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栄・常盤地区第一種市街地 再開発事業

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栄・常盤地区第一種市街地 再開発事業
特 集
3
地方創生
∼地方創生の実現に向けた住まい・まちづくり分野での取組∼
栄・常盤地区第一種市街地
再開発事業
栄・常盤地区市街地再開発組合
事務局長
中野 勝義
(なかの かつよし)
福岡大学(経済学部)卒業後、福岡相互銀行(現西日本シティ銀
行)
、大倉建設等を経て、佐世保三ヶ町商店街振興組合にて再開発
事業に携わり現在に至る。
1. 事業地区の概要
日本の最西端に位置する長崎県、その県北に佐世保市
て再び商店街(すずらん通り)
を構築しました。そうした状
はあります。唱歌「美しき天然」
にも歌われているように西
況下、昭和25年朝鮮動乱の特需景気の恩恵で “ すずらん
の海に開かれた港、自然豊かな島々に囲まれた佐世保市
通り” は再び隆盛をとり戻しました。さらに昭和30年代か
は、長崎市に次ぐ人口25 万人を有する中核市です。当事
ら昭和50年代には、国民生活が徐々に向上して豊かな消
業地区は、その佐世保市の「日本一元気な商店街」
と言わ
費生活を生み出して当事業地区を含めた中心商店街は順
れる中心商店街の一角に位置します。佐世保市は元々小
調な発展を遂げていきました。しかし次第に消費スタイル
さな村でありましたが、恵まれた天然良港があったため、明
の変革(車社会の到来、郊外への移転等)は中心市街地
治22年に海軍鎮守府が開庁し、徐々に銀行、商店などが形
を空洞化させ、
衰退に直面させました。
成され、大正から昭和初期には大きく発展を遂げた街で
こうした中心商店街を取り巻く状況の変化に対して、当
す。その発展と並行して、当事業地区は佐世保市の中心
事業地区は地盤沈下する中心市街地を活性化し再生を目
的商店街として変貌しました。しかし、
昭和20年6月の佐世
指し、
また「21 世紀の街づくり」
を模索するために地域の皆
保大空襲により当事業地区はじめ中心市街地は廃墟と化
様と第一歩を踏み出しました。
したものの進駐軍から譲り受けた木材等の資材を活用し
22
2. 事業の歩み
(1) 事業目的
(2) 事業概要
平成 12 年 11 月より地元商店街の有志数人で「勉強
所 在 地:佐 世保市栄町 46 番地 2、60 番地 2、常盤町 3
会」
を立ち上げ、その回数は、先進地視察を含め数十回
番地 2、72 番地 2
に及びました。勉強会には、回を重ねるにつれ佐世保市
地区面積:0.86ha
の担当者や長崎県の担当者も一緒に参加していただくよ
事 業 費:
うになり、挫折しそうになったこともありましたが、会合を
【収入】
一般補助金
(国・県・市)
更に重ねていきました。
その結果として「街」
の再構築には経済面や防災面など
(単位:百万円)
【支出】
計 10,869.3
3,746.0
市単独費
1.6
増床負担金
14.8
ハード面から模索していくことが有効と判断し、佐世保市
雑収入
の強力なご指導をいただきながら、市街地再開発事業につ
保留床処分金
7,024.0
計
10,869.3
いて下記のとおり具体的に検討を重ねてまいりました。
82.9
(支出)調査設計計画費、建築物等除却費、工事費、事務費等
[図 1]
「勉強会」での検討内容
平成15年度行動計画・運営計画の検討(幹事会の設立、勉強会の設定、合意形成方針)
街づくりのコンセプト、施行予定地区の設定、事業化方針の検討
・事業整備方針の検討:再開発事業施行区域と施行地区の検討
・基本コンセプトの検討:各街区の役割及び街づくりの考え方検討
施設計画の検討
・用途構成(商業、住宅、駐車場、その他)
モデル権利変換計画の提示
(ポイントの設定、床価格の設定)
・規模
事業計画の検討
・事業化の方針
・概算事業費の算出
個別面談の実施
・床価格の検討
モデル権利変換計画の検討
・土地価格差検討
・権利変換率の検討
事業協力者、保留床取得候補者、
テナント候補者の選定
準備組合設立準備
[図 1]のプロセスを経て栄・常盤地区第一種市街地
再開発事業は、事業概要、施設概要が決定し、事業は前
進することになりました。
23
特 集
3
栄 南
地方創生
栄 北
常盤北
(2)敷地面積
1,415.17㎡
1,365.82㎡
∼地方創生の実現に向けた住まい・ま
ちづくり分野での取組∼
1,515.32㎡
鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造
鉄骨鉄筋コンクリート造
(4)規模
地上16階(地下1階)
地上12階(地下1階)
地上17階(地下1階、低層3階)
集合住宅( 3 ~1 6 階)
有料老人ホーム(3~12階)
中央公民館( 2 階)
(6)延床面積
栄 南
栄 北
常盤北
10,533.62㎡
1,415.17㎡
1,365.82㎡
1,515.32㎡
1,856.92㎡
鉄筋コンクリート造
鉄骨鉄筋コンクリート造
鉄骨鉄筋コンクリート造
(4)規模
地上16階(地下1階)
地上12階(地下1階)
地上17階(地下1階、低層3階)
地上6階
集合住宅( 3 ~1 6 階)
有料老人ホーム(3~12階)
中央公民館( 2 階)
集合住宅( 4 ~1 7 階)
駐車場(3 ~6 階)
機械式駐車場( 3 階)
子ども発達センター( 2 階)
中央公民館(1階)
福祉活動プラザ(2階)
医療施設(2階)
中央公民館(2階)
店舗( 1 階)
店舗( 1 階)
店舗( 1 階)
8,008.60㎡
7,510.66㎡
10,533.62㎡
( 7 ) 建ぺい率
6 9 .0 %
6 6 .3 %
8 3 .4 %
8 5 .2 %
5 1 9 .3 %
5 4 9 .9 %
5 9 4 .3 %
3 5 3 .6 %
全体 45.3%
店舗( 1 階)
8,322.50㎡
( 7 ) 建ぺい率
6 9 .0 %
6 6 .3 %
8 3 .4 %
8 5 .2 %
( 8 ) 容積率
5 1 9 .3 %
5 4 9 .9 %
5 9 4 .3 %
3 5 3 .6 %
全体 45.3%
(9)空地率
(4) これまでの主な経緯
3. 事業の意義と効果
平成 12 年 11月
栄地区再開発事業勉強会開催
平成 13 年 4 月
常盤地区再開発事業勉強会開催
平成 15 年 3 月
「栄・常盤地区再開発を考える会」 設立
平成 16 年 2 月
準備組合設立
性化」
と「再生」
を目指して勉強会をはじめてからおよそ15
平成 17 年 9 月
都市計画決定
年の月日が経過しました。いまは、いたるところで「再生」
平成 18 年 10月
市街地再開発組合設立【事業計画認可】
平成 20 年 11月
事業計画変更認可
から「創生」
を目指す社会となりました。いずれも目指すも
平成 22 年 10月
第 2 回事業計画変更認可
平成 23 年 2 月
権利変換計画認可
平成 23 年 3 月
除却工事着工
平成 23 年 9 月
施設建築物工事着工
平成 24 年 5 月
第 3 回事業計画変更認可
平成 24 年 7 月
権利変換計画変更認可
意工夫をして計画を練られますが、様々なローカル事情や
平成 25 年 5 月
栄南棟工事完了
平成 25 年 7 月
栄北棟工事完了
権利者や関係者間の思惑が複雑に絡み合って、早々に具
平成 25 年 9 月
常盤北棟工事完了
平成 26 年 10月
常盤南棟工事完了
の完成後、見学に来られる事業検討中の他地区の組合の
平成 26 年 10月
施設建築物工事竣工
方々からも同意見が聞かれます。地方における事業展開
衰退してゆく商店街の行く末に危機感を抱き、街の「活
のは 「地方の活性化」だと思っています。地方が衰退す
れば、国全体が衰退するからです。しかしながら、
「再生」
・
「創生」
のいずれも成果を出すには、困難が伴います。地
方創生事業は各自治体や地元金融機関などが色々な創
体化し、結果を出すのはなかなか難しいものです。当地区
が難しい理由の共通点は少子高齢化・・・言い換えれ
ば、急激な人口減少に影響される経済の縮小化ではない
でしょうか。少子化は消費低迷に繋がり、高齢者の増加
は費用増大に繋がることが必然と考えられます。商店街
にとっては、消費低迷が死活問題となっているのです。当
24
店舗(
8,322.50㎡
( 8 ) 容積率
常盤南
鉄筋コンクリート造
(6)延床面積
店舗( 1 階)
[図 3]街区別施設図
(3)構造
(5 )主要用途
中央公民館(
中央公民館(2階)
店舗( 1 階)
全体 8,590.27㎡
(1)地区面積
(2)敷地面積
駐車場(3 ~
子ども発達センター(
医療施設(2階)
7,510.66㎡
地上6階
機械式駐車場( 3 階)
店舗( 1 階)
8,008.60㎡
鉄骨鉄筋コンクリート
集合住宅( 4 ~1 7 階)
福祉活動プラザ(2階)
(9)空地率
[図 2]街区別施設内容
1,856.92㎡
(3)構造
(5 )主要用途
(3) 施設概要
常盤南
全体 8,590.27㎡
(1)地区面積
事業地区の事業も勉強会の当初から、従来の商店街の姿
エートを占めていました。事業の初動期段階では、各関
ではなく、新しい商店街を構築することで衰退から脱却し、
係者からの事業協力金だけでは賄えず、その度に金融機
再生を目指して今日に至っています。新しい商店街の再
関からの支援を仰ぐことになりました。しかし、当然ながら
生のコンセプトは「生活しやすい街づくり」
でした。その結
民間金融機関は基本姿勢が経済原則に則り企業行動を
果、施設概要にもあるように公益施設、医療施設、高齢者
するのは当然であり経済情勢変動にはとても敏感でした。
施設、
集合住宅施設、
商業施設を備えた「コンパクトな街づ
当事業の本来の目的は、経済原則に基づく利潤追求の事
くり」ができ、また従来のアーケード街とうまく調和すること
業ではなく、地方創生を目指す言わば国の施策を実現す
で、
人が増え、
賑いが戻り一定の成果を創生しております。
る事業ではないかと考えます。そうした観点からすると当
しかし、これからも新たな魅力創出という目標に向って、
事業は通常の融資にないリスク負担があり、民間金融機
それぞれが日々努力していかなければ、単に人が集まった
関にて全てを支援いただくには限界があって、常に頭を悩
だけの一過性のものとなり、各店舗や施設の魅力が継続
ますこととなりました。そんな中、公的機関である住宅金
的でなければ再び衰退していくものと考えます。
融支援機構のまちづくり融資があることを知り、事業の初
動期段階から柔軟にご対応いただくことで、事業を推進さ
せることができました。また、市街地再開発事業そのもの
4. 今後の地方創生と公的機関
(機構融資)に期待するもの
をご理解いただいていることで、民間金融機関とのバンク
ミーティングの開催や住宅部分の参加組合員の選定にお
ける有益なアドバイス等でもその当時ご尽力いただき、大き
な助け舟となり、非常に感謝する次第です。また、事業期
事業完了をここにむかえて、振り返れば15年に亘り、当
間中、公的機関が詳細に財務状況を把握することで、民間
事業に取り組んでいる間に世界情勢、日本経済は大きく変
金融機関に安心感を与え、竣工時には、柔軟に担保解除
動し、その経済動向が当事業に大きな影響を及ぼしまし
いただいたことで、民間金融機関との調整もスムースに進
た。事業期間が長くなればなるほどそういったリスクを抱
められたことは印象的です。今後も、ぜひ、他地区におい
えることになります。具体的には、北京オリンピック開催前
ても引続き柔軟に初動期段階から積極的に関与いただけ
の工事資材の高騰、リーマンショックによる経済の破綻な
ることを望みます。
ど、世界経済の動向が当事業に大きな影を落とし、当事業
最後に本事業の推進にあたって、ご指導とご支援をい
が推進されることなく停滞を余儀なくされました。そして、
ただいた国土交通省、長崎県、佐世保市、
(公社)全国市
「 これまでの主な経緯」にもありますとおり、その度に何度
街地再開発協会をはじめとした関係機関の皆様には厚く
も事業計画を変更することになりました。そうした中で、当
お礼を申し上げます。
事業における資金計画の重要性は事業完了まで大きなウ
25
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