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イタリア - 一般財団法人 日本エネルギー経済研究所
IEEJ:2003 年 4 月掲載 イタリア∗ エネルギー動向分析室 研究員 宇佐美 崇 1.概要(マクロ経済・社会指標等) 正式国名:イタリア共和国 人口:5,784 万人(2001 年) 国土面積:301,268km2 首都:ローマ 民族:エトルリア人、ギリシャ人、ケルト人、ゲルマン人等の混合で明確な定義なし 宗教:ローマンカトリック 国家元首:カルロ・アゼリオ・チャンピ大統領(1999 年∼:任期7年) 首相:シルビオ・ベルルスコーニ(2001 年∼) GDP 総額:1 兆 2,254 億ドル <2001 年>(下表(1)参照) 一人当り GDP:21,185 ドル <2001 年>(下表(1)参照) GDP 成長率:1.8% <2001 年>(下表(2)参照) (1)GDP 総額、人口、一人当り GDP の推移 1998 1999 2000 2001 GDP 総額 億ドル(95 年価格) 11,520 11,703 12,039 12,254 人口 千人 56,979 57,630 57,189 57,844 20,218 20,307 21,051 21,185 一人当り GDP ドル〔95 年価格〕 (出所)「OECD Main Economic Indicators」およびイタリア国家統計局データより作成 (2)実質 GDP 成長率の推移 1998 1999 2000 2001 2002 GDP 成長率 1.8 1.6 2.9 2001 2Q GDP 成長率(前年同期比) 2.3 3Q 1.8 1.8 0.3* 2002 4Q 0.5 1Q 0.1 2Q 0.2 * 推定値 (出所)「OECD Economic Outlook」、 「OECD Main Economic Indicators」より作成 ∗ 本報告は、平成 14 年度に経済産業省資源エネルギー庁より受託して実施した受託研究の一部である。こ の度、経済産業省の許可を得て公表できることとなった。経済産業省関係者のご理解・ご協力に謝意を表 すものである。 1 IEEJ:2003 年 4 月掲載 ● 2001 年の実質 GDP 成長率は 1.8%と、欧州経済、世界経済の減速に伴い、前年の 2.9% を大きく下回った。また、2002 年 2Q では、対前年同期比 0.2%増にとどまっており、 2002 年全体の成長率も対前年比 0.3%増と低い見通しになっている。 2.エネルギー需給の概要 (1)一次エネルギー消費 総消費 伸び率 GDP 成長率 GDP 弾性値 一人当り消費 GDP 原単位* (石油換算百万トン) (%) (%) (石油換算トン) 1999 173.7 3.1 1.6 1.9 3.01 14.84 2000 176.4 1.6 2.9 0.6 3.08 14.65 2001 177.2 0.4 1.8 0.2 3.06 14.46 * エネルギー総消費(石油換算千トン)/GDP(億ドル・95 年) (出所)「BP statistical review of world energy」、 「OECD Main Economic Indicators」等 より作成 ● 2001 年の一次エネルギー消費量は 1 億 7,720 万トン、景気停滞の影響も受け対前年比 0.4%の微増にとどまった。 (2)一次エネルギー需給バランス(2000 年、石油換算百万トン) 石油 ガス 石炭 原子力 その他 合計 4.69 13.62 0.00 − 8.54 26.86 輸入 109.98 47.04 13.23 − 4.38 174.61 輸出 24.80 0.04 0.09 − 0.04 24.97 在庫変動 -1.65 -2.69 -0.58 − − -4.93 一次供給 88.21 57.92 12.56 − 12.87 171.57 国内生産 (出所)IEA「Energy Balances of OECD Countries, 1999-2000」 ● イタリアは、石油・ガス資源に乏しく、そのほとんどをリビア、アルジェリア等から輸 入している。なお、2000 年のエネルギー純輸入量は石油換算約 1.5 億トンであった。 (3)エネルギー源別消費動向(石油換算百万トン) 石油 ガス 石炭 原子力 その他 合計 1999 94.4 56.0 11.6 − 11.7 173.7 2000 93.5 58.4 13.0 − 11.5 176.4 2001 92.8 58.0 13.9 − 12.5 177.2 (出所)「BP statistical review of world energy」 ● イタリアのエネルギー消費の中心は石油・ガスである。1970 年には石油への依存度が 8 割近くであったが、天然ガスの需要が急増し、2001 年現在のエネルギー源別のシェア 2 IEEJ:2003 年 4 月掲載 は、石油 52%、ガス 33%、石炭 8%となっている。 (4)エネルギー資源(2001 年末) 確認埋蔵量 石油 (億バレル) ガス (兆立米) 世界シェア(%) 可採年数 6 0.1 21.7 0.23 0.1 14.8 34 0.0 N.A. 石炭 (百万トン)* (出所)「BP statistical review of world energy」 *石炭の確認埋蔵量は WEC「Survey of Energy Resources 2001」(1999 年末時点)より ● イタリアはエネルギー資源に乏しく、2001 年末時点の確認埋蔵量は、石油 6 億バレル、 天然ガス 2,300 億立米、石炭 3,400 万トンであった。 (5)エネルギー源別生産動向(石油換算百万トン) 原子力 その他 1999 石油 5.14 ガス 15.7 石炭 0.01 − 11.7 合計 32.55 2000 4.69 14.6 0.00 − 11.5 30.79 2001 N.A. 13.9 N.A. − 12.5 N.A. (出所) 「BP statistical review of world energy」および IEA「Energy Balances of OECD Countries 1999-2000」より作成 ● イタリアの 2000 年の国内エネルギー生産量は石油換算 3,079 万トン(対前年比 5.4% 減)、エネルギー源別では、石油 469 万トン(同 8.8%減) 、天然ガス 1,460 万トン(同 7.0%減)であった。 (6)エネルギー輸出入動向 原油 (千トン) 輸入 石油製品 (石油換算千トン) 輸出 ガス (石油換算千トン) 輸入 輸出 輸入 輸出 石炭 (石油換算千トン) 輸入 1998 92,003 410 21,269 22,308 35,533 37 1999 87,891 288 18,339 19,743 40,125 2000 90,410 521 17,800 20,658 46,877 2001 91,073 659 15,739 21,406 2001 年 1月 7,396 41 1,400 2月 7,400 153 3月 7,391 42 輸出 11,205 − 24 11,630 − 40 12,856 − 44,862 49 13,202 − 1,960 4,295 4 763 − 1,463 1,788 3,853 4 1,007 − 1,524 1,701 3,984 4 1,227 − 3 IEEJ:2003 年 4 月掲載 4月 8,134 72 882 2,040 3,804 4 1,009 − 5月 7,425 15 901 1,767 N.A. 4 1,199 − 6月 6,415 61 961 1,512 3,755 4 1,126 − 7月 7,828 57 1,118 1,618 3,176 4 1,017 − 8月 8,082 57 1,501 1,666 2,929 4 951 − 9月 7,575 51 1,751 1,826 3,179 4 1,002 − 10 月 7,747 58 1,556 1,842 3,012 4 1,315 − 11 月 8,200 52 1,079 1,927 4,210 4 967 − 12 月 7,480 − 1,603 1,759 4,835 4 1,621 − 2002 年 1月 8,688 49 1,681 1,896 4,884 4 1,546 − 2月 6,791 42 1,671 1,790 4,532 4 1,617 − 3月 6,241 95 1,340 1,350 4,745 4 1,521 − 4月 7,208 42 1,418 1,668 4,335 4 1,592 − 5月 6,996 − 1,477 1,312 3,980 4 1,548 − 6月 6,728 54 1,122 1,824 3,637 4 1,483 − 7月 8,501 − 1,440 1,610 N.A. N.A. N.A. N.A. (出所) eurostat「Energy Monthly Statistics」 ● イタリアのエネルギー輸入量は、2001 年に原油が 9,107 万トン(対前年比 0.7%増)、 天然ガスが石油換算 4,486 万トン(同 4.3%減)、石炭が石油換算 1,320 万トン(同 2.7% 増)であった。また、石油製品については、輸入が 1,574 万トン、輸出が 2,141 万トン となっている。 ● 月次ベースでは、原油輸入量が 2002 年 1∼7 月期で対前年同期比 1.6%の減少であった。 天然ガス輸入量は、2002 年 1∼4 月期が対前年同期比 16.1%増、6 月は対前年同月 3.1% 増であった※。石炭は 2002 年 1∼6 月期で 47.0%と大きく増加している。また、石油製 品は現在輸出ポジションにあるが、2002 年 1∼7 月期の純輸出量は対前年同期比 68.6% 減となっている。 (※ 2001 年 5 月のデータ不明のため) (7)石油需給バランス(石油換算千トン) 原油 生産 輸入 石油製品 輸出 国内処理 生産 輸入 輸出 消費 1998 5,740 92,003 410 98,260 97,579 21,221 22,308 86,123 1999 4,566 87,891 288 93,853 93,150 18,339 19,743 82,789 2000 4,140 90,410 521 96,516 95,863 17,763 20,658 81,398 2001 3,420 91,073 659 99,030 98,145 15,739 21,406 82,498 4 IEEJ:2003 年 4 月掲載 2000 年 1Q 992 22,566 80 23,011 22,832 5,058 4,878 20,479 2Q 1,063 22,297 140 23,842 23,686 3,635 5,536 19,326 3Q 978 22,086 177 23,408 23,295 4,610 4,527 20,459 4Q 1,107 23,461 124 26,255 26,050 4,460 5,717 21,134 2001 年 1Q 841 22,187 236 23,843 23,508 4,387 5,449 19,716 2Q 796 21,974 148 23,841 23,744 2,744 5,319 19,422 3Q 808 23,485 165 25,226 24,969 4,370 5,110 21,543 4Q 975 23,427 110 26,120 25,924 4,238 5,528 21,817 2002 年 1Q 973 21,720 186 23,972 23,870 4,692 5,036 21,477 2Q 1,168 20,932 96 23,468 23,202 4,017 4,804 20,332 (出所)IEA「OIL,GAS,COAL, AND ELECTRICITY QUARTERLY STATISTICS」 ● 2001 年は原油処理量の増加に伴い石油製品生産量が 2.4%の増加となった。一方で国内 の石油消費量の伸びは対前年比 1.4%増にとどまり、結果、石油製品の純輸出量は対前 年比でほぼ倍増となった。 ● 2002 年第 2 四半期は、原油処理量が対前年同期比 1.6%減少、一方で国内石油消費量は 同 4.7%の増加であった。 (8)石油在庫動向(100 万バレル) 原油 石油製品 合計 日数 1998 36.1 99.2 135.4 69 1999 34.5 95.9 130.4 70 2000 36.9 103.2 140.1 75 2001 33.4 100.5 133.9 69 2001 年 1Q 38.9 101.3 140.2 80 2Q 38.1 93.4 131.5 68 3Q 39.8 95.2 135.0 70 4Q 33.4 100.5 133.9 69 2002 年 1Q 33.8 98.4 132.3 72 2Q 34.6 97.8 132.4 72 3Q 34.6 101.4 136.1 N.A. (出所)IEA「Oil Market Report」 ● 2002 年第 3 四半期の石油在庫量は、原油が 3,460 万バレル、石油製品が 1 億 140 万バ レル、合計で 1 億 3,610 万バレルとなっている。 5 IEEJ:2003 年 4 月掲載 3.エネルギー政策の概要 (1) 政策担当機関・部門・主要VIP ● イタリアの主要なエネルギー政策担当機関は、生産活動省であり、大臣は Antonio Marzano 氏である。また、経済および財政の領域の運営に関する合議機関として、経 済計画閣僚会議(CIPE)が存在、エネルギー政策と経済政策の調整等を行なっている。 ● イタリアでは、1990 年代に地方分権が進み、現在、地域でのエネルギープロジェクト 等は、各地方政府および地方の規制機関が責任を負っている。エネルギー政策において 中央政府に残っている主な役割は以下の通り。 一般的なエネルギー政策・ガイドラインの策定 地方レベルのエネルギー計画の調整 再生可能エネルギー、省エネルギーの推進プログラム 探鉱開発および備蓄に関する政策 エネルギーの輸出入および在庫に関する規制 発電能力 300MW 以上のプラント建設、150kV 以上の高圧送電線建設に対する審 査 (2) 基本政策(全般、エネルギーセキュリティ、市場改革・自由化、環境問題) ● 全般 イタリアのエネルギーに関する基本政策は、国家エネルギー計画(PEN:Piano Energetico Nazionale)として公表されている。PEN は 1973 年の石油危機の影 響によるイタリア経済悪化の経験から、1975 年に第 1 次 PEN が策定され、1988 年に閣議決定された第 4 次 PEN(1991 年施行)が現行の計画となっている。 第 4 次 PEN では、①省エネルギーの促進、②環境の保全、③国内エネルギー資源 の開発、④エネルギー資源の多様化、⑤エネルギー価格の低廉化による生産シス テムの競争力向上、を 5 大目標として掲げている。 ● エネルギーセキュリティ イタリアは、国内資源に乏しく、エネルギー海外依存度が非常に高く、また地理 的条件から中東石油への依存度が高いため、旧来より、エネルギーセキュリティ 問題は重要な課題となっている。 従来の PEN では、石油依存度の引下げを図るため、原子力計画が中心であったが、 1986 年のチェルノブイリ事故の影響に伴う国民投票の結果、1987 年に原子力利用 廃止が決定、全ての原子力発電所が閉鎖されたため、第 4 次 PEN ではその政策を 抜本的に見直している。 現在では、省エネルギー、国内開発促進に加え、エネルギー源の多様化、輸入先 6 IEEJ:2003 年 4 月掲載 の多様化に力を入れている。 ● 市場改革・自由化 EU 指令に基づき、イタリアのエネルギー部門においても近年国有企業(Eni、Enel) の再編・民営化等、規制緩和の動きが加速している。(各産業別の規制緩和の動向 については後述) ● 環境問題 1998 年、CIPE は京都議定書に沿ったガイドラインである「エネルギー・グリー ンペーパー」を承認し、これをもとに策定した「新エネルギー源のエネルギー評 価白書」を承認、新エネルギー政策のガイドラインとしている。 1999 年には電力自由化の暫定措置法であるベルザーニ法の中で、在来型エネルギ ーの発電および輸入を行なう企業は、2001 年からその電力量の 2%相当量を再生 可能エネルギーまたはコージェネレーション設備から供給する義務を負うことが 規定された。 (3) 最近の重点課題と取組み ● 2002 年 7 月 17 日に政府により、一層のエネルギー市場(特に電力・ガス電力部門)の 自由化を進めることを目的とした新たなエネルギー法案が公表された。同法案には、自 由化範囲の拡大の前倒し、2 年以内にガス・電力輸送網の所有会社である Snam Rete Gas(ENI が 60%の株式を所有)や ENEL の権益を系統運用者が 10%以上持つことを 禁止することなどが規定されている。 ● イタリア政府は、2002 年 2 月に、京都議定書受入れ暫定措置法案を閣議で承認、2002 年 5 月には EU 加盟国の間で議定書が批准された。なお、京都議定書におけるイタリア の温室効果ガス削減目標は 2008∼2012 年までに、1990 年水準から 6.5%削減すること となっている。 4.エネルギー産業の概要 (1) 石油産業 ● 石油産業においては、国営企業である ENI が上流から下流まで独占的なポジションに ある(ENI の概要については後述) 。2000 年から石油市場の更なる自由化促進が始まっ ており、政府は ENI の民営化を進めるため保有株(32.3%)の売却を検討している。 ● 国内の原油生産はほとんどないが、国内生産の大部分は ENI が占めており、2000 年の 7 IEEJ:2003 年 4 月掲載 シェアは 87%となっている。 ● イタリアには 17 カ所の製油所があり、2000 年時点で 228 万 2,800B/D の精製能力を持 っている。うち 6 カ所(シェア約 34%)を ENI が所有している。またメジャーでは、 ExxonMobil が 19 万 B/D の製油所を所有しているほか、産油国ではリビア政府が権益 を所有する Tamoil の Cremona 製油所(9 万 B/D)がある。 (なお、Tamoil はイタリア 国内で約 2,000 カ所のガソリンスタンドも所有) ● イタリアのガソリンスタンド数は、他の欧州諸国に比べて多く、政府はコスト削減のた めスタンド数の減少を図っており、 1997 年に 27,100 件あったガソリンスタンドは 1999 年末には 24,600 件に減少している。 (2) ガス産業 ● イタリアのガス産業は、ENI グループが生産、輸入、貯蔵、輸送、配給、販売の各分野 で、支配的な地位にある。 ● 国内生産はにおけるシェアは、2000 年時点で ENI が 88%、残りの 12%が Edison Gas となっている。 ● 天然ガスの輸入については、Snam Rete Gas が 86%のシェア、残りを ENEL(11%)、 Edison Gas(3%)が行なっている。2001 年の天然ガス輸入量に占めるパイプライン輸 入の割合は約 9 割(495.5 億立米)となっており、アルジェリア、ロシアを中心に輸入 が行なわれている。また、国内には LNG 受入基地(Panigaglia 基地)が 1 カ所、Snam Rete Gas が所有しており、2001 年にはナイジェリアとアルジェリアから 52.5 億立米 が輸入されている。 ● 国内の天然ガス輸送パイプライン(約 30,000km)は、Snam Rete Gas がその 96%を 所有しており、実質的に独占状態となっている。貯蔵施設(15.1BCM)についても ENI グループが独占している。 ● 小売部門では、Italgas(Snam Rete Gas が 41%の株式を所有)が 2000 年時点で 31% のシェアを誇っている。また、その他に地方の配給会社が 700 社(うち 40%が公営、 40%が民間、残りは混合)ほど存在している。 (3) 電力産業 ● イタリアはこれまで、国営の ENEL(政府が 68%の株式を保有)が発電から送配電、 8 IEEJ:2003 年 4 月掲載 供給まで一貫して国内の電力供給をほぼ独占してきた。 ● 1997 年の EU 指令の発効に基づき、1999 年に電力自由化を規定した「ベルザーニ法」 が発効した。 同法では、①電力市場の開放を 1999 年 4 月 1 日より 30%、2000 年に 35%、 2002 年に 40%開放、②自由化対象外の消費者に統一価格を適用、③2003 年以降、単一 の電力事業者が発電および電力輸入において 50%以上のシェア保有が禁止、④送電系統 は ENEL が所有するが系統運用は新会社を設立、⑤年間 3,000kWh 以上の消費者は供 給者を自由に選択(2000 年に 2000 万 kWh、2001 年には 900 万 kWh に引下げ)、等 が規定されている。 ● イタリアの発電設備能力は、2000 年時点で 7,550 万 kW であり、うち火力が 72%(う ち石油専焼 26.6%、天然ガス専焼 9.2%、2∼3 種混焼 62%等)、地熱 1%、水力が 27% となっている。 ● 2000 年の発電電力量は約 2,800 億 kWh で、うち天然ガスが約 4 割、石油が約 2 割、水 力・再生可能エネルギーが 2 約割、石炭が約 1 割を占めている。また、イタリアでは、 現在国内供給量の 15%程度(2000 年実績で約 450 億 kWh)の電力をフランス、スイス などから輸入している。 ● 1999 年末時点で ENEL は、国内の発電能力の 71%を占めていたが、上述の自由化規定 に基づき、自社の発電設備 1,500 万 kW の売却を余儀なくされた。現在それを 3 つの発 電会社に分割し段階的に売却が進められおり、2001 年 7 月に Eletrogen(540 万 kW) をスペインの Endesa に、2002 年 5 月には Eurogen(700 万 kW)をイタリアの Edison に売却、2002 年 11 月には最後に残っていた Interpower(260 万 kW)をベルギーの Electrabel 中心のコンソーシアムに売却することで合意がなされている。 ● 2000 年の国内消費電力量は約 2,800 億 kWh で、家庭用が 22%、農業用 2%、工業用 53%、商業用他 23%となっている。なお、販売電力量に占める ENEL のシェアは 1998 時点で 9 割以上であったが、1999 年以降、事業者別のデータは公表されていない。 (4) ENI の概要 ● 国営会社 ENI は、イタリア最大かつ世界でも有数の総合エネルギー会社であり、石油・ 天然ガスの探鉱開発を始め、発電事業、石油化学、エンジニアリング等も行なっている。 ● ENI の持つ 2001 年末時点の確認埋蔵量は、イタリア国内、北・西アフリカを中心に 69 億 BOE(石油換算バレル)にのぼる。また、近年は国内市場の自由化の影響もあり、 9 IEEJ:2003 年 4 月掲載 南米、アジア太平洋、中東、欧州へとその活動範囲を広げており、現在約 70 カ国で活 動を行なっている。 ● 現在、政府が 32.3%の権益を保有しているが、民営化に向け、更なる株式の売却が検討 されている。 ● 主要グループ企業 Agip(探鉱開発)、AgipPetroli(石油精製・流通)、EniChem(石油化学)、EniPower (発電事業) 、Saipem(油田サービス)、Snamprogetti(建設・エンジニアリング) ● 2001 年の実績 売上高:436 億ドル(対前年比-5.2%) 純利益:69 億ドル(対前年比+27.1%) 原油生産量:85.7 万 B/D(対前年比+14.6%) 天然ガス生産量:51.2 万 BOE(対前年比+16.6%) 5.最近の重要トピックス ● ENEL は、ベルザーニ法に基づく 3 発電会社の売却で、残る最後の 1 社 Interpower (260 万 kW)を、2002 年 11 月、ベルギーの Electrabel を中心とするコンソーシアムに 8 億 8,200 万ドルで売却することに同意した。 ● ENI は、2002 年 11 月、フィンランド Forutum のノルウェー子会社 Fortum Petroleum を 4.2 億ドル買収することで合意した。また、同年 12 月には、スペイン Union Fenosa のガス部門の株式 50%を 4.4 億ドルで落札している。さらに現在は、海外での配給事業 も展開しているイタリア最大のガス配給会社である Itargas の株式 56%の公開買付 (TOB)を実施する計画を発表している。ENI は、イタリア国内の自由化に伴うシェ アの縮小から、国外への事業拡大や収益率の高い上流部門へのシフト等、事業再編を積 極的に行なっている。 ● 2002 年 11 月、イタリアとアルジェリアは、両国間の新規ガスパイプライン建設に関す る F/S を実施する合弁会社 GALSI を設立することで合意した。同パイプラインは、ア ルジェリアからサルディニア島経由でイタリア北部・フランスへと至る、全長約 1,500km、輸送能力は年間 80∼100 億立米が計画されている。合弁会社 GALSI には、 アルジェリア Sonatrach、イタリア Edison、Enel などが参加する。 ● 英 BG グループは、イタリアの南東部のブリンディジに LNG 受入基地を建設する計画 で、2002 年 11 月、イタリア政府の承認を得たと発表した。同プロジェクトは、総工費 10 IEEJ:2003 年 4 月掲載 3.3 億ドルで、BG は 2006 年末までに第 1 フェーズ(300 万トン/年)の操業を開始し たい意向。なお、供給先として、主にエジプト(Idku)からの輸入が見込まれている。 ● イタリアは 2003 年 1 月に電力取引所を開始する予定である。当初、2002 年 10 月に開 始を予定していたが、産業省による市場ルールが最終的な承認を得られないため延期と なった。 6.わが国とのエネルギー分野での関わり ● 日本とイタリアは、経済的、文化的交流は多いが、エネルギーに関する貿易・投資につ いては、特筆すべき関係はあまりない。 以上 お問い合わせ:[email protected] 11