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高温ガス化直接溶融炉におけるコークス使用量削減に関する研究 C5-4
第21回廃棄物資源循環学会研究発表会講演論文集 2010 C5-4 高温ガス化直接溶融炉におけるコークス使用量削減に関する研究 ○(正)中山 剛 1)、 (賛)植竹 規人 1)、 (賛)秋山 肇 1)、 (賛)吉田 朋広 1) 1)JFE エンジニアリング(株) 1.はじめに JFE 高温ガス化直接溶融炉設備は, 2003 年の初号機竣工以降 10 プラントの納入 実績があり,一般廃棄物の他に,産業廃棄物,焼却灰,掘り起こしごみ,ごみ固 形化燃料(RDF) ,アスベストなど多様な廃棄物を,コークス充填層を形成させな がら処理している。 昨今,CO2 排出量削減に対する社会的要望が強まっている中,弊社ではコークス 使用量の削減により,CO2 排出量を削減する方策について,鋭意検討を進めている。 その一環として,粒径の大きなコークス(大塊コークス)を使用することで,コ ークス充填層でのソリューションロス反応(C+CO2→2CO)を低減させ,コークス 使用量の削減を達成する方法について,実機試験を実施した。本稿では大塊コー クス使用による,コークス使用量削減の実機試験成果について報告する。 2.高温ガス化直接溶融炉の概要 Fig.1 に高温ガス化直接溶融炉の炉内断面図を示す。炉頂から廃棄物,コーク ス,石灰石が投入される。投入された廃棄物は廃棄物層の上段で水分が蒸発し, 可燃分が熱分解する。廃棄物中の固定炭素と灰分は,投入されたコークス,石灰 石とともに溶融炉内を予熱されながら下降し,炉下部に到達する。炉下部では主 羽口から供給された酸素でコークスと固定炭素を燃焼し,その燃焼熱で灰分を溶 融し,溶融スラグとして出滓口から連続出滓される。炉下部と廃棄物層で発生し た可燃性ガスは溶融炉後段の二次燃焼室で完全燃焼する。 3.使用したコークス粒径の比較 通常使用しているコークスと 3 種類の粒径の異なる大塊コー クスを使用して試験を実施した。 使用したコークスの写真および 粒径の比較を Table 1 に示す。 通常コークスは公称粒径が 20 ∼50mm のもので,平均粒径は測 定の結果,37mm であった。 それに対し,大塊コークスの 平均粒径は①,②,③でそれぞ れ,50,65,135mm であった。 いずれの大塊コークスとも,成 分は通常コークスと同等のもの を用いた。 Table 1 廃棄物 コークス 石灰石 可燃性ガス 副羽口 主羽口 スラグ、メタル Fig.1 JFE 高温ガス化直接溶融炉 コークス粒径の比較 通常 大塊① 大塊② 大塊③ 20 ∼ 50 30 ∼ 100 60 ∼ 100 120 ∼ 150 37 50 65 135 概観写真 100mm 公称粒径 mm 平均粒径 mm 4.試験方法 大塊コークス試験は弊社納入のA工場にて実施した。処理能力は 1 炉当り 50t/d で,都市ごみを処理している。 大塊コークスを通常コークスとは別のホッパに準備し,溶融炉への供給を通常コークスから大塊コークス①に切り替 えた。この状態でスラグ出滓温度が通常コークス使用時と同等になるように,徐々にコークス供給量を調整した。大塊 コークス②,③についても,同様の調整を実施した。 Table 2 コークス比の比較 5.試験結果 試験結果を Table 2 に示す。スラグ出滓温度を 維持するようにコークス使用量を調整しているた め, 出滓状況は良好であった。 コークス使用量は, ごみ処理量あたりのコークス使用量 (コークス比) で評価している。A工場の通常コークス使用時の コークス比は平均 62kg/t である。大塊コークス① 使用時には徐々にコークス使用量を削減していっ 通常 大塊① 大塊② 大塊③ 公称粒径 mm 20 ∼50 30 ∼100 60 ∼100 120 ∼150 平均粒径 mm 37 50 65 135 コークス比 kg/t 62 54 51 35 【連絡先】〒230-8611 横浜市鶴見区末広町二丁目 1 番地 JFE エンジニアリング(株) 総合研究所 環境 技術研究部 中山 剛 Tel:045-505-7852 FAX:045-505-6567 e-mail:[email protected] 【キーワード】ガス化溶融、コークス - 435 - 第21回廃棄物資源循環学会研究発表会講演論文集 2010 炉底耐火物温度 [℃] た結果,最終的には 54kg/t まで削減することができた。大塊コークス②使用時には 51kg/t まで,大塊コークス③使用 時には 35kg/t まで削減することができた。 また、大塊コークス試験時の溶融炉炉底耐火物温度の推移を Fig.2 に示す。通常コークス使用時には 800℃程度で安 定しているが,大塊コークス供給後に炉底 1000 耐火物の温度上昇が確認された。また,試 900 験期間を終了し通常コークスに戻すと従来 800 値に収束しているのが分かる。これは大塊 700 コークス使用により,炉下部での着熱が良 600 好になったことを示唆している。 以上,本実機試験から大塊コークス使用 500 大塊コークス により,大幅なコークス使用量削減を実証 400 7/25 7/27 7/29 7/31 8/2 8/4 8/6 8/8 8/10 8/12 8/14 8/16 できた。 Fig.2 炉底耐火物温度の推移 6.炉内現象の推定 65 通常コークス 60 大塊コークス① 55 コークス比 [kg/t] 溶融炉下部の現象としては,コークス充填層の羽 口先で供給酸素と炭素の燃焼が起こり,ここで発生 した二酸化炭素がコークス充填層を上昇していく際 に,炭素と反応し一酸化炭素を生成する。このソリ ューションロス反応が起こるとコークス充填層での コークス使用量の増加につながる。ところで,ソリ ューションロス反応速度は,コークス表面積に代表 される反応界面積に関係すると考えられる。 そこで, 各コークスの粒径分布を測定し,比表面積を求め, 比表面積とコークス比の関係を Fig.3 に示す。比表 面積の減少に伴い,ほぼリニアにコークス比の削減 効果が表れているのが分かる。このことから,コー クス充填層でのソリューションロス反応の低減がコ ークス比の削減に繋がっていると考えられる。 大塊コークス② 50 45 40 大塊コークス③ 35 30 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 コークス比表面積[m2/kg] 7.スラグ性状 コークス比を削減したときにスラグ性状に影響が ないかを確認するために,大塊コークス③を使用 して, コークス比が 35kg/t のときに生成したスラ グ中の鉛含有試験と溶出試験を実施した。 結果を Table 3 に示す。含有量,溶出量とも基 準値と比較して十分に低位であり,コークス比を 削減しても,スラグの性状には影響を及ぼしてい ないことが確認できた。 Fig.3 Table 3 コークス比とコークス比表面積の関係 スラグの鉛含有試験および溶出試験結果 単位 大塊コークス③ 基準値 使用時 分析方法 鉛含有試験 mg/kg 22 150 JIS K 0102 54.4 鉛溶出試験 mg/L 0.005 未満 0.1 JIS K 0102 54.4 8.おわりに CO2 排出量削減に対する社会的要望が強まっている中,弊社ではコークス使用量の削減により,CO2 排出量を削減する 方策について,鋭意検討を進めている。コークス使用量の削減を目的として,大塊コークスを適用した実機試験の結果, 以下の知見が得られた。 (1) 弊社のガス化溶融炉では,平均粒径 37mm から 135mm までの幅広い粒径範囲のコークスを使用可能であることが 実証できた。 (2) コークス粒径を大きくすることで,使用量を削減できることが実証できた。 (3) コークス比はコークスの比表面積によって整理することができたことから,コークス充填層でのソリューショ ンロス反応の低減がコークス比削減に有効であると考えられた。 (4) コークス比を削減してもスラグの有害物質溶出に影響はなかった。 弊社では,更なるコークス使用量の削減,CO2 排出量の削減に取組んでいく所存である。 - 436 -