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と「相続」
25.「生前贈与」と「相続」と「相続対策」 (1)「生前贈与」と「相続」の関係 ① 「贈与税」と「相続税」は一連の関係にあります。 「贈与税」は、「生前に親か ら子への相続税の前渡し」なのであり、生前贈与しなければ、亡くなった時に相続 税として税金を取ることになり、結局は「生前か死後のどこで税金を取るか」の問 題なのです。 そこで、オーストラリア、シンガポール、香港では「親から子への 贈与税は取らない」ことにして、ドンドン贈与させ、タダで貰った子供はドンドン お金を使うので、国内消費は高まり、景気がよくなり、国の税収も増える仕組にな っています。 面白い考え方で、これを一部実行したのが、日本の「相続時精算課 税・贈与」等の制度になったのです。 ちなみに、相続税を廃止した国は、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、 イタリア、スエーデン、マレーシア、シンガポール、香港です。 相続税廃止の根 底には、相続税が事業承継の妨げになってはならないと言う考えがあり、広く海外 から事業家や富を集めたい、と言う目論見もあります。 ところで、法人からの贈与という考えはありません。 「贈与」は「相続税の前 渡」であり、あくまで個人にのみ認められる概念であり、法人から出て行くお金は 「給与」か「経費」か「損金」(もらった方は「給与」か「一時所得」)しか認め られていないからです。 ② 日本の「贈与税」と「相続税」の税率の比較 【 贈与税の速算表 】 課税価格 税率 200万以下 10% 300万以下 【 相続税の速算表 】 控除額 取得金額 税率 控除額 - 1,000万以下 10% 15% 10万 3,000万以下 15% 50万 400万以下 20% 25万 5,000万以下 20% 200万 600万以下 30% 65万 1億以下 30% 700万 1,000万以下 40% 125万 2億以下 40% 1,700万 1,000万超 50% 225万 3億以下 45% 4,700万 6億以下 50% 6億超 55% - 現行の日本の税制では、「生前贈与」は「相続」と比べて大変に税率が高いので、 生前贈与はなかなかやりにくいのです。 シンガポールの税制等を見習った改正が望まれます。 それでも、引き継ぐべき 相続財産が多い人は、現行の税制の中の「暦年贈与」や近年創設された「住宅取得 時の1,000万まで無税の暦年贈与」や「相続時精算課税・贈与」を活用して以下の ような相続対策を行うことになります。 -1- ※ 相続税の改正があり、贈与税が下がり、相続税が上がることになりましたので、 「相 続税の改正と相続対策」を参照下さい。 生前贈与 相続開始 被相続人が生きている ※ 死亡 相続問題は、生前に行えばほとんどが被相続人の思い通りに処理できるが、相続が 発生してから後では、「相続法に定められた通りに法定相続人に法定相続分を分け ることしかできない」ので、どの遺産を誰が相続するかで共同相続人間で紛争が起 きやすい。 「遺言書」で書き残す方法もあるが、わずかな法律的な文書では、説 明不足で、相続人の同意が得にくいこともある。 残された家族のそれぞれの幸せ を願う親の心を、生前から子供達に言い聞かせ、「生前贈与」で処理することが重 要になります。 (2)「暦年贈与」による相続対策 (1)「暦年贈与」の活用による相続対策 ① 「暦年贈与」は、毎年110万までは無税で、それを超える額についてのみ贈与税を課 すと言う制度ですが、相続税の計算の時には、相続開始3年以内の贈与までしか相 続財産には計算されません(相続法第19条、相令第4条、措法70の2、通達19-1)。 そこで、例えば、110万ずつ毎年子供に贈与し続ければ、110万×20年=2,200万 のお金や財産を贈与して、且つ、その分については相続財産に加算されない為、相 続税を払う必要もないことになるので、相続税を少しでも少なくしたいお金持の場 合は、この方法をとることになります。 尚、「相続時精算課税」と「暦年贈与」のどちらを選択するのが得か、計算する 必要がありますが、後述します。 ② ところで、「暦年贈与」で毎年子供に贈与する時は、110万までは無税なので、毎 年110万ずつ贈与する人が多いのですが、確定申告していない人が多い為、相続時 に税務署から拒否されることが多いのです。 例えば、子供名義の口座を作って毎年110万振り込んでいる人が多いと思いますが、 名義が子供でも、通帳と印鑑の管理が親にあれば、贈与は認められません。 そこで、毎年111万ずつ贈与して、超えた分の1万の10%である1,000円の贈与税を 払っていれば、贈与税の支払いとして税務署に証拠が残っているので、相続税に加 算されることも無く確実に贈与できるので、この方法をお勧めします。 ③ 暦年贈与での不動産の贈与については、具体的に後述します。 「直系尊属からの住宅取得資金贈与は1,000万まで無税の特例」の活用 (2) ① 「暦年贈与」の特例として、時限立法で、「直系尊属(両親・祖父母)からの住宅 取得資金贈与1,000万まで無税の特例」があります。 この特例は、麻生内閣が景 気対策で打ち出した景気刺激策の一環であり、鳩山内閣で拡充された「暦年贈与の -2- 特例」なので、 相続時に相続財産に加算されることはなく、無税で貰いっぱなしに できる制度です。 ② また、「直系尊属からの住宅取得資金贈与1,000万まで無税の特例」は、「相続時精 算課税・贈与」や「110万まで非課税の暦年贈与」との併合利用ができます。 例えば、6,000万の家を買う場合、親から2,500万の「相続時精算課税」と「1,000 万の住宅取得暦年課税の特例」「110万まで非課税の暦年贈与」を併用すれば、合 計3,610万までは親からの資金援助をとりあえず無税で利用でき、2,390万の住宅ロ ーンで自宅を持つことができます。 この場合、2,500万については相続時精算さ れるが、1,000万+110万については相続時精算はされない、と言う処理をすること になります。 ③ ・ 「直系尊属から住宅取得資金の贈与非課税特例」について 受贈者の要件 イ 贈与を受けた時 日本国内に住所を有すること。 ロ 国籍を有し、且つ、贈与者又は受贈者が贈与前5年以内に日本国内に住所を有 したことがあること。 ・ ハ 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(子・孫・曾孫)であること。 ニ 贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること。 住宅取得資金の範囲 イ 受贈者が自己の居住の用に供する一定の家屋を、新築もしくは取得、又は自己 の居住の用に供している家屋の一定の増改築等の対価に当てる為の金銭を言い ます。 例えば、父から土地建物を自己の居住の用に贈与された場合は、金銭では ないので、適用対象にならない。 (この場合は「相続時精算・贈与」の対象 として2,500万円までは非課税で処理することができる) ロ 上記家屋の敷地の用に供される土地も含むが、受贈者と一定の親族等特別の関 係にある者との請負契約の対価に充てるものは含まれない。 例えば、受贈者の配偶者及び直系血族、受贈者の親族で生計を一にしている者、 受贈者と内縁関係にある者及びその者の親族で生計を一にしている者、以上の 者以外で受贈者から受ける金銭等によって生計を維持している者及びその者の 親族で生計を一にしている者は、非課税の対象にならない。 ・ 一定の家屋の要件 イ 日本国内にある家屋で、登記簿上で50㎡(15.12坪)以上であること。 ロ 中古の場合は、耐火建物は25年以内に建築された物、非耐火構造の物は20年以 内に建築された物であること。 但し、「耐震適合証明書」又は「住宅性能評価書の写し」等で地震に対する安 全性に関わる基準に適合する建物は、非課税の対象になる。 ハ 住宅の1/2以上が居住の用に供される建物であること。 -3- ・ ・ 一定の増改築の要件 イ 増改築に要した費用が100万以上で、居住部分が1/2以上であること。 ロ 家屋の床面積が登記簿上で50㎡以上であること。 非課税となる金額 贈与により取得した住宅所得資金は、一人につき1,000万までが非課税となる。 例えば、祖父と60歳以上の父からそれぞれ1,000万ずつ合計2,000万の贈与を受ける ことができます。 ・ 非課税の適用を受ける為の手続 贈与を受けた翌年の3月15日までに、非課税制度の適用を受ける旨を記載した贈 与税の申告書に、計算明細書、戸籍の謄本、住民票、登記事項証明書、新築や取得 の契約書等の一定の書類を添付して、所轄の税務署に提出する必要があります。 ④ 「子や孫への教育資金1,500万迄の信託贈与非課税」の制度 子や孫への教育資金贈与の制度は、死期が近づいたと感じた高齢者が、急いで教 育資金という名で子や孫に1,500万円の贈与をすることで、子孫に教育を施し、且 つ、自分の相続財産を減らすことができる点で利用価値があります。 例えば、3人の子や孫の1,500万円づつ贈与すれば、4,500万のお金を送ること ができます。 但し、この制度は金融機関に信託し、教育資金にしか使えませんので、詳しくは 「相続税改正・増税とその対策」をご覧下さい。 (3)「相続時精算課税・贈与」での親から子供への贈与はで2,500万まで無税の活用 (1)「相続時精算課税・贈与」制度の概要 「相続時精算課税」の制度を使えば、65歳以上の親から、20歳以上の子供に対す る贈与は、2,500万まで無税で贈与できます。 これは、65歳以上になってそんなにお金を使う必要が無くなった親世代から子供世 代に対して、いずれは相続で移転する財産の一部を、無税で生前に前渡し・贈与す ることができるようにすれば、本当にお金を必要としている30歳~50歳位の世代が、 必要な家を買ったり、子供を育てたり、教養娯楽費を使ったりできるので、国民生 活が豊かになり、国内消費も拡大し、国内景気も良くなるだろうと社会経済政策か ら打ち出されたものです。 ちなみに、日本国民の個人資産は国富の80%あり、個人金融資産が約1,460兆円、 不動産資産が約1,160兆円ありますが、その70%強を65歳以上の人が持っている、 と言われています。 また、日本国民は、29歳で結婚し、子供ができたら子育ての 為に32歳で最初の家を買い、子育てと自己研鑽に励み、35歳~50歳の人は仕事の上 でも経済社会の中心として活動すると言われています。 そこで、この「相続時精 算課税」で、一番お金を必要としている30歳~50歳代の世代に、65歳以上の親世代 からお金が渡るようにすることは、国民生活を豊かにする意味でも、国内消費を活 発にして景気を良くする意味でも、誠に当を得た制度である、と言えます。 住宅 の取得は、人が生きて行く上で必要な衣食住の内でも一番大きな金額を必要とする -4- 上、住宅が売れると建築業、建材業、家財家具業、家電業、不動産業、金融機関等 々への経済波及効果が大きいので、景気対策としても活用されています。 この「相 続時精算課税」の主な適用要件と効果は以下の如くです。 ① 65歳以上の親から、20歳以上の子供に対する贈与であること。 ※ 尚、'11年度は住宅取得資金の贈与から親の年齢制限が撤廃されています(減時法)。 ② 年齢の判断は、贈与をする年の1月1日をもって65歳、20歳になっていること。 ③ 贈与する財産の内容は問わないので、金銭でも不動産でも何でも可能です。 ④ 不動産の贈与は、土地は「路線価」、建物は「固定資産評価価格」で評価される。 ⑤ 築年数や耐震適合証明書の有無にも区別はなく、土地だけでも建物だけでも利用で きる。 ⑥ 2,500万までは無税、それを超える分については一律20%の贈与税を課し、相続開 始時に、その金額を受け取ったものとして、相続財産に組入れて相続税の計算をし、 多ければ還付し、足りなければ相続税を払うことになります。 ⑦ 「相続時精算課税」と「暦年贈与」は選択制であり、「相続時精算課税」を1度利 用した場合は、その後の贈与に暦年贈与は使えなくなり、例えば、1,000万貰った 者は、その後貰った財産は2,500万までは無税、それを超える分については一律20 %の贈与税がかかることになります。 (2) 住宅取得資金として「相続時精算課税・贈与」を活用できる。 親世代に余裕があれば、子供の幸せの為に、住宅取得資金の頭金としてお金を贈与 することは、大変に生きたお金の使い方である、と思います。 ① 例えば、今アパート暮らしをしている子供が、賃料を85,000円払っているとすれば、 もし頭金を500万出してあげると、京成サンコーポ66㎡・¥2350万(+諸経費150万 必要)を2,000万の住宅ローンを組んで買うことができます。 借入金額2,000万・ 35年の元利均等返済・金利2.2%なら、月々の返済額は¥68,323円です。 これな ら管理費の20,000円を加えても、現在の賃料とほぼ同じ支払いで自分の家が持てま す。 賃貸は気に入らなければすぐに転居できる点は気楽ですが、釘一本打つのも、 犬猫を飼うのにも大家さんの許可が要るのでは、子育て上問題があるし、高齢にな るとアパートを借りるのが難しくなることも、現実的には厳しいものがあります。 ・ また、賃貸の場合、もしご主人が亡くなられた時に、収入の道が途絶えると出て行 くしかありません。 しかし、住宅ローンを組んで買った自宅の場合は、必ず団体 生命保険に加入しているので、その生命保険金で住宅ローンはなくなり、残された 家族が家を出て行く必要は無く安心です。 今までに、不幸にもご主人が亡くなら れても、ご家族が何不自由なく、むしろ元気に生きて行かれる奥様やご家族の姿を 多く見てきましたので、このことの大事さを身にしみて感じています。 ② 「相続時精算課税・贈与」を活用してお子様 の住宅資金援助をすることは、とりもなおさず相続(争族)対策にも家族対策にも なります。 贈与税もかからずに、自分のお子様の生活を援助することができれば、 以上のような理由で、余裕があれば、 -5- 親として安心だし、それに感謝したお子様との親子も関係も良い関係が保てること になるからです。 (4)「相続時精算課税贈与」と「暦年贈与」の選択はどうするか? 日本で、相続税を払う人は5%しか居ません。 95%の人には相続税は来ません。 そこで、ほとんどの国民は、「相続時精算課税贈与」と「暦年贈与」の選択を考え る必要はなく、「相続時精算課税」を利用して、住宅資金を贈与したり、自宅やア パート等の財産を贈与したり、と親から子への贈与を考えても、ほぼ問題がないで しょう。 資産家の場合は暦年贈与の法が有利な場合があります。 相続税が掛かるかどうかの判断基準としては、配偶者と2人の子供が居た場合、 金融資産と不動産資産を合計して、時価で1億5,000万未満の場合はほぼ相続税心 配をする必要はないでしょう。 何故ならば、不動産の相続税評価は、土地は路線 価、建物は固定資産評価価格で見ることで、ほぼ時価の70%~80%の評価に下がり、 その上「小規模宅地の評価減の特例」で、240㎡迄は自宅物件は20%評価、賃貸物 件は200㎡迄は50%評価、事業用物件は400㎡迄は20%評価になるからです。(詳細 は「豊かな老後と相続対策」「今すぐ始める相続対策」参照) (5)財産が多く相続税対策をする必要がある場合の「暦年贈与」の活用法 事業承継させる必要がある子供に対しては、会社の株や財産の一部を「生前贈与」 で徐々に移転する必要があります。 ① 財産が多く、且つ20年以上の時間がある場合ならば、暦年贈与の非課税枠を使っ て、長期間に少しずつ生前贈与するのが良いでしょう。 特に贈与する物が不動産の場合、土地は路線価(時価≒公示価格の80%)、建物は 固定資産価格(時価≒公示価格の70%)で評価されますので、生前贈与の方法とし ては非常に有利です。 例えば、富岡の土地50坪・築24年の建物30坪、時価6,000万円を子供に暦年贈与 する場合、土地の路線価は4,100万、建物の固定資産評価額は150万、合計4,250万 ですので、4,250万÷110万=38.63年となり、38分の1の持分を38回贈与すれば、 無税で贈与できることになります。 ② 更に賢い贈与の仕方としては、例えば、親孝行な同居の娘に送る場合ならば、最 初に建物を全部贈与しても、110万を超える分40万×10%=4万の贈与税を払えば、 居住権が確保できます。 その後、土地を1/20の持分(2.5坪、205万相当)ずつ 贈与していけば、毎年9,500円の譲渡税を払って、20年で譲渡してしまうことがで きます。 ③ この方法で、子供3人にそれぞれ贈与し続ければ、3つの不動産を20年で贈与して しまうことができ、残る相続財産を減らすことができ、相続税を節税できます。 更に、各子供達に公平な分配ができ、相続時の争いを無くし家族の仲の良い関係を 維持できて、親への感謝を感じられ、親として満足できるメリットがあります。 ④ 以上の方法で、生前贈与する時、一部の人間にだけ贈与をして、他の法定相続人の 遺留分に損害を与える場合には、「遺留分減殺請求権」の対象になりますので、他 -6- の子供達へも遺留分相当の贈与や相続分を配慮する必要があります。 (詳しくは「遺言と遺留分と遺留分減殺請求」参照) (6)財産が多くても、時間的な余裕がない場合の相続対策 ① 財産が多くても、 時間的な余裕がない場合は、「相続時精算課税」を活用して、一 挙に大きく移転する必要のある物を贈与することになります。 特に不動産の贈与は、現金の贈与よりは評価額が少なくなるので、節税対策として は役立ちます。 ② アパートの建物のみを、2,500万まで無税の相続時精算課税を利用して子供に移転 すれば、中古のアパートの建物の評価は固定資産税評価価格なので大変低い評価に なり、かなりの量を少ない税金で移転することができます。 例えば、富士見地区にある土地100坪・木造2階建150坪の2dk14室のアパート・年 間賃料収入¥1,344万、時価1億4,000万の場合、土地の路線価は7,500万・建物の 固定資産価額は減価償却が進んでいるので500万・合計約8,000万です。 そこで、建物全部500万と土地2,500万相当の持分1/3を相続時精算課税制度で生前 贈与すれば、贈与税は¥100万です。 土地の持ち分2/3は残りますが、残った時の 評価は、貸家建て付け地となり、7,500万×2/3×79%=¥3,950万になります。 ・ アパートを贈与する時に注意することがあります。 与することです。 ∵ 敷金相当の金額を合わせて贈 敷金は返済義務がありますので、「負担付き贈与」になり、 時価評価で計算することになりますので、相続時評価(土地は路線価、建物は固定 資産税評価)ではなくなるからです。 ・ 必ず敷金分を一緒に贈与しましょう! この場合、賃料は受贈者が受け取り、土地の所有者である親には年間¥60万位の地 代を払い、¥1,250万の賃料を蓄積すれば、3年後には土地の所有権も買い取るこ とができるでしょう。 ② 更に、アパートの贈与を受けた子供がその賃料を蓄積して、親の財産を買い取るこ とを繰り返せば、10年間で4棟のアパートの底地を時価の40%で買い取れる計算に なり、かなりの財産の移転ができるし、それだけ親の相続財産が減った分だけ相続 税の節税にもなります。 (詳細は「アパート事業を承継する人の上手な相続対策」参照) ・ 親子、親族間の売買については、贈与や相続の場合と異なり、相続税評価ではなく、 時価評価での取引になりますので、ご注意下さい。 ③ この場合も、他の法定相続人の遺留分を侵害しない範囲で行う必要があることは同 じです。 (詳しくは「遺言と遺留分と遺留分減殺請求」参照) (7) 20年以上連れ添った配偶者への贈与は2,000万までは無税の特例の活用 20年以上連れ添った配偶者への贈与は、2,000万までは無税です。 何故ならば、 夫婦としての共同生活を20年以上もしていれば、例えその一方の名義になってい ても、実質的には、他方の寄与分があっての預金や自宅だから、その潜在的共有持 -7- 分を分けることになるだけだから、贈与ではないと考えられるからです。 例えば、子供の居ない夫婦の場合、夫名義の自宅を、この制度を使って、妻に生 前贈与をしておけば、相続が発生して、夫の兄弟と自宅の相続で争うことを事前に 防げることになります。 尚、自宅の共有持ち分が残っていますので、遺言書に も、「自宅の所有権及び全ての財産を妻に相続させる」と書いて置けば、兄弟には 「遺留分権」はありませんので、「遺留分減殺請求権」は発生しません。 また、例えば、親不孝な子供が居た場合も、夫名義の自宅を、この制度を使って、 妻に生前贈与をしておけば、相続が発生して、子供とたった一つの財産である自宅 の相続で争うことになり、住み慣れた自宅を売って出なければならないことを防ぐ ことができます。 更に、自宅を配偶者と2人で所有することになれば、後日、どちらかが病気をし たり、介護が必要になって自宅を売却して老後資金を作る場合に、売却利益から居 住用家屋3,000万控除の特例を2人分合計6,000万の控除が受けられるので、ほとん ど譲渡税を払う必要が無くなって非常に有利になります。 ちなみに、この「おし どり贈与」は遺留分減殺請求権の対象になりません。(詳しくは「遺言と遺留分と 遺留分減殺請求」参照) 2010年2月14日 -8- 記