...

1月号 - 石油エネルギー技術センター

by user

on
Category: Documents
99

views

Report

Comments

Transcript

1月号 - 石油エネルギー技術センター
CONTENTS
■ 年頭に寄せて
■ 特 集
1
◎調査報告
バイオディーゼル燃料の流通過程における
品質安定性等に関する調査
IMO船舶用燃料油硫黄分規制強化による
我が国石油産業への影響に関する調査
3
8
■ トピックス
第4回 日韓石油技術交流セミナー開催
2008 日本―中国―韓国 石油技術会議開催
15
17
2009.1
年頭に寄せて
理事長 西尾進路
皆さん、明けましておめでとうございます。
旧年中は、当センターの事業運営に対し、賛助会員をはじめ関係者の皆様には多大な
ご支援・ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。本誌新年号の刊行にあたり、一言ご
挨拶申し上げます。
さて、昨年は、米国発の金融危機が雇用・所得環境、個人消費、企業収益等の実体経
済に波及し、世界的な景気後退が進んだ1年でありました。我が国経済も欧米景気の
低迷長期化、円高、株安等で景気が急速に悪化し、特に、輸出型産業においてはかっ
てない経営合理化策が打ち出される等、国民経済への影響が長期化の様相を呈してい
ます。石油業界に関しては、昨年7月に原油価格が市場最高値を記録し、その後、急
落する中、国内製品需要が大きく落ち込む等、かつてない厳しい事業環境への対応が
迫られております。
また、環境問題に関しましては、温暖化対策に係る京都議定書の第一約束期間の開始
とともに、7 月の洞爺湖サミット、12 月のCOP14と国際的枠組づくりに関して先
進国と新興国・途上国との間の議論が活発に進められました。また、我が国でも排出
権取引制度の試行がスタートするなど、具体的な取り組みが開始された年でもありま
した。
2009.1
こうした中で、当センターを取り巻く環境も大きく変化いたしました。
昨年 12 月、
新公益法人制度に係る新たな法律が施行されたことに伴い、
当センターは、
特例民法法人(特例財団法人)となり、向こう 5 年以内に新たな法律に基づく法人へ
移行することが求められることになりました。
また、政府の支出抑制等の動きを受け、公益法人向け補助金予算の大幅な削減等の措
置が講じられ、今後、当センターの事業規模も縮小を余儀なくされる見通しとなりま
した。
一方で、石油に関する技術開発事業を主とする当センターにとりましては、昨年の総
合資源エネルギー調査会でのエネルギー供給構造高度化に向けた制度設計の議論にお
いて、石油の高度・有効利用の分野で適切な措置が必要であるとの指摘がなされたこ
とは、今後の事業を進めるうえでの重要なファクターであると考えております。
こうした環境変化に対応すべく、当センターは取り組むべき事業の将来像の検討に着
手しております。具体的には、設立以来当センターに蓄積されてきた技術のノウハウ・
資産の分析、内外から寄せられる期待・要請等を踏まえ、今後、当センターとして実
施する事業分野の検討や社会的ニーズに迅速かつ的確に対応し、安定的かつ強靱な運
営を確保するための体制の検討等を鋭意取り進めているところであります。
本年は、当センターを取り巻く内外の諸情勢や環境変化を的確に捉え、将来を見据え
た運営基盤の整備に係る検討を進めるとともに、石油に関する技術開発事業を中心に、
調査・情報収集事業につきましても、引き続き着実に推進していく所存であります。
具体的には、原油の重質化への対応、非在来型化石燃料の有効利用等に係る革新的な
石油精製等技術開発、および「CO2 削減」
・
「燃料多様化」
・
「排ガス低減」の同時達成を
目指した自動車・燃料利用技術開発につきましては、所期の目標達成を目指して、各
研究室、関係者とも連携を強化しつつ、一層の効率化を図り、着実に進めて参ります。
また、石油業界の有する豊富な技術、設備等を活用した水素製造・利用に関する技術
開発、燃料電池自動車の早期導入・普及に必要な水素供給インフラに関する基盤研究
等の分野においても、積極的に事業を推進していく所存です。 さらに、技術開発事業と並行し、産業事故防止のための安全基盤整備に係る調査研究
の推進、欧米およびアジアの政府・石油関連の研究機関等との技術交流、情報収集を
通じた連携の強化等の事業につきましても、各方面から寄せられる要請を踏まえ、着
実に成果を挙げていきたいと存じます。
賛助会員をはじめ関係者の皆様には、引き続き当センターの事業運営に対して倍旧の
ご支援とご協力をお願い申し上げますとともに、皆様のますますのご健勝とご多幸を
祈念し、私の年頭にあたってのご挨拶といたします。
特集
調査報告
バイオディーゼル燃料の流通過程におけ
る品質安定性等に関する調査
1.調査の背景
1.調査の背景
輸送用燃料におけるバイオマス由来燃料の導入に向けた方策の一つとして、バイオディー
ゼル燃料(BDF)の軽油との混合利用が挙げられています。導入に向けての環境整備として、
平成 18 年 6 月の総合資源エネルギー調査会燃料政策小委員会において BDF 混合軽油の規格
案が取りまとめられ、平成 19 年 1 月 15 日に「揮発油等の品質確保等に関する法律(品確法)」
施行規則の一部を改正する省令が公布(平成 19 年 3 月 31 日施行)されました(表1)。また、
BDF を軽油に 5%まで混合することを前提とした 100% BDF(ニート BDF)の規格につい
ては、自動車技術会規格(JASO M360)をもとに、平成 20 年 2 月 20 日に日本工業規格(JIS
K2390)が制定されました。
BDF は、その主成分が脂肪酸メチルエステル(FAME)であることから、軽油に比べて、
①ゴム・樹脂材料の膨潤・劣化など材料への影響が大きい、②熱などの影響により酸やスラッ
ジが発生し品質が劣化し易いといった化学的特徴が指摘されています。しかし、流通過程に
おける BDF 混合軽油の品質安定性、設備への影響等については、十分な知見がない状況でし
た。
このような背景のもと、当センターでは、経済産業省資源エネルギー庁からの委託を受け、
平成 18、19 年度の 2 年間で BDF の流通過程における品質安定性等に関わる調査事業を実施
しました。
表1 品確法の BDF 混合軽油の規格値(平成 19 年 3 月 31 日施行)
項目
既存項目
BDF を混合した軽油
BDF を混合しない軽油
0.001 質量%以下
0.001 質量%以下
45 以上
45 以上
360℃以下
360℃以下
5.0 質量%以下
0.1 質量%以下
トリグリセリド
0.01 質量%以下
0.01 質量%以下
メタノール
0.01 質量%以下
-
0.13 以下
-
0.003 質量%以下
-
0.12 以下
-
硫黄分
セタン指数
90%留出温度
脂肪酸メチルエステル
追加項目
酸価
ぎ酸、酢酸、プロピオン酸の合計
酸価の増加(Δ酸価)
2009.1
2.調査事業の内容
この事業においては、品確法の BDF 混合軽油の規格に基づいて、BDF 混合軽油(B5)の製造、
輸送から給油所における貯蔵等の実使用を想定した流通過程での品質上および安全上の課題
の検証を行うとともに、検証中に明らかとなった課題についての原因究明と、対応の方向性
についての検討を実施しました。
図1に、フィールドでの実証試験のフロー図を示します。本事業では、フィールドでの実
証試験を中心に、それを補完するものとして実験室レベルでの基礎実験や最新技術動向調査
を実施しましたが、本稿では、フィールド実証試験の内容を中心に、結果の一部を紹介いた
します。
A給油所(埼玉県)
ローリー輸送
2KL/2週間
定期受入タンク
(2KL/2週間)
軽油
年間貯蔵タンク
(定期受入なし)
B給油所(岐阜県)
B5
ニートBDF
定期受入タンク
(2KL/2週間)
B5の製造・貯蔵・出荷
B5のSS地下タンク貯蔵・払出
図1 フィールド実証試験フロー図
3.フィールド実証試験の内容と結果
3.フィールド実証試験の内容と結果
3-1 B5 の製造・貯蔵・出荷における品質安定性評価
B5 の製造に使用するニート BDF は、代表的な国内原料として、廃食用油メチルエステル(京
都市生産品)を使用しました。B5 の製造は、神奈川県の製油所内に設置した混合・貯蔵設備
(通常の石油基材と同様の鋼製地上タンク)でタンクブレンドにより実施し、約 1 年間にわた
り計 7 回の製造を行い、埼玉県と岐阜県の 2 カ所の給油所への出荷を計 25 回実施しました。
この間、各流通段階でのサンプル性状を分析することにより、ニート BDF の品質安定性、
B5 製造時の品質安定性、B5 貯蔵時の品質安定性、ローリー輸送時の品質安定性、給油所地
下タンク貯蔵時の品質安定性を評価しました。
計 7 回の B5 製造および計 25 回の給油所への出荷時の B5 性状は、すべて品確法の規格値
を満たすものでした。
ニート BDF は、製油所での貯蔵中に徐々に酸価劣化が認められましたが、受け入れから 7 ヵ
月間は品確法の規格値を満たす B5 を製造することができました(8ヵ月目に入れ替えを実
施)。なお、品確法の規格項目の中で、酸価の増加(Δ酸価)については、測定値のバラツキ
が大きく、静置状態での B5 のサンプリングにおいて測定値が規格値を超えるケースも認め
られました。品質管理を行う際には、サンプリングや測定方法等について検討が必要と思わ
れます。
3-2 ローリー輸送における品質安定性評価
ローリーでの輸送過程における B5 の品質変化を評価するため、品確法の BDF 混合軽油の
規格値を指標として、製油所からの出荷時およびローリーでの輸送後の給油所での受入時に
おける品質評価を行いました。
その結果、製油所から給油所への輸送過程において、品質変化等の問題は認められません
でした。
3-3 給油所地下タンク貯蔵時における品質安定性評価
給油所地下タンク貯蔵時における品質安定性評価は、埼玉県と岐阜県の 2 カ所の給油所の
実際に使用されていた地下タンクを使用して行いました。各給油所では、通常の給油所にお
1.2
A給油所:Δ酸価の推移
下戸田SS定期受入タンク:Δ酸価推移
B5受入後短期間
でΔ酸価が規格値
外れとなった。
1.0
0.8
タンクをB5にて洗浄後、3ヶ月間
(受入・払出7回)規格値0.12以内
であった。
→B5でのタンク洗浄効果有り。
0.6
0.4
0.2
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
荷卸前
後
0.0
2/1 2/15 3/1 3/15 4/5 4/19 5/10 5/24 6/7 6/21 7/5 7/19 8/2 8/16 8/30 9/13 9/27 10/1110/25 11/8 11/19 12/4 12/18 1/8 1/22
B5タンク洗浄し再スタート
9/27:B5を6KL受入(タンク満量とする)
(B5在庫4KLタンクに受入)
10/11:サンプル採取→循環清掃
10/11:抜き取り
10/11:新規B5受入
フィルター
循環清掃作業車
地下タンク
地下タンク
地下タンク
地下タンク
図2 給油所地下タンクにおけるΔ酸価(酸価の増加)の推移(例)
2009.1
ける地下タンクの在庫の回転数を考慮して、B5 の受け入れと払い出しを一定期間毎に実施し
て、品質安定性の評価を行いました。また、B5 を地下タンクに静置して貯蔵した場合の品質
安定性を評価するために、埼玉県の給油所では受け入れ・払い出しを実施しない地下タンク
も用意しました。
すべての地下タンクは、初回の B5 の受け入れの前に、軽油による循環清掃と清掃に使用
した軽油の抜き出しを実施した上で B5 の受け入れを開始しましたが、B5 への切り替え直後
より、品確法の規格項目の中のΔ酸価が規格値を満たさない値となりました(図2)。
Δ酸価以外の性状については、実証期間を通じて、品確法の BDF 混合軽油の規格値を外れ
るものはなく、問題となる変化は確認されませんでした。
地下タンクにおけるΔ酸価の上昇の原因については、種々検討の結果、通常のタンク洗浄
では除去しきれずに地下タンク内に残存する遊離水等から B5 中に混入する金属イオンが原
因の一つと考えられました。
対策としては、「B5 で地下タンクの循環清掃を行い、清掃に用いた B5 を抜き出した後に、
新規に B5 を受け入れる」あるいは「地下タンクでの影響を考慮して B5 に添加する酸化防止
剤を増添する」ことが有効でした。
検討結果の一例を、図2~4に示します。図2は、B5 によるタンク清掃の効果を、図3は、
遊離水の影響と酸化防止剤(BHT)の増添効果を、図4は、金属イオンの影響を示しています。
2.00
1.80
②精製水との
混合では、
Δ酸価上昇せず
1.60
1.40
1.20
1.00
0.80
0.60
0.40
③BHTの増添により
Δ酸価上昇を抑える事ができる。
①軽油(B0)は、遊離水と
混合・静置後もΔ酸価は
上昇しない。
規格値
(0.12)
0.20
BHT添加量→
0
20
軽
油
軽油
0
20
40
B5
B5
図3 遊離水の影響と酸化防止剤の増添効果(例)
遊離水n=1
遊離水n=2
遊離水n=1
遊離水n=2
遊離水n=1
精製水n=2
精製水n=1
遊離水n=2
遊離水n=1
遊離水n=2
遊離水n=1
遊離水n=2
混合した水→
遊離水n=1
0.00
100
3.50
振とう→静置後のΔ酸価
3.00
2.50
2.00
1.50
Δ酸価規格値:0.12
1.00
0.50
0.00
Fe 2 +
Fe 3 +
Cu 2 +
1 5 0 ppm
1 0 0 ppm
5 0 ppm
0 .1 4
0 .1 0
0 .3 2
0 .2 4
3 .2 6
1 .6 3
0 .0 3
0 .0 4
0 .0 9
0 .0 3
0 .6 2
0 .8 8
精製水への
添加量
図4 金属イオンの影響(例)
4.まとめ
4.まとめ
BDF 混合軽油(B5)の製造、輸送、給油所における貯蔵等の実使用を想定した流通過程で
の品質上および安全上の課題の検証を目的に、品確法の BDF 混合軽油の規格に基づき、フィー
ルド実証試験を実施しました。
その結果、給油所地下タンクでの貯蔵における品質安定性評価において、酸化安定性の規
格項目で規格外が認められました。原因について検討した結果、地下タンク内の遊離水等残
留物より B5 に混入する金属分が原因の一つであると考えられ、対策として、B5 を用いた地
下タンクの循環清掃や酸化防止剤の増添が有効でした。現状の流通系で B5 の品質を維持す
るためには、給油所地下タンクにおける酸化安定性への影響に対して、実状に応じた対応が
必要と思われます。
バイオ燃料が混合された自動車用燃料の適正な品質を確保するために、バイオ燃料を混合
する事業者に登録と品質確認を義務づける品確法の改正が、平成 20 年 5 月 30 日に公布され
ました(平成 21 年 2 月 25 日施行)。
バイオ燃料の普及に向けて、適正な品質の確保は重要な課題です。本調査事業の結果が
BDF 混合軽油の適正な品質確保の一助になれば幸いです。
2009.1
調査報告
IMO 船舶用燃料油硫黄分規制強化による
我が国石油産業への影響に関する調査
1.調査の背景・目的
船舶からの SOx、NOx 等の排出ガスによる大気汚染の防止については MARPOL 条約(海
洋汚染防止条約)附属書Ⅵが発効した 2005 年 5 月より規制が実施されています。現在の規
制値は附属書Ⅵが採択された 1997 年当時の技術水準に基づき設定されているため、附属書
Ⅵ発効後、2005 年 7 月の第 53 回海洋環境保護委員会(以下 MEPC53 と記述)において規
制見直しを開始すること及び検討項目が合意されました。その後、下部機関である「ばら積
み液体貨物・ガス小委員会」で数次にわたり、改正案の審議を行い、2008 年 4 月に開催さ
れた MEPC57 において「船舶用燃料硫黄分の規制を強化する合意案」を含めた附属書Ⅵ改正
案が纏められ、本合意案はさる 10 月に開催された MEPC58 で「MARPOL 条約附属書Ⅵの
改正案」として採択されました。規制案の内容は末尾の表のとおりです。
本改正案に先立つ 2006 年 11 月、国際的なタンカー独立船主団体であるインタータンコ
より、SOx 規制案として『船舶燃料の残渣油(C 重油)使用を禁止し、硫黄分 0.5% 以下の
留出油(軽油相当)に切替える案』が提案されました。我が国石油産業は、舶用重油を年間
約 900 万KL供給しており、IMO で『残渣油(C重油)の使用禁止』等の舶燃料油の硫黄分
規制強化案が実施された場合には甚大な影響を被ることが予測されたため、当センターでは、
平成 19 年度の調査で「IMO 船舶用燃料油硫黄分規制強化による我が国石油産業への影響に
関する調査」を実施しました。本調査報告書は、当初 IMO に提案されていた「2015 年に舶
用燃料の硫黄分を 0.5% ディーゼルへ切り替える案」を前提としてスタディしたものであり、
それに対応した調査内容になっています。
調査方法としては日本全国の製油所約 30 ヶ所を単一の製油所設備とみなした統合LPモデ
ルを構築して将来の石油製品の需給バランスを予測する手法を活用しました。「舶用重油の硫
黄分を低減する場合」、及び「舶用燃料が残渣油(C 重油)から留出油(軽油相当)へ全面的
に切り替わる場合」の各ケースにおいて、石油製品供給全体への影響予測と製品需給解決策
としての設備対応案、設備対応時のコストインパクト(建設費試算、製造コスト)、製油所で
の CO2 排出量増大(予測値)等具体的な我が国への影響について予測しました。
以下調査の内容及び調査結果について報告します。本報告では、船舶燃料としての残渣油(C
重油)を舶用重油、留出油(軽油相当)をマリンディーゼルと表記しています。
2.調査の内容・結果
2.
1 LP モデルによる検討結果
(概要)
日本では現在概略下記数量の船舶用燃料を生産しています。
内航・マリンディーゼル (S 分 1.0%)(留出油)
4.2 百万 KL /年
内航・舶用重油
(S 分 3.0%)(残渣油)
3.0 百万 KL /年
外航船用バンカー
(S 分 4.5%)(残渣油)
6.0 百万 KL /年
ケース 1 : 舶用重油の硫黄分を 0.5% まで低減
ケース 2 : 舶用重油の使用を禁止し、硫黄分を 0.5% のマリンディーゼルに切替え
(1)2015 年基準モデル
現時点では 2015 年の内需を想定した公的な資料が無いため、2007 年 3 月に経済産業省
が発表した 2011 年までの内需見通しをベースとして、各油種の伸び率を 2015 年まで引き
伸ばして 2015 年の内需想定を策定しました。
図 2.1-1 に示すとおり、内需燃料油計で 2006 年対比▲ 14%減となり、このうち白油が▲
9%減であるのに対してA重油は▲ 29%減、C 重油については▲ 59%減と需要が激減する結
果となりました。C 重油の需要減により、重油需要全体の中で舶用重油(内航、外航)が占
める割合も 2006 年の 22%に対して 2015 年には 47%まで上昇する見込みです。
2015年内需見通し
内需計2006
250.0
年の86%
数量(百万KL/年)
200.0
揮発油
ナフサ
ジェット
灯油
軽油
A重油
C重油
150.0
100.0
C重油2006
50.0
年の41%
0.0
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2015
年度
出典:新日石総研作成
図 2.1-1 2015 年内需見通し
(2)ケース 1:舶用重油の硫黄分を 0.5%まで低減する場合
①低硫黄原油調達による対応
重油の硫黄分を低減するために、低硫黄原油の調達で対応する選択肢があります。このオ
2009.1
プションは設備費を抑制するという意味で魅力的なアイデアですが、世界的に低硫黄の南方
原油、西アフリカ原油、北海原油の供給は減少トレンドにあり、将来的に供給原油の高硫黄、
重質化の流れが増大している中では、長期的に安定的な調達は困難と考えられます。原料と
して適した低硫黄原油の産出量は僅か 12%であり、また、世界で産出する原油の 74%が中
重質原油であって軽質原油は 26%しか産出されません。従って、世界各国が低硫黄原油対応
を選択した場合、このアイデアはきわめて実現が困難となり、現実の選択肢としては有り得
ません。
②新規の直脱建設による対応
硫黄分 0.5% の舶用重油製造のために、新たに必要な能力の重油直接脱硫装置(直脱)を
建設し、その脱硫重油を舶用重油製造の材源に回す案です。この場合に必要な設備概要と投
資額は表 2.1-1 のとおりです。この設備投資のため硫黄分 0.5% の舶用重油の製造コストは
大幅に上昇し、後述する通り軽油と同等レベルまで上昇します。このような状況では、一部
の船主は低硫黄重油の使用を止めてマリンディーゼルに切り替えることも予想されます。低
硫黄重油の価格が大幅に上昇すると世界の舶用重油とマリンディーゼルの需給バランスが激
変する可能性があります。
表 2.1-1 舶用重油の硫黄分規制への設備対応内容
想定ケース
舶用重油の硫黄分
を 0.5% へ削減
規制による需要変化
規制をクリアするために 同左の設備の建設
必要な設備能力
①舶用A重油 4.2 百万KL ・直接脱硫装置:
が S 分 1.0% から 0.5% へ切 35 千 BPSD × 6 基
・水素製造装置:
り替わる
600KNm3/ 日× 6 基
②内航舶用重油 3 百万KL
(S分 3.0%)とバンカー重油 ・硫黄回収装置:
6百万KL(S分 4.5%)がS 150 トン / 日× 6 基
分 0.5% 重油に切り替わる
費用
(2015 年)
6,700 億円
(3)ケース 2:舶用重油を使用禁止し、硫黄分 0.5%のマリンディーゼルへ全面的に切り
替える場合
①超軽質原油調達による対応
相対的に重油得率の少ない超軽質原油を調達することで舶用重油の 900 万KL減少に対応
する案です。この場合、日本の全輸入原油の 77%相当量をアラビアンエクストラライト(AXL:
API 39 度)で調達することが絶対条件となりますが、前述したとおり、世界の軽質原油の産
出量が 26% しかない中では現実的な選択肢としてあり得ません。
②新規にコーカー建設による対応
舶用需要のなくなった重油を分解するために新たに必要な能力のコーカー(熱分解装置)
を建設し、重油を分解して軽質のナフサ、軽油とコークスに変換し、コーカー軽油の水添脱
10
表 2.1-2 舶用燃料をマリンディーゼルに切り替えた場合の設備対応内容
想定ケース
規制による需要変化
舶用燃料を重油から 舶用 A 重油 4.2 百 KL
全面的に硫黄分 0.5% (S分 1.0%)
のマリンディーゼルに 舶用重油 3 百万 KL
切り替える
(S分 3.0%)
バンカー重油 6 百万 KL
(S分 4.5%)
の合計 13.2 百万 KL が S 分
0.5% のマリンディーゼル 14.0
百万 KL に切り替わる(注)
規制をクリアするために 同左の設備の建設
必要な設備能力
費用
・ディレードコーカー: (2015 年)
25 千 BPSD × 6 基
7,650 億円
・ナフサ脱硫装置:
4 千 BPSD × 6 基
・コーカー軽油脱硫装置:
6千 BPSD × 6 基
・水素化分解装置:
8 千 BPSD × 6 基
・水素製造装置:
600KNm3/ 日× 6 基
・硫黄回収装置:
100 トン / 日× 6 基
(注)重油 9.0 百万 KL と発熱量等価となるマリンディーゼルの数量は 9.8 百万 KL となるため。
硫を経て硫黄分 0.5% のマリンディーゼルを製造します。この場合の設備概要と投資額は表
2.1-2 のとおりです。この設備投資のため、硫黄分 0.5% のマリンディーゼルの製造コストの
大幅な上昇は避けられません。なお、本報告では生産したコークスは石炭火力発電の代替に
なると想定し、CO2 排出量と投資額の計算には含めていません。
(4)低硫黄舶用燃料油の製造時のエネルギー消費予測
マリンディーゼルへの切り替えの場合、表 2.1-2 に示す新設装置群によるエネルギー消費
に加え、マリンディーゼルを製造するために原油処理が増加すると同時に他の既存 2 次装置
(減圧蒸留装置、水素化分解装置、軽油脱硫装置)の稼動も増加するため、エネルギー消費は
8.0wt% に増加しますが、これは基準ケースの 7.5wt% に比べて 6.3% の悪化となります。
(5)低硫黄舶用燃料油の製造時の CO2 排出量の予測
ケース 1 及びケース 2 での具体的な設備対応の詳細は表 2.1-1 と表 2.1-2 に記載のとおり
ですが、主に水素製造装置が加わることで、どちらの場合も各々 140 万トン、310 万トンと
CO2 排出量は大きく増加します。
(6)低硫黄舶用燃料油製造のコストインパクト:製造コスト、製品価格への影響予測
①製造コストアップ額試算のサマリー:製造コストアップ額の試算結果は表 2.1-3 のとお
りです。
11
2009.1
表 2.1-3 製造コストアップ額試算の分類表
ケース1:舶用重油低硫黄化 ケース2:舶用重油をマリン
(0.5%)
ディーゼルに全面的に切り替え
建設費
KL
TON
用地取得費除き
6,600 億円
7,464 億円
用地取得含み
6,702 億円
7,650 億円
船舶燃料量
9,000 千 KL /年
9,824 千 KL /年
製造コスト
21.0 千円/ KL
25.6 千円 /KL
必要コスト
ROI 10% * 1
28.3 千円/ KL
33.2 千円 /KL
必要コスト
ROI 25% *2
39.3 千円/ KL
44.6 千円 /KL
船舶燃料量
8,460 千トン/年
8,185 千トン/年
製造コスト
22.3 千円/ Ton
30.8 千円/ Ton
必要コスト
ROI 10% * 1
30.1 千円/ Ton
39.9 千円/ Ton
必要コスト
ROI 25% *2
41.8 千円/ Ton
53.6 千円/ Ton
* 1:建設費の 10% を年間税前利益とする
* 2:建設費の 25% を年間税前利益とする
②コストアップ率試算 :価格に対するアップ率は、各ケースにおいて現行のバンカー価
格に対してどれくらいのコストアップ率になるかを試算したものです。試算の際のバンカー
C 重油価格としては、プラッツ紙が発表している「日本の動粘度 180cSt バンカー価格」の
2008 年 6 月積みの平均価格 US$705 / Ton を用いました。
③実行面での課題
(ⅰ)前述の表 2.1-1、表 2.1-2 に記述した装置群を新設する場合、プロセス検討から完成
まで 3 年を要し、加えてこれだけの装置を同タイミングで新設する場合、環境アセスメント
に 3 年程要すると考えられます。従って、6 年程度のリードタイムが必要であり、2008 年
までに方針を決めないと 2015 年までに建設を完了するのは、きわめて困難となります。
(ⅱ)本試算では「既存製油所に隣接して設備を建設する」という想定の下で、試算作業を
行い、用地コストを建設費及び製造コストに加えました。しかし、実際の投資の際には、製
油所に隣接して用地が取得できないケースや飛び地になるケースも十分に考えられ、この場
合は、抜本的見直しが必要となります。
④国際石油製品市場へ影響
マリンディーゼルへの切替えの場合は、重油の余剰が舶用重油の低硫黄化の場合よりも大
12
表 2.1-4 投資コストの回収期間とコストアップ率試算表
( *は @ ¥110/US$ で換算 )
投 資コストの 投 資コストの ケース 1:舶用重油の硫黄分を
回収
回収期間
0.5% に低減
( 定 額 法 ベー
ス)
コストアップ額* 価格に対する
(US$/Ton) アップ率(%)
ケース 2:舶 用 重 油を硫 黄 分
0.5% のマリンディーゼルに切り
替え
コストアップ額* 価格に対する
(US$/Ton) アップ率(%)
① 償却費用のみ
約9年
203
+29
280
+40
②
ROI
10% 見合い※
約6年
273
+39
363
+51
③
ROI
25% 見合い※
約4年
380
+54
487
+69
※投資コストの回収は①の償却費用の他に、ROI 10%、ROI 25%見合いの投資収益をコストに上乗
せして早期回収を図る。
きくなる上、需要が急増する軽油留分のタイト化にも拍車がかかることになります。この結果、
重油価格の暴落と軽油価格の高騰を招く恐れがあります。加えて、世界的に見ると十分な設
備投資を行えない石油精製業者も存在し、このような業者は、製品輸出入(重油をボイラー
用として売ると同時に不足する軽油を輸入する)で対応するか、原油を軽質化して対応する
しかありません。(ⅰ)製品輸出入で対応した場合には重油価格の暴落と軽油価格の高騰を著
しく助長する結果になりかねません。(ⅱ)原油対応の場合には軽質原油価格の上昇と中重質
原油価格の下落を招き原油の軽重格差が拡大します。軽重格差が拡大すると、軽油市況は上
昇し、重油市況は下落しますので、この場合でも輸出入対応と同様の結果が予想されます。
このように、マリンディーゼルへの切替えは、国際石油製品市場の大混乱を招くリスクを
内包していると言えます。
(7)課題 舶用燃料硫黄分規制強化に伴い、以下の課題が考えられます。
① 余剰硫黄問題:世界中で 2 億トンの舶用燃料の硫黄分を 4.5% から 0.5% に低減する
と新たに 8 百万トンの硫黄が副生されますが、2010 年で 5 百万トンの余剰バランス
が見込まれている中で 8 百万トンの硫黄増産の影響は甚大です。
② アジア市場への影響:日本のバンカー市場はアジア圏の 10 分の1の規模なので、単純
に市場規模比較から計算するとアジア圏でも 50 基から 70 基のコーカーが必要となり
ます。CONCAWE(欧州石油環境保全連盟)はアジア圏と同程度の市場規模である欧
州で、50 基から 70 基が必要と推定しており、アジア圏への影響も欧州と同規模にな
ると推量されます。
③ 工期の問題:日本では 6 基のコーカーに加えて 30 基の付帯設備(ナフサ HDS、軽油
HDS、水素化分解、水素製造装置、硫黄回収装置)が必要です。これは、アジア圏で
概ね 360 基の装置が必要になることを示唆しています。一方、アジア圏では中国を中
13
14
NOx
SOx
現行エンジン
(全海域適用)
(ECA&
ECA外海域)
Tier 3
Tier 2
(全海域適用)
(全海域適用)
Tier 1
船舶燃料の種類
(硫黄分別)
(Ocean Sea)
一般海域
放出管理海域
(ECA)
2011
硫黄分4.50%
2014
2016
0.10%
3.50%
2015年1月1日
硫黄分0.10%
2015
2018
2018年
レビュー条項
2017
2019
②規制値:現行規制値
③規制実施時期:いずれかの主管庁がアップグレードの認証をIMOに通報してから1年後の最初の定期検査
❋対象エンジンのうちアップグレードキット(規制に適合させるための改造手法)が認証されたもののみ規制
①規制対象範囲:1990年1月1日以降建造の現存船のシリンダー容積90Lかつ出力5000kW超のエンジン
・ECA:Tier1の80%削減
・ECA外海域:Tier2適用
Tier1の現行規制値(g/kWh)から回転数に応じ15.5~21.8%削減案
1.00%
3.50%
2012年1月1日~
硫黄分3.50%
ECA:バルト海、北海
2013
2020
2025
0.10%
0.50%
2020年1月1日~
硫黄分0.50%
❋硫黄分0.5%の供給可能性
についてレビュウし、困難な場合
は実施は2025年に延期
IMO 第58回海洋環境保護委員会(MEPC58)
で採択された舶用燃料硫黄分規制の内容
2012
2010年7月1日
硫黄分1.00%
1.00%
4.50%
硫黄分
1.50%
2010
・油種(留出油・残渣油)は特定しない。
・当該硫黄分濃度の舶用燃料と同等の効果が得
られる代替技術(排ガス除去装置等)による達成
は認められる。
❋補足
2009.1
心に多くの装置や新しい製油所の建設計画が進行中であり、IMO 規制に対応するため
の全ての設備を IMO 規制のデッドラインである 2014 年末までに完成させることは不
可能です。
トピックス 第4回 日韓石油技術交流セミナー開催
当センターは、韓国石油品質管理院(KiPEq:Korea Institute of Petroleum Quality)と共
催で 2008 年 10 月 29 日、韓国ソウルにて「第4回 日韓石油技術交流セミナー」を開催し
ました。
セミナーには、日本側からは全国石油協会及び当センターから7名、韓国側からは KiPEq、
大手石油会社4社、大韓石油協会、自動車会社等、例年の2倍近い約 70 名の関係者が参加し、
活発な意見交換が行われました。
今回のセミナーのメインテーマは
「バイオ燃料政策、
燃料油の品質管理及び大気環境政策」
で、
日韓双方から、バイオ燃料導入の現状と今後の計画、燃料油品質管理システムの現状と問題点
及び韓国における不正燃料の分析法の検討などについて合計 8 件の発表が行われました。
韓国側からは、
(1)現在韓国内で一般に市販されている全ての軽油にバイオディーゼルが1%混合されて
いるが、今後毎年 0.5%ずつ混合率を増加させ、2030 年には 20% にする計画である
こと
(2)バイオエタノール混合ガソリンは 2007 年 10 月から、国内4箇所の給油所で公務員
などの限定された消費者を対象に試験販売が行われているが、軽油と同様に 2030 年
にエタノール混合率を 20% とする計画であること
(3)石油会社が、大学などと共同で第2世代のバイオ燃料であるバイオブタノールの生産
の検討を開始したこと
などが報告されました。
今回のセミナーを通して、日韓両国におけるバイオ燃料に関する現状と今後の課題を共有
化することができ、今後、更に品質管理や大気環境など多方面での協力関係へと進展するこ
とが期待されます。
なお、来年度の「第5回 日韓石油技術交流セミナー」は、日本にて開催される予定です。
発表資料は PEC ホームページに掲載されていますのでご参照下さい。
【参加者】
日本側:当センター6名及び(社)全国石油協会1名 以上 7 名
韓国側:KiPEq 他 21 団体 約 70 名
主な団体
・石油会社 4 社(SK Energy、GS Caltex、S-Oil、Hyundai Oilbank)
・自動車会社(Robert Bosch Korea M&E、ルノーサムソン、GM 大宇)
・化学、石油化学会社(現代石化、Boworn 化学など)
・公益法人(国立環境研究院、大韓石油協会、バイオディーゼル協会、韓国自動車
工業協会(KAMA))
15
2009.1
【第4回 日韓石油技術交流セミナープログラム】
発表テーマ
発表者
1
韓国の不正石油製品性能評価研究
KIM, KI-HO(KiPEq)
2
日本のバイオ燃料政策動向
IIDA, SHIGEKI(JPEC)
3
韓国のバイオ燃料現況及び見込み
KIM, DUCK-HAN(SK Energy)
4
日本の石油製品の品質基準と流通における品質管理体制
5
バイオブタノールの技術開発動向
CHA, GYU-SOB(GS Caltex)
6
JCAP と JATOP の概要
TAKEDA, HIROSHI(JPEC)
7
PEC 石油基盤技術研究所における自動車燃料研究
TAKAHASHI, KO(JPEC)
8
HPLC を利用した石油製品中の法定識別剤分析
LIM, YOUNG-KWAN(KiPEq)
KiPEq 本部での挨拶
セミナー風景
集合写真
16
ARAKI, KAZUYOSHI
(全国石油協会)
2008 日本-中国-韓国 石油技術会議開催
当センターは、11 月 26 ~ 28 日の3日間の日程で、日本、中国、韓国3カ国の石油技術
の専門家による第二回目の国際会議を中国・海南省三亜にて開催しました。
当会議では、日本、中国、韓国 3 カ国の政府関連機関、企業、大学、学会、石油連盟等の
石油技術専門家が一堂に会し、「製油所の省エネルギー技術」をテーマに 2 日間に亘り 16 件
の発表と活発な討議、さらに第三日目には、昨年から本格稼動に入った新設海南製油所への
サイトトリップと現場での意見交換が行われました。
3カ国間で交わされた意見交換において、「原油・石油製品価格が、市場最高値を記録する
高騰から、一点ここ4年来の低水準への下落といった環境の中で、主要かつ有限な『石油資
源の効率的利用、省エネルギー、環境保護的措置』は、3カ国にとり益々重要となる。」といっ
た観点で一致。「今会議での議論は、今後とも北東アジア全体にとっての大きな意義を有する
もの。」との認識を共有するに至りました。
会議概要
1.主催事務局
・中国:中国石油学会
・日本:(財)石油産業活性化センター
・韓国:韓国石油品質管理院
17
2009.1
2.参加者 52 名
・ 日本:石油各社(新日石㈱、出光興産㈱、昭和四日市石油㈱)、エンジニアリング
会社(日揮)、エネルギー経済研究所、電力中央研究所、石油連盟、
PEC 11 名
・ 中国:中国石油学会(曹副理事長、他)、Sinopec 及び PetroChina の各製油所・
研究所、大連理工大学、華南理工大学、設計・エンジニアリング会社
33 名
・ 韓国:韓国石油品質管理院(李理事長、他)、石油各社(SK Energy、Hyundai
Oilbank) 8名
3.基調講演、一般講演の概要
(1)基調講演-セッションA 3件
・日本石油業界の省エネルギーと地球温暖化防止活動(石油連盟 西川参与)
・現有石油資源の合理的な活用戦略について (中国石油学会 曹副理事長)
・韓国における燃料使用の現状と未来 (韓国SKエナジー 鄭部長)
(2)一般講演 13 件
・セッションB (第一日) 日本3件、中国5件、韓国1件
・セッションC (第二日) 日本1件、中国2件、韓国1件
全講演者と講演テーマは下記表に示します。
(3)海南製油所サイトトリップと意見交換
4.所感
今回の技術会議は合計 3 日間を通して終始活発な討議が行われ、
「製油所の省エネルギー
技術」が、現在の原油価格が高騰一点下落する環境の中でも一貫して、「石油業界におけ
る重要な共通課題」であることが改めて認識されました。3 カ国の最新技術や課題・計画、
さらに政策が絡んだ技術戦略等についての共有化を通じ、三国が協力して取り組むなどの
活動などを今後検討する素地が形成されつつあることと感じています。今後もこのような
交流を通してそれぞれの技術課題・技術レベルを確認し、今後のわが国の関連の政策や戦
略に反映させると共に、協力を通して、北東アジアの健全かつ持続的な発展に貢献してい
きたいと思います。
18
【日中韓石油技術会議プログラム】
「2008 日本-中国-韓国 石油技術会議」 -製油所の省エネルギー技術-
11 月 26 日(水)初日
講演者・団体名
講演テーマ
基調講演
中国石油学会副理事長 曹湘洪
Rational & Full Utilization of Precious Oil Resources
日本石油連盟 参与 西川輝彦
Promotions of the Japanese Oil Industry for Energy
Conservation and Prevention of Global Warming
SKエナジー部長 鄭秉先
The Status and Future Trends of Fuels in Korea
一般講演 : 日本 :中国 :韓国 講演者・団体名
講演テーマ
セッションB .
B-1
応天寧(YING, Tianning)
Intrinsic Energy-saving Refineries
中国(SINOPEC SEI)
B-2
畑間 源一(HATAMA, Genichi)
The Energy Saving in Idemitsu
日本(出光興産)
B-3
李政遠(LEE, Jeongwon)
CDU/VDU Heat Integration
韓国(Hyundai Oilbank)
B-4
劉忠生(LIU, Zhongsheng)
Condensation-Regenerative Thermal Oxidation for Tail-gas
中国(SINOPEC FRIPP) Treating
B-5
石川 和弘(ISHIKAWA, Kazuhiro)
Utilize cryogenic LNG for reducing CO2 from refinery exhausts
日本(新日本石油)
B-6
米治宇(MI, Zhiyu)
Energy-saving technology in RFCC Unit
中国(PetroChina 大慶石化)
B-7
川上 和也(KAWAKAMI, Kazuya) Energy saving by the installation of supplementary fired boiler
日本(昭和四日市石油) in gas turbine
B-8
仵 浩(WU, Hao)
Energy Conservation of China’s Refinery
中国(SINOPEC 華南理工大学)
B-9
厳 鈎(YAN, Jun)
Optimize energy utilization by energy saving technologies
中国(SINOPEC 鎮海石化)
11 月 27 日(木)第二日
講演者・団体名
講演テーマ
セッションC .
C-1
韓志忠(HAN, Zhizhong)
Gas Fractionation Unit in Refinery
中国(大連理工大学)
C-2
昆 潤一郎(KON, Junichiro)
Real Time Optimization and Advanced Process Control for
日本(日揮) Saving Energy of Utility Plant in Refinery
C-3
金哲中(KIM, Cheol-joong)
SK Premium Asphalt Technology
韓国(SK Energy)
C-4
李本高(LI, Bengao)
Petrochemical Wastewater Reused in Cooling Tower System
中国(SINOPEC RIPP)
19
無断転載を禁止します。
20
Fly UP