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温暖化の実態と対応品種のラインナップ
温暖化の実態と対応品種のラインナップ 愛媛県南予地域は近年の温暖化の影響もあ 成された「甘平」などが収穫でき、4 月から 6 り、年平均気温が 100 年間で約 1℃上昇して 月には東南アジアのマンダリンから育成され 17℃を越え、かつてのポンカン産地の鹿児島県 た「カラーマンダリン」、和製グレープフルー や地中海性気候であるイタリアのシシリア地 ツとして人気が高く収益性が高い「河内晩柑」 、 域の気温と同等になっている。 さらに寒い年には収穫できなかったイタリア 温暖化はとくに冬季が顕著で、当研究所にお 原産のブラッドオレンジの「タロッコ」(写真 いても、1 月の平均気温が 2.5℃、11 月と 3 月 1)やグレープフルーツの「オロブランコ」も が 2℃前後上昇して、秋が長く春が早まった。 国内生産が可能となっている。 秋の温暖化は果実肥大と減酸を促進して、冬の また当研究所が開発したぶらぶらハウスに 温暖化により−3℃以下の寒害が少なくなり、 より、果皮障害の発生を軽減でき「紅まどんな」 完熟生産が容易となり、中晩柑の生産に有利と は 1∼2 月、 「不知火」は大玉でネックが長く高 なった(図 1) 。 品質な果実を 4∼5 月まで出荷が可能となる。 一方、気象変動も大きくなり、乾燥基調の中 その結果、9 月収穫の極早生温州から翌年 6 月 で降れば土砂降りといった亜熱帯モンスーン 収穫の中晩柑まで 10 品種以上を組み合わせて、 気候に似た気象が続いており、温州みかんでは 10 ヶ月間にわたり、様々な柑橘類を消費者に提 浮皮や果皮障害が多く発生し、品質が著しく低 供できるようになった(図 2) 。 下しやすく、作りにくくなった。 (みかん研究所 主任研究員 政本泰幸) 年内は温州みかんの他にオレンジ色の濃い 果皮とゼリー状の果肉でカットフルーツに適 して消費者人気の高い愛媛県で育成された「紅 まどんな」 、1 月から 3 月には「伊予柑」や「ポ ンカン」、ポンカンの血を引き継ぎ高糖度で食 味の良い「不知火」や外観が美しく高糖で風味 がある「せとか」、お鏡餅の外観で、さらに上 写真1「タロッコ」 品な甘さと生産者の期待が大きい愛媛県で育 図2 温暖化に対応した新品種ラインナップ 9月 10月 11月 100 90 温州みかん 80 極早生 早生 紅まどんな 1965-1984 1988-2007 70 12月 中生 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 ××××××××× ××××××××× はれひめ 伊予柑・ポンカン 60 甘 平 50 不知火 40 ×××××××× はるみ 30 清 見 20 せとか 10 カラマンダリン タロッコ 0 -1 -2 -3 -4 最低極温(℃以下) -5 -6 図1 1965-1984と1988-2007の最低極温の頻度 の比較(宇和島測候所) オロブランコ 河内晩柑 温州類 タンゴール マンダリン オレンジ ブンタン類・グレープフルーツ 8月