Comments
Description
Transcript
講演「子どもたちが使う芝生をめざして」
H20.01.23 文京区立第五中学校・第七中学校統合に伴う新しい学校づくり協議会資料第7号 「校庭芝生化事例集 2007TOKYO」より抜粋 講演「子どもたちが使う芝生をめざして」 ~校庭芝生化ガイダンスより~ 平成 19 年 3 月 6 日 世田谷区立烏山北小学校校長 櫻井和子 先日、春の嵐で砂ぼこりがかなり舞いまし たが、芝生化する前の砂ぼこりとは雲泥の差 です。以前は砂ぼこりが起こると、向こう側 がよく見えないとか、体育の授業中足に砂が 当たって痛いなどということがありました。 本区には「世田谷区みどりの基本条例」が あり、それに基づいて学校の緑化、屋上の緑 化や壁面の緑化が推進されてきました。その 一環として校庭の芝生化のお話がでてきまし たので、私は、緑・平和・素敵という思いから、 芝生にしてもらおうと名乗りを挙げたわけで す。赴任して 3 年ですが、2 年前に芝生化が決 定されました。 本校は普通学級が 17 学級、難聴・言語学級 が 5 学級で計 22 学級。子どもの数も増加して おり、560 名を超えたところです。職員数はボ ランティアを含め 60 名程度います。また来年、 開校 55 周年をむかえます。保護者自身、卒業 生が多いことが特徴です。 (平面図を示しながら)芝生化に当たり、全面 芝生は難しいと考えました。芝生の上ではで きない運動があること、芝生には養生が必要 であること、を聞いていたので、従来のダス ト舗装を一部残すことにしました。狭いよう に見えますが、ここは、1 クラスの体育ができ る広さがあります。バスケットコートも取れ るし、ハードルを置いて使用できます。さらに、 芝生の周りは、2m ほどのダスト部分を残して います。どうしても車を入れて工事する必要 が生まれた時、芝生だと入れない。したがって、 ここの一部をそのままに残しました。 校庭面積は約 4000 ㎡、芝生は 2670 ㎡。まず、 児童 560 名と BOP(学童)の子ども達が使用し ます。利用団体は、少年サッカーが土曜・日曜・ 祭日にそれぞれ 2 時間利用しています。人数 は 50 名程度、以前は人数が多かったけれど、 芝生にするということで、練習の人数を工夫 し減らしてくれています。それから、野球。 30 名程度。同じく一日 2 時間としています。 あとは、校庭開放。広場代わりに 4 時間利用 できます。地域行事も地区防災、ひな祭りな どいろいろあります。 通常、校庭の管理は教育委員会施設課と学 校が行っていますが。芝生化に当って、世田 谷区は「街づくりセンター」が関わっています。 また今回の芝生化は 3 年間芝生の専門家が入 る形でスタートしました。その 3 年間で、芝 生の維持管理をマスターするというねらいが あるようです。特に街づくりセンターが中心 となり、既に芝生化した学校のヒアリングを 行い、我々に多くの情報を提供してくれまし た。 私の方で校庭を芝生化するにあたりお願い したことは、見る芝ではなく、使う芝なんだ ということです。 どうしても芝生というと、 入らないでくださいというイメージが強いの ですが、学校の校庭の芝生であれば、使って ナンボ、つまり、芝を育てながら活用し、活 用したら、当然剥げますから、補修して、補 修しながらまた使い、また大事に育てる、こ ういう繰り返しをしていきたいと思っていま した。このような考えなので、子ども達が校 庭を使えないという状態は極力避けたいと願 い、養生期間は短く、工事期間も短くしてく ださいとお話しました。 1 こうした条件の下、芝の種類はベースにチバ ラフワン、冬芝にトールフェスクを蒔くことに しました。全面養生した日数は、1 年半で 44 日と聞いています。校庭が広いので、適宜、部 分養生を取ってきました。 校庭の基盤整備についても、単に芝生にして 景観の改善や砂ぼこりが無くなるというだけで なく、ヒート対策という観点から、スプリンク ラーを 10 基設置して、タイマーによる散水を 行います。さらに資源の節約として降雨セン サーも設置して、雨天時には散水しないように しました。また、廃棄物を出さないという観点 から土を入れ替えるのでなく、有機質の資材を 使い、現在の校庭を改良しました。排水は、既 存のものを活用しています。 4 月になり、保護者や利用団体に芝生化の説 明をしました。立ち上げに当たり、「芝生は大 変だからやめなよ」ですとか「雑草取りが大変」 という声もありました。 6 月から夏休みにかけて 3 ヶ月工事をしまし た。実際に土を掘り返したのは 6 月の中旬。8 月 4 日に芝張。お披露目をしたのが 9 月 8 日で す。途中に地域の方と一緒に、横浜の学校を視 察して、維持管理の勉強をしました。 芝の管理作業は、およそおよそ 4 つ。 ①使い終わったあと、芝の様子をみる。毛羽立っ たところがあれば、足で踏んでくる。 ②芝刈について。手押しの芝刈り機も用意して もらったが、主事が乗用式の芝刈り機で刈ると、 あっという間に終わってしまう。 ③散水はタイマーで。副校長が専門家に指導し てもらいながら、タイミングをみてまいている。 ④肥料も、指導してもらいタイミングをみて蒔 いている。 管理委員会を作って研修会もしましたが、今 のところマンパワーをもってやったことはあり ません。毎回、委員会で、利用の仕方、約束事 2 の確認などの情報交換をしています。メンバー を集めて補修ということはまだ実施していませ ん。 メリット、デメリットについてお話しますと、 芝生化 1 年目の運動会。前日の夜半まで雨が ふっていたので、30 分ほど遅らせて実施しま した。芝生にすると、たとえば団体競技でも、 「ヨーイドン」といった瞬間に、全員が前転を して走り出すような競技をしたくなります。そ うすると、頭から背中まで芝についた水と泥で 汚れ、体育着がドロドロになる・・。校庭の土 を砂に入れ替えていませんので、ちょっと水は けに問題があるかもしれませんが、雨の量に よっては、地中に水分が浸みているということ を考えなければいけません。芝生化以前の運動 会と違って、グラウンドで前転をするといった 演技がたくさんでてきます。それはいいことな のですが、その代わり綱引きができないといっ た制限も生まれますけれど・・。 運動会当日の怪我の比較をしますと、平成 16 年は 20 人の子どもが養護教諭の手当てを受 けていますが、17 年には、13 名に減ってきて いる。今年は 8 人になりました。データを見る と、すり傷の部分が変わってきている。また、 9 月と 10 月のみの怪我の総数も比べてみまし た。前年と同じ 9 月でも、芝生になって減って きている。10 月も同様です。 授業等の変化では、子ども達が、虫取り網を 持って登校し、捕っています。体育では、いろ んな工夫ができます。タグラグビーもはじめて いますし、サッカーについても、ラインを引か ないでやっています。縦割り活動の「あおがし 活動」というのがありますが、1 年生から 6 年 生までがグループを作って、芝生の上でお弁当 給食をしています。特に学習では、何かできな くなったとは感じていません。反対に、もっと できるんじゃないか総合的な学習で、と感じて います。 学校のルールは、何かを変えなければいけな いということはありませんでしたが、一輪車と 縄跳びについては、芝生の上ではやりにくいの で、ダスト舗装の上でやるように指導していま す。月曜日に全校児童の朝会が校庭でありまし たが、毎週のことなので体育館に切り替えまし た。昼休みの変化について、街づくりセンター が調査しました。ダスト舗装時代では一輪車や ドッチボールが主流でしたが、芝生化後では、 逆立ちや側転している児童が見られるようにな りました。 子どもにアンケートをとったところ、「芝生 にして良かった」が 58%、「土のほうが良かっ た」が 24%。芝生が良かった理由は、「転んで も痛くない」。土のほうが良かった理由として 「足が遅くなった」「遊びが制限される」。こと があげられています。外で遊ぶことが増えたか という質問では「増えた」が 54%ですが、 「減っ た」も 14%いました。どうしても養生期間が ありますから反対の意見がでてきます。調査に ついては、まだ十分ではありません。また教育 活動もこれからもっと工夫ができるものと思っ ています。 最後にお伝えしたいのは、往々にしてダスト 舗装と比較し、できなくなったことを考えてし まいますが、緑の芝生になってできるように なったことも考えていただきたいということで す。思いもしなかったことができるようになり ます。また芝生は植物、つまり生き物であると いうこと、鳥や蝶などの虫たちが集まってくる こと、草の香りがする、ということも知ってい ただきたい。これを、子ども達が使ってこそ校 庭だと思います。 今日はじめて校庭を見て、「これで芝生かよ」 と思われる方もいるでしょう。「いやいや、こ の時期にこの芝生は立派だ」と思われる方もい らっしゃるかもしれません。自分たちは、あく までも校庭の芝生、子ども達が使っての芝生を 目指しています。ダメになったら補修しようと。 その補修の仕方は芝生の先生に教わりながら自 分たちも身につけてやっていこう。このような 姿勢でここまでやってきています。 3 月 6 日フォーラム当日 3 「地域コミュニティが合意形成のカギ」 目黒区立下目黒小学校 目黒区で 2 校目の校庭芝生化で、区として は単に芝生を植え付けるだけではなく、地域 住民も参加した維持管理組織で芝生を育成し ていくことを条件にしての実施である。もと もと、目黒区では先行の事例解析を行ってか らと考えていたが、学校からの要望に加えて 東京都からの要請もあり実施にいたってい る。 目黒区には学区単位で「住区住民会議」と いう住区内の個人をはじめ、町会、自治会、 PTA、商店会、社会教育関係団体など地域で 活動している団体の幅広い参加による、自主 的なまちづくり組織が存在しており、この協 力が得られたこと、保護者の方々、親児の会 の賛同が得られたことが大きかったという。 本校は 100 年を超える歴史を持ち、もともと 地域の協力を得やすいという事情もあったの かもしれない。地域開放団体の了解について は、近くに区のスポーツ施設や小学校もあっ たことが追い風になった。 工事期間中は体育館と屋上を利用すること などで、長期間の工事期間を過ごしている。 最近では短期で利用可能な工法も出てきてお り、工事期間の問題は徐々にクリアされてき ているので、今後に期待したいとのこと。 校長先生は、平成 18 年 4 月、土のグラウ ンドの学校から着任され、当初、芝生は小学 校のグラウンドにあまり向かないのではない かと考えていたという。ところが 7 月に芝生 開きの会を行い、本格的に使用を開始してみ ると、芝生がきっかけとなり児童が外に出て 遊ぶ機会が増えたことに好印象を抱いた。芝 生には柔らかさ・弾力、そしてある意味での 清潔さがある。健康教育につなげるというこ とで、芝生の活用に積極的に取り組んでいる 最中だ。 地域の方が学校を訪れて、芝生を眺めなが ら「本当に良いですね」と言ってくれるとい う。トンボや虫などがくるようになったこと、 ほこりが立たなくなったこともメリットとし 4 て挙げられる。 課題としては、日曜日の校庭開放を行って いないので、利用団体から利用回数増の要望 があること。これは芝生管理委員会の方針で 週に 1 日は休ませるという方針を出している ので今後調整していく必要がある。 悩みは、利用開始してまだ 1 年未満でもあ り、今の状態で大丈夫なのかどうかの判断が つかない点。常緑の良い状態で維持するのか、 ある程度剥げても仕方がないと考えるか、ど のように兼ね合いを求めるかという課題があ る。 管理費用は概算で年間 250 万円程度と考え ている。維持管理作業の内容としては、芝刈 りは週 1 回土曜の午前中に実施。除草は子供 を含めて体育の授業の始まる前や、昼休みに ローテーションで行っている。芝刈りは電動 芝刈機 2 台、手押し 8 台でボランティアが行っ ているが乗用の芝刈り機が欲しいとの意見が 出ている。 本校の芝生化面積を児童数で割ると 6.4 ㎡ / 人で、かなり厳しい部類に入る。芝生の維 持管理についてはこれからが勝負になるだろ う。 インタビュー 大高 優 校長 大石 光一 教育委員会 学校施設計画課 取材:都市緑化技術開発機構 「条件が上手く整ったことで成立した理想的なケース」 中野区立若宮小学校 中野区では教育ビジョンを策定し、その目 標を達成するための実行プログラムとして 10 大プロジェクトを設定しているが、その中の 学校環境の整備の一環として校庭芝生化を位 置付けている。そこへ東京都から平成 16 年 12 月に話があり区から各校へ打診したとこ ろ、PTAや自治会、スポーツ団体等の協力 が得られる若宮小学校に決定した。 の意見である。 芝生化を検討する過程では検討会の開催や また、芝生化工事に合わせて散水設備(ス 他校への見学も実施し、区内にあった実績の プリンクラー)や芝刈機等の管理機械、芝用 ある体育施設業者に相談することで、芝は の保温シート(効果が目に見えてわかるとい ティフトン 419 をベースにペレニアルライグ う)の整備がなされており、ハード面の環境 ラスのオーバーシードをおこなうことに落ち も整えられている。維持管理費用は水道代や 着いた。芝の生育過程を生きた教材として取 消耗品を含めて 1000 円 / ㎡を見込んでおり、 り入れたいという意向と、芝の根をしっかり 教育ビジョンの中のプロジェクトとして来年 と根付かせるという見地から、張芝工法では 度分までは予算確保してあるものの、今後維 なく芝苗を植え付ける工法が採用された。ま 持管理費をどう維持していくかが課題だとい た、若宮小では校庭全面を芝生化するのでは う。 なく、芝生の外周部や校庭の一部にダスト舗 他校の反応はという問いには、まだまだ手 装を残しているため、半年以上にもおよぶ工 を挙げる学校が少なく、その理由として、他 事~養生期間中も児童に大きなストレスを感 校は若宮小ほど条件が整っていないこと、芝 じさせずに済んだようである。全校児童で手 生の良さが伝わっていないこと、維持管理が 作業による植付けを手伝うなど、自分たちの 大変だと思われていることがあげられた。校 芝生という意識をもってもらうための工夫も 庭利用団体とのかかわりでは、芝生の状態が 行なっている。 悪い場合でも利用を望まれることがあること 若宮小では、「自分たちで使うものは自分 が悩みである。また、通年利用を目指してオー たちで管理する」ということで、できるだけ バーシードを行っていても冬期間は芝生の回 子どもたちに芝の維持管理を任せる方針であ 復が遅くなるために 1 月は土日の開放は行わ り、安全指導を徹底することで、芝刈りを掃 なかったが、利用団体からの開放の要望はあ 除の時間に行っている。掃除の当番として芝 り、これも課題の一つである。本校は児童数 刈りは大人気の作業だ。5、6 年生が指導して と芝生化面積、技術のある施工業者、芝生の 下級生たちに教えると子どもたちも興味をも 選定、学校の熱意、地域の協力など条件が上 ちやすいという。 手く整ったことで成立した理想的なケースと 施肥は校務主事にお願いするほか、グランド なった。 キーパーが週 1 回程度訪問してアドバイスし ている。「もちろん 1 人で行うというなら大 変だが、皆でやれば管理作業自体で大変と思 インタビュー 中澤 保夫 校長 取材:都市緑化技術開発機構 うようなものはない。」というのが校長先生 5 「屋上緑化と校庭芝生化を連携して積極活用」 杉並区立堀之内小学校 堀之内小学校は杉並区での芝生を用いた 屋上緑化の最初の事例校。「天空の野原」と 名付けられたこの屋上緑化の成功が背景に あり、「屋上も緑、校庭も緑」を目指して校 庭の芝生化を区に要望を出した。環境教育・ 健康教育に役立てたいという思いがあった。 維持管理の地元のサポートや利用団体の 調整については、この地域はもともと理解 があり、従前からの打診を行っていたこと、 利用団体にも制限はできるだけ少なくする 方針をとったことで、「芝生化は必ずプラス 面もある」ということで納得してもらった。 現状、土日の利用団体は少年野球と少年サッ 能性も考慮に入れてのことだという。 カーで、少年野球は月に 1 ~ 2 回程度の利用。 予想になかった効果として、G ボールを 少年サッカーは土日と水曜日に利用してい 30 個程度購入したところ子どもたちに人気 る。また近隣に一般開放を行っている。 で、次回のスポーツテストなどで効果が確 当初の 1 年は維持管理を学校中心で行う 認できるのではないかと期待している。ま ことにした。土日には利用団体によるディ た、芝生は仲間作り、ストレスの発散に効 ボット埋めなどを分担してもらっており、 果がある、環境的には虫やトンボ、鳥が集 今後は芝刈りなどにも参加を呼び掛けたい まってくるようになったこと、地域の方が という。この 3 月で利用開始して 1 年にな 学校に来て芝生の上で過ごす機会ができた るので、年間管理の大きな枠が見えてきた など癒しの効果もあるという。その他とし ところ。維持管理に芝生に関する専門家の て、屋上の芝生の存在によって教室の中の 意見・指導は不可欠という。 温度が 2 ~ 3℃違うデータが出ている。逆に 工事は平成 18 年の 1 月から 2 月の実質 困ったのは猫の糞で、これがなかなか防ぐ 2 ヶ月。工事の短期化を図るためにティフト ことができない。他校へのアドバイスとし ン 419 にペレニアルライグラスをオーバー て、乗用式の芝刈り機は使用に制限がある シードしたビッグロール芝を張った。約 1 ために、自走式の芝刈り機を数台用意する か月の養生期間を経て 3 月上旬に利用開始 方が良いとのこと。 し、通常使用のほか運動会を 6 月初旬に、 12 月の訪問ということと上記のような管 芝生の上での展覧会を 11 月に行った。 理方針から、芝の傷みも見うけられたが、3 利用にあたっては特段の制限は設けず、 月には寒地型種子を播いて、4 月には緑の状 傷んだら傷んだ分を補修して戻すという方 態を復活させ、2 年目も何とかできるという 針。部分養生を行ったのは夏休み期間のみ 感触をもっている。 で、敢えて利用制限をせずに今後の利用ラ インを見出すという方向で、区にも納得し 6 インタビュー 松本 高晴 校 長 てもらっている。これは、今後職員の異動 永井 義明 副校長 などで芝生校庭の利用方針が変更される可 取材:都市緑化技術開発機構 「課題は専門家の不在」 板橋区立弥生小学校 平成 17 年度に東京都が芝生化の補助事業 を行うということで、16 年 12 月に区から希 望する学校の打診があった。本校は、平成 17 年 1 月に町会と交渉し、維持管理組織を組織 することが可能になったことで手をあげ、校 庭の芝生化を実施した。 町会との話し合いでは芝生化のメリットと して、運動が盛んになることなどの教育的効 果、けがの減少、砂ぼこりの軽減などをあげ て理解をもとめた。 校庭に深さ 30cm まで砂を入れ、ロール芝 を張った。使用した芝生「エルトロ」(改良 ていない。次年度は期間を限定して開放する 野芝)は病害への強さや踏圧・擦り切れに強 予定。 いと聞き選択した。工事着工より 9 月まで本 管理費用は 40 万円くらい。校庭のライン 格使用できなかったため、体育館などを利用 引きに芝用ペイントを一度使うと 2 万円くら するようにしたが、遊び場の確保という点で いかかる。また、刈草の処理が環境負荷を上 は子どもたちに負担をかけてしまったと感じ げているのではないかという懸念がある。 (板 ている。 橋区の全小中学校、幼稚園は ISO14001 認証 芝生化のメリットとしてあげられたのは、 をうけている。) 虫や鳥が多くなったことで子どもの関心が高 サッカーゴール前や、中央部には降雨時に くなったこと、けがが減ったこと。そして、 水が溜まる。降雨などで芝生が緩んだ状態に 子どもたちがよく遊ぶこと。これは芝生化以 なったときの利用などを見極める役割が必要 前から勤務している先生方からも、よく遊ぶ だが、この判断が難しい。都に要望したいこ ようになったという声を聞いている。一方、 ととしては、学校としては現在造成した業者 休み時間に、芝生になっても読書や読みきか の助言を受けているが、必ずしも芝を専門と せに参加する子もいるので、外に出ない子も していないようなので、競技場等の芝生の維 いることも承知しておく必要がある。 持管理をしている専門業者のアドバイスが欲 遊びの種類が変わったことも変化の一つ。 しいということである。 ボールがバウンドしなくなり、サッカーなど 取材時、芝生が冬季休眠していたが、それ が多くなった。場に応じての工夫があるので、 ほど傷んではおらず、春には十分に回復する これから、より効果的な芝生の利用について 状態だった。比較的回復力の強い芝生である 探っていきたい。 ということ、児童数がそれほど多くないこと 校庭がダスト舗装のときには、土曜日・日 が、その要因だろう。 曜日の午前中が少年野球に貸し出しを行い、 インタビュー 池田 光子 校 午後は一般開放を行っていたが、現在(平成 18 年 12 月)は原則的には校庭開放を実施し 長 杉本 昌彦 副校長 取材:都市緑化技術開発機構 7 校庭芝生化事例集 01. 港区立港南中学校 施 設 名 港区立港南中学校 敷 地 面 積 19,822 ㎡ 所 在 地 港区港南4-3-3 生 徒 数 運動場面積 6,441㎡ 97名 平成19年現在 施工 ・平成16年港区による施工。(2期工事、1期6~8月、3ヶ月養生、2期12~3月) ・芝とダストの境にしきりがあるが段差は少ない。 効果 ・運動会では照り返しが少なく、すごしやすい。 ・運動会で、保護者が芝生上で食事。評判はよい。 ・砂ぼこり防止の効果はあるが、近隣が民家でないので以前から苦情はなかった。 課題 ・特段の養生はしていない。 ・維持管理は業者に委託している。月1回の作業。校内での維持管理は、人員的に 無理である。 ・サッカー部には形状的に違和感あり。芝がよく伸びる時期はバウンドが変わる。 業者に連絡して、早めに芝刈りの作業を実施してもらっている。 感想・意見 (学校)学校の仕事は増えたが、管理を業者に委託しているので学校の負担は少ない。 (教職員)生徒が日常、授業をする場所なので、芝生の衛生管理には細心の注意を払っ ている。 (保護者)緑がきれいで喜んでいる、好意的に受け取られている。 (校庭使用団体)固定的に利用している団体はなく、野球・サッカーなど部活のないときに 貸し出し。業者のアドバイスで冬期には貸し出しを控えるようにした。 アドバイス 理想形状 その他 8 ・中学校では部活があるので校庭全面の芝生化は難しい面がある。 ・使用目的によって形状は工夫したほうがよい。 ・生徒数97人(1年29人、2年33人、3年35人) ・生徒数は少ないが、隣接の港南小学校が400人で学校が狭い。中休みは小学生が 校庭を使用。中学生は昼休み、部活で校庭を使用。 ・6月初旬に小学校運動会。中旬に中学校の運動会。その割に傷みが少ない。 ・校舎地下に貯めた雨水を散水。今年は雨が少なく、底をついた。 調査日時 2007年6月 芝生化の概要 芝生化の面積 3,154㎡ 芝生化率 49.0 % 芝 生 化し た 場 所 校庭(トラック等を省くほぼ全面) 平 面 図 施 工 年 平成16年度 平成16年6月~8月 芝生の種類・工法 野芝、オーバーシードなし (断面図) (平面図) 緑色スクリーニングス +石灰ダスト 断 面 概 略 図 石灰岩ダスト 改良野芝 50 トラック 砕石 砕石 100 150 港南小 校舎 客土 100 港南小体育館 30 40 フィールド 港南小校庭 港南小 仮校舎 港南小 校舎 砂場 グランド 港南中 体育館 中庭 港南中 校舎 芝生維持管理の概要 管 理 体 制 管 理 機 材 委託業者 施 肥 委託業者により実施 スプリンクラー 除草剤、殺虫剤等の使用 委託業者 養生期間・補修等 特段の規制なし 冬期の校庭貸し出しは業者の指導を受けて 控えるようにしている。 学 校 開 放 部活優先 野球・サッカー等は月に1回程度 維持管理用機材所有なし(業者) 散 水 ・ 水 源 適時 運動部顧問・生徒 雨水使用(校舎地下に貯水タンク設置) 芝 刈 り 委託業者により実施 除 草 ↓雨水用パイプ 9 校庭芝生化事例集 24.足立区立扇中学校 施 設 所 在 名 地 足立区立興本扇学園(扇中学校) 敷 足立区扇3-18-14 生 地 面 徒 積 15,763.4㎡ 数 運動場面積:8,374㎡ 348名 平成18年現在 施工 ・校庭の全面改修に併せて実施。 (平成17年6月から翌年2月末) 効果 ・見た目の心地よさ。 ・休み時間、7~9年(中学生)より5・6年生のほうが芝の上でよく遊ぶ ・(児童生徒の憩いの場) ・運動会の昼食を芝生の上でとることができた。土の上より好評。 課題 ・施工後の養生期間、中学生なので入らないというきまりはよく守れた。 ・使用期間は特段の規制をしていないが、スパイクは禁止している。 ・維持管理は用務主事が行う。専門家のアドバイスもなく管理体制に不安あり。 感想・意見 ・区内で有数の広い校庭をもっている。1人で植栽関係の世話をしているので 十分な管理が続けられるか不安はある。 教員には負担を掛けないようにしている。 アドバイス ・校庭が広く、生徒数も多くないため冬期(養生期間中)は立ち入らないと いうきまりも守られている。冬期に利用しなければ夏の草刈だけの管理 (梅雨以降10月まで週2回程度)の世話ですむ。 ・乗用の芝刈り機は刃を出さずに運転すると校庭の枯葉の掃除に使えて大変便利。 理想形状 ・現状でよし その他 ・地域での管理体制を作らず基本(50%)の補助 ・中学校では部活があるので校庭全面の芝生化は難しい面がある ・生徒数5年92、6年96、7年(中1)58、8年(中2)60、9年(中3)42、計348名 (平成18年度より小中一貫教育の実施にともない、隣接の興本小学校より 5,6年生が異動してきた。) ・年に一度地域の避難訓練がある。仮設トイレが校庭に格納されているので 芝をいためないように気を使う。 54 調査日時 2007年6月 芝生化の概要 芝生化の面積 1,440㎡ 芝生化率 17.2% 施 工 年 平成17年度 平成17年6月~18年2月 芝 生 化した場 所 校庭 外周部 芝生の種類・工法 張り芝ティフトン419 平 面 図 (断面図) (平面図) 断 面 概 略 図 洗い砂+土壌改良剤+肥料 10cmの深さまで、 土の入れ替えはなし。 校舎 グランド 砂場 芝生維持管理の概要 管 理 体 制 用務主事、再雇用 施 肥 なし 管 理 機 材 乗用1台 電動1台 移動式スプリンクラー5台 除草剤、 殺虫剤等の使用 なし 散 水 ・ 水 源 適時 養生期間・補修等 冬の間は、芝生の上での活動は控えるように 生徒に働きかけている。立ち入り禁止など 特段の規制はしていない。 除 適時 利 用 時 間 など 放課後クラブ活動 適時 学 校 開 放 土曜日に部活のサッカー。 日曜日日中は野球、夜間にサッカーの団体利用 芝 草 刈 り 55