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̶供給の役割を担う̶ - Mitsubishi Corporation

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̶供給の役割を担う̶ - Mitsubishi Corporation
4
Mitsubishi Corporation
Annual Report 2009
̶ 供給の役割を担う̶
Sup
当社は長年にわたって、金属、エネルギー、食料などの資源を、日本のみならず世界中に安
定供給しています 。資源を持つ国から持たざる国へ 、必要不可欠な資源を安定的に橋渡し
することで 、グロー バル経済の発展、そして人々の豊かな生活の実現に貢献してきました 。
Mitsubishi Corporation
Annual Report 2009
ply
今後も中長期的には新興国のけん引により、グロー バル経済は継続して成長することが予
想され、当社が果たすべき役割もますます重要性を増していきます 。ここでは資源の安定
供給に関して当社が果たしてきた役割と挑戦につ い てご紹介します 。
5
6
Mitsubishi Corporation Annual Report 2009
Case 1
原料炭
Our Business
未知の地オーストラリアへ
1960 年代半ば、日本はまさに高度成長期の真只中にありまし
た。
「鉄は国家なり」
という言 葉 のとおり 、製 鉄 会 社が次々 に
新しい製鉄所を建設していたため、製鉄に必要不可欠とされる
コークスを作るための “原料炭”の需給は逼迫していました。当社
日本のコークス用石炭輸入量推移
(単位:百万トン)
70
60
は、この原料炭に対する製鉄会社の需要に応えるため、1968 年
にMDP( Mitsubishi Development Pty Ltd )
を設立しました。資源
開発面で、当時の日本ではまだ未知の地であったオーストラリア
50
40
の東北部クイーンズランド州ボーエン炭田において、M DPを通
じ、パートナーと協力して本格的な原料炭ビジネスに参画すること
になりました。
30
20
MDPが参画したボーエン炭田は、石炭層が地表に近く掘削コス
トが低いこと、石炭の品位が高かったこと、そして近隣に積出港を
整備できたことなどを理由に、安定的に価格競争力のある原料炭
を生産することが可能となり、順調に業績を伸ばしました。
10
0
1965
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005(年)
n オーストラリア n その他
(出典:財務省貿易統計)
Market Potential
世界へ高品位の原料炭を安定供給するために
当社の原料炭ビジネスが大きな転機を迎えたのは、2001 年の
ことです。原料炭の安定供給体制を強化するため、MDPは、当時
の当社の当期純利益を上回る1,000 億円という巨額を投じてボー
エン炭田の権益を買い増し、現BHP Billitonと50:50 の対等な立
世界の粗鋼生産量推移
(単位:億トン)
14
12
場にて B MAとして共同事業を開始しました。今や B MA は年間
5,000 万トン近くを世界約30カ国に輸出しています。また、BMA
が生産する高品位の強粘炭*の市場では、世界の海上貿易量の約
10
8
1/3 のシェアを誇る世界No.1プレーヤーとなっています。すなわ
ち当社に期待される安定供給の役割は、日本だけでなく世界に広
がったのです。
6
4
世界の粗鋼生産量は、主に中国の経済成長を背景とした鉄鋼需
要の伸びにけん引され、過去5 年間で約4 割も増加しました。リー
マンショック以降の世界経済の急速な悪化により、インフラ事業や
自動車産業などが低迷、鉄鋼需要も一時的に減少していますが、
中長期的には、中国に加えインド・ブラジルなどの新興国が成長す
2
0
1970
1975
1980
1985
n 日本 n 中国 n その他
(出典:World Steel Association )
1990
1995
2000
2005(年)
Mitsubishi Corporation
Annual Report 2009
ることで、インフラ向けを中心に需要が増加していくものと思わ
れます。
当社では、2008 年にボーエン炭田の権益を拡張するなど、世
界の鉄鋼需要に十分応えられるよう、新規の炭鉱開発および既存
の権益の拡張、そして輸送に必要となる港湾の拡張プロジェクト
に取り組んでいます。今後も、世界に広がる顧客のために安定供
給のご期待に応えていくつもりです。
* 強粘炭:製鉄の際に必要となるコークスの原料となる原料炭の中でも、特に品位の良いものが強粘
炭と呼ばれる。
BMA炭鉱
ブリスベン
シドニー
パース
メルボルン
BMAが保有する炭鉱の様子
Case 2
LNG
Our Business
LNGビジネスの草分け
日本は、資源国から原油をはじめとする
少するので、遠隔地からタンカーなどで大
スに着手しました。これは、当時の当社の
化石燃料を輸入することで、産業を発展さ
量輸送することが可能となります。資源を
資本金を超える450 億円もの投資で、非
せてきました。
多く持たない日本にとっては、まさに最適
常に挑戦的な試みと言えるものでした。
当社は、資源供給ルートの多様化、さら
なエネルギー の一つなのですが、当時、
LNG は、1973 年に第四次中東戦争勃
には代替エネルギーの開拓というニーズ
LNGを含む天然ガスは、日本の一次エネ
発に起因する第一次オイルショックがあっ
に応え、1969 年にアラスカから日本初と
ルギー総供給量のわずか数 %にすぎませ
たことで、新たなエネルギー源として、一
なるLNG 輸入を実現させました。LNGは
んでした。当社は、この LNGに着目し、
気に注目されるようになりました。
天然ガスをマイナス162 度まで冷却し液
1972 年にはShellとともにブルネイLNG
化したものです。体積が 600 分の 1 に減
プロジェクトに参画し、資源投資型ビジネ
7
8
Mitsubishi Corporation Annual Report 2009
Market Potential
より重要性を増す LNG の供給
当社はその後も、マレーシア、オーストラリア、オマーン、サハ
リン、インドネシアと順調に権益を取得し、世界最大の LN G 輸入
資本参加するなど、LNG の需給調整や供給体制の拡充に努めて
います。
国である日本の輸入量の約 4 割を取り扱うなど、電力や都市ガス
の安定供給に貢献しています。供給先も日本だけではなく韓国、
台湾、欧州へと広がっています。
LNGは通常の化石燃料に比べ地球温暖化の原因となるCO2や、酸
性雨の原因となる窒素酸化物の排出量が少ないだけでなく、硫黄酸
日本の LNG 輸入量の推移
(単位:万トン)
7,000
化物については全く排出しないため、環境保全の観点から、次世代
6,000
を担うエネルギーとして、世界中で積極的に導入が進められていま
5,000
す。また、中国・インドなどの新興市場の台頭により、今後10 年間で
4,000
世界におけるLNGの海上貿易量は倍増するとも言われています。
3,000
2,000
当社では、こうした需要の増大に応えるべく、サハリンⅡなどの
1,000
LNG権益への投資だけでなく、輸送船舶や受け入れ基地の確保
0
も行っています。また、メキシコ湾岸受入基地の使用権の獲得に
続き、2008 年には米国のマーケティング会社 CIMA Energy へ
71.3
76.3
81.3
86.3
91.3
96.3
01.3
06.3
08.3
n 米国 n ブルネイ n アラブ首長国連邦 n インドネシア
n マレーシア n オーストラリア n カタール n オマーン n その他
出典:日本貿易月表
Raising Our Presence
リーマンショック以後の世界的な景気減速傾向を受けて、当社では、当面は財務体質の維持を優先し、投資計画を抑制しています。
その一方で、市場の好転期を見極めつつ、全世界の顧客に対して資源を安定供給するための、着実な施策を打っていきます。
〈金属・エネルギー資源ビジネスの基本政策〉
取り扱い資源と顧客の多様化
当社では、当社が強みを持つ主要な金
具体的な内 容については、P.18 以 降 の
供給先については、今後の需要増大が
属・エネルギー資源において、2030 年に
“Alternatives”にて詳しくご説明します)
。
見込まれるアジア地域各国における当社
向けた中期の需要を、さまざまな視点か
当社では、調達先と供給先の多様化が
プレゼンスをさらに高めます。具体的には
ら予測した上で、2015 年時点でのあるべ
ますます重要になると考えています。
製鉄会社、電力・ガス会社など、大口需要
きポートフォリオを検討しています。この
調達先については 、オー ストラリア 、
家との良好な関係を作り上げ、その維持・
ポートフォリオでは、地球温暖化問題への
インドネシア、マレーシア、ブルネイなど、
対処も考慮し、低炭素社会実現に資する
すでに当社が強みを有する地域に加え、オ
新エネルギー の比率も高める考えです。
マーン、カタール、イラクなどの中東諸
その計画の実現に必要となる戦略を策定、
国、ブラジル、ベネズエラ、チリなどの南
金属資源分野では、今まで取り組んでき
実行し、引き続き、資源の安定供給ニーズ
米諸国、アフリカ諸国などへの取り組みを
た石炭、鉄鉱石、銅、アルミニウムなどに
に応えていく考えです
(新エネルギー の
強化します。
加え、ウランやプラチナ・パラジウム・リチ
強化を追求していきます。
取扱資源の種類についても、さらに多
様性が広がると考えています。
Mitsubishi Corporation
金属資源
■石炭
■鉄鉱石
■ステンレス原料
■銅
■アルミニウム
■ウラン
○ 既存プロジェクト
☆ 探査・探鉱・開発プロジェクト
Annual Report 2009
鉄鉱石探鉱
(カナダ)
ウラン探査
(カナダ)
大平洋金属
(日本)
IOC
(カナダ)
ボーキサイト探鉱
(カンボジア)
ボーキサイト探鉱
(ギニア) 鉄鉱石探鉱
(ギニア)
Mozal
(モザンビーク)
Asahan
(インドネシア)
Weda Bay
(インドネシア)
BMA
(オーストラリア)
Clermont
(オーストラリア)
Kintyre
Gresik
(オーストラリア)
(インドネシア)
Crossland Resources
(オーストラリア)
Hernic
(南アフリカ)
Escondida
(チリ)
CMH
(チリ)
Boyne
(オーストラリア)
Hlsmelt
(オーストラリア)
Albras/Alunorte
(ブラジル)
Antamina
(ペルー)
Los Pelambres
(チリ)
Warkworth/Ulan/Coal & Allied
(オーストラリア)
ウムなどの希少金属資源を今後の重点的
ベッドメタン)
、メタンハイドレートなどの
フラの整備、産業振興への寄与、教育・医
な強化対象とします。また海底熱水鉱床に
非在来型の化石燃料が注目を集めていま
療の高度化、スポーツ・文化活動の支援な
ついても、長期的な観点から研究・開発に
す。当社ではこれらの非在来型の化石燃
ど、当社の総合力を活用した複合的・多面
取り組んでいきます。
料についても、積極的な取り組みを行い
的な取り組みを推進していきます。
エネルギー資源分野では、在来型の燃
ます。
料は有限であり、また地政学的なリスクも
こうした事業戦略の推進には、資源国と
存在するために、オイルサンド、オイル
の関係強化が重要となります。当社では、
シェール、オリノコタール、CBM(コール
資源国の「国造り」に貢献すべく、社会イン
エネルギー資源
英領北海
開発・生産
(原油・天然ガス)
チュニジア
開発
(天然ガス)
ガボン
探鉱・開発・生産
(原油)
リビア
探鉱
(原油)
アンゴラ
探鉱・開発・生産
(原油)
● 石油・ガス探鉱開発事業
● LNG事業
アラスカLNG
カザフスタン
探鉱・開発
(原油)
サハリンLNG
米国メキシコ湾
探鉱・開発・生産
(原油・天然ガス)
オマーンLNG
マレーシアLNG
アルンLNG
オーストラリアLNG
MEDCOへの出資
ブルネイLNG
ドンギ・スノロLNG
タングーLNG
カンゲアン
探鉱・開発・生産
(原油・天然ガス)
9
10
Mitsubishi Corporation Annual Report 2009
Case 3
穀物資源
Our Business
穀物調達体制の拡充
当社では、戦後に食料輸入に携わるよ
当社が穀物事業で最優先していること
ら、内陸穀倉地帯での穀物集荷事業に取り
うになり、以降長年にわたり同事業を拡大
の一つは、安定供給の確保、つまり、顧客
組んできました。その中心となってきた
させてきました 。一 方 で 、国 内 の 食 料
が望む品質の商品を、必要な時期に競争
のが、穀物集荷販売事業を展開する子会
バリューチェーンの構築に努め、数多くの
力のある価格で安定的に届けることです。
社・アグレックスです。2007 年には、同社
日本の食品メーカー の事業拡大に貢献、
この役割を果たすためには、今後も穀物
を通じて、アラバマ州モービルで穀物輸出
消費者に対する安全な食品の供給を支援
供給地として有望な北米、南米、オースト
施設を運営する穀物集荷販売会社・FGDI
してきました。食料事業における取扱商品
ラリアにおける集荷調達体制の強化が不
への追加出資を実行し、一層強固な穀物
は多岐にわたり、当社の主要穀物(とうも
可欠です。
調達体制を確立しています。
ろこし、小麦、大豆など)
の取扱高は、年間
当社では、世界最大の穀物生産・輸出国
1,000 万トン前後と世界有数の規模です。
である米国において、1970 年代初頭か
Market Potential
アジアでの需要拡大に対応
現在、中国、インドなどの新興国では経
ことで穀物消費量が増加し、食料需要には
連会社であるCOFCOグループの食糧関
済発展と人口増加が加速しています。米
人口増を超える増加が起こると言われて
連事業を統括するチャイナ・アグリに出
農務省では、今後 10 年間で世界の人口は
います。
資するなど、同グループとの連携を強化し
毎年平均 1.1% ずつ、一人当たりG DP は
当社では、今後、需要の中心地になると
ました。また、同様に需要が伸びている東
3.2%ずつ増え、また、とうもろこし、小麦、
見られるアジアにおいて、拡大する需要に
南アジア地域では、シンガポールに設立し
大豆、米の 4 大穀物の消費量は、アジアの
安定的に応えるための取り組みも進めて
たアグレックス・アジアを核に、拡大する需
新興国を中心に、現在よりも10% 以上増
います。需要の基盤が拡大することで、供
要への対応を図っています。
えると予想しています。生活向上に伴うカ
給国に対する購買力が向上し、結果として
当社では、穀物生産事業への参画も視野
ロリー摂取量の増加、特に肉類の摂取が
さらに安定的な供給が可能となります。市
に入れながら、調達体制を強化することで、
増加傾向にありますが、肉類生産が増える
場拡大の著しい中国では、最大の食料関
穀物の安定供給に貢献していく考えです。
中国における大豆輸入量の推移
(単位:百万トン)
60
50
40
30
20
10
0
(穀物年度*)95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
* 当該年の 9 月から翌年の 8 月までを示します
(例 96…1996 年 9 月~ 1997 年 8 月)
。
出典:米国農務省
11
12
13
14
見通し
15
16
17
18
Mitsubishi Corporation
Annual Report 2009
Raising Our Presence
日本および今後需要拡大が見込まれる中国・東南アジアの穀物市場を対象とし、北米・南米・オーストラリアを中心とした生産国を起点
とするバリューチェーンを強化することで、引き続き食料の安定調達・供給に努めます。
〈食料資源ビジネスの基本政策〉
バリューチェーンをより上流へと拡大
世界的な人口・所得の急増に伴う需要拡大、投機資金の流入に
拡充することで、バリューチェーンをさらに強化し、日本を含むア
よる食料価格の高騰、生産国による輸出規制などにより、食料資
ジア地域を中心とした、食料需要国への安定供給の確保に努めて
源の需給バランスを取ることが難しくなりつつあります。
います。
また、安定供給を図る上で、当社では、海外における穀物生産
こうした中で、世界の食料資源の供給において、中期的には、
物流インフラが整備されている北米・南米・オーストラリアを中心
事業への参画も視野に入れながら、調達体制と需要拡大の双方を
とした、従来の生産国がますますそのプレゼンスを高めていくと
強化することを進めていきます。
考えられます。当社では、そうした地域における集荷調達体制を
穀物事業の世界展開
三菱商事は、供給国から需要国へ、穀物を安定的に調達・供給する体制を強化しています。
日東富士製粉
製 粉 業 のほかグ
ループ会 社では
外食事業を積極
サイロ戦略
チャイナ・アグリ
輸 入 拠 点として、志 布 志
中国最大の食料会社
米国北西岸にお
(鹿児島県)
、水島(岡山県)
COFCO の食糧分野
ける穀物の積出
の持株会社。
拠点。
など国内6 社の穀物サイロ
KEC
アグレックス
カンザス州に本社、
会社に出資。
ポートランドに支店
を置く穀物集荷販
的に展開。
売会社。
マップ:穀物事業の世界展開
日本農産工業
配合飼料事業、食品(ヨー
ド卵などの鶏卵販売)
、ラ
イフテック
(ペットフード
など)
などを展開。
FGDI
アグレックス・アジア
日本食品化工
でんぷん・糖化品(異性化糖、
ブドウ糖など)の国内最大手
シンガポールに本社
を置く食糧販売会社。
アグレックスの子会社。
リべリナ
オーストラリアのブリスベンに
本社を置く穀物集荷販売会社。
アラバマ州で穀物輸出施
設を運営。
企業。
<消費地> 日本 中国 東南アジア など
穀物
<調達地> 米国 オーストラリア ブラジル アルゼンチン など
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