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大気汚染対策 - 東京都環境局

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大気汚染対策 - 東京都環境局
大気汚染対策
昭和 40 年代の工場のばい煙に代表される東京の大気汚染は、ボイラー等の運転管理の徹底や良質燃料の使用等、
各種固定発生源対策の実施によって大幅に改善されてきました。
その後、自動車交通量の増大やディーゼル車の排出ガスが大きな原因となり、二酸化窒素や浮遊粒子状物質の
環境基準適合率は低い状況が続いていました。このため、都は 2003(平成 15)年 10 月から国に先駆けてディー
ゼル車走行規制等を実施してきました。その結果、自動車排出ガス測定局における浮遊粒子状物質の年平均濃度
がここ 10 年で半減するなど、都内の大気環境は確実に改善しています。
しかし、光化学オキシダント対策や東京港沿岸地域の大気汚染対策などの課題が残されています。また、2009
(平成 21)年 9 月に新たに環境基準が設定された微小粒子状物質(PM2.5)については、多くの測定局で環境基準
を超過している状況にあります。
今後は、世界に誇るクリーンな都市環境を実現するため、これらの課題に対する取組を強化していきます。
また、建築物の解体工事等におけるアスベスト飛散防止対策の徹底など、都民の不安を解消する取組を進めていきます。
ると、二酸化窒素は、一般環境大気測定局(一般
東京の大気汚染の状況
局)44 局全局、自動車排出ガス特定局(自排局)
35 局中 34 局で達成しました。浮遊粒子状物質は、
大気を汚染し、人体に健康被害を及ぼすおそれ
一般局 47 局全局、自排局 35 局中 34 局で達成し
のある代表的な汚染物質には、二酸化窒素や浮遊
ました。微小粒子状物質は、大気汚染防止法に基づ
粒子状物質、微小粒子状物質、光化学オキシダン
く測定を 2011(平成 23)年度から開始しており、
ト、二酸化硫黄、一酸化炭素などがあげられます。
一般局 16 局中2局で達成し、自排局では 12 局全
これらの物質には、
行政上の目標として環境基準(参
局で非達成でした。
照⇒ P105)が定められています。都は大気汚染を
年平均濃度でみると、二酸化窒素はゆるやかな減
改善し、都民の健康と安全を守るために、これら物
少傾向です。浮遊粒子状物質は、ここ数年横ばいか減
質の環境基準達成に向けて取り組んできました。
少傾向で、一般局と自排局の差が小さくなっています。
都は、都内各所に設置した測定局で大気汚染の状
一酸化炭 素と二酸化硫黄はすべての測定局
況を 24 時間連続測定しています。
(参照⇒ P106)
で達成していますが、光化学オキシダントはすべて
の測定局で達成していません。
2011(平成 23)年度の環境基準の達成率をみ
● 2011(平成23)年度大気汚染物質の環境基準達成状況
物 質 名
環 境 基 準 の 達 成 状 況
二酸化窒素
(NO2)
一般局では 44 局の全局で環境基準を達成し、自排局では 35 局中 34 局で達成している。
浮遊粒子状物質
(SPM)
一般局では 47 局の全局で環境基準を達成し、自排局では 35 局中 34 局で達成している。
微小粒子状物質
(PM2.5)
一般局では 16 局中 2 局で環境基準を達成し、自排局では 12 局の全局で達成していない。(※)
光化学オキシダント
(Ox)
一般局 40 局の全測定局で環境基準を達成していない。
二酸化硫黄
(SO2)
全測定局で環境基準を達成している。
一酸化炭素
(CO)
全測定局で環境基準を達成している。
ベンゼン
全測定局で環境基準を達成している。
トリクロロエチレン
全測定局で環境基準を達成している。
テトラクロロエチレン
全測定局で環境基準を達成している。
ジクロロメタン
全測定局で環境基準を達成している。
※ PM 2.5 の 2011(平成 23)年度の達成状況は、2010(平成 2 2)年度に設置した 2 8 局(一般局 1 6 局、自排局 1 2 局)での結果であり、2 0 1 0(平成 22)
年度から 2012(平成 24)年度までの 3 ヵ年で測定体制を整えていく。
66
東京の環境 2012
地球温暖化
対策
●大気汚染物質の概況(年平均濃度)
二酸化窒素
(ppm)
廃棄物と
資源循環
浮遊粒子状物質
(mg/m2)
大気汚染
対策
自動車排出ガス測定局
自動車排出ガス測定局
化学物質
対策
一般環境大気測定局
一般環境大気測定局
年度
一酸化炭素
(ppm)
年度
(ppm)
自動車排出ガス測定局
光化学オキシダント
(ppm)
土壌・地下水
汚染対策
二酸化硫黄
騒音・振動・
悪臭対策
一般環境大気測定局
自動車排出ガス測定局
一般環境大気測定局
水環境
の保全
一般環境大気測定局
年度
年度
年度
緑の創出と
自然環境の
保全
環境アセス
メント
◆大気汚染モニタリングシステム ~東京の大気を監視する~
環境保安
都は、都内 82 か所に大気汚染の状況を測定
する装置を設置し、24 時間連続して測定して
環境教育
の推進
います。データ(1時間ごとの測定値)は、速
報値として環境局ホームページの大気汚染地図
情報で紹介しています。
情報提供と
連携の推進
二酸化窒素
(NO2)
-ppb
二酸化窒素(NO
-ppb
2)
(URL)http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/cgi-bin/bunpu1/p101.cgi
【測定地点】
【測定項目】
大気汚染物質の概況
■一般環境大気測定局(47 か所)
■環境基準設定項目(6 項目)
:二酸化窒素、
住宅地などの 一般的な地域の汚染状況を把
浮遊粒子状物質、光化学オキシダント、二酸化
握するために設置した測定局
硫黄、一酸化炭素、微小粒子状物質(※)
■自動車排出ガス測定局(35 か所)
主要道路沿道や交差点などの汚染状況を把握
するために設置した測定局
※微小粒子状物質の大気汚染防止法に基づく測定は、平成 23
年 4 月 1 日から開始されました。
■その他の項目(7 項目)
:一酸化窒素、
メタン、
非メタン炭化水素、風向、風速、温度、湿度
調査・
研究
広域的な
共通課題の
取組
資料編
67
大 気 汚 染対策
)から排出さ
分の 1 が自動車(建設機械等を含む。
自動車に起因する
大気汚染への対策
れています。この自動車からの排出量のうち、窒素
酸化物の約 9 割、粒子状物質のほとんどがディー
自動車は、都市の交通に大きな役割を担ってお
ゼル車によるものです。
り、私たちの生活を便利にしてきましたが、その
ディーゼル車排出ガスに含まれるPMは、発が
利便性と引き換えに大気汚染などをもたらしてい
ん性があることがわかってきており、呼吸器系疾
ます。
患、花粉症とも関係があるといわれています。都
自 動 車 の 排 出 ガ ス に よ る 大 気 汚 染 は、 古 い
民の健康を守るために、ディーゼル車排出ガス対
ディーゼル車に対する国の規制値の緩さ(厳しい
策は重要な位置付けとなっています。
規制値に適合した新しいディーゼル車の普及が進
まない。)、慢性的な渋滞の発生などにより、一向
に改善されず、長年にわたって対策が立ち遅れて
きました。
そこで、これまで都は、環境確保条例等に基づ
く古いディーゼル車の走行規制、低公害車の普及
促進、交通需要管理(TDM)の推進等の自動車
公害対策を展開するなど、大気汚染の改善に取り
組み、着実な成果をあげています。
▲ディーゼル排気微粒子
◎ディーゼル車排出ガス規制
都は、環境確保条例により、ディーゼル車排出
ガス規制を 2003(平成 15)年 10 月から実施
しています。
ディーゼル車排出ガス対策
対象となるディーゼル車は、バス、トラック及
びこれらをベースにしたコンクリートミキサー
自動車 7%
◎ディーゼル車排出ガス対策の重要性
車、清掃車、冷蔵冷凍車などの特種自動車(ただ
都内の窒素酸化物(NOX)や粒子状物質(PM)
工場・民生等
し、乗用車は除く。
)のうち、国の新短期規制に
タイヤ・ブレーキ摩擦
38%
の排出量をみると、NOX の約 5 割、PM の約 4
2,240
適合しないディーゼル車です。
トン/年
24%
●都内の窒素酸化物(NO x)と粒子状物質(PM)の排出量
2000(平成 12)年度
都内の NOx 排出量
建設機械等 17%
船舶・航空機 14%
2010(平成 22)年度
工場・民生等
31%
ディーゼル車
38%
43,730
トン/年
自動車43%
船舶・航空機 13%
建設機械等
ガソリン・LPG車
建設機械等 13%
5%
2000(平成 12)年度
都内の PM 排出量
2010(平成 22)年度
自動車 7%
工場・民生等
38%
タイヤ・ブレーキ摩擦
24%
2,240
トン/年
建設機械等
建設機械等 17%
船舶・航空機 14%
※ 自動車の排出量には始動時の影響分等は含まない。
※ 工場等による凝縮性ダスト (PM) を含む。
※ 自動車走行分による巻き上げ分 (PM) は含まない。
※ 二次生成粒子工場・民生等
(PM) は含まない。
※ 四捨五入により合計値が合わない場合がある。
31%
43,730
トン/年
68
船舶・航空機 13%
ディーゼル車
38%
自動車43%
規制開始以降、条例で定めた PM 排出基準に
などです。また、
適合しないディーゼル車は、都内を走行できませ
2004( 平 成 16)
んが、新車登録から7年間は、規制の適用が猶予
年 6 月 か ら、 首
されます。基準に適合しない車は、最新規制適合
都高速道路に設置
車や低公害車へ買い換えるか、知事が指定する粒
した固定カメラの
子状物質を減少させる装置(PM 減少装置)を装
活用により流入車
着する必要があります。
対策を強化し、さ
また、隣接する埼玉、千葉、神奈川県でも同様
の規制を実施しています。条例で定める PM 排
出基準は、2003(平成 15)年の規制開始以降、
地球温暖化
対策
廃棄物と
資源循環
▲路上における取締り
らに、都民からの通報を受け付ける黒煙ストップ
110 番を開設しています。
規制開始から 2012(平成 24)年 3 月末日ま
従前の国の新車に対する長期規制と同じ値を適用
でに、路上・物流拠点での取締りは、延べ 1,000
してきましたが、東京都、埼玉県では 2006(平
か所(トラックターミナル、市場等)で行い、ビ
成 18)年 4 月 1 日以降、2 段階規制として国の
デオカメラでの撮影による調査は、延べ 901 か
新短期規制と同じ値を適用しています。
◎違反ディーゼル車の取締り
大気汚染
対策
所で行いました。
(URL)http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/vehicle/air_pollution/diesel/
regulation/g-men.html
都では、自動車に関する各種規制の実効性を確
違反車両の都内走行が確認された場合、規制へ
保するため、環境確保条例により、東京都自動車
の迅速な対応を促した上で、行政処分として、車
公害監察員(通称:自動車 G メン)を設置し、基
両の運行責任者に対し、都内における運行禁止を
準に適合しない車に対する取締りを行っていま
命じます。運行禁止命令を受けた者が命令に従わ
す。取締りの実施内容は、路上・物流拠点等での
なかった場合には、違反者の公表、50 万円以下
車両検査、ビデオカメラによる走行車両の撮影
の罰金の罰則が適用されます。
化学物質
対策
土壌・地下水
汚染対策
騒音・振動・
悪臭対策
水環境
の保全
緑の創出と
自然環境の
保全
環境アセス
メント
環境保安
環境教育
の推進
情報提供と
連携の推進
調査・
研究
広域的な
共通課題の
取組
資料編
69
大 気 汚 染対策
◎PM減少装置の指定等
都は、2001(平成 13)年 6 月、東京都粒子
状物質減少装置指定要綱を定め、申請のあった
PM 減少装置について、専門家で構成される指定
審査会で審査を行い、指定を行ってきました。さ
らに、2002(平成 14)年 6 月からは、九都県
市共同の制度として、PM 減少装置の指定を行っ
カーを貼ることとしています。
◎ディーゼル車規制に関する支援制度
都は、厳しい経営環境にある中小企業の条例規
制への対応を促進するため、低公害車等の購入に
対する融資あっせん(P46 を参照)などの支援制
度を設けています。
ています。
2012(平成 24)年 3 月 31 日現在で、指定
している PM 減少装置は、ディーゼル微粒子除
去 装 置(DPF) が 20 社 35 型 式、 酸 化 触 媒 が
13 社 33 型式です。
PM 減少装置を装着している車両は、メーカー
が発行する装着証明書を携行するとともにステッ
●ディーゼル車規制による大気汚染の改善効果
都内の大気環境は、
浮遊粒子状物質(SPM)
において大きく改善が図られました。
これは、
2003(平成 15)年 10 月から九都県市で実
施しているディーゼル車規制の効果と考えら
れます。
2005( 平 成 17) 年 度 か ら 2010( 平 成
22)年度までの大気測定では、6 年連続で
すべての自動車排出ガス測定局で SPM の
環境基準を達成しました。2011(平成 23)
年度は達成率が 97.1%(35 局中 1 局非達成)
でしたが、年平均濃度は前年度と比べて改善
しています。(P67 を参照)
●自動車排出ガス測定局のSPMに係る環境基準達成割合
70
●排出ガス低減性能の「無効化機能」の発見
7
クローズアップ
国の最新排出ガス規制に適合するディーゼルトラックにおい
都は、調査結果を平成 2 3 年 6 月に発表し、国や自動車業界
て、排出ガス低減性能の「無効化機能」により、排出ガス規制
に対策を要請しました。これを受けて、自動車業界は 2 3 年 9
の試験では NOX 排出量は正常でありながら、実走行時等には
月に無効化機能を禁止する自主的なガイドラインを作成し、国
数倍も排出するものがあることを、東京都環境科学研究所の使
はディーゼル重量車を対象とする「無効化機能」禁止の制度化
用過程車調査で発見しました。
を進めています。
この「無効化機能」とは、排出ガス規制に適合させるために
東京都及び東京都環境科学研究所では、このような実質的に
動作する排出ガス低減装置・機構の一部又は全部を、実際の
大気環境の改善に貢献しない自動車の普及を防ぐため、今後も
走行状況においては機能しないようにすることで、欧米では
調査を続けてまいります。
地球温暖化
対策
廃棄物と
資源循環
大気汚染
対策
化学物質
対策
Defeat Device と呼ばれ、反社会的行為として法令で禁止し
ています。
土壌・地下水
汚染対策
騒音・振動・
悪臭対策
水環境
の保全
緑の創出と
自然環境の
保全
環境アセス
メント
今後の取組
●自動車排出ガス測定局の NO 2 に係る
環境基準達成割合
環境保安
97.1%
二酸化窒素(NO2)の環境基準の早期達成を目
指して、局地的汚染の改善を目指した取組など、
引き続き自動車排出ガス対策を進めるとともに、
環境教育
の推進
情報提供と
連携の推進
温室効果ガスの削減に向けた取組も強化していき
ます。
◎局地汚染
調査・
研究
都内の幹線道路沿道では、窒素酸化物(NOx)
、
浮遊粒子状物質(SPM)等による大気汚染が発
生していますが、道路が重層構造等の地域では汚
平成13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23年度
染物質が拡散しにくく、局地的に濃度が高い状態
策や土壌を用いた大気浄化実験施設の運転などを
になっています。
実施しています。また、
大田区松原橋交差点でも、
このうち、板橋区大和町交差点では、国土交通
国土交通省及び都が、土壌を用いた大気浄化実験
省、首都高速道路㈱及び都が、交差点角地をオー
施設を設置し、環境改善に向けた取組を行ってい
プンスペース化して大気拡散を促進させる改善対
ます。
広域的な
共通課題の
取組
資料編
71
大 気 汚 染対策
●自動車から排出される NOx 対策
都内では、ディーゼル車走行規制や自動車 NOx・PM 法の
このため、都は、環境確保条例を改正し、都内の荷主・旅行
対策地域内での車両保有規制により、環境負荷の小さな車への
業者等が環境負荷の大きな車を利用しないことに努める義務を
代替が進み、都内の大気環境は確実に改善し、浮遊粒子状物質
新たに規定して、2 0 0 9(平成 2 1)年 4 月から、環境負荷の
(SPM)の環境基準は平成 17 年度に初めて全測定局で達成し
大きな車を利用しないようにする取組を進めています。
ました。一方で、二酸化窒素(NO2)については未だ環境基準
これに基づき、都の事業において自動車を利用するときは、
非達成の自動車排出ガス特定局が残っています。この原因の一
環境負荷の大きな車を利用しない取組を進めるよう、契約の相
つに、自動車 NOx・PM 法の対策地域内に登録できない旧式
手方に指示するなどの取組を、率先して始めています。
の車が、対策地域外では引き続き所有が認められ、都内に流入
また、企業等においても、同様の取組が進んでいくよう、事
してくることがあります。
業者団体等へ働きかけを行っています。 固定発生源対策
ある固定発生源からの排出量の約2割を占めてい
都内の排出量の約8%
ます。また、
CO2 排出量は、
を占めていると推計されています。
ばい煙等の排出基準が定められている物質につ
これらの小規模燃焼機器については、
2009(平
いて、工場・事業場に対して法令に基づく届出の
成 21)年 3 月に、これまでの窒素酸化物の基準
指導や内容の審査を行うとともに、必要に応じて
に加えて、省エネ性能の基準を定め、これらの基
立入検査を実施し、規制指導を徹底しています。
準を満たした機器を「低 NOx・
(超)高効率小規
また、「ばい煙排出量調査」を毎年実施し、都
模燃焼機器」として認定しています。2011(平
内の全ばい煙発生施設(非常用を除く。
)の法令
成 23)年度には、51 機種を認定し、認定機器
の遵守状況等を把握するとともに、都内における
は累計 284 機種となりました。現在ある小規模
窒素酸化物(NOx)
、硫黄酸化物(SOx)
、ばい
燃焼機器がすべて「低 NOx・
(超)高効率小規
じんの総排出量等を推計しています。
模燃焼機器」に更新されると、年間約 50 万tの
また、東京港沿岸地域の大気汚染対策として、
CO2 を削減できると推定されています。
停泊中船舶の排出ガス対策への取組を進めていき
認定された機器には次の様なラベルが貼られて
ます。
います。
◎事業者等の自主的取組への支援
工場や事業場では、従来からの規制や指導に加
え、事業者や業界団体等が自主的に各種の取組を
進めています。その代表例として、光化学オキ
シダントの原因物質でもある揮発性有機化合物
(VOC)対策があります。 9
都では VOC を取り扱う事業者や業界団体等に
対し、排出量の低減や対策などについて自主的取
組を支援するなど、
排出量抑制策を進めています。
◎小規模燃焼機器対策
法律の規制対象より規模の小さいボイラー、冷
温水発生機、ガスヒートポンプなどの業務用小規
模燃焼機器から排出される窒素酸化物は、都内に
72
地球温暖化
対策
ばい煙排出量調査に基づくNOx排出量の推移
(t)
10,000
8,000
6,000
8,930
1,971
2,163
8,758
8,854
2,053
1,824
2,143
2,043
7,914
7,503
1,730
1,
854
1,686
1,
584
7,319
1,
772
1,
656
4,000
2,000
0
4,796
2005
(平成17)
年度
4,562
2006
(平成18)
年度
4,987
2007
(平成19)年度
4,499
2008
(平成20)年度
4,
065
3,
891
2009
(平成21)年度
2010
(平成22)年度
●大気環境中の微小粒子状物質(PM 2.5)対策の推進
粒子状物質のうち、粒径 2.5μm(マイクロメートル:
1μm は 1mm の 1000 分の1)以下の PM2.5 は、呼吸
時に気管を通り抜けて気管支や肺の奥まで達するため、
様々な健康影響が懸念されています。
そこで、国は 2009(平成 21)年 9 月、PM2.5 に関す
る環境基準を「1年平均値が 15μg/m3 以下であり、かつ、
1日平均値が 35μg/m3 以下であること」と定めました。
都は、平成 22 年度から 3 年間で、PM2.5 の測定機を都
が設置するすべての測定局に設置することとしています。
また、都内における PM2.5 削減の取組を進めるとともに、
近隣自治体と連携して対応することを検討しています。
島しょ
多摩
23区
クローズアップ
廃棄物と
資源循環
大気汚染
対策
化学物質
対策
8
土壌・地下水
汚染対策
騒音・振動・
悪臭対策
水環境
の保全
▲ PM2.5 の大きさの目安
緑の創出と
自然環境の
保全
環境アセス
メント
●都内大気中の PM2.5 濃度の経年変化
環境保安
環境教育
の推進
情報提供と
連携の推進
▲ PM2.5 採取装置
調査・
研究
広域的な
共通課題の
取組
※微小粒子状物質(PM2.5)の環境基準は平成 21 年 9 月に設定されましたが、都ではそれ以前
から PM2.5 の測定を行っていました。その年平均濃度はこの 10 年間で大幅な改善傾向にあ
ります。なお、この測定値は標準測定法によるものではなく、標準測定法による測定値に比
資料編
べて低くなる傾向にあります。
73
大 気 汚 染対策
◎アスベスト対策
都では、1987(昭和 62)年に、
基本方針を定め、
国に先駆けてアスベスト対策を講じてきました。
また、1994(平成 6)年には、建物の解体工事
底を図っています。
(URL)東京都アスベスト情報サイト
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/air/air_pollution/asbestos/index.
html
等におけるアスベストの飛散を防止するため、国
の法制定を待たず、
「東京都公害防止条例(現環
境確保条例)」に解体時の遵守事項等を規定して
きました。現在も、建築物の解体工事等による飛
散防止策を国及び区市等と連携し、推進していま
す。
また、アスベスト成形板(吹付け材などの飛散
性建材以外のもの)については、日常的な飛散の
危険性は少ないものの、解体時等における飛散の
実態や飛散防止対策があまり知られていない状況
です。そのため都では、解体時等における対策を
まとめたマニュアルを作成し、事業者への周知徹
▲(公財)東京都環境公社東京都環境科学研
究所によるアスベスト含有測定風景
●光化学スモッグ等の原因となるVOC(揮発性有機化合物)排出量削減対策
クローズアップ
9
◎対策の必要性
工場等に対するばい煙規制やディーゼル車排出ガス
●光化学オキシダントの生成など(イメージ)
規制等の実施により、多くの大気汚染物質の濃度が低
下傾向にあります。しかし、
光化学オキシダント(Ox)
については、いまだに環境基準が達成できず、依然と
して夏季に高濃度の光化学オキシダントが出現するこ
とがあります。
光 化 学 オ キ シ ダ ン ト は、 窒 素 酸 化 物(NOx) や
VOC(揮発性有機化合物)が太陽の紫外線を受けて
化学反応を起こして発生する汚染物質です。高濃度に
なると人や植物にも悪影響を与えます。
この原因物質である VOC とは、蒸発しやすく、大
気中で気体となる有機化合物の総称で、代表的な物質
はトルエン、キシレン、酢酸エチルなど、主なもので
約 200 種類あります。
窒素酸化物や VOC などの光化学オキシダントの原
VOC は、塗料、接着剤、インク等に溶剤として含まれるほか、金属部品の洗浄、
因物質は排出削減が進んだにもかかわらず、光化学オ
生活用品などからも排出されるほか、植物などの自然界からの排出もあります。
キシダント濃度がなかなか低減しない理由の一つとし
て、窒素酸化物の減少に対して VOC の削減が不十分
ということが考えられています。このため、VOC 排
出量のさらなる削減が課題となっています。
また、VOC は微小粒子状物質(PM2.5)を生成する
原因物質でもあり、
人体に有害な物質を含むことから、
環境リスク低減のためにも排出量の削減が必要です。
74
ドライクリーニングなど様々な分野で使用されています。また、
自動車やボイラー、
地球温暖化
対策
◎排出量削減対策
工場などからの VOC の排出抑制を目的として、
塗料等の優先使用や、ホームページ上での先進事例の
2004(平成 16)年 5 月に大気汚染防止法の一部が
紹介などを通じて、都民・事業者に対するPR や普及
改正され、大規模事業者を対象とする排出規制と事業
啓発を行っています。
大気汚染
対策
者の自主的取組による排出抑制の組合わせにより効果
的な削減を行っていくという新たな制度
(ベスト・ミッ
クス)が始まりました。
● VOC 総排出量の内訳
都内の VOC 排出量を見ると、塗装、印刷、クリー
移動発生源
21%
ニング、金属表面処理(めっき)などの蒸発系固定発
生源が排出総量の約 6 割を占め、その多くが中小規
模の事業者です。このため、自主的取組への技術支
援として、中小事業者を対象としたセミナーの開催、
効果的な VOC 排出抑制を行うための技術ガイドの配
布、事業所の実態に即した抑制策を助言するためのア
廃棄物と
資源循環
建設機械
1%
航空機・船舶1%
一般家庭
オフィス12%
自動車20%
ボイラー等4%
燃焼系
固定発生源4%
ドバイザーの派遣などを進めています。
処理装置などを設置できない屋外塗装では、発注者
(需要者)が工事の発注等に当たって VOC の発生に
配慮した製品を使用するという理解を得ることも重要
VOC総排出量
(2005年度)
130,000t/年
塗装29%
その他4%
クリーニング
7%
蒸発系固定
発生源63%
給油等
9%
印刷14%
化学物質
対策
土壌・地下水
汚染対策
騒音・振動・
悪臭対策
水環境
の保全
です。
また、2009(平成 21)年度の調査により、一般
家庭やオフィス等で消費される生活用品からも比較的
高い割合で排出されていることが分かりました。
緑の創出と
自然環境の
保全
都では、「東京都グリーン購入ガイド」や「東京都
環境物品等調達方針(公共工事)」に基づく低VOC
環境アセス
メント
◎アドバイザー派遣
アドバイザー派遣事業は、中小企業の VOC 排出量
環境保安
削減に向けた自主的な取組を支援するため、専門的知
識と経験を有する者が工場を訪問し、助言を行う都独
自の制度です。
環境教育
の推進
<アドバイザーの業務内容>
事業所を訪問し、現場での VOC の簡易測定を行い
ながら、VOC 使用実態に応じた効果的な対策につい
情報提供と
連携の推進
て、主に技術的な観点から助言を行います。
◎派遣対象
資本金3億円以下又は従業員数が 300 人以下で、
調査・
研究
VOC を取り扱う企業です。
◎助言内容
工程の改善、原材料の転換、回収・処理装置の設
置、融資制度の紹介等の助言を行います。
詳細は、環境局ホームページをご覧ください。
(URL)http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/air/air_pollution/voc/index.html
広域的な
共通課題の
取組
資料編
75
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