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ワン・ストップ・ショッピングの原則
Ⅴ テナントミックス 大型閉鎖店舗再生にあたっては、中心市街地再生の あり方や理念を踏まえて、開発コンセプトを構築し、 それに見合った業種、業態のテナントを誘致し、魅力 あるフロア構成を実現することが求められている。 ここでは、大型閉鎖店舗再生にあたって、どのよう なテナントミックスが必要なのかについて、解説する。 Ⅴ テナントミックス 1.開発コンセプト 大型閉鎖店舗を再生していくプロセスとしては、まず、開発コンセプトを再構築する ことが必要である。 開発コンセプトは、中心市街地活性化の方向を踏まえ、大型店再生の基本的あり方や 像、理念を明文化したものであり、再生に関わる様々な人々の共通の認識・考え方にな ることから、わかりやすく、具体的にかつ明確に表現されることが求められる。 開発者・オーナーの企業理念、経営方針のもと、開発コンセプトが明確なものであり、 関係者に周知徹底されることで、テナントミックス、施設構成はもとより、環境計画、 ランドスケープ、照明計画、サイン・カラー計画などが SC の細部にわたり具現化され、 SC 全体を計画的かつ統一性のとれた施設として構築することができる。 同時に、開発コンセプトは商圏内居住者に対しても大型店再生の明確な意志を示すこ ととなる。 そのためには商圏内居住者のライフスタイル、ニーズを十分把握する必要があり、以 下の要件を検討する必要がある。 (1)立地ポテンシャル分析 どのような商業立地に位置しているのか。 商業ポテンシャルはどれくらいあるのか。 (2)競合分析 どのような競合環境に置かれているのか (3)商業トレンド分析 商業トレンドはどのようになっているのか (4)参考事例研究 参考となる SC はどのようなタイプか また、開発コンセプトを構成する要素として以下のものがあげられる。 ①ターゲット(主な顧客層) ②SC タイプ(SC の特徴) ③地域顧客への対応(売り方、サービス内容) ④競合 SC との差別化(競合 SC との違い) ⑤SC の使命(地域社会への奉仕等) 上記の②のSCタイプは、商圏規模や特性による分類がある(図表Ⅴ−2)。 - 71 - 図表Ⅴ− 1 開発コンセプトを構成する要素とその関係 開発者・オーナーの企業理念・経営方針 (1)立地ポテンシャル分析 (3)商業トレンド (2)競合分析 (4)参考事例研究 開 開 発 発 コ 戦 ン 略 セ プ ①ターゲットイメージ ②SC タイプ ③地域顧客への対応 ④競合 SC との差別化 ⑤SC の使命 - 72 - ト 図表Ⅴ− 2 SC のタイプ分類 - 73 - 2.マーチャンダイジング (1)マーチャンダイジングの進め方 マーチャンダイジングは SC の基幹をなす極めて重要な要素であり、開発コンセプ トにしたがって、SC 全体でどのような商品構成をし、価格等の商品レベルをどのよ うにしたらよいかを検討・構築する。 かつて開発者・オーナーは、マーチャンダイジングはテナントが考える内容であり、 開発者・オーナーは関与しないと言われてきた。特に百貨店や GMS に一棟貸しの物 件では核テナントに任せきりであった。しかし最近は、大型店全体として顧客に対し てどのような商品やサービスを提供するのか、マーチャンダイジングの視点からの資 質が求められている。 マーチャンダイジングは業種業態構成、ゾーニング、配置計画に繋がり、テナント ミックス、テナントリーシングへと進んでいく。 デベロッパーにとってマーチャンダイジングとはテナントの店揃え、レベル調整、 業種業態構成を指すと理解できる。 マーチャンダイジングを考える上で、重要なのは他 SC との競合だけではなく、多 様なライフスタイル・ニーズも持つ顧客への対応である。 そのためにはマーケットの掘り起こしによる、マーケットニーズと購入モチベーシ ョンの分析・対応は必要である。 また、競合 SC に対する自 SC のポジショニングや特徴も明確にする必要がある。 −市場開拓(SC の位置付けの明確化によるニーズの構造とマーチャンダイジング の構築を図る)− ①SC のポジショニングの明確化(SC の果たす役割) ②マーケットの購買モチベーションの探索(購買動機・行動への対応) ③マーケットニーズの掘り起こし(提供商品の把握) ↓ −市場継続(売上の持続を図る)− ④完成した SC の継続的成長 マーチャンダイジングの基本原則である「ワン・ストップ・ショッピングの原則」 に加え、「比較購買の原則」が加わり、顧客の高い満足度と競合 SC への強い競争力を もてることになる。 「ワン・ストップ・ショッピングの原則」とは地域の顧客に対して生活に必要な商 品をフルラインで提供することにある。 「比較購買」とは、性格の異なる店舗が互いに特徴を出し合って、顧客にとって買 - 74 - い物の選択の幅を広くすることにある。 マーチャンダイジングを進めるに際して、マーチャンダイジングコンセプトを設定 し、それを実現化するための基本戦略を策定する。 コンセプトは立地・競合・地域ニーズやライフスタイル特性を踏まえ、SC として の品揃えや店揃えをマーチャンダイジングの面から検証し、如何にすべきかの考え方 を決定する。 さらに基本戦略では、実現化するためにどのようにするのか、SC全体からフロア、 核店舗、専門店レベルにまで具体的にマーチャンダイジングを決定する。 (2) SC 全体事業性からみたマーチャンダイジングの留意点 SC 内の業種業態ミックスを検討する上で、SC 全体の事業性も考慮しなくてはなら ない。 昨今の経済事情からかつてほどテナントからの高い敷金・保証金は見込めなくなっ てきている。むしろ、集客力のある物販テナントや飲食店、事業構造的に賃料支払い 能力が低いレジャー・アミューズメント施設は、内装設備をデベロッパーが負担する 場合が多く見られるようになってきた。 一般的な SC では、総延床面積の 20%∼25%は通路やトイレ、バックヤード等の売 場面積以外の共用部面積にあてられると考えられる。 残り 75%∼80%のうち、敷金・保証金(最近は保証金無しの SC が増えてきている) による初期投資の回収・高い賃料収入が見込まれる物販面積として 55%∼60%は確保 したいことから、残りは 20%程度となる。 これから屋内駐車場等を差し引くと、飲食・サービス・アミューズメント施設の面 積は施設全体の 10%∼15%程度と考えられ、飲食施設はそのうちの半分以上が想定さ れる。 ただし、これらの比率はSCの集客力、話題性、飲食ニーズ等からバランスは異な ってくるため、開発する SC タイプの想定に合わせて検討が必要となる。 - 75 - 3.テナントミックス (1)テナントミックスの進め方 テナントミックスは、SC マーチャンダイジングの考え方を実現するために、SC 内 におけるテナントの最適組合せの検討・構築するものである。 SC のテナントミックスは以下の流れで行われる。 図表Ⅴ− 3 テナントミックスの流れ ①全体のゾーニング ②業種・業態ミックス ④アイテムミックス ③テナントミックス(狭義) ①全体のゾーニング SC全体のキーテナント、サブキーテナント、コアテナント、一般テナント、特殊 テナントあるいは小売販売機能と他の機能の大まかな区分け、組合せを検討。キ ーテナント及び一般テナント等の売場面積及びその割合を想定する。 ②業種・業態ミックス マーチャンダイジング戦略に基づいて、業種・業態レベルでの組み合わせを考え、 特に強化したい業種・業態(グループ)を明確にし、SC 全体の業種・業態グループ 別に売場面積、特徴、構成比等を検討する。 業態ミックスにおけるテナントタイプは以下のとおりである。 キーテナント :SC の性格を決定し、集客の中心となる店舗。百貨店、GMS 等 が該当 サブキーテナント:キーテナントの集客力をパワーアップする店舗。キーテナント として扱われる場合もある。ホームセンター、ドラッグストア、 スーパーマーケット等 コアテナント :SC のイメージ向上、回遊性向上に貢献する店舗。大型専門店 が該当 一般テナント :各店舗の補完機能ならびに比較購買動機を誘発する店舗。一般 店舗等が該当 特殊テナント :地域住民へのサービスを提供する店舗。ライフサービス及びア - 76 - ミューズメントテナントが該当 ③テナントミックス テナントミックスの検討にあたっては、業種・業態ミックスに基づき、さらにコン セプトに合ったテナントをピックアップし、各店舗の特徴を比較する。特に、各テナ ントの客層(年令、マインド)をいかに組み合わせるかが重要となる。 ④アイテムミックス テナントミックスにおけるアイテムミックス検討は以下のとおりである。 ・各店舗の商品ライン(取扱商品の深さ)の検討 ・各店舗の商品アイテム(取扱商品の幅)の検討 ・各店舗の商品グレード(取扱商品の価格)の検討 アイテムミックスは実際にはテナントのマーチャンダイジングではあるが、テナン ト間のマーチャンダイジング調整、それにともなう SC 全体での品揃えを検討するう えからも、調整が必要な場合もある。 マーチャンダイジングの調整におけるポイントは以下の通りである。 ・業態間の客層が同じ→商品グレード、バラエティ度、販売方法での差別化検討 ・業態間の商品グレードが同じ→客層、商品バラエティ度、販売方法での差別化検討 ・業態間の商品バラエティ度が同じ→客層、商品グレード、販売方法での差別化検討 ・業態間の販売方法が同じ→客層、商品グレード、商品バラエティ度での差別化検討 ⑤その他複合アイテム ワン・ストップ・ショッピングの場の提供、街づくり的考え方の導入を踏まえると、 物販、飲食以外の機能・諸施設の導入も SC の魅力向上には重要である。 当然これらの施設の導入に際しては、SC のイメージアップ、話題性、情報発信性、 コミュニティ機能といったものと同時に、賃料といった事業性も十分考慮して導入を 検討すべきである。 物販・飲食以外の主な導入候補施設は以下のとおりである。 ・スポーツ施設:フィットネスクラブ、アリーナ、テニスコート等 ・カルチャー施設:ホール、ギャラリー、美術館・博物館、音楽ホール、カルチャ ースクール等 ・アミューズメント・レジャー施設:シネマコンプレックス、シアター、アミュー ズメントセンター、ボーリング、ライブハウス、カラオケ、スパ施設等 ・その他:郵便局、図書館、行政機関窓口、ホテル、住宅、クリニック等 - 77 - (2)テナントミックス事例 市街地活性化に向けて SC 再生を行った事例のテナントミックスを考察する。 ①既存核テナントが業態変更して再生した事例:ATi郡山 ATi 郡山は JR 郡山駅前に立地する SC で、当初は西友が百貨店業態の「郡山西武」 として入居していた。しかし、西友が郡山市郊外に「THE MALL 郡山」を建設・移 転し、それに伴い撤退した。 その後、既存ビルの再生検討を進めるなかで、再度西友が入居するものの、上記「郡 山西武」との差別化からヤングを対象としたライフスタイルファッション館としてリ スタートを切った。 紅茶専門店のレシピエ、化粧雑貨もザ・コスモス、スポーツ・カジュアルの ABC マート等の福島県初・郡山初の専門店や、SM の西友アティ郡山店、本とバラエティ 雑貨のヴィレッジヴァンガード、CD ショップのタワーレコード、東邦精麦がフラン チャイジーとなっているライフスタイルショップの無印良品等大型専門店集積による、 中心市街地ならではの利便性・文化/トレンド/情報発信性による差別化・特色付け を行っている。 西友自身は核テナントとして、スーパーマーケット業態として入居している。ビル オーナーサイドも改装投資を行うとともに、地方都市において極めて重要な駐車場に ついて、立体化等により当初の約3倍の 1000 台規模に増床させている。 ビル中央には民放ヴィジョンが設置され情報発信を行っており、近接の再開発ビル 「ビックI」内商業施設「モルティ」との相乗効果で、若者が中心市街地に集まって きている。 一度撤退を行った核テナントが再入居し、かつ業態転換を行って再生を図った事例 である。SC 概要及び主なテナントを以下に示す。 - 78 - 図表Ⅴ− 4 ATi郡山 施設概要 SC 名 所在地 所有者 開業 延床面積 営業面積 テナント数 駐車台数 地下1階 主 な 専 門 店 1階 2階 3階 4階 5階 6階 7階 8階 ATi 郡山(アティこおりやま) 福島県郡山市駅前 1-16-7 東邦精麦㈱ 2001 年 5 月 25 日 26,582 ㎡ 17,772 ㎡ 70 店 1,000 台 「JR 郡山駅前唯一の総合食品フロア」 西友アティ郡山店(SM) レシピエ(紅茶専門店、福島県初) ビアードパパ(シュークリーム) 等 「本物件を象徴するヤングファッション・雑貨専門店フロア」 無印良品(ライフスタイルショップ、東邦精麦直営) オフオン(ヤングファッション) ミシェルクラン(同上) ザ・コスモス(化粧雑貨、福島県初) スターバックス(コーヒーショップ) 等 「レディースヤングをターゲットとしたカジュアルファッションフロア+大型専門店」 無印良品(ライフスタイルショップ、東邦精麦直営) ナイスクラップ(カジュアルファッション) アズノゥァズ(同上) TAYA(ヘヤーサロン) ラフィネ(リラクゼーション) 等 「ティーンズをターゲットとしたティーンズファッションと雑貨のフロア」 フライングエンジェル(ティーンズカジュアルファッション) US ボーダー.Com(ティーンズカジュアルファッション) アレックスマンディー(生活雑貨) アトリエブランか(アートとアンティーク雑貨) 等 「専門店、サービス、リサイクルのフロア」 トミタ(眼鏡・時計) ベルフォニカ(携帯電話) チケットセゾン(チケットサービス) め利得(リサイクルショップ) 等 「カジュアルライフの大型専門店フロア」 ABC マート(スポーツ・カジュアル、福島県初) ライフマーケット(ジーニングと古着) ヴィレッジヴァンガード(本とバラエティ雑貨) 等 「福島県最大級の大型趣味専門店フロア」 タワーレコード(CD ショップ) シマムラミュージック(大型楽器店) 「アミューズメントとフードコートのフロア」 ジョイタイム アティ(アミューズメント) ATi フードコート 等 「美のフロアー」 たかの友梨ビューティークリニック(エステ) - 79 - ②中心商業地の再生を目指した市街地再開発事例:ザザシティ浜松 ザザシティ浜松は、百貨店などの大型店が浜松市中心市街地から撤退してしまった 状況を受けて、中心市街地に人を集める核として、商業を中心とした市街地再開発事 業で完成した事例である。 ザザシティ浜松がある鍛冶町通り地区は浜松市のメインストリートである鍛治町通 りの南側に位置する浜松中央西地区、浜町中央地区、松菱地区の総称である。 再開発は松菱地区の松菱百貨店及び浜松中央西地区に計画されたザザシティ浜松西 館を核とし、浜松中央地区で計画されたザザシティ浜松中央館は両核を結ぶモールと いう「2核1モール」で街作りがスタートした。 商業施設としてはザザシティ浜松西館には核テナントとしてトイザらス、ユニクロ、 コムサイズムといった専門大店に加え、ヴァージンシネマズや老舗飲食店を集めたZ AZA小路等を集合させている。また、都市機能の充足という面から公共駐車場や都 市型住宅も整備された。 ザザシティ浜松中央館はモール機能を持つ施設として、西館と松菱をつなぐ連絡路 の充足に加え、商業施設としては西館・松菱とのバッティングを避け、相乗効果を目 指してティーンズからヤングミセスをターゲットとした専門店集積を図っている。ま た、都市生活サポート機能としてクッキングスクールやクリニック、県民相談センタ ーや消費者センター・旅券センター等県民生活と社会貢献活動を支援する静岡県西部 地域交流センター、さらに子供たちの人気スポットである浜松子ども館、住宅が整備 された複合施設となっている。 ただし、本再開発の核施設として期待された松菱百貨店は、ザザシティ浜松中央館 が開業する一週間前に倒産をしており、現在はその跡地利用を検討中である。 図表Ⅴ− 5 ザザシティ浜松西館 施設概要 SC 名 所在地 所有者 デベロッパー 延床面積 営業面積 テナント数 駐車台数 地下1階 主 な 専 1階 門 店 2階 3階 ザザシティ浜松西館 静岡県浜松市鍛治町 15 浜松中央西ビル(株) (株)ザザシティ浜松 2000 年 11 月 21 日 63,400 ㎡ 10,135 ㎡ 43 店 食彩空間かじまち(SM) 生活良品館(百円ショップ) ウィンダーランド(ドラッグストア) ユニクロ(カジュアルウエア) GLOBAL WORK(カジュアルウア) コムサストア(カジュアルウエア) TheCenozoic(生活雑貨) One’s own Pie’ce(インテリア雑貨) トイザラス(玩具) ハロータイトー(アミューズメント)) スタジオアリス(写真館) ヴァージンシネマズ ハロータイトーMOVIE(テーマ型アミューズメント) - 80 - 等 等 等 等 図表Ⅴ− 6 ザザシティ浜松中央館 施設概要 SC 名 所在地 所有者 デベロッパー 延床面積 営業面積 テナント数 駐車台数 主 地下1階 な 専 1階 門 店 2階 3階 4階 5階 6・7階 ザザシティ浜松中央館 静岡県浜松市鍛治町 100 浜松中央ビル(株) (株)ザザシティ浜松 2001 年 11 月 22 日 30,364 ㎡ 8,326 ㎡ 67 店 ドゥーパ(エスニック雑貨) トゥールトゥールズ(キャラクター雑貨) 等 a.v.v.(レディス・キッズカジュアル) ボザール(生活雑貨) キクヤ(靴) 等 NO OLIVE(レディス) パーグラムマーケット(レディス) シーズガレット(レディスカジュアル&雑貨) AMO’SSTYLE(インナーウエア) 等 DIVEN’SURF(ストリートカジュアル) スーツダイレクト(メンズ) Jassie(109 系レディス) バービーショップ(雑貨) 等 ABC クッキングスクール エルセーヌ浜町店(エステティックサロン) 等 県民相談センター、消費者センター、旅券センター等静岡県西部地域交流センター 浜松子ども館 ③百貨店跡に百貨店を誘致・再生した事例:ヤマトヤシキ加古川店 ヤマトヤシキ加古川店は 2000 年 12 月 25 日に閉店したそごう加古川店(売場面積 約 18,000 ㎡)の跡の後継テナントとして、地元の中堅百貨店であるヤマトヤシキ(高 島屋と提携)が地元の要請を受けて 2001 年3月 30 日出店・開店した店舗である。 出店した「加古川再開発ビル」は加古川市の第3セクターが所有している。 ヤマトヤシキ出店に際しては固定費のダウンが大きな鍵であり、第3セクターとヤ マトヤシキとの賃料条件は、初年度無料、2・3年度は月坪千円、4・5年度は月坪 3千円、6年度以降6千円と段階的家賃条件となっている。 そごう時は6千円であったとされており、初年度だけでも約4億円の減収であるが、 中心市街地活性化に結びつくという行政の判断によって決定された。 そごう時の売上げは年間 180 億円であったが、ヤマトヤシキ加古川店は 150 億円を 見込み、計画通りの売上げを上げている。 図表Ⅴ− 7 ヤマトヤシキ加古川店 施設概要 店名 住所 開業日 延床面積 店舗面積 駐車台数 ヤマトヤシキ加古川店 兵庫県加古川市篠原町 21-8 2001 年3月 30 日 42,000 ㎡ 20,704 ㎡ 880 台 - 81 - 年間来場者数 年間売上 最寄り駅 約 426 万人 01 年度:9,431 百万円、02 年度予測 11,500 百万円 JR 加古川駅徒歩 1 分 ④行政主導・市民参加型で再生した事例:とぴあ とぴあは核テナントであったマイカル系列の「遠野サティ」の撤退に伴い、行政主 導のもとに商業テナントの他に、市民サービス施設、集会所等市民参加型施設で構成 された新しい SC である。 市が国の支援制度「商業等創業・経営革新緊急支援事業」の補助金を受けて、土地・ 建物を購入・所有し、それを賃貸する公設民営型 SC である。総事業費の約6割(約 6億3千万円)を国からの補助金で賄っている。 売場面積は約 6,900 ㎡で、スーパーマーケットや衣料品店、飲食店など 35 店舗が入 居している。 テナント以外には産直施設やフリーマーケット、集会場、研修室、高齢者の憩いの スペース、市民課分室、総合産業支援センターといった行政施設や市民参加型施設で 構成されている。 また、マネジメント担当者を公募し、首都圏で流通に関わったプロを雇ったり、地 元バス会社と市が負担しあって市街地循環バス「ワンコインバス」を運行させるなど 様々な試みが行われている。 - 82 - 4.店舗レイアウト 店舗レイアウトは、開発コンセプト、マーチャンダイジング、テナントミックスの 決定プロセスを経て行う。 フロア配置では「噴水効果」と「シャワー効果」も検討する。「噴水効果」とは下層 階に集客テナントを配置し、その顧客を上層階に回遊させる手法である。前述の ATi 郡山地下 1 階に配置された SM の西友アティ郡山店など一般的に下層階の食料品売 場・テナントが該当する。 「シャワー効果」とは「噴水効果」とは逆で、上層階に集客力のあるテナント・施 設を配置し、それにより顧客を上層階から下層階に下ろす間に買い物をさせる手法で ある。前述の ATi 郡山上層階に配置された無印良品やタワーレコード、ABC マート、 ザザシティ浜松中央館の ABC クッキングスクールや静岡県西部地域交流センター、 浜松子ども館等が該当する。 店舗レイアウト計画を進める上で、動線計画は大きな意味を占める。動線には店内 動線と後方施設動線とがあり、店内動線にはメイン動線とサブ動線が存在する。客用 動線である店内動線は利用客が店舗回遊しやすく、各店舗が判りやすいことが重要で ある。 後方施設動線は従業員の移動、商品の搬出入に利用されるため、その利用と距離は 最小限に縮めるとともに、スムーズな流れが求められる。また、縦動線としてのエレ ベータ、エスカレータ、階段の数、配置さらには向き等に検討が必要である。 フロアゾーニングを進めるに際しては、メイン動線と業種別ゾーンを設定し、その 上で業種配分を行う。 買いやすさ、見やすさ、楽しさ、バラエティ性、期待感等様々な視点から、動線形 態を検討し、店舗レイアウトを検討する。 一般的に食品等の最寄り品の売場では、買い物を短時間に済ませられるように、店 内の見通しを良くするとともに目的の棚に最短でいけるように直線形状の動線が多く 使われている。 同じく衣料品等の買回品の売場では、顧客に期待感、楽しさ、回遊性を演出するた めに直線、曲線を様々に取り入れた動線が配されている。 - 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