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Vol.6(PDF:1.08MB) 24時間体制で原子力発電施設の監視・点検に臨む
静 岡 県 御 前 崎 市 の 沿 岸 部 に立 地。敷 地 面積は160万m²で東西1.6km、南北1km に及ぶ。1976年、営業運転を開始。1、2 号機は、既に2009年運転を終了。総電気 出力が約360万kWの3~5号機は、11 年 5月、政 府 の 要 請を受 けて運 転 停 止。 を超えるシビアアクシデントにも対応す 現在、津波対策工事を進めており、想定 べく、数々の安全対策を実施している。 と隣接する掛川市、菊川市、牧之原 勤務している。うち6割が御前崎市 「 特 に 中 央 制 御 室 で は、 通 常 と は 期試験および異常時の対応である。 松井の主な業務は中央制御室での プラント監視、設備の巡視点検、定 い。 市の住民で、地域に根付いた発電所 異なる状態を早期に発見し対応しな 行われている。 術の維持・継承をしつつ、安全性を ュレーション訓練などをしたり、技 原子力発電所の事故を踏まえたシミ 現状は、運転停止中の浜岡で働く 従業員にとって、東京電力福島第一 と松井は語る。 の分解点検なども実施しています」 納容器内の機器や非常用炉心冷却系 台に設置されるガスタービン発電機 津波など過酷な重大事故に備え、高 務が日夜、 継続している。巨大地震、 原子炉をはじめ設備の監視・点検業 た。現在、 全機運転停止中であるが、 ベース電源としての役割を担ってき るまで、安価で安定的な電力供給の 年に政府の要請を受けて運転停止す 元の発電所として親しみもあった。 った。掛川出身の松井にとって、地 思った」ことが入社動機の一つとな 実際に当事者となって探求したいと か、 原 子 力 の 安 全 性 に 興 味 を 持 ち、 子力発電所との違いはどこにあるの 旧ソ連のチェルノブイリ原子力発 電所の事故をきっかけに「日本の原 務するベテラン運転員だ。 プは約 発電指令課長を中心にした各グルー 育直」という日勤が2週間ほどある。 後、運転技能を維持するための「教 間2交替制である。約2カ月続けた 発電部の勤務体制は昼夜の別なく 「 安 全 運 転 」 を 追 求 す る た め、 時 える。 名 で 構 成 さ れ て お り、「 フ 「 聴 診 棒 」 を 設 備 に 当 て て、 機 器 の 松井が日々最も大事にしているの は、 現場の機器の〝声〟を聴くこと。 感をフルに活用する仕事だ。 全体を見て歩く。設備の点検は、五 ビン建屋、屋外の取水槽などの設備 自ら足を運ぶ巡視点検では、毎日2 24 ァミリー」と呼ばれるほど結束は強 10 発する音を聴き、 触って熱を確かめ、 時間ほどかけて、原子炉建屋、ター や電源盤などの新たな設備増強に伴 今は、運転中にはできない原子炉格 浜岡原子力発電所発電部主任の松 井俊一郎は、1988年に入社して 機器の運転データなどが、少しで も通常と異なれば、即座に対応する。 要員により監視、点検、保修業務が 浜岡原子力発電所は、中部電力で 唯一の原子力発電所として、197 より一層向上させるための期間とい どをチェックしています。停止中の 計器類、数千に及ぶ計算機データな ければならないので、およそ千個の である。 現在、浜岡原子力発電所では協力 会社の従業員を含め約3800人が デンキをつなぐ 現場の底力 No. ❻ — 以来、 年にわたって同発電所に勤 五感をフルに活用し 時間 昼夜の別なく監視・点検 24 6年に運転を開始。以来、2011 い、現在も、稼働中とほぼ変わらぬ 原子力 発電施設の 監視・点検に 臨む 24時間体制で 従業員の6割は地元出身 地域に根付いた発電所 [浜岡原子力発電所] 25 8 場・ba - 2013 March Vol.6 Voice of the spot 9 においを嗅ぐ。 巡視中に設備の不具合を見つけた り、異音に気付いたりといった体験、 エリアは、防護服を着て巡回する。 事例を生かして同じトラブルを未然 中央制御室と同じ設備のシミュレーターを使った訓練風景 「 機 器 と 会 話 を し て 異 常 を 早 期 発 見するのが、運転員の役割」と自負 する。放射性物質を取り扱っている 松井俊一郎(まつい・しゅんいちろう) 中部電力浜岡原子力発電所 発電部主任。 静岡県掛川市出身。1988年入社。浜岡原 子力発電所の1~5号機すべての運転を経 験し、現在は、最上級のAクラス運転員(通 常起動停止操作および事故時の対応操作 が自ら的確にできる) として4号機の監視・ 点検に従事する。モットーは「確実な運転 操作と風通しの良い雰囲気づくり」。 に防ぐことが重要となる。 事故情報の蓄積と共有化で 万全の安全対策 トラブル対策やノウハウなども伝承 したい」という。 松井は 年の勤務を振り返り、「大 きなトラブルに遭ったことはない」 操作に対し、指差呼称を実践してい 主任の松井は、グループ員の安全 にも人一倍気を使う。一つひとつの 呼ぶ展示室が設けられている。 等を開示した「失敗に学ぶ回廊」と 事故から学んだ教訓、事故時の部品 センターには、技術の継承、過去の 反映する。敷地内にある原子力研修 備に変更があれば、すぐに手順書に 届く。原因や対処法は記録され、設 すると、運転員全員に一斉メールが そうになった経験をパソコンに入力 運転員は情報の共有と技術の継承 を大切にする。誰かが自分がミスし できるように人も機械もスタンバイ の合図が出ればすぐにでもスタート 「 今 は、 天 候 が 悪 く て 出 走 で き な いF1ドライバーの心境。『GO!』 停止中の今、どのようにモチベー ションを維持しているのか。 んでいく。 する電源設備の手順の習得に取り組 現在、電源機能喪失時の手順を再 確認しており、今後は、新たに設置 きたい」と語る。 遂行し、地域の方々にご安心いただ を目指しています。これらを確実に 工事を実施し、世界一安全な発電所 ときも落ち着いて停止操作を遂行し る。指差呼称は、ヒューマンエラー している。運転技術を磨き、万全の 過去の体験に基づき、あらかじめ 想定されるチェック項目について の防止に役立つ。松井が中央制御室 体制を維持していくことが、将来の た。 で操作する際に「起動します」と声 電力の安定供給のための使命、役割 は、 業 務 に 就 く 前 に、「 K Y( 危 険 に出せば、発電指令課長が「起動よ だと信じている。世界一安全なドラ 予知)」として情報が交わされる。 し」と応えてダブルチェックになる。 イバー(運転員)を目指す」と言う。 ても私の仕事。運転操作手順書など の資料は整備されているものの、手 順書に記載されている意味、過去の 撮影・下坂敦俊 文・重信秀年(フリーライター) 「 若 手 運 転 員 の 指 導・ 育 成 に つ い 停止後の気持ちを「浜岡は日本や 世界に先駆け、いろいろな津波対策 と 言 う。 4、5 号 機 停 止 が 決 ま っ た 25