 0 0Mbpsの 加入者光ファイバ1 芯を 局内で 8
分 岐し, 各分岐回線を 局外で 更に4 分岐し て,32 のユーザー が共用 す
る 設備構成に よ り提供 するサービス を新た に導 入することとし,平成 1
4 年4月 11日 ,ベーシックタイプ 及びファミリータイプに加 え,「 ア
クセスライン100Mbps を複数 ユーザーで シェアリング する,マ ス
ユーザを 対象としたサービス 」と し て,ニューファミリータイプを同 年
6 月1日 から提供開始 すると 公表し た。
( 以上, 査第2 2号証, 査第 102 号証,査 第1 0 9号証 な い し第1
1 1号証 )
オ
被 審 人 の 株 式 を 1 0 0 % 保 有 す る 親 会 社 である 日 本 電 信 電 話 株 式 会
社 は,被審人と の協議 を経て ,平成 14年 4月に 策定・ 公表し た「N T
T グループ3ヵ 年経営計画( 2002∼2004 年度) 」において, 具
17
体 的な取 組の第 一と し て「ブロードバンド (光)市 場を中 心とした事 業
開 拓」を 掲げ, グループ総 合 力を活 用した ブロードバンド(光 )需要 を
創 出していくとともに ,ブロードバンド( 光)アクセスサービスを積 極
的 に展開 していくこととし, この時 点で, Bフレッツについて ,平成 1
3 年度末 の 実績 で1 . 8万 施 設( うち , 被 審 人は 1 .2 万 施 設 。な お ,
施 設とは 回線のことであると 推認さ れる。 ),エリアカバー率 34パ ー
セントであるところ, 平成1 6年 度 末には 270 万施設 (うち ,被 審 人
は 145 万施設 ),エリアカバー率8 0パーセント とすること を目標 と
していた 。(査 第90 号証, 査第9 1号証 )
ま た,被審人の 平成1 4年3 月27 日付け の「中期経営計画( 平成1
4 ∼ 16 年 度) 」と 題 する 文 書で は, B フレッツ の 提供地域 に つ い て ,
総務省の 全国ブロードバンド 構想を 上回る ペ ー スで,平成 13 年度に は
東 京23 区,多摩地区 ,首 都 圏の一部地域 ,北 海 道,宮 城,茨 城の県 庁
所 在 地 級 都 市に ,平 成 14 年 度に は政令指定都市 ・ 県 庁 所 在 地 級 都 市 ,
一 部の市制都市 に展開 する旨 が記載 されていた 。(査 第96 号証)
カ
な お,被審人は ,Bフレッツ の販売 において,従 来,電話 やインター
ネ ッ ト で 申 込 み を 受 け 付 け る イ ン バ ウ ン ド と い う 営 業 方 法に 重 点 を 置
い てい た が,戸 建て住宅向け FTTHサービスについては,ユーザー 獲
得 のため, 顧客に 訪問営業をかけるアウトバウンド という 営業方法を 実
施 していくこととした 。こ の検討 の過程 において,被審人は ,ホーム ペ ー
ジ からユーザー が申し 込む際, サービス提供 エリア か否か を電話番号 で
し か判定 できなかったことから,こ れ を住所 ごとに 町名及 び丁 目で表 示
すること, 既に光 ファイバが引 き込まれているビル の情報 を開 示す る こ
と を検討 した。 しかし, これ ら設備情報を 開示すると,他 の電気通 信 事
業 者 が 未 使 用 の 加 入 者 光 フ ァ イ バ の存 在 を 知 る こ と が で き る よ う に な
り, これらの事業者が, 被審人 よりも 先に加入者光 ファイバを 押さ え て
しまうおそれがあるた め,当 面,設備情報を アウトバウンド営 業で活 用
す ること とした 。(査第 1 0 2号証, 査第105号 証な い し第 107 号
証)
(2) ニューファミリータイプに係 る接続料金及 びユーザー 料金
ア
接続料金
被審人は ,ニューファミリータイプ の販売 を開始 するに 当たり ,平成
18
1 4年4 月11 日,総務大臣 に対し ,「B フレッ ツ・サービス の新フ ァ
ミリータイプの 提供に 用いられる設 備との 接続 に関す る接 続 料」の認 可
を 申請し ,同年 5月2 3日, 接続約款変更 の認 可を受 けた。
具体的に は,加 入 者 光ファイバ,局外スプリッタ等の 接続料金は ,ファ
ミリータイプに 用いる 場合と 変更はなく,収容局に 設置す るE−P O N
方 式のOLTについて, 端末回線の利用率を 60パーセントと 見込ん で
5 年 間( 平 成1 4年 度 な い し 18 年度 ) の将 来 原 価 及び 需要 を 用い て ,
OLT部 分の接続料金 を,1 光信号主端末回線収容装置 (OS U)ご と
に 月額9 ,0 4 6円と 算定し た。
これにより,ニューファミリータイプ の提供 に用いられる 設備 の接続
料 金は, 基本料金が,以 下の ①な い し④を 合計し た月額 20, 130 円
と なり, 設備の 使用状況に よ り①又 は②が 順次加算され, 例え ば1芯 3
2 分岐全部に 接続す る場合 は, ①×32( 分 岐 数)+ ②×8(局 外ス プ
リッタ数 )+③ +④= 74, 441 円と な る。( なお,こ の ほ か1光 信
号分岐端末回線 当たり 回線管理運営費1 4 3円 が加算 される 。)
①
光信号分岐端末回線(引込線)
6 1 3円/ 光信号分岐端末回線
( 局 外 ス プ リ ッ タ の 設 置 場 所 か ら 分 岐 回 線 が 提 供 できる 範 囲 は 電
柱 2区 間 分の約 70メートル である 。)
②
加入者光ファイバ ・局外 スプリッタ
5,044円 /光信号主端
末 回 線 ( 1 局 外 ス プ リ ッ タ 当 た り 最大 4 光 信 号 分 岐 端 末 回 線 ( 4
ユーザー )が収容可能 )
③
局内スプリッタ
5 , 4 2 7 円 / 局 内 スプリッタ ( 1 局 内 ス プ
リ ッタ当 たり最 大8芯 の加入者光ファイバ( 32ユーザー )が 収容
可 能)
④
光信号伝送装置( 新O L T)
9,046円 /光信号主端末回線
収容装置(O S U)(1OSU当 たり最 大32 ユーザーが収容可能 )
( 以上, 査第4 6号証 ないし 第48 号証, 査第 51号 証)
イ
ユーザー 料金
被審人は ,平成 14年 4月1 1日,同 年6月 1日か ら提供 する ニュー
ファミリータイプのユーザー 料金を 5,800円 と設定 し,総務大臣 に
届 け出た 。(査 第22 号証)
被審人は ,前記 アの接続料金 の認可 申請の 際,総務省に 対して ,1端
19
末回線当 たりの 接続料 金相 当 額を収容比率約6 0パーセント として( 換
言 す れ ば , 1 芯 3 2 分 岐 を 利 用 できる 範 囲 の 区 域 に お い て約 1 9 人 の
ユーザー を獲得 することを前 提と し て), 次のとおり試 算し, このユ ー
ザ ー料金 5,800円 との対 比を報 告している 。(査 第47 号証)
①
光信号分岐端末回線(引込線) =6 1 3円
②
加入者光ファイバ ・局外 スプリッタ( 最大 4分岐 )
5, 044 円÷(4 ×0. 6)= 約2 ,1 0 0円
③
局内 スプリッタ( 最大8 分岐)
5, 427 円÷(4 ×8 ×0. 6)= 約280円
④
光信号伝送装置( 新O L T)
9, 046 円÷(4 ×8 ×0. 6)= 約470円
⑤
回線管理運営費= 143 円
⑥
地域 IP網 等=約 1,300円
① ないし ⑥の合 計=約 4,906円
すなわち ,被 審 人は,総務省 に対し, 32分 岐の う ち60 パーセント
に ついて ユーザーを獲 得できることを前提 に,その 場合の ユーザー1 人
当 たりの 接続料金相 当 額(4 ,9 0 6円)と比較 して,ユーザー料 金(5 ,
800円) は一定程度の 営業費 を見込 んだもので あ るとの 説明 をしたも
の と認められる 。
(3) ニューファミリータイプの提 供の設備構成
ア
分岐方式 の使用 の検討
被審人は ,ニューファミリータイプ の導入 の際,分岐方式 で提 供して
い る フ ァ ミ リ ー タ イ プ に お い て 3 2分 岐 の う ち に 1 ユーザー し か 入 っ
ていないものが 大半であった ため,ユーザー が少ないうちは芯線直 結 方
式 で,需要 が増えてきたら分岐方式とする方 が経 済 的で あ るこ と等を 踏
ま え,当 面,ニューファミリータイプについては, 少なくとも 3年 間 程
度 は,ベーシックタイプ と同一 の芯線直結方式を使 用して 提供 すると い
う 方針を 採ることとし た。そ の際,どのような状況 になれば分岐方式 の
設 備を導 入するかについては ,具体的基準 はなかった。( 査第 111 号
証 ないし 第1 1 3号証 ,査第 152 号証, 査第153号 証,査 第1 7 8
号 証,第 11回審判速記録4 5ペ ー ジ)
イ
実 際の設備構成
20
芯線直結方式と 分岐方式では, 収容局内で使 用する 装置及 びユーザー
宅 内で使 用する 回線終端装置 が異な る(芯線直結方式では MC を用い る
が ,分岐方式で はMC は用いない。 )。被審人は, ニューファミリータ
イ プの関連工事 に関し, 新設の ユーザーに対 しては 芯線直結方式の設 備
を 設置すること, ベーシックタイプか らニューファミリータイプに移 行
す る ユ ー ザ ー に つ い て は ユ ー ザ ー 宅内 工 事 を 不 要 とすること 等 の 工 事
の 手順を 定め,ニューファミリータイプ を芯線直結方式で提 供した 。
(査
第 122 号証ないし第 127 号証)
ま た,被審人は ,将来, 分岐方式を 導入す る場合 でも,新 たに 利用す
る 芯線について スプリッタを 設置し て分岐方式 でサービス提 供し,そ れ
で も芯線 が不足 した場 合に,既 に芯線直結方式でサービス 提供 している
回 線を分岐方式 に移行 するこ とが合理的で あるとして,い っ た ん芯 線 直
結方式で サービス提供 したユーザー については,芯線直結方式 でのサ ー
ビ ス提供 を継続 することとしていた 。(査 第1 1 1号証, 査第 124 号
証 ,査第 133 号証)
な お,被審人は, ニューファミリータイプの 10回線程度 を分岐方式
と す る こ と を 予 定 し て い た が , こ れは 分 岐 方 式 の 業 務 オ ペ レ ー シ ョ ン
( エンドユーザーの管理手法 や開通 までの 業務工程)を検 討す るこ と を
目 的と す る試 行 的なも ので あ り,ユーザー は,いずれも被審人 の関 係 者
であった 。(査 第29 号証, 査第136号 証, 査第172号 証)
ウ
ユーザー への説明振り
芯線直結方式でサービスを提供しているニューファミリータイプの
ユーザー につ い て,設 備を分岐方式 に変更 するためには, ユーザーが 使
用 し て い る サ ー ビ ス を 一 時 中 断 し ,ス プ リ ッ タ を 設 置 し ,収 容 局 内 と
ユーザー 宅内の 装置を 分岐方式の装 置に入 れ替 える工 事を行 うか,あ る
い は,ユーザー が既に 使用している 回線で のサービスを 停止し ,収 容 局
の 分 岐 装 置 に 収 容 さ れ て い る 別 の 光フ ァ イ バ の 分 岐 回 線 をユ ー ザ ー 宅
に 新たに 引き込 む工事 をしなければならない。 (査第 29号 証)
一 方,被審人は ,ニューファミリータイプ を広告 するに 当たり ,「最
大 100 Mbpsを複 数のお 客さ ま で共用 いただくサービス です」,
「複
数 のご家 庭で共 用いただきます」などと小 さく記 載するのみで ,「最 大
100Mbps 」という インターネット速度 を強調 して ,広告 していた 。
21
( 査第2 6号証 ,査第 121 号証, 査第187 号証, 査第188号 証)
設備構成 について質問 された 場合に は,被審人は ,「『ニューファミ
リータイプ』及 び『ファミリータイプ』についての方式 については, 技
術 の進 歩 等に よ り変わってくることから,詳 細の回 答は控 えさせてい た
だきますが,1本 の光ファイバ を複数 のユ ー ザでシェアリング して接 続
しております」 と答えることとしており,ニューファミリータイプを 契
約 しようとする ユーザーに対 し,しばらくの間は, 分岐方式ではなく 芯
線直結方式に よ り同サービス を販売 し,いずれは分岐方式 に移 行す る た
めに工事が必要となる場合があるということについては一切触れてい
なかった 。(査 第17 号証)
したがって,被審人は, 設備 の切替 工事を 行うために,芯線直結方式
で サービス提供 しているユーザーに 対し,分岐方式 に変えることについ
て 了解を 得ることにも 手間を 要するため,いったん 芯線直結方式でサ ー
ビ ス を 提 供 し た ユ ー ザ ー を 分 岐 方 式に 切 り 替 え る こ と は 極 力 回 避 す る
こととしていた 。(査 第17 号証, 査第2 9号証 ,査第 170 号証, 第
1 1回審判速記録65 ページ ないし 66ページ )
(4) ニ ュ ー フ ァ ミ リ ー タ イ プ 導 入 後 の 他の 電 気 通 信 事 業 者 の 接続 に 関 す る
動向
ア
平成14年5月に分岐方式に係る接続約款変更 の総務大臣の認可が
下 りると ,同月中に 株式会社ウェブワン(以 下「ウェブワン」という 。)
か ら,同 年7月 にはKDDI 株式会社(以 下「KDDI 」と い う。) か
ら ,分岐 方式についての問い 合わ せ が被 審 人に寄 せられた。( ウェブワ
ン の接続 については後 記9 (2)参 照。) (審 第1 7 5号証 )
イ
平 成14 年8月 に,株式会社 アッカ・ネットワークス(以下「 ア ッ カ」
という。 )が,被審人に 対し, 光ファイバによるサービス 提供 のコ ス ト
や 提供期間な ど を把握 するため,分岐方式で の接続 について試験的に 被
審人の局舎である池袋ビル及び東京大泉ビルの2か所で数回線開通し
たいと要 請した 。平成 14年 10月 に,ア ッ カから 事前調査申 込みが 行
わ れ,同 月,被審人は, 接続が 可能 であり, 接続可能時期 は接続用 設 備
の 設置の 申込みから5 か月 以 内で あ る旨 回 答し た。同年1 1月 のア ッ カ
の 接続申込みを 受けて ,被 審 人は, 同年1 2月,平 成15 年3 月中旬 以
降 に接続 が可能 である 旨回答 した。
22
そ の後, アッカ が,接続場所の 一つを 池袋ビ ルから 被審人 の別 の局舎
である南板橋別館ビル に変更 し,ま た,分岐方式 について,E−PON
方 式 で は な く, 新し く 導入 さ れ る 予定 のB − P O N方 式 (後 記6 (1)ウ
参 照)を 使用すること に変更 したことなどから,平 成15 年5 月に な っ
て ,ようやく接続用設備が完 成した 。
な お,南板橋別館ビル の試験回線については,平 成15 年6月 ,アッ
カ の都合 により 接続が 行われないままキャンセルされ,東 京大 泉ビル に
ついても ,平成 16年 6月,アッカからの要 請に よ り接続 を取 りやめ て
い る。
( 以上, 査第7 5号証, 審第 158 号証ないし第 164 号証, 審第1
7 5号証 )
6
ニューファミリータイプのユーザー 料金の 値下 げについて
(1) ニューファミリータイプの値 下げの 検討
ア
被審人は, ニューファミリータイプと 同種の タイプ の西日本電信電話
株式会社( 以下「NTT西日本」という。)が 提供している サービスと
比 べて,ニューファミリータイプ の売上 げが余 り良くないと 考え,平成
1 4年9 月ころ から ,ニューファミリータイプ の値下 げを検 討し始 めた 。
( 査第129号 証)
イ
ま た,被審人は, 平成1 4年 10月 ころ,東京電力 がFTTH サービ
ス を値下 げする 予定であることを聞 き,有線ブロード も,それまで 利用
料 金が月 額6,100円( ISP 料金込 み)であったものを4,800
円(ISP料金込み )に値下 げしたことなどから ,ニューファミリータ
イ プの値 下げをさらに 真剣に 検討し 始めた 。( 査第130号 証)
ウ
そ の後, 東京電力が,平 成14 年12 月にFTTH サービスの 値下げ
を 実施したことを受け ,被審人は ,東京電力が FTTHサービスの IS
P に対 する 卸 価 格を 4, 5 0 0円 程 度 に引 き下げ た も の と 推測 し,
ニューファミリータイプのユーザー 料金を ,東京電力 の値下 げに対 抗で
き るものとするため ,既に NTT 西日本 が使用 していた局内 4分岐 ,局
外 8分岐 で分岐 する方 法(B−PON 方式)を 採用することにより,ユー
ザ ー料金 を月額 4,500 円と す ること が可能 となる 案を検 討し始 めた 。
そ の際,被審人 は,営業努力で6 割の収容率に しなければコストを 回収
できないこと ,将来 にわたって芯線直結方式を 継続するとするとコスト
23
が 回 収で き な く な っ て し まう こ と を 認識 していた 。 (査 第130 号証 ,
審 第1 7 4号証 )
エ
上記検討 の 結果 , 被 審 人は , ニ ュ ー フ ァ ミ リ ー タ イ プの 設 備 構 成 を,
従 来,収容局内で8 分岐 ,収容局外 で4分 岐と し ていたものを ,収容局
内 で4分 岐,収 容 局 外で8 分岐に 変更することにより ,収 容 局から 収容
局 外 の 分 岐 装 置 ま で の加 入 者 光 ファイバ を 共 用 す る ユ ー ザ ー 数 を 増 や
し ,これによって1 ユーザー当たりのコストを 低下させることができる
ことを理 由と し て,ユーザー料金 を4,500 円に引 き下げ ることとし
た 。(査 第1 2 9号証 ,査第 135 号証)
(2) 接続料金及びユーザー 料金の 変更
ア
被 審 人は , 前記 (1)エの ユ ー ザ ー料 金 の引 下げ の 前提 と し て の設備構
成 の変更 に関し ,平成 15年 1月2 7日, 総務大臣に対 し,「 Bフ レ ッ
ツ・ サービスのニューファミリータイプの提 供に用 いられる設 備に関 す
る 接 続 料 及 びルーティング 伝 送 機 能の 接続料 の改 定 について 」 と し て ,
従 前の局 内8分 岐,局外 4分岐 の設備構成の 接続料金に代 えて 局内4 分
岐, 局外8 分岐の 設備構成と す る接続料金を 導入す る接続約款変更の 認
可 を申請 し,同 年3月 14日 ,総務大臣か ら認可 を受け, 同月 17日 か
ら 実施し た。
イ
そ の接続料金の 設定に 当たり ,被 審 人は,平 成14 年度か ら同 18年
度 までの 5年間 の将来原価方式を用 い,使用 する設 備の数 を基本回線 の
6 割と見 込んで 算定し ,O L T部分 の接続料金を OSU ごとに 月9, 0
4 6円として, 基本料金は以 下の① ないし ④を合 計した 17, 145 円
と した。 設備の 使用状況に よ り,① 又は② が順次 加算さ れ,仮 に1芯 3
2 分岐全部に 接続す る場合 の接続料金 は,① ×32( 分岐数 )+② ×4
( 局外スプリッタ数) +③+ ④=5 5,858円 となる 。(な お,こ の
ほ か,1光信号分 岐端末 回線当 たり回線管理運営費 139 円が 加算さ れ
る 。)
①
光 信 号分岐 端末回 線
763円 /光信号分岐端末回線
②
加入者光ファイバ ・局外 スプリッタ
5,0 2 0円/ 光信号分岐
端末回線(1 局外スプリッタ当た り最大 8光信号分岐端末回線(8
ユーザー )が収容可能 )
③
局内スプリッタ
2,316円/局内スプリッタ(1局内スプ
24
リッタ当 たり最 大4芯 の加入者光ファイバ( 32ユーザー) が収容
可 能)
④
光信号伝送装置( 新O L T)
9,046円 /光信号主端末回線
収容装置(O S U)(1 OSU 当たり 最大3 2ユーザーが 収容可能)
ウ
ま た,局外 スプリッタの 設置場所から 分岐回線を提 供で き る範 囲を電
柱 3区 間 分の約 105 メートルと し た。
同 時に, ルーティング 伝送機能の接続料金 についても,B フレッツに
用 いる1 00M bps によるものを 471, 610 円に引 き下 げる旨 の
認 可を受 けた。
( 以上, 査第4 9号証 ないし 第53 号証)
エ
そ の上で ,被 審 人は, 平成1 5年3 月18 日,総務大臣 に対し ,同年
4 月1日 からニューファミリータイプのユ ー ザ ー料金 を月額 4,5 0 0
円 に引き 下げ, これに 伴い,ファミリータイプも同 額に値 下げする こ と
を 届け出 た。( 査第2 3号証 )
(3) 値 下げ後 のニューファミリータイプ の提供 の設備構成
ア
被審人は, ニューファミリータイプの ユーザー料金 の引下 げ後 におい
て も,引 き続き ,芯線直結方式でサービス を提 供していた。
イ
そして,被審人 の設備部で は,平 成15 年8月 に至っても,ニューファ
ミリータイプに ついて ,分岐 の時期, 方法についての方針 を決 めてお ら
ず , 分 岐 方 式の 回線 は ,前 記5 (3)イに 述 べた 状況 のまま ,被 審 人の 関
係 者宅以外には 設置されていなかった。
( 以上, 査第7 3号証 ,査第 130 号証, 査第136号 証,査 第14
8 号証, 査第149号 証,査 第1 5 1号証 ,査第 154 号証, 査第1 6
1 号証, 第11 回審判速記録 45ページ)
7
総務省の 行政指導について
(1) 被審人の 認可申請の内 容に係 る他の 電気通信事業者の 意見
ア
被 審 人の 前 記5 (2)アの 分 岐 方 式の 接 続 料 金に 係 る接続約款変更 の認
可申請に 対して ,他 の電気通信事業者は ,その 分岐方式の接続料金 の水
準 で は , 被 審 人 の 光 フ ァ イ バ 設 備 に 接続 す る こ と に よ り 被 審 人 が 行 う
ニ ュ ー フ ァ ミ リ ー タ イ プ の ユ ー ザ ー 料金 に 対 抗 す る こ と は で き な い と
考 えた。このため,被審人 の認可申請の 内容について 総務省 が行っ た意
見募集に 対し,イ ー・アクセス 株式会社(以下「 イー・アクセス」 とい
25
う 。)は,平成1 4年5 月10 日付け で,「Bフレッツニューファミリー
タ イ プ に つ い て は 接 続 事 業 者 が N T Tと 同 一 の 水 準 の料 金 で 提 供 す る
ことは困 難な た め,ユーザー料金 が接続料金を 下回っていないか早 急に
検 証し,検討結果を 出してもらいたい。このような検 証は定期的に 実施
し , そ の 時 点 の 実 績 を反 映 し た 設 備 の利 用 率 を 考 慮 して 行 う べ き で あ
る。」 旨の意 見を提 出し た。(査第 47号 証,査第 71号 証,査第 13
8 号証)
イ
被 審 人の 前 記6 (2)アの 接 続 約 款の 変 更 申 請に 関 し, 日本 テ レ コ ム株
式会社は ,平 成15 年2 月25 日付け で,「ニューファミリータイプの
接続料と 利用者料金の 関係について ,反競争的 でないかどうか詳細 に検
証 すべきである。 Bフレッツ・サービス は,市場 が形成途上にあり,熾
烈 な価格競争が 行われており ,市 場シ ェ アの大 幅な変 動の可能性がある
の で,検証 すべき 優先度 が高い。」 旨の意 見を提 出した。( 査第139
号 証)
ま た,KDDI は,平 成15 年2月 25日 付けで ,「加入者光 ファイ
バ の料金 が高価 であり, 1光ファイバ を共用 する方 法でユ ー ザ ー料金 を
低廉化させることが必 要であるが,B フレッツアンバンドルは 設備単位,
3 2 回 線 単 位 で の 接 続 料 金 と な っ て い る こ と か ら , N T T東 西 の ユ ー
ザ ー料金 と同レベルに は設定 できない。ADSL と同様, 回線単位で の
接続料金 を設定 すべきである。」旨の意 見を提 出した。(査 第5 0号証 ,
査 第1 4 0号証 ないし 第1 4 5号証 )
(2) 総務省の 指導
ア
そ の後,総務省は,被審人 に対し,平成1 5年9 月,ニューファミリー
タイプの 実際の 設備構成等について 報告を 求め た。( 査第193号 証)
こ れ に 対 し , 被 審 人 は , 総 務 省 に 対 し , ① 平成 1 5 年 8 月 末 現 在 ,
ニューファミリータイプ総回線数118, 627 回線中, 分岐方式に よ
り 提供しているものは 6回線 のみで, 実際に 分岐方式に よ り提 供して い
るものはほとんどなく, 大部分 が芯線直結方式に よ り提供 していること,
② その理 由は, サービス開 始 間もないこともあり, 需要が 少な く点在 し
ている過渡期の 時期であるため,芯線直結方式の方 が設備 コ ス トが低 い
からであること ,③需 要が堅 調に出 始めたことから,早急 に分 岐方式 に
移 行するための 社内検討を行 っていることを回 答した。( 査第 194 号
26
証)
イ
さらに, 被審人 は,引 き続き, 総 務 省から 報告を 求められたた め,社
内検討の 結果 ,平成 15 年10 月,同省に 対し ,新規 ユーザーについて
は ,準備 の整っ たエリアか ら順次 ,平成 16年 3月末 までにはすべての
エリアにおいて ,分 岐方 式に よ る提供 を開始 すること,及び ,既設 ユー
ザ ーについては ,平 成16 年4月 から分 岐方式 に移行 を開始 し,平 成1
8 年 3 月 ま で の 間 に すべ て の ユ ー ザ ーの 移 行 を 完 了 す る よ う に 取 り 組
むことを 回答し た。( 査第195号 証,査 第196号 証)
ウ
総務省は ,被 審 人か ら の上記回答を 受けた 上,被審人に 対し, 平成1
5 年11 月12 日,要 旨,次 の①及 び②のとおり 指導し た。( 審第3 号
証)
①
被 審 人が提 供しているニューファミリータイプについては,サー
ビ スの内 容が事実上ベーシックタ イ プと同 じであり,現在の 設備構
成 が将来 にわたって継 続する 場合に は,電気通信事業法第3 1条第
2 項 第2 号 又は 同項 3 号( 前記 3 (2)ア の ②又 は③ ) に該 当 するこ
とになると考えられるところ ,既 設ユーザーの 移行についてはでき
る 限り前 倒しでその工 事を行 うこととし ,以下 のⅰか らⅳまでの事
項 を半期 ごとに, 期間経過後1 か月 以 内に,及 び新規 ユーザーにつ
いてすべてのエリアにおいて分岐方式に移行することとなった日
の 属 す る 月 の 前 月 末 に お け る 以 下 の ⅰ 及 び ⅳ の 事項 を 同 月 末 か ら
2 か月 以 内に, 総務省 に報告 するこ と。
ⅰ
ニューファミリー タイプ の提供局数
ⅱ
ⅰのうち,分 岐方式 によってニューファミリータ イ プの提 供が
可 能で あ る局数
ⅲ
ⅰのうち,平 成16 年3月末時点 において芯線直結 方式により
提 供しているニューファミリータ イ プについて ,分岐 方式に 移行
を 開始し た局数
ⅳ
芯線直結方式により提供しているニューファミリータイプ及
び 分 岐 方 式 に よ り 提供 し て い る ニ ュ ー フ ァ ミ リ ータ イ プ の そ れ
ぞれの契約数
②
ニューファミリータイプ の接続料金に つ い て,既に 接続約 款にお
い て設備単位のものが 設定されているが,接続事業者か ら分岐回線
27
単 位での 接続料金の設 定の要 望があ り,今 後の需要動向次第で は接
続 事 業 者 が 事 業 性 を確 保 す る こ と が困 難 と な る 場 合も 想 定 さ れ る
ことを踏 まえ ,よ り柔軟 な接続料金の 設定について ,費用負担 の方
法 も含め 速や か に検討 を行い ,その 結果又 は状況 について本 年 末ま
で に報告 すること。
(3) そ の後の ニューファミリータイプの 提供の 設備構成
ア
芯 線 直 結 方 式 の 設備 に よ りサ ー ビ ス を提 供し て い る ニ ュ ー フ ァ ミ
リータイプのユーザー 数は,平 成15 年8月 末には 11万 8621件 で
あ ったところ, 平成1 6年3 月31 日には, 24万 75 4 5件 に増加 し
ており,同 日ま で は芯線直結方式に よ るニューファミリータイプのユ ー
ザ ー数は 拡大していた 。(査 第1 9 4号証 ,審 第1 2 7号証 )
しかし同 年4月以降においては,被審人は, ニューファミリータイプ
の 新規ユーザー に対し て,芯線直結方式で 提供することをやめ ,平成 1
6 年9月 30日 において,ニューファ ミリータイプ を芯線直結方式で 提
供 している件数 は24 万51 件に減 少した 。( 審第125号 証)
イ
被 審 人 は , 平 成 1 6 年 4 月 2 7 日 に 公 表 し た「 B フ レ ッ ツ
ニュー
ファミリータイプの設備設置状況等 について」において, 既に 芯線直結
方 式で利 用しているユーザー についても, 今後2 年間を めどに ,順次 分
岐 方式へ 移行す る予定 であることを 明らかにしている 。(審第 44 号証 )
ウ
したがって,被審人は, 遅くとも平 成16 年4月 1日 以 降は, 新規に
ニューファミリータイプを提 供す る に当たって,芯線直結方式 の設備 を
使 用していないものと 認めら れる。
8
ニューファミリータイプの顧客獲得状況に つ い て
(1) 平 成14 年5月 のニューファミリータイプ の申 込み受付開始以降,申 込
み 件数は ,同年 8月までは月 間1, 000 件前後 にとどまっていたが ,同
年 9月 以 降は毎月数千件で推 移し,平 成15 年2月 までの 10 か月間 の合
計 は約3 万3000件 であった。
(2) 平 成15 年3月 に,4月 からの ニューファミリータイプの ユーザー料 金
引 下げを 公表し, サービス提供 エリア の拡 大 及び開通期間 の短縮化を 実施
したことから, 月間申込み件 数は, 平成1 5年3 月には 約7, 500 件と
な り,4 月から 6月に は毎月 2万件前後に 増加 した。
(3) 被審人の FTTHサービス( 集合住宅以外 )の契約回線件数は ,平成 1
28
5 年9月 末には 19万 30 0 0件,平 成16 年3月 末には 32 万4000
件 となった。
( 以上, 査第179号 証な い し第183号 証,査 第1 8 9号証 ,査第 1
9 0号証 ,査第 215 号証, 査第2 16号 証, 査第232号 証)
9
ニューファミリータイプ導入後平成16年3月までの他の事業者の参入
状 況について
(1) 前 記 3 ( 4 )イ の と お り , 東 日 本 地 区 に お い て戸 建 て 住 宅 向 け F T T H
サービス を行っている 事業者 として みる べ き者 は,被 審 人の ほ か,東京電
力 及び有 線ブロードのみであったが ,この 状況は, 平成1 6年 3月末 まで
変 化は な い。
被審人の ニューファミリータイプ導入後,被 審人の 加入者光ファイバ 設
備 に 接 続 し て 戸 建 て 住 宅 向 けF T T H サ ー ビ ス に参 入 し た の は ウ ェ ブ ワ
ン のみである。
な お ,ア ッ カは ,前 記 5 (4)イ のとおり , 試 験 的に 接 続し て い る に す ぎ
ず ,サービス提 供の実 績はなかった 。
(2) ウェブワンは, 平成1 5年6 月から, 被審人 の加入者光フ ァ イ バ設備 に
分 岐 方 式 又 は 芯 線 直 結 方 式 で接 続 し て 北 海 道 江 別 市 を サ ー ビ ス 提 供 エ リ
ア として 戸建て 住宅向 けFTTHサービス を開 始した。分岐方 式の最 低料
金 は月額 3,980円 (I S P料 金 込み), 芯線直結方式 の利 用料金 は月
額 8,800円 であっ た。( 査第6 1号証 ,査 第62 号証)
(3) 株式会社帯広シティーケーブ ル(以下「帯 広シティーケーブル 」という 。)
は, 光ファイバ 敷設のための 国及び 市か ら の補助 金を利 用して ,ケーブル
テレビに 使用す るネットワークを光 ファイバに 張り替 えて,平 成15 年4
月 か ら 北 海 道 帯 広 市 を サービス 提 供 エ リ ア と し て戸 建 て 住 宅 向 け F T T
H サービスを始 めた。 (査第 59号 証,査 第6 0号証 )
10
平成1 6年4 月以降 の状況 について
(1) 接続約款 の変更 等
ア
被審人は ,総務大臣に 対し, 平成1 6年1 0月1 3日,「 1Gbps
ま で の 符 号 伝 送 が 可 能 な 光 信 号 伝 送 装 置 と の 接 続 に 関 す る接 続 料 の 設
定 」を内 容と す る接続約款変更の認 可を申 請し, 同年1 1月2 6日, 認
可 を受け た。接続約款 の変更 の主な 内容は ,「分岐方式に 用いられ て い
る 100 Mbpsま で の符号伝送が 可能な 光信号伝送装置(OLT) に
29
加 え,新た に1Gbps までの 符号伝送が可 能なOLTを 導入 すること
に 伴い, OLT の接続料金を 月額4 ,0 2 4円に 設定す る」という も の
であり,最大通信速度1 Gbpsが可 能と な るGE−PON方 式のO L
T との接続料金 の基 本 料金(平 成14 年5月 に認可 された 接続料金の 基
本料金2 0,1 3 0円及 び平成 15年 3月に 認可された接 続 料 金の基 本
料 金17 ,1 4 5円 と対比 すべきもの)は月額 12,123 円とされた 。
( 審第8 9号証 の2, 審第8 9号証 の3)
イ
これとは 別に,被 審 人は,総務大臣に対 し,平 成16 年10 月1 3日,
「 シ ェ ア ド ア ク セ ス 方 式 の 提 供 に 用い ら れ る 光 信 号 分 岐 端 末 回 線 部 分
の 接続料等の見 直し」 を内容 とする 接続約 款変更 の認可 を申請 し,同 年
1 2月2 1日, 認可を 受けた 。接続約款の 変更の 主な内 容は, 以下の と
おりであ る(審第 124 号証の 1,審第 124 号証の 2)。これにより ,
他 の電気通信事業者にとって, 被審人 の分岐方式の 設備と の接 続の利 便
性 が向上 したものと認 められる。
①
アンバンドルメニュー の追加
従 来,分岐方式の 設備 は,光信号分岐端末回線,光信号主端末回
線, 局内スプリッタ及び 光信号伝送装置(OLT)を 一括し て他の
電気通信事業者 に使用 させるものであったが,接続点 を収容局内の
OLTにおける 箇所に 加え ,加入者光主配線盤 における箇所 を追加
し ,分岐端末回線及 び主端末回線 のみを アンバンドル で提供 するこ
ととした 。
②
接続料金の 変更
従 来,分岐端末回線 の設置 に要す る費用 は,すべて 月額接続料金
として月 額7 6 3円と 設定されていたが ,このうち ,他 の電気通信
事 業 者 の 申 込 みごとに 必 ず 発 生 する 局 外 スプリッタ か ら ユ ー ザ ー
宅 までの 分岐端末回線 の費用 については,創設費 として 別途設定す
るとともに,接続料金を月 額7 6 3円か ら562円(被審人が 設置
す る屋外 キャビネット を使用 する場 合)に 引き下 げた。また,解約
等 の た め 分 岐 端 末 回 線 の 単 芯 区 間の 撤 去 依 頼 が あ っ た 場 合 の 撤 去
費 用を別途設定 し,利 用 者との 契約が 終了 しているにもかかわらず
撤去依頼 がなく,当該回線を再 使用で き な いた め に未利用期間 が生
じ る場合 は,それまで接 続していた電気通信事業者が当該区間 の接
30
続料金を 継続し て負担 することとした。
③
光配線区域情報の 提供
被 審 人の光配線区域の範 囲( 配線ブロック ),つ ま り,一つの 局
外 ス プ リ ッ タ が 分 岐 端 末 回 線 を 収 容 可 能 な 範 囲に つ い て , 配線 ブ
ロック番 号とこれに属 する光配線区域( 住所 )を情報提供 すること
と し,そ の調 査 費を1 収容局 ごとに 7,667 円と設 定した 。
(2) 新規参入 の状況
ア
ソフトバンクの 参入
ソフトバンクB B株式会社( 以下「 ソフトバンク 」と い う。) は,平
成 16年 10月 5日か ら,被 審 人の光 ファイバ設備 に分岐 方式 で接続 し
て, 戸建 て住 宅 向けFTTH サービスを開 始した。 ソフトバンクのF T
T Hサービスは, GE−PON 方式の OLT 装置を 用いて 1Gbps の
光 フ ァ イ バ を複 数の ユ ー ザ ー で共 有す る ものであ る 。ソフトバンク は ,
前 記 (1)ア及 びイ の 接続約款 の 変 更 前に , 被 審 人と 接続点 を変 更 す る た
め の交渉 を行い ,個別協定を 締結することにより, 被審人 の収容局に 自
前 のGE−PON方式 のO L Tを設 置する こととし,ユーザー 料金を 月
額 4,410円 (I S P料 金 込み) と設定 した。 (審第 92号 証,審 第
9 3号証 ,査第 230 号証)
イ
KDDI の参入
KDDI は,平 成17 年1月 12日 から,被審人の 光ファイバ 設備に
接 続して, 最大1 Gbpsの戸 建て住宅向け FTTHサービス を月額 6,
720円 の利用 料金(ISP 料金込 み)で 開始し た。KDDI のF T T
H サービスも,GE−PON方 式のOLTを 用いて 1Gbps の光フ ァ
イ バを複 数のユーザー で共有 するものである。( 審第9 4号証 ,審第 9
6 号証)
ウ
KDDI の東京電力と の接続 による FTTHサービス
ま た,KDDI は,平成 17 年11 月28 日から, 東京電力の 保有す
る 光ファイバ設 備に接 続して FTTHサービス を開始 した。( 審第1 8
0 号証の 1,審 第1 8 0号証 の2)
第2
1
本 件の争 点
被 審 人 の ニ ュ ー フ ァ ミ リ ー タ イ プ の 導 入 及び そ の 値 下 げ は ,他 の 電 気 通
信 事 業 者 の 事業活動 を 排 除 す る行 為( 以 下「排 除 行 為 」と い う 。)と い え る
31
か ( 争 点 1 )。
2
戸 建て 住 宅 向け F T T H サ ー ビ ス 市 場に 一定 の取 引 分 野が 成立 す る か
( 争 点 2 )。
3
被 審 人 の 排 除 行 為 は , 競争 の 実 質 的 制 限 を も た ら す も の で あ っ た か ( 争
点 3 )。
4
被審人の 排除行為は, 公共の 利益に 反するものといえるか( 争点4 )。
5
被審人の 排除行為は, 違法性 を阻却 する事 由が 存す る か(争 点5) 。
6
電 気 通 信 事 業 法 の 規 制 に 係 る行 為 を 独 占 禁 止 法 違 反 に 問 う こ と が で き る
か (争点 6)。
第3
1
争 点についての 双方の 主張
争 点1 ( 被 審 人 のニ ュ ー フ ァ ミ リ ー タ イ プ の 導 入 及 び そ の 値 下 げ は , 排
除 行 為 と い え る か)について
(1) 審査官の 主張
ア
排除行為該当性
被審人が分岐方式を前提としてニューファミリータイプの接続料金
及 びユーザー料 金を設 定した にもかかわらず,実際 には芯線直結方式 の
設 備を用 いてサービス を提供 し,芯線直結方式の接続料金 を下 回る料 金
で ニューファミ リータイプを 販売していたことから,事実上, 他の電 気
通信事業者は被審人の加入者光ファイバに接続して戸建住宅向けFT
T Hサービスを 行うことができなかった。
ま た ,被 審 人は , 当 面 分 岐 方 式を 導入 す る意 思 が な か っ た こ と か ら,
分岐方式 の設備 を導入 する態 勢に な く,他の 電気通信事業者は 被審人 の
分 岐 方 式 に 接 続 し て 分 岐 方 式 に よ るサ ー ビ ス を 提 供 す る こ と も で き な
かった。
よ って, 被審人 は,他の 電気通信事業者が被審人の 加入者光ファイバ
設 備 に 接 続 し て 戸 建 て 住 宅 向 け F T T H サ ー ビ ス の 事 業 に参 入 す る こ
とができないようにした。
具体的に は,被審人は, 電気通信事業法に基 づく規 制に よ り管理部門
と 利用部門との 間で接続約款 に記載 された 接続料金の 振替によって, 費
用 及び収 益を整 理しなければならないとされているところ,ニュー フ ァ
ミリータイプの 販売に 当たり ,社内 で協議 した上, 管理部門の 判断で 芯
線 直 結 方 式 で 提 供 し て い る と す る 場合 は 他 の 事 業 者 に も 同様 の 条 件 で
32
接 続を認 める必 要があることから,利用部門 の判断 で芯線直結方式を 採
ることとし,それによるリ ス ク(赤 字)は, 利用部門が計 上するこ と と
し た。
芯線直結方式による接続料金 は,月 額6, 344 円(加入者光 ファイ
バ 5,0 74円 及びメディアコンバータ1 ,2 7 0円の 合計金額)で あ
る ところ ,ニューファミリータイプ のユーザー料 金5,800 円は こ れ
を 下回るものであり, また, 平成1 5年4 月にユーザー 料金を 4,5 0
0 円 に値 下 げ し た こ と は, 加 入 者 光ファイバ の み の 接続料金 である 5 ,
074円 をも下 回るものであった。
加入者光 ファイバの接続料金 は,1回 線当た り定額 の月額料金 として
定 められており, 他の電気通信事業者 にとっては経営努力 によって節 減
す る余地 のない 固定費 であるので,他 の電気通信事業者は 芯線直結方式
によるサービスをニューファミリータイプに対抗するユーザー料金で
は 提供できなかった。
ま た,被審人は 分岐方式の設 備を導 入する 計画をせず,準 備もしてい
なかったため,他 の電気通信事業者が 分岐方式に よ る接続 を要 望し た と
しても, 円滑に 対応できない 状態であった 。(電気通信事業法上,自 ら
が 提 供 し て い な い 設 備 に つ い て 設 備を 調 達 し て 接 続 に 応 じる 義 務 は な
い 。)
被審人は ,FTTHサービス を事業経営の 基盤と 位置付 け,そ の収益
確 保の た め,市 場の立 上げ期 において,まず 低価格販売で 競争上優位 に
立 ち,ユーザー を囲い 込むこととし, 他の電気通信事業者 か ら の接続 を
事実上拒否するのと同 様の行 為によって参 入できないようにし,現在 の
シ ェ ア を 維 持 し 将 来 的 に も 圧 倒 的 なシ ェ ア を 獲 得 し よ う と し て い た の
である。
イ
接続料金 及びユーザー 料金
被 審 人 は , 接 続 料 金 は 経 営 判 断 や 営 業 政 策 で変 更 す る 裁 量 は な く ,
ユーザー 料金の 設定は 経営判断や営業政策 の問 題であって,両 者に直 接
の 関わりはないというが,被 審 人の設 備に接 続して 電気通信サービス を
提 供 し よ う と す る 事 業 者 に と っ て ,接 続 料 金 は コ ス ト に 当た り , ユ ー
ザ ー料金 の設定 の際の 重要な 判断基準で あ る。
被 審 人は , 他の 電 気 通 信 事 業 者に 対し て 設備 を 提供 する 義 務を 負 い,
33
か つ,当該設備 を利用 したサービス を提供 している立場 にある 。分 岐 方
式の接続料金及びユーザー料金が個別的にみれば電気通信事業法の手
続 を経て 設定されたものであったとしても, 提供す るサービス の内容 と
設 定さ れ たユーザー料 金・接続料金 との関 係によって,実質的 に被 審 人
が 接続料金を下 回るユーザー 料金で 販売することになれば,他 の電 気 通
信事業者 は,被 審 人に接 続して 被審人 に対抗 できるような ユーザー料 金
で サービスを提 供する ことはできない。
ま た,接続料金 の算定 は,被審人自身が行 っており,被 審 人が 申請し
なければ ,総務大臣は 認可の 前提を 欠き, 認可す ることはできず,し か
も, 接続料金の 認可は, 被審人 が申請 したとおりの 設備構成を 前提と し
て 行われている 。
したがって,被審人は, その経営判断 や営業政策の いかん で接続料金
を 変更することができるものといえる。
ウ
比 較の在 り方
ニューファミリータイプは,分岐方式 のサービスとしてユ ー ザ ー料金
及 び 接 続 料 金 を 設 定 し な が ら , 分 岐 方 式 と は 名 目 だけであり , 実 態 は
ベーシックタイプと同 様の芯線直結方式による サービスであった。
被審人は ,ニューファミリー タイプ について,分岐方式で 採算 が取れ
る 需要が 存在しなかったことから,少 なくとも3年 間は分 岐 方 式の設 備
を 導入す る予定 がなく ,具体的計画 もなかった 。
被審人は, 当初分岐方式 を採用 しなかったことは合理的投資判断であ
る 旨主張 するが ,そもそも,実 現されるかどうか分 からない将 来の設 備
構成を前提としたサービスを提供することとしてそのための 接続料金
及 びユーザー料 金を設 定すること自 体が合理的 とはいえない 。
ま た,数年間芯線直結方式で ユーザーを相当数獲得した 後,分岐方式
に 移行す ると し ても,既 存ユーザーを 一斉に 分岐方式の設 備に 収容し 直
すことはほとんど不 可 能であ るので, 被審人 がニューファミリータイプ
と し て 提 供 し た サ ー ビ ス が 分 岐 方 式に よ る サ ー ビ ス であった と は 認 め
られない 。
そして, 被審人 が,分岐方式で 採算が 取れる だけの ユーザーを 獲得す
ることが 困難であったように, 他の電気通信事業者 においても 分岐方式
を 使用することは困難 であったのであり ,ま た,他の電気通信事業者は ,
34
分 岐 方 式 の 設 備 に 接 続 を 希 望 し て も分 岐 方 式 の 設 備 を 利 用す る こ と は
できなかったか ら,芯線直結方式で サービスを 提供す る し か な か っ た。
したがって,被 審 人のニューファミリータイプのユーザー 料金 と加入
者 光ファイバ1 芯の接続料金 の水準 を比較 することが 妥当である。
エ
新規参入 の可 能 性
他 の電気通信事業者においては,当初 は芯線直結方式に よ りサービス
を 提供し, 後に分岐方式 に移行 するという2 つの設備形態 を選 択す る と
い う方法 は事業 における経済合理性 からみて採 り得な い。他の 電気通信
事業者がこのような方 法を採 ると, 当初は, 提供エリアの 収 容 局に芯 線
直結方式 のためのメディアコンバータを調 達し, その後 は,これらを 分
岐方式のための OLT に置き 換えなければならず,二重に 投資 しなけれ
ばならないからである 。
ま た,被審人が, 自ら需 要が少 なかったために分岐方式を 採用 してい
なかったように ,他の 電気通信事業者においても, 分岐方式の 設備に つ
い て,た と え分岐回線のみをアンバンドルで 利用しても接 続 料 金の観 点
か ら採算 は見込 めず, これを 利用しようとする 状況にはなかった。
したがって,他 の電気通信事業者は, 分岐方式でFTTH サービスを
提 供することに 支障はなかったとする被 審 人の 主張は 失当である。
ソフトバンク及 びKDDIが, 被審人 の設備 の一部 を利用 して 戸建て
住宅向け FTTHサービスを 開始したのは, 被審人 の違反行為 が終了 し
たことから可能 になったものであり, 被審人 の行為 により 競 争 者が排 除
されていたことを示すものである。
オ
競争条件 の同 等 性
接続料金 における原価 が適正 なものであるかは,被審人が 自ら 提供す
る サービスの実 態,つまり,どのような設備構成を 用いて 実施 するのか
ということから 判断されるべきである。被審人は, ニューファミリータ
イプの導入に当たり,分岐方式の設備構成を使用することなく,ベー
シックタイプと同じ芯線直結方式によりサービス提供することとして
いたのであるが ,こ れ は,接続料金 を算定 するに 当たり, 前提 となって
い た設備構成と 異なる 。したがって ,被 審 人が設 定した 接続料金は, 同
社 が実際 に提供 していたサービスと は異なっていたのであるから,被 審
人 の主張 は,接続料金が 適正に 算定されているとの 前提に お い て誤り が
35
あ る。
被審人自 身が,設 備にかかるコストの 負担にかんがみ分岐方式 を採用
しなかったのであるから,他 の電気通信事業者が, 分岐方式の 設備を ア
ンバンドルで接 続することにより利 用できるはずはなく,被 審 人の主 張
は, 接続料金が設 定されているから利用可能 であるという 形式 を述べ て
いるにすぎないものである。
したがって,被審人と 他の電気通信事業者 との間 には,接 続 料 金にお
い て も , 設 備 の 利 用 に お い て も , 競 争 条 件 の 同 等 性 は 確 保さ れ て い な
かった。
カ
主観的意図
主観的要 素は, 違反行為の成 立には 必要ではなく, 客観的要素 が認め
られれば 足りる 。したがって, 行為者 の競争制限的意思は 私的独占の 成
立要件ではない 。
独占禁止法の行政処分 の趣旨 ・目的 は,排除措置命令によって 違反行
為自体の 除去,並 びに競争制限状態の 回復及 び再発 の防止 が中 心と さ れ
ている。 また,違反行為者に対 しての 無過失損害賠償責任 を定 めている
こ と(同 法第2 5条第 2項) もその 表れである。 したがって, 客観的要
素 に係る 事実を 主張立証す れ ば足り る。
ただし, 違反行為者に 「競争制限的意思」 が認められれば,違反行為
が 認 定 し や す い の は 言 う ま で も な く, 被 審 人 が 分 岐 方 式 に よ る ニ ュ ー
ファミリータイプを導 入した 目的は, 他の電気通信事業者 に対 する加 入
者 光ファイバの 接続料金を引 き下げることなく,ユーザー 料金 を引き 下
げるためであることは 明らかである 。
(2) 被審人の 主張
ア
接続料金
接続料金 は,総務大臣の 認可等 を通じ て原価算定や 接続料金算出過程
の 適正性 はチェックされており,接続料金を 変更しようとするのであれ
ば, 総務大臣の認可等を 通じた チェックがなされることになっているか
ら, 被審人 が経営判断や 営業政策いかんで接続料金 を変更 することがで
きるものではない。
イ
ユーザー 料金
被審人は ,ニューファミリータイプ 導入時 には,分 岐のための 機器を
36
設 置せず ,需要 が増加 した時 点で分 岐のための機 器を設 置し, 最終的 に
は, 加入者光ファイバ 等設備 の共用 ユーザー数 最 大32 のうち ,6割 の
ユ ー ザ ー を 獲 得 で き る こ と を 見 込 んで ユ ー ザ ー 料 金 を 設 定し た も の で
あ る。これは,東京電力等に対 抗するための 投資コストの 抑 制 等の た め
に 行われたもので,近い 将来に 需要が 増加し た段階 で分岐 のための機 器
の 設置を 実施することとしていたもので,正 常な価格競争及び 合理的 な
投資判断 である 。
これに対 し ,他事 業者は ,被審人よりも多 いユーザーの 獲得を 見込 み,
ユ ー ザ ー 1人当た り の 仕 入 原 価を低く見 積もってユ ー ザ ー 料金 を
ニューファミリータイプよ り も安く 設定することもできる。
したがって,他事業者 は,ニューファミリータイプ のユーザー 料金を
下 回る接続料金 で,被 審 人の加入者光 ファイバ等 設 備を利 用するこ と が
可 能で あ る以上 ,被 審 人の行 為が排除行為 に該当 する余 地は な い。他 事
業 者は, 需要が 乏しい 段階であっても,顧客獲得 のリ ス ク(収容率を 十
分 に上げるだけの顧客 を獲得 できないリ ス ク)を 取りさえすれば,分 岐
方 式 でFTTH サ ー ビ ス事 業 に参 入す る こ と が で き た も の で あ る か ら ,
被審人の 行為を 独占禁止法違反とするのは 自由競争の 否定である(被 審
人 は , か か る 顧 客 リ ス ク を 取 っ て ,自 ら 東 京 電 力 等 と 対 抗し 得 る ユ ー
ザ ー料金 を設定 したものである。)。 ユーザー料金 をいくらに 設定す る
か は,各事業者 の営業政策ないし経営判断 の問 題で あ る。
仮 に,ユーザー料 金の設 定について問 題があるとすれば ,総務 大臣 は,
被審人に 対し, 料金変更命令 を行うことが 可能であったのに, 平成1 5
年 11月 の行政指導においても,ニューファミリータイプ のユーザー 料
金 は電気通信事業法に 違反するとされていないことからしても,審 査 官
の 主張は 失当である。
ウ
競争条件 の同 等 性
接続料金は,加入者光ファイバ,光伝送装置等 の被審人の加入者光
ファイバ 等設備 の構築維持に 要する コスト を,そ の利 用 料に応 じて, 被
審 人と同 一の金額割合 で負担 するもので,原 価から 機械的 に算 出さ れ る
か ら,接続料金 が正し く算定 されている限 り,被 審 人が光 ファイバ設 備
の 構築維持に要 するコストと ,他事業者が 対価として支 払うコスト( 接
続料金) とは,同 等の金 額 負 担となっており,被 審 人の他 事 業 者との 間
37
で, 競争条件の 同等性 は確保 されているといえ,被審人が ニューファミ
リータイプを提 供する 行為は 排除行為には 当たらない 。
エ
分岐方式 の予定
需要が点在していた一定期間において分岐のための機器を設置する
ことなく サービスを提 供していたとしても ,被 審 人としては, 需要が 増
加 す れ ば 実 際 に 分 岐 の た め の 機 器 を設 置 す る こ と を 想 定 し て い た の だ
か ら,ニューファミリータイプ が分岐方式を 前提としたサ ー ビ スで あ る
ことに変 わりない。
分岐方式 への移 行に当 たっては,需要 の密 度 等が深 く影響 するために ,
需要動向 が分からない 段階で, 機器設置の具体的な 設備計画を 立て る こ
と は無 意 味で あ り,需要動向自体も様 々な要 素に左 右されるため数 値 目
標 を立てることは難し く,仮 にこれを行ってもその意 義は乏 しい。
芯 線 直 結 方 式 か ら 分 岐 方 式 へ の 切 替 工 事 に 要す る 時 間 は 前 後 の 手 続
を 含めて 1時間程度であり,設 備を用 意する 工事もそれほど長期間を 要
するものではなく,ユーザー 及び被審人の 負担 は大きくない 。
被審人は ,需要 がどの 程度伸 びれば, 分岐のための 機器を 実際 に設置
することに経済的合理性が生 ずるかどうかの検 討・検証自体は 行っ て お
り, ニューファミリータイプにおける 分岐のための 機器を 設置 する準 備
は 行っていた。
したがって,分岐方式を 前提とするサービス である ニューファミリー
タ イ プ の ユ ー ザ ー 料 金 と 加 入 者 光 フ ァ イ バ 1 芯 の 接 続 料 金を 比 較 す る
の は,無意味である。
オ
新規参入 の可 能 性
他事業者 は,分 岐のための機 器をコロケーション することで, 被審人
の 加 入 者 光 フ ァ イ バ 設 備 等 を 分岐方式 で 利 用 す る こ と も 可能 で あ っ た
し , 被 審 人 の分 岐のための 機 器を 利用 することも 可 能で あ っ た も の で ,
被審人の 加入者光ファイバ等 の設備利用に 関し, イコール・フッティ ン
グ が確保 されていたものである以上, 被審人 の行為 は排除行為 には該 当
しない。
仮 に,他事業者 が,被 審 人と 同様に, 芯線直結方式 のサービス を提供
し た 後 , 後 に 分 岐 方 式 へ 移 行 す る 場合 , 設 備 を 二 重 に 調 達す る 必 要 が
あったとしても, そのような設 備の構築方法 が経 済 的に非合理 となるわ
38
けではない。全体的な 経営判断な い し投資判断の 中で,かかる 手間を か
け て も そ れ を 上 回 る 投 資 節 約 等 の メリ ッ ト が あ る か ど う か を 判 断 す れ
ば 足り,他事業者 が創意工夫を 凝らし て効 率 的な設備構成 を選 択すれ ば
足 りる。
平 成16 年10 月以降 ,ソフトバンクが,被審人の 加入者光ファイバ
芯 線,局 外スプリッタ 及び分岐回線 の提供 を受け, その他 の光伝送 装 置
等 の設備 については,自 前でコロケーション して戸 建て住宅向 けF T T
H サービスに参 入していることからみれば, 被審人 の行為 に起 因して 新
規参入が 困難であったとはいえない 。すなわち, 被審人 は,平 成16 年
4 月以降 に,ニューファミリータイプ につき 分岐のための 機器 の設置 を
実 施したものであるが ,平成 16年 4月の 前後を 問わず ,被 審 人は, 電
気通信事業法上, 技術上 の問題 など同 法で規 定する 除外事由がない限 り,
他事業者 が求めるいかなる接続点・接続形態 においても接 続に 応じる 義
務 が課せられているから,被審人は, 他事業者から 被審人 の設 備との 接
続要求があれば ,こ れ に応じなければならず,実 際に,アッカ の例の よ
う に,他事業者 の求め に応じ, 分岐のための 機器を 設置す る用 意は あ っ
た 。また, 被審人 は,接続約款 に規定 されていない 接続メ ニ ュ ーで あ っ
て も,電気通信事業法所定の 除外事由が な い限り, 他事業者からの接 続
要 求に応 じなければならない 。
したがって,被審人が, ニューファミリータイプ導入時に 分岐 のため
の 機器の 設置を 実行に 移していなかったこと等 により,新 規 参 入が困 難
であったとはいえない 。
ま た,平 成17 年11 月28 日から,KDDIが東京電力 の保 有する
光 フ ァ イ バ ネ ッ ト ワ ー ク に 接 続 し てF T T H サ ー ビ ス 事 業に 参 入 し て
いること ,同年 12月 1日か らア ッ カが株式会社 UCOM(株式会社 U
SENの 子会社) の保有 する光 ファイバに接 続して FTTHサービス 事
業 に参入 していることからしても, 被審人 の本件 行為期間中に も,他 の
事業者は, 被審人以外の 東京電力等が 保有す る光ファイバ を利 用し た り,
自 前で光 ファイバ設備 を敷設 したりして,FTTH サービス事 業に参 入
することが可能 といえ ,被 審 人の排除行為 に起因 して,他 事 業 者の新 規
参 入が困 難であったとはいえない。
ま た,そもそも, 被審人 がニューファミリータイプ を導入 する 以前の
39
平 成14 年3月 から,東京電力 のFTTHサービス のユーザー 料金相当
額 は6,000 円であったから,他事業者としては,この東 京 電 力のユ ー
ザ ー料金 に対抗 し得る ユーザー料金 を設定 し な い限り,FTTHサ ー ビ
ス 事 業に は 参入 で き な い は ず で あ り, 他 事 業 者の 新 規 参 入の 可能性 は ,
被 審 人 が ニ ュ ー フ ァ ミ リ ー タ イ プ のユ ー ザ ー 料 金 を ど の よ う に 設 定 し
たかに関 わりがない。
したがって,被 審 人のニューファミリータイプの導 入が原 因となって ,
新 規 事 業 者 の F T T H サ ー ビ ス 事 業へ の 参 入 が 排 除 さ れ た と は い え な
い。
カ
主観的意図について
私的独占 の成立 は,そ の規制 対象事業者に 対し,多 大な不利益 を与え
るものであるから,その 要件として行為者の 競争制限的意思が 必要で あ
る。
被審人によるニューファミリータイプの導 入・値 下げ,分 岐のための
機 器を直 ちには 設置しない設備構成 による サービスは, コスト 削減, 価
格競争力 の保持 ,サービスの 普及のためであり,他事業者 を排 除する 意
思 はなかった。
仮 に,審査官が 主張するように,被 審 人が他事業者 に対す る加入者光
フ ァ イ バ の 接 続 料 金 を 引 き 下 げ る こ と な く ユ ー ザ ー 料 金 を引 き 下 げ る
ことにより,新規 に参入 しようとする 事業者 の参入 を阻止 しようと意 図
していたというのであれば,被審人が 加入者光ファイバの 接続料金を 引
き 下 げ る こ と が 可 能 で あ る こ と が 当然 の 前 提 と な る と こ ろ, 加 入 者 光
フ ァ イ バ と い う 自 ら 利 用 す る 機 器 を変 更 し て 接 続 料 金 を 変更 す る こ と
は 不可能 であり, 加入者光フ ァ イバの 接続料金算定 に係る 7年 間の将 来
期 間 を 更 に 長 期 に 延 長 す る こ と で 接 続 料 金 を 変 更 することも 不 可 能 で
あ る。
したがって,審査官の 主張は ,論理破綻し て い る。
2
争 点2 ( 戸 建 て 住 宅 向 け F T T H サ ー ビ ス 市 場 に 一 定の 取 引 分 野 が 成 立
す る か ) について
(1) 審査官の 主張
ア
サービス に係る 一定の 取引分野とは ,取引対象の サービス,地理的範
囲,取引段階,特 定の取 引の相手方等 の観点 から画 定されるものである 。
40
ま た,一 定の取 引 分 野は,あるサービス の範囲 について成立 すると 同時
に ,それよりも狭い サービスの範 囲についても 成立するというように重
層 的 に成 立す る こ と が あ る。 反 競 争 的 行 為が 行わ れ た場 合においては ,
当 該 行 為 の 態 様 に 即 して 競 争 が 実 質 的に 制 限 されている 市 場 が 一 定 の
取引分野 と画定 される 。
イ
本 件についても ,①取引対象 サービスの機 能と効 用,②需 要の 代替性
及 び供給 の代替 性の観 点から 判断すれば ,FTTHサービス には固 有の
需 要が存 在し ,ADSL及 びCATVインターネット とは独 立した 取引
分 野を形 成しているということができる。
すなわち ,まず, FTTHサービス, ADSL及び CATVインター
ネットの 用途は ,いずれも主 にインターネット接 続であるが, 接続方法
の 機能が 異な る と,そ の効用 も異な る。例 えば,FTTH サービスで は
トリプルプレイ (インターネット通 信, I P電話 ,映像配信) が主流 で
あること,ADSLは高速化すると距 離に よ る速度減衰が 激しくな る こ
と,FTTHサービスと CATVインターネ ットと を比較 し て も上り 方
向 の通信速度が 大きく 異なることなど,同 じ利用目的であっても,ど の
ような回 線を利 用するかにより,目的達成のための 利用環境が 異な る も
のである 。
さらに,ADSL 及びCATV インターネットから FTTHサービス
へ 移行す るユーザーはあっても,FTTHサービス からA D S L等へ 移
行 するユーザー はないに等し く,ユーザーか らみた 代替性 は一方向で あ
る。
しかも,FTTHサービスは, ADSLとの 価格差 があるにもかかわ
ら ず,平 成14 年以降, その 加入者数は一 貫して 増加傾向に あ り,こ の
ことは,FTTH サービスに固 有の需 要が存 在することを 裏付 けるもの
である。
ウ
そ し て, 事業者 の 認 識 及び 行 動に つ い て み て も ,A D S L 事 業 者 は,
ADSL はいずれ縮小 し,最終的 には光 ファイバを用 いるサービス にな
る と認識 し,FTTHサービス の市場 に参入 し,又は ,参入 を検討 して
い る。被審人も ,ADSL はブロードバンドサービス の過 渡 的な形 態で
あ り,いずれ光 ファイバが 代替し ,FTTHサービス がブロードバンド
サービス の本命 になると考え ている 。
41
(2) 被審人の 主張
ア
FTTH サービスとADSL 等との 間には, その需 要について の代替
性 ,双 方 向の乗 換え が認められ,FTTHサービスの ユーザーの固定性
は 認められない 。
すなわち ,ADSL,FTTHサービス,CATV インターネットの
いずれかを利用 している既存 ユーザーは, 料金設定次第 では, サービス
間 の乗換 えを行 うものである 。ADSL等 が値下 げされ, 又は FTTH
サービスを値上げする場合には,FTTHサービスからADSL等の
サービス への乗 換えも 十分考 えられるものである。
イ
ま た,審 査 官が違反行為 があったと主 張する 平成1 4年6 月1 日から
平 成16 年3月 31日 までの 期間において ,FTTH サービ スとADS
L 等との 間におけるサービス での効 用・機能において も異な るところは
な い。例 えば ,動画 を配信 している主要 なサ イ トをADSL 等でも 利用
することは可能 であるし,FTTHサービスは ,上り 下り と も最大 10
0 M b p s で あ る と い っ て も , 上 り の速 度 に つ い て は, 実 際 に は ユ ー
ザ ーの利 用への 影響は 小さい 。さらに,株式会社ジェイコム 東京や KD
D Iによって,現に ,CATVインターネット を用い たトリプルプレイ
サービス が提供 されている。
しかも, 最大通信速度 の差異 は,ユーザーにとっての効用 が異 なるこ
と を意味 しない 。すなわち,ADSLの最大速度 は,通信技術 の発展 に
よ り 50 M b p s程 度 まで 上 昇し て お り ,更 に上 昇 する 可 能 性 も あ り ,
FTTH サービスとの 速度差 は大きくないし,CATVインターネット
についても,FTTH サービスと同程度の 高 速 化が可 能 と さ れ て い る。
な お,FTTH サービスの宣伝広告 において,ADSL等 との 差別化
を 図っているのは,ユーザーにとって FTTHサービスと ADSL等 と
が 共通の 選択肢 であることを 認識し た上で,FTTHサービス を選ん で
もらうための営業戦略 にすぎない。
ウ
そして, 一定の 取引分野を画 定す る に当たっては, 供給の 代 替 性の有
無 も補 完 的に考 慮さ れ る必要 があるところ ,ADSL 事業を 行ってきた
ソフトバンクや KDDIが ,FTTHサービス の提供 を開始 したことは ,
ADSL を提供 するために構 築した バックボーン回 線 網,そ の保有 する
各 種の電気通信設備を 基盤として ,ADSL事 業で築 いた顧客層・ブラ
42
ン ド 力 を 生 か し た プ ロ モ ー シ ョ ン 販売力 や マ ー ケ テ ィ ン グ 能 力 等 を そ
のままFTTH サービスの販 売に利 用することができたものといえ ,F
TTHサービス への参 入は容 易であったといえるから ,供給 の代 替 性も
認 められる。
エ
以 上から ,ユーザーは, ブロードバンドサービス を利用 するため,F
TTHサービス ,ADSL,CATVインターネット等 ,各 種サービス
を 相互に 代替的 なものと認識 して ,ユーザー料 金や性 能を勘 案し,これ
ら の中か ら自己 が利用 するのに適し たサービス を選択 し,一 方,事業者
側 も,FTTHサービス ,ADSL,CATV インターネット等を 競合
サービス と認識 し,他のサービス 販売条件を意 識して 自らの 販売条件を
設 定しているものといえるから,一定の 取引分野とは ,ブロードバンド
サービス ととら えるべきである。
3
争 点3 ( 被 審 人 の排 除 行 為 は , 競 争 の 実 質 的 制 限 を も た ら す も の で あ っ
た か ) について
(1) 審査官の 主張
ア
「 競争を 実質的 に制限 すること」と は,市場支配力を形 成・維 持・強
化 することをいうと 解されているところ ,事業者 が ,競 争により 価格 ,
数 量,品質等 が決定 されるという 市場の 機能を コントロール しているこ
と 及び市 場の開放性を 妨げること(競争 を排除 すること)をいうと 解さ
れ る。
「 競争の 実質的制限」 の存否 は,一律 に特定 の基準 によって判 断され
るのではなく, 個別具体的な 事件ごとに, 行為者 の数,市 場における 地
位 ,商品・ 役務の 特性等 を総合的に 考慮することによって,新 規に参 入
しようとする事業者が 市場に 参入することができないか,もしくは困 難
と な る か に つ い て判 断 さ れ る こ と に な り ,市 場 支 配 力を 有す る 事 業 者 ,
つまり当該事業者が高 い市場占拠率 を有す る場 合には,当該事業者に よ
り 新規参入が阻 止されることにより 市場支配力 が強化 されれば,原則 と
し て,「 競争の 実質的制限」 の要件 を満たすことになる。
イ
被審人は ,東日本地区 において,FTTHサービス 事業者 の有 する加
入者光ファイバ の大 部 分を保 有し,戸 建て住宅向け FTTHサービス の
開通件数 のほとんどを 占めているとともに, 他の電気通信事業者に対 し
加入者光 ファイバ設備 を接続 させる 義務を 負っており,そ の接続料金 を
43
設 定することを 通じて, 同設備 との接 続を必 要と す る他の 電気通信事業
者 の事業活動に 強い影 響を及 ぼし得 る地位 にあるところ,接続料金及 び
ユーザー 料金を 設定しながら, 当該サービス を他の 電気通信事業者に 提
供 できるようにせず, 他の事業者が, 被審人 の加入者光フ ァ イ バ設備 に
接 続し, 又は,分岐方式 の設備 に接続 して戸 建て住宅向け FTTHサ ー
ビ スを行 うことができないようにして参入 を阻 止した 。
ま た,被審人は, 東京電力の 価格引下げに 伴い,ニューファミリータ
イ プの価 格を引 き下げ, 他の電気通信事業者 が参入 できない状 況を維 持
強 化した 。
したがって,被審人の 行為により,競 争が実質的に 制限されたものと
いえる。
ウ
本 件における被審人の 行為によって 排除されたのは,同社 の加入者光
フ ァ イ バ に 接 続 し て 戸 建 て 住 宅 向 けF T T H サ ー ビ ス の 市場 に 参 入 し
ようとする他の 電気通信事業者で あ り,被 審 人が本件違反行為 を行っ て
い た期間 において,実際 に参入 することができた事業者はいなかったの
であるから,本件 において競争 が実 質 的に制 限されていたことは明ら か
である。
本 件において, 競争の 実質的制限の 成否を 論ずるにおいて,東京電力
や 有 線 ブ ロ ー ド の F T T H サ ー ビ ス事 業 の 維 持 が も は や 望み 得 な い こ
とになったかどうか, さらには,東京電力と の間の 競争を 期待 すること
がほとんど不 可 能な状 態になったかどうかは, 取り上 げ る 必 要 は な い 。
ま た,競 争の実質的制限の成 立には, 現実に 参入を 妨げられたことは
必 要ではなく, 参入を 困難にすることで足 りる 。
エ
他の電気通信事業者が,被審人と同等の加入者光ファイバのネット
ワークを 新規に 自ら構 築することは 極めて 困難 であるか,不 可 能で あ る。
被審人は ,旧電電公社 の電 電 債,利用者の 施設設置負担金(電話加入
権) など国民全体 から集 められた資金 により 築かれてきた 加入電話の 線
路基盤である電 柱,管路等を 既に保 有しており, 光ファイバは ,同社 が
全 くゼロ から敷 設したものではなく, このボトルネックを 独占 する線 路
基 盤 の 上 に メ タ ル 回 線 の リ プ レ ー スと し て 構 築 さ れ て き た側 面 を 有 し
ている。
ま た,東京電力, 有線ブ ロ ー ド及び 帯広シティーケーブルは, 自ら光
44
ファイバ を敷設 しているが, これらの例は, 各事業者が既 に保 有する 設
備 を利用 して加入者光 ファイバを敷 設したものであり,他 の電気通 信 事
業 者が新 たに光 ファイバを敷 設して, ネットワーク を構築 することとは
事 情が異 なる。 しかも, 被審人 が光ファイバ を敷設 している地 域の一 部
分 にすぎない。
オ
したがって,戸建 て住 宅 向けFTTH サービスに参 入しようとする他
の 電気通信事業者は,被審人の 加入者光ファイバと 接続することが必 要
であり, かつ, これに 容易に 代わり 得る手 段はなかった。
他の電気通信事業者が,東 京 電 力 の加 入 者 光フ ァ イ バを 利用 しようと
しても, それが 可能な 地域は, 東京電力がFTTH サービスを 展開し て
い る地域 のみに 限られ ,これは ,東日本地区の ご く一部 のみにすぎない 。
そもそも , F T T Hサ ー ビ ス に参 入し よ う と し て い る主 な 事 業 者 は,
アッカ, イーアクセス, ソフトバンク といったADSLを 展開 している
事 業 者 で あ り , 既 に 被 審 人 の 収 容 局に 自 ら の 電 気 通 信 設 備を コ ロ ケ ー
ションしていることから,被審人と の接続 は容易 であるが,東京電力 と
接 続しようとすれば,新 しく別 にネットワークを構 築しなければならな
いため, これら 事業者 は,東京電力の 設備と の接続 を必要 とはしていな
い。
さらに, 下水道 に敷設 された 光ファイバや ,国や 地方自治体, 鉄道事
業 者が敷 設する 光ファイバについては,いずれも, 加入者回線 としては
他 の電気通信事業者が 利用し 得る状 況にはないため,被 審 人の 加入者光
ファイバ 設備と は代 替 性は な い。
ま た,被 審 人の い うFTTN方 式,FWA方式による参 入につい て は,
いずれも, 収容局 からユーザー 宅ま で の間のある地 点ま で を光 ファイバ
とするものであり,光ファイバ をユーザー宅 まで引 き込む FTTHサ ー
ビ スとは 異なるものである。 本件一定の取引分野 は,戸建 て住宅向け F
TTHサービス であり, 他の電気通信事業者 がFTTN方 式や FWA 方
式 により サービスを提 供し得 るかどうかは, 本件違反行為 の成 立には 関
係 がない 。
カ
市 場における競 争の状 況
以 下のとおり ,被 審 人が本件違反行為を 行っていた平 成14 年6月 か
ら 平成1 6年3 月末までの間,戸建て 住 宅 向けFTTH サービスの市 場
45
に お い て は, 新規参入事業者 は な く, 価格 の頻 繁 な改 訂・ 変更 も な く ,
競 争の活発化は 見られなかった。
(ア) サービス 提供事業者の 数に変 化がなかったこと
被 審 人 の 加 入 者 光 フ ァ イ バ 設 備 に 接続 し て 参 入 した 電 気 通 信 事 業
者 は存在 しなかった。
他 方,自ら の光ファイバ 設備を 利用し てサ ー ビスを 提供し て い た事
業 者は, 東京電力及び 有線ブロード の2社 のみであり,有 線ブロード
は ,戸建 て住 宅 向けFTTH サービスの事 業 拡 大を断 念した 。
(イ) サービス 提供事業者の シェア に大き な変化 がなかったこと
開通件数 のシ ェ アをみると, 被審人 は,平 成15 年8月末現在 ,東
日本地区における戸建て住宅向けFTTHサービスの市場において
9 2パーセント のシ ェ アを占 めていた。そ の後も, 被審人 のシェアが
圧倒的に 高い状 況には 変わりはなかった。
(ウ) 激 しい価格競争 は見られなかったこと
当 該1年 9か月 の期間 において,被審人, 東京電力,有線 ブロード
が 値下げ を行ったのは 各社1 回のみであり, 頻繁な 値下げ に よ る激し
い 価格競争が行 われていたという状 況にはなかった。
(エ) 新 たなサービス の導入 がなかったこと
当 該期間 において,新 たな技 術に よ るサービスも 開発,導 入されな
かった。
キ
私的独占 における排除 とは,市場支配力を獲 得あるいは強 化しようと
す る様々 な行為 であって,それにより競 争が実質的に 制限されていれば ,
そ の手段 に経済合理性 があるかどうかは問 わないのであり,合理的 な投
資判断かどうかにかかわりなく,私的独占が 成立す る。もっとも,被審
人 は,ニューファミリータイプの 導入に 当たり ,収支計算自体行ってい
ないのであって ,被審人の 行為が 合理的投資判断に基 づくものともいえ
な い。
ク
被審人が 設定し た接続料金よりも,東京電力 が設定 したユ ー ザ ー料金
が 低価格 であったとしても ,東京電力が 接続料金を設 定するものではな
いから,東京電力の ユーザー料金 の設定 により ,他の 電気通信事業者が
参 入できなくなったわけではない。
ま た,東京電力 は,被 審 人と同 等か そ れ以下 の価格設定をしなければ
46
競争力を 保て な い状況 にあったもので,被 審 人が追 随する 保証 なくして
単 独で価 格を引 き上げることはおよそ不 可 能であり,市場支配力は持 っ
て いないから, プライスリーダーとはいえない 。
(2) 被審人の 主張
ア
競 争の実質的制限とは ,過去 の判例・ 審決及 び公正取引委員会 のガイ
ドライン 上,「行為者の 意思 で,自由 に価 格 等を左 右することで市場 を
支 配することができる 状態」 ,「他事業者が 自らの 自由な 選択 によって
価格等を 決定し て事業活動を 行って 利潤を 収め,そ の存在 を維 持す る こ
とがもはや望み 得なくなること」, 又は,「 有効な 競争を 期待 すること
がほとんど不 可 能な状 態がもたらされること」と解 されているのであり,
審査官の 主張は ,確定 した解 釈に反 する恣意的 な主張 である 。
イ
ニ ュ ー フ ァ ミ リ ー タ イ プ の 導 入 及 び ユ ー ザ ー料 金 の 値 下 げ は い ず れ
も プ ラ イ ス リ ー ダ ー た る 東 京 電 力 の戸 建 て 住 宅 向 け FTTH サ ー ビ ス
事 業 への 参入及 び料 金 の値 下 げに 追随 し た も の で あ る こ と, 被審人 は ,
東京電力 や有線 ブロードとの 激しい 競争を 行っていること,戸 建て住 宅
向 けFTTHサービス 市場は, ADSL事 業 者やCATV インターネッ
ト 業者等 からの 競争圧力を受 けていること, 他事業者の新 規 参 入は何 ら
妨 げられておらず,現 に,ソフトバンクや KDDIが,被審人 から機 器
を 全部借 り受けるのではなく, 自ら機 器をコロケーション して 戸建て 住
宅 向けFTTH サービス事業 に参入 していること等にかんがみれば, 被
審 人が, 「その 意思である程度自由 に,価 格,品 質,数 量,そ の他 各 般
の 条件を 左右することにより ,市場 を支配 することができる状 態」に な
かったことは明 らかであって ,競争 の実質的制限は認 められない。
ウ
仮 に,審査官の 主張す る基準 によったとしても, 他事業者は, 被審人
の 加入者光ファイバ等設備に 接続しなくても,FTTN( Fiber
To
The
Node。加入者回線 のうち 幹線部 分は光 ファイバを 敷
設 し , ユ ー ザ ー 宅 近 く に 設 置 さ れ たノ ー ド か ら ユ ー ザ ー 宅ま で は 同 軸
ケーブル を使用 するサービス 。),FWA( Fixed
ss
Wirele
Access。電 柱に設 置され た無線基地局 まで光 ファイバを 使
用 し,電 柱から ユーザー宅までは無 線で接 続する サービス。) という 方
式 によってFTTHサービス を提供 することは 可能であり, 他の設 備・
技 術を応 用し,FTTH サービスと同 等のネットワークを 構築 すること
47
で, 被審人 の加入者光ファイバ 回線に 接続せずにブロードバンドサ ー ビ
ス を提供 することも可 能であった。
エ
他 の ブ ロ ー ド バ ン ド サ ー ビ ス に 比 べ て FTTH サ ー ビ ス だ け が 他 の
事業者へ の乗換 えが困 難と い う事情 は存せ ず,他の 事業者 への 乗換え が
困 難であったという事 実は存 在し な い上,仮 にこのような 事情 が存在 す
るとしても,被 審 人が乗 換えを 困難としているというわけではないから,
被審人が 市場の 開放性 を妨げたということはできない 。
オ
新規参入者が存 在しなかったことや, シェア に大き な変動 がなかった
ことだけから,競 争が 不活発 であったということはできない。実 際には ,
平 成14 年6月 から平 成16 年3月 末ま で の間 に,被審人,東京電力及
び 有 線 ブ ロ ー ド の 戸 建て 住 宅 向 け F T T H サ ー ビ ス の料 金 水 準 は 2 度
にわたり 大きく 引き下 げられており( 9,000 円( 被審人 のベーシッ
クタイプ )か ら約6 ,000 円( 平成1 4年6 月から の被 審 人のニュー
ファミリータイプ,平成1 4年4 月から の東京電力の ISP 向け卸価格
等), 約6,000円 から約 4,5 0 0円(平 成15 年4月 からの 被審
人 のニューファミリータイプ ,平 成14 年12 月ころ からの 東京電力の
ISP向 け卸売価格等 )),被 審 人のニューファミリータイプの値 下げ
幅 についてみても,1,300円 と約2 2パーセント に相当 する大 幅な
値 下げを しており,競 争が不活発であったとはいえない。
したがって,平 成16 年3月末以前 において,被 審 人が市 場の 開放性
を 妨げていたとはいえない。
カ
ま た,分岐方式 の機器 を実際 に導入 するか 否か, 導入時期等は ,経営
判 断,営業政策 の問 題で あ り,サービス 開始当初から 分岐装置を設 置し
なかったことは 合理的 な投資判断であり, 競争制限とはいえない。
キ
さらに, 被審人 よりも 先に, 東京電力が,被審人の 加入者光ファイバ
1 芯の接続料金 より低 いユーザー料 金を設 定したことによって,既 に他
の 事 業 者 は 排 除 さ れ て い る こ と に な る か ら , 被 審 人 が, ニ ュ ー フ ァ ミ
リ ー タ イ プ の ユ ー ザ ー料 金 を 加 入 者 光フ ァ イ バ 1 芯 の接 続 料 金 よ り も
低 く設定 したことと ,他の 事業者 が排除 されたこととの間に 因果関係は
認 められず,競 争の実質的制限は認 められない 。
4
争 点4( 被審人 の排除行為は ,公共 の利益 に反するものといえるか) につ
いて
48
(1) 被審人の 主張
加入者光 ファイバ等の 設備は, 被審人 が設備投資負担の下 で構 築し て い
る 途上のものであって, 顧客獲得のリスクを 負担し て先行投資 を行うこと
の インセンティブを確 保し,設 備ベ ー スの競 争を促 進することこそが 重要
である。 しかも, ニューファミリータイプ の導入 及び値 下げは ,FTTH
サービス の取引分野のみならず,ブロードバンドサービス 市場 の競争 を促
進 させるものであること,ユーザーへ の安価 なFTTHサ ー ビ スの普 及に
大 きく貢 献し, 消費者 の利益 に合致 していることから,独占禁止法の 目的
に かなう ものである。
したがって,被審人の 行為が ,仮に ,形 式 的・客 観 的には 排除行為に 当
たるとしても,これを私的独占 とすることは 競争政策の観 点からはマイナ
ス であり ,また ,消 費 者の利 益に合 致するものであるから,「 公共の 利益
に 反して 」の要 件を満 たさない。
(2) 審査官の 主張
ア
「 公共の 利益」 とは,原 則と し て独占禁止法 の直接 の保護法益 である
自由競争秩序の 維持そ れ自体 であると解される 。
判 例 に よ れ ば , 「 現 に 行 わ れ た 行 為 が 形 式 的に 右 に 該 当 す る 場 合 で
あっても , 右 法 益と 当 該 行 為 によって 守 ら れ る利 益 とを 比 較 衡 量し て ,
『 一般消費者の 利益を 確保するとともに,国民経済 の民 主 的で 健全な 発
達 を促進 する』 という 同法の 究極の 目的( 同法1 条参照) に実質的に 反
し な い と 認 め ら れ る 例 外 的 な 場 合 」に は 公 共 の 利 益 に 反 し な い と し て
( 石 油 価 格 協 定 刑 事 事 件判 決 (昭 和5 9 年2 月2 4 日最 高 裁 判 所) ) ,
違反行為 の成立 を否定 する。
本 件においては, 競争秩序の侵 害を上 回るような利 益は存 在しないの
であるから,「 公共の 利益に 反して 」の要 件を 充足す る。
イ
被審人は, ニューファミリータイプの 設備構成についてユ ー ザ ーに対
し て明示 することなく, ベーシックタイプについて 実質的 に同 じサ ー ビ
ス を異な るユーザー料 金で販 売していたものであり,このような販 売 方
法 は,明 らかに ユーザーの利 益に反 する。ニューファミリータイプが 数
年 間 芯 線 直 結 方 式 の サ ー ビ ス で あ る こ と が 明 示 さ れ て い なか っ た た め
に, ベーシックタイプ を選択 していたユーザーは, ほぼ2 倍に 相当す る
高 い料金 を支払 っていた。そして,被審人が 現実に 提供す るサービス の
49
内 容を明 示していれば, ベーシックタイプの ユーザーは被審人 が分 岐 方
式 を実際 に使用 するまでの間 は,ニューファミリータイプ を選 択す る こ
とができたはずであり ,その 時点で, 芯線直結方式 の継続 を望 むのであ
れ ば,契 約する メニューを変 更することもできたはずである 。
ウ
ま た,競 争に よ り得られる消費者の 利益は ,価格 だけではない 。他の
事業者が 新規に 参入することにより, サービスの内容及びその 品質に つ
いても競 争が活 発に な り,消 費 者が ど の事 業 者のサービス を購 入す る か
の 選択肢 も広がることになるので,競争者の 参入も 消費者 の利 益に資 す
るものである。
5
争 点5( 被審人 の排除行為は ,違 法 性を阻 却する 事由が 存す る か)につい
て
(1) 被審人の 主張
FTTH サ ー ビ スが よ り普 及 し, より 活 発な 競争 が 実現 す る た め に は ,
利 用ベ ー スの競 争だけでなく ,設備 ベース の競争 が重要 であり ,そのため
に は 投 資 イ ン セ ン テ ィ ブ の 確保 に よ る 設 備 ベ ー スの 競 争 の 促 進 が 不 可 欠
であること,被審人の 行為が, 独占禁止法違反とされて接 続 料 金を引 き下
げざるを 得なくなるのであれば,被 審 人の加入者光 ファイバ等 の設備敷設
に 係るインセンティブ が失わ れ,結果 として FTTHサービス の普及 が困
難 になる ことから,被審人の 行為に は,正当化事由 ないし 違法性阻却事由
が 認められるものである。
(2) 審査官の 主張
ア
本 件で問 題とされるのは,設 備ベ ー スの競 争ではなく,被審人 の設備
と の接続 による 「利用 ベース の競争 」で あ る。被審人が, 同社 の光フ ァ
イ バへの 接続によるサービス 市場へ の参入 を阻 害することは, 本来期待
される新 たな競 争の可能性を 封じているといえる。
ま た,サービスを 提供す る事業者数 ,提供 する地域等にかんがみれば,
公 正かつ 自由な 競争の 促進は 期待できず, また,現 実にもそのような 状
況 にはなかったから, 競争促進効果 があったといえない。
イ
さらに, 被審人 は,設備 投資の インセンティブの確 保の重要性 を指摘
するが, 被審人 の加入者光ファイバ の接続料金の 算定においては,将 来
の 需要予測の中 に他の 電気通信事業 者が利 用す る分も 含まれており, 他
の 電気通信事業者が利 用することによって, 算定期間を通 算すればコ ス
50
ト が低下 することを見 込んでいる。 将来原価に よ る接続料金は ,「算 定
し た一定期間をもって 」「コストを 回収」することを前提 と し て計算 さ
れているのであるから ,「現時点で 赤字」であるということをもってし
て も,「算 定した 一定期間」を 通して 被審人 が赤字 を負担 するというも
のでもない 。したがって ,他 の電気通信事業者が 利用することによって ,
む し ろ 被 審 人 は 設 備 投 資 の コ ス ト を回 収 す る こ と が 可 能 とな る の で あ
り ,元来, 独占的 利用が 前提 となっているものではないから, 投資イ ン
センティブとは 関係がない。
ウ
仮 に,被 審 人が設 定した 設備構成によって当 該サービスを 販売 すると
市 場から 撤退しなければならなくなるというのであれば,そもそも接 続
料 金の設 定に問 題があったことになる。
6
争 点6(電気通信事業法 の規制 に係る 行為を 独占禁止法違反に 問うことが
できるか )について
(1) 被審人の 主張
ア
電気通信事業法 は,独占禁止法 と同様 の公正 な競争 の促進 と い う目的
か ら,接続料金・ ユーザー料金 の設 定 等について独占禁止法よ り詳細 な
種 々の規 制を定 めており,総 務大臣 は,競争 の促進 や利 用 者の 利益の 観
点 から民主的か つ透 明 性の高 い手続 を経た 上で 接続料金・ユーザー料 金
の 認可等 を行っている 。
本 件において, 被審人 の接続料金及 びユーザー料 金の設 定は, 電気通
信事業法 に従い ,認可 の取 得 及び届 出がされており,接続約款変更認可
申請命令 ,料金変更命令等は なされておらず,接続料金及 びユーザー 料
金 に従っ て電気通信役務の提 供を行 うこ と は,電気通信事業法 上,適 法
な 行為である。このような被 審 人の行 為が独占禁止法との 関係 で違法 と
されるのであれば,被審人は 電気通信事業法と独占禁止法の う ち,一 方
の 法律を 遵守すれば,他 方の法律違反 になるという 二律背反の 状態に な
るため, 接続料金及び ユーザー料金 の問題 に関しては,電気通信事業法
が 優先的 に適用 され, 独占禁止法は 適用さ れ な い。
イ
事 業 法 の 規 制 す る 分 野 に お い て も 独 占 禁 止 法が 適 用 さ れ る と す る 大
阪 バス協会事件審決( 平成7 年7月 10日) ではかかる二 律 背 反の関 係
は 存在しておらず,同事件当時 の道路運送法 は需給調整規制の 存在の た
め に新規事業者 の参入 が困難 な競争抑制的性格 を持つものであった。 し
51
か し,電気通信事業法 は,公正競争の 促進を 直接の 目的として 詳細な 規
制 を定め ており, これに 重ねて 独占禁止法を 適用すれば法規制 の統 一 性
に 欠ける 。
したがって,本 件では, 総務大臣に よ る認 可 等を受 けた接 続 料 金及び
ユーザー 料金に 従った 被審人 の事業活動については,大阪 バス 協会事件
審 決の考 え方によったとしても,独占禁止法 の適用 が排除 されるべきで
あ る。
ウ
大 阪バス 協会事件審決 は,「そ の価格協定が 制限しようとしている競
争 が 刑 事 罰 等 を も っ て 禁 止 されている 違 法 な 取 引 等 に 係 る も の で あ る
場 合に限 っては ,特段 の事情 のない 限り,競 争を実質的に 制限 するとの
構成要件 に該当 しない 」旨述 べる。 電気通信事業法上, 認可・ 届出料金
規 制 の 違 反 は 罰 則 の 対 象 と さ れ て お り , 被 審 人 が 総 務 大 臣に 届 け 出 た
ユ ー ザ ー 料 金 以 外 の ユ ー ザ ー 料 金 でニ ュ ー フ ァ ミ リ ー タ イ プ を 提 供 す
ること,及 び被 審 人が総務大臣 の認可 を受け た接続料金以 外の 接続料金
で 他事業者との 間で接 続のための協 定を締 結することは,刑 事 罰を も っ
て 禁 止 さ れ て い る 違 法 な 取 引 又 は 違法 な 取 引 条 件 の 設 定 で あ る 。 し た
がって, 大阪バ ス協会事件審 決に従 えば, 本件は「 競争を 実 質 的に制 限
す る」と の要件 を満たさない 。
ま た,被審人の ニューファミリータイプの 提供は, 罰則による 制裁が
付 された 認可・ 届出料金規制 を遵守 した結 果で あ り,仮に 独占禁止法違
反 の要件 に該当 するとしても 違法性 が阻却 されるものである 。
エ
公正取引委員会 が定め た「行政指導 に関す る独占禁止法上の 考え方」
に おいて ,「法 令に助 言,指 導,勧告 ,指 示 等の具体的規定がある行 政
指 導の場 合,当該行政指導の 目的, 内容,方法等は 当該法令の 規定に 合
致 し た も の で な け れ ば な ら ず ,そ の相 手 方が 個々 に 自 主 的に 判 断し て ,
このような行政 指導に 従う限 り,当該行政指導の相手方の 行為 は独 占 禁
止法上問題とならない 。」と規定 しているとお り,適 法な行 政 指 導に従 っ
た 行動は 独占禁止法上違法性 が阻却 される。 適法な 行政指導に 従った 事
業 者の行 為が独占禁止法上違反とならないならば,同じく 法令 に具 体 的
に 規 定 が あ る 事 業 所 管 官 庁 に よ る 認 可 等 に 従 っ た 事 業 者 の行 為 に つ い
て も,同 様に独占禁止法違反 とならないと 考えるべきであり, 被審人 の
行 為は独占禁止法違反 とならない。
52
(2) 審査官の 主張
ア
独占禁止法と電気通信事業法 とは,目 的が異 なっていることは 明らか
であるか ら,明 示の適用除外規定が 存在す る場合 であれば格別 ,そ う で
なければ, 電気通信役務 の提供 を業とする事業者の 行為であっても独 占
禁止法が 適用されることは疑 いがない。このため ,一つ の行為 について ,
独占禁止法と電気通信事業法 の両法 が,それぞれの趣旨・ 目的 に基づ い
て 適用されることになるのである。 したがって, 事業者 の行為 が,独 占
禁止法に 規定す る要件 にも,電気通信事業法 が規定 する要 件に も該当 す
る 場合に は,総務省の 行政処分又は 行政指導(以 下「行政処分等」と い
う 。)の有 無にかかわらず,公正取引 委員会 は独占禁止法 を適 用し行 政
処分等を 行うことができる。
イ
本 件についてみると,接続料金 やユーザー料 金の金 額が認可等 を経た
ものであることのみをもって独占禁止法の適用がなくなるわけではな
く, その 実態が 市場における 競争を 制限するものであれば,独占禁 止 法
は 適用されるし ,違 法 性も阻 却されない。 また,ユーザー 料金 について
は, 総務大臣に 届出をすればよいのであって,パブリックコメントや 情
報通信審議会による審 議の対 象ではないことから,「民 主 的か つ透 明 性
の 高い手 続を経 た」ものではない。 また,ユーザー 料金の 届出 がなさ れ
た 後,被審人が 実際にどのような内 容のサービス を行っているのか, 総
務 省に よ り検証 がなされているわけでもない。さらに,総 務大 臣が変 更
命 令を行 わなかったことは,本件違反行為の 成立を 妨げるものではなく,
総務大臣 が変更命令を 行っていないことをもって,被審人 の行 為が独 占
禁止法上 も違法 ではないという主張 は失当 で あ る。
ウ
な お,大 阪バス 協会事 件審決 は,認 可・届 出に反 する違 法な行 為,つ
ま り,刑事罰で 禁止された取 引に係 るものであるのに対 し,本 件に お い
て, 被 審 人は,認可料金 あるいは届 出 料金に 反する 料金で 販売 するもの
ではない 。したがって ,上記審決と 本件はその前 提を異 にするのであり ,
よって, 上記判断は本 件には 当てはまらず ,被 審 人の主 張は, 同審決 の
誤 っ た解 釈 に基 づ く も の で あ り失 当で あ る。 大阪 バ ス協 会事 件 審決 は ,
当 該 価 格 協 定 が 制 限 し よ う と し て い る 競 争 が 事 業 法 等 他 の法 律 に よ り
刑 事 罰 等 を も っ て 禁 止 さ れ た 違 法 な取 引 条 件 に 係 る も の で あ る 場 合 で
あっても ,独占禁止法違反と 認定し, 独占禁止法に 基づき 排除措置命令
53
を 課すことが, 国民経済の発 展,一般消費者 の利益 からみて肯 定さ れ る
という「 特段の 事情 」を示 したのである 。本件 において,審査官は ,「 被
審 人 が 電 気 通 信 事 業 法 に よ っ て 認 可さ れ た 料 金 あ る い は 届け 出 た 料 金
と は異な る価格 をもって取引 を行おうとすること」を独占禁止法違反 と
し て問擬 しているものではなく,独占禁止法の適 用が,被審人 に対し て
事業法違反行為 を強制 することにはならない。
第4
1
審判官の 判断
争点1について
(1) 排除行為該当性
ア
既 に認定 したとおり,ニューファミリータイプ導入 の前後 の時 期にお
い て,被審人以外 に戸建 て住宅 向けFTTH サービスを提 供している 事
業 者 と し て み る べ き 者 は , 東 京 電 力及 び 有 線 ブ ロ ー ド に 限ら れ て い た
( 前 記第 1 の3 (4)イ) と こ ろ ,そ のサービス 提供 の 基盤 と な る 加 入 者
光 ファイバの保有量において, 被審人 はFTTHサービス 事 業 者の中 で
東日本地区の ほ ぼ全域 において極め て大き なシェアを 占めており(前 記
第 1 の2 (1)オ) , また ,戸 建 て住宅向 け FTTH サ ー ビ スの 開 通 件 数
においても,被 審 人は東日本地区の ほ ぼ全域 において圧 倒 的シェアを 占
めていた (前 記 第1の 3(4)ウ) 。
そして, 既に述 べたとおり, 被審人 は,電気通信事業法上,被審人の
保 有 す る 第 一 種 指 定 電 気 通 信 設 備 で あ る 加 入 者 光 フ ァ イ バ設 備 に つ い
て, 他の電気通信事業者 から接 続の求 めがあったときはこれに 応ずる 義
務 を負い ,その 接続料金等について 接続約款を定 め,これについて総 務
大 臣の認 可を受 けなければならず,当該設備 を用い て自ら 行う FTTH
サービス のユーザー料 金について総務大臣 への 届出を 要し,か つ,総 務
大臣は一定の場合にその変更を命ずることができることとされている
と こ ろ , 前 記 第 1 の 3 (2)イ に 述 べ た 行 政 指 導 内 容 と し て の イ ン ピ ュ
テ ー シ ョ ン ル ー ル や 第 一 種 指 定 電 気 通 信 設 備 接 続 会 計 規 則の 規 定 等 に
照 らせば ,被 審 人には, 当該設備の接続料金 と自己 の設定 する FTTH
サービス のユーザー料 金との 関係について ,公正競争の 観点か ら,当 該
設 備 に 接 続 す る こ と に よ り F T T Hサ ー ビ ス 事 業 に 参 入 し よ う と す る
他の電気通信事業者の参入を困難ならしめることのないように配慮す
べきことが求められているものというべきである。
54
イ
しかるに ,被 審 人は,最 大1 0 0Mbpsの 通信速度を可 能に する戸
建 て 住 宅 向 け F T T H サ ー ビ ス の 新 し い サ ー ビ ス メ ニ ュ ーと し て
ニューファミリータイプを導 入す る に当た り,総務大臣に対 し,分岐方
式 の設備構成を 採用することを前提 として ,接続料金 の基本料金が 月額
2 0,1 3 0円(回線管理運営費 143 円を除 く。)となる 接続約款の
変更申請 を行い ,3 2分岐 する端末回線 の利 用 率を約 60パーセ ン トと
し た場合 を基準 として 1端末回線当 たりの 接続料金相当額を 約4,90
6 円と試 算して(前 記第1 の5 (2)イ),約款変更 の認可 を受け ,他 方,
ニューファミリータイプのユーザー 料金を 5,800 円と設 定すること
を 届け出 た上 ,平成 14年 6月か らニューファミリータイプ の販売 を開
始 し,実際に は ,分岐方式を 用いることなく,芯線直結方式 でその サー
ビ スを提 供した のである。
ウ
これにより,被 審 人の保 有する 加入者光ファイバ設 備に接 続し て新規
に FTTHサービス事 業を開 始しようとする事業者は,以 下に 述べる よ
う に,FTTHサービス 事業へ の参入 が困難 になったものと認 められる。
(ア) ま ず,被 審 人の保 有する 加入者 ファイバ設備 に接続 して新 規に FT
T Hサービス事 業に参 入しようとする事 業 者は,被審人に 対し て支払
う 接続料金を上 回るユーザー 料金を 設定しなければ,継続的合理的な
事 業の実 施を見 込むことができないことは 明らかである。
新規事業者が,被審人と 同様に 芯線直結方式 の設備 を利用 して FT
T Hサービスを 提供す る場合 に,被審人に 支払うべき接続料金 は,加
入 者 光ファイバ 1芯 に つい て 5, 0 7 4 円で あり ( 前記 第1 の 4 (2)
ア(ア)),新規事業者はこれに加 え,少 なくとも被 審 人の局 舎内 に設置
す るメディアコンバー タ(M C)及び 地域I P網へ の接続料金 を支払
う 必要があるところ, メディアコンバータ の接続料金は ,1装 置(集
線 型,16 回線収 容)当 たり2 0,0 5 7円で ある(前 記第1 の4 (2)
イ) から, 最大限 16ユーザー で利用 することとしても1 ユ ー ザー当
た り 1, 254 円 とな る( 審査官 の主 張 では , 1, 2 7 0 円で あ り,
これは1 5.8 ユーザーで使 用することを 前提にしている。) 。した
がって,新規事業者 は,被審人に 1ユーザーにつき5 ,0 7 4円 +1,
254円 =6,328円 及び局舎内の ポート ごとに 地域I P網 への接
続料金を 支払わなければならない。 ちなみに,被 審 人は自 己が 提供す
55
る Bフレッツの ベーシックタイプについて, 以上を 合計し た接続料金
を 1ユーザー当 たり7 ,7 6 0円と 見積もっていた(査第 24 号証添
付資料 。な お,査第2 4号証 は被審人従業員の供述調書 であるところ,
被審人は その信用性を 否定するが, 同号証 添付資料は,供述人本人が
作 成 し 審 査 官 に 提 出 し た も の で あ っ て , 信用性 に つ い て の 問 題 は な
い 。)。
と こ ろ が, 被 審 人 はニ ュ ー フ ァ ミ リ ー タ イ プの ユ ー ザ ー料 金 を5 ,
8 00円 と設定 したのであるから, 新規事業者は, 被審人 に上記接続
料 金 を 支 払 い な が ら こ の ユ ー ザ ー 料 金 に 対 抗す る ユ ー ザ ー 料 金 を 設
定 するのでは大 幅な赤 字を負 担せざるを得 ず,芯線直結方式による接
続 によっては,到 底被 審 人に対 抗して 事業を 継続すること はできない 。
したがって,被審人の 前記行為に よ り,新規事業者が,芯線直結方
式 で 被 審 人 の 加 入 者 光 フ ァ イ バ 設 備 に 接 続 して F T T H サ ー ビ ス 事
業 に参入 することは, 事実上 著しく 困難に なったものと 認 め ら れ る 。
(イ) 次 に,ニューファミリータイプ が前提 とする 分岐方式での 参入 可能
性 についてみると,特定 の収 容 局の1 芯の光 ファイバと接 続す る場合
に は,そ の光ファイバ が32 分岐す る地理的範囲 において,分岐方式
の 接続料金(基本料金 が20 ,1 3 0円であり,ユーザー 数が 増える
に 伴 い増 加 す る が ,1 ユ ー ザ ー当 たり の 接 続 料 金は 逓減 す る。 仮 に,
1 芯32 分岐すべてに ついて ユーザーを得 た場 合は,1ユ ー ザ ー当た
り の接 続 料金は ,2 ,3 2 6円( 74, 441 円÷32) と な る(前
記 第1の 5(2)ア参照。)。な お ,実 際には,このほか地域 IP 網への
接続料金 の1ユーザー 当た り の費用 等が加 算される。)を 上回 る収入
を 得られるよう 十分な 数のユーザー を獲得 しなければならない。その
地理的範囲としては,例 えば局 外スプリッタ からは 電柱2 本分 の範囲
に 限定される。
し かるに ,ニューファミリータイプ 導入時 には,既 に戸建 て住宅向
け FTTHサービスの 提供実績の あ る被審 人自 身で さ え,分岐方式を
前 提 と し た F T T H サ ー ビ ス に つ い て は 需要者 が 増 加 し な い 限 り 採
算 が取れないと 判断し ,そうであるからこそ,当 分の間 は,分岐方式
の 設備を 設置し ないこととし たものであることが認められるから(前
記 第 1の 5 (3)) , い わ ん や, F T T Hサ ー ビ ス 事業 に新 規 に参 入し
56
ようとする他の 事業者 が,採算 が取れるだけのユーザー数 を開 拓する
ことは実際上不可能であったと認められる (被 審 人は,ニューファミ
リータイプ導 入 後の平 成14 年11 月時点 で,東日本地区 におけるF
TTHサービスの回線数のシェアが88パーセントを占めていると
の 認識を 有し て いた( 査第199号 証)にもかかわらず, 上記 のとお
り, 採算が 取れるだけの ユーザーを獲 得することは 困難である ものと
考 えていたのである。)。実際,分岐方式に関 心を示 した事業者 はあっ
た が,問 い合わせや試 行にとどまっ ている (前記第1 の5 (4)) 。
したがって,ニューファミリータイプ が前提 とする 分岐方式で 被審
人 の 加 入 者 光 フ ァ イ バ 設 備 に 接 続 し て FTTH サ ー ビ ス 事 業 に 参 入
すること もまた, 事実上 著しく 困難な 状況にあった ものと 認められる 。
エ
以 上の参 入困難 の状況 は,被審人が, 設備構成の変 更に伴 う接続料金
の 改 定 を し た 上 ニ ュ ー フ ァ ミ リ ー タ イ プ の ユ ー ザ ー 料金 を 平 成 1 5 年
4 月以降 4,500 円に値 下げす る変更 を行っ たことによっても異 なら
な い。芯線直結方式 による 接続に ついては,接続料金 に変更 はなかった
の であるから,その 困難さ が一 層 大き く なったことは 明らかである 。ま
た ,分岐方式による 接続の 場合の ユーザ ー獲得 の困難 さについても ,局
外 ス プ リ ッ タ が 8 分 岐と な り そ の カバー す る 範 囲 が 電柱 3 本 分 に な っ
た ことを 考え て も,大き な変化 はないものと 認められる 。実際 ,当 該値
下 げに当 たって ,被審人が 提供す ることとした 収容局内4分 岐,収容局
外 8分岐 のB−PON 方式を 採用し て事業 を開 始したのは,北海道江別
市 にその 提供エリアを 限定し て事業 を始め たウェブワンのみであり ,し
か も 分 岐 方 式 を 用 い てサ ー ビ ス を 提 供し て い る の は 需要 が 密 な 特 別 な
場 所に限 られていた 。そ の一方 で,被審人 は,ニューファミリータイプ
の 開通件数を大 幅に増 加さ せ た。( 前記第 1の 8及び 9)
したがって,ニューファミリータイプの値 下げ後 においても, 他の事
業 者 が 東 日 本 地 区 に お い て 被 審 人 の加 入 者 光 フ ァ イ バ 設 備に 接 続 し て
戸 建 て 住 宅 向 け F T T H サ ー ビ ス 事業 に 参 入 す る こ と は 依然 と し て 著
し く困難 であったものと認められる 。
オ
以 上によ れば, 被審人 が,平成 14年 6月か ら平成 16年 3月 までの
間( 以下こ の期間 を「本件行為期間」という。)に 行った, ニューファ
ミリータイプの FTTHサービスの 提供に 当た り,当 該サービスを 分岐
57
方 式を用 いて提 供するとして ,当 該サービスの 提供に 用いる 分岐方式の
設 備との 接続料金の認 可を受 けるとともに ,当 該サービスの ユーザー料
金 の届出 を行いながら ,実 際には 分岐方式を用 いず,芯線直結方式 を用
い て,そ のユーザー 料金を ,いずれも他 の電気通信事業者が 被審人 の光
フ ァ イ バ 設 備 に 芯 線 直 結 方 式 で 接 続 して F T T H サ ー ビ ス を 提 供 す る
際 に必要 となる 接続料金を下 回る額 である ,当初月額5 ,8 0 0円 ,平
成 15年 4月1 日以降 は月額 4,500 円と設 定して ,当該 サービスを
提 供した 行為( 別紙1 記載の 行為。以 下「本件排除行為」という。)は,
加入者光 ファイバ設備 を保有 しない 他の電気通信事業者が,被審人 の加
入 者 光 フ ァ イ バ 設 備 に接 続 し て 戸 建 て住 宅 向 け FTTH サ ー ビ ス 事 業
に 参入すること を困難 にし ,これ を排除 していたものと認め ることがで
き る。
(2) 前 記(1)の判 断に関 する被審人の 主要な 主張 について判断 する。
ア
接続料金 及びユーザー 料金の 比較方 法について
被審人は ,ニューファミリータイプ について,当初 は分岐方式 を採用
しなかったとしても,いずれ分岐方式 に移行 することを想 定してい た の
であるか ら,ニューファミリータイプ は分岐方式の サービスとして考 え
るべきであり,ニューファミリータイプのユーザー 料金と 芯線直結方式
の 接続料金を比 較するのは無意味であると 主張 する。
しかし, ニューファミリータイプは, 実態としては 芯線直結方式で提
供 していたのであり, 他の事業者の 参入可能性については,実 態ど お り
の 方式で 検討すべきである。
被審人は ,前記 第1の 5(3)及び 6(3)で認 定したとおり, ユーザー数
が増えるまで当面3年間程度は芯線直結方式で提供することとしてい
た のみならず, ニューファミリータイプ導入時か ら一貫 して, 分岐方式
による提 供について具体的な 見通し や計画 はなかった のであ る。ニュ ー
フ ァ ミ リ ー タ イ プ の 提 供 開 始 後 1 年 以 上 経 っ た 平 成 1 5 年8 月 末 時 点
において みても ,その ユーザー数118, 627 回線中, 実際 に分 岐 方
式 でサービスを 提供していたのは ,6回 線のみ で(前 記第1 の7 (2)ア ),
被審人関係者をユーザーとして試行目的で提供していたにすぎなかっ
たものである。被 審 人は,平成1 5年1 0月に 至って ,ニューファミリー
タ イ プ の 新 規 ユ ー ザ ー に は 分 岐 方 式で サ ー ビ ス 提 供 す る こと を 総 務 省
58
に 回答し たが,これは総務省か ら報告 を求められた ために 方針 を改め る
こととし ,その 旨を回 答した にすぎないものと 推認される。
したがって,被審人の 上記主 張は当 たらない。
イ
競争条件 の同 等 性等について
(ア) 被審人は ,接続料金が 正しく 算定されている限り, 他の事業者 との
間 で競争条件の 同等性 は確保 されており,赤字覚悟 で事業 に参 入する
かしないかは, 当該事業者の 経営判断の問 題であるとし, ニューファ
ミリータイプが 導入されたことにより,新規事業者 がFTTH サービ
ス 事業へ の参入 を控えていたわけではないと主 張する 。
しかし, 前記第 1の5 (2)及び (3)に 認定したとおり,ニューファミ
リ ー タ イ プ の 導 入 時 に お い て 被 審 人 が 当 分 の間 分 岐 方 式 の 設 備 構 成
を 用いず 芯線直結方式 でサービスを 提供す ることについては, 総務大
臣 に 認 可 申 請 し た 接 続 料 金 の 算 定 や 届 け 出 たユ ー ザ ー 料 金 の 算 定 に
は,何ら反映されておらず,ユーザーに対しても何ら公表していな
かったものであ り,総 務大臣 は,被 審 人から 認可申 請を受 けた ニュー
ファミリータイプの接続料金 については,分岐方式 の設備 を使 用する
前 提で認 可したもので あり, ユーザー料金 についても,分 岐 方 式の設
備 を使用 する前 提で算 定したものとして, 届出 を受理 し た の で あ る 。
したがって,ニューファミリータイプについて,他 の事 業 者と の間
で 競争条件の同等性は 確保されているとの 被 審 人の主 張は,接続料金
が 正しく 算定されているとの 前提を 欠く も のというべきであって,採
用 できない。
な お,総務省が, 被審人 がニューファミリータイプ を芯線直結方式
で 提 供していることを 把握 し た後 ,直 ち に料金変更命令 を 出さ ず に,
早 急 に 対 応 し な け れ ば 電 気 通 信 事 業 法 第 3 1条 第 2 項 第 2 号 に 該 当
することとなると被 審 人を指 導し た にとどまったことは(前 記 第1の
7 (2)ウ), 上記の 判断を 左右するものではない。
(イ) 確 かに,赤字覚悟 で事業 に参入 するかしないかは当該事業者の 経営
判 断の問 題であ り,か つ,分岐方式 によれ ば,需 要が増 加し, 十分密
に なった 場合に は,計算上は 採算が 取れる 可 能 性は あ る。
し か し ,分 岐 方 式 は, 本 件行 為 期 間 中において ,前 記 アのとおり ,
被審人自身にとって, 現実的 なものではなかった。 芯線直結方式のま
59
ま では需 要が増 えても 決して 採算は 取れ な いものである。被 審 人の経
理においてはニューファミリータイプのサービス提供に係る収支は
計 算さ れ ていないが ,前記 (1)ウ (ア)のとおり ,被 審 人は光 ファイバ1
芯 の接 続 料金を 7,760円 と見積 もっていたところ,現 実に ニュー
ファミリータイプを1 ユーザー当た り5, 800 円(平成 15 年4月
以 降は4 ,5 0 0円)の ユーザー料 金で提 供し,利用部門 から 設備部
門 への接続料金 の振替 を行っ ていたとすれば,ユーザーが 増えれば増
えるほど 赤字が 増大していたはずであり, 例えば, 平成1 5年 3月末
までに約 4万件 のユーザーを 獲得し (前記 第1の 8参照 ),そのすべ
てに平成15年度1年間サービスを提供したとして上記接続料金と
ユーザー 料金の 差額( 赤字) を計算 すると ,15 億円を 超える 。しか
も, 分岐方式に よ る提供 によって採算 が取れ る状況 がいつ 到来 するか
についての見通 しはなかったのである。
それにもかかわらず, 被審人 がそのような 選択を した の は,前記第
1 の5に 認定し たニュ ーファミリー タイプ 導入 の経 緯 等に照 らし,戸
建て住宅向けFTTHサービスは一度契約締結 すれば一定期間他事
業 者への 乗換え が起きにくい 性質があるこ と か ら,将来性 に富 んだF
T T H サ ー ビ ス 事 業 に お け る 被 審 人 の 優 位 の地 位 を 早 期 に 確 立 す る
た め,当 面の損 益を無 視し て も,競争 事業者 に先駆 けたユ ー ザ ー獲得
が 重要であると 考えたことによるものと推 認さ れ,極めて 大き な企業
規 模と加入者光 ファイバ設備 を有す る被 審 人であるからこそ, 可能と
な っ た選 択 と見 る べ き で あ る 。こ の こ と に加 えて , 前記 (1)アで 述べ
た 被審人 の立場 を考慮 すれば, 戸建て 住宅向 けFTTHサ ー ビ ス事業
に参入しようとする他の電気通信事業者について被審人と同様の経
営 判断の 可能性 を論じることは,失 当というべきである。
(ウ) さらに, 被審人 は,どのような設備構成により,どのような水 準の
ユーザー 料金を 設定するかについては,被 審 人の営業政策 の問 題であ
る と も主 張 する が, こ の点 も ,前 記 (1)ア で述 べ た と こ ろ を 考慮 しな
い 議 論である 上, 被 審 人 は , ユ ー ザ ー 料 金 を 値 下 げ す る た め に わ ざ
わ ざ 新 し い 分 岐 方 式 の 設 備 構 成 による サ ー ビ ス を 導 入 す る こ と と し ,
そ の た め の 接 続 料 金 を 設 定 し な が ら, 実 際 に は , そ の 設備構成 と 異
な る 設 備 構 成 に よ り サ ー ビ ス を 提 供し た の で あ る か ら , 単 に被 審 人
60
の 営 業 政 策 の 問 題 で あ る と は い え な い 。 し た が っ て , こ の 点につい
て の上記被審人 の主張 も採用 できない。
ウ
分岐方式 の設備 との接 続に よ る参入可能性 について
(ア) 被審人は ,平成 16年 4月の 前後を 問わず ,電気通信事業法上 ,い
かなる接続点・接続形態 においても他事業者 との接 続に応 じなければ
な ら な い か ら , 被 審 人 が あ ら か じ め 分 岐 方 式の 設 備 を 設 置 し て い な
かったこと等は, 新規事業者の 参入を 困難に したとはいえない 旨主張
す る。
(イ) しかしながら, 本件において は,被 審 人が他 の電気通信事業者 から
の 接 続 の 要 請 に 適 切 に 対 応 し な か っ た こ と を排 除 行 為 と す る も の で
は な く, 分 岐 方 式 を前 提と し て接 続 料 金 及び ユ ー ザ ー料 金 を設 定 し,
そ の認可申請又 は届出 をしながら,実 際には 芯線直結方式 でサービス
を 提供し た行為 を問題 とす る ものである。 そして ,被 審 人は, 被審人
自 身 に と っ て 分 岐 方 式 で は 採 算 に 見 合 う 需 要が 見 込 ま れ な い と 明 確
に 認 識 し て お り , F T T H サ ー ビ ス 事 業 に 新規 に 参 入 す る 事 業 者 に
とってはなおさらそうであって,本件行為期間中 ,現実 に,分 岐方式
で の接続 により 参入することが著し く困難 な状 況にあったことは,前
記 (1)ウ (イ)の認定 のとおりである。
し た が っ て ,被 審 人のこの 点 の主 張は , 前記 (1)の判 断 を左 右 する
ものではない。
(ウ) 本 件 行 為 期 間 中 に お け る 他 の 事 業 者 の 具 体 的 な 接 続 の 打 診 と こ れ
に 対する 被審人 の対応 として 次の事 実が認 められるが,こ れ ら の事実
も, 被 審 人が,分岐方式 でのFTTH サービスの提 供が現実的 でない
ことを認 識していたことを窺 わせる 事情ということができる 。
①
平成 15年 3月こ ろ,有線ブロード が,被審人に 対し,ニューファ
ミ リ ー タ イ プ の ア ン バ ン ド ル メ ニ ュ ー を 用い た 商 品 開 発 を 検 討 し
たいと 申し出 た際, 被審人 は,ニューファミリータイプ の局内装置
の提供 に5か 月程度要するため,被審人自 身のニューファミリータ
イ プ は 早 期 開 通 が 可 能 で あ る こ と と の 同等性 や 接 続 料 金 の 適 正 性
を問われる可能性があることを問題点として 想定し,有 線ブロード
に対しては,被審人において アンバンドル の提供実績がないことか
ら,まずは先 行で数 局舎で 展開し, その結 果を み て更な る導 入を行
61
うか否 かの判 断をするよう 提案を 行った 。(査 第1 6 2号証 ,査第
163 号証, 査第165号 証,査 第1 7 1号 証,審 第1 7 6号証)
②
平 成 1 5 年 2 月 こ ろ , K D D I か ら 被審人 に 対 し , 分 岐 回 線 の
ユーザー 単位で の接続要望がなされた際に は,被審人 はコストアッ
プ を理由 に実現 は難しいと思 う旨を 回答し て い た。(査第141号
証 ,査第 142 号証)
な お,当 該期 間 中に,被審人に 分岐方式で接 続して ウェブワン が東
日本地区 のFTTHサービス 事業に 新規に 参入 してい るが(前 記第1
の 9 (2)), 同社 は そ も そ も北海道 江別市 の区 域 の み で小 規 模に 事業
を 展開しており, 需要の 密な一 部の地 域に限 定して 分岐方式を 採用し
ていたにすぎない。( 査第5 9号証 )
(エ) ま た,被審人は, 平成1 6年4 月以降 にソフトバンク等が 新規 に参
入 していることからみ ても,さかのぼってそ れ以前 の間に も分岐方式
で の新規参入の 可能性 がなかったとはいえない 旨も主 張する 。
しかし, 平成1 6年4 月以降 のソフトバンク等の 参入は, 本件行為
に関する公正取引委員会の調査や総務省の行政指導が行われた後の
こ と で あ り ,ま た, 第 1の 1 0(2)の と お り, G E − P O N 方式 とい
う, ニューファミ リータイプが 提供の 前提としていたE−PO N方式
や B−PON方 式よ り も大 容 量の設 備に よ り,分岐方式による 速度低
下 等 の問 題 を解 決 する 新た な 技術 の導 入 が あ っ た後 の こ と で あ っ て,
本 件の排 除行為 該当性 の認定 を左右 するものではない 。
エ
因果関係 について
被審人は ,被 審 人がニューファミリータイプを導 入した 当時, そもそ
も 東京電力のユーザー 料金相当額が 6,000円 であったから ,他の 事
業 者は, 東京電力に対 抗し得 るユーザー料 金を設 定し な い限り ,FTT
H サ ー ビ ス 事業 に参 入 することは 困難 で あ っ た と い う べ き で あ る か ら ,
被審人の ユーザー料金 の設定 は,他の 事業者 の新規 参入の 可能 性と関 係
がない旨 も主張 する。
し か し, 前記第 1の 3 (4)イの と お り ,東 京 電 力 のF T T H サービス
は, 提供 地域が 限られていた のであり,東京電力において 既に ユーザー
料金相当額が6 ,0 0 0円程 度であったとしても, 東日本地区 における
電気通信事業者 としての知 名 度,事 業ノウハウ,事業規模等を 考慮す る
62
と (査第 204 号証), 他の電気通信事業者 がこれ と同 程 度の ユーザー
料 金 を 設 定 し な け れ ば F T T H サ ー ビ ス 事 業 に 新 規 に 参 入す る こ と が
できなかったとまでは 認められないというべきである。被審人 ほどの 電
気通信事業者としての 知名度 ,事業 ノウハウ,事業規模を 有す るとは 認
められない東京電力が 低価格 でサービスを 提供 しても,他 の電気通 信 事
業 者は, 価格競争力だけでなく,電気通信事業者としての 事業 ノウハウ
等 を活用 することにより,これ に対抗 するFTTH サービス事 業を展 開
で きる可能性が あるが ,被 審 人が,他 の電気通信事業者で は価格上 対 抗
できない 低ユーザー料 金を設 定する 行為の 影響 は,東京電力の 料金設 定
によって 生じる 新規参入の困難性と は比較 にならない 。
まして,被審人が 自らの 加入者光ファイバ設 備について設 定し た芯線
直結方式 の接続料金は, メディアコンバータ の分を 含めて 1ユーザー に
つ き最低 6,3 2 8円 である ところ( 前記 (1)ウ (ア)),ニューファミリー
タイプの ユーザー料金 を5, 800 円(平 成15 年4月以降は 4,5 0
0 円)と 設定し て,芯線直結 方式で 提供したのであるから,被審人の 行
為 と他の 事業者 の参入 の困難 との因果関係 は十分認められる 。
したがって,上記被審人の主 張は採 用できない 。
オ
主観的意図について
被審人は, 私的独占に該 当する 行為と 認める ための 要件として 行為者
の 競争制限的意思が必 要で あ り,被審人に は,他事業者を 排除 する意 思
はなかった旨 主 張する 。また ,被 審 人は,光 ファイバの接 続 料 金を自 ら
変 更することは 不可能 であるから, この点 からも, 他事業者の 参入を 阻
止 しようとする 意図を 有していたとはいえないと主張 する。
し か し, 排 除 行 為 の判 断に 当 た っ て, 主観的 な 意図 は必 要 で は な く,
客観的に 排除行為が認 められ れば足 りるか ら,被 審 人が他 事 業 者を排 除
す る意思 を有していたかどうかは, 前記判 断を 左右す る も の で は な い。
な お,前 記イに 述べた とおり ,被 審 人は,競 争事 業 者に先 駆け たユー
ザ ー獲得 のために本件排除行為を行 ったも のと 推認さ れ,かつ ,前 記(1)
イ ないし エに認 定した 事実に 照ら せ ば,被審人は, ニューファミリータ
イ プのFTTH サービスの提 供によって,他 の事 業 者が被審人 の加 入 者
光 フ ァ イ バ に 接 続 し て F T T H サ ー ビ ス 事 業 に 参 入 すること が 事 実 上
著 しく困 難とな ることについて,こ れ を認識 していたものと推 認す る こ
63
とができる。
ま た,接続料金 は総務大臣の 認可に 係るものとはいえ,被審人 の認可
申 請があって初 めて定 まるものであり,ま た,被 審 人の接 続 料 金の算 定
の 前提となる設備構成 は,被審人自 身が選 択するものであるか ら,こ の
観 点か ら の被 審 人の主 張も, 採用できない 。
2
争 点2について
(1) 前記第1 の3 (1)に 認定し た事実 によれば,FTTHサービス は ,ブ ロ ー
ドバンド サービスの中 でも, サービス提供 に係る 通信設備の違 いから ,A
DSLや CATVインターネットと 比べ,よ り高速大容量 の通 信が可 能で
あること ,上り 下りの 通信速度が同 じであること, 接続が 安定 しているこ
と, 収容局 からの 距離にかかわらずサービス 提供が 可能である ため提 供エ
リ アが広 いこと ,通信品質が 良いこ となどにおいて,優位 な性 能を有 する
一 方,ADSL よりも ユーザーの利用料金 は高 い。
ブロードバンド サービスの各 サービスについて,大容量の デ ー タ通信 を
行 うという意味 ではユーザー の目的 は共通 しているものの,各 ユーザーは ,
そ の通信設備,通 信サービスの 内容及 び料金 を勘案 した上 で各 サービスを
選 択するのであって,上 記の各 サービスには サービスに応 じた 個別の ユー
ザ ーの需 要が存 するものと認 められる。
ま た,こ れ をブロードバンドサービス の各サービス を供給 する 事業者側
からみると,各 サービスご と に通信設備が 異なり ,特に,FTTHサービ
ス 事業については,新た に光ファイバ 設備を 敷設す る必要 が あ る点におい
て ,既設 の電話回線(メタル 回線)や テレビ 用のネットワーク を利用 する
ADSL やCATVインターネット と比べ, サービス提供 を開 始するため
の 時間及 び費用 に差異 があるものと 認められる 。
そうすると,ブロードバンド サービスにおいて,需要者層 は各 サービス
ごとに異 なる上, 各サービスを 提供す る事業 者も各 サービスごとに異 なる
ものであるといえるから,ブロードバンドサービス の1つ で あ るFTTH
サービス 事業について 独立し た市場 を観念 することができる と 解 さ れ る 。
(2) ま た,家 庭 向けFTTH サービスには 戸建て 住宅向 けのものと 集合住宅
向 けのものがあ り,そ の区分 により 加入者光ファイバ設 備が異 なる( 前記
第 1 の3 (3)参照 ) と こ ろ, こ れ を FTTH サ ー ビ ス事 業 者か ら み れ ば,
集合住宅向けサービス を提供 する場 合には, 特定の 集合住宅ま で光ファイ
64
バ 1芯を 敷設すれば複 数のユーザー の獲得 が期 待で き ることとなるが,戸
建 て住 宅 向けサービス を提供 する場 合は,一定数の ユーザーの 所在す るエ
リ アをカバーす るネットワークが必 要に な る。
ユーザー 側からみれば ,集合住宅向 けFTTHサービス は,一 つの建 物
に 引 き 込 ま れ た 光 フ ァ イ バ を複 数 の ユ ー ザ ー が 共用 す る 場 合 又 は 共 用 が
見 込ま れ る場合 に限り 提供されるサービス であって,戸建 て住 宅の居 住者
は ,集合住宅向 けFTTHサービス の提供 を受けることはできない。 (た
だ し,集合住宅の うち2 階以下 の住居 では戸 建て住宅向け FTTHサービ
ス を利用 することが可 能で あ る。)
( 査第1 3号証 ,査第 16号 証,査 第17 号証 ,査第 223 号証)
したがって,戸建 て住宅 向けFTTH サービスと集合住宅向け FTTH
サービス とでは, 加入者光ファイバの 設備形態及び ネットワークに違 いが
あ り,ユーザー にとっても,FTTHサービス事業者にとっても,両 サー
ビ ス間の 代替性 は極め て限 定 的で あ るから, 戸建て 住宅向 けサービス と集
合住宅向 けサービスとのそれぞれで, 一定の 市場を 画定することができる 。
(3) 以 上によれば, 戸建て 住宅向 けFTTHサービス について,一 定の取 引
分 野を画 定することができる 。
(4) こ れ に対 し, 被 審 人 は , 料 金 設 定 次 第 で は , A D S L と F T T H サ ー
ビ ス と の 間 で 双 方 向 に 乗換 え が 可 能 で あ る か ら , ブ ロ ー ド バ ン ド サ ー ビ
ス 市 場 全 体 を 一 定 の 取 引 分 野 と 画 定 すべきと 主 張 し , ADSL の 通 信 速
度 さ え あ れ ば十 分に 主要 なサ イ ト を 利用 す る こ と が で き る , F T T H
サ ー ビ ス で 行 え る と す るト リ プ ル プ レ イ な ど は C A T V イ ン タ ー ネ ッ ト
で も 利 用 可 能 で あ る , 技術 の 向 上 に よ り F T T H サ ー ビ ス とA D S L と
の 通 信 速 度 の 差 は ユ ー ザ ー の 選 択 に 影 響 を 与 え な い, ADSL 事 業 者 に
と っ て FTTH サービス 事 業 へ の 参 入 は 容 易 で あ り , 供 給 の 代 替 性 が あ
る 等 の 事 情 を 主 張す る 。
し か し , A D S L か ら FTTH サ ー ビ ス へ 移 行 する ユ ー ザ ー は 多 い も
の の , い っ た ん F T T Hサ ー ビ ス を 選 択 した ユ ー ザ ー が , A D S L あ る
いはCATVインターネットに乗り換えることはほとんどないと認めら
れ る ( 査 第 2 2 0 号 証 ,審 第 5 1 号 証 )。こ れ は , 前 記 (1)のと お り , F
T T H サ ー ビ ス は , 他 のブ ロ ー ド バ ン ド サ ー ビ ス に 比 べ 高 速 大 容 量 の 通
信 が 可 能 で あ る こ と , 接続 が 安 定 し て い るこ と , 提 供 エ リ アが 広 い こ と
65
等 の 点 で 他 の ブ ロ ー ド バ ン ド サ ー ビ ス と は異 な る 機 能 ・ 効 用を 有 し て い
る か ら で あ る と 考 え ら れ る 。 ま た ,A D S L は , ユ ー ザ ー 宅 ま で 既 設 の
電 話 回 線 ( メ タ ル 回 線 )を 用 い る サ ー ビ スで あ る の で , 光 フ ァ イ バ を 新
規 に 引 き 込 む FTTH サ ー ビ ス と は 供 給 に 要 す る 設 備が 異 な る も の で あ
る。
な お , よ り 広 い 市 場 に お い て競 争 が 行 わ れ て い る と 認 め ら れ る と し て
も , 同 時 に , そ の 市 場 内に お い て 細 分 化 さ れ た 市 場 を 一 定 の取 引 分 野 と
し て 画 定 す る こ と も 可 能で あ る 。 そのような 場 合 に お い て は, 違 反 者 の
行 為 が 対 象 と し て い る 取 引 及 び そ れ に よ り影 響 を 受 け る 範 囲を も 検 討 し
て , そ の 競 争 が 実 質 的 に制 限 さ れ る 範 囲 を画 定 し 「 一 定 の 取 引 分 野 」 を
決 定 す べ き で あ る と こ ろ(社会保険庁発注シール談合事件 判決(平成 5年
1 2月1 4日東京高等裁判所 )), 本件 排 除 行 為 が対 象 と し た 取 引 及 び そ
れ に よ り 影 響 を 受け る 範 囲 により ,「 戸 建 て住 宅 向 け F T T H サ ー ビ ス」
を 一 定 の 取 引 分 野と 認 定 す る こ と が で き る 。
し た が っ て , 被審人 の 上 記 主 張は い ず れ も 採用 で き な い。
3
争 点3について
(1) 「 競争の 実質的 制限」 の意義
独占禁止法第2 条第5 項に規 定する「 一定の 取引分野における 競争を 実
質 的に制 限すること」 の意義 については, 裁判例 上,「市 場における 競争
自 体が減 少して ,特定 の事業者又は 事業者 集団が ,その 意思で ,ある 程度
自 由 に, 価 格, 品質 , 数量 ,そ の 他 各 般の 条 件を 左右 することによって ,
市 場を支 配することができる 形態が 現れているか,又は少 なくとも現 れよ
うとする 程度に 至っている状 態をい う」などとされている(東 宝・スバル
事 件判決 (昭和 26年 9月1 9日東京高等裁判所 )及び 東宝・ 新東宝事件
判 決(昭 和28 年12 月7日 東京高等裁判所)参 照)ところ, このような
趣 旨における市場支配 的状態 を形成 ・維持・ 強化す ることをいうも の と解
される。
(2) 本 件についての 判断
ア
既 に判断 したように,戸 建て住宅向け FTTHサービスを 提供 してい
る 事 業 者 と し て み る べ き 者 は 被 審 人の ほ か 東 京 電 力 及 び 有線 ブ ロ ー ド
に 限られていたところ ,被 審 人は,そ の基盤 となる 加入者光ファイバ の
保有量においても,戸建 て住 宅 向けFTTH サービスの開 通 件 数に お い
66
て も,極 めて大 きなシェアを 占めていた。 加えて, 東京電力等被審人以
外 の事 業 者の保 有する 光ファイバ設 備は, 地域的 に限定 されており, か
つ, 被審人 の保有 する光 ファイバ設備 に比べ て接続 しにくいと 認め ら れ
る ( 前 記 第 1の 3 (5)ア )。 したがって ,FTTH サ ー ビ ス事 業 に参 入
しようとする事業者にとって, 被審人 の加入者光ファイバ に接 続す る こ
と が極め て重要 であったから ,被 審 人のFTTH サービスの内 容,ユ ー
ザ ー料金 ,接続料金のいかんは,新規 事業者 との間 の競争 の在 り方に 大
き な影響 を及ぼすものである 。
しかるに ,被 審 人は,第一種指定電気通信設備で あ る加入者光 ファイ
バ 設 備の 保有者 と し て ,前 記1 (1)アに 述 べた 立場 に ある と こ ろ ,既 に
認 定したとおり ,実際 には分岐方式 を当面 用いる こともなく, かつ, そ
の 具体的 計画もないのに,分岐方式を 用いるとして ニューファミリータ
イ プを導 入し,分岐方式 による 接続料金とユーザー 料金を 設定 しな が ら,
芯線直結方式で, 芯線直結方式 の接続料金を 下回る ユーザー料 金に よ り
ニューファミリータイプのFTTH サービスを 提供したものであり, こ
れ は,将 来 性に富 んだFTTH サービス事業 における被 審 人の 優位の 地
位 を 早 期 に 確 立 す る た め , 他 社 に 先駆 け た ユ ー ザ ー の 獲 得を 目 指 し て
行 ったものと推 認されるのである。
そ し て, 被 審人 のこ の よ う な 行為 に よ り ,前 記1 (1)の と お り, 他の
電 気 通 信 事 業 者 が 被 審 人 の 加 入 者 光フ ァ イ バ 設 備 に 接 続 して 新 規 に 東
日 本 地 区 に お け る 戸 建 て 住 宅 向 け F T T H サ ー ビ ス 事 業 に参 入 す る こ
と が困難 になり, ひいて は新規事業者 の参入 自体が 困難になっ たものと
認 められ ,そのような 状況の 中で,前記第1 の8のとおり 被 審 人はユ ー
ザ ー数を 大幅に 増加さ せたものである。
イ
こ れ に よ れ ば, 被 審 人 の行 っ た本件排除行為 は, 前 記 (1)で 述べ た市
場支配的状態を 維持し ,強化 する行 為に当 たり,東日本地区における 戸
建 て 住 宅 向 け F T T H サ ー ビ ス の 取引 分 野 に お け る 競 争 を実 質 的 に 制
限 するものに該 当するというべきである。
(3) 前 記 (2)の 判 断 に 関す る 被 審 人の 主 要 な 主 張に つ い て 判 断す る 。
ア
被 審 人 は , ニ ュ ー フ ァ ミ リ ー タ イ プの 導 入 及 び ユ ー ザ ー 料 金の 値 下
げ は , 東 京 電 力 の 参 入 や 料 金の 値 下 げ に 追 随 し たも の で あ り , 戸 建 て
住 宅 向 け F T T H サ ー ビ ス 市場 に お い て は , 被審人 と 東 京 電 力 及 び 有
67
線 ブ ロ ー ド と の 間 で 激 し い 競争 が 行 わ れ て い た か ら , 競 争 の 実 質 的 制
限 は な か っ た 旨主張 す る 。
確 か に , 東 京 電 力 や 有 線 ブ ロ ー ド との 間 の 競 争 の 存 在 を 否 定す る こ
と は で き な い が , そ の 競 争 状態 に つ い て は , 既 に繰 り 返 し 述 べ た よ う
に , 加 入 者 光 フ ァ イ バ の 保有量 や 保 有 地 域 の 広 狭, 戸 建 て 住 宅 向 け F
T T H サ ー ビ ス の シ ェ ア 等 に お い て , 被 審 人 が 極め て 優 位 な 立 場 に あ
る と い え る の で あ っ て , 被審人 が 新 規 参 入 を 妨 げて そ の よ う な 3 社 の
み に よ る 競 争 という 状 態 を 保 つこ と は ,前 述の 市 場 支 配 的 状 態 を 維 持 ,
強化することにほかならない。
一 般に,既存事業者間で 競争が 活発でない場 合には 新規参入が 誘引さ
れ, 新たな 競争単位が加 わることによって競 争が活発化す る こ とは市 場
メカニズムの道 理で あ り,ま た,新規参入 が実際 に起こらなくとも, 新
規 参 入 が あ り 得 る と の 脅 威 が 既 存 事 業 者 を 競 争 に 向 かわせる 力 と な る
ところ, 事業者数が少 ない等 のいわゆる独 占・寡占市場に お い て新 規 参
入 が人 為 的に妨 げられていれば,既存事業者にとっては, 更な る価 格 引
下 げ,サービス 内容の 充実,事 業の効率化などの企業努力 を す る必 要 性
が 小さい ことが 容易に 分かる 。このため,そのような市場 で新規参入 の
妨害行為 が行われれば ,既存事業者間で競 争が行 われにくくなり,市 場
機 能が働 きにくくなる 状況に 陥るものと考 えられる。
し た が っ て ,上 記 被 審 人の 主 張は ,前 記 (2)の 判 断を 妨げるものでは
な い。
イ
被 審 人 は , 他 の 事 業 者 は , 被 審 人 の加 入 者 光 フ ァ イ バ に 接 続し な く
と も FTTH サービス を提 供することができ ,他 のブ ロ ー ド バ ン ド
サービスに比べてFTTHサービスだけが他の事業者への乗換えが困
難 と い う 事 実 は 存 在 せ ず , また , 被 審 人 が 他 の 事 業 者 へ の 乗 換 え を 困
難 に し て い た 事 情 も な い か ら, 新 規 参 入 を 妨 げ て は い な い 等 と 主 張 す
る。
しかし,被審人以外の事業者の 保有す る光ファイバ 設備へ の接 続につ
いては, 前記 (2)ア( 及び 前記第 1の3 (5)ア)において述 べたとおりで
あ り,他の 事業者 が自ら 新たに 加入者光ファイバを 敷設することの困 難
さ に つ い て は前記第 1 の3 (5)イに お い て 述べ た と お り で あ る か ら, 被
審 人の主 張は当 たらない。
68
ま た,FTTH サービス事業 においては,ADSL と比べ て他 事業者
へ の乗換 えが起 こりにくいことは,前記第1 の3 (1)イ のとおりであり ,
ユ ー ザ ー の 他 事 業 者 へ の 乗 換 え が 起こ り に く い こ と が 被審人 の 行 為 に
起 因するものでないことは, 本件排 除行為 の評価 を左右 しない ので, 上
記被審人 の主張 は採用 できない。
さらに, 被審人 は,FTTN 又はFWAという方 式によ れば, 被審人
の 加 入 者 光 フ ァ イ バ 設 備 に 接 続 せずに ブ ロ ー ド バ ン ド サ ー ビ ス を 提 供
することが可能 である と主張 する。 しかし ,FTTNは, CATVイ ン
ターネット事 業 者によって利 用され ている 技術 であり,そ の通信速度 は
下 り8Mbps,上り 2Mbpsにとどまる(審 第1 0 3号証 )。F W
A を利用 したサービス は,光ファイバ の引込工事が 困難な マンション の
居住者を 主たる 対象と して販 売されている ものであり,そ の通信速度 は
1 .5 Mbpsにすぎない(審第 1 0 6号証 )。したがって,前記 2(1)
の 考え方 によれば,これらの方 式はブロードバンドサービスとしてF T
T Hサービスと は異なるものと認められ,仮 にこれらの方 式による参 入
が 可能であったとしても,戸建 て住 宅 向けFTTH サービスの 取引分野
における 競争に 係る前 記(2)の判 断を左 右す るものではない。
ウ
な お,KDDI は,平成 17年 11月 28日 から東京電力 の保 有する
光 ファイバ設備 に接続 してFTTH サービス事 業に参 入している(前 記
第 1 の1 0 (2)ウ ) が, 本件 排 除行 為の 終了後 1年 以 上 経 過し た 後の こ
とである 上,市 場の一 部に参 入することが 可能であるからといって, 市
場全体における 前記競争の実質的制限の判 断を 左右す る も の で は な い。
さらに,アッカが 平成1 7年1 2月1 日から 株式会社UCOM の保有
す る 光 フ ァ イ バ 設 備 に 接 続 し て F T T H サ ー ビ ス 事 業 に 参入 し て い る
ことも認 められる(審第 181 号証の 1,審第 181 号証の 2)が,ア ッ
カ が個 人 向けに 提供し 始めた サービスは,既 に光ファイバ が導 入さ れ て
い る集合住宅に 居住す るユーザーに 対してのものであって,本件違 反 行
為 の認定 と何ら 関係がない。
4
争 点 4 及 び 争 点 5に つ い て
(1) 被審人は, 加入者光ファイバ等 の設備 を使用 したFTTH サービス事 業
については,利 用ベ ー スの競 争だけでなく, 設備ベースの 競争 を促進 する
ことこそ 重要であり ,被審人の 行為が ,独占禁止法違反 とされてしまうと ,
69
被審人の加入者光ファイバ設備等の敷設に係るインセンティブが失われ
るから, 仮に,形式的に 独占禁止法上の排除行為 に該当 するとしても ,被
審 人の行 為は, 公共の 利益に 反するものではなく ,また, 被 審 人の行 為に
は 正当化事由ないし違法性阻却事由 が認め ら れ る旨 主 張する 。
しかし, 本件においては,被 審 人に よ る接続料金の 設定自 体をもって 違
反行為としているのではない。 加入者光ファイバ設 備の敷 設に 要する コス
ト は,接続料金 の設定 の際の 算定根拠と な り,被審人自身及び 他の事業者
の 実際の 利用に 応じて 回収されるものであ る。ま た,本件排除行為は ,実
際 には分岐方式 を当 面 用いることなく,かつ ,そ の具体的計画 もないのに ,
分岐方式 を用いるとしてニューファミリータイプを導 入し,分岐方式 によ
る 接続料金とユーザー 料金を 設定しながら, 芯線直結方式 でこれを提 供し
たことであるが ,か か る方法 によらなければ,すなわち実 際に 分岐方式を
用 い て サ ー ビ ス を 提 供 す る 段階 に な っ て か ら ニ ュ ー フ ァ ミ リ ー タ イ プ を
導 入することとするのでは,被審人のいうインセンティブ が失 われるとす
る 合理的 な理由 を見い だすことはできない 。
したがって,こ の点の 被審人 の主張 は理由 が な い。
(2) ま た,被審人は, ニューファミリータイプ の導 入 及び値 下げは ,FTT
H サービスのユーザー 料金を 低下さ せ,ブロードバンドサ ー ビ ス市場 にお
け る競争 を促進 させるものであって, 消費者 の利益 に合致 するものであっ
たから, 仮に,形式的に 独占禁止法上の排除行為 に該当 するとしても ,被
審 人の行 為は, 公共の 利益に 反するものではない ,又は, 違 法 性が阻 却さ
れ る旨も 主張す る。
しかし,被審人が 戸建て 住宅向 けFTTHサービス のユーザー 料金を 低
下 させた にせよ, そのこと自体 が同 市 場における新規参入 を困 難にしたの
であって, このように市 場が新規参入者に対 し閉鎖 されている 状況が 公共
の 利益に 反しないとはいえないことは明らかである。すなわち ,既存事業
者 間で価格競争 が行われるこ とは ,基本的に ,消費者の 利益に 合致 するが ,
新 規 参 入 を 阻 止 す る 行 為 が な け れ ば 新 規 参 入 者 との 間 で 更 な る 価 格 競 争
や サービス競争 が行われる可能性が あり,これによって消費者 の利益 が増
大 す る こ と に か ん が み れ ば ,本 件 に お い て 値 下 げが 行 わ れ た こ と の み を
も っ て 公 共 の 利 益 に 反 し な い又 は 違 法 性 が 阻 却 さ れ る と は い え な い と い
うべきである。
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したがって,同 様に, 被審人 の主張 は採用 できない。
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争点6について
(1) 以 上に よ り,被審人が,FTTHサービス の提供 において,平 成14 年
6 月1日以降行 った別 紙1記 載の行 為は,被審人の 光ファイバ 設備に 接続
し て 戸 建 て 住 宅 向 け F T T Hサ ー ビ ス を 提 供 し よ う と す る 事 業 者 の 事 業
活 動を排 除することにより,東日本地区における戸 建て住宅向 けFTTH
サービス の 取引分野 に お け る競 争 を実質的 に 制限 して い たものであって ,
これは, 独占禁止法第 2条第 5項に 規定す る私的独占に 該当し ,同法 第3
条 の規定 に違反 するも のであると認 められるが,被審人は 独占禁止法 と電
気通信事業法の 抵触について 種々主 張するので ,こ れ に つ い て判 断 す る 。
(2) 被審人は ,電気通信事業法が, 独占禁止法と 同様の 公正な 競争 の促進 を
目 的 と し て 独 占 禁 止 法 よ り 詳細 な 規 制 を 置 いており , 接 続 料 金 及 び ユ ー
ザ ー料金 に関し て独占禁止法 に上乗 せした 規制 を行うものであるので,こ
の 規制に 従う行 為への 独占禁止法の 適用は 排除 される 旨主張 し,古城教授
の 意見書 (審第 177 号証) を提出 する。
およそ事業者の 事業活動を規 制する 各法律 の規 定は,相互 に矛 盾す る こ
となく運 用されるべきであることは 論を待 たず, これは, それぞれ目 的を
共 通に す る法律 であ っ ても異 にする 法律であっても異 な る と こ ろ は な い 。
確 かに, 接続料金については, 電気通信事業 を所管 する専 門 官 庁と し て
の 総務省 が,同 事 業における競 争の促 進や利用者の 利益の 観点 から考 察を
行 い,か つ,パブリックコメントや情報通信審議会 による 審 議 等の手 続を
経 た上で ,認 可 等を与 えていることからすれば,当該認可 の対 象となった
料金水準 は,特 段の事 情が な い限り ,電気通信事業法上 は,問 題がないも
のといえる。
しかし, ある行 為が一 方の法 律に違 反しないというだけ で,当 該行為 に
対 し,明 文の適用除外規定がない限 り,他方 の法律 の適用 それ 自体が 排除
されることはな く,被審人の 主張は 採用で き な い。
(3) 次 に,被審人は, 電気通信事業者が, 電気通信事業法に基 づ い て認可 さ
れ た上, 変更認可申請命令が 出されていない接続料金や, 同法 に基づいて
届 出がなされ,料金変更命令が 出されていないユーザー料 金に 従って 事業
を 行っている場 合に, これを 独占禁止法違反とすることは,一 方の法 律に
従 えば他 方の法 律に違 反するという 二律背反の 状態となり,許 されないと
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も 主張し ,白石教授の 意見書 (審第 121 号証 )を提 出する 。
しかし, 本件で は,上記 二律背反の 関係にあるとは認められない。本 件
は, 被 審 人がニューファミリータイプについて,電気通信事業法上認可さ
れ た分岐方式の 接続料金の下 で分岐方式で サービスを 提供し, 同法に 基づ
き 届け出 たユーザー料 金を収 受することを 問題 にするものではなく, 現に ,
平 成 1 6 年 4 月 以 降 の 被 審 人の そ の よ う な 行 為 は違 反 行 為 と し て い な い
のである 。
被審人のいう「 認可さ れ,か つ,変更認可申請命令 が出されていない 接
続料金」と「 届出がなされ,か つ,料金 変更命令が出 されていないユーザー
料 金」は, 電気通信事業法に規 定する 手続を 経た電気通信事業法上適法な
料 金のことを指 していると思 われる が,それらの料 金は電気通信事業法上
適 法であるというにとどまり, 被審人 において接続料金の 変更 認可申 請や
ユーザー 料金の 変更届出を行 うことができないというものではない。 (査
第 45号 証,査 第50 号証, 査第5 1号証 ,査第 53号 証)( 総務大 臣に
おいて変更命令を行っていないことが独占禁止法上 も適法であるとの判
断 に基づくものでないことはもちろんである。 )
したがって,被審人の 主張は 採用できない 。
(4) ま た,被審人は, 独占禁止法 の適用 が排除 されていないとしても,電 気
通信事業法の規 制に従 った行 為は,競 争の実質的制限に該 当することはな
いとも主 張する 。
しかし, 本件で 問題としたのは,被 審 人が新 たにニューファミリータイ
プ を 導 入 す る と し て 分 岐 方 式の 接 続 料 金 の 認 可 を受 け , 分 岐 方 式 の ユ ー
ザ ー料金 を5, 800 円(そ の後4 ,5 0 0円) と設定 し,実 際には 芯線
直結方式 を用い てサービスを 提供し たことである。
ユーザー 料金について ,実態 に沿っ て,芯線直結方式で 5,800円 と
の 届出を 行った 場合であれば 格別,被審人自 ら届出 とは異 なる 設備構成で
提 供しているのであるから,電気通信事業法 による 規制に お け る事業所管
官 庁の判 断を尊 重すべきであるとの 主張は ,そ の前提 を欠く 。
な お,被審人も 審査官 も,大阪 バス協 会事件審決の 趣旨を 援用 してそれ
ぞれの主 張をするが, 同事件 は業法 (道路運送法) 上許容 されていない運
賃 の範囲 における競争制限行為を問 題にするものであって,本 件とは 事案
を 異に す る。
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(5) さらに, 被審人 は,公正取引委員会 の「行政指導に 関する 独占禁止法上
の 考え方 」を援 用し,法 令に具体的に 規定がある事業所管官庁 による 認可
等 に従っ た事 業 者の行 為は独占禁止法違反 とはならないと主 張する。 しか
し, 電気通信事業法上の 取扱い が本件 違反行為の認 定を左 右しないことは
前 述のとおりであって ,被 審 人の主 張は採 用できない 。
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排 除 措 置 の 必 要 性に つ い て
(1) 前 記 第 1 の 7 (3)に認 定 し た と お り ,本 件 排除 行 為 は 平 成1 6 年 3 月 3
1 日 ま で 存 在 し て い た が, そ れ 以 降 は , 被 審 人 は 芯 線 直 結 方 式 で ニ ュ ー
フ ァ ミ リ ー タ イ プ を 新 たに 提 供 す る こ と が な く な っ て い る から , こ れ に
よ り 本 件 違 反 行 為 は 終 了し た も の と い う こ と が で き る 。 そして , 現 時 点
に お い て , 排 除 措 置 を 命ず る こ と に よ っ て排 除 す べ き 本 件 違 反 行 為 の 残
存 効 果 が 存 在 す る と は 認め ら れ な い 。 ま た, 被 審 人 は , 芯 線 直 結 方 式 で
提 供 し た ニ ュ ー フ ァ ミ リ ー タ イ プ についても 順 次 分 岐 方 式 に変 更 す る こ
と と し て い る 上 , 前 記 第1 の 1 0 に 認 定 した 事 実 に よ れ ば ,本 件 行 為 期
間 後 に は , 新 規 事 業 者 が参 入 し や す い 接 続 形 態 等 が 導 入 さ れ, 実 際 に 戸
建 て 住 宅 向 け F T T H サ ー ビ ス 市 場 に 新 規事 業 者 が 参 入 し て い る こ と な
ど ,同 サ ー ビ ス市 場 に お け る変 化 が み ら れ る こ と に か ん が み る と,今 後 ,
被 審 人 が 本 件 排 除 行 為 と同 様 の 行 為 を 行 うこ と を 防 止 す る た め の 措 置 を
採 る 必 要 があるとは 認 められない 。
(2) し た が っ て , 本 件 に つ い て は, 独 占 禁 止 法 第 3 条の 規 定 に 違 反 す る 行
為 が あ っ た が , 同 法 第 54 条 第 2 項 に 規 定す る 「 特 に 必 要 が あ る と 認 め
る と き 」 に 該 当 する 事 情 が あ る と は い え な い も の と い う べ き で あ る 。
第5
法令の適用
以 上に判 断したとおり ,被 審 人の別 紙1記 載の行 為は,独占禁止法第 2条
第 5項に 規定す る私的独占に 該当し, 同法第 3条の 規定に 違反 するものであ
る が ,平 成 1 6 年3 月 3 1 日 を も っ て 既 に な く な っ て い る も の と 認 め ら れ ,
同 法 第 5 4 条 第 2 項 に規 定 す る 「 特 に必 要 が あ る と 認め る と き 」 に 該当 し
な い の で , 被 審 人 に 対し , 同 条 第 3 項の 規 定 に よ り ,主 文 の と お り 審決 す
る こ と が 相 当 である 。
平 成 1 9 年 1 月 5日
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公正取引委員会事務総局
審判長審判官
鵜
瀞
恵
子
審判官
高
橋
省
三
審 判 官 鈴 木 千 帆 は, 差 し 支 え の た め , 署名押印 で き な い。
審判長審判官
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鵜
瀞
恵
子
【 別紙1 】
被審人 は,平成 14年 6月1 日以降, 戸建て 住宅向 けのF T T Hサービスと
し て新た に「 ニューファミリータイプ 」と称 するサ ービス を提 供する に当た り,
被審人の 電話局 から加入者宅 までの 加入者光ファイバ につい て,1芯の 光ファ
イ バを複数人で 使用す る分岐方式( 以下「 分岐方式」と い う。) を用い るとし
て ,ニューファミリータイプのFTTH サービスの提 供に用 いる 設備と の接続
に 係る接続料金 の認可 を受け るとともに ,当該 サービスのユ ー ザ ー料金 の届出
を 行っ た が,実際 には分岐方式 を用い ず,電 話 局から 加入者 宅までの加入者光
ファイバ につい て1芯 を1人 で使用 する方 式(以 下「芯線直結方式」と い う。)
を 用いて 当該サービス を提供 した 。被 審 人は ,当該 サービスの ユーザー料金 を,
当初月額 5,8 0 0円, 平成1 5年4 月1日以降は 月額4, 5 0 0円と 設定し
た が,いずれも,他 の電気通信事業者が 被審人 の光ファイバ 設備 に芯線直結方
式 で 接 続 し て FTTH サ ー ビ ス を 提供 す る 際 に 必要 と な る 接続料金 を 下 回 る
ものであった。
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【 別紙2 】
北海道 ,青 森 県,岩手県, 宮城県, 秋田県 ,山 形 県,福島県, 茨城県 ,栃木
県 ,群 馬 県,埼玉県,千葉県, 東京都 ,神奈川県, 新潟県, 山梨県及び 長野県
並 び に 日 本 電 信 電 話 株 式 会 社 等 に 関す る 法 律 第 2条 第 3 項 第 1 号の 区 域 を 定
め る省令( 平成1 1年郵政省令第2 4号)に 定められた静岡県, 富山県 及び岐
阜 県の一 部の区 域
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