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KDIGO 2012 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and
KDIGO 2012 Clinical Practice Guideline for
the Evaluation and Management of Chronic
Kidney Disease
慢性腎臓病の評価と管理のための
2012 KDIGO 診療ガイドライン
【推奨条文サマリーの公式和訳】
<推奨条文サマリー和訳版目次>
慢性腎臓病の評価と管理のための 2012 KDIGO 診療ガイドライン
ガイドライン推奨強度のための用語と記述法
告知
緒言
要約
緒言
1章: CKDの定義と分類
2章: CKD進行の定義、同定、予想
3章: CKDの進行と合併症の管理
4章: CKDのその他の合併症:心血管病、薬剤投与量、患者の安全、
感染症、入院、そしてCKDの合併症を研究するうえでの課題
5章: 専門医への紹介と診療モデル
レファレンス・キー
ガイドライン推奨強度のための用語と記述法
それぞれの推奨項目には、推奨強度がレベル1、レベル 2、あるいはグレードなしと示されてお
り、その推奨強度決定の根拠になるエビデンスの質は A,B,C,D で示されている。
意味
等級 Grade*
レベル1
----を推奨する
患者にとって
医師にとって
ポリシー
あなたがおかれた状
ほぼすべての患者は
このレベルの推奨は医療政
況下では,ほぼすべて
このレベルで推奨さ
策の立案や機能評価をする
の人がこのレベルで
れる診療計画を受け
上での候補となりうる。
推奨される診療計画
入れるべきであろう。
を希望し、希望しない
人はほんのわずかで
あろう.
レベル2
----が望ましい
あなたがおかれた状
患者によっては,この
このレベルの推奨はそれに
況下では多数の人が
レベルの推奨に基づ
よって政策を決める場合に
このレベルの推奨さ
く診療計画とは異な
は,決定するまでにさらに討
れる診療計画を希望
る選択肢も,妥当なこ
論が必要であり、利害関係者
するが、希望しない人
とがある。その診療計
がその決定に関与する必要
も少なくはないだろ
画に対し,それぞれの
があるだろう。
う.
患者がその価値観や
好みに応じて、決定を
下すには医師の助け
が必要となる。
* グレードなし という新たなカテゴリーを用いた。主として,一般常識に基づくガイダンスや,
エビデンスを適応するのが適当ではないトピックなどに使用された。最も一般的な例としては、
測定間隔、カウンセリング、専門医への紹介に関する推奨などがある。グレードをつけていな
い推奨は,通常,単純なな宣言文として書かれるが、レベル 1 や2よりも強い推奨と解される
ことを意図はしていない。
エビデンス
等級
意味
の質
A
高い
B
中等度
C
低い
D
最も低い
真の効果が推測する効果に近いと確信できる。
真の効果が推測する効果に近いと考えるが、結果的に異なる可能性が残る
真の効果は推測する効果と結果的に異なる可能性がある。
推測する効果は大変不明確で、しばしば真の効果とかけ離れることがある。
GFR 推算式
成人用 GFR 推算式
min(SCr/k, 1)a
2009 CKD-EPI クレアチニン式: 141
1)-1.209
max(SCr/k,
0.993Age [ 1.018 女性の場合] [ 1.159 黒人の場合]、式中のSCr
は血清クレアチニン (mg/dl)、kは女性では0.7で男性では0.9、aは女性では
-0.329で男性では-0.411、min SCr/kの最小値または1、そしてmaxは SCr/k
の最大値または1となる。
性別と血清クレアチニン値別の推算式
性別
血清クレアチニン
推算 GFR 式
女性
≤0.7 mg/dl (p62
144
mmol/L)
人の場合]
>0.7 mg/dl (p62
144
mmol/L)
の場合]
≤0.9 mg/dl (p80
141
mmol/L)
の場合]
>0.9 mg/dl (p80
141
mmol/L)
の場合]
女性
男性
男性
2012 CKD-EPI cystatin C式:133
max(SCysC/0.8, 1)-1.328
(SCr/0.7)-0.329
(SCr/0.7)-1.209
0.993Age [ 1.159 黒
0.993Age [ 1.159 黒人
(SCr/0.7)-0.411 0.993Age [ 1.159 黒人
(SCr/0.7)-1.209
0.993Age [ 1.159 黒人
min(SCysC/0.8, 1)-0.499
0.996Age [X 0.932女性の場合]、式中のSCysC は
血清シスタチンC (mg/L)、min はSCysC/0.8の最小値または1、 そしてmax
は SCysC/0.8 の最大値または1。
血清シスタチン C 値で表される推算式
血清シスタチン C
GFR 推算式
女性または男性
≤0.8 mg/L
133 (SCysC/0.8)-0.499
0.996Age [ 0.932 女性の場合]
女性または男性
>0.8 mg/L
133 (SCysC/0.8)-0.499
0.996Age [ 0.932 女性の場合]
2012 CKD-EPIクレアチニンーシスタチンC式:135 min(SCr/k, 1)a
max(SCr/k, 1)-0.601 min(SCysC/0.8, 1)-0.375 max(SCysC/0.8, 1)-0.711
0.995Age [
0.969女性の場合] [
1.08 黒人の場合]、式中でSCrは血清クレア
チニン (mg/dl), SCysC は血清シスタチンC (mg/L),
k は女性では0.7で男
性では0.9、aは女性では-0.248 で男性では-0.207、min(SCr/k, 1)は SCr/k
の最小値または1そしてmax(SCr/k, 1) はSCr/kの最大値または1;
min(SCysC/0.8, 1) SCysC/0.8の最小値または1、そしてmax(SCysC/0.8, 1)
はSCysC/0.8の最大値または1。
性別、血清クレアチニン値と血清シスタチンC値別で表される推算式
性別
女性
血清クレアチ
血清シスタチン
ニン
C
≤0.7 mg/dl
≤0.8 mg/L
(≤62 mmol/L)
GFR推算式
130
(SCr/0.7)-0.248
(SCysC/0.8)-0.375
0.995Age [ 1.08 黒人
の場合]
>0.8 mg/L
130
(SCr/0.7)-0.248
(SCysC/0.8)-0.711
0.995Age [ 1.08 黒人
の場合]
女性
>0.7 mg/dl
≤0.8 mg/L
(>62 mmol/L)
130
(SCr/0.7)-0.601
(SCysC/0.8)-0.375
0.995Age [ 1.08 黒人
の場合]
>0.8 mg/L
130
(SCr/0.7)-0.601
(SCysC/0.8)-0.711
0.995Age [ 1.08 黒人
の場合]
男性
≤0.9 mg/dl
(≤80 mmol/L)
≤0.8 mg/L
130
(SCr/0.7)-0.207
(SCysC/0.8)-0.375
の場合]
0.995Age [ 1.08 黒人
>0.8 mg/L
130
(SCr/0.7)-0.207
(SCysC/0.8)-0.711
0.995Age [ 1.08 黒人
の場合]
男性
>0.9 mg/dl
≤0.8 mg/L
130
(>80 mmol/L)
(SCr/0.7)-0.601
(SCysC/0.8)-0.375
0.995Age [ 1.08 黒人
の場合]
>0.8 mg/L
130
(SCr/0.7)-0.601
(SCysC/0.8)-0.711
0.995Age [ 1.08 黒人
の場合]
小児のGFR推算式
クレアチンに基づく式
41.3
40.7
(身長/SCr)
(身長SCr)0.64
(30/BUN)0.202
BUN, 血中尿素窒素(mg/dl);身長(m);SCr, 血清クレアチニン(mg/dl)
シスタチンCに基づく式
70.69
SCysC, 血清シスタチンC (mg/L)
(SCysC)-0.931
KDIGO によって現在使用されている慢性腎臓病に関する用語
CKD(慢性腎臓病)は健康との関連から腎組織や腎機能の異常が 3 か月以上持
続する状態と定義され、原因、GFR カテゴリー、およびアルブミン尿カテゴリ
ー(CGA)を基に分類される。
GFR およびアルブミン尿カテゴリーによる CKD の予後
緑色:低い危険度(他の腎臓病マーカーが存在しなければ非 CKD);黄色:中
等度に増加している危険度;オレンジ色:高い危険度;赤:非常に高い危険度。
告知
Kidney International Supplements (2013) 3, 1; doi:10.1038/kisup.2012.73
セクション I:診療ガイドラインの使用について
本診療ガイドラインの文章は 2011 年6月の時点で行われた文献検索に 2012 年11月までの
新たなエビデンスを追加したものに基づいている。本ガイドラインは情報提供により診療方針
の決定を補助する目的で作られた。ガイドラインは標準治療を定義したものではなく、そのよ
うに解釈されるべきものでもなく、診療の唯一のコースを示しているものでもない。医師が,
個々の患者のおかれた状況、入手可能な資源、それぞれの施設または診療形態に伴う制約を考
慮に入れると,診療におけるバリエーションは必然的かつ適切に起こるものである。本推奨の
適応にあたって,医療従事者は,それぞれの患者固有の病態に即して,この推奨の適応を適切
に評価する責任がある。本ガイドラインに含まれている研究に関する推奨は一般的なものであ
り、特別なプロトコールを意味しているものではない。
セクション II: 開示
Kidney Disease: Improving Global Outcomes(KDIGO)は作業部会のメンバーが外部関係また
は個人的、専門的あるいは職業上の利害関係の結果生じる、実際または予想されうる利益相反
を避けることに最大限の努力をはらうものとする。すべての作業部会のメンバーは可能性とし
て,または実際に生じる利益相反のすべての開示と証言を行う書類への署名と提出を求められ
ている。この書類は毎年更新され、情報は状況に応じて適宜調整されている。これらのすべて
の情報は本文末尾の「作業部会メンバーの履歴および開示」に記されており、すべての情報は
KDIGO 事務局が保管している。
Copyright &2012 by KDIGO. All rights reserved.
個人使用のための単回のコピーは各国内法の許す範囲で認められている。教育機関において非
営利の教育目的で複製を必要とする場合は特別価格で提供される。どの部分であれ,写真複写,
録音,情報ストレージ,検索システムを含む,複製、変更、または電気的・機械的な送信には
書面による KDIGO の許可が必要である。複製や翻訳に関する許可をとる上での詳細および詳し
い KDIGO の許諾ポリシーに関しては KDIGO Managing Director である Danielle Green
[email protected] に連絡すること。
ここに書かれている手法,製品,説明あるいは考え方の使用あるいは運用により,製造者責任
や過失などにより,人的あるいは物的に生じたいかなる損失,障害/傷害に対しても,KDIGO,
Kidney International Supplement, National Kidney Foundation(KDIGO 管理エージェント),
著者,協力者,編集者は,法のおよぶすべての面において,責任を負わない。
訳者註:翻訳および監修は日本腎臓学会 KDIGO ガイドライン翻訳ワーキング委員会が KDIGO
の基に行った.推奨の表現については CKD-MBD ガイドラインの翻訳時に確定した方法に準じ
た。疾患名に関しては英文名を並記した。和訳の表現が不正確、もしくはニュアンスが原文と
異なる場合はあり得るので,いかなる場合にも原文の表現が優先される。推奨された治療法お
よび検査法がその時点において日本国内では保険適用が認められていない場合があり得るので
その適応には注意を要する.
要約
Kidney International Supplements (2013) 3, 4;
doi:10.1038/kisup.2012.76
KDIGO-2012年慢性腎臓病(CKD)の評価と診療のための診療ガイドラインは
2002年K/DOQIによるCKDの評価、分類、層別化のための診療ガイドラインを
10年にわたるCKDにおける集中した研究と診療に基づいて改訂する目的で作
成されたものである.この文書はCKDのすべての患者における評価、管理そし
て治療に関する最新のガイダンスを提供する目的で記されている.特に、本ガ
イドラインはCKDの定義については踏襲しながらもCKD分類に関しては以下
のように進んだ体系を提供している;CKDの診断と予後に対しより精密にし;
CKDの進展と合併症に関して議論し;CKD診療の連続性に言及し:専門医への
紹介時期、進行性のCKD患者の持続的な診療、透析の開始時期、そして最終的
には包括的な保存療法を含む治療プログラムの適応にまで踏み込んでいる.ガ
イドラインの作成は体系的なエビデンスのレビューと評価に基づいて行われた。
治療方法は各々の章に示されており、ガイドラインの推奨項目は関連のある臨
床試験の体系的なレビューに基づいている。教育的目的で供された実践的なコ
メントや条文はグレードなしであるが、読者にとっては重要な情報が含まれて
いる.エビデンスの質の評価と推奨項目の強度はGRADE法に準拠している。議
論のある分野やエビデンスの限界、および国際間の関連性については考察した
うえで将来の研究へも提言している。
Keywords: アルブミン尿;慢性腎臓病;分類;診療ガイドライン;エビデンス
に基づく推奨;GFR;糸球体濾過量;KDIGO;蛋白尿;体系的レビュー
慢性腎臓病の評価と診療のための臨床ガイドライン
1章 CKDの定義と分類
1.1. CKDの定義
1.1.1: CKD(慢性腎臓病)は健康との関連から腎組織や腎機能の異常が3か月以
上持続する状態と定義される。(グレードなし)
CKDの診断基準(下記のいずれかが3か月以上持続)
腎障害のマーカー(ⅠつまたはⅠつ アルブミン尿(AER≥30mg/24時
間, ACR≥30mg/g, [3mg/mmol])
以上)
尿沈渣異常
尿細管障害による電解質およびそ
の他の異常
組織学的に明らかになった異常
画像診断による形態異常
腎移植の既往
GFR<60mL/min/1.73m2(GFRカ
GFRの低下
テゴリーG3a-G5)
略語:CKD、慢性腎臓病;GFR、糸球体濾過量
1.2. CKDステージ分類
1.2.1: CKDは原因、GFRカテゴリー、およびアルブミン尿カテゴリー(CGA)
を基に分類されることを推奨する。(1B)
1.2.2: CKDの原因は全身性疾患の有無や病理・解剖学的所見により実証あるい
は推定される腎臓内の病変部位によって決定される(グレードなし)。
1.2.3: GFRカテゴリーを下記のように振り分ける(グレードなし)
CKDにおけるGFRカテゴリー
GFRカテゴリー
GFR(ml/分/1.73m2)
用語
G1
90
正常または高値
G2
60-89
軽度低下*
G3a
45-59
軽度∼中等度低下
G3b
30-44
中等度∼高度低下
G4
15-29
高度低下
G5
<15
腎不全
略語:CKD、慢性腎臓病;GFR、糸球体濾過量
*若年成人の値に比し
腎障害の証拠がなければ、G1,G2のGFRでもCKDの基準を満たさない
1.2.4: アルブミン尿カテゴリーを下記のように振り分ける(グレードなし):
*アルブミン尿測定ができなければ、試験紙法で代用できる(表7)
CKDにおけるアルブミン尿のカテゴリー
AER
カテゴリー
A1
ACR(ほぼ等量)
(mg/24時間)
(mg/mmol)
mg/g
<30
<3
<30
用語
正常から軽
度増加
A2
30-300
3-30
30-300
A3
>300
>30
>300
中等度増加
高度増加
略語:AER、アルブミン排泄量;ACR、アルブミン・クレアチニン比;CKD、
慢性腎臓病
*:若年成人の値に比し
**:ネフローゼ症候群(通常はアルブミン排泄量>2200mg/24時間、
[ACR>2220mg/g: >220mg/mmol ])を含む
1.3. CKDの予後予測
1.3.1: CKDのアウトカムの危険因子を予測するために:1) CKDの原因; 2) GFR
カテゴリー; 3) アルブミン尿カテゴリー;
4) その他の因子および併発症を特
定する(グレードなし)
1.3.2: CKD患者においては、CKD合併症の検査および治療法を決定するために
現在の合併症および将来のアウトカムの発症予測度を用いる(図9)(グレー
ドなし)
1.3.3: CKDの患者集団においては、GFRとアルブミン尿のカテゴリーを、CKD
のアウトカムの相対危険度と同様にリスク・カテゴリーにグループ化する(図
9)(グレードなし)
緑色:低い危険度(他の腎臓病マーカーが存在しなければ非CKD);黄色:中
等度に増加している危険度;オレンジ色:高い危険度;赤:非常に高い危険度。
1.4. CKDの評価
1.4.1 慢性化の評価
1.4.1.1: GFR<60mL/min/1.73m2または腎障害を示唆するマーカーを有する
患者においては腎臓病の持続期間を決定するために既往歴および過去の検査結
果を調べる。(グレードなし)
l 持続期間が3か月以上であればCKDは確定される。CKD管理指針に従う。
l 持続期間が3か月以上でないか、または不明の場合、CKDとは確定されない。
患者はCKDを有するか、急性の腎臓病(AKIを含む)またはその両者であ
り、それぞれに応じた検査を繰り返す。
1.4.2 原因の評価
1.4.2.1: 腎臓病の原因を決定するために個人および家族の病歴、社会や環境要
因、治療薬物、身体診察所見、臨床検査、画像、および病理診断などの臨床情
報を評価する。(グレードなし)
1.4.3 GFRの評価
1.4.3.1: 最初の評価法として血清クレアチニンとGFR推算式を用いることを推
奨する。(1A)
1.4.3.2: 血清クレアチニンに基づく推算GFRではより不正確となる特別な状況
下においては、更なる検査(シスタチンCまたはクリアランス法による検査など)
を行うことが望ましい。(2B)
1.4.3.3:臨床家には下記が推奨される。(1B)
・血清クレアチニンの値のみに頼るのではなく、血清クレアチニンから求めら
れるGFRの推算式(eGFRcreat)を用いる。
・eGFRcreatの正確性がより低くなる臨床状態を理解する。
1.4.3.4: 臨床検査について下記の事項を推奨する。(1B)
l
血清クレアチニンの測定は国際的標準物質への較正が可能でアイソトープ
希釈質量分析(IDMS)対照方法に比しバイアスが最小である方法で測定す
る。
l
成人において血清クレアチニン値とともにeGFRcreatを報告し、その用い
た推算式を明らかにする。
l
成人においては2009年のCKD-EPIcreat式を用いてeGFRcreatを報告す
る。2009年のCKD-EPIcreat式に比しGFR推算の精度がよりよい推算式で
あれば、他のクレアチニン値を用いた推算式を用いても構わない。
血清クレアチニンを報告する際には:
l 血清クレアチニン濃度は国際基準(μmol/L)を使用する際には、小数点以下
を四捨五入し、通常の単位(mg/dL)の場合には0.01の位まで記載するこ
とを推奨する。
eGFRcreatを報告する際には:
l 成人ではeGFRcreatを小数点以下で四捨五入し体表面積1.73m2あたりで表
し、mL/min/1.73m2の単位を用いる。
l eGFRcreat<60mL/min/1.73m2の場合は「低下」と報告することを推奨する。
1.4.3.5: eGFRcreatが45∼59 mL/min/1.73m2で腎障害を示すほかの指標が
なくCKDの存在を確定しなければならない場合、成人においてシスタチンCを
測定することが望ましい。(2C)
l
eGFRcys/eGFRcreat-cys<60mL/min/1.73m2であれば、CKDの診断は確
定される。
l
eGFRcys/eGFRcreat-cys 60mL/min/1.73m2であれば、CKDの診断は
確定されない。
1.4.3.6: シスタチンCが測定される場合には医療関係者には下記の事項が望ま
しい。(2C)
l
血清シスタチンCの値のみに頼るのではなく、血清シスタチンCから求めら
れるGFRの推算式を用いる
l
eGFRcys とeGFRcreat-cysの正確性がより低くなる臨床状態を理解する。
1.4.3.7: シスタチンCを測定する検査室には下記事項を推奨する。(1B)
・国際標準物質に対する較正が可能な検定法を用いて血清シスタチンCを測定す
る。
l 成人においては血清シスタチンC濃度に加えてeGFRを報告し、同時に
eGFRcys とeGFRcreat-cysを報告するときにはいつでもそれに用いた推
算式を明らかにする。
l 成人においては2012年CKD-EPIcys式と2012年CKD-EPIcreat-cys式を
其々用いてeGFRcysとeGFRcreat-cysを報告するか、または012年
CKD-EPIcys式と2012年CKD-EPIcreat-cys式に比しGFR推算の精度がよ
りよい推算式であれば、他のシスタチンCを用いた推算式を用いても構わな
い。
血清シスタチンCを報告する際には:
l
血清シスタチンC濃度を通常の単位(mg/L)で表す場合には四捨五入し0.01
の位まで記載することを推奨する。
eGFRcysとeGFRcreat-cysを報告する際には:
l
成人ではeGFRcysとeGFRcreat-cysを小数点以下で四捨五入し、体表面積
1.73m2あたりの相対値で表し、mL/min/1.73m2の単位を用いることを推
奨する。
l
eGFRcysとeGFRcreat-cys<60mL/min/1.73m2の場合は「低下」と報告
することを推奨する。
1.4.3.8: 治療法の選択にGFR値が大きく影響するような状況下においては外因
性の糸球体濾過のマーカーとなる物質を投与してGFRを測定することが望まし
い。(2B)
1.4.4 アルブミン尿の評価
1.4.4.1:蛋白尿の最初に行う評価法として、下記の測定法が望ましい。(推奨度
は降順で、いずれの場合も早朝尿が望ましい)(2B)
1) 尿アルブミン・クレアチニン比(ACR)
2) 尿蛋白・クレアチニン比(PCR)
3) 尿総蛋白試験紙法(自動判定)
4) 尿総蛋白試験紙法(検査技師によるマニュアル判定)
1.4.4.2: 臨床検査施設では尿アルブミン濃度または蛋白尿濃度のみでなく随時
尿のACRとPCRを追加して報告することを推奨する。(1B)
1.4.4.2.1: 微量アルブミン尿という用語は臨床検査施設では今後使用しない。
(グレードなし)
1.4.4.3: 臨床家はアルブミン尿の測定値の判定に影響を及ぼす諸状態を理解し、
必要なときは確認診断をオーダーする必要がある。(グレードなし)
l
試験紙法によるアルブミン尿および蛋白尿が陽性な場合は、これを定量法
にて確認し、可能な場合は尿クレアチニン比で表す。
l
随時尿によるアルブミン・クレアチニン比が30mg/g以上(3mg/mmol以
上)であれば、その後早朝尿でも確認する。
l
より正確なアルブミン尿または蛋白尿が必要であれば、アルブミン排泄量
または総蛋白排泄量を時間尿で測定する。
1.4.4.4:著しい非アルブミン性蛋白尿が疑われる場合には、特異的な蛋白[例、
α1ミクログロブリン、単クローン性重鎖あるいは軽鎖(国によってはBence
Jones蛋白として知られている)]の検査を行う。(グレードなし)
2章 CKD進行の定義、発見法及びその予測
2.1 CKD進行の定義と発見法
2.1.1: CKD患者では少なくとも年に一度はGFRおよびアルブミン尿を評価する。
進行する危険度の高い人もしくはその結果によって治療法が左右される場合は
GFRおよびアルブミン尿をより頻回に測定する。(下記の図参照)。(グレー
ドなし)
2.1.2: GFRは多少変動するのが普通であるので、必ずしも進行を意味するもの
ではないことを認識する必要がある。(グレードなし)
2.1.3: CKD進行と定義するためには下記の一つ以上の事項を満たすものとする。
(グレードなし)
l GFRカテゴリー(≥90[G1], 60-89[G2], 45-59[G3a], 30-44[G3b],
15-29[G4], <15[G5] mL/min/1.73m2)の悪化。有意なeGFRの低下はベ
ースラインから25%以上の低下を伴うGFRカテゴリーの悪化と定義する。
l 急速な進行とはeGFRの低下が持続的に年間5mL/min/1.73m2以上の場合と
定義する。
l 血清クレアチニンの測定回数が増えるほど、また観察期間が長くなるほど進行
の評価は確実となる。
2.1.4: 2.1.3の推奨によってCKDが進行していると定義される人では、現在の治
療法を再評価して可逆的な進行因子を検討し、さらに専門家への紹介を考慮す
る。(グレードなし)
GFR、アルブミン尿の各カラムの色(緑、黄色、オレンジ、赤、濃い赤)は進
行する危険度を表している。カラムの数字は検査を実施する一年あたりの頻度
を示している。
2.2 進行の予測因子
2.2.1: 予後を説明するためにはCKD進行に関与する複数の因子を特定する必
要がある。これらの因子にはCKDの原因、GFRレベル、アルブミン尿の程度、
年齢、性、人種・民族、血圧値上昇、高血糖、脂質代謝異常、喫煙、肥満、心
血管病の既往、腎毒性物質への暴露、その他が含まれる。(グレードなし)
3章:CKDの進行と合併症の管理
3.1: CKD進行の阻止
血圧とレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の阻害
3.1.1: KDIGO血圧ガイドライン2012に記載されているように、 血圧の目標値
と降圧薬の種類は、その患者の年齢、合併している心血管病とその他の合併症、
CKDの進展の危険度、網膜症の有無(糖尿病を伴うCKD患者では)そして治療へ
の忍容性によって個別化する。(グレードなし)
3.1.2: CKD患者に降圧薬を処方している場合は、起立性のめまいについて定期
的に問診して起立性低血圧のチェックを行う。(グレードなし)
3.1.3: 高齢なCKD患者においては、その年齢、併発症およびその他の治療を注
意深く考慮に入れ、治療の段階的な強化と、電解質異常、腎機能の急激な低下、
起立性低血圧、薬剤の副作用を含む降圧に伴う有害事象に十分な注意を払って、
患者1人1人にあった診療を組み立てる必要がある。(グレードなし)
3.1.4: 成人CKD患者(糖尿病または非糖尿病)において、尿中アルブミン排泄
量が<30mg/24時間(またはそれに等量)で、診察室血圧が持続的に収縮期血
圧>140mmHgまたは拡張期血圧>90mmHgの場合は、降圧薬によって収縮期血
圧≤140mmHgおよび拡張期血圧≤90mmHgに継続的に保つよう治療すること
を推奨する。(1B)
3.1.5: 成人CKD患者(糖尿病または非糖尿病)において、尿中アルブミン排泄
量が 30mg/24時間(またはそれに等量)で、診察室血圧が持続的に収縮期血
圧>130mmHgまたは拡張期血圧>80mmHgの場合は、降圧薬によって収縮期血
圧≤130mmHgおよび拡張期血圧≤80mmHgに継続的に保つよう治療すること
が望ましい。(2D)
3.1.6: 糖尿病を合併している成人CKD患者において、尿中アルブミン排泄量が
30∼300mg/24時間(またはそれに等量*)の場合はARBまたはACE-Iを使用す
ることが望ましい。(2D)
3.1.7: 糖尿病の有無にかかわらず成人CKD患者において、尿中アルブミン排泄
量が>300mg/24時間(またはそれに等量)の場合はARBまたはACE-Iを使用す
ることを推奨する。(1B)
3.1.8: ACE-IとARBの併用をCKD進行阻止策として推奨するにはエビデンスは
不十分である。(グレードなし)
3.1.9: 小児CKD患者においては血圧が常にその年齢、性別、身長に応じた値の
90パーセンタイル以上になった場合降圧療法を開始することを推奨する。
(1C)
3.1.10: 小児CKD患者において(特に蛋白尿を有する場合)、収縮期および拡
張期血圧を常にその年齢、性別、身長に応じた値の50パーセンタイルを含むそ
れ以下に下げることが望ましい。ただしこの目標血圧に到達することが低血圧
に基づく自覚他覚症状により制限される場合を除く。(2D)
3.1.11: 小児CKD患者において降圧薬が適応の場合は、蛋白尿の量に関わらず
ARBまたはACE-Iを使用することが望ましい。(2D)
*24時間アルブミン排泄量と概ね等量̶24時間蛋白排泄量、アルブミン・クレアチニン
比、蛋白・クレアチニン比、蛋白試験紙法の結果̶1章の表7に示されている。
CKDにおけるAKIの危険度
3.1.12: 全てのCKD患者でAKIの危険度が高まっていると認識することを推奨
する。(1A)
3.1.12.1: CKD患者では、 介在する疾病に罹患している場合やAKIの危険度の
高い検査や処置を行う場合の管理は、KDIGOによるAKIガイドラインに詳述さ
れている推奨に従うべきである。(グレードなし)
たんぱく質摂取
3.1.13: 糖尿病を有した成人(2C)または有しない成人(2B)でGFRが
<30mL/min/1.73m2(GFRカテゴリーのG4-G5)の場合、たんぱく質摂取量を
0.8g/kg/日に下げることが望ましい。
3.1.14: CKDが進行する危険がある成人では高たんぱく質摂取(>1.3g/kg/日)
を避けることが望ましい。(2C)
血糖コントロール
3.1.15: 糖尿病性腎症を含む糖尿病の微小血管障害の発症を予防し進展を抑制
するために、目標とするヘモグロビンA1c (HbA1c)は∼7.0%(53mmol/mol)
を推奨する。(1A)
3.1.16: 低血糖の危険のある患者ではHbA1c <7.0%(53mmol/mol)とする
まで治療しないことを推奨する。(1B)
3.1.17: 併発症の存在、生命予後が限られている人、または低血糖の危険のある
人ではHbA1c目標値を 7.0%(53mmol/mol)より上にすることが望ましい。
(2C)
3.1.18: 糖尿病を合併するCKD患者の血糖コントロールは、血圧コントロール
と心血管障害の危険因子への対策、 ACE-IまたはARBの使用促進、 スタチン、
臨床的適応のある場合の抗血小板療法、といった多面的治療介入の一部として
行うことが望ましい。(グレードなし)
食塩摂取量
3.1.19: 禁忌でなければ、Na摂取量を<2g/日(5gのNaClに相当)に下げること
を推奨する(解説を参照)。(1C)
3.1.19.1: 小児CKD患者のナトリウム摂取制限は高血圧(収縮期または拡張期
血圧が95パーセンタイルを超える)または前期高血圧(収縮期または拡張期血
圧が90パーセンタイルを超え、95パーセンタイル以下)を有する場合は年齢別
の推奨一日摂取量Recommended Daily Intakeに従うことを推奨する。(1C)
3.1.19.2: CKDで多尿を伴う小児では慢性的な血管内脱水を予防し成長を促進
する目的で自由水および食塩補給を推奨する。(1C)
高尿酸血症
3.1.20: CKD進展抑制の目的でCKD患者に対し尿酸降下薬を使用することの是
非を判断するエビデンスは、高尿酸血症の症候の有無に関わらず不十分である。
(グレードなし)
生活習慣
3.1.21: CKD患者に対しては心血管系の健康度および運動耐用能を勘案して身
体運動(少なくとも30分、週5回を目標に)、健康的な体重(BMIで20∼25、
各国の統計に基づく)の達成、および禁煙を行うことを推奨する。(1D)
その他の食事指導
3.1.22: CKD患者は教育プログラムの一環として個々のCKDの重症度に合わせ
て食事指導の専門家による助言および情報を提供されるべきであり、必要に応
じて食塩、リン、カリウム、およびたんぱく質摂取についても指導を受けるこ
とを推奨する。(1B)
3.2 腎機能低下に伴う合併症
CKDにおける貧血の定義と診断
3.2.1: 成人および15歳を超えるCKD患者ではHb濃度が男性で<13.0 g/dL
(<130 g/l)、女性で<12.0 g/dl (<120 g/l)の場合貧血と診断する(グレードな
し)
3.2.2: 小児CKD患者では年齢が0.5∼5歳の場合は<11.0g/dl (<110g/l)、5∼
12歳の場合は<11.5 g/dl (115 g/l)、12∼15歳の場合は<12.0 g/dl (120 g/l)
で貧血と診断する。(グレードなし)
CKD患者における貧血の診断
3.2.3: CKD患者の貧血の有無を診断するためにヘモグロビン濃度を測定する。
(グレードなし)
GFR >60 mL/min/1.73m2では臨床的に適応がある場合に;
GFR 30-59 mL/min/1.73m2では少なくとも年に一度;
GFR <30 mL/min/1.73m2では少なくとも年に二度;
3.3 臨床検査異常を含むCKD骨代謝異常
3.3.1: GFR<45mL/min/1.73m2(GFRカテゴリー G3b-G5)の成人では、ベース
ライン値の確定および、予測式を使用していればその情報提供として、少なく
とも一度は血清カルシウム、リン、PTH、アルカリホスファーゼ活性を測定す
ることを推奨する。(1C)
3.3.2: GFR<45mL/min/1.73m2 (GFRカテゴリー G3b-G5) では、骨密度測定
を定期的に測定することは望ましくない(得られる情報が必ずしも正確ではな
いか、有用ではないため)。(2B)
3.3.3: GFR<45mL/min/1.73m2 (GFRカテゴリー G3b-G5) では、血清リン濃
度を当該施設の正常域に維持することが望ましい。(2C)
3.3.4: GFR<45mL/min/1.73m2 (GFRカテゴリー G3b-G5) では、至適なPTH
濃度は判明していない。Intact PTH濃度が正常上限を超える場合はまず、高リ
ン血症、低カルシウム血症、ビタミンD欠乏の有無を評価することが望ましい。
(2C)
CKD患者におけるビタミンD補給とビスフォスフォネート
3.3.5: 非透析CKD患者では、 ビタミンDの不足が予想もしくは実際に低値を示
さない場合は 、上昇したPTHを抑制する目的でビタミンDまたはビタミンDア
ナログをルーチンとしては投与しないことが望ましい。(2B)
3.3.6: 強い臨床的根拠がない限り、GFR<30m/min/1.73m2(GFRカテゴリー
G4-G5)ではビスフォスフォネートを投与しないことが望ましい。(2B)
3.4 アシドーシス
3.4.1: CKD患者で血清重炭酸濃度<22 mmol/Lであれば、重炭酸の経口補充に
より血清重炭酸濃度を正常域に維持することが、それが禁忌でない限り望まし
い。(2B)
4章:CKDのその他の合併症:心血管病、薬物投与量、患者の安全
性、感染症、入院、およびCKD合併症診断の問題点
4.1 CKDと心血管病
4.1.1: CKD患者はすべて心血管病の発症リスクが高いと認識することを推奨す
る。(1A)
4.1.2: CKD患者に対する虚血性心疾患の診療レベルは、CKDを理由に差別化さ
れるべきでないことを推奨する。(1A)
4.1.3: 動脈硬化性イベントのリスクを有する成人CKD患者では、抗血小板薬治
療を、その出血リスクが心血管系への効果よりも増大しない限り、行うことが
望ましい。(2B)
4.1.4: CKD患者の心不全に提供される診療レベルは非CKD患者のそれと同等で
あることが望ましい。(2A)
4.1.5: CKDで心不全を有する患者に、治療を強化または病態が悪化する場合は、
eGFRと血清カリウム濃度をモニターすべきである。(グレードなし)
4.2 CKD患者における心血管病の臨床検査を評価するときの問題点
BNP/N-末端proBNP (NT-proBNP)
4.2.1: GFR<60 mL/min/1.73m2 (GFRカテゴリー G3a-G5) の患者では、心不
全の診断と体液量の判定のために血清BNP/NT-proBNP濃度を注意深く、GFR
に応じて評価することを推奨する。(1B)
トロポニン
4.2.2: GFR<60 mL/min/1.73m2の患者で血清トロポニン濃度を急性冠症候群
の診断に用いる場合は、その判定を注意して行うことを推奨する。(1B)
非侵襲検査
4.2.3: CKD患者が胸痛を訴えている場合、非CKD患者に施行している診療と同
等に心疾患の有無とその他の疾患を評価することを推奨する(その後の治療も
同等に開始するべきである)。(1B)
4.2.4: 臨床家は成人CKD患者に対する非侵襲的検査(たとえば運動負荷心電図、
核医学画像、心エコ―検査)の限界について良く知り、それを踏まえて結果を
解釈することが望ましい。(2B)
4.3 CKDと末梢動脈疾患
4.3.1: 成人CKD患者では末梢動脈疾患の兆候を定期的に調べ、通常行われてい
る治療を考慮することを推奨する。(1B)
4.3.2: 糖尿病を有する成人CKD患者では定期的に足病変を診察することが望
ましい。(2A)
4.4 CKD患者に対する薬物管理と安全性
4.4.1: 治療薬物を処方する際にはGFRを念頭に投与量を決定することを推奨す
る。(1A)
4.4.2: 治療域や毒性域が狭く、投与量を正確に決定する必要がある場合または
GFRの推定が(例えば筋肉量が低下している場合などで)信頼できない場合、
シスタチンCの測定またはGFRの直接測定を推奨する。(1C)
4.4.3: GFR<60 mL/min/1.73m2 (GFRカテゴリー G3a-G5) 未満の患者では
AKI発症の危険度が高まる重篤な病態が発生した場合、腎毒性の可能性のある薬
物や腎排泄性の薬物の一時的中止を推奨する。これらの薬物としてレニン・ア
ンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬(ACE-I,ARB,アルドステロン阻害薬、
直接レニン阻害薬)、利尿薬、非ステロイド系抗炎症薬、メトフォルミン、リ
チウム、ジゴキシンが含まれ、さらにこれらに限らない。(1C)
4.4.4: 成人CKD患者では一般の市販薬や栄養・タンパクを含む栄養サプリメン
トを使用する前に医師または薬剤師の助言を受けることを推奨する。(1B)
4.4.5: CKD患者には薬草を使用しないことを推奨する。(1B)
4.4.6: メトフォルミンはGFR 45 mL/min/1.73m2 (GFRカテゴリー
G1-G3a) 以上の人には使用継続可能である;GFRが30-44 mL/min/1.73m2
(GFRカテゴリー G3b) の場合は再検討を;<30 mL/min/1.73m2 (GFRカテ
ゴリー G4-G5) の場合、中止することを推奨する。(1C)
4.4.7: リチウムやカルシニューリン阻害薬など腎毒性の可能性を有する薬物を
服用している人は全てGFR、電解質、薬物濃度を定期的にモニターすることを
推奨する。(1A)
4.4.8: 悪性腫瘍など様々な病態においても適切な治療はCKDを理由に拒否さ
れるべきではないが、細胞毒性のある薬物使用に際してはGFRの情報を基に投
与量の調節を行う必要がある。(グレードなし)
4.5 画像検査
4.5.1: 造影剤を使用する場合、急性腎機能障害の危険度と診断価値およびその
後の治療適応とを
にかけて判断する。(グレードなし)
造影剤
4.5.2: GFR<60 mL/min/1.73m2 (GFRカテゴリー G3a-G5) の全ての患者で
放射性ヨード造影剤の血管内投与による選択的検索を行う場合、次のKDIGOの
AKI Clinical Practiceガイドラインに従うことを推奨する:
高浸透圧性造影剤を避ける(1B);
造影剤の量はできるだけ少量にとどめる(グレードなし);
検査前後に腎毒性の可能性のある薬物を中止する。(1C);
検査前、中、後に適切な量の生理食塩液の補給を行う。(1A);
検査終了48-96時間後にGFRを測定する。(1C)
ガドリニウム造影剤
4.5.3: 他に方法がない場合を除き、GFR<15 mL/min/1.73m2 GFRカテゴリー
G5) の患者にはガドリニウム含有造影剤を使用しないことを推奨する。(1B)
4.5.4: ガドリニウム検査が必要なGFR<30 mL/min/1.73m2(GFRカテゴリー
G4-G5)の患者にはマクロサイクリックキレート剤を優先的に投与することを
勧める。(2B)
大腸検査処置薬
4.5.5: GFR<60 mL/min/1.73m2 (GFRカテゴリー G3a-G5) 未満の人または
リン酸腎症の危険のある人では経口リン含有大腸洗浄剤を使用しないことを推
奨する。(1A)
4.6 CKD患者の感染、AKI、入院および死亡の危険度
CKDと感染の危険度
4.6.1.: 全ての成人CKD患者には禁忌がない限り、年に一度のインフルエンザ・
ワクチンの接種を推奨する。(1B)
4.6.2: GFR<30 mL/min/1.73m2 (GFRカテゴリー G4-G5) で肺炎球菌感染症
の高リスク群(例えばネフローゼ症候群、糖尿病や免疫抑制薬服用)の全ての
成人は、禁忌がない限り、多価肺炎球菌ワクチンを投与することを推奨する。
(1B)
4.6.3: 肺炎球菌のワクチンを接種された成人CKD患者には5年以内に再接種を
受けることを推奨する。(1B)
4.6.4: CKD進行の高リスク群でかつGFR<30 mL/min/1.73m2 (GFRカテゴリ
ー G4-G5) の全ての成人にB型肝炎ワクチンを接種と、投与後の適切な検査に
より抗体出現を確認することを推奨する。(1B)
4.6.5: 生ワクチンを投与する際には患者の免疫状態を正確に把握し、当局およ
び国の基準に従うべきである。(グレードなし)
4.6.6: 小児のワクチン接種スケジュールは公的な国際的基準に従って行い、小
児CKD患者ではそれぞれの地域の推奨に従う。(グレードなし)
CKDにおけるAKIのリスク
4.6.7: CKDを有する全ての人はAKIのリスクが高いと認識することを推奨する。
(1A)
4.6.7.1: CKD患者において急性の病態でAKIのリスクが高まっている時、および
AKIの可能性を高める検査および手技中は KDIGOのAKIガイドラインに詳述さ
れている推奨事項を順守すべきである:。(グレードなし)
CKDと入院および死亡の危険度
4.6.8: CKD疾患管理プログラムは、当該地域のCKD患者の管理に最適な方法で
計画され、入院の危険度を低下させるべきである。(グレードなし)
4.5.9: CKD患者の入院および死亡を減少させる介入は、併発疾患・病態とくに
心血管病の管理にも注意して行われるべきである。(グレードなし)
5章:
専門医への紹介と疾患管理モデル
5.1 専門医療施設への紹介
5.1.1: 下記事項を有するCKD患者を腎臓病の専門的診療のできる施設へ紹介
することを推奨する。(1B):
AKIまたは急で継続持続的なGFR低下;
GFR<30 mL/min/1.73m2 (GFRカテゴリー G4-G5)*;
有意なアルブミン尿(ACR 300 mg/gCr(30 mg/mmolCr)またはAER
300mg/24時間、同等な検査としてPCR 500 mg/gCr( 50 mg/mmolCr)
またはPER 500mg/24時間)
CKDの進行(定義、第二章 2.1.3);
尿沈渣に赤血球円柱(赤血球が高視野20個より多い)が持続し、直ちには説明
困難;
CKD患者で4種類以上の降圧薬でも治療抵抗性の高血圧;
血清カリウムの持続的異常
再発性または広汎な腎結石症
遺伝性腎臓病
5.1.2: 進行性のCKD患者(検証済みの予測ツールによって示される1年以内に
腎不全になる危険度が10∼20%以上)には適切な時期に腎代替療法(RRT)を
計画するための紹介を行うことを推奨する。(1B)
*
もし、腎機能が安定していて他に異常がなければ、正式な紹介(例えば正式な
コンサルテーションおよびその後の治療)は不要かもしれないし、専門家から
の助言により当該施設で最良の診療が行えるかもしれない。このことは当該地
域の医療・健康システムに応じて決定される。
☨この目的は紹介の手遅れ(RRTを開始する1年以内の専門施設への紹介と定義
する)を防ぐためである。
GFRおよびアルブミン尿に基づく専門医紹介の決定。*その地域における診断と
紹介の基準に基づき紹介元の医師は腎臓専門医と相談することになる。
5.2 進行性のCKD患者の管理
5.2.1: 進行性のCKD患者には多職種ケアチームによる管理が望ましい。(2B)
5.2.2: 多職種ケアチームは食事のカウンセリング、腎代替療法の治療手段に関
する教育と相談、腎移植の選択、バスキュラー・アクセス手術、および倫理・
心理的・社会的ケアが可能なチーム、または他施設に紹介することでこれら全
てが可能にならなければいけない。(グレードなし)
5.3 腎代替療法開始の時期
5.2.1: 透析療法は下記の症状が1つまたは1つ以上あるときに開始すべきであ
る:腎不全に基づく症候および症状(漿膜炎、酸塩基・電解質代謝異常、掻痒
症);体液量または血圧のコントロール不能;食事療法に抵抗性の栄養状態の
進行性悪化;認知機能の低下。これらの症候はGFR 5∼10 mL/min/1.73m2で
あれば必ずではないが、しばしば発生する。(2B)
5.3.2: 成人の先行的生体腎移植はGFR< 20 mL/min/1.73m2で、かつ
過去6 12か月の間にわたって不可逆性のCKD進行が認められる場合に考慮す
べきである。(グレードなし)
5.4 包括的な保存的治療のための組織と進め方
5.4.1: 保存的治療は腎代替療法を希望しない人々にとっての治療法選択の一つ
であり、包括的な治療管理プログラムによって支援されるべきである。(グレ
ードなし)
5.4.2: 全てのCKD治療プログラムおよび治療を提供する者は人生の終末期ケ
アの必要性を認識している人々(保存的腎臓病ケアを受ける者を含む)に対し
て事前に治療計画を提示できるようでなければならない。(グレードなし)
5.4.3: 終末期ケアは、プライマリーケアまたは専門的ケアと共に当該地域の実
情にあった方法で協調して、当人および家族に提供すべきである。(グレード
なし)
5.4.4: 包括的保存的治療プログラムには症候や痛みのケア、心理的ケア、霊的
ケア、および死に行く患者・家族(家庭、ホスピス、病院などの場所に限らず、)
の文化的背景に適切な配慮したケア基準を用意し、死別のための支援を行うべ
きである。(グレードなし)
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