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(様式2) 普及に移す技術 [タイトル]水稲における被覆尿素肥料
(様式2) ○普及に移す技術 [タイトル]水稲における被覆尿素肥料(LPSS100)からの簡易な窒素溶出確認の方法 [要約]水稲栽培において、 (方法1)により被覆尿素肥料の溶出状態(半透明)を観察するこ とで、累積窒素溶出率 10%程度になる溶出開始時期(7月上旬頃まで)をその場で確認できる。 また、7月上旬以降(方法2)により被覆尿素肥料の乾燥重量を測定することで、出穂期こ ろまでの累積窒素溶出率を推定できる。 [キーワード]被覆尿素肥料、LPSS100、窒素、溶出 [担当場所・課]農林水産総合技術センター・農業研究所・土壌・環境保全課 [連絡先]電話 076-429-5248 [背景・ねらい] 本県の水稲栽培において、基肥に肥効調節型肥料を含む配合肥料が普及している。この中で配 合されている被覆尿素肥料(LPSS100)の肥料成分(窒素)の溶出は温度によって制御されている。 気温等の気象は年次によって変動することから被覆尿素肥料からの窒素の溶出も多少変動するた め、毎年、現場からどの程度溶出しているのかといった問い合わせ等がある。 この肥料からの窒素の溶出開始時期や生育ステージ毎にどの程度溶出しているのかは硫酸分解 後蒸留法で測定する方法等があるが、時間・労力がかかることから簡易に被覆尿素肥料からの窒 素の溶出開始時期・溶出量の確認方法を明らかにする。 [成果の内容・特徴] (方法1) 1.50mL 容プラスティック製の遠沈管に被覆尿素肥料(LPSS100)100 粒と水(容器の9分目)を添 加する。この遠沈管の底部が作土 5cm の深さになるように埋設し(図 1)、任意の時期に堀り 取り、半透明になった被覆尿素肥料を数える(図 2)。 2.被覆尿素肥料から窒素が溶出し始める頃(半透明になった粒数が 10 数粒程度まで)、被覆尿 素肥料が半透明になった粒数と累積窒素溶出率には高い正の相関がある(図 3)。 (方法2) 3.不織布の袋(お茶パック)に被覆尿素肥料を 5.00g 入れ、作土 5cm の深さに埋設したものを、 任意の時期に掘り取り、流水で洗浄し(肥料に付着した土、植物根などを取り除く)、軽く水分 をふき取り 105℃で 24 時間通風乾燥すると重量は一定になる(図 4)。 4.24 時間乾燥させた被覆尿素肥料の重量減少率と累積窒素溶出率の推移は、出穂期ころまで一 致する(図 5)。 [成果の活用面・留意点] 1.被覆尿素肥料(LPSS100)のみの結果である。 2.コシヒカリ栽培ほ場での結果である(肥料の埋設は 5/14) 。 3.1回に採取する試料は、複数個(n=3 以上)準備する。 4.不織布の素材は、ほ場に埋設しても分解しないものを使用する。 5.被覆尿素肥料を採取した後、なるべく早く洗浄し乾燥する(採取日には乾燥処理する)。 6.肥料成分の溶出が進むと肥料がつぶれやすくなるため、洗浄時は土塊や植物根を取り除く程 度とする。 (様式2) [ 具 体 的 データ] 水は 9 分目くらい 蓋 田面水 田面 肥料内部に水が浸入し粒全体が半透明 →1個 肥料内部に水が浸入し粒の半分が半透明 →0.5 個 約 5cm 特に変化がない。水が侵入し半透明の部分がごく一部 本体の大きさ 直径約 30mm 長さ約 120mm 半透明粒数=【粒全体が半透明になった粒数】+ 【(粒半分程度が半透明になった粒数)/2】 図1.50mL 容の遠沈管と 埋設状態 図2.肥料の溶出状態と半透明粒の数え方 20 調査毎の試料数と測定値 調査月日 6/16 6/23 6/30 7/7 7/14 7/24 8/4 8/18 試料数 (n) 3 5 5 10 10 10 12 12 半透明粒数(粒/100粒) 最小 最大 平均 0 2 1.0 2 3 2.8 2 8 5.2 7 15.5 10.6 24 37.5 30.1 62.5 78.5 70.2 79 91.5 85.9 100 100 100 累積窒素溶出率(%) 表1 →0 個 標準偏差 ケルダール分解による (-) 累積窒素溶出率(%)※ 1.0 1.9 0.4 2.6 2.4 4.9 2.7 11.5 3.8 23.9 5.0 40.7 3.8 56.8 0 72.2 y = 0.8184x + 2.555 R2 = 0.8352 15 10 5 0 0 5 10 15 半透明になった粒数(粒) 20 ※不織布に遅効性肥料5.00g入れ、土壌中に埋設したものを分析した結果 図3.半透明になった粒数と 累積窒素溶出率*の関係 *粒数調査を行った後、 ケルダール分解にて分析した 100 重量法 80 80 累積窒素溶出率(%) ○ 重量減少率(%) ▲ 重量減少率(%) 100 60 40 20 0 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 乾燥時間(時間) 図4.乾燥時間と重量減少率の関係 ケルダール窒素分析 60 40 20 0 6/11 6/25 7/9 7/23 8/6 8/20 9/3 9/17 調査日(月日) 図5.被覆尿素肥料の累積窒素溶出率と 重量減少率の関係 (図内のバーは標準偏差(n=3)。累積窒素溶出率は、ケルダール 窒素分析で肥料中の残存した窒素成分を分析し算出) [その他] 研究課題名:環境保全型施肥管理技術の開発 予 算 区 分:県単 研 究 機 関:2008 年度(2008~2009) 研究担当者:中田 均、小池 潤