...

代替技術の市場化に関する企業の意思決定と環境NG

by user

on
Category: Documents
10

views

Report

Comments

Transcript

代替技術の市場化に関する企業の意思決定と環境NG
社会系セミナー・レジュメ(7 月 15 日)
発表者:
松本泰子
代替技術の市場化に関する企業の意思決定と環境NGOの役割:
日本の「ノンフロン」冷蔵庫の事例研究
1.研究の目的
本報告では、非政府アクターが有効な気候レジームの形成に果たす役割を明らかにす
るために、気候変動問題の側面から、日本の家電メーカーによる「ノンフロン」
(注)冷蔵
庫の開発と商業化の事例を取り上げ、主に関係者へのヒアリング調査と文献調査を通じて、
メーカーの意思決定に及ぼした国際環境NGOの影響と役割を分析する。(注:ノンフロ
ン:オゾンを破壊するフロン・代替フロン(CFC, HCFC)も、オゾンは破壊しないが温室
効果ガスである代替フロン(HFC)も使用しない)
2.国際環境保護団体(以下、「NGO」とする)による炭化水素(HC)冷蔵庫キャン
ペーン
2−1
国際協定及び国内法における代替フロン(HFC,HCFC)の位置付け
2−2
代替フロンとノンフロン代替に関する主な科学的知見と技術的知見
の所在
2−3
HC 冷蔵庫キャンペーンの経緯
2−4
松下冷機の意思決定に対するほぼ同定可能なNGOの活動の影響
2−5
HC 冷蔵庫の市場占有率(1999∼2000)(出典:松下冷機)
ドイツ:ほぼ 100%、欧州:約 52%、中国:約 19%、世界:約 15%
日本における HC 冷蔵庫への移行状況
2−6
松下、東芝ともに主力機種はほぼ HC 化。一社を除き全メーカーが HC 冷蔵庫を販売。
3.NGOの言説と戦略
3−1
言説
・二つの地球環境問題(気候変動とオゾン層破壊)の政策的インターリンケイジの必
要性
・HFC は「解決」の一部ではなく、「問題」の一部である
3−2
戦略
既存および潜在的なノンフロンへの転換をユーザーメーカーに働きかけ、他の用途分野
への波及効果を通じて、国際的に代替フロンの需要を減らす
替が実際に可能であることを証明
→
4.
各国内の規制導入
→
→
+
ノンフロンの代
代替フロンの国際規制の強化と導入
代替フロンの生産・使用の全廃
NGO が果たした役割
①技術のプッシュ、市場のプル、規制のプッシュ(予測される規制を含む)(Rennings
2000、のエコイノベーションの決定要素)のすべての側面から活動を行った
1
②問題の異なる言説・観点の提供:政策的インターリンケイジの観点から問題の再フレ
ーミングを行い、主要なアクターに仲介した
③消費者の商品の選択時の優先的価値に影響を与えた
④国際市場への影響
⑤問題を社会的な問題として公論の場に持ち込んだ
5. 結論
①松下冷機などの日本の家電メーカーが HC 冷媒の基礎的な研究開発に着手するきっかけ
となったのは、ドイツメーカーによる HC 冷蔵庫の商業化であり、松下冷機の HC 冷蔵庫の商
業化の主な意思決定要因は、京都議定書に HFC が含まれたことであった。また、商業化の
予定を大幅に前倒しした最大の要因は、NGOの直接行動を含む要請行動だった。また、
NGOからの働きかけは、松下冷機の社内の冷蔵庫の HC 化の議論の後押しとなった。
②松下冷機の商業化の意思決定への NGO の影響は、京都議定書とドイツでの商業化という
二つの条件が前提となってはじめて有効だったといえる。一方、ドイツでは、HFC の国際
規制の可能性がまだ見えない段階で、主要メーカーが商業化を開始している。
③日独のメーカーは、IPCC や UNEP の科学的知見には意思決定の基盤を置いていなかった。
こうした科学的知見は、NGOによって再フレームされ、マスコミ、消費者、企業へと仲
介され、間接的にメーカーに影響を与えた。
④NGO が HC の商業化に大きな影響をもったメカニズム
NGOは、異なる目標、利害、価値規範をもつ多様なアクターに、国境を超えて、知
見と情報(4−②)を仲介した。その結果、ノンフロン代替の市場での主流化(あるいは
HC 冷媒の主流化)を共通の目標としてもち、自律的に機能する国境を超えた準ネットワー
クが形成された。ドイツでは商業化の過程で、NGOと企業アクターとの「協働」関係が
複数形成され、それがこのネットワークの核となった。
日本の商業化はドイツより 9 年遅れたが、欧州で形成された準ネットワークは、NG
Oや LPG 供給会社が知見・情報の仲介者となり、日本の消費者やマスコミ、LPG 供給会社
などに拡大されていった。ドイツでは、準ネットワークのアクター(特に企業アクターや
GTZ)は、市場における HC 技術のニッチを創出し、拡大し、管理・維持するプロセスで、
新たな知見と情報を生んだり獲得し、他のアクターにそれが直接、あるいはNGOや LPG
供給会社などを通じて伝達され、さらにネットワークが拡大するという動的なプロセスと
性質を持った。松下冷機も、HC 冷蔵庫の商業化以降、一面でこのネットワークの一部とみ
なすことができる。但し、日本では、ドイツのようなNGOと他のアクターとの明確な協
働関係や、知見や情報が仲介されることで新たな企業アクターが生まれるプロセスはみら
れない。
今後の課題:HC 冷蔵庫の商業化における日独の比較:
✏メーカーの商業化の前提条件の違いとその背景
✏環境 NGO とメーカーの協働関係の成立に関する違いとその背景
2
Fly UP