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マイクロ波送電用フェーズドアレーの現状と課題 Status and Roadmap

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マイクロ波送電用フェーズドアレーの現状と課題 Status and Roadmap
社団法人 電子情報通信学会
THE INSTITUTE OF ELECTRONICS,
INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS
信学技報
TECHNICAL REPORT OF IEICE
SPS2006-01 (2006-06)
マイクロ波送電用フェーズドアレーの現状と課題
篠原 真毅†
久田 安正‡
JAXA SSPS WG4 チーム
†京都大学生存圏研究所 〒611-0011 京都府宇治市五ヶ庄
‡宇宙航空研究開発機構 〒305- 8505 茨城県つくば市千現 2-1-1
E-mail:
†[email protected], ‡[email protected]
あらまし マイクロ波エネルギー伝送技術は宇宙太陽発電所 SSPS のキーテクノロジーであり、既存通信衛星よ
りも高い効率と高い精度のフェーズドアレーが求められている。これまでに幾多のマイクロ波エネルギー伝送実証
実験が世界中で行われてきたが、SSPS が求める技術レベルにはまだ達していない。SSPS 実現のためには マイクロ
波エネルギー伝送技術の現状について、何が成し遂げられ、何が研究課題なのかを把握しなければならない。JAXA
は SSPS 検討委員会を 1998 年より組織し、現在は親委員会と 12 のワーキンググループが検討を行っている。我々
WG4 ではマイクロ波エネルギー伝送に関する調査研究を行っており、2005 年度はフェーズドアレーに関する現状
調査とロードマップ作成を行った。その結果について報告する。
キーワード 宇宙太陽発電所 SSPS,マイクロ波エネルギー伝送,フェーズドアレー
Status and Roadmap of Phased Array for Microwave Power Transmission
Naoki SHINOHORA†
Yasumasa HISADA‡
and JAXA SSPS WG4 Team
†Research Institute for Sustainable Humanosphere, Kyoto University Gokasho, Uji, Kyoto, 611-0011 Japan
‡Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA)
E-mail:
2-1-1 Sengen, Tsukuba-shi, Ibaraki 305- 8505, Japan
†[email protected], ‡[email protected]
Abstract A microwave power transmission (MPT) System which is a key component for the Space Solar Power System (SSPS) will be
required for higher DC-RF conversion efficiency with higher accurate phased array than satellite systems. There were some previous MPT
experiments, but not enough to reach the SSPS technologies. To achieve finale goal of the SSPS, we have to make it clear the present
problems, such as, which technologies have already been proven and which technologies should developed, and so on. In Japan, a committee
for the SSPS has been organized by JAXA (Japan Aerospace Exploration Agency) from 1998. The committee consists of one main steering
committee and 12 working groups (WGs) studying elemental issues for the SSPS. The WG-4, which we belong to, focuses on the MPT
research and technologies to manage and revise technology development roadmap. In FY2005, the WG-4 focused at research of present
status of a phased array and making a roadmap to SSPS.
Keyword Space Solar Power System (SSPS),Microwave Power Transmission (MPT),Phased Array
1. は じ め に
宇 宙 太 陽 発 電 所 SSPS(Space Solar Power
System)は 宇 宙 空 間 で 発 電 し た 電 力 を 地 上 に 無 線
電 力 伝 送 す る 新 し い 将 来 の 発 電 所 で あ り 、安 定 供
給 可 能 で CO 2 排 出 が ほ と ん ど な い 数 少 な い 発 電
方式の一つとしてこれまで全世界で検討が行わ
れ て き た 。無 線 電 力 伝 送 は マ イ ク ロ 波 を 用 い た 方
式 と レ ー ザ ー を 用 い た 方 式 が 検 討 さ れ て い る 。宇
宙 航 空 研 究 開 発 機 構 JAXA で は SSPS 検 討 委 員 会 を
1998 年 よ り 組 織 し 、現 在 は マ イ ク ロ 波 エ ネ ル ギ ー
伝 送 を 用 い た SSPS と レ ー ザ ー エ ネ ル ギ ー 伝 送 を
用 い た SSPS を 検 討 す る そ れ ぞ れ の 親 委 員 会 と 12
の ワ ー キ ン グ グ ル ー プ が SSPS の 検 討 を 行 っ て い
る。
我 々 WG4 で は マ イ ク ロ 波 エ ネ ル ギ ー 伝 送 に 関
す る 調 査 研 究 を 行 っ て い る 。 宇 宙 太 陽 発 電 所 SSPS
ではフェーズドアレーアンテナ及びレトロディレクテ
ィブ方式目標追尾システムが必須であることを前提と
して様々なシステム検討・評価が行われている。しか
し、現状民生用フェーズドアレーアンテナはそんなに
多く存在していない。レトロディレクティブも同様で
あ る 。本 報 告 で は WG 活 動 で 得 ら れ た フ ェ ー ズ ド ア レ
ーアンテナ及びレトロディレクティブの現状の調査結
果 と 問 題 点 の 把 握 、そ し て 今 後 の ロ ー ド マ ッ プ を 示 す 。
2. フ ェ ー ズ ド ア レ ー ア ン テ ナ の 現 状 と 課 題
JAXA で 検 討 し て い る 商 用 SSPS の 送 電 ア ン テ ナ 直
径 は 、 周 波 数 5.8GHz、 10dB ガ ウ シ ア ン テ ー パ を 付 け
て 直 径 1.93km で あ り 、 受 電 レ ク テ ナ は 直 径 2.45km、
ビ ー ム 収 集 効 率 は 96.2%で あ る 。 こ れ は 受 電 レ ク テ ナ
中 心 で の 電 力 密 度 が 100mW/cm 2 以 下 、受 電 レ ク テ ナ 端
で の 電 力 密 度 が 1mW/cm 2 以 下 と い う 条 件 を 満 た す よ
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う に 設 計 さ れ た 。 周 波 数 5.8GHz=波 長 λ 約 5.2cm で フ
・ TDRS (1983) : S バ ン ド , 送 信 19 素 子 /受 信 61
ェ ー ズ ド ア レ ー と す る 場 合 、 素 子 間 隔 を 仮 に 0.75λ と
素 子 , ヘ リ カ ル , RF 出 力 26W
す る と 20 億 素 子 以 上 の ア ン テ ナ 素 子 が 必 要 と な る 。
・ ETS-VI(き く 6 号 )(1994) (S バ ン ド , 送 信 16
素 子 /受 信 19 素 子 , MSA, RF 出 力 1.26W (図
これに対し、現在実用化もしくは実証されているフ
1)
ェーズドアレーアンテナは以下のようになる。
・ IRIDIUM (1997) : L バ ン ド , 100×3 素 子 , MSA
(1) 通 信 衛 星 用 (日 本 ) [1]
・ ETS-VIII (2006) : S バ ン ド , 31 素 子 , MSA,
・
DSCS III (1982) : X バ ン ド , 送 信 19 素 子 /受
・
信 61 素 子 , ホ ー ン , RF 出 力 40W, 10W
ETS-VI(きく6号) 1994
RF 出 力 20/10W (図 1)
・ WINDS (2007 予 定 ) : 送 信 Ku バ ン ド , 受 信
ETS-VIII 2006
WINDS 2007予定
フェイズドアレイ部分
図 1 フェーズドアレーアンテナを搭載した通信衛星の例
表 1 三 菱 電 機 社 製 通 信 用 フ ェ ー ズ ド ア レ ー の 例 (ヘ リ コ プ タ ー 搭 載 用 の み [3])
アンテナ形式
素子数
送信
航空機搭載用
S帯衛星移動電話
ヘリコプター搭載用
衛星通信装置(送信系)
ヘリコプター搭載用
衛星通信装置(受信系)
NeLS搭載用X帯APAA
フェーズドアレーアンテナ
アクティブフェーズドアレーアンテナ
アクティブフェーズドアレーアンテナ
アクティブフェーズドアレーアンテナ
32 (送信/受信共)
536
624
64
2,670∼2,690 MHz
14.00∼14.50GHz
---
7.05±0.025GHz
周波数範囲
受信
偏波
カバレッジエリア
方位
角(AZ)
仰角
(EL)
2,515∼2,535 MHz
---
12.25∼12.75GHz
---
右旋円偏波 (送信/受信共)
直線偏波(偏波面追尾機能付)
直線偏波(偏波面追尾機能付)
右旋円偏波
360°全周
360°全周
360°全周
---
30∼70°(EL=90°まで走査可能)
30∼90°
30∼90°
-52≦θ≦52
アンテナ利得
≧7.1 dBi (送信,入力端子基準)
---
---
≧18.5dBi
送信EIRP
≧13 dBW/ch
(仕様:11.5 dBW/ch)
≧35.0dBW
(仕様:34.0dBW以上)
---
---
受信G/T
≧-15.9 dB/K
(仕様:-16.5 dB/K)
---
≧0.5dB/[email protected]
(仕様:≧0dB/K@12.25GHz)
---
交差偏波識別度
---
17.0dBrms(目標値)
17.0dBrms(目標値)
---
外形寸法
L1300×W450×H120 mm (レドーム含)
約600mm×約500mm×約200mm(送受
別)
約600mm×約500mm×約200mm(送受
別)
約500mm×230mm×8.6mm(アンテナ部)
重量
---
約35kg
約35kg
約0.6kg(アンテナ部)
時期
2001年
2003年
2003年
2000年
メーカ
三菱電機
三菱電機
三菱電機
三菱電機
受信アンテナ
BSU
送信アンテナ
給電部
送信モジュール
ドコモ航空機
ヘリ搭載用衛星通信装置(送信系)
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給電部
受信モジュール
ヘリ搭載用衛星通信装置(受信系)
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Ka バ ン ド , 64-128 素 子 , ホ ー ン (図 1) [2]
(4) 軍 用 (表 2, 図 2)[4]
このようにフェーズドアレーは現在軍用には素子
(2) 観 測 衛 星 ・ レ ー ダ 用 ( 日 本 ) [1]
・
・
TRMM (1997) : 気 象 観 測 用 , Ku バ ン ド , 128
数も数千素子レベルまで到達しており、かなり発達し
素 子 , 154 ス ロ ッ ト 導 波 管 サ ブ ア レ ー , ア ン
て い る と 言 え る が 、民 生 用 に は 1990 年 代 か ら 数 十 素 子
テ ナ 重 量 460kg, 2.1×2.1m, RF 出 力 10W, 総
レ ベ ル が ス タ ー ト し 、2000 年 代 に 入 り 数 百 素 子 レ ベ ル
合 600W
に 到 達 し か け て い る と い う 現 状 で あ る 。 SSPS の 20 億
ALOS(だ い ち ) (2006.1) : 地 球 観 測 用 , L バ ン
素子以上のフェーズドアレーを実現するためには今後
ド , 288×4 素 子 , MSA, ア ン テ ナ 重 量 475kg,
相当の研究を進める必要がある。
9×3.5m, RF 出 力 2.15kW
(3) 地 上 用 (日 本 ) (表 1)
素子数が増加してくると発生する新たな問題に「表
面波ブラインドネス」という現象がある。これは素子
表 2 軍 用 フ ェ ー ズ ド ア レ ー の 例 [4]
図 2 パ ッ シ ブ フ ェ ー ズ ド ア レ ー の 例 (ア メ リ カ ) [4]
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数の多いアレーの場合、ある角度にマイクロ波ビーム
送信する。レトロディレクティブではアンテナの位置
を走査すると突然アレーアンテナ表面に表面波が発生
情報を受信パイロット信号の位相情報として得られる
し、エネルギーが走査方向ではなく表面上を流れてい
為、アンテナの形状にかかわらずパイロット信号方向
っ て し ま う と い う 現 象 で あ る (図 3(a))[5]。 フ ェ ー ズ ド
へ電波を向けることができ、形状がリジットにはでき
アレーではビーム走査角を大きくするとアンテナの相
ない超巨大アンテナシステムでは必須の技術とされる。
互間結合によっていずれにしてもエネルギーが放射さ
ヘテロダインミキサーを用いて位相共役を生成す
れ に く く な る と い う 現 象 が あ る が (図 3(b))[6]、 表 面 波
る レ ト ロ デ ィ レ ク テ ィ ブ 方 式 は 1960 年 代 に は 考 案 さ
ブラインドネスはアンテナ相互間結合とは異なった物
れ て い る [9]。ヘ テ ロ ダ イ ン ミ キ サ ー を 用 い た レ ト ロ デ
理でエネルギーが放射されなくなるという現象である。
ィレクティブ方式は局部発信器の周波数とパイロット
この表面波ブラインドネスは無限サブアレーでも発生
信号周波数をミキシングすることにより位相共役を作
す る こ と が 言 わ れ て お り [7]、有 限 ア レ ー の 場 合 の 発 生
り、同時に周波数変換を行ってマイクロ波ビームを目
条件等、今後の研究が期待される。
標へ向ける方式である。通信用途にレトロディレクテ
ィブ方式が実際に開発され始めるのは半導体技術が発
3. レ ト ロ デ ィ レ ク テ ィ ブ 方 式 方 向 推 定 の 現 状 と
課題
達 す る 1980 年 代 以 降 で あ る 。
様々な研究機関で通信用途のレトロディレクティ
レ ト ロ デ ィ レ ク テ ィ ブ 方 式 と は 、 Van Atta Array[8]
ブ 方 式 が 開 発 さ れ て い る [10]-[20](図 4)が 、有 名 な の は
を基本とする、パイロット信号の方向へビームを向け
ア メ リ カ の UCLA と イ ギ リ ス の Queen’s University で
るためのフェーズドアレー方式である。レトロディレ
ある。これらの通信用途のレトロディレクティブ方式
クティブ方式では受信されたパイロット信号の位相共
は 局 部 発 信 器 と し て 2ω O を 備 え 、到 来 パ イ ロ ッ ト 信 号
役を取ることによりビームをパイロット信号方向へと
ωO とのミキシングで位相共役を生成する方式であり、
(a) 表 面 波 ブ ラ イ ン ド ネ ス 発 生 時 [5]
あまりバリエーションはない。アレーは 1 次元アレー
がほとんどである。このタイプはパイロット信号の周
波数もしくは局部発信器の周波数が不安定になると正
しい位相共役を作り出すことができず、ビーム方向に
誤 差 を 生 じ る 。そ こ で UCLA で は パ イ ロ ッ ト 信 号 自 身
を周波数逓倍して局部発信器の代わりとし、それぞれ
の周波数安定度に寄らずビーム方向を制御するレトロ
デ ィ レ ク テ ィ ブ 方 式 も 開 発 し て い る [20]。
送受分離の問題と方向精度を通信よりも要求され
る SSPS マ イ ク ロ 波 送 電 シ ス テ ム を 目 指 し 開 発 さ れ た
レトロディレクティブ方式の位相共役回路のバリエー
ションは多い。京都大学・神戸大学・三菱電機で開発
し た パ イ ロ ッ ト 信 号 と し て ω t +∆ω , ω t +2∆ω の 非 対
称 の 2 周 波 を 用 い る レ ト ロ デ ィ レ ク テ ィ ブ [21][22][23]、
京都大学・日産自動車宇宙開発事業部で開発した送電
用 マ イ ク ロ 波 の 1/3 の 周 波 数 を パ イ ロ ッ ト 信 号 と し て
(b) 表 面 波 ブ ラ イ ン ド ネ ス 非 発 生 時 [6]
用いたレトロディレクティブマイクロ波送電器
[23][24]、 USEF・ 三 菱 電 機 で 開 発 し た PLL 回 路 を 用 い
た レ ト ロ デ ィ レ ク テ ィ ブ [25][26]、通 信 と 同 じ よ う な ミ
キ サ ー 利 用 の レ ト ロ デ ィ レ ク テ ィ ブ も 東 海 大 学 [27]や
神 戸 大 学 、 Texas A&M 大 学 [28]等 で 開 発 さ れ て い る 。
神 戸 大 学 で は 東 京 大 学 、 ESA と 共 同 で 2006 年 1 月 に
レトロディレクティブ方式に関するロケット実験も成
功 さ せ て い る [29]。
これら位相共役回路を用いたレトロディレクティ
ブ方式に対し、位相検知回路と移相器を組み合わせた
方向推定及びビーム制御方式をソフトウェア・レトロ
図 3 ビーム走査角と反射率
ディレクティブ方式と呼ぶ。レトロディレクティブ方
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(a) Queen’s University (62-66GHz)[16]
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式では送電目標 1 箇所にのみのマイクロ波送電しかで
きないが、ソフトウェア・レトロディレクティブ方式
では複数の目標に対するマイクロ波送電も可能である
という特徴を持ち、ビームフォーミングの際に低サイ
ドローブ化を含めて自由なビーム形成が可能であると
い う 特 徴 が あ る 。 マ イ ク ロ 波 送 電 や SSPS で の 長 距 離
の方向推定にはパイロット信号が用いられ、受信アン
テナで受信したパイロット信号の位相情報を計測して
目標の方向もアンテナ面の角度も同時に計測する。
2つ の ア ン テ ナ で 受 信 す る 信 号 の 位 相 差 検 出 に 関 す
る 理 論 式 は 以 下 の よ う に 与 え ら れ て い る [31]。
∆φ =
(b) Jet Propulsion Laboratory and University of
Michigan (2001) (5.9GHz)[19]
λ
πD cos φ SN
(rad )
(1)
こ こ で ∆φ : 検 出 角 度 誤 差 , λ:波 長 , D:検 出 ア ン テ ナ
間 隔 , φ:到 来 方 向 , SN:信 号 雑 音 比 で あ る 。 D=0.5λ の 場
合の計算結果が図 5 である。目標位置 0 度方向、
SN=20dB と い う 誤 差 が 図 中 で も っ と も 小 さ い 場 合 で
も 4°程 度 の 誤 差 が 存 在 す る 。1 °の ず れ は 、例 え ば 1km
先 で あ れ ば 約 17m に 相 当 し 、20km 先 で あ り 、約 350m
に相当する。このような理論的な検出誤差に加え、ハ
ードとしての検出誤差も加わる。レトロディレクティ
ブ方式を用いた目標位置検出の精度向上のためには
S/N 比 の 向 上 と 素 子 間 隔 D を 広 げ た 際 の ア ン テ ナ 位 置
(c) UCLA (1995) (6GHz)
計 測 精 度 の 向 上 が 必 要 と な る 。素 子 間 隔 D を 広 げ 、目
標位置検出を高精度で行うためには送電アンテナの形
状、各アンテナの位置情報を正確に計測する必要があ
り、そのトレードオフが必要となる。
こ の S/N 比 が 悪 い 場 合 に も 高 精 度 で 目 標 位 置 推 定 を
行うための様々な数値計算アルゴリズムが存在する。
有 名 な ア ル ゴ リ ズ ム だ け で も MUSIC 法 や ESPRIT 法 等
様々なものが存在する。これらのアルゴリズムの特長
を 生 か し 、 SSPS で の 目 標 位 置 推 定 手 法 と し て MUSIC
法 の 応 用 研 究 [32]や RBF ニ ュ ー ラ ル ネ ッ ト ワ ー ク を 用
35
(d) UCLA (2000) (6GHz) [11]
検出角度誤差Δφ(°)
30
25
S/N=5dB
20
S/N=10dB
15
S/N=15dB
10
5
S/N=20dB
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
到来方向φ(°)
図 5 目 標 位 置 と S/N 比 と 検 出 角 度 誤 差 の 関 係 (検 出 ア
図 4 様 々 な 通 信 用 レ ト ロ デ ィ レ ク テ ィ ブ 方 式 (位 相
ン テ ナ 間 隔 0.5λ)
共役回路)
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い た 方 向 推 定 法 の 応 用 研 究 [33] が 存 在 す る 。 文 献 [33]
と性能が下がる。そのため非常に高コストであり、逆
で は 素 子 故 障 が 起 こ っ た 場 合 で も SPS2000 規 模 の
にそれが民生用フェーズドアレーの普及の壁となって
SSPS で あ れ ば 高 い 精 度 で 方 向 推 定 が 可 能 で あ る こ と
いる。将来的にはフェーズドアレーはプリント基板で
が示されている。しかし、これらのアルゴリズムの適
量 産 (回 路 印 刷 )す る の で 量 産 効 果 で 安 く 普 及 で き る と
用 は 基 本 的 に S/N 比 を 下 げ る 効 果 と 等 し く 、劇 的 に 精
いう期待は高いが、そのような指向性を持った研究開
度を上げるものではない。
発はあまり行われていないのが実情である。通信・レ
ーダー用途ではマイクロ波エネルギー伝送ほど高効率
4. マ イ ク ロ 波 エ ネ ル ギ ー 伝 送 シ ス テ ム の 現 状
でかつ大量の素子を用いないため、通信・レーダーの
マイクロ波エネルギー伝送はこれまで「技術的な壁
研 究 開 発 だ け を 待 っ て い て は SSPS 用 高 効 率 フ ェ ー ズ
はなく、すぐにでも実現可能」とされてきた。実際、
ド ア レ ー の 実 現 は 難 し い 。SSPS 用 高 効 率 フ ェ ー ズ ド ア
1960 年 代 以 降 、 様 々 な 実 証 実 験 が 存 在 す る 。 し か し 、
レ ー は SSPS の 研 究 者 が イ ニ シ ア チ ブ を 取 り 、 そ の 成
SSPS へ の 応 用 を 考 え た 場 合 、ま だ 実 現 は 難 し い と 言 わ
果が通信・レーダー用途にスピンオフできるようにす
ざ る を 得 な い 。 最 大 の 問 題 は SSPS で 必 須 の フ ェ ー ズ
べきである。また、このような現状で、次のマイクロ
ドアレーである。フェーズドアレーは 2 節でも述べた
波エネルギー伝送実証実験に直径数 m 級のフェーズド
が 、1990 年 代 に 入 り よ う や く 民 生 技 術 と し て 実 用 化 が
アレー実験を行うことは、効率を求めない精度のみの
始 ま っ た 。SSPS 用 フ ェ ー ズ ド ア レ ー に は 、売 電 す る た
検証実験であれば意義はあるが、効率まで同時に求め
め の 経 済 的 理 由 か ら 高 効 率 (>80%) で あ る と 同 時 に 高
ることはかなりハードルが高い。高効率フェーズドア
精 度 (<0.001°)が 求 め ら れ る が 、高 精 度 は と も か く 、高
レーのための「高効率半導体増幅器の開発」もしくは
効率のフェーズドアレーがまだまだ研究途上であり、
「 低 損 失 移 相 器 +電 子 管 の 開 発 」 と マ イ ク ロ 波 エ ネ ル
最大の課題である。今後は高効率フェーズドアレーの
ギー伝送実証実験は当面切り離して考えるべきである。
安価な高効率フェーズドアレーを実現するために
開発が必須である。
高効率フェーズドアレーを開発する方向性は 3 つ考
(a) パ ラ ボ ラ フ ェ ー ズ ド ア レ ー [58]
えられる。
ー タ で は 1 素 子 あ た り の 出 力 は <1W)
DDS/PLL
現 状 で も 高 効 率 な 高 出 力 電 子 管 (マ グ ネ ト ロ ン
DDS/PLL
PAA#1
や TWT)を 利 用 し 、グ レ ー テ ィ ン グ ロ ー ブ 抑 制 の
INTFC
Unit #1
DDS/PLL
ためにアンテナ素子手前に挿入しなければなら
ない低損失移相器の開発
・
半 導 体 並 の 低 出 力 (<1W)高 効 率 電 子 管 の 開 発
PAA#2
である。さらに別の考え方として
・
DDS/PLL
OSC #2
INTFC
DDS/PLL
OSC #3
INTFC
Unit #3
Unit #2
高出力電子管を用いてサブアレーを構築し、グ
レーティングローブが発生しないようにビーム
制 御 角 を 非 常 に 小 さ く す る (ex. <0.1°)。 半 導 体
PC
・
DDS/PLL OSC #1
高 効 率 半 導 体 増 幅 器 の 開 発 (JAXA SSPS パ ラ メ
System Controller
・
PAA#3
を用いた場合でも出力が電子管に近くなれば同
じ問題を共有する
(b) 間 引 き 給 電 フ ェ ー ズ ド ア レ ー [59]
ことも高効率フェーズドアレーへつながる道である。
高効率フェーズドアレーを開発する際、更に問題と
なるのが経済性である。フェーズドアレーは複数のア
ン テ ナ -回 路 要 素 を 用 い る た め 、同 じ も の を 大 量 に 製 作
す る 必 要 が あ る 。特 に SSPS で は 20 億 素 子 以 上 が 必 要
となるため、1 素子が最高の性能を実現できただけで
は駄目で、それをラインに乗せ、量産をかけてその性
能を維持する必要がある。現在の半導体増幅器を用い
たフェーズドアレーは、まだ素子数が数百以下と少な
いため、ラインで量産するまでもなく、個別開発に近
い。現在の半導体増幅器や移相器は最高性能を実現す
るために個別開発と調整が必須であるため、量産する
図 6 フェーズドアレーの素子数を減らす手法例
-6-
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地上第2段階(1/3)
- 開発 – 1-100W
∼1980年代
地上第1段階
パラボラ送電(高効率送電),
∼500kW
地上第3段階 - 実証 –
中規模フェイズドアレイ
移動体送電
(低効率フェイズドアレイ)
∼ kW
2010年代
高効率フェイズドアレイ
(位相制御マグネトロン, 半導体)
∼100kW
地上第2段階(2/3)
- 実証 – 1-100W
(ビームフォーミング,
効率, 精度..)
小規模フェイズドアレイ
(小型アレイ or パラボラアレイ?)
この段階で両立は難しいか???
→中途半端にどちらもやると
20世紀と同じ
ここまでは この段階が
通信用途と 最も壁が高い
地上第2段階(3/3)
同じベクトル (例 : フェイズド
- 目標追尾 – mW級
アレイの
の開発
民生普及の壁) レトロディレクティブ(精度追求)
2010年代
宇宙第1段階 ∼100kW
中規模フェイズドアレイ
(ビームフォーミング, 精度
+ 構造, 熱, 遠隔制御..)
この段階は比較的容易?
2020年代
2030年代
宇宙第2段階 ∼10MW
中規模フェイズドアレイ
(効率, 建設, 運用..)
宇宙第3段階 MW∼GW
中規模フェイズドアレイ
(ビームフォーミング,
効率, 精度..)
図 7 マイクロ波エネルギー伝送実証実験ロードマップ案
は以下のような方法が考えられる。
ムのロードマップ -
1. 調 整 不 要 な 増 幅 器 、移 相 器 等 を 開 発 す る (ex.現 在
の民生用マグネトロン)
以上のように、マイクロ波エネルギー伝送の現状と
課題をまとめると以下のようになる。
2. 素 子 数 を 減 ら す = 同 時 に グ レ ー テ ィ ン グ ロ ー ブ
・ マ イ ク ロ 波 エ ネ ル ギ ー 伝 送 技 術 は 1980 年 代 ま
抑制手法の開発が必要
でに原理実証は終わっている
3. 不 等 間 隔 ア レ ー の 検 討 → 現 状 で は グ レ ー テ ィ
・
ン グ ロ ー ブ は 抑 制 で き る が 、エ ネ ル ギ ー が メ イ ン
次段階では「高効率フェーズドアレー」実現を
目指すべき
ローブに寄らずサイドローブに流れてしまう
・
しかし、通信・レーダー用のフェーズドアレー
素子数を単純に減らすだけではビームを制御した
が 民 生 化 し た の は 1990 年 代 以 降 で あ り 、い き な
場合にグレーティングローブが発生してしまい、エネ
り「 高 効 率 で 直 径 数 m(数 百 ― 数 千 素 子 )の フ ェ ー
ルギー伝送効率が激減してしまう。これは高出力電子
ズドアレーを開発」は困難
管を用いたフェーズドアレーと同じパラドックスであ
・
「 高 効 率 半 導 体 増 幅 器 の 開 発 or 低 損 失 移 相 器
る。そこで現在提案されている素子数を減らしながら
+電 子 管 の 開 発 」と「 マ イ ク ロ 波 エ ネ ル ギ ー 伝 送
グレーティングローブを抑制する手法には
実証実験」は当面切り離して考えるべき
1. パ ラ ボ ラ ア ン テ ナ を 用 い た フ ェ ー ズ ド ア レ ー で
・
その中間段階で「高効率電子管小規模フェーズ
素 子 数 を 減 ら し 、か つ 1 次 放 射 器 も フ ェ ー ズ ド ア
ド ア レ ー +パ ラ ボ ラ ア ン テ ナ 」の 実 証 実 験 は 可 能
レーとしてエレメントパターンを走査しグレー
性・意義がある
テ ィ ン グ ロ ー ブ 抑 制 す る 手 法 (図 6(a)) [34]
2. 素 子 間 隔 を 広 く し て 素 子 数 を 減 ら し 、素 子 間 に 無
給電素子を配置することで擬似的に素子間隔が
これらを踏まえ、地上実証と宇宙実証も考慮したマ
イクロ波エネルギー伝送のロードマップを図 7 のよう
に提案したい。
狭 い フ ェ ー ズ ド ア レ ー を 構 築 し 、グ レ ー テ ィ ン グ
ロ ー ブ 抑 制 を 期 待 す る 手 法 (図 6(b)) [35]
SSPS の 実 現 は 今 後 人 類 が 生 き 延 び る た め の 解 の 一
つであり、実現に向け今後も不断の努力を要する。特
がある。2 の研究はフェーズドアレー素子数を減らせ
にキーとなるマイクロ波エネルギー伝送技術は近視野
る可能性が高い研究であるが、現段階ではビーム制御
での地上応用も可能であり、今後研究裾野の拡大をは
時のグレーティングロープの抑制に関し検証しておら
か り つ つ SSPS の 実 現 を 目 指 し た い 。
ず、今後の研究が期待される。
謝辞
5. ま と め – マ イ ク ロ 波 エ ネ ル ギ ー 伝 送 シ ス テ
本 報 告 は JAXA SSPS 検 討 委 員 会 の 2005 年 度 活 動 報
告 に よ る 。 WG4 関 係 各 位 に 感 謝 す る 。
-7-
社団法人 電子情報通信学会
THE INSTITUTE OF ELECTRONICS,
INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS
文
信学技報
TECHNICAL REPORT OF IEICE
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