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先行研究を把握する方法

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先行研究を把握する方法
「論述・作文」後期第 6 回
担当:佐々木
先行研究を把握せよ
1
1.2
できるだけ自分で読む。関心をもっているテーマだ
先行研究(あるいは報道)を把握することは、論文
と外国語も苦にならないものだ。 ←外国語の勉強に
を書く上で重要だ。なぜなら、
もなったりする。
すでに言われていることを繰り返してもしかたが
ない。
1.3
関心をもっている分野において何がわかっていて、
何がわかっていないのか把握できる。
調べた内容の整理のために
まず、芋づる式検索をやり始める段階で、文献リス
トを作る。
文献リストは、「手に入れた文献」のリストでは
新しい研究テーマ(別な角度からの考察)を見つ
けることができる。
ない。「読むべき文献」のリストである。芋づる
式検索をやっている途中でどんどん増えていくも
先行研究を把握しておかないと独りよがりな論文にな
のである。
りがちである。では、どうやって先行研究を集めれば
よいのか?
1.1
外国語の資料を読む必要がある場合はどうする
文献リストには最低限、次の情報が必要である。これ
は、多くの場合、文献の「参照文献欄」や「参考文献
芋づる式検索法
欄」に載っている。
1. 自分の関心のあることを扱っている文献で入手し
やすいものを出発点にする。図書館で借りられる
本、新聞記事、インターネット上の記事など。
1. 著者名
2. その文献の中で引用されている文献を図書館やイ
ンターネットなどで探す。
3. 論文または書籍のタイトル
3. その中で重要な文献、または重要な箇所を読む。
4. 論文の場合は、それが掲載されている本や雑誌の
2. 出版年(あるいは記事が掲載された日にち)
タイトル。
4. その文献で引用されている文献で重要そうなもの
5. 雑誌の場合、号数。書籍の場合、編集者名。
を探す。(1.∼3. のサイクルを繰り返す。)
メリット:
6. 出版社
1つの文献をもとに関連分野についての充実した
さらに、論文の場合掲載ページ(XX∼YY)があると
文献リストを作ることができる。
よい。これらの情報があれば、文献は容易に探せる。
自分の研究目的に沿った文献を集中的に集めるこ
なお、上記の情報がわかっていれば、自分の大学の
図書館に当該文献がなくとも、他の大学の図書館から
とができる。
の複写サービスや貸し出しサービスが受けられる。
重要な文献とそうでない文献の見分けがつくよう
また、このような情報を含んだ文献リストをコンピ
になる。←多くの文献が引用している文献が重要
ュータに入力しておくと、自分の論文の参照文献リス
な文献。
トに再利用可能である。
デメリット:
次に、手に入れた文献を読んだら、そこで得た情報
をもとに文献カードを作る。文献カードに書き込む情
起点となる文献よりあとの研究成果を集めにくい。
報は、
上記のデメリットを克服するには、その問題について
1. 重要な点(重要な点がなければ、文献カードを作
る必要なない)。
専門的に追求している先生に相談してみるのがよい。
専門家は新しい研究の動向にも詳しいものである。
1
2. 自分の論文で引用する箇所があれば、書き写す。
2
(コンピュータに入力しておくとあとでコピーで
文献の読み方
全部通して読めるならそれに越したことはない。
きる。)
しかし、限られた時間しかない。
3. キーワード
初めてなのでわかりにくいという場合もある。
4. おかしいと思ったところ。批判すべき点。
ではどうする?
5. もちろん、論文のタイトル。
1. 序論と結論から読む
2. 必要に応じて中身も読む
などである。なお、文献カードは紙の「カード」であ
る必要はない。コンピュータのファイルでもよい。む
3
しろその方があとで使い勝手がある。
文献メモをとる際の注意
1つひとつの文献は、それ自体で完結しているとは
以下の例は、「斜格主語」をテーマに研究している
限らない。その文献で扱ったテーマを理解するために、
人が作った文献カードの一部である。
他の文献にあたらなければならない場合もある。
その文献を読んでわからなかったことや納得できな
文献 Takezawa, Koichi. 1987. A Configurational Ap-
かったこともメモしておこう。あとで自分で調べるテー
proach to Case Marking in Japanese. Doctoral dissertation. University of Washington, Seattle.
マにあるかもしれない。→オリジナリティーのある研究
ポイント 主語と共通する振る舞いをする「名詞句+
に」は全て統語的に同じ要素と見なされるという。
心理述語文の与格名詞句、使役文の与格名詞句、
希求構文の与格名詞句、これらは全て、主語の位
置で「に」挿入規則によって派生されるという。
統率束縛理論に基づく分析。日本語には英語と同
様の階層構造が存在するという前提。証拠として
のデータは、再帰代名詞の同一指示。
キーワード 斜格挿入分析、階層構造、格フィルター
難点 この論文で同じ要素と見なされているものは、統
語的に均質ではない。遊離数量詞の振る舞いで異
なる。理論内の整合性に関しても問題。階層構造
の下のほうに向かっての移動は、統率束縛理論で
は認められていないはず。しかし、最大の問題は、
一面的なデータで過剰な一般化を行っている点。
メモ 標準語ではみんな「に」でマークされるからいい
けど、方言によっては別な形になる。方言のデー
タでもって形式的な側面もたたいてみると面白い
かも。
2
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