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院内でもチームを発足

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院内でもチームを発足
CONNECT
総合病院 土浦協同病院
座 談会
術後回復期連携を
骨粗鬆症診療連携に発展、
院内でもチームを発足
土浦協同病院は、茨城県南地区の基幹病院の 1 つとして、地域で中心的な役割を果たしている。2007年より大
腿骨近位部骨折手術後のリハビリについて、回復期病院を対象に地域連携を進めていたが、2013 年から骨折予
防を目的とした地域連携を開始し、成果を上げている。院内でも大規模な骨粗鬆症リエゾンチーム(OLT)を立
ち上げており、その中核メンバーである 5 人に、病診連携の現状を伺った。
参加者(※発言順)
河内 敏行 氏(土浦協同病院副院長/整形外科部長)
林 潤一 氏(土浦協同病院福祉相談部主任/ソーシャルワーカー)
佐藤 昌 氏(土浦協同病院歯科口腔外科科長)
諸田 有佳 氏(土浦協同病院薬剤部)
柴沼 はつ江 氏(土浦協同病院看護部)
る手術です。このうち 9 割以上は脆弱
状況下では骨折後患者のリハビリテー
人口の過疎化と高齢化が進み、
性のいわゆる骨粗鬆症性骨折で、その
ションをどのように継続していくか、と
骨粗鬆症患者は今後も増加
中で骨粗鬆症治療が行われていたのは
いう視点が中心となっていました。
当初はわずか 8%と低率でした。当院
日本全体で超高齢化が進んで
は急性期病院なので、骨折手術後のリ
2015 年に院内リエゾンチームを
いるように、茨城県土浦地区でも人口
ハビリテーションを円滑に進めることを
立ち上げ各部署と幅広く連携
の過疎化と高齢化が進み、脆弱性骨折
目的に、回復期病院との地域連携を
が増加してきました。当院の整形外科で
2007 年より開始しました。
河 内
行う手術全体のうち、年間 200例以上、
約 8 分の1が大腿骨近位部骨折に対す
河内 敏行 氏
2
CONNECT
河 内
以前は原疾患である骨粗鬆症
「大腿骨近位部骨折地域医療
治療の継続まではなかなか意識が向か
連携パス合同会議」には現在 11 病院
なかったと言えます。骨折するまで骨粗
が参加していますが、うち急性期病院
鬆症が明らかではなく未治療だった患
が 5 病院、回復期病院が 6 病院です。
者も多く、骨粗鬆症治療を開始・継続
地域特性として回復期病院の絶対数が
しなければ、せっかく手術を受けて退
少なく、地域連携パスを活用して転院
院しても、反対側の大腿骨や他の部位
する患者さんは、大腿骨近位部骨折患
の骨折を起こすリスクが高くなります。
者の約 10%と低率にとどまっています。
以前から、治療効果を実感しにくい骨
患者さんが転院したくても受け入れ先
粗鬆症は、服薬アドヒアランスが非常
の回復期病院を探すことが困難な状況
に低く、治療継続が困難と指摘されて
にあるため、現在は地域連携パスの適
いました。
応の有無にかかわらず、平均在院日数
土浦地区、中でも当院周辺は比較的
は約30日間と差がないのが現状です。
病院が少なく、多くの骨折患者が当院を
今後、回復期を担う病院がもう 1 施設
受診するような状況です。大腿骨近位
参加する予定ではありますが、厳しい
部骨折の手術自体は病院でしか対応で
林
携わっていましたが、
「土浦地区骨折予防連
写真 骨粗鬆症リエゾンチーム(OLT)
携協議会」では、大腿
骨近位部骨折患者より
も格段に多い骨粗鬆症
患者に目を配っていく
必要があります。この
ため、地域連携を円滑
に 進 め て い く た め、
2015 年 9 月に 当 院 内
で骨粗鬆症リエゾンチ
林 潤一 氏
ーム(OLT)を立 ち上
げました(写真)
。
きないかもしれませんが、骨折患者が
メンバーは総勢 26 名で、整形外科、
よび院外の連携を活性化していきたい
年々増加していく中で、病院のみですべ
放 射線 科、歯 科口腔 外 科、看護部、
です。
ての骨折後患者を継続して管理してい
薬剤部、医事課、福祉相談部、放射
くことは現実的に不可能です。しかし、
線部、リハビリテーション部、栄養部、
入院骨粗鬆症患者はBP製剤投与前に
かかりつけ医がいない骨粗鬆症未治療
地域連携室の関係部署から幅広い構
歯科口腔外科を受診
の患者さんが多く、退院後のフォロー
成となっています。既に幾つかのワー
が課題になっていました。
キンググループが 稼 動していますし、
そこで、骨折治癒後の患者のきめ細
これまで不十分だったデータベースや
に、入院術後から骨粗鬆症治療を開始
かなフォローに関して地域の整形外科
ネットワークを整備しながら、院内お
していますが、その際に中心となるの
骨折患者の再骨折予防を目的
河 内
開業の先生方に広く協力してもらいたい
と考え、2013 年に新たに「土浦地区骨
折予防連携協議会」を発足させました。
図 1 土浦協同病院で使用している大腿骨近位部骨折の患者向けフローチャート
これは、骨粗鬆症性骨折の手術後、患
者の容体が落ち着いた後に、骨粗鬆症
<第1期>
入院
治療を開業の先生方に継続してもらう
ことを目的とした地域連携です。現在、
当院外来
1
︵土浦地区骨折予防連携協議会加盟医療機関︶
・DXA↓整形受診
・口腔外科受診
連携先通院
逆紹介
︻半年∼ 年ごと︼
粗鬆症マネージャーレクチャーコース」
整形・口腔外科外来|逆紹介
するメディカルスタッフを育成する「骨
整形外来|DXA ・整外・口腔外科 火( 曜日以外 予) 約
紹介
・DXA予約
D
<第3期>
連携
手術後
手術後
5カ月目 6カ月目
連携医療機関案内配布
学会が骨粗鬆症に関する専門知識を有
整形外来|採血 *逆紹介案内
私は 2014 年に日本骨粗 鬆症
転院
林
ビタミン 処方
たいと考えています。
要治療
信頼関係を築き、連携を確立していき
手術後
4カ月目
自宅退院
実績を積み重ねていく中で診療所との
フォローアップカード発行
じますが、地域診療所への患者紹介の
手術後2、
3週目
患者・家族に対する指導
BP製剤処方
口腔外科受診
療報酬上のメリットが少ないようにも感
手術
まだこうした病診連携に関しては診
入院
34 医療機関が参加しています。
手術後1週目 手術後2週目
<第2期>
当院外来
紹介
紹介
紹介
を受講し、
「骨粗鬆症マネージャー」を
取得しました。以前から地域連携には
CONNECT
3
CONNECT
座 談会
象を与えてしまうため、できるだけ柔ら
継続してもらえるよう繰り返し説明をし
かい言葉を使って、頻繁に起こる病気
ます。
ではないこと、口の中を清潔に保って
急性期病院であり、入院中は骨折の
いると起こりにくくなること、など正しい
治療が主となりますが、病棟薬剤師と
情報を伝え、いたずらに患者さんの不
して、骨粗鬆症治療に関しても医師と
安をあおらないよう注意しています。
より早期から相談ができるような環境
ARONJ は10 年以上前から指摘され
を作っていきたいと考えています。
ていますが、未だに治療方針が定まっ
また、退院後の骨粗鬆症地域連携
ていません。整形外科医と歯科医の相
のための「骨そしょう症フォローアップ
互理解が進んでいないようにも思えます
カード」
(図 2)を作成し、数年前から
ので、まず歯科医には ARONJ の頻度
活用しています。かかりつけ医での受
や骨粗鬆症治療の重要性について正し
診記録として患者さんに持参してもらう
く理 解してほしいで すし、 医師には
もので、服薬状況や検査データなどを
は DVT(深部静脈血栓症)のリスクが
ARONJ が完治するまでに長期間かか
記載できるようになっており、折り曲げ
少なく、新規骨折抑制効果が確立され
ることをわかっていただきたいです。
るとお薬手帳に挟めるコンパクトなサイ
ているビスホスホネート製剤です。ビス
当院では、整形外科と歯科口腔外科
ズです。今後は、連携先でのフォローア
ホスホネート製剤等の骨吸収抑制薬で
が比較的綿密に連携できていると思い
ップカードの活用状況等を調査して、よ
は、長期投与に伴う顎骨壊死(ARONJ)
ますが、すぐには連絡を取れない状況
り発展させていきたいです。
の発生が報告されているため、当院で
にある医療機関も多いのではないでし
は 2015 年11月より、手術を受ける骨粗
ょうか。 連 携 体 制 が で きて い れ ば
会」の目的や参加施設を紹介したホー
鬆症患者さんの入院以降のフローチャ
ARONJが発生しても早期に対応できる
ムページを作成しており、フォローアッ
ートを歯科連携および地域連携を組み
ことから、早めに相談できる環境作り
プカードや骨密度検査依頼書兼予約票
込んだ形に見直しました( 図 1 前ペー
が大切だと思います。
をダウンロードできます。当病院のホー
佐藤 昌 氏
ジ)
。
病棟薬剤師としては、入院患
既にポジションペーパーで、ARONJ
者さんにビスホスホネート製剤が処方さ
の発生頻度は非常に低く口腔衛生状態
れた際には、患者さん向けのパンフレッ
が良好であれば休薬は必要でないこと
トなどを用いなが
などが明記されていますが、整形外科
ら、初回導入前に
医の立場からは、より安心して投薬継
必ず内服時の注意
続できる環境が整えられたと感じます。
点や副作用と思わ
多くの入院患者さんの口腔内
れる自覚 症状など
を診ていますが、特に高齢の患者さん
を説明するよう心が
で時折口腔内の状態に無頓着で、口腔
け ています。 自覚
ケアへの関心が低い方もいらっしゃいま
症状は患者さんに
す。口腔内の衛生状態を保ち感染源を
わかりやすいよう、
除去しておくことは、誤嚥性肺炎の予
口の中の痛みや違
防などにもつながると思いますので、患
和感、おなかが痛
者さんにもう少し口腔内を清潔に保つこ
くなったり気持ち悪
とに意識を向けてもらえるよう、啓発を
くなったりする、な
続けたいと考えています。
どと具体 的に例を
説明する際には、顎骨壊死という言
挙 げ ています。 退
葉自体が患者さんに怖い病気という印
院時にも、 服 薬を
佐 藤
4
諸 田
CONNECT
林
「土浦地区骨折予防連携協議
ムページからリンクを貼っていますし、
「土浦」
「骨折」で検索すると、トップ
に表示されるようにしています(図 3)
。
図 2 土浦協同病院で使用している
「骨そしょう症フォローアップカード」
体の骨折予防のため、テリパラチド週 1
骨折の危険性の高い骨粗鬆症患者
回投与製剤を投与しています。
にはテリパラチド週 1 回投与製剤
これまで服薬継続の難しさについて
触れてきましたが、テリパラチド週 1 回
大腿骨近位部骨折により入院
投与製剤は患者が医療機関を受診し
する患者の骨粗鬆症治療はビスホスホ
看護師が注射しますから、72 週間継
ネート製剤が中心ですが、整形外科外
続して受診してもらえば服薬アドヒアラ
来を受診して複数の椎体骨折の存在が
ンスが保たれるという点も医師としては
明らかになった骨粗鬆症患者や骨密度
安心できます。地域連携に当たっては、
がかなり低下している患者に対しては、
導入前に副作用も含めた薬剤の詳細を
テリパラチド週 1 回投与製剤を積極的
説明し、導入から最低 2 回は当院外来
に適応しています。週 1 回外来で注射
を受診してもらって副作用の有無を確
を行うテリパラチド週 1 回投与製剤は
認してから紹介するようにしています。
河 内
地域連携に向いていると思いますし、
柴 沼
テリパラチド週 1 回投与製剤
諸田 有佳 氏
説明しています。
ARONJ の恐れがないこともメリットと
の注射後、30 分間は処置室か待合室
初回注射前には、72 週間の注射に
考えられます。
で休んで、体調に異常がないことを確
不安を訴える患者さんもおられますが、
また、骨粗鬆症で骨密度がかなり低
認してから帰宅してもらっています。事
「72 週間終わられた患者さんも何人か
い患者で椎体固定術などが必要となる
前に、めまいや気分が悪くなる可能性
いらっしゃいますよ」
「続けることで骨
ケースでは、骨密度を上昇させることで
があること、水分を多めに取って、運動
が丈夫になり、他の患者さんもお元気
スクリューの安定化を図ったり、隣接椎
はできるだけ控えることなどの注意点を
になられていますよ」などと説明して、
できるだけ不安を取り除くようにしてい
図 3 アクセスしやすい「土浦地区骨折予防連携協議会」のホームページ
ます。また、
こまめに「あと何回ですね」
「ここまで頑張ったのでもう少しですよ」
と、治療の継続につながるような声か
けもしています。
印象に残っているのは、受診の際は
車椅子を使用しないと不安だった患者
さんが、テリパラチド週1回投与製剤
の注射を続けていくうちに、足腰がし
っかりしてきて杖をついて受診されるよ
土浦 骨折
うになったことです。まだ注射継続中
の患者さんで、私たち看護師も車椅子
姿のイメージが強かったため、患者さ
んをお呼びするときに戸惑ってしまうほ
ど、お元気になられて驚きました。待
合室でも他の患者さんに注射で元気に
なったとお話しされていて、他の患者さ
んのモチベーションアップにもつながり
ました。
河 内
注射の継続が難しく治療薬変
更となった患者さんもいますが、2 回目
の注射後、初回ほどはつらくなかった
CONNECT
5
CONNECT
座 談会
きちんと必要な治療を継続できる状況
でしょう。われわれ医療従事者が頑張る
を作ることだと思います。土浦地区での
だけではやはり限界があります。11 月下
情報共有の仕組みを作る中で、できる
旬には当院 OLT メンバーが中心となっ
だけ多くの開業医に参加してもらい、地
て、骨粗鬆症をテーマにした市民公開講
区内で発生する骨折を減らして健康寿
座を開催する予定です。様々な方面から
命を延伸していきたいものです。
地域全体に働きかけ、少しずつでも骨粗
最終的に最も重要なのは、地域住民
鬆症治療の重要性を啓発していく努力を
に骨粗鬆症の重要性を啓発していくこと
今後も続けていきたいと考えています。
図 4 ほねプラスのハガキ付ダイアリー(左)とプログラムの手引き(右)
柴沼 はつ江 氏
と話されて注射継続となる患者さんが
多い印象はあります。やはり副作用に関
して事前にしっかり説明しておくことが
重要だろうと思います。
地域連携を進めていくには
地域住民の疾患啓発も重要
柴 沼
通院の継続に関しては「ほね
プラス」
( 図 4)も活用しています。外
来受診時に患者さんに申込ハガキを記
入してもらうと、毎月患者さんが投函す
る「ほねプラスダイアリー」やアドバイ
スが記載されたカードやヘルシーレシ
総合病院 土浦協同病院
ピ集が届くプログラムで、今月も届いた、
〒300-0028 茨城県土浦市おおつ野四丁目1番1号
と当院に持参される患者さんもおられ
ます。現在は外来待ち時間も長いので、
今後さらに地域連携が進めばよいと考
えています。
河 内
本来の地域連携は、医療機関
を問わず診療科を問わず、患者さんが
(情報提供:healthクリック)
旭化成ファーマのサイトから
全国の骨粗鬆症治療施設を
手軽に検索していただくことができます。
骨粗鬆症治療 情報サイト
www.ak-hcc.com/osteoporosis/
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