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③自然の毛髪の色ー
球、内耳、神経系にもあります。その任 務は、メラニンを含む顆粒を産生し、周 囲の組織に色を付けることです。 メラノサイトが産生を止めると、毛髪は 図 5.6 色素の構造のいろいろ。 色が付かないままになります。それが白 a) ヨーロッパ系のブロンド:層構造の色 子の髪や、高齢者の白髪となるわけです。 素で、メラニン色素は明るい色で、黒く 毛髪にはメラニン顆粒しか含まれてい ません。メラニン顆粒はいろいろな程度 に光線を吸収し、人の目には黒褐色から 赤黄色に見えます。グリーンやブルーの 毛髪は、自然には存在しません。例えば、 染まっているメラニンタンパク質の中に 埋まっている。 b) ヨーロッパ系の明るい金髪:毛小皮の 中に稀にしかないメラニンを示す。 c) 日本系の黒髪:顆粒は均質に見える。 d) アフリカ系のまっ黒の髪:非常に大型 の色素は、通常は均質に見える。 人や動物の毛と同じ素材でできている鳥 の羽毛の多種多様な色を得るには、毛染 めなどの人工的な手段でなければ無理で フリカ系の人のブラックやダークブラウ て、色素構造の細かな違いによって毛髪 す。それは、ポルフィリン類や建築用顔 ンの毛髪で普通に見られるものです(図 の色が変わることが解りました。その全 料などが髪に存在しないのと同じです。 5.6 参照)。これがユーメラニン色素で 部の色素に共通の基本的な構成成分は、 完全にできあがった毛髪に含まれる色素 す。隙間の多い特有の構造を持つ顆粒 「メラノプロテイン」というタンパク質 顆粒には、黒褐色の「ユーメラニン」と は、ブロンドや赤毛の毛髪で普通に見ら と、色素であるメラニンです。本書に挙 赤黄色の「フェオメラニン」の 2 種類が れるもので、フェオメラニンを含んでい げたブロンドの色素の電子顕微鏡写真で あります。 ます。驚いたことに、暗い色の毛髪の は、メラニン(明るい色)が、染色する 毛髪の切片を四酸化オスミウムで染色 ユーメラニン顆粒も、ブロンドのフェオ ために用いた四酸化オスミウムと結合し して電子顕微鏡で約2万倍に拡大して見 メラニン顆粒と同じ層構造を持っている たタンパク質や脂質(黒い色)の中に埋 ると、ある色素顆粒は電子密度が高く、 ことが、写真の技術を駆使することに まっています。より濃い色の毛髪では、 別のある顆粒は折れ曲がって絡み合った よって明らかにされています。 ひとつひとつの色素顆粒が含むメラニン ような構造になっているのが判ります。 ブロンド、ブラウン、ブラックの毛髪 はより電子密度が高くなっており、オス 電子密度の高い色素は、アジア系やア の色素を系統的に比較することによっ ミウム親和性のタンパク質に覆われてい 41