Comments
Description
Transcript
サルの写真
③何故,視覚エピソード記憶と視覚作 業記憶でこれほど容量が違うのか • 現実の物体の写真を用いて変化検出課題を 行う 物体の数は6個 提示時間を変 数にとる (Brady et al., 2009) 提示時間が短いと 6個保持できない 提示時間が長いと 6個保持できる 6個提示 4個ならば提示時間が短くても保持可能 個数が多いと提示時間が長くても保持 不可能 4個提示 – 現実世界にある物体は,知識と関連付けて保持できる • その分,記銘時間がかかる(少なくとも数秒程度) – エピソード記憶は,視覚的知識の結びつきに支えられて,多くの情報 を正確に記憶できている 3)視覚的知識の記憶構造 – 視覚的知識:視覚的な長期記憶 • 視覚的知識の構造は,複数の視覚特徴次元(大きさ, 形,色など)や概念次元(生物/無生物,速い/遅いな ど)からなる多次元状態空間のようなものと考えること ができる – 視覚的エピソード記憶の痕跡はこの空間内の1点 として残される ①視覚的知識の脳内表現: 生理学的知見1 – サルの飼育室に,これまでに見たことが無い物 体を入れる.数日後,サルの側頭葉に,この物体 を見たときに反応する神経細胞が現れた(Booth & Rolls, 1998) • 特定の角度から見たときだけ反応する神経細胞 • どの角度から見ても反応する神経細胞 – 視覚的知識保持の一端を担う細胞と考えられる • この細胞が,この物体を表現している? 局所表現 この物体を見たときに 反応する細胞 サルを見たときに 反応する細胞 ネコを見たときに 反応する細胞 局所表現:1個の神経細胞が1個の物体の視覚的知識を担っている 分散表現 サルを見たときの反応パターン 分散表現:いくつかの神経細胞のグループで1個の物体の視覚的知識を担っている 個々の細胞は,サルの視覚像を構成する様々な特徴をコードしている? ②1個1個の細胞は何を意味するのか: 生理学的知見2 ある細胞は,トラのぬいぐるみがも つこのような特徴を記憶している 実験手法 この細胞の 付近にある 細胞は,似 たような特 徴を記憶し ている 脳内表現 中程度に複雑な図形特徴 (Tanaka et al., 1991) 中程度に複雑な図形特徴 ⇒ 物体の視覚的表現のアルファベット 似ているが、少しずつ 異なる図形特徴をとら える細胞約1万個 0.4mm 大脳皮質の厚み2mm 細かい違いを吸収 約2000個のコラム – 分散表現:複数の神経細胞がグループとなって 1個の物体を記憶している • アルファベットの集まり⇒単語 • 視覚特徴を記憶する神経細胞の活動パターン⇒物体の脳内表現 分散表現の特長 1. 連想記憶が成り立つ←神経回路網の働き – ある1個の事物の部分特徴や関係する事柄どうし の結びつきを記憶し,それらの一部から全ての特 徴や事柄を思い出せるような記憶方式 2. カテゴリー表現に合致する – 同じカテゴリーに属するもの(共通点の多いもの) どうしが似たパターンとして表現される 連想記憶 どうやって連想記憶が形成されるか? 学習(経験) 様々な属性や 繰り返し 同時に経験 周りの状況 目、舌、耳などを通して 赤い、丸い、こぶしより大、 「りんご」、皿の上、 さくさく、甘酸っぱい、 つるつる...、ぬれてる... 同時に活動し た細胞間を活 性化が繰り返 し伝わることに より轍となる 脳 物体の脳内表現 のアルファベット 性質が神経細胞に,関 係性が神経回路網とし て、刻まれる 同時に経験された部分特徴のアルファベット間に強固なネットワークが形成される 連想記憶 どうやって思い出すのか? 想起 一部の性質 (想起入力) 連想 関係性に基づき、他の 性質も想起される 赤い、丸い、こぶしより大、 りんご、甘酸っぱい、 さくさく。。。 つるつる...、ぬれてる... シアンの図形 グリーンの図形 一部の部分特徴のアルファベットからネットワークを伝って活性化が広まる 連想記憶の神経回路網モデルの特長 • 同じ神経回路網に複数のパターンを重ねて 記憶することができる • 一部の神経細胞が失われてもパターンの記 憶がそっくりなくなることは無い • 人間の記憶の性質に適合している ③サル下側頭葉神経活動の同時計測(分散表現の実 験的証拠):生理学的知見3 大脳皮質の一部を高感度カメラで測定 ↓ 画像処理 (神経細胞活動によるヘモグロビン還 元量を検知) ↓ 一定領域の細胞活動を同時計測 視角10° (Tsunoda et al., 2001) 1mm 10コラム分くらい? • 個々の物体に対して複数の神経細胞群が活動している • 一部の神経細胞群は異なる物体に対して同様に活動している • 刺激を単純化していくと,活動する神経細胞群は減少する • ⇒個々の神経細胞群は,部分特徴を表現しており,それらが同時に活動 すると,物体全体が認知されると考えられる⇒分散表現 • • • 刺激を単純化していくと,新たな神経細胞群が活動を始める例 逆に言うと,物体に新たな部分特徴を加えることにより,これまで活動してい た神経細胞群の活動が抑制されることがある ⇒物体像が,部分特徴を表す神経細胞群のアルファベットの組み合わせとし て認知されるという考え方は単純すぎる まとめ • 一つの物体に対し,複数の神経細胞群が活 動する • 部分特徴を取り除くと,活動する神経細胞群 が減少するが,逆に増加することもある • 神経細胞群の活動と無活動のパターンとして 物体を記憶していると考えられる ④視覚的知識のカテゴリー構造 ー自然画像の超高速カテゴリー判断実験ー • ある種のカテゴリーのメンバかどうかは,非常に 素早く正確に判断される 3.2度×4.8度の刺激を凝視点か ら6度の位置に数10ミリ秒提示. マスクはかけない (Li, et al., 2002) 生き物がいますか? – カテゴリーにより,どう行動すべきかが決まるので合 理的であるが,どのようにして実現されているのか – 20ミリ秒だけ提示された自然画像中に動物がい るかどうか ⇒正答率94%,反応時間約400ミリ秒 (Thorpe et al., 1996) – ⇒画像中に動物がいるかどうかにより,ERP(事 象関連電位)に差が見られた(潜時150ミリ秒). • 物体認知の視覚処理をしてから判断しているとは考えがたい N1 何を手がかりに判断しているのか? • 色情報の影響を調べた実験 ターゲット:動物 ターゲット:食べ物 (Delorme, et al., 2000) 超高速カテゴリ判断の性質 サル ヒト • • • • 画像 正答率 反応時間 (動物) 反応時間 (食べ物) カラー 87.3% 269ms 312ms モノクロ 83.5% 271ms 324ms カラー 93.2% 420ms 437ms モノクロ 91% 424ms 453ms 色情報が無くても可能 写真を上下逆に提示しても判断可能 動物,ヒト,ヒトの顔,クルマなど 注意を向けずに判断していると考えられる Li et al., 2002 課題1:凝視点付近に提示された5個のアルファベットが全てTか、Lが1個混じっている かをキー押しで答える。(⇒注意を必要とする課題) 課題2:凝視点から6.1°の周辺視野に提示された写真に動物がいたらボタンを離す。