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小学部の実践
小学部の実践 テーマ 「個々の目標の達成に向けた自立活動の時間における指導のあり方」 1 はじめに (1)テーマについて 昨年度は、先進校や他校の実践を聞き、自立活動について理解を深めたり、各グルー プごとに数名を抽出し自立指導計画作成シートを作成し、個々の実態から自立活動のね らいや問題解決に向けた指導内容・方法を整理したりした。さらに、グループ分けをし てシミュレーションをすることにより自立活動の指導に対するイメージを持つことがで きた。 今年度は、自立活動の時間における指導が日課表に位置づけられ実施され るわけであ るが、一人ひとりの指導内容や方法等について、実践しながら学び深めていくことが大 切 で あ る と 考 え る 。そ こ で 、今 年 度 の 小 学 部 研 修 は 、下 記 の 3 点 を ね ら い と し 、 「個々の 目標の達成に向けた自立活動の時間における指導のあり方」というテーマを設定した。 ○ 個 々 の 実 態 か ら 自 立 活 動 の ね ら い を 設 定 し 、問 題 解 決 に 向 け た 指 導 内 容・方 法 に つ い て明らかにする。 ○ 小野里先生による研修や他グループの授業を見合うことで授業改善をする。 ○ 指導事例集や指導案を綴じ込み、今後の参考にする。 (2)研究方法等について ア 研修グループについて 1・2年生は、まだ学校に慣れていないため、多くの児童が個別指導 をすることに より個々の目標を達成できると思われる。また、実践単位で話し合った方がより研修 が深められるとことから1・2年を1つのグループとした。他の学年は、個々の児童 のねらいの中から柱となる事項によりからだの動きのグループ、心理の安定・人間関 係の形成グループ、コミュニケーショングループという3つのグループに分けた。そ のことにより、授業づくりの参考になると思われるからである。 イ 研究方法について 全児童の自立指導計画作成シートを作成し、自立活動のねらいを整理し、それを 基 に各グループで指導内容・指導方法・指導計画を立て、指導案を作成する。さらに、 授 業 を ビ デ オ に 撮 り 、見 合 い 、指 導 案 等 の 見 直 し を す る こ と で 授 業 改 善 を 行 う 。ま た 、 参考になる写真等を添付した指導案を綴じ、今後の参考にする。 ウ その他 ・夏休みに小学部研修会を開き、他グループで取り組んでいる授業を見合う機会を 持つ。 ・ 10 月 17 日 に 文 教 大 学 の 小 野 里 先 生 を 招 き 、 2 グ ル ー プ の 事 例 を 研 修 す る 。 ・実践していく上で課題がある場合は、小学部の教育課程委員と研究部 員を中心に話 し合い、解決に向けた提案をする。 2 各グループの実践報告 (1) 1・2年グループ ア は じ め に ~ グ ル ー プ の 目 標「 1・2 年 の じ り つ の 学 習 内 容 の 情 報 交 換 と 事 例 学 習 」 入学し たばか りの 1 年 生は、ま ずは実 態を 把 握しな がら、ど のよ う な課題 がふさ わ しいかを探っていく必要があった。人間関係もコミュニケーションもゼロの状態から の ス タ ー ト で あ る 。そ こ で 今 年 度 は 児 童 7 人 に 対 し て 大 人 7 人 、マ ン ツ ー マ ン の 態 勢 で「じりつ」をスタートすることになった。 2 年 生 は 、実 態 に つ い て は 把 握 し て い る 状 態 で あ っ た が 、低 学 年 で あ り 、初 め て「 じ りつ」の取り組みを行うということで、児童 5 人に対して大人 4 人、ほぼマンツーマ ンに近い体制で時間における指導を行うことになった。 1 ・ 2 年 生 と も 主 な ね ら い が 「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 」 の 児 童 も い れ ば 、「 身 体 の 動 き」や「心理的な安定」の児童もおり、ほぼ個に応じる形での指導が可能であった。 そこで、1・2 年グループの研修では、互いに学習内容を知ること、情報交換を主な 目標に設定した。1 学期は、支援プランおよび使用した教材を用いての情報交換を行 い、反省を行った。2 学期は1・2 年から1ケースずつの事例をビデオにとり、事例 学習を実施した。 イ 授業実践の情報交換 主に1学期は、各学年のじりつの授業について、それぞれの学習内容、体制につい て情報交換を行った。 学習内容については、支援プランや実際の教材を用いて情報交換をしたことで、児 童の実態に応じて、どのような目標や課題を設定し、どのような授業を行っているの かをお互いに知ることができ、有意義であった。 態勢については、それぞれの学年で次のような反省があがった。 1年は、児童7人に対し教員7人(担任4人+自立活動部3人)でスタートし、マ ンツーマンで指導ができたことがとても良かった。1年生段階では、児童の実態を把 握できるまでには時間がかかる。実際に組み合わせを変更したこともあったので、組 み合わせは固定せず、柔軟性を持たせ、スタートも他学年より遅らせた方が良い。場 所は、自立活動室とプレイルームと教室に分かれることができ、恵まれていた。 2年は、児童5人に対し教員4人(担任2人+自立活動部2人)でスタートした。 個々の目標に沿って組み合わせをするときに、児童の実態と教員の人数を考慮し、よ り指導効果があがる組み合わせを考えた。自立活動室と生活訓練室と教室に分かれて 行ったが、生活訓練室が使用できず他の場所で実施したことがあり、いつも同 じ場所 でできたほうが、わかりやすかった。情緒の安定をねらいとする児童にとっては、自 立活動室と教室で、マンツーマンで落ち着いた環境で授業ができて よかった。 ウ 2年の事例学習より 【児童の実態】 小学部2年生のA、B。二人とも広汎性発達障害である。Aは、自分勝手な行動が 多く会話が成立しにくい。Bは、発音が不明瞭だが大人との会話を楽しむことができ る。二人とも日常生活はほぼ自立している。しかし、集団行動で指示を聞いて動くこ とや、ひらがなの読み書きに課題がある。 【ねらい】 ・話を聞いて行動することができる。 ・ひ ら が な を 読 ん で 意 味 を 理 解 す る こ と が で き 、情 緒 の 安 定 に 役 立 て る こ と が で き る 。 【実践①】 ●ケンステップを並べる。教員が指定した順番を記憶してその順番に跳ぶ。 ●ひらがなの文字ブロックを用意し、絵カードを見て文字ブロックを選んで並べる。 【評価】 ● 最 初 は ケ ン ス テ ッ プ の 3 つ の 色 指 定 が 覚 え ら れ ず 、教 員 に 確 認 し て い た 。集 中 す る ことを促していったら、4色を覚えて跳ぶことができるようになった。まだ集中し ていないと間違えることがあるが、話を聞いて覚えるということは理解できるよう になってきた。 ●『 れ い ぞ う こ 』が『 れ ぞ こ 』に な っ て い る の で「 読 ん で ご ら ん 」と 言 う と「 れ い ぞ うこ」と読んでいる。また『くつ』が『すつ』になったり、自分が話している言葉 と文字が一致していないことが多かった。しかし一文字ずつ発音していくことによ り、文字と言葉が一致するようになってきた。 【意見交換】 ・ 文 字 は 、 国 語 の 学 習 と は 別 に 、 混 乱 し た と き に 読 め る と 便 利 な ツ ー ル で あ る 。(「 し ず か に 」「 す わ り ま す 」 な ど ) ま た 、 発 音 が 不 明 瞭 な 児 童 に と っ て は 、 伝 わ る こ と の 喜びにつながる。心理的安定のための文字習得はコミュニケーションに生かされる。 ・ 授 業 を 行 う 中 で 、「 楽 し く で き る も の 」「 自 立 と は 何 か 」 を 常 に 考 え て い く 。 ・小さいことを目標にしていくほうがよい。 エ 1 年の事例学習より 【児童の実態】 小学部1年生のC。障害種は、自閉症である。入学当初の実態として、簡単な指示 は理解できるが、発声・発語はない。要求を伝える手段として、泣く、大人の手を引 く、クレーンを用いる行為が見られた。自分から大人に関わりに行く様子も見られた が、やって欲しい遊びを伝える手段が乏しく、大人の手を引いてアピールしていた。 また、自分ができない状況に陥った場合は、手伝って欲しいという気持ちを泣いて表 現していた。やって欲しいことや欲しいものを他者に伝えることが困難であるため、 情緒が不安定になり泣いて騒ぐことがあった。 【ねらい】 「やって」 「 ち ょ う だ い 」の 2 つ の 要 求 を 、サ イ ン を 用 い て 他 者 に 伝 え る こ と が で き る 。 【実践②】 ●Cの好きな型はめを用意する。型はめの台とピースを手渡すが、ピースは、Cが 開 け る こ と が 困 難 な 袋 に 入 っ て い る 。 そ の 際 に 、「 や っ て 」 と い う サ イ ン を 用 い て、教員に袋を開けるように要求を伝える。 ●型はめを用意し、Cが行う。型はめの1ピースを教員が持っていて、完成できな いようにしておく。その際、教員に「ちょうだい」というサインを用いて、ピー スが欲しいという要求を伝える。 【評価】 実践①、実践②共に、授業当初は、サインを教えてもクレーンや、奪い取る行為 が 目 立 っ て い た 。 し か し 、 そ れ に 応 じ な い で い る と 、 徐 々 に 「 や っ て 」( 図 1 ) や 「 ち ょ う だ い 」( 図 2 ) の サ イ ン を 用 い て 要 求 表 出 を す る こ と が 可 能 に な っ た 。 図1 図2 【意見交換】 ・何を子どもに身につけさせたいかが明確で、要求を引き出す工夫がされていてよか った。 ・今後は、継続した指導を行い、より多くの場面や人での般化を目指したい。学校生 活や日常生活で使用できるようにしていけるとよい。 オ まとめ 今年度は児童の人数が尐なかったので態勢に恵まれており、ほぼマンツーマンで指 導することができた。特に1年生は、1学期は実態を把握する必要があったので、マ ンツーマンでの態勢での「じりつ」でよかった。ただ、学級担任や学校自体に慣れて いく時期に、担任以外の教員に個別で教室以外の場所で指導を受けるということが難 しかった児童もいた。そこで2学期に指導担当を一人変更し、それ以降は、スムーズ に「 じ り つ 」を 行 う こ と が で き た 。2 年 生 は 、自 立 活 動 部 の 教 員 に も ス ム ー ズ に 慣 れ 、 落ち着いて「じりつ」を進めることができた。1,2年生という年齢の近い 2つの学 年でビデオを見て研修することができ、お互いに参考になった。それぞれの児童の実 態、個に応じた課題も知ることができてよかった。教材の紹介にもなり、授業に 生か せる研修となった。 来年度以降、教員数が減ることが予想され、ほぼマンツーマンの態勢での指導がで きない場合のシミュレーションを行ってみる必要がある。教員数が減ったとしても、 新 1 年 生 は マ ン ツ ー マ ン で「 じ り つ 」が 行 え る よ う に 態 勢 を 組 め る と よ い と 思 わ れ る 。 (2)からだの動きグループ ア はじめに (ア)グループの目標 「一 人 ひ と り の 身 体 の つ ま ず き に 合 わ せ た 効 果 的 な 指 導 の あ り 方 を 知 る 」 (設定理由) ・子供たちが何気なく行っている身体の動きの中に不器用さやデコボコの発達が見 られるのではないか。 ・発達の段階を知りながら丁寧に子供たちの身体を知ることで個々 の身体の動きの 不器用さを阻害しているものを見つけられるのではないか。 (イ)研修経過 a 自立活動部の先生を中心に資料を参考にしながら身体の発達について話し合 う。 b 事例報告(参加メンバーが現在授業で行っている指導の様子を報告し、指導面 で悩んでいることなどを話し合う) c 小野里先生の研修会で発表した事例について、アドバイスをもらいその後の実 践に変化があったか、報告を聞く。自立活動部の先生から実践で直ぐに使えそ うな教材を紹介をしてもらう。 d 事例報告をしながら話し合いをする。 e 指導経過についての報告(事例報告会の話を参考にし 、どのように実践できた か、児童に変化はあったか、等) イ 事例学習について (ア)A くん ☆児童の実態 ・視 線が常 に目 の高 さ にある ので活 動に 気持 ちが向 きにく い 。ま た 、手 元に 視線を 向けよ うとしても見られないことが多い。 ・ひとつの活動に気持ちを向けられる時間が短い。 ・発声はあるが、音声での要求表現が難しい。 ・体 幹がし っか りし て おらず 、上半身 と下 半 身の動 きを分 けて 使え ないた め 、ふら ついた り転びやすかったりする。 ① 膝を曲げずに歩いたり走ったりしてしまう。 ☆指導目標 指導目標 ・手指の操作性を高めるとともに、手元に視線を向けて活動に取り組むことが できる。 ・活動や学習の持続力をつけることができる。 ・要求表現の幅を広げることができる。 ・背中や腰周りの身体の使い方を知ることができる。 ☆指導内容 ・ストレッチポール、背中・上肢のストレッチ ・ペットボトルキャップ入れ、棒差し ・フィット回転盤 ☆文教大学 小野里美帆先生の研修会より ・ストレッチポール、ストレッチ → 集中力がアップするのでよい。授業開始時より も視線が安定している。 ・授業の映像を見ると、目を使うことが苦手であることがわかる。眼球運動を促すため 動いている遊具にのっているときに何かを見るようにするとよい。PCやタッチパネ ル、書見台や楽譜を立てかけるように見せると見やすいのでよい。コントラストや大 きさ、配色にも気を配るようにする。 ・達成する瞬間に視線が離れるときは、結果を見ることで自分がこうしたら結果 がこう なるというのがわかるとともに、自己肯定感につながり、できたという手ごたえがあ る。 ・エ コ ラ リ ア の よ う で あ る た め 、状 況 を 結 び つ け た り 、サ イ ン を た く さ ん 使 っ た り し て 関わることが重要である。サインを使っていくことで理解 力が上がる。 ・ポ ケ ッ ト や 巾 着 に も の を 入 れ て 探 り 出 す 触 覚 遊 び や 粘 土 や 砂 遊 び を 行 う こ と で 、手 の ひらの感覚を育てることができる。手のひらが使えないと微細運動につながらないた め、非常に重要である。また、手のひらに圧をかける手押し車等の動きもよい。 ☆研修後の学習 フ ィ ッ ト 回 転 盤 に の っ た と き に 近 く で 動 き な が ら 歌 を 歌 う と 教 員 の 姿 を 探 し 、目 を 使 う こ と が で き て い た 。し か し 、日 常 生 活 に 反 映 さ れ た と 実 感 す る 程 度 で は な か っ た 。今 後 も 継 続 し た 指 導 を 行 っ て い く 必 要 が あ る 。自 立 の 時 間 以 外 で は 、 「立って」 「はじめま す 」等 音 声 で 関 わ っ て い く こ と で 尐 し ず つ 日 常 動 作 と 音 声 が つ な が っ て き て い る よ う で ある。 (イ ) Bグループ ☆グループの実態 実態 1 自立活動の区分 簡単な日常会話ができ、日常生活面はほとんど声 心理的な安定(2) かけ程度でできるが、集団での活動が苦手だった 人間関係の形成(4) り、新しいことを受け入れる力が弱く情緒不安に なったりする児童がいる。 2 日常生活や、遊んだりする時には全く不自由さは 健康の保持(4) 見られないが、身体の色々な部位に注目すると使 身 体 の 動 き( 1 ) (2) (3) い方がぎこちなかったり、継続して同じ姿勢を保 (4) 持する力が弱い児童が多い。 ☆指導目標および内容 目標 1 内容 見本を見てしっかり身体を動かす。 バランスボール体操を行う中で座り 身体の色々な部位の使い方を知る。 方 、止 ま り 方 、重 心 の 取 り 方 な ど 身 体 で覚えられるようにする。 ストレッチポールを使いリラックス する中で姿勢や呼吸に注意が向けら れるようにする。 2 友達と関わりながら、ルールのある活 友 達 の や っ て い る こ と を 見 て 、同 じ こ 動ができる。 と を す る 。ゲ ー ム な ど 簡 単 な ル ー ル を 通してやり取りをする。 島 取 り ゲ ー ム・フ ル ー ツ バ ス ケ ッ ト な ど。 ☆本時の学習 ◆具体的目標 ・身体の各部位を意識しながら見本を見てしっかりと身体を使うことができる。 ・友達を意識し、合わせて行動することができる。 ◆今まで行ってきたこと 学習内容 指導上の留意点 ・バ ラ ン ス ボ ー ル を 準 備 室 ま で 取 り に ・友達と声を掛け合って一緒に行けるようにす 行く。 ・靴を脱ぐ ・あいさつ ① バランスボールで身体を動かそ う。 ・バ ラ ン ス ボ ー ル 体 操 第 1・2 体 操 を 行う。 ・ポイント学習 る。 ・バランスボールを床につけないで抱えて持っ てくる。 ・靴、靴下を脱いで揃えて置く。 ・バランスボールに乗り、静止の状態であいさ つができるようにする。 ・曲に合わせ、見本を見て動けるようにする。 ・動きを指定し個別に関わりながら丁寧に指導 できるようにする。 ② 身体の動きチェック○ a ・「 で き る か な ? や っ て み よ う ! 」 で 身 体 の 色 々 な動きに挑戦し個人の実態を知る。 ・タンバリンの音を聞いてマットの上を移動す ③ リトミックあそび る。簡単なルールで友達とやり取り遊びをす る。 ④ ストレッチポールに乗ろう ・ポールにまっすぐに乗り、姿勢がくずれない よ う に 促 す 。( 両 足 を は ず さ な い 、 動 か な い 、 まっすぐにのり、ねじれない) ⑤ ビーンズバックあそび ・身体の色々な部位を覚えたり、バランスを意 識できるようにしたりする。 b ⑥ 身体の動きチェック○ ・声かけや道具などを工夫しながら1学期に行 った、身体の動きチェックをする。 ⑦ 机くぐり ・低い机の下を腹ばいで移動する。足や腰の使 い方を意識できるように触れたりし支援す る。 ・評価 あいさつ 片付け ◆個別の実態(身体チェック表) ☆ で き る か な ? や っ て 見 よ う ! ! (H 2 5 年 5 月 ) 項目 A B C D E F 備考 右× ○ 右× ○ ○ ○ カウントがあるとバランス 左○ ○ 左△ ○ ○ ○ を保てる。 ② 前屈 ○ ○ △ △ ○ △ △膝を曲げてしまう ③ 上 体 ひ ね り (左 右 ) ○ ○ ○ ○ ○ ○ イメージはあるが正しい姿 ④ 背そらし ○ ○ ○ ○ ○ △ 勢と保持が難しい。 ⑤ 平 均 台 渡 り (幅 10 セ ○ ○ × ○ ○ ○ ⑥ 正座 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ⑦ 膝立ち △ ○ △ ○ ○ △ 保持ができない。 ⑧ 膝立ちから片膝立ち △ ○ △ ○ △ × バランスが取れず手を使っ ① 片足立ち(左・右5 カウント) ンチ) になって立ち上がる ⑨ ・腕たて姿勢の保持 てしまう。 △ △ ○ △ △ △ ・イメージはあるが膝をつ ・手は 開い ている か。 ○ ○ ○ ○ ○ △ けずに姿勢をとることがで ・肘は 伸び ている か。 ○ ・肩の位置に保持で ○ きるか。 △ ・体幹 はま っすぐ か。 ○ △ ○ ○ △ きない。 ○ ○ ○ ○ △ △ ○ △ △ △ ・お尻を突き出す姿勢にな る ・お腹をつけずに両腕支持 をすることが難しい。 ・つま先で身体を支えられ ない ⑩ほふく前進はできる × △ × × × × か 腕と足を交互に使うことは 難しい。ゴールに向かい適 当に進むことはできる。 ⑪腕を水平に保持 ○ ○ ○ △ ○ △ 「まっすぐ」のイメージが わ か り ず ら い 。持 続 し な い 。 ⑫胸の前で両手を合わ △ △ △ △ △ △ 合わせることはできるが、 せ る 、そ の 手 を 頭 の 上 に 保持したり上げることは難 持っていく。 しい。 ◆指導の経過 メロングループの子供たちは一人を除き体格が良く日常生活には不自由なく走り回っ ている児童が多い。体重の増加も気になるため、年間を通してバランスボール運動を行 った。そ れと共 に 1 学 期に前 ページ のよ うな 実態チ ェック をす ると 、見本や ことば だけ では正しく表現することができない身体の使い方がたくさんあることに気付いた。 2 学 期 に 入 り 具 体 物 を 使 っ た り 、身 体 に 直 接 触 れ る こ と で 正 し い 姿 勢 が 取 れ る こ と に 気 付 き 、 じりつの授業を通し言葉の指示と身体の動きが結びつくように丁寧に指導を行うことに した。以下は上記の実態チェックの項目で太字斜線部の項目についての実践の様子。 ☆①片足立ち バランスが取れていないときに 腰に手を触れ重心の取り方を支 援することで片足で立つことが しっかりできた。 ☆⑪腕を水平に伸ばす 棒 を 使 う こ と で「 ま っ す ぐ 」の こ と ば の イ メ ー ジ を 見 な が ら 理 解 し た こ と で 、こ と ば だ け で腕を水平に伸ばすことが色々な場面でで きるようになった。 ☆②前屈 床に手をつけようとする ため膝が曲がった状態だっ た が 、棒 を 使 い「 ま っ す ぐ 」 のイメージをつかんだり、 腰の保持、腕の伸ばし方な ど一緒に行うことで、足や 腕を曲げずに前屈姿勢を保 つことができた。 ☆③上体ひねり 正 座 と 立 位 で「 ひ ね る 」動 作 を 行 っ た 。教 員 が 真 後 ろ に いて、手にタッチをしたり、 両足をマットからずらさな い で「 先 生 の 顔 を 見 る 」な ど の や り 取 り を し た 。そ の 結 果 だ ん だ ん と「 ひ ね る 」動 き が できるようになってきた。 ☆⑫挙上(手をあげる) 一人の教員が目の前で見本を見せ、もう一人は児童 の 後 ろ で 身 体 の 色 々 な 部 位 に 触 れ な が ら「 ま っ す ぐ 」 を身体で覚えられるようにした。立つ位置がマット で指定されていることもしっかりとした姿勢がとり やすかった。 ☆⑩ほふく前進 低い長机を使い窮屈な腹ばい姿勢で目的の場所まで進む活動を行った。自由に身体を 動かすことができないために最初はどうすれば前に進めるのか戸惑っていた。前進する のが難しいときには尐しだけ足の裏を支え、足の裏で床を蹴ることを促したり、前方で 「手を広げる」 「 右 手 ・左 手 」な ど 声 か け を し た り し た 。声 か け や 尐 し の 支 援 を 頼 り に 自 分で全身を使って動かなければいけない状況を設定することで、自発的な動きを引き出 すことができ、回数を重ねることでスムーズに移動できるようになってきた。 ◆まとめと今後の課題 ・活 動 を 行 う 時 は 指 示 し た 姿 勢 作 り を し た 後 で 本 人 も 一 緒 に 写 真 で 確 認 し 満 足 し た り 自 信が持てるようにすることで楽しく行うことができた。 ・子 供 が 達 成 感 を 感 じ ら れ る 楽 し い 授 業 を 行 う こ と で 、よ り 上 手 に 動 き た い と 言 う 意 欲 を高め、実行することができた。 ・か ら だ の 動 き と 言 葉 が 結 び つ く こ と で ボ デ ィ イ メ ー ジ が 育 ち 簡 単 な 声 か け で 正 し い 姿 勢に修正することができるようになってきた。 ・リズムや体育などの学習活動にも結びついてきた。 ・肥満傾向の児童が多いため健康の保持や維持のためにも正しく体を動かし、使ってい くことが今後も課題となる。 ウ グループのまとめ 最初にからだの動きグループで研修目標を定めたことで、普段はあまり接する機会 のない重複クラスと一般のグループの子供たちを同じ視点で見つめ直すことができた。 重複クラスの児童だけではなく、一般クラスの児童にも身体の課題があることに気付 かされた。そして、手・足・腰・など身体の一つ一つに注目すればするほど子供たち のアンバランスな発達が見えてきて色々な面から研修することができた。階段の昇り 降りの苦手なB君の事例では、 「 階 段 を 昇 り 降 り す る 」動 作 だ け で は な く 、足 か ら 手 の 指先まで色々なアプローチの仕方があることや、具体的な方法について話し合うこと ができた。また運動量の確保から始めたメロングループのじりつではしっかりと身体 を動かすことを目標にしたことで「言葉と身体の動きの結びつき」の大切さに気付き 研修を重ねながら実践を行うことができた。 (3)心理の安定・人間関係の形成グループ ア はじめに 心理の安定・人間関係の形成グループでは「心理的な安定及び人間関係の形成に効 果的な指導内容・方法及び教材の工夫を研究する」というグループ目標を設定して研 究を進めることになった。 本グループでは、指導目標を達成するために必要な項目として、児童の実態に合わ せながら「知的障害のある児童生徒の自立活動の具体的な指導内容」の中から「心理 的 な 安 定 」、「 人 間 関 係 の 形 成 」 な ど を 中 心 と し て 選 定 し 、 授 業 展 開 が 考 え ら れ た 。 グ ループ内の学習形態は、各学年によって小集団学習及び個別学習の形態がとられた。 学習内容としては、 「 絵 本 の 読 み 聞 か せ 」、 「 パ ネ ル シ ア タ ー で の パ ネ ル 貼 り 」、 「絵カー ド の 理 解 」、「 パ ズ ル を 使 っ て の 型 は め 」、「 サ ウ ン ド シ ェ イ プ ス を 使 っ て の 模 倣 」、「 か る た 取 り 」、「 ゲ ー ム を 楽 し む 」、「 柔 ら か め の ボ ー ル を 使 っ て の キ ャ ッ チ ボ ー ル 」、「 ス トレッチポールを使ってのリラクゼーション」などといった授業が展開された。 イ 事例研究 (ア ) Aさん・Bさん(個別からグループに変更) ☆グループの実態 実態 A 1 ・自分の興味関心のあるところに突発的に動いて行ってしまっ 自立活動の区 分 心理の安定 たり、やろうとしたりする。 ・やりたくないことを強要されると、噛んだり引っかいたりす るなどの他傷や自分の頭を打ち付けたりする自傷が見られる ことがある。 2 ・指示理解は通り、理解できていたり納得していたりすること には素直に取り組める。 人間関係の形 成 ・聞 か れ た こ と に 対 し て お う む 返 し に な っ て し ま う こ と が 多 く 、 B 1 適切に答えたり自分の気持ちを伝えたりすることが苦手であ コミュニケー る。 ション ・大きな集団やあらたまった場所では自分の気持ちを伝えるこ とが難しい。 ・活動の途中で気持ちが途切れてしまうと、何をすべきか分か らなくなってしまうことがある。 コミュニケー ション 心理の安定 2 ・安心できる環境では、大きな声で自分の気持ちややりたいこ 心理の安定 とを言葉で伝えられる。 3 ・姿勢が崩れやすく、すぐに寝転んだり、着席時も足を上げた 身体の動き りしてしまう。 ☆指導目標および内容 目標 A 1 内容 ・苦 手 な 課 題 に も 取 り 組 み 、適 切 な 身 体 の 使 ・マ ッ ト で 身 体 を 集 中 し て 動 か し 、 い方を習得する。 身体の使い方を学ぶ。 ・豆つかみで手指の操作性を高め る。 2 ・話 に 注 目 し た り 、相 手 の 話 を 良 く 聞 い た り して、質問に適切に答えることができる。 ・パネル、絵カード、状況カード 等を使って問題や質問に適切に 答える。 B 1 ・自 分 の 気 持 ち や や り た い こ と を 適 切 な 言 葉 で 人 に 伝 え る こ と が で き る 。ま た 、学 級 等 ・パネル、個別学習でのやりとり で 、適 切 な や り 取 り を 学 習 す る 。 で前に出た際でも大きな声ではっきり話 すことができる。 2 ・正 し い 姿 勢 で 着 席 し 、手 指 の 操 作 性 を 高 め る。 ・パズル、手遊び等で、身体を使 う。 ☆学習について ◆具体的目標 ・集中して活動に取り組む。 ・質問に的確に答えることができる。 ・苦手な活動にも取り組み、身体の適切な使い方を習得する。 ◆指導の流れ 時間 10:40 学習の流れ ○はじめのあいさつ 指導上の留意点 備考 ・姿勢よく着席し、注目を促す。 ○合同学習 10:55 ・絵本 ・パネルシアター ・身体づくり ・パネルに身体のパーツを貼る場面を設け、 パネル 参加できるようにする。 ・一緒に楽しく見られるように、声かけをす マット る。 ・マ ッ ト で 転 が る 、ジ ャ ン プ 、ボ ー ル 運 び 等 、 11:10 ○個別 いろいろな動きを取り入れ、身体のバラン <A> スを取ったり、各部位の使い方を工夫して 1 、絵 カ ー ド を 見 て 答 え 動かしたりする。 る。 ・名 詞 や 動 作 を 表 す 絵 カ ー ド を 見 せ て 、 「これ 絵カード は 、何 で す か 」 「 こ れ は 、何 を し て い る と こ ろですか」と分かりやすく質問し、正しく 2、豆つかみ 答えられるようにする。 ・補助箸を使って正しい持ち方をさせる。 豆の模型 補助箸 ・手元を良く見ながら豆をつかむよう声かけ <B> 1、パズル をする。 パズル ・か た ち( ○ 、△ 、□ )、ア ン パ ン マ ン の 中 か ら好きなものを選び、パズルをする。 ・手元を見て、型に正しくはめられるよう声 2、運筆 かけ等で支援する。 ・プリント、おもちゃを使用し、自分から手 3、ラブラブタイム を動かす。 ・好きなくすぐり遊びなどの手遊びを行い、 11:20 ○おわりのあいさつ たっぷりスキンシップをする。 ◆評価 A ねらい① ② ・初 め は 、や り た く な い 事 に は 取 り 組 も う と ・質問に対する答え方を具体的に示し し な か っ た が 、興 味 の あ る こ と を 目 標 に し て繰り返し練習し、おうむ返しにな ながら尐しずつ集中してできるようにな らずに答えられるようになってき ってきた。 た。 区分 B 心理の安定・身体の動き ・やりたくないことの表現は良く出来てい 人間関係の形成・コミュニケーション ・簡単な型はめブロックには集中して た 。大 好 き な く す ぐ り は 何 度 も 自 分 か ら 要 取り組めた。おぼんを持って歩く時 求し、言葉で伝えることが出来た。 は首の後ろを支えるとまっすぐ歩く ことが出来た。 区分 コミュニケーション 心理の安定・身体の動き ☆まとめ 1 学 期 は A ,B の 児 童 そ れ ぞ れ で 個 別 に 行 っ て い た が 、心 理 の 安 定 や 身 体 作 り は 共 通 の 課 題 で あ り 、一 緒 に 学 習 し た 方 が 効 果 的 で は な い か と い う こ と で 、2 学 期 か ら 前 半 を 合 同 で 行 う こ と に し た 。絵 本 や パ ネ ル シ ア タ ー は 二 人 で 見 る と お 互 い の 反 応 を 見 合 っ て よ り 楽 し む こ と が で き た 。身 体 運 動 で は 、相 手 の 動 き を 見 た り 、順 番 を 守 っ た り す る こ と に よ り 、 静 か に 座 っ て 待 つ な ど の ル ー ル を 守 る 練 習 に も な っ た 。後 半 は そ れ ぞ れ の 課 題 に 応 じ て 個 別に指導を行ったが、合同と個別のめりはりがつき、集中して行うことができた。 今 後 の 課 題 と し て 、児 童 の 実 態 の 変 化 に 応 じ て 学 習 内 容 を ス テ ッ プ ア ッ プ し 、よ り 効 果 的な自立活動の方法を研究し、進めていく必要がある。 (イ ) C グループ ☆グループ(あるいは個人)の実態 実態 1 自立活動の区分 ・指示理解して行動できるが、相手の話を聞いていない 人間関係の形成 ことがある。 2 ・自分の思い通りにならないことがあると大きな声を出 コミュニケーション してしまうことがある。 ・三語文以上で自分の思いを伝えることができる。 ☆指導目標および内容 目標 1 内容 ・相手の話を聞いたり自分の話を 2 ・かるた ・ケンステップ したりして言葉でのやりとりを ・ステレオゲーム ・落ちた落ちた する。 ・ゲーム後の発表 ・山手線ゲーム ・ルールを守って行動することが できる。 ・サウンドシェイプス ・キャッチボール ・いっせーのせゲーム ☆前期の学習について ◆具体的目標 ・ルールに従って、周りに合わせて活動する。 ・教員の質問に的確に受け答えをすることができる。 ◆指導の流れ 時間 学習の流れ 1 3:1 5 ○はじめのあいさつ 1 3:1 6 ○サウンドシェイプ ス 1 3:2 5 ○かるた取り 指導上の留意点 ・ルールの確認をする。 教員のお手本と同じ回数を叩く。 ・ルールの確認をする。 備考 サウンド シェイプ スセット ①両手は頭の上 ② 10 枚 ず つ 読 ん だ ら 読 み 手 を 交 替 す る ③読み札を最後まで聞いてから取る ・質疑応答をする。 「今日は何枚のかるたをとりましたか」 (助詞の使い方) 「~さんは何枚取ったと言っていました か」 (人の話を聞いているか) 「かるたの裏は何色ですか」 かるた ( 質 問 の 内 容 を 聞 い て い る か )・ ・ ・ 等 。 ・ルールの確認をする。 1 3:3 5 ○キャッチボール ボール ①みんなで向き合うように輪を作ってい すに座る。 ②パスを出す人は相手の名前を言ってか らボールを投げる。 ③ パ ス を 受 け る 人 は 名 前 を 呼 ば れ た ら「 は い!」と返事をして受ける。 1 3:4 5 ○あいさつ ◆評価 ねらい① A ねらい② ・相 手 の 話 を 聞 い た り 自 分 の 話 を し た り し・ ル ー ル を 守 っ て 行 動 す る こ と が で き て言葉でのやりとりをする。 る。 ・教員の説明や友達の発言をよく聞いて、 ・ゲ ー ム の ル ー ル を 守 っ て 活 動 す る こ と 活動することができた。 ・状況にあった発言ができた。 B ができた。 ・思いやりにかける場面があった。 ・教員の説明や友達の発言をよく聞いて、 ・ゲ ー ム の ル ー ル を 守 っ て 活 動 す る こ と 活動することができた。 ができた。 ・発 表 や お 話 等 で は 伝 え る 声 が 小 さ く 、 聞き取りづらいことがあった。 C ・教 員 の 説 明 や 友 達 の 発 言 を よ く 聞 か な ・ ル ー ル を 理 解 す る ま で に 時 間 が か か いことが多く、関係のない話をするこ ともあった。 り、ルールを守れないことがあった。 ・失敗を認められないことがあった。 ・教 員 や 友 だ ち と の 会 話 の 場 面 が 増 え て きた。 D ・ 教 員 の 説 明 や 友 達 の 発 言 を よ く 聞 か な ・ズ ル を で き る 程 度 に ル ー ル を 理 解 す る いこともあったが、授業を重ねるごと に教員の説明や友だちの発表を聞く ようになってきた。 ことができた。 ・失 敗 を 認 め ら れ な い こ と が あ り 、泣 き 出してしまうことがあった。 ・興 味 の あ る ゲ ー ム で は 、相 手 の 話 を よ く聞いて活動に参加できた。 ☆まとめ 「人の話を聞く」 「 自 分 の 思 い を 伝 え る 」こ と を 中 心 に 授 業 を 行 っ た 。同 じ 内 容 の 授 業 を 繰り返すと、児童の集中力や興味が持続しない傾向にあったので、短い周期で色々な活動 に取り組んだ。新しい活動に切り替わるとルールの定着に時間がかかることもあったが、 意欲的に活動に取り組むことができた。1学期当初と比較すると、それぞれの児童が 教員 の話や友だちの発表を尐しずつ聞くようになってきており、会話が成立する場面も増えて きた。 (ウ ) Dグループ ☆グループ(個人)の実態 実態 自立活動の区分 ① 新しい課題に対して見通しが持てない時に気持 ① 心理的安定(1) ち が 不 安 定 に な り 、大 き な 声 を 出 し て 拒 否 す る こ A とがある。 ② コミュニケーション(5) ② 注 意 を 受 け た 時 に 泣 い た り 、同 じ 事 を 繰 り 返 し 言 ったりする等、気持ちが不安定になることがあ る。 ① 興 味 が あ る 物 が 目 に 入 る と 、活 動 中 で も 見 に 行 っ B ① 環境の把握(2) てしまうことがある。 コミュニケーション(3) ② 気 持 ち が 不 安 定 に な る と 泣 き 出 し た り 、手 を 噛 ん ② 心理的安定(1) だりすることがある。 ① いたずら等で自分での興味関心を引こうとする C ことがある。 ① 人間関係の形成(1) ② 心 理 的 安 定 ( 2 )( 3 ) ② 新出の事柄や苦手と思い込んだ事柄には身体を 固くして取り組まないことがある。 ☆指導目標および内容 目標 ① 言葉でのコミュニケーション力を A 高める。 ② 友達や教員のペースに合わせて行 内容 ① 教員からの質問に落ち着いて答える ② か る た と り の 中 で 、決 め ら れ た ル ー ル を 守って活動する。 動する。 ① 活動に集中して取り組む。 B ② 言葉でのやり取りを通して自分の 気 持 ち を 伝 え る 力 を つ け 、要 求 を 伝 えられる。 ① いたずらや奇異な行動で興味を引 か ず 、正 し い 人 と の 関 わ り 方 を 理 解 C する。 ① かるたとりのルールを理解して取り組 む。 ② ルールを破るような言動が見られた時 は、その場で正しい言動を確認する。 ① 教員からの声かけ等にはきちんと受け 答えする。 ② 何事にも挑戦する気持ちで取り組む。 ② 様々な経験を通して活動に見通し を 持 ち 、自 信 を 持 っ て 取 り 組 む 力 を 育てる。 ☆学習について ◆具体的目標 ・教員が決めたルールに従い、周りに合わせて活動する。 ・突然のルール変更や質問に対し、安定した気持ちで対応する。 ◆指導の流れ 時間 学習の流れ 13:10 ○始めの挨拶 指導上の留意点 備考 ・毎週交代で挨拶を行なう(3人ローテー ・ ション) 13:11 ○かるたとりの説 ・ルールの確認をする。 ホワイトボード 明 ① 頭に両手をあてて、問題を聞く。 マグネット ② カードを取った人は次の問題を読む。 顔写真カード ③ 読む人はカードを取れない。 ④ 答えた人は1ポイントもらえる。 ⑤ 途中で大きな声を出す、ルールを守ら ない等の行為があった場合は減点があ る。 ※ そ の 他 、突 然 ル ー ル が 追 加 さ れ る こ と も あり。 13:15 ○かるたとり開始 ・時間内でできるだけ多くのポイントを貯 ホワイトボード める。 ・ポイントの確認を行い、優勝者を発表す る。 ・本日の講評を行なう。 ※例えば… 13:45 ○かるたとり終了 ・た く さ ん 答 え る こ と は で き た が 、減 点 が 多い。 ・答 え る こ と は で き た が 、問 題 を 読 め な か った。 ・ルールを意識して頑張れました。 ・先 生 か ら の 質 問 に 、落 ち 着 い て 答 え る こ とができました。 ・本日の日直が号令をかける。 13:48 ○終わりの挨拶 ◆評価 ① 活動の中で、言葉でのやり取りが落ち 着いてできたか。 ① 活動の途中で突然質問を投げかける 等、苦手な事を意識的に行なったが 落ち着いて答えることができた。 A ② 決められたルールを理解し、安定した気 ② 本児童に不利益なルールを追加して 持ちで活動することができたか。 作り活動を行なったが、気持ちをコ ントロールしながら活動をすること ができた。 ① 活動に集中して取り組むことができた か。 ② B ① 集中できない時には声かけをするこ とで活動に意識を向けることができ た。 ③ 言葉でのやり取りを通して自分の気持ち ② 気持ちが不安定になることはある を伝えられたか。 が、自傷行為を我慢しながら質問に 対して自分の気持ちを言葉で伝える ことができた。 ① いたずら等で興味を引かず、正しく人 と関わることができたか。 ① 本人が決めた苦手な活動については 固まってしまい、言葉でのやり取り はできない時があった。その後にい たずらをすることはあったが切り替 C えの時間は短くなってきた。 ② 見通しを持って、前向きに活動に取り 組むことができたか。 ② 見通しを持つことはできるので、好 きな活動は楽しみながら活動できた が、苦手な活動が近付くと様子が変 わり、活動できない時があった。 ☆まとめ 1学期は児童の気持ちを不安定にさせた状態で、どれだけ我慢できるのかを授業のポイ ントと考えていたが、児童の気持ちは安定していることが多かったので、2学期からはど うすれば安定した気持ちを維持できるのか、安定した気持ちで活動に入ることができるの かを考え、静かな曲に合わせたストレッチポールでの活動を取り入れた。気持ちが落ち着 くのか眠そうにしている児童もいたが、安定した気持ちで活動に入ることができていた。 安定した気持ちでいることで児童の集中力が増し、 教員からの声かけも尐なく静かな環境 で活動ができるようになった。 ウ グループのまとめ 心理の安定・人間関係の形成グループでは、児童(又は自立のグループ)の自立指導計 画作成シートを見合い、事例発表を行うことによって、活動内容を共有してきた。時間に おける指導が始まった今年度は、個々の児童の課題や指導内容を年度当初にはっきりと決 めることが難しく、試行錯誤しながら授業を実践し改善するようにした。今後も意見を出 し合い授業内容を工夫・改善することによって、心理的な安定・人間関係の形成という内 容に留まらず、児童の実態に合った指導を行えるよう、研修を深めていきたい。 (4)コミュニケーショングループ ア はじめに コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン グ ル ー プ は 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 課 題 が あ る 児 童 の「 じ り つ 」 の担当者で構成されている。各グループのねらいを見ると、人との信頼関係を結び、 意思を何らかの方法で表現するというコミュニケーションの基礎的な能力に関するこ とをねらいにするグループから、対大人との言葉のコミュニケーションから友達へと 広げることをねらいにするグループなどさまざまである。今年度から自立活動が時間 の指導の中に位置づけられ授業を行なってきたが、各学年の担当とも指導内容・方法 について手探り状態で不安があるため、他のグループの授業をビデオで見て検討し合 い、授業改善をしていくことになった。 (ア)グループの目標 a 個々の実態から自立活動のねらいを設定し、課題解決に向けた指導内容・方法 について明らかにする。 b 授業の指導案やビデオを見合って検討し、アドバイスをし合うことで授業改善 をする。 (イ)研修の経過 5月・・クループの目標を決め、研修計画を立てた。 6月・・5年生の授業のビデオを見て、意見交換をした。 7月・・6年生の授業のビデオを見て、意見交換をした。 8月・・4年生Aグループの授業のビデオを見て、意見交換をした。さらに、今後 の研修の進め方を確認し、児童の課題差が大きいグループの今後の授業を 検討していくことになった。 9月・・4年生B,Cグループの授業のビデオを見て、意見交換をした。 10 月 ・ ・ 小 学 部 研 修 会 に 4 年 生 B グ ル ー プ の 事 例 を 発 表 し 、 小 野 里 先 生 に ご 指 導 し ていただいた。 10 月 ・ ・ 課 題 差 が 大 き い 4 年 生 A グ ル ー プ の 今 後 の 授 業 内 容 を 検 討 し た 。 12 月 ・ ・ 研 修 の ま と め を 話 し 合 い 、 実 践 報 告 集 の 分 担 を し た 。 以下に、児童の課題差が大きいグループの今後の授業を検討した内容を報告する。 イ 授業検討について 各グループの授業を見合う中で、授業内容が、他教科の内容と自立の内容の区別が つ か な い 。「 じ り つ 」 と し て の ね ら い は ど う な の か と い う 疑 問 が 挙 が っ た 。「 じ り つ 」 の授業とはどのようなものがよいのか話し合い、 「 じ り つ 」の ね ら い を は っ き り さ せ て おくことが重要ではないかとの意見があった。 そこで、児童の実態差が大きいグループのため授業作りが難しいというグループを 取り上げ、授業検討を行った。授業検討は以下の手順で行った。 ① 現在行っている授業のビデオを見て、児童の実態を把握する。 ② 「 ね ら い 1 」、「 ね ら い 2 」 の 目 標 に そ っ た 授 業 内 容 を 考 え 、 各 自 色 分 け し た 付 箋 に思いつたことを次々と記入する。 下の表は、授業検討を行ったグループの「ねらい」である。 ねらい1 遊びを通して要求を出すことができる。 ねらい2 簡単なルール、他者に合わせて活動すること ができる。 ③各自記入した付箋を活動内容ごとに分類する。 体・ふれあい・心理的な安 人とのやりとり 定 粗大運動を通して、やって・いいよの ストレッチポール/マット やりとり/プレイバンド、バルーンな を使ってのふれあい体操/ どを使って人に合わせる活動 くすぐり/リラックス のやりとり(○○ちゃんと呼んで投げ 等 関 連 し ている る) ボール 等 簡単なルール 一緒に物を運ぶようなゲーム/音に合 わせてジャンプ/いすとりゲーム/つ ながり遊び/的あてゲーム 等 体を軸とした調整力を養う運動 簡単な模倣を促す遊び ビーンズバックを乗せて落とさないよう くすぐり遊び/簡単な模倣を促す手遊び にまっすぐ歩く/知覚学習パイプを使っ /マグネットを手本と同じ方向に動かす て倒さないように歩いてゴールに行く/ 知覚学習パイプの上に同じ色のビーンズ バックをそっと乗せる 等 多数の教員が授業を見ることで、多角的な視点で授業検討を行うことができた。授業検 討を行ったグループの授業については、コミュニケーションと同時に心理的な安定が課題 となる児童が多く、ふれあい等の身体を使った活動を通して心理的な安定を図りながら授 業を進めていくのがよいのではないかという意見が多く挙がった。また、それぞれのねら いや活動が相互に関連していることが分かった。3 学期の授業に取り入れて検証していく ことが課題である。 ウ 事例研究について (ア)提案した事例について それぞれのグループでビデオを観たりして意見交換をしたが、その中で集団で行う 「じりつ」について発表することにした。 ☆事例学習会資料1 名 前 A グループ 小学部 性別 4名 担任名 ◎困っていることを一つ記入して下さい ・実態差の大きい集団であるため、どこに視点を当て授業を行うのか難しい。 (1)指導に対する仮説 ・実 態 に 幅 が あ る が 、で き る だ け 共 通 し た ね ら い を 盛 り 込 む こ と で 集 団 で も 行 え る の ではないか。 ・ 人 に 対 し て あ ま り 興 味 が な い た め 、 人( 大 人 ) に 合 わ せ る 、行 動 を 調 整 す る 力 を 育 てるような内容を入れることで意識できるのではないか。 ・ 指 先 や 口 元 等 の 身 体 の 部 分 や 奇 声 、多 動 等 情 緒 の 面 で も 問 題 が あ る た め 、学 習 内 容 に静→動→静の流れを作ることで最後まで集中できるのではないか。 ・ 個 別 指 導 に 近 い 学 習 を い れ る こ と で 、個 々 の 課 題( コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン )に 迫 れ る のではないか。 (2)指導・支援の方法 現 ・授業の流れややり方の説明に視覚的な支援を入れることでわかりやすくする。 在 ・で き る だ け 友 達 を 意 識 で き る よ う に 呼 名 や ゲ ー ム を 工 夫 し 、関 わ り が 持 て る よ う な の 声かけをする。 指 ・次 の 活 動 に 気 持 ち を 向 け る こ と が で き る よ う に 、授 業 の 初 め に ゆ っ た り し た 身 体 ほ 導 ぐしの体操を入れる。 ・ (3)指導・支援に対する現在の様子 支 ・呼 名 は 写 真 カ ー ド を 使 っ て 次 の 人 を 指 名 す る よ う に し た が 、尐 し 相 手 を 意 識 す る よ 援 うになってきた児童もでてきた。 の ・ リ ラ ッ ク ス タ イ ム は 、全 員 が 落 ち 着 い て 楽 し め て い る 。音 が 苦 手 の 児 童 も こ の 曲 は 様 すんなり受け入れることができた。 子 ・いす取りゲームでは、ルール(笛の合図で座ること)が尐しずつ理解できてきた。 座らない友達に「すわって」などの声かけができるようになった児童もでてきた。 ・ で き る だ け 個 別 に 近 い 指 導 は 2 学 期 か ら 始 め た 。1 対 2 の 指 導 に な る 児 童 は 、共 通 の 課 題( 発 声 、サ イ ン )に 焦 点 を あ て る こ と で 取 り 組 ん で い る が 、情 緒 面 に も 課 題 があり落ち着かない。 (4)まとめ ・実 態 的 に は ま だ 対 大 人 と の 関 わ り が 必 要 で あ り 、集 団 を 意 識 す る こ と は 難 し か っ た 。 1 学期に行った「かめのこジャンプ」など身体を動かすことは好きで意欲的に動け た が 、集 団 を 意 識 す る 授 業 作 り が で き な か っ た 。い す と り ゲ ー ム で は 尐 し 友 達 を 意 識できてきた様子も見られた。 ・個別指導の時間を設けたが、時間が短く課題に迫りきれていない。 ☆事例学習会資料2(A グループ自立活動指導略案) ◆グループの実態 ねらい 1 実態 自立活動の区分 ・大人には自分から関わることができるが、友 だちを意識することが難しい。 ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン (1 ) ・ 人 間 関 係 の 形 成 (1 ) ・自分の気持ちを相手に伝えることが苦手であ ・ 心 理 的 な 安 定 ( 1 )( 2 ) る。 ・気持ちが不安定になることがある。 2 ・正しい姿勢を維持することが難しい。 ・ 身 体 の 動 き (1 ) (3 ) ・手先の不器用さがみられる。 ◆指導目標および内容 ねらい 1 目標 内容 ・相手を意識し、相手に合わせて行動することができ る。 2 ・手足の体操 ・いすとりゲーム ・手元に集中し手指を使った課題に取り組むことで手 指の操作性を高める。 ・手足の体操 ・いすとりゲーム ・自分の気持ちをカードやサイン、言葉で伝えること ・個 別 課 題 を 用 意 す る 。 ができる。 ◆前期の学習について ①具体的目標 ・相手を意識し、相手に合わせて行動することができる。 ・手元に集中し手指を使った課題に取り組むことで手指の操作性を高めたり、教員と やりとりができる。 ②指導の流れ 時間 13:10 学習の流れ 指導上の留意点 ○始まりの挨拶(当番) MT ・当番の役割ができるよう毎回違う児 黒板 童にする。児童の座る位置を決める。 当番 B 13:15 A T1 ・始まりの挨拶の模倣ができるように C ・呼名、名前の発表 D 声かけし、目の前で手本を示す。 「じりつ」の部分のサインを促す。 ・活動に気持ちが向きやすくするため 「あなたのお名前は」の歌を歌う。 ・呼名の順番は写真カードを提示し、 次の児童を選ぶようにする。 ・児童の実態に応じて名前を言う。C 児 は 手 タ ッ チ 。そ れ 以 外 の 児 童 は ゆ っ く り 発 音 し な が ら 答 え る 。口 形 カ ー ド 利用(A児・D児) ・本時の学習内容を知る。 * 流れカードを用意する。 13: 20 ○リラクゼーション * ・マットに上履きを脱いで座る。 ・リラックスできるよう、ゆったりし ① ♪手の指そらそう②♪手と指の握手 を行う。 マ ッ ト( 3 枚 )を 尐 し 離 し て 敷 く 。 た曲をかける。 ・尐しずつ、相手にやってあげる場面 も増やす。 ・ゆくゆくは、友達との二人組みでで きるようにする。 *軍手人形を用意する B 児 ・ T1 、 A 児 C 児 ・ T2 、 D 児 ・ T3 MT・ BGM 13: 30 T2 ○いすとりゲーム 写真カードを用意し、視覚的支援をす ① ゲームのルールを聞く。 る。 ② いすの周りを歩く。 *本人の名前の貼ってある椅子は使用 ③ 曲が始まり「スタート」で動く。 しない ④ 曲 が 止 ま っ て「 ス ト ッ プ 」の 合 図 で 止まる。 13: 40 ○個別の学習 ・3つのグループに分かれる。 ・B 児 絵本 ・B 児 ・C 児 ビーズ通し り ( T1 ) ・A 児・D 児 発 声 、ひ ら が な 、サ イ ン 手 指 の 巧 緻 性・言 葉 で の や り 取 ・C 児 手指の巧緻性・お口の体操 発声、ひらがな、サイン ・評価 どんなことを頑張ったか一人 ずつ発表する。 13: 45 ・終わりの挨拶(当番) ( T2 ) ・A 児・D 児 MT 発 音 ( T3 ) T3 ・今日の学習をカードやことばで振り 返ることができるように促す。 ・で き る だ け 、言 葉 で 言 う よ う に 促 す 。 C 児はカード等頑張ったものを選ぶ。 ③個別の課題 ねらい① A ・選択や「やる・やらない」の意思 表示が言葉でできる。 B C D ・落ち着いて学習に取り組むことが できる。 ・大 人 と の 楽 し い 活 動 を 通 し て 、 「や っ て ほ し い 」と い う 気 持 ち を 自 分 か ら相手に伝える。 ・言葉の一部や簡単なサインを模倣 し 、伝 え る 楽 し さ を 味 わ い 、自 分 の 役に立つ経験を増やす。 ねらい② ・意欲的に発語や平仮名の練習ができ る。 ・好きな絵本を選び、せりふを言うこ とができる。 ・短い見通しを持つことができる。 ・意欲的に発語や平仮名の練習ができ る。 (イ)小野里先生による指導 授業のビデオを観ていただきながら、説明をする形で始めた。 実態差の大きい集団であるために、どこに視点を当てて授業をやるのか難しいという こ とに対してご指導をしていただいた。その内容は以下の通りである。 場の認知や言葉の理解に差がある中で、人への意識をどう高めていくのかが大切であ り、児童がその場からの回避ではなく、傍観でもなく、尐なくてもその場に参加し 、場 の共有ができているか見極める。 そのための「共有」発達ステップとして a 行為と情動の共有段階 「快」という気持ちを共有するステップ。 例:微笑みかけられて、微笑み返す。 b 目標と知覚の共有段階 相手の意図がわかるステップ。 例 :「 ち ょ う だ い 」 と 言 わ れ て ボ ー ル を 渡 す 。 c 意図と注意の共有段階 相手と他者の役割を理解して、一緒に何かを行うステップ。 例:二人で壁に紙を貼る時、画鋲を刺すために紙を押さえることがわかる。また、そ の役割を交替してもできる。 このような発達ステップに沿い段階を追ってやっていくことがよいという指導をいた だいた。また、個人差をどう捉えるか、活用するのかという問題については次のような アドバイスをいただいた。 d 活動をリードする役割を担わせる たとえば、道具をそろえる手伝いをする、援助行動や教示行動で「ここに座って」な どの言葉を自発的に言うような場面を作る。 e 活 動 の 振 り 返 り を 大 切 に し て 記 憶 の 定 着 を 図 っ た り 、気 持 ち を 代 弁 す る 。そ の 時 に は 活動中の写真等手がかりがあるとよい。 (ウ)その後の様子 引き続きリラクゼーションは行っていくことで、気持ちの安定を図り授業に落ち着いて 参加できるようにした。音に敏感な A 児もリラクゼーションの為に使う新しい曲に拒否反 応が無くスムーズに受け入れることができた。また、教員の手や足を触る等受け入れるだ けではなく自分からやってあげる様子も見られ、相手を意識する、気持ちを共有するとい う目標に近づいてきている。 いす取りゲームでは、椅子の並べ方を外向きから内向きにすることで、お互いの顔が見 えるようになり、お互いを意識するという成果があった。また、前述した個人差の捉え方 でのアドバイスを受けて、授業の核になる B 児に対して、やったことをみんなで褒めるこ と で 自 信 を 持 た せ る こ と が で き た 。ま た 、D 児 も 座 っ て い な い 友 達 に 対 し て「 C ち ゃ ん す わ って。ここだよ」と教えるようになった。C 児は友達の様子や動きを意識できてきたこと で、ゆっくりではあるが自分から座ったり、友達の声かけに応じて座る様子も見られるよ う に な っ て き た 。ま た 、ゲ ー ム の ル ー ル が 解 り 、身 体 も 動 か し 、楽 し い 活 動 に な っ て き た 。 全 体 的 に 「共 有 」の 発 達 ス テ ッ プ の a 段 階 か ら b 段 階 に 入 っ て き て い る と 考 え る 。 日常生活では 1 対 1 の関わりが多い児童達が、 「 じ り つ 」の 時 間 の 中 で 他 の 友 達 を 意 識 し 自分から活動できるようになってきたことは、集団でこそねらえた力だと感じることがで きた。 エ まとめと課題 (ア)今年度の成果 当 初 、日 ご ろ の 実 態 か ら 手 さ ぐ り で 授 業 を 行 い 、並 行 し て 自 立 指 導 計 画 作 成 シ ー ト (以 下 作 成 シ ー ト と 表 記 )を 作 成 し て い っ た 。 授 業 を 行 い 、 作 成 シ ー ト が 形 に な っ て く る と 、 現在行っている授業内容やねらいがシートと合わないものが見つかった。また、児童の 生活上や学習上困っていることの理由と考えられることを自立活動の区分に従い整理し たことで「じりつ」の授業としてねらわなければならない課題がより明確になり作成シ ートの重要性が改めて認識された。 他 グ ル ー プ の 授 業 を 見 合 っ た り 、意 見 を 付 箋 に 書 い た り し て 意 見 交 換 を し た 。そ の 授 業 検 討 か ら 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 課 題 と し な が ら も 、心 理 の 安 定 や 人 間 関 係 の 形 成 等 が 相 互 に 関 連 し て い る こ と も わ か っ た 。ま た 、運 動 機 能 に 問 題 の な い と 思 わ れ た 児 童 が 、 静 止 し た 姿 勢 が 取 れ な か っ た り 、ゆ っ く り し た 動 き が で き な か っ た り す る な ど 身 体 の 動 き に 関 し て 課 題 を 持 つ 児 童 が 多 い こ と が わ か り 、児 童 の 実 態 と 課 題 を 多 面 的 に 見 て い く ことの大切さもわかった。 このような検討過程を経て、2学期からの授業に自立活動の視点がより反映されたも の に な っ た 。し か し 、検 討 の 過 程 で も 述 べ た( イ 授 業 検 討 に つ い て の 項 参 照 )グ ル ー プ の 個 々 人 の 課 題 差 が 問 題 と な り 、そ の グ ル ー プ に ど の よ う な 授 業 が よ り よ い か 検 討 す る こ と と な っ た 。こ の 点 に つ い て 、学 部 研 修 で 文 教 大 学 の 小 野 里 先 生 に 発 達 的 視 点 で 授 業改善のアドバイスをいただけたことは、大変参考になった。 (イ)今後の課題 今後の課題としては、第一には、作成シートを年度当初に作り、ねらいを明確にして 指 導 グ ル ー プ を 編 成 す る こ と が 大 切 で あ る と い う こ と で あ る 。在 校 生 は 、今 年 度 中 に 作 成 し 、次 年 度 に 送 る 必 要 が あ る 。第 二 と し て 、授 業 検 討 や ビ デ オ を 観 あ っ て 、意 見 交 換 し た こ と を 実 践 の 中 で 検 証 し て い く こ と が 必 要 で あ る 。第 三 に「 じ り つ 」の 授 業 は 、他 教 科 と は 異 な り 、さ ま ざ ま な 視 点 を 生 か し て 多 様 な ア プ ロ ー チ を す る こ と が 可 能 で あ る が 、反 面 何 を 行 っ て も 自 立 活 動 で あ る と 安 易 に 考 え る と 、課 題 が 見 え な く な る 可 能 性 が あ る 。「 個 々 の 成 員 の 自 立 活 動 の ね ら い は 何 か ? 」 と い う こ と を 明 確 に 意 識 し て い な い と「 じ り つ 」の 指 導 は 成 り 立 っ て い か な い と 考 え る 。 こ う い っ た 点 を 踏 ま え 、そ れ を 具 体 化 す る た め に 、今 後 も ね ら い に 即 し た 指 導 法 や 教 材 等 を 研 究 し て い く こ と が 必 要 で あ る。 4 おわりに 今年度から自立活動の時間における指導が始まり、その指導のあり方について研修を行 ってきた。今年度の研修における成果と来年度の課題について、学部に向けて出したアン ケートをもとに、ねらいごとに以下にまとめる。 (1) 「 個 々 の 実 態 か ら 自 立 活 動 の ね ら い を 設 定 し 、問 題 解 決 に 向 け た 指 導 内 容・方 法 に つ いて明らかにする」ことについては、学部共通の自立指導計画作成シートに基づいて、 各個人またはグループの実態やねらいについて記入していくことで整理され、ねらいが より明らかになったという意見が多く出された。また、柱となる課題は 1 つではなく、 様々な課題を持っており、それらは相互に関連しているということがわかった。児童の 実態に合わせた多面的な指導が必要となる。シートの作成時期については、年度が始ま っ て か ら 作 り 始 め た た め 、実 態 把 握 が 遅 く な っ て し ま っ た と い う 声 も あ が っ た 。よ っ て 、 前年度の担任が自立指導計画作成シートを記入し引き継いでいくことが課題となる。 (2) 「 小 野 里 先 生 に よ る 研 修 や 他 グ ル ー プ の 授 業 を 見 合 う こ と で 授 業 改 善 を す る 」こ と に ついては、10月に小野里先生による研修を行い、2つの学習グループの事例について 講義していただいた。どちらの事例についても発達の段階を踏まえた分析や具体的なア ドバイスをいただき、とても参考になったという声が多かった。授業改善については、 ビデオと指導案を用いて互いに見合い、意見交換をした。他グループの実践を知れてよ かった、ねらいに合った学習内容を考える良い機会となった等の意見が多かった。指導 方法については、より多くのアイディアを知るために今後も研修していく必要がある。 ( 3 )「 指 導 事 例 集 や 指 導 案 を 綴 じ 込 み 、 今 後 の 参 考 に な る よ う に す る 」 こ と に つ い て は 、 各学習グループの指導案を集め、 「 心 理 の 安 定 」や「 人 間 関 係 の 形 成 」な ど 自 立 活 動 の 6 区分に分けてファイルに綴じ込んだ。この自立活動指導略案集を学部で保管し、教員間 でお互いに指導の参考にしていく予定である。これから全体に呼びかけし、指導略案も その都度増やしていきながら今後活用させていくことが課題である。 また、夏休みには「じりつ」を進めていくにあたって出てきた諸問題を学年ごとに挙 げ、それらについて学部で検討した。保護者への連絡帳の書き方や、自立活動部の教員 と の 話 し 合 い の 時 間 に つ い て 学 部 と し て 共 通 認 識 を 持 つ こ と が で き 、体 制 が 整 っ て き た 。 来 年 度 は 、今 年 度 の 成 果 と 課 題 を 踏 ま え な が ら 、 「 じ り つ 」の 時 間 の よ り よ い 充 実 を 図 る べく研修を深めていきたい。