Comments
Description
Transcript
概要版②(PDF:4568KB)
第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 第2章 キャンプ瑞慶覧西普天間住宅地区の総合整備計画策定 に向けた検討調査 キャンプ瑞慶覧西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けて、道路交通や循環型 社会の形成、自然環境の保全及び回復、良好な景観形成、安心安全な環境に関する事 項について検討した。 今回調査(平成 26 年度) 宜野湾市跡地利用計画 総合整備計画策定に向けた検討内容 交通通信体系の整備に関する事項 〇道路交通 反映 中南部圏における道路ネットワーク、国際医療拠点の 形成等に伴う発生集中交通量を想定した道路計画の 検討 総合整備計画 生活環境の整備に関する事項 〇都市と自然の共生による豊かな生活環境の創造 跡地利用推進法第20条、21条 公園事業、下水道事業等 ①地域の総合整備に関する基本的方針 に関する事項 〇循環型社会の形成に向けた先進的まちづくり スマートシティ 〇良質な教育環境・医療環境の提供 自然環境の保全及び回復に関する事項 〇緑 ②交通通信体系の整備に関する事項 ③生活環境の整備に関する事項 中南部都市圏における地区内の「緑」や「水」の役割 (価値)を見出すとともに、歴史文化の側面からも、 それらのあり方の検討 ④農林水産業、商工業その他の産業 の振興並びに観光及び保養地の 開発に関する事項 良好な景観の形成に関する事項 〇景観 ⑤自然環境の保全及び回復に関する 事項 景観特性を捉え、保全と創出方策の検討 その他地域の総合整備に関し必要と認める事項 〇防災機能 安心安全な環境として、スマートシティとユニバー サルデザインとの一体的な視点での検討 〇ユニバーサルデザイン 多様な来訪者に対応した環境及び災害時の避難誘 導の視点での検討 ⑥良好な景観の形成に関する事項 ⑦その他地域の総合整備に関し必要 と認める事項 調和 国の取組み方針 跡地利用推進法第27条 情報収集等 農林水産業、商工業その他の産業の振興並びに観光及び 保養地の開発に関する事項 「農林水産業、商工業その他の産業の振興並びに観光及び 保養地の開発に関する事項」に関して以下の情報を収集。 (収集する情報) ○最先端医療施設の周辺環境 ○医療関連企業の集積 ○国際的な医療人材の育成 ○医療ツーリズム(医療施設と保養施設) 等 ①拠点返還地の整備の方針に関す る事項 ②拠点返還地において実施すべき 事業及び実施主体に関する事項 ③重点的に推進すべき公共施設の 整備に関する事項 有識者への意見聴取 ●総合整備計画策定に向けた検討にあたり、以下の点につい て有識者への意見聴取を実施。 専門分野 ④産業の振興に関する事項 動物生態学、島嶼環境学 ⑤その他拠点返還地の整備に関す る事項 地域振興、造園学 緑地計画 ランドスケープ 都市計画、交通計画 都市計画、地域づくり 34 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 1.西普天間住宅地区における広域的観点からの検討事項 西普天間住宅地区における広域的な位置づけと跡地利用計画の検討状況を踏まえ、 広域的観点から検討すべき事項を整理する。 (1)西普天間住宅地区の広域的な位置づけ 西普天間住宅地区は、平成25年4月に「沖縄における在日米軍施設・区域に関す る統合計画」において、の返還時期が「2014年度又はその後に返還可能」と発表 され、平成27年3月に返還されることが明らかになった。 そして、平成25年5月に特定駐留軍用地として指定され、平成26年1月には初 の拠点返還地として指定された。 当地区における広域的な観点からの位置づけは以下のとおりである。 ①広域的な道路ネットワーク 当地区周辺には、国道58号、西海岸道路、国道330号が存在し、また沖縄自動 車道や国道329号に接続する県道81号線が隣接している交通の要衝である。 西海岸道路が供用すると、那覇空港とのアクセス性が向上し、さらに今後返還予定 の普天間飛行場跡地の道路整備と連携することにより、地区内の交通のみならず、隣 接する道路ネットワークと一体となった機能を担う地区となる。 ②広域的な緑のネットワーク 当地区の西側斜面地には、自然緑地が存在している。 普天間飛行場西側斜面の緑地や普天間飛行場周辺を走る普天間川、比屋良川の緑地 などと連携して広域的な緑のネットワークを形成することで、生物多様性のある自然 空間、豊かな自然が生み出す良好な景観を確保し、潤いのある豊かな生活環境の創造 拠点となる。 ③医療施設の集積 琉球大学医学部及び附属病院や重粒子線治療施設の設置により、医療従事者や研究 者が集まり、国内外からの医療ツーリズム実施や関連する宿泊施設や保養施設、教育 施設などの施設の立地が進むと、沖縄県の自立的な発展の拠点となる。 35 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 (2)西普天間住宅地区の跡地利用に関する状況 西普天間住宅地区では、琉球大学医学部・附属病院や重粒子線治療施設等を集積さ せ、高度医療や研究機能の拡充、地域医療水準の向上、国際医療人材の交流や人材育 成等による「国際医療拠点」の形成を目指している。 図 国際医療拠点の形成について(第3回 駐留軍用地跡地利用推進協議会資料) 図 西普天間住宅地区跡地利用計画(修正案)(平成 26 年5月時点、宜野湾市作成) 36 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 (3)広域的観点から検討すべき事項 西普天間住宅地区は、 広域的な道路網及び緑のネットワーク形成の一翼を担うとと もに、沖縄県の自立的な発展に寄与する「国際医療拠点」として高次都市機能を有す ることになるため、広域的観点から跡地利用を計画的に進めていく必要があり、検討 すべき事項は、以下のとおりである。 拠点返還地の指定(平成26年1月) 広域道路 西海岸道路や普天間飛行場跡地の道路整備との連携により、地区内の交 通のみならず、隣接する道路ネットワークと一体となった機能を担う。 広域緑地 周辺の緑地と連携した広域的な緑のネットワークを形成することによ り、潤いのある豊かな生活環境の創造拠点となる。 医療施設 の集積 最先端治療を中心とした医療ツーリズムの展開が期待され、沖縄県の自 立的な発展の拠点となる。 平成 16 年の跡地利用テーマ (宜野湾市) 水・緑・眺望を生かした いやされるまち 整備コンセプト (たたき台) 国際医療拠点の形成 高度医療・研究機能の拡充、地域医療水準の向 上 、 国 際 研 究 交 流 と 医療 人 材 育 成 等 に よ る 「国際医療拠点」の形成 緑と水に囲まれた国際医療拠点都市 検討すべき事項 検討項目 交通体系 検討内容 ●体系的な道路ネットワークの構築と交通容量の確保 ●幹線公共交通ネットワークとの整合と連携を図った交通結節機 能の構築 ●まちづくりと一体になった道路交通空間の構築 緑 ●広域的な緑(水・緑・生態系)のネットワークの構築 ●生物との共生・歴史・安心快適・ふれあい・景観の視点から重要な 緑地の確実な保全 ●緑(水・緑・生態系)のネットワークに配慮した緑地の保全・活用 と積極的な緑地整備・緑化の推進 景観 ●特徴的な地形に由来する眺望景観の保全 ●自然環境の保全と緑の創出による魅力ある国際医療拠点の創出 ●湧泉・グスク跡・拝所などの歴史的資源と調和する住宅地と公 園が一体となった空間の形成 ●斜面林、湧水、湿地環境を一体として活用した歴史的景観の再 生 スマートシ ●環境負荷の軽減につながる地域全体でのエネルギー有効利活用 のためのインフラ導入 ティ ●建築物周りでの創エネ・省エネへ向けた取り組みの推進 防災機能 ●地域での防災機能の強化と減災対策の充実 ●災害時における地域の医療・防災拠点としての活用 ユニバーサ ●バリアフリーに対応した誰もが利用しやすい施設等の整備 ルデザイン ●誰もが安心安全に移動できる交通空間及び交通手段の確保 37 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 図 広域的観点からの西普天間住宅地区の跡地利用の検討(たたき台) 38 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 2.広域的観点からの円滑な交通処理計画の提案 (1)周辺の道路交通の現状及び上位関連計画における位置づけ 1)道路の状況 宜野湾北中城線の現況(H22 道路交通センサス:30,000 台/日、混雑度 0.86)は比 較的余裕がある状況である。 しかしながら、沖縄地方渋滞対策推進協議会(H25.1)において、隣接する国道 58 号が「主要渋滞区間」 、国道 330 号の普天間交差点・石平交差点が「主要渋滞交差点」 に位置付けられている。 宜野湾北中城線は、 ハシゴ道路として 「東西連絡道路」として位置付けられており、 将来的には、ハシゴ道路の構築(沖縄西海岸道路(地域高規格道路)の整備、宜野湾 北中城線の全線 4 車線化等)に伴い、交通量が増加することが想定される。 2)公共交通の状況 宜野湾北中城線の伊佐交差点∼普天間交差点間は 23 番線、31 番線、77 番線の 3 路線が走行しており、 運行回数は約 150 回であり主要な路線バスが走行する区間であ る。 国道 58 号を中心とした基幹バスシステム導入をめざし策定された、那覇市・浦添 市・宜野湾市・沖縄市地域公共交通総合交通連携計画においては、宜野湾北中城線の 当該区間は、基幹バスラインとして位置付けられている。 また、隣接する伊佐及び普天間は主要な結節点に位置づけられているものの、返 還・整備時期は不透明な状況である。 (2)西普天間住宅地区の開発で想定される問題認識 1)開発交通量 平成 18 年沖縄本島中南部都市圏パーソントリップ調査によると、現在の琉大病院 を含むゾーン(D ゾーン:4023,68.1ha)の発生集中交通量は、15,295 トリップエン ドとなる。 この現況の発生集中交通量を基準とした場合、西普天間住宅地区の開発面積が 51ha であることから、少なくとも 10,000 トリップエンド相当以上の発生集中交通量 が想定される。なお、ヒアリングによると、琉大病院として、医療関係、学生、来訪 者併せて約 5,000 人/日程度であるとのことである。 2)沿道条件 現在の宜野湾北中城線における沿道条件をみると、南側は既存の市街地で形成され ており出入り自由な環境にあるものの、北側はキャンプ瑞慶覧に隣接し、限られたゲ ートからの出入り交通量であることから、都市部の道路の中では比較的交通容量が見 込める道路である。 しかしながら、 道路北側における西普天間住宅地区の開発により、 39 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 沿道環境が変化することで、一般的な第 4 種第 1 級の 4 車線道路の交通容量である 28,800 台/日程度に低下することが予測される。 3)地区内道路 地区内道路が開発地から国道 58 号へのアクセス路としての機能にとどまらず、宜 野湾北中城線から国道 58 号へのアクセス路として相応の通過交通が流入することが 予測される。 また、将来普天間飛行場跡地からの幹線・補助幹線道路と接続した場合は、一体と なったネットワークとして、必要となる道路機能を満足する道路とする必要がある。 しかしながら、道路の位置づけとして、生活道路や歩行者・自転車交通が主体の道 路の場合は、通過交通を抑制する地区内道路ネットワークの構築や、自動車の走行速 度を抑制する道路構造とする必要がある。 4)景観形成 西普天間住宅地区は宜野湾市景観計画において、景観形成重点地区(候補)になっ ており、良好な沿道景観の形成に取り組むことが必要とされている。 特に道路空間は沿道の建築物や公共空間(公園等)と一体となって、都市空間を形 成する重要な要素である。 このことからも、道路交通空間と沿道建築物や公共空間などを相互に反映させ、景 観形成を行うことが重要である。 (3)西普天間住宅地区の交通体系における課題 1)体系的な道路ネットワークの構築と交通容量の確保 ・東西軸としてトラフィック機能の確保 ・将来幹線道路ネットワークと地区内道路の連続性 ・接続交差点の集約化と処理能力の強化、周辺渋滞交差点の負荷軽減 2)幹線公共交通ネットワークとの整合を図った交通結節機能の構築 ・幹線公共交通軸として定時速達性の確保(対象:宜野湾北中城線) ・道路空間と沿道空間が一体となった交通結節点(基幹⇔支線(宜野湾循環等) ) の構築 ・自動車交通から公共交通への転換 3)まちづくりと一体となった道路交通空間の構築 ・交通結節機能と開発地の中心施設・拠点と一体となった空間の構築 ・沿道景観や沿道施設と一体的な道路交通空間の構築 ・多様な交通手段への配慮 40 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 (4)西普天間住宅地区における交通体系の実現に向けた取組方策の提案 前述した、西普天間住宅地区における、まちづくりと調和を図った交通体系の実現 に向けて、以下の施策の導入が考えられる。 道路関連施策 ①国道 58 号へのアクセス確保と接続する交差点の処理能力向上 ②地区内道路と地区外道路との連続性の確保 ③生活道路における通過交通の流入抑制(ハンプ、クランク等の速度抑制策) ④交差点の改良(宜野湾北中城線の交差点など) ⑤道路空間の検討(求められる機能に応じた道路幅員・空間の検討) 公共交通 関連施策 ⑥結節機能の利便性を高める公共交通ネットワーク(基幹バス⇔市内循環バス 相互の乗り換えの円滑性の確保など) ⑦道路空間と沿道空間を活用した交通結節機能の構築(バス停上屋、サイク ルアンドライド駐輪場、タクシー乗り場等) ⑧情報通信技術を活用した情報発信施設(交通情報や観光情報など) 土地利用や面的整備 との連携施策 ⑨スマートシティ(公共交通利用促進)、防災機能(耐震化、避難路、災害 情報) 、ユニバーサルデザイン(自転車走行空間の確保、歩行者・車いす 利用者等が安全に移動できる空間の確保、多言語化)のコンセプトを活かし た道路交通空間の検討 ⑩沿道の施設や街並みとの調和など、沿道景観や沿道施設の物的なデザインと 交通システム(コミュニティバス、コミュニティサイクルなど)を一体的に デザインするモビリティデザイン 北谷・嘉手納方面 ①国道58号への アクセス確保 ③通過交通の流入抑制 ⑤道路空間の検討 ④交差点の改良 ⑦交通結節機 能の構築 ⑤道路空間の検討 ②連続性の確保 基幹バス 図 西普天間住宅地区における交通体系の展開イメージ 41 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 ⑦道路空間と一体となった バス停留施設の整備 ⑦交通結節点と一体となった空間(サイク ルアンドライド駐輪場、タクシー乗り場) ⑧情報発信施設 ⑥幹線バス⇔市内循環バス相互の 乗り換えの円滑性の確保 図 交通空間と沿道空間が一体となった交通結節点のイメージ (5)取組方策の展開に際しての留意点 以下の留意点について、広域的な視点も踏まえて具体的な検討が必要である。 宜野湾北中城線及び地区内道路において、求められる機能に応じた道路幅員・ 空間(道路種級、断面構成等)の検討 適切な交差点配置となる地区内道路ネットワークの検討 公共交通への配慮や自転車道の設置、広い歩行空間の確保を考慮した歩行者自 転車ネットワークや道路構造の検討 交通結節機能(交通空間と沿道空間の一体化)の導入検討 42 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 3.緑のネットワーク形成に向けた取組方策の提案 (1)西普天間住宅地区内外における水、緑、生態系の現状 広域的な緑のネットワーク形成に向け、キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の内 外における水、緑、生態系の現状を整理する。 1)水・緑・生態系の現状 ①水(湧水・水系)の現状 a.湧水群の現状 西普天間住宅地区の北西側斜面には、国指定重要有形文化財である喜友名泉をはじ め、多くの湧水が存在する。これら湧水群は、不透水性基盤である島尻層群泥岩と琉 球石灰岩の境目の不整合面より湧出する、いわゆる崖下湧泉であり、全ての湧水が標 高 14∼16m付近に分布している(下図参照) 。 図 湧水群位置 資料:宜野湾市自然環境調査報告書,平成 26 年 3 月,宜野湾市 43 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 b.水系の現状 西普天間住宅地区の東側には、県道 81 号線付近から北西方向に直線的に伸びる、 河川渓谷状の地形を示し、一部流水も見られるイシジャーが存在いする。 イシジャーは、他の琉球石灰岩地域では見られない珍しい地形を有するほか、高さ の異なる小洞窟があり、古墓や御嶽として祭られたものとみられる(下図参照) 。 図 イシジャー中流域の断面スケッチ(1) 断面スケッチ位置(1) 断面スケッチ位置(2) 図 河川渓谷状地形(イシジャー)位置 図 イシジャー中流域の断面スケッチ(2) 44 資料:宜野湾市自然環境調査報告書,平成 26 年 3 月,宜野湾市 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 ②緑・生態系の基盤となる植生の現状 西普天間住宅地区の植生は、大半が代償植生によって占められ、地区西側は二次林 が斜面を覆っているが、中部、東部は住宅地域跡地のため、自然性の低い植生域が広 範囲を占めている。 北西斜面地にはアカギやオオバギなどの繁茂する二次林域が広がり、ツル植物に覆 われた幼齢亜高木林が斜面の中・下部を覆っている。また、斜面下には水田跡地起源 の湿地植生がみられ、湿生・水生植物の生育域を提供している。 地区中央から東側の台地上には、チガヤ群落などの二次草原や植栽起源の樹群の点 在する住宅地域跡地が広がっている。 前項で示したイシジャー流域には、ガジュマル−ハマイヌビワ群落自然林などの良 好な自然環境が、墓所や壕とともに温存されている(下図参照)。 資料:宜野湾市自然環境調査報告書,平成 26 年 3 月,宜野湾市 図 現存植生 2)緑の広域的な位置づけ 上位・関連計画における西普天間住宅地区の緑の位置づけは以下の通りである。 ○『領域を分ける骨格』となる環境緑地帯 資料:沖縄県広域緑地計画「緑の将来像」 ○広域的な『斜面緑地の軸』 資料:中南部都市圏駐留軍用地跡地利用広域構想「駐留軍用地跡地及び周辺緑地の構造」 ○瑞慶覧に続く斜面緑地で『緑の屏風』 資料:普天間飛行場跡地利用計画「風景づくりのイメージ」 ○『緑の回廊ゾーン(県土レベル) 』 資料:緑の美ら島づくり行動計画「管理目標別ゾーニング(中部地域) 」 45 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 3)緑の広域的な価値(広域的な緑地の機能) 西普天間住宅地区に存在する喜友名の斜面や安仁屋の谷の緑は、市域を超えて、東 西南北に数十キロにおよぶ緑のつながりを形成している。特に、本地区の北側に位置 する嘉手納森林、さらには、東海岸側の緑地など、生物の生息・生育拠点となり得る まとまりのある緑と連続しており、本地区のみならず、中南部都市圏、さらには沖縄 県全体にとって、極めて重要な回廊の一角を形成している。 (下図参照) 本地区に存在する喜友名の斜面や安仁屋の谷の緑が喪失した場合、このような広域 的に重要な緑のネットワークが分断されることになる。 嘉手納森林 西海岸側の緑地 東 資料:数値地図 50000[地図画像] ,2007(国土地理院) 、 自然環境情報 GIS(環境省) 、国土数値情報行政区域(国土交通省) 図 本地区の緑地を含む広域的なエコロジカルネットワーク(生物との共生回廊)の形成状況 46 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 また、緑地の有する多面的な機能(生物との共生への寄与、歴史資源への寄与、安 心快適まちづくりへの寄与、ふれあい促進への寄与、良好な景観形成への寄与)の面 からも、 本地区の緑は広域的に見ても極めて高い価値を有していることがわかる。 (下 図参照) なお、緑地機能の評価は下表の条件で実施した。 表 広域的な緑地機能の評価方法(評価指標・加点条件等) 広域的機能 1 生物との共 生への寄与 2 歴史資源へ の寄与 安心快適ま 3 ちづくりへ の寄与 4 ふれあい促 進への寄与 良好な景観 5 形成への寄 与 広域的価値の高い 備考 緑地の加点条件 ・広域的エコロジカルネット 1ha 以 上 の 樹 林 地 が 鳥 類 の コ リ ド ー ワークの形成(1 点) 400m 以内の距離で、市 形成 域を超えて連続する ・豊かな生息地の確保(1 点)自然度の高い植生(自然 質の高い自然 度 7 以上) ・歴史資源の保全(1 点) 文化財等と一体をなす緑 資 源 保 全 の た め 地 のバッファ ・まとまったオープンスペー 2ha 以上のまとまりのあ 避難場所確保、延 スの確保(1 点) る緑地 焼防止など ・幹線道路との一体性(1 点)国道・県道に接する緑地 避難経路を守る ・災害リスクの低減(1 点) 急傾斜地(傾斜角 20 度以 土砂崩壊、浸水等 上)及び河川沿いの緑地 のリスク回避 ・都市公園整備を可能とする 0.25ha 以上のまとまり 街 区 公 園 の 面 積 空間の確保(1 点) のある緑地 要件の充足 ・周辺地域からの視認性 区域周辺(国道・沖縄自動 見 ら れ る 度 合 い 車 道 を 視 点 場 と し て 設 が高い緑 (1 点) 定 ) のより多くの地点か ら見える緑地 評価指標(評価点) 資料:数値地図 50000[地図画像] , 2007(国土地理院) 、 自然環境情報 GIS(環境省) 、 国土数値情報行政区域(国土交通省) 図 広域的な緑地機能の評価結果(評価ランク図) 47 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 【参考:重要な緑(緑地機能の高い緑地等)の抽出イメージ】 ≪評価結果例≫ *地区内の緑地機能(生物との共生への寄与、歴史資源への寄与、安心快適ま ちづくりへの寄与、ふれあい促進への寄与、良好な景観形成への寄与)を総 合的に評価すると、特に、高い機能を有する緑地として、以下のエリアが挙 げられる。 A.湧水・カーを含む湿地性植生を中心としたエリア B.文化財と一体をなす喜友名斜面に連続する緑地のエリア C.洞穴や自然植生からなる安仁屋(イシジャー)のエリア *高い機能を有する緑地 (評価点 4 点以上)の面積は 13.3ha(地区面積の 26%) で、宜野湾市が都市公園として整備予定の面積(約 11ha)に近い(参考: 評価点 5 点以上の面積は 3.2ha) ≪広域的な緑地機能の評価結果(評価ランク図)≫ C.洞穴や自然植生(写真)からなる安 仁屋(イシジャー)のエリア 広域的な緑地機能の価値 (評価ランク)が高いエリア A.湧水・カー(写真) を含む湿地性植生を 中心としたエリア 単位:ha B.文化財と一体をなす喜友名斜面に連続する緑地(写真) のエリア 単位:ha 面積 面積 32.86 32.86 0.09 0.09 5.94 5.94 10.13 10.13 2.53 0.50 2.53 0.12 0.50 52.17 0.12 0.00 1 2 3 4 5 6 7 52.17 合計 資料:自然環境情報 GIS(環境省) 、遺産分布図(沖縄県) 、JMC マップ( (財)地図センター) 、基盤地 図情報(国土地理院) 、基盤地図情報(10mDEM,国土地理院) 注)返還区域内に限って取得された詳細な情報に基づく評価であるため、 「広域的エコロジカルネットワーク の形成」の評価軸が含まれていない。そのため、前ページの評価図に対して、次ページの評価図では評価 の最大値は 1 小さくなる。 48 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 (2)緑のネットワーク形成に向けた問題認識 前項「 (1)現状」を踏まえ、広域的な観点から見た西普天間住宅地区の緑のネット ワーク形成における「目指すべき姿」と「現状」との差異から、当該地区における緑 のネットワーク形成に向けた問題を整理する。 【緑のネットワークの目指すべき姿(1)】 西普天間住宅地区のまちづくりにおいては、広域的に重要な回廊を形成する本地区 の既存緑地を保全することで緑のネットワークを構築するとともに、将来に継承し、 生物と共生するまちの形成を目指す。 ⇒問題認識 市域を超えて、東西南北に数十キロにおよぶ緑のつながりを形成し、西海岸側の 緑地など、生物の生息・生育拠点となり得るまとまりのある緑と連続する喜友名の 斜面や安仁屋の谷の緑は、広域的に見ても極めて高い価値を有しており、これらの 緑が土地利用により喪失した場合、このような広域的に重要な緑のネットワークが 分断されることになる。 【緑のネットワークの目指すべき姿(2)】 西普天間住宅地区のまちづくりにおいては、保全すべき緑地の優先順位を明らかに した上で、重要な緑(緑地機能の高い緑地等)を確実に保全し、土地利用の要請から、 やむを得ず保全できない場合は、 最小化、 軽減、 代償などの措置を講ずるものとする。 ⇒問題認識 西普天間住宅地区内の緑は、生物との共生への寄与、歴史資源への寄与、安心快 適まちづくりへの寄与、ふれあい促進への寄与、良好な景観形成への寄与などの多 面的な機能を有しており、こうした緑が土地利用により喪失した場合、当該地区の 生活環境が悪化することも懸念される。 49 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 【緑のネットワークの目指すべき姿(3)】 a.国際医療拠点ゾーン・人材育成拠点ゾーン ゾーンに含まれる既存の水・緑資源や特徴的な地形や歴史・文化資源を含んだ景 観などを、地域のまちづくりの資源として生かし、地域における知の拠点・文化的 中心を形成するとともに、沖縄の気候、植生及び周辺の風景等の自然環境と、ゾー ン内に整備する施設、水系や樹林、地形などを一体として計画し、周辺環境と調和 した拠点を形成する。 地下から地上にかけて自然環境の特性を十分に把握した上で、自然環境と共生し、 地域の良好な水循環への貢献や環境負荷の低減など、地球環境や地域社会に貢献す る拠点を形成する。 既存の緑地や地形、湧水や河川などの水環境などを有効に活用し、学生・研究者 等の教育研究の場や生活の場、さらには、地域住民や医療ツーリズムをはじめとし た訪日外国人旅行者などの交流の場としてふさわしい、健康的で潤いのある美しい 屋外空間を形成する。 ゾーン内において連続する市街地(都市的土地利用)を区分する水系や緑地、地 形などは、防災緩衝帯としてその緑地的環境を維持・充実するとともに、斜面地は 地滑りや崩壊防止の緑地帯として保全することも検討し、広域的な安心快適回廊の 形成に貢献する。 医療施設や学校などの敷地(街路 樹・駐車場緑化含む)や建物の屋上・ 【参考 地域環境に貢献する教育施設に おける積極的な緑化イメージ】 壁面等について、 計画地の潜在自然植 那覇市立銘苅小学校 生や維持管理なども考慮した緑化を 推進することで、 地域の生物多様性保 全に寄与するとともに、温室効果ガス 排出量の削減、ヒートアイランド現象 の緩和に永続的に貢献する。 医療施設や学校等の敷地内に、緑地 を積極的に確保するとともに、緑化を 資料:屋上・壁面緑化事例集,平成 23 年 3 月, 国営沖縄記念公園事務所 推進することで雨水の地下浸透を促 進し、地域の健全な水循環に貢献する。 水辺や緑地の立地や特性などを踏まえ、指標生物(地域の代表種、自然環境の質 の指標となる種等)を設定し、生息・生育環境・回廊・飛び石ネットワークなどと して機能する水辺や緑地を新たに創出するとともに、継続的な維持管理により緑の 質を保ち、生物多様性の保全に貢献する。 50 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 b.住宅等ゾーン ゾーンに含まれる湧水群や樹林地、 【参考 湧水群などの水を活かしたまちづ くりイメージ】 特徴的な地形や歴史・文化資源を含ん だ景観などの地域色を生かし、個性あ ふれる多自然型の住宅地を形成する とともに、沖縄の気候、植生及び周辺 の風景など周辺の環境と調和した環 境配慮型の住宅地を形成する。 宜野湾市伊佐「ふんしんせせらぎ」 (伊佐地区土地区画整理事業) ゾーン内に斜面地が含まれる場合 には、既存の地形や樹林地などを極力 活かし、 土地造成を行う場合も地下水 位に留意した地盤高を設定すること により、緑(水・緑・生態系)の広域 資料:平成 25 年度:キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地 区)重要文化財保存整備実施計画更新に向けた 基礎調査業務,平成 26 年 3 月,宜野湾市 【参考 雨水の地下浸透促進イメージ】 的なネットワークの保全、 地域の良好 な眺望景観の形成に貢献する。 住宅敷地の緑化(生垣・駐車場緑化 含む)や家屋の屋上・壁面等の緑化、 さらには、宅地内の街路の緑化等を推 資料:戸建住宅における雨水浸透施設設置マニ ュアル,平成 18 年 3 月,公益社団法人 雨水貯留浸透技術協会 進することで、地域の良好な景観形成 やヒートアイランド現象の緩和 (暑熱 環境の改善)に貢献する。 【参考 地域環境に貢献する住宅地にお ける積極的緑化イメージ】 那覇新都心 天久クレッセント 住宅敷地内に緑のオープンスペー スを確保することや雨水浸透桝を設 置することで、雨水の地下浸透を促進 し、地域の健全な水循環に貢献する。 指標生物(地域の代表種、自然環境 の質の指標となる種等)を設定し、生 息・生育環境・回廊・飛び石ネットワ ークなどとして機能する樹木を庭木 資料:沖縄県景観形成ガイドライン, 平成 22 年 3 月,沖縄県 として植栽することで、生物多様性に 名護市内の戸建住宅 貢献する。 資料:屋上・壁面緑化事例集,平成 23 年 3 月, 国営沖縄記念公園事務所 51 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 c.都市公園ゾーン 喜友名の斜面や安仁屋の谷などの 保全上重要な緑地を積極的に保全・活 用するために、可能な限り都市公園区 域に含めることを検討し、多様な利用 【参考 既存の自然環境・歴史文化資 源・地形を保全・活用した都市公 園の整備イメージ】 ∼座間谷戸山公園(座間市)∼ ニーズに応える整備を行うとともに、 適切に維持管理を行う。 自然度の高い植生、喜友名グスク、 喜友名斜面に点在する湧泉群、イシジ ャーの古墳や御嶽などの緑地的環境 を公園化することで、保養・展望、地 域の探訪など、圏域住民や県外利用者、 さらには、訪日外国人などの多様なニ 生物の生息拠点が保全された都市公園 ∼北本自然観察公園(北本市)∼ ーズに応える公園等を配置し、広域的 なふれあい回廊や歴史回廊の形成に 貢献する。 喜友名の斜面や安仁屋の谷などの 保全上重要な緑地の公園化にあたっ ては、既存の水・緑資源や地形を極力 活かして整備を行い、 広域的な生物と の共生回廊の形成に貢献する。 ゾーンに含まれる湧水群や樹林地、 特徴的な地形を含んだ景観などを生 雑木林や湿地、湧水などが 保全・復元された都市公園 資料:社会資本整備審議会都市計画・歴史的風土分科会 都市計画部会第2回公園緑地小委員会資料 かし、管理者による永続的な管理によ り良好な環境が保たれる墓地公園を 整備する。 ⇒問題認識 確実な緑の保全のみならず、新たな緑地の創出や緑化の推進、さらには、地区内 の資源を有効に活用した公園緑地の整備により、地球環境への貢献、サスティナビ リティの実現、地域の安全・安心の確保、景観の形成、環境の改善、良好な水循環 の形成を実現できなければ、西普天間住宅地区が目指す、沖縄県の自律的な発展に 寄与する高次都市機能を有する「国際医療拠点」としての先進性は薄れてしまう。 52 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 (3)緑のネットワーク形成に向けた課題 前項「 (2)問題認識」を踏まえ、西普天間住宅地区の緑(水・緑・生態系)のネッ トワークの目指すべき姿の実現に向けた取組課題となる検討すべき事項を下記に整 理する。 ①広域的な緑(水・緑・生態系)のネットワークの構築 ・一定規模のまとまりのある緑地の保全方策 ・生きもの回廊として機能する緑地の質を保全するための方策 ②生物との共生・歴史・安心快適・ふれあい・景観の視点から重要な緑の確実な 保全 ・広域的な緑地機能の価値に基づく保全すべき緑地の抽出(保全優先度評価) ・保全すべき緑地の保全策及び最小化・軽減・代償等の方策 ③緑(水・緑・生態系)のネットワークに配慮した緑地の保全・活用と積極的な緑地 整備・緑化の推進 a.国際医療拠点ゾーン・人材育成拠点ゾーン ・広域的なネットワークを形成する緑を確実に保全し、新たな緑地の確保や緑化に よりネットワークを補完・強化し、生物多様性、地球温暖化やヒートアイランド 現象、資源循環等に配慮した先進的環境配慮型のゾーン形成方策 ・オープンスペースや水辺・緑地空間の積極的創出により、地球環境への貢献、サ スティナビリティ、安全・安心に配慮された先進的環境配慮型のゾーン形成方策 b.住宅等ゾーン ・水・緑や歴史・文化資源を活かした個性あふれる多自然型の住宅地形成、回廊や 眺望景観の創出など緑のネットワーク形成に貢献するゾーン形成方策 ・住宅敷地内等の積極的な緑化により、景観形成、環境改善、水循環、回廊形成な どに配慮した地域のまちづくりに貢献する先進的な環境配慮型の住宅等のゾー ン形成方策 c.都市公園ゾーン ・保全上重要な緑地を都市公園として保全・整備することで、良好な環境を将来に 継承し、多様な活用に対応した都市公園のゾーン形成方策 53 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 (4)緑のネットワーク形成に向けた取組方策の提案 前項「 (3)課題の明確化(検討すべき事項) 」に対し、西普天間住宅地区が目指す べき緑(水・緑・生態系)のネットワークの形成に向けた土地利用及び土地利用ゾー ンごとの対応方策の例を以下に示す。 1)地区全体 ①保全重要度の高い緑地を確実に保全し、土地利用との共生を図る(「跡地まちづく り」のモデルとなる「最先端医療技術による国際医療拠点」にふさわしい土地利用の実現)方策 ⇒緑地機能(生物との共生、歴史、安心快適、ふれあい、景観)の評価に基づき、 保全すべき緑地を抽出し公的に担保する 【参考 ネットワーク形成上重要な斜面緑地を地形ごと保全し、まちづくりを行った 「港北ニュータウン」】 資料:景観デザイン規範事例集(道路・橋梁・街路・公園編) ,平成 20 年 3 月,国土技術政策総合研究所 ■活用可能な仕組み *都市公園事業費補助:地方公共団体等が行う都市公園の整備を推進する *緑地環境整備総合支援事業:都市域における水と緑のネットワークの形成を 推進する 等 2)国際医療拠点ゾーン・人材育成拠点ゾーン ①ゾーンに保全重要度の高い緑地等を含む場合の緑地の保全方策 ⇒既存緑地を公開空地として保全・整備する 【参考 SEGES 認定を受けた環境配慮型の「立正大学 熊谷キャンパス」】 既存緑地の一部を現状凍結的に保全 地形を活した修景池 資料:公益財団法人都市緑化機構「社会・環境貢献緑地評価システム(SEGES) 」Web サイト ■活用可能な仕組み *総合設計制度:公開空地の確保により市街地環境の整備改善に資する計画を 評価し、容積率、高さ制限、斜線制限などを緩和 等 54 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 ②新たなオープンスペースや緑地の創出方策 ⇒オープンスペース(緑地)を創出し、施設緑化を推進する 【参考 キャンパスマスタープランに基づきオープンスペースを創出した九州大学】 誰もが利用できるオープンスペースを確保 資料:九州大学 新キャンパス・マスタープラン 2001,平成 13 年 3 月,九州大学 ■活用可能な仕組み *社会資本整備総合交付金:施設が持つ土地や建物等の空間・物的資源を まちづくりに活用 *緑化施設整備計画認定制度:都市におけるヒートアイランド現象の緩和、良好な 自然的環境の創出を図るため、建築物の屋上、空地 その他の屋外での緑化施設の整備を推進するため 税制面で優遇 *社会・環境貢献緑地評価システム(SEGES) :社会や環境への貢献度を PR 等 ③先進的なキャンパス整備の計画(戦略的なマスタープラン)を作成する ⇒オープンスペース(緑地)を創出し、施設緑化を推進する 【参考 キャンパスマスタープランに基づき保全上重要な緑地を保全した土地利用 を実現した九州大学】 保全上重要な緑地を保全した土地利用 資料:九州大学 新キャンパス・マスタープラン 2001,平成 13 年 3 月,九州大学 ■活用可能な仕組み *文部科学省の「国立大学等キャンパス計画指針,H25.9」や「戦略的なキャンパ スマスタープランづくりの手引き,H22.3」に基づく計画策定 55 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 3)住宅等ゾーン ①跡地まちづくりの先進地にふさわしい環境配慮型住宅地の形成方策 ⇒オープンスペース(緑地)を創出し、施設緑化を推進する ■活用可能な仕組み(規制) *緑地協定制度:土地所有者等の合意によって緑地の保全や緑化に関する協定を 締結し、良好な環境を形成 *緑化地域制度及び地区計画等緑化率条例:緑が不足する市街地等での建築物の 新築等に緑化率を義務づけ、効果的に 緑を創出 *景観法[景観形成基準] :建築物の建築等を行う場合の良好な景観の形成の基準 として緑化率を規定 等 【参考 規制(景観重点地区、地区計画)と誘導(みどりのガイドライン)を導入した 緑豊かな斜面住宅地「甲陽園目神山地区」】 資料:西宮市 景観・まちづくり Web サイト ■活用可能な仕組み(誘導・支援): *緑化重点地区:市の緑の基本計画に位置付け、予算の重点化・緑化助成制度等の 導入により緑化を推進 *「CASBEE まちづくり」 、 「社会・環境貢献緑地評価システム(SEGES)」 (社会や環 境への貢献度を PR) 等 【参考 「CASBEE まちづくり」の最高ランク(S クラス)評価、都市開発版 SEGES の認定、を受けた環境配慮型の「豊洲土地区画整理事業区内 3-1 街区」】 資料:公益財団法人都市緑化機構「社会・環境貢 献緑地評価システム(SEGES) 」Web サイト 56 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 4)都市公園ゾーン ①既存の自然環境・歴史文化資源・地形を保全・活用した都市公園の整備方策 ⇒水・緑や歴史・文化などの資源、地形を活かした公園の整備と官民連携による 管理運営 【参考 グスクを取り込んだ歴史保全型の都市公園「伊祖公園(浦添市)」】 資料:浦添市 Web サイト 【参考 市民(喜友名区青年会)参加で管理が行われている「喜友名泉」】 資料:平成 25 年度:キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)重要文化財保存整備実施計画更新に向けた 基礎調査業務,平成 26 年 3 月,宜野湾市 ■活用可能な仕組み *景観法[景観重要公共施設] :公共施設とその周辺の建築物等が一体となった 良好な景観形成を進める *歴史まちづくり法[歴史的風致維持向上計画] :城跡・古墳・歴史的建造物等の 歴史的資産を活かしたまちなみ 形成 *民間資金等の活用による公園の整備(PFI) 、官民連携による公園の管理運営(指 定管理者制度、アダプト制度) 等 57 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 (5)取組方策の展開に際しての留意点 前項「 (4)解決策」を推進していく上での留意点(今後の課題)を以下に示す。 1)地区全体(土地利用ゾーニング) 緑地機能の評価結果を踏まえ、保全重要度の高い緑地が確実に保全される土地利用 ゾーニングとなっている計画が策定されているかの検証が課題となる。 2)国際医療拠点ゾーン・人材育成拠点ゾーン 以下のような点に関する検証が課題となる。 *自然環境の特性を把握した上で、整備する施設と水辺・緑地及び地形などが一体 として計画されているか *既存の緑地や特徴的な地形や歴史・文化等の資源、湧水や河川などの水環境資源 を含んだ景観などの資源が生かされているか *水や緑を活かした環境負荷低減(緑化等による吸収源の確保、エコロジカルネッ トワーク形成機能の確保、緑化による暑熱環境改善、雨水浸透の促進による水資 源の確保等)の工夫がなされているか *学生・研究者等の教育研究や生活の場、地域住民や訪日外国人旅行者などの交流 の場としてふさわしい健康的で潤いのある美しい屋外空間が形成されているか 3)住宅等ゾーン 以下のような点に関する検証が課題となる。 *小動物の生息域や移動経路などの保全に留意した住棟の配置、植栽植物の選定等 がなされているか *一定割合以上の緑化率がルール化されるなど敷地内の緑化が担保されているか *既存緑地や地形的特徴、歴史・文化資源、湧水などの水環境資源を生かした公園・ 緑地や水辺空間が配置されているか *玄関周りの緑化空間の確保や柵・垣、駐車場などへの緑化が担保されているか *住宅地内の公共空間の管理ルール・体制は構築されているか 4)都市公園ゾーン 以下のような点に関する検証が課題となる。 *保全すべき自然環境(広域的な緑地機能を有する緑)が保全された都市公園にな っているか *広域的な景観への配慮や地域の健全な水循環への貢献など自然環境と調和した都 市公園になっているか *豊かな水・緑を創出した都市公園になっているか *歴史・文化イメージが表出されるなど地域の顔にふさわしい都市公園になってい るか 58 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 4.良好な景観の形成に向けた取組方策の提案 (1)西普天間住宅地区における景観の現状 ①景観の基盤を成す地形の特徴と景観の現状 西普天間地区は石灰岩地に由来する特徴的な地形が景観の基盤を成している。 地形の特徴は、琉球石灰岩に特有なカルスト地形が認められ、明瞭な段丘が形成さ れているとともに、フトゥキアブや古墓等の鍾乳洞やドリーネとみられる安仁屋の谷 (下図凡例ではイシジャー)が発達していることである。 図 西普天間住宅地区および周辺地の段丘面 図出典) 「宜野湾市自然環境調査報告書」 (宜野湾市、平成 26 年) 西普天間住宅地区北西部、安仁屋の谷は 急傾斜地となっており、土地の傾斜度が急 な区域は概ね 15∼20 度、その周辺は 8∼15 度となっている。 図 土地の傾斜度 段丘上部からは眼下に西普天間住宅地区および西海岸の市街地が広がりその先に 西海岸を望む俯瞰景の眺望が得られる。一方、段丘下部からは、階段状の段丘面、急 傾斜地の樹林の帯を望む仰観景の眺望を得ることができる。 西海岸を望む俯瞰景 斜面林を望む仰瞰景 A 図 A’ 区域概略断面 「宜野湾市自然環境調査報告書」 (宜野湾市、平成 26 年)掲載の断面図に加筆 59 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 ②土地利用の特徴と景観の現状 段丘面は低層の住宅地として利用され、急傾斜地は緑地である。 各段丘面の境界部(急傾斜地の下部)は、湧水が分布し、その周辺に湿地植生域が 存在する場合がある。 図 現存植生 図出典) 「宜野湾市自然環境調査報告書」 (宜野湾市、平成 26 年) 段丘面に展開する低層住宅地景観 急傾斜地の樹林地景観 60 安仁屋の谷(イシジャー)の渓谷景観*1 下部の段丘の水田跡地等の湿地景観*2 *1、2 写真出典) 「宜野湾市自然環境調査報告書」 (宜野湾市、平成 26 年) 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 ③歴史的資源の分布状況と景観の現状 既往調査結果報告書*1 によれば、西普天間住宅地区の西部には多くの文化財、湧 水等歴史的資源が分布する。 県道 81 号宜野湾北中城線付近に喜友名グスク跡が位置し、グスク跡内で複数の拝 所跡が確認されている。 「キャンプ瑞慶覧返還予定地(宜野湾市部分)まちづくりハ ンドブック【入門編】 」 (宜野湾市、平成 24 年)は、地域住民へのヒアリング結果と して、かつて、喜友名グスクから今帰仁グスク方向に遥拝が行われていたことを報告 している。 北西部斜面地下部に湧水群が分布し、付近にはかつての水田耕作地跡が確認されて いる。また、東部段丘下部では、古村落跡が確認されている。 その他、現在調査中であるが、西普天間住宅地区西部の安仁屋の谷(イシジャー) においても、古墓等の存在が以前から確認されている。 西普天間住宅地区における歴史的資源のうち、地域の特徴を良くあらわすものにつ いて、次頁に整理した。 図 返還区域北西部における文化財等歴史的資源の分布状況 *1) 「平成 25 年度:キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区) 重要文化財保存整備実施計画更新 に向けた基礎調査業務報告書」 (宜野湾市教育委員会、平成 26 年) 61 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 ①喜友名グスク ③新城下原遺跡 ②新城下殿遺跡 (古村落跡) ⑤喜友名泉 ④バシガー ①喜友名グスク復元予想図*より、喜友名グス クと5つの拝所(※番号は拝所位置) ②新城下殿遺跡(中央の小高い丘は新城部落 の古集落跡と伝えられる)※1 ③新城下原遺跡(安仁屋の谷の崖壁に多く 散在する古墓、貝塚)※1 ④バシガー(石垣、樋、泉へ降りる石畳等、 戦前の様子を残す泉)※1 ⑤喜友名泉※2 ※1 出典) 「宜野湾市文化財調査報告書第5集 喜友名遺跡群」 (宜野湾市、昭和 59 年) ※2 出典) 「キャンプ瑞慶覧返還予定地(宜野湾市部分)まちづくりハンドブック【入門編】 」 (宜野湾市、平成 24 年) 62 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 ④眺望景観の特性 a)段丘上部から西海岸を望む俯瞰景における主な眺望対象 県道 81 号宜野湾北中城 線の沿道と海が多くの視 点場から視認され、次いで、 段丘下部から海岸までの 市街地が良く視認される。 図 県道 81 号宜野湾北 中城線上に 100m 間隔で視点場を設定した場合の可視頻度 *)国土数値情報のメッシュデータを用いて、特定のメッシュが何か所の視点場か見られるかの 解析結果を示したものであり、地形の上に存在している建築物や工作物、樹木等は解析上考 慮していない。 b)段丘下部から西普天間住宅地区を望む仰観景における主な眺望対象 国道 58 号からは、区域 内の喜友名斜面や安仁屋 の谷 (イシジャー) の緑地、 西向き斜面地および段丘 崖(宅盤と宅盤の間の急傾 斜地)などが比較的多くの 視点場から視認される。 図 国道 58 号上に 100m 間隔で視点場を設定した場合の可視頻度 c)段丘下部から安仁屋の谷を望む仰観景 宜野湾から北谷の沿岸 市街地、 さらには東シナ海 など広い範囲から眺望で きる。 図 安仁屋の谷内の可視頻度(安仁屋の谷をどの程度視認できるか) 63 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 (2)上位関連計画 ①“美ら島沖縄”風景づくり計画(沖縄県景観形成基本計画) 「 “美ら島沖縄”風景づくり計画 (沖縄県景観形成基本計画)」 (沖縄 県、平成 23 年)は、西普天間住宅 地区を含む西海岸部を 「西海岸都市 景観軸」とし、以下の景観形成の方 針を定めている。 西海岸都市景観軸 ・西海岸ウォーターフロント、基地跡地、コンベンションリゾートなど複数の中 心となる景観を有している。 ・中でも、沖縄の第一印象を決定づける、交通拠点である空港・港湾から中北部 に延びる沿道景観の形成が急がれる。 〈風景づくりのキーワード〉 ・風景の保全・回復:代表的な視点場から海への眺望 ・風景の創出:魅力あるウォーターフロント ・地域の個性や連続性のある都市空間 ・潤いやくつろぎのある都市空間 ※下線は西普天間住宅地区と関連のある事項 ②宜野湾市景観計画(案) 宜野湾市は、景観法に基づく「宜野湾市景観計画(案) 」を作成している。 本計画において、 以下の市全体の景観づくりの基本方針と地域別の景観づくりの方 針を定めている。市全体の基本方針1では、眺望景観の保全方策例を掲載し、眺望確 保の方策を示している。 64 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 (3)良好な景観の形成に向けた課題 (1)西普天間住宅地区における景観の現状、(2)上位関連計画をふまえ、西普 天間住宅地区における良好な景観形成に向けた課題を以下に整理する。 まず、西普天間住宅地区全体における課題は以下のとおりである。 【本地区全体】 ■眺望景観の保全 ・本地区の景観特性として、西普天間住宅地区の段丘上部から、および段丘下部か らの広がりのある眺望景観を挙げることができる。 ・上位、関連計画においても、本地区の景観形成の方針として、 「代表的な視点場 から海への眺望の保全・回復」、 「宜野湾らしい地形・自然を活かした潤いと安ら ぎのある景観づくり」 、 「パノラマ眺望の名所としての視点場の保全・創出」を定 めている。 ・そのため、本地区の整備に際しては、広がりのある眺望景観の保全を図ることが 重要である。 次に、西普天間地区の現時点での土地利用計画が設定するゾーンごとの良好な景観 形成に向けた課題を以下に整理する。 【国際医療拠点・人材育成拠点ゾーン】 ■自然環境の保全と緑の創出による魅力ある国際医療拠点 の創出 ・国際医療拠点・人材育成拠点ゾーンの予定地は、本地区東部の造成された段丘面 と段丘面に切れ込むように渓谷状のうるおいのある自然環境が展開するイシジ ャー上流部を含む範囲である。 ・段丘と段丘の境界部の急斜面の樹林や安仁屋の谷の樹林は、国道 58 号から良く 視認される。また、これらの緑は本地区において東西方向に連続する帯状の緑地 の一部を構成し、本地区らしい景観を構成する重要な要素である。 ・上位、関連計画においても、本地区の景観形成の方針として、 「うるおいやくつ ろぎのある都市空間」の形成、「宜野湾らしい地形・自然を活かした潤いと安ら ぎのある景観づくり」を定めている。また、「まちの顔としてふさわしい景観づ くり」を掲げている。 ・そのため、国際医療拠点・人材育成拠点ゾーンの整備に際しては、自然環境の保 全と緑の創出による魅力ある拠点の創出が重要である。 【住宅等ゾーン】 ■特徴的な地形を活かした、緑に抱かれた住宅地の創出 ・住宅等ゾーンの整備予定地は、本地区中央から西部にかけて造成された段丘面と 本地区西部の斜面緑地が展開する範囲である。 65 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 ・段丘と段丘の境界部の樹林は、国道 58 号から良く視認され、この緑は本地区に おいて東西方向に連続する帯状の緑地の一部を構成し、本地区らしい景観を構成 する重要な要素である。 ・上位、関連計画においても、本地区の景観形成の方針として、 「うるおいやくつ ろぎのある都市空間」 「地域の個性や連続性のある都市空間」の形成、 「宜野湾ら しい地形・自然を活かした潤いと安らぎのある景観づくり」、 「市民が愛着を持っ て快適に暮らせる景観づくり」を定めている。 ・そのため、住宅等ゾーンの整備に際しては、本地区の特徴的な地形(階段状の段 丘)を活かし、既存の緑を保全するとともに、新たに緑化を推進し、緑に抱かれ た住宅地景観を創出することが重要である。 【住宅等ゾーン・都市公園】 ■湧泉、グスク跡、拝所等の歴史的資源と調和する住宅地 と公園が一体となった空間の形成 ・住宅等ゾーン・都市公園の整備予定地には、湧水、グスク跡、拝所等の歴史的資 源が多く分布する。 ・これらは本地区の歴史を今に伝える資源であるとともに、本地区の独自性を示す 重要な資源である。 ・上位、関連計画においても、本地区の景観形成の方針として、 「地域の個性や連 続性のある都市空間」の形成、「地域の特徴的な自然環境や歴史・文化的資源の 把握と保全・活用」を定めている。 ・そのため、住宅等ゾーン・都市公園の整備に際しては、本地区の重要な資源であ る歴史的資源の保全に努めるとともに、本地区らしさ、独自性を現わすように、 これら歴史的資源を活用することにより、湧泉、グスク跡、拝所等の歴史的資源 と調和する住宅地と都市公園が一体となった空間を形成することが重要である。 【都市公園】 ■斜面林、湧泉、湿地環境を一体として活用した文化的な 景観の再生 ・公園の予定地は、本地区の斜面地と湧水が多く存在する斜面地下部を含む範囲で ある。 ・湧水近くには水田耕作地跡など、湿地性の植生が分布するなど、かつての棚田状 の水田の景観を想起させる。本地区のかつての生活文化を今に伝える文化的な景 観が展開する重要な場である。 ・上位、関連計画においても、本地区の景観形成の方針として、 「伝統集落などか つての良好な景観の再生」を定めている。 ・そのため、かつての農村集落景観を構成していた斜面林、湧泉、湿地環境を一体 のものとして捉え、文化的な景観を再生することが重要である。 66 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 (4)良好な景観の形成に向けた取組方策の提案 (3)良好な景観の形成に向けた課題の解決に資する取組方策を以下に提案する。 ①眺望景観の保全 本地区の海への広がりある眺望景観は、視点場前面に「A)既存住宅地等比較的平 坦地が展開する場合」と「B)比較的急傾斜地が展開する場合」の概ね2つの類型に 分けられる。 そこで、上記AタイプとBタイプ別に眺望景観の保全方策を検討する。 a)海方向への眺めにおいて視点場前面に比較的平坦地が展開する場合 (平坦地前景コンケイブ眺望) ⅰ)眺望景観特性 右の写真のように、 前面に平坦部 (造 成された住宅地)が展開し、奥に海を 望む眺望景観を対象とする。 前面に平坦地が広がり、奥に海を望む景観 (撮影地点は左図の視点場とは異なる) ⅱ)眺望景観の保全に向けた課題 視点場前面に平坦地(造成地)が展開する場合の眺望景観の保全上の課題は、海への 眺望景観において、特に、見やすい領域、かつ視点場に近接して立地する住宅地等の 宅地(造成面) (整備後、現状より多くの建築物等が出現する)において良好な景観 を形成することである。 ⅲ)眺望景観の保全方策例 ◆視点場に近接する造成地において、海方向への軸線(道路等)を設定するととも に、沿道の建築物の壁面の位置の設定(道路境界線からのセットバック)等に より、海水面への眺望を確保する。 上記軸線において、視点場より標高の低い位置の造成面等における建築物等の高 さを、海水面への眺望を遮らないように誘導する。 ◆視点場に近接する造成地に整備する建築物、屋外広告物等に対して、海への眺め に調和する形態、色彩等の意匠、規模とするよう誘導を行う。 ≪具体的な手法例≫ ・視点場近傍地(海への眺めの前面部、宅盤)における地区計画の指定により 建築物の壁面位置を定め、海水面への眺望を確保する。 ・段丘下部市街地における、高度地区の指定による建築物等の高さを制限する。 67 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 b)海方向への眺めにおいて視点場前面に比較的急傾斜地が展開する場合 (コンケイブ眺望型) ⅰ)眺望景観特性 右の写真のように、前面に急傾 斜地の緑地、その奥に市街地、さ らにその奥に海を望む眺望景観 を対象とする。 前面に斜面緑地、市街地が広がり、奥に海を望 む景観(撮影地点は左図の視点場とは異なる) ⅱ)眺望景観の保全に向けた課題 斜面緑地、 湧泉群が立地する緑地、市街地そして海をセットで望める眺めが展開し、 中でも、湧泉群が存在する緑地が見やすい領域に立地する、当該地区の歴史・文化を 物語る一体的な景観を保全することが重要である。 ⅲ)眺望景観の保全方策例 ◆海への眺めにおいて見やすい領域(俯瞰景における中心領域)に立地する、湧泉 群が立地する緑地景観(緑の中に湧泉が見え隠れする景観)を保全する。 ≪具体的な手法例≫ ・緑の保全方策とともに、文化財等の保存管理計画に基づき歴史的環境を保全、 修復する。 ◆緩傾斜地に整備する建築物等に対する、海への眺めに調和する形態、色彩等の意 匠、規模の誘導を行う。 (特に上部から眺められることを意識した屋根面の素材、 色彩等配慮) ◆返還区域外から海岸線までの市街地における、海への眺めに配慮した、建築物等 の高さ、規模、形態意匠の誘導を行う。 ≪具体的な手法例≫ ・高度地区指定による建築物の高さを制限するとともに、宜野湾市景観計画に 基づき景観形成重点地区指定を行い、形態、意匠等のきめ細かな誘導を行う。 68 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 ②国際医療拠点・人材育成拠点ゾーンにおける景観の形成 ⅰ)景観特性 返還区域東部は、 造成された宅盤に渓谷状の地形が展開する安仁屋の谷が切れ込む。 谷の周辺には、古墓等歴史的資源が多く存在し、安仁屋の谷の緑地、段丘崖は国道 58 号より視認される。 ⅱ)良好な景観形成に向けた課題 地域の歴史を今に伝える地形、歴史・文化的資源の保全と、多様な主体の交流を促 す場を創出することが重要である。 ⅲ)景観形成方策例 ◆安仁屋の谷等、地域の歴史を物語る資源を伴う自然環境を保全する。 ≪具体的な手法例≫ ・地形を活かした造成プランを立案するとともに、建築物に関しては、分棟式 施設配置、建築計画の立案を行う。 分棟式整備イメージ※3 沖縄科学技術大学院大学 東シナ海への眺望を活かし、建築物群は谷を渡る廊下等で連結。※3 ※3:図出典)ランドスケープ計画としてのキャンパス造成プラン(萩野他)、写真出典)沖縄科学技術大学院大学 H.P. ◆緑空間の創出を端緒とする、新たな風土の創出に向けた高質な公的空間(交流を 促す場)を形成する。 ≪具体的な手法例≫ ・大規模施設間の空間や街路において緑化を充実し、施設利用者、周辺住民等 の交流の場(オープンスペース)を創出する。 路上オープンカフェ(新宿) 公共空間における賑わいの場※5 国際医療人材等多様な人材の交流の場となる、 施設に隣接するオープンスペース。(京都国際 マンガミュージアム )※4 ※4:写真出典)京都国際マンガミュージアム H.P. 69 ※5:写真出典)新宿区 H.P. 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 ③住宅等ゾーンにおける景観の形成 ⅰ)景観特性 国道 58 号から、区域内の喜友名 斜面の緑地、西向き斜面地および段 丘崖(宅盤と宅盤の間の急傾斜地) が視認される(濃緑、青色箇所は多 くの視点場から見られる場所)区域 である。 国道 58 号から望む返還区域西北部の斜面林(伊佐北交差点) ⅱ)良好な景観形成に向けた課題 斜面林による、本地区の特徴的な緑景観を継承することが重要である。 ⅲ)景観形成方策例 ◆地形を活かした、緑に抱かれた住宅地景観を創出する。 ≪具体的な手法例≫ ・擁壁の出現を抑制する造成を図るとともに、敷地の高低差が生じる場合、擁 壁の機能を確保した上で石垣等による修景を行う。 ・地区計画を指定し、敷地面積の最低限度を制限するとともに、市景観計画の 景観形成基準(緑化)に加え、敷地の緑化についてのルール(「みどりのガイ ドライン」等)の作成、運用により緑を創出する。 ◆緑と調和する色彩等意匠を誘導する。 ≪具体的な手法例≫ ・市景観計画に基づく景観形成重点地 区の指定により、一般区域の景観形 成基準(色彩)に、色相の基準を追 加する。 統一された色彩の住宅地イメージ※6 ◆スージグヮー等快適な街路空間の形成、 沿道の緑化によるうるおいのある景観 の形成等、高質な公的空間を形成する。 ≪具体的な手法例≫ ・建築協定や緑化指針等による、緑豊 かな外構を創出する(右写真は、間 口の 1/2 以上の緑化を規定)。 緑豊かな外構、スージグヮーイメージ。 (那覇新都心天久クレッセント地区)※7 ※6:写真出典)沖縄県 H.P. (土木建築部) ※7:写真出典) 「沖縄県景観形成ガイドライン」 (沖縄県他、2010) 70 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 ④住宅等ゾーン・都市公園における景観の形成 ⅰ)景観特性 返還区域西部には多くの文化財、湧泉等歴史的資源が分布する。県道付近に喜友名 グスク跡、北部の斜面地下部に湧泉群が分布する。喜友名グスク跡からは今帰仁グス クに向かい遥拝が行われた。 ⅱ)良好な景観形成に向けた課題 歴史的資源の保全、歴史的資源を活用した新たな風土を創出することが重要である。 ⅲ)景観形成方策例 ◆歴史的資源と調和する市街地景観を形成する。 ≪具体的な手法例≫ ・特定の歴史的資源を指定し、その保存、修復等の方針を踏まえ、当該資源周 辺の建築物の新築等の行為に対して、歴史的資源との景観調和を誘導する。 歴史的資源の周辺における景観形成誘導例。 (出典: 「歴史的景観保全の指針」東京都 H.P,) ◆当該地区の歴史・文化を表す新たな風土を創出する。 ≪具体的な手法例≫ ・喜友名グスク跡から今帰仁グスク跡への遥拝の軸線付近には、湧泉群、宅地 跡、拝所等、多くの歴史的資源が分布する(下の左および右の図参照)。歩行 者専用道(スージグヮー等)によりそれらの資源を結び、地域の歴史、文化へ の認識を深めるとともに、次世代への継承を図る。 図 返還区域北西部における文化財等歴史的資 源の分布状況※8 図 喜友名グスク跡から今帰仁グスク跡への遥拝方向 ※8:資料) 「平成 25 年度:キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区) 重要文化財保存整備実施計 画更新に向けた基礎調査業務報告書」 (宜野湾市教育委員会、2014) 71 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 ⑤都市公園における景観の再生 ⅰ)景観特性 返還区域北部(斜面地下部)には湧泉群が分布し、湧泉群から流出する地下水によ り、かつては棚田が営まれた。現代においては湿地環境等にかつての景観が窺える。 新城下殿遺跡周辺(古村落跡周辺)からは、南側斜面地への仰瞰景において、カヤモ ー、耕作地、斜面林等が一体となった文化的な景観(集落・農地等・斜面林が一体) が展開していたことが窺える。 (下図参照) 図 古の当該地区のイメージ図※9 図 古村落跡周辺(新城下殿遺跡周辺)から の可視領域 ⅱ)良好な景観形成に向けた課題 新市街地の形成に際し、いにしえの環境を現代に伝える湿地景観を保全、再生する ことが重要である。 ⅲ)景観形成方策例 ◆斜面林(地形)、湧泉、湿地環境を一体として活用した文化的な景観の保全、 再生。 ≪具体的な手法例≫ ・都市公園等における斜面林(地形)と 湧泉を、かつての棚田に由来する湿地 環境とともに、一体として保全、再生、 整備を図る景観づくり。再生から再生 後の維持管理に地域住民が参画し、景 観づくりを通じて新たなコミュニティ の形成、既存のコミュニティの維持・ 継承を図る。 地域住民による湿地環境の再生イメージ。※10 ※9:資料、図出典) 「キャンプ瑞慶覧返還予定地(宜野湾市部分)まちづくりハンドブック 【入門編】 」 (宜野湾市、2012) ※10:写真出典)農林水産省 H.P. 72 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 (5)取組方策の展開に際しての留意点 (4)で提示した取組方策の展開に際しての留意点を以下に整理する。 ①西普天間住宅地区デザイン戦略(本地区の景観特性を踏まえた独自の戦 略)の策定、戦略を主導するマネジメント組織の整備 ・西普天間住宅地区の風土を現わす景観の形成に向けて、事業主体が異なる各整備 事業の全体最適化を図る際に拠り所となる全体戦略(グランドデザイン)の策定 することが重要である。 ・グランドデザインでは、ゾーンごとの個別戦略、空間形成イメージ(本地区の玄 関としての、拠点施設およびその周辺等における各種設えの作法等)を定める。 ・併せて、新しいまちの顔として相応しい景観づくりを目指し、空間の高質化を主 導するマネジメント組織の整備が重要である。上記の全体グランドデザインと個 別の施設・空間デザインの調整や空間の高質化による地域活性化を推進する役割 を担うものである。 ②広がりのある眺望景観の基盤である、特徴的な地形を活かした整備 ・西普天間住宅地区の景観の特徴である、広がりのある眺望景観は、本地区の地形 がその基盤となっている。カルスト地形の段丘、ドリーネ等、特徴的な地形の保 全を図るとともに、そのような地形を活かした施設・空間整備を行うことが重要 である。 ③歴史的資源の保存、管理のあり方の検討 ・西普天間住宅地区には、文化財等多くの歴史的資源、環境が存在する。しかしそ のような資源、環境の内、未調査のものも少なくない。 ・本地区の整備に際しては、まず、歴史的資源、環境の調査を行い、それらの保存、 管理のあり方を検討した上で、各種施設、空間整備を行うことが重要である。 73 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 5.スマートシティ、ユニバーサルデザイン、防災機能等の導入方策等の提案 西普天間住宅地区は、琉球大学医学部・附属病院や重粒子線治療施設等の集積によ る「国際医療拠点」の形成により、医療従事者や研究者だけでなく、地元はもとより、 県内や国内外からの様々な医療サービスを求める来訪者の増加が見込まれる。そして、 災害時においては地域の医療拠点として機能することが期待される。 以上から、持続可能な環境及び安心安全な環境、多様な来訪者に対応した環境への 対応が必要であり、それらは、安心安全な環境を軸として相互に関連を持つものであ るため、一体的な視点での検討が重要となる。 国際医療拠点としてのまちづくり 持続可能な環境 安心安全な環境 多様な来訪者に 対応した環境 スマートシティ 防災機能 ユニバーサル デザイン 災害時の 電源確保 災害時の 避難誘導 図 一体的な視点での検討イメージ (1)スマートシティの導入方策 1)スマートシティの考え方 スマートシティの実現にあたっては、エネルギーが重要な要素を占めることとなり、 エネルギー利用の方向性としては以下の3つが挙げられる。 地域内でエネルギーを「創る」創エネルギーのまちづくり ・地域の未利用・再生可能エネルギーを活用した面的ネットワーク化 ・街区単位での再生可能エネルギーシステムの一括導入 ・建築物や機器・設備などの個別導入 地域内のエネルギーの使い方を「平準化する」ピーク抑制のまちづくり ・エネルギー利用に配慮した土地利用の推進 ・地区・街区単位や1建築物単位でのエネルギーマネジメントシステム 地域内のエネルギー消費を「低減する」省エネルギーのまちづくり ・CO2 の吸収源対策やヒートアイランド対策に寄与する緑地の保全と緑化の推進 ・自家用車利用の削減 ・建築物の環境性能の向上 74 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 2)スマートシティの実現に向けて配慮すべき事項と考えられる導入メニューの整理 西普天間住宅地区は国際医療拠点の形成を目指しており、その整備手法として、面 的で総合的な市街地整備手法である土地区画整理事業が予定されている。 土地区画整理事業では、一体的なインフラ整備や土地利用に応じた望ましい街区構 成、建物更新などを総合的に図ることで「まるごと低炭素化」が可能であり、スマー トシティを実現するうえで最適なフィールドであると言える。 また、エネルギーの面的活用に加え、エネルギー負荷の低い建築物が望まれる。 ≪配慮すべき事項≫ ●環境負荷の軽減につながるエネルギーの面的活用のためのインフラ導入 ●エネルギー負荷の低い建築物の導入 ●非常時にも活用可能なエネルギーの地産地消 ≪新市街地形成において考えられる導入メニュー≫ 創エネ ●未利用・再生可能エネルギー発電設備の導入(複数街区での面的利用(ネ ットワークの構築)/街区単位での一括導入/建築物への個別導入) ※未利用・再生可能エネルギーの例:【電気】太陽光発電 【熱】太陽熱 /地中熱 【その他】ガスコジェネレーションシステム/バイオマス等 省エネ ●暑さ対策(建物配置の工夫/風の道に配慮した道路・河川・公園緑地な どのオープンスペースの保全・創出やネットワーク化/道路空間の緑化 /透水性舗装等による地表面被覆の改善) ●建物緑化の推進(敷地内、屋上、壁面等の緑化) ●スマートハウス・スマートビルの導入(蒸暑地域の気候特性に配慮した省エ ネで快適な住宅の促進) 平準化 ●未利用・再生可能エネルギーを活用した最適なエネルギーの組み合わせ(電 力会社の電気+太陽光で創る電気+ガスで創る熱) ●住宅でのエネルギー使用の最適化を図るシステムの導入(HEMS/蓄電池、 電気自動車の充電施設の導入) 75 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 3)西普天間住宅地区における具体的な整備内容の提案 西普天間住宅地区における具体的な整備内容として、沖縄県駐留軍用地跡地スマー トシティ検討業務(沖縄県住宅課発注)における沖縄型スマートシティ検討ワークシ ョップの内容を踏まえ、以下のとおり整理する。 テーマ エネルギー共同利用 インフラ整備 CO2吸収源の確保 環境配慮型自動車の 利用促進 建築物建設 建築物のエネルギー 負荷軽減 エネルギー供給・使用 の効率化・最適化 建築物への再生可能 エネルギーの活用推 進 整備内容 LNG サテライト施設、エネルギ ーセンターの整備(大規模病 院、高度先進医療施設、教育 施設へ電力と熱を供給) 既存の自然環境の保全活用 炭素蓄積量の多い高木の植栽 PHV・EV 充電施設の整備 カーシェアリング・スペース の整備 ZEH、ZEB の建設 屋上・壁面・敷地緑化 グリーンカーテン HEMS、MEMS、BEMS の導入 主な実施主体 施行者が事業計画段 階までに検討し、イ ンフラ整備時に導入 個人住宅または医療 施設及び人材育成施 設の建設時に導入 太陽光発電、太陽熱利用 充電設備(蓄電池) 4)今後の検討に際しての留意点 ≪地域のライフスタイルの把握≫ ・地区内で生活する人や働く人のライフスタイルへの適合が重要となることから、 ターゲット層の検討やヒアリングによるニーズ把握が必要となる。 ≪進め方≫ ・スマートシティをどのように実現するのか、また、何を最重視するのかなど、ス マートシティの計画立案から実現に向けた進め方について検討が必要となる。 ≪強いリーダーシップ≫ ・エネルギー負荷の低い建築物(ZEH、ZEB)の建設誘導が重要であり、地権者の理 解を求める取り組みや行政主導のルールづくりについて検討する必要がある。 ≪地区外との連携≫ ・西普天間住宅地区のみで完結するのではなく、普天間飛行場跡地及び周辺市街地 と連携したエネルギーの面的活用や、再生・未利用エネルギーの活用について検 討する必要がある。 ≪都市基盤としての整備≫ ・都市基盤整備として以下についても検討する必要がある。 ○徒歩や自転車、公共交通が利用しやすい環境整備 ○環境配慮型自動車が利用しやすい環境整備 ○風の通り道に配慮した建物形状と配置 ○道路における緑化や透水性舗装 76 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 (2)防災機能の導入方策 1)防災まちづくりの考え方 ①防災と減災対策 東日本大震災を契機として、 「防災対策」に加えて、低頻度で大規模な災害に備えた、 ハード・ソフト施策の適切な組合せによる「減災対策」の重要性が認識されている。 ②自助・共助 行政による対応には限界があり、住民、企業、ボランティア等の民間各主体が、必 須の担い手と期待されており、住民一人一人が防災に対する意識を高め、自らの命と 生活を守れるようにすべきであり、それが可能となるように行政や官民の諸団体の後 押しが求められる。 また、災害時に地域で市民同士が助け合い、行政とも連携しつつ市民の協働による 組織・団体が積極的・主体的に地域を守るような社会づくりを普段から進めておくこ とも必要とされている。 2)災害時の医療拠点の実現に向けて配慮すべき事項と考えられる導入メニュー 西普天間住宅地区は、国際医療拠点として琉球大学医学部・附属病院や重粒子線治 療施設、人材育成施設等の立地が予定されている。また、地区東側は標高が高く、沖 縄県による津波浸水予想図によると浸水被害は見られない。広域的な観点では、普天 間飛行場跡地に予定されている大規模公園においては広域防災拠点として機能する ことが想定される。 以上から、普天間飛行場で想定される広域防災拠点との連携を見据え、災害時の医 療拠点として機能することを想定した整備が望まれる。 ≪配慮すべき事項≫ ●地域での防災機能の強化と減災対策の充実 ●災害時における地域の医療・防災拠点としての活用 ≪考えられる導入メニュー≫ ハード ●防災拠点の整備(医療施設における災害拠点病院と同等の機能整備/人 材育成施設における広域防災拠点としての整備/災害対策用ヘリポー トの整備) ●避難地・避難路等の整備(備蓄倉庫の整備/貯水槽(耐震貯水槽)、防火 水槽の整備/防災用トイレ、防災井戸、防災ベンチ、防災あずまや等の 整備/避難空間の整備) ●耐震性能の高い建築物の整備 ソフト ●災害情報の提供(防災行政無線の整備(デジタル化の推進・防災用広域 カメラの設置)/防災情報提供サービス(携帯端末での通知サービス) /ハザードマップの整備) ●津波標識の整備 ●避難標識の整備(避難場所表示、誘導標識) 自助・共助 ●地域防災力の向上(地域コミュニティ、医療施設、行政等との連携体制・ 協定の構築/自主防災組織の結成) ●防災訓練や防災教育が可能な環境整備(防災訓練や防災イベント・講習 会、防災ボランティアコーディネーター育成講座、防災ワークショップ の実施を想定した環境の整備) 77 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 3)西普天間住宅地区における具体的な整備内容の提案 医療施設や人材育成施設が立地する環境の活用を見据え、西普天間住宅地区におけ る具体的な整備内容を以下のとおり整理する。 テーマ 避難地・避難路 インフラ整備 災害情報 建築物 建設 医療施設 人材育成施設 整備内容 広域避難場所への避難路の確保 地区内の一時避難場所の確保 備蓄倉庫の整備 貯水槽、防火水槽の整備 広域防災拠点へのアクセス路確保 防災行政無線の整備 地域防災マップの整備 防災情報提供サービスの整備 津波標識・避難標識の設置 災害時の医療拠点としての機能整 備 広域防災拠点の役割を補完できる 整備 主な実施主体 施行者が検討・実施 基本構想段階におい て検討する必要があ る 行政が検討・実施 行政と事業者の連携 のもとで検討・実施 行政が検討・実施 ○広域避難場所への避難路の確保 ・普天間飛行場で予定されている広域避難場所への避難路の確保を図る。 ○地区の一時避難場所の確保 ・地区の一時避難場所としてオープンスペースを確保する。 ・来街者が多くなると想定されることから、それに対応できるように規模を検討する。 ○備蓄倉庫の整備 ・医療施設では、災害拠点病院と同等の備蓄を行う。 ・人材育成施設では、広域防災拠点での医薬品の備蓄を行う。 ・地域住民向けの備蓄については、来街者が多くなると想定されることから、それに 対応できるような量を確保する。 ○貯水槽、防火水槽の整備 ・医療施設において、貯水槽や防火水槽の整備を行う。 ○広域防災拠点へのアクセス路確保 ・広域防災拠点の機能を分担する場合には、普天間飛行場との災害に強いアクセス路 を確保する。 ○防災行政無線の整備/○防災情報提供サービスの整備 ・地域住民だけでなく、来街者に対し防災情報や行政情報をより多様な方法で伝達で きるようなデジタル同報系防災行政無線や防災情報提供サービスの整備を図る。 ○地域防災マップの整備 ・来街者が多くなると想定されることから、地域の詳細な防災マップを作成し、配布 を行うとともに、掲示を行う。 ・国際医療拠点施設が立地するため、障がい者、高齢者、外国人などの来街が多くな ることから、わかりやすくい情報提供やバリアフリー経路の確保などを行う。 ○津波標識・避難標識の設置 ・津波の影響は比較的少ない地域といえるが、地区内の目立つ場所に標準型の津波標 識や避難標識を設置する。 ○災害時の医療拠点としての機能整備 ・医療施設では、災害拠点病院とほぼ同等の機能を確保する。 ○広域防災拠点の役割を補完できる整備 ・普天間飛行場の広域防災拠点の検討とあわせ、医療に関する機能など分担を検討す る。 78 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 4)今後の検討に際しての留意点 ≪民間事業者・各種団体、国、県、市町村の役割分担の検討≫ ○民間事業者・各種団体 ・災害時の医療拠点となる医療施設の機能整備 ・施設整備における減災措置 ・従業員や来客の安全確保及び備蓄 ・自主防災活動等への参加 ・県や市町村等への協力 ○国 ・災害に強い都市基盤づくり(国管轄のインフラ) ・大規模災害時の救護体制の構築(広域防災拠点としての普天間飛行場) ・復興への制度的な支援 ○県 ・災害に強い都市基盤づくり(県管轄のインフラ) ・国や他都道府県との連携による応援体制の確立 ・広域的な観点からの市町村間の総合調整 ○市町村 ・災害に強い都市基盤づくり(公園の確保、物資の備蓄、避難経路案内、安全な避 難路) ・民間事業者事業者や他市町村などとの応援協定の締結 ・情報提供ツールの整備と災害時の適切な情報提供 ・防災まちづくりに関する情報提供 ≪受援環境(協定の締結、備蓄等)の検討≫ ○災害時応援協定 ・災害時における各種応急復旧活動に関する人的・物的支援について、自治体が民 間事業者や関係機関、自治体との間で以下のような協定を締結する。 □医療施設や医師会などとの「医療救護活動に関する協定」 □大規模施設を避難所として活用する「施設利用に関する協定」 □商店などとの「物資供給(食料品・飲料水・生活必需品・燃料等)に関する協定」 事例:「災害時における応援協定書」の締結について(那覇市) ・株式会社沖縄産業振興センター、那覇市・南風原町環境施設組合と「災害時一 時避難施設協定」 、一般社団法人沖縄県高圧ガス保安協会 LP 部会と「LP ガス供 給に関する協定」 、南風原町と「災害時相互応援協定」を締結。 ・協定締結は、島嶼県である本県において、大災害が発生すると、そのほとんど が帰宅困難者となる観光客の避難場所として、 「沖縄産業支援センター」 「環境 の杜ふれあい」を一時避難施設として活用できるほか、市内の避難所に LP ガ ス及び機器等を供給するものとなっており、三者との災害時応援協定締結は県 内初となる。 ・また、南風原町とは災害時に市町間において救援や避難者の受け入れ等で相互 に応援する協定となっている。 出典:那覇市 HP ○広域での相互応援協定 ・広域的に被災し、近隣の相互協力では対応できない場合に備え、遠隔地との相互 応援に関する災害協定の締結等を進める。(県単位、市町村単位) 79 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 (3)ユニバーサルデザインの導入方策 1)ユニバーサルデザインの考え方 ユニバーサルデザインの考え方について、沖縄県ユニバーサルデザイン推進指針に よると以下のように整理されている。 「特に改造などしなくてもはじめから、できるだけすべての人が利用しやすいよう に製品、環境をデザインする(つくる) 」と定義され、年齢、性別、国籍(言語)、 身体能力等の個人差に関わらずそれを利用するすべての人を対象として、それら 個々人の多様性から要求される様々なニーズにできる限り対応する「もの」をつ くる、という考え方。 ユニバーサルデザイン7つの原則 ①誰にでも支障なく公平に利用できる。 ②さまざまな使い方に柔軟に対応する。 ③使い方が簡単で直感的にすぐ使える。 ④使うために必要な情報がすぐに認知できる。 ⑤操作ミスや危険につながりにくい。 ⑥無理のない姿勢や少ない労力で、楽に使える。 ⑦利用、接近のしやすい大きさ、広さがある。 2)情報通信技術を活用した「多言語化」の推進 外国人を含めて多くの人々の安心・快適な活動を実現するため、施設整備にあたっ てのユニバーサルデザインに留まらず、情報通信技術を活用した「多言語化」を推進 することも考えられる。 図 スマート・ジャパンICT戦略(平成26年2月 総務省) 80 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 3)ユニバーサルデザインに配慮したまちづくりの実現に向けて配慮すべき事項と 考えられる導入メニュー 国際医療拠点の形成や医療ツーリズムの展開を見据え、医療従事者や研究者だけで なく、地元はもとより、県内や国内外からの様々な医療サービスを求める来訪者を想 定した環境づくりが必要となる。 ユニバーサル社会の実現にあたっては、公共交通機関、公共施設、住宅・建築物の 整備等のハード面の取組はもちろんのこと、誰もが利用しやすいよう、特に多言語に 対応した案内や情報提供などソフト面と一体となった総合的な取組が望まれる。 ≪配慮すべき事項≫ ●バリアフリーに対応した誰もが利用しやすい施設等の整備 ●誰もが安心安全に移動できる交通空間及び交通手段の確保 ≪考えられる導入メニュー≫ ハード面 ●公共交通機関、歩行空間等における取組み(ノンステップバスの導入/ 障害者や高齢者等に対応した駐車スペースの設置/幅の広い歩行空間 の設置や歩道の段差解消・勾配改善/音響信号機、高齢者等感応信号機 の設置/無電柱化/休憩施設の設置) ●住宅、建築物における取組み(建物内の段差の解消や手すりの設置/障 害者や高齢者等に対応した便所(オストメイト対応)/駐車スペースの 整備/エレベータの設置) ソフト面 ●多言語対応(多言語案内サインの設置、医療施設における多言語音声翻 訳システムの導入、防災情報を多言語で提供、多言語でのバス運行案内) ●ICT(情報通信技術)の利活用(リアルタイムなバス運行状況の提供) ●防災、防犯対策(災害時の支援体制の整備/情報提供を行う仕組の構 築) ≪各主体がユニバーサルデザインで果たす役割≫ [住民] ユニバーサルデザインの推進の意義を理解するとともに、利用者の立場で の意見を反映させるなど、取り組みへの関わりをもつ。 [民間事業者] それぞれが自分の分野でユニバーサルデザインの考え方を踏まえて 事業に取り組む。 [NPO] ユニバーサルデザインに関し、民間事業者や行政では取り組むのが難しい 活動や、住民・民間事業者・行政のコーディネーターとして活躍する。 [市町村] 住民や民間事業者、NPO、他の行政との連携を図りながら、ユニバーサ ルデザインに配慮した整備を進める。 [県] 取り組みの方向性を提示する。また、各主体のユニバーサルデザインに関す る取り組みへの支援や助言を行う。 81 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 4)西普天間住宅地区における具体的な整備内容の提案 多様な来訪者を想定した環境づくりが必要となることや災害時の避難誘導の視点 を踏まえ、西普天間住宅地区における具体的な整備内容を以下のとおり整理する。 インフラ整備 建築物建設 テーマ 安心・安全性の 確保 整備内容 歩行者に配慮した道路構造 自転車道の整備 公共交通の利便 性向上 リアルタイムなバス運行情報の 提供 移動の容易性の 向上 案内サインの多言語標記、 ピクト グラム・UD フォントの使用 音声案内 多言語翻訳システムの導入 災害時の医療拠点としての機能 整備 地域住民の文化・スポーツ活動に 活用 医療施設 人材育成施設 主な実施主体 施行者が検討・実施 基本構想段階において 検討する必要がある バス事業者が ICT 活用 による導入を検討・実 施 施行者及び道路管理者 が検討・実施 事業者が検討・実施 行政と事業者の連携の もとで検討・実施 行政が検討・実施 5)今後の検討に際しての留意点 ≪公共と民間の両者による検討・実施≫ ・住民、民間事業者、NPO、行政が共に検討する場として「(仮称)西普天間ユニバ ーサルデザインのまちづくり検討会議」を設置し、検討内容を実際の事業に反映 させる。 ≪公共交通への配慮や自転車道の設置、広い歩行空間の確保を考慮した道路構造の検討≫ ・道路は行政が整備を担う場であるが、ユニバーサルデザインに配慮した案を「 (仮 称)西普天間ユニバーサルデザインのまちづくり検討会議」に提示し、会議での 検討・提案を受け、見直しを行う。 ≪コミュニティバス運行の検討≫ ・公共交通の利用が見込まれる医療施設や人材育成施設が位置することから、県道 81 号線の路線バス以外に、公共交通ネットワークの一環として、交通拠点から のフィーダー交通となるノンステップ車両によるコミュニティバスの運行を検 討する。 ≪情報提供の推進≫ ・外国人や障がい者、高齢者が多く来街する地域となるため、多言語表記やピクト グラムの活用、見やすい色や字の大きさ・フォントなど、障がいの有無や年齢、 言語に関わらず、誰もがわかりやすいサインなど、ユニバーサルデザインによる 情報提供を積極的に行う。また、「国際医療拠点」として、外国人来街者にもや さしい地域とするため、多言語翻訳システムの導入など、情報通信技術を活用し た多言語化の推進にも取り組む。 82 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 6.総合整備計画策定に必要な情報収集、資料作成等 跡地利用特措法にて総合整備計画においてとりまとめることとされている事項の うち「農林水産業、商工業その他の産業の振興並びに観光及び保養地の開発に関する 事項」に関して以下の視点で事例を収集し整理した。 ○最先端医療施設の周辺環境 ○医療関連企業の集積 ○国際的な医療人材の育成 ○医療ツーリズム(医療施設と保養施設) 等 (1)医療拠点に関する情報収集 1)先進事例の整理 国内における健康・医療をテーマとする主な特区として以下が指定されている。 [国際戦略総合特区] ○関西イノベーション国際戦略総合特区(京都府、京都市、大阪府、大阪市、兵 庫県、神戸市) →① 神戸市医療産業都市 ○京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区(神奈川県、横浜市、川崎 市) →② 川崎市キングスカイフロント ○つくば国際戦略総合特区∼つくばにおける科学技術の集積を活用したライフ イノベーション・グリーンイノベーションの推進∼(茨城県、つくば市、国立 大学法人筑波大学) [地域活性化総合特区] ○ふじのくに先端医療総合特区(静岡県) →③ ふじのくに先端医療総合特区(静岡県) ○東九州メディカルバレー構想特区(血液・血管医療を中心とした医療産業拠点 づくり特区) (大分県、宮崎県) ○国際医療交流の拠点づくり「りんくうタウン・泉佐野市域」地域活性化総合特 区(大阪府、泉佐野市) ○尾道地域医療連携推進特区(広島県) ○かがわ医療福祉総合特区(香川県) ○東九州メディカルバレー構想特区(血液・血管医療を中心とした医療産業拠点 づくり特区) (大分県、宮崎県) ○みえライフイノベーション総合特区(三重県) ○先導的な地域医療の活性化(ライフイノベーション)総合特区(徳島県) ○群馬がん治療技術地域活性化総合特区(群馬県) ○地域の“ものづくり力”を活かした「滋賀健康創生」特区(滋賀県) 上記のうち、医療関連施設が集積している地区として、①∼③について整理した。 83 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 2)先進事例から整理される西普天間住宅地区における国際医療拠点形成に際しての留 意点 ①先進事例のまとめ 神戸市医療産業都市 従前の 土地利用 検討開始 特区 空港 交通 川崎市 キングスカイフロント 大規模工場跡地 埋立地(更地) →震災被災者のための 仮設住宅用地 平成 10 年(構想の検討) 平成 20 年(地区整備方 針) 関西イノベーション国 京浜臨海部ライフイノ 際戦略総合特区、 ベーション国際戦略総 先端医療産業特区 合特区 神戸空港 羽田空港 (平成 18 年開港、新交 (対岸であり、将来的に 通システムで直結) は連絡道路も計画) 新交通システム 京急大師線 「医療センター駅」 「小島新田駅」 (徒歩 15 分) ふじのくに 先端医療総合特区 (広域で指定) 平成8年(県立静岡がん センター基本計画) ふじのくに先端医療総 合特区 なし 御殿場線 「長泉なめり駅」(県立 静岡がんセンターの最寄り) (高速道路「長泉沼津イ ンターチェンジ」の利便 性が高い) ・実験動物中央研究所再 ・県立静岡がんセンター 医 療 に 関 ・先端医療センター (「トランスレーショナ (病院と研究所で、ファ 生医療・新薬開発セン する中核 (研究機関) ルマバレー構想の中核) ター ル機能」を担う病院と研 施設 究所) ・川崎生命科学・環境研 ・ファルマバレーセンタ ・理化学研究所 発生・ 究センター(官民複合研 ー(起業支援、場所は県 究施設) 立静岡がんセンター内) 再生科学総合 研究セ ンター (研究機関) ・ものづくりナノ医療イ ・ファルマバレープロジ ・神戸国際ビジネスセン ノベーションセンタ ェクト新拠点施設 ター(多機能施設) ー(ナノ医療技術の研究、 (平成 28 年 3 月供用開始 ・神戸バイオテクノロジ ー研究・人材育成セン ター(BT センター) 平成 27 年 4 月運営開始) 予定、地域企業の医療分 野への参入や研究開発支 援、医療関係人材の育成、 企業間の連携・交流) ・神戸大学インキュベー ションセンター(トレ ーニングセンター機能と インキュベーションセン ター) ・神戸バイオメディカル 創造センター(レンタ ルラボ) 病院 ・先端医療センター病院 なし (先端医療) ・中央市民病院 ・神戸低侵襲がん医療セ ンター(がん特化) ・西記念ポートアイラン ドリハビリテ ーショ ン病院(リハビリ支援) 84 県立静岡がんセンター 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 川崎市 ふじのくに キングスカイフロント 先端医療総合特区 不明 そ の 他 の 理化学研究所計算科学 ヨドバシカメラ 主要施設 研究機構(スーパーコン (物流センターなど) ピュータ) (平成 26 年 10 月) 7 社(平成 26 年 12 月) 32 社(平成 26 年 9 月、 進 出 企 業 283 社 起業支援の企業数) 数 状 況 の 整 ・検討開始より 15 年以 ・医療と環境に特化した ・広域の指定であり、現 状の施設としては、県 研究所が集まるイメ 上が経過し、集積が進 理 立静岡がんセンター ージである。 んでいる。 のみ。 ・神戸空港の開港により ・整備途中であり、今後 も新たな施設立地が ・今後、ファルマバレー 広域アクセスも向上 プロジェクト新拠点 予定されている。 している。 施設が整備される。 ・用地に余裕があり、今 ・ほぼ半数が物流用地 で、研究施設用の敷地 後も新たな施設立地 が限られている。 が予定されている。 神戸市医療産業都市 ②西普天間住宅地区における国際医療拠点形成に際しての留意点 ・すべての事例が特区制度を活用している。 ⇒国際医療拠点においても、特区などの制度を活用して、他の基地跡地や西海岸 地域とあわせて全体で取り組むことが求められる。 ・ 「神戸市医療産業都市」は立ち上げから 20 年経っていないにもかかわらず、非常 に多くの医療関係の研究施設や病院が進出しており、その規模は群を抜いている。 ⇒集積がさらなら進出を促しており、国際医療拠点においても、最初にどれだけ 立地を考えられるかが重要となる。 ⇒神戸のような集積は、現状では難しいように思われるが、研究施設については、 後背人口や都市機能の集積、原材料の供給などの影響が少ないため、沖縄にお いても可能であると考えられる。また、病院についても、医療ツーリズムなど により患者を確保できるよう検討が必要となる。 ⇒国際医療拠点の場合、西普天間住宅地区だけは用地が少ないため、西普天間住 宅地区の施設を核として、周辺での施設立地を検討する必要がある。 ・ 「川崎市キングスカイフロント」は空港に近く道路条件に恵まれているが、工業 地帯や空港の騒音、公共交通の使いにくさといった周辺環境の問題を抱えている。 ・来訪者が多くなり、周辺環境の影響も受ける病院は立地していない。 ・市の環境関係が入居するなど、しっかりバックアップをしている。 ⇒病院を設置する場合は、周辺環境やアクセスを良好にする必要がある。 ⇒行政のバックアップが重要である。 ・ 「ふじのくに先端医療総合特区」については、県立静岡がんセンターを核として、 施設を一箇所に集中するのでなく、地域全体で、ソフトを含めて取り組むもので ある。 ⇒必ずしも、施設整備が先行しなくてもよい。ソフト面での取り組みについても 重要である。 ⇒国際医療拠点においても、地域の下支えが必要であると考えられるため、 「ファ ルマバレープロジェクト新拠点施設」に相当する、地域企業の医療分野への参 入や研究開発支援、医療関係人材の育成、企業間の連携・交流に関わる施設が 必要となる。 85 第2章 キャンプ瑞慶覧地区西普天間住宅地区の総合整備計画策定に向けた検討調査 (2)医療ツーリズムに関する情報収集 1)沖縄における医療ツーリズムの展開に際しての留意点 ①医療ツーリズムの展開内容に関する事項 医療ツーリズムの展開内容に関する留意点としては以下が考えられる。 展開内容 留意点 ○最先端医療の提供 ・重粒子線治療の推進 ・その他最先端医療の導入 ○緊急性のない医療の提供(整形外科手術等) ・海外との価格差の縮小 ○観光及びリラクゼーションとの組み合わせ ・観光地としての魅力向上 ○リゾート地での良好な環境での長期療養 ・沖縄の温暖な気候と自然環境を 活用した滞在型保養地の整備 ○他国では禁止されている医療の提供(生殖医 ・需要を踏まえた検討 療、臓器移植等) ②医療ツーリズムの集客に関する事項 医療ツーリズムの集客に向けた留意点としては以下が考えられる。 項目 ○医療の質の確保 留意点 ・医療の質と安全において国際標準を満たすことを示す、 米国の国際医療機能評価機関(JCI)の認証の取得 ・恒常的な技術の向上と高い技術のPR ○ホームページの活用 ・多言語対応 ・インターネット予約への対応 ○現地事務所の開設 ・広報活動及び受け入れ窓口として機能 ○文化を尊重し、過ごし ・診療時だけでなく生活面における言語の違いに対する やすい環境づくり 抵抗感の軽減 ・多様な食事の提供 ○リピーターの確保 ・口コミによる利用拡大 ・健康診断などの定期的な利用 86