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形状記憶合金を用いた血液吸引用ポンプの最良設計
平成24年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿 形状記憶合金を用いた血液吸引用ポンプの最良設計 東海大学 ○朝倉 重孝, 東海大学 槌谷 和義 1.緒言 糖尿病患者は増加傾向であることが報告されている[1]. 治療には日に数回の血糖値測定,インスリン投与が必要 であり,既存の血糖値測定機器では操作が煩雑である. そこで本研究室では煩雑さの改善と携帯利便性を考慮し た腕時計型血糖値測定デバイスの開発を行っている[2]. デバイスへのポンプ搭載数増加を目的として,アクチ ュエータを既存の PZT より発生力が大きい形状記憶合金 を採用し小型化を図る.原理として形状記憶効果を利用 しポンプ筐体内に負圧を発生させて血液吸引を行う.本 研究では血液吸引用ポンプの小型を目的として形状の検 討を行う.既報[3]より形状記憶合金のアクチュエータ性能 に関わる因子として,形状記憶合金の駆動域を向上させ ることにより,変形時のポンプ筐体内の容積変化量が増 加し,吸引量が向上することが確認されている. そこでポンプ形状と吸引量の向上について,汎用有限 要素法解析ソフト ANSYS を用い,最良設計条件を実験 計画法により求める. Fig.1 Micropump and SMA actuator. 2.方法 従来の円形状ポンプでは,設置時の隙間を有すること から隙間なくポンプを設置することが可能な正方形状に 着目し最良条件の探索を行う.既報[3]より円形状において 性能に影響を与える因子として,形状記憶合金に付与す る切れ込み長さ及び幅が高い有意性と寄与率が確認され ている.これらに加え正方形状特有の切れ込み角度につ いて実験計画法をを用いて表 1,2 の条件で行う. 解析モデルを図 2(a)に示す.形状記憶合金の直下に導 電性ゴムを配置したフルモデルを採用した.拘束条件を 図 2(b)に示す.形状記憶合金の駆動部を除いた部分をフ レームと定義し,直下の導電性ゴムの底面を全自由度拘 束する.形状記憶合金の駆動を図 2(c)に示すように Z 軸 方向に 20 [°]変位すると仮定し,アクチュエータ変位を 強制変位として定義する.評価値は変形した後のポンプ 筐体内の容積変化量とする. Y X Z Z X Y (a) Model image (b) Restriction condition (c) Deformation image Fig.2 Analysis model. Table 1 Physical properties and fixed factor. Density [kg/m3] Young's modulus [GPa] Poisson's ratio Side length [mm]:L Thickness [mm] Shape memory alloy 6443 63 0.3 6 0.1:d1 Electro conductive rubber 15 0.4 6 0.5:d2 Table 2 Factor and levels. Factor Level1 Level2 A Length of ditch [mm] 3.5 5 B Width of ditch [mm] 0.5 1 C Angle of ditch [°] 45 90 3.結果 最良条件は A: 切れ込み長さ 5 [mm], B: 切れ込み幅 0.5 [mm],C: 切れ込み角度 90 [°]であり,この結果を図 3 に示す.更に有意な因子の検討を行う為,分散分析を行 なった.ここで分散比が 0.1 以下の値となった交互作用の 因子にはプーリングを行う.分散分析の結果を表 4 に示 す.その結果,切れ込み長さ,切れ込み角度に有意性を 確認した.切れ込み長さは駆動領域に作用し,切れ込み 角度はアクチュエータの駆動可能な長さが変化する為, 性能向上に寄与していると示唆される. Table 3 Analysis results. No. 1 2 3 4 5 6 7 8 A 1 1 1 1 2 2 2 2 B A×B C A×C B×C e Volume change[mm3] 1 1 1 1 1 1 0.180 1 1 2 2 2 2 0.501 2 2 1 1 2 2 0.233 2 2 2 2 1 1 0.539 1 2 1 2 1 2 0.632 1 2 2 1 2 1 1.457 2 1 1 2 2 1 0.895 2 1 2 1 1 2 1.139 0 [mm] 0.54 [mm] Fig.3 No.6 model. Table 4 Analysis of variance table. Factor Square sum Degree of freedom A 0.8906848 1 B 0.000182 1 C 0.3596744 1 e 0.1115678 4 Total 1.362109 7 Variance 0.8906848 0.000182 0.3596744 - Variance ratio Judgement [%] Contribution ratio 31.93339442 99 60.18% 0.006525284 12.89527417 95 23.14% - 7.参考文献 [1] 健康局総務課生活習慣病対策室, 平成19 年国民健康調査, pp.4. (2007) [2] 槌谷和義, 中西直之, 米田泰一, 上辻靖智, 森幸治, 仲町英治, 日本機械学会論文集(C 編), 71 巻, 702 号, pp.249-255. (2007) [3] 東海大学工学部精密工学科卒業論文Ⅱ 阪本 篤嗣