商工会2006.3月号

今月のことば
【下流社会】
新語アナリスト
亀井 肇
【赤水晶】
マーケティング・アナリスト三浦展の書いた光文社新書
「赤いひし形」ともいう。白地にひし型の赤い枠をデザ
のタイトル。筆者独自のマーケティング調査のデータによ
インしたもので、国際的な紛争や災害地における宗教・政
って、「中の下」に属する若者たちの生態を分析したもの。
治的に中立を示すマーク。
ユニークなのは、女性の階層文化を消費行動から細かく記
述したことにある。
1970年代の高度経済成長時代には、国民のほとんどが
被災地における救急活動のマークとして、一般的には
「赤十字」マークが用いられてきた。1863年にアンリ・デ
ュナンが国際負傷軍人救護委員会（５人委員会）を結成し、
「中流の上」を目指しているといわれたが、バブル崩壊後
「赤十字」運動を起こしたことに由来する。ただ、イスラ
における「空白の10年」の後の長引く不況、少子高齢化社
ム諸国は、その十字の形がかつてイスラム諸国を攻撃した
会の中で、人生設計のあり方も多様化してきている。
十字軍を連想させるということから、「赤新月」をその救
三浦によると、「下流」とは旧来の「中流」の中でも、
若者層で顕在化してきた生活水準と労働意欲の低い人々で
ある。単に所得が低いことではなく、働く意欲、学ぶ意欲、
急活動のマークとして用いた。つまり、これまでは「赤十
字」と「赤新月」が国際的に認知されていた。
しかし、イスラエルの救急活動組織「ダビデの赤盾社」
消費意欲、総じて人生への意欲が低いと定義される。30歳
は半世紀以上にわたって、十字の形も新月の形もユダヤ教
前後の「団魂ジュニア」世代で、未婚、１人暮らしかパラ
の教えに反するものとして、そのどちらのマークを使用す
サイト、年収が200万円以下のフリーターというのが典型
ることも拒否していた。
的な姿。こうしたダラダラと生きている若者の下流化する
意識を三浦独自の手法で分析している。
下流の３種の神器は「3Ｐ」＝パソコン、ページャー
2005年12月、戦争犠牲者の保護や捕虜の取り扱いなどを
定めたジュネーブ条約締結国会議がジュネーブで始まり、
第３のマークとして「赤水晶」の追加承認が承認された。
（携帯電話）、プレステである。男性はオタク系（ひきこも
会議は全会一致の採択を目指したが、シリアの反発で投票
り）、女性は「歌って踊る」憂さ晴らしのラテン系カーニ
に持ち込まれた。イスラエルは、赤いひし形の中にダビデ
バル現象にはまっていくという。
のマークを入れて使用することにしている。
【LEGEND（レジェンド）】
【中高年俳優養成所】
最近、若い男性たちが街の公園や体育館などで盛んに行
普通の俳優養成所の場合は、若い世代を中心として応募
っている、３人対３人（スリーオンスリー）のストリート
することが多いが、明治座アカデミーの場合は、2003年11
バスケットの日本初のプロリーグ。
月に設立された際に青年部のほかに、40∼70歳の「ミドル
ちょっと広い公園やイベント広場などで観客を集めて、
シニア部」を作っている。
ヒップホップの音楽をバックに流しながら、機動的に行わ
このミドルシニア部は、高校時代に演劇部に入ったりし
れている。アメリカでは賞金トーナメントなども盛んに行
て若い時から俳優になりたいと思いながら、さまざまな理
われていて、それを日本に持ち込んだもの。
由で今日までその夢がかなわなかった人たちの間で、大き
優勝を争うのはチームではなく、個人というのが特徴。
試合ごとにチームのメンバーを変え、チーム成績をポイン
な反響を呼んだ。１期生には約600人の応募があり、書類
選考と実技試験で140人が入所している。
トにして個人に割り振られる。ランキング上位者が最後の
レッスンは週１回２時間で、期間は１年６ヵ月。講師の
グランプリ大会に集まって王座を決める。というのも、ス
演出家や俳優の指導で、時代劇の場合は襖（ふすま）の開
トリートバスケットの場合、会場の広さによって５人対５
け閉めから殺陣（たて）まで、演技実習を中心に学ぶ。入
人の場合もあるし、狭い場合は３人対３人で試合すること
学金は15万7,500円、レッスン料は月２万6,250円。
もあり、いつも一定人数というわけではない。きわめて個
明治座アカデミーはプロダクション部門を併設してお
人的な技術で得点することも多く、「見て楽しいプレー」
り、ミドルシニア部を修了すると専属として登録され、Ｃ
で観客を楽しませることに力点を置いている。
Ｍや舞台の仕事がある。また、最近の各テレビ局は、事件
バスケットリングに飛びつくようにシュートするダンク
シュートは通常の倍、相手選手の股の間を抜いたり、空中
でパスを受けてそのままダンクする「アリウーブ」などを
が起きるとワイドショーの中で再現ドラマを放送すること
が多く、そうした出演依頼も多くなっている。
若い時代に俳優を目指していたが、生活のためにその夢
決めた選手には、ボーナスポイントが与えられる。また、
を諦めた人が多く、定年後に入所して、ワイドショーの再
12点差がついた場合は、その時点で試合を終了する。
現ドラマなどでその夢を実現する場合が多い。
53
Shokokai ● 2006.3