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衝撃弾性波法のPCグラウト充填度評価への適用 −実験
土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月) Ⅴ-202 衝撃弾性波法のPCグラウト充填度評価への適用 −実験による検討− 土木大学 正会員 正会員 1.緒言 ○森 和也 岩本 達也 鳥越 一平 3.試験結果 衝撃弾性波法をPCグラウト充填度評価に適用す 図 4 に加振側の検査面における速度波形の例を示 るにあたり,多数回試験に基づく信号の加算平均, している.実際の速度振幅は有限要素法のシミュレ 判定対象としてのシース管からの第一反射波の利用, ーションに比べると,いくつかの点で異なっている. 第一反射波の特性評価のための相関関数の適用,に ①打撃の度に振動波形が変化し,安定した波形とな ついて実験的に検討する.加振方法は,有限要素法 らない. 解析の設定と同様にソフトエアガン用いている. ②一回の打撃に対して振動波形が複雑に変化する. 2.試験方法 ③表面の振動が長い時間継続する. 図 1 に試験寸法を示している.シース管は鋼製で, これらの原因は,コンクリート表面の状態が一様 直径 38mm である.グラウトが充填されているシー でないために球と表面の接触時間が不安定になるこ ス管には直径 32mm の鋼棒を中心に配置している. と,図 5(a)に示すようにコンクリート内部の構造が 図 2 は試験方法を示した図である.質量 1.2g,直 一様でないこと,図 5(b)に示すようにコンクリート 径 6mm のプラスチック球を,ソフトエアガンを用い が振動系を構成しているためであると思われる. て試験片に衝突させる.振動計測はシース管の真上 の表面上とその背面の振動を計測した. 図 3 は検査面上の打撃点を示している.有限要素 法による解析の結果,シース管からの弾性波到着時 刻を同期させて,時間軸上振動波形を重ね合わせる ことが,精度の向上に有効であるとの結論に至った. そこで,検査面上で図 3 に示すように楕円形上に打 撃する.シース管深さが d = 275mm の場合,短半径 を 10cm とし長半径を 14cm とすると,ほぼシース管 を反射する弾性波経路の長さは一定となる. 弾性波経路の長さが一定の場合,打撃時刻を基準 に時間軸上の振動波形を重ね合わせばよい.今回の 実験では,打撃時刻の正確な計測が困難であったの 図 1 試験片 で,裏面の弾性波の到着時刻を基準に振動波形の重 ね合わせをおこなった. 図 3 検査面上の打撃点 図 2 試験方法 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― キーワード 衝撃弾性波法,プレストレストコンクリート,シース管,グラウト,非破壊検査 〒860-8555 熊本市黒髪 2-39-1 熊本大学自然科学研究科 TEL:096-342-3739 連絡先 -401- 土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月) Ⅴ-202 1.0 d = 275mm d = 200 mm w = 475 mm 40 20 0.5 Velocity Velocity (mm/s) 60 0 -20 0.0 -0.5 -40 -60 Back reflection arrival Tendon duct reflection arrival -1.0 0 100 200 300 400 500 -100 -50 0 Time (µs) 50 100 150 200 150 200 Time (µs) 図 4 速度振動の例 図 6 表面振動 1.0 (a) コンクリートの構造 Velocity 0.5 (b) コンクリートモデル 0.0 -0.5 図 5 コンクリートの内部構造と振動モデル Section for Correlation -1.0 -100 -50 0 図 6 は,100 回の楕円形状に打撃をおこなって得ら 50 100 Time (µs) 図 7 背面振動と相関に使用する区間 れた速度振幅の加算平均の一例である.楕円形打撃 の中心の速度振幅を表している.振幅の大きさは無 1.0 d = 275mm Correlation 次元化している.図中の点線はシース管から反射が 到着する時刻と背面反射波が到着する時刻を示して いる.図 6 からわかるように,反射波の到着時刻に おいて速度波形は複雑で,速度波形から直接グラウ トの有無を判定するのは困難である. 0.5 0.0 -0.5 Back reflection arrival Tendon duct reflection arrival -1.0 そこで,グラウト充填の判定をおこなうために, -100 -50 0 表面振動と想定される反射波形との相関を取り,判 50 100 150 200 Time (µs) 図 8 グラウト充填の相関関数 定をおこなうこととした.想定される反射波形には, 図 7 に示す背面振動を用いた. 1.0 d = 275mm Correlation 図 8 は,グラウト充填の場合の相関関数を示して いる.相関関数が正の値のときシース管は充填であ ることを意味する.シース管から反射波が到着する 時刻において相関関数が正の値を示している.また, 背面反射波の到着時刻では負の値を示している. 0.5 0.0 -0.5 Tendon duct reflection arrival -1.0 図 9 は,グラウト未充填の場合の相関関数である. -100 シース管からの反射波が到着する時刻において相関 -50 0 50 100 Back reflection arrival 150 200 Time (µs) 図 9 グラウト未充填の相関関数 関数は負の値を示している. 今回, d = 275mm の充填,未充填のシース管に対 4.結言 して,それぞれ 5 回の試験をおこなったが,いずれ ソフトエアガンを用いて楕円形状に打撃をおこな も同様な結果が得られた.しかしながら,d = 200mm い,加算平均によって精度を向上させる衝撃弾性波 に対しては,シース管からの反射波の到達が早く, 法を提案した.また,グラウトの充填評価には相関 表面振動が十分に減衰する前に到着したため,明確 関数を用いる方法を提案した.深さ 275mm に位置す な判定は困難であった. るシース管の評価は良好な結果を得ることができた. -402-