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PsyScope マニュアル
PsyScope Manual 専修大学文学部心理学研究室 1997 年 7 月 10 日 もくじ 1 はじめに 1 2 最初の実験を実行する 3 2.1 実験を開く 3 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 2.2 実験を実行する : : : : : : : : : : : 2.3 デザイン・ウィンドウ上で実験を見る 2.4 実験の細部を変更してみる 3 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 4 4 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 5 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 9 実験をデザインする : : : : : : : : : : : : : : : : : : 9 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 10 3.1 スクリプトとグラフィック環境について 3.2 新規の実験を作成する : : : : : : : : : : : : : : : 11 12 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 14 3.2.1 3.2.2 デザイン・ウィンドウを利用する 3.2.3 新規のイベントを作成する 3.2.4 イベント・ダイアログを使用するための属性の設定 3.2.5 3.2.6 イベントの時間制御と配置 3.2.7 コンディションとアクション 3.2.8 要因表とリストを利用する : : : : : : : : : : : : : : : : : : トライアル・テンプレートを作成する 反応を記録する : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 16 19 26 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 30 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 36 : : : : : : : : : : : : : : : : : : 64 73 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 88 3.2.9 ブロックの利用 : : : : : : : : : 3.2.10 被験者情報と被験者群を利用する 3.2.11 実験属性 : : : : : : : : 3.2.12 試行を実行する 3.3 次に進むべきところ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 90 : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 96 i 第 1章 はじめに いまや実験室におけるマイクロコンピュータは、心理学の実験をとりおこなう上での不可 欠なツールとなってきています。しかしながら、新しく実験を組み立てるためにマイクロ コンピュータを使いたいと思っている学生たちの場合、彼らは専門のプログラマーでもな ければ、実験を新たに一からプログラミングするために数百時間を捧げるなどということ も叶わないので、結局はそれを自分の理解力の及ばないものと捉えてしまうに至るのが大 抵です。これでは、心理の学生はまるでブンゼン・バーナーの使えない化学者か、コンパ スを持たない地質学者のようなものです。その道の基礎的とされるツールへの接触を拒む ということは、彼らの実験室作業への直接の出入りを閉ざされてしまうも同然のことで す。 PsyScope の根本的な目標は、心理の学生にとってのこうした技術上の障壁をなく すことにあります。 PsyScope は、ユーザーの側におけるプログラミング技術の必要性を取り除くために設 計されています。ユーザーは、プログラミングに代わって、実験デザインの直観的な視覚 表示を与えてくれるグラフィック環境の中で作業をすることができます。そしてそれに よって、学生をコンピュータ・プログラミングの技巧ではなく、実験心理学の原理の理解 に集中させることができるようになるでしょう。 PsyScope のデザイン上の重要な特徴は: 1. プログラミング不要 PsyScope のシステムは、ユーザーにプログラマーであることや、複雑なプログラミン グ用の記号言語を覚えることを要求しません。システムのこうした面は、ユーザーにとっ ての平易さにつながります。 2. グラフィック環境 こうした平易さを作り出すために、我々は完全にビジュアルな心理学的実験を組み立て ることができるよう、ポップアップ・メニュー、ボタン、スクロール・ウィンドウや、ア イコンなどのマッキントッシュの標準的なインターフェースを利用してきました。 1 第 3. 1 章 はじめに 2 実験デザインの形式を完全にカバー PsyScope のシステムは、あらゆる実験デザインの形式をサポートするように設計され ています。それには、ラテン方格、グレコ - ラテン方格、ブロック型、埋め込み型、リン ク型、マッチ型、ランダム要因型、固定要因型その他の主要な実験デザインの形式が全て 盛り込まれています。 4. 正確さのチェック 学生が作成したプログラムの正確さを保証するために、 PsyScope のグラフィック環境 は「イベントのスケジュール」を生成します。これは実験の個々の試行の内容を詳細にわ たって表示するものです。これらの項目リストは PsyScope によって自動的にコンパイ ルされるので、学生は自らそれを打ち込む必要がありません。この機能によって、学生は 自分が意図していた実験デザインが、実際に実験試行で意図された通りに動くかどうかを 確かめることができます。たとえば、もし学生が第 88 番目の試行における刺激の正確な 位置と形を確かめたいと思ったならば、実験の実行前であろうと、簡単にそれを行うこと ができます。 5. バラエティに富んだ入出力形式 PsyScope は、コンピュータが制御可能な全ての主要な出力形式をサポートしています。 デジタル・サウンドや音声もその範囲に入っていますし、ローマン体やそれ以外の字体の アルファベットで単語を提示することも可能です。それにコンピュータ・グラフィックス のあらゆる形式と、現段階では動画を表示する初歩的な能力も備えています。今のとこ ろ、ストループや ESP、信号検出、絵単語命名、メンタル・ローテーションやその他の 単純な実験形式などは簡単に設計できます。移動窓法や RSVP のようなさらに複雑な手 法でさえも、 PsyScope で設計することが可能です。 6. 精密な時測 実験の時測の完全な精密さを必要とする学生たちのために、 PsyScope は1ミリセコ ンド単位の正確な時測を提供する「ボタン・ボックス」と呼ばれる外付けのハードウェア と一緒に用いることができます。ボタン・ボックスやスクリーンの精確な制御のために要 求される深い (機械語に近い) レベルでの時測ルーチンについては、細部までチェックさ れてきており、またマッキントッシュ系列の全てのマシンで完全にテスト済みです。こ のシステムを開発するにあたって、我々はソフトウェアの時測ルーチン [Rensink, 1990; Westall, Perkey, & Chute, 1989] に周到な注意を払いましたが、この問題を完全に解決 するためには、外づけのデバイスが必要でした。 7. 明解な表示形式と実験デザイン グラフィック環境は、実験構造の明解な視覚表示を与えてくれます。それにこの視覚表 示は、実験デザイン原理の教示の際の教材として使うこともできます。 例えば Shaugh- essy & Zechmeister[1990] を参照して下さい。 第 2章 最初の実験を実行する 「視力実験 (Acuity Experiment)」という簡単なデモンストレーション実験を実行する ことから PsyScope の演習を始めてみましょう。「視力実験」を実行するためには、 PsyScope のコピーがハードディスクにインストールされている必要があります。 PsyScope はディ スクのどこにあっても構いませんが、実験のスクリプトと PsyScope とは同じフォルダ に入れておく方が良いでしょう。「視力実験」を実行するためには他にもう一つ、「視力 実験スクリプト (Acuity 2.1 Experiment script)」というスクリプトのコピーが必要です。 実験を開く PsyScope と「視力実験スクリプト」が同じ場所にあるなら、その「視力実験スクリプ ト」のアイコンをダブルクリックします。これで PsyScope が起動するはずです。最初に PsyScope のロゴがウィンドウに表示され、ロゴが消えると2つの新しいウィンドウが表 れるでしょう。そのうちの最初のものが、下記のような PsyScope コンソール・ウィンド ウです。 図1 - PsyScope コンソール Experiment ポップアップ・メニューは、現在実行可能な全ての実験をリストアップ します。現時点で実行できる実験は、唯一「視力実験」のみです。右側の5つのボタン では、 PsyScope の各種の高次機能を制御することができます。 Quit ボタンまたはコン ソール・ウィンドウの左上隅のクローズ・ボックスをクリックすれば、 PsyScope を終了 したりスクリプトを閉じたりすることができます。まだまだこれを行なってはいけませ ん。 3 第 2 章 最初の実験を実行する 4 2番目のウィンドウはデザイン・ウィンドウで、線で結ばれたアイコンの一組がありま す。もしデザイン・ウィンドウを閉じても、コンソール・ウィンドウの Design ボタン をクリックすれば再びそれを開くことができます。クローズ・ボックスをクリックしてデ ザイン・ウィンドウを閉じ、コンソール・ウィンドウの Design ボタンで再び開いてみ ましょう。 2.2 実験を実行する 以上の準備が整ったら、次に実験を実行してみましょう。これは、コマンド -R をタイ プすればいつでも行うことができます。他にも、 PsyScope コンソール・ウィンドウの Run ボタンをクリックするか、またはスクリーンの一番上にある Run プルダウン・メニュー から Run を選択することでこれを行うこともできます。これら3通りの命令の実行は、 いずれも同じ結果をもたらします。 こうして実験がロードされると、すぐに教示画面が現れて3つのキーの操作を指示して くるでしょう。その基本的な概念は、*が表示されるまでは待機するということです。そ れから、次に現れる刺激への準備が整ったらすぐに「2」のキーを押します。すると直ち に単語又は無意味綴が現れるので、あなたはそれがどちらであるのかを決定しなければ なりません。もし単語と思うならば「1」を、無意味綴と思うならば「3」をタイプしま す。実験は8試行にわたって行われるはずですので、試してみて下さい。もし実験を中断 したい場合は、コマンド -.(ピリオド) を押したままにします。 各試行ごとに、そのデータは出力ファイルに書き出されます。この出力ファイルは、コ マンド -O(オー) でファイルを開くか、スクリーンの一番上にある Utilities メニューか ら View Data File を選択することで見ることができます。このファイルの印刷や編 集に関しては、マッキントッシュの通常の操作で行うことができます。もし実験を中断 していた場合には、その時点で完了していた試行のデータまではセーブされているでしょ う。データファイルの形式やカスタマイズの仕方については下記で、また詳しくは p221 「Part 2: グラフィック環境リファレンス, 6.1.4 データファイル」で述べられます。 PsyScope を実行するたびに自動的に作成されるもう一つのファイルは「PsyScope.log」 ファイルです。他の方法を指定しない限り、このファイルは PsyScope アプリケーション を含むフォルダ内に格納されます。このログファイルには、実験の開始時間、実行した試 行の数、エラーメッセージその他がリストの形で書き込まれています。 2.3 デザイン・ウィンドウ上で実験を見る 「視力実験」には3つの要因があります。その1つはスクリーン上の刺激の位置で、 これには5つのもの (左端、左、中央、右、右端) があります。第2の要因は刺激のサイ ズ (フォント・ピッチ) で、 12、 18、 24 ポイントがあります。最後に、刺激の種類は単 語 (有意味英単語) か無意味綴りのどちらかです。実験計画の観点から言えば、これは完 全に掛け合わされた3要因 (5 × 3 × 2) の被験者内計画になります。デザイン・ウィンド ウのファクターテーブル・アイコン (図2参照) をダブルクリックしてファクターテーブ ル・ウィンドウを開くことにより、この実験デザインをより明確に見ることができます。 第 5 2 章 最初の実験を実行する 図2 図3 - ファクターテーブル・アイコン - ファクターテーブル・ウィンドウ 上記のウィンドウは完成版の実験における被験者内要因計画を記述しています。試行数 が 30 に設定されている (30 個のセルがある) とき、各々の被験者は、このデザイン上の 全てのセルの刺激を見ることになります。 PsyScope の簡潔な教示を続ける (そしてあな たが Quit ボタンを押してしまわないようにする) ために、試行数を 30 から 8 に設定し 直してみます。 2.4 実験の細部を変更してみる PsyScope でどのように実験の細部を調整するかというセンスを養うために、「視力実 験」の一対の条件を変更してみましょう。この実験が少し簡単すぎると思っているなら、 刺激の提示時間を短くすることでもっと難しくすることができす。デザイン・ウィンドウ (「Acuity Experiment」というタイトルで、線で結ばれた様々なアイコンが含まれてい る) の「 Stimulus 」アイコンをダブルクリックすることでこれをやってみましょう (「 Stimulus 」アイコンが見えない場合は、ウィンドウ・タイトルの下の Show Events チェックボックスがチェックされているかどうかを見て、もしチェックされていなければ それをクリックしてチェックします。 Stimulus イベントを含む、一連のアイコンが現れ るはずです)。 これによって、下記のようなイベント属性 (Event れます。 Attributes) ダイアログが呼び出さ 第 6 2 章 最初の実験を実行する 図4 - イベント属性 (Event Attributes) ダイアログ 刺激の提示時間を変えるには、 Event Attribs のラジオボタンをクリックします。 ウィンドウ内のダイアログは、右隣に「100」という数字が記された (現行の提示時間が 100msec であることを示す)Duration 属性を始めとする、別の属性の組の表示に変わる でしょう。 100 の数字をクリックすると新しいダイアログが開き、そこに何か他の値 (「50」 としてみましょう) を入力することで提示時間を変えることができます。 2つ目の変更として、最小フォントを 12 ポイントから 8 ポイントに縮小してみましょ う。これには、小サイズの単語を用いる試行のみを扱う作業に入るために、まずサイズ 要因の「Small」の水準を選ぶことが必要です。ファクターテーブル・ウィンドウに戻っ て、 Small の列の見出しをクリックすることでこれを行います。すると刺激語中で小サ イズの単語が用いられる試行の全てに対応した、この列の全てのセルが反転強調されるで しょう。 図5 - 刺激水準をクリックする ひとたびこの列が反転強調されたなら、その中のセルの1つをダブルクリックするか、 Open Cells ボタンをクリックすれば、トライアルテンプレート・ウィンドウが現われ ます。 第 7 2 章 最初の実験を実行する 図6 - テンプレート・ウィンドウ ここで Stimulus イベントのアイコンをダブルクリックすると、再度イベント属性ダイ アログが開かれます。 Size 属性は、属性リストの真ん中より少し下くらいにあります。 この属性の右隣のポップアップメニューを開き、 Set To を選びます。これで刺激のサイ ズを 12 ポイントから 8 ポイントに変えるためのダイアログが開くでしょう。 この両方の変更を行って、再度実験を実行してみましょう。今度は、特に小サイズの刺 激のところがより難しくなっているはずです。 第 2 章 最初の実験を実行する 8 第 3章 実験をデザインする この章では、 PsyScope における実験の構造と、実験をグラフィック環境の中で対話形式 によって作成するやり方を紹介していきます。あなたが経験豊かなマッキントッシュ・ ユーザーならば、このセクションは必ずや、 PsyScope の世界の散策を始めるのに充分な だけの情報を提供してくれることでしょう。実験の構成要素や、それを作成するために用 いられるツールやダイアログについてのより詳しい説明は「Part 2:グラフィック環境リ ファレンス」で提供されます。 3.1 スクリプトとグラフィック環境について PsyScope の各々の実験に関する情報は、スクリプトに保存されます。 PsyScript (PsyScope のプログラム言語)を使って直接そのスクリプトを書くか、またはポインタで指定して クリックするだけのグラフィック環境を用いるか、のいずれかの方法で実験を作成する ことができます。後者の形式で実験をデザインする場合、実際には PsyScope があなた の代わりにスクリプトを書いてくれています。このスクリプトはいかなるときでも参照 することができるし、それを直接に編集することもできます。実際、あなたが対話形式で 指定したものはすぐにスクリプト上に反映されるし、大抵のスクリプトの変更もすぐに PsyScope の対話型ウィンドウとダイアログに反映されます。 PsyScript はあなたの考えうる殆どどんな種類の実験でもデザインを可能にする強力な スクリプティング言語です。遅かれ早かれ、あなたは PsyScope の能力をフルに利用す るために PsyScript を使いたいと思うようになるでしょう。しかしながら、 PsyScript の 習得はすぐにできるというわけには行かず、より多くの時間とエネルギーを要することに なると思います。 グラフィック環境は、 PsyScript を知らなくとも、殆どの実験の作成や実行を手っ取 り早く行うことができる、直観的で使い勝手のよい環境を提供してくれます。この環境は 実験計画法の基本的な概念に沿って編成されているので、経験を積んで目の肥えた心理学 者にも自然に受け入れられるはずですし、また初学者にこれらの概念を教示する際の手 助けにもなるでしょう。あなたが PsyScript に精通するようになったとしても、実験を 画像的に概観するのにはなおこの環境が便利だということを知っていて、結局はここから PsyScript によるカスタマイズを始めるようかもしれません。 この章では、実験を画像的にデザインするために必要な基本的概念と技術を紹介してい 9 第 10 3 章 実験をデザインする きます。グラフィック環境を用いた PsyScope の実験の構造と設計法についての完全な リファレンスは、マニュアルの第2部で提供されるでしょう。第4部には、スクリプティ ング言語としての PsyScript のリファレンスがあります。 新規の実験を作成する 3.2 グラフィック環境によって新しく実験を作成するために最初に必要なのは、実験が保存 されるスクリプトを作成することです。 まずは PsyScope アプリケーションをダブルクリックして開くことから始めてみましょ う。アプリケーションが開いたとき、メニュー・バーは次のメニューを表示しているはず です。 図7 - 標準メニュー・バー 以下の手順で新しくスクリプトを作成してみて下さい。 1. Design メニューから New Experiment... を選ぶと、新規の実験の名前を尋ね るダイアログが表示されます。 2. 実験に付けたい名前を入力します(ここでは「Example Experiment」としてみま しょう)。 3. OK ボタンをクリックします。 注意:もしこのとき他の実験が既に開かれており、何らかの変更が加えられていた ならば、それを更新してセーブするかどうかを尋ねるダイアログが表示されるでしょ う。更新してセーブしたい場合は Yes を、そうでないならば No を選びます。も しはっきりしない場合には、作業を進める前に更新を再検討するべく Cancel を選 んで下さい。これらの手続きが全て整ったら、上記の手順1に戻りましょう。 4. マッキントッシュの標準のファイル・ダイアログが表示され、実験のスクリプトを セーブするためのファイルに名前を付けるよう尋ねてきます。ファイルの名前(「Exarnple Experiment Script」としましょう)を入力し、もし必要ならファイルを保存 するフォルダも指定して下さい。そして Save ボタンをクリックします。 あなたの行った全ての作業は、今やこのスクリプト・ファイルに保存されているはずで す。 File メニューから Save Script を選ぶか、コマンド -S をタイプして定期的にこの ファイルをディスクにセーブしておくのが賢明でしょう。もし Save Script のメニュー 項目が灰色の字になっていたなら、それはセーブするべき変更点が何もないということで す。また、 File メニューから Save Script As... を選べば、別のファイルにスクリプ トをセーブすることができます。この場合、古いファイルのコピーはディスク上に残り、 実験につけ加えられた全ての変更点は新しい別のファイルの方に保存されます。 Save a Copy as... では、古いファイルの方で作業を続けながら、新しい別のファイルにスクリ プトのコピーをセーブすることができます。 第 11 3 章 実験をデザインする 実験に名前をつけ、スクリプト・ファイルを作成すると PsyScope のコンソール・ウィ ンドウが現れます。そこでは Experiment ポップアップ・メニューに実験名が表示され、 ウィンドウの底部の Script File の欄にはスクリプトの名前がリストアップされているは ずです(もしあなたの PsyScope がデザイン・ウィンドウを自動的に開くバージョンなら ば、コンソール・ウィンドウはその背後にあります。これを見るためにはコンソール・ ウィンドウのどこかをクリックするか、 Windows メニューから Console を選ぶか、 またはコマンド -1 をタイプして下さい)。 図8 - 新規スクリプトのコンソール・ウィンドウ これで実験のデザインを始める準備ができました。新規に実験を作成するときには、 PsyScope が必ず最初の足がかりを与えてくれます。あなたはデザイン・ウィンドウ上に 表示された画像としてそれを目にすることができるでしょう。 3.2.1 デザイン・ウィンドウを利用する デザイン・ウィンドウは、現在選択されている実験の全ての構成要素を画像として提示 してくれ、いわばこれが実験を構築するための「土台」となります。あなたはこれを実験 を概観するために利用することもできるし、新たな構成要素を作成してそれらを連結させ たり、これらの構成要素をカスタマイズするために他のウィンドウやダイアログにアクセ スすることもできます。 p111 「Part 2: グラフィック環境リファレンス, 5.2 デザイン・ ウィンドウ」には、デザイン・ウィンドウ内で利用できる全てのツールと、その使い方の 詳細な案内があります。 もしデザイン・ウィンドウがまだ開いていないならば、下記のいずれかの方法で開いて おいて下さい。 コンソール・ウィンドウの Design ボタンをクリックする。 Window メニューから Design を選択する。 コマンド -2 をタイプする。 下記のようなデザイン・ウィンドウが表示されるでしょう。 第 12 3 章 実験をデザインする 図9 - 新規スクリプトのデザイン・ウィンドウ 新しい実験を作成するとき、 PsyScope は、最初に必要な構成要素である実験オブジェ クトからそれを開始します。その実験を示すアイコン(Ψ)がデザイン・ウィンドウの ワークエリアに現れてきます。 その他のいくつかのアイコンを含むパレットが、ウィンドウの左側にあることに注目し て下さい。これらは、実験に組み込み可能な他の構成要素や、それらを連結するための ツールを表しています。この章では、簡単な実験を作成・実行するために必要な構成要素 だけに焦点を絞っていきます。以下に続くセクションで、これらの構成要素のそれぞれを 簡潔に紹介して、どのようにそれらを作成すればよいかを示し、そして実験を設計するた めに使えるであろう方法のいくつかを実演してみます。この章の情報は、あなたが手っ取 り早く実験の作成を開始できるよう援助してくれるはずです。それぞれの構成要素につい てのより詳細な情報は「 Part 2: グラフィック環境リファレンス」で得られるでしょう。 あなたがより複雑な実験を設計し始めるときには、この情報が有用になると思います。 それでは早速、2つの刺激を順次スクリーンに提示して、2番目の刺激に対する反応時 間を記録する簡単な実験を作成してみることにしましょう。このささやかな実験のために 必要とする構成要素は、トライアル・テンプレートとイベントとアトリビュートです。こ の章の後の方では、ファクターテーブルにも触れることになるでしょう。 3.2.2 トライアル・テンプレートを作成する PsyScope における実験の最も基本的な要素は、試行(trial)です。試行とは、簡単に 言えば、1つまたはそれ以上の刺激が提示され、被験者からの反応が取り入れられるま での一連のイベントのことです。実験は、いくつかの異なる試行タイプから構成される こともあります(例えば、刺激がタキストスコープのように提示されて反応時間が計測 されるまでの試行や、質問項目が提示されてその選択肢が記録されるだけの試行など)。 PsyScope では、実験に組み込もうとするそれぞれの異なる試行タイプをデザインするた めには、それらに対応したトライアル・テンプレート(trial template もしくは単にテン プレート)を用います。これを使うというアイディアはシンプルなものです。つまり、通 常は同じタイプの試行をいくつか実行しようと考えるものなのでしょうが、それらの試 行は、確かに全体に共通する普遍的な構造(刺激を提示し、特定の時間だけ待機し、そ して反応を記録すること)を共有してはいるものの、細部においてはやはり様々(例えば 第 13 3 章 実験をデザインする 実際に提示される刺激や、反応待機時間の設定のように)であるからです。あなたは、ト ライアル・テンプレートを使ってこの試行タイプに見合った構造を定義し、異なる構造を 持つ別の行については、また異なるトライアル・テンプレートをデザインすることになる でしょう。実験を実行するときの、それぞれの実際の試行は、特定のトライアル・テンプ レートの実例だというわけです。 トライアル・テンプレートは、その種類の試行を構成する一連のイベントから成り立っ ています。これらのイベントは順に、何の刺激を提示するか、いつどのようにそれらを提 示するか、遅延反応時間をどれくらいに設定するか、そして被験者からどんな入力を期待 するのかを決定します。あなたはトライアルテンプレート・ウィンドウでこれらのトライ アル・テンプレートを設計し編集するわけですが、まずはそのテンプレートを作成し、そ れを実験アイコンにリンクすることから始めなければなりません。 新規のトライアル・テンプレートを作成するには、以下の手順で行ないます。 1. トライアルテンプレート・アイコン(下記)をクリックし、デザイン・ウィンドウ のワークエリアへドラッグしてマウスボタンを離します。 図 10 - テンプレート・アイコン 2. マウスボタンを離すと、新規のトライアル・テンプレートに名前を付けるよう問い かけるダイアログが現れるでしょう。あなたが付けたいと思う名前を入力して、 OK をクリックするかリターン・キーを押して下さい(名前の付け方の規則については p118 「Part 2: グラフィック環境リファレンス, 5.2.5 新規オブジェクト名ダイア ログ」を参照)。 注意:新規にオブジェクトを作成するとき、 PsyScope は必ずそのオブジェクトに 名前を付けるよう問いかけてきます。もしこの機能が煩雑と思うならば、 Always ask for new object names デザイン・オプション(p272 「Part 2: ク環境リファレンス, グラフィッ 7.6.4 デザイン・オプション」を参照)によってこれをオフに することができます。この場合、 PsyScope が自動的にオブジェクトに名前を与え ますが、これは後からあなたの都合に合わせて変えることができます。 ワークエリア内の実験アイコンの近くに、新しいトライアル・テンプレートが現れ ているでしょう。ツール自動切換えオプション(p272 「Part 境リファレンス, 2: グラフィック環 7.6.4 デザイン・オプション」参照)がオフになっていなければ、 カーソルはリンクツール・アイコン(下記)に変わっているはずです。リンクツー ルはデザイン・ウィンドウ左のパレットからいつでも選択することができます。 図 11 - リンクツール リンクツールを使って、トライアル・テンプレートを実験アイコンにリンクして下 さい。 第 3 章 実験をデザインする 14 3. トライアル・テンプレートをクリックして、実験アイコンにドラッグします。ドラッ グしているときに、トライアル・テンプレートからカーソルにかけてリンク線が延 びているのが見えるはずです。 4. 実験アイコンが反転強調されたらマウス・ボタンを離して下さい。リンクは、今度 は実験アイコンとトライアル・テンプレートの間に表示されているはずです。これ は、テンプレートが実験の一部になったということを示しています。 トライアル・テンプレートで作業をするには、それを開く必要があります。 トライアルテンプレート・ウィンドウを開くには。 デザイン・ウィンドウのトライアル・テンプレートのアイコンをダブルクリックし ます。 下記のウィンドウがスクリーンに現れます。 図 12 - トライアルテンプレート・ウィンドウの図解 このウィンドウの3つのエリアが空白であることに注目して下さい。トライアル・テン プレートの設計を始めるためには、いくつかの新しいイベントを作成する必要がありま す。 3.2.3 新規のイベントを作成する 試行はイベントの集まりから構成されています。イベントは、あなたの期待する特定の 事象が生起すると思われる、ある一定の期間に相当するものと考えることもできます。 あなたは、試行中に生起すると思われる事象のそれぞれに対して、別々のイベントを作成 し、そしてそれらが起こるであろう順番に従ってそのイベントを配置していくわけです。 あなたが試行中に生起を期待するそれぞれの事象に対しては、それぞれ別のイベントタ イプ(event types)があります。例えば、異なる種類の刺激(テキスト、サウンドやピ クチャーの様な)にはそれに対応したイベントタイプがあるし、それだけではなく、遅延 反応時間や被験者の入力に対応した特殊なイベントタイプもあります。それぞれのイベン トのタイプは、トライアルテンプレート・ウィンドウ左のイベントパレットにある個別の アイコンによって表されています。 第 15 3 章 実験をデザインする 新規のイベントを作成し、タイムライン・エリアにそれを順番に並べていくことによっ て、トライアル・テンプレートを設計してみましょう。 新規のイベントを作成するには、 イベントパレットのアイコンの中から、作成したいタイプのイベントをクリックし、 次にイベントネーム・エリアをクリックして下さい。 イベントのタイプについては、 p181 「Part 2: グラフィック環境リファレンス,5.8.7.1 イベントタイプ」で詳しく記述されています。さしあたりここでは、スクリーンに一行 のテキストを表示する Text イベントのみに専念することにしましょう。 Text イベント (イベントパレット中にある下記のような形のアイコン)のタイプを選んだ後で、新規の イベントの名前を入力するよう問いかける下記のダイアログが表示されるはずです。 図 13 図 14 - Text イベントアイコン - 新規イベント名ダイアログ 注意:デザインオプション・ダイアログの Always ask for new object names ア イテムがチェックされていなければこのダイアログは表示されません。 P272 「Part グラフィック環境リファレンス, 2: 7.6.4 デザインオプション」を参照して下さい。 もし違うタイプのイベントを選んだならば、 Event Type ポップアップ・メニューに そのイベントタイプをリストアップした同様のダイアログが表示されるでしょう。 イベントに付けたい名前を、反転強調されたエリア内に入力して、 OK をクリッ クするかリターン・キーを押して下さい。 トライアルテンプレート・ウィンドウは、今度は下記のように見えているはずです。 第 16 3 章 実験をデザインする 図 15 - 新規イベントのあるテンプレート・ウィンドウ タイムライン・エリアにイベントバー(event bar)が表示されているのに対して、そ のイベントの名前とアイコンがイベントネーム・エリアに追加されていることに注目し て下さい。これらのいずれをクリックしてもイベントを選択することができます。選択さ れたイベントについての情報は、イベントステータス・エリアに表示されます。上の図で は、 Event1 が選択されているので、その開始のタイミングと持続時間についての情報が イベントステータス・エリアに現れています。 トライアル・テンプレートには、現在一つのイベントだけが含まれていますが、我々は このイベントについて、それがテキストを提示するために使われるものだという事以外は まだ何も記述していません。イベントの細部(提示されるべき特定の刺激や、それをどう やって提示するか)を記述するためには、その属性を設定しなければいけません。 3.2.4 イベント・ダイアログを使用するための属性の設定 イベントの属性は、そのイベントの全ての特性を決定します。イベント属性(Event At- tributes)ダイアログを用いてこれを設定しましょう。 Event1 のイベント属性ダイアログを、イベントネーム・エリアのアイコンまたは 名前のところをダブルクリックするか、もしくはタイムライン・エリアのイベント バーをダブルクリックして開きます。下記のようなダイアログが現われるはずです。 第 17 3 章 実験をデザインする 図 16 - イベント属性(Event Attributes)ダイアログ イベント属性ダイアログの上部には、イベントの名前を変更するためのフィールドや、 イベントタイプを変更するためのポップアップメニュー、そして作業する属性領域を選ぶ ためのラジオボタンがあります。それぞれのイベントは、刺激属性とイベント属性という 2つの属性領域と連携しています。刺激属性(Stimulus Attributes)は、そのイベント タイプに特有な属性(例えばテキスト刺激のフォントやサイズ、サウンド刺激のボリュー ムなど)を操作します。イベント属性(Event Attributes)は、全てのイベントタイプに 共通するような、より包括的な属性(例えば提示時間)を操作します。イベント属性ダイ アログのリスト・エリアには、 Stimulus Attribs または Event Attribs のラジオボ タンで選ばれた領域の属性リストが表示されます。イベントから最初にイベント属性ダイ アログを開いたときには、そこにはそのイベントの刺激属性の方のリストが表示されてい ます。 Event Attribs ラジオボタンをクリックすればそれをイベント属性のリストに切 換えることができます。 リスト・エリアのそれぞれの属性には、どのようにその属性の変数値を割り当てるか を決定するポップアップメニューがあります。もし何もしないか、 Default を選んだ場 合、 PsyScope がそれに適当な値を与えるでしょう。 Set To: を選べば、属性にはあな たの割り当てた値が与えられ、この値は全ての試行に適用されます。 Vary By: からア イテムを1つを選べば、試行間で属性の値を変えることもできます。この技術については 後述する予定です(p63 「3.2.8.4 リスト」、 p76 「3.2.9.2 ブロック変数」、 p87 「グ ループオブジェクトとグループ変数」および p97 「3.2.12.2 練習モード対実行モード」 にて)。 注意:どんなときでも必ず設定しなければならない唯一の属性は、 Stimulus 属性で す。この属性はイベントで提示される刺激を決定するものです。刺激属性の設定されてい ないいかなるイベントであれ、それを含む実験を実行しようとすればエラー・メッセージ が与えられることになります。 Event1 で表示されるテキストを、その Stimulus 属性を設定することによって割り当 ててみましょう。 第 18 3 章 実験をデザインする 1. 属性リストの Stimulus の右隣にあるポップアップメニューから、下記のように Set To: を選択します(もし Stimulus 属性が見つからなければ、 Stimulus Attribs ラジオボタンが選択されているか確認して下さい)。 図 17 - 属性の設定 2. 標準のテキストダイアログが表示されますので、イベントで表示するテキストを入 力してから、 OK をクリックします。 3. すると、先程入力した刺激が、 Stimulus 属性メニューの Set To: 右の黒丸に続 いて表示されます。 図 18 - 設定された属性の定数値 黒丸または刺激のところをクリックすると再び標準のダイアログが開いて、その刺激の 値を変更することができます。設定した刺激は、トライアルテンプレート・ウインドウの イベント・バー上の、最初にイベントを作成したときには "???"となっていた場所にも表 示されます。 図 19 注意: - テンプレート・ウインドウ上のイベントと刺激セット PsyScope のダイアログ上に黒丸があるときには、その黒丸(またはその横に表 示されるアイテム)をクリックしてアイテムの値を変更することができます。 様に、属性名の右隣にあるポップアップメニューの Set To: を選択することで、必要と する他の属性値を全て設定してしまいます(全ての刺激属性の意味については、 p185 「Part 2: グラフィック環境リファレンス, 5.8.7.3 刺激属性」に記述されています)。 秘訣: 属性を選択してコマンド→をタイプすることによって、テキスト形式で記述で きる属性値ならどんなものでも、イベント属性ダイアログから直接に入力することがで 同 第 19 3 章 実験をデザインする きます。この手続きは属性メニューから自動的に Set To: を選択し、属性値を入力する ためのテキスト領域をメニューの右隣に作成します(「図 20 - 属性値を設定するための ショートカット」参照)。通常はポップアップメニューを利用するような多くの属性(例 えば色、フォント名、フォントサイズなど)についても、同様にテキスト形式で直接に設 定することが可能ですが、その場合には、入力した値が正規の形式に従っているかどうか については自分で確認する責任を負わなければなりません。 図 20 - 属性値を設定するためのショートカット 一旦、少なくとも1つのイベントを作成しそれに刺激値を割り当てたなら、あなたはも う試行を実行することができます。 下記のうち1つを行うことで試行を実行してみましょう。 (ウィンドウ内をクリックするか、 Window メニューからコンソール・ウィンド ウを選択するか、またはコマンド -1 をタイプすることによって)コンソール・ウィ ンドウをアクティブにし、それから Run ボタンをクリックする。 Run メニューから Run を選択する。 コマンド -R をタイプする。 イベントの刺激属性として入力したテキストが、ブランク・スクリーンの中央部に 1/2 秒間提示されるはずです。 3.2.5 イベントの時間制御と配置 試行内のイベントの時間制御は、その持続時間を設定し、イベント配列内のイベントを 互いにリンクさせることで行います。 イベントの時間を制御する あなたは、イベントを一定時間持続させるようにしたり、あるいは何か(例えば被験者 の入力行為、試行の終了、またはサウンドのような特定のタイプの刺激ならば刺激それ自 身の終了)が起こるまで持続するようにさせることもできます。 イベントの持続時間(duration)を設定するには、まずそれを何によって決定するか (固定時間値、何かの生起、あるいは終結条件)を選択し、そして次に必要な細部(例 えば時間数、イベントを終結させる特定の出来事など)を指定します。この作業は、ト ライアルテンプレート・ウインドウでもイベント属性ダイアログでも都合の良い方から 行えます。もしイベントの持続時間を明確に設定しなかった場合には、 PsyScope がデ フォルト値(刺激タイプにより異なる)を割り当ててくれるでしょう。例えば Text 刺激 の場合、それは 500msec になります。 注意: スクリーンをベースとする刺激(テキストやグラフィックのような)の場合には、 実際の刺激提示時間はスクリーンが更新される速度によって制約されます。殆どのスク リーンの場合これは 66Hz で、それは実際の刺激提示時間が 16.6msec の倍数になるとい 第 20 3 章 実験をデザインする うことを意味しています。 Psyscope がスクリーンをベースとする刺激をどう扱うかにつ いてのより詳細な記述は、 p449 「Part 4: スクリプティング・リファレンス,15.2 スク リーンの刺激表示」を参照して下さい。 下記のどちらかの手順によって、 Event1 をマウスがクリックされるまで持続するよう に設定してみましょう。 1. トライアルテンプレート・ウインドウから Event1 をクリックして選択します(こ こでダブルクリックするとイベント属性ダイアログが開きます)。 2. イベントステータス・エリア(トライアルテンプレート・ウインドウの一番下にあ る)の Duration ポップアップメニューから Conditions... を選びます。これで 持続時間(Duration)ダイアログが現われます。 もしくは 1. イベント属性ダイアログを開くか、もし既に開いている場合はそれをアクティブに するためクリックします。 2. Event Attribs ラジオボタンをクリックします。属性のリストがイベント属性に 切替わるでしょう。 3. Duration メニューから Set To: を選びます。これで持続時間ダイアログが現れ るでしょう。 4. 持続時間ダイアログの上部にある Duration: ポップアップメニューから Condi- tions... を選択します。 どちらの方法でも持続時間ダイアログが開き、ポップアップメニューから選択された Conditions: が下記のような入力装置のリストと共に見えているはずです。 図 21 - 持続時間ダイアログ(Conditions モード) コンディションは、次の三通りの方法でイベントを終結させるために使うことができ ます。即ち、被験者が入力装置によって反応を返したとき(マウスを動かすかクリック する、ボタンを押すなど)、ある一定量の時間が経過したとき(Timeout コンディショ ン)、そして試行変数の表出が真と評価されたとき(When コンディション)です。も しこれらから同時に 2 つ以上選択してしまった場合には、イベントは初めのコンディショ 第 21 3 章 実験をデザインする ンが起こるや否や終了してしまうことになります。コンディションについては、以下の p34 「3.2.7 コンディションとアクション」でさらに詳しく説明します。 イベント終結の条件としてマウス・クリックを選ぶためには: マウスアイコン(下記参照)か、その左隣のチェックボックスをクリックします。 これでチェックボックスがチェックされ、デバイスリスト中の Mouse の右隣に・ click が表示されます。 図 22 図 23 - マウスアイコン - マウスが選択された状態の持続時間ダイアログ 入力デバイスを選択する際に、 PsyScope は、デバイス使用者から返ってくるであろう 反応についての何らかの仮デフォルト値を必ず設定します(それぞれの入力デバイスの デフォルト値については、 p181 「Part 2: グラフィック環境リファレンス, 5.8.7.1 イ ベント・タイプ」を参照のこと)。マウスの場合、それはクリックになります。リストの デバイス名のところをダブルクリックするか、(もしデバイスが既にチェックされている ならば)その右隣に表示されている黒丸の反応リストをクリックすることで、このような PsyScope が待ち受けるべき反応のタイプを変更することができます。 Timeout コンディションは、 PsyScope が入力の生起を待機する時間数の上限を指定 するもので、それが経過すると入力生起の有無に拘わらずイベントが終了するようになり ます。 Timeout をチェックすると、デフォルト値は 500msec が割り当てられます。ア イコンかラベルをダブルクリックして、別の待機上限時間を入力するためのダイアログを 開くこともできます。 (クローズボックスをクリックして)持続時間ダイアログを閉じます。今 度はトライアルテンプレート・ウィンドウのイベント・バーが「途切れた」 ものになっていて、マウス・アイコンがその右肩に表示されていることに注 意して下さい。 図 24 - Mouse クリックによって終了する設定の Text イベント 第 3 章 実験をデザインする 22 上述した方法のいずれかを用いて、試行を実行してみて下さい。今度は 刺激がブランク・スクリーン上に現れ、マウスをクリックするまで持続する はずです。もし Timeout 値が指定されている場合には、マウスをクリック しなければ、テキストはその設定時間経過後に消去されるでしょう。 トライアルテンプレート・ウィンドウのイベント・バーの長さからは、イベントの持続 時間を知ることができます。イベントの持続時間が固定された数値になっていれば、そ のイベント・バーの長さは、イベントの持続時間数を示しています。イベント・バーをク リックし、その右下角を操作して長さを調整することで持続時間を変更することができま す。この長さを変更すると、トライアルテンプレート・ウィンドウ底部にあるボックスの 持続時間値も変化します。逆にこのボックスに数字を入力することで、直接に持続時間の 値を設定することもできます。 イベントを配列する デザインされる試行の殆どは(当然ながら)1つ以上のイベントを含んでいることで しょう。例えば、我々が設計している小実験では2つのイベントがあり、そのうちの1つ はもう片方に引き続いて行われます。こうしたイベントの配列は、トライアルテンプレー ト・ウィンドウでそれらをリンクすることによって行われます。 もう1つの Text イベントを追加し、上述した方法を用いてそれに刺激を 割り付けます。するとトライアルテンプレート・ウィンドウは、このように なるはずです。 図 25 - 複数のイベントのあるテンプレート 注意:トライアルテンプレートに新規のイベントを追加する都度、 PsyScope は自動的にそれを最後尾のイベントにリンクします。 最初のイベントは 500msec だけ持続し、2番目のイベントはマウスをク リックするまで持続するように、2つのイベントの持続時間を切り換えてみ 第 23 3 章 実験をデザインする ます。最初のイベントの持続時間を 500msec に変更するには、 Duration メ ニューから Default を選んでもいいし、または msec: を選択して 500 の数 値を入力することもできます。 試行を実行してみましょう。最初の刺激は瞬間提示され、すぐに2番目 の刺激が続いて、そちらの方はマウスをクリックするまでスクリーンに残っ ているはずです。 それでは、下記の手続きを行うことで、2つのイベントの間に遅延時間 を挿入してみましょう。 トライアルテンプレート・ウィンドウにあるイベント・パレットの Time アイコンをクリックして Time イベントを追加し、それからタイムラ イン・エリアをクリックします。このイベントは「Delay」と呼ぶこと にしましょう。 図 26 - Time アイコン イベントは2番目のイベントにリンクされて現れてくるはずです。これ らのイベントの全てを見わたすためには、ウィンドウのサイズを変える必要 があるかもしれません。あるいは、タイムライン・エリアのすぐ下にある縮 小アイコン(下図参照)をクリックして、エリアの大きさを変えることもで きます。 図 27 - 縮小アイコン 上述したように、新しいイベントを作成したときには、 PsyScope は必ず配列の最後 尾のイベントにそれをリンクします。しかしながら、それを必要に応じて再配列すること もまた可能です。 time イベントが最初と2番目のイベントの間に来るようイベントの配列 を変更するために、下記のイベント再リンク法のいずれかを利用してみましょ う。 1. トライアルテンプレート・ウィンドウの Delay イベントを選択します。 2. イベントステータス・エリアの Start at: 行の右端にある2つのポップ アップメニューのうち2番目(最右端)の方に行きます。 3. Event1 (この名前が変更されているならば最初のイベントに相当する もの)を選択します。 第 24 3 章 実験をデザインする 図 28 - イベントの開始時間の設定 4. 同じ要領で、2番目のイベントを Delay イベントの末尾にリンクします。 またはこのような方法もあります。 1. コマンド・キーを押したまま Delay イベントをクリックします。カーソ ルはリンクツール(下図参照)に変わるでしょう。 図 29 - リンクツール 2. 最初のイベントのイベント・バーの右半分をクリックします。 Delay イ ベントはいまや最初のイベントの末尾にリンクされているはずです。 3. 同じ要領で、2番目のイベントを Delay イベントの末尾にリンクします。 トライアルテンプレート・ウィンドウは下記のように見えているはずです。 第 25 3 章 実験をデザインする 図 30 - テンプレート・ウィンドウ内の再リンクされたイベント 試行を実行してみましょう。最初のイベントの刺激が短時間表示され、短時間のブラン ク・スクリーンに続いて 2 番目のイベントの刺激が現れるはずです。 トライアルテンプレート・ウィンドウを用いれば、いかようにもあなたの希望通りにイ ベントの順番や時間を調整することができます。これは、メニューとイベントステータ ス・エリアの Start at: バリュー・ボックスを使うか、または直接イベント・バーを操 作することで可能になります。ある特定のゴールに至るための道が一つではないことは一 般的にお分かりでしょうが、例えば、上の例のように最初の刺激イベントと次の刺激イベ ントの間に遅延時間を挿入する場合ならば、別個にタイム・イベントを加える方法の代わ りに、最初のイベントが終了してから 500msec 後に 2 番目のイベントがスタートするよ うに設定することもできます。これを試してみましょう。 上述した方法の 1 つを使って、最初のイベントに 2 番目のイベントを直接再リンクし ます。そして下記のように Delay イベントを取り除きます。 1. Delay イベントを選択します。 2. Edit メニューから Cut か Clear コマンドを用います。 Delay イベントはゴミ箱 に移され、必要なら後で取り出すこともできるでしょう。 それでは、 2 番目のイベントが選択されていることを確認した上で、最初のイベント が終了した後で 500msec 遅れて 2 番目のイベントがスタートするよう、下記の 2 つの方 法のうち 1 つを用いてみましょう。 イベントステータス・エリアの Start at: のバリュー・ボックスに「500」を入力 します。このエリアをアクティブにするには、マウスでそこをクリックするか、ま たはエリア内の数字が反転強調されるまでタブキーを押します。 もしくは イベントステータス・エリアの Start at: の数値が「500」になるまでイベント・ バーを右にドラッグします。 トライアル・テンプレート・ウィンドウは下記のように見えているはずです。 第 3 章 実験をデザインする 図 31 26 - テンプレート・ウィンドウ上の、遅延が設定されたイベント ここで試行を実行してみれば、以前 Delay イベントが(独立して)用いられていたと きと同じ結果が出てくるでしょう。 一般に、単にイベントの開始を遅延させたいだけの場合(そしてそのイベントが、試行 の開始やリンクされたイベントに続いてスタートするような場合)ならば、イベントス テータス・エリアの Start at: の値を変えることでそれを行うことができます。しかし 遅延時間中に何かが起こることを期待するような場合には、新しい別のイベントをつけ 加えるべきでしょう。例えば、最初のイベントに対する反応を 2 番目のイベントとの間 の遅延時間中に記録したいと思うならば、「遅延イベント」か「入力イベント」を用いま す。我々が現在作業中のこの小実験では、 2 番目のイベントに対する被験者の反応時間 を記録しようとしているわけですが、次節ではどのようにそれを行うかについて説明しま す。 3.2.6 反応を記録する PsyScope で反応を記録するということは、実際には、試行中に生起するアクション(action)を設定する際の一特例に過ぎません。アクションとは、試行の際、指定されたコン ディションの下で実行されるように設定できる操作(operations)のことです。この節で は、反応を記録するためのコンディションとアクションの使用法について示します。次節 では、試行の際に様々な操作を実行する別の種類のアクションを設定する方法について示 すことにします。 反応(例えばマウスのクリックやキー入力など)を記録するためには、あなたの標的と するタイプの反応が生起したときに「RT[] アクション」が起こるよう設定しなければい けません(この RT の後ろの [] は、そこにパラメータが割り当てられることを示してい ます。今はこれについて心配することはありません { ここでは単に正確さを期すために 含まれているだけで、パラメータについては次の節、 30頁「3.2.7 コンディションとアク ション(原著 p34)」で検討します)。 RT[] アクションは、反応の時間や種類をデータ 第 27 3 章 実験をデザインする ファイルに記録するものです(データファイルについては?? 頁「ログファイルとデータ ファイル(原著 p83)」で説明。 p226 「Part ログファイル」と p221 「Part 2: グラフィック環境リファレンス, 6.1.5 2: グラフィック環境リファレンス, 6.1.4 データファイ ル」も参照のこと)。 RT[] アクションの設定は、反応が起こると目されるイベントの Ac- tions 属性を設定することで行います。 Actions 属性は Event Attribs 属性セットの 中にありますが、この他にも反応のタイプやコンディション(記録しようとする反応= RT[] アクションを誘発する)をも指定する必要があります。 RT[] アクションが誘発され ると、そのイベントの開始から反応生起時までにかかった時間が記録されます。 2 番目のイベントの提示中に押されたキーを記録するためには: 1. Event2 のイベントダイアログを開き、 Event Attribs のラジオボタンを選択し ます。 2. Actions ポップアップメニューに行き、 Set to: を選択します。これでアクショ ンダイアログが現れてくるでしょう。 3. アクションダイアログの New ボタンをクリックします。いまや画面は次のように なっているはずです。 図 32 - アクション・ダイアログの、空白のコンディション - アクション対 Conditions と Actions の見出しの下に、矢印で分割された 2 つのボックスがあ ることに注目して下さい。このアクション・ボックスには実行したいアクションを、 コンディション・ボックスにはそれが生起するためのコンディションを指定します。 Event2 提示中のキー入力を記録するために、残りの手続きを進めましょう。 4. 左側のボックス(Conditions: の見出しの下にあり、まだ何も記入されていない もの)をダブルクリックします。するとコンディション・ダイアログが現れます。 第 28 3 章 実験をデザインする 図 33 - コンディション・ダイアログ 5. Key アイコン(下記参照)またはその隣にあるチェックボックスをクリックする か、もしくは Key の文字のところをダブルクリックします。するとキー・ダイア ログが現れます。 図 34 図 35 - Key アイコン - キー・ダイアログ 6. この Any はデフォルト値(初期設定値)です。反応を記録しようとするキーをこ の中にタイプすることで置き換えが可能ですが、どのキー入力をも記録するような 設定のときには Any をそのままにします。設定し終わったらダイアログを閉じて 下さい。 7. アクション・ダイアログに戻り、矢印の右側の(Actions の見出しの下にある) ボックスを選択します。すると Actions の見出しの右側に、 New と記されたポッ プアップ・メニューが現れてくるでしょう。このメニューから RT を選択します。 第 29 3 章 実験をデザインする 図 36 - アクション・ダイアログから新規のアクションを選択する アクション・ダイアログは現在このように見えているはずです。 図 37 - アクション・ダイアログの新規アクション 試行を実行してみましょう。持続時間ダイアログでタイムアウト値を指定しない限り、 Event2 はマウスをクリックするまで持続する(そのように設定されているので)ことを 覚えておいて下さい。 キー・ダイアログで設定したキーのどれかをイベントの終了前に押した場合、そのキー と、キーが押された時間(Event2 の開始時からの時間)がデータファイルに記録されま す。一旦試行が終了すれば、 Utilities メニューの View Data File コマンドでデータ ファイルを開いて見ることができます。データファイルの形式については p221 「Part 2: グラフィック環境リファレンス, 6.1.4 データファイル」で述べます。 被験者入力の記録というのは、 PsyScope の試行上で様々な操作を実行するための、コ ンディション(Key[Any] など)やアクション(RT[] など)の用法の一例にしか過ぎませ 第 30 3 章 実験をデザインする ん。他にも、実行可能な多くのアクションと、それを誘発するために利用できる様々なコ ンディションがあります。いくつかの例について次節で説明しましょう。 3.2.7 コンディションとアクション アクション(Actions)とは、試行の実施中に、指定されたコンディション(Conditions) の下で実行される操作(operations)のことです。指定されたコンディションが生起した ときに、アクションが実行されます。コンディションの成立は、アクションを誘発する (アクションの "引き金 "になる)ものと考えることができます。 注意:ここでの「コンディション」という用語の意味を、「個々の要因の掛け合わせ」 という意味(「実験条件(condition)」と言うときのような)と混同しないようにして 下さい。後者の意味でのコンディションについては、以下の?? 頁「3.2.8.1 要因表の作成 (原著 p40)」と p133 「Part 2: グラフィック環境リファレンス, 5.7 要因とリスト」で 説明します。 アクションを誘発するために利用できるコンディションには、次の 3 つのタイプがあ ります。即ち、 1)イベントの開始または終了、 2)被験者の入力(マウス・クリックや キー入力のような)、および、 3)試行変数(trial variable)の表出値(これは PsyScope の高次の特徴に属するので、ここではこれ以上触れません。この変数の説明としては p208 「Part 2: グラフィック環境リファレンス, 5.10 試行管理変数」を参照して下さい)で す。 前節で見たように、コンディションとアクションはイベントの Action 属性によって 設定されます。先程は、被験者がキーを押したときに生起するよう RT[] アクションを設 定しました。既にお気付きかもしれませんが、利用できるアクションには、他にも様々な 種類のものがあります。例えば、 Beep[] アクションと Start[] コンディションを組み合わ せることによって、イベントの開始時にビープ音を鳴らすことができますし、 RunEvent[] や EndEvent[] アクションを入力コンディションと組み合わせることで、特定の反応が生 起したときにイベントを開始したり終了させたりすることもできます。また、 QuitTrial[] アクションと Key[CMD - q] コンディションを組み合わせることで、コマンド -Q が入力 されたときに試行を中止することもできます。イベントの Actions 属性をいろいろと設 定してみることで、これらの機能を探索してみましょう。 PsyScope のアクションについ ての完全な説明は、 p202 「Part 2: グラフィック環境リファレンス, 5.9.4.1 利用可能な アクション」にあります。 与えられた 1 つのコンディションに対して、複数のアクションの対応づけができるこ とに注目して下さい。結果としては、コンディションが生起すればそれらの総てのアショ ンが実行されることになります。逆にアクションと複数のコンディションを対応づけるこ ともでき、そのときには、指定されたコンディションのうちのどれかが生起すれば全ての 対応するアクションが実行されることになるでしょう。この例として、 2 番目のイベン トに対して反応を行ったときにビープ音が鳴るように、我々の小実験に手を加えてみるこ とにします。 キー入力の反応によって RT[] アクションが実行される際、ビープ音が出るよう設定し てみましょう: 第 3 章 実験をデザインする 31 1. もしまだ Event2 のアクション・ダイアログが開いていなければ、それを開いて下 さい(前節の例の手続きを参照)。 2. RT[] アクションのボックスをクリックして選択します。 3. Actions の見出しの右にある New メニューから Beep を選択します。 ここでアクション・ダイアログは下記のように見えているはずです。 図 38 - アクション・ダイアログの Beep[] アクション 試行を実行してみましょう。 Event2 が表示されている間どのキーを押してもシステム・ ビープが聞こるはずです。 コンディション・ボックスをダブルクリックして開き、別のコンディションのチェック ボックスをチェックすることで、 RT[] と Beep[] アクションを誘発する他のコンディショ ンを追加することができます。例として、以下の手続きによって Mouse[Click] をコンディ ションに追加してみましょう。 1. コンディション・ボックス内の任意の点をクリックして選択し、さらにダブルクリッ クしてコンディション・ダイアログを開きます。 2. マウス・アイコンまたは隣にあるチェック・ボックスをクリックするか、もしくは Mouse の文字をダブルクリックします。 3. マウス・ダイアログの Click と記されたボックスをチェックするか、マウスボタン を指で押している絵のアイコンをクリックし、それから OK をクリックします。 4. コンディション・ダイアログを閉じます。 アクション・ダイアログは下記のように見えているはずです。 第 3 章 実験をデザインする 図 39 32 - アクション・ダイアログと追加されたコンディション これで、キーを押すかマウスをクリックしたときにビープ音が聞こえ、 RT が記録さ れることでしょう。マウスをクリックするとこれらのアクションが起こるだけでなく、お まけにイベントまでもが終了してしまうことに注意して下さい。これは Mouse[Click] が イベントの終了のためのコンディションでもあるためです。 アクションを選択し、 Edit メニューから Clear を選択するか、コマンド -X をタイプ することでそれを消去することができます。コンディションを消去するためには、コン ディション・ダイアログを開いてデバイスのチェックを外さなければなりません。新しい コンディション - アクションのペアは、アクション・ダイアログの右上にある New ボタ ンをクリックすることで追加することができます。 殆どのアクションは 1 つかそれ以上のパラメータを持っており、それはアクションの 細部(実行の仕方)をコントロールするために用いられます。多くの場合、アクションの パラメータを記述する必要はありません(PsyScope はアクションのパラメータに適当な デフォルト値(初期設定値)を割り当てています)。例えば、何のパラメータも記述され ていないときには、 Beep[] アクションは「(PsyScope 内蔵の)正解のビープ」を鳴らし ます。しかしながら、このアクション・パラメータは実験をカスタマイズするときに有用 になります。例えば Beep[] は、どのサウンドを使うかを指示するパラメータをとり、そ れにはシステムファイルや PsyScope によって開かれている「snd」リソース上のどのよ うなサウンドでも記述可能です(PsyScope にリソースを追加する方法については p202 「Part 2: グラフィック環境リファレンス, 6.1.3 リソース」の説明を参照のこと)。アク ションのパラメータは、アクション・ダイアログのアクションをダブルクリックすること で設定ができます。これを行うと、パラメータのリストと、各パラメータの値を設定する ための(属性値の場合と同じような)ポップアップメニューが入ったダイアログが現れる でしょう。 被験者がキーを押したときに生じるビープ音を、以下に従って変更してみましょう。 1. アクション・ダイアログの Beep[] アクションをダブルクリックします。 Beep パ ラメータをリスト・アップしたダイアログが現れます(ここではパラメータの名前 第 33 3 章 実験をデザインする がたまたまアクション自体と同じものになっています)。 2. Beep に隣接するポップアップメニューから Set To: を選択します。使用可能な ビープ音のリストのダイアログが現れますので希望のものを 1 つ選び、ダイアログ を閉じます。 Event2 が表示されている間にキーを押すかマウスをクリックすれば、今度は新しいビー プ音が出てくるはずです。 PsyScope で利用できる全てのアクションのパラメータについては、 p423 「Part 4: ス クリプティング・リファレンス, 14.1 アクションのリファレンス」で説明します(興味が あれば、アクションについてのオンラインヘルプでも情報を得ることができます)。 アクションの active until と maximum instances のパラメータは、それぞれアク ションがアクティブとなる(即ち誘発可能な)期間と、アクションの実行可能な回数をコ ントロールするものです。通常ならば、アクションはそれが属するイベントの持続中に のみアクティブになります。例えば、上記の例の RT[] と Beep[] アクションは、 Event2 の提示中にキーを押すか、またはマウスをクリックした場合にのみ実行されます。もし Event2 が終了するまでこれらの反応が起こらなければ、何のアクションも実行されない でしょう。しかしまた、何らかの状況の下では、アクションがアクティブである期間を もっと拡張したいと思うようなことがあるかもしれません。例えば、非常に短いイベント に対する反応を記録したい場合があるとします。このためには、 RT[] アクションの Ac- tive Until を At least One Instance に設定します。これはアクションを、それが少 なくとも 1 回実行されるまではアクティブのままでいるよう保証してくれます。実際、 これ以上実行するイベントがなくなったとしても、そのアクションを誘発するような適切 な入力が生じるまで試行は続くでしょう。アクションを、それが属しているイベントの範 囲を越えてアクティブのまま継続させるためには、何らかの別のイベント(例えば短時間 の刺激イベントに続く Time イベントなど)の末尾に Active Until を設定するという 方法もあります。 上記の例を演習するために、 Event2 を非常に短時間にし、そして変更を加えてみましょ う。 1. Event2 の持続時間を 100msec に設定します。 2. Event2 のアクション・ダイアログを開きます。 3. RT[] アクションを選択し、 Active Until を At Least One Instance に設定 します。そして Beep[] アクションについても同様のことを行います。 第 34 3 章 実験をデザインする 図 40 - Active Until の設定 試行を実行してみると、今度はキーを押すかマウスをクリックするまでそれが持続して いることでしょう。 RT[] や Beep[] アクションのコンディションのときのように、 Mouse[Click] を取り除 いてみることにします(コンディション・ダイアログを開き、 Mouse 行のチェックを外 す)。それから試行を実行して、 Event2 の提示中にマウスをクリックしてみましょう。 Event2 が終了しても、 PsyScope はキーを押すまでは待機状態のままです(即ち、試行 が継続しているということ)。これは、 Event2 の持続期間がまだ Mouse[Click] に設定 されたままなのに対し、もはやクリックがアクションを誘発しないからです。アクション は現在、少なくとも 1 回それが実行されるまではアクティブのままでいるように設定さ れているので、試行は(キーを押すことによって)アクションが誘発されるまで継続する ことでしょう。 今度は、別のイベントが終了するまでアクションがアクティブのままでいるようにして みましょう。 1. トライアルテンプレート・ウィンドウに新しい Time イベントを追加し、それが Event2 の末尾にリンクされているかどうかを確認します。 2. Time イベントの持続時間を 100msec に設定します。 3. Event2 のアクション・ダイアログを開き、 RT[] と Beep[] アクションの Active Un- til を End of Event3 に設定します。 第 3 章 実験をデザインする 図 41 35 - 別のイベントに関連づけた Active Until の設定 今度は、 Event3 が終了するまでの間にキーを押すかマウスをクリックしなければいけ ません。ひとたび Event3 が終了してしまったら、もう遅すぎます。一旦 Event3 が終了 すると、試行もまた終了してしまうことに注意して下さい。 Maximum Instances はアクションが何回実行できるかを決定します。一旦この回 数だけアクションが実行されると、 Active Until の設定に拘わらず、アクションはア クティブでなくなります。通常は Maximum Instances は 1 に設定されており、それ はアクションが 1 回だけ実行できることを意味しています。もしこの値が 1 より大であ れば、設定されたアクションの最大実行回数が達成されるか、またはアクティブな期間が 終了するまでの間は、アクションはその関連するコンディションが生起する都度実行され ることでしょう。 1 秒間にキーを何回押せるかを計れるようにスクリプトを修正してみましょう。 1. Event3 を取り除きます。 2. Event2 の持続時間を 1000msec に設定します。 3. Event2 の Active Until を End of This Event に設定します。 4. タブキーかマウス・クリックでカーソルを Maximum Instance のボックスに移 動し、 100 や 200 のような大きな数字を入力します。 試行を実行し、そして Event2 が始まるやいなや、できる限り猛烈にキーを押し始めて 下さい。試行が終了したら、データファイルを開いてその末尾に行き、そしてデータエリ ア内にどれぐらいの行があるか数えてみましょう(Statistics ユーティリティの利用も 考えてみて下さい: p262 「Part 2: グラフィック環境リファレンス, 7.3.1 編集メニュー アイテム」を参照)。もし数が 60 以上であったなら、何かが狂っています。 イベント、属性、それにアクションは、 PsyScope において試行を組み立てる際の強力 なツール・セットとなります。しかしながら、今まで作業してきた試行は固定されたもの でした。即ち、ひとたび試行に変更を加えたなら、その後は実行の都度毎回同じ試行が繰 第 36 3 章 実験をデザインする り返されてきたわけです。言うまでもないことですが、殆どの実験は試行によって何らか の方法で刺激を変えることを必要とします。 PsyScope でこれを成し遂げるための方法 は数多くありますが、最も重要なものは要因(factors)を使用する方法です。 3.2.8 要因表とリストを利用する 一般的に言って、 PsyScope の実験における要因(factor)は、あなたが実験によって 解明しようと試みている科学的な疑問と密接に関連した変数となります。例えば、あなた は刺激の大きさが被験者の反応時間にどのような影響を与えるのかということに興味が あるかもしれません。全ての実験可能な大きさについて検査を行うのはあまり実用的で はないので、その中からいくつか(ここでは3つとしましょう)を選び出し、その3通り の大きさで提示された刺激に対する被験者の反応時間を検査することになるでしょう。こ のケースでは、刺激の大きさ(size)が実験の要因となり、その中には検査を行う3通り の大きさに対応した3つの水準(level)があることになります。また、提示の際の(ス クリーン中央の)凝視点からの距離のような、刺激の他の局面を変えたいと思うこともあ るかもしれません。するとそれは実験のもう一つの要因となるでしょう。2つ以上の要因 がある場合には、試行間におけるそれぞれの水準の組合せをどのように採り上げていくか 決定するために、要因同士が組み合わせ(crossed)られます(例えばサイズ大×左側提 示、サイズ小×中心提示など)。 PsyScope で要因を作成するには、2つの方法があります。最も簡単で一般的な方法は、 要因表(factor table)を作成することです。要因表はファクターテーブル・ウィンドウ に表示されます。要因表は、作成された全ての要因と水準、及びそれらの組み合わせ方を 表示し編集することができる対話形式の表として考えることができます。要因表はまた、 それぞれの要因の水準と連携した値を設定するのに便利な方法をも提供してくれます。 要因を作成するもう一つの方法は、リストで用いられるリスト・ダイアログを通して行 うものです。こちらの方は要因表よりもいくらか柔軟な設定ができますが、しかしやや 上級の技術になります。この節では、まず要因表の使い方について示していくことにしま しょう。リストの作成については、 p63 の「3.2.8.4 リスト」で述べることにします。 要因表の使い方を演習するために、実験例をより実際的なものに切り換えていきましょ う。 p7 の「第2章. 最初の実験を実行する」で扱った視力実験を再作成してみることに します。 Design メニューの New Experiment コマンドを選んで新規の実験を 作成し「視力実験(Acuity Experiment)」と名付けます。もしデザイン・ ウィンドウが自動的に開かなければ、先へ進んでデザイン・ウィンドウを開 きます(このやり方についての説明は、上述の p15 「3.2.1 デザイン・ウィ ンドウを利用する」を参照)。 要因表を作成する 新規の実験を作成する際、 PsyScope は前にも見たように実験オブジェクトをその出 発点とします。これまでは、そこから続いてトライアルテンプレートの作成を始め、これ を用いて実験の試行を定義していました。しかしながら、要因表を利用する場合には、そ 第 3 章 実験をデザインする 37 の表がトライアルテンプレートにとって代わり、試行は要因表を通してデザインすること になります。 この節での演習の基本概念は次のようなものです。即ち、まず要因表オブジェクトを作 成した後で、そのオブジェクトをダブルクリックしてファクターテーブル・ウィンドウを 開きます。そのファクターテーブル・ウィンドウ内に、実験の要因と、それぞれの要因に 対する水準を作成します。これらは要因の異なる水準に対応した行列からなる表として表 示され、表のそれぞれのセルは、要因の個々の水準の組合せ(crossing)に対応していま す。まずはこれがどのように機能しているかを見てから、実験における実際の試行のデザ インを続けることにしましょう。 初めに、下記の手順で新規の要因表を作成します。 1. ツールパレットのファクターテーブル・アイコン(p8 「図 2 - ファク ターテーブル・アイコン」参照)をクリックし、次にデザイン・ウィン ドウをクリックして、リンク線を実験オブジェクトへとドラッグします。 図 42 - 要因表を実験オブジェクトにリンクする 2. Table1 をダブルクリックして、ファクターテーブル・ウインドウを開 きます。 3. New factor ボタンをクリックして2つの要因を作成し、それぞれ順 に「Size」と「Position」と名付けます。 第 38 3 章 実験をデザインする 図 43 - ファクターテーブル・ウィンドウの図解 注意:実際のところファクターテーブル・オブジェクトには、密接に連 携したいくつかの要因表をセットとして含めることができます。これは 被験者間デザイン(p93 「被験者群と被験者間デザイン」にて後述)で 作業しているときには重宝です。しかしながら、圧倒的に多くの場合そ のセットの中には1つの表しかないことが普通でしょう。それゆえ、オ ブジェクトの名前は「ファクターテーブルセット」ではなくて「ファク ターテーブル」となっているのです。 次に、2つの要因に水準を付け加える必要があります。まず Size 要因 から始めましょう。 4. 要因表の左上の隅にある Size 要因をクリックして選択します。 Delete Factor と New Level ボタンがアクティブになっていることに注意し て下さい。 図 44 - 要因表から要因を選択する 5. New Level ボタンをクリックするか、またはコマンド -N を入力する ことで Size 要因に新規の水準を設定します。この水準は「Small」と名 付けましょう。 6. もう一つの新規の水準を追加して「Middle」と名付けます。新規水準 ダイアログを閉じる前に、 Another のボタンに注目して下さい。ファ 第 39 3 章 実験をデザインする クターテーブル・ウィンドウに戻ることなく新しい水準を追加するため に、これを利用することができます。 図 45 - 新規水準ダイアログ 7. Another ボタンをクリックするか、またはコマンド -A を入力し、こ の3番目の水準を「Large」と名付けます。これで必要とする全水準が 揃ったので、 OK ボタンをクリックするかリターンキーを押します。 ファクターテーブル・ウィンドウはこのように見えているはずです。 図 46 - 新規の水準があるファクターテーブル・ウィンドウ 上述した同じ手続きを用い、 Position 要因を選択して「LeftFar」「Left- Near」「Center」「RightNear」「RightFar」と名付けた5つの水準を作成 します。ファクターテーブル・ウィンドウは 、今度はこのように見えている はずです。 第 40 3 章 実験をデザインする 図 47 - 全要因に対する水準の設定されたファクターテーブル・ウィンドウ これで要因表が作成されました。要因表のそれぞれのセルは、実験の2つの要因の組合 せに 対応しています。例えば、左上のセルは Small と LeftFar の、右下のセルは Large と RightFar の組合せに対応しています。 PsyScope は、それぞれの試行の開始時に1つ のセルまたは組合せを選び出し、その組合せの内容に従って試行を実施します。各セルの 中にある数値は、 PsyScope が全てのセルを一巡して次のサイクルに入るまでの間に、 そのセルが何回選び出されるかということを示しています。対応するセルの加重値を設 定することで、このセル中の数値を設定できます。これについては後述の予定です(p58 「セル加重値」参照)。表示画面のカスタマイズと、実験の実行時にセルが選び出される 順番を動かすこととによって、要因表の要因と水準を再配列することができます。 PsyScope がセルを選び出す順番についても後述される予定です(p54 「セルの配列」参照) 。 注意:要因表のセルと実験のコンディションの間には密接な関連があります。一般に、 これらは互いに関連づけられてはいますが、全く同一の項目とはいえません。実験に1つ の要因表しかないときには、どのセルも実験の単一のコンディションに対応しています。 しかしながら、実験に複数の要因表(あるいは要因の組)があるときには、実験の各々の コンディションはそれらの要因表群から来る特定のセルの組合せ(あるいは要因セットの 組合せ)に対応することになります。コンディション、セル、組合せの間の関係について は p133 「Part2: グラフィック環境リファレンス, 5.7. 要因とリスト」で詳しく説明され ます。 要因表から試行を構成する 要因表のセルについて試行を作成するには、セルを「オープン」して、既におなじみの 標準のものと似たトライアルテンプレート・ウィンドウ上でその構成を行います。要因表 のセル(またはセルの一群)をダブルクリックすると、トライアルテンプレート・ウィン ドウが開き、そのセル(群)の試行を作成することができるようになるのです。しかしな がら、このトライアルテンプレート・ウィンドウ(ウィンドウタイトルの左にダイヤモン ド(■)マークが表示されている)は要因表にリンクされた特殊なもので、ウィンドウ上 で行なう作業は全て、そのとき要因表で選択されているセルの試行のみに適用されます。 従って、あるセルの組全体に共通する試行特性については、それらのセルを選択した上で 第 3 章 実験をデザインする 41 トライアルテンプレート・ウィンドウを用いて割り当てることになります。セルによって 異なる試行特性については、要因表からそれを適用するセルの組だけを選択して、トライ アルテンプレート・ウィンドウで設定するわけです。下記の例題は、この点で必ずや役に 立つものと思います。 しかしながら、要因表とセルについての作業をするために、まずはいくつかの操作法と 選択法のコツを知っておくことも有用でしょう。 既に作成した要因表には、2つの要因(サイズとポジション)がありま す。 次に、これらに対応する試行とイベントを作成しなければなりません。 最初は、実験の全ての試行に共通の要素から作成していくのがよいでしょう。 「視力実験」では、どの試行にも4つのイベントがあります。即ち、凝視点 を表示して、被験者がマウスをクリックするまで待機する「Fixation (凝視 点)イベント」、スクリーンに刺激を瞬間提示する「Stimulus (刺激)イベ ント」、「RT period (反応入力段階)」、それに「試行間インターバル (ITI)」 です。それではこれらを作成することから始めてみましょう。 1. 要因表の全てのセルを選択して、 Open ボタンをクリックするか、またはいずれ かのセルをダブルクリックします。 これでタイトルの左にダイヤモンド(■)マー クのあるトライアルテンプレート・ウィンドウが開きます。 2. 上述の順番に4つのイベントを作成します。 Fixation イベントと Stimulus イベン トは Text イベント、 RT period は Input イベント、そして ITI は Time イベン トになります。イベントの全てを一覧できるようにするために、イベントエリアの スケールを縮小したいと思うようなことがあるかもしれません。その場合はウィン ドウの左下のコーナーにあるズームアイコンをクリックして下さい。 これを行うと、トライアルテンプレート・ウィンドウは概ね下記のようになっているは ずです。 図 48 - より多くのイベントが設定された状態のテンプレート・ウィンドウ 第 3 章 実験をデザインする 42 これでイベントは適切な位置にありますので、試行によって変わらないような属性の値 を設定してみましょう。(まだ要因表の全てのセルが選択されたままなので、ここで作成 したイベントの構造(および設定した属性値)は全ての試行に適用されるということを思 い出して下さい)。最初に各々のイベントの持続時間を設定します。 Fixation イベントの持続時間を Key[2] に設定します。 Stimulus イベントの持続時間を 100msec に設定します。 RT Period イベントの持続時間を 1500msec に設定します。 ITI イベントの持続時間を 500msec に設定します。 凝視点は全ての試行で同じですので、次にこのイベントの刺激属性を設定しましょう。 Fixation イベントの属性ウィンドウを開き、 Stimulus 属性をアスタリスク(*) か正符号(+)に設定します。 トライアルテンプレート・ウィンドウは、今度はこのように見えているはずです。 図 49 - より多くのパラメータが設定された状態のテンプレート・ウィンドウ これで、実験の基本的な構造は整いました。次に、実験条件(前に定義した要因と水 準)に従って、試行のたびに変化させる属性値を設定します。 Size 要因からこれを始め てみましょう。 1. ファクターテーブル・ウィンドウをクリックするか、または Window メニューか ら選択してアクティブにします。 2. セル列の先頭の見出しをクリックして、 Size 要因の Small 水準のセルを選択しま す。 第 43 3 章 実験をデザインする 図 50 - 実験水準のセルを選択する 3. Window メニューからウィンドウ名を選ぶか、または直接ウィンドウ自体をクリッ クしてトライアルテンプレート・ウィンドウに戻ります。要因表上で選択されてい るセル群をダブルクリックするか、または Open ボタンをクリックしても同じこ とができます。 もし、トライアルテンプレート・ウィンドウからまだ要因表を見ることができるなら ば、要因表上の選択されたセルが灰色になっていることに気がつくでしょう。 図 51 - ウィンドウがバックグラウンドにあるとき、セルは灰色になる トライアルテンプレート・ウィンドウや属性ウィンドウの上で行う変更は、全てファク ターテーブル・ウィンドウでそのとき選択されているセルの試行だけに適用されます。こ れによって、要因の各々の実験水準に呼応した値を設定することができます。 Size 要因の、各々の実験水準における刺激の大きさを設定してみましょ う。最初は、既に選択されている Small の水準からです。 1. Stimulus イベントの属性ウィンドウを開き、刺激のサイズを9に設定 して OK をクリックします。 これで、 Size 要因の水準が Small である ときの試行は、刺激の大きさが全て9ポイントになります。 2. Stimulus イベントの属性ウィンドウは開いたままにしておきます。ファ クターテーブル・ウィンドウをアクティブにし、 Middle の水準を選択 します。次に属性ウィンドウに戻って、刺激のサイズを 12 に設定しま す。 3. 同様の手順で、 Large 水準の刺激のサイズを 18 に設定します。 第 44 3 章 実験をデザインする ファクターテーブル・ウィンドウの新たなセルの組を選択すると、それらに呼応した 値を反映させるために、 PsyScope は(もしそれらが開いていれば)トライアルテンプ レート・ウィンドウと属性ウィンドウを更新します(時には、これが起こるまでに 1,2 秒 を要することがあるかもしれません)。 これを実際に確かめてみましょう。 ファクターテーブル・ウィンドウをアクティブにし、 Small を選択しま す。バックグラウンドの属性ウィンドウの設定値が9に変わっているこ とに注目して下さい。 Middle を選択すれば、それは 12 に変更されてい るはずです。 図 52 - 選択されたセル群に呼応する属性値 セルの選択に当たっては、セル選択パレット(Cell Chooser parette)を利用すること もできます。セル選択パレットは、要因表のコピーが載ったパレット・ウィンドウです。 これはパレットなので、他のウィンドウの上を「浮動」することができ、テンプレート・ ウィンドウか属性ダイアログが選択されていればいつでも利用できます(他の類のウィ ンドウやダイアログが選択されているときには隠れてしまいますが)。セル選択パレット は、セルを選択するだけではなく、設定された他の要因表への切り換えにも利用すること ができますが、パレットのセルをダブルクリックしてテンプレート・ウィンドウを開くこ とはできません。 Window メニューでセル選択パレットを選択して開き、 Position 要因の 水準値を設定するのに利用してみましょう。 1. パレットの要因表の第1行左端にある LeftFar をクリックします。 第 45 3 章 実験をデザインする 図 53 - セル選択パレットが開いている属性ウィンドウ 2. イベント属性ダイアログの Position 属性を選択します(セル選択パレットがアク ティブなままで属性ダイアログの前面にあることに注目して下さい)。 3. Position 属性メニューから Set To を選択します。これでスクリーンがクリアさ れて、ポジション・ダイアログが開きます。 図 54 - ポジション・ダイアログ ポジション・ダイアログでは、ポート(port)を作成し、スクリーンに刺激を配置 するためのポジションをポート内に定義することができます。作成の際、これらの 構成要素について対話形式で作業ができるようスクリーンはクリアされます。しか しさしあたっては、刺激を提示する各々の位置についてのポジションを作成するた めにだけ、このダイアログを利用することにしましょう(ポートとポジションに関 する完全な説明と ポジション・ダイアログの詳しい記述については、 pl91 「Part 2: グラフィック環境リファレンス, 5.8.8.4 ポートとポジション・ダイアログ」を 参照して下さい)。 4. New Positions ボタンをクリックします。 これでニューポジション・ダイアログ (New Position dialog)が開きます。 第 46 3 章 実験をデザインする 図 55 - ニューポジション・ダイアログ 5. ポジションを一つだけ作成するならば OK をクリックします。「New Position 1」 と名付けられたポジションが、スクリーンの中央とポジション・ダイアログ右側の リストの中に現れます。 New Position 1 は、直接新しい位置へドラッグするか、 またはポジション情報ダイアログ(Position Info dialog)を利用することで移動す ることができます(我々が演習するのは後者です)。 図 56 - 新規のポジションがあるポジション・ダイアログ 6. ポジション情報ダイアログを開くために、ポジション・ダイアログの New Position 1 をダブルクリックし、ポジション名を「 LeftFar 」に変更します。そして Horizontal フィールドに「10%」、 Vertical フィールドに「50%」を入力します(「%」 の文字が含まれていることを確認して下さい。 PsyScope はこれでポジションの値 が絶対値ではなく相対値であるということを判断します)。これがすんだら、 OK をクリックしてポジション情報ダイアログを閉じましょう。 第 47 3 章 実験をデザインする 図 57 - ポジション情報ダイアログ 7. ポジション・ダイアログのポジションのリストで LeftFar が選択されていることを 確かめてから、その左の Set ボタンをクリックします。これで、このポジションの Position 属性の値が設定されます。 LeftFar は、今度はボールド体で表示されてい るはずです。 8. Done ボタンをクリックして、イベント属性ダイアログに戻りましょう。 Position 属性の値が設定されているかどうか注意して下さい。 図 58 - 新しいポートの仕様を示すポジション属性 これであとは上記の手順を繰り返すだけで、その都度セル選択パレットの Position 要因から異なる実験水準を選択し、それに対応した実際のポジションを作成し、 Po- sition 属性の値として割り当てることができます。これより少し手短な方法として は、ポジション・ダイアログに戻って残りの必要なポジション4つを全て作成し、 それから Position 要因の各々の水準にそれらを割り当てていくものがあります。 後者の方法でこれをやってみましょう。 9. Position 属性値をクリックして、再びポジション・ダイアログを開きます。 10. 残り4つのポイント(「LeftNear 」、「Center」、「RightNear」、「RightFar」 と名付けます)を作成するために、上記の手順 4 と 5 を繰返します。 Horizontal 値は、それぞれ順に 30%、 50%、 70%、 Vertical 値は 50% を割り当てましょう。 ポジション・ダイアログは、現在このように見えているはずです。 第 48 3 章 実験をデザインする 図 59 - 5 つのポジションがあるポジション・ダイアログ 11. イベント属性ダイアログに戻るために Done をクリックし、それからセル選択パ レットの LeftNear をクリックします。 1 ∼ 2 秒で Position 属性の値が Default に 変わるでしょう。 12. Set To を選択し、ポジション・ダイアログのポジションのリストからは LeftNear を選択します。そして Set と Done をクリックします。 Position 属性の値は、 今度は「 LeftNear 」の位置(水平 30%、垂直 50%)に設定されているはずです。 13. Position 要因の他の水準の値を設定するために、手順 9 と 10 を繰返します。 これがすんだら、要因表またはセル選択パレットの個々のセルをクリックして、サイズ とポジションの値が、そのセルの要因と水準に呼応してイベント属性ウィンドウ上でも変 更されていることを確認して下さい。 ここまでくれば、あとは Stimulus イベントで表示されるテキストを指定しさえすれば、 もういくつかの試行を実行することができます。さしあたっては全ての試行に同じものを 設定して、それがどのように機能するかを見てみましょう。 全てのセルを選択し(ファクターテーブル・ウィンドウにおけるショートカット・ キーはコマンド -A)、 Stimulus イベントの刺激属性を「GLEEP」または他の任 意の単語に設定します。 試行を実行してみましょう。最初に凝視点の記号が現れるのが見えるは ずです。そして PsyScope はあなたが「2」キーを押すのを待機し、続いてス クリーンの左端に刺激語(9 ポイント)が瞬間提示されるはずです。 以下を行なうことで、いくつか複数の試行を実行してみましょう。 1. 実験ダイアログを開きます。 2. 実行したい試行数を、ダイアログ上部の Trials in Block フィールド に入力します。 3. Run メニューから Run を選ぶか、コマンド -R を入力します。 (実行される試行数をコントロールする他の方法については、下記の p96 「3.2.12 試行を実行する」と p242 「Part ス, 2: グラフィック環境リファレン 6.3 トライアル・モニタ」に 詳述されています。) 第 49 3 章 実験をデザインする 少なくとも 4 ∼ 5 試行を実行してみましょう。試行のたびに要因表のセ ルがランダムに選ばれていること、しかし同じセルが反復されるまでには全 てのセルが必ず一度は選ばれていることに注目して下さい。 PsyScope は、デフォルト値では全ての試行を実行するように構成されているので、要 因表からランダムな順序でセルを選択していきます。次節では、どのようにこの選択の順 番をコントロールするかを示すことにします。 セル選択をコントロールする 何も指定しなくても、 PsyScope はランダムな順序で要因表の各々のセルから1つの 試行を実行します。一旦全てのセルが実行され尽くしたら、 PsyScope は再び新しいラ ンダムな順序でセルを選んで 実行を開始します。しかしながら、この要因表のセルが選 ばれる順序と回数を修整するためにもいくつかの方法があります。これは表単位またはセ ル群単位で行うことができます。この節では簡単な方法をいくつか考えてみましょう。セ ル選択順をコントロールする方法についての完全な説明は、 p136 「Part ク環境リファレンス, 2: グラフィッ 5.7.1.7 水準の選択と要因の組合せ」にあります。 表全体の中からセルが選ばれる基準については、テーブル情報(Table Info)ダイアロ グで制御を行います。 ファクターテーブル・ウィンドウのコントロール・バーにあるテーブル情報エリアをク リックして、テーブル情報ダイアログを開きましょう。 図 60 - テーブル情報ダイアログを開く すると下記のようなテーブル情報ダイアログが現われるでしょう。 第 50 3 章 実験をデザインする 図 61 - テーブル情報ダイアログ テーブル情報ダイアログでは、作業中の要因表の名称を変更したり、要因の組合せ方 (crossing type)やセルの選択の仕方(access type)を設定したり、要因表の全てのセ ルに対するベース加重値の設定を行うことができます。これらの設定によって、要因表の どのセルが選ばれるかということが制御できます。 セルを配列する セルが選び出される順序を動かすには、いくつかの方法があります。即ち、要因表の Access Type の変更による方法、要因表の水準と要因を再配列する方法、そして個々 の要因の Level Order 値を設定する方法です。以下では、これらのうち最初の2つにつ いて考えてみることにします。個々の要因に対する作業はより高度な方法になるので、こ れについては p134 「Part2: グラフィック環境リファレンス, 5.7.1.2 リスト」で詳述さ れます。 要因表のアクセス・タイプを設定する 要因表からセルが選び出される方式を選択するのに、テーブル情報ダイアログの Ac- cess Type メニューを利用することができます。選択肢には以下のようなものがありま す。 Random (デフォルト値) Cycle Random Random with Replacement Blocked Random Least-Used Random Sequential Blocked Sequential By Factor 最後のもの以外は、どれもセルが選び出される順序を要因表単位で設定するものです。 最後の選択肢 By Factor では、要因単位でこの順序を制御することができます。この方 法は非常に高度なもので、 p144 「Part2: グラフィック環境リファレンス 5.7.2.2 テーブ ル情報ダイアログ」で説明されます。 Access Type のデフォルト値は Random に設定されています。この方式では、 PsyScope は要因表からランダムにセルを選び出します。全てのセルがその加重値(p58 「セル加 重値」参照)と同じ回数だけ選び出された後で、 PsyScope は再び次の選出を開始しま す。 Access Type を Sequential に設定すると、セルは列の順番で、上から下へ、そし て左から右へと選び出されることになります。 Access Type メニューから Sequential を選び、何試行かを実行して みて下さい。それらは下図のような順序で生起するはずです。 第 51 3 章 実験をデザインする 図 62 - 要因表のセルに対するシーケンシャル・オーダー(下記の注参照のこ と) 注意:図中の番号は試行の順番を表す仮のもので、(実際の要因表にお けるような)セルの加重値に対応しているものではありません。 水準を再配列する Access Type が Sequential に設定されたとき、要因表の要因と水準の配列は、セ ルが選び出される順番を決定することに注意して下さい。水準と要因を再配列すること で、この順番を変更することができます。 配列されている Size 要因の水準の順位を入れ替えてみましょう。 1. 要因表の Large 水準の見出しをクリックして選択します。 2. それを、現在 Small 水準が配置されている位置までドラッグします。 3. Small 水準を選択し、要因表の右端までドラッグします。 注意:水準値を、他の水準値が配置されている位置にドラッグすると、 必ずその外側の方に配置されます。 要因表は現在このように見えているはずです。 図 63 - 水準が再配列された要因表 実験を実行してみましょう。今度は全ての Large 試行が最初に実行され、 次に Middle 試行、それから Small 試行が続くはずです。 要因を再配列する セルが選び出される順番を動かすもう一つの方法に、要因の再配列によるものがありま す。これは、要因表の表示をカスタマイズするのにも有用です。まず最初に、どのように 要因が再配列されるかに注目し、それから(いくつかの簡単なケースについて)それがセ ルの順番にどのように影響を及ぼすのかを考えてみることにしましょう。 2つの要因が列として表示されるように、要因表を変更してみましょう。 1. Position 要因の見出しを選択し、2つの要因名を隔てている対角線を越 えて上に、次いで右にドラッグします。 要因表はこれで下記のようになっているはずです。 第 52 3 章 実験をデザインする 図 64 - 要因が再配列された要因表 もはや全てのセルはウィンドウ内に収まりきらないことに注意して下さ い。向こう側に延びているセルを見るには、ウィンドウをスクロールするか、 またはウィンドウの左下隅にある拡縮(magnicaton)ツールを使って要因 表のサイズを縮小することもできます。拡縮ツールの右にあるズーム・アイ コン(下図参照)をクリックすれば、要因表は元のサイズに戻ります。 図 65 - ズーム・アイコン さらに重要なことに、今度は Position 水準の列の中で Size 水準の列が下 位分割されていることに注意して下さい。これはつまり、 LeftFar, LeftN- ear などに対する Small, Middle, Large の下位列ができているということで す。 1つの要因表に複数の要因があるとき、それらの要因には必ず上位(upper)から下位 (lower)への序列があります。下位の要因は、上位の要因の中で下位分割されたものと 考えることができます。要因表は、下段の要因が上段の要因の中で下位分割されているこ とを示すことで、各次元におけるこうした要因同志の関係を明確に表示しています。これ は縦の列の要因についても同様です。付け加えれば、行の要因は全て縦の列の要因の下に 属するものと考えられます。シーケンシャル・デザインにおいては、 PsyScope は次の上 位要因の次の水準等に移る前に、上位要因の水準は一定に保ったまま、その下位要因の水 準に対応する全てのセル(例えば1つの列の中の全ての行、または上位列の中の全ての 下位列)を巡回します。これをはっきり説明するには、実験を通して理解するのが一番で しょう。 現在、 Position 要因は上位要因で、一方 Size 要因は下位要因です。 Size 要因を Position 要因の上にドラッグするか、またはその逆を行うことでこの 配列を逆転させてみましょう。それらを両方とも(縦一列に配列された)列 の要因として配置することも試してみて下さい。これらの異なった配列で実 験を実行し、各々の状態における効果を見てみましょう。 第 53 3 章 実験をデザインする セル加重値 これまで見てきた例の中では、要因表を一巡するごとに各々のセルが1回選び出されて いました。しかしながらセル加重値(cell weights)を変更することでこの回数を変える こともできます。セルの加重値(要因表のセルの中に表示されている数値)は、 PsyScope が要因表を一巡する間にそのセルを選び出す回数を決定するものです。例えば、もし要 因表に4つのセルがあり、各セルの加重値が2だとすると、 PsyScope は要因表の次の 巡回に入る前に、それぞれのセルを 2 回づつ選び出すことになります。セルは必ずしも 続けて 2 回選ばれる必要はなく、それはこれから見るように、 Access Type の設定に よって変わってきます。 テーブル情報ダイアログの Cell Weight の値を設定することで、要因表の全セルの加 重値を一遍に変更することができます。また要因表の個々の水準単位の加重値を変更する ことで、特定の行や列のセル加重値を調整することもできます。 セル加重値を設定する Cell Weight 値は要因表の全てのセル加重値に掛け合わされます。これはテーブル情 報ダイアログから設定を行うことになります。 テーブル情報ダイアログに行き、 Access る Cell Type メニューのすぐ下にあ Weight フィールドに 2 を入力します。要因表の全セルの加重値は 2 となり、要因表は下記のようになるはずです。 図 66 - セル加重値2の要因表 Access Type メニューを Random に戻し、少なくとも 30 試行を実行 してみて下さい。さもなければ次の記述を信用することです。つまり、要因 表の次の巡回に入る前に各セルは 2 回づつ実行されますが、それは必ずしも 1つの行で 2 回続けざまに行われるわけではありません。 要因表が完全に一巡したときの試行の合計数は、要因表の全セルの加重値の合計に等し くなります。言い換えれば、それがその実験計画を完全実施するために必要な試行数にな るのです。 注意:実験計画を完全実施するために必要とされる試行数を、自動的に PsyScope に 実行させることはできません1 。 PsyScope がセルを選び出すプロセスは、次のようになっています。まず各試行の開始 時に PsyScope が要因表から1つのセルを選び出し、それにチェック・マークを付けます。 あるセルに対するチェック・マークの数がそのセルの加重値に等しくなったらば、そのセ ルは選出対象から抹消されます。こうして全てのセルが選出対象から抹消されると巡回が 終了し、 PsyScope はチェック・ボードをクリアして、最初からもう一度このプロセスを 1 (訳注):つまりこれは実験者が自分で計算して、手動で設定するしかないということ。 第 54 3 章 実験をデザインする 開始するのです。このときセル加重値は、その要因表に対する Access Type の設定の 仕方によって違った効果を表します。 Access Type が Random に設定されていれば、 PsyScope はセルをランダムにチェッ クするので、その結果1つのセルの加重値が1以上であったとしても、必ずしもそのセ ルが連続して選択されることはないでしょう。もしそのセルを連続して実行したいなら、 Access Type を Blocked Random か Sequential のどちらかに変更する必要があり ます。 Blocked Random では、 PsyScope は要因表からランダムにセルを選択し、それが 「選出対象から抹消される」まで(即ち、加重値と同じ回数分選択されるまで)そのセル の選出を連続的に行います。そしてその後で他のセルを要因表からランダムに選択し、 それが選出対象から抹消されるまで同様の手続きを続ける、ということを繰り返します。 Sequential では、 PsyScope が1つのセルを終えると、列の順に次のセルに移動すると いうことを除いては同様の方法で処理が行われます(p53 「3.2.8.3 セル選択をコントロー ルする」参照のこと)。 Random, Blocked Random, Sequential では、要因表のどのセルも、記述され た加重値の回数だけ選出されることが保証されます。 Random with Replacement ではこの働き方が異なります。ここでは、各セルの加重値は、そのセルが選出されるであ ろう確率を決定することになります。この場合、いくつかのセルは全く選び出されない可 能性がある一方、他のセルはその加重値以上に選出される可能性があります。 注意:(Random with Replacement において)あるセルが選出される正確な確 率は、 (そのセルの加重値)=(要因表の全セル加重値の合計) となります。 異なるセルの組に異なる頻度や確率を割り当てたいようなときに、セル加重値は特に有 用です。しかしながら、これを行うためには、セルの各セットにそれぞれ異なる加重値を 割り当てる必要があります。これは、水準加重値を設定することで行うことができます。 水準加重値を設定する 水準加重値(level weights)を使えば、特定の行または列のセル加重値を変更すること ができます。これは、水準名変更(Level Rename)ダイアログを用いて、それらのセル が属する水準の加重値を変更することで行います。 要因表の Size 要因の Large 水準の名前のところをダブルクリックして、 そのダイアログを開きます。 図 67 - 水準名変更 / 加重値設定ダイアログ 第 55 3 章 実験をデザインする 水準加重値を 3 に変更します。 Large の下の列にある全セル加重値が、 今度は 6 になっていることに注意して下さい。これは、テーブル情報ダイア ログで設定したセル加重値(2)に Large 水準の加重値(3)を掛け合わせ た加重値になります。要因表は今度は下記のようになっているはずです。 図 68 - Large 水準に加重値3を追加した要因表 今度は、 Position 要因の水準のセル加重値を変更してみましょう。例え ば Center 水準の加重値を 2 に変更してみます。すると要因表は下記のよう になるはずです 図 69 - Center 水準に加重値2を追加した要因表 セルの加重値は、テーブル情報ダイアログの Cell Weight 値と、そのセルが属する水 準の加重値との積になります。 もし実験の中で特定のセルの組が生起する頻度を改変したいのならば、水準加重値を 設定することは有用です(例えば、スクリーンの両サイドの条件よりも Center 条件の刺 激をより多く表示させたいような場合)。要因表の Access Type を Random か Se- quential に設定し、次に各水準の加重値を、それらのセルを生起させたいと思う頻度に 設定するのです。 Access Type が Random with Replacement に設定されていれ ば、加重値はセルが選び出される確率にのみ影響を与えることになります。即ち、加重値 が高ければ高いほどそのセルが選び出される確率も高くなるわけです。 組合せタイプと要因表セットの利用 Access Type とセル加重値の設定に加えて、セルの選出方法を左右するもう一つの重 要な方法があります。 テーブル情報ダイアログの Crossing Type メニューを利用する 方法で、これは要因表の要因の組合せ方を決定するものです。通常これは Within にし ておけばよいと思われるので、それがデフォルトの設定になっています。この場合には、 セルはこれまでの節で説明されたとおりに実行されます。このモードにおいては、巡回の たびに要因表の全てのセルが実行されることになります(もちろん、上述のように Ac- cess Type が Random with Replacement になっているときは除きますが)。 Crossing Type メニューから他の設定を選ぶことで、実験が実行されるたびに選び 出されるセルの数を制限することができます。その主要な選択肢のうちの2つ(Between と Latin Squares)は、 PsyScope が、実験の実行のたびに単一のセルかまたはセルの サブセットしか選び出さないようにするものです。以下では、これらの被験者間デザイ ンの単純なケースを2つほど見てみることにしましょう。 Between と Latin Squares 第 56 3 章 実験をデザインする デザインについてのより詳しい説明は、 p144 「Part2: グラフィック環境リファレンス, 5.7.2.2 テーブル情報ダイアログ」を参照して下さい。 被験者間計画 もし要因表の Crossing Type を Between に設定したならば、 PsyScope は要因表 から1つのセルを選び出し、実験の全ての試行をその単一のセルで行うことでしょう。次 に実験を実行した際の試行は、全て要因表の次のセルから行われることになります。言い 換えると、 PsyScope は試行単位で次のセルを選び出していくのではなく、実験の実行 の単位で次のセルを選び出していくのです。こうしたやり方は、完全被験者間計画(full between-subject design)と呼ばれています(これは、通常、実験のそれぞれの実行が異 なる被験者に対してとり行われるところから来ています)。しかしながら、この方法で実 験を行おうとすることはあまりないでしょう。より多いと思われるのは、被験者間要因の 特定の組だけを変化させる一方で、残りは被験者内要因として変化させるような場合で しょう。 例えば、被験者によって刺激のフォントを変化させたいが、 Size と Position は従来ど おり試行ごとに変化させたいというような場合を想定してみて下さい。これは言い換えれ ば、 Size と Position を被験者内要因として残す一方で、被験者間要因としてフォントを 追加するということになります。これを行うには、新しい要因表を追加し、その Cross- ing Type を Between に割り当てる必要があります。 以下のようにして Font 要因の新しい要因表を作成して下さい 1. ファクターテーブル・ウィンドウのコントロール・エリアにある Table メニューから New を選択します。すると新しい要因表の名前を尋ねる ダイアログが現れてくるでしょう。 2. 要因表に名前を付け、 OK をクリックします。 3. ファクターテーブル・ウィンドウの New Factor ボタンをクリックし て Font 要因を作成し、現れてくるダイアログで要因に名前を付けます。 4. この要因に 3 つの水準を作り、 "Times", "Helvetica", "Monaco"と名 付けます。 5. 各々の水準のセルを開き、次に Stimulus イベントのイベント属性ダイ アログを開いてそれぞれに応じたフォントを設定することで、各水準の 刺激のフォントを割り当てていきます。 6. テーブル情報ダイアログを開き、 Crossing Type メニューから Be- tween を選択します。すると、セルの選出の仕方を選ぶメニューのあ る、組合せタイプ選択(Choose しょう。 Crossing)ダイアログが現れてくるで 第 57 3 章 実験をデザインする 図 70 - 組合せタイプ選択ダイアログ 7. メニューから Run を選択します。これで PsyScope は、実験が実行さ れるたびに Font 要因の新たな水準にアクセスするようになるでしょう。 つまり実験デザインのこの部分は「between by run」になっているので す。 注意: PsyScope には 6 つの「被験者間」デザインが予め定義されていま す。即ち、 group, subject, run, それに subject within group, run within group, run within subject です。これらはそれぞれ Between 要因の水準 を選び出すときに異なった変数(順に CurrentGroup, SubjectCount, RunCount, SubjectNumber, GroupRunCount, それに RunNumber)を用い ます。これに加えて、 Custom 設定では、スクリプトの他の変数を使用し たり、新たな変数の定義と利用を行うことができます。予め定義された変数 や、その他の変数、また新規の変数の定義の仕方については p229 の「Part2: グラフィック環境リファレンス, 6.2.1 被験者情報項目」を参照下さい。 Be- tween デザインのより詳しい説明については、 p144 「Part2: 環境リファレンス グフィック 5.7.2.2 テーブル情報ダイアログ」を参照して下さい。 実験を実行してみましょう。実行のたびに違ったフォントが選び出され てくるはずです。 Between デザインにおいては、アクセス・タイプやセル加重値、それに水準加重値は 無視されます。 Font 要因のセルを開いたときに表示されるテンプレートは、 Size 要因や Position 要 因で作業していたときに作ったのと同じものだということに注意して下さい。これは、こ れらの要因が全て同じ要因表セット(factor table set)に属しているからです。一つの セット内の要因表は、全て同じテンプレートを参照することになります。 注意:ある1つの要因表からセルを選択するとき、それは恰もそのセットの全ての他 の要因表から全てのセルを選択しているようなものです。それゆえ、ある要因表のセル (群)を通してテンプレートに施したいかなる変化も、そのセットの全ての他の要因表の 全てのセルに影響を与えることになります。 要因表の種々の特徴(アクセス・タイプ、セル加重値、水準加重値や種々の組み合せタ イプ)を利用することで、高度に洗練された実験デザインを創り出すことができます。 PsyScope の要因に関連する全ての特性についての詳しい説明は、 p133 の「Part 2: グ ラフィック環境リファレンス, 5.7 要因とリスト」を見て下さい。 リスト リスト(List)は要因に似ていますが、試行のたびにテンプレートの一部を変化させる ようなときに用いられます。リストの最も一般的な用法は、要因表の要因とは関係なく試 行の一部を変化させることです。例えば、それぞれの試行について刺激をランダムに選び たいというようなことがあるかもしれません。視力実験にこの特性を付け加えてみましょ う。これは実験を完成されたものにするために必要な最後の追加点でもあります。 第 58 3 章 実験をデザインする まず最初に、リストを作成しなければなりません。 1. ファクターテーブル・ウィンドウへ行き、要因表の全てのセルを選択し ます。マスターテンプレートを編集するために、その要因表をダブルク リック(または Open ボタンをクリック)して下さい。 2. Stimulus イベントのイベント属性ダイアログを開きます。 3. Stimulus 属性メニューから、 Vary By と List を選びます。すると 次のメッセージ・ダイアログが現われるでしょう。 図 71 - 新規リスト作成アラート 4. 新規リストを作成するためには Create ボタンをクリックします。する とリスト・ダイアログが現れます。 図 72 - リスト・ダイアログ 5. リストを「Stimulus List」と名付けて下さい。 ひとたび新規リストを作成すると、それは実験のデザイン・ウィンドウ 上にリスト・オブジェクトとして現れてくることでしょう。デザイン・ウィ ンドウを選択してこれを確かめてみて下さい。 Stimulus List は、要因表に リンクされたリスト・オブジェクトとして現れているはずです。もしそこに 見当たらなければ、コントロール・エリアの Show Factors ボックスをチェッ クしてみて下さい。 第 3 章 実験をデザインする 図 73 59 - 要因表にリンクされたリストが表示されている実験階層 要因表がセル群から構成されているのと全く同じように、各々のリストは項目(items) の組から構成されています。逆にリストと要因表の違いの一つとしては、その試行から リストがアクセスされる(つまり試行のいくつかの属性がリストにリンクされている) ときにのみ、新たな項目がリストから選び出されるという点があげられます。もし試行 の何の属性もリストにリンクされていなければ、新たな項目も選び出されません。この 点が、試行開始時に必ずセルが選び出される要因表と対照的なところです。組み合わせ (crossing)のタイプを変えることによって、リストのこの特性を変更することもできま す(p144 「Part 2: グラフィック環境リファレンス, 5.7.2.2 テーブル情報ダイアログ」 参照)。しかしながら、今はリストの本来の使い方のみを考えていくことにしましょう。 リストの Item Order メニューは、要因表の Access Type メニューと同じような機 能を持ち、リストから項目が選び出される順番をコントロールします。項目の Weight もまたセルの加重値と似かよっていて、リストが一回りするまでの間にそれぞれの項目が 何回選び出されるかということを決定します。 リストのそれぞれの項目の値を割り当てるには、項目リストの右にあるフィールドと加 重値を用います。 リストに新しい項目を追加してみましょう。 1. Items の見出しと Weight の見出しの間の New ボタンをクリックし ます。すると、 Item1 という名でバリュー・フィールドが「???」となっ た項目が現われるでしょう。 2. 「???」マークをダブルクリックするか、またはそれを選択してリター ンを押すかします。これで標準のテキスト・ダイアログが現われます。 3. 刺激として使用したい単語を入力し、ダイアログを閉じます。リターン・ キーを押せばダイアログを閉じることができます。 秘訣:最初にダイアログのリスト・フィールドを選択し、以下の手順を繰り返すことに よっても、手早く項目のリストを作成して必要な項目値を割り当てることができます。 1. コマンド -N を入力します(新しいリスト項目の作成)。 2. リターンかエンターを入力(バリュー・ダイアログを開く)。 3. 項目値を入力します。 4. リターンかエンターを入力(バリュー・ダイアログを閉じる)。 第 60 3 章 実験をデザインする 5. コマンド -N を入力します(次のリスト項目を作成するため)。 さらにいくつかの刺激を作成して下さい。そして Item Order メニュー を Random に設定すれば、刺激が試行の都度ランダムに選び出されるよう になるでしょう。 Weight の見出しの下にあるセル列の値をクリック(またはコマンド - → (右矢印)を入力)することで、1つまたは複数の項目の加重値を設定して みることもできます。この場合テキスト・フィールドが現れ、その項目の加 重値を入力することができるようになるでしょう。 図 74 - リストの項目加重値の設定 これがすんだらリスト・ダイアログを閉じます。いまや、リストによっ て設定されている Stimulus 属性値がイベント属性ウィンドウに表示されて いることに注目して下さい。 図 75 - 新規リストによって変化することを示している属性ステータス 実験を実行して見ましょう。刺激語は、今度は試行の都度ランダムに変 化するはずです。 1つの実験の中では、必要なだけリストを作成して、刺激やイベントの属性(例えば刺 激の大きさ、フォント、色)を変化させるために利用することができます。新しいリスト を作成する際には、 PsyScope は必ずそれがどのタイプの属性にあたるのかを計算し、 そのタイプに対応したリストを作成します。リンクしている属性が全て同一のタイプ(例 えば全てサイズやフォント属性)である場合に限り、同一のリストに複数のイベントをリ ンクすることも可能です。 注意:実際には、 PsyScope はインコンパチブルな属性でもリストにリンクさせては くれますが、その場合には予測し得ない結果が起きるかもしれません。通常このような必 要性が生じるのは、1つのイベントや試行のいくつかの異なる属性を、全て同時並行的に 第 61 3 章 実験をデザインする 変化させるような場合です。これを行なうためには、リストのフィールドを用いるべきで す。 p134 の「Part 2: グラフィック環境リファレンス, 5.7.1.2 リスト」を参照してみて 下さい。 手すさびに(それとリストの機能について2∼3の追加説明を示すため にも)、別のリストを作成し、刺激の字体を変化させるために利用してみま しょう。 1. Stimulus イベントのイベント属性ダイアログに戻り、 Face 属性メニュー から Vary By と List を選択します。既にリストは作成してあるので、 前に利用したメッセージ・ダイアログの代わりに Vary By List ダイア ログを使うことになるでしょう。 2. List ポップアップ・メニューを選択します。メニュー上の項目には Stimulus List が入っていることに注意して下さい。 図 76 - Vary By List ダイアログ 3. メニューから New... を選びます。すると、前に見たことがあるような リスト・ダイアログが現れてくるでしょう。ただ今回はバリュー・フィー ルドの見出しは Face で、リストの項目が刺激ではなくて字体であるこ とを示しています。 注意:リスト・ダイアログのバリュー・フィールドの見出しは、リスト の項目に対してコンパチブルなイベントや属性のタイプを表示します。 4. 2 ∼ 3 の項目を作成して、それぞれに異なる字体(ボールド体、イタリッ ク体等)を割り当てます。 実験を実行してみましょう。今度は、単語と字体の両方が試行の都度変化す るはずです。 リストは、(要因と同様)試行のたびに実験の特性を変化させるための手段ですが、ま た、要因表の要因とは関係なくそれを行うことができる便利な方法でもあります。そして リスト・ダイアログも、設定しようとする特性値の入力の際に、セルからセルへと要因表 を設定していかなければならないようなやり方に代わる便利な形式を提供してくれます。 カウンターバランス 刺激をカウンターバランスすること(counterbalancing)は、実験デザインに共通し た必要条件です。カウンターバランスされたデザインでは、それぞれの被験者は1つの条 第 62 3 章 実験をデザインする 件の下のみでそれぞれの刺激を見ることになるのですが、被験者全体を通して見れば、全 ての刺激が全ての条件の下に見られていることになります。 通常、実験条件は要因表によって統制され、刺激はリストによって統制されます。実験 条件に対抗してカウンターバランスをするためには、次の方法によらなければなりませ ん。 要因表にリストを導入する。 ラテン方格(Latin Squares)の組合せタイプを用いる。 前にリストを作成したとき、それは要因表とは関係なく、独自の要因セットに自動的に 配置されました。これは、要因表の現在選択されているセルとは関わりなく、刺激がラン ダムに選び出されていることを意味しています。しかし今回の場合は、それぞれの刺激を 単一の条件の下でのみ提示しようとしているので、刺激の選び出しは要因表のセルの選択 に基づく必要があります。この従属関係を作り出すためには、要因表にリストを導入しな ければなりません。 Latin Squares の場合については、詳細な説明が p137 の「Part 2: グラフィック環 境リファレンス, ラテン方格」に用意してあります。簡単に言えば、 Latin Squares は 要因表から「対角線上の」セルだけを利用するもので、そこで用いられる対角線は Choose Crossing インデックスによって設定されます。 Size と Position の要因は、ラテン方格の同じ区画に置かれる必要があり、 Stimulus List はそれとは別の区画にある必要があります。同じ区画にある要因は完全に組み合わせられ ますが、一組の組合わせだけは、別の区画の要因のために使われます。 Stimulus List を、 Position と Size の要因に対抗してカウンターバラン スするためには、要因表のセルと同じ数だけの刺激が必要です。その上で、 要因表へのリストを導入を選択して、要因表へリストを再リンクしなければ なりません。そして Crossing Type を変更して、ラテン方格の区画を設定 することになるでしょう。 1. リスト・ダイアログを開くために、デザイン・ウィンドウの Stimulus List アイコンをダブルクリックします。 2. p63 「3.2.8.4 リスト」で説明した要領で、リストにいま少し項目を追 加して 15 項目となるようにします。 3. デザイン・ウィンドウの鋏ツールを使って、 Stimulus List と Table 1 の間のリンクを切断します。いくつかの属性が切り離したリストを利用 していた旨の警告メッセージ・ダイアログが現れるかもしれませんが、 我々はこれからリストの再接続に取りかかるので、これに対しては Ig- nore を入力して下さい。 4. デザイン・ウィンドウのリンクツールを用いて、 Stimulus List と Tabel 1 を再接続して下さい。するとリスト接続ダイアログ(下図参照)が現 れてくるでしょう。 第 63 3 章 実験をデザインする 図 77 - リスト接続ダイアログ 5. このダイアログは、どのようにリストが要因表オブジェクトに連結され るかを指定するために用いられます。今回の場合は、 Stimulus List を Size や Position 要因と同じ要因表の中に付け加えるので、ポップアッ プ・メニューから Table 1 を選んで OK を押します。(この「1」と いうのは、 Table1 オブジェクトの中にある、 Size や Position 要因を含 んだ表のことです)。 これで Table1 のファクターテーブル・ウィンドウを開くことができ、 そこでは Stimulus List が要因表に加えられているのが見えることでしょ う(下図参照)。 Stimulus List は導入されたものであるので、その項 目は通常の要因の水準のようには表示されず、全て「<All Levels> 」の 表示の中に折り込まれてしまっています。 図 78 - リストが導入された要因表 6. テーブル情報ダイアログへ行き、 Crossing Type メニューから Latin Squares を選択します。これでラテン方格ダイアログが開きます。下 図に示されているように、 Size と Position の要因が一緒で Stimulus List が別の区画になるようにリスト項目をドラッグして下さい。 図 79 - ラテン方格ダイアログ 第 64 3 章 実験をデザインする 7. ラテン方格ダイアログの Choose... ボタンを押して下さい。これで、 p61 の「 被験者間デザイン 」で紹介された Choose Crossing ダイア ログが開きます。あのときと同じように、ポップアップ・メニューから Run を選択します。これで PsyScope は、実験が実行されるたびに異 なるカウンターバランスを用いるようになります。 Stimulus List にカウンターバランスを設定することで、実験を実行する都度、一つの 固定された提示位置とサイズの条件下にそれぞれのリスト項目が見られるようになったは ずです。実験を 15 回以上実行すれば、全ての刺激を、全てのサイズと提示位置の組合せ 条件の下に見ることも可能なはずです(毎回、全部の刺激を見るのに充分な試行数を実行 したと仮定した場合のことですが)。 3.2.9 ブロックの利用 実験の実行時にはしばしば、試行を提示のための別々の組にグループ化したいと思うよ うなことがあるでしょう。例えば、後に続く一組の試行のためにいくつか教示を提示し、 次にまた別の試行の組に先立って別の教示を提示したいと思うことがあるかもしれませ ん。このような手順は、ブロック化(blocking)と呼ばれ、 PsyScope でこれを行うには いくつかの方法があります。最も簡単で判りやすい方法は、ブロックを利用することで す。 ブロック(block)とは、実験が実行される際に一連のものとして提示される試行の組 のことです。それぞれのブロックには1つまたは複数の試行のタイプを含めることがで き、 PsyScope はそれらの全てを一連のものとして提示します(次のブロックの試行を 提示する前に)。ブロックには2つのタイプがあり、それぞれ少し違った形のアイコン があります。このうち標準のブロック(「図 80 - ブロック・アイコン」参照)は試行か ら構成されており、スーパーブロック(superblock: 「図 81 - スーパーブロック・アイ コン」参照)はブロックから構成されているものです。この節では、標準のブロックだけ に焦点を絞っていくことになるでしょう。スーパーブロックについては p125 の「Part 2: グラフィック環境リファレンス, 5.5.2 ブロック・ダイアログ」で説明されます。 図 80 図 81 - ブロック・アイコン - スーパーブロック・アイコン 試行のブロック化 ブロックを利用するときの例として、視力実験の結果は被験者の注意(attention)の 要因に従うということを検証する場合を考えてみましょう。これを行うための一つの方法 は、中央凝視点の条件をそのままにしたときの被験者の課題遂行結果と、被験者が凝視点 なしで直接刺激を見るようにした対照群の遂行結果とを比較してみることです。このため には、試行を2つの独立したブロックに分離し、それぞれに先立つ教示セットも含めるこ とが必要です。これを行なうための最も簡単な方法は、それぞれの教示セット(これも特 第 65 3 章 実験をデザインする 殊な試行の一つとみなせます)だけではなく、実験試行のそれぞれのセットに対してもブ ロックを作成してみることです。 以下を行なうことによって、視力実験に4つのブロックを付け加えてみ ましょう。 1. デザイン・ウィンドウのオブジェクト・パレットから標準のブロック・ アイコン(p70 「図 80 - ブロック・アイコン」参照)を選択し、ワー クエリアにそれを配置します。ツール自動切替オプション(p272 「Part 2: グラフィック環境リファレンス, 7.6.4 デザイン・オプション」参 照)がオフになっていなければ、カーソルがリンクツールに変わるでしょ う。 リンクツールはいつでもデザイン・ウィンドウ左のパレットから 選択することができます。 2. ブロックを Experiment アイコンにリンクします。 Table1 が自動的に ブロックに再リンクされることに注目して下さい。 注意:与えられたオブジェクトにリンクすることができるのは、同一の タイプのオブジェクトだけです。もし同じオブジェクトにインコンパチ ブルなタイプのオブジェクトをリンクしようとすれば、エラー・メッセー ジが与えられるでしょう。実験の階層構造におけるオブジェクトのリン クについて、より多くの情報が必要ならば、 p112 「Part 2: グラフィッ ク環境リファレンス, 5.2.1.1 オブジェクトのリンク」を参照して下さ い。 3. あと3つのブロックを作成し、それぞれを Experiment アイコンにリン クします。 4. Block3 と Block4 を、順に「教示 1」と「教示 2」と改名します。 ここで計画している実験では、中央凝視点提示 vs 刺激直接提示のブロッ クの試行は殆ど同じと思われるので、両者に対しては同じトライアル・テン プレートを用いることができます。これは、(そのトライアル・テンプレー トを含んだ) Table1 を Block1 と Block2 の両方にリンクすることで可能に なります。 ツール・パレットのリンクツールを選び、 Table1 を Block2 にリンクし ます。これで Table1 は Block1 と Block2 の両方にリンクされたことに なります。 デザイン・ウィンドウは、現在このように見えているはずです。 第 66 3 章 実験をデザインする 図 82 - ブロック化された試行を用いた視力実験 今度は教示試行用のテンプレートを作成しましょう。 1. ワークエリアに新しいテンプレートを作成し、「Instructions Trial」 と名付けます。 2. テンプレート・ウィンドウを開き、2つのイベントを作成します。1つ は Time イベントで、「ITI」と名付けます。他方は Paragraph イベ ント(下図参照)で、「Instructions」と名付けることにしましょう。 図 83 -Paragraph アイコン 3. Instructions イベントの持続時間を Mouse[Click] に設定します(p23 「3.2.5.1 イベントの時間設定」参照)。 Paragraph イベントでは、改行やタブなどを含むテキストの提示が可能 で、教示文のように複数行にわたるテキストを提示するような場合には、 Text イベントよりも便利です。 ここでは、実験試行のそれぞれのブロックの前に、異なる種類の教示セッ トを提示しようと考えています。これを行なうための最も直截な方法は、 In- structions Trial のテンプレートを複製し、それぞれのパラグラフ・イベント に異なる教示セットを割り当てることです。 1. デザイン・ウィンドウに行き、 Instructions Trial のテンプレートを選 択して、 Edit メニューから Duplicate を選ぶか、またはコマンド -D を入力します。すると「Instructions Trial copy」という新しいテンプ レートが現れるでしょう。これには Instructions Trial のテンプレート にある全てのイベントがコピーされているはずです。このあたりで、乱 雑になってきたデザイン・ウィンドウを見やすくするために、コントロー ル・エリアの Show Events と Show Factors のチェックボックスか らチェックを外しておくのもいいかもしれません。 第 67 3 章 実験をデザインする 2. 2 つの教示用テンプレートを「Instructions Trial 1」と「Instructions Trial 2」と改名します。 3. それぞれの教示試行のテンプレート・ウィンドウを順番に開いて、パラ グラフ(刺激)属性に対して Set To を選び、その試行セットの教示文 を入力します。 4. デザイン・ウィンドウに戻って、それぞれの教示試行のテンプレートを 対応するブロックにリンクします。 デザイン・ウィンドウは、今度はこのように見えているはずです。 図 84 - 教示試行のある実験階層構造 注意:それぞれの教示ブロックにおいて異なる教示を提示するには、他 にも、単一の教示テンプレートを利用する方法があります。これには、カス タムのブロック属性の使用と、パラグラフ属性に対する Vary By Block の 設定とが伴います。このより高度な技法についても簡潔に説明は行う予定で す(p76 「3.2.9.2 ブロックによる変化」参照のこと)。 一組のブロックが作成されたからには、次にそれを順序づけし、それぞ れ何試行が提示されるかを記述しなければなりません。 ブロック・ダイアログを用いて、ブロックで提示される試行数やブロックを実行する回 数について設定を行ってみましょう。 デザイン・ウィンドウの Instructions ロック・ダイアログを開きます。 1 をダブルクリックして、そのブ 第 68 3 章 実験をデザインする 図 85 - ブロック・ダイアログ ブロック・ダイアログの最上段には、標準のネーム・フィールドがあります。その下に あるのは、ブロックで実行する試行数や、ブロックの持続時間を設定するためのラジオボ タンとバリュー・フィールドです。 以下を行なうことによって、 Instructions 1 ブロックが 1 試行を実行す るよう設定してみましょう。 Trials in Block button をクリック(持続時間ではなく試行数を記 述するため)して、数値としては 1 を入力します。 Fixed のラジオボ タンもクリックします。これで、たとえブロックの規模に関する特性が 実験階層のより上位のオブジェクトによって使用されていたとしても、 このブロックでは 1 試行だけが実行されるよう保証されることになりま す。(下記参照)。 Instructions 2 ブロックに対しても同様のことを行います。それから、 Block 1 と Block 2 について、 Trials in Block か Block Duration を設定しま す。例えば、試しに Block1 を 10 試行の実行、 Block 2 を 15 秒の実行に設 定してみましょう。 ブロックの実行期間に関する制御領域の下には、そのブロックにリンクされているテン プレートのリストがあります。そこでは、それらのテンプレートを再配列したり、異なる 加重値を割り当てたり、ブロックにリンクされる新しいテンプレートを作成することがで きます。しかしながら、視力実験のそれぞれのブロックにはただ1種類の試行しかないの で、今のところこれらの特性に煩わされる必要はないでしょう。 実験の中にいくつかブロックがあるときには、ブロックが実行される順序と、それぞれ のブロックを実行する回数を設定しなければなりません。これは、そのブロックのすぐ上 位の実験階層にあるオブジェクトのダイアログで行います。視力実験の場合には、これは Experiment ダイアログになります。 第 69 3 章 実験をデザインする 実験アイコンをダブルクリックして、 Experiment ダイアログを開きます。 図 86 - Experiment ダイアログ 注意:ブロックを配列するためにどのダイアログを用いるかということ は、実験の構造によって決まってきます。視力実験の場合、ブロックは直接 実験アイコンにリンクされているので、ブロックがどのように実行されるか については Experiment ダイアログがコントロールします。一方、もしブロッ クが一つのスーパーブロックにリンクされていたならば、そのスーパーブロッ クのダイアログを用い、グループにリンクされていたならば、そのグループ のダイアログを利用することになるでしょう。ブロックのリストを含むダイ アログのことを、一般にブロックリスト・ダイアログと呼んでいます。 このダイアログは、実験にリンクされているブロックのリストを表示しています。ダイ アログが最初に開かれたときには、ブロックは作成された順番でリストアップされていま す。 Block order メニュー(ダイアログの底部にある)が Sequential (デフォールト 値)に設定されているならば、これはそのままブロックが実行される順番となります。も しこのリストがブロックを実行したい順番になっていない場合には、正しい順序で実行さ れるように配列し直す必要があります。 以下を行うことによって、ブロックを配列し直してみましょう。 1. Instructions1 をクリックして選択します。 2. それをリストの最上段にドラッグします。 3. Instructions2 を選択して、 Block1 と Block2 の丁度中間に来るように にドラッグします。これには少しばかりコツが必要かもしれません。正 しくできなかった場合には、それは Block1 の上か Block2 の下に行って しまう結果となるでしょう。もう一度試みるか、さもなくばブロックが 正しい順序になるまでダイヤモンドゲームの要領で楽しむ?こともでき ます。 第 70 3 章 実験をデザインする 図 87 - ブロックの再配列 Trial Count または Duration の値が、リストのそれぞれのブロックの右隣にリスト アップされることに注目して下さい。これらは前に(ブロック・ダイアログで)それぞれ のブロックに対して設定した、試行数または持続時間(秒)に対応したものです。この値 (またはそのライン上のどこか)をダブルクリックすれば、そのブロックのダイアログが 開き、設定値の変更が可能になります。 ブロック・リストの下のフィールドでは、実験で実行されるブロックの制御を追加する ことができます。 Cycles の値は、実験の間 PsyScope がブロック・リストを通しで何サ イクル実行するかをコントロールします。 Scale Blocks は、 Scalable が選択されて いるブロックで実行される試行の回数に影響を与えます;この値は、そのブロックで実行 されるべき試行の総数に達するまでは Trials in Block の値の倍数になります。 Scale Blocks の値は、 Fixed が選択されているか、または持続時間が記述されている場合に は、ブロックには何の影響も及ぼしません(ブロックのスケーリングの例は、 p99 の「3.2.12.4 トライアル・モニタ」を参照のこと)。最後に Block order メニューは、ブロックがリ ストの並び順に実行されるか、ランダムな順序で実行されるかをコントロールします。 注意:試行数のカウントに関する詳細な説明は、 p214 の「Part 2: グラフィック環境 リファレンス, 5.12.2 試行のカウント」にあります。 この節では、 PsyScope のブロック化された試行において、どのようにブロックを利用 するかについて示しました。ブロック化を行うには他にも方法があります。例えば、それ ぞれのブロックについて別々のテンプレートを用いることでも試行のブロック化は可能で す(これは簡単ですが、その代わり用途がより狭い方法でもあります)。特定のアクセ ス・タイプを使用している試行のブロック化については、要因を用いることもできます (p144 「Part2: グラフィック環境リファレンス, 5.7.2.2 テーブル情報ダイアログ」を 参照のこと)。 ブロックによる変化 試行をブロック化するだけではなく、それぞれのブロックの試行属性を変化させるた めにも、ブロックを利用することができます。例えば、それぞれの実験ブロックに先立つ 第 71 3 章 実験をデザインする 教示について、2つの別々のテンプレートを用いる代わりに、同一のテンプレートを用い て、ブロックごとに教示ファイルを変化させるというようなことができます。 デザイン・ウィンドウに戻り、下記の手順を行ってみましょう。 1. Instruction Trial テンプレートの1つ(Instructions Trial 2 としましょ う)を選択して、それをごみ箱にドラッグするか、 Edit メニューから Clear を選択して下さい。余分なテンプレートを残しておきたくなけ れば、(Design メニューから)ごみ箱を空にすることもできます。 2. Instructions Trial 1 を Instrucitons 2 ブロックにリンクします。 デザイン・ウィンドウは、現在このように見えているはずです。 図 88 - 2 種類の教示に同一のテンプレートを使用する それでは、下記の2つの方法のうちの1つを用いて、2つの教示ブロッ クのいずれか(Instructions Trial 1 としましょう)についてブロック属性ダ イアログを開いてみます。 ブロックをダブルクリックしてブロック・ダイアログを開き、 Attributes ボタンをクリックしてブロック属性ダイアログを開きます。 あるいは コントロール・キーを押したまま、マウスでブロックアイコンを選択し ます。そして現れるメニューから Edit Block Attribs を選択します。 秘訣:デザイン・ウィンドウから、コントロールキーを押したままマウス でオブジェクトを選択すれば、そのオブジェクトの属性ダイアログへ直接ア クセスできるメニューを開くことができます。 現在、(Instructions1 の)ブロック属性ダイアログが開いているはずで すので、下記のとおり新しいカスタムのブロック属性を作成し、それぞれの ブロックにその値を割り当ててみましょう。 1. Attribute Set メニューから Custom Block Attribs を選び、それ から New ボタンをクリックします。これで New ログが開くでしょう。 Attribute ダイア 第 3 章 実験をデザインする 2. この属性に「Instructions」と名前をつけます。 3. Attribute Set メニューから Stimulus Attribs を選び、 Stimulus Type メニューから Paragraph を選択します。 図 89 - Create/Rename/Retype 属性ダイアログ(ここではカスタム属 性を作成するために使われている) 以上を行ったら、 OK ボタンをクリックします。これでブロック属性 ダイアログに戻ることができ、そこにはカスタムブロック属性として In- structions が表示されているはずです。 4. Instructions の属性メニューから Set To を選び、現れたテキスト・ダ イアログに教示文を入力して、このブロックの教示を設定します。 これで、ブロック属性ダイアログは下記のように見えているはずです。 図 90 - カスタム属性を表示しているブロック属性ダイアログ 一度カスタムブロック属性として Instructions を定義すれば、それは全 てのブロック属性に表示されるようになります。従って、 Instructions2 ブロッ クについて同様の設定を行うには、そのブロック属性ダイアログを開いて、 Instructions 属性の値として教示文を入力するだけで済むのです。 72 第 73 3 章 実験をデザインする 注意:特定のタイプのオブジェクトに対してカスタム属性を作成する場 合、 PsyScope は自動的に実験内の同タイプのオブジェクト全てにその属性 を追加し、作成時の値をデフォルト値として設定します。 Vary by Block は、実験のあらゆる試行、イベントや刺激属性の値を変化させるため に利用することができます。例えば、2つの実験ブロックについて、それぞれ刺激のフォ ントを変化させたいというようなことがあるかもしれません。このような場合に、それぞ れのブロックに新たなテンプレートを作成する必要もなく実験デザインの特性をブロック 化することができるので、 Vary by Block は、便利な方法といえます。被験者の属す るグループに応じて属性値を変化させることもまた可能です。もちろんこれには、次節の 論題である被験者群(subject 3.2.10 groups)の定義が必要ですが。 被験者情報と被験者群を利用する 実際に実験をとり行う際には、その実験を実施した被験者に関する情報を記録しておき たいと思うことでしょう。いくつかのデザインにおいては、被験者の属する群に基づい て実験の実行の仕方を変化させたり、あるいはそれぞれの被験者群で実施された被験者 数の履歴を保管しておきたいということもあるかもしれません。この節では、 PsyScope におけるそれぞれの被験者に関する情報の記録の仕方と、被験者群の設定および利用の仕 方について示すことにします。 被験者情報ダイアログ まずは被験者名、年齢、利き手を記録するための設定から始めることにしましょう。こ れは、被験者情報ダイアログ(Subject Info dialog)を使って行います。 デザイン・ウィンドウのコントロールエリアにある Subject Info ボタン(下図参照) をクリックして被験者情報ダイアログを開きます。3つの項目が既に定義されていること に注意して下さい。 図 91 - Subject Info アイコンボタン 第 3 章 実験をデザインする 図 92 74 - デフォルト項目のある被験者情報ダイアログ 被験者情報ダイアログには、各被験者について記録される情報項目のリストが入ってい ます。必ず表示されているはずの3つの項目「被験者名」「被験者番号」及び「実施番 号」は PsyScope が自動的に作成してくれるものです。被験者番号と実施番号は、各被 験者のそれぞれの実験実施に対して PsyScope が自動的に算出してくれる数値です。 被験者番号と実施番号 PsyScope は、実験を実施されるそれぞれの被験者について被験者番号を割り当てます。 この番号は 1 から始まって順番に割り当てられていきます。例えば、与えられた実験を 何回か繰り返し実施したとしても、各被験者はその実験に対しては同一の被験者番号を 持つことになるでしょう(名前が正確に同じに綴られ、被験者群の割り当てに変更がない と仮定した場合)。これに対して、同一の被験者が別の実験では異なった被験者番号を持 つこともあるかもしれません。もし被験者群を利用する場合には、 PsyScope は、各被 験者群の被験者に対してそれぞれ別の被験者番号の系列を保持することになります(p93 「被験者群と被験者間計画」を参照のこと)。 PsyScope はまた、実験が実行されるたびに実施番号を算出しますが、それは単純に特 定の被験者がその特定の実験を実施された回数を示すものです。 PsyScope がどのよう に被験者番号と実施番号の値を算出するかについての詳細な説明は、 p234 「6.2.3. 被 験者番号の算出」を参照して下さい。 新規の被験者情報項目を追加する 被験者情報ダイアログは、追加項目を作成し、 PsyScope がその情報を入力するよう プロンプトを出したり記録を行ったりするタイミングを指定するのに利用することができ ます。 下記の手続きによって、被験者の年齢と利き手の項目を追加してみましょ う。 1. 被験者情報ダイアログの上部にある New ボタンをクリックします。こ れで新規被験者情報(New Subject Info)ダイアログが開くでしょう。 第 3 章 実験をデザインする 2. 最初の新規項目名として「Age」を入力します。 3. 被験者の年齢については数値が入力されるよう保証したいところなので、 Item Type メニューから Value を選びます。 図 93 - 新規の被験者項目(数値項目)を作成する。 これで、もし年齢に対して数値以外のものが入力された場合にはエラー メッセージが表示され、ユーザーは数値を入力するよう促されることで しょう。すぐ後で説明されますが、特定のタイプの入力数値や入力値の 許容範囲を指定することもできます。 4. 次に、被験者の年齢についての入力を促すプロンプトを出すタイミング を選択するために、 Prompt when メニューを利用します。あるいは 全く何もプロンプトを出さないならば Never を選択します。 図 94 - 入力を促すプロンプトのタイミングを設定する 5. 最後に、 Record when メニューを用いて、いつ PsyScope に情報を 記録させるかを設定することができます。今のところは、これは Exper- iment is run の設定のままにしておきましょう。 PsyScope がどのよ うに情報を記録するかについてはすぐ後で説明する予定です。 6. OK をクリックします。新規被験者情報ダイアログが閉じた後で、変数 値定義(Dene Value Type)ダイアログが現れてくることでしょう。 Range ボックスをチェックし、被験者の年齢の許容範囲を入力します。 75 第 76 3 章 実験をデザインする 図 95 - 数値項目を定義する これで、入力値が整数値でなかったり、指定された範囲外の値であると きにはエラーメッセージが生成されるようになるでしょう。 7. これらが済んだら、 OK をクリックします。 PsyScope は被験者の年齢 入力用のダイアログを表示し(試しにここで不適当な値を入力してみて 下さい)、入力後はメインの被験者情報ダイアログに戻ることでしょう。 項目として利き手を追加するために、同じ手順をたどって下さい。尤も このケースでは、 Item Type を Buttons に設定することになりますが。 新規被験者情報ダイアログを閉じた後の変数値定義ダイアログも先程とは異 なっていて、数値特性の代わりにボタンのリストを定義するようになるでしょ う。これを用いて2つのボタン(1つは右利き、1つは左利き用)を作成し て下さい。 図 96 - 利き手の Left (左利き)と Right (右利き)のボタンを作成する これが済むと、 PsyScope は被験者の利き手を入力するためのダイアログ を表示し、入力後は(下記のような)メインの被験者情報ダイアログに戻る ことでしょう。 第 77 3 章 実験をデザインする 図 97 - 年齢と利き手の項目が追加された被験者情報ダイアログ 一旦被験者情報項目を作成してしまえば、リスト中の項目名をダブルクリックするか、 またはダイアログ上部にある Congure と Dene のボタンを利用することで、それを 修正することが可能になります。 Congure ボタンは、新規被験者情報ダイアログによ く似たダイアログを開き、そこでは、 PsyScope が情報入力のプロンプトを出したり保 存を行ったりするタイミングを設定することができます。 Dene ボタンは、項目のタ イプを指定する変数値定義ダイアログを再び開きます。 リスト中の各項目の変数値(Value)をクリックすることで、被験者情報ダイアログか らそれを設定することができます。 Data File あるいは Log File の列をチェックすれ ば、情報をどこに記録するかを指定することができます。 PsyScope がセッション、実験、 被験者についての情報を記録する場所としては2種類のファイルがあり、各セッションに 関する情報はログファイルに、各実験の実行についての情報はデータファイルに保存され ます。以下はこれらのファイルに関するいくつかの補足情報です。 ログファイルとデータファイル ログファイル PsyScope アプリケーションが実行されているときには常にログファイル(log le)が 開いており、それは実行された PsyScope アプリケーションのバージョン、各実験の開始 と終了の時間、発生したあらゆるエラーメッセージについての情報を記録しています。 デフォルトでは、 PsyScope はログファイルとして、アプリケーションと同じフォルダ 内の「PsyScope.log」という名のファイルを利用します。しかしながら、 Utilities メニュー のコマンドを使うことで、そのログファイルに変更を加えたり、閲覧したりコメントを付 け加えたりすることもできます(p258 の「Part2: グラフィック環境リファレンス, 7.1.4 Utilities Menu」参照)。 被験者に関する情報をログファイルに保存するには、被験者情報ダイアログの、記録し たい項目の左にある Log File の列をチェックします。被験者情報ダイアログ(上記参 照)か被験者情報スケジュール(Subject グラフィック環境リファレンス, Info Schedule)ダイアログ(p241 「Part2: 6.2.6 被験者情報スケジュール・ダイアログ」参照)を 第 78 3 章 実験をデザインする 使えば、いつこの情報が記録されるかをコントロールすることができます。 データファイル 実験が実行されているときには必ず、 PsyScope は(被験者の反応のような)実験の全 てのデータをデータファイル(date le)に記録します。 デフォルトでは、 PsyScope は実験名に "Data"を付けた名前のファイル(例えば「Acu- ity Experiment Data」)を作成し、それを PsyScope アプリケーションと同じフォルダ に保存します。 Utilities メニューのコマンドを使えば、データファイルの名前や保存場 所を変更したり、内容を閲覧したりすることができます。 被験者に関する情報をログファイルに保存するには、被験者情報ダイアログの、記録し たい項目の左にある Data File の列をチェックします。被験者情報ダイアログ(上記参 照)を使えば、いつこの情報が記録されるかをコントロールすることができます。被験者 情報ダイアログでは、 PsyScope に、被験者情報に基づいて自動的にデータファイルの名 前を作成させることもできます。 注意:ログファイルとデータファイルは共にテキストファイルです。即ち、 これらはいかなる特殊コードやキャラクタも含んでいないので、どのような 標準のテキストエディタでも見たり編集したりが可能ということになります。 しかしながら PsyScope は、ある種の情報としてこれらファイルのフォーマッ トに依存しているのです。このフォーマットを変更することは、 PsyScope の、被験者や被験者群に関する情報の履歴を保管する能力に支障をきたすこ とになります。ログファイルとデータファイルのフォーマットについての詳 細は、 p226 の「Part2: グラフィック環境リファレンス, 6.1.5 ログファイ ル」と p221 の「Part2: グラフィック環境リファレンス, 6.1.4 データファイ ル」を参照して下さい。 PsyScope に自動的にデータファイルの名前を生成させるようにするには、 被験者情報ダイアログの Data File ボタンをクリックします。これでデータ ファイル・ダイアログが開くでしょう。 図 98 - データファイル・ダイアログ 第 79 3 章 実験をデザインする 被験者情報項目は、データファイル・ダイアログの右にあるリストに表示されていま す。データファイルの名前を作成するためには、これらの項目の値やイニシャル、それに 必要に応じて名前のセパレータも用いることができます。 PsyScope に、被験者のイニシャル、利き手、被験者番号に基づいたデー タファイルの名前を生成させてみましょう。例えば、被験者番号 12 で右利き の Archie Undergraduate さんのデータファイルは、 AU12-R となります。 この例に沿って、被験者情報ダイアログのそれぞれの値をクリックし、それ ぞれ相当するダイアログに必要な値を入力することで、被験者名を Archie Un- dergraduate、被験者番号を 12、そして利き手を右手に設定してみましょう。 そしてその後で下記の手順に進んで下さい。 1. Subject Info Entries のリストから SubjectName を選択し、 Add ボ タンをクリックします(または SubjectName をダブルクリックするだ けでも結構です)。これで SubjectName が Data File Items リスト に表示されるはずです。 2. Data File Items リストの SubjectName の左隣にある Use Initials の列をクリックします。 3. SubjectNumber と Handedness をデータファイル項目のリストに加え、 Handedness をチェックします。 ダイアログの一番上にある Automatic ラジオボタン右のデータファイ ル名の見本に注目して下さい。今のところは「AU12R」のはずです。それで は SubjectNumber と Handedness の間にハイフンを加えてみましょう。 1. Separator ボタンをクリックして、テキストダイアログにハイフン(「」)を入力し、 OK をクリックします。これでハイフンが Data File Items リストに表示されているはずです。 2. ハイフンを Handedness の上にドラッグします。 データファイル名(Datale ているはずです。 Name)ダイアログは現在、このように見え 第 80 3 章 実験をデザインする 図 99 - 自動化されたデータファイル名ダイアログと算出されたデータファイ ル名 SubjectName、 SubjectNumber、または Handedness の項目の値を変更 してみて、データファイル名がどのように変化するかに注目して下さい。 デフォルトでは、データファイルは PsyScope アプリケーションと同じフォルダに保存 されます。 Use Folder のチェックボックスをクリックし、マッキントッシュの標準の ファイルダイアログを使ってフォルダを設定することで、別のフォルダにこれをセーブす ることが可能になります。 Set to のラジオボタンをクリックし、その右のテキストフィールドにファイル名を入 力することで、自動のデータファイル計算を受け付けないようにすることもできます。 被験者群 被験者群を利用する主な理由としては、2つのものがあります。即ち、異なる被験者群 に対する実験の実施方法を変化させるため、あるいは異なる被験者群からそれぞれ何人の 被験者が実験を実施されてきているかという履歴を保管するためです。特に後者は、被験 者間計画(各実験条件の下に、それぞれの被験者群から同数の被験者が実験を実施されて いることを確認しなければならない)にとっては重要なものです。この節では、最初に被 験者情報ダイアログを用いて被験者群(groups)を定義するやり方を示し、次に上述し た2つの目的にあわせた被験者群の使い方について紹介していきます。 被験者群の定義は、被験者情報ダイアログで、被験者を群に割り振るべく用いられる項 目を選択することによって行います。 それでは、利き手によって被験者をグループ化してみましょう。 被験者情報ダイアログの利き手項目の左隣にある Group の列をチェッ クします。 第 81 3 章 実験をデザインする 図 100 - 利き手によってグループ化された被験者情報ダイアログ Log File の列にも自動的にチェックマークが表示されることに注目して 下さい。これは、被験者群を用いたあらゆる情報が必ずログファイルに保存 されるためです。 PsyScope は、被験者をグループ化するための情報項目のカレント値(上記の例では利 き手のみ)をチェックすることによって、被験者が割り振られる群を決定します。これら の情報項目は群化基準(group criteria)と呼ばれています。全ての群化基準に対して同 じ項目値を共有している被験者は、全て同一の被験者群に属することになります。上の例 では、全ての右利きの被験者は1つの被験者群を形成し、全ての左利きの被験者は別の被 験者群を形成します。もし群化基準として年齢を加えたならば、与えられた基準年齢の右 利きの被験者は1つの被験者群を形成し、それ以外の年齢の右利きの被験者は別の被験者 群を形成します。 被験者群を定義すると、 PsyScope は被験者群に結びついた各被験者に対する被験者 番号を算出するようになります。例えば、もし最初の3人の被験者が右利きで、4番目 が左利きの被験者だったとすれば、4番目の被験者の被験者番号は4ではなく1となりま す。後(p93 「被験者群と被験者間計画」)でも見るように、これは被験者間計画にとっ ては重要なことです。 被験者群オブジェクトと被験者群による変化 上述したように、被験者群の用法の1つは、被験者の属する被験者群に基づいて実験の 局面を変化させるということです。例えば、実験の反応に使用する入力キーを、被験者の 利き手に基づいて変えたいものと仮定してみましょう。これは、被験者群と、入力条件に 対する Vary By Group の利用によって行うことができます。 上では、2つの利き手群を定義しました。これらに基づいて実験を変化 させるためには、2つの被験者群のオブジェクトを作成し、これらを実験に 繋ぎ合わせる必要があります。 第 82 3 章 実験をデザインする 1. デザイン・ウィンドウに行き、ツールパレットの被験者群オブジェクト (group object: 下図参照)を選択して、ワークエリアに2つの被験者 群を設置します。 図 101 - 被験者群アイコン 2. はさみツール(下図参照)を用いて、実験からブロック・オブジェクト へのリンクを切断します。それから、2つの被験者群を実験とブロック とにリンクします。 図 102 - はさみツール 秘訣:リンクツールを選び、それからリンクをかけたいオブジェクト全 部を選択して、それをリンクしたいオブジェクトにドラッグすることで、複 数のオブジェクトを一遍に別のオブジェクトへリンクすることができます。 デザイン・ウィンドウは現在、このように見えているはずです。 図 103 図 104 - 被験者群のある実験階層 - 被験者群とブロックのある実験階層 次の手順は、前に定義した群化基準を2つの被験者群オブジェクトにリ ンクすることです。 第 83 3 章 実験をデザインする 1. 左利き群の被験者群ダイアログを開き、右下の隅にある Criteria ボタ ンをクリックします。これで基準値(Criteria)ダイアログが開くでしょ う。 図 105 - 群化基準ダイアログ ダイアログには利き手だけがリストアップされていることに注意して下 さい。これは、それが群化基準としてチェック・マークがついている唯 一の被験者情報だからです。 2. Handedness をダブルクリックし、 Handedness のダイアログにある Left をクリックします。 3. 右利き群についても同様に、利き手の基準値を Right に設定します。 これでそれぞれの被験者群に対する基準値が設定されました。最後の手 順は、各被験者群に使用されるべき入力キーを指定するカスタムの被験者群 属性を作成し、そして RT Period イベントに対する入力コンディションを被 験者群に基づいて変化させることです。これを行う手順は、前に見たような、 カスタムブロック属性を作成したときの手順に類似しています。あなたがそ の節をとばしてしまっていた場合に備えて、まずはカスタム属性を作成する ことにしましょう。 1. 左利き群のダイアログに戻り、 Attributes ボタンをクリックします。 2. まだ選択されていなければ、 Attribute Set メニューから Custom Group Attribs を選択し、それから New ボタンをクリックします。 これで New Attribute ダイアログが開くでしょう。 3. Attribute Set メニューから Conditions and Actions を選択しま す。 Attribute メニューの Conditions が選択されていることをチェッ クしてから、 OK をクリックします。これで左利きの属性ダイアログ に戻り、そこにはカスタムの被験者群属性として Conditiohns が表示 されているはずです。 第 84 3 章 実験をデザインする 図 106 - Create/Rename/Retype 属性ダイアログ(カスタム属性を作 成するために使用) 4. Conditiohns 属性の値を「f」と「d」のキーに設定します(設定のや り方を思い出すには、 p30 の「3.2.6 反応を記録する」の例を参照のこ と)。 これが済んだら、左利き属性(Left Handers Attributes)ダイアログは このように見えていることでしょう。 図 107 - カスタム属性を表示している被験者群属性ダイアログ カスタムの被験者群属性として一旦コンディションを定義すれば、それ は全ての被験者群について適用されます。それゆえ、右利き群については、 その属性ダイアログを開いてコンディションの値を「j」と「k」のキーに設 定するだけで済みます。 注意:あるタイプのオブジェクトに対してカスタム属性を作成するとき には常に、 PsyScope はその属性を同じタイプのオブジェクト全てに自動的 に付け加え、そしてその初期値を Default として設定します。 最後に残っているのは、 RT Period イベントに対する入力を設定するこ とで、これは被験者群に基づいて決定されることになるでしょう。 左利きの 被験者に対するキーボードの反応キーは、単語ならば「d」で、無意味綴りな 第 85 3 章 実験をデザインする ら「f」、一方、右利きの被験者に対しては単語ならば「j」、無意味綴りな ら「k」となります。 1. 要因表の全てのセルが選択されていることを確認してから、テンプレー ト・ウィンドウに行き、 RT Period イベントのイベント属性ダイアロ グを開きます。 2. Input/Actions 属性メニューから Set to: を選びます。これでアクショ ン・ダイアログが開きます。 3. コンディション - アクション対(p30 「3.2.6 反応を記録する」で設定 した)のコンディションの部分を選択しますが、コンディション・ダイ アログを開くためのダブルクリックはしません。 4. アクション・ダイアログ底部に表示されているポップアップメニューか ら、 Vary by Group を選択して、 Vary by Group ダイアログを開 きます。 図 108 - Vary by Group を選択する 5. Vary by Gruop ダイアログの Attribute メニューから Conditions を 選び、 OK をクリックします。 アクション・ダイアログは現在このように見えているはずです。 第 86 3 章 実験をデザインする 図 109 - 被験者群に基づいて変化するコンディションのあるアクション・ダ イアログ これは、コンディション・リストの値が、コンディションのカスタム被験 者群属性によって決定されることを差し示しています。被験者情報ダイアロ グの利き手の値を設定し、実験を実行することでこれを確かめてみて下さい。 現行の被験者群 実験に被験者群オブジェクトがあるときには必ず、現行の被験者群(current が1つ存在しています。これは、 Vary group) by Group に設定されている属性の値を設定す るのに使われる被験者群のことです。もし群化基準が定義されているならば、それを作り 上げている被験者情報項目の値に基づいて、現行の被験者群が決定されることになります (例えば、利き手が「右利き」に設定されているならば、現行の被験者群は右利き群にな ります)。もし群化基準が定義されていなければ、実験ダイアログから手動で現行の被験 者群を選択することができます。 下記に従って、手動で現行の被験者群を左利き群に設定してみましょう。 1. デザイン・ウィンドウに行き、 Acuity Experiment アイコンをダルブ クリックします。これで実験ダイアログが開くでしょう。 第 87 3 章 実験をデザインする 図 110 - 2つの被験者群を表示している被験者群リスト・ダイアログ。 Right Handers (右利き群)がボールド体になっていることに注目して 下さい。これが現行の被験者群になります。 2. Manual current group ラジオボタンをクリックして Left Handers を選択し、 Selected -> Current ボタンをクリックします。 今度は Left Handers が現行の被験者群になっているはずです。試行を実 行してこれを確かめて下さい。「f」が入力キーになっているはずですので。 もし何かが既に定義されているならば、手動で現行の被験者群の群化基準を無効にしま す。 Automatic from subject info ラジオボタンをクリックすれば、被験者群自動 選択をリセットすることができます。 Update ボタンをクリックすれば、全ての群化基 準の値を再チェックして、その現行値に応じて現行の被験者群を再設定することになりま す。 被験者群と被験者間計画 前節では、被験者群間で実験の特性を変化させる方法を学びました。2番目に重要な被 験者群の用途は、それぞれの被験者群から実験を実施された被験者数に関する履歴を保管 することです。これは特に、被験者間計画(実験条件が各被験者群の被験者に対して同等 に配当されているかどうかを確認する必要がある)にとっては重要なものです。 例として、健常な被験者と視覚障害のある被験者に対して、両者の間の周辺視力の違い を検査するために Acuity Experiment を実施したいものと仮定してみましょう。 さら に、これら2つの異なる被験者群に対して異なるフォントが持つ影響を調査したいと考え ており、そして被験者間計画でこれを行おうとしているものと仮定して下さい。これは即 ち、それぞれの被験者はただ一つのフォントだけを見ることになるものの、全ての被験者 を通して見ればその間ではフォントが変化させられているということになります(例とし ては、 p53 の「3.2.8.3 セル選択をコントロールする」を参照して下さい)。我々は、被 験者へのフォントの割り当てが2つの被験者群に対して同等のやり方で行われているの かどうかを確認する必要があります。それは即ち、被験者間要因の表が、2つの被験者群 に対して全く等しい方法で適用される必要があるということです 。例えば、もし既に3 人の健常被験者に対して最初の3つのフォントを割り当てて実験を実施し、次の被験者が 視覚障害であったとすれば、その人に対しては、単純にリストの次のフォントを提示する のではなく、最初の健常被験者に提示したのと同じフォントを提示する必要があるわけで す。 被験者群を利用して、要因表の組合せタイプを Between に設定し、そして Choose Cross- ing ダイアログから Subject within Group を選ぶ(このやり方の例としては、 p53 の「3.2.8.3 セル選択をコントロールする」を参照)ことによって、要因表からのセルの 割り当てが、全ての被験者群に対して全く等しい方法で適用されることが保証されます。 これは、要因表の組合せタイプが Between で、そのタイプが Subject within Group であるときには、 PsyScope が被験者番号の値に基づいてセルを選び出すからです。そ れゆえこの設定においては、 PsyScope はそれぞれの被験者群について別々に被験者番 号を計算します。それぞれの被験者群の呼応するメンバーは同じ番号を付けられ、それに 第 88 3 章 実験をデザインする 基づいて呼応したセルを割り当てられます。例えば、健常と視覚障害の被験者群双方の最 初の被験者の被験者番号は「1」で、2番目の被験者は「2」、というように。この番号 はまた、フォント要因の表(組合せタイプは Between by subject)からセルを選び出 すときにも利用されるので、各被験者群の呼応するメンバーは、その要因の同じ水準を割 り当てられることになるでしょう。 被験者群についてのこの紹介は、種々の複雑な実験計画を構築する際に、被験者群と被 験者間要因をどう組み合わせて用いればよいかというアイデアを与えてくれるはずです。 次節では、実験をより洗練されたものにする際の手助けとなる一連の特性を紹介して、そ して実際の被験者で実験を実施するための準備をしていくことにしましょう。 3.2.11 実験属性 実験属性は、実験をカスタマイズする際に利用できる特性です。これには様々な種類の ものがあり、うちいくつかはかなり専門的なものです。ここでは、よく用いられる3つの 属性について説明することにしましょう。残りの実験属性については、 p165 の「Part2: グラフィック環境リファレンス, 5.8.3.4 標準的な実験属性」で詳しく解説されます。 実験属性は、全て実験属性ダイアログの中に設置されています。このダイアログは、 (他のタイプのオブジェクトの属性ダイアログと同様) デザイン・ウィンドウから、2通 りの方法で開くことができます。即ち、実験オブジェクトをダブルクリックして実験ダ イアログを開き、 Attributes ボタンをクリックするか、またはコントロールキーを押 しながらマウスで実験オブジェクトをクリックして、現れるポップアップ・メニューから ダイレクトに Edit 図 111 Experiment Attribs を選ぶかです。 - コントロール - クリックによる、実験属性の手短な設定法 教示ファイルとデブリーフィング・ファイル ブロックの節で用いた例では、各々のブロックに先立って教示 (instruction) を提示す る方法を紹介しました。しかしながら通常は、実験の開始時に1組の教示のみを提示し、 また実験の終了時にはデブリーフィングのメッセージを提示しようと考えるくらいでしょ 第 89 3 章 実験をデザインする う。このような典型的なケースに対してはもっと簡単な方法があるので、こうした目的の ために特別にブロックやテンプレートを作る必要はありません。やらなければいけないの は、それぞれのメッセージ用にテキスト・ファイルを作り、それを実験属性ダイアログで Instructions File もしくは Debrieng File 属性として設定することだけです。 下記の要領で、教示用メッセージを作成してみましょう。 1. File メニューから New Text File を選択します。 2. テキスト編集ウィンドウに教示文を入力し、そのファイルをセーブしま す。 3. デザイン・ウィンドウから実験属性ダイアログを開きます。 4. Instructions File 属性のメニューから Set To を選びます。これで マッキントッシュの標準のファイル・ダイアログが開くので、作成した 教示ファイルを選択し、 Open をクリックします。 実験を実行してみて下さい。まず最初に、縁取りのあるウィンドウに教示文 が提示されることでしょう。リターン, タブ, スペース・キーなどを押せば、 テキストの位置による認知効果の実験に入ることができます。 教示文は、実験の開始時に、全ての試行に先立って提示されます。デブリーフィングの 文は、実験の終了時に、最後の試行に続いて提示されます。 休憩時間 (Rest Periods) 教示の場合と同じように、ブロックとテンプレートを使って、実験内の指定の位置に休 憩時間を追加することができます。そしてこれも教示の場合と同様、 PsyScope は標準 的なケースについてはより簡単な方法を用意しています。 Trials Per Rest,Num Rests, Rest Duration などの実験属性を使えば、「パッケージ化された (pre-packaged)」休 憩時間を実験につけ加えることができます。 Trials Per Rest では、休憩と休憩の間の 試行数を記述することで、休憩の頻度を指定することができます。 Num Rests では、 実験中の休憩の回数を指定します。すると PsyScope は、実験の総試行数を Num Rests 値で割って、実験全体に均等に休憩を割り当てることになります。 Num Rests 属性は、持続時間が設定されているブロックでは正確に機 能しません (休憩が均等に割り付けられない)。これは PsyScope が、トータ ルで何試行が実行されるのかを予め予測できないためです。 Rest Duration 属性は、休憩時間の長さを (msec 単位で) 決定します。 PsyScope は、 休憩時間中 \You can take a break now"のメッセージをブランク・スクリーンに表示し ます。休憩時間が終了すると \Please hit any key"のメッセージがこれにとって代わりま す。キーボードから何かキーを押せば、再び実験が続行されるでしょう。 第 90 3 章 実験をデザインする 反転画像 (Reverse Video) ときには、刺激を黒い背景に白抜きで (即ち反転画像で) 表示したいということがある かもしれません。メニュー・バーの Experiment メニューから Reverse video を選び、 反転画像ダイアログの On のラジオボタンをクリックすればこれを行うことができます。 これは実際には Backcolor の実験属性を黒に、 Forecolor の実験属性を白に設定して いることになります。 これらの属性を直接設定して、その他の色効果を出すこともできます。 Forecolor 値 は、まだ色が設定されていない実験中の刺激に対して用いられるもので、 Backcolor 属 性は、背景色を決定するものです。 3.2.12 試行を実行する PsyScope で試行を実行するには、たくさんの方法があります。実験全体を実行するこ とも勿論可能です。練習試行や、 (プレビューまたはデバッグのために) 試行のサブセッ トを実行することもできます。 実験の実行と中断 実験の実行は簡単で、 Run メニューから Run を選ぶか、コマンド -R をタイプする か、またはコンソールの Run ボタンをクリックすればできます。実行される試行数は、 実験ダイアログおよびブロック・ダイアログで決定されることになります。これらについ ては、 p214 の「Part2: グラフィック環境リファレンス, 5.12.2 試行のカウント」で説 明されます。コマンド -.(ピリオド) をタイプすれば、いかなる時でも実験を中断するこ とができ、ブレーク・ダイアログが呼び出されるでしょう。 図 112 - ブレーク・ダイアログ Continue ボタンをクリックすれば、中断したところから再び実験が続行されること でしょう。 Break ボタンをクリックすれば、実験を終了して PsyScope に戻ることにな ります。 練習モード 対 実行モード Run メニューから Practice を選ぶか、コンソールの Practice ボタンをクリックす れば、ある試行セットを練習モードで実行することができます。練習モードでは、データ 第 91 3 章 実験をデザインする ファイルにデータが保存されず、実行番号 (RunNumber) が増えないことを除いては、 実験は通常の実行のときと全く同じように実行されます。ただしこの練習の実行は、ログ ファイルにだけは記録されます。 実行モード単位で試行の特性を変化させるには、カスタムの練習・実行属性を用いるこ ともできます。これは、他のカスタム属性を作成したり割り当てたりするのと同じ要領 で行うことになります (p76 の「3.2.9.2 ブロック単位の変化」と、前節の p87 「グルー プ・オブジェクトとグループ単位の変化」を参照)。これにはまず、実験属性ダイアログ の Attribs Set メニューから Custom Practice Attribs か Custom Run Attribs を選択します。次に新規のカスタム属性を作成し (一つの試行セットに対して新規の属性 を作成すると、自動的に他のセットに対してもそれが適用されます)、実行・練習モード での属性値を割り当てることになります。属性値を Vary By Run Mode に設定すれ ば、他のどんな属性値についてもモード単位で変化させることができます。 秘訣: Vary By Run Mode は練習試行全体にわたって一定のコント ロールが可能ですが、この場合、練習モードと実験モードで同じ試行が実行 されるということについてはまだ不自由さを感じるかも知れません。もし練 習と本実験の試行をもっと完全に異なったものにしたいのなら、練習試行用 にもう一つ別のブロックを作成し、それを実験のブロック・リストの先頭に 置けば可能になります。その練習試行のデータを記録したくないならば、単 にその試行セットから RT[ ] アクションを取り除いておくだけで事足ります。 試行のプレビューと試行選択フローティング・ウィンドウの利用 実験をデザインしている過程では、試行がうまくいくかどうかを見るための実行ができ ると便利でしょう。テンプレートとブロック・ダイアログの Preview ボタンを使えば、 これを行うことができます。試行がプレビュー・モードで実行されているときには、 PsyScope はその試行からのいかなるデータも保存しません。 テンプレート・ウィンドウの Preview ボタンは、そのテンプレートから1つの試行を 実施します。どの試行が実行されるかを指定する (即ち、試行の決定要因値を設定する) のには、試行選択フローティング・ウィンドウ (Trial Chooser oating window) を用い ることができます。例えば、試行の何らかの属性がリストにリンクされているなら、試行 選択ウィンドウを使って、プレビューしたい試行の項目リストから特定の項目を選択する ことができます。同様に、試行の何らかの属性がブロック単位で変化する場合には、試行 選択ウィンドウで、試行をプレビューするときにどのブロックを使うか選択することがで きます。グループについても同じことが言えます。 下記の要領で、テンプレート・ウィンドウから試行をプレビューしてみま しょう。 1. テンプレート・ウィンドウを開きます。 2. Windows メニューの試行選択 (Trial Chooser) パレットを選択して開 きます。 3. 試行選択パレットの Stimulus List から項目を選びます。 第 92 3 章 実験をデザインする 図 113 - 試行選択ウィンドウが開いた状態のテンプレート・ウィンドウ Stimulus イベントの刺激属性が Stimulus List にリンクしていたことを 思い出しましょう。 Stimulus List から項目を選ぶとき、その項目はテ ンプレート・ウィンドウの Stimulus イベント・バー上に刺激として表 示されることに注意して下さい。 4. テンプレート・ウィンドウ上部の Preview ボタンをクリックします。 試行は、 Stimulus List から選んだ項目を刺激として実行されるはずで す。 試行選択パレットでグループを変更し、試行をプレビューしてみましょう。 RT Period イベントの反応キーがグループによって変わるということを思い 出して下さい。このため、試行選択パレットでのグループの変更によって、 反応キーも切り換えられることになります。 注:試行選択パレットでの選択は、プレビュー試行についてのみ有効です。 これらは実際の実験での試行の実施には何ら影響を及ぼしません。 ブロック・ダイアログの Preview ボタンは、そのブロックの全ての試行をプレビュー します。試行選択パレットは、用いるブロックを選択するために使うことができます。こ れはまた、属性がリンクされているリストから最初に選択される項目を設定するのにも使 えます。最初の試行がプレビューされたあとは、 PsyScope が通常通りのやり方で項目を 選び出していきます。 試行のプレビューは、それが実験中で実際どのように実行されるかを見せてくれます。 しかしいくつかの場合には、より精巧なテストを行いたいということがあるかも知れませ ん。これは試行モニタによって可能になります。 第 93 3 章 実験をデザインする 試行モニタ 試行モニタ (Trial Monitor) は、実験をテストする診断ツールをはじめ、試行がどのよ うに生成され実行されるかを精密にコントロールする機能を持っています。モニタの上半 分は試行の実行される回数をコントロールし、下半分はそれらの生成のコントロールと診 断を行うものです。 Windows メニューから Monitor を選択して試行モニタを開き、コンソー ルの Monitor ボタンをクリックするか、コマンド -M をタイプします。 図 114 - 試行モニタ モニタ上部の Run と Practice のフィールドには、実行する試行の回数を記述します。 実験にブロックがある場合には、モニタ上部に Mode: Block の表示が現れ、 Run と Practice の数値は、ちょうど実験ダイアログの Scale 値のような働きをすることになり ます | つまり、それらの数値が各ブロックの試行数に掛け合わされるということです。 Total to run には、こうして実際に実施される試行数が報告されています。 Total to run の数値が 13 になっていることに注目して下さい。この数 値は、2つの教示ブロックから各1試行、ブロック1からは 10 試行が実施さ れるのに対し、ブロック2からは実施が1試行のみであることを反映してい ます。ブロック2では、試行数ではなくて時間数が記述されているために、 1試行しかカウントされないのです。 PsyScope は、特定の時間内に何試行 が実行されるかを予め正確に計算することはできません。従ってこの場合、 実験中で実行される試行の合計数を正確に計算することもまたできないので す。 注:もしも実験の全てのブロックに、試行数ではなくて時間数が記述さ れていたとしたら、 Total to run で報告される数値は、それぞれのブロッ クが1試行としかカウントされないために不正確なものとなってしまうでしょ う。 第 94 3 章 実験をデザインする ブロック2のブロック・ダイアログを開いて、ブロックに 10 試行を割り 当てて下さい。試行モニタは、今度は Total to run が 22 となるように正 確な報告をしているはずです。 Run フィールドの数値を2に変えてみます。 Total to run は今度は 42 になるでしょう。これは、フィールドの値が Scale 値のように機能して、各 ブロックの試行数に掛け合わされるからです。ただし教示ブロックは Scalable ではなく Fixed に設定されているために、その影響が及んでいません。 そのため、 Run フィールドが2になってブロック1とブロック2の試行数 が倍になり、それぞれ合計 20 試行になったのに対し、2つの教示ブロックは それぞれ1試行づつで、総計は 42 試行となっているのです。 注: Run フィールドの数値は、実験ダイアログの Scale フィールドとリ ンクしているかもしれません。この場合、一方の数値を変更することは、他 方の数値をも変更することになります。 Run Options ダイアログの Trial Mon- itor count separate from script をチェックすれば、これらを非連動に することができます (p270 の「Part2: グラフィック環境リファレンス, 7.6.2 実行オプション」を参照)。 もし実験にブロックがなければ、 Run や Practice の数値がそのまま実行される試行 数となります。この場合 Mode: Direct が表示されます。 試行を実行するためには、 (Run と Practice のラジオボタンをクリックして) 希望の モードが選択されているかどうかを確認し、それから Do Trials ボタンをクリックしま す。 Run By Index ダイアログを使えば、試行のサブセットを実行することもできます。 By Index ボタンをクリックしてこのダイアログを開き、実行したい試行の始めと終わ りの番号を入力して、 Do Trials ボタンをクリックします。 試行のプレコンパイルと試行間インターバル デフォルトでは、 PsyScope はそれぞれの試行を実行の直前に生成します。実験の複雑 さに応じて、このプロセスは1 msec から1秒以上までの時間をとることができ、それを 試行単位で変化させることもできます。試行間のインターバル (intertrial ) interval: ITI が実験中で重要な意味を持っている場合、それを操作するには2つの方法があります。も し ITI が試行間で一定であることを保証したいのならば、それを Minimum ITI 属性 として設定することができます (p250 の「Part2: グラフィック環境リファレンス, 6.5.1 プレコンパイリング」を参照)。 ITI を完全に取り除きたいのならば、 Preload All Stim- uli の特別属性フラグを使って、試行をプレコンパイルすることができます。 最小 ITI これは、試行を開始する前の最小待機時間を指定する属性です。 PsyScope はその間 に、必要な刺激をディスクからロードし、試行を生成します。デフォルト値は0ですの で、 PsyScope は試行が生成されるやいなや、すぐにそれを開始することになります。 これは、いくつかの試行は他の試行よりも早く開始される可能性があることを意味してい ます。しかしながら、この値を最も生成に時間がかかる試行に合わせて設定しておけば、 全ての ITI が同じになることを保証できます。一般的には、これを1秒にしておくのが コツです。実験の実行のチェック (後述) を行って、試行をコンパイルするのにかかる最 第 95 3 章 実験をデザインする 大の時間が割り出せれば、この設定をより厳密に行うことができます。 試行をプレコンパイルする Minimum ITI を設定すれば、 ITI が一定になることを保証できます。しかしなが ら、実行前に試行を生成するのに要する時間をなくしたい場合 (例えば ITI が非常に短時 間でなければいけない場合) には、実験が始まる前に、 PsyScope に全ての刺激を一括し て生成させることができます。試行モニタの下半分の Compile all trials before run- ning をチェックするか、 Precompile 実験属性を All に設定すれば、これを行うこと ができます。実験を実行する際、 PsyScope はまず試行のコンパイルから始めることに なります。そしてその間、準備されている試行数を示すメッセージ・ダイアログが、進行 状況と所用推定時間をなぞるタイム・バーとともに表示されるでしょう。 図 115 - 実験コンパイル時のタイム・バー Instructios 実験属性を使っている場合には、このメッセージは教示文の下に現れる ことでしょう。 (もし被験者に試行数の情報を見せたくない場合は) ログの Show Run Options ダイア number to be compiled in run time bar のチェックを外せば、メッ セージ中の試行数を隠すことができます (p270 の「Part2: グラフィック環境リファレン ス, 7.6.2 実行オプション」を参照)。 試行をプレコンパイルした場合でも、試行間にはなおいくらかの時間がかかります。こ れは、 PsyScope が次の試行の刺激をディスクからロードし、指定された操作 (例えばテ キストを縦や横に裏返すなど) をそれに施すための時間です。特殊な実験フラグ Preload All Stimuli を設定することで、この時間を取り除くこともできます。これを行えば、 ITI が0になるということが保証されます。ただし、 PsyScope が実験の全ての刺激をメ モリにいっぺんに貯蔵するためには、充分な RAM 容量が必要です。 試行をプレコンパイルし、刺激をプレロードすることの有利な点は、試行間の時間を必 要なだけ短くできることです。逆に不利な点は、実験が始まる前に刺激がロードされ、全 ての試行が生成されるまで待たなくてはならないことです。試行と刺激の数が多い場合、 これには相応の時間がかかります。 プレコンパイリングについての詳しい情報は、 p250 の「Part2: グラフィック環境リ ファレンス, 6.5.1 プレコンパイリング」を参照して下さい。 注:試行のプレコンパイルは、実験中のどこかで試行マネージャ変数 (Trial Manager Variables: p208 の「Part2: グラフィック環境リファレンス, 5.10 試行マネージャ変数」を参照) を使用しているとき、またはいずれかのブロッ クが試行数の代わりに時間を記述しているときには機能しません (これは、 時間を記述したブロックでは、各試行がどれくらいの時間を要するのか、そ してブロックにどれくらいの時間を割り当てたらいいのかを PsyScope が予 め計算することができないためです)。 第 96 3 章 実験をデザインする 試行をチェックする試行モニタの下半分にある Check のボックスをクリックしてから Do Trials ボタンをクリックすれば、 PsyScope に実験のチェックをさせることができ ます。 PsyScope は (実際に刺激をロードすることなく)Run フィールドの試行数を生成 し、その過程でぶつかったエラーを報告します。このとき、 PsyScope は実験を実行する 代わりにチェック統計 (Check Statistics) ウィンドウを開きます。このウィンドウは、実 験に関するいくつかの統計値 (p245 の「Part2: グラフィック環境リファレンス, 6.3.1 試行コンパイル統計値」で詳述) を報告します。これらの統計値は、試行のプレコンパイ ルを要せずして、 ITI が一定であることを保証してくれるので、 Minimum ITI の設 定を決めるときには有用です (上述の p100 「試行のプレコンパイルと試行間インターバ ル」を参照)。 試行モニタの List Events のボックスをチェックすれば、 PsyScope はチェック統計 (Check Statistics) ウィンドウに、各試行のイベントとそれに連合した刺激のリストを作 成します。これは、刺激のランダム化が予期されたとおりに起こっているかどうかを検証 するのに便利です。 Load Stims のボックスをチェックすれば、 PsyScope は試行をチェックする際に全 ての刺激をディスクからロードします。これは比較的長時間を要しますが、実験の全ての 刺激ファイルが適切に記述されていてアクセス可能であるかどうかをチェックしてくれま す。 試行モニタについての完全な説明は、 p242 の「Part2: グラフィック環境リファレン ス, 6.3 試行モニタ」で提供されます。 イベント・モニタと変数モニタ 試行モニタ下半分の Monitor events のボックスをチェックすれば、2つのウィンド ウ:イベント・モニタ (Event Monitor) と変数モニタ (Variable Monitor)、が開きます。 これらのウィンドウは、実験の実行とともにダイナミックに試行を追跡します。 イベント・モニタは、実行されている試行、その試行における全てのイベント、及びそ れらの現在の状態について報告します。働いている全ての機能のリストもここで保持され ています。 変数モニタは、試行マネージャ変数の状態を報告します。もし Step のボックスがチェッ クされていれば、試行は「1ステップごとに (step-by-step で)」実行されるので、その試 行の進行具合をより注意深く検査することができます。キーボードのどれかのキーを押せ ば、ステップは次に進みます。 イベント・モニタと変数モニタは、特に PsyScript を使って実験をデザインする際に 極めて有用なデバッグ用ツールになります。これらについては、 p245 の「Part2: グラ フィック環境リファレンス, 6.4 イベント・モニタと変数モニタ」で詳しく説明されます。 3.3 次に進むべきところ これで、グラフィック環境と PsyScope における実験の構造の紹介は終わりです。 PsyScope で実行可能な全てのイベント・タイプやアクションなど、上述してきたそれ ぞれの構成要素の詳細については、「Part2: グラフィック環境リファレンス」に書かれ ています。 第 3 章 実験をデザインする 97 スクリプト言語については、グラフィック環境の代わりに PsyScript を使った「視力 実験」の作り方の指導とともに「Part3: スクリプティング・ユーザー・マニュアル」で 紹介されています。「Part4: スクリプティング・リファレンス」は、これに対応したリ ファレンスの節です。ここには、 PsyScript の完全な定義と、記述可能な実験について のスクリプト・フォーマット、試行マネージャの技術的な詳細、それにインターフェース を配置する際の PsyScript の使用についての情報が含まれています。 最後に「Part 5: 付録」では、エラー・メッセージのリストと、ボタン・ボックスの 使用、それに PsyScope で使用するためのサウンドやピクチャーの作成についての詳細 が提供されます。