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人口減少・成熟社会における技術者の役割
人口減少・成熟社会における技術者の役割 平井公康(建設部門、総合技術監理部門) 戦後からバブル期までの日本は、戦後の欧米にキャッチアップするというひとつの目標 で全国民が一体となり取り組んだ時代です。社会的にも人口増加、それに伴う人口ボーナ スというインセンテイブが働き、世界が驚く速度でアメリカに次ぐ経済大国となり、モノ の豊かさを実現しました。政治体制としては、中央集権制度によりおおきな政府を標榜し ました。その中で技術者は、国土形成のための良質な社会資本基盤の整備に全力で取り組 み、大きな役割を果たしてきました。 しかし、モノの豊かさを得るため、日本が失ったたくさんのものもあります。地方の崩 壊、家族の崩壊、車の普及による中心市街地の崩壊、自然環境の破壊など多くのものを失 いました。私たち技術者も、造ることだけに集中し、真の国民へのサービスなどを忘れた のではとの反省もあります。 1990 年以降、予想はされてはいたのですが人口減少、高齢化が顕在化してきました。人 口減少に伴う人口オーナスという負のインセンテイブがじわじわと発現され、国や地方の 財政がひっ迫してきました。そこで行政サービスを、「地域主権」や「協働」という言葉で 国民に移すことを考えました。しかし、これまで行政サービスまかせになれた国民には、 すぐ対応できるはずはありません。体制的にも地方主権、地方分権と急に叫ばれても、税 制など現行の中央集権時代の制度のままでは無理があります。 今の日本は八方塞の状況だと思います。しかし、その中で、確実に人口減少、超高齢化 は進展しておりますし、財政のひっ迫への対応、地球環境問題など世界の中の日本として これら大きな課題に緊急に取り組んで行かなければなりません。あの3.11 からの復興に しても、現地はさらに人口減少、高齢化が進展しており、これらのことを考慮した復興と しなければ、箱ものなどのハードは元に戻ったが、人がいない、老人だけのまちとなるこ とが現実のものとなりかねません。 今、大震災からの復興は、日本の人口減少、高齢社会にどう対応していくのかという壮 大な社会実験のような気がします。コンパクトなまちづくり、公共交通の再生、住まいと サービス施設の入った合築型の公営住宅、社会資本も維持管理するものと捨てるものを選 別するなど大きな変革が求められる時代だと思います。自由化の風潮は避けられないと思 いますが、自由化と規制のバランスを図りながら、国民も利便性を享受するだけでなく、 痛みも分担し、 「真の豊かさの実現」に取り組んでいく必要があると思います。 技術者としては、これから求められる維持管理などのハード技術に加えて、社会資本管 理やまちづくりにおける合意形成、まちづくり運営などのソフト技術を磨き、地域の住民 と一緒に考え、行動することにより、国民から信頼され、認知される技術者になれるもの と考えております。