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2008年度版 - 兵庫教育大学大学院技術科教育研究室
研究報告書ダイジェスト 授業実践アイディア集 2008 授業を究める「14」のヒント 1. (国語) IC レコーダを用いた自己評価で対話能力を育む ・・・横山善彦・森山 潤・梅田規誉 2. (国語) 授業において児童の「話し合い活動」を促すポイント ・・・浦耕太郎・森山 潤 3. (算数・数学) 多様な考え方を引き出す算数科授業の開発 ・・・刑部裕介・伊藤博之・吉水裕也 4. (算数・数学) 問題の解決に活用できるように,図や表を使った考え方を習得する課題 ・・・栗山 純・松本伸示 5. (算数・数学) 算数・数学科における感覚的欲求に着目した授業分析法 ・・・小川康夫・米田豊・佐藤真 6. (算数・数学) え? 算数科の授業でソーシャルスキル・トレーニング!? ・・・鈴木まなみ・天根哲治 7. (算数・数学) 「あまりのあるわり算」への類似探求授業の導入 ・・・蔵ヶ崎真有・米田 豊・吉水裕也・増澤康男・崎谷眞也 8. (理科) パフォーマンス課題で活用する力を育む ・・・中井俊尚・永田智子・吉水裕也・米田 豊・渥美茂明 9. (理科) 身近な指示薬‐ムラサキイモの抽出液‐ ・・・阿部喜久代・吉水裕也・増澤康男 10.(社会) 批判・吟味活動を組み込んだ授業展開 ・・・石井寛和・吉水裕也 11.(社会) 子どもが「問い」をもつことができる小学校社会科授業の開発 ・・・前川高宏・吉水裕也 12.(保健体育) 子ども一人ひとりを生かした小学校体育科指導法の探求 ・・・巽 亮太・伊藤博之 13.(家庭) 高等学校家庭科において評価活動を取り入れる工夫 ・・・平野道子・永田智子 14.(総合) 「総合的な学習の時間」の再構築 ・・・木舩 和幸・米田 豊・吉水裕也・増澤康男 兵庫教育大学教職大学院 教育実践高度化専攻 授業実践リーダーコース 兵庫教育大学教職大学院 授業実践リーダーコース 授業実践アイディア集 2008 IC レコーダを用いた自己評価で対話能力を育む 横山善彦・森山 校種・学年: 小学校 潤・梅田規誉 5 年生 教科: 国語 単元名: 「インタビュー名人になろう」 光村図書出版平成 16 年度教科書準拠 あらまし ペアによるインタビューやグループでの話し合い活動などで,IC レコーダをマイク代わりに用い,話 し合いの音声を録音します。その後,録音された自分たちの対話を自己評価することで,対話の基礎的 なスキルを学習します。 手立てと活動 ○ペアによるインタビューやグループでの話し合い活動を実践し、項目にしたがって自己評価します。 インタビュ ーの様子を IC レ コ ー ダ に録音するよ IC レコーダを再 生 し て自 己評価 シ ー ト を使 ってイ ン タ ビ ュー の仕方 を チェックするよ。 インタビューの実践 【自己評価シート】 インタビューの振り返り 〔展開例〕 【ワークシート例】 <メタ認知> <対話能力> 期待される効果 「聞く力」, 「相手の話を受けて返す力」 F1 目標指向性 「話を進めていく力」,「話し合いに対 する意欲」,「思考力」を育てることが できます。 F2 評価基準 0.48 話す R=0.26 つなぐ R=0.56* 聞く R=0.56 ** 情意 R=0.67 ** 方法知 R=0.28 思考力 R=0.78 ** 0.59 0.64 F3 自己モニタ0.83 補 足 IC レコーダは決して安価ではありませんが,ビデオカメラ 1 台分の費用があれば,10 台近い IC レコ ーダを購入することができます。1 つの学校で 10 台あれば,各クラスでグループ活動をする際などに 有効に利用することができます。また,ビデオカメラで対話活動を撮影した場合に比べ,IC レコーダに は視覚的な情報がないため,音声言語に子どもの意識を集中させることができます。 出典)横山善彦(2009) 「IC レコーダを使った対話能力の育成」授業実践リーダーコース実践研究報告書(指導教員森山潤) 兵庫教育大学教職大学院 授業実践リーダーコース 授業実践アイディア集 2008 授業において児童の「話し合い活動」を促すポイント 浦耕太郎・森山 潤 校種・学年: 小学校 高学年 教科: 国語他 あらまし 授業で,児童同士の話し合い活動を促すポイントを,児童の意識実態の分析に基づいて整理しました。 話し合い活動への参加意識を高めるポイント 児童が「話し合い活動に参加したいと思う時の理由」を分析すると,下図の 6 つの理由が挙げられま した。これらの理由から,「課題の設定」,「場や集団の醸成」,「コミュニケーション支援」などに教師 が配慮することが,「話し合い活動」を活性化するポイントといえます。 3,話題のおもしろさ 課題の設定 5,自己との関連性 1,許容的雰囲気 4,話し合いに対する気分 2,表現交流の欲求 6,話し合いに対する肯定感 児童が話し合い活動に参加したい時の理由 場や集団の醸成 コミュニケーション支援 教師の手立てのポイント 話し合い活動での意欲を高めるポイント また,下図のように, 「話し合い活動」の中では,児童の「積極的な発言」が「話し合いの楽しさ」を もたらすと共に, 「自他の考えのちがいへの気付き」と「他者の意見による新しい考えの気付き」が「話 し合いの有用感」(話し合いが役に立ったと感じること)に影響しています。 積極的な発言 0.42 自他の考えのちがいへの気付き 話し合いの楽しさ 自他の考えの共通性への気づき 0.25 他者の意見による新しい考えへの気づき 0.49 他者の意見による自己の考えの修正 話し合いの有用感 このことから,①積極的な発言を促すこと,②自分の意見をしっかりと持たせること,③他者の意見 をしっかりと聴かせることが話し合い活動での意欲を高めるポイントとして大切だといえます。 自分の意見を積極 的に述べる 「話し合い活動」の活性化 自分の意見をしっ かり持つ 友達の考えに耳を 傾ける 話し合い活動による学習効果 ここで,話し合い活動の効果について国語科文学教材の事例を挙げます。下の図は,教材「ヒロシマ のうた」(東京書籍 6 年生国語(上))の授業において,単元全体を振り返って話し合い活動に積極的に参加 した児童とそうでない児童の感想文(事後)を比較したものです。感想文を「情報の取り出し」 ,「解釈」, 「価値付け」の 3 観点で評価した結果,いずれの観点でも,話し合い活動に積極的に参加した児童の方 が「読み」が深まる効果が見られました。 3.00 話し合い活動上位群 話し合い活動下位群 ** 2.50 2.44 + * 2.21 2.18 2.06 2.00 1.86 1.83 1.50 1.00 情報の取り出し 解釈 価値付け ** p<0.01 * p<0.05 + p<0.1 まとめ 「話し合い活動」を促すためには,話し合う形態の工夫(ペア・グループ・全体),話し合いやすい人 間関係づくりなど,多様な要因が複雑に関係し,決して簡単ではありません。しかし,「優れた授業は 対話的である」ことは広く知られています。児童の言葉が教室に,授業に広がり,深まっていけるよう, 教師の授業スキルを高めていくことが大切です。 出典) 浦耕太郎(2009)「「話し合い」を通して主体的に読みを深める国語科授業の工夫」,授業実践リーダーコース実践 研究報告書,(指導教員: 森山 潤) 兵庫教育大学教職大学院 授業実践リーダーコース 授業実践アイディア集 2008 多様な考え方を引き出す算数科授業の開発 刑部裕介・伊藤博之・吉水裕也 校種・学年: 小学校 4 年生 教科: 算数 単元名: 「式と計算のじゅんじょ」 啓林館出版平成 20 年度教科書準拠 あらまし 答えや解決方法が1通りに決まっている問題を学習課題として設定するのではなく,多様な答えや解 決方法のある問題を学習課題として設定し,子どもの多様な考え方を引き出す授業を行います。 手立てと活動 単元「式と計算のじゅんじょ」(全3時間)の ことができるようにさせます。視点の例として, 第3時「式の表し方とよみ方」において,次のよ 「同じまとまりをつくって求める(まとまり)」, うな学習課題を設定し,図に示された数を多様な 「●を重ねて求める(重複)」,「●を補充して求 式で表す活動を行います。 める(補充)」, 「●を移動して求める(移動)」の 4つがあります。 ●の数をいろいろなやり方でもとめよう。 そして,式のよみ方では,子どもたちに学習課 題で求めた式を発表させ,友達の求めた式から, ● ● 多様な方法で図に表すこと活動を行います。同じ ● ● 1つの式でも,違った方法で図に表すことができ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ることを理解させ,多様な方法で図に表すことが できるようにさせます。 また,子どもたちが求めた式や図を分類する活 動を通して, 「同じまとまりをつくって求める(ま とまり)」 , 「●を重ねて求める(重複)」 , 「●を補 充して求める(補充)」 「●を移動して求める(移 1つの視点でたくさんの式を立てるのではな く,いろいろな視点から,たくさんの式を立てる 動)」の4つの視点を明らかにし,多様な視点で 多様な考え方ができるように指導します。 【展開例】 学習活動 1 本時の学習課題を把握する。 ●の数をいろいろなやり方でもとめよう。 支援と評価 ・自分なりに工夫して求めることが本時の課題であ ることを意識付けする。 ・図の●を囲みながら,式を考えさせるようにする。 ・前の学習で学んだことを生かして,1つの式で表 ● ● ● ● すように促す。 ・並び方の特徴を捉えることを通して,どのような ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 方法で●の数を求めればよいのか見通しを持たせ る。 ・学習に見通しを持たせるために,例を挙げながら ルール説明を行う。 ルール ・線で囲んで図に表す。 ・線で囲んだ図を式に表す。 ・式は,必ず1つの式で表す。 ・式の中には,必ず掛け算を取り入れる。 ・●は付け足してもよい。 ・●は移動してもよい。 ・●は重ねて囲んでもよい。 2 学習の見通しを立て,自力解決をする。 ・ルールをうまく活用して,図を作成するように促 す。 ・困っている児童には,3つずつや4つずつなど, 同じ数ずつ線で囲んで,いくつ分かのまとまりを つくるように助言する。 ・いろいろな求め方をしている児童を称賛する。 ・なかなかいろいろな求め方ができない児童には, アクリル板で形どったピースを渡し,それ形に沿 って線で囲み,図をつくるように助言する。 ・図ではなく,式が先に思い浮かぶ児童は,式から 記入してもよいことを伝える。 3 比較・検討をし,考えを話し合う。 ・式だけを発表させ,他の児童に,書いた式の意味 をよみとらせる。 ・まとまり ・他の児童に,どのようにすればこのような式が成 ・補充 り立つのか図に記入させる。 ・移動 ・互いの式をよみ合うことで,図から式,式から図 ・重複 と関連付けて考えられるようにする。 ・自分とは違う観点から求めている友達のやり方を 見て,自分のやり方とどう違うのか意識させる。 ・●の数の求め方を4つに分類して,まとめさせる。 4 本時のまとめをする。 ・ふりかえりシートに本時のふりかえりを書かせ, ・授業を通してのわかったことや気づいたな どをふりかえりシートにまとめる。 自己評価させることにより,学習内容の定着を図 る。 出典)刑部裕介(2009)「多様な考え方を引き出す算数科授業の開発」授業実践リーダーコース実践研 究報告書(指導教員 吉水裕也・伊藤博之) 兵庫教育大学教職大学院 授業実践リーダーコース 授業実践アイディア集 2008 問題の解決に活用できるように,図や表を使った考え方を習得する課題 栗山 校種・学年: 中学校 純・松本伸示 2年生 教科: 数学 単元名: 「連立方程式」 『未来へひろがる数学2』啓林館平成 18 年度教科書準拠 あらまし 連立方程式の利用の学習で,立式のために数量の関係を把握する過程において,図や表を使って考え ることができるような課題を設定します。図や表を使うことを単に知識として習得するだけではなく, 問題の解決に活用できるようになることをねらいとします。 手立てと活動 ①導入の段階では,問題文を聞き取ります。それらの数量の関係を図や表を使って,1つだけでなくい くつかの考え方で表します。問題に集中させて,図や表を使うことへの抵抗感を減らすことができます。 (※それぞれの問について,いくつかの考え方を取り上げて発表させる。) (※1・2問目は解答をノートに書かない。3問目は各自の解答をノートに書く。) [入門編]ある学校の全校生徒の数は 327 人です。そのうち男子は 152 人です。 女子生徒は何人でしょう。 [初級編]ツルとウサギがいます。頭の数は合計 12 頭です。足の数は合計 40 本です。 ツルとウサギはそれぞれ何羽いるでしょう。 [本番] あるパン屋さんでは,パンを買うとポイントがもらえます。 メロンパン1個で3点,マロンパン1個で2点がもらえます。 メロンパンとマロンパンを合わせて9個買うと,ポイントがちょうど 20 点 たまりました。メロンパンとマロンパンをそれぞれ何個買ったのでしょう。 ②次の段階では,まず図を示し,そのような数量の関係になる問題を作ります。さらに,自分で作った 問題における数量の関係を,今度は始めに示された図とは別の図や表で表します。文章と図表とを双方 向に変換することで,図や表の使い方を習得し,数量の関係を把握する理解が深まります。 (※始めに示した図) 240 160 x○ x○ x○ x○ x○ x◇ y ◇ y ◇ y ○ x○ x◇ y ◇ y ◇ y ◇ y ◇ y ○ ③最後の段階では,文字の置き方,数量の関係の表し方,まとまりの基準とする全体量,などがいくつ も考えられる課題に取り組みます。使われる図や表も合わせると,とても多様な考え方をすることがで きます。ここでの解答も,1人が1つではなくいくつも考えさせます。 【ペンをもと通りに戻せるかな!?】 調べたことを発表するために,模造紙に書いてまとめることにします。 赤色と黒色のペンを使うので,F先生とW先生にペンの入った箱を借りに行きました。 F先生は「私は赤色をよく使うので,この箱には,赤色3本と黒色1本のセットが 何セットか入っているよ。」と言いました。 W先生は「私は黒色をよく使うので,この箱には,赤色1本と黒色2本のセットが 何セットか入っているわ。」と言いました。 みんなで使うため,スウガ君にそれぞれの箱のペンの本数を数えるように頼んだら, 「赤色は全部で19本,黒色は全部で18本です。」と 合計だけを数えて,2つの箱のペンを混ぜ合わせてしまいました。 さあ,2人の先生にきちんと返すために,ペンをもと通りの本数に戻してください。 期待される効果 教科書の問題を順に,1つの問題に対してよりよい考え方をするように授業を行った場合に比べて, 上記のように,1つの問題にいろいろな考え方をするように授業を行った場合では,正答率が高くなり (表 1),多様な考え方を正答にむすびつけることができるようになる(表 2)ことが期待できます。また, 考え方の種類が豊富になる(表 3)ことも期待できます。 表 1 テスト課題で正答を導いた生徒の割合の比較 統制群 N=35 実験群 N=34 正答者数 (%) 8 (22.9) 19 (55.9) 誤答者数 (%) 27 (77.1) 15 (44.1) χ2(1)=7.90 ,p< .01 表 2 考え方の個数と正答を導けたこととの相関 統制群 実験群 r 0.199 0.458** ** p< .01 補 表 3 テスト課題の解答における考え方の種類別の 個数の平均の比較 統制群 実験群 t値 M 0.23 0.03 2.52*(W) 情景図 (SD) (0.43) (0.17) M 0.46 0.29 1.23 n.s. 場面図 (SD) (0.61) (0.46) M 0.03 0.21 2.30*(W) 構造図 (SD) (0.17) (0.41) M 0.17 0.53 3.03**(W) 線分図 (SD) (0.38) (0.56) M 0.31 0.56 2.05* 表 (SD) (0.47) (0.50) ** p< .01 ,* p< .05 ,(W) ウェルチの法による 足 教科書の問題から離れてしまうのではなく,教科書の問題に上記のような問題を織り交ぜて取り組み ます。他の単元も含めて年間を通した取り組みにするためには,トピックス的な扱いではなく,日常の 授業の中で扱っていくようにすることが大切です。 出典) 栗山 純(2009)「多様な数学的な考え方を引き出す授業方略の研究」授業実践リーダーコース 実践研究報告書(指導教員:松本伸示) 兵庫教育大学教職大学院 授業実践リーダーコース 授業実践アイディア集 2008 算数・数学科における感覚的欲求に着目した授業分析法 小川康夫・米田豊・佐藤真 校種・学年: 小・中学校全学年対象 教科: 算数・数学 単元名: 全ての単元 あらまし 「感覚的欲求」とは、小さい「学習活動に対する感情の動き」のことである。微分的あるいは微小な 欲求のことで、子どもたちの「〇〇したい」という学習意欲とはいえないほど小さなものである。学習 意欲に関連した研究は沢山おこなわれているものの、授業の中で具体的に何をどのようにすれば生徒が 主体的になるのかということを述べたものは少ない。そこで、熟達教師のパーソナルセオリー分析を通 して、その要因を授業に取り入れることにより、授業実践における具体性を追究することが可能である。 そこで、「算数・数学科における感覚的欲求に着目した授業分析法を提案する。 手立てと活動 重松鷹泰の「授業分析の方法」に依拠しながら、授業者と生徒の双方向の視点から授業を分析する方 法を提案する。 小節による相互関連図に「感覚的欲求」と「数学不安」、 「教師の働きかけ」、 「学習活動に対する感覚 的欲求の程度」と「感覚的欲求と学習目標との関連度」を取り入れる点が特徴で、以下のような手順で 行う。 【授 業 分 析 の 手 順】 ① 授業を VTR に撮る。可能ならば前後 2 台で行う。 ② 教師の言葉、児童・生徒の言葉、教師や児童・生徒の授業の流れに関連する行動、雰囲気、 時間、板書を総合記録用紙にまとめる。 ③ 授業の流れを分節に分ける。 ④ 各分節を小節に分ける。 ⑤ 分節、小節に小見出しをつける。 ⑥ 授業の構造を考える。 ⑦ 児童・生徒に表れる「感覚的欲求」を抽出し、分節、小節ごとに整理する。その際、 「児童・ 生徒の不安」に関しても取り上げる。 ⑧ 授業者の児童・生徒への「働きかけ」を抽出し、分節、小節ごとに整理する。その際、「働 きかけ」以外のものでも授業の流れや児童・生徒の思考、感覚的欲求に大きく影響を及ぼし ているものについては取り上げることにする。 ⑨ 「感覚的欲求」と「教師の働きかけ」の繋がり(影響を及ぼしている関係)を考察する。 ⑩ 学級全体の感覚的欲求を 5 段階で評価し、□ 1 、□ 2 のように四角で囲んだ数字で表す。これ を「学習活動に対する感覚的欲求の程度」とする。事前にルーブリックを作成し、それを基 に評価する。 学習意欲が、本時の目標にどのくらい接近しているかを 5 段階で示し《1》、 《2》のような数 ⑪ 字で表す。これを「感覚的欲求と学習目標との関連度」とする。事前にルーブリックを作成 し、それを基に評価する。 ⑫ 「感覚的欲求に関する相互関係図」を作成して、授業の特徴や傾向をつかむ。 ⑬ 問題点を挙げる。 ⑭ 分析する分節を選ぶ。または、問題点が授業の流れに関するものであれば分節を限定しない。 ⑮ 問題点について分析をする。分析方法は問題点によって異なってくる。 例)教師の発話分析、子どもたちの論理のひびきあい等 ※③以降は、複数の分析者でチームを作り、共同作業にて行う。 小分節による相互関連図 授業の流れを小節 第 1 分節:ひき算をしよう に分けて作成した 第1小分節:75-57 1 《1》 □ 「小節による相互関 連図」に「感覚的欲 求」と「数学不安」、 「教師の働きかけ」、 「学習活動に対する 第2小分節-1 1 《1》 63-36 □ 第2小分節-2 3 《1》 □ 問題を予想する 4 《1》 第3分節:がったんぴい計算 □ 感覚的欲求の程度」 と「感覚的欲求と学 習目標との関連度」 【以下省略】 【以下省略】 を取り入れると右上のような図になる。 期待される効果 熟達教師の授業を上記の方法で分析することにより、授業の流れ、構造が明確になってくる。それに より、授業の中に潜む熟達教師の授業構成における意図や目標達成に向けての教師の働きかけとその意 図が見えてくる。これらの諸要因を整理して自己の授業に取り組むことにより、具体的な授業改善の手 だてとすることができる。 また、自己の授業を同じ手法で分析し、熟達教師のものと比較することで、自己の授業分析としても 活用することができる。 補 足 今回は、感覚的欲求に着目しながら、授業分析の方法を算数・数学においてその有効性を検証した。 しかし、この授業分析法は算数・数学科に特化されるのもではない。他の教科においてもその有効性は 望める。様々な教科で、様々な視点に着目して活用してほしい。その際、着目点に応じて「感覚的欲求」 と「数学不安」、 「教師のはたらきかけ」、 「学習活動に対する感覚的欲求の程度」と「感覚的欲求と学習 目標との関連度」に変わる指標を工夫するとよい。 出典) 小川康夫(2009)連続的な感覚的欲求を引き出し、確かな学力をはぐくむ授業構成-熟練教師 に見る授業理論を組み込んだ中学校数学授業-」,授業実践リーダーコース実践研究報告書, (指導教員:米田豊・佐藤真) 兵庫教育大学教職大学院 授業実践リーダーコース 授業実践アイディア集 2008 え? 算数科の授業でソーシャルスキル・トレーニング!? 鈴木まなみ・天根 校種・学年: 小学校 哲治 2 年生 教科: 算数科 単元名: 「形づくり」 東京書籍平成 16 年度教科書準拠 あらまし 教科の授業においてもソーシャルスキル・トレーニング(SST)を行うことができます。ここでは, 授業中における他者とかかわるソーシャルスキルとして,次のようなことを身に付けさせます。 ・ 自分の考えを持ち,積極的に発表する ・ 他者の発言に対して,質問や反論,付け足しなどをする このようなスキルを身に付けさせるために,算数科の本単元では,他者とかかわる場として作品を見 合う活動を行います。他者の作品を見ることで,学習を深められるとともに,作品を通してその作者に かかわることになり,他者とかかわるソーシャルスキルのトレーニングになります。 手立てと活動 ① 学習計画 本単元では,形づくりを行うことを通して,平面図形に親しみ,図形に関する学習の素地を養うこと が目標です。主に行う形づくりは,次の 3 通りです。 1)色板を並べてつくる (第 1,2 時) 2)数え棒を並べてつくる (第 4 時) 3)格子点を直線でつないでかく (第 5 時) これらの授業で,形づくりを各自で行った後,作品を見合う活動を学級全体で行います。 ② 見合う活動のポイント 視点を与えて互いの作品を見合わせ,ノートやワークシートに考えを書かせます。視点としては,気 づいたことを自由に書かせる,お気に入りの作品を見つけさせ理由とともに書かせる,作品の中にある 三角や四角の数を書かせたり三角の数が多い作品を探させたりするといったことが考えられます。 ③ 見合う活動の生かし方 お気に入りの作品や見合った感想を発表させます。発表したことについて他者がかかわっていけるよ うに教師は働きかけを行います。教師の働きかけにより,作品をさらに見させたり,他者の作品につな げさせたりし,他者にかかわる発言を促します。 このように,かかわり合いを広げていくとともに,図形に対する見方も広がっていきます。 見つけたことは 発表したい! もっと聞いてみたいな。 T:青い四角は 何かな。 窓かな。 ○○さんの ロケットが かっこいい。 T:他 に もロ ケ ット △△さんのも ロケットだけど, 並べ方が違うよ。 はないかな。 付け足しをしよう。 また,発表後に各自でもう一度考えを書かせることで,他者とのかかわりがどのような学習になった かを振り返らせます。それをもとに学習の評価を行います。 期待される効果 ① 他者とのかかわり方として,「進んで発表する」「進ん で質問する」 「進んで反論する(違う意見を言う)」力が つきます。 (授業中にどのくらいしていたかを自己評定させたところ, 評定平均値が,単元終了後において単元前より相対的に上 昇した。) ② 作品に対する興味を持たせることができ, 図形に対する見方が育ちます。 (授業が進むにつれて,A 評価の児童が有意に増加 し,C 評価の児童が有意に減少した。) ③ 他者とかかわることが「楽しい」と感じられ るようになります。 (算数の授業で楽しいことを 2 つまで選ばせたとこ ろ,「相互交流」(作品を見合う活動後の発表)を 「楽しい」と感じた児童が,単元終了後,有意に 増加した。) 補 足 本実践は,他者とかかわる場を設定することで,他者とかかわる経験をさせ,その中でソーシャルス キルを身に付けさせようとするものです。しかし,自分で考え,じっくりと形づくりに取り組むことも 大切です。児童の実態に合わせ,時間配分を考えて行わなければいけません。 ソーシャルスキルは,繰り返し行われることで定着していきます。継続的にどの教科でも,どのよう な場面でも機会を捉え,意識して行う必要があります。また,教科の授業の中では扱えないソーシャル スキルについては,道徳や総合的な学習の時間を利用し,意図的な SST を組み込んでいく必要があり ます。 出典) 鈴木まなみ(2009) 「他者とのかかわり合いを育てる授業に関する研究」授業実践リーダーコース実践研究報告書 (指導教員 天根哲治) 兵庫教育大学教職大学院 授業実践リーダーコース 授業実践アイディア集 2008 「あまりのあるわり算」への類似探求授業の導入 蔵ヶ崎 校種・学年: 小学校 真有・米田 豊・吉水 裕也・増澤 康男・黒岩 督・崎谷 眞也 3年生 教科: 算数 ねらい: ①自ら考えることで、既習の知識から未習の知識への見通しを持たせること ②興味・関心を持たせること あらまし 類似探求授業とは、兵庫教育大学崎谷眞也教授が提唱する授業方法で、ある事象を「似ている」 「似て いない」で分類する算数的活動である。本研究では、第3学年の単元「あまりのあるわり算」(全8時 間)の第1時において、考える手立ての一つとして導入した。 手立てと活動 類似探求授業は、 「似ているところ」 「似ていないところ」を自分たちで見つけ、検証し、概念を作っ ていくという、概念形成を重視した授業であるが、今回、 「あまりのあるわり算」単元の導入部への適 用を試みたところ、児童自らが考える手立てとして有効であることがわかった。 類似探求授業は、提示、例示、分類、発見、の4つのステップをもとに授業が構成されるが、各ス テップを図1をもとに説明する。 図1. 「あまりのあるわり算」における類似探求授業の学習ステップ ①提示:もとにする一つの算数的素材(数、図形、数量関係など)を提示する もとにする式「12÷4」を提示する。これは乗法九九を一回適用してできる除法計算で、割り切 れる場合であり、既習の学習内容である。 ②例示:指示されたもとにするものと「似ている」 「似ていないもの」を例示し、児童の意識を類似性 に集中させる 「似ているもの」(割り切れる式)である「18÷3」、「似ていないもの」(割り切れない式)で ある「15÷4」を例示する。 「15÷4」は乗法九九を一回適用してできる除法で、割り切れな い場合であり、この時点では未習の学習内容である。 ③分類:複数の算数的素材を、子どもたちと共に「似ている」仲間と「似ていない」仲間に分類する 「似ているもの」(割り切れる式)である「16÷4」、「似ていないもの」(割り切れない式)で ある「14÷3」を例示し、児童に分類させる。 ④発見・検証: 「似ている仲間」に共通する類似性を子どもたちが発見し、さらに検証過程を経て子ど もたちが自ら概念を作り出す 児童に試行錯誤しながら分類活動を行わせ、「似ているもの」が割り切れる式であり、「似ていな いもの」が割り切れない式であることに気づかせる。 類似探求授業は、本来、概念形成を目的としており、特に図形の概念(定義・特徴など)を、見つ けつくりだす単元においては、その効果が大きいと考えられる(1)。しかし、どの単元においても同様 の効果を期待することは困難な点もあり、単元の選択が重要であると考えられている。「あまりのある わり算」の単元では、数式を扱うため、数概念の形成が期待できるとは一概には言えない。本来の概念 形成の成果は期待できにくいといえる。したがって、類似探求授業を取り入れる意図は、①自ら考える ことで、既習の知識から未習の知識への見通しを持たせること、②興味・関心を持たせること、とした。 評価と期待される効果 類似探求授業は、 子ども自らが主体的に算数をつくりだすということをねらう一つの手法である。 本実践では児童自らが考える手立てとして、「なんだろう」 「おもしろそうだな」「むずかしそうだが、 何とかできそう」という意識を持たせるための導入部分に用いた。 「あまりのあるわり算」の研究授業では、既習の学習内容(割り切れる割り算)と未習の学習内容(割 り切れない割り算)を対象にすることで、児童自らが考え解法への見通しを持つことができた。また、 ある事象を「似ている」「似ていない」と分類する活動であるため、児童は、発見・検証を繰り返して いく中で、わかる喜びを感じ、考えることを楽しんでいた。類似探求授業は児童の興味・関心を引き付 けやすいものと考えられる。 こうした授業を積み重ね、 類似性を見つけるという思考活動を繰り返すことによって、考える力を 育成することができると捉えている。さらに、本実践では、似ている仲間と似ていない仲間に分類する 過程に話し合い活動を導入することで、自分の考えを表現する力を養うとともに、学び合う力と態度を 育成することができた。 (1)参考文献: 『平成16・17年度加西市教育委員会指定 学習指導研究発表会 加西市立北条小学校「わかる」 「で きる」「使える」確かな授業の創造ー授業改善!基礎授業・類似探求授業を通してー』2005 (指導教員:米田 豊・吉水裕也・増澤康男・黒岩 督・崎谷 眞也) 兵庫教育大学教職大学院 授業実践リーダーコース 授業改善ヒント集 2008 パフォーマンス課題で活用する力を育む 中井 校種・学年: 小学校 俊尚・永田 智子・吉水 裕也・米田 豊・渥美 茂明 6 年生 教科: 理科 単元名: 「生物とかんきょう」 新興出版社啓林館 平成16年度教科書準拠 あらまし パフォーマンス課題とは,リアルな文脈の中で知識やスキルを応用・総合しつつ使いこなすことを求 めるような課題(西岡 2008,p.14)のことです。このパフォーマンス課題を単元の中に位置づけ,児童 に取り組ませることで,活用する力を身につけさせていきます。知識量を測るようなテストでは,学ん だ知識を本当に理解できているのか評価することは難しいです。学んだ知識を実際に使いこなすことに よってはじめて本当に理解しているのかを評価することができます。そこで,ある一定の意味ある活動 を設定して,求められる能力や技能を使わなければならないような課題に取り組ませ,新しく作品や制 作物を作成させることで活用する力を育んでいきます。 手立てと活動 1.パフォーマンス課題の作成(西岡 2008) パフォーマンス課題を作るには,図1のような手 順で行います。 まず,単元の中核部分を見極めます。そして,こ の中核部分を問うような「本質的な問い」を設定し ます。その問いの答えとして「永続的理解」を明文 化します。この作業は,単元における目標を明確化 するということです。この「永続的理解」が発揮で きるように,パフォーマンス課題のシナリオを作っ ① 単元の中核部分を考える ② 「本質的な問い」を設定する。 ③ 「永続的理解」を明文化する。 ④ パフォーマンス課題のシナリオを作る。 図1 作成手順 ていきます。 2.「生物とかんきょう」の単元における「本質的な問い」 「永続的理解」 【本質的な問い】 生物は,周りの環境とどのようにかかわり合って生きているのだろう? 【永続的理解】 日光を浴びた植物は,自分で養分を作り出す。その植物を動物が食べ,その動物が,他の動物 に食べられている。生物は, 「食べられる・食べる」関係でつながっていて,自分たちだけでは, 生きられない。植物が出している酸素を動物が取り入れ,動物が出している二酸化炭素を植物が 取り入れて,お互いが生きている。また,どんな生物も,水なしでは生きられない。 3.パフォーマンス課題のシナリオ作り 「活用する」とは,場や状況が変わっても習得した知識・技能を実際に巧みに使いこなすことができ ることだと考えています。そのために,パフォーマンス課題のシナリオも,現実生活の中で,学習した ことが実際に活用できるようなリアルな文脈で設定する必要があります。そこで,以下の6要素に当て はめて設定していきます。 ①何が目的か? ②(児童の担う)役割は何か? ⑤生み出すべき作品・パフォーマンスは? ③誰が相手か? ④想定される状況は? ⑥(評価の)観点は? 【パフォーマンス課題】 あなたは,環境隊員に選ばれました。環境隊員は,全校生に向けて,生物と周りの環境とのか かわり合いの大切さを訴えなければなりません。そのために,それぞれの生物がどのようにつな がっているのか,つながりを図に描き,つながり方をまとめたレポートを作りましょう。また, つながりがとぎれたとき,どんなことが起きるか考えてまとめてみましょう。 このパフォーマンス課題に取り組ませることで,まず,自分たちが学んだ観察や実験や資料等の知識 を使って,関係を捉えさせます。そして,その事実から,実際に関係のバランスが崩れたときにどんな ことが起こるのか,今までの知識を活用しながら,自分なりに推論させていきます。このことによって, 活用する力を身につくと考えています。 4.学習活動 図2が,4次 12 時間の単元計画です。 まず,宇宙ステーションに何を運ぶかという導入 から,生物が生きていくための条件を考えます。そ の上で,パフォーマンス課題を与え,見通しを持っ て,食べ物・空気・水の3つの条件のかかわりを調 べます。そして,その実験や資料を基に,かかわり 方の関係図を描き,グループで検討会を行い,修正・ 改善を行っていきます。その関係図を基に,パフォ ーマンス課題の制作物としてのレポートを作成しま す。最後に,生物と環境とのかかわり合いの大切さ を訴える場を設定し,それぞれの考えを述べていき ます。 図2 学習計画 期待される効果 パフォーマンス課題の制作物である関係図を描くことによって,断片的であった知識を結びつけるこ とができ,概念を形成しやすくなります。そして,学んだ知識を活用して,現実生活で起こりうる問題 を自分なりに推論させることで,活用する力を身につけさせることができます。また,レポートを作成 することは,実験や観察から得た事実を明らかにし,そこから得た情報を基に,推論し自分の考えを意 見としてまとめることになるので,理科における言語力も育成できると考えられます。 パフォーマンス課題に取り組むことで,知識の習得にも有効であることも分かってきました。 出典) 中井俊尚『パフォーマンス課題の有効性と評価のあり方に関する実践研究』2008 兵庫教育大学大学院 報告書 兵庫教育大学教職大学院 授業実践リーダーコース 授業実践アイディア集 2008 身近な指示薬‐ムラサキイモの抽出液‐ 阿部喜久代・吉水裕也・増澤康男 校種・学年: 小学校 6年生 教科: 理科 単元名: 「水よう液の性質」(学習指導要領) 身近なものを用いた指示薬 水溶液の性質を調べる身近な指示薬として,教科書にはムラサキキャベツやペチュニア等が紹介され ています。ムラサキキャベツは「細かく切って煮,十分に冷めてから上澄み液を濾して使用する」ため 少々手間と時間がかかります。ペチュニアな どの花は咲いている期間が限られているため, 入手が困難な季節もあります。そこで入手が 比較的しやすく,抽出が簡単な身近なものと してムラサキイモに注目しました。教科書等 に記述の少ないムラサキイモを使用すること で児童は様々なものが指示薬としての可能性 を秘めていることに気づき,水溶液への興味 表 1. ムラサキイモの指示薬としての利点 1.身近な素材であること 2.酸性,アルカリ性どちらにも反応すること 3.反応した色が鮮やかで pH による違いにも敏感に 反応し液性の強弱まで示すことが可能であること →児童の興味関心を引きやすい 4.リトマス紙と同様の色の変化をすること 5.安定性が高いこと 関心が高まることでしょう。 抽出方法と使用例 【準備するもの】 ・ムラサキイモ(中くらい,約250g) ・ビーカー ・コーヒードリッパー ・キッチンペーパー (きめが粗いものと細かいもの,2種類あるとよい。 ) ・スプーン 【ムラサキイモの抽出方法】 ① イモは洗わず,そのまま電子レンジで加熱します。 (2~4分。内部の紫色が鮮やかになる程度) 加熱前 ② 加熱2分後 加熱4分後 熱いうちに皮をむきます。なるべく紫の濃い部分だけをビーカーなどに集めま す。(約 60~100g) ③ ②に 2.5~3 倍程度の水を加えてスプーン等で混ぜ,水が紫色になるようにしま す。 ④ コーヒードリッパーに,キッチンペーパーをセットし,ろ過します。 ※キッチンペーパーのセットのしかた… ペーパーをそれぞれ2つに折る。 はじめにきめの細かいペーパー を敷き,その上に粗いペーパーを 重ねる。 ←ドリッパー コーヒー用の紙フィルターは目が細かいので,濾過するのに時間 がかかります。また,フィルターがすぐに詰まってしまうので, 数回取り替える必要があります。より透明度を求める場合以外は キッチンペーパーで十分でしょう。 濾過した液をすぐ使わない場合は冷蔵庫で保存してください。 (常温で放置すると赤紫色に変化し,反応が鈍くなります。) 【ムラサキイモの抽出液の使用例】 抽出液 5ml に試薬 0.5ml を加えました。使用 A B C D E した試薬は以下の通りです。 A 水酸化ナトリウム水溶液(0.2%) B 重曹水(20%) C 水道水 アルカリ性 酸性 D クエン酸水溶液(10%) E 塩酸(8%) Bは青,Eは赤に変化しており,リトマス紙の変化の色と同じです。(A水酸化ナトリウム水溶液は 青緑に変化します。BTB液の中性の色と混同しやすいので注意が必要です。) 授業場面における活用例 表 2.に示したように,第2次の導入でムラサキイモの抽出液を使用しました。演示に際して,興味関 心を高めるよう,まずは水道水を滴下し変化がないことを確認し,これまで使用した水溶液1種類だけ (今回は重曹を使用)を滴下しました。ピペットの使い 表 2. 方を確認した後,児童が実際にムラサキイモの抽出液を 次 使って実験を行いました。 1 「水よう液の性質」単元の流れ 学習活動と学習内容 水にとけるもの 1 「とける」とは? 図 1.児童の記録例をみると,色の変化を絵や言葉で表 2 固体や液体が溶けている水溶液 現していることがわかります。また,考察場面では水溶 3 気体は水にとけるのか(1) 4 気体は水にとけるのか(2) 液の色の変化の比較から,水溶液のなかま分けに意識が 2 酸・アルカリ 5 向くように授業を展開しました。 身近にあるもので,水溶液の性質を調べよう ・身近なもので水溶液の色を変化させるものがある ことを知り,実際に実験する。 ・水溶液は3つの仲間に分けられることを知る。 図 1. 児童の記録例 6 リトマス紙を使って,水溶液の性質を調べよう 7 身のまわりの水溶液はどんな性質をもつか 8 水溶液の性質からわかること‐中和・酸性雨‐ 3 金属と水溶液 4 水溶液を見分けよう 出典)阿部喜久代(2009)「『科学的な問いかけ』に始まる小学校実験観察授業の構築‐GEMS の探究の方法を活用して‐」 授業実践リーダーコース実践研究報告書( 指導教員 増澤康男 ) 兵庫教育大学教職大学院 授業実践リーダーコース 授業実践アイディア集 2008 批判・吟味活動を組み込んだ授業展開 中学校社会科歴史的分野 単元「欧米の発展とアジアの植民地化」 石井寛和・吉水裕也 校種・学年: 中学校 教科: 社会科 歴史的分野 大阪書籍平成 17 年度教科書準拠 単元名: 「欧米の発展とアジアの植民地化」 あらまし 社会科の授業に資料を用いて,予想や仮説の批判・吟味活動を組み込むことで社会の総合的な理解を させます。 手立てと活動 授業展開に際しては,原田智仁氏の理論批判学習に依拠しています。 (1)単元を貫く問題を生徒に把握させます。 (2)単元を貫く問題に対する仮説を設定します。 (3)仮説をいろいろな事例・資料から仮説の正否を調べ,仮説の修正・改善を行います。 (4)修正・改善した仮説を新しい事例・事象に応用し,理論の発展を行います。 〔単元構成と問いの例〕 第1時 市民革命(2 時間) 「なぜ市民は市民革命で議会政治を確立したのか。」 「なぜ市民革命で市民は自由・平等を国に求めたのか。」 (使用資料) すべての人間の権利をうたった独立宣言 (二谷貞夫ほか, 『忙しい現代人のためのものがたり世界 史-65 篇』, 一橋出版, 2003, p.204)ほか 第2時 産業革命(1 時間) 「なぜ産業革命によって資本主義が確立したのだろうか。 」 (使用資料) 鉄道網,1840 年頃-1900 年頃 (ラングトン/モリス編, 米川伸一/原剛訳, 『イギリス産業革命地図』, 原書房, 1989, p.89)ほか 第3時 近代世界の成立(1 時間) 」 「なぜ近代化した国は植民地を拡大したのか。 (使用資料) 「世界の工場」イギリスと世界の一体化 (宮崎正勝, 『文明ネットワークの世界史』, 2003, p.213) ほか 〔具体的資料例〕17~19 世紀の世界 イギリス アメリカ 年 フランス 日 本 エリザベス 1 世即位 1558 東インド会社設立 1600 清教徒、プリマス上陸 1620 権利の請願 1628 清教徒革命(~47) 1642 名誉革命(翌年権利の章典) 1688 ○産業革命 関ヶ原の戦い ルイ 14 世の絶対王政 ○鎖国体制 ○元禄時代 アメリカ独立戦争(~83 年) 1775 (1760 年代~) (翌年アメリカ独立宣言) 合衆国憲法制定 ○アヘン戦争 1787 1789 フランス革命、人権宣言 ○寛政の改革 1804 ナポレオン、皇帝に即位 ○外国船の接近 ○産業革命(1830 年代~) 1853 ○産業革命(1830 年代~) ペリー来航 南北戦争(~65) 1861 ○尊皇攘夷運動さかん 奴隷解放宣言 1863 ○明治維新 1871 廃藩置県 (筆者作成) 〔具体的な知識構造〕 近代世界の成立 「中核」地域が「周辺」地域を植民地として支配下へ組み込むことで世界的分業体制が成立し,近代世界が形成された。 ①「中核」地域は産業革命による工業製品の生産が可能な地域である。 ②「周辺」地域は,「中核」地域の支配下にあり,食料・原料の生産に特化した地域である。 ③「中核」地域は,「周辺」地域に原料供給と市場拡大を目的に植民地・従属地化を展開した。 ③-1 イギリスは,イギリス・インド・清の三国貿易から清の従属化を展開した。 ③-2 イギリスは,インドに対して,綿花の原料供給と工業製品を販売する市場としてインドの植民地化を展開した。 ④「周辺」地域から原料・食料を生産し「中核」地域へ輸入し,「中核」地域で工業製品に加工・再出荷することで世界的分 業が成立した。 期待される効果 単元を貫く問いに対して,生徒が予想し,仮説を立てます。そして,その仮説を検証する際,政治・ 経済などの側面から文献資料,図表,地図,分布図などを用いて調べることで,社会事象を政治や経済, 地理などの側面から総合的に理解させることができます。また,単元を貫く問いに対する一つの仮説を 政治・経済などから検証するとともに,複数の資料を用い,それぞれの内容を調べることで批判的な思 考を生徒に形成することができます。 補 足 単元を貫く問いを設定する際には,「産業革命」や「資本主義」などのその時代の特色を表す社会事 象を対象とします。また,仮説を調べる際には,一つの資料だけでなく,いろいろな資料をそれぞれの 資本家や労働者などの立場の視点から,仮説の内容を調べることで,生徒に批判的な思考力を育成する ことができます。 参考文献)原田智仁, (2000), 『世界史教育内容開発研究』, 風間書房 出典) 石井寛和(2009)「科学的社会認識を形成する中学校社会科歴史的分野の授業開発」授業実践リーダーコース実践研究報告書 兵庫教育大学教職大学院 授業実践リーダーコース 授業実践アイディア集 2008 子どもが「問い」をもつことができる小学校社会科授業の開発 ―体験的活動の組み込みをとおして― 前川高宏・吉水裕也 校種・学年: 小学校 5 年生 教科: 社会科 単元名: 「わたしたちの生活と情報」 東京書籍出版平成 16 年度検定教科書準拠 あらまし 導入部分で体験的活動「ニュース番組づくり」を取り入れます。体験的活動から授業へ入ること により児童が自ら問いをもつことができ、子どもたちがミクロな視点から問いを持つことができる 授業の展開をします。新学習指導要領では、目標の(2)内容の(4)で扱われています。 手立てと活動 「ニュース番組づくり」では、学校で起こった身近なニュースを見つけだし、事件報道の形式で 30 秒のニュース番組を各グループがつくります。そして各グループが視聴者に伝えるための工夫 を考え生放送に見立てて発表します。その後、実際のニュース番組との比較から自分たちが制作し たニュース番組との違いを検証していきます。 ニュース番づくりの手順 [①~③:第1時の後半、⑤・⑥:第2時、⑦第3時後半] ①ニュース番組をつくるためのルールを確認する(人を傷つける内容にしない、嘘を書かないなど) (5 分) 。 ②ニュースのテーマを決める(5 分) 。 ③取材方法を話し合う(5 分) 。 ④グループで役割(ディレクター、アシスタントディレクター、カメラマン)を決める(5 分)。 ⑤ニュース番組の原稿づくり(原稿づくりシートを使用する)(20 分) 。 ⑥リハーサルをする(工夫できる所を見つけだす)(25 分)。 ⑦ジグソー学習の要領で同じ役割をした子どものグループをつくり、意見交換をする。 (20 分) 。 実際のテレビ番組との比較 [第4時のうちの 32 分] ①実際のニュース番組をテレビで流す(2 分) 。 ②視点を与える(テロップは何回出ているか、場面の切り替えは何回か、場面ごとの時間は何秒間 か、5W1H は入っているかを児童に発表させる) (5 分) 。 ③もう一度ニュースを見ながら、答えを見つけていく(10 分) 。 ④自分たちのニュース番組と実際のニュース番組とを比較しどこが似ているのか、どこが違うのか を見つけだす(15 分) 。 授業の流れ 第7時 探求 情報とはなにか。身近な情報にはどのようなものがあ るか。 情報は私たちの生活のなかでどのような役割がある か。テレビのニュース番組では今の出来事をすぐに流 している。 グループになり,各自の役割やニュース内容を決定し ニュース番組づくりをする。 原稿づくり。リハーサルを行う。各グループのリハー サルを見て工夫されている点などを取り入れる。情報 の伝え方の工夫をする。 生放送をする。各グループの放送から何が伝えられて いるのか考える。各役割から気づいたことを話し合う。 ニュース番組づくりを通し,情報を発信するために多 くの役割が必要であることに気づく。 クイズの答え合わせをもとに,ニュース番組を分析す る。ニュースづくりは多くの時間や工夫があること気 づく。自分たちで制作したニュース番組と比較し違う ところを発見する。 テレビのニュース番組と自作のニュース番組を比較し 出た問いから,視聴者に見てもらうために,放送局で はわかりやすく正確なニュースをつくっていることを 学ぶ。地域にあった放送など工夫していることを知る。 今までにみたコマーシャルから印象に残っている物を 出し合う。 コマーシャルは,私たちの生活にどのような影響があ るか テレビの広告と新聞の広告との違いについて調べる。 インターネットと広告にはどのような関係があるか。 第8時 探求 情報はコンビニエンスストアでの情報について。 コンビニエンスストアの情報と工場の関係について。 第9時 探求 インターネットによって便利になったことについて話 し合う。 インターネットによって困る点についても話し合う。 便利な情報を上手に使うためにどうしたらよいか。 まとめ。 第1次 情報収集 疑似体験 第1次 第2時 疑似体験 第3時 疑似体験 第4時 比較 探求 第5時 探求 検証 第6時 情報収集 第2次 第3次 第 10 時 まとめ 期待される効果 導入部分に体験的活動を組み込むことで、教科書で習う事象と体験で得たこととのギャップから 児童が自ら問いをもつことができます。本授業の中でも子どもたち自ら「テロップはどうやってだ すのか」や「ニュース番組は何人でつくっているのか」などのミクロな問いをもつことができまし た。 補 足 ビデオカメラをつなぐテレビモニターは大型のもの(授業で使ったテレビは 32 インチ)でなけ れば子どもたちに見えにくいです。 出典) 前川高宏(2009)子どもが「問い」をもつことができる小学校社会科授業の開発―体験的 活動の組み込みをとおして―、 授業実践リーダーコース実践研究報告書 (指導教員 吉水 裕也) 兵庫教育大学教職大学院 授業実践リーダーコース 授業実践アイディア集 2008 子ども一人ひとりを生かした小学校体育科指導法の探求 巽 校種・学年: 小学校 亮太・伊藤博之・吉水裕也 4 年生 教科: 体育 単元名: 「跳び箱運動」 教材: 開脚跳び、抱え込み跳び あらまし 能力混合グループを編制して体育の授業を行い、グループ活動の中で仲間と関わり合いを組織するこ とで、一人ひとりを生かした学習を進めていきます。器械運動を通して、技能や認識はもちろんのこと、 コミュニケーションや社会性など、道徳の面でも有効的な手立てです。 手立てと活動 ①能力混合グループの編制 運動能力や身体能力が高い子ども(以下:上位の子ども)や低い子ども(以下:下位の子ども)、上 位と下位の子どもとの運動能力や身体能力を相対的に比べて普通の子ども(以下:中位の子ども)を混 合に編制する能力混合グループで活動させます。 ②学習カードの活用 a 今日のねらい 技の仕方に対する自分の課題を考えて書き、意識化・明確化させます。自分の現時点での課題の設定 や課題の把握をさせます。ここでは技術面を書かせることに配慮します。 b 技の図説 技ができない子どもでも仲間にアドバイスができるように記載します。図説のポイントを活用して説 明するようにさせます。技のポイントを示すことにより、自分の現時点での進度やつまずきを把握でき ることを目的とします。 c 友達から(相互評価) 仲間の練習の様子や活動を見て、グループの仲間が評価あるいは、アドバイスをするようにします。 アドバイスカードに仲間へのアドバイスを書きます。アドバイスを書いてもらうことにより、現時点で の課題を明確化させ、次時で忘れないように文字にして残すことを目的とします。 d 自分から(自己評価) 本時の活動に関する評価を各個人で行います。相互評価(アドバイスカード)をもとに、次時への課 題を持つ・決めることを目的とします。何が良かった・悪かっただけではなく、「今日のねらい」につ いて自分で評価します。 ③課題設定 高さ4段などの同じ課題を設定し、話し合いや示範をさせて課題を達成させるようにさせます。でき る子どもは、よりきれいに跳べるよう、質の高い技能をめざします。 【学習展開】 【学習カード】 期待される効果 教師が跳べない子どもにつききりで指導するのではなく、能力混合グループでの活動を通して、跳べ ない子どもが跳べるようになります。また、上位の子どもはできない子どもに教えることより、技につ いて考える機会が生まれます。中位や下位の子どもが技をできることによって、グループでの一体感や 周りの子どもへの動機付けがなされます。低い段で繰り返し練習することにより、質の高い技能を身に 付け、高い段での試技でも正確に技ができようになります。そして、「技ができる」という技能面でし か見られないのではなく、技について考えることを通して、「技について理解できる・発見ができる」 という認識面でも効果が期待できます。道徳性では、グループ活動での話し合いや用具の準備・片付け を通して、協力する態度や仲間とともに活動する態度が育ちます。 補 足 上位の子どもは、より高く跳びたいという運動欲求をもっているため、すべての活動を能力混合グル ープ編制するのではなく、時にはグループ編制を解き、各個人の課題別の活動をさせます。また、上位 の子どもの運動欲求を満たすことだけを目的とせず、高い段を跳ぶ際は動作が大きくなるため、中位や 下位の子どもと教師と上位の子どもの試技を観察し、共に技について考える機会をつくることをします。 出典)巽亮太(2009) 「子ども一人ひとりを生かした小学校体育科指導法の探究」授業実践リーダーコース実践研究報告書(指導教員伊藤 博之、吉水裕也) 兵庫教育大学教職大学院 授業実践リーダーコース 授業実践アイディア集 2008 高等学校家庭科において評価活動を取り入れる工夫 平野 道子・永田 智子 校種・学年: 高等学校 教科: 家庭総合 単元名: 住生活の科学と文化 あらまし 高等学校における評価活動は、評定の証明に偏りがちです。生徒の学習支援のため、観点別評価を取 り入れられるよう、学習指導案、ワークシート教材、エクセルによる評価記録簿を国立教育政策研究所 教育課程研究センター(2004)「評価基準の作成、評価方法の工夫改善のための参考資料」をもとに、 住居分野を例にとって提案します。 手立てと活動 ①学習指導案の評価規準、並びにワークシートの設問はそれぞれ対応させることによって、生徒の学習 活動を評価します。すべての評価項目について評定をつけるのは教師側の負担が大きいので、本時の目 標が達成できているかどうかは、ワークシートの設問に生徒の考えを書かせる欄を必ず設け、そこを評 価することによって確認することとします。学習指導案の評価記録簿とワークシートの設問それぞれに ★印で表し、他の評価項目とはわけています。評価活動の結果、おおむね満足できる状況に高めるため の支援についても、提案します。 【学習指導案、ワークシート例】 ②★印の生徒の記述内容について評価記録簿に転記し、評価基準を明確にし、モデレーションしながら 評定をつけ、評価活動に役立てます。その際、教師の授業改善も図ります。 【評価記録簿例】 期待される効果 生徒にとって学習活動が促進され、教師にとっても困難で煩わしいとされていた評価活動が容易にな ります。 出典) 平野道子(2009)「高等学校家庭科における住居分野の教育内容とワークシート教材の検討」授業実践リーダーコース実践研究 報告書(指導教員永田智子) 兵庫教育大学教職大学院 授業実践リーダーコース 授業改善ヒント集 2008 「総合的な学習の時間」の再構築 木舩 和幸・米田 豊・吉水裕也・増澤康男 校種・学年: 小学校 3~6年 教科: 総合的な学習の時間 ねらい: ①児童につける力を明らかにした「総合的な学習の時間」の構築 ②評価の規準を明らかにした評価法の工夫 あらまし 「総合的な学習の時間」の改善を目的に、「食育」をテーマとしてゼロから再構築していった道筋を 示す。また、「総合的な学習の時間」の評価をどう行うのかについても、2つの実践を比較し、考察す る。 手立てと活動 1.「総合的な学習の時間」再構築の道筋(表1) 「総合的な学習の時間のカリキュラムづくり」(表1)の流れにそって説明する。ポイントは、でき るだけ多くの職員の共通理解を得ながら進めていくことにある。 【表1】 ①まず、学校教育目標を再確認する。 ②学校教育目標、児童の実態、保護者や地域、教師の願い、社会の 要請等を考慮し、「総合的な学習の時間」の大きな目標を立てる。 ③立てた目標の中で、 【表2】 今年度、特に力を入れ る重点目標を考え設 定する。 ④学習テーマ(例えば、 食育、環境、福祉等) を設定する。 ⑤学習テーマごとに、 達成目標を設定する。 ⑥今まで行ってきた評価の観点の妥当性を見直し、新たに 【表3】 観点の設定をする。また、「児童にどんな力をつけるのか」 を考えながら設定する。 ⑦「児童につける力の系統表」を作成する(表2)。 ⑧各学年で、学期ごとに、または年間を通して行う学習活 動を決め、実施の際の「児童につける力」の重点項目を表 にあらわす(表3)。 ⑨各学年が行う学習活動の内容を、現時点で書ける範囲であらわす。 ⑩全体計画表を作成する。その際、指導方法や指導体制、評価計画、地域との連携、中学校や近隣小学 校との連携等についても明記する。 2.「総合的な学習の時間」の評価方法(2例) ①ポートフォリオとルーブリックを使ったもの 評価規準を明確にするために、「児童につ 【表4】 ける力の系統表」と各活動における重点項 目」を見ながら、 「評価指標(ルーブリック)」 を作成する(表4)。児童に学習活動の足跡 をポートフォリオさせ、それを評価資料とし て、評価指標(ルーブリック)に照らし合わ せて評価する。さらに、自己評価(ポートフ ォリオに見られる記述)からだけでなく、他 者評価(教師の観察)も組み合わせて評価す ることで、より評価の妥当性と信頼性を高め ることができる。 ②「学習の見通しカード」を使ったもの ①のポートフォリオとルーブリックを使 【表5】 った評価法では、時間と労力がかかりすぎる という弱点を克服するために、山梨大学堀哲 夫氏の「1枚ポートフォリオ評価法」をもと に考え出したのが、1枚の中に単元の流れが 全て見えている「学習の見通しカード」であ る(表5)。児童一人ひとりの変容が一目で わかるこの学習カードは、実際に使用した教 師からも「指導や評価に役立てやすい。」と 好評だった。左図に記述されている文言は複 数の担任とともに考えた評価規準である。記 述されているようなことが概ね達成できていれば B、さらに高度な内容であれば A、達成できていなけ れば C とする。 期待される効果 「総合的な学習の時間」の再構築にあたっては、“明確にする”ということをキーワードにして行っ てきた。特に「児童につける力」を明らかにし、 「重点目標」を全担任が共通理解したことは、 “這い回 る総合”にならないために最も重要なことだと考える。 1枚の中に単元の流れが全て見えている学習カード(児童一人ひとりの変容があらわれている「学習 の見通し」カード)は、実際に使用した教師からも「指導や評価に役立てやすい。」と好評であった。 この「学習の見通し」カードとそれに評価規準を組み込んだカードは、時間と労力を必要最小限にとど め、実際に今後も現場で使っていけるものであると考える。 本資料は,授業実践リーダーコースの研究報告書として提出された研究成果を,教育現 場での授業改善に活用して頂けるように,ダイジェスト化したものです。これらのアイ ディアは,実践研究で得られたデータ(evidence)に基づいて発想・提案されています が,ポイントを分かりやすく表現するために,分析の結果や条件を省略して執筆してい ます。したがって,これらのアイディアが,必ずしも,期待される効果を確実に保障す るものではありません。あくまでも,実践のヒントとしてご活用頂き,授業者の目的や 児童生徒の実態に合致するように,適切にデフォルメして頂ければ幸いです。 http://www.hyogo-u.ac.jp/expert/ 授業 を究 める ! 学校 現場 と共 に! 研究報告書ダイジェスト版 「授業実践アイディア集」2008 発行者 学校教育研究科 兵庫教育大学大学院 〒673-1494 発行年月 教育実践高度化専攻 授業実践リーダーコース 兵庫県加東市下久米 942-1 2009 年 3 月 1 日 本誌に関するお問い合わせ、本コースに関するお問い合わせは下記メールアドレスまで。