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図書館の照明

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図書館の照明
図 書 館の照 明
1 昨今の図書館
2 照明計画に際し考慮すべき事項
最近の図書館は、情報化の急激な進展の影響を受けて、大きな課
題に直面しています。
図書館には、読んだり調べたりする場所以外に多くの場所がありま
す。すなわち、会議室、
セミナー室、展示室、希書室、視聴覚室、
データ
第一の課題は、急増する蔵書数への対応です。近年、印刷物の発
処理室、
ラウンジ、事務室、製本室、玄関ホール、
ロビーなどです
(表2)
。
行は多岐にわたります。書籍や雑誌、論文やカタログなどの文字情報
が、
日々大量の印刷物となって発行されていると言ってよいでしょう。
し
たがって、
もともと保有する蔵書数が膨大になっているところへ、更に多
量の本が日を追って入庫してくるため、従来のように人力に頼った方法
では、本の分類、整理、保管、貸し出し業務などの対応ができにくくなっ
表2 図書館の構成
部
門
内 容
開 架 貸 出
開架貸出室・児童コーナー・談話室・軽読書コーナー・
閲覧室・カウンター
てきています。そこで、利用者が必要とする本を的確、迅速に閲覧でき
レファレンス
レファレンス室・郷土資料室・希書室
るようにするためにコンピュータ、搬送機械などに頼らざるを得なくなって
集
会
集会室・視聴覚室・視聴覚資料室・セミナー室
きています。
事
務
事務室・整理作業室・館長室・会議室など
書
庫
第二の課題は、
メディアの多様化への対応です。AV機能の発達に
よって、映像や音声など印刷物以外の周辺情報も、
その守備範囲とな
通 路 など
設
機械室・電気室など
ることが求められるようになってきています。
これらの情報を利用者に提
供するため、AV機器の設置や専用ブースの確保など、従来の図書館
開架書庫
ロビー・廊下・階段・エレベーター・休憩・ラウンジ・便所
など
備
照明は、一般に、視作業のための照明と環境の照明とに分けられま
には見られなかった機能が要求されてきています。
第三の課題は、開架スペースの拡大です。利用者の利用の仕方とし
て、資料を探すという図書館の本来の目的以外に、気軽に書籍に触れ
すが、図書館では本を読むという行為が主体になります。
したがって図
書館では、特に前者が重要になります。図書館には、児童の本、新聞、
たいとする欲求が強くなってきています。
そのために開架スペースを広く
雑誌、単行本、古希書
(ペンや鉛筆の手書き、古い紙、黒ずんだ紙)
な
とった、
くつろげる空間づくりが求められています。
また、読書や閲覧ス
ど、見やすい本から見えにくい本まで種々なものがあり、
これら全てのも
ペースを広く取るだけでなく、書架を低くして、閲覧を容易にすると共に、
のに適した照明でなければなりません。
また、AV機器やコンピュータの
見通しの利く利用しやすい空間を確保しようとする傾向も見受けられます。
利用に対する配慮も必要です。
以上のような課題に対して、大規模な図書館と中・小規模の図書館
一方、後者は、建築デザインのエレメントとしてのものであって、
その
では対応が異なります
(表1)
。都道府県や政令都市が設立主体となる
建築家の意図する空間の雰囲気を助長する働きのものです。開架ス
大規模な図書館
(中央図書館)
では、
これらの課題を全てクリアし、利
ペースのくつろいだ雰囲気や、玄関ホールの豪華な雰囲気を演出する
用者があらゆる情報に接触できる
「総合情報センター」
を目指す傾向が
ために有効です。
あります。
そのため、
ネットワーク化とAV機器の充実が図られています。
以下、用途空間別に解説することとします。
一方、市町村レベルの中・小規模図書館では、図書館という本来の
機能以外に地域コミュニティとしての役割が強く求められるようになって
3 読書室
きており、開架スペースの拡大と充実、展示室やセミナー室など周辺施
読書は机やラウンジの椅子、貸し出し部の付近など様々な場所で行
設の充実が優先して図られる傾向にあります。
われます。正式の読書机としては、長机をローパーティションで個々のコ
ンパートメントに分けたものや、
パーティションをもった独立の机が使わ
表1 規模による相違
設立主体
大規模図書館
中・小規模図書館
県・政令指定都市
市町村・法人
延べ面積
1万㎡以上
1000∼1万㎡
蔵書数
100万冊以上
3万∼40万冊前後
閲覧方式
閉架式
開架式
要求される役割
総合情報センター
地域コミュニティの核
れます。
これらの机は、図1に示すように、一般にさまざまな方向を向きます。
したがって、照明で問題となるのは、
パーティションによって生ずる影で
す。
この影をなくす方法としては、個々の机に照明をつける方法と、天井
全面を光天井にする方法があります。
また、昼光利用のためと共に、外景が見えることによる開放感を得る
ため、読書机が窓際に置かれることがあります。この場合は視野内の
輝度分布に注意して対策をたてておかなければなりません
(照明の基
本編を参照)
。最近では、検索用のコンピュータディスプレイの設置が
当たり前になってきているので、
これらに対する窓面の映り込み対策も
重要です。
なお、最近の図書館では、正式の読書エリアよりもリラックスした感じ
の場所で読書することを好む傾向があるため、
喫茶店のように落ち着い
た読書エリアや、子供が楽しく本に親しめるよう配慮したスペースが設
けられているところもあります。
これらの空間には、環境の照明が重要な
役割を果たします。
図 書 館の照 明
A
C
E
B
D
図1 読書机の標準的な配置
4 書架
5 会議室、
セミナー室
書架での視作業は、本の背に印刷されている文字を読み取ること
市町村レベルでは、図書館は地域コミュニティの中心施設となりま
であって、棚の下部の本では床上10㎝位の位置のこともあるし、棚の
す。
そこでは、各種文化活動や、
グループ研究会などの生涯学習の場
上部の本では、床上2m近くの高さとなる場合もあります。
これらを見る
を提供することが求められ、会議室やセミナー室がなくてはならないもの
場合、書架と書架の間の通路の幅が狭いときは、視線の角度が大きく
となってきています。
これらの室では全般照明だけでなく、講演者、黒板
なって見えにくくなります。
また、棚の上部の列の本を見るときは、本の
などに対する照明も必要です。
背にツヤがある場合、正反射が起こって見えにくくなることがありますの
で、照明器具の位置を決める場合に注意が必要です。
書架の明るさは、300 lx以上あることが望まれますが、現実的には、
6 視聴覚機器室
天井から照明する以上、
上部棚が明るく下部棚が暗くなるのは避けられ
前述したように、最近は、映像や音声など印刷物以外の周辺情報を
ません。
したがって、設計としては、書架の中央高さで300 lx以上得る
提供することも、図書館の役割として求められるようになってきました。
そ
ことを目標とします。書架の高さと間隔に配慮して照明器具の選定と配
こで、
これらの情報を利用者に提供するため、AV機器を設置した専用
置を決定することが大切です。
の視聴覚機器室が設置されるようになってきました。
なお、照明器具の取り付け方向は、書架の列に対して平行にする場
視聴覚機器室の照明は、音を聴くことを目的とした室と、映像を見る
合と直角にする場合、光天井にする場合とがありますが、
いずれの方式
ことを目的とした室を区別して考える必要があります。音だけの場合は、
も長短があり
(表3)
どの方法がすぐれているかを一概に決めることはで
照明は普通の読書エリアと同じで問題ありませんが、
ビデオテープや
きません。種々の状況を含めて検討しますが、最近の図書館は、利用し
DVD、
マイクロフィルムなどの映像を見る場合は、照明にはかなりの注
やすさに配慮して書架の高さを低く抑えたり、
あるいは天井高さを高くと
意が必要です。すなわち、
ビュースクリーンの輝度とノートをとるときのノー
る傾向にあるため、
照明の配置による差は少なくなってきています。
ト面の輝度の差を少なくすることが重要で、大抵のタイプのビューアの
スクリーンは照度が低い方がよく、一方、
ノートをとる面は明るくしなけれ
表3 照明器具の配置方式による比較
書架に平行とした場合 書架に直角とした場合
ばなりません。従って、全般照明を暗めにして、
スタンドなどで手元の明
光天井とした場合
照明器具の配置換え 均一な照度が得られ、
書架に対して均一な
をせずに、書架の間隔 書架の配置換えも任
照度が得られやすい。
を変えることができる。 意に行える。
書架の間隔を変えら
CRTなどが配置される
書 架に対して均 一な
と明るすぎて見づらい
短 所 れない。もしくは制限
照度が得られにくい。
がある。
場合がある。
書架が低い場合や天井が高い場合は、双方
ルーバ式が望ましい。
備 考
の差は無くなる。
長 所
るさを調整できることが望まれます。
どうしてもビューアが高照度のところ
に置かれる時は、
スクリーンにフードを付ける必要があります。
なお、
これら視聴覚機器の設置が予想される場合には、床の適当な
ところに十分な数のコンセントを設けておく必要があります。
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