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ガウスの定理の証明(スケッチ) 1210(sun) 1219(tue) §1 曲面の定義

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ガウスの定理の証明(スケッチ) 1210(sun) 1219(tue) §1 曲面の定義
ガウスの定理の証明( スケッチ )
1210(sun)
1219(tue)
§1 曲面の定義再考
[定義 1] ユークリッド 空間 R3 のコンパクトな曲面を閉曲面と呼ぶ
[定理 2] ユークリッド 空間 R3 の弧状連結な閉曲面 S は R3 − S を交わらな
い二つの開集合に分ける. 一方は有界でもう一方は非有界である.
[証明] 内容はあたりまえのように見えるが 、数学の定理としてきちんと証明
するには、実数と一般位相についての厳密で込み入った議論が必要である. この
講義では省略する.
[定義 3] ユークリッド 空間 R3 の弧状連結な閉曲面 S の内部にある有界な領
域 V を、閉曲面 S の囲む領域 と呼ぶ. V のあるほうを曲面 S の 内側、そうでな
い方を 外側 と呼ぶ.
[系4] ユークリッド 空間 R3 の閉曲面 S は向き付け可能である.
[証明] まず、S が弧状連結のときを考える. 定理2定義3から S は外向き
単位法線ベクトル場を持つ. S が弧状連結ではないとき. コンパクトだからその
連結成分は有限個である. S の連結成分を S1 , · · · , Sk とする. 各弧状連結閉曲面
Si は外向き単位法線ベクトル場をもつから全体として S も外向き単位法線ベクト
ル場をもつ. ( 証明終わり)
§2 ガウスの発散定理
(1) ユークリッド 空間 R3 の体積要素を dV = dx ∧ dy ∧ dz 、
(2) ユークリッド 空間 R3 の有界領域 Ω の境界が閉曲面 S であるとする.
∂
∂
∂
+ B ∂y
+ C ∂z
と
(3) 領域 Ω の近傍で与えられたベクトル場を X = A ∂×
する.
前期に曲面 S の表面をとおって流れるベクトル場 X の流れを X · dS (ベク
トル場 X と面素 dS の内積)と与えたが 、まず , これに相当する微分形式を定義
する.
代入 dV (X) がこれに相当する. 具体的な式は
dV (X) = Ady ∧ dz − Bdx ∧ dz + Cdy ∧ dz.
[定理 5](ガウスの発散定理)
ユークリッド 空間 R3 の閉曲面 S で囲まれた有界領域を Ω とする. Ω の近傍
∂
∂
∂
+ B ∂y
+ C ∂z
とする. 次が成立する.
で与えられたベクトル場を X = A ∂×
Ω
div dxdydz =
1
S
dV (X)
ただし 右辺の積分は正の局所座標系をつかって与えるものとする.
[注意 6]
曲面を小片に分割する.
◦
◦
S = S1 ∪ S2 ∪ · · · ∪ Sk , S i ∩ S j = ∅
◦
ただし各小片 Si は S の閉集合で内点 S j が空集合ではないないようにとる. すると S での積分は各小片での積分の和として表せる.
S
dV (X) =
k Sj
j=1
dV (X).
( 証明は省略する. )
以下ガウスの発散定理を順を追って証明を与える.
§3 積分領域の種類
有界領域 Ω を細かく分割していくと次の 7 種類に分類できる
( I ) Ω1 = {(x, y, z) | a0 ≤ x ≤ a1 , b0 ≤ y ≤ b1 , c0 ≤ z ≤ c1 }
(II) Ω2 = {(x, y, z) | a0 ≤ x ≤ a1 , b0 ≤ y ≤ b1 , c0 ≤ z ≤ f (x, y) }
(II’) Ω2 = {(x, y, z) | a0 ≤ x ≤ a1 , b0 ≤ y ≤ b1 , f (x, y) ≤ z ≤ c1 }
(III) Ω3 = {(x, y, z) | a0 ≤ x ≤ a1 , b0 ≤ y ≤ g(x, z), c0 ≤ z ≤ c1 }
(III’) Ω3 = {(x, y, z) | a0 ≤ x ≤ a1 , g(x, z) ≤ y ≤ b1 , c0 ≤ z ≤ c1 }
(IV) Ω4 = {(x, y, z) | a0 ≤ x ≤ h(y, z), b0 ≤ y ≤ b1 , c0 ≤ z ≤ c1 }
(IV’) Ω4 = {(x, y, z) | h(y, z) ≤ x ≤ a1 , b0 ≤ y ≤ b1 , c0 ≤ z ≤ c1 }
§4 領域 Ω1 での左辺の積分
左辺は
Ω1
∂A ∂B
∂C
+
+
∂x
∂y
∂z
dxdydz =
a1
a0
b1
b0
c1
c0
∂A ∂B
∂C
+
+
∂x
∂y
∂z
これを 3 項の積分の和に分けてそれぞれを考察する.
a1
a0
b1
b0
c1
c0
∂A
dxdydz =
∂x
b1
b0
c1
c0
さて右辺について考察する.
領域 Ω1 の境界面をそれぞれ
2
{A(a1 , y, z) − A(a0 , y, z)}dydz
dxdydz
(1) Wa1 = {(a1 , y, z) | b0 ≤ y ≤ b1 , c0 ≤ z ≤ c1 }
(2) Wa0 = {(a0 , y, z) | b0 ≤ y ≤ b1 , c0 ≤ z ≤ c1 }
(3) Wb1 = {(x, b1 , z) | a0 ≤ x ≤ a1 , c0 ≤ z ≤ c1 }
(4) Wb0 = {(x, b0 , z) | a0 ≤ x ≤ a1 , c0 ≤ z ≤ c1 }
(5) Wc1 = {(x, y, c1 ) | a0 ≤ x ≤ a1 , b0 ≤ y ≤ b1 }
(6) Wc0 = {(x, y, c0 ) | a0 ≤ x ≤ a1 , b0 ≤ y ≤ b1 }
とする.
[補題 7]
境界 Wa1 の正の局所座標系は
U1 = {(u, v) | b0 ≤ u ≤ b1 , c0 ≤ v ≤ c1 },
ϕ : U → W1 , x = a1 , y = u, z = v
で与えられる.
[証明] Wa1 の外向き単位法線ベクトル場は (1, 0, 0) である. u-曲線, v-曲線
の接ベクトル場はそれぞれ
∂ϕ
∂ϕ
= (0, 1, 0),
= (0, 0, 1)
∂u
∂v
であるから , 外積ベクトルは
∂ϕ ∂ϕ
×
= (1, 0, 0)
∂u
∂v
したがって正の局所座標系である.
同様に計算して
U0 = {(u, v) | b0 ≤ v ≤ b1 , c0 ≤ u ≤ c1 },
ϕ : U → W0 , x = a0 , y = v, z = u
が Wa0 の正の局所座標系である. したがって
dV (X) = Ady ∧ dz − Bdx ∧ dz + Cdy ∧ dz.
の引き戻しは
[補題 8]
ϕ∗1 dV (X) = A(a1 , u, v)du ∧ dv, ϕ∗0 dV (X) = −A(a0 , v, u)du ∧ dv
である.
[証明]
直接計算すればよい.
3
[命題 9]
b1
b0
体積積分の右辺は
c1
c0
{A(a1 , y, z) − A(a0 , y, z)}dydz =
W1
dV (X) +
W0
dV (X)
である.
[証明]
ϕ∗1 dV (X)(u, v) = A(a1 , u, v)du ∧ dv
かつ
ϕ∗0 dV (X)(u, v) = −A(a0 , v, u)du ∧ dv
であるから , 曲面上の積分の定義より
W1
W0
dV (X) =
b1
b0
dV (X) = −
c1
A(a1 , u, v)dudv =
c0
b1
b0
c1
c0
b1
b0
A(a1 , v, u)dudv = −
c1
c0
b1
b0
A(a1 , y, z)dydz,
c1
c0
A(a1 , y, z)dydz
である. 第2式では積分順序の交換可能性を使った.
同様の計算により次を得る.
[命題 10]
Ω1
div dxdydz =
W1
dV (X)
ただし W1 = Wa1 ∪ · · · ∪ Wc0 .
§4 領域 Ω2 での左辺の積分
左辺は
Ω2
∂A ∂B
∂C
+
+
∂x
∂y
∂z
dxdydz ==
a1
a0
b1
b0
f (x,y) c0
∂A ∂B
∂C
+
+
∂x
∂y
∂z
dxdydz
ここで右辺の積分を 3 項に分けてそれぞれを考察する.
(1) まず簡単な
a1
a0
次に
b1
b0
f (x,y)
c0
∂C
(x, y, z)dxdydz =
∂z
a1
a0
b1
b0
a1
a0
f (x,y)
c0
4
b1
b0
{C(x, y, f (x, y)) − C(x, y, c0 )}dxdy
∂A
dxdydz
∂x
を考察する. そのために次の関係式に注目する.
f (x,y)
f (x,y)
∂
∂f
∂A
(x, y, z)dz + A(x, y, f (x, y)) (x, y)
A(x, y, z)dz =
∂x ċ0
∂x
∂x
ċ0
これを用いて
a1 b1 f (x,y)
a0
b0
c0
∂A
dxdydz =
∂x
=
−
同様に計算して
a1 b1 f (x,y)
a0
b0
c0
a0
a1
dx
dy
ċ0
b1
b0
a1
dx
a0
b0
b1
a0
f (a1 ,y)
b1
a0
b0
∂
dy
∂x
a0
b0
a1
a0
dyB(x, y, f (x, y))
(I) 第1の積分
b1
f (a1 ,y)
dy
A(a1 , y, z)dz
ċ0
b0
(II) 第 2 の積分
I2 = −
b1
f (a0 ,y)
dy
A(a0 , y, z)dz
ċ0
b0
(III) 第 3 の積分
I3 =
a1
f (x,,b1 )
dx
B(x, b1 , z)dz
ċ0
a0
(IV) 第4の積分
I4 = −
a1
f (x,b0 )
dx
a0
ċ0
5
f (x,b0 )
dx
これらの積分の和を 6 つの積分に分ける.
I1 =
A(a0 , y, z)dz
ċ0
b0
b1
dx
f (a0 ,y)
dy
a1
b1
∂f
(x, y)
∂x
∂f
(x, y)
∂x
B(x, b1 , z)dz −
ċ0
−
A(x, y, z)dz
ċ0
A(a1 , y, z)dz −
f (x,,b1 )
f (x,y)
dyA(x, y, f (x, y))
dyA(x, y, f (x, y))
b0
∂B
dxdydz
∂y
a1
=
dx
b1
dx
−
a1
B(x, b0 , z)dz
ċ0
∂f
(x, y)
∂y
B(x, b0 , z)dz
(V) 第5の積分
I5 = −
a1
a0
b1
C(x, y, c0 )dxdy
b0
(VI) 第6の積分
I6 = −
a1
b1
dx
a0
−
dyA(x, y, f (x, y))
b0
a1
b1
dx
a0
+
b0
a1
a0
∂f
(x, y)
∂x
dyB(x, y, f (x, y))
∂f
(x, y)
∂y
b1
C(x, y, f (x, y))dxdy
b0
以下順に積分を計算していく.
¶ 第1の積分について
まず , 領域 Ω2 の境界面に記号をつける.
Da1 = {(a1 , y, z) | b0 ≤ y ≤ b1 , c0 ≤ z ≤ f (a1 , y) }
Da0 = {(a0 , y, z) | b0 ≤ y ≤ b1 , c0 ≤ z ≤ f (a0 , y) }
Db1 = {(x, b1 , z) | a0 ≤ x ≤ a1 , c0 ≤ z ≤ f (x, b1 ) }
Db0 = {(x, b0 , z) | a0 ≤ x ≤ a1 , c0 ≤ z ≤ f (x, b0 ) }
Dc1 = {(x, y, c0 ) | a0 ≤ x ≤ a1 , b0 ≤ y ≤ b1 }
Dc0 = {(x, y, f (x, y)) | a0 ≤ x ≤ a1 , b0 ≤ y ≤ b1 }
これから示したいのは第 1 の積分が境界面 Da1 での dV (X) の積分となることで
ある.
[補題 11] I1 =
Da1
dV (X) が成立する.
[証明] uv-平面の領域を
Da1
= {(u, v) | b0 ≤ u ≤ b1 , c0 ≤ v ≤ f (a1 , u) }
とおき、境界面 Da1 の正の局所座標系
(Da1
, ϕ1 ), ϕ : Da1
→ Da1 , ϕ(u, v) = (a1 , u, v)
6
を得る. 実際
∂ϕ
∂ϕ ∂ϕ
∂ϕ
= (0, 1, 0),
= (0, 0, 1),
×
= (1, 0, 0)
∂u
∂v
∂u
∂v
だからである. ( Da1
は閉集合であり、局所座標系の定義に厳密であるためには
Da1 を含む開集合からの写像に拡張しなければならないが , 意味は明らかなので
ここではこのままの形で議論を進める. )具体的に計算すれば
ϕ∗1 dV (X) = ϕ∗1 (Ady ∧ dz − Bdx ∧ dz + Cdx ∧ dy) = A(a1 , u, v)du ∧ dv
よって
Da1
dV (X) =
Da1
ϕ∗1 dV
(X) =
b1
f (a1 ,y)
dy
b0
ċ0
A(a1 , y, z)dz = I1
¶ 第2から第5の積分について、そして以上の和について
同様な議論を他の積分 Ik , k = 2, 3, 4, 5 についても行い次の結果を得る.
[命題 12]
5
k=1
Ik =
dV (X)
Dk
ただし右辺の和
は Da1 , · · · , Dc0
の 5 つにわたるものである.
¶第 6 の積分について
さて最後に I6 を考察する. uv-平面の領域を
D6 = {(u, v) | a0 ≤ u ≤ a1 , b0 ≤ v ≤ b1 }
とおき、境界面 Dc0 の正の局所座標系
(D6 , ϕ1 ), ϕ : D6 → Dc0 , ϕ(u, v) = (u, v, f (u, v))
を得る.
実際
∂f (u, v)
∂ϕ
= (1, 0,
),
∂u
∂u
∂ϕ
∂f (u, v)
= (0, 1,
),
∂v
∂u
∂ϕ ∂ϕ
∂f (u, v) ∂f (u, v)
×
= (−
,−
, 1)
∂u
∂v
∂u
∂v
[問]
D6 = {(u, v) | a0 ≤ u ≤ a1 , b0 ≤ v ≤ b1 }
7
(D6 , ϕ1 ), ϕ : D6 → Dc0 , ϕ(u, v) = (u, v, f (u, v))
が正の局所座標系であることを示せ.
したがって引き戻しを計算して
ϕ∗ dV (X)(u, v) = {−A(u, v, f (u, v))fu (u, v) − B(u, v, f (u, v))fv (u, v)
+ C(u, v, f (u, v))}du ∧ dv
よって
[命題 13]
Dc0
dV (X) =
D6
ϕ∗ dV (X)(u, v) = I6
を得る.
以上から
[定理 14]
Ω2
div dxdydz =
D2
dV (X)
ただし D2 は Da1 から Dc0 の境界面の和集合
D2 = Da1 ∪ · · · ∪ Dc0
である.
さて7種類の領域のすべてのタイプについて定理 14 が成立し( 今は領域 Ω1
と Ω2 について見ただけだった, 厳密には各々きちんと確かめなければいけない. )
隣接する境界面では前期に見たように面積分の値の符号がちょうど 逆向きである
から和を取ると相殺して
ゼロとなる. したがって全体 Ω の境界面となっている部分の面積分の和だけが
残る. これらを足してガウスの発散定理の右辺が得られる. 以上からガウスの発散
定理が得られたことになる.( 証明終わり).
8
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