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(CCS国際連携事業(CCS関連国際機関等との連携事業))
平成 24 年度地球環境国際連携事業(CCS国際連携事業 (CCS関連国際機関等々の連携事業)) 成 果 報 告 書 平成25年3月 公益財団法人 地球環境産業技術研究機構 1 目次 要約 ............................................................................................................................1 第 1 章 概要 ..............................................................................................................3 1.1 事業目的 .....................................................................................................................3 1.2 事業概要 .....................................................................................................................3 第 2 章 国際機関等との連携 .....................................................................................7 2.1 CSLF ...........................................................................................................................7 2.1.1 概要 ........................................................................................................ 7 2.1.2 組織概要 ................................................................................................. 8 2.1.3 今年度の活動と今後の予定 ...................................................................... 10 2.1.4 CCS技術ロードマップ ...............................................................................11 2.1.5 技術グループの 12 の行動計画 ................................................................ 12 2.1.6 CSLF認定プロジェクト ............................................................................. 16 2.1.7 次回閣僚会合 ......................................................................................... 16 2.2 IEAGHG ...................................................................................................................18 2.2.1 概要 ...................................................................................................... 18 2.2.2 組織概要 ............................................................................................... 19 2.2.3 今年度の活動と今後の予定 ...................................................................... 19 2.2.4 調査研究報告書 ..................................................................................... 20 2.2.5 主催国際会議 ......................................................................................... 37 2.3 ロンドン条約 ..............................................................................................................40 2.3.1 概要 ...................................................................................................... 40 2.3.2 組織概要 ............................................................................................... 40 2.3.3 今年度の活動と今後の予定 ...................................................................... 41 2.3.4 海底下CO 2 地中貯留 .............................................................................. 41 2.3.5 海洋肥沃化 ............................................................................................ 42 2.4 CCS国際動向 ............................................................................................................43 2.4.1 概要 ...................................................................................................... 43 2.4.2 参加会議 ............................................................................................... 44 2.4.3 その他の国際機関の動向 ......................................................................... 45 2.4.4 地域別動向 ............................................................................................ 52 2.4.5 テーマ別動向 ......................................................................................... 93 第 3 章 CCS関連の規格化への対応 ..................................................................... 112 i 3.1 ISO/TC265 の概要と国内審議委員会設置 ............................................................. 112 3.1.1 ISO/TC265 の設立 ................................................................................112 3.1.2 ISO/TC265 に対応する国内審議団体 ....................................................115 3.1.3 ISO/TC265 に対応する国内審議委員会の設置 ........................................115 3.2 第 1 回ISO/TC265 総会(パリ)に向けての活動 ........................................................ 117 3.2.1 国内審議委員会(第1回)(2012 年 4 月 12 日、於:経済産業省会議室) ......117 3.2.2 各ワーキンググループ会合 .......................................................................119 3.2.3 ISO/TC265 への方針、第1回ISO/TC265 総会(パリ)にむけた対処方針 ...... 122 3.2.4 第1回ISO/TC265 総会(パリ) ........................................................... 126 3.2.5 第 1 回ISO/TC265 総会(パリ)を受けた各ワーキンググループ会合 ............ 134 3.2.6 第 2 回国内審議委員会(2012 年 7 月 6 日、於:第 5 東洋海事ビル会議室) 136 3.2.7 カナダ国際幹事からの情報収集 .............................................................. 137 3.3 第 2 回ISO/TC265 総会(マドリッド)に向けての活動 ................................................ 140 3.3.1 各ワーキンググループ会合 ...................................................................... 141 3.3.2 NWIP案作成(貯留および回収ワーキンググループ) .................................. 143 3.3.3 アドホックグループ ................................................................................. 145 3.3.4 各国の動向調査 .................................................................................... 153 3.3.5 第 3 回国内審議委員会(2013 年 1 月 23 日、於:第 5 東洋海事ビル) ........ 156 3.3.6 第 2 回ISO/TC265 総会(マドリッド)にむけた対処方針 .............................. 158 3.3.7 第 2 回ISO/TC265 総会(マドリッド) ........................................................ 159 3.4 第 2 回ISO/TC265 総会(マドリッド)以降の活動 ....................................................... 166 3.4.1 各ワーキンググループ会合 ...................................................................... 166 3.4.2 Chair’s Advisory Group ....................................................................... 168 3.4.3 その他の国内審議委員会活動 ................................................................ 168 3.5 関連するその他の調査活動 ..................................................................................... 168 3.5.1 専門家や経験者等からのコンサルテーション .............................................. 168 3.5.2 文献調査 .............................................................................................. 169 3.6 今後の取組み ........................................................................................................... 184 ii 要約 本事業では、国際機関等との連携および CCS 関連の規格化へ対応について、以下のと おり実施した。 国際機関等との連携として、CCS関連国際機関であるCSLF、IEAGHG R&D programme の活動に参加するとともに、CO 2 の海底下貯留に関係するロンドン条約の会合やその他の 国際会議等に参加して、CCS政策、大規模プロジェクト、研究開発、各種課題についての 動向調査を実施した。また、CSLF、IEAGHGの会合などにおいて、大規模実証試験や長 岡プロジェクトのほか、CCS政策や法規制などの日本のCCSへの取組みについての紹介を 行った。 CSLFについては、6 月と 10 月に開催された技術グループの会合等において、主にCCS 技術ロードマップ、技術グループの 12 の行動計画、CSLF認定プロジェクト、次回閣僚会 合についての情報収集を実施した。ロードマップは次回閣僚会合までに最終版を策定する ことを目指すが、2011 年版から大幅に改定され、各国が取り組むべき課題についての簡潔 で明確なメッセージを発信するように簡素化される。技術グループの 12 の行動計画のう ち、技術ギャップ、商用プロジェクトの貯留モニタリング、CO 2 -EORからCCSへの転換、 リスクと法的責任、CO 2 利用の 5 項目に対してタスクフォースが立ち上がったほか、4 項 目で進展ないしそのきっかけとなる事案が確認された。CSLF認定プロジェクトは、2012 年度に米国の工業プラントを排出源とする 3 件、豪州の連邦政府・州政府の支援を受けた 2 件の計 5 件のプロジェクトが新たに追加され、現在、活動中の認定プロジェクトは 28 件、完了した認定プロジェクトは 10 件となった。次回の閣僚会合は 2013 年 11 月に米国 で開催されることになり、EORに焦点を当てる見込みである。 IEAGHGについては、5 月と 11 月に開催された執行委員会の会合に参加するなどして、 IEAGHGが実施している調査研究、主催している国際会議やワークショップの動向につい て調査した。CCSの普及関連の 3 件、CCS付帯の発電所関連の 2 件、燃焼後回収関連の 2 件を含む 15 件の調査研究報告書が発行され、回収関連の 4 件、輸送・貯留・利用関連の 7 件を含む 12 件の新規調査研究が実施されることになった。IEAGHGによる主催会議は、 CCSの 実 証 試 験 や 商 用 プ ロ ジ ェ ク ト の 進 展 を 背 景 と し てCO 2 貯 留 の 環 境 影 響 へ の 関 心が 高まる中で初めて開催された環境影響に係るワークショップを含む 4 件のワークショップ、 第 11 回温室効果ガス制御技術国際会議等の計 6 件であった。今後、ワークショップにつ いては、環境影響のワークショップを継続するほか、貯留関連の 5 つのネットワーク(モ ニタリング、リスク、坑井、モデリング、環境影響)の合同ワークショップをより重視す ることになる。 ロンドン条約では 5 月と 10 月に開催された会合に参加し、主にCO 2 海底下地中貯留と 海洋肥沃化について情報収集を実施した。CO 2 海底下地中貯留は、圧入前の輸出と圧入後 の海底下地層内での越境移動に分けて議論されている。輸出については、ガイドラインを 検討中であり、越境移動については 2012 年CO 2 隔離ガイドラインが採択された。海洋肥 1 沃化に関しては、新しいワーキンググループが設置され議論が行われている。 この他、国内外で開催された国際会議等においてもCCS政策、大規模プロジェクト、研 究などの動向、CCSに係る各種課題について情報収集を実施した。世界のCCS政策の主な 進展としては、2012 年 7 月に豪州で導入された炭素税、また、炭素価格が機能しない中、 CCSも対象とする英国の固定価格買取制度の導入に向けた動きが挙げられる。国際エネル ギー機関(IEA)は 2012 年に発刊したエネルギー技術展望の分析に基づいて、CCS技術 ロードマップの最新版を 2013 年 5 月の発行を目標として策定中であり、2020 年までに取 るべきアクション等をまとめる予定となっている。CCSプロジェクトでは、石炭火力発電 所を対象とした中規模なCCSとして米国のPlant Barryと豪州のCallideの両プロジェクト の運転が開始された。大規模プロジェクトとしては、ガス処理施設をCO 2 発生源とし回収 量が 300 万トン/年を超える豪州のGorgonプロジェクト、石炭火力発電所をCO 2 排出源と する米国のKemperとカナダのBoundary Damの両プロジェクトの建設が順調に進捗して いる。また、ノルウェーで開所されたTechnology Center Mogstad(TCM)は世界最大の 燃焼後回収技術の試験・検証施設であり、回収コストの低減への貢献が期待されている。 CO 2 貯留に伴う環境影響の研究は、CCSプロジェクトの実施事例が増加していることから、 その情報共有が活発化している。また、これまで、CCSプロジェクトの実施に対する社会 的受容性の重要性が注目を集めてきたが、最近は、法的責任、あるいは法的責任とファイ ナンスとの関係への注目度が高まってきている。 また、CCS 関連の規格化へ対応として、平成 23 年度に設置が決定した ISO/TC265(二 酸化炭素回収・輸送・地中貯留)の活動へ対処するために、ISO/TC265 国内審議委員会お よび 4 つの国内ワーキンググループを設置し、ISO/TC265 対処方針の検討及び NWIP 案 等の検討を行った。さらに、本年度行われた 2 回の ISO/TC265 総会に対し、国内審議委 員会、各ワーキンググループの委員等の専門家を派遣するとともに、国内審議団体事務局 としてこれらの会合に出席し、議事内容の記録を行うとともに、日本の主張が十分活かせ るように専門家意見調整や連絡等の支援を行った。さらに第 1 回 ISO/TC265 総会で設置 されたアドホックグループ活動に参加し、国際テレコンファレンス、電子メール等による 審議を通じて、国内審議委員会、各ワーキンググループの意見を集約した日本の主張をア ドホックグループの検討結果に反映させた。 なお、CCS 関連の規格化に関する各国の動向を把握するために、関係国へのヒアリン グを行うとともに、関連する ISO 文書、他国の規格・標準等を調査し、CCS の ISO 化と の関連を整理した。 2 第1章 1.1 概要 事業目的 地球温暖化問題の解決に向けては、国際機関や諸外国との連携を図りつつ、我が国企業 の国際展開や技術の国際移転、地球温暖化対策交渉の進展等を効率的に促進するための取 組が必要である。このうち、二酸化炭素回収・貯留(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)は、CO 2 の大気中への排出量削減効果が大きいこと等から、地球温暖化対策の 重要な選択肢の一つと期待されており、既に諸外国では、多くの実証試験に加え、商業規 模 で のCCS事 業 も み ら れ る よ う に な っ て い る 。 我 が 国 に お い て も 地 球 温 暖 化 対 策 と して CCS の速やかな対応が求められており、現在実用化に向けて年間 10 万t-CO 2 程度の規模 で実施するCCSの実証試験や必要な研究開発を進めているところである。 本 事 業 で は 、 近 年 取 組 が 活 発 化 し て い る CCS 関 連 国 際 機 関 ( CSLF ( Carbon Sequestration Leadership Forum:炭素隔離リーダーシップ・フォーラム)、IEA-GHG R&D programme(International Energy Agency – Greenhouse Gas R&D programme: 温室効果ガス研究開発プログラム))やCO 2 の海底下貯留に関係するロンドン条約会合等 に参加して、動向を調査するとともに、我が国のCCSに関する取組を積極的にアピールす る。 また、平成 23 年度に設置が決定した ISO/TC265(分離・回収分野を除く)の活動へ対 応するとともに、CCS 関連の規格化に関する各国の動向の調査等を行い、CCS 関連の規 格化に関する議論を先導する。 1.2 1.2.1 事業概要 国際機関等との連携 CCS関連国際機関であるCSLF、IEAGHG R&D programmeの活動に参加するとともに、 CO 2 の海底下貯留に関係するロンドン条約の会合やその他の国際会議等に参加して、CCS 政策、大規模プロジェクト、研究開発、各種課題についての動向調査を実施した。また、 CSLF、IEAGHGの会合などにおいて、大規模実証試験や長岡プロジェクトのほか、CCS 政策や法規制などの日本のCCSへの取組みについての紹介を行った。 CSLF については、6 月にノルウェーで開催された技術グループ関連の会合、10 月に豪 州で開催された技術グループ関連の会合、および政策グループと技術グループとの合同会 合に参加し、主に CCS 技術ロードマップ、技術グループの 12 の行動計画、CSLF 認定プ ロジェクト、2013 年 11 月に開催予定の閣僚会合についての情報収集を実施した。 IEAGHG で は 、 5 月 と 11 月 に 開 催 さ れ た 執 行 委 員 会 の 会 合 に 参 加 す る な ど し て 、 IEAGHG が実施している調査研究、主催している国際会議やワークショップの動向につい て調査した。 ロンドン条約について、5 月に韓国で開催された科学グループ会合、10 月に英国で開催 された締約国会合に参加し、主にCO 2 海底下地中貯留、海洋肥沃化について情報収集を実 3 施した。 CSLF、IEAGHG、ロンドン条約に係る会合に加え、国内外で開催された国際会議等に おいても CCS 政策、大規模プロジェクト、研究などの動向、CCS に係る各種課題につい て情報収集を実施した。 1.2.2 CCS 関連の規格化への対応 平成 23 年度に設置が決定した ISO/TC265 の活動へ対応するため、国内審議委員会を設 置し、その下部組織として、回収、輸送、貯留、Q&V(定量化と検証)・クロスカッティ ングイッシューの 4 つのワーキンググループを設置した。また、CCS 関連の規格化に関す る各国の議論の動向を調査し、この調査結果を踏まえた上で、国内審議団体として国内で の議論を支援することにより、CCS 関連の規格化に関する議論を先導した。 (1) 国内審議委員会および国内ワーキンググループの設置 ①国内審議委員会の設置と会議開催 CCS についての規格化に対する原案作成を含む国内の対処方針案の作成と日本工業標 準調査会への提出、ISO/TC265 の国際活動に関与する日本代表の決定、CCS 関連の規格 化に必要な調査、検討、調整等を行うため、学識経験者、国内標準化団体、産業界からな る委員と関係省庁からなるオブザーバーで構成される、ISO/TC265 国内審議委員会(委員 長:東京大学 佐藤光三教授)を設置し、2012 年 4 月 12 日に第 1 回国内審議委員会、2012 年 7 月 6 日に第 2 回国内審議委員会、2013 年 1 月 23 日に第 3 回国内審議委員会を開催し た。開催に際して、日程調整、会議手配、各委員の招集、審議委員会の運営、議事内容の 記録・報告等の業務を行った。 ②国内ワーキンググループの設置と会議開催 国内審議委員会の下部組織として、回収、輸送、貯留、Q&V・クロスカッティングイッ シューの 4 つのワーキンググループを設置した。それぞれのワーキンググループはスケジ ュールにそって複数回の会議を開催し、各分野の ISO 化対応方針についての議論と、新業 務項目提案(NWIP)の作成及び他国から提案された NWIP の検討を行った。回収、貯留 のワーキンググループは NWIP 提案の詳細検討を行うためにワーキンググループの中に タスクグループを設置し、複数回の会議を開催した。これらの会議開催に際し、日程調整、 会議手配、各委員の招集、審議委員会の運営、議事内容の記録・報告等の業務を行った。 また、各ワーキンググループ間にまたがるテーマの調整、各委員への意見照会や意見のと りまとめ等の作業を行った。 (2) ISO/TC265 の活動への対応 ISO/TC265 総会が2回開催され、国内審議委員会、各ワーキンググループの委員等の専門 家を派遣するとともに、国内審議団体事務局としてこれらの会合に出席し、議事内容の記 4 録を行うとともに、日本の主張が十分活かせるように専門家意見調整や連絡等の支援を行 った。 ① 第 1 回 ISO/TC265 総会(パリ) 2012 年 6 月 5 日および 6 日にフランス・パリで開催され、ISO/TC265 のタイトル、ス コープ、組織等が決定された。また、各 WG(Working Gruop)のコンビーナ・事務局の 候補を推薦するリーダーシップ・アドホックグループ、ISO/TC265 のビジネスプラン原案 を作成するビジネスプラン・アドホックグループ、ISO/TC265 がカバーするスコープをよ り詳細に示した内部用のスコーピングドキュメントの案を作成するスコーピングドキュメ ント・アドホックグループの3つアドホックグループが設置された。、第2回 ISO/TC265 総会(マドリッド)に向け、国際テレコンファレンス、電子メール等による審議を通じて、 これらのグループの活動に参加し、国内審議委員会、各ワーキンググループの意見を集約 した日本の主張をアドホックグループの検討結果に反映させた。 ② 第 2 回 ISO/TC265 総会(マドリッド) 第 2 回 ISO/TC265 総会は、2013 年 2 月 4 日および 5 日にスペイン・マドリッドで開催 され、各 WG のコンビーナ及び事務局等が決定された。さらに、ビジネスプランおよびス コーピングドキュメントが決定された。また、本総会においてコンビーナから各 WG にお ける NWIP 案の説明があった。今後、コンビーナおよび事務局の準備ができあがったとこ ろから、エキスパートの募集が開始され、それぞれ WG 毎に規格原案の作成作業が開始さ れる。 なお、次回の ISO/TC265 総会は、2013 年 9 月中国の北京の予定である。 ③コンビーナ、事務局の獲得 上記2回の ISO/TC265 総会及び関連した活動を通して、日本として回収 WG のコンビ ーナと事務局、貯留 WG のコンビーナを獲得した。今後これらの分野の規格化は日本が先 導していくことになる。 ④国内審議団体としてのその他の業務 ISO/TC265 事務局との間で、推進方法の確認、スケジュール確認、文書配信等各種連絡業 務を行った。さらに NWIP 提案に際しては、国内の専門家と各国の専門家の連絡や意見交 換等の支援を行った。また国内審議委員会、ワーキンググループ各委員等への連絡や意見 照会、意見のとりまとめ等の作業を行った。 (3) CCS 関連の規格化に関する各国の動向把握 分野ごとに文献調査やヒアリング等により、CCS 関連の規格化に関する各国の動向調査を 行った。 ① 2012 年 7 月に ISO/TC265 事務局であるカナダへ訪問し、カナダが検討している規格 化に関してヒアリングを実施し、日本の考え方を説明するとともに、今後の ISO/TC265 の進め方等について意見交換をした。 5 ② 2012 年 11 月に GHGT-11(京都開催)に参加し、各国の CCS の規格化に関する情報 収集を行うとともに、今後の協力関係を構築した。 ③ 2013 年 1 月に各ワーキンググループのコンビーナ・事務局の希望表明に関する投票を 有利に進めるために欧州各国を訪問し、日本の考え等を説明するロビー活動を行なうとと もに、各国の CCS 規格化に関する考えや動向を調査した。 ④ 関連する文献調査を行い、規格化に対する各国の動向調査を行った。 6 第2章 国際機関等との連携 CSLF(Carbon Sequestration Leadership Forum:炭素隔離リーダーシップ・フォー ラム)、IEAGHG(IEA Greenhouse Gas R&D Programme)、ロンドン条約といった国際 機関や国際枠組みとの連携を通して、また、その他の CCS 関連会議に参加して収集した CCS に係る政策や技術の動向情報を以下にまとめる。 2.1 2.1.1 CSLF 概要 CSLF は CCUS を推進する国際的な集まり(フォーラム)であり、メンバー国の CCS を所轄する省庁の代表者が参加る政策グループと CCS 専門家が参加する技術グループか ら成る。 本事業では、6 月にノルウェーで開催された技術グループ関連の会合、10 月に豪州で開 催された技術グループ関連の会合、及び政策グループと技術グループとの合同会合に参加 し、主に CCS 技術ロードマップ、技術グループの 12 の行動計画、CSLF 認定プロジェク ト、2013 年 11 月に開催予定の閣僚会合についての情報収集を実施した。 ロードマップは 2011 年版から大幅に改定され、各国の大臣に対して、各国が取り組む べき課題についての簡潔で明確なメッセージを発信するように簡素化される。閣僚会合ま でに最終版を策定することを目指す。 技術グループの 12 の行動計画は、2011 年 9 月に開催された閣僚級会合で承認された新 5 カ年行動計画において承認されたものである。このうち、技術ギャップ、商用プロジェ クトの貯留モニタリング、CO 2 -EORからCCSへの転換、リスクと法的責任、CO 2 利用の 5 項目に対してタスクフォースが立ち上がったほか、4 項目で進展ないしそのきっかけとな る事案が確認された。 CSLF 認定プロジェクトとして、米国の工業プラントを排出源とする 3 件、豪州の連邦 政府・州政府の支援を受けた 2 件の計 5 件のプロジェクトが新たに追加された。これによ り、現在、活動中の認定プロジェクトは 28 件、完了した認定プロジェクトは 10 件となる。 次回の閣僚会合は 2013 年 11 月に米テキサス州ヒューストンで開催することになった。 テーマは議論中ではあるが、EOR に焦点を当てる方向になっている。 な お 、 10 月 の 政 策 グ ル ー プ と 技 術 グ ル ー プ と の 合 同 会 合 で は 、 METI 環 境 政 策 課が 「Update on Nagaoka CO2 Storage Project」と題したプレゼンテーションを行い、長岡 プロジェクトの紹介を行った。 7 2.1.2 組織概要 CSLFは、米国エネルギー省(DOE:Department of Energy)が事務局を務め、OECD 加盟国やブラジル・中国等の 24 カ国のほか、EUが参加している。CSLFの目的は、CO 2 の分離回収と輸送および長期的に安全な貯留あるいは利用(CCUS)について、コスト低 減に係る効率的な技術改良の進展に寄与すること、同技術を国際的に広く利用可能にする こと、回収と貯留に関連した幅広い問題を特定し対処することである。発足当初はCO 2 の 利用を除くCCSを対象として活動していたが、2011 年の北京での閣僚会合において、EOR 等 の 経 済 的 付 加 価 値 を 持 つ CO 2 の 利 用 ( Utilization ) を CCS に 加 え 、 CCUS( Carbon Capture, Utilization and Storage)とし、その実用化に向け推進していくことになった。 実際の活動は、政策グループと技術グループに分かれている(図 2.1-1 参照)。政策グル ープはメンバー国の CCS 担当省庁の代表者から成り、全体の枠組みや政策の統括および 国際協力プロジェクトのレビューあるいはファイナンス等のタスクフォースの会合の開催 といった活動を行う。日本からは METI 産業技術環境局地球環境連携・技術室が参加して いる。技術グループはメンバー国の CCS 専門家から成り、研究活動の方向性を明確にす るとともに、国際協力プロジェクトのレビュー並びに政策グループへの報告・提言をその役 割とする。日本からは RITE が地球環境連携・技術室に指名されて参加している。毎年、 両グループ合同の年次会合が開催され重要議題が話し合われている。さらに、2 年ごとに 閣僚級会議が開かれている。次回は 2013 年 11 月に米国で予定されている。 政策グループと技術グループの活動を通して、種々の報告書が作成されている。そのう ちの一つに、メンバー国の CCS プロジェクトの状況等を取りまとめた CSLF 技術ロード マップがある。また、CSLF がメンバー国の CCS プロジェクトに認証を与えるスキームが ある。 8 図 2.1-1 CSLF 組織図 9 2.1.3 今年度の活動と今後の予定 CSLFの今年度の活動と今後の予定を以下にまとめる。 (1) 今年度の活動 CSLF は 2012 年度中に以下のメンバー会合を実施した。 ・2012 年 6 月 ノルウェー、Bergen 11 日:タスクフォース会合、12 日:技術グループ会合 ・2012 年 10 月 豪州、Perth 24 日:タスクフォース会合、25 日:政策グループ会合、技術グループ会合 26 日:政策グループ・技術グループ合同会合 また、CSLF は以下の会議を開催した。 ・2012 年 6 月 CSLF CO 2 Capture Interactive Workshop(ノルウェー) ・2012 年 7 月 Risk and Liability of Geologic Storage(フランス) ・2012 年 8 月 Capacity Building Activities(ブラジル) ・2012 年 10 月 Capacity Building Activities(中国) この他、2011 年 10 月の会合以降、Integration ワークショップ(2011 年 11 月、ロン ドン)、CSLF Financing 円卓会議(2012 年 1 月、パリ)、CSLF Capacity Building Activities (2012 年 3 月、メキシコ)を開催している。 本年度の CSLF のメンバー会合では、主に CCS 技術ロードマップの改訂、2011 年 9 月 の北京での会合で合意された 12 の行動計画の取組み、5 件の CSLF 認定プロジェクトの 申請、2013 年に開催予定の閣僚級会合が議論された。これらについては、2.1.4 から 2.1.7 にまとめる。このほかの主な事項として以下が挙げられる。 ・政策グループの議長国として米国が再選された。任期は 3 年間。 ・技術グループの議長国としてノルウェーが、副議長国として豪州、南アフリカが再選 され、新たにカナダが副議長国として選ばれた。任期は 3 年間。 ・CSLF 事務局が CCS 技術の ISO 化の活動(ISO/TC265)にリエゾンとして参加する ことが TC265 によって承認された。リエゾンにある 3 つのカテゴリのうち、最も積 極的に関わるカテゴリ A としての参加となる。 ・10 月の政策グループ・技術グループ合同会合において、METI環境政策課が「Update on Nagaoka CO2 Storage Project」と題して、長岡プロジェクトの概要、モニタリ ング結果、地震の影響についてのプレゼンテーションを合同会合にて行った。フラン ス、サウジアラビア、豪州から地震に対してCO 2 貯留が健全であった良い例だとの コメントがあった。 10 (2) 今後の予定 技術グループ関連の会合が 2013 年 4 月にイタリア・ローマで開催される。仮のスケジ ュールは以下の通りである。 4/16(火) タスクフォース等の会合 4/17(水) 技術グループ会合 4/18(木) モニタリングに関するワークショップ 4/19(金) サイト訪問(回収プラント) その後、技術グループ、政策グループそれぞれの会合、両グループの合同会合が 2013 年 11 月の閣僚会合の開催時に予定されている。仮のスケジュールは以下の通りである。 11/4(月)~6(水) タスクフォース、政策グループ、技術グループによる各種会合 11/7(木) 閣僚会合 11/8(金) サイトツアー 2014 年春の技術グループ会合については、韓国が主催を申し出ている。 2.1.4 CCS技術ロードマップ CSLF による CCS 技術ロードマップは 2009 年の初版以降、2011 年まで、毎年、改訂 されていたが、2012 年版は策定せず、2013 年の閣僚会合に向けて大幅に改定される。各 国の大臣に対して、各国が取り組むべき課題についての簡潔で明確なメッセージを発信す るロードマップへと改変されることになる。各国の RD&D の状況はロードマップから分 離されて CSLF のウェブサイトに移管された。日本の状況については、これまでの東芝の 回収パイロットの記載に加えて、バブコック日立、川崎重工、新日鐵、JFE のパイロット プラントの記載を追記するなどの改訂を行って RITE から CSLF 事務局に提出し、すでに CSLF のウェブサイトに掲載されている。 改訂版では、2020 年といった短期的な道筋も明確化される。策定に当たっては、ノル ウェー政府が資金負担をして SINTEF 社の 3 人のコンサルタントの協力を仰ぐなど、ノル ウェーが主導する予定だが、steering committee を構成してそこでスコープや全体像を決 定していく。また、ロードマップを別途、2013 年の 5 月の発行に向けて策定作業中の IEA とも協力をする。IEA は CSLF からの技術的なインプットを期待してこの協力を歓迎して いる。12 月末に第一案が回覧される予定である。次回技術会合(2013 年 4 月、ローマ) 前に steering committee 会合を開催し、閣僚会合までに最終版を策定することを目指す。 11 2.1.5 技術グループの 12 の行動計画 2011 年 9 月に開催された閣僚級会合で承認された新 5 カ年行動計画において、技術グ ループには 12 の行動計画がある。このうち、5 項目対してタスクフォースが立ち上がり、 4 項目で進展ないしそのきっかけとなる事案が確認された。12 の行動計画の現状を以下に まとめる。 ・行動計画 1: 技術ギャップの除去(Technology Gaps Closure) 豪州を議長国とするタスクフォースが立ち上がった。技術ロードマップと併せて一つの 資料となるように、機会(Opportunity)とギャップを 1 つの一覧表(スプレッドシー ト ) の 形 に ま と め る 。 各 技 術 に つ い て は 、 NASA 等 に よ る 技 術 成 熟 レ ベ ル ( TRL: Technical Readiness Levels)および知識レベルを基に整理する。豪州のほか、米国、 ノルウェー、韓国、GCCSI、IEAGHG が積極的な参加を確約している。2013 年 3 月に ドラフト版を策定し、7 月までに修正した上で CSLF の承認を受けて、11 月の閣僚会議 へのインプットとする。 ・行動計画 2: 最優良事例の知識共有(Best-Practice Knowledge Sharing) CSLF による認証プロジェクトを所轄する PIRT が、知識共有の経験が豊富な GCCSI のプラットフォームを利用して活動していく見通し。 ・行動計画 3: エネルギー・ペナルティの提言(Energy Penalty Reduction) 英国エネルギー気候変動省(DECC)がコスト削減のタスクフォースを持っており、11 月に CCS Accosiation(CCSA)がまとめた中間報告書を発表する予定となっている。 この報告書も参考にして、次回の技術グループ会合で今後の活動を検討する。 ・行動計画 4: 工業排出源を持つ CCS(CCS with Industrial Emissions Sources) 2013 年 1 月にクリーン・エネルギー・ミニストリアル(CEM)が工業排出源を持つ CCS に関する報告書を発表することになっている。この報告書も参考にして、次回の 技術グループ会合で今後の活動を検討する。 ・行動計画 5: CO 2 の圧縮と輸送(CO 2 Compression and Transport) 進展なし。 ・行動計画 6: 商用プロジェクトのための貯留とモニタリング(Storage and Monitoring for Commercial Projects) ノルウェーを議長国とするタスクフォースが立ち上がった。6 月のノルウェーの会合で は、目的として「CCS 標準化の評価および排出権クレジットメカニズムへの応用につ 12 いて検討する」ことを計画するとの報告があった。一方、10 月の豪州での会合では、 既存の規準やガイドラインを調査して、経済性や政策的な観点ではなく、技術的な観点 から欠点・不足等を洗い出すとの報告があった。年末までに中間報告書を策定する予定 となっている。同報告書の目次案には、貯留ポテンシャル調査、サイト性能評価、サイ ト選定、シミュレーションなどの目的外の項目が入っており、タスクフォースで再検討 されることになった。EC から CO2ReMove や CO2Care といった FP7 プロジェクトの 情報を提供したい旨、申し出があった。 なお、この活動について、6 月のノルウェーの会合では、ISO との差別化を課題として 挙げられた。これに対して、CSLF は、CCS 関係団体としては唯一、メンバー各国の政 府から成る政策グループを持つという特徴を持つため、これを活かすやり方で ISO 活 動をチェックするといった案が出された。一方、10 月の豪州での会合では、CCS 技術 の ISO 化と連携する形で行われるべきとのコメントが出されたものの、少なくとも 3 年を要する ISO 化とはスピード感が異なるため、連携はせずに活動することが確認さ れた。 ・行動計画 7: CO 2 EORからCCSへの転換にかかる技術的課題(Technical Challenges for Conversion of CO 2 EOR to CCS) カナダを議長国とするタスクフォースが立ち上がった。EORは経済性を向上させる未利 用の選択肢であり、例えば米国で経済性のある石油増進を実施するだけでも 1,990 万ト ンのCO 2 -EORを実施することにより 670 億バレルの増産が期待できる。また、前回閣 僚 級 会 合 で CSLF憲 章 の 対 象 を CCSか ら CCUSに 切 替 え 、 新 た に 加 わ っ た CO 2 の 利 用 (Utilization)の中で 、EORは貯留における最も実績のある技術で ある。しかし現在 100 件超のCO 2 -EORプロジェクトがある中で、CCSとして運用しているのはわずか 1 件にとどまる。本タスクフォースではCO 2 -EORのCCSへの転換に係る技術的課題をま とめた報告書を策定する。この報告書では、経済的・政策的課題は対象外となる。ドラ フト初版は次回の技術グループ会合で提示して 2013 年 8 月に最終コメントをメンバー に求め、11 月の閣僚会合までに完成させる。 10 月の合同会合においてカナダが行ったプレゼンテーションによると、CO 2 EORプロ ジェクトは、CO 2 混合タイプ(水を併用する)が 1972 以降、119 件(米国 112、カナ ダ 6、ブラジル 1)、非混合タイプ(CO 2 のみを利用)が 1974 年以降、16 件(米国 8 件、トリニダード 5 件、ブラジル 2 件、トルコ 1 件)実施されている。このうち、貯留 CO 2 をモニタリングしているカナダのWeyburnのみがCCSと言える。サウジアラビアの 代表は、同国は現時点ではEORは不要であり、また、国内に天然CO 2 が存在しないと述 べた。中国はEOR、EGR、地熱に取り組んでおり、さらにカリウム等の溶解鉱物の生 産や地下水のくみ上げも検討している。 13 ・行動計画 8: CCS と他資源との競合(Competition of CCS with Other Resources) IEAGHG が同様な内容の調査研究報告書を取りまとめており、この報告書も参考にし て、次回の技術グループ会合で今後の活動を検討する。 ・行動計画 9: CCS のライフ・サイクル・アセスメントと環境フットプリント(Life Cycle Assessment and Environmental Footprint of CCS) 進展なし。 ・行動計画 10: リスクと法的責任(Risk and Liability) 米国とフランスを共同議長国として、技術グループが担当していた“貯留”のリスクと 政策グ ループ が担 当し ていた 法的責 任を 総合 的に考 えるタ スク フォ ースが 政策グ ルー プとともに立ち上げられた。最初の活動として、2012 年 7 月に IEA、GCCSI とともに リスクと法的責任に係るワークショップを開催し、研究者、企業、政府・規制当局より 62 名の参加を得た。いかに環境 NGO の参加を得るかが今後の課題となる。なお、ワー クショップの報告書が出されているが、網羅的でよく分からないとのコメントを出した フランスが要約版を作成することになった。なお、同ワークショップの概要を 2.4.5(3) にまとめている。 技術グループ会合では、豪州の代表から、同国のビクトリア州においては長期法的責任 は事業者にあるとの情報提供があったほか、企業にはリスクを制御する十分な経験があ る、致命的なリスクは企業にとってプロジェクトの終了を意味し、一般の人々にとって は漏えいを意味する、CCSは 100%安全とは言えないが、CCS can be safeと言えば漏え いした場合の結果を示さなければならない、一般の人たちはリスクを一般的な話と結び つけるため、コミュニケーションの専門家が必要となる、一般の人たちにとってのリス クは地 下水の 汚染 と圧 入CO 2 が急 激に噴 出し た場合 の家屋 等の 被害 のみで ある等 の意 見が出された。 ・ 行 動 計 画 11: カ ー ボ ン ・ ニ ュ ー ト ラ ル CCS と カ ー ボ ン ・ ネ ガ テ ィ ブ の CCS (Carbon-neutral and Carbon-negative CCS) 進展なし。 ・行動計画 12: CO 2 利用のオプション(CO 2 Utilization Options) 米国を議長国とするタスクフォースが立ち上がった。同タスクフォースは、2012 年 10 月にEORを含むCO 2 利用に係る知見をまとめたフェーズ 1 の報告書を公表し、メンバー 国に回覧された。同報告書で示されたCO 2 利用技術を表 2.1-1 に示す。 14 表 2.1-1 CO 2 利用オプションのタスクフォースのフェーズ 1 報告書でまとめられたCO 2 利用技術の一覧 フェーズ 2 の報告書では、いくつかの技術をより詳しく調査してまとめることになるが、 10 月中に対象技術や担当者を決定したのち、2013 年 6 月にドラフト、同年 8 月に最終 版を策定する。 ECから 2014 年から 2020 年にかけて実施される第 8 期欧州研究開発枠組み(FP8)で はCO 2 利用の研究も出資対象となるとの情報提供があった。 15 2.1.6 CSLF認定プロジェクト 技術グループは 6 月と 10 月の会合でそれぞれ 3 件と 2 件のプロジェクトを CSLF 認定 プロジェクトとして推薦することを決定した。5 件のプロジェクトとその提案国とパート ナー国は以下の通り。なお、各プロジェクトの概要は 2.4.4「地域別動向」内に記載してい る。 ・Illinois Basin – Decatur プロジェクト 提案国:米国、パートナー国:英国 ・Illinois Industrial Carbon Capture and Storage プロジェクト 提案国:米国、パートナー国:英国 ・Air Products CO 2 Capture from Hydrogen Facilityプロジェクト 提案国:米国、パートナー国:フランス ・South West Hub プロジェクト 提案国:豪州、パートナー国:米国、カナダ ・Carbon Net プロジェクト 提案国:豪州、パートナー国:米国 技術グループからの推薦を受けて、政策グループが 10 月の政策グループと技術グルー プとの合同会合にてこれら 5 件のプロジェクトを CSLF 認定プロジェクトとすることを決 定した。これにより活動中の認定プロジェクトは 28 件となった。なお、完了した認定プ ロジェクトは 10 件ある。 このほか、CSLF 認定プロジェクト申請書の簡素化が検討され、項目数が 120 程度から 約 30 に削減された。 2.1.7 次回閣僚会合 CSLF 事務局である米国 DOE が、次回の閣僚会合を 2013 年 11 月に米テキサス州ヒュ ーストンで開催することを提案し、CSLF メンバー間で 10 月の会合において議論した。 閣僚会合のテーマとして、CSLF事務局は“CCUSのビジネスケース:エネルギー持続 可能性に則し、経済発展に寄与し、貧困と闘うための炭素利用”を提案した。実質、普及 が遅 れて い るCCSの 先 導役 とし て 期待 され る EORに焦 点を 当 てる こ とを 提案 し たこ とに なる。しかし、多くのメンバーから、CO 2 -EORは重要だが、あくまでもCCSへの橋渡し に過ぎない、EORの状況は国によって違う、あまりにEORを強調すると大臣の参加国が限 定される可能性がある、CSLFの対象はあくまでもCO 2 の貯留でありCO 2 -EORではない等 とのコメントが出された。また、技術グループ内では、CCSがCCUSの一部分、CCUSが CCSの一部分、CCSとCCUSは別物で一部分が重なるといった異なる理解がなされている ことが明確になった。このほか、 “貯留は安全”というメッセージを出すことの重要性が共 有され、“貧困”をテーマに含めるのは不適切とする意見が大勢を占めた。テーマはEOR 16 となる方向にあるが、今後、詳細を詰めていくことになる。 大臣会合のセッションとして以下の 3 セッションが CSLF 事務局より提案された。 セッション 1:持続可能なエネルギーの将来を確実にする化石燃料と CCUS の戦略 的役割 セッション 2:CCUS と炭素隔離の発展のためのビジネスケース ※ 先進国における 4 ないし 5 件の新たな大規模 CCUS プロジェクト (EOR と CCS を含む)の機会についての GCCSI による講演、少なく とも 1 件の発展途上国における大規模 CCS プロジェクトの機会につい てのアジア開発銀行(ADB)による講演を行う。 セッション 3:CCUS 開発の加速、世界的なチャレンジへの対応(大規模 CCUS プ ロジェクトへの資金供給と奨励策を機能させ、促進することを含む) における CSLF の役割 技 術 グ ル ー プ か ら 政 策 グ ル ー プ に 対 し て 、 ロ ー ド マ ッ プ 、 タ ス ク フ ォ ー ス 、 IEA や GCCSI などの他の組織との協力推進といった技術グループの成果を閣僚会合用のペーパ ー等に反映するように要望が出された。また、技術グループの閣僚会合の準備・計画への 関与が限定されていることへの不満が出され、閣僚会合に向けた steering committee に技 術グループ議長なども参加することになった。 17 2.2 2.2.1 IEAGHG 概要 IEAGHG は、IEA のもとで締結された実施協定に基づいて設立され、主に CCS 技術の 評価、普及促進、評価調査の情報発信、国際協力の推進を行っている。 本事業では、5 月と 11 月に開催された執行委員会の会合に参加するなどして、IEAGHG が実施している調査研究、主催している国際会議やワークショップの動向について調査し た。 調査研究については、2012 年度中に 15 件の報告書が発行されるとともに、12 件の新 規調査研究が実施されることになった。発行した報告書の調査研究テーマは、CCSの普及 関連が 3 件(障壁、法的責任と資金調達、地域への影響)、CCS付帯の発電所関連が 2 件 (出力変動を伴う運転、ガス火力のCCS適用)、燃焼後回収関連が 2 件(廃棄物、プラン トの規模拡大)、貯留関連が 1 件(貯留の微生物への影響)、IEAGHG主催のワークショッ プのまとめが 4 件、その他 3 件(シェールガス関連、コストの算定法、IEAGHGの新戦略 の検討)であった。また、新規に承認された調査研究は 12 件であり(条件付き承認を含 む)、その内訳は回収関連が 4 件(ガス生産時のCO 2 吸着、石炭火力CCSのコスト、燃焼 後回収の効率改善のためのプロセス変更、精油施設へのCCSレトロフィット)、輸送・貯 留・利用関連が 7 件(環境影響、断層の再活性化、貯留係数、不純物の影響、出力変動を 伴う運転による影響、CO 2 -EORによるCO 2 削減量、CO 2 -EORのコスト)、その他が 1 件 (CO 2 以外の温室効果ガス)であった。 2012 年度の主催会議は、社会研究、貯留、環境影響、高温固体ルーピングの各ワーク ショップ、若手向けのサマースクール、第 11 回温室効果ガス制御技術国際会議(GHGT-11) の計 6 件であった。CO 2 貯留の環境影響に係るワークショップは、CCSの実証試験や商用 プロジェクトの進展を背景として環境影響への関心が高まる中で、実質、初めて開催され、 今後も継続されることになった。今後の主催会議の方向性として、国際会議はGHGTを最 も重視すること、ワークショップについては、貯留関連の 5 つのネットワーク(モニタリ ング、リスク、坑井、モデリング、環境影響)は合同ワークショップをより重視すること、 坑井、社会研究の両ネットワークのワークショップは縮小ないし廃止することになってい る。 な お 、 11 月 の 執 行 委 員 会 の 会 合 に お い て 、 日 本 CCS 調 査 株 式 会 社 が 「 CCS Demonstration Project in the Tomakomai Area」と題したプレゼンテーションを行い、 日本の大規模実証を紹介した。 18 2.2.2 組織概要 IEAGHG は、IEA のもとで締結された実施協定(Implementing Agreement)に基づ いて 1991 年設立された。IEAGHG は温室効果ガスの削減技術の評価、普及促進、評価調 査の情報発信、国際協力の推進を目的としている。実際は、初期の頃から、温室効果ガス の削減技術のうち、CCS に特化した活動となっている。 IEA の関連団体ではあるが IEA とは別の組織であり、英国ロンドンに事務局を持つ。 現在、19 か国、欧州委員会(EC)、石油輸出国機構(OPEC)および 21 のスポンサー機 関が参加している。2012 年度からはメキシコの締約機関として IIE、スポンサー機関とし て Petrobras が新たに参加し、スポンサー機関の Conoco Philips、Masdar、Eni、Scottish Power が脱退した。なお、台湾の政府と企業が参加を希望したが、IEAGHG は政治的な 理由により参加を認めることができなかった。日本からは、締約機関と参加している RITE のほか、スポンサー機関として日揮株式会社が参加している。また、IEAGHG は 2012 年 に一般財団法人石炭エネルギーセンターと覚書を交わし、1 年間、試行的にお互いの会議 に自費参加できるほか、公開レポートにアクセスできることになった。 2.2.3 今年度の活動と今後の予定 執行委員 会の今 年度の活 動と今後の 予定を以 下に まとめる。 なお、調 査研 究報告書と 主催 学会・ワークショップの本年開催分と今後の予定は、2.2.4 と 2.2.5 にまとめる。 (1) 今年度の活動 執行委員会は 2012 年度中に以下のように 2 回の会合を実施した。 ・第 41 回執行委員会:2012 年 5 月 9 日~10 日、ノルウェー・Bergen ・第 42 回執行委員会:2012 年 11 月 15 日~16 日、京都 11 月の執行委員会において、事務局より副議長を 1 名から 2 名に増員することが提案 され承認された。その背景には、副議長の会議参加をより確実にすることと、1 人よりも 2 人 の 知 見 の 方 が 有 用 で あ る と の 事 務 局 の 判 断 が あ っ た 。 副 議 長 と し て 、 Sven-Olov Ericson 氏(スウェーデン)が再選されるとともに、Gunter Siddiqi 氏(スイス)が新た に選出された。 IEAGHG の 2012 年度の予算総額は約 208 万ポンドであり、その内、調査研究経費が 約 70 万ポンドであった。経費削減を目的として、いくつかのネットワークの閉鎖、機関 誌の印刷の中止、ウェブサイト上にある更新がされていないデータベースの削除を検討し ている。 執行委員会メンバーの有志により、IEAGHG の戦略も見直し中である。IEA や他の IEA 傘下の実施協定機関との協力強化、市場・政策などの情報力強化、メディア・政策立案者 への影響力向上、スタッフ強化が検討されている。 IEAGHG が CCS 技術の国際標準化の活動(ISO/TC265)にリエゾン機関として参加す 19 ることが ISO/TC265 によって 9 月に承認された。IEAGHG からの代表者として Tim Dixon 氏を予定している。 なお、11 月の執行委員会において、日本 CCS 調査株式会社より、 「CCS Demonstration Project in the Tomakomai Area」と題したプレゼンテーションを行い、日本の大規模実証 試験の計画概要、計画スケジュール、貯留サイトの地質調査および環境調査、社会的受容 性向上に向けた取り組みなどを紹介した。 (2) 今後の予定 2013 年度以降の執行委員会の会合の予定は以下のとおりである。 ・第 43 回執行委員会:2013 年 5 月 8 日~9 日、カナダ・Regina ※7 日にシンポジウム、10 日にサイト訪問を予定。 ・第 44 回執行委員会:2013 年 10 月 1 日~2 日、スウェーデン ※3 日にシンポジウムあるいはサイト訪問を予定。 ・第 45 回執行委員会:2014 年春 フランス(未定) ・第 46 回執行委員会:2014 年 10 月 2 日~3 日 2.2.4 米国テキサス州・Austin 調査研究報告書 IEAGHG が 2012 年度に発行した調査研究報告書、5 月と 11 月の執行委員会会合で報 告のあった作成中の調査研究報告書のうち、2012 年度中に発行されなかった報告書、2012 年度に開催された 2 回の執行委員会で話し合われた新規テーマについて、順に以下にまと める。 (1) 2012 年度に発行された報告書 IEAGHG は 2012 年度中に表 2.2-1 に示した 15 件の調査研究報告書を発行した。調査 研究のテーマは多岐に富んでおり、CCS の普及関連が 4 件(障壁、法的責任と資金調達、 地域への影響、コストの算定法)、CCS 付帯の発電所関連が 2 件(出力変動を伴う運転、 ガス火力の CCS 適用)、燃焼後回収関連が 2 件(廃棄物、プラントの規模拡大)、貯留関 連が 1 件(貯留の微生物への影響)、そのほか、シェールガス関連が 1 件、IEAGHG 主催 のワークショップのまとめが 4 件、IEAGHG の新戦略の検討が 1 件となっている。 このうち、IEAGHG 主催のワークショップをまとめた 4 件の報告書と関係者外秘とさ れた 2 件の報告書を除いた 9 件の報告書の概要を以下にまとめる。なお、ワークショップ のまとめについては、2.2.4(1)に記載している。 20 表 2.2-1 2012 年度に発行された調査研究報告書の一覧 No. タイトル 2012-06 Operating Flexibility of Power plants with CCS Gaseous Emissions from Amine Based Post-Combustion CO 2 Capture Processes and Methods for Their Deep Removal CO 2 Capture at Gas Fired Power Plants Barriers to Implementation of CCS: Capacity Constraints SWOT/Scenario Analysis Financial Mechanisms for Long-Term CO 2 Storage Liabilities The CCS Landscape in the Context of Community Values Microbial Effects on CO 2 Storage Summary Report of the 3rd IEAGHG Social Research Network Meeting Building Knowledge for Environmental Assessment of CO 2 Storage: Controlled Releases of CO 2 and Natural Releases Workshop Summary Report of the 2nd IEAGHG Joint Network Meeting Post-Combustion CO 2 Capture Scale-Up Study 4th IEAGHG Network Meeting and Technical Workshop on High Temperature Solid Looping Cycles Shale Gas Greenhouse Gas Footprint Review Toward a Common Method of Cost Estimation for CO2 Capture and Storage at Fossile Fuel Power Plants 2012-07 2012-08 2012-09 2012-10 2012-11 2012-13 2012-TR3 2013-01 2013-02 2013-03 2013-05 2013-06 2013-TR1 2013-TR2 発行日 (年/月) 2012/6 本報告書中 の対応 No ① 2012/5 ② 2012/7 ③ 2012/7 ④ 2012/8 ※2 2012/11 ⑤ 2012/11 ※2 2012/10 ⑥ 2013/1 ※1 2013/1 ※1 2013/1 ※1 2013/2 ⑦ 2013/3 ※1 2013/3 ⑧ 2013/3 ⑨ ※1:IEAGHG のワークショップの概要であるため、その概要を本報告書に記載しない。 ※2:関係者外秘の報告書とされているため、その概要を本報告書には記載しない。 21 ① Operating Flexibilty of Power plants with CCS タイトル:CCS を併設する発電所の稼働の自由度 実施者:Foster Wheeler Italiana(イタリア) CCS を併設する発電所は、排出基準、電力需要の変動、その他の低炭素発電技術の利 用状況を考慮して、柔軟に運転できることが求められる。本研究では、燃焼後回収の石炭 火力発電所と NGCC、燃焼前回収の IGCC、酸素燃焼の石炭火力発電所について、発電出 力レベルの変動を考慮したうえで最適な運転をするために適用可能な技術を分析した。 発電所のピーク運転時に回収設備を停止すると、発電出力は上昇するがCO 2 排出量が増 加する。回収設備を停止または低出力運転するには追加的な初期投資が必要になるが、発 電所の経済性は、炭素排出コスト、停止時間、停止時の電力料金等さまざまな要因を含め て検討するべきである。また、本研究は、回収設備を停止したために増加したCO 2 排出分 をオフピーク時に相殺できるよう、排出基準は 1 年間ほどの長期間の排出量を評価するの がよいと提案する。回収設備の柔軟な稼働を実現するための技術として、回収液、液化酸 素、水素、液化窒素、圧縮CO 2 を貯蔵する技術の初期投資と効率等を比較検討した。その 結果、発電所のニーズにあった最適な技術を選択することにより、CCS有の発電所がCCS 無の発電所よりもより柔軟に稼働できることが分かった。CCSを備えた発電所の稼働自由 度について、更に詳細な研究が求められる。 ② Gaseous Emissions from Amine Based Post-Combustion CO 2 Capture Processes and Methods for Their Deep Removal タイトル:アミンによる燃焼後回収プロセスからの気体排出物とその除去 実施者:CSIRO(豪州) 多くのCO 2 の燃焼後回収システムで、MEA吸収液が採用されている。MEAを含むアミ ンの熱劣化生成物や酸劣化生成物は、環境と健康に有害な化合物を生成する。本研究は、 (1) MEA燃焼後回収ユニットから放出される主な有害排出物を特定し、(2) 排出削減のた めのプロセスと手法を検討し、(3) 排出物に対する排出基準と規制を検討し、(4) MEA燃 焼後回収の代替技術と排出抑制プロセスを評価することを目的とし、天然ガス火力複合発 電所と石炭火力発電所にMEA燃焼後回収ユニットを設置した場合の排出物を、文献調査と ASPENモデルを用いたシミュレーションにより評価した。その結果、排出物は主にアンモ ニアであるが、稼働状況等によりニトロソアミンなど発ガン性物質が検出されることがわ かった。これらの排出物は、洗浄工程として一般的に利用されている水洗浄を酸洗浄など に変更することで削減できる。現在、MEA燃焼後回収ユニットからの排出物を対象とする 直接的な排出基準はない。この他に、アミノ酸塩回収とチルドアンモニア回収の検討も行 った。今後の課題としては、排出される化学物質についての更なる検討、パイロット規模 試験での排出物の実測、排出物の蓄積や放出後の排出物の行方についての検討が望まれる。 また、酸洗浄は簡単で有効な措置であるが、既存プロセスのエンジニアリング設計につい 22 ても更なる検討がなされるべきである。 ③ CO 2 Capture at Gas Fired Power Plants タイトル:ガス火力発電所におけるCO 2 回収 実施者:Parsons Brinckerhoff(英国) シェー ルガス 供給 の増 加や原 子力に 対す る懸 念から 天然ガ ス火 力発 電所に 対する 関心 が高まっている。長期的には、新設のガス火力発電所は CCS 付きで建設して操業するこ とが要求されることが予想される。しかしながら、ガス火力発電所は CCS を設置した場 合の情報が石炭火力に比べて少ない。このため、本研究では、以下の 6 パターンの天然ガ ス火力複合発電所(ネット出力:約 800MW)の性能とコストについての比較検討を実施 した。 1.CO 2 回収を行わない参考プラント 2.特許取得がなされていない MEA 吸収液による燃焼後回収を行うプラント 3.MHI や Siemens が開発し特許取得済みの吸収液による燃焼後回収を行うプラン ト 4.CO 2 の高濃度化を目的としたガスタービンへの排ガス循環を有し、MEA吸収液に よる燃焼後回収を行うプラント 5.空気吹きの天然ガス改質と物理吸着法による燃焼前回収を行うプラント 6.物理吸着法による燃焼前回収を伴う空気吹きの天然ガス改質プラントから燃焼ガ スの供給を受ける、水素の中間貯蔵機能を有するプラント 検討の結果、エネルギー・ペナルティ、初期投資額、ベースロード発電時のコストの観 点から、現状の技術の中では、燃焼後回収が最も好ましい。さらに、MHI や Siemens が 特許取得済みの吸収液や排ガス循環システムを利用すれば、大幅なコスト削減が可能とな る。燃焼前回収は、ベースロード発電時において、燃焼後回収よりも低効率かつ高コスト となるが、天然ガスから水素を製造し、その余剰ガスを貯留する機能も有する場合には、 需要に応じて出力を変動させて発電するケースにおいて、競争力を持つ可能性がある。今 後の課題としては、燃焼後回収用の特許取得済みの高効率吸収液とガスタービンにおける 排ガスリサイクルの組み合せについての評価、他の液体溶媒、固体吸着剤、膜分離法など の回収技術によるパフォーマンスやコストの評価などが挙げられる。 ④ Barriers to Implementation of CCS: Capacity Constraints タイトル:CCS 導入の障壁:供給能力による制約 実施者:Ecofys(オランダ) IEAGHGがシリーズで実施するCCSの障壁に関する研究の最新版である。本研究では、 IEAのCCSロードマップに沿ってCCSが実施された場合に、CCS設備の構成要素のサプラ イチェーンにどのような問題が生じるかを、「設備と材料」「サービスと技能」の分野に 23 分けて分析した。設備の構成要素は、これまでにIEACCCが検討したものを除き、回収に ついては既存の技術(燃焼後、燃焼前、酸素燃焼)を想定し、輸送についてはパイプライ ンのみを検討した。CCS発展の障壁となるリスクの最も高いコンポーネントは、燃焼前回 収の水素ガスタービンであり、これはまだ実用化されていない。酸素燃焼では、空気分離 装置(ASU)、ガス処理、ボイラー、燃焼後回収では、吸収塔の大型化と吸収液の寡占な どが問題となるリスクが高い。貯留では石油ガス業界と競合することが予想され、 2020~2030 年には貯留層評価、掘削、圧入の技師の獲得で、2045 年以降には労働力、大 型施設の供給で問題になるだろう。輸送では、CO 2 コンプレッサーの大型化や石油ガス業 界との競合がリスクとなる。しかし、本報告書はこれらを克服できる障壁と結論づけ、貯 留層の探査や輸送インフラへの先行投資、キャリア開発、貯留層評価のための知識の補充、 サプライヤーの多角化、認可当局の知識向上が必要であると提言した。 ⑤ Financial Mechanisms for Long-Term CO 2 Storage Liabilities タイトル:CO 2 貯留の長期的責任に係る金融メカニズム 実施者:ICF International(米国) 補償および管理に対するライアビリティ(法的責任)とは、他者や社会に対して民事上 の救済措置や刑事罰を適用できる法的責任を指す。プロジェクトの実施から終了までの短 期的責任はサイトのオペレータが負い、終了後の責任はいずれかの時点で国に移管される ことになる。責任の内容としては、例えば、EC(欧州委員会)は CCS 指令の手引書にお いて、排出権の放棄に係る財務的な責任、モニタリング、漏洩の際の是正措置など種々の 責任を挙げている。米国 EPA の規則は閉鎖後のサイト管理モニタリング期間(50 年間) を定めて、その間の財政支援をオペレータに義務付けている。このようなオペレータや当 局に対して責任を持つものが、ファンド(預金)、トラストファンド、エスクロウ、銀行 保証、取消不能スタンドバイ信用状、銀行債などの金融メカニズムである。本研究は、EU と米国で求められる長期的責任について 18 の金融メカニズムの長所短所、適用性、実用 性を検証し、長期的責任の政府への移管方法について 2 つの枠組みを提案した。プロジェ クト実施のための財務的な適格性が法的に認められるのであれば、コスト的には自社等に よる財務保証が最も低い。CCS の法規制を整備する際には、長期的責任に適用できる金融 メカニズムを明記するべきである。政府が事業者に求める財政負担は国によって違うが、 例えば「シンキングファンド」等、メカニズムを組み合わせてパッケージにすると、事業 者はコストの削減と政府とより多くのリスク分担を図ることができる。 ⑥ Microbial Effects on CO 2 Storage タイトル:CO 2 貯留への微生物の影響 実施者:IEAGHG CO 2 の圧入が貯留層に生息する微生物の活動に与える影響あるいは変化が、貯留層自体 24 にどのような影響を及ぼすかについて検討した。地下深部では、メタン生成微生物、硫黄 還元菌、発酵嫌気性微生物、鉄還元菌という 4 種類の微生物が主にコミュニティを形成し て生息している。CO 2 を圧入すると、微生物はエネルギーを生成する酸化還元反応や栄養 源としてCO 2 を利用する。超臨界状態のCO 2 は、大半の微生物を死滅させるが、圧入が終 了するとCO 2 をエネルギー源とする微生物が急速に増加し、最終的には圧入前よりも増加 すると思われる。CO 2 の圧入による微生物の増減は、貯留層の孔隙性、浸透性に影響を与 え、このため貯留層の圧入性と貯留能力に影響を与える。微生物の活動は、坑井の腐食や 生物付着などマイナスの作用もあるが、帯水層にバイオフィルムが形成されると貯留の安 全性が高まり、尿素分解により溶解性を高め鉱物トラッピングを促進するプラスの作用も 期待できる。バイオフィルムがCO 2 の移行を遮断する可能性も検討されている。サイト特 性調査やリスクアセスメントをする上で、微生物の活動の影響を理解し考慮することが必 要である。 ⑦ Post-Combustion CO 2 Capture Scale-Up Study タイトル:CO 2 の燃焼後回収の規模拡大に関する調査 実施者: Black & Veatch(米国) 2020 年を CCS の商用化の目標とする場合、既存の技術に基づいたフルスケールの回収 を実施することになる。回収技術の中で最も成熟した技術である燃焼後回収は、レトロフ ィットが可能であり、産業での実用化も開始されているため、CCS の大規模実施で採用さ れる可能性が高い。本研究は、超臨界石炭火力発電所(SCPC)とガスコンバインドサイ クル火力発電所(NGCC)で、燃焼後回収を現在のパイロットスケールから商業規模に規 模を拡大した場合に発生する問題を、吸収塔と再生塔の規模と建設、施設の強度、排ガス のバイパス方法、排ガスファンの大きさ等の観点から評価し、その後、冷却水の増加、排 ガスの脱硫処理など 2 次的な観点についても評価した。燃焼後回収システムの各ユニット について、エンジニアリング装置の観点から必要とされる改善点を挙げているが、基本的 に回収プロセスは大きな問題なくスケールアップすることが可能であるとする。しかし、 コストとパフォーマンスについては更なる研究開発が求められる。このため、IEAGHG は 装置の開発担当者、納入業者に本研究が指摘する問題の解決に取組むよう促すべきである と提言した。 ⑧Shale Gas Greenhouse Gas Footprint Review タイトル:シェールガスの温室効果ガスのフットプリントのレビュー 実施者: Steve Goldthorpe Energy Analyst Ltd(ニュージーランド) 発電燃料を石炭から天然ガスに換えることで温室効果ガス(GHG)の削減効果が期待 できるとするのが通説だが、2010 年、シェールガスの温室効果は石炭より強いとする論文 (Fuel Full Cycle:FFC)が米国で発表された。本報告書は従来の天然ガスとシェールガ 25 スについて、燃料のフルサイクルでGHG排出を分析した。従来のガス生産とシェールガス 生産のGHG排出に関する違いはフラッキング工程による追加的排出にある。つまり、フラ ッキングに使用した流体に含まれるガス生産損失分としてのメタンと、掘削、圧入装置等 の 燃 料 使 用 に よ るCO 2 の 排 出 に よ る 増 加 で あ る 。 本 報 告 書 の 想 定 で は 、 シ ェ ー ル ガ スの GHG排出量は従来のガスに対し、生産サイトで 39%、処理と輸送で 17%、フルサイクル で 2.7%の増加となった。石炭に対してガスを利用する場合のGHGに関する優位性は 1:2 とされるが、シェールガスの場合は 1:1.77 となる。議論となった論文はメタンのCO 2 に 対する温室効果をGWP=105 で計算するが、報告書ではGWP=25、LNGでの輸送は無く、 CO 2 含有率の低いガスを想定して計算する。ナツナガス田などCO 2 含有率の高い(71%) ガスの場合や、GWPを高く設定し、LNG輸送が有るとした場合の燃焼前の損失を 4%と想 定したシェールガスの場合は、GHGに関するガスの石炭に対する優位性が完全に失われる。 燃焼前のGHG排出は回収できないため、CCSにマイナスとなり、発電所で 90%の回収を してもFFC全体では 70%の削減効果しか得られない。 ⑨Toward a Common Method of Cost Estimation for CO2 Capture and Storage at Fossile Fuel Power Plants タイトル:火力発電所における CCS コストの見積もり方法の共通化に向けて 実施者: CCS Costing Methods Task Force 2010 年 10 月、IEA 主催の CCS コストワークショップを契機に、CCS コスト計算方法 の確立を目的として、7 人の専門家からなる CCS Costing Method タスクフォースが設立 された。本報告書は同タスクフォースが作成したものである。 EPRI、IEA、DOE、IEAGHG 等様々な機関が、CCS コストを計算している。だが、機 関ごとに計算方法が異なるうえ、CCS コストは技術の比較やプロジェクト予算の見積など 具体的な目的をもって算定するため、不明確な点が多い。本報告書は、各機関のコスト計 算方法を、費用項目の種類、名称、内容、予備費の扱い、インフレ率や金利など経済要素 の処理、LCOE などの一般的な指標の算定方法などの点について比較し検討した。算定方 法にはそれぞれ理由があり、コスト計算には正解はない。コスト計算で重要になるのは、 設 計 の 内 容 と ス コ ー プ を き ち ん と 定 義 づ け 透 明 性 を 高 め る こ と で あ る 。 本 報 告 書 で は、 CCS コスト計算のためのガイドラインとして、報告書、論文、プレゼン資料などで CCS のコスト計算をする場合に開示すべき情報についてチェックリストを作成し、開示のよい 例、悪い例を示した。 26 (2) 作成中の報告書 5 月と 11 月の執行委員会会合において報告された作成中の調査研究報告書のうち、2012 年度中に発行されなかった報告書は表 2.2-2 に示す 7 件であった。その概要を執行委員会 での説明に基づいて以下にまとめる。 表 2.2-2 作成中の調査研究報告書の一覧 本報告書中の 対応 No. タイトル Techno-Economic Evaluation of the Potential of CO 2 Capture in an Integrated Steel Mill ① Extraction of Formation Water from CO 2 Storage ② Key messages for stakeholders ③ Induced Seismicity ④ Implications of gas production from shale and coals on CO 2 storage ⑤ Interaction of CO 2 with subsurface resources ⑥ Incorporating future technological improvements in existing CO 2 capture plants ⑦ ①Techno-Economic Evaluation of the Potential of CO 2 Capture in an Integrated Steel Mill(統合製鉄所におけるCO 2 回収の可能性に係る技術経済評価) 欧 州 で 標 準 的 な 製 鋼 所 を 基 準 と し て 、 基 準 プ ラ ン ト に 排 気 ガ ス 中 の CO 2 を 回 収 す る MEAを付加した場合、酸素吹き高炉へMDEAを導入した場合の技術経済性比較を実施した。 説明では技術のかなり細部に踏み込んだものであったが、この研究の目的は評価方法の構 築であり、今回の結果が技術の良し悪しを示すものではないこと、評価結果はサイト依存 性が強く、実在プラントで回収装置の有無の比較の重要であることが強調された。 ② Extraction of Formation Water from CO 2 Storage(CO 2 貯留層からの地層水の汲み上 げ) 実在する深部帯水層プロジェクトでの地下水の汲み上げについて検討した。CO 2 貯留量 はすべてのサイトにおいて増加するが、特に閉鎖系サイトで効果的であることが分かった。 圧力とCO 2 プルームの管理は概ね可能であり、MMVコストは下がる。汲み上げた地下水 にCO 2 を地表で溶解させて地下に戻す手法は、貯留安全性が向上し、MMVコストも低下 するが、すべてのサイトにおいて大幅に貯留量が低下してしまい、また、腐食のリスクも 高まるため非現実的である。汲み上げ水を飲料として利用する場合は、塩分濃度が鍵とな ってくる。 27 ③ Key messages for stakeholders(利害関係者へ発信すべきメッセージ) 利害関係者に伝えるべきメッセージについて、英国と豪州の科学博物館、法律やファイ ナンスの専門家、政策アドバイザー、科学ジャーナリストにインタービューを実施した。 最終的な成果物として、20~30 分で読むことができる 2,000~3,000 字のCCSに関する簡 潔な読み物を作成する。内容として、CO 2 、CCS、コスト、環境影響、法律、代表的な意 見などが検討されている。CCSを日常の活動と結びつけること、これまでに使われてきた 写真や図をより良いものとすることに取り組む必要がある。 ④ Induced Seismicity(誘発地震) これまでに誘発地震は 40 年以上、観測されている。CCS サイトでの観測はほとんどな いが、圧入量は少ない。データ分析によると、最大マグニチュードと圧入量・圧入レート に因果関係が認められる。予測モデルには、物理モデルと統計モデルがある。両者とも開 発の初期段階にあるが、統計モデルの方が進んでいる。リスクは体系的な管理プログラム により低減あるいは緩和が可能である。 ⑤ Implications of gas production from shale and coals on CO 2 storage(シェール層や 炭層からのガス生産のCO 2 貯留への含意) 技術の発展に伴い、シェール層や炭層からの天然ガス生産が増加することにより、こう した地層のCO 2 貯留ポテンシャルが増加する。破砕によって遮蔽層の健全性が損なわれる 可能性もあるが、このリスクは現状の技術ででも抑制できる。貯留ポテンシャルは、シェ ール層で 488Gトン、シェール層で 740Gトンと見積もられる。帯水層とシェール層が同一 地域に存在する場合、リソースの干渉が生じないように管理する必要がある。シェール層 への貯留は、炭層の貯留と比較して、研究が十分ではなく、今後、研究を推進する必要が ある。 ⑥ Interaction of CO 2 with subsurface resources(CO 2 貯留と地下資源の相互影響) 同一サイトでCO 2 貯留と地下資源利用(石油や天然ガス、オイルシェールやシェールガ ス、石炭、飲料用地下水、地熱など)が可能な場合の相互影響や管理方法を分析・検討す る。政策立案者を念頭に置いた報告書のほか、チェックリストを作成する。CO 2 貯留の法 規制の整備が遅れた場合、他の資源との干渉が起こる可能性がある。 28 ⑦ Incorporating future technological improvements in existing CO 2 capture plants( 既 存のCO 2 回収プラントへの将来の技術発展の反映) CO 2 回収における吸収剤や機器、プロセス設計が改善されることにより、プラントはそ のライフスパンの中で、2~3 回のアップグレードが施されると考えられる。こうしたアッ プグレードを可能とするための事前対応・事前投資を燃焼後回収について検討した。ただ し、機器設計や材料の発展、排ガス中の不純物への耐性改善、回収液のロスや腐食問題な どのスコープ内の複数の項目が網羅されなかったため、IEAGHGが追加の検討を実施する。 (3) 新規の調査研究提案 5 月の執行委員会の会合において 17 件の調査研究提案のうち、4 件が承認され、2 件が 条件付きで承認された。11 月の執行委員会においても、17 件の提案があり、そのうち 4 件が承認され、2 件が条件付きで承認された。承認された 12 件(条件付き承認を含む)の 内訳は、回収関連が 4 件(ガス生産時のCO 2 吸着、石炭火力CCSのコスト、燃焼後回収の 効率改善のためのプロセス変更、精油施設へのCCSレトロフィット)、輸送・貯留・利用 関連が 7 件(環境影響、断層の再活性化、貯留係数、不純物の影響、出力変動を伴う運転 による影響、CO 2 -EORによるCO 2 削減量、CO 2 -EORのコスト)、その他が 1 件(CO 2 以 外の温室効果ガス)であった。各提案のタイトルとその概要(一部の提案については執行 委員会での議論を含む)を表 2.2-3、表 2.2-4 に示す。 また、2013 年 5 月の執行委員会の会合で議論される新規提案のタイトルと概要を表 2.2-5 に示す。回収関連の提案が多くなっている。 29 表 2.2-3(1) 5 月執行委員会へ提案された調査研究 No. 調査研究提案 採択 ※ Techno-Economic Evaluation of the Potential CO 2 Capture Application in Pulp and Paper Industry IEAGHGによる提案。パルプ・製紙分野へアミンによるCO 2 回収を適 × 41-01 用した場合の技術経済研究。化学プロセスによるパルプ製造(クラフト パルプ)を対象とし、同分野の工場に導入されることがあるCHPへの 影響も考慮する。 Evaluation of reclaimer waste disposal for CO 2 Post Combustion Capture IEAGHG による提案。水性アミン系溶媒による燃焼後回収から出る熱 × 41-02 安定性塩などの廃棄物の同定とその評価。廃棄物の成分・毒性、減量法、 処分法の研究・評価のほか、ボイラーへ再投入した際の費用対効果の評 価を行う。 Evaluation of CO2 Adsorption Process in Natural Gas Production IEAGHG とカナダ Regina 大学による提案。CO2 リッチな天然ガス生 産における固体吸着による CO2 回収の評価。吸着物質のレビュー、水 〇 41-03 分・不純物の影響評価、大小のプロセスのレビュー、PSA/VPSA など 4 つのプロセスの技術経済評価、カーボンナノチューブ、MOF、膜、高 分子イオン液といった先端材料の評価を行う。 CCS for energy-from-waste plants IEAGHG とオランダ ECN による提案。ゴミ発電プラントへの CCS 導 × 41-04 入の F/S。様々な様式のプラントを対象にネット発電量やコストを評価 する。CCS の有無による GHG 発生を比較するとともに、ゴミ埋立地 からのメタン等の放出・ガス製造への影響などを評価する。 Assessment of costs of capture at baseline coal power plants IEAGHG による提案。2002-2005 に行った研究の更新を目的とする。 前回以降の他の同様な研究と技術的進歩をレビューし、プロセス図の作 成、プラント性能の見積もり、コスト見積もりを行った後、超臨界粉炭 〇 41-05 発電所とその燃焼後回収、酸素燃焼、IGCC の燃焼後回収のコストを算 定する。プラント立地は、研究実施者の所在地であるオランダとするが、 メンバーが費用負担をすれば、自国でのコスト算定もしてくれる。15% をバイオマスとするケースも検討オプションとして示されたが、ベース コスト算定の観点から検討数を絞ることとして、計算対象としない。 Optimization of Water Usage/Treatment in Oxy-Coal Fired Power Plant GCCSI による提案。酸素燃料発電プラントにおける水利用・水処理の × 41-06 最適化の研究。水利用を最小化するのではなく、再生水のプラント内外 での利用 や CO2 圧縮 浄化装置 からの産 業用 化学製品 の回収を 考慮 す る。 Environmental Impact Statements – Review of Gaps IEAGHG に よ る 提 案 。 CO2 貯 留 プ ロ ジ ェ ク ト の 環 境 ア セ ス 報 告 書 (EIA)における不足事項(ギャップ)の調査。2007 年の IEAGHG に よる報告書や IEAGHG 主催の環境影響に係るワークショップで同定さ 〇 41-07 れた漏えい CO2 の挙動の予測シミュレーションや海洋生態系への影響 などのギャップが、それ以降に実施された QUEST、ROAD、Decatur、 Gorgon、Kingsnorth、Longannet などの実プロジェクトの EIS におい て、どのように取り扱われたかを分析する。新たなギャップ、規制当局 による EIA の管理などについても調査する。 ※〇:承認、△:条件付き承認、×:不承認 30 表 2.2-3(2) 5 月執行委員会へ提案された調査研究 調査研究提案 採択 ※ No. Feasibility and costs of CO 2 storage in geological strata with relatively low permeability and porosity × 41-08 南アフリカによる提案。低浸透率、低孔隙率といった地層におけるCO 2 貯留の成立性 とコスト の評価。粗粒 玄武岩の 貫入が見られ る地層の ほ か、二次間隙・二次浸透を持つシルト砂岩層やシルト層、岩盤が対象。 Criteria of fault geomechanical stability during a pressure build-up Totalによる提案。断層に関する地質工学的パラメータの最新知見の収 集・検討するとともに、CO 2 圧入による断層の再活性を予測する手法の △ 41-09 有効性を検討する。1 カ月以内にinduced seismicityに関するIEAGHG の研究報告書が完成するため、その完成を待って、研究調査の実施可否 を決定する。 CO 2 storage efficiency in aquifers Total による提案。深部塩水帯水層における貯留推定や貯留係数に関す る最新研究の 文献調査 と、モデルを 用いた貯 留係数の適応 性の研究 。 2009 年に行った静的な検討との比較として、圧入レートや圧入パター △ 41-10 ン な ど の 動 的 な 影 響 を 考 慮 し た 検 討 を 行 う 。 な お 、 英 国 の Energy Technologies Institute (ETI)は同様な手法で評価した英国の貯留ポテ ンシャルの報告書を 6 月に発行予定。動的な検討の有用性を明示するこ とが調査研究実施の条件となった。 CO 2 storage wells/site abandonment Total による提案。2009 年の坑井廃棄の法規制と技術のレポートの第 2 × 41-11 弾。坑井からの漏えいリスクの評価、坑井の健全性にかかる支配要因の 同定、坑井からの漏えい検出モニタリング手法の調査、前報告書による 坑井封印・サイト復帰の再調査を行う。 Local compensation for CO 2 storage – an overview × 41-12 オランダによる提案。CO 2 貯留に係る地元への補償に関する調査。CCS 産業・資源産業における地元補償の慣行やその背景を調査する。 Review of the status of non CO 2 GHG emissions and opportunities for future work IEAGHGに よ る 提 案 。 発 電 所 や ア ル ミ 溶 錬 な ど の 工 場 を 起 源 と す る 〇 41-13 CH4、N20、SF6、PFC’s、HFC’s/HCFC’sといったCO 2 以外のGHGに 関するIEAGHGの報告書の更新。こうしたGHG排出の最新状況、前報 告書発行以降に排出緩和の導入動向、導入されなかった場合はその背景 などを調査・分析する。 Agro peat production concept 人的な影響を受けた泥炭地の管理方法として、耕作地の土地改良用の泥 × 41-14 炭 ( agropeat) 製 造 を 検 討 。 GHG に よ る 影 響 の 軽 減 が 期 待 で き る 。 agropeat 製造施設は発電所に組み込むことも考えられる。 ※〇:承認、△:条件付き承認、×:不承認 31 表 2.2-4(1) 11 月執行委員会へ提案された調査研究 No. 調査研究提案 採択 ※ Optimization of Water Usage/Treatment in Oxy-Coal Fired Power Plant GCCSIによる提案。酸素燃焼の発電所では、大量の化学物質で処理し て所外へ大量に排水する必要がある。本調査研究では、冷却塔を備えた × 42-01 酸素燃焼の発電所において、水の使用・処理を最適化し、回収した水を 発電所内外の 他の目的 に利用するこ とでゼロ 排水を達成す る可能性 を 検討する。CO 2 処理装置による水の使用の違い、排水処理施設や化学物 質の回収についても評価する。 Operating Flexibility of CO 2 Capture – Hydrogen and Oxygen Storage and Effects of Ambient Conditions IEAGHGによる提案。CO 2 回収付の発電所の稼動自由度を高めるため の技術として、水素と酸素の貯蔵技術を調査する。水素貯蔵については、 × 42-02 既存の水素地下貯蔵設備のレビュー、設計に係る諸問題、漏えいなどの 健康安全リスクを評価する。酸素貯蔵については、酸素貯蔵付の空気分 離装置の設計をレビューし、酸素や液体空気の貯蔵に伴うコスト、エネ ルギー消費、健康安全リスクを評価する。 Techno Economic Evaluation for Different Post Combustion Capture Process Flow Sheet Modifications IEAGHG による提案。燃焼後回収技術で大きいエネルギー・ペナルテ ィの削減を目的として、15 の吸収プロセスの工程変更が文献や特許で 〇 42-03 報告されている。本調査研究では、これらの工程変更のガス火力・石炭 火力発電所における実施可能性を技術的・経済的側面から評価する。回 収技術のベンダーである企業からの強い反対があった。より一般化した 調査研究とすることとし、その発行に当たってはこれらの企業の事前列 ビューを受けることになった。 Evaluation for Various Process Control Strategy for Normal and Flexible Operation of Post Combustion Capture process IEAGHG による提案。燃焼後回収はエネルギー消費が大きいが、CO2 × 42-04 回収率、溶媒温度、再生塔の圧力等の制御変数の適切な設定により回収 プロセスを最適化できる。本調査研究では、発電所が 40~100%で稼動 する場合に、最小のエネルギー消費で燃焼後回収を行うプロセス制御法 を開発し、経済効率の高い制御構成を設計する。 Production of Hydrogen with CO2 Capture Statoil/IEAGHG による提案。CCS による水素製造と、再生可能エネ × 42-05 ルギーや原子 力の余剰 電力を用いた 電気分解 による水素製 造の性能 と コストを比較検討する。燃料電池に使用する高純度の水素と、産業プラ ントでの燃焼等に使用する低純度の水素を対象とする。 Evaluation of CO2 Adsorption Process in Natural Gas Production IEAGHG/レジャイナ大学(カナダ)による提案。本調査研究では、CO2 を多く含有するガス田からガスを生産する際の CO2 分離技術として、 × 42-06 エネルギー消費が少なく設備がコンパクトな CO2 固体型吸着を用いる プロセスを評価検討する。具体的には吸着剤の物理的、化学的特性、天 然ガス成分の吸着性能に与える影響、吸着プロセス構成評価等を行う。 ※〇:承認、△:条件付き承認、×:不承認 32 表 2.2-4(2) 11 月執行委員会へ提案された調査研究 No. 調査研究提案 採択 ※ Understanding the Cost of Retrofitting CO 2 Capture in Oil Refineries IEAGHG/Statoil/Shellによる提案。CO 2 回収技術を精油所にレトロフ ィット導入する場合の経済性を考察し、単純な精製から複雑なものまで 16 から 18 のケースについて導入コストを検討する。IEAGHGでは、 〇 42-07 発電所以外でCO 2 排出の多い製鉄、セメント、精油のうち、製鉄、セメ ントの調査研 究を既に 実施しており 、今回は 精油セクター を対象と す る。燃焼前、酸素燃焼、燃焼後回収を対象とし、基準プラントのベース ラインの設定、回収技術選定のための方針設定等を行う。石油セクター の研究組織であ るConcaweと本調査 研究の内 容検討を行って いる。 作 業量が大きいため、他機関との共同実施を目指す。 Techno-Economic Evaluation of the Potential CO 2 Capture Application in Pulp and Paper Industry IEAGHG/VTT(フィンランド)による提案。CCSの産業への導入を検 × 42-08 討するシリーズ研究の一環として、パルプ製紙産業にCO 2 回収を適用す る場合を検討する。具体的には、クラフトプロセスの製紙工場にMEA ベースのCO 2 回収を導入した場合を検討し、また、パルプ製紙プラント で広く実施されているCHP利用へのCCS導入の影響を考察する。 Impact of CO2 Impurity on CO2 Compression and Transportation IEAGHG による提案。SOX、NOX、酸素、水、H2S 等の不純物が CO2 の物性(臨界圧、臨界温度等)に与える影響と CO2 の圧縮に与える影 響を性能、エネルギー消費、腐食、コストの点から考察し、不純物のパ △ 42-09 イプラインの亀裂や破裂への影響、必要な安全策等を検討する。対象排 出源は発電所のみとし、燃焼後、燃焼前、酸素燃焼回収技術で発生する 不純物を対象とする。不純物間の相互作用も考慮する。輸送については、 船舶も対象とする。既存の調査を検討した上で、実施の可否を決める。 Operating Flexibility of CO2 Storage and Transport 米国/EPRI/IEAGHG による提案。輸送・貯留施設が CCS 付帯の火力発 電所の出力レベルを変動させて操業することによる CO2 流の変動にど れだけ対応できるかを検討し、その問題点と解決策を考察する。具体的 には、CO2 流がゼロの場合や変動した場合の貯留層(帯水層・枯渇ガ 〇 42-10 ス油田・EOR)への影響を理論的に評価するとともに、これまでのパ イロット、実証、商業規模の貯留プロジェクトで CO2 流が変動した場 合についての知見をレビューする。また、超臨界圧 CO2 流の変動に対 するパイプラインの許容度についても検討する。輸送はバッファに使え る可能性があり、貯留も中間貯蔵が考えられる。不純物の動的変化の影 響評価は難しく、本調査研究では取り上げない。 CO2 storage wells/site abandonment Total による提案。坑井廃棄に係る長期的健全性について、世界の規制 状況と様々な廃棄技術を検討する。具体的には、CO2 井からの漏洩に × 42-11 適用するリスクアセスメント手法の検討、坑井の健全性と長期的安全性 に関するクリティカル・ファクタの同定、坑井からの漏洩を検出するモ ニタリング手法の調査、プラギングや補修手法のレビューなど。成果は 坑井、坑井廃棄に係るベスト・プラクティスとしてまとめる。 ※〇:承認、△:条件付き承認、×:不承認 33 表 2.2-4(3) 11 月執行委員会へ提案された調査研究 No. 調査研究提案 採択 ※ Economics of well stimulation with CO 2 for shale oil / gas production EnBW-Energie Baden-Wurttenberg AG(ドイツ・ユティリティ)に よる提案。シェールガス生産に寄与する水圧破砕法では、回復不可能な × 42-12 までに貯留層に損害を与える場合がある。本調査研究では、高温 (100℃)貯留層での破砕に使用されているCO 2 をシェール岩の破砕に 大量に用いた場合の経済性を調査する。 Quantifying and monitoring emissions reductions from CO 2 -EOR IEAによる提案。CO 2 -EORは、CO 2 を貯留する可能性がある一方で、 回収、輸送時やエネルギー投入、貯留層からの漏出、増産石油の利用等 により直接間接的にCO 2 を排出する。本調査研究では、CO 2 -EORによ △ 42-13 る C O 2 削 減 量 の 定 量 化 手 法 に つ い て 、 IPCC GHG Inventory Guidelines (2006)などの既発行文献の分析、排出源の洗い出し、必要 なMRV、LCAなどを検討する。この報告書の必要性を疑問視する声が あり、スコープを確定してからレポートとするか、テクニカルレビュー に留めるかを決定することになった。 Cost components for Storage of CO 2 in association with enhanced oil recovery IEAによる提案。CO 2 圧入法の開発コストは公開情報が乏しい。本調査 〇 42-14 研究で は、CO 2 -EORに 係る各 種コ スト を調 査 し、CO 2 -EORのポ テン シャル調査に資するようにまとめる。地上の処理設備、水ガス交互圧入 が想定できない場合の排水処理コストなどの初期コスト、CO 2 再利用の コストなどの運転コスト、その他、廃棄コスト等を対象とする。 Review and Assessment of Potential Lessons Learnt from other Energy Technologies using the Subsurface IEAGHG による提案。放射性廃棄物の地中処分技術など、技術の詳細 × 42-15 は異なるが、リスク、社会的受容性、用語、開発計画などに共通性のあ るエネルギー技術について、相違点、共通点、共有できる点等を評価検 討する。 Comparison of the water usages of low-CO 2 power generation technologies IEAGHGによる提案。貴重なコモディティとなっている水の使用は、 低炭素発電技 術を選定 の際に重要な 基準の一 つである。本 調査研究 で × 42-16 は、水使用の観点から、CO 2 回収付発電と低炭素発電技術とを比較検討 する文献調査を行う。水の使用量を削減するための技術は、コストの上 昇と熱効率の悪化を伴うため、各技術要素のバランスを検討する。また 貯留層から水を回収し利用することも検討する。 Closing the Water Loop IEAGHG による提案。大量の水を使用する発電所において、汲み上げ × 42-17 た地層内塩水を利用するためにはどのような処理が必要かを検討する。 具体的には、冷却に必要な水質、抽出水の塩度、塩度と脱塩処理、水の 再利用回数、腐食等をさせないための追加処理などを評価する。 ※〇:承認、△:条件付き承認、×:不承認 34 表 2.2-5(1) No. 43-01 43-02 43-03 43-04 43-05 43-06 43-07 43-08 43-09 2013 年 5 月執行委員会へ提案された調査研究 調査研究提案 Optimization of Water Usage/Treatment in Oxy-Coal Fired Power Plant GCCSI の提案。瀝青炭を燃料とし冷却塔を備える酸素燃焼発電所において、水 の使用・処理を最適化し再利用・再生を最大化するための方法を調査し評価す る。前回は AirProducts の調査に続き、今回は Linde、AirLiquide 等の CPU、 プロセスを中心に調査する。 Energy Storage and CCS IEAGHG の提案。電力需要や電力供給の変動、柔軟性に欠く幾つかの低炭素発 電に対応するためエネルギー貯蔵技術は重要である。電気分解による水素製造 や副産物の酸素の貯蔵等、エネルギー貯蔵と CCS との関係を調査し、大規模の 貯蔵技術から電気自動車用の電池など小規模分散型の技術まで種々の蓄電技術 を検討する。 Evaluation for Various Process Control Strategy for Normal and Flexible Operation of Post Combustion Capture process IEAGHG の提案。燃焼後回収は、CO2 回収率、溶媒温度等個々の制御変数の選 択、組合せにより最適化することができる。発電所が 40%~100%の出力で稼動 する場合の燃焼後回収を最適化する制御法、制御変数を検討する。 Floating Capture plant and buffer storage KAIST/KIOST(韓国海洋科学技術院)の提案。沿岸部の発電所において、バー ジ(艀)に CCS 回収施設と一時的な CO2 貯留のためのタンクを設置し利用す る可能性を検討する。実際の発電所で技術的、経済的実施可能性を調査する。 Production of Hydrogen with CO2 Capture Statoil/IEAGHG の提案。CO2 回収付きの天然ガスベースの水素製造プラント の検討、燃料電池に使用できる高純度水素の製造のために石炭ベース、ガスベ ースの製造プラントに必要な変更の検討を行う。ExCo で要望があれば、バイオ マスガス化の水素製造も研究の対象とする。 Oxy Gas Turbine Power Plants 米国/IEAGHG の提案。NET power、CES 等の酸素燃焼プロセスを用いた CCS ガス火力発電所は、燃焼後回収の発電所より高効率(59%)、低コストであるこ とが報告されている。上記プロセスの他、Matiant、Graz 等のプロセスについ て IEAGHG が公正に検証する。 Fuel Cells for Power Generation with CCS 米国/IEAGHG の提案。燃料電池を大規模・中規模発電、あるいは熱源として利 用する場合の性能とコスト、燃料電池による発電所に CCS を統合した場合の効 率、コスト等を文献調査し、従来の回収方法による発電所と比較検討する。燃 料電池の開発状況、実用化までのタイムラインも検討する。 Evaluation of CO 2 Adsorption Process in Natural Gas Production IEAGHG/リジャイナ大学(カナダ)の提案。天然ガス産出に伴う CO2 回収で は、CO2 の濃度、水分濃度等により異なる回収方法を用いる。貯留/EOR/EGR 等の目的により求められる CO2 が異なる。これが吸着法に与える影響について 検討する。 Surplus Electricity for Decarbonizing Transport IEAGHG の提案。輸送部門の排出量削減では電気自動車、水素燃料電池が検討 されている。再生可能/原子力発電の増加により発生する余剰電力の対処法を、 エネルギー消費と GHG 排出の観点から評価し、電気/水素自動車と蓄電技術の 現状と大規模利用への課題を検討する。 35 表 2.2-5(2) No. 43-10 43-11 43-12 43-13 43-14 2013 年 5 月執行委員会へ提案された調査研究 調査研究提案 Techno-Economic Evaluation of the Potential CO 2 Capture Application in Pulp and Paper Industry IEAGHG/VTT(フィンランド国立技術研究センター)の提案。パルプ製紙産業 への CCS 導入を検討する。Kraft プロセスに MEA による CO2 回収を統合した 場合を検討する。また製紙プラントに設置される CHP に CCS の導入が与える 影響を考察する。 Public Perception of CO 2 Pipelines IEAGHG の提案。英国の FEED、ワイバーンの事例を参考に CO2 パイプライ ンに対する社会的受容性を検討する。パイプラインの敷設にあたり必要な説明 資料、情報等についても調査する。 Economics of well stimulation with CO 2 for shale oil / gas production EnBW(ドイツ大手電力会社)の提案。シェールガス開発では水による破砕が 行われるが、貯留層への影響を考えると CO2 等のガスによる破砕が理想的であ る。100°C 超の貯留層の破砕に使用されている既存の CO2 破砕法を検討しその 経済性を検討する。 Comparison of the water usages of low-CO 2 power generation technologies IEAGHG の提案。発電所の水消費量は多く、水の消費量が低炭素発電技術を選 定する一基準になることも想定される。一方で水消費を抑えるための技術は、 効率を低下させ CO2 排出量の増加に繋がる。本研究は文献調査により、適用技 術ごとに水使用と排出量、コストとのバランスを評価する。 Closing the Water Loop IEAGHG の提案。商業 CCS では CO2 貯留層の圧力管理のため地層水を取水す ることが考えられる。取水した地層水を発電所で再利用するために必要な脱塩 処理技術、コスト、リサイクル回数、防腐処理等の追加処理等を検討し評価す る。 36 2.2.5 主催国際会議 IEAGHG 主催の国際会議やワークショップの 2012 年度の実績と 2013 年度以降の予定 を以下にまとめる。2012 年度の実績は国際学会 1 件、ワークショップ 4 件、サマースク ール 1 件の計 6 件であった。 (1) 今年度の開催された国際会議 IEAGHG は 2012 年度中に社会研究(4 月)、貯留(6 月)、環境影響(7 月)、高温固体 ルーピング(8 月)の各ワークショップ、若手向けのサマースクール(8 月)、第 11 回温 室効果ガス制御技術国際会議(GHGT-11、11 月)を開催した。各ワークショップ、会議 の概要を以下にまとめる。 ・第 3 回社会研究ワークショップ(2012 年 4 月、豪州 Noosa) 2009 年パリ、2010 年横浜に続く 3 回目の開催となる。本会合では、気候変動に対する 意見が減少している、大規模なアンケート調査が実施されている、対象地域への補償は万 能ではないが役立つ、オイルサンドやシェールガスなどの経験が役に立つ、ポリシーの世 界では行動主義的なサイエンスを嫌ってより単純にことを進めるようになっている、気候 変動懐疑論や backfire effect、curiosity gap の役割などをどのように対応するか、などが 注目を集めた。これからも新しい研究、より多くの CCS サイトを対象とした研究が必要 だが、概して、現在では、CCS のパブリック・エンゲージメントのやり方が分かっている と言える。このため、CCS の社会科学関連の情報交換の場が限定的であることも踏まえな がら、社会研究ネットワークのあり方を検討する。次回のワークショップは、2013 年にカ ナダ Calgary で実施する予定である。 ・第 2 回貯留合同ワークショップ(2012 年 6 月、米国 New Mexico) リスクアセス、モニタリング、モデリング、坑井健全性、環境影響の各ネットワークに よる合同ワークショップであり、前回 2008 年に続き 2 回目の開催となった。2008 年以降、 CCS の CDM 化、Otway プロジェクトなどのピアレビュー、実際のプロジェクトでの環境 アセスの実施やモニタリングの実施、環境影響の理解の深化などがあった。現在の課題と して、以下が挙げられた。 - 許認可の ためのシミ ュレーションに おける 不確実性および ヒスト リーマッチン グ によるモデルのアップデートの操業ライセンスの有効性への影響 - 漏えいの観測と定量化の完全性(特に地中と地表におけるモニタリング) - 原状復帰や改善のための計画 - モニタリング計画(サイト固有性、リスクアセスとの対応性、考え得る漏えい経路 の監視) - 地中の地下水資源の保護(特に帯水層中の塩水による影響の阻止) 37 - モニタリングの結果による操業への要求事項(閾値、サイト停止の条件など) 今後はネットワーク間の協力を増やす、注目の話題に対するオンライン等での会合の実 施、リスクアセスのネットワークのリスクマネージメントへの拡大(緩和・修復を含む) などが提言として出された。坑井健全性のネットワークについては、関心が低くなってい ることがあり、他のネットワークへの合流等を検討している。一方、同ネットワークにカ ナダの Petroleum Technology Research Centre(PTRC)が関心を持っており、IEAGHG との間で話し合いが持たれる。2013 年はリスクとモデリングの合同会合(6 月、ノルウェ ー)、モニタリングと環境影響(8 月、豪州)が計画されている。 ・CO 2 貯留の環境影響ワークショップ(2012 年 7 月、米国Montana) 1 回目のワークショップとされていたが、2008 年の研究ニーズに関するワークショッ プ、2010 年のナチュラルアナログに関するワークショップに続く、3 回目のワークショッ プ と の 位 置 づ け と な っ た 。 今 回 の ワ ー ク シ ョ ッ プ の 焦 点 の 一 つ が controlled release projectであり、CO2FieldLab(ノルウェー)、ZERT(米国)、QICS(英国)、PISCO2(ス ペイン)、ASGARD(英国)、CIPRES(フランス)、EPRIによる実験(米国)、Ginninderra (豪州)、Petrobras(ブラジル)、Vrogum(デンマーク)が紹介された。こうしたプロジ ェクト間の知識共有、用語の統一の必要性が認識された。また、環境アセスメントがCCS プロジェクトの障壁とはなっていないことが確認された。今後のワークショップのテーマ として、CO 2 移行のメカニズム(移行中の漏えい量の減少を含む)、環境修復、生物影響、 地下水への影響などが挙げられた。また、参加者から新規に“Environmental Research into CO 2 Storage Network”という新規ネットワークの立上げ要請があり、検討されるこ とになった。なお、このワークショップのより詳細な内容を 2.4.5(1)にまとめている。 ・第 4 回高温固体ルーピングワークショップ(2012 年 8 月、中国・北京) CaO ルーピング(CaOL)、ケミカルルーピング燃焼(CLC)、両者のハイブリッド型を 中心に発表がされた。今後の課題として、技術経済評価、パイロット試験の稼働時間の長 期化、排出や環境影響の評価、吸着剤の設計とサイクルの安定性、商業化に向けたスケー ルアップが挙げられた。次回は 2013 年に英国 Cambridge 大で開催される。なお、このワ ークショップのより詳細な内容を 2.4.5(2)にまとめている。 ・第 6 回 CCS サマースクール(2012 年 8 月、中国・北京) 47 名が参加し、これまでの参加者数が 326 人になった。次回は英国 Nottingham 大で 2013 年 7/21~26 に開催される予定である。現在のサマースクールは 2011 年から 2014 年 までのフェーズ 2 に当たり、2014 年の GHGT-12 でレビューされる。 38 ・第 11 回温室効果ガス制御技術国際会議(GHGT-11)(2012 年 11 月、京都) GHGT-11 では、”CCS:Ready to Move Forward”というテーマのもと、3 件の基調講 演、6 件のプレナリー講演、およびファイナルパネルディスカッションを含む全体会議と 約 300 件の口頭発表および約 600 件のポスター発表が行われた。参加者数は約 1,300 人に 上り、日本 346 人、米国 172 人、ノルウェー118 人、英国 97 人、中国 61 人、韓国 60 人、 カナダ 57 人等、48 か国からの参加があった。 (2) 次年度以降の国際会議の予定 IEAGHG が主催する次年度以降の国際会議やワークショップの予定を以下にまとめる。 なお、今後の方向性として、国際会議は GHGT を最も重視すること、ワークショップにつ いては、貯留関連の 5 つのネットワーク(モニタリング、リスク、坑井、モデリング、環 境影響)はネットワーク間の合同ワークショップをより重視すること、坑井、社会研究の 両ネットワークのワークショップは縮小ないし廃止することになっている。 ・モデリングとリスクの合同ワークショップ(2013 年 6 月 10 日~13 日、ノルウェ ーTrondheim) ・第 7 回サマースクール(2013 年 7 月 21 日~26 日、英国 Nottingham) ・モニタリングと環境影響の合同ワークショップ(2013 年 8 月 26 日~28 日、豪州 キャンベラ) ・第 3 回酸素燃焼国際会議(OCC-3)(2013 年 9 月 9 日~13 日、スペイン Leon、 CIUDEN 共催) ・第 2 回燃焼後回収国際会議(PCCC-2)(2013 年 9 月 17 日~20 日、ノルウェーBergen、 Gassnova 共催) ・第 5 回高温固体ルーピングワークショップ(2013 年、英国 Cambridge) ・第 4 回社会研究ワークショップ(2013 年、カナダ Calgary) ・第 12 回温室効果ガス制御技術国際会議(GHGT-12)(2014 年 10 月 5 日~9 日、 米国 Texas、テキサス大 Austin 校共催) ・第 13 回温室効果ガス制御技術国際会議(GHGT-13) (2016 年、欧州での開催、ノ ルウェーとスイスが共催国として立候補) 39 2.3 ロンドン条約 2.3.1 概要 ロンド ン条約 は、 人間 活動か ら海洋 環境 を保 護する ための 条約 であ り、こ の条約 下で CO 2 を海底下に貯留することが国際的に認められている。 本事業では、5 月に韓国で開催された科学グループ会合、10 月に英国で開催された締約 国会合に参加し、主にCO 2 海底下地中貯留、海洋肥沃化について情報収集を実施した。 CO 2 海底下地中貯留は、圧入前の輸出と圧入後の海底下地層内での越境移動に分けて議 論されている。輸出については、「海底下地中貯留のためのCO 2 輸出に関する協定と合意 の作成と実施」を検討中であり、越境移動については 2012 年CO 2 隔離ガイドラインが採 択された。 海洋肥沃化に関しては、「海洋肥沃化:評価枠組の適用を支援する文献データベース作 成の実現可能性」についてのワーキンググループが設置され議論が行われている。また、 2012 年 7 月にカナダで行われた肥沃化プロジェクトについての議論が行われ、懸念を表 明する声明が出された。 2.3.2 組織概要 ロンドン条約の正式名称は、1972 年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止 に関する条約(Convention on the Prevention of Marine Pollution by Dumping of Wastes and Other Matter 1972)である。人間活動から海洋環境を保護するための世界初の条約 であり、1975 年に発効している。すべての海洋汚染源の実効的な規制を目的として、廃棄 物およびその他の物質の投棄による海洋汚染の防止に向けたあらゆる実行可能な対策を行 うとされている。2012 年 7 月 19 日現在、87 ヵ国が締約国である。日本は、1980 年 10 月 15 日に批准し、同年 11 月 14 日に発効している。 ロンドン条約をさらに近代化するために、最終的にはこれを置き換えるために、1996 年に「ロンドン議定書」が合意された。議定書の下では、投棄を検討できる廃棄物すなわ ちリバースリストに掲げられた廃棄物を除き、全ての投棄が禁止された。議定書は 2006 年 3 月 24 日に発効し、2012 年 5 月 28 日現在、42 か国が批准している。日本は、2007 年 10 月 2 日に批准し、同年 11 月 1 日に発効している。 40 2.3.3 今年度の活動と今後の予定 (1) 今年度の活動 ・ロンドン条約第 35 回及びロンドン議定書第 6 回科学グループ会合が、2012 年 5 月 21 日から 25 に韓国 Jeju で開催された。 ・ロンドン条約第 34 回及びロンドン議定書第 7 回締約国会合が、2012 年 10 月 29 日から 11 月 2 日に英国ロンドンにある国際海事機関(IMO)本部で開催された。 (2) 今後の予定 ・科学グループ会合は、ロンドン条約第 36 回及びロンドン議定書第 7 回科学グループ会 合として、アルゼンチンのブエノスアイレスで 2013 年 5 月 27 日から 31 日まで開催さ れる予定である。 ・締約会合は、ロンドン条約第 35 回及びロンドン議定書第 8 回締約国会合として、ロン ドンの国際海事機関(IMO)本部で 2013 年 10 月 14 日から 18 日に開催される予定で ある。 2.3.4 海底下CO 2 地中貯留 2006 年の締約国会合において、投棄可能な廃棄物に海底下地層に貯留されるCO 2 を追 加する改正案が採択され、CO 2 の海底下地中貯留が国際法的に認められることとなった。 2007 年にはCO 2 隔離ガイドライン(2007 CO 2 Sequestration Guidelines)が採択され、 これまでこのレビューが行われてきた。また、2009 年に議定書第 6 条の改正が採択され、 こ れ に よ り 関 係 各 国 で 合 意 が あ る 場 合 に は 国 境 を 越 え てCO 2 を 輸 送 す る こ と が 可 能 とな った。但し、この第 6 条の改正は、批准国が定数に達しておらず、未だ発効してない。 2012 年度に開催された科学グループ会合と締約国会合におけるCO 2 海底下地中貯留に 関する議論について以下にまとめる。 (1) 科学グループ会合 英国を議長とするワーキンググループが設置され、日本のほか、豪州、ブラジル、カナ ダ、中国、エルサルバドル、ドイツ、グアテマラ、メキシコ、オランダ、韓国、南アフリ カ、米国、OECD/IEAおよびグリーンピースインターナショナル(GPI)が参加し、議論し た 。 そ の 結 果 、 圧 入 前 の 「 輸 出 (export) 」 と 圧 入 後 の 海 底 下 地 層 内 で の 「 越 境 移 動 (migration)」とを明確に区別すること、後者は「個別ガイドライン(Specific Guidelines)」 の付属書(Annex)とするべきであると合意した。また、「海底下地中貯留のためのCO 2 輸 出 に 関 す る 協 定 と 合 意 の 作 成 と 実 施 ( Development and implementation of arrangements or agreements for the export of carbon dioxide streams for storage in sub-seabed geological formations)」を「個別ガイドライン」の付属書とし、2012 年の締 約国会合での検討を求めることで合意した。 41 (2) 締約国会合 米国のAllison Reed氏をリーダーとするワーキンググループが設置され、日本のほか、 カナダ、ドイツ、オランダ、ナイジェリア、ノルウェー、韓国、スウェーデン、米国、GPI およびOECDが参加し、議論した。その結果、LC 34/WP.5 文書の付属書として、2012 年 CO 2 隔離ガイドライン(2012 CO 2 Sequestration Guideline)が採択された。また、議定 書第 6 条の改正が発効するまでに「海底下地中貯留のためのCO 2 輸出に関する協定と合意 の作成と実施」を検討し最終版とすることを目的として、会議間対応グループ (intersessional correspondence group)が設置された。さらに、締約国は、会期間対応 グループの議長(カナダAnne Daniel氏)にコメントを提出すること、また文案の位置づ けと目的が何であるか(例えば、ガイダンスあるいは第 6 条の法的解釈なのか)を検討す ること、で合意した。 2.3.5 海洋肥沃化 海洋肥沃化とは、海洋に鉄を散布して植物プランクトンの光合成を促進し、海洋のCO 2 吸収能を高めるアイデアである。しかし、CO 2 吸収固定量および生態系影響の見積もりが 困難であることなどから、2008 年締約国会合において、商業目的の海洋肥沃化行為の禁止 と、科学研究の適切な管理が採択された。 2012 年度に開催された科学グループ会合と締約国会合における海洋肥沃化に関する議 論について以下にまとめる。 (1) 科学グループ会合 「海洋肥沃化:評価枠組の適用を支援する文献データベース作成の実現可能性」につい て、英国を議長とするワーキンググループが設置され、日本のほか、豪州、カナダ、中国、 ドイツ、キリバス、メキシコ、オランダ、韓国、南アフリカ、米国および GPI が参加し、 議論した。オンラインの文献データベース作成が提案され、米国を議長とする対応グルー プを設置し、会期間にも議論を継続することとなった。 (2) 締約国会合 2012 年 7 月にカナダ西部海域で Haida Salmon Restoration Corporation が 100 トン の硫酸鉄を散布した肥沃化プロジェクトについて、懸念の声明を満場一致で出した。ここ では、このような活動は 2010 年の「海洋肥沃化に係る科学研究の評価枠組み」に従って 行われるべきであり、科学的研究を除いては認められないこと、さらに今後も監視を続け ることが記されている。 42 2.4 CCS国際動向 2.4.1 概要 本事業において、CSLF、IEAGHG、ロンドン条約に係る会合に加え、国内外で開催さ れた国際会議等においても CCS 政策、大規模プロジェクト、研究などの動向、CCS に係 る各種課題について情報収集を実施した。 世界の CCS 政策の主な進展としては、2012 年 7 月に豪州で導入された炭素税、また、 炭素価格が機能しない中、CCS も対象に含む英国の固定価格買取制度の導入に向けた動き が挙げられる。国際エネルギー機関(IEA)はエネルギー技術展望 2012(ETP2012)を 発刊し、CCS が 2 度シナリオを達成するために 2050 年まで必要な温室効果ガス削減量の 14%に貢献する必要があることなどを明らかにした。また、IEA は、この ETP2012 の分 析に基づいて、CCS 技術ロードマップの最新版を 2013 年 5 月の発行を目標として策定中 であり、2020 年までに取るべきアクション等をまとめる予定となっている。 CCSプロジェクトでは、石炭火力発電所を対象とした中規模なCCSとして米国のPlant Barryと豪州のCallideの両プロジェクトの運転が開始された。また、大規模プロジェクト としては、ガス処理施設をCO 2 排出源とし回収量が 300 万トン/年を超える豪州のGorgon プロジェクト、石炭火力発電所をCO 2 発生源とする米国のKemperプロジェクト、カナダ のBoundary Damプロジェクトの建設が順調に進捗している。このほか、カナダのQuest プロジェクトとオイルサンドの改質装置をCO 2 排出源としてAlberta Carbon Trunk Line のパイプラインを利用するプロジェクトにおいて、最終投資判断が下され建設段階へと向 かうことになった。また、ノルウェーで開所されたTechnology Center Mogstad(TCM) は世界最大の燃焼後回収技術の試験・検証施設であり、回収コストの低減への貢献が期待 されている。 CO 2 貯留に伴う環境影響の研究は、CCSプロジェクトの実施事例が増加していることか ら、その情報共有が活発化している。次世代の回収技術の一つである高温固体ルーピング は、欧州を中心に研究プロジェクトが実施されているものの、その実用化には時間を要す る。また、これまで、CCSプロジェクトの実施に対する社会的受容性の重要性が注目を集 めてきたが、最近は、法的責任(ライアビリティ)、あるいは法的責任とファイナンスとの 関係への注目度が高まってきている。 なお、8 月の DOE/NETL 主催の炭素貯留プログラム・インフラ年次会議では、長岡プ ロジェクトの研究概要とその成果を発表した。また、3 月の第 5 回インドネシア CCS シン ポジウムにおいては、これまでの日本の CCS 研究の取組み、CCS 関連の政策と法規制、 大規模実証試験、二国間クレジットや CCS 技術の国際標準化の取組みについて紹介を行 った。 43 2.4.2 参加会議 2.1 から 2.3 でまとめた CSLF、IEAGHG、ロンドン条約に係る会合に加え、国内外で 開催された国際会議等においても CCS 政策や大規模プロジェクト、研究開発などの動向 に 係 る 情 報 収 集 を 実 施 し た 。 情 報 収 集 の た め に 参 加 し た 国 際 会 議 等 と 主 な 収 集 情 報 を表 2.4-1 に示す。 なお、8 月の DOE/NETL 炭素貯留プログラム・インフラ年次会議では、長岡プロジェ クトの研究概要とその成果を発表した。また、3 月の第 5 回インドネシア CCS シンポジウ ムにおいては、これまでの日本の CCS 研究の取組み、CCS 関連の政策と法規制、大規模 実証試験、二国間クレジットや CCS 技術の国際標準化の取組みについて紹介を行った。 表 2.4-1 情報収集を実施した国際会議等の一覧 日程 開催地 会議名等 5/7 ノルウェー ベルゲン ノルウェー ベルゲン 東京 Mongstad テス トセ ン ター の開所式 CCS セミナー 5/8 6/8 7/10 ~11 7/12 主な収集情報 GCCSI 日本地域メンバー 会合 地中貯留のリスクと法的責 任に関するワークショップ IEA 訪問 7/17 ~19 7/23 8/20 ~21 8/21 ~23 9/5 フランス パリ フランス パリ 米国 ボーズマン 東京 中国 北京 米国 ピッツバーグ 東京 10/10 ~11 カナダ カルガリー GCCSI 年次会合 10/22 ~23 11/18 ~22 12/4 豪州 パース 京都 CCS 会議 東京 1/31 ~2/1 2/28 英国 ロンドン フランス パリ インドネシア バリ 第 4 回インドネシア CCS シ ンポジウム 第 7 回欧州 CCS 会議 3/16 CO 2 貯留の環境影響ワーク ショップ GCCSI 勉強会 第 4 回高温固体ルーピング ワークショップ DOE/NETL 炭素貯留プロ グラム・インフラ年次会議 クリーン・コール・デー GHGT-11 IEA CCS 技 術 ロ ー ド マ ッ プワークショップ 第 5 回インドネシア CCS シ ンポジウム 44 Mongstad テストセンター 大規模 CCS プロジェクト動向、回 収コスト、CCS インフラ 豪州の CCS 政策、大規模 CCS プロ ジェクト動向 リスクと法的責任 ETP2012、CCS ロードマップ 貯留の環境影響 2 国間クレジット、CDM 固体ルーピング法 米国の大規模貯留プロジェクト、米 国政策、カナダでの CCS 動向 カ ナ ダ ・ ポ ー ラ ン ド に お け る CCS 動向 GCCSI、大規模 CCS プロジェクト 動向、米国・カナダ、豪州、インド、 メキシコ等での CCS 動向 豪州の CCS 政策・プロジェクト動 向、中国・南アフリカの CCS 動向 大規模 CCS プロジェクト動向、回 収パイロットプラント インドネシアでの CCS 動向 英 国 ・ ド イ ツ ・ オ ラ ン ダ で の CCS 動向 IEA による CCS 技術ロードマップ 改訂版 インドネシアでの CCS 動向 2.4.3 その他の国際機関の動向 CSLF、IEAGHG、ロンドン条約以外の主要な CCS 関連の国際機関である IEA と GCCSI について、本事業で得られた情報を基に以下にまとめる。 (1) IEA IEA とその CCS Unit の概要、IEA による CCS 関連の発行物の概要について、参加し た会議で得られた情報を中心に以下にまとめる。 ① IEA と CCS Unit の概要 IEA には現在 28 カ国が加盟している。最高意思決定は年 4 回開催される理事会(全加 盟国の代表で構成)が行う。約 250 名が所属しており、うち日本人は現在 10 名(出資率 10%超)。業務の執行については、最上部の事務局長室の下に統計局や法務・総務といった スタッフ部門のほか Directorate of Energy Markets and Security(エネルギー市場・安 全保障局)、Directorate of Sustainable Policy and Technology(エネルギー政策・技術局)、 Directorate of Global Energy Economics(地球規模エネルギー経済局)の 3 局が設けら れている。 こ の う ち エ ネ ル ギ ー 政 策 ・ 技 術 局 は 、 Energy Technology Policy 部 門 と Energy Efficiency and Environment 部門に分かれる。前者は Energy Technology Perspectives の編集・発行を行っており、後者には Environment and Climate Change Unit、Energy Efficiency Unit、CCS Unit が置かれ特定課題の調査・検討が進められている。 CCS Unit は、CCS の戦略および政策・技術および経済・法規制・キャパシティビルデ ィ ン グ お よ び ア ウ ト リ ー チ ・ 国 際 政 策 フ ォ ー ラ ム の 開 催 を 担 当 し て お り 、 ユ ニ ッ ト 長の JuhoLipponen 氏以外に 7 名所属し、政策 2 名・法規制 2 名・技術 1 名のアナリストが含 まれる。 ② IEA による CCS 関連の発行物 2013 年 5 月に発行予定の CCS 技術ロードマップ 2013 のドラフト、2012 年に発刊され た世界エネルギー展望、エネルギー技術展望、Tracking Clean Energy Progress における CCS に関する記載について以下にまとめる。 ・CCS 技術ロードマップ 2013(ドラフト) CCS 技術ロードマップの改訂版が 2013 年 5 月に発行される予定である。CCS 技術ロ ードマップの初版は 2009 年に発行され、データの一部詳細を示した簡易版が 2010 年に発 行されている。 ロードマップの改訂版ドラフトでは、2012 年に IEA から発行されたエネルギー技術展 望 2012(ETP2012)での分析を踏まえており、ETP2012 で採用された世界の気温上昇を 45 2 度以内とする 2 度シナリオ(2DS)を達成するためのマイルストーンと、そのマイルス トーンを実現するために必要なアクションがまとめられている。特に 2020 年までの 7 年 間に取るべき 7 つのアクションがロードマップの発信すべきメッセージとして重要視され ている。なお、マイルストーンは Energy Technology Policy 部門と CCS Unit が協力して 設定されている。Energy Technology Policy 部門がマクロ経済等を取り込んだモデル計算 を担当し、CCS Unit が基礎条件等を設定するが、両部門でやり取りを繰り返すことでマ イルストーンを固めるというアプローチを取っている。 改訂版を発行する理由は、最新の状況に則したものにすることである。2009 年版以降 からの大きな変化として、CCS に係る研究開発実証や法規制の整備の進展等のほか、経済 危機、福島での原発事故、シェールガス革命が挙げられている。 技術の現状を記したセクションでは、以下の 3 点について新しい定義がなされている。 - 工業プラントの回収手法の分類として、燃焼後、燃焼前、酸素燃焼という発電所 向 け の 分 類 を 排 ガ ス か ら の 回 収 ( flue gas scrubbing)、 水 素 置 換 ( hydrogen substitution)、酸素燃焼と説明。 - 工業プラントについては回収技術が成熟している first phase、更なる回収技術の 技術開発が求められる second phase に分類。 - パイロットスケールのプラント、デモンストレーション・スケールのプラントの 定義を発電所に対しては MWe(パイロット:1~10MWe、デモ:約 100MWe) により、工業プラントに対しては CO2 の年間回収量(パイロット:1 万~10 万 トン、デモ:30 万~100 万トン)により定義。 達成すべきマイルストーンとそのために求められるアクションは、2020 年まで、2020 年から 2030 年まで、2030 年から 2050 年までの期間ごとに、回収(技術導入と技術開発 に分けられている)、輸送、貯留、そして政策を含む CCS 全体(integrative)の 4 つに分 けてまとめられている。 2020 年までに取るべき 7 つのアクションは、ロードマップの冒頭にまとめられている。 その内容は、①大規模 CCS プロジェクトの実施、②コスト削減に向けた研究開発、③貯 留ポテンシャル調査とサイト調査、④輸送インフラの整備、⑤エネルギーミックスにおけ る CCS 役割の検討、⑥奨励策の策定、⑦法規制の整備となっている。 また、ロードマップには貯留と輸送のケーススタディを掲載した別添がある。最初に日 本の取り組みが掲載されており、長岡プロジェクト、貯留ポテンシャル調査、大規模実証 についてまとめられている。日本に続いて、豪州 Gorgon プロジェクト、Weyburn プロジ ェクト、オランダ(ROAD プロジェクトなど)、北米アトラス(主要排出源と貯留ポテン シャルの調査)、欧州での CO2 インフラ(パイプライン)検討がまとめられている。 46 ・世界エネルギー展望 2012 世界エネルギー展望 2012(WEO2012:World Energy Outlook 2012)では、世界のエ ネルギー情勢が米国での石油・ガスの増産により大幅に書き換えられている。しかし、世 界のエネルギー需給はまだ持続可能性のある軌道には乗っていない。一方、様々な燃料の 市場や価格の相互関係は強まっている。エネルギー効率を向上させることにより、2 度シ ナリオの実現を 5 年間は後ろ倒しにすることが可能である。CCS を早急に普及させること なく 2 度シナリオを実現させる場合には、化石燃料の確定埋蔵量のわずか 3 分の 1 しか利 用できないことになる。このほか、WEO2012 では水とエネルギーの問題について取り上 げている。 ・エネルギー技術展望 2012 (ETP2012) IEA はエネルギー安全保障と気候変動対策の両立を目指して 2006 年以降 2 年ごとにエ ネルギー技術展望(ETP)を発刊している。長期的な分析を基に短期的な行動指針を示す ものであり、低炭素技術オプションの提示や普及状況の分析、いくつかの普及シナリオの 提示、課題の分析等を行っている。この ETP の最新版である ETP2012 が 6 月に発行され た。ETP2010 では CCS に関する記載は 3 ページ程度であったが、ETP2012 では 20 ペー ジ程度にまで増加された。増加の内訳は、回収コストの新たな見積もり、EOR 等産業プロ ジェクトの見直し、法規制関連、レトロフィット、電力自由化、インセンティブ等である。 ETP2012 では、主に、世界の平均気温の産業革命前からの上昇を長期的に 2 度、4 度、 6 度とする 3 つのシナリオを基に分析をしており、各シナリオは 2DS、4DS、6DS と呼ば れている。2DS は、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)に基づく議論において、温暖 化による影響が許容範囲に収まるとして国際的に合意された目標に合致するものである。 6DS は温暖化に対して有効な方策を取らなかったケースに相当する。 ETP2012 によると、6DS、4DS から 2DS を達成するために必要な CCS の貢献度は、 現在から 2050 年までの累計でそれぞれ 14%、20%とされている。これらの数字は、CCS が長期的な温暖化対策の中で重要な役割を担っていることを示している。 2DSシナリオでは、例えば、発電セクターにおいて、北米の石炭火力のほとんど、ガス 火力の 36%、中国では 2/3 近くの石炭火力にCCSが導入されることになる。工業セクター では、排出源として、高濃度CO 2 排出プラント、バイオマス、セメント、製鉄所、製油所 などが考えられるが、地域によってCCSの対象となる排出源は大きく異なってくる。先進 国では比較的、高濃度CO 2 排出プラント、バイオマスの比重が大きく、中国やインドなど ではセメント、製鉄所の割合が多くなる。 CCSによるCO 2 削減量は 2020 年時点で 2 億 6 千万トン、2050 年時点で約 1,200 億ト ンとなっている。2050 年の削減量の内訳は、発電セクターで 570 億トン、工業セクター で 579 億 トン であ る 。2030 年頃 ま では OECD諸国 での 削減 量が 多 いが 、そ れ以 降は 非 OECD諸国での削減量がOECD諸国を上回ると見込まれている。2050 年までの総貯留量は、 47 中国で 400 億トン、北米で 211 億トン、欧州で 102 億トンなどとなっている。 2050 年までに必要な CCS への投資は 3 兆 6 千億ドルであり、発電セクター、工業セク ターでそれぞれ 2 兆 6 千億ドル、1 兆ドルとなっている。ただし、工業セクターの投資額 には、輸送と貯留に係る金額は含まれていない。 6DS から 2DS を実現するだけでも、36 兆ドル超の投資が必要とされているが、CCS を導入することなく 2DS を実現する場合には、発電セクターにおいてさらに 3 兆 1 千億 ドルが必要となってくる。これは発電セクターで必要とされる投資額の 7 兆 7 千億ドルの 40%に相当する。ただし、1 兆 2 千億ドルが削減される燃料コストを加味すると、追加コ ストは正味 1 兆 9 千億ドルとなる。 以上のような分析を踏まえて、ETP2012 では今後 7 年間で必要なアクションとして、 気候変動政策の強化、各国によるエネルギー戦略における CCS の役割の評価検討、貯留 にかかる知見を深化していくための政策、産官による商用スケールの CCS の実証に向け た更なる努力、政府による CCS 普及のインセンティブの検討と導入が挙げられている。 ・Tracking Clean Energy Progress Tracking Clean Energy Progress は 4 月に開催された第 3 回クリーンエネルギー大臣 会合(CEM:Clean Energy Ministerial)の際に発表された。CCS の実証試験や研究開発 に進展はみられるが、CCS の普及は低炭素技術の中で最も遅い。大規模プロジェクト計画 は新規計画もあるが中止となったものもあり、数としては横ばいとなっている。CCS への 公的な資金供与スキームの多くが 2007 年から 2009 年に導入されており、それ以降、新規 のスキームはほとんどない。CCS 政策の進展も英国の電力市場改革と豪州の炭素税の導入 と排出権取引の開始に留まっている。 48 (2) GCCSI GCCSI( Global CCS Institute)は 2009 年に豪州政府によって設立された、世界の CCS の実証と展開の加速化の支援を使命とする CCS の国際機関である。2013 年 3 月現在、メ ンバー機関数は 368 であり、世界各国の政府、産業界、研究機関等が参加している。 ① 五ヵ年戦略計画 ・五ヵ年戦略計画の草案 2012 年 7 月、GCCSI は今後、担うべき役割の指針を示す「五ヵ年戦略計画」の草案を 発表した。この草案の中では、戦略目標として、世界で CCS を実展開するための「信頼 できる知識共有」、 「事実に基づいた影響力のある助言と提唱」、 「CCS 実施のための能力の 強化」の三点に焦点が当てられている。また、会費制メンバーシップの導入も含めた、新 たな資金調達および事業運用モデルの実施手順の検討に入ることが示されている。これは、 GCCSI は創設以来、豪州政府からの資金供与(総額 3 億 5 百万豪ドル)に基づいてほぼ 全 て の 組 織 運 営 、 活 動 を 継 続 し て き た が 、 政 府 と の 資 金 協 定 に 基 づ く 年 間 予 算 割 当 額は 2012/2013 年から減額され、最後の 2 年間(2015/2016 年および 2016/2017 年)はそれぞ れ 250 万豪ドルになるためである。この戦略計画は 18 ヶ月間の精査期間を経て完成する ことになり、2013 年 10 月のメンバー会合までに各メンバー機関に配布される予定である。 この草案に対して、IEAGHG から GCCSI の計画変更後のスコープが IEAGHG と競合 する可能性に対する懸念が示されたが、GCCSI の代表者は「GCCSI は policy-driven であ るため、IEAGHG と同様に R&D を指向することはない」としている。 ・メンバー機関とのコンサルティション 2012 年 10 月、GCCSI International Members' Meeting が Calgary(カナダ)で開催 され、世界のメンバー機関から代表者らが参集した。その会合の中で開かれた、メンバー の年次総会において、五ヵ年戦略計画に関する協議が行なわれた。協議は、参加メンバー を無作為の小グループに分けて意見を出し合うという方式で進められ、今回の戦略計画に 優先的に盛り込む課題や活動テーマについてディスカッションを行ない、意見を出し合う というものであった。メンバーからの主な意見の一部を以下に示す。 - 他の国際機関(CSLF、IEAGHG)との関係がクリアになるマップが必要。 - メンバー間のオープンディスカッションの機会の提供を希望。 - GCCSI のメンバー間の会合やウェビナーによる知識共有の機会は非常に有益。 - 財政モデルとビジネスモデルの構築を希望。 - 他機関にはできない広範囲な機能を持つデータベースの構築を希望。 - CCS に関する重要でセンシティブな質問の GCCSI から関係先への問合せを希望。 - 過去にキャンセルされたプロジェクト事例からの学習の励行。 49 ② 今年度の活動と今後の予定 前述の International Members' Meeting において、CEO の Brad Page 氏による、GCCSI の一年間の活動と今後の予定についての報告が行なわれた。以下にその概要を示す。 ・活動概要 過去一年間、GCCSI のメンバー機関数は順調に増加しており、350 機関を超えた(2012 年 10 月時点)。GCCSI は活動拠点としてアジア地域(日本、中国、韓国)への進出を進 めており、北京事務所の新規開設を予定している(2013 年 3 月、北京事務所開設済)。北 京事務所は、GCCSI の本部が所在する豪州(Canberra)、北米(Washington D.C.)、欧 州(Paris)、東京に加えて 5 ヶ所目の活動拠点となる。 GCCSI は発展途上国への CCS 支援においても積極的な取組みを継続している。特に中 国を重要視しており、同国およびインド政府と CCS 推進のための協力協定(MoU)を締 結した他、南アフリカ、メキシコ、インドネシアへなどへの支援を行なっている。 知識共有を促進するため、ノルウェー(Mongstad)、米国(Washington DC)、日本で 地域会合を開催した他、ウェビナーの充実化を図った。また、ターゲットレポートの発行 にも力を入れている。 GCCSI は CCS の国際機関である IEAGHG との連携を進めている。GCCSI は、IEAGHG が主催した GHGT-11(11 月、京都)やサマースクール(8 月、北京)等にスポンサーと して貢献し、GCCSI のホームページに IEAGHG 発行のレポートを掲載するなどしている。 ・CCS の課題 GCCSIは、CCSの温暖化対策としての有効性が広く認知されるためのアクションが必要 であることから、今後も更にCCS進展の加速化に向けた取組みを予定している。2012 年に IEAが発行した、「Energy Technology Perspective 2012 (ETP2012)」によると、2050 年時点では、CCSによるCO 2 削減として、現在の 300 倍となる 7Gtが世界全体で必要であ り、これは全削減量の 17%に相当する。各国政府の支援状況については、英国、中国、豪 州においては目立った動きがあるものの、政府による更なる支援なくしてはCCSを進展さ せることはできない。英国政府は非常に主導的で、10 億ポンドの新CCSコンペの募集を 2012 年 7 月に終了し、発展途上国のCCS支援のために 6,000 万ポンドの拠出を予定して いる。 CCSを進展させるための課題としては、貯留サイトの選定に時間とコストがかかること、 社会的受容性面で一般市民の理解や意識が未だに低いこと、専門性や知識の共有を進める こと、回収コストの低減、法規制の整備などがある。また、実証プロジェクトを遂行する ことが結果的にはCCSコストの削減につながることから、政府によるプロジェクトへの投 資の加速化を図らなければならない。法規制面においては、OSPAR条約やロンドン条約の 中で、CO 2 輸送やオフショアの貯留が認められることが重要であり、CCSに関する法規制 50 の整備が遅れてはならない。 ・「Global Status of CCS: 2012」の発行 GCCSI は、世界の CCS プロジェクトの動向および技術に関する調査結果をとりまとめ た年間報告書である「Global Status of CCS」を 2010 年から毎年刊行している。 2012 年 10 月、「Global Status of CCS: 2012 report」が発行された。GCCSI の定義に よる Large Scale Integrated Project(LSIP)の数は 75 件であり、全体の相対数としては 前年度と変わらず、Operate(操業中)の段階にあるプロジェクトは 8 件のままであるが、 Execute(詳細設計、建設中)のプロジェクトが 7 件から 8 件に増えた。Execute 段階の プロジェクトの産業別内訳をみると、天然ガス 2 件、発電 2 件、水素 2 件、肥料 1 件、エ タノール 1 件である。また、中国におけるプロジェクトの進展が非常に顕著であるのが特 徴的である。中国には 7 プロジェクトが初期の計画段階にある。これらのプロジェクトは、 複 数 の 省 に ま た が る ケ ー ス や 、 企 業 に よ る パ ー ト ナ ー シ ッ プ の プ ロ ジ ェ ク ト も 存 在 し、 EOR を検討しているものや適用される技術も多様である。なお、2012 年 11 月に ACLT with North West Sturgeon Refinery CO2 Stream に最終投資判断が下され Operate が 8 件、Execute が 9 件となっている。 51 2.4.4 地域別動向 本事業で得られた 16 か国の CCS 動向情報について、北米、欧州、豪州、アジアの順で 以下にまとめる。収集情報量が多かった米国、カナダ、ノルウェー、オランダ、英国、豪 州については、政策動向、大規模プロジェクト、R&D プロジェクトに分類してまとめる。 (1) 米国 米国の CCS 政策、大規模 CCS プロジェクト、回収パイロットや大規模貯留を含む研究 開発に係る情報を以下にまとめる ① 政策動向 米国の主要な CCS 関連の法規制、CCS プロジェクトに対するインセンティブ、EOR 推進に係る最新動向を以下にまとめる。 ・EPA GHG Reporting Program EPA(環境保 護庁) に よるGHG Reporting Programで は、GHG排出 量のほ か、CO 2 貯留とその他の地下へのCO 2 圧入(EORなど)の 2 つのカテゴリ下で、圧入したCO 2 量と 貯留されたCO 2 量の報告が義務化され、2010 年からデータ収集が開始されている。このプ ログラムは、GHG排出量をより正確に把握し、政策に反映していくことを目的としている。 収集されたデータは公開されることになっており、2010 年分は 2012 年 1 月に公開されて おり、2011 年分は 2013 年年初めに公開される。2010 年のデータによると、6,700 の事業 体から合計 23.24 億トンが排出されており、米国の総排出量の 80%をカバーしている。電 力が最大の排出源であり、農業や土地利用によるデータは含まれていない。Subpart RR と呼ばれるCO 2 貯留のためのCO 2 供給は 5,460 万トンであり、このうち、79%がEORを目 的としていた。R&Dを目的としたプロジェクトには報告義務を負わなくて済む例外規定が あり、120 プロジェクト中、4 件にこの規定が適応された。なお、このSubpart RRでは、 EORプロジェクトの報告は義務ではない。ただし、Subpart RRでカバーされないCO 2 圧 入はSubpart UUと呼ばれるスキームで報告する必要がある。このデータは 2011 年からデ ータ収集が開始され、2012 年 9 月 28 日に公表されることになっている。 ・UIC Class VI Technical Guidance Documents EPAによるUnderground Injection Control (UIC)プログラムにおいて、CO 2 の地中貯 留を目的とする圧入井タイプClass VIが 2011 年に新設された。CO 2 貯留の特徴として、 大規模な圧入量、粘性、浮力、腐食性が挙げられる。このClass VIの坑井に関して、2011 年 7 月 に 財 政 責 任 ( financial responsibility )、 2012 年 8 月 に 坑 井 の 施 工 ( well construction)のガイダンス・ドキュメントが発行されている。今後、Class IIからClass VI への移行、坑井の封印と圧入後のサイト維持(site care)、サイト閉鎖、サイト特性評価、 52 試験とモニタリングといったガイダンス・ドキュメントの発行も予定されている。こうし たドキュメントの発行の 2 週間後にドキュメントの説明をするウェビナーを開催しており、 公表を博している。なお、地震(seismicity)の情報をUICのホームページに掲載してい る。 ・Tax Credit for Carbon Dioxide Sequestration 米国の内国歳入法のセクション 45Q (Tax Credit for Carbon Dioxide Sequestration)に おいては、排出されたCO 2 を地中へ貯留する場合にクレジットが付与されることが定めら れている。クレジット価格は、EORが 10 ドル/トン、帯水層貯留が 20 ドル/トンとなって おり、最大 7,500 万トンまで適用される。2012 年 9 月 20 日、45Qによるインセンティブ をより機能的で財政的に確かなものにするためのS.3581 改正法案がNEORIの提言を盛り 込んで提出された。45Qの改正は今年中に実現するかもしれない。また、NEORIは 10 年 間に亘って税額控除を行なう、新規の生産税控除についても提言を行なっていく。 ・National Enhanced Oil Recovery Initiative (NEORI) NEORI は、CO2-EOR の推進を通じて、米国のエネルギー安全保障(国内の石油増産 回収)、経済的機会創出(雇用創出、貿易赤字の縮小)、環境戦略(GHG 排出量 100-200 億トン削減)に貢献することを目的として、2011 年 7 月に設立されたイニシアティブであ る。Center for Climate and Energy Solutions (C2ES)と Great Plains Institute (GPI)が 実施主体であり、民間企業、NGO、大学・研究機関等のメンバーや上下院議員らが参加し ている。NEORI は、関連州政府への CO2-EOR に関する制度構築の提言、EOR 事業者お よび CO2 供給事業者のための市場整備や税額控除等に関するサポートや CO2 市場価格や 税制の中立性の長期間にわたる分析などの取組みやロビー活動を行なっている。 ② 大規模プロジェクト 米国エネルギー省(DOE)による現行の大規模 CCS プロジェクトの助成制度には、以 下の 3 つスキームがある。 ・Clean Coal Power Initiative (CCPI) クリーンコール技術を開発することを目的として官民の出資により 2003 年に開始 ・Industrial Carbon Capture and Sequestration-Area 1 (ICCS-Area 1) 産業排出源を対象とする ・FutureGen 2.0 既存の石炭火力発電所に酸素燃焼CO 2 回収装置をレトロフィット導入 53 現在、この 3 つのスキームにより計 8 件のプロジェクトが進められている(図 2.4-1 参 照)。このうち、情報が得られた 6 件のプロジェクトについて以下にまとめる。図 2.4-1 に 示されたプロジェクトのうち、このまとめに含まれていないプロジェクトは、NRG と Leucadia Energy によるプロジェクトである。AEP によるプロジェクトは 2011 年に中断 している。 なお、米国ではいわゆるシェールガス革命により、発電事業者は燃料として石炭ではな くガスを志向するようになっているおり、CCS 普及に資する政策が存在しないことからも、 新設発電所の多くが CCS を装備しないガス火力発電になると見込まれる。また、EOR は、 連邦政府・州政府の税収入に直結することから政策も整備されており、ますます活発化す る見込みである。 図 2.4-1 米国エネルギー省が支援する大規模 CCS 実証プロジェクト 出典:Gary J. Stiegel (2011)、Carbon Storage in DOE/NETL Major Demonstrations、 DOE/NETL Carbon Storage Program Infrastructure Annual Review Meeting, November 15-17, 2011 ・Kemper プロジェクト 出力 582MWの新設のIGCCプラントから年間 350 万トンのCO 2 を回収してEORに利用 するプロジェクトである。燃料の多様化、既存インフラの有効利用、近隣に存在する天然 資源の有効利用、副産物の有効利用を目指しているSouthern Company社が実施している。 発電所からの年間CO 2 排出量の 65%に相当する 350 万トン/年のCO 2 をUOP社がライセン 54 スを持つSelexol法と呼ばれる物理吸収法により分離・回収する。2014 年からの操業に向 けて、現在、建設中である。 ・Illinois Industrial Carbon Capture and Storage プロジェクト Archer Daniels Midland(ADM)社によるプロジェクトであり、バイオ燃料製造過程 で発生するCO 2 を回収し、深さ約 2kmの深部塩水層へ圧入する。DOEによる産業排出源を 対象とした官民共同出資プログラムICCS-Area 1 から、総コストである約 2 億 1 千万ドル の約 7 割に相当する資金援助を受けている。 圧入開始が 2013 年 1 月に計画されており、当初は日量 1,400 トン、2014 年第 4 四半 期からは同敷地内で実施している貯留プロジェクトであるIllinois Basin Decatur Project 閉止後の日量 1,000 トンと合わせて、日量 2,400 トン(工場からのCO 2 排出総量)となる。 年量ベースで 100 万トンの規模となる。 本プロジェクトは EOR ではないが、貯留量が年間 50 万トン以上のプロジェクトに連 邦政府より与えられる 20 ドル/トンのタックス・クレジットの付与が決まったこと、炭素 税の導入等に備えた CCS のノウハウ蓄積がプロジェクト実施の背景にある。2012 年に CSLF 認定プロジェクトとなった。 ・Air Products CO 2 Capture from Hydrogen Facilityプロジェクト Air Products社のプロジェクトであり、メタン改質による水素製造過程で発生するCO 2 を 100 万トン/年回収しEORに用いる。CO 2 隔離の有効性を実証すると共にコスト情報の 取得を目的とする。米国再生・再投資法(ARRA)対象の一つであり、DOEが 2 億 8,400 万ドル(総コストの 66%)を負担する。2012 年にCSLF認定プロジェクトとなった。 ・FutureGen2.0 Meredosia発電所に酸素燃焼プラントをレトロフィットし、168MWのCCS付きの発電 所として再稼働を目指している。回収率 98%で 110 万トン/年のCO 2 を回収し、約 30 マイ ルのパイプラインで輸送したのち、4,000 フィート深の帯水層に貯留する計画となってい る。圧入井は 2 対あり、それぞれ 2 方向に水平に 2,000 フィート(計 4 方向に放射状に) 伸びた坑井から圧入する。2014 年に建設開始、2017 年に運転開始、2047 年に操業を終了 し て以後 50 年 間 に渡 り 、閉 鎖 後 モニ タ リ ン グ を実 施 す る計 画 で あ る 。現 在 の とこ ろ 、 pre-FEED、大気・水関連の許認可取得、地権者からの貯留層の購入(米国では地下部は 地権者の所有地となる)、パイプラインや貯留の許認可取得、法的責任のマネジメントが完 了している。2012 年 12 月までに電気購入協定の認可、DOEによる次フェーズへの移行許 可、資金問題の解決が見込まれている。 発 電 と 回 収 を Air Liquide、 Ameren、 Babcock & Wilcox が 担 当 し 、 輸 送 と 貯 留 を FutureGen Alliance が担当する。Alliance には、最近、中国の Huaneng が参加した。同 55 発電所は Ameron 社が所有していたが、Alliance が購入契約を結んで引き継ぐ。資金につ いては、初期投資が DOE からの 10 億ドル以上の資金提供によって、また、運転資金がイ リノイ州政府の Illinois Clean Coal Portfolio Standard によってほぼまかなえる見込みで ある。 酸素燃焼の利点として、ボイラーと排煙処理装置が従来型、(これまでの試験結果によ ると)発電所の性能への影響が軽微、様々な種類の石炭の利用が可能、レトロフィットが 可能、新しい化学プロセス・廃棄物プロセスが不要、プラントの水収支に変化がない、ほ ぼゼロ・カーボン・エミッション(98%以上のCO 2 を回収)であることが挙げられる。課 題としては、高い投資額、高いエネルギーコスト、CO 2 回収がall or nothingとなること、 統合システムレベルの実証がないことが挙げられる。また、設計において、排ガスを繰り 返し利用することから、硫黄の許容値の設定が重要となってくる。 同プロジェクトでは、社会的受容性の向上にも注力している。コストの増加によって中 止となった FutureGen 1.0 の時点からウェブサイトを開設し、説明会を開催するなど、地 元住民に対して事実を隠さず、透明性のある情報提供を行ない、利害関係者の関与を深め ていった。インフォーマルなタウンミーティングを頻繁に開催し、コミュニティリーダー から軍、農民、近隣の人々やプロジェクトを疑問視している人々と話し合い、多層的で直 接的なアプローチを行なった。また、コミュニティカレッジでの CCS の講義や子供たち を通じてその親に対しても啓蒙活動を実施している。Alliance 側の情報を伝えるだけでな く、実際に彼らに尋ねることによって彼らの声や反応を確認する双方向のコミュニケーシ ョンを心がけ、色々な教訓を学んだ。地元イリノイ州のコミュニティはかなり貧しい郡で あった。プロジェクトによる地元住民への利益として、イリノイの石炭が使われることに よって産業が活性化し、ビジターセンターや宿泊施設が創設されるなど新しいサービス産 業が増えて雇用の機会が生まれることがあるが、それ以上に、新しい技術によって自分た ちの街が世界の最先端に立ち、成功できることのプライドがプロジェクトを支持する大き な原動力となっている。 ・Texas Clean Energy Project(TCEP) 400MWの石炭ガス化複合発電プラント(IGCC)からCO 2 を回収するプロジェクトであ る。ガス化複合発電プラントからCO 2 を回収して大気中に放出することなく商品として販 売する。CO 2 はEOR向けに 30 ドル/トン(原則、原油価格の 1/3 の価格)で販売するほか、 ガス浄化過程で発生する合成ガスから製造する尿素などの高付加価値の化学物質も肥料用 に販売する予定である。プロジェクトが予定している収益のうち売電が占める割合は 2 割 程度に止まり、尿素やCO 2 の肥料会社などへの販売が 50%強を占める。CO 2 の排出量が少 ないため、地域からの支持も得られており、リスクが低い技術を統合的に活用した商業的 プロジェクトとなっている。 事業者は、米国テキサス州の Summit Power Group 社である。同社は 21 年前に元 DOE 56 長官によって設立された小規模な会社である。総コストとして 17 億ドルを想定されてお り、DOE が 4 億 5 千万ドルを負担する。なお、2012 年 9 月、Summit Power 社は中国の Sinopec Engineering 社及び China Exim Bank 社(中国輸出入銀行)との間で本プロジ ェクトへの参加についての EPC 契約を締結したと発表した。両者のプロジェクト参画は TCEP の財政面と建設面の強化に大きく寄与することになると考えられる。 ③ R&D プロジェクト 回収プロジェクトである Plant Barry プロジェクト、貯留プログラムの動向、大規模貯 留デモンストレーションの最新動向を以下にまとめる。 ・Plant Barry プロジェクト Southern Company社が総出力 250 万kWの石炭火力発電所であるPlant Barryの排ガ スのうち、2 万 5 千kW相当分のCO 2 を三菱重工のKS-1 を用いて回収するパイロット試験 を実施している。2011 年 6 月に回収を開始しており、2012 年 11 月 14 日時点での総回収 量は 111,000 トンであった。CO 2 回収の設計値 500 トン/日、回収率の設計値 90%に対し て、2011 年の平均はそれぞれ 449 トン/日、82.3%であった。回収率については、最大で 95%に達することが見込まれている。回収プラントの操業は 4 年を予定している。 ・貯留プログラムの動向 貯留プロジェクト予算は 2012 年度の 1 億 1,500 万ドルから 2013 年度は 9,500 万ドル へと減額される。研究課題的には、EOR、EGR、ECBM、シェールガスといった“use for storage”により重点が置かれるようになる。米国のEOR/EGRには 600 億バレル相当の油 ガスの増産と 200 億トンのCO 2 貯留が期待されている。現在、求められる帯水層貯留の貯 留性能の 1 つとして 99%の圧入CO 2 の貯留維持が挙げられるが、EORの場合は何%が可能 であるかなどの検討も必要となる。炭素隔離地域パートナーシップ(RCSP)関連では、 PCOR、MRCSP、SWPと呼ばれる 3 つのRCSPが、2013 年度中のEORの大規模貯留プロ ジェクト(総量 100 万トンクラス)の開始を計画している。 R&D における優先目標や第 2 世代技術が、2012 年秋に公表される Carbon Storage CCUS Program Plan にて明らかにされることになっている。このほか、今後、2~3 か月 以内に CCUS Roadmap to 2030+と MVA の Best Practice Manual(BPM)のアップデー ト版、7~8 カ月以内に Induced Seismicity に関する BPM の発刊を予定している。 2012 年度予算で 126 の貯留関連のR&Dが実施されている。その内訳はインフラ(圧入、 貯留性能調査、モデリング)14、地中貯留 38、シミュレーション&リスクアセス 28、MVA 57 26、CO 2 利用・再利用 6、トレーニングセンター7 である。 58 ・大規模貯留デモンストレーションの最新動向 7 つのパートナーシップ(図 2.4-2 参照)のうち、SECARBとMGSCが 100 万トンクラ スの大規模貯留デモを既に実施しており、PCOR、MRCSP、SWPが 2013 年度中にEOR 事業の一環としての大規模デモの開始を予定している。BSCSPは天然CO 2 を生産して同じ 地層に戻して貯留するプロジェクトを計画中である。WESTCARBのプロジェクトは目途 が立っていない。以下にパートナーシップごとの最新情報をまとめる。 図 2.4-2 炭素隔離地域パートナーシップの 7 パートナーシップ 出典:Carbon Storage Program Infrastructure Annual Review Meeting 2012 のプログ ラム ・Southeast Regional Carbon Sequestration Partnership (SECARB) 2008 年半ばよりCranfieldでEOR事業の一部として、early testと呼ぶ大規模貯留デモ を実施している。深さ 3,000 メートルほどの地層へこれまでにリサイクル分の 200 万トン を含めて 400 万トンのCO 2 を圧入している。2007 年にベースラインの 3D震探を実施し、 2008 年半ばから圧入を開始した。2009 年 12 月より、Detailed Area Study(DAS)と称 して、貯留キャパシティ推定の向上、貯留層のCO 2 保持力に係る緊急時(貯留層外への漏 えいや圧力上昇)の対応手順の評価、2 本の坑井を使った貯留CO 2 の挙動観察、トレーサ ー研究、地下水の漏えい感度などの研究を行っている。 また、回収プロジェクトであるPlant Barryプロジェクトから回収されたCO 2 を帯水層 に貯留するAnthropogenic Testと呼ばれるプロジェクトも開始した。回収されたCO 2 は、 長さ 19km、直径 10cmのパイプラインにより 10.3MPaの圧力下で液体として輸送される。 圧入井が 2012 年 8 月 8 日にClass Vとして認可され、貯留が同 8 月 20 日より年量 20 万 トンで 2 年間の予定で開始された。3 年間のポストモニタリングが計画されている。 59 ・Midwest Geological Sequestration Consortium (MGSC) Illinois Basin Decatur Project(IBDP)として、エタノール工場からのCO 2 を 1.9km のパイプラインで輸送し、帯水層に圧入中である。日量 1,000 トンの圧入が 2011 年 11 月 17 日に開始され、2014 年秋までに総計 100 万トンが圧入される予定である。2013 年 1 月 18 日時点の圧入総量は 37 万トンであった。貯留層の上にシェール層が 3 層あり、1 層 が遮蔽層、2 層が漏洩時のバックアップ層の位置づけとなっている。ポストモニタリング は 2017 年秋まで予定されている。モニタリングの体制は地表と地中に大別できる。坑井 によるモニタリングのほか、土壌フラックスの測定、InSARによる地表隆起の測量、大気 モニタリングを行っている。深さ 1,060mの坑井に設置した 31 のジオフォーンによる観測、 11 の深度での流体サンプリングも行っている。CO 2 の検知は想定よりも早かったが、CO 2 流の上方向への成長が限定的であることが確認された。 2012 年にCSLF認定プロジェクトとなった。なお、Illinois Industrial Carbon Capture and Storageプロジェクトとは、CO 2 排出源も貯留層も同じだが、別の圧入井を用いる。2 つの圧入井からのCO 2 の相互作用も研究課題の 1 つとなっている。 ・Plains CO2 Reduction Partnership (PCOR) PCOR は 2 件の大規模貯留プロジェクトを計画している 1 件はBell Creekプロジェクトであり、2013 年第 1 四半期に 100 万トン/年のCO 2 の圧 入開始を計画している。Lost Cabin NG ProcessingをCO 2 ソースとして、1967 年に発見 された油田でEORを実施する。この油田では 975 バレル/日の石油生産が行われているが、 同時に 45,100 バレルの水も生産される状況にある。EORにより 3,000 万~5,000 万バレル の石油増産が期待されている。サイト調査とモニタリング用の坑井 1 本を設置するほか、 EOR用の坑井を使った物理検層、LIDAR、地震波検層を予定しているほか、トレーサーに よる調査も検討している。9 つのエリアでの各EORをフェーズとしており、モニタリング はフェーズ 1 の焦点となっている。 もう 1 件はカナダのFort Nelsonプロジェクトの一環として行う貯留プロジェクトであ る。Fort Nelsonプロジェクトでは、北米最大の天然ガス精製プラントで回収したCO 2 を 帯水層へ貯留する計画である。2016 年から最大 200 万トン/年の圧入が予定されている。 同プロジェクトが実施されるカナダのBritish Columbia州では炭素税が課税されることが、 帯水層貯留の背景の 1 つとなっている。 ・Midwest Regional Carbon Sequestration Consortium (MRCSP) 2013 年から 4 年間で 100 万トンのCO 2 圧入とその後の 4 年間のポストモニタリングの 実施を目指している。天然ガス精製プラントをCO 2 ソースとしCCS-EORを行う。対象地 域には 85 億トンのCO 2 貯留と 120 億バレルの増産のポテンシャルがあるとされている。 60 ・Southwest Regional Partnership on Carbon Sequestration (SWP) Farnsworth Unit (FWU)において大規模貯留デモが計画されている。テキサス州の肥料 工場とカンザス州のエタノール工場をCO 2 ソースとし、EORプロジェクトの一環として、 2013 年度から 5 年間で 100 万トンを圧入し、その後、4 年間のポストモニタリングを計画 している。ペルフルオロカーボンをトレーサーに使うほか、地下水のモニタリング等を計 画している。 ・Big Sky Carbon Sequestration Partnership (BSCSP) モンタナ州のKevin Domeの天然CO 2 を生産して、同じ地層(深さ 1,200m)に圧入す る貯留の実証プロジェクトを計画している。貯留層、遮蔽層とも化学反応性の高い岩であ る。最大 5 本の生産井からのCO 2 を 640kmのパイプラインで輸送し、1 本の坑井で 4 年間、 圧入し、4 本の坑井で観測する計画となっている。EORプロジェクトではないものの、EOR のモニタリング等に資するプロジェクトとしている。 ・West Coast Regional Carbon Sequestration Partnership (WESTCARB) 具体的な大規模貯留デモの計画は策定されていない。2,000mの坑井による調査等によ る地域のCO 2 貯留ポテンシャルの算定、NGCCプラント(カリフォルニアには石炭火力は ない)のCO 2 -EORプロジェクトの技術経済性評価などを実施している。 61 (2) カナダ カナダは 2020 年までに 2005 年比で GHG 排出量の 17%削減を目標に掲げており、こ の目標達成に向けて CCS 導入促進への取組みが積極的に行なわれている。同国は地質構 造上、貯留能力が大きく、数多くの貯留層が大規模排出源と隣接する形で存在している。 CCS の技術開発面においては、技術的リスクの低減、社会的受容性の確保、法規制の整備、 エネルギー効率の向上などを重視しており、エネルギー効率の悪い業界に対してはペナル ティを課すことも検討している。 ①政策動向 カナダは、資金面においてプロジェクトへの支援強化を行なっている。連邦政府および 各州政府による CCS への投資決定額は既に 30 億カナダドルを超えており、今後も増加傾 向に ある 。連 邦政 府 は 大規 模か ら小 規模 に 至 るプ ロジ ェク トへ の 支 援策 とし て、「Clean Energy Fund Program 」 に よ る 6 億 ド ル の 資 金 枠 を 確 保 し て お り 、「 ecoENERGY Technology Initiative」、 「Sustainable Development Technology Canada(SDTC)」も CCS を対象としている。一方、各州政府による支援を州別にみると、Alberta 州は、「Carbon Capture and Storage Funding Act」によって大規模プロジェクトに対する 20 億ドルの支 援枠を設けている。Saskatchewan 州は、 「Go Green Fund」などのプログラムで州内のプ ロジェクトの資金支援を行なっている。 法規制面においては、安全で効果的なCO 2 貯留を実施するには、規制枠組みの整備が必 要不可欠であり、これまで貯留に関する規制が不明確であったことがいくつかのプロジェ クトの進展に悪影響を与えてきた。カナダは、連邦および各州政府レベルにおいて、CO 2 貯留の規格化、炭素税、発電所からのGHG排出に関わる規制制定などに取組みを行なって いる。連邦レベルでは、2012 年 9 月 5 日、 「Reduction of Carbon Dioxide Emissions from Coal-Fired Generation of Electricity Regulations」による石炭火力発電所に対する新し い規準が発表され、2015 年 7 月 1 日より施行されることになった。この新規準は、新設 の石炭火力発電所は、CO2 排出量が発電量に対して 420 トン/GWh未満のもののみ、運 転が認められることになる。また、既存の発電所が新基準を達成するための猶予期間は、 当初提案されていた 45 年間ではなく、50 年間程度とされている。一方、各州レベルにお いても法規制整備の取組みが行なわれている。Alberta州は、2011 年より「CCS Regulatory Framework Assessment(RFA)」の作業を進めている。これは、同州の規制制度と他の地 域の現行法のレビューを行ない、大規模CCSプロジェクトに必要な国際レベルのCCSの規 制枠組みを検討し、同州の環境大臣に対して提言を行なうための取組みである。 Saskatchewan州においては、温室効果ガス削減に関する規制として、 「The Management and Reduction of GHGes Act」の策定が進んでいる。また、British Columbia州では 1 ト ン当たり 15 ドルの炭素税が導入されており、CCSのインセンティブとして期待されてい る。 62 同国における CCS 展開のための課題として、コストの問題がある。コストを低減する ためには更なる商業規模の実証プロジェクトを実施することにより、知識共有することが 必要であり、風力やバイオマスなどの再生可能エネルギーと競争力のあるものにしなけれ ばならない。 ② 大規模プロジェクト カナダにおける主な大規模プロジェクトは、Saskatchewan 州と Alberta 州に集中して 存在しており、連邦政府・州政府はプロジェクトに対する積極的な支援を行なっている。 これらの両州においては、操業・建設中のプロジェクトが存在する一方で、2012 年度中に 2 件のプロジェクトの中止が決定した。以下に、各州におけるプロジェクトの概要と現況 を示す。 ・Saskatchewan 州 - Boundary Dam 3 SaskPower社が主導する、既存の火力発電所に回収設備をレトロフィットし、EORに よって 100 万トン/年のCO 2 を処理する計画のプロジェクトである。2014 年に操業開始 を予定しており、政府は同プロジェクトに対して 12.4 億カナダドルの投資を決定している。 コストの内訳は、回収 50%、改修 30%、排出制御や効率向上が 20%となっている。発電 総量 150MWのうち、110MWが送電されることになる。90%超の排出CO 2 に相当する、32 トン/日のCO 2 を燃焼後回収によって回収し、SO 2 の削減も行なう計画である。 SaskPower 社がこのような CCUS に関する取組みを行なうようになった背景には、前 述 の 連 邦 政 府 に よ る 石 炭 火 力 発 電 所 に 対 す る 新 し い 規 準 策 定 の 動 き が あ る 。 Boundary Dam3 号機は 2013 年 2 月末に停止し、6 ヶ月の改修期間に日立製タービンに置き換えら れ、2014 年に運転再開の予定である。同社は別途、276MW の Shand 発電所にベンダー 試験用設備を設置し、日立が 3,000 万カナダドル超を投資して試験を予定している。 - Weyburn-Midale Project Cenovus Energy社(2000 年以降)とApache Canada社(2005 年以降)が主導して 2000 年から実施している商業規模のEORプロジェクトである。米国North Dakota州のNorth Dakota社の石炭ガス化プラントで回収したCO 2 を 320km離れたWeyburnとMidaleの油田 にそれぞれパイプライン輸送し、EORに利用する。各油田のCO 2 圧入量は、それぞれ 6,500 トン/日と 2,000 トン/日であり、これまでに 2,100 万トンを超えるCO 2 が圧入され、モ ニタリングされてきた。EORによってWeyburn油田の寿命を 20-25 年延長することが可能 となる。 また、2000 年以降 、IEAGHGのR&Dプロ グ ラムの 一環 とし て、連 邦政府 、州 政府 、 63 Cenovus Energy社、PTRCが主導して、8,500 万ドルをかけて圧入後のCO 2 挙動のモニタ リングも継続して行なわれたきた。2010 年 7 月、米国エネルギー省(DOE)とカナダ天 然資源省(NRCan)が本プロジェクトへの総額 520 万カナダドルの支援を決定したこと から、プロジェクトは 2012 年末まで継続されることになり、2012 年 12 月に本プロジェ クトの成果を取りまとめた、Best Practices Manual (BPM)が発行された。 本プロジェクトに関連しては、個人の私有地である農場において、本プロジェクト由来 の CO 2 漏 出 に よ る 被 害 が あ っ た と す る 申 し 立 て が あ っ た 。 こ の 申 し 立 て に 対 し て 、 IPAC-CO2 が中心となり、専門家チームを編成して現地調査を実施した結果、私有地のCO 2 レベルは自然由来のものであり、人工的なものではないと結論づけたレポートがとりまと められ、ウェブ上で公開されている。IPAC-CO2 は、CO 2 貯留の規格やベストプラクティ スの作成、地元住民や政府、産業界と共同してCO 2 貯留の安全性を確立するための研究や 調査を実施する非営利の環境NGOである。 ・Alberta 州 - Quest Questは、オイルサンドからのCO 2 を地下 2,000mの帯水層に貯留することを目的とし たCCS統合プロジェクトである。2012 年 9 月、最終投資判断(FID)が下され、現在は回 収施設の建設段階に入っている。FIDにより、同プロジェクトは連邦政府より 1 億 2,000 万カナダドル、Alberta州政府から 7 億 4,500 万カナダドルの出資を受けることが決定し ており、貯留したCO 2 に対してもクレジットが付与されることになる。 同プロジェクトは、Shell、Chevron、Maratho Oilの共同プロジェクトである。Shell の 化 学 プ ラ ン ト の オ イ ル サ ン ド の ア ッ プ グ レ ー ダ ー か ら 排 出 さ れ る CO 2 を ア ミン で 年 間 120 万トン(排出量の 35%程度)回収し、パイプラインで約 80km輸送して、帯水層に貯 留する。基本計画では 3 本の坑井を予定しているが、更に 5 坑井の増設を行う可能性があ り、2015 年後半からの操業開始を予定している。 - Alberta Carbon Trunk Line (ACTL) 本プロジェクトの事業主体は、Agrium社とEnhance Energy社である。Agrium社の肥 料工 場 とNorthwest Upgrading社 のオ イ ル サ ンド 改 質 装置 か ら 回収 され たCO 2 を 州 中部 に 新 た に 建 設 す る 240kmの パ イ プ ラ イ ン で 輸 送 し 、 EORに 利 用 す る 。 パ イ プ ラ イ ン は 1,400 万トン/年の輸送能力を有し、EORのポテンシャルは 14 億バレル、20~30 億トン のCO 2 貯留ポテンシャルがある。パイプラインは 2012 年第 3 四半期に建設が完了してお り、2014 年にEORサイトに接続して、2015 年から 5,000 トン/日で圧入開始を計画して いる。CO 2 回収設備の改修は既に始まっており、2014 年に運転開始を予定している。連邦 政府が 6,300 万カナダドル、Alberta州政府が 4 億 9,500 万カナダドルを予定している。 64 なお、GCCSIによれば、後者のオイルサンド改質に係るプロジェクトについては、最終投 資判断が 2012 年 11 月に下された。 また、本プロジェクトに関連して、ACTL-NOVAという新しいプロジェクト計画がある。 Alberta州のCO 2 排出の 39%を占めている石炭火力からCO 2 を回収してEOR利用を目指す ものである。EORの場合は、CO 2 の純度を 95%以上とする必要あり、適切な回収技術が必 要となってくる。 - Swan Hills Alberta州政府は、本プロジェクトに 15 年間で 2 億 8,500 万ドルの出資を予定していた が、2013 年 2 月末に中止の決定が発表された。本プロジェクトは、Swan Hills Synfuels 社による、地下 1,000m以深にある地下炭層からのガス精製過程において排出されるCO 2 を回収・貯留するプロジェクトである。ガス化プロセスで生産される合成ガスは 300MW の発電所の発電に利用され、発生する 200 万トン/年のCO 2 うち、120~140 万トン/年 を回収し、パイプライン輸送した後、EORに利用する計画であった。実証フェーズが 2009 年からスタートし、2013 年に建設を開始、2015 年に商業規模での操業開始を予定してい た。中止の決定理由は、天然ガス価格が想定より低迷していることにより、本プロジェク トで合成ガスを生産するよりも安価で調達可能なことに起因し、プロジェクトの進行が停 滞したことによる。 - Pioneer 2012 年 4 月、TransAlta社はプロジェクトの適正なCO 2 の買い手がみつからないこと、 また、現状の規制枠組みにおいては排出削減クレジットを売却できないことを理由に本プ ロジェクトの中止を発表した。同社は州内のEdmonton西部に位置する石炭火力発電所に 14 億ドルをかけて回収施設を新設し、100 万トン/年の回収を計画していた。同プロジェ クトは州政府から 7 億 7,900 万カナダドルの支援を受ける予定であった。 65 ③ R&D プロジェクト カナダで進行中の R&D プロジェクトの概要および社会的受容性に関する調査結果を以 下に示す。 ・Aquistore(Saskatchewan 州) Petroleum Technology Research Center (PTRC)が主導する 5 ヵ年計画のプロジェクト である。連邦政府による 1,400 万カナダドル(eco ENERGY Technology Initiative: 900 万カナダドル、Sustainable Development Technology Canada (SDTC): 500 万カナダドル) と州政府からのGo Green Fundによる 500 万カナダドルを含め、2,230 万カナダドルの資 金が確保されており、更なる投資を募っている。2011 年から第一フェーズが開始され、2012 年 9 月 に 州 内 最 深 の 3,396m の 観 測 井 の 掘 削 を 完 了 し た 。 第 二 フ ェ ー ズ に お い て は 、 Boundary Damプロ ジ ェク トと 統 合さ れ 、Boundary Damから パ イ プラ イン 輸 送さ れる CO 2 を本プロジェクトの帯水層に 2,000 トン/日で貯留する計画である。 ・CCTF(Shand 石炭火力発電所における回収プラント)(Saskatchewan 州) 2012 年 3 月、SaskPower社と日立は共同して総額 6,000 万ドルを投資して、CO 2 回収 試験施設としてCarbon Capture Test Facility (CCTF)を建設することを発表した。このプ ロジェクトは、SaskPower社の 298MWのShand石炭火力発電所に回収設備を導入し、120 トン/日の回収技術の試験が行なうものである。日立が回収の主要設備とアミン吸収液を 提供し、2014 年からの試験開始を予定している。 ・社会的受容性に係る調査 カナダにおいて実施された、一般の CCS に関する意識調査では、CCS の情報源として 最も信頼がおけるのは、科学者・研究者(69%)、NGO(42%)、報道関係(TV、ラジオ、 新聞)(22%)の順であった。また、CCS に対する認知度は、「CCS を聞いたことがない」 が 47%を占めた(欧州の場合は 67%)。また、カナダ国内で地域別に見ると「CCS に対す る懸念」について、Quebec 州では「非常に心配である」 「かなり心配である」が 71%を占 め、British Columbia 州 63%、Saskatchewan 州 43%となっている。一方で、CCS の有 効性については、「非常に有効である」が 34.5%であったのに対し、「全く有効でない」が 31%との結果が得られている。 66 (3) メキシコ メキシコは 2000 年時点で世界の 1.5%のCO 2 を排出している。2012 年、政府は気候変 動法を制定し、2050 年に 2000 年比で 50%減、レファレンスケース比で 70%減という自 主目標を設定した。目標達成のための 1 つのシナリオでは、2026 年に風力・原子力・水 力・地熱といった非化石燃料による発電量を 35%にするとされている。エネルギーセクタ ー に 関 連 す る 省 庁 は 財 務 省 、 エ ネ ル ギ ー 省 、 環 境 省 な ど で あ り 、 エ ネ ル ギ ー 省 の 傘 下に PEMEX(国営石油会社)とCFE(国営電力会社)が置かれている。 2012 年にCCS in Academic Community Taskforceが立ち上がり、CO 2 回収とCO 2 貯留 +EORに取り組む。2012 年、10 トン/日のアミンによる回収パイロットを建設した。2016 年以降、CO 2 -EORの研究に取り組む。メキシコでのEORは現在、窒素を利用しており高 コストとなっている。2020 年にはガスコンバインドサイクルのCCSを建設する計画がある。 今後、太平洋側にガス火力 3 基、メキシコ湾岸に石炭火力 1 基の計画があるが、いずれも CCSレディとすることになっている。建設候補地点は、いずれもPEMEXの石油化学プラ ントやCFEの発電所、油田などが存在し、CO 2 排出量が多い地域である。なお、CCSを推 進するためには、ファイナンスのメカニズム構築や、国際的なインセンティブ創出が必要 であるとされている。 (4) ノルウェー ノルウェーは 2020 年までにCO 2 排出量を 30%削減し、2050 年には 50~65%削減して カーボン・ニュートラルな社会を実現することを目指している。同国には石炭火力発電所 は殆ど存在せず、水力発電が主体であるため、CO 2 排出は主に北海を中心とする石油・ガ ス産業に由来するものである。また、エネルギーのセキュリティー確保の目的で、自国で 生産した天然ガスによる発電も検討してきたが、新設のガス発電所の建設はCCSが前提と なっているため、これまでのところ、分離回収コストの採算面から計画が難航している。 同国は、CCSについてはオフショアにおける貯留に主眼を置いていており、政府による積 極的な公的支援の下、NGO、研究機関、民間企業が関与して実施されている。社会的受容 性の問題は殆ど存在しないため、CCSを更に展開するためには、回収コストの低下が課題 となっている。 ① 政策動向 ノルウェーは、1991 年に炭素税を導入している。石油・ガス採掘に伴う消費については 他の 2 倍程度の高い税率が設定されているため、CO 2 排出削減やCCS推進のインセンティ ブとなっている。 ノルウェーにおけるCCSに対する政府支援策としては、研究開発プログラム「CLIMIT」 に 2 億クローネ、Mongstadプロジェクトに 2 億 9,000 万クローネが割り当てられており、 政府がCCSの促進のために果たしている役割は大きいと言える。「CLIMIT」に関しては、 67 石油エネルギー省がガス技術基金としてResearch Council of NorwayとGASSNOVAに提 供している資金の一部がこのプログラムに充当されており、両機関がこのプログラムを通 じて、CCS商業化促進のための資金支援を行なうという構図になっている。両者の棲み分 けは、Research Council of Norwayが研究開発プロジェクトを対象としているのに対し、 GASSNOVAは商業化を見込んだ実証プロジェクトへの支援を行なっていることにある。 Mongstadプロジェクトへの政府支援としては、2012 年 5 月に開所したTechnology Center Mongstad(TCM)のほか、2016 年に最終投資決定が予定されるFull-scale CO 2 Capture Mongstad(CCM)プロジェクトがある。 上記の他、政府及び政府機関が関係する直近の CCS の動向として、以下の 2 件をあげ る。 まず、2013 年 1 月、ノルウェー石油管理局(NPD: Norwegian Petroleum Directorate) は、CO 2 貯留アトラス「CO 2 Storage Atlas」の最新版を公開した。これは、40 年にわた って実施されてきた北海のノルウェー領海を対象とした地質構造やガス油田の調査の結果 に基づいて、貯留ポテンシャルのマッピングをまとめたものであり、ウェブサイトからダ ウ ン ロ ー ド が 可 能 で あ る 。 こ の ア ト ラ ス に よ る と 、 ノ ル ウ ェ ー 領 海 のCO 2 貯 留可 能 量 は 5.5Gtに上る可能性があるとされている。 また、2013 年 2 月、Brevikに所在するセメント生産メーカー、Norcem社のCO 2 回収プ ロジェクトに対するノルウェー政府からの 1,000 万ユーロの支援が、ESA(欧州自由貿易 連合EFTAの監視機構)によって承認されたことが発表された。このプロジェクトにより、 セメント生産で排出される量以上のCO 2 を大気から除去できることになり、世界初のカー ボン・ネガティブなセメント開発が実現することになる。また、同国においてはBIGCO2 という国際協力プログラムにおける化学ループ燃焼等の新回収技術研究開発や、DNVの主 導によるガイドラインの策定などの取組みが行なわれている。 ① 大規模プロジェクト ノルウェーには 3 件のCCS大規模プロジェクトがある。そのうちSleipnerとSnohvitの 2 件はいずれも操業中のプロジェクトである。もう 1 件のFul l -scale CO 2 Capture Mongstad (CCM)は、現在、FS段階にある。各プロジェクトの概要、最新動向について以下に示 す。 ・Sleipner Statoilが 1996 年 8 月から実施している、オフショアにおける大規模CCSのパイオニア 的存在のプロジェクトである。北海における天然ガス産出に随伴する高濃度CO 2 を分離回 収し、地下 1,000mの深部塩水層に 100 万トン/年の圧入を行なっている。これは、産出 ガスのCO 2 濃度が約 9%と規制値の 2.5%を上回ることから、輸出条件や顧客の仕様に見合 うよう、100bar、60~80℃、Amine 45wt% MDEAの条件で分離回収を行なう必要がある 68 ためである。本プロジェクトは、2013 年 1 月までに 1,600 万トンのCO 2 の圧入を完了し ており、総量で 2,100~3,000 万トンの圧入を見込んでいる。これまでに、スクラバー、 吸収側、アミン再生プラントで多くの不具合が発生しており、改良を重ねてプラントの安 定性を高めることにより、生産量を 110%に増加させた。前述のとおり、1991 年以降課税 されている炭素税が同社にとってCCS推進の大きなドライバーとなっている。 ・Snohvit 2008 年からStatoilが実施しているプロジェクトであり、LNGプラントで製造される天 然ガスからCO 2 を分離し、天然ガス層の下の海底下 2,600mの砂岩層に再圧入している。 CO 2 は陸域から海底下パイプラインで 152km輸送して貯留する。2,000 トン/日の貯留が 行なわれており、これまでに 100 万トンを超える圧入を行っている。プロジェクトの最終 貯留量は、3,100~4,000 万トンにのぼると見積もられている。 ・Full-scale CO2 Capture Mongstad(CCM) Statoilがノルウェー政府、GASSNOVAの支援を受けてFSを進めているプロジェクトで ある。同社が所有する出力 280MWの既存のMongstad天然ガス複合火力発電所に燃焼後回 収の設備をレトロフィットし、最大 100 万トン/年のCO 2 回収を行なう計画である。回収 したCO 2 はパイプライン輸送し、北海の深部塩水層に貯留することになる。このプロジェ クトのCO 2 回収装置の技術評価プログラム(TQP)は、フィージビリティ・スタディ、実 証試験、概念設計の 3 段階で構成されており、日本の三菱重工は実証試験まで受注してき たうちの一社である。2012 年 10 月、TQPの最終段階となる概念設計についても同社の受 注が決定した。同社は実証試験の結果を反映して、3,400 トン/日の回収能力を持つプラ ント設計の計画を行ない、2016 年のプラント建設開始に向けて、他の候補企業と回収技術 や性能、建設・運営コストなどを競うことになる。TQP終了後に最終的な技術選定が行な われ、入札を経て、基本設計(FEED)へ進むことが予定されるが、TQPの実施はその入 札参加の要件とされているものである。 ③ R&D プロジェクト ノルウェーにおいては、CCS 研究開発クラスターやパイロット規模のプロジェクトを 通して、産官学の連携による CCS への取組みが進められていることが特徴である。以下 にそれらの概要について示す。 ・Technology Centre Mongstad(TCM) TCM は 2012 年 5 月に Mongstad に開設された、世界最大の燃焼後回収技術の試験・ 検 証 施 設 で あ る 。 同 施 設 へ の 出 資 比 率 は 、 GASSNOVA(75.12%) 、 Statoil(20%) 、 Shell(2.44%)、SASOL(2.44%)となっている。実質的にはノルウェーの公的インフラであ 69 り、基本的にあらゆる企業にオープンである。回収技術の試験、検証、実証と知識共有、 回収コストやリスクの低減、市場開発への貢献、世界的展開の実現を目的として運営され ている。 近くに位置する既存の天然ガス炊き熱電併給(CHP)プラントとStatoil所有の精油所 (RCC:Residual Catalytic Cracker)という 2 つの異なるCO 2 ソースと回収用電源等の 設備を有する。この 2 つのソースからの排ガスは、それぞれ 3.5%、13%とCO 2 濃度が異な ることから、石炭火力、天然ガス火力のほか、産業排出源を対象とした回収技術の試験・ 検証が可能である。独立した 3 つのコントロールルームや 10MWの変電設備、海水による 冷却システムなどがあり、3 つの異なる技術を並行してテストすることが可能な設備とス ペースを持つフレキシブルな試験施設である。 同センターは、施設内のプラントで試験を実施するには使用料を払う必要がある。現在、 チルドアンモニアプラントにおいてAlstom社が冷却アンモニアによる回収技術を 18 か月 間、アミンプラントにおいては、Aker Carbon Solution社がアミンによる回収技術を 15 か月間、試験実施の契約を結んでいる。AlstomのCO 2 回収量はRCCで 80,000 トン/年、 CHPで 22,000 トン/年であり、通常のパイロットスケールより規模が大きく、商業規模 の一歩手前のスケールで回収技術の試験・検証を実施できるという点で世界的な注目を集 めている。Aker Clean Carbonのプラントの回収量は 80,000 トン/年であり、100 万トン /年レベルの商業規模に対応するには、TCMに設置した設備の大きさを 50 倍にする必要 がある。 なお、Alstom 社は、冷却アンモニアのほか、アミンによる燃焼後回収、酸素燃焼の研 究開発にも取り組んでいる。燃焼前回収については、IGCC の市場性を疑問視しているこ とから採用していない。 今後の TCM の利用については、上記の三菱重工社のほか、Siemens 社、日立等が関心 を示しており、協議を進めている。これは、前述の CCM プロジェクトのベンダーを競わ せる目的があり、将来、燃焼後回収技術によるガス火力発電所からの回収、輸送、貯留に 拡大したフルスケールの CCS を実施する計画である。今後、国際コンペが実施され、2016 年の第 2 四半期に政府の最終投資決定が行なわれる予定である。 ・BIGCCS SINTEFが主導する国際産官学連携クラスターである。このクラスターの研究開発資金 は、Research Council of Norwayからの支援が 65%、産業界からが 35%を占めている。ノ ルウェー政府が掲げるCO 2 削減目標に対してCCS推進を通じて貢献することを目的とし、 化石燃料からの持続可能な発電、CO 2 回収率の向上やコスト半減を目指し、大規模CCSプ ロジェクトの展開を実現するための知識共有や技術開発に取組んでいる。構成メンバーは、 研 究 機 関 ・ 大 学 か ら BGS、 NTNU、 CICERO、 University of Oslo、 産 業 界 か ら は Aker Solutions、Statoil、Shell Technology Norway、ConocoPhillips、GDF Suez、TOTALな 70 どである。 ・success CO 2 圧入、貯留、モニタリングの確固とした基礎を構築し、戦略的知識のギャップを埋 め、新たな能力開発と学習システムを提供することを目的としており、予算は 8 年間で 1 億 6,000 万クローネである。参画機関は、Christian Michelsen Research (CMR)、Institute for Energy Technology (IFE) 、 Norwegian Institute for Water Research (NIVA) 、 Norwegian Geotechnical Institute (NGI)、University of Bergen、University of Osloな どである。 ・CO 2 Field Lab Project ノルウ ェー、 フラ ンス 、英国 が共同 出資 する パート ナーシ ップ プロ ジェク トであ る。 SINTEFの主導により、CO 2 の人為的な圧入実験(controlled injection experiment)を実 施し、CO 2 の移行や漏出のモニタリングを行ない、モニタリングシステムの有効性の評価 を行なっている。同プロジェクトは、フェーズ 1 (2009~2011 年)においてサイト特性評価 を終了し、現在はフェーズ 2 (2011 年~2013 年)の段階にある。これまでに、深度 20mに 1.7 トンの圧入実験を行ない、微小振動調査を実施するなど、様々なモニタリング方法に より包括的な情報を得ている。 ・Svalbard CO 2 project University of Svalbardが中心となり、Gassnova、ConocoPhillips、Statoil、SINTEF、 NTNU、University of Bergenなどの多数のパートナーが参画するプロジェクトである。 ノルウェー領北の諸島部に位置するSvalbardでは、炭鉱、Longyarbyen発電所と貯留サイ トが隣接し、有効なCO 2 value chainが期待できる。同国唯一の小規模な石炭火力発電所 (Longyearbyen)から発生するCO 2 を回収し、地下深部砂岩層の塩水帯水層に貯留する。 Svalbardの砂岩層はシェール層と交互に重なり合っていることが特徴的で、ノルウェー本 土 の 地層 と 比 較 し て貯 留 ポ テン シ ャ ル が 高い と さ れて い る 。 プ ロジ ェ ク トの フ ェ ーズ 1 (2007-2010 年)で貯留層の選定を終了し、現在はフェーズ 2(2010-2015 年)において 圧入実験を実施している。2013 年から中規模CCSを実証し、2017 年以降にフルスケール のCCS実施を目指している。今後は新規発電所の建設計画に基づき 8~10 万トン/年の回 収も検討しており、教育・アウトリーチ活動によって住民との良好な関係が構築されてい る。 71 (5) オランダ ① 政策動向 オランダは世界第 9 位、欧州ではノルウェー、英国に次ぐ天然ガス産出国であり、実質 的なガス輸出国でもある。北海油田の石油生産は 1986 年以後減少に転じ、大陸棚にある 油田の多くは閉鎖に近づいている。石油と石炭は輸入しているが、順調な天然ガス生産に よりエネルギー自給率は 81%と高い。電源別ではガス火力の比率が 64%と高く、次いで 石炭火力 24%、原子力4%、石油火力 3%と続く。一方で、再生可能エネルギーは、EU 域内で第 6 位となる 1.2GWの風力発電施設を保有するが、2008 年の一次エネルギー供給 における割合が 4%とEU平均 8%を下回る。オランダの年間CO 2 排出量は 2.09 億トン、一 人当たりの年間排出量が 13 トン(2008 年)と、1990 年相当レベルまで排出削減が達成 されている。 オランダ政府は、2020 年までに1)年間 2%の省エネ、2)再生可能エネルギーの割合 を 20%に増大し、3)GHG 排出量を 1990 年比 30%の削減をすることを目標とする。政 府の気候変動政策において、CCS は省エネ、再生エネルギーに次ぐ第 3 の選択肢であり、 2007 年の住宅・国土計画・環境省の「Clean and Efficient: new energy for climate policy」 プログラムは、CCS の開発予算の確保と大規模実証プロジェクトを 2010 年中に決断する よう明記した。しかし、2010 年 9 月の政権交代に伴いエネルギー政策が見直され、「商用 の CCS は最初の原子力発電所が認可されるまで実施しない」ことが連立協定に記載され た。政府は、実証プロジェクトはこの適用範囲外であると説明したが、同時に国民の支援 があることを CCS プロジェクトの開発の重要な前提条件とし、この方針により 2010 年 10 月、Shell の Barendrecht プロジェクトを中止した。 その後、2011 年 6 月に発刊された「Energy Report 2011」では、欧州の化石燃料依存 は当分の間続くとの予測から、CCS をクリーンで確実なエネルギー供給を確保するための 手段として CCS を支援している。枯渇ガス田があるため、オランダの CCS ポテンシャル はもともと大きく、政府は CCS を 10 の重点分野の一つと特定し CCS の必要性と CCS が もたらす経済効果を認識している。 2009 年 11 月、オランダ議会はCO 2 の排出規制として、新設する発電所のCO 2 排出量を 350g/kWh以下にするよう求める決議案を採択した。採択の背景には、2008 年の「Energy Report」が石炭とCCSによりオランダをヨーロッパのpower houseにする構想を提示した ものの、4 つの石炭火力発電所の新設計画が住民の反対にあったことがある。 Vattenfall-Nuon Energy社は、2011 年 4 月、Nuon-Magnum IGCCプロジェクトの延期を 発表し、石炭ガス化を実施する際に 350g/kWhの排出基準を遵守することに合意している。 オランダ政府は、EU-CCS指令のCCSレディ(CCSR)条項も国内法に移行しており、石 炭火力発電所の新設にキャプチャー・レディであることを義務付けている。実際にE.ON のMaasvlakte Power Plant 3 (ROADプロジェクト)はフルのCCSRで認可建設され、Air Liquideの水素製造プラント(Green Hydrogenプロジェクト)はCCRで建設されている。 72 ② 大規模プロジェクト オランダのCCS Roadmapは、2015 年~2020 年をフェーズ 3 として大規模実証を支援 し、2020 年以降をフェーズ4としてCCSの商用化を目指す。大規模実証では合計で年間 500 万トン程度、商用規模では合計で年間 4,000 万トンのCO 2 を回収輸送貯留することを 想定する。大規模実証としては、ROADプロジェクトとGreen Hydrogenプロジェクトが 計画されているが、いずれも最終投資決定(FID)はなされていない。両プロジェクトとも 2016~2017 年の開始を予定する。2 つのプロジェクトは同じCCSネットワークの利用を予 定しているため、コストの点からROADが実現しない場合、Green Hydrogenプロジェク トだけが進行する可能性はないと考えられている。 NER300 では、オランダ政府はGreen Hydrogenプロジェクトを欧州委員会(EC)に推 薦した。同プロジェクトは、2012 年 7 月の発表では候補プロジェクトの第 3 位にランキ ングされたが、最終的にオランダ政府が 9,000 万ユーロの共同出資を確約できなかったた め融資を獲得できなかった。以下にROADプロジェクトとCO 2 ハブ・CCSネットワークに ついてまとめる。 ・ROAD プロジェクト ROAD プロジェクトは、ロッテルダムの人工島に建設中の EONMaasvlakte 石炭火力 発電所 3 号基で回収した CO2 を、25km パイプライン輸送して北海の枯渇ガス田 P18-4 に貯留する計画である。事業主体は、E.ON Benelux 社と Electrabel 社(GDF SUEZ)の 合弁企業 Maasvlakte CCS project 社である。施設の詳細を以下にまとめる。 - EON Maasvlakte 石炭火力発電所 3 号基(MPPS)での回収: 燃焼後回収、250MW 相当 CO 2 回収率 90%、回収量 110 万トン/年 発電所の運転開始は 2013 年、回収施設の運転開始は 2016 年の予定 - CO 2 の輸送: パイプライン長:海域 5km、陸域 20km 径 16”断熱管 容量 150 万トン/年(気相)/500 万トン/年(超臨界) 設計仕様 175bar・80℃ - CO 2 の貯留層: 枯渇ガス田、2015 年から 2022 年まで 110 万トン/年の貯留を計画 運営:TAQA 深度 3,500m、貯留容量:3500 万トン、圧力:35bar 同貯留サイトは EU 指令に基づいた許認可取得の第 1 号 73 ROAD プロジェクトは 2015 年に Full CCS-chain の運転開始を予定していたが、欧州 の債務危機、政治的な不確実性、CCS の先行きの不透明さから FID が遅れている。FID は早くとも 2013 年第 2 四半期になる見通しである。その理由として、プロジェクト担当 者は、EU の炭素価格が低いこと、最近 CCS の商用化は 2020 年代ではなく 2030 年代と 予想されていること(再生エネルギーが躍進し、化石燃料がベースロード発電市場から取 り除かれる可能性がある)、他の欧州の実証プロジェクトも停滞していることを挙げている。 現在は、回収施設の設計等エンジニアリングの準備が完了し、EPC 契約と許認可取得 も間もなく完了する予定である。商業化に向けての経済性が課題であり、EOR のほか排出 権クレジット等による複合的回復を期待している。 財政支援として、2009 年 12 月、EU の EEPR から 1 億 8 千万ユーロを獲得し、2010 年 5 月、オランダ政府から 1 億 5 千万ユーロの支援の確約を得ている。また GCCSI もプ ロジェクトを支援する。ROAD はロッテルダムの戦略的な目標の下、多くの国内・海外の パートナーと CO2 ネットワークを構築してプロジェクトを進めている。欧州で CCS を加 速化させるためには、世界規模での知識共有、public engagement が重要であり、GCCSI がそのネットワークの secretariat としての役割を果たしている。 ・CO 2 ハブ・CCSネットワーク ロッテルダム気候構想(Rotterdam Climate Initiative: RCI)のもと、CO 2 を圧入サイ ト ま で 運 ぶ の に 共 通 の 輸 送 装 置 を 用 い るCCSネ ッ ト ワ ー ク やCO 2 ハ ブ 構 想 が あ る 。CO 2 ハブでは、需給に合わせたCO 2 の中間貯蔵、船舶輸送、積載、液化などが実現できる。ロ ッテルダム港の 2025 年の予想図では、ネットワークに多くの小さな回収設備を追加し、 バージ(河川輸送用の小型船)でドイツの大工業地帯であるライン川流域からロッテルダ ムのハブまでCO 2 を輸送することも可能である。 ③ R&D プロジェクト CCS 関連の国家的な研究開発プログラムが「CATO」である。5 年間のプログラムで、 「CATO-1」は 2004 年から 2009 年に実施され、「CATO-2」は 2009 年から 2014 年の予 定で実施中である。産業界・中小企業・研究機関・大学・非政府組織(NGO)から 35 超 えるパートナーが参加し、オランダ応用科学研究機関(TNO)が運営を担当する。産業界・ 政府の両方から資金提供を受け、予算総額は 6,000 万ユーロを超える。 「CATO-2」は需要主導型の研究開発プログラムで、統合的な開発に重点を置く。産業 界と政府が協力して問題を特定し優先順位を設定する。民間のパートナーが予算の 50%を 提供する。プログラムは、1)CO 2 回収、2)輸送およびCCSチェーンの統合、3)地表 下貯留およびCO 2 の観測、4)法規制および安全性、5)一般社会の認識の 5 つのサブプ ログラムから構成される。 オランダで実施中の主な研究開発プロジェクトを表 2.4-1 に示す。 74 表 2.4-1 プログラム名称 SITECHAR COMET オランダの研究開発プロジェクト テーマ 参加機関 サイト特性評価ワークフローの TNO、 オ ラ ン ダ エ ネ ル ギ ー 改善 研究財団(ECN) 西 地 中 海 に お け る CO 2 輸 送 の た ユトレヒト大学 めの総合インフラ RISCS CO 2 貯留の影響および安全性 農業経済研究所(DLO) CO2EUROPIPE 欧州における大規模な CCS のた TNO、ECN、Gasunie、 めの輸送インフラ Stedin、Anthony Veder、 E.ON Benelux、CO2 Net BV、Linde gas、Shell、 NACAP Benelux ULTIMATECO2 地 中 貯 留 さ れ た CO 2 が 最 終 的 に ユトレヒト大学、TNO どうなるかの把握 CO2CARE サイト閉鎖環境アセスメント研 TNO、Shell 究 NEARCO2 参加・コミュニケーション戦略 ECN COCATE 欧州における輸送インフラ ― TNO、ロッテルダム港 小規模の産業排出源を考慮に入 れて 75 (6) 英国 ① 政策動向 2008 年に成立した「気候変動法(Climate Change Act 2008)」は、気候変動対策のた めの世界初の長期的かつ拘束力ある法律である。気候変動法は 2020 年までにCO 2 排出量 を 1990 年比で 26%削減し、2050 年までにすべてのGHG排出量を 1990 年比で 80%削減 する数値目標を掲げる。目標達成のための行動の一つがCCSによる排出量削減である。 2011 年 12 月に発表された炭素計画(Carbon Plan)は、2050 年までの低炭素化の工 程を示す。炭素計画は 2020 年代の 10 年間は電力部門からの排出量削減が必要であり、40 ~42GW の低炭素プラントが必要となるとした。CCS は、エネルギー・気候変動省(DECC) の下位機関である炭素回収・貯留局(Office of Carbon Capture and Storage, OCCS)が 担当する。 政府の CCS 支援は、「2020 年代に価格競争力のある CCS 産業の創出」を目標とする。 最終的な成果目標は、2020 年代初めに民間の電力部門が、政府の補助金がなくとも他の低 炭素発電技術と競合可能な差金決済取引(CfD: Contract for Difference)で定めた電力価 格で、CCS 付発電所の建設の投資決断ができるようになることである。政府は、化石燃料 による発電を他の低炭素発電と競合可能にして、柔軟性のある低炭素電力を提供する一方 で低炭素発電の価格競争を維持し、産業排出源の排出削減、海域貯留層の利用を促進する ために CCS を支援する。CCS 戦略として 2012 年 4 月 3 日、CCS ロードマップが発表さ れた。 ロードマップは以下の 5 つを柱とする。 - 10 億ポンドの CCS コンペ(CCS Commercialization Programme) - 総額 1 億 2,500 万ポンドの R&D 投資(R&D and innovation) - CfD、カーボンフロアプライスなどによる電力市場改革(Energy Market Reform) - CCS サプライチェーンの構築や輸送・貯留ネットワークの構築などによる CCS 普及障 壁に対する取組み(Intervention to address key barriers) - 知識共有推進などの国際協力(International Collaboration) a 10 億ポンドの CCS コンペの経過 2007 年に始まった初回の CCS コンペは、投資するプロジェクトを確定できないまま 4 年後の 2011 年に終了した。2 回目となる今回の CCS コンペは、前回から持越した 10 億 ポンドの資金をもとに商用規模の CCS 設計、建設、運転に係る知見獲得を目的として、 2012 年 4 月に開始された。2012 年 7 月の受付終了までに 8 プロジェクトが応募し、2012 年 10 月、最終候補として 4 プロジェクトが選定された。最終候補の 4 プロジェクトは図 2.4-3 に示す通りとなっている。今後は、2013 年春に更に先に進めるプロジェクトが選定 され、FEED を経て最終的な投資決定がなされる予定である。プロジェクトの運転開始は 2016~2020 年を目処としている。 76 SSE's Peterhead – 燃焼後回収、ガス Captain Clean Energy Project (Summit Power Grangemouth), IGCC, 石炭 Progressive Energy Teesside, Alstom-Drax – 図 2.4-3 燃焼前回収、石炭 酸素燃焼、石炭 CCS コンペの最終候補プロジェクト b 総額 1 億 2,500 万ポンドの R&D 投資 CCS のコスト削減と貯留サイトの特性調査のための技術開発支援を目的として、2011 年~2015 年の 4 年間に、総額 1 億 2,500 万ポンドが提供される。DECC、技術戦略委員会 (TSB)、エネルギー技術研究所(ETI)、Research Council が合同で出資する。CCS の基 礎研究と理解に 4,000 万ポンド、要素技術の開発に 3,000 万ポンド、5~10MW のパイロ ット試験に 5,500 万ポンドを割り当てる。パイロット試験への投資には、Ferrybridge 発 電所で実施されている回収プロジェクト(CCPilot100+)(後述)も含まれる。 c 電力市場改革(Electricity Market Reform: EMR) 英国の CCS 支援は、CCS コンペにより初期投資に総額 10 億ポンドを支援するだけで なく、EMR の提案する「差金決済取引(CfD)」等を通してプロジェクトの操業費を支援 することを特徴とする。 EMR を含むエネルギー法案は、2012 年 11 月議会に上程された。コンサルテーション を通して 2013 年中に詳細を決定し 2014 年から EMR が開始される見通しである。英国で は、今後 10 年間に 2011 年の総発電量の約 5 分の 1 の発電施設が閉鎖され、110 億ポンド 超の投資が必要になる。EMR は電力の安定供給、消費者負担の少ない電力価格の維持、 気候変動政策目標の達成を目標に提示された。 EMR は長期的な差金決済取引(CfD)を伴う固定価格買取制度(Feed-in Tariffs)、炭 素下限価格(Carbon Price Floor)、排出基準(Emissions Performance Standard)の 3 つの主要施策から成る。各施策について概要をまとめる。 77 ・長期的な差金決済取引(CfD)を伴う固定価格買取制度(Feed-in Tariffs) 低炭素発電のコスト支援策である。低炭素電力の固定価格買取り保証する長期契約を締 結後、契約価格(Strike Price)と電力の市場価格との差額を政府と発電事業者が調整す る。発電事業者は、電力の市場価格が契約価格よりも低い場合には差額分が支払われるが、 市場価格が契約価格を上回る場合には差額分を返金しなければならない。CfD により発電 事業者は、市場価格の変動に影響されることなく CfD の契約期間中一定の収入が確保でき、 プロジェクトの商業的なリスクを軽減することができる。このためプロジェクトの資金調 達コストを低減することができ、消費者の費用負担を軽減することができる。エネルギー 法案では、政府の所有する会社(CfD counterparty)が発電事業者と契約し、発電事業者 に支払う差額のための資金を電力小売業者から徴収し管理するモデルが提案されている。 CfD の詳細は、2013 年 7 月に発表される予定である。 電力 価 格 (£/MW/h) 契約価格 発電事業者は契約価格に満たない額 を 上 積 みさ れ る 発電事業者 に よ る 返金 時間 市 場 収 益( £ /MW/h) 図 2.4-5 CfD 支 払 金 電力価格 発 電 事 業者 に よる 返 金 差金決済契約による固定価格買取制度の運用 ・炭素下限価格(Carbon Price Floor: CPF)– EU 排出権取引(EU-ETS)の炭素価格を 支援する税金 低炭素投資のインセンティブ強化のための制度である。政府はEU-ETSの炭素価格であ るEUAに下限価格(CPF)を設定し、英国の炭素価格をEU-ETSの炭素価格よりも高く設 定する。CPFは、2013 年 16 ポンド/tCO 2 、2013 年から 2020 年は年 2 ポンド/tCO 2 ずつ 上昇し、2020 年に 30 ポンド/tCO 2 、2030 年に 70 ポンド/tCO 2 となる。炭素価格が低い と公害を出す事業者は対策を講じるよりも排出権を購入することを選択し、低炭素技術へ の投資が進まない。政府はCPFとEU-ETSの炭素実勢価格の予測との差額を「炭素価格支 援レート(carbon price support rate)」として課税することで、発電事業者の低炭素電力 78 インフラへの投資を促す。 炭素価格支援レートは、発電に使用される化石燃料の納入者に課せられ、化石燃料の炭 素含有量に応じて金額が定められる炭素税である。CPFは 2011 年の財政法により立法化 され、2013 年 4 月より導入されるが、2011 年のカーボン・バジェット(炭素削減計画)で 2013~2014 年の炭素価格支援レートは、4.94 ポンド/tCO 2 、2012 年のカーボン・バジェ ットで 2014~2015 年の炭素価格支援レートは、9.55 ポンド/tCO 2 と定められた。EU-ETS の炭素価格が上昇した場合は、CPFに対応して税率が引き下げられる。発電事業者が対策 を講じられるよう、炭素価格支援レートは 2 年前に設定される。 CCSを併設する発電所は、実証プロジェクトを含め回収し貯留したCO 2 に相当する炭素 支援価格レートが免除される。HMRC(歳入関税庁)とDECCは、発電所ごとの減税措置等 課税方法の詳細をCCS部門と検討中である。 炭素価格支援 EU ETS 炭 素 価 格 EU ETS 炭 素 価 格 + 炭 素 価 格 支 援 炭素下限価格(フロア・プライス) 出 典 : 英 国 国 家 財 政 委 員 会 2011 年 図 2.4-6 温室効果ガス排出量取引制度における炭素最低価格の図解 (2009 年実質価格、 暦年により表示) •排出規制(Emissions Performance Standard)–CCS 無の石炭火力発電所の新設を禁止 する政策のためのバックストップ(逆戻り防止)法 英国の排出規制は、英国全土の 50MW 以上のすべての新設の化石燃料発電所(CCS の 実証発電所を含む)に適用される。当初は 450g/kWh に設定されるが、2010 年のエネル ギー法に基づき 3 年毎に見直しがなされる。但し 450g/kWh で認可された発電所は 2045 年までその基準が適用され、より厳しい基準に改定されることはない。CCS を併設する発 電所は排出規制の対象外である。 79 d CCS サプライチェーンの構築や輸送・貯留ネットワークの構築などによる CCS 普及障 壁に対する取組み(Intervention to address key barriers) DECC は 2012 年 3 月、CCS 技術の中でコスト削減が期待できる分野を特定し、政府、 産業界に助言を与えることを目的として、産業主導の専門委員会「CCS コスト削減タスク フォース」を創設した。委員会は、英国の業界団体である CCSA(Carbon Capture and Storage Association)の会長が議長を務め、産官学の実務経験者で構成される。2012 年 11 月、委員会はコスト削減に関する 70 ページの中間報告書を発表した。中間報告は、貯 留と輸送部分の最適化により、2020 年代に 100 ポンド/MWh 以下にコスト削減が可能で あるとする(再生可能と競合可能なコスト。例えば、洋上風力は 140~160 ポンド/MWh)。 最終報告書は 2013 年春に発刊の予定である。 e 知識共有推進などの国際協力(International Collaboration) DECC は、2011 年 12 月、初回の CCS コンペの経験をもとに Longannet と Kingsnorth の 2 件の FEED について知識共有のためのイベントを開催した。また、発展途上国におけ る CCS の実施を支援する目的で、International Climate Fund(ICF)から 6,000 万ポンド を割り当て、DECC は、アジア開発銀行に対し 3,500 万ポンド、世界銀行トラストファン ドに対し 2,500 万ポンドを提供することに合意している。基金は、今後、中国、南アフリ カ、インドネシアで CCS の大規模実証と実用化促進に役立てられる予定である。 ② 大規模プロジェクト ・Don Valley プロジェクト 英 国 サ ウ ス ヨ ー ク シ ャ ー で CCSの 専 門 業 者 で あ る 2CO Energy( 2CO) が 計 画 す る CCS-EORプロジェクトである。Hatfield 発電所に 650MWのIGCC発電所を新設し、90% 以上年間 490 万トンのCO 2 を回収、約 300kmをパイプライン輸送して北海油田のEORに 利用する。同地方の産業排出源からもCO 2 を回収するCCSクラスタープロジェクトである。 回収と貯留を 2COが、輸送をNational Gridが担当する。北海中央部の油田には 70 年代か らCO 2 -EORの構想があり、Magnus EORプロジェクトも進む。2COの創業者が北米でEOR を展開する石油開発会社Denbury社の元役員であること等、プロジェクトには十分なEOR の知見がある。プロジェクト担当者は、プロジェクトの成否はコストとCO 2 調達の問題で あり、技術的な問題ではないと言う。 同プロジェクトは 2009 年のEEPRに選定され、1 億 8,000 万ユーロの融資を獲得した。 初期投資は総額 50 億ポンドとなる見通しで、その内の 30 億ポンド(68%)が発電所の建 設費であり、そのうち 59%が回収コストである。初期投資において融資の割合は 60%で ある。2CO2 によれば、CCS発電所のコストを売電とCO 2 削減による収益で賄うことは不 可能であるという。同プロジェクトは、2012 年 7 月のNER300 の最終候補リストで第 1 位にランキングされたが最終的に資金を獲得できず、今後、新たな投資家が現れない限り 80 プロジェクトの存続は難しいとする。2COは、コストと収益の問題をテーマにDon Valley プロジェクトの経験を報告書にまとめ、2013 年 1 月、GCCSIより報告書「2CO Targeted Report」を発刊した。 ・Teesside (Pre-combustion coal) 北イングランドTeesideで 450MWのIGCC発電所を建設しCO 2 を回収するほか複数の産 業排出源からCO 2 を回収し、パイプライン輸送して北海中央部にある複数の貯留層(枯渇 油田、ガス田、帯水層等)に貯留する、複数排出源・複数貯留サイトのクラスタープロジ ェクトである。進行中のUKコンペの最終候補の一つ。事業主体は、CCSを専門とするエ ネルギー企業のプログレッシブ・エナジーのほか、TATA、Linde等Teeside周辺の排出源 企業がプロジェクトのために形成したコンソーシアムである。コンソーチアムは同地で排 出されるCO 2 を 85%回収することを目標とする。Teesideは英国排出量の 4%を排出する大 工業地域であるが沿岸部にあるため、排出源と貯留サイトが近いことが最大のメリットと なっている。経済効果として、排出源企業への税還付、EORによる 30 億バレル超の増産 を期待している。 ・Captain Clean Energy Project 事業主体のSummit Powerは、社員 6 人から始まった米国のベンチャー企業である。米 国テキサス州でTCEPプロジェクト(400MWのIGCC、EOR)を進める一方で、UKコン ペの最終候補の一つであるCaptain Clean Energyプロジェクトにパートナーとして参加 する。TCEPは電力、尿素、CO 2 の長期販売契約を締結しており、Summit PowerはTCEP の知見を英国に広げるよう目論む。Captain Clean Energyプロジェクトでは、スコットラ ンドのGrangemouthに 400MWのIGCCを新設し、電力、水素、CO 2 を販売する計画であ る。プロジェクト担当者は、英国の場合、尿素は安くEORも北米ほどに進展していないた めCO 2 の価値が低く、CCSコンペを獲得できなければ継続が難しいとしている。 ③ R&D プロジェクト ・CCPILOT100+(英国 ) Doosan Power 社はこれまで、 酸素燃焼と燃焼後回収の技術開発を実施している。燃焼 後 回収の技術開発は 20 年以上の経験があり、カナダと英国で 1 トン/日(ITC、ERTF)、 また、カナダで 4 トン/日(Boundary Dam)のスケールのプラントを持つ。CCPILOT100+ は、Doosan Power 社と SSE 社によるパイロットプラントを用いた 2012 年 3 月から 2 年 間の試験プログラムである。プラントは SSE 社の 500MWe の Ferrybridge 発電所から 5MW 相当の 100 トン/日の回収能力を有する。パラメーターテストや暴露試験を通して、 吸収液の耐性試験や許認可プロセスの最適化を行う。現在までに 100 トン/日の回収と 90% の回収率を達成している。2012 年 Q3 まで MEA のベースライン試験を実施し、2013 年 81 より改良型吸収液の試験を計画している。 ・CO2 Capture Project – Phase 3 酸素燃焼の試験プロジェクトであり、 現在は 2013 年までの Phase 3(実証)にある。 流 動接触分解(FCC: Fluid Catalytic Cracking)のパイロット試験では圧縮機内部で腐食が 見られ、酸素燃焼ガスが強い酸性成分持つと考えられる。 (7 ) スペイン ・CIUDEN の 酸素燃焼の循環流動床ボイラー CIUDENは 2006 年に設立された、CCSやク リーンコール技術に係る企業・大学・研究 機 関によるコラボレーションのためのプラットフォームである。技術トレーニングや研究 開発、知識共有を推進している。CIUDENのCO 2 センターは、20MWの微粉炭燃焼と 30MW の循環流動床ボイラー(CFB)による燃焼のほか、3MWのバイオマス燃焼の試験を実施す ることができる。複数燃料の利用、SOxやNOxの減少といった長所のある酸素燃焼による CFBでは 2011 年 9 月から試験が行われている。地元で産出される無煙炭のほか、石油コ ークス、亜瀝青炭、バイオマスの 4 種類の燃料の試験、その酸素燃焼と空気燃焼の切り替 えによる試験を実施している。この試験中の酸素燃焼CFB技術を 323MWeのCompostilla 発 電 所 に 適 用 す る OXY-CFB-300 Compostilla プ ロ ジ ェ ク ト が 計 画 さ れ て い る 。 こ れ は EEPRからの出資が決まっているプロジェクトであるが、2013 年後半に最終投資判断が下 されることになっている。同プロジェクトでは、年量 110 万トンのCO 2 を回収し、120km のパイプラインにより輸送して、陸域の帯水層に貯留する計画である。貯留層については 2 か所で調査が行われている。 ・ ELCOGAS の燃焼前回収パイロットプラント スペインの ELCOGAS 社は 335MW の Puerto llano IGCC を運転しており、この IGCC に 14MWt の燃焼前回収パイロットプラントを設置している。100 トン/日の回収能力を有 するこのプラントを用いて複数の EU プロジェクトによる研究が実施されており、プラン トは 2010 年 10 月以降、断続的に 800 時間の運転がなされている。 82 (8) ドイツ ドイツは、帯水層で 90±30 億トン、ガス田で 27.5 億トンの貯留ポテンシャルがあり、 数ヶ所の発電所の排出量を貯留するに十分な量であるが、貯留層がドイツ北部に集中して いる(BGR2010)。 CCS 法としては、CCS 指令の移行にあたり 2012 年 8 月に施行した炭素貯留法(KSpG) があるが、内容は CCS 指令以上に厳しい。KSpG は貯留の実証プロジェクトについて、貯 留量が 1 プロジェクトあたり年間 130 万トンであること、研究を目的とし、2017 年まで に建設されること、国内で最大で4プロジェクトとすることと限定している。また、州が 貯留を拒否できる免責条項を含み、貯留のライアビリティの期間を閉鎖後 40 年(CCS 指 令は 20 年)とする。この他、海外、排他的経済水域への CO2 の輸送に関する記載がない ため、CO2 パイプラインの認可が得られるかどうか不明である。 貯留層が北部に集中するドイツの場合、欧州域内の CO2 パイプライン網の利用が必須 である。また、KSpG の改正がなければ、ドイツで CCS 実証プロジェクトが実施される可 能性は極めて低い。 ドイツの代表的なエネルギー企業である E.ON 社と RWE 社による CCS への取組みに 関する情報を以下にまとめる。 ・E.ON 社 オ ラ ン ダ で の ROAD プ ロ ジ ェ ク ト の 事 業 者 で あ り 、 CO 2 排 出 源 と な る Maasvlakte Power Plant 3 を建設中である。 このほか、2008 年からFluor社のアミン溶液によるCO 2 回収を同社と協力して行ってい る。2011 年に 757MWeのWilhelmshaven石炭火力発電所にパイロットプラントの建設を 開始し、2012 年第 3 四半期から同プラントによる研究開発を実施している。同プラント では、の排煙脱硫装置(FGD)からのCO 2 を 70t/日で回収する能力を有している。 ・RWE 社 2006~2010 年、Hurth IGCC-CCSプロジェクトのエンジニアリング設計を実施した。 513MW(正味 306MW)のIGCCで 90%以上のCO 2 を回収して、年間 260 万トンのCO 2 を北部ドイツの帯水層に貯留する計画となっていた。しかし、発電所の建設費とパイプラ イン等インフラ建設費が予想以上に高いこと、社会的受容性を得られなかったことから中 断した。 現在、英国の Aberthaw で回収試験を進めている。日量 50 トンの回収試験であり、2013 年 1 月から 2014 年半ばまでの実施計画となっている。この他にも CCU の試験を進めてい るが、回収量が少ない上、排出権価格も低いためインセンティブがなく実用化は遠い。 83 (9) イタリア ・FCC 用酸素燃焼回収の大型パイロットプラント イタリアのENI社は、BP社、Chevron社、Shell社などとともに、石油精製プラントの 全プロセスからのCO 2 排出のうち 30%を占めるFCC(流動接触分解装置)用の酸素燃焼回 収の研究開発を実施している。プロジェクトは 2001 年に開始され、現在は 3 フェーズ目 に当たるが、2005 年にラボ試験、2006 年にパイロット試験、2012 年から大型のパイロッ ト試験を実施している。大型のパイロット試験では、Petrobras社の精製プラントに酸素 供給装置とCO 2 のリサイクル装置をレトロフィット導入して、排ガス中の 94%のCO 2 の回 収に成功している。 (10) フランス ・Lacq CO 2 Capture & Storage Project 30MWthの酸素燃焼からの排ガスであるCO 2 を回収し、地下 4,500mの枯渇ガス田に 9 トンを圧入するプロジェクトである。現在、4 万 3 千トンの圧入が完了している。CO 2 は 回収後に 200℃から 30℃まで冷却した後、1bargから 27bargまで加圧し、脱水後に 29km のパイプライン(12”および 8”管)で輸送する。さらに貯留サイトで 51barまで加圧し てから圧入している。圧縮機で腐食が発生しているほか、酸素燃焼で 400ppm程度のNOx が生じている。半径 2km内で 11 箇所モニタリングを実施している。社会的受容性は良好 であり、事前にコンサルタントがNGOを含む全てのステークホルダーを調べ、漏れなく連 絡を取った。酸素燃焼ボイラーの規模を 200MWthまで拡大する予定にあり、2013 年に設 計を完了させる計画となっている。初期投資額は 6,000 万ユーロである。 (11) 豪州 豪州の CCS 政策、大規模 CCS プロジェクト、回収パイロットや大規模貯留を含む研究 開発に係る情報を以下にまとめる ① 政策動向 豪州のエネルギーは大きく石炭に依存している。発電に占める石炭火力の割合は 75% に上り、石炭火力からのCO 2 排出は温室効果ガス排出の約 30%を占めている。また、豪州 はネットで世界最大の石炭輸出国でもある。こうしたことから、政府は 2000 年比で 2020 年まで 5%、2050 年までに 80%の排出削減の目標を掲げており、再生可能エネルギーとと もに、CCSを含む低排出の化石燃料技術への大規模な投資が必要とされている。なお、豪 州は国土の北西海域、西部海域、南東部海域(Gippsland海盆)などに大きな貯留ポテン シャルを持っているとされている。 84 政府による主な CCS 関連の投資として、以下のプログラムが挙げられる。 ・CCS Flagships プログラム 17 億豪ドル。CCS 実証プロジェクトを支援する。 ・National Low Emissions Coal Initiative 3 億 7000 万豪ドル。石炭関連の R&D や Callide プロジェクトなどの中規模プロ ジェクト、豪中協力などを支援する。 ・National CO 2 Infrastructure Plan 6,100 万豪ドル。貯留ポテンシャル調査を行う。 ・Global CCS Insitute 3 億 1,500 万豪ドル。国際機関である GCCSI の設立と運営。 2012 年 7 月に炭素価格制度を導入し、大企業による排出削減の取り組み強化を促して いる。開始から 3 年間は政府による固定価格が適用され、2015 年には市場によって価格 が変動する排出量取引制度に移行される予定となっている。炭素価格は 2029 年には 50 豪 ドルに上昇すると見込まれている。CCS の普及の推進力となる可能性もあるが、産業界か らは、政府による再生可能エネルギーへの投資が 662 億豪ドルであるのに対して、CCS への投資は 40 億豪ドルに留まり著しく均衡を欠くとの指摘もある。豪州政府は炭素価格 制度の開始に向けて、大規模排出産業や発電事業に対して 86 億ドルを支援し、排出量の 多い旧式の発電所(2,000MW 相当)の閉鎖に対する支援にも取り組んでいく。また、石 炭関連事業に対して 126 億ドルを支援するなど、様々な調整措置を行なう。 連邦政府の Department of Resources、Energy and Tourism はこれまでの CCS の取組 みから、①2020 年までの実証プロジェクトの実施は難しい、②CCS の実施には貯留サイ トの確保が重要、③輸送も重要であり、貯留と併せて考える必要がある、④CCS のコスト を知る必要がある、ということを学んだとしている。 ② 大規模プロジェクト 民間主導のプロジェクトである Gorgon プロジェクトでは、2015 年の圧入を目指して 順調に施設の建設が進捗している。一方、連邦政府の Flagships プログラムの中で、連邦 政府と州政府が主導して実施されている CarbonNet と South West Hub の 2 つのプロジ ェクトは事前 FEED の段階にあるが、プロジェクトの体制は、今後、詰められていくこと になっているなど、明瞭な将来見通しはない。Surat Basin CCS プロジェクトが Flagships の 3 つ目のプロジェクトとして審査を受けることになっている。これらの 4 件のプロジェ クトの概要を以下にまとめる。 85 ・Gorgon プロジェクト Gorgonプロジェクトは、天然ガスのガス処理を行う際に排出される年間 340~400 万ト ンのCO 2 を帯水層に貯留する商用CCSプロジェクトである。実施主体はChevronを中心と するコンソーシアムである。天然ガスは海底下のガス田から生産され、ガス処理はガス田 近くに位置するBarrow島で行われる。ガス処理とともにCO 2 が回収され、Barrow島の直 下 2.5km深にある深部塩水層へ貯留される。CO 2 貯留によりCO 2 の排出が 40%削減される ことになり、CCSの実施は、ガス生産企業コンソーシアムによる純粋な環境対策として決 定されたとされる。最終投資判断(FID)までに 1 億 5 千万豪ドル超の巨額の投資がなさ れている。法規制については、このプロジェクトに特化した法律が制定され、環境影響評 価を実施した世界で最初のCCSプロジェクトとされている。 Barrow 島の 3 か所に計 9 本の圧入井が設けられるほか、圧力制御を目的とした 4 本の 地下水の生産井と 2 本の地下水の圧入井、また、2 本の観測井の設置が計画されている。 圧入開始は 2015 年を予定している。 ・CarbonNet プロジェクト 連邦政府が承認した 2 つの Flagship プロジェクトのうちの 1 つである CarbonNet プロ ジェクトは、ビクトリア州政府が主導している。州政府のほか、連邦政府、GCCSI、CO2CRC や企業が出資した官民プロジェクトである。現在、FS の段階にあるが、出資のコミット はこの FS にとどまっている。この FS を含む各段階が終了するごとに、出資者を含め、 その後の計画が決められていくことになっており、プロジェクトが確実に実施されるとは 言えない。なお、豪州では、政府がパイプライン建設に出資し、ビジネスとして軌道に乗 った後に企業に売却することが行われることがよくあり、この CCS プロジェクトも同様 な形となる可能性があるとの指摘もある。 プロジェクトのコンセプトは、複数ユーザーによる大規模 CCS ネットワークの構築で ある。ビクトリア州は褐炭の世界的産地であり、電力の 90%を石炭火力に依存しているほ か、豪州で最大となる 20G トンの貯留ポテンシャルを有することから CCS の実施に適し ているとされる。同プロジェクトでは海底下貯留とし、年間で 100 万から 500 万トンを貯 留し、総量で 2,500 万から 1 億 2,500 万トンの貯留を計画している。貯留サイトは数か所 を候補地として調査が進められているが、詳細は公表されていない。今後の 1 年半で、サ イト選定、回収や輸送の調査検討、民間に魅力があるようなプロジェクト体制の決定、プ ロジェクトの産業への影響の評価、社会的受容性への取り組みをする。 このプロジェクトは 2012 年に CSLF 認定プロジェクトとなった。 86 ・South West Hub プロジェクト 連邦政府が承認した 2 つの Flagship プロジェクトのうちの 1 つである South West Hub プロジェクトは、西オーストラリア州政府が主導して実施されている。複数の排出源を持 つプロジェクトとして計画されており、貯留層として 1.4~3 キロの深さにある陸域砂岩層 が地質調査等により検討されている。 排出源としては、Perdaman社の肥料工場(240 万トン/年)が想定されており、将来的 には、発電所(700 万トン/年)も視野に入れている。また、Alcoa社がボーキサイトを抽 出する際に排出され、地表で乾燥・管理される赤泥にCO 2 を固定するプロジェクトもSouth West Hubプロジェクトに加える構想もある。CO 2 によって赤泥の強アルカリ性が中和さ れるとともに、赤泥の乾燥の促進、乾燥中の粉じん発生の抑制、将来的に土地として利用 されることになる赤泥の貯蔵地の強度向上といった利点がある。現在はパイロット試験中 であるが、7 万トン/年を目指しており、将来的には 30 万トン/年に拡大される可能性があ る。 このプロジェクトも Carbon Net と同様に、連邦政府や州政府、企業による出資の確約 は FS にとどまっており、FS 等の段階の終了ごとに出資者を含め計画を練ることになる。 現在、プロジェクト全体への出資モデル、貯留、パイプライン、圧入といったプロセスご との出資モデルが検討されている。 なお、同プロジェクトでは、社会的受容性の向上に向けて活動の 1 つとして、CCS に ついて学んだ、Carbon Kids と呼ばれる生徒たちが、他の生徒に CCS を教えるというユ ニークなプログラムを展開している。 このプロジェクトは 2012 年に CSLF 認定プロジェクトとなった。 ・Surat Basin CCS プロジェクト Surat Basin CCSプロジェクトは、300 億トンの貯留ポテンシャルがあり、油ガス探査 が盛んなSurat盆地(クイーンズランド州)に燃焼後回収によるCO 2 の深部塩水層(およ そ 1.3km深)での貯留を目指すプロジェクトである。現在、事前FEEDの段階にあり、今 後、2016 年第 3 四半期から 2017 年までFEEDを実施し、2018 年から 2020 年に建設、2020 年から 2023 年に 20 万トンの圧入を計画している。CO 2 排出源は既存の石炭火力を想定し ているが、エタノール工場も選択肢としてある。現在、3 番目のFlagshipプロジェクトの 認定を目指している。 このプロジェクトは、Flagship プロジェクトとしての認定を目指していたが中止とな った、新設 IGCC を排出源とし 250 万トンの貯留を目指していた Wandoan プロジェクト の後継プロジェクトとなる。また、主要事業主体である Xstrata Coal 社が中心となって設 立した Carbon Transport and Storage 社(CTSCo)の名前を冠した CTSCo CCS プロジ ェクトと呼ばれることもある。 87 ③ R&D プロジェクト 実発電所における酸素燃焼によるCO 2 回収プロジェクトであるCallideプロジェクト、3 件の回収パイロットプラント、貯留プロジェクトであるOtwayプロジェクトについて以下 にまとめる。 ・Callide A Unit 4 プロジェクト Callideプロジェクトでは、1960 年代後半に運開した 4 基の 30MWの石炭火力発電所の 4 号機に 2009 年からレトロフィットによって酸素燃焼装置とCO 2 の液化回収装置を導入 するプロジェクトである。酸素燃焼ボイラーでは、2012 年 3 月から 900 時間以上(2012 年 10 月 21 日現在)の試験を実施しており、排ガス中のCO 2 濃度が 65%以上、NOxが空気 燃焼比で 65%を達成している。CO 2 回収プラントでは、排ガスの前処理システムの運転を 150 時間超しており、20ppm以下のSO2 濃度を達成している。2012 年 12 月に日量 70 ト ンのCO 2 回収の 2 年間の実証試験を開始した。今後、回収CO 2 に対して産業利用と地中貯 留の 2 つのオプションを検討する。 酸素燃焼では、通常の空気燃焼と比べて、排ガスの総量が 1/4 程度に大幅に減少すると ともに、排ガスに含まれるN 2 やCO 2 の割合が大きく変わる。N 2 の割合は大幅に減少(73% →18%)し、CO 2 の割合が増加(14%→55%)する。この排ガス量が減り、CO 2 濃度が高 くなるプロセスの後で、回収が行われることになる。 ・燃焼後回収パイロットプロジェクト 排煙脱硫や窒素酸化物を除去するが設置されていない 3 つの石炭発電所に付帯したパ イロットプラントにより、MEA、AMP、PZ、アンモニアなどの 6 種類の含水アミン溶液 を用いた回収技術の研究開発を推進している。3 つのプラントは以下の通り。 - Lay Yong A 発電所 PCC パイロットプラント 2008 年 5 月に運転が開始され、対象はアミンベースの溶液。発電所の燃料は褐炭。 - Munmorah 発電所 PCC パイロットプラント 2009 年 2 月に運転が開始され、対象は含水アンモニアベースの溶液。発電所の燃 料は黒炭。3,000 トン/年のCO 2 回収能力を持つ。CSIROとDelta Energyが 700 万 豪ドルを投資した。2009 年 2 月から 2010 年 9 月までステージ 1 と呼ばれる研究 が実施され、その成果はNew South Wales州における実証プロジェクトに活かさ れるとされている。使用する排ガスのCO 2 濃 度は 8.5~12%であり 、85%以上の CO 2 回収率、99%のCO 2 純度を達成している。今後、添加剤によりCO 2 回収率の 向上を図るとともに、CO 2 とSO2 の両方を回収する研究を計画している。含水ア ンモニアはコストが安い、ロバスト性を有する、CO 2 負荷に対するキャパシティ が高いといった長所がある。 88 - Traong 発電所 PCC パイロットプラント 2010 年 11 月に運転が開始され、対象はアミンベースの溶液。発電所の燃料は黒 炭。 ・Otway プロジェクト CO2CRCが 2008 年に圧入を開始したOtwayプロジェクトは、現在のところ、豪州唯一 のCO 2 圧入プロジェクトである。安全な輸送と枯渇ガス田(約 2km深)への圧入・貯留を 実証するステージ 1(2004 年~2010 年)と、CO 2 の残留・溶解トラッピングに影響する パラメータの測定と圧入CO 2 のモニタリングを目的とした帯水層(約 1.4km深)への圧入・ 貯留のステージ 2(2010 年~2015 年)からなる。ステージ 1 では、4 千万豪ドルが投資 され、65,000 トンのCO 2 が圧入された。4~8 か月後に 300m離れた観測井にCO 2 が到達し ている。現在はステージ 2 にあり、CO 2 を貯留した帯水層のシール層の上側に水平長 500m の坑井を新たに設置して、遮蔽層からの漏えいをモニタリングする 6 年間の研究計画が検 討されている。 (12) 中国 ・中国による国際協力 中国は豪州とChina Australia Geological Storage of CO 2 (CAGS)と呼ばれるCCSに関 する協力を行っている。2009 年~2011 年のフェーズ 1 では、中国のキャパビルが実施さ れ、トレーニング、知識共有、基礎研究(貯留サイト選定、EORサイト選定、環境影響と リスク管理)、市民による認知に対して取り組まれた。2012 年~2014 年のフェーズ 2 では、 1 億 3900 万豪ドルが投資され、サイト性能調査、シェールガス増進回収、中国での帯水 層への圧入におけるギャップ調査が行われる。 このほか、中国は、英国との NZEC(2007~2009 年)、欧州との COACH(2007~2009 年)、イタリア ENEL との SICCS(2010~2012 年)、米国との協力(2010~2015 年)、 CSLF とのキャパビル(2012 年~)、IEA との産業排出源の CCS(2012 年~)などの国 際協力を実施している。 ・精華大学 清華大学のDepartment of Thermal Engineeringは、固定床型、2 塔式循環流動層評価 装置および熱分析装置等、固体キャリア開発およびプロセス検討に必要な装置を保有して いる。同学科内では化学吸収法の評価も実施しており、400kg-CO 2 /日のベンチプラントを 保有している。 89 (13) インド インド全体における電気の普及状況はまだ発展途上にあり、31,000 村以上が現在も電 気が通っておらず、2 億 8900 万人の人々が伝統的燃料に依存している。インドの最大GHG 排出産業部門はセメント部門(32%)であり、製鉄部門(29%)を上回っている。このよ うな状況下において、CCSはまだ発電部門における大規模GHG削減技術として認識されて いないのが実状である。また、CCSを実施するための貯留サイトのデータが不足しており、 発電所にCCSを導入した場合、電気料金が上がるという問題が存在し、収益性を上げるた めのEORについても、インドには枯渇油田が殆ど存在しないのが実状である。その他に、 CCSを推進する上での障害として、専門家やインフラの不足、規制の未整備(サイトの確 保、地下水汚染、CO 2 漏出)やモニタリング技術の問題がある。このような障壁を克服し ていくためには、政策立案者、規制当局を中心とするknowledge buildingが重要であり、 貯留候補サイトの評価方法や掘削技術の習得、政府関係者の関与や初期段階から市民グル ープをCCSの議論に加えていくPA活動の必要性が認識されており、CCSの実施に向けて環 境を整備していく必要がある。 (14) インドネシア インドネシアは 2020 年までにCO2 排出を 20%削減する目標を掲げている。この目標は 国際的な支援があれば、最大 41%までかさ上げされるとしている。こうした目標を達成す る手段として、地熱発電を中心とした再生可能エネルギーのほか、CCSやCO 2 -EORが考 えられている。同国では、油田は古いものが多く、油田数の 70%、生産量の 90%を占めて おり、石油関係者の間ではCO 2 -EORへの期待が大きい。 インドネシアのCCSロードマップを策定するプロジェクトが、アジア開発銀行(ADB) により 2010 年から実施されている。このプロジェクトはタイ、フィリピン、ベトナムに ついても行われており、ADBは計 135 万ドルを拠出している。同プロジェクトは、CO 2 ソースと貯留サイトの調査、新たに必要な法規制の同定、経済性評価、社会的受容性や官 僚の理解度等の調査を行い、最終的にCCSロードマップを策定するというものである。イ ンドネシアについては、Lemigasと協力して南スマトラを対象としている。プロジェクト の成果として、国ごとの詳細報告書が 2012 年 9 月に、4 か国の調査のハイライトと比較 をまとめた全体の分析報告書が 2012 年 10 月に完成している。前者は部外秘となっており、 後者は 4 月初旬頃に公開される予定となっている。この後者の全体の報告書の結論として、 短期 的に は ガス 処 理施 設やCO 2 濃 度の 高い 油 ガス 生産 か らCO 2 を 回 収し てEORを 実 施す る、中期的にはガス火力をCO 2 排出源とする、という工程になっている。 インドネシアでは、独立行政法人科学技術振興機構(JST)と独立行政法人国際協力機 構(JICA)による地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)のもと、京都大学が 他の国内の大学とともに、インドネシアのバンドン工科大学(ITB)などと「インドネシア中 90 部ジャワ州グンディガス田における二酸化炭素の地中貯留及びモニタリングに関する先導 的研究」を 2011 年より実施している。この研究は、Pertaminaが中部ジャワ州グンディ で操業しているガス田のCO 2 含有量が 20%程度と高い天然ガスからCO 2 を回収して貯留 するプロジェクトに係るフィジビリティ・スタディである。研究対象は、貯留サイトの特 性評価、モニタリング、理解促進であり、最終的にCCSの標準的な操業プロシージャの策 定を目指している。現在、地質調査やモデルの構築、数値シミュレーションなどを実施し ている。 ADB は Pertamina、JICA、JST との間で上記の京都大学が主導しているグンディガス 田を対象とした研究に 22 万 5 千ドルを拠出する合意をしており、間もなく覚書(MOU) に調印する。ADB はこのほか、インドネシアにおける CCS のパイロットテストに対して 1,000 万~1,200 万ドルを用意しており、2013 年 10 月に予定されているこのプロジェク トのワークショップでの結果次第では、この資金の拠出を受けて 2014 年 1 月よりパイロ ット試験の計画に入ることになる。なお、この資金は英国政府から拠出されたもので、ADB が運用することになっている。ADB は、インドネシアで計画されている貯留パイロット計 画を一つに統合して複数機関で資金を負担する形にしたい意向を持っている。 京都大学によるプロジェクトのほか、インドネシアでは、アラビア石油、丸紅、三菱総 研 が Pertaminaと 協 力 し て 、 二 国 間 ク レ ジ ッ ト の 対 象 プ ロ ジ ェ ク ト と し て フ ィ ジ ビ リ テ ィ・スタディを実施している。この想定プロジェクトはジャワ島にて実施さえることにな っており、ガス処理施設をCO 2 ソースとして、EORを兼ねて油田に貯留を行うものである。 (15 ) アルジェリア In Salahプロジェ クトはアフリカで唯一の大規模CCSプロジェクトである。このプロジ ェ クトでは、2004 年よりStatoil社、BP社などが生産した天然ガスに 1~10%含まれるCO 2 を回収し、これまでに 400 万トンを貯留している。圧入前および圧入中に各種のモニタリ ングを実施しており、モニタリングの費用対効果の分析も行っている。干渉合成開口レー ダー(InSAR)によって同定された 20mmレベルの地表の隆起は良く知られている。微小 地震動の観測も行っている。圧入前、圧入中、圧入による応答についてリスク分析とイベ ント発生時の対応の設定を行っているが、貯留のキャパシティを再確認するために 2011 年 6 月から圧入を中断している。廃棄坑井の健全性は確認しているが、モニタリング計画 に修正や定期的なリスクアセスが必要と考えられている。 91 (16) 南アフリカ 南アフリカは、CO 2 の排出を 2025 年に頭打ちとし、2035 年から削減していくシナリオ を描いている。その中で、CCSはつなぎの技術との位置づけ過ぎず、最終的には電源を原 子力と再生可能エネルギーに求めるとしている。2004 年にCCSのポテンシャル調査を行い、 2010 年にCO 2 貯留アトラスを公表している。アトラスによると貯留ポテンシャルは 150G トンであり、その 98%が海域に位置している。2017 年に数万トンクラスの圧入試験を予 定しており、現在、試験サイトの選定段階にある。2020 年までにフルチェーンのデモを実 施、2025 年までに商業CCSを開始するというロードマップを策定している。 92 2.4.5 テーマ別動向 2012 年度に参加したCO 2 貯留の環境影響、高温固体ルーピング、リスクと法的責任に 関する 3 つのワークショップでの情報のほか、CCSのコストと欧州における広域パイプラ インネットワークの情報について以下にまとめる。 (1) CO 2 貯留の環境影響 IEAGHGが 2012 年 7 月に米国Montanaで開催したCO 2 貯留の環境影響にかかるワーク ショップの概要を以下にまとめる。 本ワークショップの正式タイトルは、「CO 2 貯留の環境影響評価のための知的創造:自 然システムに対する人為的CO 2 放出実験 ワークショップ」であった。以下のセッション が設けられ、発表と討論が行われた。 セッション 1 環境影響評価と法規制 セッション 2 人為的CO 2 放出実験、プロジェクト進捗 セッション 3 モニタリング I:全体像、 モニタリング II:ベースラインモニタリングと精度 モニタリング III:定量化と溶解漏洩 セッション 4 上位層/深部から浅部表層への移行メカニズム セッション 5 漏洩シナリオ セッション 6 漏洩のコミュニケーション セッション 7 まとめと今後。 セッション 2 の人為的CO 2 放出実験、プロジェクト進捗では、各国で行われている 10 の人為的CO 2 放出実験プロジェクトが紹介された。これらのプロジェクトについて、追加 情報も含めて以下にまとめる。 ① CO2FieldLab(ノルウェー) 参加機関:SINTEF、WesternGeco、NGI、BRGM、Schlumberger Carbon Service、 BureauVeritas、BGS、Geosciences Montpellier、imaGeau 期間: 概要: Phase 1 2009 年~2011 年 1 月 Phase 2 2011 年~2013 年 サイト特性調査 CO2 圧入、モニタリング ノルウェー、フランス、英国の 3 ヶ国のパートナーシップによるプロジェク トであり、CO 2 貯留のモニタリング技術の開発と標準化に取り組んでいる。 地中におけるCO 2 の挙動と漏洩についてモニタリングを実施し、CO 2 貯留の 安全性を向上させるための知見を得ることを目的としている。ノルウェーの Svelvikのフィールドサイトにおいて、浸透率の高い地層を利用してCO 2 漏 洩のシミュレーションを行ない、特性を調査するパイロット規模の実験を実 93 施している。少量のCO 2 を地中に圧入し、様々な深度で擬似漏洩の地中分布 データを取得してモニタリングする。地中貯留の安全性を実証するとともに 規制遵守プロトコルを提供して商業規模での展開促進を図っている。 URL: http://www.sintef.no/co2fieldlab ② ZERT(米国) 参加機関: Montana State University (MSU)、West Virginia University (WVU)、Los Alamos National Laboratory (LANL) 、 Lawrence Berkeley National Laboratory (LBNL)、National Energy Technology Laboratory (NETL)、 Lawrence Livermore National Laboratory (LLNL)、 Pacific Northwest National Laboratory (PNNL) 概要: 米国のモンタナ州立大学、ウェストバージニア大学とDOEの 5 つの国立研 究所による研究協力パートナーシップである。DOEからの資金提供を受け、 化石 燃 料に よ る 温室 効 果ガ ス を緩 和 す るた め の手 段 とし てCO 2 貯 留 の安 全 性と信頼性を確立することを目的とし、CO 2 地中貯留に関する基礎科学の理 解に焦点を当てた研究を実施している。地下でのCO 2 挙動予測のための総合 的なコンピューターモデルの開発、CO 2 地中貯留に関する基本的な地球化学 的、水理学的課題の調査、貯留の検証と漏洩の調査のための計測技術の開発、 貯留 層 マネ ジ メ ント の ため の 技術 開 発 とベ ス トプ ラ クテ ィ ス の策 定 に取 り 組んでいる。 URL: http://www.montana.edu/zert/index.html ③ QICS(英国) 参加機関:British Geological Survey (BGS)、Det Norske Veritas (DNV)、Durham University、 Herriot Watt University、 National Oceanography Centre (NOC)、Plymouth Marine Laboratory (PML)、Scottish Association for Marine Science (SAMS)、The University of Edinburgh、University of Bristol、University of Southampton、電力中央研究所、九州大学、産業技 術総合研究所、RITE、東京大学 期間: 2010 年 6 月~2013 年 5 月 概要: プ ロ ジ ェ ク ト の 正 式 名 称 は 、 Quantifying and Monitoring Potential Ecosystem Impacts of Geological Carbon Storage。海底下貯留層からの CO 2 漏 出を 仮 定し て 海 洋生 態 系へ の 影 響評 価 を実 施 する 英 国 のプ ロ ジェ ク トである。プロジェクトの中心は、北海でのCO 2 貯留を念頭にスコットラン ド西岸の実海域でのCO 2 漏えい実験の実施である。日本の研究機関や大学も 参加した。研究テーマとして、CO 2 貯留層から海底表面への移行とトラップ、 94 漏えいCO 2 の影響予測のための統合モデルの構築、漏えいCO 2 の海洋地中化 学循環への影響、漏えいCO 2 の生態系への影響、漏えいCO 2 のモニタリング、 シナリオに応じたモデル開発、リスクアセスメントと影響の緩和に取り組む。 研究成果をもとに、CCSによって起こり得る生態系への影響を最小化するた めの手引書、漏えいの検知と監視のための指針を策定する。 URL: http://www.bgs.ac.uk/qics/home.html ④ PISCO2(スペイン) 参加機関: CIUDEN 期間: 2012 年 3 月操業開始 概要: プ ロ ジ ェ ク ト の 正 式 な 英 語 名 称 は 、 CIUDENs Pilot Project for CO2 Biomonitoring Tools。CIUDENは、2006 年にスペイン政府によってCCS研 究開発を目的として設立された研究機関である。PISCO2 は、CIUDENが主 導するプロジェクトであり、土壌へのCO 2 圧入における生物化学的影響に関 する試験を実施し、CO 2 漏洩を観察する生物学的モニタリングツールの開発 に取り組んでいる。2011 年 4 月に試験サイトの建設を開始し、2012 年 3 月 にオペレーションを開始した。CO 2 圧入試験サイトは、升目状に区切られて おり、CIUDENがCO 2 貯留技術開発プラントを建設中のHontomin(Burgos) を含む、スペインの複数のエリアからの土が升目状の各区画に運び込まれて いる。各区画には調整可能なCO 2 圧入システムと継続的なモニタリングを可 能とするシステムが備え付けられている。将来的には、この試験サイトで世 界各地からの土壌サンプルの試験が可能になることが期待でき、ナチュラル アナログ手法を利用したCO 2 の調整とモニタリングの実施を予定している。 URL: http://www.ciuden.es/ind ex.php/en/comunicacion/noticia?catid=0&id=531 ⑤ ASGARD(英国) 参加機関: Universi ty of Nottingham、BGS 概要: プロジェクトの正式名称はArtificial Soil Gassing And Response Detection である。University of Nottinghamは大学構内にASGARDのフィールド実験 施設を設置し、万一、地下の貯留サイトからCO 2 が漏洩した場合に生態系に 与える影響を調査して 検証するための実証試 験を行なっている。ASGARD の実験では、調整可能な条件下において土壌へCO 2 を放出し、リモートセン サーやアイソトープ分析の技術を用いて、ガス濃度とフラックス、同位体特 性、土壌湿度の計測、植物に対するストレス評価としての根の成長や光合成 などのパラメーターの変化の観測と検証を実施している。 URL: http: //www.nottingham.ac.uk/environment/research/environmental_imp acts_c 95 arbon_capture_storage.php ⑥ CIPRES(フランス) 参加機関: BRGM (Bur eau de Recherches Geologiques et Minieres)、ISTO-CNRS、 VERI (Veolia Environment Research and Innovation)、IPGP (Institut de Physique du Globe de Paris)、Hydroinvest 期間: 2011 年 9 月~2014 年 8 月 概要: The French National Resea rch Agencyが資金支援する、CO 2 が漏出した場 合に 地 下水 の 水 質の 及 ぼす 可 能性 が あ る影 響 の特 性 評価 を 行 なう プ ロジ ェ クトである。このプロジェクトの目的は、深部帯水層の水質の劣化を調整す る生 物 地球 化 学 的メ カ ニズ ム の特 性 評 価と 地 下水 の 水質 の モ ニタ リ ング 手 法の検証である。フィールド実験を行ない、将来、CO 2 貯留が地下水の水質 に及ぼす可能性のあるリスクについての提言、水質への影響や空間的、一時 的な化学的、微生物学的に水組成に及ぼす影響を推定するために帯水層内の CO 2 の生物地球化学的反応を特定することや、モニタリングプログラムの実 施手法に関するガイドラインの策定を目指している。 URL http:/ /www.agence-nationale-recherche.fr/en/research-prog rammes/energie-du rable/systemes-energetiques-efficaces-et-decarbones/funded-project-seed /?tx_lwmsuivibilan_pi2%5BCODE%5D=ANR-11-SEED-0001 ⑦ F ield Test to Study Potential Impacts of Dissolved CO2 on Groundwater Quality (米国) 参加機関: EPRI (Electric Power Research Institute) 期間: 2011 年~2013 年(3 年間) 概要: EPRIは、CO 2 の入った地下水 を飽和砂に圧入し、結果を観察することによ り、深層貯留層からCO 2 漏洩があった場合をシミュレートし、地下飲料水へ の影響を調査する研究を実施している。フィールド試験では、地下約 50m に位置する地下水層にCO 2 を調整可能な状態で圧入し、圧入点から 10~20m 離れたところに掘削された観測井からモニタリングを実施している。モニタ リングにより、CO 2 が漏洩した場合の地下水に与える可能性のある影響を評 価し、漏洩を検出するのに要する時間を突き止めるのに有効なデータを取得 する。またEPRIは所有サイトをDOEの 5 つの国立研究所に無償で提供し、 地下 水 中のCO 2 の 存 在 や動 き を検 出 す る新 し い方 法 を用 い て フィ ー ルド 試 験が行なわれている。フィールド試験での調整可能な状況での圧入とサンプ リングは 2012 年初めまで継続予定であり、取得データを用いてCO 2 の圧入 によ る 地下 水 へ の影 響 を予 測 する モ デ リン グ 性能 の 向上 に 役 立て ら れる こ 96 とになる。2013 年初めにプロジェクトの最終報告書の発行を予定している。 URL: http: //mydocs.epri.com/docs/CorporateDocuments/Newsletters/GEN/2012.03/0 1-066b.html ⑧ Controlled Release Stud ies(豪州) 参加機関: Geoscience Australia、CSIRO、CO2CRC、University of Wollongong Centre for Atmospheric Chemistry 期間: Above Ground Release Experiment: 2010 年 7 月~10 月 概要: Geoscience AustraliaはCO2C RCと協力して、キャンベラに位置するCSIRO Plant Industryの所 有 地 に 温室 効 果 ガ ス の 調 整 可 能なCO 2 放 出 施設 を 設置 した。この施設は調整可能な条件下で土壌から大気へのCO 2 排出の調査を行 なうもので、米国モンタナ州にあるZERTプロジェクトの放出施設をモデル として設計されたものである。2010 年 7 月~10 月、地上でのCO 2 放出実験 を実施した。この実験は、万一、CO 2 漏洩が起こった場合に漏洩の場所と排 出率を同時に特定するための大気トモグラフィーの技術が活用され、より大 規模なスケールでこの技術を利用することが可能となった。また、地表浅部 でのCO 2 放出を実施するために地下 2mのところに全長 120mにわたる穴付 きの水平井を掘削し、貯留サイトからのCO 2 漏洩をシミュレートする設備を 設置した。この井戸は 2011 年~2012 年にかけて地下における調整可能な条 件での放出実験の実施に利用されている。 URL: http: //www.ga.gov.au/ghg/projects/greenhouse-gas-monitoring/controlled-relea se-studies.html、http://www.co2crc.com.au/about/p_ga.html ⑨ PETROBR AS によるプロジェクト(ブラジル) 参 加機関: CENPES (PETROBRAS R&D Center) 、 UFSC (Federal University of Santa Catarina)、PUICRS (Pontifica l Catholic University of Rio Grande do Sul) 、 IPEN (Nuclear and Energy Research Institute) 、 UNESP-RC-LEBAC (Sao Paulo State University)、ZERT、LBNL 期間: 2010 年~2014 年 概要: PETROBRASは、地元の 4 大学およびZERT、LBNLとの協力の下、 人為的 CO 2 注入実験のプロ ジェクトを進めている。このプロジェクトは、ブラジル におけるCCSのパイオニア的プロジェクトであり、新規のリアルタイムモニ タリングを含む、複数のMMV手法やツールの商用規模での適用や、地表近 傍におけるCO 2 モニタリング技術の検証を行なうものである。CO 2 地中貯留 に関する社会的受容性を向上させ、モニタリング技術の有効性と検出限界の データ取得を目的とし、2014 年に注入実験を実施する予定である。実験サ 97 イトは、ブラジル南部に位置するUFSC所有のRessacada's Farmの敷地を利 用する計画である。 ⑩ Vrøgum 栽 培地におけるプロジェクト(デ ンマーク技術大学) 参加機関: Technical University of Denmark、University of Copenhagen、Geological Survey of Denmark and Greenland 、 Aarhus U niversity 、 Rambol 、 Vattenfall 、 Lawrence Berkely National Laboratory (USA) 、 ETH (Switzerland)、Herriot-Watt University (UK) 期間: 2012 年春~ 概要: Technical University of Denmark が 中 心 と な り 、 Danish Strategic Research Co uncilの資金支援を受けて実施するプロジェクトである。2012 年、デンマーク西部に位置するVrøgu m 栽培地において、このプロジェクト によるパイロットスケールの人為的なCO 2 注入実験が行なわれた。この実験 は、地中貯留サイトから地下浅部の飲料水用の帯水層へのCO 2 漏出の環境影 響を調査することを目的として、4 本の圧入井を利用して 3 ヶ月間にわたっ て実施されたものである。食品用CO 2 を圧入井 2 本から地下 5m地点の風成 砂岩層と 10m地点の氷河期砂岩層に総量で 1,600kgを注入し、CO 2 が水質に 及ぼす影響の調査が行なわれた。実験結果からは、短期間の地下浅部帯水層 へのCO 2 漏出が起こった場合、地下水の元素濃度に若干の上昇がみられるも のの、水質が著しく悪化することはなく、最小限のリスクに留まることがわ かった。プロジェクトは、実験結果をもとにモデル構築や完全解析を進めて おり、今後は地質の異なるサイトを利用した実験の実施が検討される。また、 漏出 が 長期 間 や 広範 囲 に及 ぶ 場合 の 影 響に つ いて 調 査を 進 め る必 要 があ る としている。 URL: http ://adsabs.harvard.edu/abs/2012EGUGA..14.1832C QI C Sプロジェクトは世界初の海域におけるCO 2 放出実験であり、RITE他日本の研究機 関も実験に参加していることが紹介され、聴衆の関心が高かった。これらプロジェクト間 の 知識共有を目指したネットワークの設立について、非公式に検討された。今後英国地質 調査所(BGS)を中心に、ネットワークを形成することとした。 98 ワークショップによる重要な結果として、以下がまとまられた。 ・環境影響評価はプロジェクトの障壁ではない。 ・人為的放出実験が多く実施されている。 ・CO 2 放出の挙動予測は難しい。 ・海洋関連では、ベースライン調査、モニタリング(AUV など)で多くの進展があっ た。 ・初期の漏洩検出法として塩水のリモート電気探査が有用。 ・ECO2 プロジェクトでは、高い確率で影響が小さいことが示された。 ・環境影響評価は陸域と海域では異なる。 ・もし漏洩が起こったとしても、おそらくパッチ上で小さなスポット的なものであ り、広域ではない、漏洩および影響検出にはベースライン調査が欠かせない。 ・底生生物および陸上職物において影響指標種が示されてきた。 ・表層近くのモニタリングの必要性が認識された。 必要性とギャップについては、以下のとおりまとめられた。 ・もう少し深い場所での放出実験が必要かも知れない。 ・上位層での挙動のさらなる研究が必要。 ・塩水の侵入についてさらなる研究が必要で、産業類似が役に立ちそうである。 ・新たな研究領域の参加の必要性がある。 ・小さなスポットでの漏洩の検出方法の開発。 ・さらなる広域モニタリング方法の開発。 ・ギャップは既に示されているので、研究を継続すること。 ・用語の一貫性確保、・プロジェクト間のデータ共有と他の研究分野との協調。 ・CCS とナチュラルアナログの違いを明確にする。 今後のミーティングでは以下が重要と示された。 ・上位層における移行メカニズムと表層への影響、復旧方法(リスクアセスメント・ ネットワークの事項かもしれない)。 ・生物影響、・地下水影響、外部環境(系)の比較 本ワークショップは今後ネットワークとして活動することで合意された。次回ワークシ ョップは、2013 年にモニタリングのネットワークとの共催でオーストラリアの CO2CRC をホストとして実施される。 99 (2) 高温固体ルーピング IEAGHG が 2012 年 8 月に中国・北京で開催した高温固体ルーピングについてのワーク ショップで収集した情報を以下にまとめる。今回のワークショップの参加者は、大学、研 究機関の研究者のみであったが、前回のウィーンの会議では企業からの参加者が 3 割程度 であったとのことである。固体ルーピング法には、Alstom が研究開発を行っているほか、 企業の関心も高い。 ① Ca ベースのキャリア開発 カルシウム(limestone)をベースに、post-combustionを対象とするCO 2 回収技術の開 発が進められている。limestoneは非常に安価であり、化学吸収剤のアミン等で課題とされ る環境影響がないことも魅力である。研究課題は、繰り返し性能や反応速度向上を目指し た材料開発である。 主たる試験装置には、反応による重量変化を測定する TGA(熱分析装置)、表面観察の 電子顕微鏡、固体粒子の表面分析のための XRD(X 線回折装置)等が用いられる。 ・ETH Zurich(Eidgenössische Technische Hochschule Zürich、チューリッヒ工科大 学)は、sol-gel法による造粒技術を用いて固体粒子のナノ構造制御に成功している。 またAl 2 O 3 を添加し、更に性能向上を図っている。 ・Hauzhong 大学や Cranfield 大学の発表では、固体粒子の凝集が繰り返し性能の低下 に繋がることに注目し、低凝集性の材料開発、組成検討により、性能改善が図られた ことを報告している。 ・Imperial College では、固体粒子の反応性を向上させるために limestone に HBr(臭 化水素)添加を検討している。 ② Ca ベースの固体ルーピング技術による水素製造 カルシウムベースの固体ルーピング技術は、CO 2 回収と水素製造の両方を可能にする複 合的なプロセスも可能にする。日本、ノルウェー、オランダ、中国から発表計 5 件が報告 された。 ・JCOAL(Japan Coal Energy Center)が、次世代高効率石炭ガス化技術“エネルギ ー再生型石炭ガス化技術”について報告した。技術的特徴はガス化温度の低温化で、 通常のIGCCがガス化温度 1100-1500℃であるのに対して、開発技術が水蒸気改質反 応を利用することでガス化温度 700-850℃を目標とする。ガス化炉内において、石炭 を水蒸気改質し、H 2 を製造するとともに、同時に生成するCO 2 をCaOに吸収させる (CaO→CaCO 3 )。CaCO 3 は再生炉(カ焼炉)へ移送され、そこでチャー/酸素の 燃焼熱によりCaOを再生させ、CO 2 を分離回収する。製造したH2 を燃料電池に用い るIGFC発電を考慮した場合、発電効率約 70%とシミュレーション結果が報告された。 ・ Zhejiang大 学は、バイオマスを対象にCaO/CaCO 3 の固体ルーピングを適用した水素 100 製造についてプロセスシミュレーションによる感度解析の結果を報告した。 ・ IFE Norwayはノルウェーの国内プロジェクト“Hynor(水素ハイウェイプロ ジェク ト)”に関連して、“Akershus Energy Park”構想を発表し、天然ガスからの水素製 造技術の研究を実施している。10Nm 3 -H 2 /h規模の流動層試験装置を保有している。 ・ オランダの ECN(Energy Research Centre of the Netherlands、オランダエネルギ ー 研 究 所 ) は 、 2011 年 ま で の 4 ヵ 年 プ ロ ジ ェ ク ト CAESAR に お い て SEWGS (Sorption-Enhanced Water-Gas Shift)プロセスを研究開発した。 本プロセスは、炭化水素系燃料の水蒸気改質により得られる合成ガスに 対して、固体 ルーピング法を適用し、水素製造とCO 2 回収の両方を可能にする。また、IGCCでの シフト反応後ガスを対象とした場合について、Selexol法(商業化済みの物理吸収法) と 比 較 す る と 、SEWGSプ ロ セ ス を 用 い るこ と に よ りCO 2 ア ボ イ デ ィ ッ ド コ ス トは 30%以上削減出来ると推算している。なお、CO 2 キャリアはアルミナ・マグネシウム 系である。 CAESAR プロジェ クトは欧州連合の第 7 次研究枠組み計画 Framework Programme (FP7)に認定され支援を受けた。プロジェクト規模は 310 万ユーロ。参加企業は、 ECN のほか、AP(Air Products, UK)、BP(UK)、Sintef(No)、PTM(It)の 4 社である。 ③ Ca ベースの固体ルーピング法のプロセス開発 既に他のCO 2 回収技術が先のステージに進んでい ることから、スケールアップとそれに 伴 う 課 題 の 抽 出 が 急 務 と さ れ て い る 。 現 在 ス ペ イ ン の 公 的 研 究 機 関 CSIC ( Consejo Superior de Investigaciones Cientificas)では 1.7MW相当のパイロットプラントの稼動 を開始ししており、今後その成果が期待される。 ・CSICは、2011 年 10 月から 1.7MWのプラント でCO 2 回収試験を実施中である。これ までに 1,000 時間程度の稼動。研究は欧州連合のFP7 に認定されているCaOlingプロ ジェクトの中で実施されている。2009 年~13 年(42 ヶ月)、660 万ユーロ。 ・C ranfield大学は、25kW相当のプラントで試験を実施、SO 2 および蒸気のCO 2 回収性 能への影響を報告した。 ・ Edinburgh大学からは、CaO /CaCO 3 の固体ルーピング法をセメントプラントに適用 した場合のプロセスシミュレーション検討について報告があった。彼らの試算では、 アミン法を適用した場合に必要なCO 2 回収エネルギー4.6GJ/t-CO 2 に対して、固体ル ーピング法では 2.3~3.0GJ/t-CO 2 程度に削減出来るとしている。 ・A ustralia National Universityの発表は、固体ルーピング法をエクセル ギーの観点か ら数学的に検討したもので、カルシウムのCO 2 吸収反応の熱をカ焼きに有効利用す ればエクセルギー効率が向上することを示した。 ・ セメント会社Italcementiはセメントプラントを対象 に固体ルーピング法によるCO 2 101 回収技術を組み込んだ場合の経済性評価結果を報告した。CO 2 アボイディッドコス トは 28~38・/t-CO 2 と報告があった。 ④ 酸素 キャリアを用いたケミカルルーピング法検討 ケミカルルーピングの利点はCO 2 回収設備が不要で ある点である。従来は天然ガス等の 気 体燃料を対象としており、現在は固体燃料である石炭やバイオマスに適用する場合につ いて検討がなされている。近年の研究開発では、固体燃料のガス化ではなく、酸素キャリ ア か ら O 2 を 遊 離 さ せ 、 固 体 燃 料 と 反 応 さ せ る 研 究 ( Chemical Looping with Oxygen Uncoupling、CLOU)がなされている。ETH Zurich、Huazhong大、Chalmers大学等が 研究を実施。 ・CLOUプロ セスは固体燃料の燃焼塔(酸素キャリアの還元塔)において固体燃料のカ ーボンCと酸素キャリアのO 2 を効率良く反応させなければならない。そのため、研 究開発は適切な温度、圧力、ガス組成条件で、効率良くO 2 を解離させる新規の酸素 キャリアの開発や、プロセス評価による最適条件の検討が重要となっている。 Chalmers大学は新規開発材料のCaMnaTibOcの試験結果を報告した。 ⑤ 各国動向まとめ 発表にかかわる研 究の殆どが、ナショプロや公的な研究資金で実施されている。各国の プ ロジェクト、動向について以下に記す。 ・オランダ:「CAESAR」 EUのFP7 から支援を受けてい るプロジェクト。本プロセスは炭化水素系燃料の水蒸 気改質により得られる合成ガスに対して、固体ルーピング法を適用し、水素製造と CO 2 回収の両方を達成するSEWGSプロセスを開発した。研究予算 301 万ユーロ、期 間は 2008~2011(48 ヶ月)。 ・ スペイン:「CaOling」 EU の FP7 から支援を受 けているプロジェクト。Post-combustion へのカルシウムル ーピングの適用に関して、CISC において 1.7MW のパイロットプラントスタディを 実施し、スケールアップに関する検討をしている。研究予算 660 万ユーロ、期間は 2009~2013(42 ヶ月)。 ・ スウェーデン:「INNOCUO US」 酸素キャリアを用いた固体ルーピング法による革新的燃焼技術の開発として Chalmers 大学を中心に研究がなされている。EU の FP7 から支援を受けているプロ ジェクト。研究予算 390 万ユーロ、期間は 2010~2013(36 ヶ月)。 ・ ノルウェー:「Hynor」 水素社会の構築に向けて 、ノルウェー南部のハイウェイに水素燃料補給設備を設置 し、輸送部門の水素利用を試験している。トヨタやマツダも水素自動車を提供し、 102 プロジェクトに参加している。 ・ イギリス:「UKCCSC network」 CCS 促進のための産官学連携ネッ トワーク組織。事務局は Edinburgh 大学。政府関 連の UK Energy Programme から資金 100 万ポンド。 ・ 日本:「次世代高効率石炭ガス化技術開発」 NEDO 事業。JCOAL が固体ルーピング技術 開発。平成 19 年~平成 23 年までの 5 年間で約 5.5 億円。 ⑥ ケミ カルルーピングの今後の展開 会議の最終セッションにおいて、D r. M.Haines(IEAGHG)は、固体ルーピング技術 が 他のCO 2 回収技術(post-combustion、pre-combustion、oxyfuel)のように十分に認知 されていないことを述べるとともに、今後以下の点に注力しつつ、他の技術に追い着ける よう研究開発を加速すべきである、とまとめた。 ・パイロット試験の実施と研究開発へのフィード バック、エンジニアリング的課題への 取り組みの必要性 ・ 経済性評価 ・鉄鋼、セメン ト産業への詳細な適用検討 ・高温固体ルーピングの反応機構、試験・計 測技術の高度化 103 (3) リスクと法的責任 CSLF・GCCSI・IEA が7月にフランス・パリで共催したワークショップと、GCCSI が 10 月にカナダ・カルガリーで開催した年次会合で収集したリスクと法的責任に関する 情報を以下にまとめる。 ① 地中貯留リスクと法的責任についてのワークショップ a ワークショップ目的および背景 CSLF・IEA・GCCSI 代表挨拶に続いて McConnell CSLF 政策グループ議長(米 DOE) より本会議の目的や背景について説明があった。 ・本ワークショップは、地中貯留における地質学的リスクに Finance や Liability を関 連付けることによりその理解を深めることを目的とする。そのために各国から様々な 分野の専門家を招いている。本会議で得られる情報は政府が Liability の枠組みを決 定するのに必要であり、企業にとっても投資判断を行うのに必要となる。 ・CCS を推進していくには多くの課題があるが、我々がリスクを取るのはそれだけの 価値があるからで、コミュニティにとって便益をもたらすものでなければならない。 そのためには EOR のようなビジネスバリューチェーンの構築が必要である。自ら投 資する立場で我々がなぜこれをやるのか真剣に検討する必要がある。 ・リスクはきちんと説明されなければならない。とくに一般市民からの質問にはシンプ ルな回答が必要。漏れるかという質問には「No」、安全かという質問には「Yes」の 回答を用意しておく必要がある。 ・シェールガスの開発は 10~20 年先までエネルギー分野に大きな変革をもたらした。 しかし化石エネルギーであることに変わりはなくCCSは依然重要なCO 2 削減技術と して注力していかなければならない。 b 地質学的リスク 地質学的リスクが何かを確認するため、CSLF の Risk Assessment Task Force 議長で ある Guthrie 氏(米国 NETL)が、同タスクフォースのレポート概要を説明した。 ・地質学的には定量化におけるリスクが大きい。またリスクは発生率と影響度の積で表 される。 各地域の代表から地質学的リスクについて説明があった。 ・リスクとしてはまず不確実性が挙げられ偶発的な場合もある。主な不確実性には長期 挙動、体積スケーリング挙動、貯留層モデリング、誘発微小振動がある。 ・北米ではまず長期 Liability が挙げられる(分類上は財務リスク)。シェールガスや EOR 等についてもリーク等に関するリスクアセスメントが必要となる。 ・欧州ノルウェーのガスノバは塩水層貯留のリスクに関し、長期オペレーションにおけ 104 るコストや設備からのリークを挙げた。 ・中国はリスク分析については初期段階。豪州・米国と国際協力を進めており、3 機関 がリスク評価に加わる。酸性ガスの再圧入・EOR 等で経験を積んでいる最中だが、 短・長期ともまだ十分に理解できていない。 c 産業分野の展望 ・Shell 社 工程スケジュール上では圧入期間が最も高リスク。リスク評価は不確実性も併せて 考える必要がある。Shell は現在 10 プロジェクトを実施中。プロジェクトが大規模 になり排出源4・輸送 2・貯留 1 といった構成になるとプロセスの複雑化も加わる。 ・Southern Company 社 CCS と電力のリスクを比較。CCS 導入に際し電力のリスク管理が参考になる。一方 で、環境リスクよりも商業展開の方が大きな障壁であり、長期運転という不確実性 もある中、何を推進力とするかが問題。とくにオフショアのリスクに対しては新た なビジネスモデルが必要。また法規制や許認可のリスクは常に存在。 d Liability の経済性 ・Summit Power 社 リスクは運転・長期貯留・健康安全等に分類される。サイト選定等適正に行われて いる通常の CCS では健康安全に対するリスクはないと考えてよいのではないか。地 下貯留に関する法規制は米国では連邦制のため州ごとで異なり、Liability に関する 対応も異なる。事業者の責任期間は閉止後 10 年であったり 25 年であったりする。 ・Zurich 社 Kingthnorth のレポート等を読み CCS への付保を検討中。Offshore のパイプライン 等が高額であるほか、長期オペレーション等、付保が非常に難しい要素で構成され ている。とはいえ安心して長期オペレーションを実施できるよう保険スキームを検 討したい。 ・Societe Generale 社 金融は、通常技術リスクを取らないし、Liability リスクも定量化されていない場合 には取らない。また収入を得るためにどのような value chain が構築されるかが明確 に示されない限り融資することはない。 105 e 政府・多国間金融および政策の対応 ・豪州 政策リスクに晒されている。7 月より炭素税を導入しているが、昨年度の法案成立以 降、各方面からの批判が大きく現政権の支持率低下を招いている。政権が 1 年で交 代する可能性もあり、同時に炭素税も撤廃される可能性がある。一方で、Gorgon 等 CCS プロジェクトは長期貯留であるため、財務基盤は極めて脆弱になっている。 ・北米 ミシシッピのEORプロジェクトにおけるCO 2 のパイプライン輸送については、天然 ガスのインフラ整備が進んでいたため、既存の産業を礎にビジネスバリューチェー ンの構築を検討している。一方で、規制リスク・Liabilityリスクが課題。 ・世界銀行 世銀から融資する基金は経済成長等が考慮されなければならないが、加えて気候リ スクへの対応が必要。さらに政府保証が必要であり、それに関する審査は徹底的に 行う。とくに以下の 3 要素は必須; 技術的実現性を伴う商業オペレーションリス ク、環境保全に対する強いコミットメント(法規制の整備含む)、長期 Liability(政 府保証に基づく)。 ・アジア開発銀行 融 資 の 場 合 、 世 銀 と 同 様 の 方 法 と 考 え ら れ る が 、 今 の と こ ろ CCS に 関 す る 長 期 Liability リスクの査定経験がない。現状、中国・インドネシアでのワークショップ 開催やフィージビリティスタディ等の活動を行っている。 f How Safe is Safe Enough? 標記課 題に以 下の 質問 も付加 し、フ リー ディ スカッ ション に近 い形 式で議 論を行 い、 様々な意見を抽出した。 ・何が市民を安全かつ安心させまたそう感じさせることができるか? ・何が投資家を安心させることができるか? ・どのような地球科学の情報が安心を創造できるか? ・リスクに関するコミュニケーションにおいてどのようなコンセプトとアプローチが用 いられるか? ・地球科学が効果的なコミュニケーションに参加する方法はあるか? ・地中貯留あるいはほかの分野において、効果的あるいは非効果的なコミュニケーショ ンに関する事例はあるか? ・What is the next? 上記質問に対する主な意見を以下に示す。 ・天然ガスパイプラインはCO 2 輸送よりもはるかに危険なのに問題にされない。経済を 106 推進しているためである。英国はCCSに雇用促進を期待している。ほかにはバイオ マスとの組み合わせによるNegative emissionによる温暖化対策推進、EORとの組み 合わせによる商業的推進力が期待される。(How safe…?の解なし) ・NGO は技術的サポートを行えないにもかかわらず、CCS プロジェクトに加わること が多い。これに対し、一般市民の説得、住民の意識調査の実施、オピニオンリーダー の育成といった役割が挙げられた。 ・十分に安全であると語るには信頼が必要であり、そのためには Liability とセットで なければならない。 ・一般市民に対しては安全であることを理解してもらう必要があり、それにはコミュニ ケーションと教育が必要。 ・テキサス大は教育に力を入れており、(小中学)7~8 年生対象の講座を設けている。 住民理解の高まりにつながっている。 ・政府は内部にではなく一般市民に対して一貫したメッセージを出し続けなければなら ない。 ・政府は住民とともに活動することが重要。この場合も一般市民を対象とするのか、オ ピニオンリーダーのみを対象とするのか今後検討したい。 ・リスクというとゼロベースを要求されることもある。その場合、How safe?と尋ねら れたら perfectly safe と回答せざるを得ず、原子力の例のように、安全が最重要課題 となる。一方、投資家の視点では収入で判断される。 ・投資家を満足させるには、ROI を上げることが一番だが、実際には経済性以外にも法 規制形態・技術・社会受容といったリスクが経済性悪化の一因となる。 ・学会・NGO・政府・企業等それぞれの立場を考慮して発言には気をつけるべき。 ② GCCSI の年次会合における収集情報 a カナダ・アルバータ州の取り組み ア ル バ ー タ 州 に お い て 、 2010 年 12 月 に Carbon Capture and Storage Statutes Amendment Act, 2010 が議会を通過した。この改正法は生産井戸の所有権、長期的信頼性、 閉塞後管理基金、保有契約などについて定めたものである。 同州は、現在、既存の CCS 規制枠組みのレビューを実施しており、2012 年末に州政府 に提言が行なわれる予定である。閉井指針、CCS リスクアセスの役割、アルバータ規制当 局の役割と責任範囲の明確化、利害関係者の関与や CCS プロジェクトの環境影響評価に ついて見直しが行なわれており、GCCSI が Steering Committee やワーキンググループレ ベルで関与している。 リスクアセスは、リスクを低減し、マネジメントを行なう上で重要であり、MMV や閉 井計画に不可欠なもので、モニタリングプラン開発の指針となる。(公共に対する透明性、 将来予測のモデリング、シミュレーション、技術面以外の社会的受容性に必要なリスクの 107 特定など) また、閉井後管理基金(PCSF)は鉱山・鉱物法(The Mines and Minerals Act)で定 められており、圧入後CO 2 のモニタリング、閉井に関する証明が発行された場合の義務、 設備の停止、廃棄、再利用等をサポートするものである。この基金はプロジェクト毎に第 三者機関がリスクベースで発生する確率に基づいてレートを定めたもので、3 年毎にMMV、 閉塞プランが見直される際にレートも見直されて、全ての受取人の間で保有される。基金 の金額については、CCSの長期的リスクの評価と将来的なMMVと復旧活動の見積りによ って決まる。 リスクアセスや長期的責任に関する知識共有のためには、一般市民との経験の共有が重 要で、政府内部ではなく、外部の専門家による評価(リスク査定、管理など)が必要であ る。 b 商業規模 CCS プロジェクトサイトの潜在的リスク査定 CCS のプロセスは民間、公共セクターの利益に対する弊害を与える可能性を含み、プ ロジェクトの終了後にまで及び得る。影響を与える可能性のある範囲の分析査定は事業者、 規制当局、保険会社、投資家が適切なサイト選定を実施する際、管理に必要な額やその投 資下で予測される状況、期間中に必要な額を見極めるための判断材料となる。漏洩が起こ る可能性は非常に小さいものであるとしても、万一起こった場合に被害を修復するために 必要となる金額を見積もっておくのが賢明である。 米国の環境経済コンサルティング会社、Industrial Economics Incorporated (IEc) は、 CCS サイトで想定される被害分布を解明するため、そのモデルとして米国 DOE が検討し ていた、テキサスにある FutureGen のサイトを対象に分析調査を行なった。被害規模が 不明確なため、最も起こり得ると考えられる規模と最大の場合を積算した。分析に際して は、2010 年時点の貨幣価値を適用し、将来的な価値変動はカウントせず、将来 100 年間 を対象とした。IEc の分析は他の CCS プロジェクトにも応用ができ、予測可能な被害は全 てサイト固有の状況によって引き起こされるものであるため、よいサイト選定基準に基づ いて運営されている CCS プロジェクトは被害の可能性が比較的小さくなると考えられる。 本 IEc の調査は、GCCSI もスポンサーとして参画し、実施されたものである。 c 長期的法的責任のリスク(公共政策の範囲) CCS の法的責任を制度化するものとしては、まず最上位にくるものとして、CCS に関 する法令や規制があり、次のレベルには他の法律における責任・汚染除去に関する規定や 民法・習慣法がある。 将来の長期的な時間枠の中で、CCS に関する規制は変化していくことが考えられ、事 業者が負う責任や責任移転の条件は変わっていく。また政府が責任を負うという保証は重 要であるが、科学や政策の風向きが変われば覆る可能性があり、限られた期間しか有効で 108 ない。そのようなリスクを管理するためには、戦略やメカニズムを構築することが必要で ある。CCS の長期的な責任に関して、次の 3 つの要素がキーとなる。 - CCS 技術の安全性を高め、被害が起こる可能性を低減し、責任を負う可能性を少な くすること。 - CCS に対する科学的理解を深め、気候変動対策技術としての評判を向上させること。 - 被害が起こった場合の規模と深刻度を抑えられるよう、被害の発覚や対応について 有効な手段の検討を進めること。 保険や財政面な保障に関しては、合理的に実施できれば賢明な発想であるが、一部の地 域においては政策的混乱を招く可能性、CCS を展開する上での障害となる可能性があり、 保険や財政面の保障の目的や金額とその根拠、カバーできる範囲、技術や規制上の制約に ついて明確にする必要があり、これらの課題に対する万全の解決策は存在しない。 財政的な保障を確保するためには、技術的・政策的課題、不可避な義務と偶発的な責任 リスクやリスクの移転に関して区分けが大切である。抜本的な解決策には莫大な金額が要 求されることになり、想定していた確率にずれが生じることは避けられない。CCS を進め るためには、個々の条件や、プロジェクトの段階、出資メカニズムや法的管轄区域毎のあ らゆる選択肢を検討する必要があり、金融の専門家の協力の下に進めることが重要である。 109 (4) コスト 10 月に豪州パースで開催されたCCSセミナー、11 月に京都で開催されたGHGT-11 で発 表されたCCSあるいはCO 2 回収のコストに関する講演の概要を以下にまとめる。 ・Howard Herzog、Massachusetts Institute of Technology(MIT) 低濃度CO 2 のCO 2 削減コスト(cost of CO 2 avoided)は、初期で 100 ドル/t-CO 2 、技 術が普及すれば、下限が 70 ドル/t-CO 2 に下がると試算している。CO 2 が高純度あるいは 高圧力下にある場合にコストが最も小さくなる。 CCS を導入することにより、電力コストは 70~100%程度高くなる。電力の脱炭素化が 必要であるとするならば、CCS は良い選択肢と言える。気候変動に対する政策コストとし ては GDP の数%程度で済むが、政策によって勝ち組と負け組が出てくることに留意が必 要となる。 回収コストを削減していくために研究開発が進められている。新規あるいは改良型の吸 収液の開発の可能性が一番高いが、コスト的に大きな低下は望めない。吸着材や膜などの 新材料には大幅なコスト低下を期待できるが、開発が成功する可能性は低い。新規のプロ セスの開発には時間が必要となる。 今後しばらく、CCS 市場の立ち上がりはゆるやかであり、また、公的資金の投入は限 定的なものに留まると考えられるが、learning の良いチャンスと前向きに捉えるべきだろ う。 ・Chris Greig、University of Queensland ZeroGen プロジェクトのコスト評価の分析が紹介された。CCS 以外のプロジェクトを 分析すると、初期見積もりよりも最終的な見積もりが 1.1~2.5 倍と上昇する傾向にある。 ZeroGen では 67%高くなった。これは公表されたベンチマークに頼りすぎていたこと、政 府からの資金供与を受けるため楽観的になっていたことが要因と考えられる。 ・Cheryl Wilson、Bloomberg 既存の CCS プロジェクト計画から CCS コストの推定値の報告があった。均等化コスト は、初期の CCS で 140~180 ドル/MWh、成熟段階の CCS で 120 ドル/MWh であり、洋 上風力や太陽光・太陽熱発電よりも割安である。コストが時間とともに下がることは、太 陽光など経験的にも言えることだが、ガス火力の燃焼後回収で 37%、IGCC で 36%、石炭 火力の燃焼後回収で 23%、酸素燃焼で 3%下がる。Bloomberg では、こうしたコスト評価 を基に、2017 年までに 1.1GW、1,100 トン/年の CCS が導入されると見込んでいる。 110 ・Chris Short、GCCSI コストに関するワークショップを実施し、その成果としてIEAGHGのJournalとして発 刊した。コスト評価には、コストの内訳や仮定が多岐に富んでおり、また、不確実性、変 動のほか、セクターなどによるバイアスが存在する。一貫性、レポーティング、透明性の 確保を目指して、白書を作成中である。その内容は、スコープ、カテゴリ、経済前提、電 気料金やCO 2 回避コストなどの計算方法、レポーティングの方法などである。 (5) 欧州における広域パイプラインネットワーク 欧州で広域パイプラインネットワークを整備するコストは 1 兆ドルオーダーとなるた め、実現が容易ではないとされている。一方、こうしたインフラがない場合、コストが安 い排出源と貯留サイトの組み合わせが先行してしまい、後発プロジェクトがコスト高とな ってしまうため、立ち上がりにくくなるリスクがある。また、EORでは圧入したCO 2 のリ サイクルが何年か後から始まることになるが、欧州の場合、新たに供給されたCO 2 が圧入 される期間は 6~7 年に留まるとの試算がある。この資産に基づくと、少なくともEORの 観点からは欧州における広域パイプラインネットワークは投資効果がないと言える。 111 第3章 CCS関連の規格化への対応 本章では平成 23 年度に設置が決定した国際標準化機構(International Organization for Standardization:ISO)の CCS に関する専門委員会 ISO/TC265 に対応するための、国内 審議委員会およびその下部機関としてのワーキンググループの設置と、2 回の ISO/TC265 総会に向けての国内および国際における各種活動について記述する。 注)国内審議委員会の下部機関としてのワーキンググループはワーキンググループ、 ISO/TC265 の下部機関としてのワーキンググループは、WG または Working Gruop と表 記する。 3.1 ISO/TC265 の概要と国内審議委員会設置 3.1.1 ISO/TC265 の設立 本項では本業務内容の成果の記述に先立って、その前提となる ISO/TC265 設立の経緯 について述べる。 2011 年 5 月 11 日に、カナダ(Standards Council of Canada: SCC)より技術活動の新 分野提案(ISO/TS/P221)が提出され(別紙 1 参照)、ISO中央事務局からISO加盟各国に 新分野提案の回付(提案に賛成/反対、本TCへの参加希望等の回答要、期限:2011 年 8 月 5 日)がなされた。これに対し、我が国においても、CCS関係者会合を行い、回答案につ いて議論した結果、 「日本はこの提案に賛成し、Pメンバーとして積極的に参加するととも に、特にCO 2 回収・船輸送・定量化と検証の分野で活動をリードすることに大いに興味が ある」旨を 2011 年 8 月 5 日付けで回答した。 2011 年 9 月に開示された投票結果は、 ・投票数:28、賛成:18、反対:4(米国、英国、インド、タイ)、 棄権:2(フィンランド、スペイン) ・P メンバー参加:13(後述) であり、投票数の 2/3 以上の賛成および 5 カ国以上の P メンバー参加表明の条件を満たし ていることから、新しく ISO/TC265 の設置が受諾された。ドイツ(Deutsches Institut für Normung:DIN)、中国(Standards Administration of China:SAC)、カナダ(SCC) から新 TC の幹事国の希望があった。通常、幹事国は提案国に割り当てられるため、幹事 国はカナダとなり、中国が Twinned 幹事国となった。 注)ISO では、専門業務において、発展途上国のニーズに確実に対応するために、先進 国と発展途上国の間での協力関係として新たに Twinning という概念が導入された。 主な内容は、・TC および SC(分科会)業務への参加(P メンバーとしての参加)、・ TC/SC の議長、・TC および SC の幹事国である。 本投票の際に各国から意見が出されている。ここで、この時点での各国の ISO/TC265 112 に対するスタンスをまとめておきたい。このスタンスはこの後の各国の態度とも密接に関 係している。 ・カナダ:ISO/TC265 設置の提案国である。カナダはCCSの導入を促進させることを意図 して、CCSの国際標準化を積極的に推進している。まず、カナダと米国共同のCO 2 地中貯 留に関する技術委員会を設立し、2010 年からCO 2 地中貯留の国内標準(CSA Z741-12)の 作成を行ってきた。次に 2012 年 3 月に、ISOの技術活動の新分野提案に先だって、カナ ダ(SCC)は、米国(American National Standards Institute:ANSI)に対し、ISOの下 でのCCSに関する新規の技術的活動についての提案を提出した。また、これを受けてANSI は本提案へのパブコメを募集した。この提案では、カナダ(SCC)に加えて、米国(ANSI) と中国(SAC)が、本提案をISOへ提出する際の共同スポンサーとなり、専門委員会につ いては カナダ(SCC)が事務局となり、米国(ANSI)を議長、中国(SAC)を共同議長 あるいは副議長とすることとしていた。 ・米国:上記の様に CSA Z741-12 の作成に関与し、かつ、2011 年 3 月のカナダからの提 案時には積極的な関与を考えていた米国だが、正式な「新規の技術的活動につい ての提案」には「反対」とし、ISO/TC265 が成立した場合には O メンバーとし て参加することを表明した。反対理由は、現時点での標準化は時期尚早 (premature)であるということで、その理由には 1)早期の標準化は ISO/TC265 が狭い作業視点に縛られるなら、技術のイノベーションを妨げることになる。も う少し経験が増え、発電所を含むより広範囲な分野で大規模プロジェクトが実施 されるようになるまで待つ方がよい。2)CCS の経済性自体、たいへん疑問があ り、このため標準化は環境によいエネルギー技術の促進というよりは、環境に優 しいというごまかしになりがちである。3)の排出と地球温暖化との関係自体、 まだ確立されていない。従って環境に利点のある CCS を建設すべきという点に 誰もがまだ至っていない。一方で米国はすでにパイプラインの標準を持っている し、CCS 付きの石炭火力発電の標準化作成作業に着手している。これらと整合性 をとる形で標準化をすすめるべきとしている。 ・中国:カナダや米国との協力関係は前述の通りである。 「新規の技術的活動についての提 案」についての投票では「賛成」とともに、幹事国となることも表明した。この 結果、Twinning 制度による Twinned 幹事国を獲得した。 ・英国:英国は提案に対して「反対」を表明したが、提案成立の場合には P メンバーとし て参加することとしている。その理由として、英国は CCS の標準化の必要性は 認めるが、提案スコープが示す多くの領域で標準化作業を進めるために十分なほ ど、技術が成熟しているとは思えない。開発がスタートできるのにあと 5 年はか かると考える。もし、TC がスタートする場合には、上記の理由から、商業的な レベルに到達するまでは、技術報告書(TR)あるいは技術仕様書(TS)の開発 にとどめるべきである。 113 ・ドイツ:技術が十分に成熟していないという意見はあるものの、ドイツとしては提案に 賛成であり、幹事国となる希望も表明した。また、もし輸送のサブグループがで きる場合には、ドイツはその幹事国となりたいとの意向である。さらに、コメン トとして、欧州規格(CEN/CENELEC)において、 「エネルギーマネージメント」 セクターフォーラムが最近 CCS の Working Group を立ち上げたことにも言及し ている。 ・フランス:ISO/TC265 の設立に賛成。ただし、標準化が新しい技術の発展を阻まないよ うにすることが必要としている。また、ISO/TC265 で扱う範囲や既存の規格(ISO 14064 シリーズ(GHG)、ISO 31000(リスク)、EN 1918 シリーズ(ガス供給 システム–地下貯留)、(ISO TC207 / SC7 GHG, ISO / PC 262 リスクマネージメ ント等)との境界を明確にすべきとしている。 2011 年 10 月 24 日に技術管理評議会(Technical Management Board:TMB)から、 新 TC 設置(ISO/TC265)の通知があった。この内容は下記である。ISO/TC265 は 18 ヶ 月の間に、タイトル、スコープについて検討し、初期の作業プログラムと構造を確立し、 ドラフトビジネスプランを作成する必要がある。TMB がドラフトビジネスプランを受領 した時点で、正式な設立となる。 ・仮名称:炭素回収と貯留 Carbon capture and storage (CCS) ・スコープ:炭素回収と貯留(CCS)分野における材料、装置、環境計画、管理、リスク 管理、定量化と検証(Quantification and Verification)および関連事項の標準化 除外:ISO/TC67 でカバーされる掘削、生産、パイプライン輸送の装置および材料 ・メンバー: P メンバー:豪州、カナダ、中国、フランス、ドイツ、イタリア、日本、韓国、オラ ンダ、ノルウェー、南アフリカ、スイス、英国 O メンバー:アルゼンチン、ブラジル、チェコ、エジプト、フィンランド、インド、 イラン、ニュージーランド、セルビア、スペイン、スウェーデン、米国 注)P メンバー・O メンバー:P メンバーとは Participating member の略で、専門委 員会内の事案への投票義務を負って、業務に積極的に参加し、会議の出席するものを 言う。また、O メンバーObserver member の略で、文書の配布を受け、コメントの 提出と出席の権利を持つメンバーをいう。 更に、2011 年 11 月 29 日には国際幹事の連絡があった。 ・国際幹事:Mr. Jeff Walker, P.Eng, M.Eng, MBA Project Manager, CSA Standards ・ Twinned 国際 幹事 :Ms. LIU Mei, Senior Engineer China National Institute of Standardization (CNIS) 114 3.1.2 ISO/TC265 に対応する国内審議団体 ISO では加盟国は、1 カ国 1 機関が代表として参加できる。日本の代表機関は日本工業 標準調査会(JISC:Japanese Industrial Standards Committee)である。JISC は工業 標 準 化 法 に 基 づ いて 経 済 産 業 省 に 設 置 され て い る 審 議 会 で 、 工業 標 準 化 全 般 に 関 す る調 査・審議を行っている。国際標準化機構(ISO)および国際電気標準会議(IEC)に対す る我が国唯一の会員として、国際規格開発に参加している。 JISC は ISO の国際規格案作成等の実務を引受ける国内の団体(該当する専門分野の学 会,工業会,協会等)として国内審議団体を承認し、国内審議団体は ISO 規格策定に関す る専門委員会等活動への参加、ISO 規格案の審議と投票、そのための国内審議委員会の編 成および運営等を行う。 2011 年 12 月 28 日に、RITE が ISO/TC265 に対応する国内審議団体として、JISC か ら承認を受けた。 3.1.3 ISO/TC265 に対応する国内審議委員会の設置 RITE は、カナダ(SCC)から新設の提案があり 10 月に設置された、ISO/TC265 Carbon capture and storage(CCS)(炭素回収と貯留専門委員会)に対応する国内審議団体とし て、ISO/TC265 国内審議委員会を設置した。本委員会では、ISO/TC265 の国際標準化活 動 に 対 す る 国 内 の 対 処 方 針 案 ( 原 案 作 成 を 含 む ) の 検 討 ・ 作 成 お よ び 調 査 会 へ の 提 出、 ISO/TC265 の国際標準化活動に関与する日本代表委員の決定、炭素回収と貯留の国際標準 化に必要な調査、検討、調整等の規格の提案と審議、日本国内の意見集約、国際会議への 代表者選任等を行う。 本委員会は東京大学教授の佐藤光三委員長以下、学識経験者、国内標準化団体、産業界 からなる 22 名の委員と関係省庁からなるオブザーバーから構成され、その下に回収、輸 送、貯留の 3 つのワーキンググループを持つ。また、将来はリスクや定量化と検証等の事 項を検討するワーキンググループの追加が予定された。その後、第 1 回 ISO/TC265 総会 の議論を受け、第 2 回国内審議委員会において Q&V・クロスカッティングイッシューワ ーキンググループを正式に設置することが決まった(図 3.1.2-1)。 115 国内審議委員会 委員長: 東京大学大学院工学系研究科 佐藤光三 教授 委員 ワーキンググループ 各ワーキンググループ主査等 経済産業省 (日本工業標準調査会) エネルギー総合工学研究所 回収 エンジニアリング協会 国立環境研究所 産業技術総合研究所 新エネルギー・産業技術総合開発機構 石炭エネルギーセンター 石油鉱業連盟 輸送 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 国内審議団体 地球環境産業技術 研究機構 セメント協会 地球環境産業技術研究機構 電気事業連合会 日本化学工業協会 貯留 日本ガス協会 日本CCS調査株式会社 日本鉄鋼連盟 RITE Q&V・クロスカッティン グイッシュー オブサーバー 経済産業省 環境省 エネルギー総合工学研究所 日本エヌ・ユー・エス株式会社 図 3.1.2-1 国内審議委員会組織(2012 年 7 月 6 日現在) 表 3.1.2-1 に ISO/TC265、これに対応する国内審議委員会、およびそれぞれの活動実績 を示す。次章からそれぞれの活動について時系列的に記述していく。国内の活動は ISO/TC265 の総会とリンクするので、第 1 回 ISO/TC265 総会に向けての活動、第 2 回 ISO/TC265 総会に向けての活動、第 2 回 ISO/TC265 総会以降の活動の順に記述する。 116 表 3.1.2-1 TC/265、国内審議委員会およびワーキンググループ活動実績 分野 会合 4月 国内審 議委員 会 委員会 第1 回 ワーキンググルー プ 第1 回 回収 5月 第2回 5/11 NWIP案起草タス ク 輸送 貯留 ワーキンググルー プ 第1 回 第2回 5/11 ワーキンググルー プ 第1 回 第2回 5/10 NWIP案起草タス ク Q&V・クロ ワーキンググルー プ スカッティン 幹事会 グイシュー 6月 7月 第 第2回 1 7/6 回 T 第3回 C 6/29 総 会 パ リ 6 月 第3回 5 7/3 日 6 8月 9月 10月 11月 12月 第3回 1/23 第4回 9/12 第5回 1/9 第1回 第2回 第4回 10/11 第1回 第3回 第2回 第1回 第1 回 第2回 5/9 1月 第3回 7/2 2月 3月 第 2 回 T C 総 会 ス ペ イ 第5回 ン 1/21 2 第4回 月 第3回 第6回 3/13 第2回 1/29 注)幹事会:設置準備のために設置 3.2 第 1 回ISO/TC265 総会(パリ)に向けての活動 ISO では専門委員会を開催する場合には、国際幹事はアジェンダを開催日の4ヶ月前ま でに送付することになっている。このルールに従い 2012 年 2 月 3 日に、国際幹事から第 1回総会のアジェンダの通知があった。第 1 回 ISO/TC265 総会は、6 月 5 日および 6 日 に、フランス(Association Française de Normalisation:AFNOR)をホストに、フラン ス、パリで行われることとなった。 3.2.1 国内審議委員会(第1回)(2012 年 4 月 12 日、於:経済産業省会議室) 2012 年 4 月 12 日の第1回国内審議委員会では、ワーキンググループを含めた国内審議 委員会組織をオーソライズした後(表 3.1.2-2 参照)、ISO/TC265 に対する我が国の方針、 および第1回 ISO/TC265 総会の対処方針について議論した。 ISO/TC265 に対する我が国の方針については、国内審議委員会事務局案をベースに、更 に審議委員会に設置した各ワーキンググループにおいて作成した分野別の方針を加えて案 を作成し、国内審議委員会委員にメールベースで回付することによって、追加・修正を行 い完成版とすることを決定した。 第1回 ISO/TC265 総会については、まず総会のアジェンダと事務局の対処方針案が示 された。 総会のアジェンダの概要は次の通りである。今回の総会の主なポイントは、ISO/TC265 のタイトルおよびスコープを決定すること、ワーキンググループを含めた組織構成を決定 すること、今後のプロセスについて決定することである。また、日本は 3.1.1 に示した様 に回収と貯留の WG をリードしたいので 14 でのプレゼンおよび 20 での組織についての議 論が重要となる。第 1 回 ISO/TC265 総会に向けての対処方針についても、各ワーキング 117 グループにおいて検討した結果を踏まえた原案を事務局が作成し、国内審議委員会委員に メールベースで回付することによって、追加・修正を行い完成版とすることを決定した。 表 3.2.2-2 第 1 回 ISO/TC265 総会(パリ)のアジェンダ 第1日 1. 開会 2. ホスト挨拶 3. 代表団の点呼 4. 議長挨拶 5. 議案の採択 6. 書記団の指名 7. ISO 化プロセスと方法の説明 8. 国際幹事からの報告 9. 世界の CCS の展望 10. CCS における標準化の必要性 11. 委員会タイトルの最終決定 12. スコープについての議論 13. スコープの決定 14. 標準化に向けての見込みのあるトピックスのプレゼンテーション 14.1 貯留 14.2 回収 14.3 輸送 14.4 クロスカッティング事項 (例:リスク, 用語, 定量化と検証) 15. ホストによるプレゼン 16. 第 1 日の終了 第2日 17. 標準化に向けての見込みのあるトピックスのプレゼンテーションの続き 18. 標準化のトピックスに関する議論 19. 標準開発プランの決定 19.1 標準開発のクライテリア 19.2 クロスカッティング事項の取り扱い 19.3 標準の長さ、タイプ 19.4 根拠資料の役割 注)NP:新作業項目提案(NWIPとも言う ) 19.5 NPに向けての委員会プロセス 20. 専門委員会組織構造の決定 20.1ワーキンググループ 20.2 アドホックグループ、テクニカルパネル 20.3 エグゼクティブコミッティ 21. 割り当てと今後の活動 22. リエゾン 23. 次の会合 24. その他の作業 25. 決議の最終起草 118 26. 決議の承認 27. 議長による閉会挨拶 28. 解散 3.2.2 各ワーキンググループ会合 第 1 回国内審議委員会を受けて、各分野のワーキンググループ会合が行われた。主要議 題はワーキンググループのメンバー紹介、ワーキンググループ設立の経緯と活動内容、親 委員会での議論の紹介、ISO/TC265 に向けた各分野の方針作成と第 1 回 ISO/TC265 総会 への分野別対処方針作成、および派遣メンバーの選出である。以下、議論のポイントを記 述する。 (1) 貯留 第 1 回 ( 2012 年 4 月 12 日、於:RITE 東京事務所) ・以下の資料を事務局から貯留ワーキンググループの委員およびオブザーバーに送付する。 - CSA が作成した案“CSA Z741 Geological storage of carbon dioxide”(補足説明 資料を含む) - 経済産業省が作成した「CCS 実証事業の安全な実施にあたって」(2009 年 8 月) の英語版(“For safe operation of a CCS demonstration project”) - 環境省が作成した「特定二酸化炭素ガスの海底下廃棄の許可の申請に係る指針」 (2008 年 1 月) ・CSA の案については、同時並行で事務局が翻訳を行う。 ・TC67 の概要について事務局で整理する。 ・出席者のうち特に民間企業の委員は、それぞれ異なる業種の立場から CCS のビジネス 像や問題について整理し、次回のワーキンググループの会合の席上でプレゼンテーショ ンを行う。 第 2 回(2012 年 5 月 10 日、於:第 5 東洋海事ビル会議室) 対処方針の議論以外につぎの様な議論があった。 ・最終的にカナダがどのような提案を行うかははっきりしていないものの、CSA Z741 の 案をベースにして作成されるものと考えられることから、現時点で同案の 検討 は必 須。 ・この際、2009 年 8 月経済産業省から公表された「CCS 実証事業の安全な実施にあたっ て」との対比についても検討する必要あると考えられるが、まずは CSA の案を検討し、 「CCS 実証事業の安全な実施にあたって」は、今後の検討の参考にしていく。 ・石油開発業界としては、CO 2 EORについてはできればISO/TC265 から除外していただ きたい。例えば、わが国のCCSの基準では、CO 2 の純度は 99%以上とされているが、こ れをCO 2 EORの場合にも適用するのは厳しすぎる。 119 (2) 輸送 第 1 回(2012 年 4 月 16 日、於:RITE 東京事務所会議室) ・パイプラインについては鉄連へ本ワーキンググループへの参加を呼びかけているが、ス コープには TC67 を除外と書かれているので、関連性が低いとの理由で参加いただくと ころまでは至っていない。鉄連,高圧ガス保安協会からメンバー派遣についてさらに調 整を行う。 ・船舶では IMO 要求事項や船舶協会の規格・基準に従っている。IMO とのすりあわせが 必要である。 ・回収との取り合いで、昇圧や液化をどちらのワーキンググループに含めるかという議論 も必要である。 第 2 回(2012 年 5 月 11 日、於:RITE 東京事務所会議室) ・鉄連および日本船舶技術研究所にアプローチしたが、まだ当面は不参加とのこと。 ・輸送分野でCO 2 の純度で問題となる点は、腐食では水とH2S、Nがはいると気液混合の 問題がでる。 ・総会では Q&V の日本からの発表のチャンスがあるが、その際に船輸送についてもコメ ントしたいので、資料準備を依頼。 (3) 回収(別事業であるが、簡単に内容を記録しておく) 第 1 回(2012 年 4 月 12 日、於:RITE 東京事務所) ・第 1 回 ISO/TC265 総会まで時間があまりないが、積極的に関与するためNP素案は作 成したい。 ・性能評価はきちんとやらないといけない。客観的なものを出す(エネルギー)。安全性評 価については、各国の規制が異なるであろうから、統一的な指標作りは難しい。しかし、 安全性評価はメニューとして必要と思うので指標作成の際は、国内メーカーが海外展開 に支障をきたさないような配慮が必要。安全性に関しては余計なものは入れない。危険 物質の測定方法や評価方法は入れてもよいが判断基準は入れない方がよい。 ・分離回収のエネルギーについてpost、pre、oxy等のタイプにより計算方法が異なる。色々 なところにCO 2 回収装置を適用していった場合にうまく適合できるかは不明、全体を統 括したような評価式ができればよい。安全性については国ごとに違うがクラス分けで示 していけばいいと考える。 第 2 回(2012 年 5 月 11 日、於:RITE 東京事務所) ・日本は、カナダ国際幹事に対して、6 月の第1回ISO/TC265 総会においてCaptureのプ レゼンの実施を強く希望。しかし、国際幹事からのメールでは、カナダがStorage、中 国 ( Twinned Secretariat ) が Capture の プ レ ゼ ン を 実 施 す る 予 定 で あ り 、 日 本 は Quantification & verification of CO 2 、もしくはTransportation by shipでの発表に興味 があるかとの問い合わせがあった。 120 ・CCS の現状を考えると、ISO の活動を通じて CCS 活動を促進させるべきであり、あま り限定的な範囲にすることは好ましくない。特に、排出源については、石炭火力に限定 せず、様々な産業ガスを対象とし、CCS 事業の底上げが図れるようにすることが必要で ある。 ・CCS 全体における HSE は、OECD の Chemical Accidents WG の Steering Group on Carbon Capture and Storage(化学品事故 WG の CCS 部会)で 2008 年ごろから検討 されている。 ・NP案に関する議論では国際幹事(カナダ)からのメールを踏まえて、日本のプレゼン 内容を検討した。その結果、評価方法、安全性、環境、信頼性等に重点を置く。 (4) Q&V・クロスカッティングイッシュー 第 1 回幹事会(2012 年 4 月 25 日、於:エネ総工研会議室) ・CCS に関するアカウンティングおよび GHG 算定・報告・検証を巡る国際規格について、 これまでの取組みついての説明があった。 第 2 回幹事会(2012 年 5 月 9 日、於:エネ総工研会議室) ・CO 2 海底下地層貯留の潜在的海洋環境影響に係る規制、「Scope3「的」アプローチ」の これまでの取組みについての説明があった。 121 3.2.3 ISO/TC265 への方針、第1回ISO/TC265 総会(パリ)にむけた対処方針 各ワーキンググループ会合での議論を踏まえ、さらに国内審議委員会への原案回付によ る追加修正を経た ISO/TC265 への方針および第 1 回 ISO/TC265 総会に向けた対処方針は 次の通りである。 ISO/TC265 に対する方針 事務局 1. 基本方針 ① CCS の国際標準化の意義 ・ 二酸化炭素回収・貯留(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)は、CO 2 の大 気中への排出量削減効果が大きいこと等から、地球温暖化対策の重要な選択肢の一つ と期待されており、既に諸外国では、多くの実証試験に加え、商業規模でのCCS 事業 もみられるようになっている。 我が国においても地球温暖化対策としてCCSの対応が 求められており、現在実用化に向けて年間 10 万t- CO 2 程度の規模で実施するCCSの実 証試験の準備や必要な研究開発を進めているところである。 ・ CCSは高コスト、炭素価格等のCO 2 排出削減を行うインセンティブの欠如、CCSにつ いての明確な政策の欠如、法制度等枠組みが整備されていないこと、および住民合意 に係わる不確実性などの課題があるため、石油・天然ガス開発分野を除いて広範囲な 商業的利用は行われていない。 ・ CCS 分野での国際標準化は、広範囲かつ適切な CCS の導入促進に役立つ。これまで CCS の推進者は、CCS プロジェクトの選定、設計、開発、操業、および閉鎖に対して、 異なるガイドライン、ベストプラクティス、および関連標準を利用しているのが現状 であり、これらプロジェクトが要求する固有の要件を扱う CCS に特化した標準が必要 とされていた。CCS の国際標準化によって、プロジェクトが安全と環境面で、国際的 に合意された知見に沿っていることが保証されるため、提案者、規制当局、および国 民にとって大きな利益が得られることが期待される。また国際標準化は、過度な規制 を排除しつつ、事業者としての資格と適切なサイト選定が確保できる。 ・ CCS の国際標準化により、我が国における CCS 関連の既存の基準等が見直されことに なり、CCS事業の実施に向けた法制度等の枠組みの整備の一助となる。 ② 我が国の対応 ・ CCS の国際標準化の活動を実施することを評価し、他業界や他 TC 等への影響につい て検討しつつ、一連の国際規格の策定に全面的に協力する。 ・ 日本は 20 年以上もCCS技術のR&Dを実施しており、また、長岡において、陸域塩水 層へ約1万トンのCO 2 を圧入しCO 2 、挙動モニタリング技術他の検証を実施してきた 122 等の実績があり、新しいTC活動に対して多くの貢献が可能である。 ・ 特に、日本はCO 2 回収および定量化と検証等の分野において、SCあるいはワーキング グループをリードしていく。 2. 各分野の基本方針 (回収) (1) 日本は、回収分野で高い技術競争力を有しており、積極的な海外展開を図ってい きたいため、当該分野の国際標準化をリードすべく、具体的な活動を行う。なお、 TC 事務局に対しては、既に日本が回収 WG のコンビーナを希望している旨を表 明している。 (2) 提案各国に先行して CCS の普及促進に役立つ具体的な案を作成し、早期の段階 から世界に向けて発信するとともに、世界からの賛同を得るための活動を積極的 に行う。 (輸送) (1) CO 2 パイプラインの商用化実績は海外が先行しているので、国際標準化の動向を 常に把握し、ISOで動きがあった場合に関係先(主に国内)と連携して不整合や 不利益が生じないように対処する。 (2) CO 2 の船輸送の重要性について主張していく。船の安全・船に関する環境保全に ついてはIMOが国連の下部組織としてルール化しているので、IMOでカバーされ ない領域やCO 2 に特有の事項についての国際標準化を検討する。また、ISOで動 きがあった場合に関係先(主に国内)と連携して不整合や不利益が生じないよう に対処する。(国内造船会社の競争力確保のためには、設計の独自性を発揮でき るように、国際標準化でしばってしまわないのが望ましい) (貯留) (1) 他業界や他TC等への影響について検討しつつ、安全な貯留を実施するための手順 等のCO 2 貯留の普及を促進するような国際規格策定を全面的にサポートする。 (2) この際には日本国内でのCO 2 貯留の実施、あるいは本分野における日本企業の海 外進出を阻害しないように注意し、海外からそのような提案がなされた場合には、 その阻止に努める。 (3) 特にわが国おいて競争力のある項目に関しては、積極的に国際規格策定をリード する。 (クロスカッティング) (1) 当初のカナダ提案は、回収、輸送、貯留、Q&V(定量化&検証)、リスクの5つ 123 の分野別にワーキンググループを組織、CCS の国際規格策定に関する活動を実施 するものであったが、今後の方向はまだ不明であるため、第1回 ISO/TC265 総 会での議論を見極めた上で、日本におけるワーキンググループのスコープおよび 複数のワーキンググループに分けるかを決定する。 (2) Q&V については、IPCC2006 年インベントリガイドライン策定に先立つ国内詳 細検討およびガイドライン参照文書としての情報提供、および UNFCCC のもと での CCS CDM に関する国際提案など、従来から知見蓄積があるところであるこ とから、CCS の円滑な実施を推進するため、日本が Q&V に関する WG のコンビ ーナを担ってもよい旨、既に TC 事務局に回答しており、積極的に議論をリード していく。 3. 第1回 ISO/TC265 総会(パリ)に向けての方針 ① 基本方針: (1) 第 1 回 国 内 審 議 委 員 会 で の 議 論 お よ び 各 ワ ー キ ン グ ル ー プ の 対 処 方 針 を 基 に 作成 する「対処方針」に基づき、代表団は TC での議論を行う。 (2) 国際標準化のリードを取ろうとする分野である回収と定量化と検証については、第 1回 ISO/TC265 総会においてプレゼンを行うとともに、積極的に各国に働きかけ る。 (3) 対処方針に照らして不明な事項に関しては、代表団の判断に任せる。 ② 各分野の対応方針 (回収) 回収分野の標準化に関心を示す P メンバー国の特定およびそれらの言動(考え方、方針、 諸施策等)に留意する。 日本が回収ワーキンググループのコンビーナ獲得を目指すべく、以下の具体的施策を進 める。 (1) 中国(co-secretary)が行う標準化の考えに関するプレゼンテーション(agenda item 14.2 と 17.2)の内容に留意するとともに、国内方針との不整合が生じていないか見 極める。 (2) 早期の段階から日本の主張(NP 案骨子を含む)を各国に提案、アピールするため、 第1回 ISO/TC265 総会では、“JAPAN POSITION”なる資料を配布の上、日本の 考えを明確に主張する。 (3) 各国要人へのアプローチを中心に積極的なロビー活動を行い、日本への賛同国確保 を目指す。 (4) その他戦略分析施策として、各国(P メンバー、O メンバー、その他)の既存標準 書やガイドライン等の検討、各国の日本に対する評価情報の分析、各国との政府お 124 よびビジネス関係の分析、日本と関係の深い各国機関(組織)への協力要請などを 行う。 (輸送) 第 1 回 ISO/TC265 総会には、ワーキンググループから 2 名(パイプライン1名、船輸 送 1 名)を派遣し、スコープ等の議論に参加する。この際、上記基本方針の通り、国内 との不整合・不利益が生じないか留意しながら、議論を見極める。 (貯留) (1) 第 1 回 ISO/TC265 総会には、国内審議委員会委員である産総研の T 委員を国内貯 留ワーキンググループの代表として派遣し、スコープ等の議論に参加する。貯留に 関連する事項の交渉については、基本的に T 委員が当たり、国内貯留ワーキング グループは T 委員を全面的にバックアップするするとともに、必要に応じて他の 委員も派遣する。 (2) カナダの提案のベースになると考えられる CSA Z741 の内容および対応の必要性 などについて詳細な検討を行う。具体的には、受容できるもの、受容できないもの、 新たに提案すべきものといった形での整理も行う。その際、それぞれの専門分野に 応じて分担を決めて行う。また、CSA Z741 のほかに、経済産業省が作成した「CCS 実証事業の安全な実施にあたって」や海外のベストプラクティスマニュアル等との 比較検討も行う。 (3) 日本の特徴および技術的な強みを考慮し、スコープには、貯留対象として海域を含 めるが、貯留対象層の定義に岩相を含めるのではなく、こまかな制限を設けない方 向とする。 (クロスカッティング) 第 1 回ISO/TC265 総会には、カナダ事務局からの打診に応じて、Q&Vに関する事項を 中心に、クロスカッティングイッシューについてプレゼンを実施するとともに、関連の 議論をリードする意向で臨む(CO 2 船舶輸送、海洋汚染防止法への取組みなども適宜紹 介)。 (1) 当初の議論は、スコープの明確化、インベントリにおけるバウンダリの定義、用語定 義などの基本的事項が中心になると考えられる。そこで、既存のインベントリ枠組 (IPCCインベントリガイドライン、ISO14064、CCS CDM、Scope3 等)での検討事 項を意識しつつ、明確なバウンダリ(プロジェクトベース、企業(またはその集合体) ベース等)や透明性のあるアカウンティング方法(排出量をまずカウントしその後CO 2 回収または貯留量を差し引くのか、最初から正味排出量を求めるのか、等)について の議論を促進するため、参考となる基本情報、特に先行検討が行われている事例に関 125 する情報を提供し、会議の議論を誘導する。 (2) プレゼンは、標準化、CCS を含めた関連分野の深い知見、ならびに幅広い国際的ネッ トワークを有する、産総研赤井氏(国内審議委員会委員長代理、第 1 回 ISO/TC265 総 会日本代表団団長、クロスカッティングイッシュー幹事会メンバー)に依頼し、プレ ゼン資料作成には幹事会メンバーが協力する。なお、第 1 回 ISO/TC265 総会には、幹 事会メンバーから 6 名(幹事会事務局含む)が参加し、会合中においても適宜サポー トを行う。 (3) また、第 1 回 ISO/TC265 総会においてはクロスカッティングイッシューとして他のト ピックが提案される可能性もあるが、その場合には、メンバーの知見を反映しつつ機 動的に対応する。 代表団としては、総勢 13 名が参加した。内訳は団長、回収関係:1,輸送関係:2,貯 留関係:1,クロスカッティング関係:4、事務局:4 名である。 第 1 回 ISO/TC265 総会に先んじて代表団参加者が 5 月 31 日、RITE 東京事務所で会合 を持ち、方針および役割を確認した。 3.2.4 第1回ISO/TC265 総会(パリ) 第 1 回 ISO/TC265 の総会が 6 月 5 および 6 日にフランス・パリで行われた。会議のア ジェンダは 5 月 16 日付けで次の様に変更された。 表 3.2.4-1 第 1 回 ISO/TC265 総会(パリ)の変更アジェンダ 第1日 1. 開会 2. ホスト挨拶 3. 代表団の点呼 4. 議長挨拶 5. 議案の採択 6. 書記団の指名 7. ISO 化プロセスと方法の説明 8. 国際幹事からの報告 9. 世界の CCS の展望 10. 世界のCCS展望に関するラウンドテーブルディスカッション(追加) 11. CCS における標準化の必要性 12. 委員会タイトルの最終決定 13. スコープについての議論 14. スコープの決定 15. 標準化に向けての見込みのあるトピックスのプレゼンテーション 15.1 貯留 15.2 回収 15.3 輸送 126 15.4 クロスカッティング事項 (例:リスク, 用語, 定量化と検証) 16. 第 1 日の終了 第2日 17. 標準化に向けての見込みのあるトピックスのプレゼンテーションの続き 18. 標準化のトピックスに関する議論 19. 標準開発プランの決定 19.1 標準開発のクライテリア 19.2 クロスカッティング事項の取り扱い 19.3 標準の長さ、タイプ 19.4 根拠資料の役割 19.5 NP に向けての委員会プロセス 20. 専門委員会組織構造の決定 20.1 ワーキンググループ 20.2 アドホックグループ、テクニカルパネル 20.3 エグゼクティブコミッティ 21. 割り当てと今後の活動 22. リエゾン 23. 次の会合 24. その他の作業 25. 決議の最終起草 26. 決議の承認 27. 議長による閉会挨拶 28. 解散 事前の国際幹事からの連絡では、15、17 におけるプレゼンは、貯留:カナダ、回収:中 国、輸送:ドイツ、クロスカッティング:日本に割り当てられた。事前に日本から回収に 関するプレゼンを申し入れたが、時間の関係で拒絶されたが、質問の際に口頭で日本の考 えを述べてもよいとの事であったため、“Japan Position”の紙資料を用意していた。 (1) 第 1 回 ISO/TC265 総会の概要 期間:2012 年 6 月 5 日,6 日、 場所:EDF (Électricité de France、フランス電力公社) Site de Chatou, 6 quai Waiter, BP49, 78401 Chatou, France 参加者:カナダ 2 名、中国 6 名、日本 13 名、フランス 9 名、ドイツ 5 名、 ノルウェー5 名、イタリア、英国 3 名、オランダ 3 名(以上 P メンバー) スウェーデン(CEN 代表を兼ねる)、 スペイン、ブラジル(以上 O メンバー、スペイン は P メンバーに変更希望) IEA 2 名、IEAGHG、GCCSI 2 名 (欠席 P メンバー:豪州、韓国、南アフリカ、スイス) 127 ╴ 豪州と韓国はまだ国内組織ができていないとのことで、出遅れている。 ╴ CCS に興味を持つ中東の国へも ISO/TC265 への参加について連絡したが参加な し。 (2) 第 1 回 ISO/TC265 総会での主な議論と決議 ① タイトル(アジェンダ 12): Carbon dioxide capture, transportation, and geological storage ╴ 日本の主張により Carbon capture が Carbon dioxide capture に変更された。 ╴ 中国が utilization を主張したが却下となった。 ╴ ドイツ等の強い要請で Transportation が追加された。 ② スコープ(アジェンダ 13、14): Standardization of design, construction, operation, environmental planning and management, risk management, quantification, monitoring, and verification, and related activities in the field of carbon dioxide capture, transportation, and geological storage. ╴ さらに詳細なスコーピングドキュメント(内部資料で公開されない)については、 アドホックグループで議論し、次回ミーティング(12 月上旬、または来年 1 月中旬) で決定する。ただし、必要に応じて改定していく。メンバー:ノルウェー(リーダ ー)、日本、ドイツ、中国、英国、カナダ、オランダ、スペイン - TC67 などの他の TC との重複分を除外するという文章は、ISO/TC265 の活動を制 約しかねないことからスコープ本文からは削除され、必要に応じてスコーピングド キュメントの中に記載することとなった。 ╴ equipment と material の標準化については、今後、新しい equipment や material が出てくることも考えられるため削除された。なお、中国は途上国に不利な貿易障 壁になるとして反対を表明したが、Secretary からは他の TC では問題になっていな いとの反論がなされた。 ╴ さらにいろいろなものが追加され、現在の形となった。 ③ TC の構成(アジェンダ 20): TC からの独立性が高い SC ではなく、最終的に TC の決議を必要とする Working Group を設置。当初、回収、輸送、地中貯留、Q&V、クロスカッティングの5つの WG を置 くこととする。将来、各 WG での議論次第で、WG の名称の変更、増設・廃止を行う。 各 WG は1~2 の標準を策定することを想定し、それ以上の標準策定が必要と判断され た場合には、WG が増設されることになる。また、標準の長さ、標準のレベル(国際標 準(IS)、技術仕様書(TS)、公開仕様書(PAS)、 技術報告書(TR))は各 WG の議論 に委ねる。 WG のコンビーナについては、2 カ国からなる 2 名のココンビーナを選出する。うち 1 128 か国が WG 事務局(セクレタリアート)となる。ただし、ココンビーナの希望が 1 か国 の場合は、その 1 カ国がコンビーナとなる。 ④ WG コンビーナ: Pメンバー各国はWGについてどういうリーダーシップを発揮したいか、すなわちココ ンビーナ、WG 事務局の希望を十分なリソース(財政、時間、組織など)があることを 示して、7 月 6 日までに国際幹事に提出する。複数の希望を出すことも可能だが、その 場合、優先順位を示す。各国からの希望の調整は、アドホックグループの助言のもと、 議長がおこなう。このアドホックグループには各 P メンバーから 1 名が参加することが でき、参加を希望する場合には国際幹事に 7 月 6 日までに連絡する。同グループの話し 合いはメール、あるいはテレコンで行われる。 ⑤ NWIP(アジェンダ 19.5): WG はココンビーナが責任をもって 1 つの NWIP 案を次回 ISO/TC265 総会までに作成 し、議長と国際幹事のコンサルを受けたあと、次回 ISO/TC265 総会に提出され議論さ れる。 ⑥ ビジネスプランアドホックグループ(アジェンダ 20): TC はビジネスプラン作成のアドホックグループを発足。最初のドラフト案は英国が作 成し、18 か月以内(2013 年 3 月まで)に策定する。このビジネスプランは TC 会議ご とに必要に応じてアップデートされる。メンバー:英国(リーダー)、カナダ、フラン ス、中国、スウェーデン。 ⑦ CAP(Chair’s Advisory Group)(アジェンダ 20): 議長に助言を与えるアドバイザリーグループを次回のミーティングで設置。 ⑧ 次回のミーティング(アジェンダ 23): 12 月上旬、または 1 月中旬(議決上の表現は“2013 年初め”)。ホストの意思がある場 合には国際幹事に希望を出す。以降、TC 開催は 6 か月に 1 回の予定。 ⑨ ISO の手続きの改正(アジェンダ 7) ・DIS(ドラフト ISO)から FDIS(最終ドラフト ISO)、IS という遷移に、DIS での状況 により、FDIS のフェーズをスキップできる条項が説明された。規格発行に期間短縮の 方向性が示されたことについて確認しておくことが必要である。 ・NWIP の承認条件は、a)投票した P メンバーの単純過半数による賛成、かつ、b)賛 成 P メンバーの 5 か国以上がエキスパートを指名であったが、P メンバーが 16 か国以 下の場合、エキスパート指名は 4 名以上でよい。 (3) 各国の対応 今回の TC の各国代表団の多くは、各国の規格協会の担当者が CCS の専門家を伴って参 加するという形であった。今回の TC 総会で基本的な進め方が合意されたことを受け、今 後、各国が参加を希望する WG に自国の専門家を任命する運びとなる。これから各国での 129 議論が深まると考えられる。以下、各国ごとに所感をまとめる。 ① 欧州全体(CEN の活動をスウェーデンが発表) ヨーロッパ規格 CEN の中では 2006 年に立ち上げたセクターフォーラムエネルギーマネ ージメントの中に CCS WG を作り、ここに 9 カ国・30 の参加者(public, NGO, energy provider, 重工等)が参加している。数か月前に第 3 回会合を開催し、技術あるいはプ ラントの定量化とインターフェース(機器やプロセスは含まない)の特性評価を目的と し、Safety、Relationship/ concertation with stakeholders、Contractual relationship、 Measurement of performance を重視して、回収、輸送、貯留、クロスカッティングの 分野ごとに標準項目の提案リストを策定した。 ・回収:性能評価、最小限のスペック、排ガス回収など ・輸送:パイプライン、鉄道、船舶、漏えいモニタリング、HSE など ・貯留:選定、圧入システム、坑井健全性、モニタリングなど ・クロスカッティング:用語、リスク、CO 2 ストリームの成分、モニタリング、利害関 係者との関係、契約など 今後、新たな CEN Tech Body on CCS の立ち上げ準備に入る。提案リストが承認される とドラフト作成に移る予定である。 本プレゼンの中では、ウィーン協定に関する言及があった。基本的にヨーロッパ規格が 先行して発行している場合は、ISO に持ち込むことが可能となりドラフト段階を省略し て、短期に ISO 規格発行に向かうことが想定される。回収で先行しているとされる議論 との兼ね合いが懸念されるので要注意。逆に、ISO で規格策定が先行すれば、CEN に移 行されることにもなっている。いずれにせよ、CEN は ISO と協調して作業を行うこと を想定していることに留意。 ② カナダ 2 名(IPAC、カルガリー大) 「貯留」への関心が高い。EOR の標準化の必要性にも言及。また、「リスク」の重要性 を強調した。ナダによる貯留の標準は、1 カ月以内くらいにパブコメを反映させた最終 案ができる。昨年 12 月に公表された案からの大幅な修正はなく、定義や文書内での矛 盾の修正が中心。今年中には標準として発行する予定である。カナダによる貯留の標準 に対して、Alberta 州、米国 EPA が関心を示している。米国が今回の CCS 標準化のカ ナダ提案を時期尚早として反対したことに困惑している。カナダによる貯留の標準につ いては、米国 EPA のほか、米国 DOE も賛意を示していた。 ③ 中国 6 名(規格協会、中国科学院、中国石油等) 「回収」のプレゼンをしたものの、発表者は地質学者であり、内容も中国のプロジェク トの紹介にとどまった。各種発言からは、「回収」よりも「安全性」「リスク」「健康」 に関心が強かった。「クロスカッティング」に関心があるのではないか。equipment と material の標準化は貿易障壁になるとして、scope に含めることに強く反対した。技術 130 よりも「安全性」「リスク」「健康」を主体としたいことの表れではないか。 注)この後、中国はフランスと組んで「定量化と検証(Quantification and Verification)」 とクロスカッティングイシューのコンビーナに立候補することになる。 ④ フランス 9 名(研究機関 IFPEN が中心、規格協会 AFNOR、EDF、Total、Alstom、 ADEME、IFPEN、GDF SUEZ など) 電力の大半が原子力発電であり、TC には石油ガス業界のために参加。「社会的受容性」 「リスク・マネージメント」 「Q&V」に関心があるとの発言。 「社会的受容性」の観点か ら、「輸送」「貯留」が重要とみている。 「回収」への取組みは、燃焼後を最優先しており、酸素燃焼は中期的な課題。「回収」 への関心は示されなかったが、Alstom の動きはチェックする必要がある。Secretary か ら各 WG では IS 化を前提に議論するとの提案があった際、CCS は成熟していない技術 であるため提案を全く理解できないと強いコメント。TR、TS、PAS を主張する可能性 がある。AFNOR(フランス規格協会)も”French position paper”を作成し、配布し ていた。 ⑤ ドイツ 5 名(規格協会、EON、シーメンス、研究機関 2) 「輸送」に強い関心。輸送についてのプレゼンを行い、パイプラインを優先すべきとし つつも、トラック、鉄道、船舶の 3 オプションへの取組みの必要性を強調。プレゼンで は、天然ガスと CO2 の違いを強調し、相の違い、パイプラインを含めた 4 つのオプシ ョン間での条件の相違、不純物への相への影響、腐食、亀裂伝搬、2 相流、操業フェー ズの切り替えるによる圧力変動などを課題として挙げた。(フロアより、課題と標準化 項目とは違うとの指摘があった。)「輸送」に強い関心を示しつつも、「輸送」の R&DD の経験はほとんどないとのことであった。現状、国内での CCS が不可能であり、CO2 輸 出 を 念 頭 に お い て い る 可 能 性 も あ る 。 ま た 、 ス コ ー プ に “ design, construction, operation”が入ったのはドイツの主張であった。総合的エンジニアリングに関心がある と思われる。一方、「回収」や「貯留」の経験の豊富さに言及しており、こうした分野 への関心もある可能性もある。 ⑥ ノルウェー 5 名(規格協会、Statoil、Gassnova 2、DNV) 「貯留」と「システム統合」に強い関心。ただし、貯留は海域貯留に限定されるため、 「社会的受容性」は重視していないとのこと。「システム統合」では回収、輸送、貯留 といった技術間のインターフェースを重視している。「クロスカッティング」に関心あ りか。 「回収」「輸送」は経験が豊富であり、既存技術のための標準を転用すれば十分との立 場。ドイツがプレゼンで「輸送」における腐食の重要性を指摘したことに対して、ドラ イにするだけで良いとの反論をした。ただし、「貯留」と「輸送」を最優先すべきとの 発言もあった。現在の議論は発電分野に特化しすぎており、製鉄所やセメント工場に対 する CCS も標準の対象に含めるべきと主張した。 131 ⑦ 英国 3 名(規格協会 BSI、Rolls-Royce、CCS Association) CCS の IS 化は時期尚早、Technical Report や Technical Specification に留めるべきと の考え。発言は少なく、様子を見ている感じ。 ⑧ オランダ 3 名(規格協会 NEN、Shell、DNV KEMA) 規格協会からの参加者の発言が多かったが、事務的な話のみ。国としてのスタンスは不 明。各国のCCSへの取組み紹介の中でパイプラインや河川利用によるCO 2 の多国間輸送 に言及があった。「輸送」に関心がある可能性がある。 ⑨ イタリア 1 名(ペルージャ大) ペルージャ大の CCS システムの技術経済評価研究者が参加。発言は少なかった。国内 の規格協会の依頼で参加しただけで、国内での議論はなかった様子。 ⑩ スウェーデン 1 名(SVENSK energy、CEN 代表を兼ねる) 電力の 96%が原子力、水力、バイオマスにより供給されており、国内の発電所には CCS の需要はないが、製鉄産業が CCS に関心を持っている。一方、Vattenfall といった電力 企業は海外で CCS に取り組んでいる。 ⑪ スペイン 1 名(規格協会 AENOR) スペインは P メンバーに変更希望。 ⑫ ブラジル 1 名(Petrobras) CCS の知識は限定的の様子。TC67 に参加しており、TC67 の観点から参加している。 (4) 標準化に向けての日本からの提案 アジェンダ 15,17 では標準化に向けての見込みのあるトピックスのプレゼンテーショ ンが行われた。この中で、日本から正式にクロスカッティング事項についてのプレゼンを 行った。また、前述の通り、回収については日本のプレゼンスを示す資料を準備し、回収 に関する中国のプレゼンに対する質問と議論の時間を使って、その概要を発表した。 ① 「回収」 中国が回収のプレゼン をしたが、自国が関与 するプロジェクト(一部 は海外との共同案 件)の紹介にすぎず、中身がない。日本はポジションペーパー(別紙 2 参照)を配布して、 考えを説明した。中国は各種発言から「安全性」「リスク」「健康」への関心が高く、そ れらにおける中国のリードを日本がサポートするなら、回収を日本がリードすることを サポートしてもよいとの話もあった。 「回収」に対して強い関心を示した国は日本以外にはない。逆にノルウェーが「回収」 の標準はいらないと発言するなど、 「回収」については IS 化せずに、TS、PAS 、TR な どに留めようとする動きが出てくる可能性があることに留意すべきである。同時に、日 本として、標準のレベルをどうするか(IS、TS、 PAS、あるいは TR)、内容を requirement とするか recommendation とするかなど、基本スタンスを定める必要がある。また、ノ ルウェーが関心を示し、スウェーデンが言及した製鉄所、セメント工場での回収の取り 132 扱いのスタンスも必要である。 最大の問題はヨーロッパ規格(CEN)が動いていて、その内容が日本の考えていること とほぼ同じであることである(後述)。(ここの動き方は来週以降、日本規格協会や他の TC のコンビーナ経験者と相談する。) ② 「クロスカッティング」 日本がクロスカッティング分野での ISO 規格案についてプレゼンをした(別紙3参照)。 定量化と検証については、タスクフォースを立ち上げて「Q&V」の WG 必要性を議論す ることを提案した。国内で深い議論をしてきたというドイツもタスクフォース案への支 持を表明。イタリア、オランダ、ノルウェー、英国、スウェーデン等が関心を示したが、 同時に困難さに懸念も表明。WG を立ち上げて、その WG でその必要性も含めて議論さ れることになった。しっかりとした方針を策定しておかないと議論が発散する可能性が ある。「Q&V」についての議論が深まることはなかったが、ドイツはモニタリングを各 WG に委ね、「Q&V」のスコープから除外することを提案した。 クロスカッティングの対象テーマとしては、語句の定義、「リスク」関連、「社会的受容 性」関連のほか、CO 2 ストリーム中のCO 2 以外の成分濃度などへの関心が高かった。特 に中国は終始、「リスク」への関心を示し続けていた。他に重視しているとしたのはフ ランス、ノルウェー。安全管理と表現したのはドイツ、イタリア、スペイン。「リスク」 については、リスク・マネージメント等の一般的な話はISO 31000 に含まれていること、 回収、輸送、貯留のそれぞれに限定されるリスクについては各WGで議論されるべきな どの意見が出された。 (5) 他の WG のプレゼンについて ① 「輸送」 ドイツが強い関心を示し、ドイツがプレゼンした。TC のタイトルに“transport”を入れ るべきとの主張はドイツのほか、多くの国からあり、関心は高い。ノルウェーは「輸送」 の標準化に否定的な発言が多かったが、「貯留」と「輸送」が大事と発言する場面もあ り、また、パイプライン輸送の経験が豊富との自負から参加を希望する可 能性 もあ る。 船輸送については、スコープの議論の中で“IMO aspect”を除外すべきとの意見があった。 オランダは、他国との河川を含むCO 2 輸送に言及しており、参加を望むかもしれない。 反対にドイツは船舶輸送やローリー輸送については小規模の輸送であって既に規格が あるとして否定的であった。 ② 「貯留」 カナダの代表として、IEA がプレゼンを行った。地中貯留については、ノルウェーが強 い関心を示した。STATOIL が WG 幹事に名乗りを上げている。カナダからは EOR の標 準化の必要があるとの発言があった。炭層からのメタン増進回収については、技術が全 く異なるとして、否定的な意見が出た。海底下貯留の話はなかったが、日本はカナダに 133 よる米加の貯留標準をレビューしたうえで、海底下貯留の観点の追加を主張する必要が あると思われる。なお、カナダによる貯留の標準は、1 カ月以内くらいにパブコメを反 映させた最終案ができる。昨年 12 月に公表された案からの大幅な修正はなく、定義や 文書内での矛盾の修正が中心とのこと。今年中には標準として発行する予定。 (6) 今後の対応 本項の(2)に示した様に 7 月 6 日までに国際幹事に提出するココンビーナ・WG 幹事およ びこれらの決定を議長に助言するアドホックグループへの参加希望については、各ワーキ ンググループで議論の上、国内審議委員会事務局にワーキンググループとしての希望を提 出した後、7 月 6 日の国内審議委員会で決定することとなった。 注)この提出期限は後日、国際幹事によって 8 月 10 日に延長される。 今月から 8 月頃までの各国への働きかけ(ロビー活動)がココンビーナ獲得に大きなポ イントとなると予想されるため、国内審議委員会事務局は、日本規格協会や他の TC のコ ンビーナ経験者との面談を踏まえて、今後の進め方の案を作成し、国内審議委員会に諮る こととなった。 3.2.5 第 1 回ISO/TC265 総会(パリ)を受けた各ワーキンググループ会合 第 1 回 ISO/TC265 総会を受けて、ワーキンググループ別に今後の対応を協議した。基 本的な協議事項は、先に作成したワーキンググループの基本方針に変更はないか、 ISO/TC265 総会を受け、今後どのように取りくんでいくか、特に WG のコンビーナ+事 務局あるいはコンビーナとして日本がリーダーシップを発揮していくかどうかである。 (1) 貯留 第 3 回ワーキンググループ(2012 年 7 月 3 日、於:TKP 新橋ビジネスセンター) ① 基本方針:変更話し。 ② 今後の取組み: ・ココンビーナの希望:楠瀬委員をココンビーナ候補者として、ISO/TC265 国際幹事あて に関心表明書を提出する。 ・貯留タスクグループの設置:我が国の事情を踏まえたCO 2 地中貯留の標準化戦略を次回 ISO/TC265 総会までに策定することを目的として、貯留タスクグループを設置する。こ れを受け、タスクグループのメンバーの希望者を募集する。 ・クロスカッティングへの対応:クロスカッティングイッシューとして取り扱われる内容 が非常に幅広いことから、今後、「Q&V・クロスカッティングイッシューワーキンググ ループ」に貯留ワーキンググループからも参加することとし、候補者を選定する。 134 (2) 輸送 ワーキンググループ会合は開催せず、メールによる協議により次の様に決定した。 ① 基本方針:変更はなし。 ② 今後の取組み: ・パイプライン輸送についてはドイツが積極的に動くと推測され、ドイツから提案が出た ところで対応方針を検討する。輸送ワーキンググループでリーダーシップをとるアクシ ョンはとらない。標準作成のための共同実験などの動きがあれば、関係先と相談して協 力する。 ・船舶輸送については、輸送ワーキンググループの共同コンビーナに立候補して分担する 意思を示せば、通る可能性は比較的高いと推量される。その場合、何を標準化するのか 提案する必要があり、貨物としてのCO 2 のグレード分け(不純物の成分や濃度を何段階 かで指定)が候補の一つになるかと思われる。しかし現状で標準作成をしかけるだけの データ,知見がそろっていないため、様子見とする。 ・結論として、輸送 WG へのココンビーナ、WG 事務局については日本からの立候補を見 送ることを提案する。しばらくワーキンググループの活動は、提案された内容に対して 意見を述べるだけになるが、新たに提案する必要性や状況の熟成があればそこで手を挙 げる余地はある。 (3) 回収(別事業) 第 3 回ワーキンググループ(2012 年 6 月 29 日、於:第 3 東洋海事ビル) ① 基本方針:次の通り ・日本は、回収分野で高い技術競争力を有しており、積極的な海外展開を図っていきたい ため、当該分野の国際標準化をリードすべく積極的かつ具体的な活動を行う。 ・提案各国に先行して CCS の普及促進に役立つ具体的な案を作成、早期の段階から発信 するとともに、賛同を得るための活動を積極的に行う。 ② 今後の取組み: ・TC265 Capture WG のココンビーナと事務局に対し、コンビーナ:東井隆行、事務局: RITE で関心表明を提出する ・7 月 20 日 TC265 国際幹事(カナダ)を訪問し、状況ヒアリングするとともに、今後の 進め方について意見交換を行う。 ・9 月目処に NP 原案作成を作成する。 ・P メンバーおよび CEN 動向注視と情報収集を行う。 (4) Q&V・クロスカッティングイッシュー 第 3 回幹事会(2012 年7月 2 日、エネ総工研会議室) ① 基本方針:次の通りとする 135 第 1 回 ISO/TC265 総会において、回収・輸送・貯留・Q&V・クロスカッティングイッ シューの 5 つの WG を組織することが決定した。なお、クロスカッティングイッシュー WG については検討すべき課題(案)として、Terminology・リスク・社会的受容・貯 留ガスの成分・モニタリング・CCS Ready・LCA など多数が挙げられた。クロスカッテ ィングイッシュー分野では、上記を受けて、以下の方針で取り組むこととする ・Q&V については、IPCC2006 年インベントリガイドライン策定に先立つ国内詳細検討お よびガイドライン参照文書としての情報提供、および UNFCCC のもとでの CCS CDM に関する国際提案など、従来から知見の蓄積があることから、CCS の円滑な実施を推進 するため、WG のココンビーナおよびセクレタリアートに立候補し、積極的に議論をリ ードしていく。 ・クロスカッティングイッシューについては、今後の方向性がまだ不明であるため、 ISO/TC265 クロスカッティングイッシューWG の体制、および WG 事務局から提案さ れる NWIP(案)を見極め、必要な対応を行う。 ② 今後の取組み ・国内審議委員会のもとに「Q&V・クロスカッティングイッシューワーキンググループ」 を設置する。 ・ISO/TC265 Q&VWG のココンビーナおよび事務局に対して立候補を表明する。 ・ISO/TC265 Q&VWG のココンビーナおよび事務局が獲得できた場合、Q&V 分野におけ る NWIP 原案を作成する。 ・「Q&V・クロスカッティングイッシューワーキンググループ」において、ISO/TC265 ク ロスカッティングイッシューWG の動きを見極め、必要な対応を行う。 3.2.6 第 2 回国内審議委員会(2012 年 7 月 6 日、於:第 5 東洋海事ビル会議室) 第 2 回の国内審議委員会では、前述の第 1 回 ISO/TC265 総会の内容について報告する と共に、今後の対応について協議した。主な協議事項は次の通りである。 (1) 第 1 回 ISO/TC265 総会の報告 (2) 組織の変更:Q&V ワーキンググループの設置を提案し、了承される。 (3) 各ワーキンググループ方針と活動報告:了承される。 この中で、貯留の基本方針で「他業界や他TC等への影響について検討しつつ」とあるこ とに対して、委員から説明があった。貯留層の観点からみると、CCSで行うCO 2 を帯水層 に貯留するという行為は、他産業では、坑廃水、地熱還元水等であり、同じような行為を 既に行っている。彼らはそれなりに歴史もあり安全な作業として実施していて、ベストプ ラクティスや何らかの基準を持っている。CCSも新たな一員となるが、過去に実績のある 他産業へ制限や影響を及ぼすことが無いようにして欲しい。国際標準化はCCS普及にとっ て社会的認知を得るために良い事だと思うが、CSAのドキュメントをみるとかなり体系だ 136 って書かれているのが気がかりである。例えば石油産業は実務で産業を進めてきた経緯の 中でのベストプラクティスであり、かっちりした体系になっていないかもしれないが、安 全に事業を進めてきている。CCSの国際標準化は他産業へ与える影響は大きいと思うので、 CCSに特化した項目に限る等できる限り影響がでないように配慮すべきである。 (4) ISO/TC265 総会での宿題事項と日本の回答 ① ココンビーナおよび WG 事務局の希望: 以下を希望し、期限が 8 月 10 日に延長されているが、リゾリューションに示された期 限である 7 月 6 日に提出する。 ・回収:ココンビーナと事務局、Q&V:ココンビーナと事務局 ・貯留:ココンビーナを希望する ② リーダーシップ・アドホックグループ:代表を RITE から出す ③ スコーピングドキュメント・アドホックグループ:代表を RITE から出す (5) その他 7 月 20 日に事務局がカナダの国際幹事との打合せを予定している。今後の予定等も確認 したい。次回国内審議委員会は第 2 回 ISO/TC265 総会の前後で調整する。 3.2.7 カナダ国際幹事からの情報収集 カナダ規格協会(CSA)からヒアリング 日時:2012 年 7 月 19 日~7 月 20 日 場所:カナダ規格協会 トロント、カナダ 出席者:ISO/TC265 国際幹事、国内審議委員会事務局 ISO/TC265 のセクレタリと今後の ISO/TC265 の運営の進め方について、打ち合わせた。 (1) ココンビーナ、プロジェクトリーダー、NWIP ISO/TC265 における WG 形成のやり方は、プロジェクトをより効率的に進めるため、 その初期段階において、Directive に記載されているものと若干異なっている。Directive は典型的なケースについて記載しているとした上で、ISO/TC265 では、多くの国が WG をリードしたいと考えているようであり、通常の方法では、各国が似かよったもしくは重 複した NWIP を提案してくることが予想される。それらの NWIP をもとに WG Convenor の採択をしようとすると混乱を起こす可能性がある。そこで、まず WG を、公平に、(時 間)効率的に organize し、早期に、最初(一番目)の NWIP を TC での議論の俎上に載 せることが重要であると考え、より統一化された方法で NWIP が選ばれるようにするため、 本方法を採用するとのこと。数年たった後には、通常の方法に戻すことを考えたいとのこ と。 137 ① 2人のココンビーナ、WG 幹事の役割 ・事務局が割り当てられた P メンバーから輩出されるココンビーナ、事務局が割り当てら れていない P メンバーから輩出されるココンビーナ:2 人のココンビーナは同格でお互 いに WG の進め方について相談しながら、WG の運営に責任を持ち、また WG 会議の運 営を行う。ココンビーナはそれぞれの国内委員会からの NWIP 案件を持ち寄り、さらに、 他の P メンバーにも呼びかけて案件を集めた上で、ココンビーナ同士で話し合いを行い、 双方のコンセンサスをもって取り組むべき案件を選定する。選定した案件が1つにまと まれば、ココンビーナを輩出する P メンバーのどちらか一方がその NWIP を作成し、次 回の ISO/TC265 総会に提出する。どちらが作成するかはココンビーナが相談して決め る。なお、案件が 1 つにまとまらない場合もしくは短い NWIP を作成することとなった 場合には、2 人のココンビーナの輩出国が個々に NWIP を作成することもあり得る。 NWIP が承認された後は、2 人のココンビーナがプロジェクトリーダーとなる。 ・WG 幹事(幹事と事務局は実質的に同義) :ISO のルールや内容に通じており、総務、連 絡、会議設定など様々な業務を行うとともに、コンビーナに助言し補佐する。特に WG 活動の初期で重要な役割を持つ。 ② ココンビーナ、事務局の選定プロセス ・8 月 10 日のココンビーナおよび事務局への希望表明締め切りのあと、アドホックグルー プメンバーに希望表明が回付される。それを受けて、1 回ないし 2 回のテレコンファレ ンスによって、2 カ国を決定する(国際幹事としては、できれば 1 回のテレコンファレ ンスで決定したい)。投票はなく、あくまでもコンセンサスで決める。テレコンファレン スでは、各国からの希望表明の内容やその国での実績、地域性なども考慮しつつ、各国 主張や議論を通して、相互のコンセンサスのもと、2 カ国を選択することになる。テレ コンファレンスは 9 月に行われ、遅くとも 10 月にはココンビーナと WG 事務局を決め る。 ・テレコンファレンスは TC265 議長(Ms. Sandra)がリードするが、議長の発言は控え る。ココンビーナ等の希望を出していない国の意見が重要となる。 ・2 カ国選定のクライテリアとしては、1 カ国にコンビーナが集中しないよう、多くの国 に機会を与えること、地域(ヨーロッパ、北米、アジア等)の重なりがないようにする ことなどの配慮とともに、その国にどの程度の経験があるかも重要である。また、 Twinning で一国は発展途上国とする可能性もある。5WG×2 名=10 名の枠があるので、 できるだけ国が重ならないように配慮していく。 ・日本から 3 つのポジションの希望表明がでているが多い。優先順位をつけるように申し 入れするかもしれない。1 つに絞るように要請するかもしれない。 138 ③ WG の正式な発足 ・WG の正式な発足は、NWIP の採択後になる。NWIP の採択のためには、4 カ国以上が 参加を表明しエキスパートをノミネートすること、投票した P メンバーの過半数の賛成 が必要である。1 つの WG において 1 カ国から複数のエキスパートのノミネートが可能 である。 ④ NWIP プロセス ・NWIP はコンビーナが提案するというより、国内委員会を通して提案されるものである。 WG をリードしたいのであれば、国内委員会としてその WG 分野に関して最も重要な案 件でアイデアを持っているべきである。コンビーナの真の役割は、NWIP が承認された あと WG をリードすることである。 ・ココンビーナはそれぞれの国内委員会が持つ NWIP 案件を持ち寄り、さらに、他の P メンバーにも呼びかけて案件を集めた上で、ココンビーナ同士で話し合いを行い、取り組 むべき案件を選定する。10 月から 11 月にこの案件の選定を行ってもらう予定。選定した 案件が 1 つの場合、ココンビーナを輩出する P メンバーのどちらか一方がその NWIP を 作成し、次回の ISO/TC265 総会に提出する。どちらが作成するかはココンビーナが相談 して決める。なお、短い NWIP を作成することとなった場合には、2 人のココンビーナ の輩出国がそれぞれ NWIP を作成することもあり得る。NWIP は次回 ISO/TC265 総会 までに作成するが、その提出期限はまだ定められていない。NWIP が承認された後は、2 人のココンビーナがプロジェクトリーダーとなる。 ・まだ明確に決めていないが、NWIP の承認は、次回の ISO/TC265 総会での議論と投票、 もしくは NWIP の提出から 3 カ月で投票にかける(3month ballot period)ことを考え ている(TC 開催時期に対する NWIP の提出時期に依存する。NWIP が TC で議論され、 scope などの追加・修正が必要となる可能性もある)。 ・初期においてはココンビーナの輩出国のみが NWIP を作成する。アイデアを持つ他の国 は、そのアイデアをココンビーナに示し、上記の NWIP の中にどのように取り込むかも 議論する。なお、本法をとるのは初期の NWIP の作成を効率よく行うためであり、数年 後にはどの国からも NWIP が提出できる通常の方法に従うようにする。 ・NWIP は、正式な NWIP 提出の前に議長・国際幹事に提出され、scope が適切か等コン サルテーションを受けるようにする(これは informal なプロセス)。これは、NWIP が TC で(reject されたりしないよう)うまく承認されるように助言を与えたり、NWIP 間の調整を行うためである。 ⑤ 今後の予定 ・8 月 10 日:ココンビーナ、事務局の希望提出 ・9 月から 10 月:アドホックグループによる議論、ココンビーナ・事務局決定 139 ・10 月から 11 月:ココンビーナ間での NWIP の案件選定 ・次回 ISO/TC265 総会まで:NWIP 案の提出 ・12 月から 1 月はじめ:次回 ISO/TC265 総会 ・上記から 3 カ月以内:NWIP の投票 ⑥ CEN との協力 ・基本的には CEN にすでに規格が存在すれば、CEN リードとなる。同時に規格化を進め る場合には、ISO が優先される。ISO 化の状況をみて、ISO で規格化されない案件で、 欧州における規格化が必要と判断した場合には、CEN による規格化がなされる。本件の 場合にはあまり気にかける必要はないと考える。TC には CEN はリエゾンとして参加す る。むしろ、CEN を参考にすればよい。 ・CEN に接触したいなら、連絡をくれれば、コンタクトパーソンを紹介する。フランスの ANFOR が事務局である。調べてまた連絡する。 ⑦ Others ・エグゼクティブコミッティーのメンバーについては、まだ決めていない。 ・すでに 4 カ国希望表明がでている。 ・NWIP の作成に関して FORM4 は、ISO がアップしている最新版を用いる。 ( 例示した当方ドラフトに対して) Title や Scope は問題ない(但し、terminology については、cross-cutting issue 分野と の意見が出るかもしれない)が、Post-Combustion を Part1 とし、Pre-Combustion や Oxy-fuel が Part2 以降に続くのであれば、Purpose の欄にはそれらを含めた Future Plan も記載すべきである。MMS は ISO14000/9000 のような process management に 関するものであり technical standard ではない。判断に困るのであれば空欄のままで議 長/国際幹事に提出して助言を受けたらよい。当該案件(Capture)では、MMS には該 当しないだろう。また、Project Leader とは Convenor ということにあり、Proposer は 基本的には member body である。 NWIP の draft の書き方は、Directive partII を参照。例示の table of content は good だろう。注意すべきは、standard は「requirements/ recommendations」の記述が必要 かつ重要である(requirements の場合は”shall”、recommendations の場合は“should”)。 Technologies については記述しない。 3.3 第 2 回ISO/TC265 総会(マドリッド)に向けての活動 第 1 回 ISO/TC265 総会およびその後開催された第 2 回国内審議委員会の結果を受けて、 国内における各ワーキンググループ、NWIP 案作成の各タスクグループ、および国際にお ける各アドホックグループの活動が行われた。またこれらの活動と並行し、CCS の ISO 140 標準化に対する各国の動向調査を実施した。本節では、第 2 回 ISO/TC265 総会に向けて のこれらの活動について記述する。 3.3.1 各ワーキンググループ会合 (1) 貯留 第 4 回貯留ワーキンググループ会合(2012 年 10 月 11 日、於:第 3 東洋海事ビル) ① TC265 のこれまでの動きと今後の予定 ・日本はコンビーナとして、回収、Q&V、貯留を希望。日本としての優先順位は、回収、 Q&V、貯留の順。 ・コンビーナは、10 月 30 日に開催の電話会議で決定の予定。 ② スコーピングドキュメントの改訂 ・日本はCO 2 EORの除外を提案したが、受け入れられなかった。このため、既存のルー ルやTC67 を除くとの表現で対応する予定。 ・スコーピングドキュメントの内容は、テレカンファレンスで決定される予定。その場で 日本の主張を行う。 ③ カナダ CSA 案の検討および日本 NWIP 案の検討 ・カナダ CSA 案に関して事務局と NWIP 案起草タスクグループが詳細に検討。 ・海域でのCO 2 地中貯留、貯留の安全性の確保、HSEなどの観点から、検討を実施。 ・海域におけるCO 2 地中貯留という観点でNWIP案の作成を検討中。 第 5 回貯留ワーキンググループ会合(2012 年 1 月 21 日、於:第 3 東洋海事ビル) ① ISO/TC265 の動きと今後の予定 ・リーダーシップの投票結果については、Q&VWG の投票結果の解釈が不明確なため、最 終決定は先送り。 ・ノルウェーとの間では、標準化に向けて協力していくことで合意。 ② 貯留に関する日本の NWIP 対応案 ・NWIP 案は、自由度が高くて、広く適用可能なものとすべきであるとの考えに基づき検 討。 ・NWIP 案は、陸域と海域の区別なく、一本化する方向で臨む。このため、海域における 標準化に関しては、ノルウェーと協力して検討を進めるとともに、カナダと意見調整を 行い、標準化を進める。 (2) 輸送 ワーキンググループの会合は開催せず、メールにより次の項目について審議した。 ① スコーピングドキュメント改訂の審議 第1回 ISO/TC265 総会の決議事項 7 に基づく、スコーピングドキュメント・アドホッ 141 クグループ(ノルウェー)からの依頼に対応し、輸送分野および共通事項についてのスコ ーピングの検討をした。9 月にノルウェーから提出された、初めのスコーピングドキュメ ント案では、船舶輸送が除外項目となっていたため、対象項目に戻すようスコーピングド キュメント・アドホックグループへ意見を述べた。また 11 月のテレカンファレンスにお いても、日本における CCS は海域での貯留となることから、輸送分野から船舶輸送が除 外にならないよう求め、最終的にスコーピングとして船舶輸送が残ることとなった。 ② 各ワーキンググループのコンビーナ・事務局の希望表明に関して 輸送ワーキンググループの基本方針に則り、輸送ワーキンググループからコンビーナ・ 事務局の希望表明を行っていないが、その他各 WG の希望表明の状況について、情報を把 握した。最終的に輸送 WG については、ドイツがコンビーナ・事務局となった。 ③ 第 2 回 ISO/TC265 総会(マドリッド)(輸送ワーキンググループからの派遣検討) 主査および副主査を軸に検討したが日程調整できず、ドイツからの NWIP 案および各国 の動向について情報収集を行うために、国内審議団体事務局(RITE)が輸送ワーキンググ ループの代表として参加することになった。 (3) Q&V・クロスカッティングイッシュー 第 1 回ワーキンググループ会合(2012 年 10 月 24 日、於:エネ総工研会議室) 正式なワーキンググループとしての第 1 回会合が開催された。 ・第 2 回国内審議委員会で、正式に Q&V・クロスカッティングイッシューワーキンググ ループの設立が承認されたことが報告された。 ・リーダーシップに関する各国からの関心表明について議論された。 ・スコーピングドキュメント審議状況の報告と最新バージョンに対する議論が行われた。 第 2 回ワーキンググループ会合(2013 年 1 月 29 日、於:エネ総工研会議室) 第 2 回 ISO/TC256 総会に向けて、最新状況の確認が行われた。 ・各コンビーナおよび事務局に対する投票結果のレビュー。 ・会合で最終決定されるスコーピングドキュメント、ビジネスプランに関する提案文書の レビュー。 ・Chair’s Advisory Group(CAG)のメンバーに関して議論。コンビーナがメンバーにな らないのであれば、日本として別な人をたてて立候補する。 (4) 回収(別事業であるが、簡単に内容を記録しておく) 第 3 回回収ワーキンググループ会合(2012 年 6 月 29 日、於:第 3 東洋海事ビル) ・NWIP 原案作成に関して、主査よりタスクグループを設置することが提案された。今後、 142 タスクグループ委員を募り、NWIP 素案を作成後、委員との意見やコメント等を反映さ せて NWIP 原案作成を進める。原案作成対象は、技術的に最も進んでいる燃焼後回収(発 電所排ガス)とし、その完成案をもとに、順次、燃焼前回収や酸素燃焼の検討に応用し ていくことで、各委員の同意を得た。 ・その他、CEN(European Committee for Standardization)対応として、CEN の活動 を注視する必要があることから、各委員に CEN 関係者/企業のコンタクト先の紹介を 依頼した。 第 4 回回収ワーキンググループ会合(2012 年 9 月 12 日、於:航空会館ビル) ・第 1 回タスクグループの議論の結果を説明し、進め方に対して意見を求めた。 ・「TC265 Internal Scoping Document」の改定案については、引き続き、各委員に意見 を求め、国内回収WG事務局が国内各 WG 案を取り纏めたものを日本案とし、スコーピ ングドキュメント・アドホックグループに提出した。 第 5 回回収ワーキンググループ会合(2013 年 1 月 9 日、於:航空会館ビル) ・「NWIP案起草に関するタスクグループ」で作成したNWIP案および第 2 回ISO/TC256 総 会 で の プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 案 と し て の 、 CO 2 回 収 シ ス テ ム の 範 囲 、 境 界 の 定 義 か ら CO 2 回収システムの管理体制の標準化に至る包括的な提案内容について、主査から説明 するとともに、その内容に関して各委員の承認を得た。また、回収ワーキンググループ 事務局から、スコーピングドキュメント・アドホックグループ会合の結果報告を行った。 ・回収ワーキンググループからの NWIP 案は、第 3 回国内審議委員会(2013 年 1 月 23 日開催)で審議したのち、2 つの NWIP 案として完成させ、第 2 回 ISO/TC256 総会用 資料として国際幹事へ提出した。 また、ノルウェー、オランダ、およびドイツを訪問し、NWIP 案について紹介し、意見 を求めた。この結果を第 2 回 ISO/TC265 総会に向けての NWIP 案の改定に反映させた。 3.3.2 NWIP案作成(貯留および回収ワーキンググループ) (1) 貯留タスクグループ活動 第 1 回 NWIP 案起草タスクグループ会合(2012 年 8 月 22 日、於:RITE 東京事務所) ① タスクグループの作業方針・最終アウトプットの変更 タスクグループの作業方針、最終アウトプットは、戦略という概念をまとめるのではな く、日本の考え、主張を盛り込んだ NWIP 案の形にとりまとめ、提出する方針に変更。 ② NWIP 案作成のスケジュール対応 ・第 1 次ドラフトについては 10 月初め頃目途に作成。 ・最終案については 12 月までにとりまとめる。 143 ③ NWIP 案の作成、取りまとめ方 参加メンバーから 2 つの案が提出されたが、最終的な NWIP 案の具体的作成、とりまと め方については、貯留分野の標準化に関する諸外国の動向、他の ISO の事例等を早々に調 査、検討したうえで、方針を決定することとなった。 第 2 回 NWIP 案起草タスクグループ会合(2012 年 9 月 26 日、於:RITE 東京事務所) ① コンビーナ希望表明結果とコンビーナの決定に関する今後の予定 ・コンビーナ希望表明結果の概要と回収、貯留、Q&V に関する日本の対応案を説明。 ・ 今 後 は 、 10 月 に 予 定 さ れ て い る ア ド ホ ッ ク グ ル ー プ の 電 話 会 議 で 仮 決 定 さ れ 、 次 回 ISO/TC265 総会で最終決定。 ② スコーピングドキュメントの改訂に関する今後の予定 ・アドホックグループの第 2 回電話会議で仮決定され、次回 ISO/TC265 総会で最終決定。 ③ 認証システムおよびマネジメントシステムの取り扱い ・専門家へのヒアリング結果から、認証システム自体について ISO 規格の中であえて定め る必要はない。 ・マネジメントシステムについては、ISO9000 で定められたものが参考となる。 ④ カナダ CSA 案の検討:中間報告 ・CSA 案の一部について、shall 文および should 文の抽出・整理を実施。 ⑤ NWIP 案第1次ドラフトの検討 ・NWIP 案については、技術的なものとマネジメントシステムは別にする。 第 3 回 NWIP 案起草タスクグループ会合(2012 年 11 月 7 日、於:RITE 東京事務所) ① リーダーシップ・アドホックグループ電話会議の結果 ・Q&V のココンビーナの獲得に関する日本側の対応について関係者で検討中。 ② カナダ CSA の動き ・おそらく 12 月上旬には CSA 案の最終版が公表される見通し。 ③ スコーピングドキュメント改訂への対応 ・2012 年 11 月 14 日に予定されている電話会議に向け、事前に国内審議委員会メンバー に資料内容の確認を依頼。 ・貯留に関しては、マネジメントシステムの具体的な内容の追記について事務局で対応予 定。 ④ NWIP 案に盛り込むべき内容 ・陸域と海域のそれぞれにおけるCO 2 地中貯留の違いについて整理したうえで、海域にお けるCO 2 地中貯留の特徴的部分について提案を取りまとめる方向で検討。なお、陸域と 海域の相違点の整理は、スコーピングドキュメントの項目に沿って行う方向で検討。 ・海洋環境影響評価については、ロンドン条約を踏まえた方向で検討。 144 ・当初の想定とは異なる状況が発生した場合の対応についても、盛り込む方向で検討。 ・今後は、カナダの NWIP 案に一本化することも視野に入れて検討。 第 4 回 NWIP 案起草タスクグループ会合(2013 年 1 月 16 日、於:RITE 東京事務所) ① ISO/TC265 の動き ・コンビーナ・事務局の承認投票(投票の締切は 1 月 18 日) ・ノルウェー・カナダとの意見調整(今後の打合せ予定など) ・第 2 回 ISO/TC265 総会開催要領 ② NWIP 案第 2 次ドラフトの検討 ・「海域におけるCO 2 地中貯留に関する要求事項および推奨事項(案)」については、全体 構成の修正を行うこととする。 ・最終的には NWIP 案にはならない可能性もあることから、当面は、「NWIP 案」ではな く、「NWIP 対応案」として扱う。 (2) 回収タスクグループ活動(別事業であるが、簡単に内容を記録しておく) 第1回 NWIP 案起草タスクグループ会合(2012 年 8 月 9 日、於:RITE 東京事務所) ・民間 6 社の国内回収ワーキンググループ委員がタスクグループメンバーとなった。 ・NWIP 起草に向けた今後の進め方として、工程表、NWIP 作成手順(骨子、Form4、目 次)および本文について議論した。各メンバーに対して期限を設けて引き続き意見を求 めることと、その結果は電子メール回付で対応した。 第 2 回 NWIP 案起草タスクグループ会合(2012 年 11 月 28 日、於:RITE 東京事務所) ・主査が取り纏めた NWIP ドラフトをタスクグループメンバーに提示し、議論したうえ引 き続き、追加/修正を進めて行くこととした。論理構成、情報的裏打ちなど必要であり、 各メンバーに情報提供を要請した。 3.3.3 アドホックグループ 本項においては、第1回 ISO/TC265 総会において設立された、リーダーシップ・アド ホックグループ、スコーピングドキュメント・アドホックグループ、ビジネスプラン・ア ドホックグループの活動について記述する。第 2 回 ISO/TC265 総会に向けての活動の概 略の流れは図 3.3.3-1 を参照。 145 <コンビーナ・事 務局 > リーダーシップ・ アドホックグループ <内部 向 けスコーピングドキュメント> スコーピングドキュメント・ アドホックグループ 7/6 関心 表明 各国からの関 心 表明 (8/10 まで延長) 10/30 第 1 回 12/11 第 2 回 <ビジネスプラン> ビジネスプラン・ アドホックグループ 11/14 テレカンファレンス テレカンファレンス WGコンビーナ、事 務局 NWIP 案検 討 1/18 期日 12/21 1/14 ドラフト提示 NWIP 案作 成 電子 投 票 ドラフト提示 通知 文 N022 正式決定 討議 一部修正し正式決定 通知 文 N024 一部修正し正式決定 第2回 ISO/TC265 総会 2 月 4 日-5 日 スペイン(マドリッド),2 月 6 日ワークショップ 各ワーキンググループ活動開始 図 3.3.3-1 アドホックグループの活動の流れ (1) リーダーシップ・アドホックグループ 目的: 第 1 回 ISO/TC265 総会において 5 つのワーキンググループを設置するとともに各ワー キンググループには 2 カ国からなる 2 名のコンビーナを選出し、うち 1 カ国がワーキング グループ事務局(セクレタリ)となることが決まった。そのため、各国からのリーダシッ プ(コンビーナ、セクレタリ)に関する希望表明をつのり、各国から出された希望表明に ついて調整し第 2 回 ISO/TC265 総会までに議長へ候補者を推薦する。 構成: 各 P メンバー国よりアドホックグループへの参加希望が 2012 年 7 月 6 日までに国際幹 事へ提出され、以下のように決定された。 アドホックグループメンバー国;日本、ドイツ、フランス、中国、カナダ 経緯: ① 関心表明 各 P メンバー国よりリーダーップへの関心表明が 2012 年 7 月 6 日までに国際幹事へ提 146 出することになっていたが、期限が 2012 年 8 月 10 日まで期間延長された。各国から出さ れたリーダーシップへの関心表明は以下の表を参照。 表 3.3.3-1 リーダーシップ関心表明 WG ココンビーナ 事務局 回収 日本 日本 輸送 ドイツ ドイツ 貯留 カナダ 日本 カナダ Q&V 中国 フランス 中国 日本 クロスカッティング 日本 フランス 中国 フランス ・日本からは回収 WG のココンビーナと事務局、貯留 WG のココンビーナ、Q&VWG の ココンビーナと事務局に対して関心表明を提出。 ・ドイツから輸送 WG のココンビーナと事務局への関心表明が提出された。 ・カナダから貯留 WG のココンビーナと事務局への関心表明が提出された。 ・中国とフランスのジョイント提案で、Q&VWG のココンビーナへの関心表明、中国の事 務局への関心表明が出された。 ・同じく中国とフランスのジョイント提案で、クロスカッティング WG のココンビーナへ の関心表明、フランスの事務局への関心表明が出された。 この結果、Q&VWG のリーダーシップについて中国/フランス提案と日本提案の調整が 必要となった。 ② 第 1 回テレコンファレンス 日 時:2012 年 10 月 30 日 22:00~23:30 場 所:(日本サイド)RITE 東京事務所 参加者:ISO/TC265 議長、ISO/TC265 事務局、日本、ドイツ、フランス、カナダ、中国 傍聴者:国内審議委員会事務局、日本の国内各ワーキンググループ事務局(回収、貯留、 Q&V/クロスカッティング) ISO/TC265 議長、アドホックグループのメンバー(結果的に、WG のコンビーナおよび 事務局へ関心表明をおこなった P メンバー国からの代表者のみ)間で、WG のコンビーナ および事務局について電話会議を行った。会議は ISO/TC265 議長が進行し、各メンバー が回収、輸送、貯留、クロスカッティングおよび Q&V の順で各国の関心表明の概要説明 を行い、他国がコメント・意見等を表明するという形で行われた。回収、輸送、クロスカ ッティングについては、関心表明通りに合意された(ただし、最終的な決定には ISO/TC265 147 の承認が必要)。一方、貯留と Q&V については以下の議論が行われ、結論が持ち越しとな った。 ・ドイツ、カナダ、日本より、フランスがクロスカッティングと Q&V に同一人物をコン ビーナとして推薦していることに対して強い懸念が表明された。 ・フランスが Q&V はサブのため問題ない、クロスカッティングは中国のサポートがあれ ば問題ない、一人で難しくなった場合に新たな人物を考えるとの主張をおこなったが、 コンビーナの継続性の重要性、当初から積極的や役割を担わないことへの疑問、ワーキ ンググループの同時開催の場合の対応の問題が指摘された。 ・その結果、フランスは Q&V のコンビーナの辞退を表明した。 ・日本と中国でコンビーナを進めていく案の議論を行った。中国から、Q&V ワーキング グループでは中国がリーディングコンビーナの、また事務局の役割も果たしたいとの要 望があり、それに日本が同意すればその後の話し合いは不要である。 ・この提案に対して結論がでず、日本が持ち帰って検討することになった。 ・その際、中国からフランスが新たなコンビーナを推薦するオプションについて言及があ った。 第 1 回テレコンファレンスにおいては、Q&VWG のコンビーナと事務局に関して決定で きず、中国/フランス/日本の間で調整して解決策を見出すことになった。3~4 週間以内 の決着を目指し、次回のテレコンファレンスが予定(12 月 11 日)された。各コンビーナ は次回 ISO/TC265 総会において NWIP を提案することになる。 ③ 中国との個別交渉(2012 年 11 月) ・第 1 回テレコンファレンスの結論を受けて、日本として中国との間でコンビーナの実施 方法に関して解決策を検討した。 案1 コンビーナ:日本、中国+事務局:日本 案2 コンビーナ:日本、中国+事務局:中国 ・中国との交渉の目標として、 案 1 を目指して中国等と協議する。どうしても無理な場合には、コンビーナはあくまでも 対等であること、コンビーナ間の連携を十分とり、事務局が円滑に WG 運営を進めていく ことを中国が約束した上で、案 2 で妥結する。 を設定し、メールにて中国と交渉。 ・中国側はフランスとの共同提案に固執したため、交渉はうまく進展せず、フランスから 別なコンビーナ候補をたてて新たな関心表明の資料が TC 事務局へ提出されたために、 交渉を断念。 ④ ISO/TC265 議長への交渉経過報告(国際電話会議にて) 148 日 時:2012 年 12 月 11 日 10:00~10:30 場 所:(日本サイド)RITE 東京事務所 参加者:ISO/TC265 議長、国内審議委員会事務局、Q&V・クロスカッティングイッシュ ーワーキンググループ事務局 ISO/TC265 議長へ経過報告。中国/フランスから直接 ISO/TC265 事務局へ関心表明の 改訂版が提出されたことに対して遺憾である旨報告。議長から、アドホックグループにお いてコンセンサスがとれない場合は、投票で決めることになる点について日本側の確認が 求められた。日本のリーダーシップの優先順位について、1)回収、2)Q&V、3)貯留で あることの確認が行われた。 ⑤ 第 2 回テレコンファレンス 日 時:2012 年 12 月 11 日 22:30~23:50 場 所:(日本サイド)RITE 東京事務所 参加者: TC 議長、TC 事務局、ドイツ、カナダ、中国、フランス、 日本 傍聴者:国内審議委員会事務局、Q&V・クロスカッティングワーキンググループ事務局 ISO/TC265 議長、アドホックグループメンバーで貯留 WG と Q&VWG のコンビーナ、 と 事 務 局 選 出 に つ い て 議 論 が 行 わ れ た 。 各 WG の コ ン ビ ー ナ 、 お よ び 事 務 局 は 次 回 ISO/TC265 総会に先立って他の P メンバーより承認を得る。貯留 WG、QVWG について は投票によって決定される。その他の WG はアドホックグループから推薦された、コンビ ーナ、事務局を承認する投票となる。次の動きとしては 2012 年 12 月 25 日までにカナダ ISO/TC265 事務局より送られてくる、P メンバーと投票時に掲載されるリーダーシップ・ アドホックグループ内での今までの経過を記載したショートレポートにコメントする内容 を検討する。 ・QVWG では 2 つの立候補があり、P メンバーによる電子投票でどちらかを決定する。 -日本単独(コンビーナと事務局) -中国(リーディングコンビーナと事務局)とフランス(サブコンビーナ) ・その他 4 件の投票項目は以下の通り。 - 回収:日本(convener & 事務局) - 輸送:ドイツ(convener & 事務局) - クロスカッティング:フランス(co-convener(リーダー)& 事務局)+ 中国(co-convener(サポート)) - 貯留:カナダ(co-convener & 事務局)+ 日本(co-convener) *)ただし、日本は QVWG のコンビーナ、事務局を優先しているので、QVWG で選出さ 149 れた場合はこの立候補を取り下げるという条件付。 ・投票にあったては議事録とアプリケーションを情報として P メンバーに提示することを 日本は提案したが、議事録には詳細が記載されておらず、その目的で作成されたもので はないという理由で、ショートレポートが議事録の代わりとして提示される。アドホッ クグループ内の討議の過程を情報として提供するべきという日本のコメントを受け、シ ョートレポートは投票の前にアドホックメンバーに回覧される。ショートレポートは国 際幹事が作成し、12 月中(25 日以前)にメンバーに閲覧、各メンバーがコメントする 機会がある。 ・投票についての説明 時期:12 月中(25 日以前に開始) 期間:30 日間 方法:電子投票(リエゾン投票と同じ方法) 選出条件:P メンバー各国が 1 票の権利を持つ。P メンバーの 2/3 以上が投票し、 その過半数票を得ること。P メンバー全員が投票した場合はその 2/3 の 票を得ること ⑥ 投票に関するロビー活動(2012 年 12 月) 投票に際しては国際幹事より参考資料として「ショートレポート」が提出されるが、こ のレポートは非常に簡単であるために、リーダーシップ・アドホックグループの議論に参 加していない P メンバー国が十分な情報がないままに投票することになる。特にコンビー ナおよび Q&V についての日本の考え方を説明して投票してもらうためのレターを主な P メンバー国へ送付。 ⑦ リーダーシップ投票 リーダーシップに関して、以下の投票が行われた。 投票期間:2012 年 12 月 19 日から 2013 年 1 月 18 日 投票方法:電子投票 投票状況: P メンバー(16 カ国):豪州、カナダ、中国、フランス、ドイツ、イタリア、日本、韓 国、マレーシア、オランダ、ノルウェー、スペイン、南ア、ス イス、英国、米国 投票した国(12 カ国):豪州、カナダ、中国、フランス、ドイツ、イタリア、日本、マ レーシア、オランダ、ノルウェー、スペイン、南ア 投票しなかった国(4 カ国):韓国、スイス、英国、米国 投票結果を表 3.3.3-2 に示す。 150 表 3.3.3-2 リーダシップ投票結果 投票No. WG ココンビーナ 事務局 賛成 投票結果 反対 棄権 12 N017 回収 日本 日本 (豪州、カナダ、中国、フランス、 ドイツ、イタリア、日本、マレーシア、 オランダ、ノルウェー、スペイン、南ア) N018 輸送 ドイツ ドイツ (豪州、カナダ、中国、フランス、 ドイツ、イタリア、日本、マレーシア、 オランダ、ノルウェー、スペイン、南ア) N019 貯留 カナダ (豪州、カナダ、中国、フランス、 イタリア、日本、マレーシア、オランダ、 スペイン、南ア) フランス、中国 フランス (豪州、カナダ、中国、フランス、 ドイツ、イタリア、日本、マレーシア、 オランダ、ノルウェー、スペイン、南ア) a案) 中国、フランス 中国 (カナダ、中国、フランス、 ドイツ、イタリア) b案) 日本 日本 c案) 棄権 ― 0 0 0 0 12 10 カナダ、日本 (QVをとれば日本は辞退) 2 (ドイツ、 ノルウェー) 0 0 0 12 N020 クロスカッティ ング 5 N021 Q&V 3 (日本、ノルウェー、豪州) ― ― ― 4 ― ― (スペイン、南ア、 オランダ、マレーシア) 注:投票 No とは投票に関する ISO 資料番号 回収 WG、輸送 WG、貯留 WG およびクロスカッティング WG のリーダーシップに関して は、投票結果により提案どおりとすることでコンセンサスが得られた。Q&VWG のリーダ ーシップに関しては、投票結果によりどちらかの案に決めることができなかったために、 第 2 回 ISO/TC265 総会において最終判断が行われることになった。 (2) スコーピングドキュメント・アドホックグループ 目的:ISO/TC265 の活動範囲を決めるスコープは第1回 ISO/TC265 総会で決まったが、 活動内容をさらに詳細に決める必要性があるとの提案に基づき、ISO/TC265 内部で用いら れるインターナルスコーピングドキュメントの議論が行われた。このドキュメントを第 2 回 ISO/TC265 総会において決定するために、アドホックグループを作って議論を進める ことになった。 構成: アドホックグループリーダ国 ノルウェー アドホックグループメンバー国 日本、ドイツ、英国、スペイン、中国、カナダ、 オランダ スコーピングドキュメントの主な項目: オブジェクティブ、概要、回収、輸送、貯留、Q&V、クロスカッティングイッシュー、 除外事項 経緯: 151 ① 各国からの修正提案提出(2012 年 9 月) N004 AnnexB に対してメンバー各国からノルウェーに対して修正案提出。 ② ノルウェーによるとりまとめ案リリース(2012 年 10 月 3 日) 9 月に提出された各国からの修正提案を、なるべく簡潔に、複数個所の記載は一つにま とめて、ノルウェーからアドホックリーダー案としてアドホックメンバー各国に対してリ リースされた。 ③ ノルウェーとりまとめ案に対して各ワーキンググループで議論し、検討結果を日本案と してまとめる。 a 各国からの提案項目を削除した理由、新たに追加された項目の理由が不明 →スコープの中に記載する必要はないが、別資料で整理する必要あり。 b 簡潔に記述されているので、かえって理解できない、誤解につながる可能性あり。 →スコープの中に記載する必要はないが、別に説明資料がないと理解できない。今後議 論が混乱しないようにするため、用語の明確化を要望する。 c 複数個所に記載されていた項目を 1 箇所に整理した結果、本来議論に参加すべきエキス パート不在で物事が検討されて決められてしまう心配がある。 →日本案では本来議論されるべき複数の WG のスコープの中に項目を記載するように提 案。ノルウェーのコメントの中にも、この件は今後検討すると書かれている。理由を説明 し適切な箇所にスコープとして記載するよう再度要望する。 例:Management system regarding Capture、Management system regarding Transport d ノルウェーとりまとめ案に対して、具体的な修正提案を作成する。 これらの問題点をノルウェー含めてアドホックメンバーへ伝える。 ④ ノルウェーとりまとめ案に対して修正提案を送付。合わせて用語の定義を Tetminology のリストとして提案。各国からの修正案をテレコンファレンスで議論することになった。 ⑤ テレコンファレンス 日 時:2012 年 11 月 14 日 19:30~21:00 場 所:(日本サイド)RITE 本部(京都) 参加者:ノルウェー、英国、ドイツ、中国 ※ 、日本、 ※ 最後の約 5 分間のみの参加にとどまり、議論には参加せず。 傍聴者:日本の国内各ワーキンググループ事務局(回収、輸送、貯留、Q&V・クロスカッ ティング) ノルウェーによるスコーピングドキュメント案(2012 年 10 月 1 日付)に日本とドイツ からの修正提案・コメントを追記したバージョンを用いて、セクションごとに議論した。 152 内容に関する日本の提案はほぼ反映された。 ⑥ アドホックグループ案とりまとめ テレ コン ファ レン スの 議論 を反 映さ せた ドキ ュメ ント がメ ンバ ーに 配布 され た(2012 年 11 月 20 日)。マイナーな修正を行い、アドホックグループ案として取りまとめられた (2012 年 12 月 13 日)。その後、アドホックグループリーダーより、第 2 回 ISO/TC265 総会へ提出された。 (3) ビジネスプラン・アドホックグループ 目的:第 1 回 ISO/TC265 総会において ISO/TC265 のビジネスプランの作成を行う目的で 設立された。 構成:英国(リーダー)、カナダ、フランス、中国、スウェーデン アドホックグループの検討結果がビジネスプランのドキュメントとして N 文書として 配布され、事務局から国内関係者へメールにて配信し記載内容に関して意見を求めた。国 内からの意見を集約し、第 2 回 ISO/TC265 総会におけるディスカッションの場で以下の 指摘を行なった。Cross Cutting に関する点を除きビジネスプランのドキュメントの修正 が了承された。 ・ CCS or carbon capture and storage の記述修正。 ・sub-committee の設立は将来の可能性を残すために、“初期段階では”ないとの記 載を追加 ・Cross Cutting に関する検討については、今後追加の WG の設立もありえると の記載の追加(前回パリ会合議事録より)。 ・Business Plan の除外項目の「Legal liability and permitting」と、Internal Scoping Document の Q&V に記載の「Quantification procedures for liability assessment」、 クロスカッティングに記載の「Liability transfer procedure」との間の矛盾点を解 消する。 3.3.4 各国の動向調査 第 2 回 ISO/TC265 総会に向けて、ヒアリングによる各国の CCS の国際標準化に対する 動向調査を行った。 (1) ノルウェー(GHGT-11 において) ・日時 :2012 年 11 月 21 日 ・出席者:ノルウェー 日本 Statoil 4 名 貯留ワーキンググループメンバー代表と事務局 153 ・貯留分野において先進国であるノルウェーとの間の今後の協力体制構築をねらって、双 方メンバーの最初の顔合わせを実施。CCS の国際標準化に向けて双方協力して推進して いくことを確認した。 ・スコーピングドキュメント・アドホックグループにおいて検討中のスコーピングドキュ メントに関して、各項目に対して検討状況をレビューしながら意見交換を行った。用語 のリスト化に加えてそれらの用語の定義に関してさらなる議論が必要であるとの共通 認識をもった。 ・第 2 回 ISO/TC265 総会に向けて、双方の今後の検討内容を交換していくことで合意。 (2) カナダ(GHGT-11 において) 日時:2012 年 11 月 21 日 出席者:カナダ ISO/TC265 国際幹事、貯留 WG コンビーナ候補、カナダ国内委員会議 長 日本 貯留ワーキンググループメンバー、事務局 ・今後 CCS の国際標準化を中心となってリードしていくカナダ関係者と国内貯留関係者 の顔合わせを実施 ・カナダ側の貯留に関する標準化の推進状況の確認を行った。CSA 標準がリリースされた ばかりで、パブリックに購入可能な状況。 ・日本国内の貯留に関する審議体制を説明。 ・日本としては海域での貯留に軸足を置いて推進していくことを説明。カナダ側が進めて いく NWIP に対して、日本側の NWIP の進め方に関して意見交換実施。カナダの意見 としては、まったく別に開発するのではなく、先行するカナダ側の NWIP を参考にして はとの意見が出た。 ・双方、今後協力して貯留に関する国際標準化を進めていくことで基本的に合意。 (3) 欧州訪問 欧州の主要各国の規格協会や標準化を検討している機関等を訪問し、ISO/TC265 のエキ スパート候補者や関係者と意見交換した。Q&V のコンビーナ投票に関して日本の考え方 を説明し、投票にあたって十分な情報をもとにして判断してほしいと要請した。 訪問先: ①ノルウェー(於:Standard Norway) 日時:2012 年 1 月 16 日 出席者:Standards Norway, Statoil ASA, Gassnova SF, DNV KEMA 活動リソースの問題もあり、海底下貯留(Off-shore storage)を優先している。日本が Q&V のコンビーナをとった場合には、貯留のコンビーナを辞退する点に関して着目し、 154 その場合にはカナダ単独で陸域中心で貯留の標準化がリードされる点を危惧。ノルウェー から、新たにコンビーナへ立候補したいと考えているとの説明があった。 カナダは陸域での貯留に主眼をおいているので、海域での貯留に関してはノルウェーと 日本が協力して進めていくことが必要であるとの共通認識を持てた。 ②ドイツ(於:Federal Institute for Geosciences and Natural Resources) 日時:2012 年 1 月 17 日 出席者:BGR, DIN(German Institute for Standardization), Siemens AG 回収分野は Siemens が主導している。技術志向が強く、Post-combustion Capture のみ ならず、Pre-combustion capture と Oxy-fuel についても早期の標準化を希望している。 Post-combustion capture を最初の標準化対象とすることは両国とも一致した見解だが、 Siemens はその次は Oxy-fuel であると考えている。 ③オランダ(Netherlands Standardization Institute) 日時:2012 年 1 月 18 日 出席者:NEN, Shell International Exploration and Production BV オランダからは、Q&V のコンビーナ選定はオープンな場での議論が必要であるとの意 見が出て、今回の選択投票は棄権するとの表明がなされた。 回収分野における技術については開発段階であり、現時点で標準化するのが果たして Fairかどうかとの考え方である。オランダはCaptureとStorage分野に関心があり、二つの 試験プロジェクト(Rotterdam、Barendrecht)を行っている。しかし、現状ではCO 2 価 格の下落により、CCSへのアクティビティは低調である。 (4) ノルウェー(於:スペイン、マドリッド) 貯留に関する連携に関して、第 2 回 ISO/TC256 総会前日に会合を開催。 日時:2012 年 2 月 3 日 出席者:Statoil、Gassnova、DNV、Standard Norge 日本側貯留関係者 海域貯留に関して協力体制つくりを目的に、ノルウェー代表団と日本の貯留関係者との 事前打ち合わせを実施。 ・ノルウェーは貯留 WG のコンビーナをとりたい意向をもっており、その実現方法に関し て議論。ノルウェーは貯留のコンビーナに遅ればせながら立候補することを考えている。 ・日本からは、日本がコンビーナ、ノルウェーがプロジェクトリーダーとして海域貯留を リードしていく案について提案。 ・海域での貯留に関しては、ノルウェーと日本が協力して標準化をリードしていくことで 基本的に合意。 155 ・カナダ提案の課題点、海域の貯留について議論。 -CSA Z741-12 は、基本的に陸域におけるCO 2 地中貯留を対象としたものであり、こ れが国際標準として採用されると、結果的にISO規格は全体としてバランスを欠い たものとなる。 -CSA Z741-12 は、特に陸域における坑井に関する事項が詳しく書かれている。これ は、北米の標準としてはそれでもよいかもしれないが、北米以外の国の事情を考慮 すると、国際標準としては受け入れがたい。 -海域におけるCO 2 地中貯留では、ノルウェーにおける実績に基づきガイドラインも 作成されているので、それを活用できればよい。 (5) ノルウェー(於:スペイン、マドリッド) 第 2 回 ISO/TC256 総会を受けて、貯留に関して今後の進め方について会合を開催。 日時:2012 年 2 月 6 日 出席者:ノルウェー Gassnova、DNV、Standard Norge 日本側貯留関係者 第 2 回 SIO/TC265 総会の結果、貯留のコンビーナがカナダと日本に決定されたことを 受けて、ノルウェーとの連携で今後の進め方について打ち合わせを実施。 ・カナダ事務局の考えでは、現時点では新たな NWIP の提出は避けたいし、プロジェクト リーダという位置づけも難しい。 ・カナダ提案の NWIP は、DIS から議論を開始し 24 カ月で標準を完成させることになっ ているが、WD から議論を進めていく要があり、開発期間についても 48 カ月くらいが 想定される。 ・参照ドキュメントとして、ノルウェー、豪州のガイドライン並びに日本のガイドライン を追加する必要がある。 ・NWIP の中に、将来複数タスクチームでの作業が必要となるかもしれないという記載を 入れる。 ・第 1 回貯留 WG 会合が開催されるまでに、陸域と海域での貯留に関する相違点を洗い出 す作業を双方で進めていく。 3.3.5 第 3 回国内審議委員会(2013 年 1 月 23 日、於:第 5 東洋海事ビル) 第 3 回の国内審議委員会では、第 2 回 ISO/TC265 総会に向けて、これまでの活動報告、 総会においてプレゼンする NWIP 案並びに総会に向けての対処方針等の審議が行われた。 主な審議事項は次の通りである。 (1) ISO/TC265 各アドホックグループの活動経過報告: 第 1 回 ISO/TC265 総会からこれまでに行われた、リーダーシップ・アドホックグルー プ、スコーピングドキュメント・アドホックグループ、ビジネスプラン・アドホックグル 156 ープの国際での活動報告が事務局より行われ、了承された。 (2) 各ワーキンググループ活動報告と今後の取組み: 回収、輸送、貯留、Q&V・クロスカッティングイッシューの各ワーキンググループの主 査から、これまでの活動報告と今後の取組みが説明され、内容に関して了承された。 (3) 回収の NWIP 案の審議: 回収ワーキンググループ主査より回収ワーキンググループで議論されてきた NWIP に 関して説明。ISO/TC265 総会で報告される各 WG からの NWIP 案についてはまだ正式な ものではないため、資料の構成に重きをおいて説明が行われた。 回収ワーキンググループの NWIP 案については、まず全体構成が分かるものとすること とし、全体の中の Part1 であることが理解できるような作りとすることが決められた。 (4) 第 2 回 ISO/TC265 総会(マドリッド)対処方針の審議: 会議における対処方針について事務局より説明。 ・Q&V は最後までコンビーナ、事務局を取るように臨むことが決められた。 ・Q&V コンビーナの優位性を主張するための準備を行う。 ・Q&V コンビーナ獲得のため、ロビー活動が可能な相手国に対して、できるところは積 極的に行う。(事務局) 以下の 3 つの資料については、既に各委員へは情報提供しているが、第 2 回 ISO/TC265 総会での議題となっているため、内容を確認し不明な点・気付きがあれば事務局へ連絡す ることが確認された。 Report of the TC265 Leadership Ad Hoc Group(通知文 N0016) Draft TC265 Scoping Document (通知文 N0022) Draft TC265 BUSINESS PLAN (通知文 N0024) (5) 第 2 回 ISO/TC265 総会(マドリッド)代表団の審議結果: 事務局より日本代表団メンバーについて説明が行われ、オブザーバー1 名含め計 16 名が 承認された。 (6) その他 委員の任期については、2013 年 3 月 31 日までとなっているため、再任の手続きを行う。 (次回から任期を 2 年とする。3 月以降順次手続きを行うよう考えている。) 次回国内審議委員会は、次年度開始後と考えている。日程については、別途事務局より 相談する。ただし、第 2 回 ISO/TC265 総会の結果並びに課題については、事務局より各 157 委員へメールベースで連絡する。 3.3.6 第 2 回ISO/TC265 総会(マドリッド)にむけた対処方針 第 2 回 ISO/TC256 総会の対処方針を以下に示す。 (1) スコーピングドキュメント アドホックグループにおけるテレカンファレンス等による交渉の結果、日本の主張がほ ぼ反映されている。会合において日本提案を確認する。 (2) ビジネスプラン ビジネスプランについては日本に不利なことにならないように議論に参加。 (3) リーダーシップ投票について 2013 年 1 月 18 日期日の電子投票の結果、Q&V のリーダーシップは未決定。そのため 日本の貯留コンビーナも Q&V のリーダーシップの結果待ちでペンディング。日本として Q&V のリーダーシップ(コンビーナと事務局)を獲得できるようにロビー活動含めて会 合において最善を尽くす。 (4) 回収 WG 回収ワーキンググループの主査(回収 WG コンビーナ)から NWIP 案のプレゼン予定。 回収ワーキンググループから派遣するエキスパートおよび事務局によりサポートする。 (5) 輸送 WG ドイツから NWIP 案のプレゼン予定。ドイツ提案についてはパイプライン輸送が主と思 われる。日本に不利益にならないよう注視するが、詳細は日本に持ち帰り輸送ワーキング グループで議論する。 (6) 貯留 WG カナダからの NWIP 案がプレゼン予定。事前に情報を共有するようカナダと調整してい る。日本案については日本のコンビーナがペンディングのため、事前にノルウェー、カナ ダに提案し情報の共有化とともに会合への提出準備を行う。 (7) Q&VWG 2013 年 1 月 18 日期日の電子投票の結果により、Q&V のコンビーナは決定されておら ず、総会の場で決定される。リーダーシップ投票結果の獲得数においては日本が不利であ り、今後も EU がフランス(中国)のサポートにまわる可能性もあるが、日本としてコン ビーナと事務局を獲得できるように会議以外でのロビー活動含めて全力を尽くす。また会 議においてコンビーナの優位性を主張するためのプレゼン資料の準備を行う。 (8) クロスカッティングイッシューWG フランスからプレゼン予定。提案内容によっては、日本国内のワーキンググループの体 制を再考する必要があるかもしれない。(Q&V・クロスカッティングイッシューワーキン ググループのままとするか分離するか、提案内容を確認し検討する。) 158 代表団としては、総勢 16 名が参加。内訳は団長、回収関係 3 名、貯留関係 2 名、Q&V 関 係 3 名、事務局 6 名、オブザーバー1 名である。 第 2 回 ISO/TC265 総会に先立ち、代表団参加者が 2013 年 2 月 3 日現地宿泊ホテルにて事 前会合を持ち、Q&V のリーダーシップ投票に向けた日本のプレゼン内容のレビュー、貯 留の NWIP 案のプレゼンのレビュー、ノルウェーとの貯留連携の最新状況の確認、ビジネ スプランのドキュメントの修正要求、会議の対処方針、会議における役割を確認した。 3.3.7 第 2 回ISO/TC265 総会(マドリッド) 第 2 回 ISO/TC265 の総会がスペイン、マドリッドで行われた。あらかじめ国際幹事よ り提案された会議のアジェンダは以下のとおり。このアジェンダに、会議の冒頭にノルウ ェーから出された貯留および Q&VWG のリーダーシップに関する新たな提案を審議事項 に加えて実施された。 159 表3.3.7-1 第2回ISO/TC265総会(マドリッド)のアジェンダ 第 1 日(2 月 4 日) 1. 開会 2. ホスト挨拶 3. ホストからのプレゼンテーション 4. 代表団の点呼 5. 議長挨拶 6. 会議のアジェンダの採択(N012) 7. 書記団の指名 8. 第一回会合の議事録承認(N007) 9. 国際幹事からの報告 10. 第一回会合からの活動 11. プロセス-文書、WGの役目、プロジェクト提案 12. スコーピングドキュメントアドホックグループからの報告 13. スコーピングドキュメント 議論と承認 14. ビジネスプランアドホックグループからの報告 15. ビジネスプラン 議論と承認 16. リーダシップアドホックグループからの報告 17. Q&V WGリーダシップのプレゼンテーション 18. Q&V WGリーダシップに関する議論と最終決定 19. 回収WGからの報告と議論 20. 輸送WGからの報告と議論 21. 貯留WGからの報告と議論 22. クロスカッティングイッシューWGからの報告と議論 23. 第一日の終了First day adjournment 第 2 日(2月5日) 24. 一日めの活動の概要 25. 標準の作成プロセスについて 26. 標準の起草 27. 新しいリエゾン組織について 28. TC265に関する課題の報告 28.1 ISO中央事務局からの報告 28.2 ISOTC67からの報告 28.3 ISOTC207&TC207/SC7からの報告 28.4 リエゾンからの報告 160 29. Chair’s Advisory Group (CAG)の議論 30. 戦略についての議論 31. ビジネスプランのアップデート 32. 割り当てと今後の活動 33. 次の会合 34. その他の作業 35. 決議の最終草稿 36. 決議の承認 37. 6日のワークショップの説明 38. 議長による閉会挨拶 39. 解散 (1) 第 2 回 ISO/TC265 総会(マドリッド)概要 日時:2013 年 2 月 4 日,5 日 場所:スペイン規格協会(AENOR、マドリード、スペイン) 参加国: ・P メンバー(全 16 ヵ国):カナダ、中国、フランス、ドイツ、日本、スペイン、英国、 ノルウェー、米国の 9 カ国(豪州、オランダ、スイス、マレーシア、韓国、イタリア、南 アフリカ、欠席) ・リエゾン(全 6 機関):GCCSI、IEA、IEAGHG、EIGA の 4 機関、(CSLF, WRI 欠席) 日本出席者:16 名(オブザーバー含む) (2) 第 2 回 ISO/TC265 総会(マドリッド)での議論 ① 冒頭、ノルウェーから Q&V と貯留のコンビーナの投票は無効で、再度、新たな提案を 受けた後、投票をやり直すべきではないかという提案があり、リーダーシップ・アドホッ クグループの議論のところで、議論することとなった。(決議 1 参照) ② 注)前日のノルウェーとの会議で本提案をする情報が入っていた。ノルウェー側の事務 局との間では本提案が受け入れられる可能性は少なく、日本との協力のもと次のチャンス をねらう話が進んだが、ノルウェーの専門家サイドでは投票の撤回を主張していくとのこ とであった。事務局から WG のコンビーナ、セクレタリアート、メンバーの役割について 説明があった。プロジェクトリーダーとの役割の違いについて質問があり、コンビーナは WG の議事を司り、プロジェクトリーダーはプロジェクトの進行について責任を持つが、 通常、この 2 つは同じであるとの説明があった。ISO/TC265 においては、現状のコンビー ナだけでは対応できない数の規格を策定することになった場合にサブグループを設けて、 161 プロジェクトリーダーを指名することになる。通常、NWIP を策定した人がプロジェクト リーダーとなる。コンビーナやプロジェクトリーダーがその分野でのエキスパートである べきか、の質問に対して、事務局から基本的に議事の運営が中心で、その内容を理解する 必要があるが、必ずしも専門家である必要はない(ただし、基本的な専門知識は必要)と の回答であった。メンバーは P メンバーと A リエゾンが何名でも指名でき、TC による承 認は必要としない。その後、NWIP、IS、TR などについての説明があった。 ③ スコーピングドキュメントについて、長い議論があった。特に、EOR を除外すべきか 否かについて議論したが、EOR の項目を落とし、1 項目目のその他の貯留オプションの中 に 含 ま れ て い る と 理 解 す る こ と で 決 着 し 、 さ ら な る 議 論 は 先 延 ば し と な っ た 。 Legal Liability and permitting に関係する事項は、各国のマターであることから除外され、ビ ジネスプランとの矛盾も解消された。(決議 4 参照) ④ ビジネスプランについては原案がおおむね認められた。今後の ISO/TC265 総会で毎回、 レビューして更新されることになる。特に、プロジェクトが始まれば、そのスケジュール が書き込まれていく。(決議 5 参照) ⑤ リーダーシップ・アドホックグループの活動説明の後、再びノルウェーから①の動議が あり、長時間の議論の末、最終的に、「Q&V と貯留に対して、新たなコンビーナ提案を受 けた後、再投票を実施するか」について多数決投票となった。賛成は、ノルウェー、スペ イン、日本の 3 カ国、英国は棄権、他のカナダ、米国、中国、ドイツ、フランスは提案に 反対し、再投票は否決された。ここで第 1 日が終了した。(決議 6、7 参照) 注)日本の賛成は Q&V を第一に考え、不利な現状を打開するため、Q&V の投票結果を白 紙にし、他国との共同提案を行うことで、有利な展開に持ち込むことを意図した結果であ る。また日本のコンビーナの優先順位は Q&V、貯留であり、今後のノルウェーとの貯留 分野での連携を考慮し、ノルウェーに配慮した面もある。 ⑥ Q&V コンビーナ議論:中仏、日本からの立候補表明と経歴・経験・実施内容の説明。 投票は P メンバーの多数決。欠席した豪州とイタリアによる事前投票も含む。日本:4 票 (日本、ノルウェー、豪州、英国)、中国-フランス:7 票(カナダ、中国、フランス、ド イツ、イタリア、スペイン、米国)で中-仏に決定。この結果、貯留のコンビーナとして、 カナダに加え、日本も承認された。(決議 8 参照) ⑦ リーダーシップ・アドホックグループの投票結果を考慮し、各 Working Group のコン ビーナと事務局が決定された。付録資料 1 ISO/TC265 リーダーシップ 参照) 162 参照。(決議 9 ⑧ Capture Working Group: 東井からNWIP案について発表。ノルウェーから発電所を最 優先としているが、欧州において発電所関係のプロジェクトは危機に瀕しており、世界的 にも建設中の 2 件にとどまっている、天然ガス生産等の回収は何 10 年もの歴史が既にあ り、ここを後にするのはおかしいとの指摘。ドイツからはノルウェー発言への支持を表明 したうえでTRからスタートはよい、これを経て優先順位を考えるべき、環境影響は重要と のコメントあり。英国からは発電所の燃焼後回収はCO 2 ソースが特定されるため、スター トとして適切との日本案を支持する発言。IEAGHGからも企業は回収技術の情報を開示し ないため、性能評価に係る規格の策定は適切、IEAGHGの関連する報告書を共有したいと の好意的な発言。 注)ココンビーナのポストが空いているので、そこを埋めるにはどうしたらよいかを赤井 団長から事務局へ問い合わせた結果、インフォーマルに相手を探し、合意を得た上で、次 回の ISO/TC265 総会で紹介し、合意をとればよいとのこと。 ⑨ Transportation Working Group:ドイツから説明があった。パイプラインと船輸送等 は、温度・圧力条件が大きく異なるため、それぞれについて標準化を検討することが適切 と考えている。また、船舶については、ship(海洋)と barge(河川)を分けて考える。 パイプラインの規格化を先行させ、既存の規格の洗い出し、それらの活用方法を検討する ことを案として提示。バウンダリーの定義が重要と認識。ドイツとしては、提示した Preliminary Work Item(PWI)をベースとし、専門家を募集して 6 月初めに専門家によ る最初のミーティングをベルリンあるいはボンで開催したいとのコメントあり。 ⑩ Storage Working Group:カナダから、マネジメントシステム、サイト選定・特性評価、 リスク、坑井インフラ、モニタリング・検証、圧入完了が主要 6 項目、閉鎖後、炭層や玄 武岩等での貯留、コンテナによる地下貯留、貯留サイトへのCO 2 輸送の 4 つが除外項目と 説明。引き続き、日本からもオフショアの標準化についての考えを表明し、環境影響の重 要性を強調。ノルウェーから、米国のような地中貯留に対する制限の設定に反対、海洋環 境影響評価は未成熟との意見。貯留するCO 2 の成分を規定することの可否については意見 が分かれたが、技術的な視点から何らかの標準を提示するという意見が大勢。オフショア について、IEAGHGからロンドン条約のガイドラインを参照するように助言。カナダ提案 は、最初の段階からDIS(Draft International Standard)をねらったものであり、開発期 間も 24 ヶ月が示されていた。これに対して標準化に向けてさらなる議論が必要であり、 見直しが要求された。 注)ノルウェーとのオフショアにおける標準化協力について調整中。 ⑪ Cross-cutting Working group:フランスから、用語、reportingとcreditingを先行し、 エネルギー消費、リスクを実施した後、CCSレディに取り組むと説明。用語は各WGと協 163 力して取り組むことが確認され、IEAGHGから貯留のリスクにかかる用語集の提供の申し 出があった。Creditingに対しては、日本のほか、GCCSI、IEAGHGが懸念を表明。Report ing については、IEAGHGがIPCCガイドライン決められているとのコメントしたほか、英国 よりCO 2 成分も対象にするよう要望。 ⑫ Q&V Working group:中国から、回収、輸送、貯留、モニタリングに関する様々な国 内外の規格を WG 内で分析して標準化していきたいと説明。日本からフルチェーンを対象 としている IPCC2006GHG Inventory ガイドラインが良いスタートポイントになると指 摘。GCCSI からは CCS はこれから 10 年くらいかけて発展し行くため、現段階で規定を 定める形にすべきではないとのコメント。 ⑬ WG に関する今後の予定:Q&V 以外の 4 つの WG は、準備が整い次第、事務局からエ キスパートの募集がかかる。エキスパートの指名はいつでも可能なため、応募の期限は設 けないが、エキスパートを指名した P メンバー、A リエゾンはできるだけ早く、事務局に 連絡を入れる。なお、プロジェクトの開始には、P メンバー4 カ国以上がエキスパートを 指名することが必要(通常、コンビーナ国からのエキスパートはこの人数にカウントされ ない)。Q&V はコンビーナからの要請があり次第、募集。NWIP 案の承認には、1) 3 カ月 間のレビュー期間ののちに投票、2) PWI を策定して提示し、1 カ月から 6 週間の間にコメ ントを集めて NWIP 案を策定の 2 つの方法がある。各コンビーナから、回収は TR から始 める、輸送と貯留は議論の中で決めていく、Q&V は 2)を、クロスカッティングは 1)を選 択したい意向を表明。(決議 10 参照) ⑭WG のナンバリング:ISO ルールとして、WG に番号を振る必要があり、その番号を以 下のように決めた。WG1:回収、WG2:輸送、WG3:貯留、WG4:Q&V、WG5:クロ スカッティング。(決議 11 参照) ⑮ Chair’s Advisory Group (CAG):前回 ISO/TC265 総会で話があったように、各 P メン バーからの代表者 1 名による議長を支援するグループを設置する。各 WG の進捗状況に応 じて、次回 ISO/TC265 総会のアジェンダや進め方をどうするかを、電話会議により話し 合う。P メンバーは、代表者を 1 カ月以内に事務局にメールで連絡する。(決議 12 参照) ⑯ 次回 ISO/TC265 総会の予定:9 月後半に中国・北京で 2 日間開催の予定。コンビーナ は、総会前後に WG の会議を開催したい場合、事務局に連絡する。 (3) 第 2 回 ISO/TC265 総会決議事項 164 会議における審議で出された決議(Resolution)は以下のとおり。 決議 1:アジェンダの採用 ノルウェー代表団から提案された Q&VWG と貯留 WG のリーダーシップに関する項 目を追加したアジェンダを採用した。 決議 2:議事録の承認 2012 年 6 月 5,6 日に開かれた第 1 回 ISO/TC265 会合議事録を承認。 決議 3:ドラフティング委員会の指名 フランスの Laurence Thomas と英国の Jonathan Albrow をドラフティングコミッ ティとして指名。 決議 4:ISO/TC265 スコーピングドキュメント 会合で編集したスコーピングドキュメントを承認。 決議 5:ISO/TC265 ビジネスプラン 会合で編集したビジネスプランを承認。 決議 6:Q&VWG と貯留 WG のリーダーシップに関するノルウェーからの提案をどう のように決議するかについて 以下のノルウェーから提案について多数決投票で決める。「Yes/No」で投票する。 「Q&V ワーキンググループと貯留ワーキンググループのリーダーシップに関して、 新しい立候補を受け入れ、選挙をもう一度行う件」 決議 7:ノルウェーの提案に対する投票 決議 6 に従い行われた投票の結果、ISO/TC265 は Q&VWG と貯留 WG のリーダー シップに関するノルウェーからの提案を承認しないことに決定。 決議 8:Q&VWG のリーダーシップに関する選挙 ISO/TC265 は多数決で決定することになり、投票の結果 Q&VWG について中国がコ ンビーナと事務局、フランスがココンビーナとして決定。 決議 9:回収 WG、輸送 WG、貯留 WG、Q&V、クロスカッティングイシューWG アドホックグループの投票結果を考慮し、下表のとおり決定した。 決議 10:ISO/TC265 各 WG のエキスパート参加要請 回収 WG、輸送 WG、貯留 WG、クロスカッティングイシューWG へのエキスパート の参加要請を事務局よりできるだけ迅速に出すように要請された。 決議 11:各 WG への番号の割り当て 各ワーキンググループに以下のような番号を割り当てる。 WG1:回収 WG WG2:輸送 WG WG3:貯留 WG WG4:Q&VWG WG5:クロスカッティングイシューWG 165 決議 12:ISO/TC265 Chair’s Advisory Group の指名の要請 P メンバーに Chair’s Advisory Group への代表を指名するように要請。 決議 13:ホストとスポンサーへの感謝 AENORとSpanish Technological Platform For CO 2 に対して、会合の開催と後援、 またすばらしい受け入れとサポートに感謝の意が示された。 表 3.3.7-2 ISO/TC265 リーダーシップ 番号 WG名称 コンビーナ WG1 回収WG Japan Japan WG2 輸送WG Germany Germany WG3 貯留WG Canada Japan Canada WG4 Q&VWG China France China France China France WG5 クロスカッティン グイシューWG ココンビーナ 事務局 3.4 第 2 回ISO/TC265 総会(マドリッド)以降の活動 第 2 回 ISO/TC265 総会を受けて、ワーキンググループ別に今後の対応を協議した。今 後各ワーキンググループがそれぞれどのように取りくんでいくか、各 WG に対してエキス パートの選出、国内のサポート体制等について議論を行った。特に回収 WG のコンビーナ と事務局、貯留 WG のコンビーナとして、日本が今後それぞれの WG においてリーダーシ ップをどのように発揮していくかが重要である。 3.4.1 各ワーキンググループ会合 (1) 貯留 第 6 回貯留ワーキンググループ会合(2013 年 3 月 13 日、於:第 3 東洋海事ビル) ① 第 2 回 ISO/TC265 総会概要報告 ・ISO/TC265 総 会 の決 議事 項等 の報 告。 貯 留 WG につ いて は、 コン ビー ナは カナ ダ人 (Whittaker 氏)、ココンビーナは日本の楠瀬委員、事務局はカナダ規格委員会と決定。 ② カナダから提出された貯留に関する NWIP 案の紹介 ・カナダの NWIP 案は、Draft International Standard(DIS)で、検討期間が 24 カ月で 166 提案されているが、日本はこれには反対の立場。 ・カナダの NWIP 案は、実質的に陸域を対象としたものであることは明らか。 ・海域における貯留という観点からの日本の提案の概要説明も併せて実施。 ③ ノルウェーとの協力関係 ・2013 年 1 月以降のノルウェーとの連携について概要説明。 ④ 貯留 WG 事務局およびノルウェーに対する意見書(案)の検討 ・日本側から提示する参考資料については、その位置づけや性格を追記。 ⑤ 貯留 WG へのエキスパートの派遣 ・エキスパートの登録人数と必要な分野については、コンビーナとココンビーナとの間で 協議のうえ、TC265 事務局を通じてエキスパートの募集を早急に行うよう要請。 ⑥ 貯留ワーキンググループ内の新規タスクグループの立ち上げ ・タスクグループ全体のリーダーは、平岡副主査とする。 ・タスクグループの中に、2 つの「サブグループ」を設置。1 つは、海域における貯留と いう観点から貯留全般に関する検討を行うグループ、もう 1 つは、坑井関係を中心とし た貯留技術に関する検討を行うグループ。 ・メンバー構成に関し、メンバーの専門分野の偏りをできるだけ避ける。 ⑦ 今後のスケジュール ・現時点では、次回 TC 総会の開催の概略日程・場所が、本年 9 月後半・北京ということ のみが確定。 (2) 輸送 第 3 回(2013 年 3 月 19 日、於:RITE 東京事務所会議室) ① ISO/TC265 第 2 回総会決議事項報告 輸送 WG については、コンビーナはドイツ人、事務局もドイツの機関で DIN(Deutsches Institut fur Normung e.V.),DVGW(German Technical and Scientific Assocication for Gas and Water)(Germany)と決定された。 ② ドイツから提出された貯留に関する NWIP 案の紹介 第 2 回 ISO/TC265 総会ではドイツから PWI(Preliminary work item)が報告された。 パイプライン輸送と船舶、鉄道、道路輸送で規格化を進める。具体的な議論はこれからだ が、パイプラインが先行し議論されると考えられる。 ③輸送 WG への対応について 輸送 WG からエキスパート募集の案内があり、輸送ワーキンググループ主査および副主 査の両名をエキスパートとして登録することとした。合わせて事務局(RITE)からも 1 名登録する。なお、第 1 回輸送 WG 会合は、2013 年 6 月 11 日、12 日にドイツ(ボン) で開催される。 167 3.4.2 Chair’s Advisory Group Chair's Advisory Group とは議長に助言を行うための組織であり、第 2 回 ISO/TC265 総会の決定に従って、国際幹事からのPメンバー国から各1名メンバー選出要請があり、 日本からメンバーを1名選出し、国内審議委員会委員長の了解を得た上で国際幹事へ届け 出た。 3.4.3 その他の国内審議委員会活動 ISO/TC265 の国内審議委員会は設立から約 1 年を経過する。現状の委員(国内審議委員 会委員およびワーキンググループ委員)の任期が 2013 年 3 月末までであることから、委 員就任期間の空白が生じないように、委員の更新作業を行った。また、審議委員会委員に ついて、新たに参加を希望する団体との協議も行った。 また、国内審議委員会およびワーキンググループ委員への連絡、資料送付はこれまで電 子メールで行ってきたが、ISO/TC265 ドキュメントや委員会等資料が常時閲覧できること が望ましいため、RITE のホームページ上に ISO/TC265 に関するページを設け、国内審議 委員およびワーキンググループ委員限定でアクセスできるようなシステムを整備し、その 運用を開始した。また、標準化活動の紹介を行う一般向けのページも設置し、CCS の標準 化に対する社会の理解を深めるために、本標準化活動に対する情報提供を行った。 3.5 関連するその他の調査活動 CCS の国際標準化に向けて、関連する以下の調査活動を行った。 3.5.1 専門家や経験者等からのコンサルテーション (1)第1回 ISO/TC265 総会の結果を受けて 第 1 回 ISO/TC265 総会の終了後、会議での議論内容および決議内容の対応につき、 (財) 日本規格協会に助言を求めた。さらに、ISO の現コンビーナである経験者から、NWIP の 項目に関する助言や NWIP サンプルとして経験者自身が過去に作成したNWIPを入手 した。またコンビーナ獲得のためのポイントについて、事務局とのコンタクト方法、パー トナーとなる P メンバーとの調整方法、地域バランス(欧州、アジア、北米)、及び各国 の動向調査の必要性についての助言を得た。これらの助言や情報は、第 2 回 ISO/TC265 総会に向けて貯留ならびに回収の NWIP 検討をはじめコンビーナの獲得活動、各ワーキン ググループの活動、ISO/TC265 の国際幹事との間の調整作業の参考とした。 (2)リーダシップに関する各国の意思表明を受けて リーダシップに関する各国の意思表明の状況を確認し、(財)日本規格協会並びに ISO 現 コンビーナである経験者に、Q&VWG に関する中国/フランスの共同提案についての対応 策含めてコンビーナの獲得方法についての助言を得た。これらの助言を参考に、リーダシ ップアドホックグループでの議論及びその後の投票に対する活動に臨んだ。 (3)第2回 ISO/TC265 総会の結果を受けて第 2 回 ISO/TC265 総会(マドリッド)に 168 おいて、回収ワーキンググループのコンビーナと事務局及び貯留のコンビーナが日本に決 定した。今後のワーキンググループ立ち上げ、ワーキンググループメンバー招集から第 1 回ワーキンググループ開催や運営に至る注意点やノウハウについて、 (財)日本規格協会に 助言を求めるとともに、ISO の現コンビーナである経験者に現状を説明の上、助言を得た。 ・NP からステージから開始する場合と PWI ステージから開始する場合の違い ・IS、TS、PAS、TR を目標にする場合のプロセスの違い これらについての検討と戦略つくりが必要である。この調査で得た情報、ノウハウを今後 の各種活動における参考とする。 なお、コンビーナが正式に決まったので、今後は(財)日本規格協会からコンビーナ活 動に対する正式な支援を受けることが可能になった。 3.5.2 文献調査 本報告では、CCS を構成する分野のうち、回収を除く分野を対象として行った調査結果 について報告する。CCS の国際標準化という観点から、これまでに公表された各種文献を 概観すると、対象分野の点で貯留に関するものが相対的に大きな比率を占める。このため 結果的に、調査対象となったものも貯留関係のものが主体をなす。加えて、貯留に関して は、日本においては基本的に海域における貯留が前提となっていることから、文献調査も 海域における貯留という視点を重視して行った。 輸送に関しては、主な輸送手段としてパイプラインと船舶があるが、このうちパイプラ イン関係を中心に調査を行った。 Q&V およびクロスカッティング関連では、リスクマネジメントに関して調査を行った。 以下に、輸送、貯留、Q&V およびクロスカッティングの順に調査結果の概要を述べ、 最後に今後の課題点を挙げる。 (1) 輸送 CO 2 輸送に関するISO標準化の検討にあたり、パイプライン関係を中心に調査を行った。 CO 2 輸送に関するガイダンスとしては、DNVが公表したCO 2 パイプラインの設計および運 転に関するもの(文献 1)が挙げられる。これは、CO2PIPETRANSと呼ばれるプロジェ クトのフェーズ 1 の成果物である。内容は、特にパイプラインによるCO 2 輸送に関連した リスクおよび不確実性を管理するためのガイダンスとなっており、CO 2 輸送用パイプライ ンの概念(コンセプト)開発、設計、建設、運転に関する基準を示している。内容的には、 既存のパイプラインの基準の補足として書かれており、陸上パイプラインおよび海底パイ プ ラ イ ン の い ず れ に も 適 用 可 能 な も の と な っ て い る 。 さ ら に は 、 既 存 の パ イ プ ラ イ ンを CO 2 輸 送 用 に 転 用 す る 場 合 の 適 格 性 再 評 価 に つ い て も 言 及 さ れ て い る 。 現 在 、 CO2PIPETRANSプロジェクトのフェーズ 2 が進められており、その成果が期待される。 CO 2 輸送用パイプラインに関する指針等としては、このCO2PIPETRANSプロジェクト 169 の成果物であるガイダンスが世界で初めてのものである。なお、石油・天然ガス輸送用の パイプラインに関しては、すでにISO規格が公表されている。 なお、船舶輸送に関しては、IMO 基準等が参考となるが、本年度は調査不十分のため、 報告は控える。 (2) 貯留 貯留に関しては、カナダが ISO/TC265 の事務局を務めることが決まっていたことに加 え、カナダが貯留のコンビーナに立候補表明をしていたこと、さらには、カナダ規格協会 が貯留に関する規格の発行準備を進めており、それが NWIP 案のベースになる可能性が非 常に高いと事前に想定していたことから、カナダの規格 CSA Z741-12 のドラフト版を入手 した段階から、その内容の検討を進めていた。このような事情を踏まえ、カナダの規格 CSA Z741-12 に関する調査結果を最初に示す。 次に、ISO/TC265 の関連分野の一つである ISO/TC67 の規格は、石油・石油化学および 天然ガス工業用材料および装置に関する ISO 規格であり、調査した範囲内でもその数が 140 余りと非常に多いことから、項目を設けて調査結果の概要を記す。 CCS に関するベストプラクティスマニュアルや指針については、ISO 標準化の検討に当 たっては必ず調査しておく必要がある。それらは、これまでに数多く発行されているもの の、それらの多くが貯留に関するものである。本報告では、それらのうち、ISO 標準化の 観点から特に参考となるものについて、項目を設けて調査結果の概要を記す。 CCS のうち特に貯留に関しては、ISO 標準化の検討にあたり、法規制関係も含め、北米 とともに欧州の事情も十分考慮したものでなければならないとの考えに基づき、欧州のう ち特に EU の事情に関して項目を設けて調査結果の概要を記す。 海域における貯留という観点から見ると、ロンドン条約等の法規制は避けて通れないた め、項目を設けて調査結果の概要を記す。 ① カナダの規格 CSA Z741-12 貯留に関するカナダの CSA 規格 CSA Z741-12(文献 2)が 2012 年 11 月に発行された。 同規格は、CCS 関係で公表された類似のベストプラクティスマニュアルや指針とは異なり、 初めて「規格(standard)」と称して公表されたものである。同規格は、カナダおよび米 国が共同で開発した規格であることから、両国の事情に適合したものとなっている。その 内容は、貯留に関する技術的な分野のほか、マネジメントシステムやリスクマネジメント も含んでいる。適用範囲の点では、陸域、海域の両方に対応しているかのような記載も認 められるものの、実際には海域における貯留という点では、不十分であると同時に、一方 で過剰と考えられる点も認められる。海域における貯留の場合、例えば、不十分な点とし ては、海洋環境影響評価(モニタリングも含め)や海洋掘削リグを用いた坑井掘削作業が 挙げられる。また、過剰と考えられる点としては、貯留サイトが海岸線から遠く離れた沖 170 合にある場合、地下水の保全のための配慮は特に考慮する必要はない。 CSA Z741-12 では、特に坑井関係に関して条件が細かく規定されていることが指摘でき る。その理由の一つとして、地下水の保全という考え方が挙げられる。地下水の保全に関 し て は 、 米 国 環 境 保 護 庁 ( Environmental Protection Agency、 EPA) の Underground Injection Control(UIC)プログラムを考慮したものである。このUICプログラムでは、 2010 年にCO 2 地中貯留に関係する坑井を新たにクラスVI坑井とし、様々な条件が規定さ れた(文献 4)。なお、このUICプログラムのクラスVI坑井に関する作業要件の中には、圧 入圧力は圧入層の破壊圧の 90%を超えてはならないことも含まれている。 CSA Z741-12 の適用範囲についても議論が必要である。特にCO 2 -EORに伴う貯留も適 用の対象となっていることに対し、塩水層(帯水層)への貯留とはかなり異なる点が認め られることから、今後、ISO/TC265 貯留WGの中でも議論されるべき課題の一つである。 第 2 回 ISO/TC265 総会の直前に、カナダは CSA Z741-12 を基に、NWIP 案を提出する に至った。同規格は、それが作成されたカナダ・米国の事情、すなわち、主として陸域に おける貯留には適合したものとなっている。しかし、同規格は、上述のように、海域にお ける貯留に対しては内容的に不十分であったり過剰であったりすることを踏まえると、国 際規格という観点からは、そのまま ISO の規格とすることは難しいと考えられる。 ② ISO/TC67 規格 ISO/TC67 の規格のうち、標準化の検討にあたって比較的参考となりうると考えられる ものについて具体的な内容の調査を行った。TC67 規格は、石油・石油化学および天然ガ ス工業用材料および装置に関するISO規格であり、CO 2 の輸送および貯留に適用可能なも のも数多く含むと考えられる。ただし、輸送に関してはパイプラインのみが取り扱われて おり、船舶は取り扱われていない。このため、CO 2 の輸送および貯留に関するISO標準化 の検討にあたり、既往の規格の適用が可能であれば、それを参照することとし、新たに同 様の規格を作成することは避けるべきとの考えに基づき、TC67 の規格について調査を行 った。 TC67 の中には、TC67 の事務局が直接管轄するもののほかに、SC が 2 から 8 まであり、 それらはそれぞれ以下の内容を対象としている。 ・TC67 事務局管轄:材料、ライフサイクル原価計算等 ・SC2:パイプライン輸送システム ・SC3:掘削・仕上げ流体と坑井セメント ・SC4:掘削・生産装置 ・SC5:油井鋼管(ケーシング、チュービング、ドリルパイプ) ・SC6:処理装置および同システム ・SC7:海洋構造物 ・SC8:極地オペレーション 171 本年度は、上記のうち SC8(極地オペレーション)以外のものを調査対象範囲とし、本 年度の調査で実際に入手した規格(文献 5~34)について、以下にそれぞれコメントを記 す。 TC67 事務局: ・ISO 15156-1:2009: 硫化水素含有環境での 材料選択法、井戸・パ イプライン等。CCS でも硫化水素を含む場合には適用。 ・ISO 15156-2:2009:同上。 ・ISO 15663-1:2000:石油・天然ガス工業におけるライフサイクル全体のコストの算出方 法。貯留のコスト算出と関係。考え方は一般的。 ・ISO 15663-2:2001:同上。 ・ISO 15663-3:2001:同上。 ・ISO 20815:2008:石油・天然ガス工業への生産保証プログラム(PAP)の適用。考え方 は一般的。 ・ISO 28460:2010:LNGを船から港湾設備に移し替える際の設備と作業に関する要求事 項。CO 2 の船輸送で関係。 SC2: ・ISO 3183:2007:PSL1、PSL2 の2つの製品スペックの鋼製パイプの製造のための要求 事項 ・ISO 13623:2009:石油・天然ガス工業における輸送パイプラインシステムの設計、材料、 建設、試験、操業、廃棄方法を既定。ガスのカテゴリーCがCO 2 となっている。 ・ISO 14313:2007:ISO13623 の要求事項に合うように、各種バルブの設計、製造、テス ト方法、文書化のための要求事項と推奨事項。 ・ISO 14723:2009:ISO14313 を基に、海底パイプラインバルブに限定した要求事項を記 述。 SC3: ・ISO 10426-1:2009:坑井用の6クラスのセメントの化学・物理的要求事項とテスト方法 を既定。 SC4: ・ISO 10417:2004:地下の安全弁についての要求事項。→特にCO 2 使用時の要求事項があ れば制定すべきか。 ・ISO 10423:2009:APIのSpec6Aがベース。ウエルヘッドとクリスマスツリーについて 既定したもの。→特にCO 2 使用時の要求事項があれば制定すべきか。 ・ISO 13628-1:2005:海中生産方式についての詳細が Part15 まで記述されている。特に CCS に特化したときの変更点があれば、記述することになる。ノルウェーが検討項目に あげている。 ・ISO 13628-2:2006:同上。 172 ・ISO 13628-3:2000:同上。 ・ISO 13628-4:2010:同上。 ・ISO 13628-5:2009:同上。 ・ISO 13628-6:2006:同上。 ・ISO 13628-11:2007:同上。 ・ISO 13628-15:2011:同上。 SC5: ・ISO 10405:2000:この部分は CCS も共通。 ・ISO 11960:2011:本部分に関しては CCS も共通。 SC7: ・ISO 19900:2002:本部分に関しては CCS も共通と考えるが、特に CCS で変わる部分が あれば記述要。ノルウェーが検討項目に挙げている。 ・ISO 19901-3:2010:同上。 ・ISO 19901-6:2009:本部分に関しては CCS も共通と考えるが、特に CCS で変わる部分 があれば記述要。 ・ISO 19901-7:2005:同上。 ・ISO 19902:2007:同上。 ・ISO 19903:2006:同上。 ③ 貯留に関するベストプラクティスマニュアル、指針等 米国では、エネルギー省(DOE)の国立エネルギー技術研究所(NETL)からCO 2 地中 貯留に関するベストプラクティスマニュアルが 7 件公表されている。このうちモニタリン グ・検証・定量化に関するものは、2009 年に初版(文献 39)が公表され、2012 年に改訂 版(文献 45)が公表された。同改訂版で注目すべき点として、海域におけるモニタリング の例としてノルウェーのSleipnerの事例が採り上げられていることである。海域における 貯留という観点から見ると、初版では海域におけるモニタリングについてはまったく言及 されていなかったことから、ベストプラクティスマニュアルとしては大きな前進と評価す ることができる。改訂版で特徴的な点として、米国環境保護庁の許認可を得るうえでの要 求事項、すなわち、UICプログラムのクラスVI坑井関連の要求事項に関して、詳細な解説 がなされていることが挙げられる。また、米国内のSECARB等のプロジェクトにおけるモ ニタリング・検証・定量化の状況についても、初版に比べて内容が大幅に充実している。 また、貯留システムおよび坑井管理に関するもの(文献 46)では、坑井掘削の方法など についても図解入りの解説がなされているが、これを海域における貯留という観点から見 ると、あくまでも陸上での作業を念頭に置いたものであることがわかる。すなわち、陸上 における掘削装置類の配置等が示されているが、これらはすべて陸上での作業が前提とな っている。 173 以上のほかに、CO 2 地中貯留のためのリスク分析およびシミュレーションに関するもの ( 文献 43)もあるが、この場合のリスク分析は貯留に関するものに限られている。なお、 この補足資料(文献 44)として、米国エネルギー省のプロジェクトであるRegional Carbon Sequestration Partnershipにおけるシミュレーションおよびリスク 評価に関するケース スタディを集めたものも公表されている。 欧州では、2008 年に公表されたSACSプロ ジェクトのベストプラクティスマニュアル(文 献 35)がまず挙げられる。これは、貯留に関するもので、2003 年にSleipnerプロジェク トを対象として作成されたが、その後改訂を重ね、2008 年に発行されたものが最新版であ る。このマニュアルでは、Sleipner(ノルウェー海域)、Kalundborg(デンマーク陸域・ 海域)、Mid Norway(ノルウェー海域)、Schwarze Pumpe(ドイツ陸域)、Valleys(英国 海域)を対象としてそれぞれケーススタディ結果が取りまとめられている。初期のSACS お よ び SACS2 プ ロ ジ ェ ク ト で は Sleipner の み が 対 象 と な っ て い た が 、 そ の 後 の CO2STOREプロジェクトでは、対象サイト・地域が拡大され、Sleipner以外の 4 地域が検 討対象に加えられている。それらのサイト・地域の技術検討結果自体は評価できるものの、 残念ながら現在、実際にCO 2 地中貯留が行われているのはSleipnerのみである。 CO 2 地中貯留プロジェクトの流れの中で、許認可への対応を念頭に置いて、貯留サイト お よびプロジェクトの選定および適格性評価のための系統的なアプローチを示した指針と して、DNVはCO2QUALSTOREを公表した(文献 37)。同指針では、サイト・スクリーニ ング、サイト評価・選定、サイト閉鎖にあたっての適格性評価において、リスクおよび不 確実性を考慮すべきであると提案している。なお、この指針では、地質モデリング、CO 2 挙動予測シミュレーション、弾性波探査、坑井掘削などの方法・手順については言及され ていない。 DNVは、上 記CO2QUALSTOREに続き、CO2WELLSを公表した(文献 38)。これは、 貯 留サイトにある既存坑井のリスクマネジメントに関する指針であり、CO 2 地中貯留に先 立ち、既存坑井の健全性の評価を行う際に用いられる。このため、この指針は、プロジェ クトのライフサイクル上では、サイト・スクリーニングおよびサイト評価・選定の段階で 適用されるものである。CO2WELLSは、リスクマネジメントに関するISO 31000 規格と DNVによる技術適格性評価に関する指針に示された原則に基づいて作成されている。ISO 31000 の枠組みに従い、サイト・スクリーニングではリスクマネジメントのうちリスク評 価、サイト評価・選定ではリスク対応にそれぞれ対応する。サイト・スクリーニングにお いては、既存坑井の健全性評価を行うことにより、貯留サイトの候補の絞り込みを行う。 サイト評価・選定においては、既存坑井の適格性評価を行うことにより、貯留サイトの選 定と既存坑井に対するエンジニアリング・コンセプトを決める。 また、既往のベストプラクティスマニュアルの比較評価結果が CO2CRC により公表さ れ ている(文献 36)。この資料は、第三者の立場から既往のベストプラクティスマニュア ルの概要を簡潔に評価しており、ベストプラクティスマニュアルの利用者にとって有益で 174 ある。ただし、公表されたのが 2010 年であることから、残念ながら、最新のベストプラ クティスマニュアルについては評価対象に含まれていない。 ④ EU の事情 ISO 標準化を 進めるにあたっては、国・地域の事情を踏まえた検討が必要となる。この 点 で 、 カ ナ ダ お よ び 米 国 を 含 む 北 米 の 事 情 に つ い て は 、 上 記 「 ① カ ナ ダ の 規 格 CSA Z741-12」により、特に貯留に関する事情については把握できる。世界の中では、北米の ほかに、欧州や豪州の勢力が大きいと考えられる。このため、まず欧州の事情を見ておく。 カナダおよび米国の北米に対し欧州では、CCSに関する法規制として 2009 年 4 月に採 択 され、同年 6 月に発効した、EU CCS指令(文献 47)がある。その解説資料という位置 づけで、4 種類のガイダンス文書(文献 48~51)が公表されている。EU CCS指令は現在、 少なくともEU加盟国にとっては、CO 2 地中貯留プロジェクトの計画・実行にあたって基 本となる法規制であることから、貯留に関するISO標準化の検討にあたっては必ず参照し なければならない。一方、4 種類のガイダンス文書は、法的な拘束力を持っていない。こ れらの 4 種類の文書の内容は、次のとおりである。すなわち、Guidance Document 1 では CO 2 地中貯留のライフサイクルにおけるリスクマネジメント、Guidance Document 2 では 貯留コンプレックスのキャラクタリゼーション、CO 2 流の組成、モニタリング、是正措置、 Guidance Document 3 では責任移管、Guidance Document 4 では財務上の保全、財務的 メカニズムが、それぞれ記載されている。このことから、この一連の文書には、物理探査 や 坑 井掘 削 に 関 す る内 容 が 含ま れ て い な い。 ま た 、ISO標 準 化 の観 点 か らは 、 Guidance Document 4 にある財務に関する内容はあまり関係ないと考えられる。 EU CCS 指令で注目すべき点の一つは、圧入終了後の責任移管までの期 間が少なくとも 20 年間と定められていることである。これに対し、米国の UIC プログラムのクラス VI 坑井に関する規定では、責任移管に関して明確な規定はされていないものの、50 年間のモ ニタリングが要求されていることから、責任移管までの期間は、事実上 50 年間と解釈で きる。このように、両者の間で考え方が異なることから、ISO 標準化にあたっては議論に なる可能性が高い。 ⑤ 海域における貯留に関係する法規制 CCSの標準化にあたり、海域における 貯留を対象とする場合、輸送手段の選択肢の一つ と して船舶が加わることにより、陸域の場合に比べ、一般に輸送のウエイトが大きくなる。 このことから、輸送も含め、海域を対象とした貯留という観点から言えば、まず考慮しな ければならないのがロンドン条約である。ロンドン条約は、1972 年に採択され、1975 年 に発効したが、その後 1996 年改正され、同議定書が採択された。1996 年議定書は 2006 年に発効したが、その後 2007 年には、同議定書の附属書Iが改正された。この 2007 年の 付属書Iの改正を受け、日本では海洋汚染防止法が改正されたという経緯があり、現在、国 175 内の海域においてCO 2 地中貯留を実施する場合、この海洋汚染防止法が適用されている。 このように、海域における貯留の場合、ロンド条約および同 1996 年議定書への対応を抜 きにして事業を進めることはできない。ロンドン条約および同 1996 年議定書に関連して、 国際海事機構(International Maritime Organization、IMO)のウェブサイト上には、各 種情報が公開されている(例えば、文献 55)。 加えて欧州では、オスパール条約(文献 56)による法規制がある。同条約は、北東大西 洋 の海洋環境保護のための条約で、ベルギー、デンマークなど北東大西洋に面する 15 ヵ 国とEUが締約国となり、1992 年に採択され、1998 年 3 月に発効した。これは、オスロ条 約(1972)とパリ条約(1974)による海洋汚染防止を確実に実施するために 1974 年に設 置されたオスパール委員会の活動が基礎となっている。オスロ条約は船舶および航空機か らの投棄による海洋汚染の防止に関するもの、一方、パリ条約は陸地汚染源による海洋汚 染の防止に関するものであり、オスパール条約はそれらに代わるものである。オスパール 条約は、予防原則 という考え方を、締約国の一般義務として取り入れた法的拘束力を有す る最初の枠組みでもある。 豪州には、2006 年に成立し た Offshore Petroleum and Greenhouse Gas Storage 法 (Offshore Petroleum and Greenhouse Gas Storage Act 2006、文献 52)があるが、その 後、同法のもとで以下の規則が制定された。これらはすべて連邦政府の管轄下にある。 ・Offshore Petroleum and Greenhouse Gas Storage (Safety) Regulations 2009 (Amendement 2011) ・Offshore Petroleum and G reenhouse Gas Storage (Environment) Regulations 2009 (Amendment 2011) ・Offshore Petroleum and Greenhouse Gas Storage (Management of Greenhouse Gas Well Operations) Regulations 2010 ・ Offshore Petroleum and Greenho use Gas Storage (Greenhouse Gas Datum) Regulations 2010 ・ Offshore Petroleu m and Greenhouse Gas Storage (Resource Management and Administration) Regulations 2011 ・ Offshore Petroleum and Greenhou se Gas Storage (Greenhouse Gas Injection and Storage) Regulations 2011 こ れらのうち CCS の観点から 最も関連が強いと考えられる、温室効果ガスの圧入およ び貯留に関する規則(文献 53)については、以下の 6 つの要素から構成されている。 ・重大な悪影響を引き起こす重大なリスクのテスト ・貯留対象層の明示 ・温室効果ガスの圧入 および貯留に関するサイト計画 ・事故の報告 ・撤去 176 ・安全宣言 これらの要素 のうち温室効果ガスの圧入および貯留に関するサイト計画が、本規則の中 核をなす。 (3 ) Q&V およびクロスカッティングイッシュー Q&V関係では、例えば、CO 2 流の組成の問題が あるが、この点で、CO 2 パイプラインに 関して DNVが公表 した CO 2 パ イプラ イン の設 計およ び運転 に関す る ガイダ ンスは 参考 に なる。 クロスカ ッティング関係では、リスクマネジメントに関する指針等の調査を行った。リ スクマネジメントに関する指針等についてはいくつか公表されており、例えば、米国 DOE/NETL によるベストプラクティスマニュアルのシリーズの中にもリスク分析に関す るものが含まれている。ただし、米国 DOE/NETL のリスク分析に関するものは、対象が 貯留に限られている。 また、上記の DNV の CO2WELLS もリスクマネジメントに関するものであるが、坑井 関係に限られている。 DNVが 2013 年 1 月に 公表したCO2RISKMAN(文献 57)は、CO 2 の回収、輸送、貯留 の 業 界 向 け に 開 発 さ れ た ガ イ ダ ン ス で あ り 、 す べ て の 関 連 す る ハ ザ ー ド を 対 象 と し た、 CCSに お け るCO 2 流 の 大 規 模 ( 重 大 ) 事 故 ハ ザ ー ド の 管 理 に 関 す る ガ イ ダ ン ス で あ る。 CO2RISKMANは構造的に 4 段階のレベルに分けて文書化されており、レベル 1 では全体 の要旨、レベル 2 ではレベル 3 および 4 の概要がそれぞれ記されている。レベル 3 では一 般的なガイダンスとして、大規模事故ハザードの管理、CCSチェーンの概要、CO 2 の特性 および挙動、CO 2 ハザード管理の側面、CCSにおけるCO 2 の一般的なハザード等について 記載されている。レベル 4 ではCCSチェーンの主要なリンクとして、CO 2 回収施設、陸上 のパイプライン、海底パイプライン、坑井、海域の圧入施設、中間貯蔵施設、CO 2 輸送船 について、それぞれ個別にリスクマネジメントのあり方が示されている。 本年度は、上記のうちレベル 3 のガイダンス文書を入手したので、その概要 を述べる。 レベル 3 のガイダンス文書は、上述の内容から構成されており、CCS チェーン全体にわた って大規模事故ハザードの管理で用いられる一般的な素材を示している。以下に、主要な 項目別に概要を示す。 大規模事故ハザードの 管理は、リスクマネジメントに関しては ISO 31000 に従っており、 同規格に示されているリスクマネジメントの原理、枠組み、プロセスの関係を基本とする。 ハザードの管理にあたってのハザードの特定方法やリスク評価の方法、リスク対応におけ るリスク低減の選択肢の選定および実行のためのステップなどについて述べられている。 また、例えば、リスク低減対策として、ALARP(As Low As Reasonably Practicable)と いう概念、すなわち、 「合理的に実行可能な限りできるだけ下げる」という考え方が示され ている。 177 CCSチェーンの概要では、CCSチェーンのリンクとしてCO 2 回収施設、陸上パイプライ ン、CO 2 圧入施設等について述べられており、そのほかにCO 2 流の組成についても述べら れている。 CO 2 の特性お よび挙動では、CO 2 の物性のほか、人体や環境への影響についても示され ている。 CO 2 ハザ ード管理の側面では、大量のCO 2 流を取り扱う際に発生しうる重要な側面とし て、パイプライン等の内部の腐食やCO 2 の毒作用などについて概要が述べられている。 CCSにおけるCO 2 の一般的なハザードでは、3 つの段階に区分したうえで、一般的なハ ザード、原因、結果についてまとめられている。3 つの段階は、初期の封じ込め喪失の事 象(Initial Loss of Containment Events)、即時エスカレーションハザード(Immediate Escalation Hazards)、事象発生後の結果(Post Event Consequences)をそれぞれ示す。 ハザードの特定に関するガイダンスは、CO 2 流のハザードのを特定するためのプロセス において補助的な役割を果たすという位置づけになっている。封じ込めの喪失の潜在的な 原因、潜在的なエスカレーション、リスク評価に分けて、内容のカテゴリー区分を行った うえで、それぞれハザードの特定上の留意点がまとめられている。 (4 ) 今後の課題 ・輸送に関する ISO 規格化にあたっては、船舶輸送に関しての文献調査も必要であるこ とから、IMO の基準等について調査する必要があると考えられる。 ・今後、特に貯留に関する ISO 規格のドラフト作成を行う段階で、必要 に応じて検討を 要するものとして米国石油協会(American Petroleum Institute、API)の規格が挙 げられる。これらは、石油開発分野における坑井掘削の方法・手順やケーシング、チ ュービングなどの仕様等に関するものであり、CSA Z741-12 でも参考資料としても挙 げられている。また、場合によっては、API 規格と TC67 関連の ISO 規格との関連性 に関する確認を行う。 ・ ISO標準化の観点から、 豪州の最新動向を把握する必要がある。CO 2 地中貯留プロジ ェクトに関しては、北米、欧州に加えて豪州が重要であることは疑いなく、ISO標準 化という点でその動向が注目されるところである。豪州はTC265 のPメンバーであり ながら、これまでに開催されたTC265 総会には出席していないこともあって、ISO標 準化に対する考え方については十分な情報が得られていない。豪州ではGorgonプロジ ェクトやCarbonNetプロジェクトが計画されており、それらが具体的にどのような考 え方あるいは指針等に基づいて計画・実行されるのか非常に興味深い。 文 献リスト 178 輸送 1) DNV (2010): Design and operation of CO 2 pipelines. Recommended Practice DNV-RP-J202. 42 p. http://exchange.dnv.c om/publishing/Codes/ToC_edition.asp#Recommended%20Pra ctices(2013/3 アクセス) C SA Z741-12 およびその関連資料 2) Canadian Standards Associatio n (2012): CSA Z741-12 Geological storage of carbon dioxide. 63 p. 3) L eering, M. (201 2): CSA Z741 – Bi-national standard for geological storage of carbon dioxide. 2012 UIC Conference. http://www.gwpc.org/events/gwp c-proceedings/2012-uic-conference(2013/3 アクセ ス) 4) U S Env ironmental Protection Agency (2010): 40 CFR Parts 124, 144, 145, 146 and 147 Federal requirements under the Underground Injection Control (UIC) Program for carbon dioxide (CO 2 ) geologic sequestration (GS) wells, Federal Register, v. 75, no. 237, 77230-77303. I SO/TC67 規格 TC67 事務局: 5) ISO 15156-1:2009 (2009): Petroleum and natural gas industries -- Materials for use in H 2 S-containing environments in oil and gas production -- Part 1: General principles for selection of cracking-resistant materials. 6) IS O 15156-2:2009 (2009): Petroleum and natural gas indu stries -- Materials for use in H 2 S-containing environments in oil and gas production -- Part 2: Cracking-resistant carbon and low-alloy steels, and the use of cast irons. 7) IS O 15663-1:2000 (2000): Petroleum and natural gas industries -- Life cycle costing -- Part 1: Methodology. 8) ISO 15663-2:2001 (2001): Pe troleum and natural gas industries -- Life-cycle costing -- Part 2: Guidance on application of methodology and calculation methods. 9) ISO 15663-3:2001 (2001): Petroleum and natural gas industries -- Life-cycle co sting -- Part 3: Implementation guidelines. 10) ISO 20815:2008 (2008): Petroleum, pe trochemical and natural gas industries -Production assurance and reliability management. 11) ISO 28460:2010 (2010) Petroleum and natural gas industries -- Installation and equipment for liquefied natural gas -- Ship-to-shore interface and port operations. 179 TC6 7/SC2: 12) ISO 3183 :2007 (2007): Petroleum and natural gas industries -- Steel pipe for pipeline transportation systems. 13) ISO 13623:2009 (2009): Petrol eum and natural gas industries -- Pipeline transportation systems. 14) ISO 14313:2007 (2007) : Petroleum and natural gas industries -- Pipeline transportation systems -- Pipeline valves. 15) ISO 14723:2009 (2009): Petroleum and natural gas industries -- Pipeline transportation systems -- Subsea pipeline valves. TC6 7/SC3: 16) ISO 10426- 1:2009 (2009): Petroleum and natural gas industries -- Cements and materials for well cementing -- Part 1: Specification. TC6 7/SC4: 17) ISO 1041 7:2004 (2004): Petroleum and natural gas industries -- Subsurface safety valve systems -- Design, installation, operation and redress. 18) ISO 10423:2009 (2009): Petroleum and natural gas indust ries -- Drilling and production equipment -- Wellhead and christmas tree equipment. 19) ISO 13628-1:2005 (2005): Petroleum and natural gas industries -- Design and operation of subsea production systems -- Part 1: General requirements and recommendations. 20) ISO 13628-2:2006 (2006): Petroleum and natural gas industries -- Design and operation of subsea production systems -- Part 2: Unbonded flexible pipe systems for subsea and marine applications. 21) ISO 13628-3:2000 (2000): Petroleum and natural gas industries -- Design and operation of subsea production systems -- Part 3: Through flowline (TFL) systems. 22) ISO 13628-4:2010 (2010): Petroleum and natural gas industries -- Design and operation of subsea production systems -- Part 4: Subsea wellhead and tree equipment. 23) ISO 13628-5 :2009 (2009): Petroleum and natural gas industries -- Design and operation of subsea production systems -- Part 5: Subsea umbilicals. 24) ISO 13628-6:2006 (2006): Petroleum and natural gas industries -- Design and operation of subsea production systems -- Part 6: Subsea production control systems. 25) ISO 1362 8-11:2007 (2007): Petroleum and natural gas industries -- Design and operation of subsea production systems -- Part 11: Flexible pipe systems for subsea and marine applications. 180 26) ISO 13628-15:2011 (2011) : Petroleum and natural gas industries -- Design and operation of subsea production systems -- Part 15: Subsea structures and manifolds. TC6 7/SC5: 27) ISO 1040 5:2000 (2000): Petroleum and natural gas industries -- Care and use of casing and tubing. 28) ISO 11960:2011 (2011): Petroleum and natural gas industries -- Steel pipes for use as casing or tubing for wells. TC6 7/SC7: 29) ISO 19900 :2002 (2002): Petroleum and natural gas industries -- General requirements for offshore structures. 30) ISO 19901-3:2010 (2010): Petroleum and natural gas industries -- Specific requirements for offshore structures -- Part 3: Topsides structure. 31) ISO 19901-6:2009 (2009): Petroleum and natural gas industr ies -- Specific requirements for offshore structures -- Part 6: Marine operations. 32) ISO 19901-7:2005 (2005): Petroleum and natural gas industr ies -- Specific requirements for offshore structures -- Part 7: Stationkeeping systems for floating offshore structures and mobile offshore units. 33) ISO 19902:2007 (2007): Petroleum and natu ral gas industries -- Fixed steel offshore structures. 34) ISO 19903:2006 (200 6): Petroleum and natural gas industries -- Fixed concrete offshore structures. 貯 留に関するベストプラクティスマニュアル、指針等 35) Chadwick, A., Arts, R., Bernstone, C., May, F., Th ibeau, S., and Zweigel, P., edited and compiled (2008): Best practice for the storage of CO 2 in saline aquifers. British Geological Survey, 267 p. http://nora.nerc.ac.uk/2959 /1/0812_CO2STORE_BPM_book_V7.pdf(2013/3 アクセ ス) 36) CO2C RC (2011): A review of existing best practice manuals for carbon dioxide storage and regulation. 7 p. http://www.globalccsinstitute.com/publications?page=20(2013/3 アクセス;Global CCS Institute のウェブサイトから入手可能) 37) DNV (2010): CO2QUALSTORE - Guideline fo r selection and qualification of sites and projects for geological storage of CO 2 , DNV Report No. 2009-1425, 77 p. http://www.dnv.com/industry/energy/segments/carbon_capture_storage/recom men 181 ded_practice_guidelines/co2qualstore_co2wells/index.asp(2013/3 アクセス) 38) DNV (2011): CO2WELLS - Guideline for risk management of existing wells at C O 2 geological storage sites, DNV Report No. 2011-0448, 38 p. http://www.dnv.com/industry/energy/segments/carbon_capt ure_storage/recommen ded_practice_guidelines/co2qualstore_co2wells/index.asp(2013/3 アクセス) 39) U.S. DOE/NETL (2009): Best practices for: Monitoring, verification, and accounting of CO 2 stored in deep geologic formations. First edition. http://www.netl.doe.gov/technologies/carbon_seq/refshelf/MVA_Docu ment.pdf (2013/3 アクセス) 40) U.S. DOE/NETL (20 09): Best practices for: Public outreach and education for carbone storage projects. 61 p. http://www.netl.doe.gov/technol ogies/carbon_seq/refshelf/BPM_PublicOutreach.pd f(2013/3 アクセス) 41) U.S. DOE/NETL (2 010): Best practices for: Geologic storage formation classification: Understanding its importance and impacts on CCS opportunities in the United States. 54 p. http://www.netl.doe.gov/t echnologies/carbon_seq/refshelf/BPM_GeologicStorageCl assification.pdf(2013/3 アクセス) 42) U.S. DOE/NETL (2010): Best practice s for: Site screening, site selection, and initial characterization for storage of CO 2 in deep geologic formations (draft edition). 59 p. (+ R-1-4 and A-1-30). http://www.netl.doe.go v/technologies/carbon_seq/refshelf/BPM-SiteScreening.pdf (2013/3 アクセス) 43) U.S. DOE/NETL (20 11): Best practices for: Risk analysis and simulation for geologic storage of CO 2 . 65 p. http://www.netl.doe.gov/techno logies/carbon_seq/refshelf/BPM_RiskAnalysisSimu lation.pdf(2013/3 アクセス) 44) U.S. DOE/NETL (2011): Regio nal carbon sequestration partnerships’ simulation and risk assessment case histories. 114 p. http://www.netl.doe.gov/technologies/carbon_ seq/refshelf/BPM_Sim_Risk_Appdx_I V_web.pdf(2013/3 アクセス) 45) U.S. DOE/NETL (2012): Best pra ctices for: Carbon storage systems and well management activities. 93 p. http://www.netl.doe.gov/techno logies/carbon_seq/refshelf/BPM-Carbon-Storage-Sy stems-and-Well-Mgt.pdf(2013/3 アクセス) 46) U.S. DOE/NETL (2012): Best practices for: Monitoring, verification, and 182 accounting of CO 2 stored in deep geologic formations – 2012 update. 136 p. http://www.netl.doe.gov/technologies/carbon_seq/refshelf/BPM-MVA-2012.pd f (2013/3 アクセス) E U の事情 47) European Union (2009): Directive 2009/31/EC of the European Parliament and of the Council of 23 April 2009 on the geological storage of carbon dioxide and amending Council Directive 85/337/EEC, European Parliament and Council Directives 2000/60/EC, 2001/80/EC, 2004/35/EC, 2006/12/EC, 2008/1/EC and Regulation (EC) No 1013/2006. Official Journal of the European Union, L 140, 114-135. http://eur-lex.europa.eu/JOIndex.do?year=2009&serie=L&textfield2=140&Submit =Search&_submit=Search&ihmlang=en(2013/3 アクセス) 48) European Commission (2011): Implementation of Directive 2009/31/EC on the geological storage of carbon dioxide: Guidance Document 1: CO 2 storage life cycle risk management framework 49) European Commission (2011) : Implementation of Directive 2009/31/EC on the geological storage of carbon dioxide: Guidance Document 2: Characterisation of storage complex, CO2 stream composition, monitoring and corrective measures. 50) European Commission (2011): Implementation of Directive 2009/31/EC on th e geological storage of carbon dioxide: Guidance Document 3: Criteria for transfer of responsibility to the competent authority. 51) European Commission (2011): Implementati on of Directive 2009/31/EC on the geological storage of carbon dioxide: Guidance Document 4: Article 19 financial security and Article 20 financial mechanism. 海 域における貯留に関係する法規制 52) Australian Government (2012): Offshore Petroleum and Greenhouse Gas Storage Act 2006(2012 年改正版). http://www.comlaw.gov.au/Details/C2012C00288(2013/3 アクセス) 53) Australian G overnment (2011): Offshore Petroleum and Greenhouse Gas Storage (Greenhouse Gas Injection and Storage) Regulations 2011. http://www.comlaw.gov.au/Details/F2011L01106 54) International Energy Agency (2011): Carbon capture and storage and the London Protocol: Options for enabling transboundary CO 2 transfer, 34 p. 55) International Maritime Organization: Convention on the Preve ntion of Marine 183 Pollution by Dumping of Wastes and Other Matter; 1972 and 1996 Protocol Thereto. http://ww w.imo.org/OurWork/Environment/SpecialProgrammesAndInitiatives/Pag es/London-Convention-and-Protocol.aspx(2013/3 アクセス) 56) OSPAR Convention: 1992 Convention for the Protection of Marin e Environment of the North-Esst Atlantic. http://www.ospar.org/content /content.asp?menu=01481200000000_000000_000000 (2013/3 アクセス) Q &V およびクロスカッティング 57) DNV (2013): CO2RISKMAN G uidance on CCS CO2 safety and environment major accident hazard risk management - Level 3. 145 p. http://www.dnv.com/industry/energy/segments/carbo n_capture_storage/recommen ded_practice_guidelines/co2riskman/(2013/3 アクセス) 3 .6 今後の取組み これまでの活動を 通じて、ISO/TC265 の回収 WG のコンビーナと事務局および貯留 WG の コンビーナを日本としてとることができた。今後は CCS における特にこの 2 つの分野 において日本が ISO 標準化をリードしていくことが期待されている。また CCS の残りの 分野においても、日本がこれまで培ってきた知見をベースに ISO 標準化に貢献していくこ とが求められている。具体的には 9 月に予定されている北京での第 3 回 ISO/TC265 総会 に向けて、国際幹事との連携、エキスパートの募集、WG の立ち上げ、WG 会合の開催、 NP/PWI の検討および作成、それらに対応した国内審議委員会、関係ワーキンググルー プおよび各タスクグループの活動等を推進していく。またヒアリングおよび文献調査を通 じて関係国の ISO 規格化に対する動向調査を行っていく。 184 185 別紙1 技術活動の新分野への提案 提案日 2011 年 5 月 5 日 提案者 SCC(Canada) 参照番号 (中央事務局付与) ISO/TS/P 221 技術活動の新分野への提案は、中央事務局に提出しなければならない。同事務局はその提案に対して参照番号を付与し、 ISO/IEC の公式指示 (第 1 部、1.5 節) に従って処理を行う。提案者は ISO の会員母体、技術委員会及びその分科会、技 術運営委員会及び総会、事務局長、ISO の後援で認証システムの管理責任を有する母体、あるいはその他の国単位の会 員組織を有する国際組織であっても良い。技術活動の新分野への提案と正当化に対するガイドラインは、ISO/IEC 専門業 務用指針 (第 1 部、付属書 Q) に示されている。 提案 (提案者が作成すること) 件名: (この件名は出来る限り簡単かつ明瞭に記述すること) 炭素回収貯留:Carbon Capture and Storage (CCS) 範囲 (この範囲は、提案する技術活動の新分野の限界を正確に定義し、“~の標準化” あるいは “~の分 野における標準化” から始めること) 炭素回収貯留(CCS)分野における、材料、機器、環境計画作成と管理、リスク管理、定量化と検証、 及びその他関連活動の標準化 適用除外:既に ISO/TC67 で取り上げられている、掘削、生産、パイプライン輸送で使用される機器 と材料 目的と正当性の主張 (提案されている新規分野における国際標準が採択された場合の経済的、及び社会 的利点について評価すること) 「国連気候変動枠組条約」は、有害な気候変動を防止するレベルで大気中の温室効果ガスの安定化を達成 するという主たる目的を有している。この目的は二酸化炭素の放出を大幅に削減させることを必要としてい る。「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第三次評価報告書は、安定化達成に必要な排出削減は単 一の技術のみで可能なものではなく、削減策のポートフォリオが必要であるとしている。「二酸化炭素の回収 貯留に関する IPCC 特別報告書」は、特に化石燃料が少なくとも今世紀の半ばまではエネルギー供給の太宗 を占めるとの予想を踏まえて、CCS を削減オプションのポートフォリオ中の重要なオプションとして確認した。 CCS 技術は現在でも存在しており、小数の例では既に商用化されている。しかし、高価であること、健康と安 全に関わる懸念、炭素価格の欠如、有効性に対する疑問、そして住民合意に係る不確実性などの理由で広 範囲に及ぶ CCS の商業的利用は行われていない。もう一つの主な障害は、明確な法規制と標準の欠如であ る。この障害は、国際標準化で対処することができ、産業界や政府は、CCS は優先事項であり、その商業プ ロジェクトは出来るだけ早く開始しなければならないと指摘しているため、速やかに解決しなければならない。 CCS はごく最新の技術分野なので、CCS に係る法規制と標準に対する枠組みを作成している国は少なく、多 くの場合はどの監督機関が管轄権限を有するのかさえ決められていない。課題のひとつは CCS が分野横断 的な課題だという点にある。即ち、石油・ガス、地下水の品質、GHG の管理、大気の質、地質、発電、そして 1 リスク管理の分野に関連している。 CCS は技術的課題であると同時に、環境と GHG 管理の課題でもある。ま た、CCS プロジェクトは相互に関係するシステムなので、炭素の回収、輸送、注入、そして貯留を確実に統合 させる必要がある。 CCS の分野での標準化は、広範囲かつ適正な導入を促進するのに利用できる枠組みの必要要素を提供す る。これまで CCS の推進者は、プロジェクトの選定、設計、開発、運用、及び閉鎖に対して、異なるガイドライ ン、最優良事例、及び関連標準を利用してきている。従って、これらのプロジェクトが要求する固有の要件を 扱う、CCS に特有の標準に対する要求がある。これは、プロジェクトが安全と環境面での完全性のために、国 際的に合意された知見に沿っていることの保証を与え、提案者、規制当局、及び国民にとって大きな利益を もたらすことになる。 国際標準は好ましい方法である。「国際標準」は世界的に増加している専門的知識と経験を CCS に活用する とともに、CCS プロジェクトが様々な管轄権にまたがる課題であることを認識するので、国際 CCS 標準への迅 速な移行には明白な利点がある。また、CCS の迅速な導入で利益を受ける多くの管轄当局にとっては、自ら の CCS 標準を作成するのに要する包括的専門知識を必要としなくなる。CCS 関連の国際標準の策定は、重 要なニーズに取り組むものであり、気候変動の緩和策としての CCS の広範囲な導入のために必要なステップ である。 ISO の下での「炭素回収貯留の標準化」作業の運営方法には、様々なオプションが考えられる。ひとつのオ プションは CCS のために新しい「技術委員会」を設置して運営する方法である。二番目のオプションは、既存 の TC67 や TC207 といった「技術委員会」の下の「作業部会」や「分科会」により、CCS 全体、あるいは CCS の個別分野に係る標準作成作業を運営する方法である。例えば、TC67 は石油・天然ガス産業の機器と材料 を扱っており、CCS のために使用する幾つかの機器や材料はこれらの機器や材料に関連している。三番目 のオプションは、CSS の個別要素毎に、関心を示した既存の技術委員会の間の統合作業部会により運営す る方法である。 多様な分野と地域を代表するステークホルダーとの相談を通じて、新規の技術委員会が最適なオプションで あるとして決定された。従って本提案では、「炭素回収貯留」を技術活動の新分野として扱い、新規の技術委 員会の担当下での活動とすることを提唱する。この結論については多くの理由がある。その一つは CCS が既 存のどの「技術委員会」の検討範囲にも収まらないことである。材料と機器は TC67 に、リスク管理は ISO TMB WG RM に、定量化と検証は TC207/WG7 に、大気のモニタリングと測定システムは TC146/SC1 に、そして 環境システムとツールは TC207 に関係している。もう一つの理由は、CCS の推進者が、CCS は統合されたシ ステムあるいはチェーンであり、全ての個別要素や検討事項は人為的に分離されてはならないと指摘してい ることである。回収の課題は輸送と貯蔵に、輸送の課題は回収と貯蔵に影響を与え、定量化と検証はシステ ム全体の課題であり、GHG は様々な異なる部門から排出される。特定の CCS の話題の中でさえ統合は明白 である。例えば、炭素貯留の専門家によると、炭素の地中貯留は独自の研究分野であるが、これには炭素貯 留固有の掘削装置と材料、リスク管理、水と大気のモニタリング、地質学的考察、定量化の課題などが含まれ ている。新技術委員会に対する更なる理由は、CCS の専門家で、ISO の既存の技術委員会、分科会、及び 作業部会に所属している人が殆どいないことである。 2 作業プログラム(提案者が提案範囲に含むことを希望する問題のリスト。例えば用語、試験方法、寸法と許 容範囲、要求性能、技術的仕様などといったもののうち、どういった側面を扱うかについて記述する) 提唱 する作業項目のタイトルを示す作業の詳細プログラムを添付することも可能。 提案する作業プログラムは、二酸化炭素の回収から、最終地までの輸送、貯留、最終的な施設の閉鎖、及び 長期的管理への備えまでという、CCS の全ライフサイクルを含む。これには CCS の技術、用語、環境配慮、リ スク管理、GHG の定量化と検証、健康と安全、その他の関連活動が含まれる。 この作業プログラムは少なくともCCSの主要課題のそれぞれ、すなわち「回収、輸送、貯留、リスク管理、そし て定量化と検証」を対象とする標準の作成を目指すものである。これらの課題のそれぞれを担当する「作業部 会」の設置を見越している。詳細は付属書Aに示す。 他の機関で着手されている類似作業の調査 (考慮される関連文書:国家標準またはその他の規範文書) CCS 特有の公認された国家標準で既知のものは無いが、成功事例、ガイドライン、そして関連標準は存在す る。下記に事例を示すが、必ずしもこれらに限定されるものではない。 ISO 14064-1 温室効果ガス-第1部: 組織における温室効果ガスの排出量及び吸収量の定量化及び報告 のための仕様並びに手引 ISO 14064-2 温室効果ガス-第2部: プロジェクトにおける温室効果ガスの排出量削減又は吸収量増大の 定量化、監視及び報告のための仕様並びに手引 ISO 14064-3 温室効果ガス-第3部: 温室効果ガスに関する主張の有効化確認及び検証のための手引 ISO 14040 環境管理 -- ライフサイクルアセスメント -- 原則と枠組み ISO 14044 環境管理 -- ライフサイクルアセスメント -- 要求事項とガイドライン DNV CO2QUALSTORE CO2 地中貯留のためのサイト及びプロジェクトの選定と適格性評価のためのガイド ライン EC 指令 2009/31/EC 二酸化炭素の地中貯留に対する指令 DNV-RP-J202 CO2 パイプラインの設計と運用 世界資源研究所の CCS ガイドライン:二酸化炭素の回収、輸送、及び貯留のガイドライン 米環境保護 二酸化炭素の地中隔離用井に対する「地下注入管理プログラム」下での連邦要求事項 3 連絡組織 (連携し、連絡をとるべき内外の組織のリスト) ISO TC207; 環境管理 ISO TC67; 石油、石油化学と天然ガス産業のための材料、機器、及び海洋構造物 ISO TC207/WG7; 温室効果ガスの管理と関連活動 ISO TMB WG RM; 技術管理委員会/リスク管理 ISO TC146; 大気質 ISO TC147; 水質 世界資源研究所 (WRI) 石油・ガス生産者 (OGP)国際協会(International Association of Oil and Gas Producers) その他のコメント(もしあれば) カナダが「技術委員会」の事務局となることを提案する。詳細は付属書 A 参照 提案者の署名 事務局コメント(中央事務局が作成) 署名 4 付属書 A 提案する標準化プログラムと TC の組織 はじめに 「炭素回収貯留 (CCS) の技術委員会」のために提案する作業プログラムは、広範囲な導入を促進するた めに取り組む必要のある主な CCS の課題に基づいている。CCS は気候変動の緩和オプションのポートフ ォリオの中で重要な要素であり、信頼性が高く広く認識される標準の欠如により導入が阻害されてはなら ない。 CCS技術委員会 事務局:カナダ CO 2 回収 CO 2 輸送 CO 2 貯留 CO 2 リスク 定量化と検証 作業部会 作業部会 事務局:カナダ 作業部会 作業部会 図1 図 1 は提案する「技術委員会」の組織を示す。作業計画は技術委員会によって決定されるが、その技 術委員会の下に 5 つの作業部会を置くことが提案されている。それぞれの作業部会は少なくとも 1 つの標準の作成に責任を持つ。 「CO2 回収作業部会」は CO2 回収のための標準の作成のための責 任を持ち、 「CO2 輸送作業部会」は、CO2 輸送を対象とする標準の作成のための責任を持つ、等。 当然のことながら、ある「作業部会」では、特定の側面を対象とするために標準の追加が必要となる可能性 が多分にある。「回収、輸送、貯留の作業部会」間の相互連携が適正に考慮された事を保証するための、 強力な連絡体制が必要となることは明らかである。「リスク」と「検証」の作業部会も、「回収」、「輸送」、及び 「貯留」作業部会との強力な関係を持つ必要がある。 CO2 回収作業部会 「CO2 回収作業部会」は、炭素の回収システムの技術とプロセスを対象とする標準の作成責任を有する。 発電所その他の炭素排出源からの排出物から CO2 を分離して回収することは、長年に亘って存在してい る他のプロセスとの類似性がある。新標準では、必要に応じて、これらのプロセスを対象としている既存の 標準やガイドラインを参照することも可能であるが、これらとは別に標準を作成する必要のある炭素回収に 特有の考慮事項や成功事例なども多い。ISO 標準を通じた既存の知識の標準化は、炭素回収システムの 効率的な採用を促進する。 5 CO2 輸送作業部会 「CO2 輸送作業部会」は、CO2 の発生源から永久貯留施設への輸送を対象とする標準の作成責任を有 する。CO2 の長距離移動はパイプラインまたは船により行われるが、パイプライン方式が主流となると思わ れる。実際にパイプラインによる CO2 の輸送は、既に幾つかの区域で石油増進回収に利用されている。 パイプラインを対象とする国際標準や国別標準は多数存在しており、CO2 の輸送は他の製品とさほど相 違は無い。しかし、CO2 輸送に特有の側面が存在しており、独立した標準が作成されることが望ましい。 「CO2 パイプラインの設計と運用」(DNV- RP-J202) と、国毎のパイプラインの標準にある CO2 特有の要求 事項は、提案する標準化の基礎となり得る。この作業部会は、作業計画が相補的であることを確認す るために、TC67/SC2 パイプライン輸送システムと連携し、最も効率的に専門知識と既存の資料を 使用することが重要になります。 CO2 貯留作業部会 「CO2 貯留作業部会」は、二酸化炭素の地中貯留を対象とする標準の作成責任を有する。CO2 の地中貯 留の標準は、サイト選定から、開発、運用、最終的閉鎖と長期的管理に至る全ライフサイクルを対象とする。 規制当局と住民は、炭素貯留設備の設計、開発、運用、及び閉鎖が、安全で環境面で責任を持つような 方法で実施される保証を期待している。現在、世界中のパイロット・プロジェクトで得られている広汎な情報 が、標準化活動のために入手可能である。CSA では炭素の地中貯留に関する合意可能な標準をカナダ -米国で作成中であり、これは ISO 標準の基礎となり得る。 CO2 リスク作業部会 この「CO2 リスク作業部会」は炭素の回収、輸送、CO2 の貯留のためのリスク標準を作成する責任を有する。 リスク・アセスメント、リスク管理、そしてリスクコミュニケーションは CCS システムの基本的な要素である。 CCS は新しい分野であり、未だに著しい不確実性を残している。健康、安全、及び環境面でのリスクの効 率的な同定、管理、コミュニケーションは、規制当局と住民からの当然の懸念に取り組む上で必要である。 リスクの ISO 標準は、CCS 推進者が適切に不確実性に取り組むこと及びそれを実証することを助ける。 CO2 の定量化と検証に係る作業部会 「CO2 の定量化と検証に係る作業部会」は、CCS による GHG の排出削減の定量化と検証のための標準 を作成する責任を有する。CCS プロジェクトを推進するには、GHG 削減が実質的かつ永続的であることを 示すための測定と報告のメカニズムが必要である。規制基準や市場ベースの削減策においても、削減に 係る想定が妥当であり実際に削減が達成されていることが信頼性をもって示されることが必要である。ISO 14064-2 は CCS の定量化と検証標準に特有の詳細な要求事項の基盤を形成することになる。定量化と検 証に関する標準は炭素の取引を行うのに特に必要である。 要約 「炭素回収貯留に関する技術委員会」の下の“標準”のポートフォリオは、時と共に分野が広がり、新しい 技術、機会、アプローチが現れるにつれて、拡大することが予想される。例えば、直接注入による二酸化 炭素の海洋貯留は、将来的に期待できる分野である。炭素回収に関する新しいアプローチも検討中であ る。炭素の回収貯留は、独特な要求事項と新しい専門分野を有する、新しい分野横断的領域である。 CCS の様々な構成要素に対する標準化のニーズに着目する技術委員会は、この必要に迫られた気候変 動緩和オプションを採用する支援を行うべきである。 6 別紙2 “Japan Position” Standardization of CO2 Capture ISO/TC265 Takayuki Higashii RITE, Japan CO2 Capture WG Japanese Mirror Committee Visit to our website. http://www.rite.or.jp/ 1 Backgrounds (1) CCS is recognized as a promising technology for climate change mitigation. Many demonstration projects have been conducted worldwide. However, there are still many issues to be overcome prior to the widespread use of CCS. One of such issues is cost of capture or energy requirement of CO2 capture system. 2 Backgrounds (2) CO2 capture is already well-known and widely used in oil & gas production and chemical processes such as ammonia/urea production. However, from a CCS standpoint, these industrial capture processes are relatively expensive and energy intensive. To be commercially viable, CCS requires that CO2 capture technologies are delivered at low-cost with a lower energy penalty. With this in mind, many research institutes and companies around the world are working on the improvement and the development of advanced technologies as shown on the next sheet. 3 4 WRI, CCS Guidelines (2008) Existing issues (1) Evaluation Currently, CO2 capture technologies are in various stages of maturity; large scale demonstrations, pilot scale and others at bench or laboratory scale. Evaluation and comparison of these technologies are currently difficult for potential users and stakeholders due to the lack of common evaluation methodologies and quantification procedures. 5 Existing issues (2) Reliability and Safety There is resistance against CCS partly because of concerns about negative environmental impacts that CO2 capture systems may bring. Therefore clarification of HSE impacts on adoption of CO2 capture technologies is required in order to allay fears in community and promote the installation of CO2 capture systems. It is also important to ensure that an adopted technology can achieve safe and stable operation from start-up. This will assist with the establishment of community acceptance. 6 Objectives of standardization Standardization of CO2 capture aims: – to enhance reliability, especially, for HSE, – to enhance acceptability through increased reliability, – to secure safe and stable operation of CO2 capture plants to underpin reliability, – to enhance performance of the technologies through fair competition, – to help users and stakeholders select an appropriate technology for their specific application, – to increase investments by reducing uncertainties, and to help facilitate CCS deployment worldwide. 7 Necessity of standards Currently there are many different types of CO2 capture technologies. However, these are not accomplished yet and there are some uncertainties. The standards are essential – – – – to select the appropriate technology, to design safe and reliable plants, to ensure safe and reliable operations, and to achieve accountability of safety and reliability to stakeholders. 8 Boundary of standards The standards should cover various CO2 capture technologies, including emerging ones as far as possible. The standards SHOULD include – Shared definition of terminology and units, – Quantification procedures of energy and efficiency penalties, and – Reliability and safety of CO2 capture systems. The standards SHOULD NOT include – Equipment and materials used in capture plants (because these are improved continuously and may be patentable, and standardization can also interfere improvement of premature technologies), – Non CCS CO2 capture (i.e. CO2 capture for petroleum and natural gas extraction and for feedstock of chemical manufacturing), and – Existing temporary CO2 capture plants Quality of CO2 captured should be considered cautiously after the requirements interrelated to Transport and Storage WG as well as national or local regulations were examined. 9 Avoidance of stifling technological advances As a starting point, CO2 capture technologies that have been successfully demonstrated should be first considered in the standardization. Technologies still under development should be considered stepwise along the progress of technological development. Furthermore, as mentioned before, equipment and materials used in capture plants should not be covered in this standardization because these are improved continuously and may be patentable. After all, standardization should play a role to encourage further development of CCS-related technologies, therefore step-by-step standardization through continuous discussion should be necessary. 10 Our proposed items of standardization Common terminology and units for the description of CO2 capture systems Evaluation procedures to calculate energy penalties of CO2 capture systems Reliability and safety of CO2 capture systems 11 Advantages of Japan in our proposed standardization Japan has been developing a wide variety of CO2 capture technologies for many years. This experience would enable us to draft standards for CO2 capture technologies including chemical absorptions, physical absorptions, membranes, adsorptions and oxy-fuel combustion, etc. Japan has high technology capabilities and has provided many highly reliable plants to the world. These experiences would be invaluable to standardization. 12 Examples of Japan’s contribution to CO2 capture projects Japan has been involved in a lot of CO2 capture projects (from demonstration to commercial) across the world. Based on these experiences, Japan has valuable know-how to contribute to standardization. e.g. Post-combustion: Plant Barry (USA) Pre-combustion: In Salah (Algeria) Oxyfuel: Callide A (Australia) Plant Barry (USA) In Salah (Algeria) Pilot Test Plants (Japan) Callide A (Australia) MHI, Matsushima (10t/d, Post-combustion) Toshiba, Ohmuta (10t/d, Post-combustion) J-Power, Wakamatsu (Pre-combustion) 13 How to make the maximum use of Japan’s expertise - Convener Japan has a high potential to lead the standardization of CO2 capture with a lot of technologies and experiences accumulated to date. Japan already has ideas for standardization of CO2 capture and is ready to work with other P-Members to establish these new standards. Japan has the capability and the resources enough to take the initiative as the Convener in these works. Could you leave it to Japan? Japan would be more than happy to have a Co-Convener or a Secretary, if it could work better. 14 CO2 Capture Working Group in Japan CO2 Capture Working Group of ISO/TC265 Japanese mirror committee is composed of experts from various fields of CO2 capture. The Group has a role to survey various CO2 capture technologies and projects, to examine possible standard frameworks and to draft plans for the ISO standardization. The following organizations are involved in the Working Group: <RD&D> <Engineering> <Energy suppliers> 15 JISC and RITE JISC (Japanese Industrial Standards Committee) assumes a role as a center of the Standards and Conformity Assessment in Japan, and also participates in international standard development activities as Japan’s sole representative body in the ISO and the IEC. JISC was established within the Ministry of Economy, Trade and Industry. RITE was founded in July 1990 with support from MITI, local governments, academic circles and industries. It functions as a central laboratory in research and development regarding CCS in Japan. RITE was assigned the secretariat of the Japanese mirror committee of ISO/TC265 by JISC. 16 別紙3 Initial Thoughts on Standardization of Cross-cutting Issues of CCS ISO/TC 265 Meeting 5-6 June 2012 EDF, Site de Chatou, Paris Makoto Akai Fellow Research Scientist, AIST Initial Proposed Structure TC265 Capture Transport Storage Quantificatio n& Verification Risk Management Cross-cutting Issues Cross-cutting topics identified Internal Scoping Document (ISO/TC 265 N004) Terminology and Definitions Management systems 2 M. Akai Quantification & Verification Related Activities (ISO) ISO 14064 - GHG – ISO 14064-1 Greenhouse gases -- Part 1: Specification with guidance at the organization level for quantification and reporting of greenhouse gas emissions and removals – ISO 14064-2 Greenhouse gases -- Part 2: Specification with guidance at the project level for quantification and reporting of greenhouse gas emissions and removals – ISO 14064-3 Greenhouse gases -- Part 3: Specification with guidance for the validation and verification of greenhouse gas assertions ISO 14040 Series - LCA – ISO 14040 Environmental management -- Life cycle assessment -- Principles and framework – ISO 14044 Environmental management -- Life cycle assessment -Requirements and guidelines Need to review the significance on CCS Standard, e.g.: – Should we address the life cycle of CCS? 3 M. Akai Quantification & Verification Related Activities (IPCC, UNFCCC) Special Report on Carbon Dioxide Capture and Storage – Chapter 9: Implications of carbon dioxide capture and storage for greenhouse gas inventories and accounting 2006 IPCC Guidelines for National Greenhouse Gas Inventories – Volume 2 (Energy), Chapter 5: Carbon Dioxide Transport, Injection and Geological Storage The CDM Executive Board at its sixty-seventh meeting agreed to establish the Carbon Dioxide Capture and Storage Working Group (CCS WG) Need to review the significance on TC265, e.g.: – What level of harmonization should be necessary with methodologies for National GHG Inventories or CDM 4 M. Akai Quantification & Verification Related Activities (Others) Monitoring, Verification, and Accounting of CO2 Stored in Deep Geologic Formations, National Energy Technology Laboratory, USDOE (2009) Discussion Papers developed under Japan’s research project “Accounting Rules on CO2 Sequestration for National GHG Inventories (ARCS) [2002 - 2006] – Accounting Rules for Project-based CCS Activities – Accounting Rules for CCS for National GHG Inventories Contribution to develop 2006 IPCC Guideline Submission of the world’s first two CCS-CDM methodologies 5 Others? M. Akai IPCC Special Report on Carbon Dioxide Capture and Storage (SRCCS) Chapter 9: Implications of CO2 capture and storage for GHG inventories and accounting Figure 9.1 Simplified flow diagram of possible CO2 emission sources during CCS 6 M. Akai SRCCS Chapter 9 CO2 Stored and Leakage 7 M. Akai 2006 IPCC Guidelines, Volume 2, Chapter 5 Methodological Issues 8 … the small number of monitored storage sites means that there is insufficient empirical evidence to produce emission factors that could be applied to leakage from geological storage reservoirs. Consequently, this guidance does not include Tier 1 or Tier 2 methodology. However, there is the possibility of developing such methodologies in the future, when more monitored storage sites are in operation and existing sites have been operating for a long time (Yoshigahara et al. 2005). M. Akai 2006 IPCC Guidelines, Volume 2, Chapter 5 Tier 3 Procedures for Estimating and Reporting Emissions from CO2 Storage Sites Estimating, Verifying & Reporting Emissions from CO2 Storage Sites Site Characterization Confirm that geology of storage site has been evaluated and that local and regional hydrogeology and leakage pathways (Table 5.1) have been identified. Assessment of Risk of Leakage Confirm that the potential for leakage has been evaluated through a combination of site characterization and realistic models that predict movement of CO2 over time and locations where emissions might occur. Monitoring Ensure that an adequate monitoring plan is in place. The monitoring plan should identify potential leakage pathways, measure leakage and/or validate update models as appropriate. Reporting Report CO2 injected and emissions from storage site 9 M. Akai Risk Management Related Activities (ISO) ISO 31000:2009 "Risk management - Principles and guidelines” – can be used by any public, private or community enterprise, association, group or individual. – can be applied throughout the life of an organization, and to a wide range of activities, including strategies and decisions, operations, processes, functions, projects, products, services and assets. – can be applied to any type of risk, whatever its nature, whether having positive or negative consequences. – be utilized to harmonize risk management processes in existing and future standards. It provides a common approach in support of standards dealing with specific risks and/or sectors, and does not replace those standards. – is not intended for the purpose of certification. 10 M. Akai Observations and Proposal for Initial Action to Address Cross-cutting Issues CCS is not a sum but an integrated system of Capture, Transport and Storage. – Drafting shall be well coordinated and integrated among WGs. Quantification/Verification and Risk Management are essential elements of a CCS project and shall be standardized based on a scientific and technological point of view. Methodology and framework for “Identification, Evaluation and Management of Uncertainty” will be essential in the standardization of Q/Verification and Risk Management A “Task Force” to identify and appraise the crosscutting issues should be formed under TC265, if necessary, dependent on the outcome of this meeting. 11 M. Akai Something Extra --- Japan’s Activities on Ship Transport of CO2 We recognize the importance of Ship Transport of CO2 Expected merits of ship-based CCS – Increase of Opportunities Less needs for considering sink-source matching No needs of pipeline construction in coastal zone – Increase of project flexibility Change of project size Gradual expansion of project Change of sink-source coupling The first concept was proposed in 1992 by Mitsubishi Heavy Industries Several in-depth design studies have been carried out including a novel concept of shuttle tanker equipped with injection facilities 12 M. Akai SUPPLEMENTS 13 M. Akai Japan’s Activities for Quantification of CCS A Research Project on Accounting Rules on CO2 Sequestration for National GHG Inventories (ARCS) [2002 - 2006] ARCS Scope To develop models for assessing effectiveness of storage to propose and evaluate accounting protocols To assess socio-economic and policy implications of the CCS technology Outcome Propose guideline and/or protocol for accounting – Accounting Rules for Project-based CCS Activities – Accounting Rules for CCS for National GHG Inventories 14 Contribution to develop 2006 IPCC Guideline M. Akai Spill Over Activities of ARCS Project Submission of Methodologies to CDM Executive Board The world’s first two methodologies proposed – Mitsubishi UFJ Securities (MUS) Recovery of anthropogenic CO2 from large industrial GHG emission sources and its storage in an oil reservoir (EOR) – Mitsubishi Research Institute, Inc. (MRI) and JGC Corporation. 15 The capture of CO2 from natural gas processing plants and liquefied natural gas (LNG) plants and its storage in underground aquifers or abandoned oil/gas reservoirs (Aquifer storage) Stimulated discussions/debates on CCS-CDM in the UNFCCC Still unresolved M. Akai SRCCS Chapter 9 Gaps in Knowledge 16 Methodologies to estimate physical leakage from storage, and emission factors (fugitive emissions) for estimating emissions from capture systems and from transportation and injection processes are not available. Geological and ocean storage open new challenges regarding a) uncertainty on the permanence of the stored emissions, b) the need for protocols on transboundary transport and storage, c) accounting rules for CCS and, d) insight on issues such as emission measurement, long term monitoring, timely detection and liability/responsibility. Methodologies for reporting and verification of reduced emission under the Kyoto Mechanisms have not been agreed upon. Methodologies for estimating and dealing with potential emissions resulting from system failures, such as sudden geological faults and seismic activities or pipeline disruptions have not been developed. M. Akai 2006 IPCC Guidelines Approach to Estimate Emissions 17 Fugitive losses from CO2 capture and transport stages (estimated using conventional inventory approaches) Any losses from carbon dioxide stored underground (estimated by a combination of modeling and measurement techniques, which would also be monitored for management purposes). – No assumptions of leakage rates are made Methods reflect the actual emissions in the year in which they occur. Methods are consistent with the IPCC Special Report on Carbon Dioxide Capture and Storage (2005). CO2 captured from combustion of bio-fuels, are included in the inventory as a “negative emission” so that no distinction is needed between any subsequent leakage of this CO2 and that of CO2 from fossil sources. M. Akai 2006 IPCC Guidelines Three Tiers for estimating emissions from fossil fuel combustion TIER 1 … emissions from all sources of combustion can be estimated on the basis of the quantities of fuel combusted (usually from national energy statistics) and average emission factors. TIER 2 … emissions from combustion are estimated from similar fuel statistics, as used in the Tier 1 method, but country-specific emission factors are used in place of the Tier 1 defaults. TIER 3 … either detailed emission models or measurements and data at individual plant level are used … 18 M. Akai 2006 IPCC Guidelines, Volume 2, Chapter 5 Definition of CCS Chain (1/2) 1. Capture and compression system. The systems boundary includes capture, compression and, where necessary, conditioning, for transport. 2. Transport system. Pipelines and ships are considered the most likely means of large-scale CO2 transport. The upstream systems boundary is the outlet of the compression / conditioning plant in the capture and compression system. The downstream systems boundary is the downstream end of a transport pipeline, or a ship offloading facility. It should be noted that there may be compressor stations located along the pipeline system, which would be additional to any compression in System 1 or System 3. 19 M. Akai 2006 IPCC Guidelines, Volume 2, Chapter 5 Definition of CCS Chain (2/2) 3. Injection system. The injection system comprises surface facilities at the injection site, e.g. storage facilities, distribution manifold at end of transport pipeline, distribution pipelines to wells, additional compression facilities, measurement and control systems, wellhead(s) and the injection wells. The upstream systems boundary is the downstream end of transport pipeline, or ship offloading facility. The downstream systems boundary is the geological storage reservoir. 4. Storage system. The storage system comprises the geological storage reservoir. 20 M. Akai