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サザンスイート栽培マニュアル

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サザンスイート栽培マニュアル
サザンスイート
▶栽培マニュアル
長野県園芸作物生産振興協議会うまいくだもの推進部会
全国農業協同組合連合会長野県本部
ニホンナシ「サザンスイート」栽培マニュアル
1 導入にあたって ……………………………………………………………… 1
2 品種特性 ……………………………………………………………………… 2
3 結実確保 ……………………………………………………………………… 3
4 着果管理:摘果の方法 ……………………………………………………… 4
5 着果管理:着果基準 ………………………………………………………… 5
6 収穫 …………………………………………………………………………… 7
7 病害虫防除 …………………………………………………………………… 9
8 整枝・せん定 ……………………………………………………………… 10
9 現地適応性 ………………………………………………………………… 11
平成27年3月
1 導入にあたって
1 8 月下旬に味で勝負できる品種を導入しよう!
○「サザンスイート」は、育成地の南信農業試験場で 8 月中下旬に収穫となる品種です。
○最大の特徴は、この時期のナシとして「甘く食味がよい」ことです。糖度が 13 ∼ 15%と同時期の「幸水」
よりも 1 ∼ 2%高く、果汁も多くシャキシャキしたよい食感があります。
○8 月初旬からずっと「幸水」を食べ続けてきた消費者を「更においしいナシだ」と振り向かせることがで
きる実力があります。実際に、県が平成 23 年に首都圏量販店で行ったアンケートでは、試食した
90%の消費者が「とてもおいしい」
「おいしい方だと思う」と回答し好評でした。
2 ナシの 2 大病害に強い品種をつくりこなそう!
○更に大きな特徴として、ナシの 2 大病害に強いことがあります。ナシ黒斑病には抵抗性で、ナシ黒星病
には耐病性を示します。
○赤ナシですが、全体に緑色が残る時期に収穫することで、食味がよく、また常温で 1 週間程度日持ちし
ます。
○やや小ぶりで果形が乱れやすい傾向がありますが、太めの充実した側枝に着果させ、補正摘果を行うこ
とで、300g強で果形のよい果実の比率を高めることができます。
3 生産目標
・着果基準 直径 25mm∼ 35mmの側枝には、側枝 1m当たり 4 果程度
直径 15 ∼ 25mmの側枝には、側枝 1m当たり 2 ∼ 3 果
直径 15mm未満の側枝(側枝先端の 2 年枝等)には、着果させない
・果 実 重 300g以上
・糖 度 13 ∼ 15%
・果 皮 色 「サザンスイート」用カラーチャート 2 ∼ 3(全体に緑色が残るが、黄色みが入り始めた頃)
・収 量 3.2t/ 10 アール
4 サザンスイートの販売方針
○評価の判断を急がず、産直フェア・試食宣伝会等を継続的に実施しながら、何年かかけて粘り強く売場
への浸透を進めます。
○事前販売による売場確保のため、圃場ごとの生産実態を把握し、生育状況がある程度進んだ時点で、顧
客におおまかな出荷時期と数量についてアナウンスできる体制づくりを図ります。 ○収穫適期の検討とその指導の徹底により、安定した食味を確保し、信頼・信用・安定の評価を得られる
ような生産及び販売企画の推進を図ります。
○重点実需者を絞った供給・販売を図り、早生品種の価格的な優位性を活かすとともに、
「目新しさ」を全
面に出した販売企画の組み立てを実行していきます。
1
2 品種特性
(1)
「サザンスイート」は「八里」
( 八幸 ×75-23)と「南水」
( 新水 × 越後)の交配で得られた実生から選抜、
育成した品種で、育成中の系統名は、YN1 及び南農ナシ 4 号であった。
(2)発芽期は 3 月下旬で、
「幸水」や「南水」と比較してやや早い。開花期は 4 月中下旬で「豊水」や「南水」と
ほぼ同時期である(表 1)。成熟日数は 122 日前後で、育成地において 8 月中下旬に収穫できる早生品
種で(表 2)、収穫期は「幸水」よりもやや早い。
(3)果形は円形で、
「幸水」や「南水」と比較して縦長である(写真 1)。平均果実重は 320g 程度と「幸水」よ
りもやや小さい。収穫適期の果皮色は緑色が残る。
「幸水」
と比較するとやや果形が乱れる。
(4)果肉色は白色、果肉の粗密は中で「幸水」よりも若干粗い。
肉質は「幸水」よりも硬く、シャキシャキした食感である。
果汁は多く、苦味、渋味はない。糖度は 13 ∼ 15%で「幸
水」に比べ高い。酸度は pH5.6 前後であり、
「幸水」と同
程度で酸味はほとんどない。果実の常温における貯蔵性
は 1 週間程度で、
「幸水」と同程度かやや長い。
写真1 「サザンスイート」の外観
(5)ナシ黒斑病に対しては抵抗性、ナシ黒星病に対しては強
い耐病性を有する。
(6)樹の育成、整枝せん定等の管理作業は「南水」に準ずる。
「南水」と同様に枝が硬く、主幹付近の枝は勢い
があり、太りやすい。樹勢は中程度で、花芽の着生と短花枝の維持は良好である。
(7)平成 24 年 3 月 9 日に品種登録された(第 21631 号)。
(8)平成 26 年度時点において、種苗の生産、譲渡先および栽培地は長野県内に限定されている。
表 1 「サザンスイート」の生態(平成 20∼25 年の 6 年間の平均値、南信農業試験場)
開花期(月/日)
落花期
発芽期
展葉期
鱗片脱落期
(月/日)
(月/日)
(月/日)
始
盛
終
(月/日)
3/31
4/15
4/7
4/18
4/21
4/26
4/28
幸水
4/3
4/10
4/18
4/21
4/24
4/29
5/1
豊水
3/30
4/7
4/12
4/17
4/20
4/25
4/29
南水
4/2
4/10
4/17
4/17
4/19
4/24
4/27
品種名
サザンスイート
注)生態調査の方法は長野県果樹指導指針の生育調査基準による。
表 2 「サザンスイート」の収穫期及び果実品質(平成 20∼25 年の 6 年間の平均値、南信農業試験場)
収穫盛期
満開後成熟に
果実重
硬度
糖度
酸度
(月/日)
要する日数
(g)
(lb)
(brix%)
(pH)
8/21
122
325
7.5
13.7
5.6
幸水
9/1
130
432
7.0
12.9
5.4
豊水
9/13
146
521
6.1
13.2
4.7
南水
9/24
157
374
5.5
15.2
5.1
品種名
サザンスイート
各値はそれぞれ適期に収穫した果実の6年間の平均値。硬度の測定には5/16インチプランジャーを使用。
2
3 結実確保
(1)受粉適期について
開花当日の受粉および、開花後 1 日目の受粉で結実率が高く、その後は低下する傾向がみられる(表 3)。
「サザンスイ−ト」は開花始めから満開までの期間が平均 3 日程度であることから、満開期直前の受粉によ
り安定した結実が得られる。
表 3 開花後日数毎の結実率の違い(平成 24 年、南信農業試験場)
開花日
受粉日
開花後日数
(月/日) (月/日)
(日)
調査花数
結実数
結実率
(%)
一果実中の 一果実中の 稔実種子の
稔実種子数
割合
種子数
(平均値) (平均値)
(%)
5/1
5/1
0
122
99
81.1
6.5
8.3
77.9
4/30
5/1
1
103
82
79.6
7.6
9.0
84.6
4/29
5/1
2
120
82
68.3
7.9
9.6
82.4
4/28
5/1
3
102
57
55.9
7.8
9.8
79.1
試験開始前に開花した花をすべて摘花した。当日開花した花に袋がけをし、開花しなかった蕾をすべて摘蕾した。4 月 28 日から 5
月 1 日に咲いた花についてこの処理を施し、5 月 1 日に袋を外して受粉を施した。受粉後に開花日毎に目印を施し、受粉数を数えた。
結実の確定した 5 月 18 日に結実数を試験区毎に調査した。7 月 31 日に着果した果実中の全種子数および稔実種子数を調査した。
(2)受粉樹について
「サザンスイート」の
遺伝子型は
であり、
「長野県果樹指導指針」に記載の受粉樹 9 品種(ヤーリー、
ツーリー、松島、新興、今村秋、二宮白梨、日の出、新星、豊水)の花粉はいずれも利用できる。ただし、
型を有する「新興」および「新星」については気象条件等により結実率が低下する可能性がある。
図 1 S 遺伝子型と受粉の可否についての模式図
3
4 着果管理:摘果の方法
(1)着果番花について
果形評価指数は図2に示した基準を参考にする。果実重は6番果以降で平成 24 年、25 年ともに
260g に達せず、他の番果よりも値が小さかった(表4)。果形評価指数は1及び2番果で2以下の小さい
値であり、他の番果と比較して乱れる傾向がみられた。これらのことから、3∼5番果の利用により、比
較的果形の乱れが少なく、270 ∼ 300g 程度の果実重が確保できる。また、3∼5番果において糖度、食味、
熟度等の果実品質の差はなかった。
果形評価指数
1:悪い
全体に著しい変形
3:やや良い
部分的に変形あり
5:良い
目立つ変形なし
図2「サザンスイート」における果形評価指数基準
表 4 「サザンスイート」における番花毎の果実品質(平成 24 年、南信農業試験場)
果実重
果形(注1
(g)
評価
1
296 ab
1.9
ab
80.3 ab
74.7 a
0.93 ab
9.4
2
301 a
1.7
a
81.5 a
76.4 a
0.94 a
3
296 ab
2.5
bc
81.3 a
75.5 a
4
288
ab
2.7
cd
80.1
ab
5
272
bc
3.2
d
80.5
ab
6
255 c
2.9
cd
78.1 b
71.2 b
F検定
**
**
**
**
番花
横径
縦径
縦径
糖度
食味(注3
熟度(注4
指数
指数
13.9 ab
3.1
3.0
9.6
13.9 ab
3.0
3.2
0.93 ab
9.8
13.8 b
3.0
2.9
74.6
a
0.93
ab
9.8
14.0
ab
2.9
3.1
74.8
a
0.93
ab
9.5
14.1
ab
3.0
3.1
0.91 b
9.7
14.2 a
2.9
3.0
*
n.s.
*
n.s.
n.s.
(mm) (mm)
硬度(注2
/横径
(lb)
Brix
(%)
注 1 1:悪い、3:やや良い、5:良い
注 2 マグネステーラー型硬度計(頭針 5/16 インチ)を使用した。
注 3 1:不良∼5:良
注 4 1:未熟、2:可食、3:適熟、4:完熟、5:過熟
F 検定により n.s. は有意差なし、*は 5%水準で有意差あり、**は 1%水準で有意差あり。
多重比較(Tukey)により異文字間には試験区間に 5%水準で有意差あり。
「豊水」の成木へ高接ぎした 7 年生の「サザンスイート」を 3 樹供試した。
各区 60 果を調査した。
4
(2)受粉方法について
人工受粉は満開前を目安に実施し、3∼5番花に対して限定受粉を行う。
果形評価の割合(%)
80
果形「悪い」
果形「やや良」
60
果形「良」
40
20
0
1および2番花
(n=141)
3~6番花
(n=290)
平成24年
1および2番花
(n=125)
3~7番花
(n=264)
平成25年
図 3 番花区分による果形評価の構成割合(平成 24、25 年、南信農業試験場)
(3)摘果方法について
予備摘果は実施せず、肥大や果形の状況がはっきり
してくる満開後 30 日を目安に一気に仕上げ摘果を行
い、大きく形のよい果実を残す。
ただし、着果量が多い場合(1果そうに4果以上着果)
には、できるだけ早期に果形不良となる可能性の高い
1番果および2番果を摘果する。
補正摘果を前提として、仕上げ摘果時の着果密度は
暫定的に1 m に6果前後を目安とする。側枝全体に均
一に配果するより、素質の良い果実を残すことを心が
写真2 摘果で落とす果形不良果
ける。
5 着果管理:着果基準
(1)
「サザンスイート」は側枝の屈曲、骨格枝上の発生位置、着果位置の側枝の太さなどにより果実品質が
異なる。側枝直径 25mm 以上 35mm 未満の部位に優先的に着果させ、15mm 以上 25mm 未満のや
や細い部位では強めの補正摘果で着果量を抑える。このとき、側枝先端など、側枝直径 15mm 以下の
細い部位には着果させない。
(2)満開後 90 日以降を目安に、3∼4果に1果程度を目安に補正摘果を実施する。補正摘果終了後の最終
的な着果間隔は、側枝1 m に平均4果程度の着果とし、このときの葉果比は果そう葉で 25 ∼ 35 葉に
1果となる。
5
図 4 着果部位の側枝直径と果実重の関係(平成 25 年、南信農業試験場)
60%
40%
20%
果形「悪い」
0%
果形「やや良」
果形「良」
図 5 補正摘果時期による果形の構成割合(平成 25 年、南信農業試験場)
(3)着果基準のポイントは図6のとおり。この基準に拠った場合の推定収量は、樹冠1m2 当たりに側枝3
m を配枝し、300g 強の果実を 12 果程度着果させて成園率を 90%とした場合、3.2t 強と見込まれる。
「サザンスイート」には一部が肥大不良となり、極端に変形した果実がみられる(写真2)
。肥大不良部
は糖度が低く、食感も劣るため選果時に注意する。
側 枝 直 径 25mm 以 下 の 部 位
は補正摘果で着果量を抑える
側枝直径 25mm を超える部位には補正摘果後
で4果 /m 程度着果できる(葉果比 25 ∼ 35)
側枝径 15mm 以下の部位は着果させない
図6 「サザンスイート」側枝の着果模式図
6
6 収穫
(1)成熟期について
平成 23 年から平成 25 年にかけての3年間、場内および現地5園地で8月中に7日おきに成熟調査
を行い、成熟期の果実品質の推移について調査した結果、満開後日数から熟度を予測する回帰式は図7
となった。しかし、満開後日数のみで成熟を予測するのは難しいため、カラーチャート、食味等を参考
にして決定する。なお、各予測式から熟度指数3となる満開後日数を推定した結果、平成 23 年では
118 日、24 年で 124 日、25 年で 119 日であった。
図7 「サザンスイート」の熟度指数と満開後日数との関係(平成 23 ∼ 25 年、南信農業試験場)
場内および現地5ほ場のデータを用いた。
熟度指数は、1:未熟、2:可食、3:適熟、4:完熟、5:過熟
(2)
「サザンスイート」用カラーチャート
「サザンスイート」の成熟に伴う果皮色の変化を5段階で表すカラーチャートを作成した(図8)
。作
成したカラーチャートについてニホンナシ用(地色)果実カラーチャート(農林水産省)の1∼5までの
着色指数をもとにサビの発生が見られなかった部位について比色を行い、表6のように設定した。
(3)平成 23 年から平成 25 年にかけての3年間、場内(560m)および標高の異なる現地5園地(豊丘村
440m、飯田市 430m、440m、550m、下條村 780m)で8月中に7日おきに成熟調査を行い、成
熟期の果皮色と果実品質の推移について調査した結果、カラーチャート値(以下 CC 値)とデンプン指数、
熟度指数および食味指数との間に高い相関がある(図9)。
このカラーチャートを用いた際の「サザンスイート」の収穫適期は CC 値2から3にかけてである。
7
1
未熟
2
適熟
3
適熟
4
過熟
5
過熟
図8 「サザンスイート」用カラーチャート
表5 「サザンスイート」用カラーチャートと農水カラーチャートとの対応
「サザンスイート」用
カラーチャート値
ニホンナシ地色カラーチャート(農林水産省)による果実の様子
1
農水チャート指数2に満たず、全体に緑色が残る
2
同指数で全体が2以上となり、3の色が入り始める
3
同指数で全体が3となり、4の色が入り始める
4
同指数で4に近づき、ていあ部に緑色がリング状に残る
5
果実全体が指数4以上の色となる
図9 「サザンスイート」用カラーチャート(CC)値と果実品質(平成 23 ∼ 25 年、南信農業試験場) 3年間の場内および現地5ほ場の果実品質データ
8
7 病害虫防除
(1)主要病害に対する感受性
「サザンスイート」の主要ナシ病害に対する感受性を主要品種と比較すると表6のとおりである。
ナシ黒斑病に抵抗性、ナシ黒星病に耐病性であるが、ナシ胴枯病菌による心腐れ症および、ナシ輪紋
病に対しては「幸水」よりその程度は低いが感受性であり、ナシ赤星病、ナシうどんこ病に対しては既
存品種と同程度の感受性である。また、ナシえそ斑点病に対しては発現性(感受性)である。なお、虫
害に対しては既存品種との間に差異はないと考えられる。
表6 日本なし品種 「サザンスイート」および既存品種の主要病害に対する感受性
品 種
黒斑病
黒星病
赤星病
うどんこ病
輪紋病
心腐れ症
えそ斑点病
二十世紀
×
×
×
×
×
〇
×
幸 水
◎
×
×
×
×
×
〇
豊 水
◎
×
×
×
×
〇
〇
南 水
×
〇
×
×
×
×
×
サザンスイート
◎
〇
×
×
×
×
×
凡例)◎:抵抗性、〇:耐病性(潜在性)、△:異なる試験例あり、×:感受性(発現性)
(2)病害虫防除
これまでの試験の結果、
「サザンスイート」における病害防除は、
「長野県農作物病害虫・雑草防除基準」
の「幸水」
・「豊水」における“落花直後”の心腐れ症を対象とした防除から“7 月上旬”までの殺菌剤散布
で防除でき、
「幸水」に比較し殺菌剤の使用を約4割削減できる。
特に、ナシ黒星病に対して耐病性であることから、開
花期を中心とした生育初期および、果実肥大後期の EBI
剤など黒星病を対象とした防除は必要ない。ただし、ナ
シ胴枯病菌による心腐れ症に対しては「幸水」よりも発
生は少ないものの、感受性であることから、当面は充分
な防除を実施する。これは、本病が市場や消費地におい
て発病が明らかとなることが多く、イメージへ大きく影
響するためである。
なお、殺虫剤散布は既存品種と同程度とする。
写真3 心腐れ症(胴枯病)を発病した
「サザンスイート」
9
8 整枝・せん定
(1)樹の特性
「サザンスイート」の樹の特性は「南水」に類似するので、基本的なせん定は「南水」に準ずる。
樹の特性としては頂部優勢が強く、先端の枝が強く伸び、下方の新梢発生数は少ない。ただし、主幹
付近や側枝発生基部には徒長枝が立ちやすく、太りやすい。これらを放置すると側枝先端が伸びず、主
幹部から離れるにつれ、側枝が細くなる。このことが側枝や骨格枝養成の失敗原因となるため、育成枝
の発生部位付近や、育成枝基部の徒長枝は新梢管理により除く。同時に側枝先端には枝の勢いを導くこ
とのできるよう、芽数や葉枚数を確保し、過度な着果をさせない。
枝は、硬くもろい上、太りやすいため、
「南水」同様に生育期間中に誘引によりくせをつけるとともに、
発育枝の太りを抑えることが必要となる。
「南水」同様、せん定だけでは樹形確立が特に難しく、常に新
梢管理と併せて考える。短果枝の着生、維持は「南水」同様に良いので、
「二十世紀」に準じた短果枝型の
せん定で側枝利用を図る。素直で屈曲の少ない側枝の養成が大きく果形の良い果実生産に結びつくため、
水平で大きな屈曲のない側枝を養成する。
(2)基本樹形(図 10)
主枝本数は3本もしくは4本とする。亜主枝の数は1主枝当たり2本とする。若木時代には長大化し
て主枝を負かすことがないよう暫定亜主枝として扱う。
主枝の分岐高さは 60 ∼ 80cm を目安とする。枝が硬い上に主幹部付近では徒長枝が発生しやすいの
で、主枝を杯状の状態からゆるやかな角度で棚に付けられるようにする。
図 10 「サザンスイート」の基本樹形
左:3本主枝、右:4本主枝
10
9 現地適応性
下伊那地域の標高の異なる現地ほ場において調査した結果、標高 400m の天竜川沿岸地帯では8月上中
旬に、500 ∼ 600m 台では8月中下旬に、700m 以上の地帯では8月下旬に収穫期を迎えた。低標高で
も緯度の異なる須坂市では、生育がやや遅れるため8月下旬であった。
3年間の平均果実品質(可食∼適熟果)は、平均一果重が 333g、平均糖度は 13.8%であった(表7、8)。
表7 ほ場別「サザンスイート」の生態及び着果量(平成 23 ∼ 25 年の平均、南信農業試験場)
ほ 場
標高(m)
満開日
収穫日
成熟日数
積算気温
着果量
(月/日)
(月/日)
(日)
(℃)
(果叢に1果)
豊丘村 河野
440
4/24
8/17
115
2,478
2.5
飯田市 座光寺
440
4/20
8/16
119
2,486
1.0
飯田市 上郷
430
4/16
8/16
122
2,539
3.0
飯田市 北方
550
4/22
8/18
118
2,437
2.5
高森町 吉田
700
4/27
8/27
122
2,484
3.0
下條村 親田
780
5/1
8/28
119
2,323
3.25
高森町(南信試)
560
4/23
8/23
121
2,511
2.0
須坂市(果樹試)
360
4/26
8/25
121
2,630
対)「幸水」場内
560
4/23
9/1
131
2,785
表8 ほ場別「サザンスイート」の成熟期における果実品質(平成 23 ∼ 25 年平均値)
ほ 場
地色
硬度
糖度
酸度 デンプン 食味
熟度
(月/日)
日数
(g)
指数
(lb)
(Brix%)
(pH)
指数
指数
指数
豊丘村 河野
8/17
115
311.0
2.0
7.2
13.6
5.5
1.5
2.8
2.8
飯田市 座光寺
8/16
119
336.5
2.2
7.0
12.9
5.5
1.5
2.8
3.2
飯田市 上郷
8/16
122
364.8
2.1
7.8
14.0
5.4
1.7
2.7
3.0
飯田市 北方
8/18
118
323.7
2.6
7.0
13.4
5.5
1.8
3.0
3.2
高森町 吉田
8/27
122
325.0
2.9
7.3
14.9
5.4
1.4
2.9
3.5
下條村 親田
8/28
119
308.5
2.5
6.7
14.1
5.5
1.3
3.3
3.4
南信試
8/23
121
343.0
2.0
7.3
13.3
5.5
2.0
2.6
2.6
果樹試
8/25
121
254.6
2.3
7.5
14.4
5.4
1.5
3.0
2.8
9/1
131
430.8
2.4
7.0
13.5
5.4
1.4
2.9
3.1
対)「幸水」
11
収穫日 満開後 1果重
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