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「大ナポレオン皇帝陛下の命に従って発表された」と
諫早市立諫早図書館には「大ナポレオン皇帝陛下の命に従って発表された」とフランス語で記された珍本中の珍本とい される辞書が所蔵されている。日本国内には2冊しかないと言われ世界的にも貴重なお宝。 諫早領主家から県立長崎図書館に寄託されていた数千冊の書籍の中から昭和2年に発見された。その後第 20 代当主諫 早英雄氏から平成 13 年 3 月に諫早図書館に寄贈され今日に至っている。 通称ナポレオン辞書と呼ばれるこの書籍は、見開きに「漢字西訳」と記され、漢和辞典と似た形式の、漢字、フランス 語、ラテン語の大訳辞書である。見出しに漢字を大きく記して、その下に発音をフランス語のアルファベットで示し、右 にフランス語とラテン語の両方で漢字の意味が書かれている。厚さが 7.8 ㌢。932 ページに及ぶ大冊。収録漢字数は 1 万 3316 字。部首ごとに画数順に配列されている。 編集者は、クリスチャン・ルイ・ジョーネス・ド・ギーネというフランスの有名な中国学者。1813 年にパリの帝室印 刷所でつくられた。日本では江戸時代の文化 10 年に当たる。 1813 年はナポレオン軍がロシア遠征に寒さと飢餓のため失敗した翌年。この年からヨーロッパ諸国の対ナポレオン解 放戦争が活発になり、ナポレオンの没落がはじまる。そして 1815 年にはついに大西洋の孤島セントヘレナ島に追放され てしまう。 余談を一つ。ナポレオンは「余の辞書に不可能という言葉はない」と言ったと伝えられるが、もちろんこの辞書のこと ではない。ちなみに「不」はこの辞書では 2 ㌻、「可」は 78 ㌻、「能」は 593 ㌻に載っている。 (館長 寺田隆士)西日本新聞 2013 年 9 月 3 日掲載