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LHCプロジェクトの概要と現状 プロジェクトの概要と現状 プ ジェクト
LHCプロジェクトの概要と現状 LHC プロジェクトの概要と現状 プ ジェクトの概要と現状 2010年3月18日 近藤敬比古(KEK) 平成21年度高エネルギー加速器研究機構 技術研究会 1 §1. 標準理論とヒッグス粒子 §2. CERNとLHCの歴史 § 3. LHC加速器の概要 §4. アトラス実験装置の建設と日本の分担 §5 LHCの運転開始 §5. §6. 新し § 新しい発見の可能性 発見の可能性 §7. まとめ 2 「素」の数の変遷 1869メンデレーエフ の周期表 表 素の数=63 素 数 63 (1869年) ↓ 4 (1930年代) ↓ 12+4 (現在) ↓ 1 (year 2xxx ?) 1932 中性子の発見 素の数=4 (p,n,e,γ) 1995 top quarkの発見 素の数=12+4 現在の素粒子像:標準理論 4つの相互作用とそれらを伝播するゲージ粒子 4つの相互作用とそれらを伝播するゲ ジ粒子 強 強い力 力 電磁力 グルーオン 光 弱い力 力 W、Z粒子 標準理論の体系が確立した。 標準理論の体系が確立した 重 力 グラビトン 力が弱過ぎて が ぎ 高エネルギー の対象外だった が… ゲージ対称性を基本原理としている。 (ゲージ対称性:粒子の内部空間の位相を任意に変えても物理法則は変わらない。) 5 現在の素粒子像:標準理論 しかし 粒子 実際の観測量 (MeV/c2) ゲージ対称性の要求 up クォーク 0 top クォーク 1.5 ~ 3 171.3 ± 1.1 電子 0.510998910±0.000000013 0 グルーオン 0 (ただし理論予想) 0 光(γ) < 10-12 0 W 粒子 80,398±25 0 Z 粒子 91,187.6±2.1 0 0 質量の獲得にはヒッグス場の存在が必要 7 自発的対称性の破れの提唱 2008 南部陽 郎 南部陽一郎 ヒッグスメカニズムの提唱 R.ブラウト F. エングラー , P.ヒッグス ヒッグス場がW、Z粒子やク ォーク・レプトンの質量を作る。 1979 S.ワインバーグ, A.サラム, S.グラショー 8 自発的対称性の破れ T > TCurie T < TCurie 強磁性体 相転移 どの方向も等しい (回転対称) ある方向が自発的に選ばれ 最小エネルギーの方向がある。 相転移 宇宙 − V 2 V = 174 2 GeV ヒッグス場 ヒッグス場 真空状態 ビッグバン初期 現 在 9 クォークやレプトンはヒッグス場の抵抗を受けて遅くなり質量をもつ。 光はヒッグス場とは相互作用しないので光速で走り続ける(質量0) 光はヒッグス場とは相互作用しないので光速で走り続ける(質量0)。 質量の起源 10 現在の素粒子像:標準理論 ヒッグス粒子のみ未発見。この発見がLHC計画の主目的 12秒後までさかのぼる! LHCで10-12 12 §2 §2. CERNとLHCの歴史 13 セ ル CERN ン (欧州合同原子核研究機関) ( ) CERN 加盟国 設立: 1954年 加盟国: 欧州20カ国 スタッフ: 約2 500人 約2,500人 ユーザー数: 10,00人 年間予算: 1,000億円 GNPに比例して20カ国の 比例 カ国 加盟国が毎年度支払う CERN ジュネーブ市 WWW は1990にCERNで発明された。 14 アルプス山脈 レマン湖 ジュネ ブ市 ジュネーブ市 ジュネーブ空港 CERN LHCトンネル 周長 27km (山手線34km) 地下深さ~100m 15 LHC 加速器と主実験装置 超伝導マグネットの温 度を色で示している 度を色で示している。 全周が1.9K。 CMS トンネル周長 26.6 km 陽子・陽子衝突 7+7 TeV ルミノシティ(輝度) 1034 cm-2s-1 主ダイポール電磁石 8.33T, 1232 LHCb ALICE アトラス 16 LHC計画の歴史(1) 1970年代 LEP計画の立案段階でLHC構想を考慮した LEP計画の立案段階でLHC構想を考慮した。 R. Wilson 所長が超伝導マグネット開発を強力に進めた 1982-85 米国でSSC計画の検討が 1984.3 議 ローザンヌ会議:LHC計画の基本構想 1986 ルビア委員会でCERN将来計画としてLHC計画を推薦 1989 SSCの建設を開始(米国テキサス州ダラス近郊) 1990 アーヘン会議でLHC加速器の基本設計を確立 1992春 エビアン会議で多くの実験提案が出された 1993 10 1993.10 SSC建設中止 1993.12 SSC計画を進めていた研究者がLHC計画に合流 17 SSC計画 ・ 陽子エネルギー:20 + 20 = 40 TeV ・ルミノシティ(輝度): 1033cm-2s-1 ・周長87km, 長 建設コスト 5千億→1兆円 SSCリング周長は約 87.1 87 1 km k ・1984:DOEがSSC設計のためCDG設置 ・1989:SSCL設立。トンネル工事開始。超 ・1989:SSCL設立 トンネル工事開始 超 伝導マグネットの開発と生産。 ・日本チ ムはSDC実験に参加し、実験装 ・日本チームはSDC実験に参加し 実験装 置の設計や開発を行った。 1993年10月 SSCの建設中止が議会で決 ・1993年10月 定された。 米国テキサス州ダラス市の郊外 にトンネル建設が進められた。 18 19 Tevatron LHC SSC SSC LHC ヒッグス粒子生成頻度が10倍違う 重心系エネルギー LHCはルミノシティをSSCの 10倍に上げることでヒッグス 粒子の発見を可能にする 粒子の発見を可能にする。 20 Tevatron LHC SSC p p 衝突頻度 S 1 < N 10 , 000 , 000 , 000 ヒッグス粒子の生成頻度 従って、LHC実験の2大特徴は ・放射線レベルが非常に高い。 ・バックグランドが非常に多い。 重心系エネルギー 21 LHC実験の放射線レベル L = 1034 cm-2s-1で10年間の積算量 年間 積算 ピクセル 340kGy (34 MRad) シリコンストリップ 150kGy (15 MRad) 前方カロリメター 前方カロリメタ 23MGy (2.3 GRad) 1 Gy=1Joule/kg=100 Rad 全ての検出器や電子回路はラドハードであること! 22 Radiation Damage Test of Silicon Microstrip Detectors T. Kondo et al T al., Proc. Proc of the 1984 Summer Study on the Design and Utilization of SSC, June 23-July 13, 1984, Snowmass, Colorado, pp 612-614 より テストしたシリコン検出器:HPK製 30x30x0.2mm 30x30x0 2mm3, strip pitch 0.5 0 5 mm, mm ~10kΩ 10kΩ 照射前 β線 波高分布 照射前のβ線の波高分布 (T = 23oC) 800 GeV陽子で7~10 MRadを 照射した後のβ線の波高分布 射 後 線 波高 布 (T = 7oC ) この照射テストでシリコン検出器が放射線に強いことが初めてわかり強い希望を持てた!! 23 LHC計画の歴史(2) 1994.12 LHC計画の二段階建設案(10TeV→14TeV)を承認 1995.6 日本が建設協力(50億円)を提案 1996 1 1996.1 アトラスと CMS実験を理事会が承認 1996.3 インドの建設協力($12.5M) 1996.6 ロシアの建設協力(67MCHF 測定器込み) 1996 カナダの建設協力(Canadian$30M ) 1996.12 日本の第2次建設協力(38.5億円) 1996.12 LHCを2005年に14TeVで建設することを承認 を 年 建 す を 1997.12 アメリカの建設協力 (加速器に$200M、測定器に$331M) 1998.5 日本の第3次建設協力(50億円)。 2002 6 2002.6 建設費増大となどのためLHCの完成を2007年に変更 建設費増大となどのためLHCの完成を2007年に変更。 24 CERN理事会で 日本政府代表 文部大臣 与謝野馨 ダルマ CERN所長 Ch i Ll Chris Llewellyn ll S Smith ith 1995年6月23日 に与謝野馨文部大臣がCERN理事会で日本のLHC建設協力を 表明した。非加盟国の中では日本が最初であった。 CERNは加盟国に対して予算の fair f i -return t が求められており 加盟国以外の企業は入札に参加でき が求められており、加盟国以外の企業は入札に参加でき ない。この日本政府の資金協力で初めて日本企業がLHCの建設に参加できた。 25 LHCの総建設費 [1] LHC建設のための直接建設費 ・LHCの加速器・実験室 LHCの加速器 実験室 3680 MCHF ・実験装置 1240 MCHF ATLAS 540 MCHF CMS 500 MCHF ALICE 115 MCHF LHCb 75 MCHF TOTEM 7 MCHF 合 計 4920 MCHF CERNによる概算 る概算 約100億ドル トンネルやSPSな ど既存設備や人 件費を含まない。 (約 5000億円) [2] 非加盟国によるLHC加速器への建設協力 日本: 138.5 億円 米国: 200 M$ ロシア ロシア: 67 MCHF(ただし測定器込み) カナダ: 60 MCanada$ インド: 12 5 MCHF 12.5 26 §3 §3. LHC加速器の概要 27 CMS 5 LHC加速器リング 4 8つのセクターと直線部(約528m)からなる。 Point 1: ATLAS実験, low b Point 2: ALICE実験、ビーム入射1 Point 3: ビームコリメーター ビ ムコリメ タ Point 4: 高周波システム(加速部) Point 5: CMS実験, low b Point 6: ビームダンプ Point 7: ビームコリメーター Point 8: LHCb実験 ビーム入射2 LHCb実験, quadrupole dipole 6 7 3 2 ALICE 8 point 1 LHCb ATLAS Lattice, 1 cell 分の構造 28 超伝導マグネット 熱交換チューブ 超伝導コイル(古河電工) Cold-Mass 11.9 9K 2つのビームパイプ 非磁性カラー(新日鐵) 熱シールド(50-75K) 熱シ ( ) 鉄ヨーク (1.9K) ・技術開発はすべてCERNが行った。材料・部品もCERNが調達した。 ・Cold Cold Mass部分を欧州の3企業に技術移転して製造した(1999秋) Mass部分を欧州の3企業に技術移転して製造した(1999秋)。 Alstom-Jeumont(仏) ASG Superconductors(伊)Babcock Noell Nuclear(独) 29 超伝導ケーブル Polyimide tapes (カネカ) 15.1 mm (both) strand数 : 28(inner), 36(outer) ラザフォード型ケーブル 11850A @7T Strand inner, outer filament数: a e 数 8900, 6500本 filament径: 7 , 6 μm Cu/NiTi: 1.65 , 1.95 Diameter: 1.065, 0.825 mm outer layer inner layer 各strandをツイストしながら束ねて磁場擾乱に よる strand t d 間の eddy dd currentt lloop をキャンセル しクエンチ発生を抑える。 mm Video: Construction of LHC (magnetToRing.wmv) 31 Progress of the LHC machine 主リングダイポールの製造・検査・据付の進展 コイル部分納入台数 地上での冷却・励磁 検査を済んだ台数 トンネルに据え 付けられた台数 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 加速器の主要66項目にわたり、ダッシュボードと呼ぶグラフがウエブで常に公表 され 部品調達・据付・組立・調整など一連の作業の進展が一目でわかった され、部品調達・据付・組立・調整など一連の作業の進展が一目でわかった。 32 全ての超伝導磁石は地上で 導 冷却・励磁試験された。 25台/週のペースでダイポールがトン ダ ポ ネルに運びこまれ据え付けされた。 40,000ヶ所以上の真空溶接や検査作業が続いた。 33 圧力 He4の状態図 状態 He I 液体ヘリウム He II 超流動状態 H 1気圧 温度(K) 1.8K,0.013bar 熱交換チューブを真空引 きして温度を下げ きして温度を下げ、壁を 壁を 通して熱交換して全体を 1.9Kにする。 IHI(石川島播磨重工) のcold compressorが活 躍している。 1.9K,1 bar D B F C 液体He供給(4.6K,3 bar) QRL(cryogenic distribution line) 34 LHC衝突点用超伝導四極磁石 ビーム衝突点では、陽子ビームを10 ミクロンの太さに絞りこむ超伝導四極 磁石が必要で日本と米国とが独立に 設計・製造した。 KEKが技術開発、東芝が製造 KEKが技術開発 東芝が製造 磁場勾配 = 215 T/m 長さ 5 m、口径 70 mm 2005年18台の生産検査を完了。 超伝導ケーブル巻作業 (東芝京浜工場) Fermilab コイル検査用の垂直型クラ イオスタット@KEK イオ タ ト 山本明をリーダとするKEKの超伝導低温工学センターの チームが担当した チームが担当した。 LHCトンネル内に設置された超伝導四極磁石 日本加速器学会誌「加速器」 6(1) pp.96〜103 2009 参照 35 LHC衝突点用超伝導四極磁石 ビーム衝突点では、陽子ビームを10 ミクロンの太さに絞りこむ超伝導四極 磁石が必要で日本と米国とが独立に 設計・製造した。 KEKが技術開発、東芝が製造 KEKが技術開発 東芝が製造 磁場勾配 = 215 T/m 長さ 5 m、口径 70 mm 2005年18台の生産検査を完了。 超伝導ケーブル巻作業 (東芝京浜工場) Fermilab コイル検査用の垂直型クラ イオスタット@KEK イオ タ ト 2009.5.3 野田聖子科学技術担当 大臣による現物検査 LHCトンネル内に設置された超伝導四極磁石 36 LHCトンネルに設置された衝突点 フォーカス用超伝導四極磁石 2006年 J-PARCのニュートリノビームラインに設 の トリ ラインに設 置されたコンバインドファンクション型超 伝導電磁石 2008年 国際協力で培われた技術が次のステップに発展した好例 37 LHC加速器建設における日本企業との主な契約 ( MCHF ~億円 ) 会社名 物件 契約高 古河電工 超伝導ケ ブル 超伝導ケーブル 20 MCHF 新日鐡 非磁性カラー材 57 MCHF 石川島播磨&LINDE He低温コンプレッサー 19 MCHF 川崎製鉄(JFEスチール) マグネット鉄材 カネカ ポリイミド絶縁材 他 + α 4 MCHF 11 MCHF 日立電線、伊藤忠、三井商事、富士電機など 立電線 伊藤忠 井商事 富士電機など 38 §4.アトラス実験装置の建設と日本の分担 39 CMS 汎用実験 TOTEM Total cross section 測定 LHCb Bの物理 ATLAS 汎用実験 LHCf 超前方実験 ALICE 重イオン 衝突実験 TOTEM ATLAS 汎用実験 40 LHCの主な実験装置:全て建設を終了した。 アトラス(ATLAS)実験 C M S実験 アリス(ALICE)実験 LHCb 実験 41 アトラス(ATLAS)の建設 ・ 高さ:25m、全長:44m、重量:7000トン ・ 37国から約2800人の研究者が参加。 37国から約2800人の研究者が参加 ・ 各国は担当する検出器を担当国で製作し、CERNへ持込み据付。 日本の建設担当部分 ミュートリガー検出器 超伝導ソレノイド シリコン飛跡検出器 他に 時間測定集積回路 基盤ソフト:Geant4 42 アトラス 国際共同実験 ・37ヵ国から167の大学・研究所が参加し、研究者 数が約2200名(うち1750名がPh.DかM&O)からな グ 構成 。 るグループで構成される。 ・1994年にグループを発足し1996年から約12年 をかけて装置の設計・建設を行なってきている。 参加国 直接建設費負 担 (MCHF) 研究機関 数 メンバー数 (2004) 1 アメリカ 80.74 (17 %) 33 232 (18 %) 2 CERN 60.50 (13 %) 1 137 (10 %) 3 フランス 52.76 (11 ( %)) 7 90 (6.9 ( %)) 4 イタリア 45.09 (9.6 %) 12 141 (11 %) 5 ドイツ 40.00 (8.5 %) 10 109 (8.3 %) 6 イギリス 34.11 (7.3 %) 12 105 (8.0 %) 7 日本 32.18 (7.0 %) 15 61 (4.7 %) 8 ロシア シア 26.12 6 (5 (5.66 %) 8 102 0 ((7.88 %) 9 スイス 18.51 (4.0 %) 2 14 (1.1 %) カナダ 15.08 (3.2 %) 7 40 (3.1 %) 468.41 (100%) 149 37 合 計 1,306 1 306 (100 %) Albany, Alberta, NIKHEF Amsterdam, Ankara, LAPP Annecy, Argonne NL, Arizona UT Arlington Arizona, Arlington, Athens Athens, NTU Athens Athens, Baku, Baku IFAE Barcelona Barcelona, Belgrade Belgrade, Bergen, Berkeley LBL and UC, HU Berlin, Bern, Birmingham, UAN Bogota, Bologna, Bonn, Boston, Brandeis, Bratislava/SAS Kosice, Brookhaven NL, Buenos Aires, Bucharest, Cambridge, Carleton, Casablanca/Rabat, CERN, Chinese Cluster, Chicago, Chile, Clermont-Ferrand, Columbia, NBI Copenhagen, Cosenza, Cose a, AGH G UST US Cracow, C aco , IFJ J PAN C Cracow, aco , DESY, S , Dortmund, o u d, TU U Dresden, esde , INR Dubna, Duke, Frascati, Freiburg, Geneva, Genoa, Giessen, Glasgow, Göttingen, LPSC Grenoble, Technion Haifa, Hampton, Harvard, Heidelberg, Hiroshima, Hiroshima IT, Indiana, Innsbruck, Iowa SU, Irvine UC, Istanbul Bogazici, KEK, Kobe, Kyoto, Kyoto UE, Lancaster, UN La Plata, Lecce, Lisbon LIP, Liverpool, Ljubljana, QMW London, RHBNC London, UC London, Lund, UA Madrid, Mainz, Manchester, Mannheim, CPPM Marseille, Massachusetts, MIT, Melbourne, Michigan, Michigan SU, Milano, Minsk NAS, Minsk NCPHEP, Montreal, McGill Montreal, FIAN Moscow, ITEP Moscow, MEPhI Moscow, MSU Moscow, Munich LMU, MPI Munich, Nagasaki IAS, Nagoya, Naples, New Mexico, New York, Nijmegen, BINP Novosibirsk, Ohio SU, Okayama, Oklahoma, Oklahoma SU SU, Oregon Oregon, LAL Orsay, Orsay Osaka, Osaka Oslo, Oslo Oxford Oxford, Paris VI and VII VII, Pavia Pavia, Pennsylvania, Pisa, Pittsburgh, CAS Prague, CU Prague, TU Prague, IHEP Protvino, Regina, Ritsumeikan, UFRJ Rio de Janeiro, Rome I, Rome II, Rome III, Rutherford Appleton Laboratory, DAPNIA Saclay, Santa Cruz UC, Sheffield, Shinshu, Siegen, Simon Fraser Burnaby, SLAC, Southern Methodist Dallas, NPI Petersburg, Stockholm, KTH Stockholm, Stony Brook, Sydney, AS Taipei, Tbilisi, Tel Aviv, Thessaloniki, Tokyo ICEPP, Tokyo MU, Toronto, TRIUMF, Tsukuba, Tufts, Udine/ICTP, Uppsala, Urbana UI, Valencia, UBC Vancouver, Victoria, Washington, Weizmann Rehovot, FH Wiener Neustadt, Wisconsin, Wuppertal, Yale, Yerevan 43 地下実験室で建設中のアトラス検出器 地 実験室 建設中 検出器 2005年11月 年 (超伝導ソレノイド+中央カロリメターを中心に移動する直前) 44 日本の分担① 超伝導ソレノイド (1) 日本単独 ・電磁カロリメターの内側なので肉厚を極力薄くした: 電磁カ メタ 内側な 肉厚を極力薄くした → 高強度のアルミニウムを採用(古河・日立電線と技術開発) → クライオスタットを液体アルゴンカロリメータと共用 ・薄肉超伝導ソレノイド技術は山本明(KEK)らがBESS実験やSSCのR&Dなどを通じて独自 に開発した世界最先端の技術である。 45 日本の分担① 超伝導ソレノイド (2) 東芝京浜工場(1999年) 励磁成功(2000年12月) CERNに到着(2001年9月) Maiani所長らと 液体アルゴンクライオスタットへの据付(2004年2月) 地下実験室へ(2004年10月) 参照:日本物理学会誌 62 (2007) 935 解説:LHCが開拓した技術 46 日本の分担① 超伝導ソレノイド (3) π+π- 不変質量分布は Ks の質量を 0.02%の精度で再現している。 2009年末の 00 年末の 450+450GVの 0 0 の pp 衝突で 観測された Ks→π+π- 崩壊のイベント 超伝導ソレノイドを含む検出器群が 精確に働いている証左である。 47 日本の分担② ミューオントリガー装置 日本・イスラエル・中国・CERN 1200台のチェンバーをKEKで 1200台のチェンバ をKEKで 製造(2000-2005) 32万チャンネルの電 子回路をKEKで設 計・製造した。 神戸大で全数を宇 宙線で検査 CERN地上でのセクター 組立 (2005-2007) 地下実験ホールでの総合組立完成 (2006-2008) 48 製造例:1200台のTGCチェンバーの製造@KEK (2001-2005) ・製作治具などはすべて設計・自作した。 ・必要な小物は近くのハード店をめぐり徹底的に探した。 ・1日2台のチェンバーを製造する流れ作業に成功した 1日2台のチェンバ を製造する流れ作業に成功した。 ・2mで100ミクロン以下の平面度を達成した。 ・徹底した品質管理を行い97%の歩留まり達成した。 5年で1200台を製造 HENews研究紹介:田中秀治 http://www.jahep.org/hepnews/2006/Vol25No2-2006.7.8.9tanaka2.pdf 参照 49 製造例:32万チャンネルのミューオントリガー電子回路システム(1998-2007) システム設計(1995-2000) ボード間の通信は光ファイバー ボ ド間の通信は光 イバ 大学院生が集積回路を設計 ASDボード 24,000枚 測定器に装着されたエレキ群 HENews研究紹介:佐々木修・池野正弘 http://www.jahep.org/hepnews/2007/Vol26No3-2007.10.11.12sasakiikeno.pdf 参照50 日本の分担③ シリコンストリップ検出器 (1) 日・英・米・北欧 1μm 精度の位置合わせ装置と接着治工具 3次元自動測定 フレキハイブリッド回路 2600台のモジュールを国際分担で製造(日本は981台)。 日本はハイブリッド回路の設計・製造も全数担当した。独 自の組立治具で最も良い精度実績を達成した。 シリコン検出器モジュール 51 日本の分担③ シリコンストリップ検出器 (2) 件名 数量 業者 開発項目 アトラス特別スペック、 アトラス特別スペック KEKからボンディング以外のジグを供 給し組立方法を技術移転 KEKからジグを供給し組み立て方法 を技術移転 パターンはKEK設計 高密度回路と ケープル一体型 フレキシブル基板と補強板の接着等 技術移転 センサー センサ 6000 浜松ホトニクス モジュール組立 560 浜松ホトニクス モジュール組立 420 セイコープレシジョン 3000 NOK/メクトロン 2700 セイコープレシジョン セイコ プレシジョン 1215 セイコープレシジョン 6000 豊和産業 東邦化研 パターンはKEKが設計 豊和産業,東邦化研 パタ ンはKEKが設計 銅ポリイミドフレキ シブル基板 ハイブリッド組立 (SMT) ハイブリッド組立 (COB) アルミ電極ガラス ア 電極 ラ 基板 ボンディングジグを供給 特記 R&Dを数年行った wire bonding 5000/module wire bondingg 5000/module 工場長に直談判 外国へも供給 時計組立の ベテランが活躍 外国へも供給 時計組立の ベテランが活躍 途中で品質低下 途中 品質低下 成膜 成膜は生 き物 高熱伝導、高剛性、低物質量 研究所レベルの製造能力で あったが協力してくれた 米国で全数検査選択 苦労させられた 林時計工業 KEK設計 オックスフォード大学で使用 ジ ネ ブ大 ジュネーブ大 KEK設計 設計 カーボンカーボン 6000 新日本石油 ASIC モジュール据付ロ ボット SCT-TRT SCT TRT ドッキン グ用治具 14500 フランス 2 1 日本の担当部分の設計・製造は一人の優秀な技術者(KEK)が殆ど全てを担当してくれて成功した。 HENews研究紹介:高力孝 http://www.jahep.org/hepnews/2007/Vol26No4-2008.1.2.3kohriki.pdf 参照 52 日本の分担④ 時間デジタル変換チップ 日 SSC計画の検討中に大杉(広大)新井(KEK)が考案。 微小時間差を直接デジタルに変換できる(TDC)。 CMOSメモリーのclockにdelayを入れるアイデア→特許 data clock delay delay delay アトラス用24ch TDC 20 20,000 000 個を0.3μm東芝CMOSで製造。 40万ゲート。一研究者による 設計。 H1, Phenix, D0, K2K,実験、 ロケット観測 にも使われた。 にも使われた チップ設計で複数回の受賞。 σ : 300 ps, リニアリティ 80ps 参照webページ: http://atlas.kek.jp/tdc/ アトラス実験ミューオンドリフト チューブ(40万ch)に使用中 53 日本の分担⑤ 基本ソフト Geant4 (ジアント4) z 粒子と物質の相互作用を記述する世界標準のシミュレーションプログラム。 z 1994年にCERNと日本などが国際協力開発に合意。1998年に完成。 z C++オブジェクト指向技術で大規模プログラムを多人数で分担構築に成功。 z 幾何学的な記述が優れ、新しい反応過程組込みが容易。ソース公開。 z LHC、高エネルギーの他、粒子線治療・宇宙ステーション/火星基地などの宇宙計画・ 宇宙線・原子核・地下実験などへの応用が急速に進んでいる。 アトラス実験LArカロリメター内の 電磁シャワーのシミュレーション 参照:日本物理学会誌 62 (2007) 942 解説:LHCが開拓した技術 // G4SteppingManager.cc // // Description: // This class represents p the manager g who steers to move the give // particle from the TrackingManger by one Step. // // Contact: // Questions and comments to this code should be sent to // Katsuya Amako (e-mail: [email protected]) // Takashi Sasaki (e-mail: [email protected]) // //--------------------------------------------------------------// #include "G4SteppingManager.hh" #include "G4SteppingVerbose.hh" 基本ソフトは多くの部分に日本人の author の名前が載っている。 54 LHC グリッド zLHC計画のために開発された。 LHC計画のために開発された zアトラス実験の年間データ量 ~ 5 PB (P=1015) zデータを世界に分散する計算機センターに送る。 デ タを世界に分散する計算機セ タ に送る z使う計算機が自動的に割り当てられる。 55 §5 LHCの運転開始 §5. 56 LHC加速器建設完成とビーム運転 • 2006年11月 最後のLHC超伝導磁石が納入された。 年 月 • 2007年2月 LHC超伝導磁石の検査を全て終了した。 超伝導磁石の検査を全て終了した。 • 2007年4月 セクター(8分の1)の1.9 K冷却に成功した。 • LHC超伝導磁石が全て地下に運搬された LHC超伝導磁石が全て地下に運搬された。 • 2008年8月 SPSからLHCへのビーム入射に成功した。 • 2008年9月10日 450GeVの陽子ビームの初周回に成功(世界に放映)。 年9月19日 月 • 2008 年 大量のヘリウム漏れが発生し調査・修理を開始した。 大量 リウ 漏 発 調 修 を開始 。 • 2009年11月20日 LHCのビーム運転を再開した。 • 2010年2月 7 TeVの陽子・陽子衝突実験を開始する。 57 2008年9月10日450GeVの陽子ビームの初周回に成功した(BBCが世界に放映)。 http://cdsweb.cern.ch/record/1125846 58 59 CMS 開始後50分後に ビームスクリーン には入射ビームと 一周したビームが 周したビ ムが 同時に映し出され た! ビームの軌道は各所のビーム位置モニ ターで測定され、直ちに次のビーム入 射で軌道が修正された。 ALICE ATLAS LHCb 60 Beam 2 first beam – D-Day 61 450 GeV陽子ビーム周回の進展の様子 : ビーム軌道は直ちに補正されることが見える。 2008.9.10 10:19 初めての ビ ムイベント 陽子ビ ムが ビームイベント。陽子ビームが 上流のコリメーターにダンプさ れた時に発生したミューオンを 観測した Googleも歓迎 左:成功喜ぶアトラス実験者 歴代所長の見守る中で成功 62 2008.9.19:LHCヘリウム大量漏れ事故 ・ 9日後、通電テスト中に6トンのヘリウム 9日後 通電テスト中に6トンのヘリウム がトンネル内に漏れ出す事故が発生。 ・ (1万ヵ所のうちの)1つのマグネット間の 超伝導ケーブル接続部分がアーク放電して 溶けだし、気化したヘリウムで数十台のマ グネットが変形したり移動した。 ・ 53台のマグネットを地上で修理した。 ケーブル接続部 ・ 全ての超伝導ケーブル接続部の測定を行い 全ての超伝導ケ ブル接続部の測定を行い 幾つかの接続部を改善した。 ・ クエンチ検出・安全弁など各種の改善を行った 。 ・ 2009年11月に修理を完了し、ビーム運転が再 開された。 開された 気化したヘリウムの圧力に よってマグネットが動いた。 63 2009年11月 LHC運転の再開 beam current 1.18TeV ・2009.10.8 LHCが 1.9Kに到達。 ・11.17 ビーム運転の調整開始。 ・11.20 の 周回に成功。 450GeVのビーム周回に成功。 ・11.23 900GeVの陽子衝突を4実験で観測。 ・11 29 ・11.29 世界最高エネルギー11.18TeV達成。 世界最高エネルギ 18TeV達成 ・12.6 450 GeVで4×4の安定ビーム。 ・12.8 12 8 2 36T Vの衝突現象を初観測 2.36TeVの衝突現象を初観測。 ・12.14 450 GeVで16×16, >1010p/bunch ・2010.3 3.5+3.5TeVの物理実験開始(予定) 450GeV 450→1180GeVの加速に約10 分かかった。 スティーブ・マイヤー氏: 「LEPは加速器の調整に何週間もかか たが 「LEPは加速器の調整に何週間もかかったが、 LHCでは時間単位で調整が進んでいる。」 世界最高 ネルギ 達成を喜 世界最高エネルギー達成を喜 ぶLHC加速器オペレーター 64 2009年12月13日: 年 月 1日のビーム電流の記録 電流 記録 X: 時間,Y:ビーム電流 緑:ビーム1 橙:ビーム2 65 Dispersion:エネルギーを少しずらした場合の軌道のずれ 測定(点)と予想(曲線)がリング全周にわたりよく 致している! 測定(点)と予想(曲線)がリング全周にわたりよく一致している! 66 2009年11月23日 各実験で初のpp衝突現象を観測 アリス実験 C M S 実験 アトラス実験 LHCb 実験 67 §6 新しい発見の可能性 §6. 68 超対称性粒子(SUSY)がLHCで発見される可能性が高い 超対称性粒子が期待される 理由 ① 3つの力が 大統一できる。 大統 できる ② ヒッグス粒子の質量の 不安定性(微調整問題) の解決になる。 ③ 暗黒物質の有力候補。 大統一理論 力の強さはエネルギーと共に変化する。 1 TeV付近に超対称性粒子が存在すると、 TeV付近に超対称性粒子が存在すると 3つの力が1点に交わり大統一が可能 69 SUSY (超対称性)粒子 暗黒物質の 有力候補 ニュートラリーノ δ (spin) = ± 1 2 しかしSUSY粒子はまだ1個も見つかってない 70 §7.ま と z z z z z z め 標準理論でヒッグス粒子のみが未発見。LHCのエネルギーに存在するは ず。超対称性粒子・暗黒物質発見の可能性も大きい。 SSC計画は建設途中で中止。LHC計画は全世界的協力を得て建設された 。計画承認から15年でようやく建設が完了した。 計画承認から15年でようやく建設が完了した 日本政府の大胆な資金協力決定により、LHC建設にKEKと日本企業が参 加できた。超伝導ケーブルなどLHC先端技術への日本の寄与は大きかっ 導 ブ 先 た。 日本の研究グループはアトラス実験に参加し、ハードやソフト面で建設 分担を果たした。研究者・技術者による個人レベルの活躍が光った。大 き 技術的 進歩が きな技術的な進歩があった。 LHCの試運転が成功した。2008年の事故の修復に1年を要したが安全性 試運転 成功 。 年 事故 修復 年 要 安 性 が格段に高まった。運転は再開され本番実験が4月より始まる。 LHCは世界的広がりをもつ巨大で複雑で長期にわたる1兆円規模のプロ ジェクトである。ヒッグス粒子探索など明確な研究目標がある。 71 関連するウエブページや参考文献 ・ この発表ファイル http://atlas.kek.jp/sub/OHP/2010/20100318_Kondo.pdf, ppt ・ 「CERNの概要」 http://atlas.kek.jp/public/IntroductionOfCERN.pdf ・ CERN http://cern.ch ・ アトラス日本グループ広報ページ http://atlas.kek.jp/ ・ アトラス日本グループ(研究者用) http://atlas.kek.jp/research ・ アトラス実験、 CMS実験 http://atlas.ch ・ ニュートン 2008年10月号 LHC始動!物理学は新たな時代へ最強加速器が解き明かす ・ 日経サイエンス 2008年5月号 特集:革命前夜の物理学 ・ ナショナルジオグラフィック 2008年3月号 、 http://cms.cern.ch/ 特集:宇宙を解き明かす神の素粒子 ・ 日本物理學會誌 2007年12月号 小特集「LHC実験が始まる」 (2007年12月5日出版) ・ 別冊日経サイエンス 156 宇宙創世記 「素粒子科学が描き出す原初宇宙の姿」 ・ 数理科学 2007年11月号 特集:電弱統一理論 LHCへの期待 (田中礼三郎) ・ パリティ 2007年11月号 特集:暗黒物質の宇宙 素粒子理論と暗黒物質 (野尻美保子) 2006年11 12月号 ・ 岩波書点「科学」 2006年11,12月号 アトラス実験(1 2) アトラス実験(1,2) 72